【解決手段】制御手段は、各集水槽20に貯留されたろ過水29を、他の集水槽20に集水洗浄水として供給する洗浄水供給手段により、複数の集水槽20のうち少なくとも一の集水槽20である対象集水槽20以外の集水槽20から集水洗浄水を集水し、対象集水槽20に洗浄水を供給する。同時に、空気をリフト管30に供給する空気供給手段および集水槽20に貯留されたろ過水29を、リフト水として供給するリフト水供給手段によりリフト管30に空気およびリフト水を供給するリフト集水洗浄工程を、対象集水槽20を順次切り替えながら実行する。
前記リフト集水洗浄工程の前に、前記空気供給手段および前記リフト水供給手段により前記リフト管に前記空気および前記リフト水を供給するリフト洗浄工程を実行する、請求項1記載のろ過装置。
前記制御手段は、前記リフト洗浄工程の前に、前記洗浄水供給手段により前記対象集水槽以外の集水槽から前記集水洗浄水を集水し、前記対象集水槽に前記洗浄水を供給する集水洗浄工程を実行する、請求項2記載のろ過装置。
前記制御手段は、前記揚砂工程の後に、前記空気供給手段および前記リフト水供給手段により前記リフト管に前記空気および前記リフト水を供給するリフト洗浄工程を実行する、請求項4記載のろ過装置。
底面と、前記底面から略垂直に立ち上がる壁部と、を有し、前記壁部から原水を流入させるろ過槽と、前記壁部から前記底面に向けて傾斜し、前記原水をろ過する粒状のろ材によりろ過層が形成される集水面を有し、前記ろ過層でろ過されたろ過水を貯留する複数の集水槽と、下側の端部に設けられた吸込口と、上側の端部に設けられた吐出口と、を有し、前記ろ材を吸い上げるリフト管と、前記ろ材を前記吸込口から前記吐出口まで吸い上げるための空気を、前記リフト管に供給する空気供給手段と、各前記集水槽に貯留されたろ過水を、前記吸込口にリフト水として供給するリフト水供給手段と、各前記集水槽に貯留されたろ過水を、他の前記集水槽に集水洗浄水として供給する集水洗浄水供給手段と、前記吐出口よりも下方で前記ろ材から分離した懸濁物質を含む排水を前記ろ過槽外部に排出する排出手段と、前記ろ材を洗浄するため、前記空気供給手段および前記集水洗浄水供給手段を制御する制御手段と、を備えるろ過装置を準備する工程と、
前記洗浄水供給手段により前記複数の集水槽のうち少なくとも一の集水槽である対象集水槽以外の集水槽から前記集水洗浄水を集水し、前記対象集水槽に前記洗浄水を供給すると同時に、前記空気供給手段および前記リフト水供給手段により前記リフト管に前記空気および前記リフト水を供給するリフト集水洗浄工程を、前記対象集水槽を順次切り替えながら実行する工程と、を備えるろ材洗浄方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るろ過装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、ろ過装置1の内部構成を俯瞰的に示す説明図である。
図2は、ろ過装置1の集水槽20とその周辺設備を示す説明図である。
図3は、集水槽20の集水板25を示す斜視図である。
図4は、ろ過装置1の概略構成を示す断面図である。
【0011】
ろ過装置1は、操作盤2と、ろ過槽10と、複数の集水槽20と、複数の揚砂管30と、分離槽40と、排水トラフ50と、を有している。各部材は、主にステンレス鋼(例えばSUS316)を主材として形成されている。
【0012】
操作盤2は、ろ過装置1の運転状況を表示する表示画面、指示を入力するための操作部を有している。また、操作盤2は、予め記憶された自動運転プログラムや操作部からの入力に基づいて、ろ過装置1の各部を電気的に制御する制御部3を有している。本実施形態においては、制御部3は、ろ材を洗浄するため、空気供給手段および集水洗浄水供給手段を制御する制御部として機能する。制御部3により実行される処理は、後述する。
【0013】
ろ過槽10は、水平断面が略円形の円柱形状の槽である。ろ過槽10は、底面11と、底面11から略垂直に立ち上がる壁部12と、を有している。ろ過槽10は、ろ過槽10内の水位の目安となる高レベル線H、中レベル線Mおよび低レベル線Lを有している。各レベル線は、制御部3が各種制御を行う際に用いられる。壁部12は、ろ過槽10内の様子を観察するための点検窓13を有している。また、壁部12は、原水流入口15と、ろ過槽排水口16と、洗浄水排水口17と、を有している。
【0014】
原水流入口15は、ろ過槽10に原水を流入させる。原水は、懸濁物質(浮遊物質、SS)が含まれるろ過対象の水である。原水流入口15は、高レベル線Hよりも上方であって、分離槽40外に設けられている。
【0015】
ろ過槽排水口16は、ろ過槽10内の水を排水させる。ろ過槽排水口16は、洗浄水排水口17の下側で集水槽20の上側に設けられている。ろ過槽排水口16は、ろ過槽排水弁18を有する配管と接続されており、ろ過槽排水弁18の開閉に応じてろ過槽10からの排水を制御する。
【0016】
洗浄水排水口17は、排水トラフ50の排水部51に流入した懸濁物質や洗浄水を排水(アンダーフロー)させる。洗浄水排水口17は、排水トラフ50の排水部51のU字内の下方に設けられている。
【0017】
集水槽20は、ろ過槽10内の下側に設けられた槽であり、ろ過層60でろ過されたろ過水29を貯留する。本実施形態においては、集水槽20が右側集水槽20a、中央側集水槽20bおよび左側集水槽20c(以下、各集水槽20a、20b、20cを区別しない場合には単に「集水槽20」という。)を有する例を説明するが、集水槽20の数は2以上であればよい。集水槽20は、壁部12から底面11に向けて下方に傾斜する集水面21を有している。集水面21は、ろ過砂61が堆積しろ過層60が形成される面である。この集水面21は、集水口22を有し、集水口22は集水板25により塞がれている。集水板25(ストレーナ)は、
図3に示すように、小間隔に並べられた複数のウエッジワイヤ26で形成されている。
【0018】
集水槽20は、集水面21と対向する壁部12の面上にろ過水出入口27(右側ろ過水出入口27a、中央側ろ過水出入口27b、左側ろ過水出入口27c)を有している。また、集水槽20は、ろ過水出入口27と対向する位置であり、集水面21の下端近傍に、揚砂水出口28(右側揚砂水出口28a、中央側揚砂水出口28b、左側揚砂水出口28c)を有している。
【0019】
ろ過層60は、集水面21(集水板25)の傾斜角に沿うように、ろ過砂61が堆積され形成された層である。ろ過砂61は、原水をろ過する粒状の硅砂、マンガン砂、セラミック砂などである。
【0020】
揚砂管30(リフト管)は、ろ過槽10内に設けられ、管状で上下方向に延びてろ過砂61を吸い上げる管である。揚砂管30は、上側の端部側が略水平に折り曲げられている。本実施形態においては、3本の揚砂管30が設けられる例を説明するが、ろ過砂61の洗浄が可能であれば本数は問わない。3本の揚砂管30は、それぞれ3つの集水槽20の位置に対応して設けられている。
【0021】
揚砂管30は 、吸込口31と、吐出口32と、を有している。吸込口31は、揚砂管30の下側に位置する端部に設けられ、ラッパ形状(ベルマウス)を有している。吸込口31は、ろ過層60内に埋没され(
図4)、ろ過槽10の底面11近くに達し底面11に対向している。3本の揚砂管30の吸込口31は、底面11からの高さが同じになるように配置されている。吐出口32は、揚砂管30の上側に位置する端部に設けられている。吐出口32は、ろ過槽10内の上部に設けられた仕切板41に取り付けられ、原水流入口15の対向側に向けて開口している。
【0022】
分離槽40は、ろ過槽10の上方に設けられた槽であり、吐出口32から吐出された洗浄されたろ過砂61と水(揚砂洗浄水)とを分離する。分離槽40は、仕切板41によりろ過槽10の上側が仕切られることにより形成されている。分離槽40は、吐出口32が向く側の空間であり、集水面21の上端の上方に形成されている。
【0023】
排水トラフ50は、ろ過槽10内の上方であって、かつ揚砂管30の吐出口32の下側に設けられている。また、排水トラフ50は、仕切板41を介して分離槽40と対向する位置に、仕切板41と平行に配置されている。排水トラフ50は、排水部51と、傾斜板52と、を有している。排水部51は、鉛直方向に沿う断面が略U字状であり、両上端縁がギザギザ形状(山形)に形成されている(
図1)。傾斜板52は、
図4に示すように、排水部51の下端から斜め下方に延びる板状部材である。傾斜板52の先端部は、ろ過層60に達している(埋もれている)。傾斜板52は、ろ過砂61を通過させるための小孔52aを有する。傾斜板52の上方には、仕切板41が位置している。本実施形態においては、排水トラフ50および洗浄水排水口17は、吐出口よりも下方でろ材から分離した懸濁物質を含む排水をろ過槽外部に排出する排出手段として機能する。
【0024】
ろ過装置1は、揚砂ブロア70と、ろ過ポンプ90と、集水、洗浄、揚砂するための配管類と、をさらに有している。
【0025】
揚砂ブロア70は、調整弁71を有するブロア管72を介して各揚砂管30の吸込口31側と接続されている。揚砂ブロア70は、各揚砂管30に空気を供給し、空気を揚砂管30内において上方に(吐出口32側に)流す。本実施形態においては、揚砂ブロア70およびブロア管72は、ろ材を吸込口から吐出口まで吸い上げるための空気を、リフト管に供給する空気供給手段として機能する。
【0026】
ろ過ポンプ90は、配管類と接続され、ろ過水出入口27から排水される水(ろ過水29)を送り出す。
【0027】
集水、洗浄、揚砂するための配管類として、ろ過装置1は、集水配管73と、移送配管76と、洗浄水配管78と、揚砂水配管80と、を有している。
【0028】
集水配管73は、各集水槽20のろ過水29を集水する。集水配管73は、上流側が右側集水配管73a、中央側集水配管73b、および左側集水配管73cに分岐されており、それぞれの上流側の一端は対応する集水槽20のろ過水出入口27に接続されている。各集水配管73a、73b、73cは、各集水配管73a、73b、73cの開閉を制御する右側集水弁74a、中央側集水弁74b、および左側集水弁74c(集水弁74)を有している。集水配管73は、集水弁74の下流側で合流し、合流後の下流側の一端はろ過ポンプ90に接続されている。集水配管73は、各集水配管73a、73b、73cの合流箇所の下流とろ過ポンプ90との間で分岐しており、この分岐した配管はろ過水ドレン75となる。
【0029】
移送配管76は、ろ過ポンプ90により送り出されたろ過水を、ろ過装置1とは別途設けられたろ過水タンク(図示せず)に移送する。移送配管76は、上流側の一端がろ過ポンプ90に接続され、下流側の他端がろ過水タンク(ろ過水タンクに接続された配管)に接続されている。移送配管76は、移送配管76の開閉を制御するろ過水移送弁77を有している。
【0030】
洗浄水配管78は、各集水槽20に貯留されたろ過水29を他の集水槽20に集水洗浄水として供給する。洗浄水配管78は、右側洗浄水配管78a、中央側洗浄水配管78b、および左側洗浄水配管78c(洗浄水配管78)を有している。洗浄水配管78の上流側の一端は、移送配管76のろ過ポンプ90とろ過水移送弁77との間に分岐接続されている。各洗浄水配管78の下流側の一端は、対応する集水槽20と接続された集水配管73の集水弁74よりも集水槽20側に接続されている。すなわち、集水配管73は、集水槽20に集水洗浄水を供給するための洗浄水配管78の機能を兼ねている。これにより、ろ過装置1は、配管長を短くできるという利点がある。各洗浄水配管78は、各洗浄水配管78の開閉を制御する右側洗浄弁79a、中央側洗浄弁79b、および左側洗浄弁79c(洗浄弁79)を有している。
【0031】
本実施形態においては、集水配管73および洗浄水配管78は、集水槽に貯留されたろ過水を、他の集水槽に集水洗浄水として供給する集水洗浄水供給手段として機能する。
【0032】
揚砂水配管80は、集水槽20に貯留されたろ過水29を揚砂管30の吸込口31に揚砂洗浄水(リフト水)として供給する。揚砂水配管80の上流側の一端は、移送配管76のろ過ポンプ90とろ過水移送弁77との間に接続されている。揚砂水配管80は、下流側が右側揚砂水配管80a、中央側揚砂水配管80b、および左側揚砂水配管80cに分岐されている。各揚砂水配管80の下流側の一端は、対応する集水槽20に設けられた揚砂水出口28に接続されている。揚砂水配管80は、揚砂水配管80の開閉を制御する揚砂水弁81を有している。また、各揚砂水配管80a、80b、80cは、各揚砂水配管80a、80b、80cの開度を制御する右側調整弁82a、中央側調整弁82b、および左側調整弁82c(調整弁82)を有している。
【0033】
本実施形態においては、揚砂水配管80は、後述する制御手段に制御されることにより空気供給手段とともに稼働し、各集水槽に貯留されたろ過水を、吸込口にリフト水として供給するリフト水供給手段として機能する。
【0034】
以上のようなろ過装置1は、操作盤2を介したユーザの指示に基づく手動運転、または予めプログラムされた自動運転を行う。自動運転においては、ろ過通水運転と、洗浄運転とが繰り返し実行される。以下、制御部3により実行されるろ過装置1の自動運転について説明する。
【0035】
図5は、自動運転を説明するフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、制御部3は、ろ過通水運転として、ろ過通水工程を実施する。制御部3は、原水流入口15から原水を流入させると同時に、各集水弁74および各ろ過水移送弁77を開く。これにより、ろ過層60でろ過されたろ過水29が、集水槽20からろ過水タンクに移送される。ろ過槽10内の原水の水位が低レベル線L以下の場合、制御部3はろ過水移送弁77を閉じて、ろ過通水を待機する。原水の水位が中レベル線M以上となった場合、制御部3はろ過水移送弁77を開いてろ過通水を再開する。
【0037】
制御部3は、予め定められたろ過通水設定時間が経過した場合、水位が高レベルH以上となった場合、および設定された時期が到来した場合などを条件に、ろ過通水運転(ろ過通水工程)を終了し、洗浄運転に進む。なお、制御部3は、ろ過通水設定時間の経過の判断に、ろ過通水の待機時間はカウントしない。
【0038】
ステップS2からステップS7において、制御部3は、洗浄運転として、集水洗浄工程、第1揚砂洗浄工程、揚砂集水洗浄工程、揚砂工程、第2揚砂洗浄工程およびろ過槽排水工程を順次実施する。
【0039】
ステップS2の集水洗浄工程は、リフト洗浄工程(第1揚砂洗浄工程、
図5のステップS3)の前に実施される工程であり、洗浄水供給手段により対象集水槽以外の集水槽から集水洗浄水を集水し、対象集水槽に洗浄水を供給する工程に該当する。すなわち、集水洗浄工程は、逆洗対象となる1つの集水槽20(集水板25)を順次切り替えながら、洗浄対象となる1つの集水槽20以外の集水槽20からろ過水29を供給し、ろ過砂61を逆洗する工程である。集水洗浄工程は、圧密していたろ過砂61を集水洗浄水により膨化させ、次工程である揚砂洗浄工程で揚砂できるようにする。また、集水洗浄工程は、次工程で懸濁成分をいち早く揚砂して除去するために、ろ過砂61が捕捉した懸濁物質をろ過砂でサンドイッチ状に包み込む。
【0040】
ステップS3の第1揚砂洗浄工程は、リフト集水洗浄工程(揚砂集水洗浄工程、
図5のステップS4)前に実施される工程であり、空気供給手段およびリフト水供給手段によりリフト管に空気およびリフト水を供給する工程に該当する。揚砂洗浄工程は、各揚砂管30に空気および揚砂洗浄水を供給する。第1揚砂洗浄工程は、主にろ過層表層側のろ過砂61を揚砂して洗浄する。また、第1揚砂洗浄工程は、集水洗浄工程でろ過砂61が包み込んだ懸濁物質を除去する。
【0041】
ステップS4の揚砂集水洗浄工程は、洗浄水供給手段により対象集水槽以外の集水槽から集水洗浄水を集水し、対象集水槽に洗浄水を供給すると同時に、空気供給手段およびリフト水供給手段によりリフト管に空気およびリフト水を供給する工程に該当する。すなわち、揚砂集水洗浄工程は、逆洗対象となる1つの集水槽20を順次切り替えながら逆洗する集水洗浄工程と、ろ過砂61を揚砂洗浄する揚砂洗浄工程を同時に行う。揚砂集水洗浄工程は、第1揚砂洗浄工程では不十分となるろ過層上部60uのろ過砂61を効率良く移動させ、洗浄時間を短縮する。
【0042】
ステップS5の揚砂工程は、リフト集水洗浄工程(揚砂集水洗浄工程、
図5のステップS4)の後に実施される工程であり、空気供給手段によりリフト管に空気を供給するリフト工程に該当する。揚砂工程は、集水面21付近のろ過層深層側のろ過砂61の洗浄を目的としている。
【0043】
ステップS6の第2揚砂洗浄工程は、揚砂工程の後に、空気供給手段およびリフト水供給手段によりリフト管に空気およびリフト水を供給するリフト洗浄工程である。第2揚砂洗浄工程は、ろ過層60のろ過面を再形成することを目的とする。すなわち、ろ過ポンプ90でろ過水を吸引することで、集水板25周辺のろ過砂61を圧密させてろ過砂61間の隙間を均一にする。
【0044】
揚砂洗浄工程(ステップS2)から揚砂工程(ステップS5)の詳細は、後述する。第2揚砂洗浄工程(ステップS6)については、第1揚砂洗浄工程(ステップS3)とほぼ同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0045】
ステップS7のろ過槽排水工程は、ろ過槽10内にある原水または洗浄水などの汚水をろ過槽排水口16から排水する。制御部3は、ろ過槽排水弁18を開き、ろ過槽10内の水位が低レベル線L以下となるまで、または設定時間が経過するまで水を排水する。また、ろ過槽排水工程は、ろ過槽10内に浮遊している懸濁物質をろ過槽排水口16から排水する。
【0046】
制御部3は、一連の洗浄運転が終了すると、再びろ過通水工程(ステップS1)に戻り、処理を繰り返す。
【0047】
次に、集水洗浄工程(ステップS2)から揚砂工程(ステップS5)の詳細な処理を説明する。
【0048】
図6は、
図5の集水洗浄工程(ステップS2)を説明するフローチャートである。
【0049】
以下の説明においては、
図4に示すように、ろ過層60を上下に分割した場合の上部側かつ表層側の領域を、ろ過層上部60uという。ろ過層60の下部側かつ表層側の領域を、ろ過層下部60bという。また、ろ過層60のろ過層上部60uおよびろ過層下部60bの深層側の領域を、ろ過層内部60iという。
【0050】
ステップS11において、制御部3は、逆洗の対象となる集水槽20(対象集水槽20)の集水弁74を閉じる。また、制御部3は、対象集水槽20以外の集水槽20の集水弁74を開く。例えば、制御部3は、対象集水槽20としての左側集水槽20cの集水弁74cを閉じ、右側集水槽20a、中央側集水槽20bの集水弁74a、74bを開く。
【0051】
ステップS12において、制御部3は、対象集水槽20の洗浄弁79を開く。また、制御部3は、対象集水槽20以外の集水槽20の洗浄弁79を閉じる。例えば、制御部3は、左側集水槽20cの洗浄弁79cを開き、右側集水槽20a、中央側集水槽20bの洗浄弁79a、79bを閉じる。
【0052】
ステップS13において、制御部3は、揚砂水弁81を閉じる。ステップS14において、制御部3は、揚砂ブロア70を停止する。また、ステップS15において、制御部3は、ろ過ポンプ90を起動する。ステップS16において、制御部3は、予め設定された集水洗浄設定時間の経過を判断するためのタイマのカウントをスタートする。
【0053】
これにより、例えば右側集水槽20a、中央側集水槽20bよりろ過水29が集水され、集水されたろ過水29が左側集水槽20cに逆洗水として送られる。これにより、左側集水槽20cの集水板25は洗浄される。ろ過砂61から分離した懸濁物質は、ろ過槽10の上方まで浮遊し、水位差を利用して排水トラフ50の排水部51に流入し、洗浄水排水口17から排出される。
【0054】
また、逆洗水により、圧密されていたろ過砂61が膨化(膨張)し、次の揚砂洗浄工程でスムーズに揚砂を行うようにする。膨化が終了すると、ろ過砂61はろ過層下部60bに堆積されるため、逆洗水はろ過層上部60u側に流入しやすくなる。すると、ろ過層上部60uのろ過砂61がろ過層下部60b側(揚砂管30側)に移動する。ここで、
図10(a)は、集水洗浄工程の説明図である。ろ過層上部60uに位置するろ過砂61aは、ろ過層下部60bに移動し、ろ過砂61bのように、ろ過層下部60bの表層に堆積されている懸濁物質63を包み込む様に覆う。これにより、懸濁物質63は、ろ過砂61bによりサンドイッチ状に捕捉される。集水洗浄工程は、ろ過層下部60bの懸濁物質63がサンドイッチ状に捕捉されることで、目的を達成する。懸濁物質63が捕捉されたか否かは、点検窓13より確認される。
【0055】
ステップS17において、制御部3は、集水洗浄設定時間が経過したか否かを判定する。制御部3は、設定時間が経過していないと判定した場合(ステップS17のNo)、設定時間が経過するまで対象集水槽20の洗浄を継続する。設定時間は、上記目的が達成される程度の時間に設定されるのが好ましい。一方、制御部3は、設定時間が経過したと判定した場合(ステップS17のYes)、ステップS18において、ろ過ポンプ90を停止する。
【0056】
ステップS19において、制御部3は、全ての集水槽20について、対象集水槽20として洗浄が完了したか否かを判定する。制御部3は、全ての集水槽20について洗浄が完了していないと判定した場合(ステップS19のNo)、ステップS20において、対象集水槽20を切り替える。その後、集水弁制御ステップS11に戻り、制御部3は、対象集水槽20の集水洗浄を行う。制御部3は、全ての集水槽20について洗浄が完了するまで、集水弁制御ステップS11から完了判定ステップS19を繰り返す。制御部3は、全ての集水槽20の洗浄が完了したと判定した場合(ステップS19のYes)、集水洗浄工程を終了して、揚砂洗浄工程に進む。
【0057】
図7は、
図5の揚砂洗浄工程(ステップS3)を説明するフローチャートである。
【0058】
ステップS21において、制御部3は、全ての集水槽20の集水弁74を開く。ステップS22において、制御部3は、全ての集水槽20の洗浄弁79を閉じる。ステップS23において、制御部3は、揚砂水弁81を開く。ステップS24において、制御部3は、ろ過ポンプ90および揚砂ブロア70を起動する。ステップS25において、制御部3は、予め設定された揚砂洗浄設定時間の経過を判断するためのタイマのカウントをスタートする。
【0059】
これにより、各集水槽20から集水されたろ過水29は、揚砂洗浄水として揚砂水出口28から揚砂管30の吸込口31近傍へ供給される。揚砂洗浄水は、ろ過槽10底部側のろ過砂61の空隙を広げ、ろ過砂61を揚砂(上昇)しやすくするという作用を有する。ろ過層下部60bおよびこの深層側に位置するろ過砂61は、揚砂ブロア70からの空気による上昇流で、揚砂洗浄水とともに揚砂管30内を上昇する。このとき、集水洗浄工程でろ過砂61bによりサンドイッチ状に捕捉された懸濁物質63は、揚砂管30に吸い込まれ、いち早く除去される。
【0060】
揚砂管30内では、揚砂洗浄水との撹拌、混合作用により、ろ過砂61が洗浄されながら吐出口32に至る。このような洗浄作用によって、ろ過砂61から懸濁物質などの付着分が除去される。吐出されたろ過砂61を含む揚砂洗浄水は、排水トラフ50の傾斜板52の上方(分離槽40)に吐出される。
【0061】
ろ過砂61から除去された懸濁物質は、揚砂洗浄水の流れとともに仕切板41の下方を通って排水トラフ50側に流れる。そして、水位差を利用して排水トラフ50の排水部51の上端縁を越えて排水部51内に流入し、洗浄水排水口17からろ過槽10外に排出される。一方、吐出されたろ過砂61は、仕切板41によって排水トラフ50側に流れるのを阻止され、その自重により沈降する。ここで、
図10(b)は、揚砂洗浄工程の説明図である。ろ過砂61cは、傾斜板52上に一時的に堆積する。このろ過砂61cは、小孔52aを通過することにより徐々にろ過層60に流動する。これにより、洗浄されたろ過砂61cがろ過層60の表層部に少しずつ移動し、ろ過層下部60bまで移動してしまい再び揚砂されてしまうことを低減する。
【0062】
なお、制御部3は、揚砂管30の口径や配置数、洗浄時間間隔などに応じて、各揚砂管30に対して交互に空気および揚砂洗浄水を供給してもよいし、全ての揚砂管30に対して同時に空気を供給してもよい。また、制御部3は、空気および揚砂洗浄水の供給量も、調整弁71、82により適宜調整することができる。これらは、揚砂集水洗浄工程(ステップS4)、揚砂工程(ステップS5)および第2揚砂洗浄工程(ステップS6)においても同様である。
【0063】
ステップS26において、制御部3は、揚砂洗浄設定時間が経過したか否かを判定する。制御部3は、設定時間が経過していないと判定した場合(ステップS26のNo)、設定時間が経過するまで待機する。一方、制御部3は、設定時間が経過したと判定した場合(ステップS26のYes)、揚砂洗浄工程を終了して、揚砂集水洗浄工程に進む。
【0064】
図8は、
図5の揚砂集水洗浄工程(ステップS4)を説明するフローチャートである。
【0065】
ステップS31において、制御部3は、ろ過ポンプ90および揚砂ブロア70を起動する。ステップS32において、制御部3は、対象集水槽20の集水弁74を閉じる。また、制御部3は、対象集水槽20以外の集水槽20の集水弁74を開く。ステップS33において、対象集水槽20の洗浄弁79を開く。また、制御部3は、対象集水槽20以外の集水槽20の洗浄弁79を閉じる。ステップS34において、制御部3は、揚砂水弁81を開く。ステップS35において、制御部3は、予め設定された揚砂集水洗浄設定時間の経過を判断するためのタイマのカウントをスタートする。
【0066】
ここで、前工程である第1揚砂洗浄工程においては、ろ過層上部60uの深層側である
図10(c)に示す領域60xに位置するろ過砂61が流動し辛く、固まりやすい。揚砂集水洗浄工程においては、揚砂洗浄工程および集水洗浄工程を同時に行うことにより、この領域60xのろ過砂61を洗浄することを目的とする。
【0067】
例えば右側集水槽20a、中央側集水槽20bよりろ過水29が集水され、集水されたろ過水29は左側集水槽20cに送られる。ここで、
図10(d)は、揚砂集水洗浄工程の説明図である。対象集水槽20としての左側集水槽20cは、逆洗水65が供給されることにより、領域60xのろ過砂61をろ過層上部60u側へと移動させることができる。ろ過層上部60u側へ移動したろ過層61dは、さらにろ過層下部60bに移動する。これにより、第1揚砂洗浄工程においては揚砂管30への集砂が不十分であった領域60xのろ過砂61をろ過層下部60bに移動させ、揚砂管30で撹拌洗浄することができる。ゆえに、揚砂集水洗浄工程においては、ろ過層上部60uのろ過砂61を効率良くろ過層下部60bへ移動でき、洗浄時間を短縮することができる。
【0068】
ステップS36において、制御部3は、揚砂集水洗浄設定時間が経過したか否かを判定する。制御部3は、設定時間が経過していないと判定した場合(ステップS36のNo)、設定時間が経過するまで対象集水槽20の洗浄を継続する。一方、制御部3は、設定時間が経過したと判定した場合(ステップS36のYes)、ステップS37において、全ての集水槽20について、対象集水槽20として揚砂集水洗浄が完了したか否かを判定する。制御部3は、全ての集水槽20について揚砂集水洗浄が完了していないと判定した場合(ステップS37のNo)、ステップS38において、対象集水槽20を切り替える。その後、集水弁制御ステップS32に戻り、以降の処理を実行する。制御部3は、全ての集水槽20について洗浄が完了するまで、集水弁制御ステップS32から完了判定ステップS37を繰り返す。制御部3は、全ての集水槽20の洗浄が完了したと判定した場合(ステップS37のYes)、ステップS39において、ろ過ポンプ90を停止し、揚砂集水洗浄工程を終了し、揚砂工程に進む。
【0069】
図9は、
図5の揚砂工程(ステップS5)を説明するフローチャートである。
【0070】
ステップS41において、制御部3は、全ての集水槽20の集水弁74および洗浄弁79を閉じる。ステップS42において、制御部3は、揚砂水弁81を閉じる。ステップS43において、制御部3は、ろ過ポンプ90を停止する。ステップS44において、制御部3は、揚砂ブロア70を起動する。ステップS45において、制御部3は、予め設定された揚砂設定時間の経過を判断するためのタイマのカウントをスタートする。
【0071】
これにより、ろ過層下部60bに位置するろ過砂61は、揚砂ブロア70からの空気による上昇流で揚砂管30内を上昇する。このとき、揚砂洗浄水は供給されていないため、一時的に吸込口31付近に水(原水)がなくなり、空洞が発生する。また、揚砂集水洗浄工程とは異なり、ろ過ポンプ90が起動されていないため、ろ過層内部60iのろ過砂61(集水板25近傍のろ過砂61)は集水面21に対して流動できる。ろ過層内部60iのろ過砂61は、自重で空洞まで落下し、また、揚砂に必要な水は吸込口31付近に流動する。これにより、ろ過層内部60iのろ過砂61は、揚砂洗浄工程と同様に、撹拌洗浄される。
【0072】
ステップS46において、制御部3は、揚砂設定時間が経過したか否かを判定する。制御部3は、設定時間が経過していないと判定した場合(ステップS46のNo)、設定時間が経過するまで待機する。一方、制御部3は、設定時間が経過したと判定した場合(ステップS46のYes)、ステップS47において、揚砂ブロア70を停止し、揚砂工程を終了して、ろ過槽排水工程(
図5のステップS7)に進む。
【0073】
このようなろ過装置1は、上述したとおりの洗浄運転を行うため、ろ過層上部60u、ろ過層下部60bおよびろ過層内部60iの全ての領域において、ろ過砂61を満遍なく洗浄することができる。特に、ろ過装置1は、揚砂集水洗浄工程を実行することにより、従来の洗浄方法では洗浄が不十分であった、特に上側側のろ過層内部60iのろ過砂61をろ過層下部60bまで流動させることができ、効率良く洗浄を実施することができる。これにより、ろ過装置1は、従来のろ過装置に比べて、ろ過砂61の寿命(交換周期)を格段に延ばすことができる。
【0074】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
【0075】
例えば、上記の実施の形態では、ろ過装置1が、ろ過砂61をろ材とする例を説明したが、ろ過装置のろ材は限定されない。すなわち、ろ材は、ろ過砂に限らず、その他の微細な粒状のろ材であってもよく、アンスラサイト、ガーネット、サンゴ砂、酸化アルミニウム、骨炭、粒状活性炭、ゼオライトなどのろ過砂や吸着材であってもよい。ろ材が吸着材の場合には、ろ過装置は吸着装置となる。
【0076】
制御部により実行される洗浄工程は、少なくとも揚砂集水洗浄工程が含まれていればよく、制御内容や工程の順序などは上記実施形態に限られない。