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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-115816(P2020-115816A)
(43)【公開日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】糖取り込み促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20200710BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20200710BHJP
   A61K 36/488 20060101ALI20200710BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20200710BHJP
   A61K 36/15 20060101ALI20200710BHJP
   A61K 36/8998 20060101ALI20200710BHJP
   A61K 35/744 20150101ALN20200710BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20200710BHJP
   A61K 129/00 20060101ALN20200710BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20200710BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20200710BHJP
【FI】
   A23L33/10
   A61P3/10
   A61K36/488
   A61K36/81
   A61K36/15
   A61K36/8998
   A61K35/744
   A61K127:00
   A61K129:00
   A61K131:00
   A61K133:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-11551(P2019-11551)
(22)【出願日】2019年1月25日
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】森川 琢海
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA08
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZC35
4C088AB03
4C088AB50
4C088AB59
4C088AB73
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC06
4C088BA06
4C088BA09
4C088BA10
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZC35
(57)【要約】
【課題】筋肉細胞への糖の取り込みを促進する組成物を提供すること。
【解決手段】葛花、トウガラシ、松樹皮、及び大麦若葉から選ばれる少なくとも1種の植物素材を含有する糖取り込み促進用組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
葛花、トウガラシ、松樹皮、及び大麦若葉から選ばれる少なくとも1種の植物素材を含有することを特徴とする糖取り込み促進用組成物。
【請求項2】
経口用であることを特徴とする請求項1記載の糖取り込み促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉細胞への糖の取り込みを促進する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
筋肉は、ブドウ糖を取り込む機能をもった大きな臓器であり、筋肉へのブドウ糖の取り込みは、血糖コントロールに大きな影響を与える。通常は、食後に血糖値が上がるとインスリンが追加して分泌され、このインスリンによって筋肉にブドウ糖が取り込まれるが、例えば肥満の人などは、インスリンによる筋肉へのブドウ糖取り込みが低下することが知られている。
【0003】
このような筋肉への糖の取り込み低下を抑制するために、例えば、ビート、チャーガ、カリン、クコシ、クマザサ、ケツメイシ、高麗人参、サンザシ、月桃葉、甜茶、杜仲茶、マタタビ、松かさ、および紫玄米からなる群から選ばれる1種または2種以上の抽出物を活性成分として含んでなる糖取り込み促進剤が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−98438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、筋肉細胞への糖の取り込みを促進する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、植物由来の素材の機能について研究する中で、葛花、トウガラシ、松樹皮、及び大麦若葉に、筋肉細胞への糖の取り込みを促進する作用があることを見いだし、本発明を完成するに至った。特に、大麦若葉は、インスリンシグナルを活性化することによって、筋肉細胞への糖の取り込みを促進することを知見した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]葛花、トウガラシ、松樹皮、及び大麦若葉から選ばれる少なくとも1種の植物素材を含有することを特徴とする糖取り込み促進用組成物。
[2]経口用であることを特徴とする[1]記載の糖取り込み促進用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物によれば、筋肉細胞への糖取り込みを促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の組成物(葛花、トウガラシ、松樹皮、又は大麦若葉)を適用した場合のグルコースの取り込み量を示すグラフである。
図2】本発明の組成物(大麦若葉)を適用した場合における、PI3Kの阻害剤であるWortmanninの添加、及びAMPKの阻害剤であるCompound Cの添加によるグルコース取り込み量の変化を示すグラフである。
図3】本発明の組成物(大麦若葉)を適用した場合における、PI3Kの阻害剤であるWortmanninの添加によるAktの総発現量に対するp-Akt発現量(Aktのリン酸化率)の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物は、葛花、トウガラシ、松樹皮、及び大麦若葉から選ばれる少なくとも1種の植物素材を含有するものであれば特に制限されるものではなく、2種以上含有するものであってもよい。
【0011】
本発明の組成物は、筋肉細胞への糖の取り込みを促進し、糖質を有効に活用することができる。したがって、血糖値の低下、糖尿病の予防及び改善、ダイエット(肥満の防止、予防及び/又は解消)、代謝促進のほか、筋肉において糖質を活用することにより筋肉機能の向上等の効果を得ることができる。
【0012】
また、大麦若葉を含む本発明の組成物は、インスリンシグナルを活性化するものであることから、上記した効果に加え、インスリンシグナル活性化によりもたらされる種々の効果(血中中性脂肪値低下、筋肉量増加等)を得ることができる。さらに、インスリン分泌不良等のインスリンに起因する各種症状(例えば、糖尿病、高脂血症、高血圧、骨粗鬆症等)の予防又は改善を図ることができる。
【0013】
以下、本発明の組成物に含まれる各植物素材について説明する。
(葛花)
葛は、マメ科クズ属のつる性の多年草植物である。葛花としては、蕾から全開した花までのいずれの過程で採取したものを用いてもよく、各過程で採取したものを混合して用いることもできる。葛の種類としては、特に制限はないが、プエラリア・トムソニイ(Pueraria thomsonii)、プエラリア・ロバータ(Pueraria lobata)、プエラリア・スンバーギアナ(Pueraria thunbergiana)等を例示することができ、優れた糖取り込み作用が得られることから、プエラリア・トムソニイ(Pueraria thomsonii)が好ましい。
【0014】
葛花としては、採取した葛花の加工物を使用することができる。加工形態としては乾燥物、発酵物、粉砕物、搾汁物、抽出物などが挙げられる。抽出に用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサン等の有機溶媒、酢酸、クエン酸又はこれらの水溶液等の酸性水溶液、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。抽出溶媒の温度は、使用する溶媒に応じて室温〜沸点以下で適宜設定することができる。加工物の処理形態としては、(乾燥)粉末、細片化物、顆粒、ペースト、液等を挙げることができる。
本発明の葛花としては、粉砕物、水(温水、熱水)抽出物、エタノール抽出物、含水エタノール抽出物が好ましく、水(温水、熱水)抽出物、エタノール抽出物、含水エタノール抽出物がより好ましく、優れた糖取り込み作用が得られることから、熱水抽出物が最も好ましい。
【0015】
(トウガラシ)
トウガラシは、カプサイシン又はカプサイシノイド様物質を含むものであれば特に限定されるものではなく、品種、産地等は特に限定されない。具体的には、トウガラシ品種CH−19甘、伏見甘長、シシトウ、山科、万願寺、鷹の爪、香川本鷹、青森鷹の爪、札幌大長、カリフォルニア・ワンダー、チェリーボム等を用いることができ、優れた糖取り込み作用が得られることから伏見甘長を用いることが好ましい。各種トウガラシは、単独で用いてもよいし、二以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
トウガラシは、カプサイシン又はカプサイシノイド様物質を含有する部位であれば、どの部位を用いてもよいが、カプサイシン又はカプサイシノイド様物質は胎座部に多く含まれているため、胎座部又は胎座部を含む果実を用いることが好ましい。
【0017】
トウガラシとしては、採取したトウガラシの加工物を使用することができる。加工形態としては乾燥物、発酵物、粉砕物、搾汁物、抽出物などが挙げられる。抽出に用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサン等の有機溶媒、酢酸、クエン酸又はこれらの水溶液等の酸性水溶液、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。抽出溶媒の温度は、使用する溶媒に応じて室温〜沸点以下で適宜設定することができる。加工物の処理形態としては、(乾燥)粉末、細片化物、顆粒、ペースト、液等を挙げることができる。
本発明のトウガラシとしては、発酵物、粉砕物、水(温水、熱水)抽出物、エタノール抽出物、含水エタノール抽出物が好ましく、発酵物、水(温水、熱水)抽出物、エタノール抽出物、含水エタノール抽出物がより好ましく、優れた糖取り込み作用が得られることから、発酵物が最も好ましい。
【0018】
発酵処理は、例えば、トウガラシに含まれるカプサイシノイド様物質などを分解する。発酵処理は、有機酸を産生し得、かつカプサイシノイド様物質などの分解により生成する脂肪酸を資化し得る微生物を、接触させて行われる。微生物によって産生される有機酸などによるpHの変化などにより、カプサイシノイド様物質などが分解される。
【0019】
発酵としては、乳酸発酵、クエン酸発酵、アルコール発酵、酢酸発酵、これらの組み合わせによる発酵などが挙げられる。発酵の種類に応じて、乳酸菌、酵母菌、酢酸菌などをトウガラシと接触させる。これらの菌は、単独で発酵に用いてもよいし、複数の菌を同時に添加して発酵に用いてもよいし、段階的に異なる菌を添加して発酵に用いてもよい。これらの中でも、乳酸発酵が好ましい。本発明のトウガラシとしては、優れた糖取り込み作用が得られることから、乳酸発酵物が最も好ましい。
【0020】
乳酸菌としては、ロイコノストック・メセントロイデス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプトコッカス・フェカリス、ビフィドバクテリウム・ロンガムなどが挙げられ、単独で又は組み合わせて用いられる。例えば、単独で用いる場合、ラクトバチルス・プランタラムが、その耐酸性、生育温度、および増殖速度の面から好適である。
【0021】
(松樹皮)
松は、マツ科マツ属の常緑針葉樹である。松樹皮の原料としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ等を挙げることができ、これらの中でも、優れた糖取り込み作用が得られることからフランス海岸松が好ましい。
【0022】
松樹皮は、主な成分の一つとして、プロアントシアニジンを含有する。プロアントシアニジンは、フラバン−3−オールおよび/又はフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群である。
【0023】
松樹皮としては、採取した松樹皮の加工物を使用することができる。加工形態としては乾燥物、発酵物、粉砕物、搾汁物、抽出物などが挙げられる。抽出に用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサン等の有機溶媒、酢酸、クエン酸又はこれらの水溶液等の酸性水溶液、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。抽出溶媒の温度は、使用する溶媒に応じて室温〜沸点以下で適宜設定することができる。加工物の処理形態としては、(乾燥)粉末、細片化物、顆粒、ペースト、液等を挙げることができる。
本発明の松樹皮としては、粉砕物、水(温水、熱水)抽出物、エタノール抽出物、含水エタノール抽出物が好ましく、水(温水、熱水)抽出物、エタノール抽出物、含水エタノール抽出物がより好ましく、優れた糖取り込み作用が得られることから、含水エタノール抽出物が最も好ましい。また、松樹皮は、市販品を用いることができ、例えば、株式会社東洋新薬製の松樹皮の含水エタノール抽出物(フラバンジェノール(登録商標))を用いることができる。
【0024】
また、松樹皮は、プロアントシアニジンとして重合度が2以上の縮重合体が含有されていることが好ましい。特に、重合度が低い縮重合体が多く含まれるプロアントシアニジンが好ましい。重合度の低い縮重合体としては、例えば、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)であり、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)が好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)がさらに好ましい。本明細書では、重合度が2〜4の重合体を、OPC(oligomeric proanthocyanidin)という。本発明の組成物における松樹皮は、OPCを10質量%以上含有することが好ましく、20質量%以上含有することがより好ましく、30質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0025】
(大麦若葉)
大麦(Hordeum vulgare L.)は、中央アジア原産とされ、イネ科に属する一年生又は越年生草本であり、穂形により、二条大麦や六条大麦などに大別される。本発明においては、二条大麦や六条大麦などのいずれを用いてもよい。また、若葉と共に茎を含んでいてもよい。
【0026】
大麦若葉としては、採取した大麦若葉を加工した加工物を使用することができる。加工形態としては乾燥物、発酵物、粉砕物、搾汁物、抽出物などが挙げられる。粉砕方法としては、例えば、大麦の葉及び/又は茎を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、さらに微粉砕する方法(特開2003−033151号公報を参照)や、大麦の葉及び/又は茎をブランチングした後、乾燥し、その後、粉砕する方法(特開2002−065204号公報を参照)などが挙げられる。抽出に用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサン等の有機溶媒、酢酸、クエン酸又はこれらの水溶液等の酸性水溶液、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。抽出溶媒の温度は、使用する溶媒に応じて室温〜沸点以下で適宜設定することができる。加工物の処理形態としては、(乾燥)粉末、細片化物、顆粒、ペースト、液等を挙げることができる。
本発明の大麦若葉としては、粉砕物、搾汁物、水(温水、熱水)抽出物、エタノール抽出物、含水エタノール抽出物が好ましく、搾汁物、水(温水、熱水)抽出物、エタノール抽出物、含水エタノール抽出物がより好ましく、優れた糖取り込み作用が得られることから、搾汁物が最も好ましい。
【0027】
本発明の糖取り込み促進用組成物は、経口用又は非経口用として用いることができるが、経口用として用いることが好ましい。
【0028】
非経口組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤等が挙げられる。
【0029】
経口組成物としては、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品や、医薬品(医薬部外品を含む)が挙げられる。
【0030】
すなわち、本発明の糖取り込み促進用経口組成物(糖取り込み促進経口剤)は、葛花、トウガラシ、松樹皮、及び大麦若葉から選ばれる少なくとも1種の植物素材(本発明の成分)を含有し、糖取り込み促進に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかに、糖取り込み促進機能や糖質活用機能がある旨を表示したものが本発明の範囲に含まれる。また、この糖取り込み促進の直接的効果である血糖値低下機能がある旨を表示したものも本発明の範囲に含まれる。さらに、大麦若葉を含む組成物については、インスリンシグナル活性能がある旨を表示したものも本発明の範囲に含まれる。なお、本発明の糖取り込み促進用経口組成物は、製品の包装等に、本発明の成分が糖取り込み促進等の有効成分として表示されているものに限られない。例えば、有効成分を特定していないものであってもよく、特定の他の成分を有効成分として表示したものであってもよい。
【0031】
本発明の経口組成物の形態としては、例えば、錠状、カプセル状、粉末状、顆粒状、液状、粒状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、ペースト状、クリーム状、カプレット状、ゲル状、チュアブル状、スティック状等を挙げることができる。これらの中でも、錠状、カプセル状、粉末状、顆粒状、液状の形態が特に好ましい。具体的には、サプリメントや、ペットボトル、缶、瓶等に充填された容器詰飲料や、水(湯)、牛乳、果汁、青汁等に溶解して飲むためのインスタント飲料(粉末飲料)や、食品添加剤を例示することができる。これらは食事の際などに手軽に飲用しやすく、また嗜好性を高めることができるという点で好ましい。
【0032】
本発明の経口組成物における本発明の成分の含有量としては、その効果の奏する範囲で適宜含有させればよい。その形態にもよるが、例えば、本発明の成分が乾燥質量換算で本発明の組成物全体の0.01%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。本発明の効果をより有効に発揮させるためには、本発明の成分が乾燥質量換算で本発明の組成物全体の70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0033】
本発明の経口組成物の摂取量としては特に制限はないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、成人の1日当たり、本発明の成分の摂取量が乾燥質量換算で、10mg/日以上となるように摂取することが好ましく、50mg/日以上となるように摂取することがより好ましく、100mg/日以上となるように摂取することがさらに好ましい。その上限は、例えば、10,000mg/日であり、好ましくは5,000mg/日であり、より好ましくは3,000mg/日である。本発明の経口組成物は、1日の摂取量が前記摂取量となるように、1つの容器に、又は例えば2〜3の複数の容器に分けて、1日分として収容することができる。
【0034】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の成分以外の他の成分を添加して、公知の方法によって製造することができる。本発明の成分以外の他の成分としては、例えば、水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B12、B13、B15、B17、ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、PABA、ビタミンC、ビタミンP)、油溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)等のビタミン類;カルシウム、マグネシウム、リン、鉄等のミネラル類;タウリン、ニンニク等に含まれる含硫化合物;ヘスペリジン、ケルセチン等のフラバノイド或いはフラボノイド類;コラーゲン等のタンパク質;ペプチド;アミノ酸;動物性油脂;植物性油脂;動物・植物の粉砕物又は抽出物等を挙げることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づき、本発明を説明する。
[実施例1]
(原料)
葛花として、葛花(Pueraria thomsonii)を熱水抽出して乾燥した葛花熱水抽出末(株式会社東洋新薬製)を用いた。
トウガラシとして、伏見甘長の乳酸菌発酵末(株式会社東洋新薬製)を用いた。
松樹皮として、フランス海岸松樹皮の含水エタノール抽出末である「フラバンジェノール(登録商標)」(株式会社東洋新薬製)を用いた。
大麦若葉として、大麦若葉を搾汁して乾燥した大麦若葉搾汁末(株式会社東洋新薬製)を用いた。
【0036】
(被験物質の調製)
葛花熱水抽出末、伏見甘長の乳酸菌発酵末及び大麦若葉搾汁末について、次のように被験物質を調製した。
1)原料を超純水で60mg/mLに調製し、ロータリーミキサーで1時間攪拌した。
2)15,000rpmで5分遠心分離し、上清を使用した。
3)希釈バッファーで300倍希釈した(200μg/mL)。
【0037】
フランス海岸松樹皮の含水エタノール抽出末について、次のように被験物質を調製した。
1)原料をDMSOで60mg/mLに調製し、ロータリーミキサーで1時間攪拌した。
2)15,000rpmで5分遠心分離し、上清を使用した。
3)KRPHバッファーで300倍希釈した(200μg/mL)。
【0038】
なお、上記被験物質の調製において用いたKRPHバッファー、希釈バッファーは、以下の通りのものである。以降の操作においても、KRPHバッファー、希釈バッファーと称するものは、同じものである。
【0039】
〈KRPHバッファー〉
終濃度が1.2 mM KH2PO4、1.2 mM MgSO4・7H2O、1.3 mM CaCl2、118 mM NaCl、5 mM KCl、30 mM Hepes(pH7.5)になるように超純水で調製し、KRPHバッファーとした。
【0040】
〈希釈バッファー〉
DMSOをKRPHバッファーで300倍希釈し、希釈バッファーとした。
【0041】
(測定サンプルの調製)
1)37℃、5% CO2インキュベーター内で、75cm2フラスコを用いて、マウス筋芽細胞株(C2C12)を通常培地にて培養した。
2)トリプシン処理により浮遊させた細胞を、75cm2フラスコから96well plateの各wellに10,000cells/wellの細胞密度で播種した。
3)37℃、5% CO2インキュベーター内でコンフルエントになるまで前培養した。
4)分化誘導培地に置換し、37℃、5% CO2インキュベーター内で培養し、筋管細胞へと分化誘導した。
5)2%BSA-DMEMに置換し、さらに一晩37℃、5% CO2インキュベーター内で培養した。
6)KRPHバッファーで1回洗浄し、KRPHバッファーを100μL/wellで入れた。
7)終濃度の2倍濃度の被験物質(100μL/well)を添加し、37℃、5% CO2インキュベーター内で3時間培養した。なお、被験物質に代えて希釈バッファーを添加したものをコントロールとした。
【0042】
8)あらかじめ37℃で温めておいたKRPHバッファーで3回洗浄した。
9)1mM 2DG-KRPHを加え、37℃、5% CO2インキュベーター内で30分培養した。
10)氷冷PBSで素早く3回洗浄し、細胞破壊(溶解)のため0.1N NaOHを25μL/wellで添加し、−80℃フリーザーで凍結させ、さらに細胞を破壊した。
11)融解した後、0.1N HClを25μL/wellで添加(中和)した。
12)85℃で45分加温した。
13)室温に冷やし、3×バッファーを25μL/wellで添加し、測定サンプルとした。
【0043】
なお、上記測定サンプルの調製において用いた通常培地、分化誘導培地、3×バッファーは、以下の通りのものである。なお、以降の操作においても、通常培地、分化誘導培地、3×バッファーと称するものは、同じものである。
【0044】
〈通常培地〉
p/s(ペニシリン/ストレプトマイシン)を1%添加したDMEMに、10% FBSとなるように調製し、通常培地とした。
【0045】
〈分化誘導培地〉
p/sを1%添加したDMEMに、2% ウマ血清(HS)、0.1μg/mL Insulinとなるように調製し、分化誘導培地とした。
【0046】
〈3×バッファー〉
終濃度が150mM 2,2',2''-Nitrilotriethanol (TEA) (pH8.1)、150mM KCl、1.5mM MgCl2、0.06% BSA、0.36μM NADP+、8.0mM ATPになるように超純水で調製し、3×バッファーとした。
【0047】
(糖取り込み測定)
糖取り込み測定キット(コスモ・バイオ株式会社製)を用いて糖取り込み量を測定した。
1)検量線又は測定サンプル25μLを96wellブラックプレートに移した。
2)糖取り込み測定液を調製し、50μL/wellで添加した。
3)添加後、遮光して37℃で3時間インキュベーションした。
4)蛍光(励起波長:540nm/蛍光波長:590nm)を測定した。
5)検量線を作成し、取り込まれた2DG(2-Deoxy-D-glucose)濃度を算出した。
【0048】
(タンパク質定量)
BCAタンパク質測定キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いてタンパク質量を測定した。
1)検量線又はサンプルを5μL、発色試薬を100μL添加した。
2)37℃で1時間インキュベート後、562nmの波長を測定した。
【0049】
(結果の算出)
1)2DG濃度/タンパク質量を算出し、比較した。
【0050】
(結果)
結果を図1に示す。図1に示すように、葛花熱水抽出末、伏見甘長の乳酸菌発酵末、松樹皮の含水エタノール抽出末及び大麦若葉搾汁末を添加することにより、コントロールと比較して筋管細胞へと分化誘導したC2C12への糖取り込み量が増加することが明らかとなった。
【0051】
[実施例2]
(原料)
大麦若葉として、大麦若葉を搾汁して乾燥した大麦若葉搾汁末(株式会社東洋新薬製)を用いた。
【0052】
(被験物質の調製)
1)大麦若葉搾汁末を超純水で60mg/mLに調製し、ロータリーミキサーで1時間攪拌した。
2)15,000rpmで5分遠心分離し、上清を使用した。
3)上清を用いて、次の被験物質溶液を調製した。大麦若葉搾汁末100μg/mL、大麦若葉搾汁末100μg/mL+Compound C 12.5μM、大麦若葉搾汁末100μg/mL+Wortmannin 10μM。各被験物質の溶媒の組成は、0.1% DMSO/2% BSA-KRPHバッファーとした。
【0053】
(測定サンプルの調製)
1)37℃、5% CO2インキュベーター内で、75cm2フラスコを用いて、マウス筋芽細胞株(C2C12)を通常培地にて培養した。
2)トリプシン処理により浮遊させた細胞を、75cm2フラスコから96well plateの各wellに10,000cells/wellの細胞密度で播種した。
3)37℃、5% CO2インキュベーター内でコンフルエントになるまで前培養した。
4)分化誘導培地に置換し、37℃、5% CO2インキュベーター内で培養し、筋管細胞へと分化誘導した。
5)1mM AICAR-2% BSA-DMEMに置換し、さらに一晩37℃、5% CO2インキュベーター内で培養した。
6)DMEMで3回洗浄した(100μL/well)。
7)2% BSA-DMEMに置換し、37℃、5% CO2インキュベーター内で1時間培養した。
8)KRPHバッファーで3回洗浄した。
9)被験物質(100μL/well)を添加し、37℃、5% CO2インキュベーター内で3時間培養した。なお、被験物質を添加しないものをコントロール(0.1% DMSO/2% BSA-KRPH)とした。
【0054】
10)あらかじめ37℃で温めておいたKRPHバッファーで3回洗浄した。
11)1mM 2DG-KRPHを加え、37℃、5% CO2インキュベーター内で30分培養した。
12)氷冷PBSで素早く3回洗浄し、細胞破壊(溶解)のため0.1N NaOHを25μL/wellで添加し、−80℃フリーザーで凍結させ、さらに細胞を破壊した。
13)融解した後、0.1N HClを25μL/wellで添加(中和)した。
14)85℃で45分加温した。
15)室温に冷やし、3×バッファーを25μL/wellで添加し、測定サンプルとした。
【0055】
(糖取り込み測定及びタンパク質定量)
実施例1と同様に、糖取り込み測定及びタンパク質定量を行った。
【0056】
(結果の算出)
1)2DG濃度/タンパク質量を算出し、比較した。
【0057】
(結果)
結果を図2に示す。図2に示すように、コントロールと比較して、大麦若葉搾汁末添加群は筋管細胞へと分化誘導したC2C12への糖取り込み量が増加した。また、大麦若葉搾汁末添加群に対して大麦若葉搾汁末及びCompound Cを添加した群では糖取り込み量の減少は認められなかったが、大麦若葉搾汁末及びWortmanninを添加した群では糖取り込み量が減少した。
筋肉細胞へ糖の取り込みの経路としては、インスリンを介した経路とAMPKを介した経路があるところ、インスリンシグナルの下流のPI3Kの阻害剤であるWortmanninの添加によって糖の取り込みが阻害され、AMPKの阻害剤であるCompound Cの添加によっては阻害されなかったことから、大麦若葉の糖の取り込み促進作用は、インスリンシグナルの活性化を介していると考えられる。
【0058】
[実施例3]
(原料)
実施例2と同様に、大麦若葉を搾汁して乾燥した大麦若葉搾汁末を原料とした。
(被験物質の調製)
1)実施例2と同様に処理し、上清を用いて、次の被験物質溶液を調製した。大麦若葉搾汁末100μg/mL、大麦若葉搾汁末100μg/mL+Wortmannin 10μM。各被験物質の溶媒の組成は、0.1% DMSO/2% BSA-KRPHバッファーとした。
【0059】
(測定サンプルの調製)
1)37℃、5% CO2インキュベーター内で、75cm2フラスコを用いて、マウス筋芽細胞株(C2C12)を通常培地にて培養した。
2)24well plateコラーゲン溶液(株式会社東洋紡製)を300μL/wellで入れ、1時間コーティングした。
3)コラーゲン溶液を回収後、PBSで2回洗浄した。
4)トリプシン処理により浮遊させた細胞を、75cm2フラスコから3)の24well plateの各wellに60,000cells/wellの細胞密度で播種した。
5)37℃、5% CO2インキュベーター内でコンフルエントになるまで前培養した。
6)分化誘導培地に置換し、37℃、5% CO2インキュベーター内で培養し、筋管細胞へと分化誘導した。
【0060】
7)1mM AICAR含有分化誘導培地に置換し、37℃、5% CO2インキュベーター内で24時間培養した。
8)DMEMで3回洗浄した。
9)2% BSA-DMEMに置換し、37℃、5% CO2インキュベーター内で3時間培養した。
10)培地を抜いて被験物質(100μL/well)を添加し、37℃、5% CO2インキュベーター内で30分培養した。なお、被験物質を添加しないものをコントロール(0.1% DMSO/2% BSA-DMEM)とした。
【0061】
11)氷冷PBSで1回洗浄し、細胞溶解液を50μL添加した。
12)細胞をより破壊するために、−80℃フリーザーで凍結させた。
13)室温で速やかに溶解させ、氷上においた。
14)先を曲げたチップで細胞をこそぎ落とし、1.5mLチューブに移して再び−80℃フリーザーで凍結させて、細胞をさらに破壊した。
15)室温で速やかに溶解させ、4℃、15,000rpmで10分間遠心した。
16)上清を新しい1.5mLチューブに回収した。上清を測定サンプルとして用いた。
【0062】
なお、上記被験物質の調製において用いた細胞溶解液は、以下の通りのものである。
【0063】
〈細胞溶解液〉
RIPAバッファー(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)で100×プロテアーゼインヒビターと100×ホスファターゼインヒビターを100倍希釈したものを細胞溶解液とした。
【0064】
(タンパク質定量)
実施例1と同様に、測定サンプル中のタンパク質定量を行った。
【0065】
(ウェスタンブロッティング)
1)測定サンプルのタンパク質量が5μg/wellになるように調製した。
2)調製したサンプル希釈液を、10% ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にかけた。
3)電気泳動後のタンパク質を、PVDF膜に転写した。
4)5% BSA-TBSTでブロッキングしたメンブレンに一次抗体としてウサギ抗p-Akt(Thr308)抗体又はウサギ抗Akt抗体(Cell Signaling Technology社製)を用い、二次抗体として、HRP-抗ウサギIgG抗体(Cell Signaling Technology社製)を用いてp-Akt又はAkt発現量を測定した。定量は、Chemi Doc XRS+システム(バイオ・ラッド社製)を用いて行った。
5)シグナルの濃淡を数値化し、p-Akt/Aktを算出し、コントロールを1として比較した。
【0066】
(結果)
p-Akt発現量の結果を図3に示す。図3に示すように、大麦若葉搾汁末添加群のp-Akt発現量は増加し、Wortmanninの添加で発現量が減少した。すなわち、大麦若葉搾汁末の添加によってp-Akt発現量が増加し、Wortmanninの添加によってこの増加が減少したことから、大麦若葉の糖の取り込み促進作用は、インスリンシグナルの活性化によるものであり、その作用点はPI3Kの上流であることが示唆された。
【0067】
以上の結果より、葛花、トウガラシ、松樹皮、及び大麦若葉のいずれかを用いることにより、筋芽細胞への糖取り込み量が増加することがわかった。特に、本発明の大麦若葉を含む糖取り込み促進用組成物は、インスリンシグナルを活性化させることにより、筋肉細胞への糖取り込みを促進することができることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の糖取り込み促進用組成物は、いわゆる健康食品等として用いることができることから、産業上有用である。
図1
図2
図3