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特開2020-116368アブレーションされた組織を視覚化するシステムと方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-116368(P2020-116368A)
(43)【公開日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】アブレーションされた組織を視覚化するシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20200710BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20200710BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20200710BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20200710BHJP
   A61B 1/01 20060101ALI20200710BHJP
【FI】
   A61B18/12
   A61B18/14
   A61M25/10 510
   A61B1/00 511
   A61B1/01 513
   A61B1/00 620
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-132842(P2019-132842)
(22)【出願日】2019年7月18日
(62)【分割の表示】特願2016-37741(P2016-37741)の分割
【原出願日】2012年9月22日
(31)【優先権主張番号】61/537,798
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/624,899
(32)【優先日】2012年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/624,902
(32)【優先日】2012年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】592005010
【氏名又は名称】ザ・ジョージ・ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】THE GEORGE WASHINGTONUNIVERSITY
(71)【出願人】
【識別番号】519262397
【氏名又は名称】460メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】460Medical, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】オマール・アミラナ
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・シー・アームストロング
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ダブリュー・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・エイ・マーキャダー
(72)【発明者】
【氏名】テランス・ジェイ・ランズベリー
(72)【発明者】
【氏名】ナリン・サーバジャン
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK07
4C160KK13
4C160KK23
4C160KK30
4C160KK36
4C160KK62
4C160KK63
4C160MM33
4C160NN01
4C161BB08
4C161FF35
4C161FF36
4C161QQ04
4C161WW04
4C161WW17
4C267AA09
4C267BB02
4C267BB26
4C267BB27
4C267CC19
4C267EE11
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG16
4C267GG21
4C267GG22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アブレーションされた組織を視覚化するシステムを提供する。
【解決手段】組織を撮影するシステムは末端部と基端部を有するカテーテル1601、カテーテルの末端部付近に配置された膨張可能なバルーン1603、カテーテル1601の末端部からバルーン1603に伸びる光学ハウジングを有する。光学ハウジングは、バルーン1603の内部に、バルーン1603の外側の組織を照明する光源と照明された組織を撮影するカメラを配置するように構成されている。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を撮影するシステムであって、
末端部と基端部を有するカテーテルと、
前記カテーテルの前記末端部の近くに配置された膨張可能なバルーンと、
前記カテーテルの前記末端部から前記バルーンの中に伸びる光学ハウジングとを有し、
前記光学ハウジングは、前記バルーンの中に、前記バルーンの外側の組織を照明する光源と前記照明された組織を撮影するカメラとを配置するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記システムはアブレーション部材を備えており、
前記アブレーション部材は、無線周波数エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、及び熱エネルギーからなる群から選択されたエネルギー源を備えている、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記光源が紫外線の発光ダイオード(LED)である、請求項1のシステム。
【請求項4】
前記カメラが、光学画像を電子信号に変換する撮像センサを含む、請求項1のシステム。
【請求項5】
前記システムがロボット制御される、請求項1のシステム。
【請求項6】
前記光学ハウジングは、前記光学ハウジングの外面と前記カテーテルの内壁との間に隙間を形成する大きさとしてある、請求項1のシステム。
【請求項7】
前記隙間は、前記バルーンを操作するために、前記カテーテルと前記バルーンに流体接続されている、請求項6のシステム。
【請求項8】
前記バルーンに対して前記光学ハウジングが回転する、請求項1のシステム。
【請求項9】
前記バルーンを支持するための構造を提供するために、前記カテーテルの前記末端部を越えて伸びる支持チューブを有する、請求項1のシステム。
【請求項10】
前記支持チューブの末端部近傍に先端を備えており、前記先端はアブレーション部材として機能するように構成されている、請求項9のシステム。
【請求項11】
前記アブレーション部材を前記バルーンの末端側に向けて移動させるために、前記支持チューブは前記カテーテルの内腔に連通する内側ルーメンを有する、請求項9のシステム。
【請求項12】
前記カテーテルは、前記組織に血管を通じて近づくように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項13】
前記カテーテルは、前記組織に向けて、切開部から導入されるか、経皮的に導入されるように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項14】
前記光源は、組織中の天然還元型ニコチンアミド・アデニン・ヌクレオチド(ADH)を励起するように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項15】
第1の光源と、前記第1の光源とは異なる波長の光を発生することができる第2の光源を有する、請求項1のシステム。
【請求項16】
検出されたNADH蛍光に基づいて、照明された組織の画像を作成するために、前記カメラに接続されたディスプレイ装置を有する、請求項1のシステム。
【請求項17】
前記カメラと前記ディスプレイ装置は無線接続されている、請求項14のシステム。
【請求項18】
前記システムは、難治性不整脈、上室性不整脈、心室性不整脈、心房細動、肺静脈マッピング及びアブレーションの診断及び治療中に心臓内で使用される、請求項1のシステム。
【請求項19】
組織を撮影するシステムであって、
末端部と基端部とを有するカテーテルと、
前記カテーテルの前記末端部の近くに配置された膨張可能なバルーンと、
前記カテーテルの前記末端部から前記バルーンに伸びる光学ハウジングと、
前記バルーン内の光源であって、前記光学ハウジングに支持されており、組織内でNADHを励起するように構成されている光源と、
前記バルーン内のカメラであって、前記光学ハウジングに支持されており、前記光源によって照明された前記組織を撮影するように構成されている、システム。
【請求項20】
前記光学ハウジングは、前記バルーンに対して、前記カメラと前記光源を回転するように構成されている、請求項19のシステム。
【請求項21】
前記カメラは、前記光源で照明された前記組織のNADH蛍光を検出するように構成されている、請求項19のシステム。
【請求項22】
白色光を提供するための第2の光源を備えている、請求項19のシステム。
【請求項23】
組織を撮影するシステムであって、
末端部と基端部を有するカテーテルと、
前記カテーテルの末端近傍で血液を流体に置き換えるためのかん流ポートと、
前記カテーテルの前記末端部から伸びる光学ハウジングとを有し、
前記光学ハウジングは、組織を照明するための発光ダイオード光源と、前記照明された組織を撮影するために、光学画像を電子信号に変換する複数の撮像センサを含む視覚化装置とを支持するように構成されている、システム。
【請求項24】
組織を撮影するシステムであって、
血液を移動させるために液体を注入するとともに光を送るためのシースと、
末端部と基端部とを有し、前記シース内に配置されるカテーテルと、
前記カテーテルの前記末端部から伸びる光学ハウジングとを有し、
前記光学ハウジングは、前記組織を照明するための発光ダイオード光源と、前記照明された組織を撮影するために、光学画像を電子信号に変換する複数の撮像センサを含む視覚化装置とを支持するように構成されている、システム。
【請求項25】
組織を撮影する方法であって、
組織に向けてカテーテルを前進させる工程であって、前記カテーテルは、前記カテーテルの末端近傍に配置された膨張可能なバルーンと、前記カテーテルの前記末端部から前記バルーン内に伸びて光源とカメラを前記バルーン内に配置する光学ハウジングとを備えているものと、
前記組織をアブレーションする工程と、
アブレーションによって治療された組織と周辺組織を含む組織領域を前記光源で照明して前記組織領域でNADHを励起する工程と、
前記組織領域を撮影装置で撮影して前記組織領域のNADH蛍光を検出する工程と、
照明され撮影された組織の表示を作る工程であって、前記表示は、アブレーションされた組織をアブレーションされていない組織よりも弱い蛍光をもって表す、方法。
【請求項26】
前記組織が心臓筋肉組織である、請求項25の方法。
【請求項27】
前記暗い外観を有するアブレーションされた組織と明るい外観を有する損傷した組織との間を区別する工程を有する、請求項25の方法。
【請求項28】
蛍光量に基づいて前記アブレーションされた組織と前記損傷した組織との間を区別することで識別された損傷組織をアブレーションする工程を有する、請求項25の方法。
【請求項29】
もはや電気的に導電性でない組織と電気的に導電性を留めている組織との間を区別する工程を有する、請求項25の方法。
【請求項30】
アブレーションされた組織、浮腫組織、アブレーションされていない組織を区別する工程を有する、請求項25の方法。
【請求項31】
MRI画像、CT(断層撮影)画像、超音波画像、及び三次元再生画像などの撮影画像を使って、前記システムによって作成された前記画像を患者の生体構造上に重ね合わる、請求項25の方法。
【請求項32】
電子解剖学的マッピング、生体構造再生、及びナビゲーションシステムを使って、前記システムで作成された画像を、前記患者の生体構造に重ねる、請求項25の方法。
【請求項33】
前記手術中に前記重ね合わせを行う、請求項31の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本件出願は、2012年9月22日に出願された米国特許出願の優先権の利益主張するものである。前記米国特許出願は、2012年9月22日に出願された米国特許出願No.13/624,899号の一部継続出願で、2011年9月22日に出願された米国仮出願No.61/537,798号の優先権の利益を主張するものである。そして、以上の出願のすべての内容が本件特許出願に引用によって組み込まれている。
【政府支援の表示】
【0002】
本件特許出願は、米国国立衛生研究所によって与えられた許諾/契約No.R01HL095828に基づく政府の支援を受けたものである。米国政府は、本件発明について所定の権利を保有する。
【技術分野】
【0003】
本件特許出願に開示された実施例は、組織のアブレーション(切除)と視覚化のための方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
実施例は、心房細動(不整脈の一種)AFの治療中に使用される技術に関する。心房細動は、現在200万人もの人が患っている、最も一般的な持続性不整脈である。心房細動は、増大する死亡率、疾病率、生活の質の悪化に関連しており、独立した脳卒中の危険因子である。進展する心房細動の大きな生涯リスクは病気の健康保険負担を増加するもので、米国だけでも年間治療費は70億ドル以上に達している。
【0005】
心房細動を患った患者の85%の発作は肺静脈(PV)に伸びる筋肉スリーブ内部から生じる局所的な電気的活動によって引き起こされる、ことが知られている。心房細動はまた、上大静脈又はその他の心房構造内での局所的活動によって引き起こされる。これらの局部的な要因は、リエントリー性電気的活動とロータによってもたらされる心房性頻脈を招き、心房細動の特性を示す多くの電気的小波に分散する。長期の心房細動は、膜イオンチャンネルにおける機能的変化及びイオンチャンネル式における変化を生じる。これらの変化は、心房細動を持続させる。
【0006】
無線周波数(RF)アブレーションは、心房及び心室のリズムの乱れを直すための効果的な治療である。米国では年間にほぼ100,000回ものRFアブレーション手術が、不整脈を治療するために行われている。RFアブレーションは、隣接する健康な心筋及び冠状血管の多くを損傷することなく、リエントラント経路及び/又は異常異所性座の主要素を治療するものである。アブレーションはまた、冷凍アブレーション及びレーザガイドアブレーションシステムでも行われる。
【0007】
RFアブレーション手術を行うために、カテーテルが心臓に挿入され、その先端が心房に案内される。経中隔穿刺がなされ、右心房から左心房に回り、そこでアブレーションが行われる。次に、カテーテルは高エネルギーRF電気パルスを発し、これが心房組織を損傷し、異常信号を遮る傷跡組織を形成する。心房細動の最も一般的なRFアブレーション治療は、各肺静脈の口の周囲に円形にアブレーション損傷を生じる。この損傷は、電気的に肺静脈を孤立させて局所的な変化が左心室に及ぶのを防止する。RF損傷はまた、最小侵襲性又は心臓切開手術中に心外膜になされる。
【0008】
RFアブレーション傷は、単なるRFエネルギーが伝わったことによるものでなく、多くの要因(カテーテルチップと組織との間の接触、心筋の厚さ、血流の程度、脂肪の存在)に依存する。現在、生体構造を確定するために、3Dマッピングシステム(CARTO、NAVEX)として知られている代用品を使用している。その代用比因は、1又は2cmだけずれている。現在の電子解剖マッピングシステムは、カテーテル先端の物理的位置を主にマッピングするが、アブレーションによって生じた細胞の傷まではマッピングできない。したがって、今日まで、RFアブレーション傷は、影響を受けた組織の生理学的状態に関するいかなる情報もなく生成されていた。アブレーション傷間の興奮性組織の隙間が直接不整脈の再発に直接関係していることを考えれば問題であった。アブレーションによって生じた組織傷をリアルタイムに監視することは、現在のアブレーション法を大きく制限するものである。
【0009】
不完全傷の問題を解消するため、2つの主要な方法が提案されている。最初の方法は、アブレーション装置を改善することで、それには多極線形カテーテル、レーザを使ったバルーン技術、高密度焦点式超音波、及び圧力センサ付RFカテーテルの開発が含まれる。
【0010】
第2の方法は、アブレーション手術中にRFアブレーション傷を視覚化することである。そのような視覚化は、損傷した組織の化学的及び/又は物理的特性の急激な変化を利用するものである。具体的に、現在視覚化するために提案されているものは染料を使用する必要があり、磁気共鳴映像法(MRI)、断層映像法(CT)、及び分光法を含む。
【0011】
これらの全ての方法は、隙間の領域を予想するために代用品を使用するもので、いずれもリアルタイムに直接視覚化する技術を備えていない。現在のすべての技術を用いても、最初の手術後に肺静脈再発が94%の患者に発生している。アブレーション手術後の心房細動は、隙間部位における肺静脈再結合によって、常に80〜90%の割合で発生している。
【発明の概要】
【0012】
損傷した組織を視覚化するためのシステムと方法をここに開示する。
【0013】
ここで説明する幾つかの形態によれば、組織を撮影するシステムが提供されており、該システムは、末端部と基端部を有するカテーテルと、カテーテルの末端部近傍に配置された膨張可能なバルーンと、カテーテルの末端部からバルーンに伸びる光学ハウジングとを有し、光学ハウジングは、バルーンの内部に、バルーン外側の組織を照明する光源と、照明組織を撮影するカメラを配置するように構成されている。
【0014】
ここで説明する幾つかの形態によれば、組織を撮影するシステムが提供されており、該システムは、末端部と基端部を有するカテーテルと、カテーテルの末端部近傍に配置された膨張可能なバルーンと、カテーテルの末端部からバルーン内に伸びる光学ハウジングと、バルーン内の光源と、バルーン内のカメラとを有し、光源は光学ハウジングに支持されて、組織内の天然還元型ニコチンアミド・アデニン・ヌクレオチド(ADH)又は還元型ンアミド・アデニン・ヌクレオチド(NADH)を励起するように構成されており、カメラは光学ハウジングに支持されており、光源によって照明された組織を撮影するように構成されている。
【0015】
ここで説明する幾つかの形態によれば、組織を撮影するシステムが提供されており、該システムは、末端部と基端部とを有するカテーテルと、カテーテルの末端部近傍で血液を流体に置き換えるかん流ポートと、カテーテルの末端部から伸びる光学ハウジングとを有し、光学ハウジングは、組織を照明する発光ダイオード光源と、照明された組織を撮影するために光学画像を電子信号に変換する複数の撮像センサを含む視覚化装置を支持する。
【0016】
ここで説明する幾つかの形態によれば、組織を撮影するシステムが提供されており、該システムは、血液を動かして光を送ることができる流体を注入するシースと、シース内に配置されたカテーテルと、末端部と基端部とを有するカテーテルと、カテーテルの末端部から伸びる光学ハウジングとを有し、光学ハウジングは、組織を照明する発光ダイオード光源と照明された組織を撮影するために光学画像を電子信号に変換する複数の撮像センサを支持するように構成されている。
【0017】
ここで説明する幾つかの形態によれば、組織を撮影する方法が提供されており、該方法は、カテーテルの末端部近傍に配置された膨張可能なバルーンと前記カテーテルの末端からバルーン内に伸びて光源とカメラをバルーン内に位置させる光学ハウジングとを有するカテーテルを組織に向けて前進させる工程と、組織をアブレーションする工程と、光源を用いて、アブレーションによって治療された組織と周辺組織を含む組織領域を照明し、該組織領域のNADHを励起する工程と、撮像装置を用いて、前記組織領域のNADH蛍光を検出して該組織領域を撮影する工程と、照明されて撮影された組織の表示を作成する工程を含み、アブレーションされた組織を示す表示は、アブレーションされていない組織よりも弱い蛍光を有するものとして表す。
【0018】
ここで開示する実施例はまた、添付図面を参照して説明する。複数の図において、同一の構成は同一の符号を付す。図面は必ずしも実際の大きさを表すものでなく、開示した実施例の原理を示すために誇張して示されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1Aは、本発明の開示に係る例示的なシステムのブロック図である。
【0020】
図1B図1Bは、本開示に係る例示的なシステムに使用されるカテーテルの実施例を示す。
【0021】
図1C図1Cは、本開示に係る例示的なシステムに使用されるカテーテルの実施例の先端を示す。
【0022】
図1D図1Dは、本開示に係る例示的なシステムに使用されるカテーテルの実施例の基端を示す。
【0023】
図2A図2Aは、本開示に係る例示的なシステムのブロック図である。
【0024】
図2B図2Bは、図2Aに示す例示的なシステムに関連して使用されるフィルタボックスの実施例を示す。
【0025】
図3図3は、本開示に係る例示的な方法のフロー図である。
【0026】
図4A図4Aは、心外膜面上に傷を付けるために所定場所にあるRFアブレーションプローブを示す。
【0027】
図4B図4Bは、血液のないラットの心臓で行われた標準RFアブレーションプロトコル後の典型的傷の外観を示す。
【0028】
図4C】fNADH映像によって明らかにされた、血液のない心臓における2つの明確なRFアブレーション傷の外観を示す。
【0029】
図4D】生体染色組織でTTC染色した後の同じ2つのRFアブレーション傷の外観を示す(白色細胞−壊死、赤−生存)。
【0030】
図4E図4Eは、TTC染色された心臓をスライスしたもので、二つの異なるパワー設定で用いて反対側の心外膜面上に儲けた2つの傷の深さを示す。
【0031】
図5A図5Aは、fNADH感受性チャンネル上で見た、時間と共に傷が安定する状態を示す。
【0032】
図5B図5Bは、延命手術から2ヶ月のちの、ラットの切除心臓の心外膜上の無線周波数アブレーション傷の、fNADH感受性チャンネル上で見た画像を示す。
【0033】
図6A図6Aは、fNADH感受性チャンネル上で見たRF傷の大きさとTTC染色後のそれとを比較を示す。
図6B図6Bは、fNADH感受性チャンネル上で見たRF傷の大きさとTTC染色後のそれとを比較を示す。
図6C図6Cは、fNADH感受性チャンネル上で見たRF傷の大きさとTTC染色後のそれとを比較を示す。
【0034】
図7A図7Aは、電圧感受性染料とfNADHを用いた、心外膜のデュアル画像からのデータに基づいて2つのRF傷の間のリエントリーの発生を示す。リエントリーの形成は、2つのRF間の狭部を伝播する電気波形として起こる。
図7B図7Bは、電圧感受性染料とfNADHを用いた、心外膜のデュアル画像からのデータに基づいて2つのRF傷の間のリエントリーの発生を示す。
図7C図7Cは、電圧感受性染料とfNADHを用いた、心外膜のデュアル画像からのデータに基づいて2つのRF傷の間のリエントリーの発生を示す。
【0035】
図8A図8Aは、fNADHと、2つのRF傷の間の狭部を横断する電気的活動を説明する図である。
図8B図8Bは、fNADHと、2つのRF傷の間の狭部を横断する電気的活動を説明する図である。
図8C図8Cは、fNADHと、2つのRF傷の間の狭部を横断する電気的活動を説明する図である。
図8D図8Dは、fNADHと、2つのRF傷の間の狭部を横断する電気的活動を説明する図である。
【0036】
図9A図9Aは、アブレーション領域内のRH237リテンションを示す。
図9B図9Bは、アブレーション領域内のRH237リテンションを示す。
図9C図9Cは、アブレーション領域内のRH237リテンションを示す。
図9D図9Dは、アブレーション領域内のRH237リテンションを示す。
【0037】
図10A図10Aは、NADHに比較して、RFアブレーション手術後のRF237リテンションを示す。
図10B図10Cは、ラットの心臓で行ったRFアブレーションを示す。
図10C図10Cは、ラットの心臓で行ったRFアブレーションを示す。
図10D図10Dは、うさぎの心臓で行ったRFアブレーションを示す。
【0038】
図11A図11Aは、血液環流された開胸動物におけるRFアブレーション傷を可視化した図である。
図11B図11Bは、血液環流された開胸動物におけるRFアブレーション傷を可視化した図である。
図11C図11Cは、血液環流された開胸動物におけるRFアブレーション傷を可視化した図である。
図11D図11Dでは、アブレーション傷は、蛍光体の欠乏によって識別されており、組織(図面の中央部)が暗く表れており、虚血性又は損傷組織はハロー型外観をもって明るくなっている。
【0039】
図12図12は、肺静脈近傍の血液かん流されたイヌの左心房組織上の心臓内面上のアブレーション傷の画像である。
【0040】
図13図13は、冷凍アブレーション後の、血液のないラット心臓の心外膜面のアブレーション傷の画像である。
【0041】
図14図14は、無線周波数アブレーションを用いて激しくアブレーションされたねずみの血液かん流肝臓におけるfNADHを示す。
【0042】
図15図15は、標準カテーテルの右側の2D画像と、3Dマッピングシステムに統合された3Dの再構成である。コンピュータシステムとプログラムが、NADH蛍光の2D画像を3D画像(表示されているように、心房組織上に重ねられたもの)に変換するために使用される。
【0043】
図16図16は、本開示のバルーンカテーテルアセンブリの実施例の図である。
【0044】
図17図17は、バルーンを省略した、本発明の開示のバルーンカテーテルアセンブリの実施例の図である。
【0045】
図18図18は、本発明の実施例に係るカテーテルに挿入された実施例の光学ハウジングの図である。
【0046】
図19図19は、本開示の光学ハウジングの非限定的実施例を示す。
図20図20は、本開示の光学ハウジングの非限定的実施例を示す。
図21図21は、本開示の光学ハウジングの非限定的実施例を示す。
【0047】
上記図面はここに開示された実施例を記載したものであるが、以下に説明するように、その他の実施例も考えられる。本開示は、代表的であるが限定的でない実施例を示す。数多くの変形例及び実施例が当業者によって考案され、それらは実施例に開示された原理の範囲及び精神の範囲に属するものである。
【発明の詳細な説明】
【0048】
本開示の例示的実施例は、アブレーション手術中にRFアブレーション傷を視覚化するシステムと方法に関する。心房細動(AF)を治療するシステムと方法が提供される。
【0049】
心房細動(AF)を治療するシステム、カテーテル、方法が提供される。UV照明源とUVファイバを備えたバルーン案内式カテーテル、蛍光カメラ又は撮像バンドル、及びNADH蛍光を検出するための光学式バンドパスフィルタを用いて、切除された領域と切除されていない領域を特定するために、心臓組織における内因的NADH(fNADH)の蛍光が画像化される。fNADH撮像を用いて切除された領域の間の隙間が特定されるとともに、その隙間が切除される。アブレーション手術中に撮像が行われる。そのアブレーション(切除)手術は、造影剤、トレーサ、又は染料などの化学物質を必要としない。
【0050】
幾つかの実施例では、紫外線を用いて組織が照明するために本開示のシステムが利用される。また、切除領域と非切除領域を識別するために、内因性NADH(fNADH)の蛍光が撮像される。紫外線と組織のfNADHの撮像が、例えば、カテーテルの先端に配置されたデュアル式UV励起/発信型光ファイバ導波管を使って行われる。本開示の方法とシステムは、追加の染料や染色剤を必要としない。また、本開示の方法とシステムは、最初の手術が終わった後に追加の侵襲的アブレーション手術を必要としないように、アブレーション中に撮像が行われる。本開示の方法とシステムを使用ことにより、完全にアブレーションされた場所では完全に暗い領域が得られ、これにより、健康な組織に対する好対照を提供することによってアブレーションされた領域を検出する能力が高まるし、アブレーションされた組織と健康な組織との間の境界領域に更なるコントラストを提供する。この境界領域が浮腫性及び虚血性の組織で、そこでは撮像時にNADH蛍光が明白色になる。境界領域は、切除された中央組織の周囲にハロー(halo)現象となって現れる。
【0051】
本開示の例示的実施例によれば、切除された組織と該切除された組織の周囲の組織が、低強度紫外線光の照明を利用した内因性NADH(fNADH)の蛍光を用いて撮像される。NADHはコエンザイムであって、無傷細胞内に存在し、特に心臓筋肉細胞内に豊富である。NADHは一旦損傷細胞のミトコンドリアから解放されると、及び/又は、酸化NAD+形式に変わると、心筋細胞fNADHが著しく減少する。これにより、アブレーションに由来する筋肉の損傷が隙間を目立たせ、不完全な心外膜の傷を示す。
【0052】
現在、アブレーションは、アブレーションされた組織の生理学的機能に関する有意なリアルタイム情報もなく、行われている。焦点源の電気的分離がアブレーション効率の唯一の指標である。この方法には主に2つの課題がある。第1の課題は、手術中に傷の大きさが測れない、ということである。第2の課題は、電気的分離の原因が判断できない、ということである。例えば、電気的分離は心臓筋肉の損傷から生じるが、それはまた可逆的に損傷した細胞における機能的変化及び一時的な浮腫によって生じる。浮腫の場合、数週間後に治まり、潜在的に異常電気電導を修復する。本開示のfNADH撮像は、造影剤、トレーサ、染料を使用することなく、不可逆的心筋損傷を明らかにする。fNADH撮像を通じて検査された傷は、RFエネルギーの伝播直後に見られ、それらは数時間安定している。したがって、可視化は、アブレーションに調和して行われ、又は、複数の傷が形成された後に行われる。
【0053】
本発明の開示で使用される虚血性損傷中におけるNADH蛍光の増加と以下の理由による熱損傷に基づく増加は矛盾するものではない。心筋細胞の約30パーセントはミトコンドリアからなり、それは大量のNADHを含む。したがって、筋細胞からfNADHのレベルの変化は、比較的容易に測定できる。筋線維鞘及びミトコンドリア膜が熱で破壊されると、NADHが失われ、fNADHのレベルが急激に低下する。低酸素症及び/又は虚血症の間、細胞の完全性は保存されるが、有効酸素が減少する。酸素は、ミトコンドリア電子鎖の中で電子受容体として機能し、その低下はNADHの蓄積に繋がる。したがって、虚血症は、時間に依存する形で、fNADHの増加を招来する。例えば、アブレーション中に冠かん流が一時的に中断すると、高fNADHレベルを有する虚血性又は損傷組織が、アブレーション後に暗い環状のfNADH傷の近くに観察される。この状態は図4Cから明らかである。
【0054】
内因性fNADHの監視は、追加のトレーサ又は造影剤なしで行える。蛍光の変化は急激な生化学的変化を反映しているので、ほぼ即座に傷を観察できる。熱に起因する生物物理学的変化から生じるパラメータを検出するにあたってはMRI、CアームCT、及びコントラスト心エコー図等の撮像手段が優れた手段であるが、リアルタイムに変化を視覚化するためには造影剤が必要である。また、MRI及びCアームCTは高度な空間分解能を有するが、細胞壊死を視覚化するには30分を要する。コントラスト心エコー図は、それよりも早く視覚化できるが、空間分解能と視野が限られている。組織の弾性、インピーダンス、又は吸収性の変化を含む物理的組織変化に基づくその他の撮像手段が開発されている。それらの方法はリアルタイムに結果を提供するもので、傷の大きさや深さを予測できるが、相当なデータ処理を要し、切除領域を直接的に視覚化するものでない。しかし、これらの公知の撮像法は、本発明の開示方法と組み合わせて使用することができる。
【0055】
今日、大部分のアブレーション手術は心内膜に関するものであるが、約10〜20%は心外膜に関するものである。心外基質は心室頻拍について頻繁に観察される(心筋梗塞後心室頻拍の20%以上、非虚血性心筋症心室頻拍の30%以上、特にシャーガス病)。これらの心外基質のアブレーションは、経皮的に行われ、シースの剣状突起を無傷の閉鎖された心膜空間に入れるものである。これらの手術には、特にfNADH撮像が有効である。UV適合光学装置と光感応撮像装置を備えた従来の内視鏡がその目的に適している。アブレーションを行う場所を適当に視覚化するために、心膜空間を拡張するために内視鏡を通じて空気を吹き込むことが行われる。臨床の場では、空気よりも二酸化炭素の方が空気塞栓の危険が少ない。内視鏡の前部に膨張可能なバルーンを使用して血液を移動させる場合、fNADH撮像は心臓内の手術にも利用される。
【0056】
本開示のシステムと方法によれば、ユーザは、現在行っているアブレーション中に心筋の損傷を監視することができる。そうすることで、臨床心臓電気生理学者は、時間を短縮できるし、アブレーションの効率を改善できるし、アブレーション後の合併症を生じる不要な組織損傷を最小限に留めることができるし、アブレーション後の不整脈の再発と更なるアブレーションの必要性をなくすことができる。fNADH撮像は、アブレーションを行う場所の近くの組織損傷の機械的研究、及び傷間隙間の電気電導を変える薬の評価にとっても有益である。
【0057】
fNADH撮像により、アブレーション傷と、血液の無い及び血液かん流されたラット及びうさぎの心臓傷間の隙間を視覚化できるアブレーション傷の周りの電気的活動及び組織生存の変化を研究するために、光学作用の可能性及びNADHの内因性蛍光が撮像される。fNADH撮像は、カテーテルの先端に配置されるデュアル式UV励起/発振型光学ファイバ導波路を使って、アブレーション手術中に、行われる。そのような導波路は、3Dマッピングシステムと調和して、カテーテル周囲の心筋生存の詳細なマップを提供する。
【0058】
図1Aは、本開示に係る例示システムのブロック図である。システムは、外部装置125に連結された膨張可能なバルーンカテーテル105を含む。ある実施例では、カテーテル105は、アブレーション装置110、照明装置115、撮像装置120を含む。ある実施例では、照明装置115と撮像装置120は、治療組織に光を送る又そこからの光を通過させるための光ファイバ導波ガイドを利用する。
【0059】
いくつかの実施例において、本開示の方法とシステムは、アブレーション手術に関連して使用され、その場合、所望組織の完全なアブレーションが達成されたことをリアルタイムに監視するために利用される。アブレーションは、組織を破壊又は損傷(アブレーション)するために、エネルギー、熱、又は極端な冷気(冷凍)を利用する。例えば、RFアブレーションは、高周波交流から生成される熱を利用して組織を破壊する。冷凍アブレーションは、中空チューブ又は中空ニードル(冷凍プローブ)を使用し、該冷凍プローブを介して冷却された熱電導流体が循環されて組織を凍結し破壊する、種々の臨床に利用される。本開示のシステムと方法は、種々の組織アブレーション(限定的ではないが、RFアブレーション、冷凍アブレーション、音響エネルギーアブレーション、マイクロ波エネルギーアブレーション、超音波アブレーション、化学アブレーション、レーザアブレーション、熱アブレーション、電気アブレーション、その他の熱エネルギーアブレーション又は非熱エネルギーアブレーション)に関連して使用される。そのために、ある実施例では、アブレーション装置110は、組織を破壊するアブレーションの必要のために、組織に向けて前進される。ある実施例では、アブレーション装置110はエネルギー源を有する。エネルギーは、無線周波数エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、熱エネルギーである。
【0060】
外部装置125は、照明装置115に紫外線を提供する光源130、カメラ135、ディスプレイ140を含む。ある実施例では、カメラ135は、NADH蛍光に対応して波長に対して高量子効率を有するCCDカメラ(すなわち、460nmの波長に対して80%の量子効率を有する。)、例えば、AndorIxonDV860カメラであるある実施例では、カメラ135は、460/25nmフィルタ135(すなわち、紫外線を通過させるが、紫外線スペクトルの外側の光を遮断するフィルタ)を備えている。
【0061】
図1Bを参照すると、ある実施例では、カテーテル105は、基端部220と末端部221を有する、複数の内腔を有するカテーテルである。カテーテル105は、該カテーテル105の末端部221周囲に配置されているバルーン222を含む。バルーン222は、UV透過材料(例えば、UV透過蛍光ポリマー)で作られている。ある実施例では、バルーン222は、厚さ50μm、屈折率1.31を有する。バルーン222は、コンプライアントバルーン又はノン・コンプライアントバルーンである。
【0062】
バルーン222は、カテーテル105を用いて治療する生体構造に応じて、円形、平坦、円筒、楕円、長方形、又はその他の形状である。バルーン222は、光学的に整頓された画像を得るために、蛍光撮影場所の血液を移動させる。血液は多くはヘモグロビンによる蛍光特性を有するため、この媒体を通じた撮像は放出路を満たしている。バルーンは、ガス又は液体で膨張される。バルーンを膨張するために、例えば、低屈折率(約1.0004)の二酸化炭素が使用される。また、生体内でバルーンが裂けた場合、二酸化炭素に短時間晒されるが、窒素ガスの分圧が大きいために、そのことが致命的な損傷を及ぼすことはない。制限されるものではないが、適当な液体は、水、生理食塩水、血液、又はその他の同様な液体を含む。カテーテル105は、バルーン22を膨張、収縮するために、膨張/収縮ルーメン225を含む。バルーン222を膨張し又収縮するために、2つの別のルーメンを設けてもよい。
【0063】
膨張/収縮ルーメン225に加えて、カテーテル105はさらに、アブレーション装置110を前進させるアブレーションルーメン223と、撮像装置120を前進させる撮像ルーメン224と、照明装置115を前進させる照明ルーメン226を有する当然、カテーテル105は追加のルーメンを含めてもよいし、幾つかのルーメンは複数の機能を行うようにしてもよい。例えば、幾つかの実施例では、一つの光ファイバを用いて光源130から組織に光を送って該組織を照明するとともに、組織で反射してカメラ135に入る光を通過させてもよい。
【0064】
図1Cを参照すると、バルーン222の無いカテーテル105の先端チップ221が示されている。所望組織をアブレーションする場合、アブレーションルーメン223を通じてアブレーション装置110がカテーテル105の末端部221に送られ又はそこを通過される。膨張/収縮ルーメン225により、ユーザはバルーン222を膨張し収縮して、蛍光撮影を支援する。アブレーションされた組織を撮影するために、撮像ルーメン224を通じて撮像装置120がバルーン内に前進できる。このとき、照明ルーメン226を通じて前進された照明装置105によって組織が照明される。当然、必要であれば、種々のルーメン223〜226の相対位置を変えることができる。
【0065】
図1Dを参照すると、基端部220が示されている。幾つかの実施例では、アブレーション装置110をカテーテル105に導入するために、アブレーションルーメン223に接続したアブレーションポート233が設けられる。バルーン222を操作するために、膨張ルーメン225aと収縮ルーメン225bに連通する別のポート235を設けてもよい。ある実施例では、撮像装置120と照明装置110をカテーテル105に導入するために、基端部220は、撮像ルーメン224と照明ルーメン226に連通する出口237を含む。カテーテル105には、カテーテル105を一つ又はそれ以上の外部装置125に接続するために、コネクタ240を設けてもよい。
【0066】
図1Aを参照すると、外部装置125は、カメラ135を含む。ある実施例では、カメラ135はCCD(電荷結合素子)カメラである。幾つかの実施例では、カメラ135は、出来るだけ多くの写真を採取することができるとともに画像に出来るだけノイズを生じさせることのないものが選択される。通常、生体細胞の蛍光撮影に対して、CCDカメラは約460nmの波長に対して少なくとも50〜70%の量子効率(30〜50%のフォトンが無視される。)を有するべきである。幾つかの実施例では、カメラ135は460nmの波長で約90%の量子効率を有する。カメラ135は、80KHzのサンプリングレートを有する。幾つかの実施例では、カメラ135は8エレクトロン以下の読取ノイズである。幾つかの実施例では、カメラ135は最小読取ノイズが3エレクトロンである。
【0067】
外部装置125はまた、光源130(UVのLED発振器)を有する。光源は、撮像装置120を介して組織を照明するために利用され、光ファイバの光ガイドを有し、撮像ルーメン224を介してカテーテル105の末端221に前進され、そこで組織画像を撮影する。幾つかの実施例では、光ファイバの光ガイドは、照明装置115として機能し、視覚化される組織を照明するために、励起波長の光を光源130から組織に送る。光ファイバの光ガイドはまた、組織で反射してカメラ135に戻る光を通過させるように機能する。ある実施例では、照明と撮影のために別の光ファイバネットワークが使用される。ある実施例では、照明装置は撮像装置120から独立している。ある実施例では、撮像装置、照明装置、又はそれらの両方に、ファイバスコープが利用される。
【0068】
照明組織がCCDで撮影されると、これらの画像はディスプレイ140に送信されて、リアルタイムでユーザに示される。その画像はソフトウェアによって解析され、リアルタイムに詳細(例えば、画像の特定部位における強度又は照明エネルギー。)が得られ、ユーザの更なる介入が必要か又は望ましいかを判断するのを助ける。
【0069】
図2Aを参照すると、幾つかの実施例では、本開示の装置は、カテーテルシステム105と外部装置125(カメラ135と光源130など)の間に配置されたフィルタボックス145を有する。フィルタボックス145は、照明装置115から伝播される、光源130からの光を反射するダイクロイックミラー146を含む。ダイクロイックミラー146は、45°の入射角をもって配置され、これにより、反射光の消去帯域を形成するとともに伝送光の透過帯域を形成しる。光源130からの光は、試料方向に対して90°の角度をなす方向に反射される。同時に、同じ方向について、試料から出てくる光がミラーを通過する。幾つかの実施例では、波長425nmの光を50%遮断するダイクロイックミラーが使用される。このミラーは、波長355nmから410nmの光に対して80%以上の反射帯域を有し、波長440nmから700nmの光に対して90%以上の透過帯域を有する。視覚化する組織に向かう光及びそこからの光を透過するために、その他の光学装置を使用してもよい。
【0070】
フィルタボックス145はまた、ある種のノイズ又は好ましくない特徴となる光を除去するために吸収フィルタ147を含むことができる。ある実施例では、NADH蛍光に基づいて、フィルタ147は中央波長460nm、帯域幅59nm(すなわち、460±25nm)を有する。フィルタボックス145はさらに、光源130からの光の波長を選択励起するために励起フィルタを有する。
【0071】
図2Bを参照すると、フィルタボックス145の実施例は、カメラポート400を有する。カメラポート400は、該カメラポートの前部に配置されたフィルタホルダ402に保持された吸収フィルタを備えている。フィルタボックス145はまた、フィルタホルダ404に保持された励起フィルタ403を有する。励起フィルタは、光源ポート又はカテーテルポートに配置してもよい。励起フィルタ403は、カテーテルポート405に配置されている。ダイクロイックミラー405は、ミラースロット406に挿入されており、光源130をフィルタボックス145に取り付けるためのポートに対して45°の角度をもって配置されている。
【0072】
図3を参照すると、本開示にシステムの動作が示されている。まず、カテーテル105が、心房細動に侵された領域(肺静脈、左心房接合部)に挿入される(ステップ150)。視界から血液が除去される。心房細動アブレーションのために、光ファイバ導波路を囲む透明バルーンが使用され、肺静脈/左心房接合部の血液を移動させる。侵された領域が源130及び照明装置115からの紫外線によって照明され(ステップ155)、照明領域の組織がアブレーション装置110を使って除去される(ステップ160)。本開示のシステムを用いた、RFアブレーション、冷凍アブレーション、レーザ、又はその他の公知のアブレーション手術が採用される。アブレーションは、先端をカテーテルの中央ルーメンに通して進められる。手術後、アブレーション先端が後退される。
【0073】
撮像装置120とカメラ135の組み合わせによって照明領域が撮影される(ステップ165)。本開示の方法は、NADHの蛍光放射を撮影するもので、そこではニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD+)が多く形成されることがない。NAD+は、すべての生体細胞の好気性代謝酸化還元反応における重要な役割を演じるコエンザイムである。それは、ミトコンドリア中で起こるクエン酸回路(トリカルボン酸回路)からの電子を受ける酸化剤として機能する。このプロセスにより、NAD+が減少してNADHになる。NADHとNAD+は細胞、ミトコンドリアの呼吸器ユニットに最も豊富であるが、細胞質にも存在する。NADHは、ミトコンドリア中の電子及び陽子ドナーで、細胞の代謝を規制し、多くの生物学的プロセス(DNAの補修及び転写)に関与する。
【0074】
紫外線で誘発された組織蛍光を測定することで、組織の生化学的状態が分かる。細胞の代謝活動と細胞の死滅を監視する際、NADH蛍光がそのために観察される。体外と体内の研究によって、NADH蛍光強度を細胞死モニタリングの内的生体指標として用いてポテンシャルが調べられた。NADHが損傷セルのミトコンドリアから放出されると、又はその酸化型(NAD+)に変換されると、その蛍光が著しく減少し、そのことが、健康な細胞を損傷した細胞から見分けるうえで極めて有益である。酸化が行われない場合、NADHが虚血状態の細胞に蓄積される。しかし、死滅細胞ではNADHの存在が無くなる。以下の表は、NADH蛍光による相対強度の異なる状態をまとめたものである。
【0075】
NAD+とNADHは紫外線を容易に吸収するが、NADHは紫外線励起に応答して自己蛍光性であるのに対して、NAD+はそうではない。NADHは約350〜360nmに紫外線励起ピークを有し、約460nmに発光ピークを有する。幾つかの実施例では、本開示の方法は、約335〜約380nmの間に励起波長を採用している。適正計測により、関心領域内におけるリアルタイムな低酸素症及び壊死組織の測定として発光波長を撮影できる。NADHの存在蛍光に比例するグレースケールをもって、相対的な測定基準を実現できる。
【0076】
低酸素状態では、酸素レベルが減少する。その後のfNADH放出信号の強度が増加する。これは、ミトコンドリアNADHが過剰であることを示す。低酸素症が未確認の場合、影響を受けた細胞がそのミトコンドリアと共に死滅すると、最終的には信号が減衰する。末期的損傷を受けたアブレーションされた組織の周囲を識別するために、NADHレベルの高コントラストが使用される。
【0077】
蛍光撮影を開始するために、オペレータは、カテーテルの末端部近傍に設けたバルーンを展開する。次に、光源130からの紫外線によってNADHが励起される。フィルタボックスを有する幾つかの実施例では、まず光源からの励起光が、フィルタボックス145内に配置されたダイクロイックミラー(又は、ダイクロイックビームスプリッタ)に当たる。次に、ダイクロイックミラーによって励起光が反射されて、光ファイバを解して試料に送られる。幾つかの実施例では、ミラーは、励起光に対して45°の角度をもって配置され、励起光が90°反射される。幾つかの実施例では、本開示の方法は、約335nm〜約380nmの間の励起波長が使用される。
【0078】
組織資料中のNADHが光の励起波長を吸収し、長い波長の光を放出する。この放出光が集められてダイクロイックミラー146を介して送り戻される。したがって、ミラー146は、励起光を反射するように構成されているが、その放出波長を透過する。励起波長の反射は100%ではなく、該波長の一部はダイクロイックミラー146を通過する。同様に、異なる波長の光が透過可能である。また、カメラ135に関連して吸収フィルタを設けてもよい。吸収フィルタは、NADH等の蛍光色素分子からの光の放出波長について選択される。
【0079】
光がフィルタリングされると、その光はカメラで集められる。また、撮像された照明領域がディスプレイ140に表示される(ステップ170)。これは、NADH蛍光を使って撮像領域内のアブレーションされた組織とアブレーションされない組織を識別するために利用される(ステップ175)。別の組織をアブレーションする必要があれば、アブレーションステップに戻ることで以上のプロセスが繰り返される。図3は実行されるステップを順に示しているが、多くのステップが同時に又はほぼ同時に実行される。例えば、アブレーション、撮影、表示は同時に行われ、アブレーションされた組織とアブレーションされていない組織の識別は、組織をアブレーションしながら行われる。
【0080】
ここに開示された方法、システム、装置は、種々の治療に使用される。ここで開示した方法、システム、装置が利用される例示的手技には、限定的ではないが、心房細動、肺疾患マッピング及びアブレーションのための、心臓の診断及び治療、難治性不整脈(例えば、上室性不整脈、心室性不整脈)の治療に利用される。アブレーションされる組織は心筋であるが、本開示の方法は、NADHの豊富なミトコンドリアが多く存在する、骨格筋、肝臓、腎臓、その他組織に同様の効果が得られる。
【0081】
図16を参照すると、本開示のシステムと方法に関連して使用されるカテーテル1601は、それを貫通して伸びる1つ又は複数のルーメンと、カテーテル1601の末端付近に配置された膨張可能なバルーン1603を有する。幾つかの実施例では、バルーン1603は、その基端部1604でカテーテル1601の本体の末端に取り付けられるとともに、その末端部1605でカテーテル先端1606に取り付けられ、以下に説明するように、チューブ又はルーメンによってカテーテル1601に連結される。バルーン1603は、光学的透明材料で作られ、蛍光撮影中、光学要素のための通路から血液を移動させるために使用される。バルーン1603は、多くの異なる材料から作られるとともに、種々の生体構造に適合する形状に作られる。バルーンは、柔軟な材料(例えば、シリコーン)で構成され、生体構造に適合している。代わりに、バルーンは、強い材料(例えば、ポリウレタン)で作ることもできるし、適合性に若干欠けても差し支えない。図16に示されるように、バルーン1603は、肺静脈の口に挿入するために円錐形状であってもよい。その他に、アブレーション治療用のためにその他の心臓解剖学的目標(限定的ではないが、副伝導路、心室壁、心房壁、又は房室結節)を視覚化するうえでは、更なる円形の形状が良いかもしれない。
【0082】
カテーテル1601は、組織アブレーション(限定的ではないが、RFアブレーション、冷凍アブレーション、音響エネルギーアブレーション、電磁エネルギーアブレーション、マイクロ波エネルギーアブレーション、超音波アブレーション、化学アブレーション、レーザアブレーション、熱アブレーション、電気アブレーション、その他の熱又は非熱エネルギーアブレーション)に利用される。そのために、幾つかの実施例では、カテーテル1601はアブレーションが必要な組織に向けて前進され、1つ以上の方法を実行できるアブレーション部材がカテーテル1601を通過されて組織をアブレーションする。幾つかの実施例では、アブレーション部材はエネルギー源(無線周波数エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、及び熱エネルギーから選択される。)を有する。
【0083】
幾つかの実施例では、カテーテル先端1606は、診断目的(心電図を検出するため)又は治療目的(アブレーションエネルギーを放出するため)から、電極として機能するように構成されている。アブレーションエネルギーがカテーテルに必要な幾つかの実施例では、カテーテル1601の先端1606がアブレーション電極又はアブレーション要素として機能する。RFエネルギーが使われる実施例では、RFエネルギー源に先端を連結する電線がカテーテル1601のルーメンに通される。先端1606は、カテーテル1601の1以上のルーメンに連通するポートを含む。このように、ガイドワイヤ又はその他の外科器具(例えば、RF電極)がカテーテル1601から出て、先端1606を通って前進される。先端1606は生体適合材料で作られる。幾つかの実施例では、先端が電極として機能するように構成される場合、先端1606は金属(限定的ではないが、白金、白金めっきチタン、ステンレス鋼、又はチタニウム)で作られる。先端1606はまた、生体適合プラスチック(限定的ではないが、シリコーン、peek、ポリウレタン)で作ることができる。
【0084】
図17を参照すると、幾つかの実施例では、カテーテル先端1606は、カテーテル1601の本体に、カテーテル1601の本体の先端を貫通するガイドワイヤチューブ1700で接続してもよい。ガイドワイヤチューブ1700は、ガイドワイヤ、アブレーション部材、又はその他外科器具をカテーテルの先端を通過して前進させるために、カテーテル1601の1つ又は複数のルーメンに連通する1つ又は複数のルーメンを含むことができる。ガイドワイヤ1700の内側ルーメンは、外科器具をガイドワイヤ1700を介してカテーテル先端1606に前進させるために又は該カテーテル先端1606を通過させるために、カテーテル先端1606のポート1607に連通してもよい。
【0085】
幾つかの実施例では、ガイドワイヤチューブ1700は、カテーテル1601が治療部位に前進する間バルーン1603が収縮状態にあるとき、バルーンを構造的に支持するように機能する。幾つかの実施例では、ガイドワイヤチューブ1700は、バルーン1603を構造的に支持するために、半剛性である。幾つかの実施例では、ガイドワイヤチューブ1700は、カテーテル1601の一体ルーメンである。幾つかの実施例では、ガイドワイヤチューブ1700はカテーテル1601から分離され、カテーテル1601の末端に着脱自在に挿入される。幾つかの実施例では、ガイドワイヤチューブ1700は、カテーテル1601の内にスライド自在に配置される。これにより、ガイドワイヤチューブ1700は、カテーテル1601に対して移動し、それによってバルーン1603の形状を調節し、容易に患者の体の中にカテーテル1601を前進させたり又はそこから容易に取り出すことができる。例えば、ガイドワイヤチューブ1700が前進して潰れたバルーンを伸ばし、患者の体からバルーンを容易に取り出されるようにする。これにより、バルーンは、取り除かれる際に導入シースに引っ掛かることがない。ガイドワイヤチューブは、任意の材料で作られる。幾つかの実施例では、ガイドワイヤチューブ1700は、形状記憶材料(例えば、ニチロール)で作られる。
【0086】
図17図16と組み合わせて参照すると、カテーテル1601は縮経面1701を有する。この場合、バルーン1603の基端部1604が、組み合わせた装置の外径を大きくすることなく、カテーテル1601に取り付けられる。
【0087】
図18を参照すると、バルーン1603の内側に光学部材(例えば、カメラ1804と光源1805)を位置させるために、カテーテル1601の末端に光学ハウジング1803が設けられる。光学ハウジング1803により、バルーン内におけるカメラ1804と光源1805の位置決めができ、外部光源が不要になる。また、バルーン内に光源を配置することで、光ファイバを使用する場合よりも、より広角な照明が得られる。図18に示すように、光学ハウジング1803は、カテーテルからバルーン内に伸びており、これにより、光源とカメラがバルーン内に完全に収容され、カテーテルは光源又はカメラの視界と干渉しなくなる。図18に示すように、光源とカメラがバルーンの内部にあり、バルーンから外側に出ていない幾つかの実施例では、ハウジング1803により、光学部材が相互に一定の関係に配置される。幾つかの実施例では、カメラ1804と光源1805は互いに同じ面上にある。これにより、いずれの部材も他方の機能を阻害することがない。同じ面上にあることで、カメラ1804が照明を遮ることもないし、光源1805がカメラの画像に表れることもない。幾つかの実施例では、一方の光学要素が他方の光学要素と干渉しないように、部材の位置を変更することができる。
【0088】
カメラ1804は、光学画像を電子信号に変化できる任意の撮像センサである。幾つかの実施例では、カメラは、レンズ付きで、記録用に特定波長を選択するフィルタ付き又はそのようなフィルタの無い、小型CMOS撮像センサである。幾つかの実施例では、カメラは、光学画像を電子信号に変化できる、CCDカメラ又はその他の撮像センサである。医師が見るために、カメラはその信号を電線を介して外部の画像プロセッサとビデオターミナルに送信する。幾つかの実施例では、外部装置との通信のために、カメラは無線通信性能を有する。光源1805は、適当な波長の発光ダイオード(LED)である。幾つかの実施例では、LEDは、NADH蛍光のために紫外線領域の波長を有する。幾つかの実施例において、適当な波長のLEDを選択することで、多色照明用に白色光を含む異なる波長を含むことができる。非限定的実施では、紫外線照射用の適当なLEDは、300nm〜400nmの波長を有するものを含む。また、可視光又は白色光用の適当なLEDは、色温度範囲が2000K〜8000Kのものを含む。
【0089】
図18に示すように、ハウジング1803は、カテーテル1601の末端に挿入される。幾つかの実施例では、ハウジング1803の外径は、カテーテル1601の内径よりも小さい。これにより、カテーテル1601の内壁とハウジング1803との間に隙間1802が形成される。幾つかの実施例では、バルーン1603は隙間1802を通じて、収縮又は膨張される。当然、バルーン1603を操作するために別のルーメンを設けてもよい。
【0090】
幾つかの実施例では、光学ハウジング1803の外径がカテーテル1601の内径よりも小さいため、ハウジング1803はカテーテル1601に対して移動可能である。幾つかの実施例では、ハウジング1803はカテーテル1601、そしてバルーン1603に対して自由に回転する。幾つかの実施例では、カメラを適当な撮影位置に配置し又は光源を適当な照明位置に配置するために、光学ハウジング1803はカテーテル1601に対して長手方向に移動できるようにしてもよい。光学ハウジング1803を所望位置に固定するためにロックを設けてもよい。
【0091】
図19は、カテーテル1601の外側のハウジング1803の図で、カメラ1804の配線束1901と光源1805の配線束1902を示す。これらの配線束は、ハンドル(図示せず)に至るまでカテーテルの全長に亘って伸びており、そこで撮像システムのその他の部分(電源又はディスプレイ)に電気的に接続される。しかし、幾つかの実施例では、外部装置と無線通信するために、カメラは無線通信性能を有する。
【0092】
ハウジング1803はまた、ガイドワイヤチューブ1700とカテーテル1601との間の通信を容易にするために、ガイドワイヤチューブ1700を収容するチャンネル1904を含む。
【0093】
本開示のカテーテルは、最小の侵襲手術及び従来の外科手術(すなわち、開放手術)でもって使用される。幾つかの実施例では、本開示のカテーテルは、血管内手術用に構成される。幾つかの実施例では、本開示のカテーテルは、非血管内手術用に構成される。幾つかの実施例では、本開示のシステムは、内視鏡の経路ではなく切開部又は経皮的な導入部を介して組織に挿入される、外科手術で使用される外科用のシステム又は装置である。幾つかの実施例では、本開示のシステムと装置は、手持ち式制御システム又はロボット制御システムの一部である。幾つかの実施例では、本開示のシステム又は装置は、ロボット装置によって操作するように構成できる。
【0094】
幾つかの実施例では、構成部品の大きさは特定手技に応じて変えられる。幾つかの実施例では、本開示のカテーテルの剛性は、手術、治療する生体組織、又はそれらの両方に応じて変えることができる。幾つかの実施例では、剛性は、カテーテル1601、ガイドワイヤチューブ1700,又はそれらの両方に、剛性のある部材をより多く選択することで変えることができる。
【0095】
図20を参照すると、幾つかの実施例では、光学ハウジング2002は、更なる剛性が必要な場合、複数のガイドワイヤチューブを収容する複数のチャンネル2003,2004を含むことができる。種々の実施例において、一部又はすべてのガイドワイヤチューブは、カテーテル1601の内腔とポート1607に連通する内部ルーメンを含む。幾つかの実施例では、一部又は全てのガイドワイヤチューブは、構造的支持のために設けることができ、そのために、内部ルーメンを含まない場合もある。
【0096】
図21は、複数の光源2101、2102(異なる波長の光を発振できる。)を支持するように構成された光学ハウジング2100の実施例を示す。異なる波長の光源を設けることで、単一カテーテル又は装置に異なる機能を与えることができる幾つかの実施例では、光源2101は、蛍光撮像用に紫外線を発するように選択される。一方、光源2102は、ユーザが解剖学的ランドマークを見て舵取り(ナビゲーション)できるように、白色光を発するように選択される。束ねることによって、ユーザは、組織をアブレーションする部位にナビゲーションしてアブレーションされた組織を見えるようにするために、同じカテーテルを使用することができる。幾つかの実施例では、同じ波長の複数の光源を用いてもよい。幾つかの実施例では、光学ハウジング2100は、2つ、3つ、それ以上の光源を支持するように構成してもよい。
【0097】
幾つかの実施例では、光学ハウジング1803が図示され、光源とカメラを支持するものとして説明されているが、外部カメラと外部光源に接続された1つ又は複数の光ファイバ束をハウジングが支持するように構成してもよい。
【0098】
ここで開示するシステムと装置は、種々の治療手術に使用できる。ここで説明する方法、システム、装置が使用される手術には、限定的ではないが、心臓の診断及び治療手術、不整脈治療(例えば、上室性不整脈、心室性不整脈)、心房細動治療、肺静脈マッピング及びアブレーションが含まれる。
【0099】
ここで開示する方法は、2D〜3Dマッピングプロトコルと共に使用できる。複数の2D画像が、組織又は器官(心臓を含む)の3D再生画像に重ねされる。多くの不整脈手術は、手術中、患者の特定の生体構造の再構築された3次元画像が利用される。コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、NAVXやCARTOなどのシステムを用いた超音波及び電子解剖学的マッピングを含む種々の撮影法が使用される。すべての方法において、3次元解剖学的画像によって、患者の特定の生体構造が表示され、目標領域の組織が的確に治療される。すべての方法において、傷を付ける位置と傷を付けない位置(「隙間」又は傷の切れ目)が正確に視覚化されるため、手術によって最適な治療結果が得られる。2D画像又は3D画像のマッピングにより、1つ又は複数の組織画像(傷の膿むを示すもの)を、患者の特定の生体構造とともに、3次元で、回転可能に、インタラクティブな仮想環境で、重ね、部分的に記録し、及び/又は質感を持たせてマップすることができる。
【0100】
幾つかの実施例では、本開示のシステムと方法により、システムで作成された画像を患者の特定生体構造上に一致させ、及び/又は、重ね合わせることができ、それは、他の撮像手段(MRI画像、CT画像、超音波画像、それらの3次元再生)を使って見ることでできる。幾つかの実施例では、本開示のシステムと方法は、システムで作成された画像を患者の特定生体構造上に一致させ、及び/又は、重ね合わせることができ、それは、他の電子解剖学的マッピング、解剖学的再生、及びNAXX及びCARTO等のナビゲーションシステムを使って見ることでできる。患者の特定生体構造上に一致させたり重ね合わせることは、リアルタイムで手術中に行うことができる。NADH画像を心臓表面に再生質感マッピングすることにより、治療部位を視覚化できる。例えば、複数の傷のNADHスナップショットにより、完全な肺疾患静脈口又は複数の肺疾患静脈の完全なパノラマ画像を作ることができる。カテーテルの先端にセンサを設けることで、NADHの存在画像を相互に組み合わせて3D再生画像を作ることができる情報を提供できる。
【0101】
本開示の方法とシステムは、バルーンカテーテルとの関係で説明したが、本開示の方法とシステムはバルーン無しでカテーテルを使用することもできる。蛍光撮像中に血液を移動させるために他の手段を利用することもできる。例えば、本開示のカテーテルにかん流ポートを設け、このポートを介して流体をカテーテルの先端に送って血液を撮像組織から移動させるようにしてもよい。幾つかの実施例では、カテーテルは、血液を移動させるとともに光を透過できる透明流体を注入するシースを介して導入される。当然、幾つかの実施例では、血液を移動する手段が組み合わされる。例えば、上述のバルーンカテーテルに追加のかん流ポートを設け、バルーンによって血液を移動させるのを促進させるようにしてもよい。
【0102】
本開示のシステムと方法を利用した例を以下に示す。これらの例は、単に代表的なものであって、本発明の開示範囲を限定するために使用されるべきではない。ここで説明する方法と装置は種々設計変更可能である。選択した例は、本説明の装置と方法の原理を説明するために利用されるものである。
【実施例】
【0103】
【実験手順】
【0104】
開示のNADH記録を用いた撮影の有効性を塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)染色と比較するために、動物の心臓を用いて幾つかの実験を行った。以下に詳細に説明するように、NADH記録を用いた撮影は、TTC染色と同様に行われた。特に、それは生体組織について行われ、同等の性能を得るために、多くの時間や染料を使用する必要がなかった。
【動物処置】
【0105】
ラット(200〜300グラム、Sprague-Dawley(SD)ラット、n=8)の摘出血液無心臓を使って生体外実験を行った。動物は、標準手術でヘパリン治療して麻酔した。その後心臓を摘出した。大動脈にカニューレを通し、室温の酸素処理緩衝タイロード溶液を用いて一定圧力(50mmHg)でランゲンドルフかん流した。心臓をパッドの上に置き、アブレーション中は摂氏37度のタイロード溶液に浸けた。
【0106】
麻酔した開胸ラット(200〜300グラムのSDラット)を使って生体実験(n=3)を行った。テラゾール(40mg/kg)をIP注射した後、胸と背中の毛を剃った。動物は、加熱した台の上に静止させた。そして、アブレーションパッドを動物の下に配置した。胸部を開いた直後、露出した心外膜表面を撮影しながら、アブレーションを行った。すべての麻酔手術と安楽死手術は、動物愛護及び利用委員会承認プロトコルに合致するものであった。
【アブレーションプロトコルとNADH記録】
【0107】
4mmの先端を備えた非冷却ブレーザーカテーテルを用いて、無線周波数エネルギーを送った。先端温度は、摂氏50〜70度の範囲であった。カテーテルは、心外膜面に垂直に配置した。アブレーション時間は、最大パワー50Wで、15〜60秒の範囲で変化させた100ワット水銀ランプ(Zeiss HBO 100 W/2)を使い、紫外線(350/25nm)で心外膜面を照明した。NADHの心外膜蛍光を記録するために、発光をフィルタリング(460/25nm)し、CCDカメラ(Andor Ixon DV860)を使って撮影した。カメラは、NADH蛍光に対する波長に対して高量子効率を有するものであった(80% QE at 460nm)。
【光学マッピング実験】
【0108】
電位差滴定染料RH237(分子プローブ、10μM溶液)を用いて心臓を染色し、アーチファクトを減らすためにかん流(10μM最終濃度)にブレビスタチンを添加した。2つのCCDカメラ(Andor IXON DV860s)を有するデュアル式光学マッピングシステムにデュアルポートアダプタ(Andor CSU Adapter Dual Cam)を取り付け、ダイクロイックミラー(610nm)を使用し、RH237(250〜500fps)とNADH(2fps)の心外膜蛍光を同じ視点から撮影した。光学動作ポテンシャルを記録するために、2つのLED(LumiLEDs, 530/35nm)を使って心外膜を照明した。結果のRH237蛍光は、680nmの波長において、ロングパスフィルタでフィルタリングされた。NADHは、上述のように、別のCCDカメラで記録された。
【0109】
RH237蛍光を処理して、各画像から背景の蛍光を除き、各ピクセルについて信号を正規化した。メジアン時間フィルタ(3サンプル幅)を使ってRH237蛍光信号を平滑化した。波面伝播を示すために活動時間の等時マップを作成した。電気的に活性な組織の量の空間的変化を明らかにするために、各ピクセルの光学活動ポテンシャルの平均振幅を計算した。
【TTC染色】
【0110】
塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)生体染色は、急激な壊死を評価するための標準的手法である。撮影プロトコルが完了直後、タイロード溶液(1.0%TTC)で冠状動脈を介して、組織に逆行的なかん流が行われた。その後、心臓をTTC溶液に更に8分浸けた。代謝活性組織が深紅色に表れた。壊死組織は白色に表れた。
【実験結果】
【0111】
図4A、4B、4C、4D,4Eは、血液の無い摘出ラット心臓におけるRFアブレーション傷を示す。最初の実験は、両性の健康ラットから摘出した心臓に行った。心臓は、タイロード溶液で逆かん流した。8つの心臓の心外膜をアブレーションして撮影した。4つの心臓に隣接して2つのアブレーション傷を付けた。心外膜面に傷を付ける位置にあるRFアブレーションプローブの実施例を図4Aに示し、標準的なRFAアブレーションプロトコル後の典型的な傷を図4Bに示す。図4Bに示すように、アブレーションの結果、淡い色に表れた組織の領域として、心外膜面の外観に素早い変化を生じた。その淡い色は、約摂氏60度におけるミオグロビンの変性に対応している。その後、心臓は一定圧力のかん流システム上に置かれ、シングル式又はデュアル式カメラシステムを使って撮影された。図4Cは、fNADHで明らかにされるように、2つの明確なRFアブレーション傷の外観を示し、そこでは部分的な虚血性組織が染みだらけの白色で表れている。図4Cに示すように、fNADH画像により、アブレーションの領域は、周囲のアブレーションされていない心筋に比べて、極めて暗く表れることが分かった。
【0112】
撮影後、活性染料TTCで心臓を染色した。これを図4Dに示す。次に、アブレーション傷を検査するために、壁を貫いてスライスした。これを図4Eに示す。図4Dに示すように、代謝活性組織が赤色に表れ、逆に損傷組織が白色に表れた。図4Eは、心臓を横断的にスライスしたものを示し、そこでは、2つの異なるパワー設定でもって反対側の心筋表面に設けた2つの傷の深さを示している。
【RFアブレーションの傷の空間的広がりと安定性】
【0113】
図5A図5Bは、傷の時間的安定性を示す。具体的に、最上列は、RFアブレーション後の異なる時点(2〜120分)におけるfNADHのスナップショットを示す。上部左の白色の箱は、3つの下のスナップショットで使用した閉鎖領域を示し、3つの中間時点(5,10,30分)での傷の境界の拡大図を示す。
【0114】
図5A図5Bに示すように、アブレーションされた組織のfNADHレベルは、アブレーション前の値に戻ることがなく、傷の大きさは実験の最中(約2時間)に著しく変化することがなかった。図5A図5Bにおける3つの拡大スナップショットに示すように、傷に対応したfNADH画像は、均質的に時間と共に暗くなった。
【0115】
図6A,6B,6Cに示すように、fNADH画像から測定された傷の大きさは、TTCに対してネガティブに染色された領域の大きさと同一である。具体的に、図6A図6Bは、fNADH感応チャンネルとして現れたRF傷の大きさと、TTC染色後のRF傷の大きさを示す。図6Aにおいて、うさぎの心臓表面の3つの傷のスナップショットは、未加工のNADH画像、反転NADH画像(すなわち、未加工のfNADH画像のLUTスケールを反転して傷が白色で示してある。)、未加工のTTC画像と白黒TTC画像(すなわち、グレースケール)である。図6Bの3つのグラフは、図6Aのスナップショットで特定された各傷a,b,cの明暗に対応している。図6Cの棒グラフに示すように、fNADHとTTC染色を用いて調べると、傷の幅は大幅に異なるものでない。
【0116】
TTC染色は、組織の生存を判断する一般的方法である。これは、テトラゾリウム塩と反応してホルマザン色素を形成する、デヒドロゲナーゼ酵素とNADHの性能に依存する。両方法は活性NADHの存在に依存しているので、傷の大きさの測定は2つの方法について同じである。したがって、図6Bのグラフに示すように、NADH蛍光の撮影により、TTCポジティブ組織領域は95%以上の精度で推定できる。臨床学的観点から、fNADH画像に見られるように、傷の外観は数時間安定していることから、RFアブレーション傷の安定性は、安定するまでに複数のRFアブレーション傷が形成された後にNADHの紫外線画像が取得されることを示唆している。
【RFアブレーション傷間の機能的隙間の識別】
【0117】
図7A、7B,7Cは、2つのRF傷の間の狭部を通じて伝播する心外膜の電気的活性とfNADHのデュアル画像を示す。上述のように、不完全な傷は、それがリエントリーの解剖学的経路となり、1mmほどの傷間狭部が再生伝導を生じることになればなおさら危険である。傷間狭部を通じて伝播を検討するために、2つの近接したRF傷の間の活性波面を解析した。傷上の心外膜上にバイポーラ電極を配置し、心臓拡張閾値(2.5mA)の2倍の電流を印加した。機能的狭部が存在する場合、歩調を合わせた波により、傷の周囲に一時的なリエントリー回路を生じた。この活性の例が、図7Cのスナップショットに順次示してある。図7Aの3つのスナップショットはそれぞれ、2つの傷を有する組織のfNADH画像、電圧感応染料RH237を用いて記録されたリエントリー回路の1つの電気的活性の等時マップ、及び、fNADH画像に等時マップを重ねたもの、を示す。図7Bは、個々のフレームの全ピクセルからの光学的活動ポテンシャルを平均することによって再構成された疑似的なECGトレースを示し、これは図7Cに示すシーケンスに対応している。図7Cは、心臓の鼓動の伝播と傷の周囲のリエントリーを示すRH237シーケンスのスナップショットを示す。
【0118】
等時マップを作り、伝搬波面を明らかにするために(図7A,7B,7Cに示すように)、光学的活動ポテンシャルが正規化され、全てか無かの状態で伝搬する波面を示す。これは伝搬を示すうえで有効であるが、真の光学活動電位振幅を分かりにくくしているため、誤解を招く恐れがある。真の光学的活動電位振幅を示すために、各ピクセルのRH237信号が、全てのピクセルに対して、最大光学活動電位振幅として図った。
【0119】
図8A,8B,8C,8Dは、fNADHとRF傷の間の狭部を横断する電気的活動を示す。具体的に、図8Aは、隣接するRH画像中の黒線に沿った5つの連続する活動電位の大きさを示すx−t図である。図8Aにおいて、x軸は2つの傷の間の距離で、y軸は時間と右側のアスタリスクによって示された活動電位を示す。図8Bは、活動電位振幅にfNADHに対する傷間強度プロファイルに重ねたグラフである。二つのプロファイルは、r=0.95、P<0.05の相関係数を有する光学活動電位振幅の傷間プロファイルを図8Cに示す。ここで、x軸は、2つの傷の中心間距離である。図8Dにおいて、グラフは光の当たるfNADHによって表されており、アブレーションされた傷は暗い組織部分として示された蛍光の欠如によって表されている。次に、活動電位振幅の中間プロファイルをfNADH強度の傷間プロファイルと比較した。2つは極めて関連している(r=0.95)。これらのことから、fNADHが無くなると、アブレーション部近傍の組織の消滅した機能状態の直接的な印として役立つ。
【fNADHの欠如は筋肉の損傷を示し、主冠状動脈を損傷しない】
【0120】
NADHを含むミトコンドリアが豊富に存在することで、心筋細胞はfNADH撮影に特に好適なものとなる。RFアブレーション部でfNADHが減少すると、心筋細胞の完全性が失われ、細胞及びミトコンドリア膜は熱ストレスによって急速に損傷する。とりわけ、アブレーション部内の心筋細胞壊死は、必ずしも、すべての基本構造(例えば、冠状血管)の完全性が破壊されるものでないことを意味する。実験では、冠状血管構造の崩壊は観察されなかった。これは、血管が崩壊した場合、損傷した血管の下流側組織が虚血し、fNADHが増加することによる。しかし、図6Aに示すように、傷の近くのfNADHのレベルは、アブレーションの前後で顕著に変化していない。部分的虚血を一時的に生じた低かん流の結果として、アブレーションの近くで時折観察される白色組織部分がRFアブレーション前に発生した。傷の無い冠状動脈構造の証拠はアブレーション後のTTC染色の均一性を示しており、あらゆる主要な血管損傷は、RFアブレーション傷の外側にある非染色組織の領域として示される。しかし、実験中に形成されてTTCによって確認された13個のRFアブレーション傷のすべてが、RF傷に完全に集中していた。最後に、図4Bに示すように、心外膜面上に傷の無い血管が観察されたことは、アブレーション部における主要血管への深刻な損傷を示すものでない。
【0121】
図9A、9B、9C、9Dは、アブレーション領域内におけるRH237の存在を示している。具体的に、図9A〜9Cは、急速静注によりRH237で染色されたラット心臓の3つの連続スナップショットを示す。図9A〜9Cに示すように、RH237蛍光は時間とともに減少しており、染料を保持する領域としての傷を強調表示している。図9Dは、図9Aに確認される4つの関心領域(ROI)から取得したRH237染色の完全性を示す。濃淡の無いベタ部分は、時間の経過とともに下がる傾向を示し、アブレーションされていない領域のROIに対応しており、開放点は時間の経過とともに安定しているもので、傷領域のROIに対応している。
【0122】
図10A,10B、10C,10Dに示すように、光学マッピング中、アブレーション傷内におけるRH237の洗い出し率は、通常組織よりも低かった。そのため、RH237画像の中で、傷と通常組織の間に十分なコントラストが得られた。図10A、10B、10C、10Dは、NADH蛍光に比較する形で、アブレーション手術後のRH237の存在と、心外膜の外観を示している。図10Aは、RFカテーテルによって形成された傷を概略的に示す。図10Bと10Cは、2つの異なるラットの心臓を表しており、fNADH画像(左図)と対応するRH237画像(右図)で傷を示している。これらの画像の下にあるスケールバーは5mmに対応している。図10Dは、3つのRFアブレーション(fNADH、RH237画像及びTTC接触画像)を有するうさぎの心臓を示す。これらの画像の下にあるスケールバーは、5mmに対応している。白色のTTCチャンネル内の茶色がかった縁がRH237存在領域に一致している。重要なことは、図10B、10CにおけるfNADHとRH237画像(傷に対応)の比較からわかるように、RF237の明るい領域の径がfNADHで示す傷の領域よりも著しく小さいことである。RH237画像における傷の大きさは、例えば図6Aに示されたfNADH及びTTC画像に普通に見られる内側のリング状構造に対応している。
【0123】
明るいRH237に対する妥当な説明としては、心外膜毛細血管に重大な損傷が挙げられる。この損傷は、RF電極直下で抵抗熱を直接受けた場所に発生している。したがって、図10B、10Cに見られるように、RH237染料の洗い流しを弱める。RF電流は、アブレーション電極に直に接触する組織の狭い縁の抵抗加熱を通じて組織を加熱する。より深部の組織が加熱されるのは、この小さな環状部からの誘導熱による。不可逆心筋障害に対しては摂氏50度を超える温度が必要である。摂氏100度以上になると電極と組織の接触部で沸騰が始まり、凝固(すなわち、図6Aの茶色がかったリング)を生じる。2つのモードの傷の画像を比較することにより、直接抵抗加熱が、深部組織層への誘導熱移動から区別される。
【血液かん流ラット心臓のRF傷】
【0124】
図11A、11B、11C、11D、及び図11は、血液かん流開胸動物におけるRFアブレーションを視覚化した図である。具体的に、図11Aは、心外膜RFアブレーション傷を有するラット心臓の開胸明視野画像で、図11BはfNADHを用いて観察したものと同じ心臓を示す。図11Cに示すように、アブレーションされた心臓を外部から加えられた血液に完全に浸けることでfNADH信号は不明瞭になった。血液は光学的に中位の密度を有し、可視光の帯域で組織特性の分光学的評価を妨げる。したがって、重要なことは、血液かん流動物におけるfNADH撮影の実行可能性を示すことであった。これは、動物の胸を開けた直後に心外膜に傷を付けるとともに、摘出心臓実験と同様の方法でfNADH画像を取得することによって行った。図11Bに示すように、これらの画像中に主要血管は暗い跡として表れた。しかし、RFアブレーション傷は明確に表れた。これは、ミトコンドリアの豊富な心筋は、十分なfNADHを提供し、周囲のアブレーションされていない組織を明らかにすることを示している。図11Cに示すように、同じ心臓の心外膜面を血液に浸けた場合、視野全体が暗くなった。図11Dに示すように、透明ポリ塩化ビニリデンのシートを用いて血液が心筋表面から移動されると、RFアブレーション傷はfNADH画像内で明らかにされた。
【0125】
図12は、開胸心臓手術の際にイヌの左心房組織から取得したアブレーション傷を示す。組織は、心房細動肺静脈分離手術の領域の近くに配置された。左心房が外科的に開かれ、血液が除かれた。心房組織の通常かん流を行えるように、動物にはその時点でバイパス術が施された。
【0126】
図13は、冷凍アブレーション後のラット心臓の心外膜面上のアブレーション傷の画像である。この画像は、血液の無い摘出されたラットの心臓から取得した。冷凍アブレーションは、金属先端カテーテルの先端上で液体窒素を使って行われた。
【0127】
図14は、無線周波数アブレーションを使ってアブレーションされた肝臓かん流ラット組織を示す。
【0128】
図15は、標準カテーテルの右側の2D画像と、3Dマッピングシステムに3D統合された再生画像である。コンピュータシステムとプログラムを利用して取得したNADH蛍光の2D画像を、図示するように心房組織上に重ねた、3D画像に変換するために利用できる。
【0129】
幾つかの実施例では、アブレーションされた心臓内心臓筋肉組織と、肺静脈と左心房の結合部におけるアブレーションされていない隙間のリアルタイムの画像を取得するための方法が提供されており、その方法は、NADH蛍光を視覚化するために周囲の血液を除くべく、透明流体でもって膨張可能な適合バルーンを膨張させる工程、紫外線能ファイバを使用して肺静脈と左心房の組織のミトコンドリアNADHを励起するために、紫外線を照射する工程と、光学的撮影束を用いて照明された肺静脈と左心房の組織からNADH蛍光を検出する工程と、460nmのバンドパスフィルタで検出NADH蛍光をフィルタリングすることで、蛍光カメラを用いて蛍光画像を作成する工程を有し、前記検出された蛍光画像が、蛍光の欠如によって暗い外観を有するアブレーションされた傷の生理機能と、通常蛍光による明るい外観を有する隙間と、アブレーションされた傷を囲む、明るい輪の形をした虚血性又は損傷した組織を示すものである。
【0130】
幾つかの実施例では、アブレーションされた心臓内心臓筋肉組織と、肺静脈と左心房の結合部におけるアブレーションされていない隙間のリアルタイムの画像を取得するための方法が提供されており、その方法は、NADH蛍光を視覚化するために周囲の血液を除くべく、透明流体でもって膨張可能な適合バルーンを膨張させる工程、紫外線能ファイバを使用して肺静脈と左心房の組織のミトコンドリアNADHを励起するために、紫外線を照射する工程と、CMOSを用いて照明された肺静脈と左心房の組織からNADH蛍光を検出する工程と、460nmのバンドパスフィルタで検出NADH蛍光をフィルタリングすることで、蛍光カメラを用いて蛍光画像を作成する工程とを有し、前記検出された蛍光画像が、蛍光の欠如によって暗い外観を有するアブレーションされた傷の生理機能と、通常蛍光による明るい外観を有する隙間と、アブレーションされた傷を囲む、明るい輪の形をした虚血性又は損傷した組織を示すものである。
【0131】
幾つかの実施例では、肺静脈領域のアブレーションされた傷を視覚化するとともに生理学的情報を提供する方法を示す。この方法は、紫外線光源を使って、アブレーションされた組織と、該アブレーションされた組織の周囲のアブレーションされていない組織とを照明する工程と、照明された組織を撮影する工程と、照明されて撮影された組織の表示を作成する工程とを有し、前記表示が、アブレーションされた組織の周囲のアブレーションされていない領域よりも弱い蛍光をもってアブレーションされた組織を表す。幾つかの実施例では、表示は、低い蛍光又は無蛍光の領域によって囲まれた高蛍光の領域を示す。幾つかの実施例では、低蛍光の領域に囲まれた高蛍光の領域は、高蛍光の領域がアブレーションされていないことを示す。幾つかの実施例では、照明された組織において、蛍光はNADHによって生じる。幾つかの実施例では、無線周波数の冷凍アブレーション又はレーザカテーテルが使用されて組織がアブレーションされる間に、照明、撮影、再生が実行される。幾つかの実施例では、照明と撮影は、ルーメンカテーテルの先端に連結された光ファイバ導波路を用いて行われ、光ファイバ導波路は紫外線光源から照明組織まで紫外線を送る。幾つかの実施例では、組織は心臓組織である。幾つかの実施例では、照明組織の撮影は、追加の化学品なしで、照明組織に対して行われる。
【0132】
幾つかの実施例では、心房細動(AF)を治療する方法が示されており、この方法は、心房細胞の一部をアブレーションする工程と、紫外線光源を用いて組織を照明する工程と、蛍光カメラと蛍光を視覚化するフィルタとを用いて、照明された組織を撮影する工程と、撮影された照明組織の表示を作成する工程と、撮影された照明組織の表示に基づいて、アブレーションされた組織の間の隙間を識別する工程とを有し、アブレーションされた組織は、該組織に暗い外観をもたらす蛍光の欠如によって識別され、アブレーションされていない組織をつなぐ隙間は、明るい外観をもたらす蛍光によって識別され、前記方法はさらに、アブレーションされた組織の間にあって、識別された、アブレーションされていない組織の隙間をアブレーションする工程を含む。幾つかの実施例では、表示は、アブレーションされた組織が、前記隙間よりも弱い蛍光を有するものとして現れる。
【0133】
幾つかの実施例では、組織を撮影するシステムは、末端部と基端部を有するカテーテルと、カテーテルの末端部近傍に配置された膨張可能なバルーンと、カテーテルの末端部からバルーンに伸びる光学ハウジングを備えており、光学ハウジングは、バルーンの内側に、バルーン外側の組織を照明する光源と、照明された組織を撮影するカメラを有する。
【0134】
幾つかの実施例では、組織を撮影するシステムは、末端部と基端部を有するカテーテルと、カテーテルの末端部近傍に配置された膨張可能なバルーンと、カテーテルの末端部からバルーン内に伸びる光学ハウジングと、バルーン内の光源と、バルーン内のカメラとを有し、光源は光学ハウジングに支持されて、組織内の天然還元型ニコチンアミド・アデニン・ヌクレオチド(ADH)又は還元型ンアミド・アデニン・ヌクレオチド(NADH)を励起するように構成されており、カメラは光学ハウジングに支持されており、光源によって照明された組織を撮影するように構成されている。
【0135】
幾つかの実施例では、組織を撮影するシステムは、末端部と基端部とを有するカテーテルと、カテーテルの末端部近傍で血液を流体に置き換えるかん流ポートと、カテーテルの末端部から伸びる光学ハウジングとを有し、光学ハウジングは、組織を照明する発光ダイオード光源と、照明された組織を撮影するために光学画像を電子信号に変換する複数の撮像センサを含む視覚化装置を支持する。
【0136】
幾つかの実施例では、組織を撮影するシステムは、血液を動かして光を送ることができる流体を注入するシースと、シース内に配置されたカテーテルと、末端部と基端部とを有するカテーテルと、カテーテルの末端部から伸びる光学ハウジングとを有し、光学ハウジングは、組織を照明する発光ダイオード光源と照明された組織を撮影するために光学画像を電子信号に変換する複数の撮像センサを支持するように構成されている。
【0137】
幾つかの実施例では、組織を撮影する方法は、カテーテルの末端部近傍に配置された膨張可能なバルーンと前記カテーテルの末端からバルーン内に伸びて光源とカメラをバルーン内に位置させる光学ハウジングとを有するカテーテルを組織に向けて前進させる工程と、組織をアブレーションする工程と、光源を用いて、アブレーションによって治療された組織と周辺組織を含む組織領域を照明し、該組織領域のNADHを励起する工程と、撮像装置を用いて、前記組織領域のNADH蛍光を検出して該組織領域を撮影する工程と、照明されて撮影された組織の表示を作成する工程を含み、アブレーションされた組織を示す表示は、アブレーションされていない組織よりも弱い蛍光を有するものとして表す。
【0138】
以上の開示は、本開示の種々の非限定的実施例を記載したもので、限定的なものではない。本開示の精神と実体を組み込んだ実施例の変形は当業者によって行われ得るものであるから、本開示の実施例は特許請求の範囲の発明とその均等物をすべて含むものと理解すべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2019年8月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端部と基端部とを有する細長い本体と、
前記細長い本体の一部に沿った、組織を切除するアブレーション装置と、
前記組織を照明するために、前記組織中のミトコンドリア還元型アミド・アデニン・ヌクレオチド(NADH)を励起するために十分な少なくとも一つの波長を有する光を提供する光源と、
照明された前記組織からNADH蛍光を検出するために少なくとも一つの波長を有する光を受けるように構成された、照明された前記組織からNADH蛍光を検出するセンサと、
前記光源からの前記光を組織に送り且つ前記NADH蛍光を前記センサに送る、一つ又は複数の光ファイバと、
前記アブレーション装置を用いて前記組織を切除する間、前記センサから検出された前記NADH蛍光をリアルタイムに取得する工程と、
前記組織の切除の進行を監視するために、検出された前記NADH蛍光のデジタル表示を生成する工程と、
前記組織を切除する間、前記NADH蛍光の変化に基づいて前記デジタル表示を更新する工程を実行するようにプログラムされたプロセッサを備えており、
照明された前記組織から検出された前記NADH蛍光の変化は、更なるアブレーションが必要か否かをユーザが判断できるように、前記組織のアブレーションの進行度を示す、組織を撮影するシステム。
【請求項2】
前記組織を照明する前記光は、約300nmと約400nmとの間の少なくとも一つの波長を有する、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記センサは、約435nmと約485nmの間の少なくとも一つの波長を有する光を受けるように構成されている、請求項2のシステム。
【請求項4】
前記アブレーション装置は、無線周波数エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、及び熱エネルギーから選択されたエネルギー源を有する、請求項1のシステム。
【請求項5】
前記細長い本体の前記末端部に流体を供給するように構成されたかん流ポートを有する、請求項1のシステム。
【請求項6】
前記末端部の近傍に前記細長い本体に沿って配置された膨張可能なバルーンを有する、請求項1のシステム。
【請求項7】
前記細長い本体が血管カテーテルである、請求項1のシステム。
【請求項8】
末端部と基端部を有する細長い本体と、
組織切除するために前記細長い本体の前記末端部に配置されたアブレーション装置と、
組織を照明して前記組織のミトコンドリア還元型アミド・アデニン・ヌクレオチド(NADH)を励起するために、波長が約300nmと約400nmの間の光を提供する光源と、
照明された前記組織からNADH蛍光を検出するために、波長が約435nmと約485nmの間の光を受けて、照明された前記組織からNADH蛍光を検出するように構成されたセンサと、
前記光源からの光を前記組織に送り且つ前記NADH蛍光を前記センサに送る、一つ又は複数の光ファイバと、
前記センサと関連付けられ、切除された組織と切除されていない組織とを区別するために、照明された前記組織のデジタル表示を生成するように構成されたプロセッサ、を備えた組織を撮影するシステム。
【請求項9】
前記細長い本体が血管カテーテルである、請求項8のシステム。
【請求項10】
前記アブレーション装置は、無線周波数エネルギー、マイクロ波エネルギー、電気エネルギー、電磁エネルギー、冷凍エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、及び熱エネルギーから選択されたエネルギー源を有する、請求項8のシステム。
【請求項11】
前記細長い本体に沿って配置された膨張可能なバルーンを有する、請求項8のシステム。
【外国語明細書】
2020116368000001.pdf