特開2020-116515(P2020-116515A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社アルファサービスの特許一覧

<>
  • 特開2020116515-アオコ濃縮回収装置 図000003
  • 特開2020116515-アオコ濃縮回収装置 図000004
  • 特開2020116515-アオコ濃縮回収装置 図000005
  • 特開2020116515-アオコ濃縮回収装置 図000006
  • 特開2020116515-アオコ濃縮回収装置 図000007
  • 特開2020116515-アオコ濃縮回収装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-116515(P2020-116515A)
(43)【公開日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】アオコ濃縮回収装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/24 20060101AFI20200710BHJP
   C02F 1/40 20060101ALI20200710BHJP
   E02B 15/00 20060101ALI20200710BHJP
【FI】
   C02F1/24 A
   C02F1/40 B
   C02F1/40 K
   E02B15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-9423(P2019-9423)
(22)【出願日】2019年1月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)試験の実施による公開 試験日 平成30年5月20日(現在も継続試験中) 試験場所 大塚池(茨城県水戸市大塚町1827−1 大塚公園内)
(71)【出願人】
【識別番号】512078708
【氏名又は名称】有限会社アルファサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 吉男
【テーマコード(参考)】
2D025
4D037
4D051
【Fターム(参考)】
2D025AA00
4D037AA05
4D037AB02
4D037BA03
4D037BA07
4D051AA00
4D051AB01
4D051AB07
4D051CA01
4D051DA03
4D051DA13
4D051DB02
(57)【要約】
【課題】アオコ原水からアオコを効率的に回収でき、しかもほぼメンテナンスフリーで且つランニングコストを低減できるアオコ回収装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アオコ濃縮槽14、アオコ濃縮槽14へのアオコ原水取水手段16、マイクロバブル水生成手段と18、マイクロバブル水をアオコ濃縮槽14に送り込みアオコ濃縮槽14の液面近傍にマイクロバブル膜Aを形成するマイクロバブル膜形成手段20、マイクロバブル膜Aの上側にアオコ原水を溢流させるアオコ原水溢流手段22、アオコ原水の溢流量と同等の液量をマイクロバブル膜Aの下側からアオコ濃縮槽14外に排出して濾過流を形成する濾過流形成手段24、濾過によりマイクロバブル膜Aの上側に濃縮されたアオコをアオコ濃縮槽14外に回収するアオコ回収手段26と、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アオコを含有するアオコ原水からアオコを濃縮して回収するアオコ濃縮回収装置において、
アオコ濃縮槽と、
前記アオコ濃縮槽に前記アオコ原水を取水するアオコ原水取水手段と、
気泡径がマイクロオーダーレベルのマイクロバブルを含有するマイクロバブル水を生成するマイクロバブル水生成手段と、
前記生成したマイクロバブル水を前記アオコ濃縮槽の液中に連続的に送り込むことにより前記アオコ濃縮槽の液面近傍にマイクロバブルの気泡密集層であるマイクロバブル膜を形成するマイクロバブル膜形成手段と、
前記形成したマイクロバブル膜の上側に前記アオコ原水を溢流させる溢流管を有するアオコ原水溢流手段と、
前記アオコ原水の溢流量と同等の液量を前記マイクロバブル膜の下側から前記アオコ濃縮槽外に排出して前記マイクロバブル膜の上側から下側に向かう流れを形成することにより前記溢流したアオコ原水を前記マイクロバブル膜で濾過するための濾過流を形成する濾過流形成手段と、
前記濾過により前記マイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコを前記アオコ濃縮槽外に回収するアオコ回収手段と、を備えたことを特徴とするアオコ濃縮回収装置。
【請求項2】
前記マイクロバブル水生成手段は、平均気泡径が5μm以下のマイクロバブルを含有するマイクロバブル水を生成する請求項1に記載のアオコ濃縮回収装置。
【請求項3】
前記マイクロバブル膜形成手段は、
前記マイクロバブル水生成手段で生成されたマイクロバブル水を前記アオコ濃縮槽内に送液する送液配管と、
前記マイクロバブル膜の下方に配設され、前記送液配管で送液されたマイクロバブル水を前記アオコ濃縮槽内に拡散する拡散管と、を有する請求項1又は2に記載のアオコ濃縮回収装置。
【請求項4】
前記濾過流形成手段は、
前記拡散管の下方に一端が開口すると共に前記アオコ濃縮槽の前記液面よりも高い位置で大気に他端が開口するように前記アオコ濃縮槽に沿って立設され、前記アオコ濃縮槽との間で液面高さが同一なU字状連通路を形成するL字管と、
前記L字管の前記液面高さに位置に接続され、前記アオコ濃縮槽の液を排出する排出管と、を備えた請求項3に記載のアオコ濃縮回収装置。
【請求項5】
前記アオコ回収手段は、
前記マイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコを含むアオコ濃縮液の液層であるアオコ濃縮層に越流口を有し、前記アオコ濃縮液を前記アオコ濃縮槽外に排出するアオコ濃縮液排出管である請求項1から4の何れか1項に記載のアオコ濃縮回収装置。
【請求項6】
前記アオコ回収手段は、
前記マイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコを含むアオコ濃縮液の液層であるアオコ濃縮層に外周部分が浸漬して縦向きに回転すると共に表面がプラスに帯電した回転円板と、
前記回転円板に吸着したアオコを掻き取るレーキと、
前記レーキによって掻き取られたアオコを前記アオコ濃縮槽外に排出するアオコ排出部材と、を備えた請求項1から4の何れか1に記載のアオコ濃縮回収装置。
【請求項7】
前記アオコ原水溢流手段の前段には、前記アオコ原水中の群体状のアオコをアオコのガス胞を破壊しないように細かく分割するアオコ群分割機を備えた請求項1から6の何れか1項に記載のアオコ濃縮回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アオコ濃縮回収装置に係り、特に湖沼、池、河川、閉鎖性海域等の閉鎖性水域のアオコを濃縮して回収するアオコ濃縮回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湖沼、池、河川等の閉鎖性水域において水中のリンや窒素の栄養分濃度が増加し、アオコと呼ばれる植物性プランクトンが大量発生することがある。
【0003】
富栄養化した水から速やかに栄養分を取り除くことができれば、水草や適度な植物性プランクトンで水を浄化することは可能である。しかし、水に溶けた栄養分を速やかに取り除くことは難しく、アオコが大量発生し易い。
【0004】
大量発生したアオコを放置すると、その水域の酸素濃度が低下して魚が死んだり、水辺やその水域の水を水源とする水道水に異臭がしたりする被害が発生する。この為、閉鎖性水域が富栄養化する原因を改善すると同時に、発生したアオコを効率的に回収することにより閉鎖性水域から除去する必要がある。
【0005】
このような閉鎖性水域からアオコを効率的に回収するアオコ回収装置としては、例えば特許文献1や特許文献2がある。
【0006】
特許文献1のアオコ回収装置は、湖沼や池等のアオコの存在する箇所から取水したアオコを含有する混濁水を濾過部に移送する。移送した混濁水を濾過部に設けた濾過フィルタにより濾過することで高濃度のアオコを含むアオコ混入水と濾過水とを分離する。そして、濾過フィルタに付着したアオコをハケブラシで掻き取ることによりアオコを効率的に回収できるとされている。
【0007】
また特許文献2の水域の水質底質活性浄化装置は、池等の水域の汚濁物質(アオコも含む)を含む原水を浮上分離凝集物回収装置に取水する。そして、原水中に凝集剤を注入して攪拌することで汚濁物質を凝集物化する。その後、微細気泡(例えばマイクロバブル)により凝集物を浮上させることにより効率的に水中から汚濁物質を分離除去し、分離除去した汚濁物質を回収することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−098342号公報
【特許文献2】特開2003−117562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のアオコ回収装置は、使用しているうちに濾過フィルタが目詰まりし易い。このため、頻繁に濾過フィルタを洗浄する必要があり、メンテナンスが大変であるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2の水質底質活性浄化装置は、マイクロバブルによる浮上分離を行うものであるが、汚濁物質(アオコも含む)を効率的に浮上分離するために凝集剤を使用して汚濁物質を凝集化する必要があり、ランニングコストが高くなるという問題がある。
【0011】
このような背景から、アオコ原水からアオコを効率的に回収でき、しかもメンテナンスが容易で且つランニングコストを低減できるアオコ回収装置が要望されている。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、アオコ原水からアオコを効率的に回収でき、しかもほぼメンテナンスフリーで且つランニングコストを低減できるアオコ回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のアオコ濃縮回収装置は目的を達成するために、アオコを含有するアオコ原水からアオコを濃縮して回収するアオコ濃縮回収装置において、アオコ濃縮槽と、アオコ濃縮槽にアオコ原水を取水するアオコ原水取水手段と、気泡径がマイクロオーダーレベルのマイクロバブルを含有するマイクロバブル水を生成するマイクロバブル水生成手段と、生成したマイクロバブル水をアオコ濃縮槽の液中に連続的に送り込むことによりアオコ濃縮槽の液面近傍にマイクロバブルの気泡密集層であるマイクロバブル膜を形成するマイクロバブル膜形成手段と、形成したマイクロバブル膜の上側(好ましくは上側の膜面近傍)にアオコ原水を溢流させる溢流管を有するアオコ原水溢流手段と、アオコ原水の溢流量と同等の液量をマイクロバブル膜の下側からアオコ濃縮槽外に排出してマイクロバブル膜の上側から下側に向かう流れを形成することにより溢流したアオコ原水をマイクロバブル膜で濾過するための濾過流を形成する濾過流形成手段と、濾過によりマイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコをアオコ濃縮槽外に回収するアオコ回収手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の発明者は、気泡径が極めて小さく気泡にかかる浮力も小さいために浮上速度が極めて遅く水中に滞在している時間が長いというマイクロバブルの特性(水中長時間滞在特性)、気泡がマイナスに帯電しており気泡同士の合体や吸収が起こりにくいため、小さい気泡径のまま長い時間均一に液中に分散することができるというマイクロバブルの特性(気泡小径維持特性)、及びアオコ等の藻類はマイナスに帯電しておりマイクロバブルと反発するというマイクロバブルの特性(マイナス帯電特性)に着目し、マイクロバブルの気泡密集層であるマイクロバブル膜でアオコを含有するアオコ原水を濾過することによりアオコを濃縮して回収すれば、効率的で且つメンテナンスフリーの濾過膜を有するアオコ濃縮回収装置を構築できるのではないかとの発想の基に本発明を構成した。
【0015】
本発明のアオコ濃縮回収装置によれば、アオコ濃縮槽の液面近傍にマイクロバブル膜を形成し、マイクロバブル膜の上側にアオコを含有するアオコ原水を溢流すると共に、アオコ原水の溢流量と同等の液量をマイクロバブル膜の下側から排出してアオコ濃縮槽内にマイクロバブ膜の上側から下側に向かう濾過流を形成させる。
【0016】
これにより、マイクロバブル膜の上側にアオコが濃縮するので、アオコ原水からアオコを効率的に回収できる。しかもマイクロバブル膜は目詰まりしないと共に凝集剤も必要ない。凝集剤を使用すると密度が大きくなり、かえってマイクロバブル膜を沈むので濾過性能が低下する。したがって、ほぼメンテナンスフリーで且つランニングコストを低減できるアオコ濃縮回収装置を提供することができる。
【0017】
また、マイクロバブル水をアオコ濃縮槽の液中に連続的に送り込んでマイクロバブル膜を形成するだけでなく、マイクロバブル膜の上側の膜面近傍にアオコ原水を溢流させる溢流管を設けて、アオコ原水の供給水流によるマイクロバブル膜への衝撃を極力小さくした。
【0018】
更には、アオコ原水の溢流量と同等の液量をマイクロバブル膜の下側から排出してアオコ濃縮槽内にマイクロバブ膜の上側から下側に向かう濾過流を形成させることにより、アオコ濃縮槽の液面が一定に維持されるようにした。したがって、マイクロバブル膜に対する溢流管の位置を常に膜面近傍に位置させることができるので、アオコ原水の供給水流によるマイクロバブル膜への衝撃を小さいままで変化しないようにできる。
【0019】
これにより、マイクロバブル膜を構成する気泡が衝撃によって消滅しにくくなるので、マイクロバブル膜を安定的に形成できる。
【0020】
本発明において、マイクロバブル水生成手段は平均気泡径が5μm以下のマイクロバブルを含有するマイクロバブル水を生成することが好ましい。
【0021】
これは、マイクロバブル膜を安定的に形成するための構成である。このように、平均気泡径が5μm以下のマイクロバブルは、上記した水中長時間滞在特性、気泡小径維持特性、及びマイナス帯電特性が一層良くなり、マイクロバブル膜を安定的に形成できるので、濾過効率に優れたマイクロバブル膜を形成できる。
【0022】
本発明において、マイクロバブル膜形成手段は、マイクロバブル水生成手段で生成されたマイクロバブル水をアオコ濃縮槽内に送液する送液配管と、マイクロバブル膜の下方に配設され、送液配管で送液されたマイクロバブル水をアオコ濃縮槽内に拡散する拡散管と、を有する。
【0023】
マイクロバブル膜の下方にマイクロバブル水の拡散管を配設してアオコ濃縮槽の液面全体にマイクロバブルが拡散し易くすることで、マイクロバブル膜の部分によって膜厚が異なることがない均等な厚みのマイクロバブル膜を形成できる。これにより、マイクロバブル膜の部分による濾過性能のバラツキをなくすことができる。
【0024】
本発明において、濾過流形成手段は、拡散管の下方に一端が開口すると共にアオコ濃縮槽の液面よりも高い位置で大気に他端が開口するようにアオコ濃縮槽に沿って立設され、アオコ濃縮槽との間で液面高さが同一なU字状連通路を形成するL字管と、L字管の液面高さに位置に接続され、アオコ濃縮槽の液を排出する排出管と、を備えた。
【0025】
これにより、アオコ濃縮槽へ溢流する溢流量の分だけ排出管から排出されるので、アオコ濃縮槽の液面高さが変化しない。したがって、溢流管がアオコ原水中に水没することがないので、マイクロバブル膜に対する溢流管の位置を常に膜面近傍に位置させることができる。
【0026】
本発明において、アオコ回収手段は、マイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコを含むアオコ濃縮液の液層であるアオコ濃縮層に越流口を有し、アオコ濃縮液をアオコ濃縮槽外に排出するアオコ濃縮液排出管である。これは、アオコ回収手段の一態様であり、アオコ濃縮液のまま回収する場合である。
【0027】
本発明において、アオコ回収手段は、マイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコを含むアオコ濃縮液の液層であるアオコ濃縮層に外周部分が浸漬して縦向きに回転すると共に表面がプラスに帯電した回転円板と、回転円板に吸着したアオコを掻き取るレーキと、れーキによって掻き取られたアオコをアオコ濃縮槽外に排出するアオコ排出部材と、を備えた。
【0028】
これは、アオコ回収手段の別態様であり、アオコ濃縮液から更にアオコを回収する場合である。アオコ回収手段によれば、プラスに帯電した回転円板の外周部分がアオコ濃縮層に潜るように回転することで、マイナスに帯電したアオコ濃縮液のアオコは回転円板に効率的に吸着される。吸着されたアオコはレーキで掻き取られ、アオコ排出部材によりアオコ濃縮槽外に排出される。これにより、アオコ濃縮液をそのままアオコ濃縮槽外に排出する場合に比べてアオコを一層濃縮した状態で回収することができる。
【0029】
本発明において、アオコ原水溢流手段の前段には、アオコ原水中の群体状のアオコをアオコのガス胞を破壊しないように細かく解すアオコ群分割機を備えた。
【0030】
アオコが大量発生すると、数十〜数百μmスケールの立体構造を有するアオコの群体がマット状になって水面を覆う。本発明では、アオコ原水溢流手段の前段に、アオコ原水中の群体状のアオコをアオコのガス胞を破壊しないように細かく分割するアオコ群分割機を備えた。これにより、マイクロバブル膜で濾過されるアオコの密度が小さくなりマイクロバブル膜を沈降しにくくなるので、マイクロバブル膜によるアオコの濾過効率を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、アオコ原水からアオコを効率的に回収でき、しかもほぼメンテナンスフリーで且つランニングコストを低減できるアオコ濃縮回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のアオコ濃縮回収装置を上方及び側方から見た全体構成の概念図
図2】アオコ濃縮回収装置のアオコ濃縮槽の部分を示す斜視図
図3図2のa−a線に沿った断面図
図4】アオコ濃縮回収装置におけるアオコ回収手段の別態様の斜視図
図5図4のa−a線に沿った断面図
図6】アオコ濃縮回収装置にアオコ群分割機を組み込んだ概念図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面にしたがって本発明のアオコ濃縮回収装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0034】
本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
[アオコ濃縮回収装置の全体構成]
【0035】
図1の(A)は、アオコ濃縮回収装置10の全体構成を上方から見た概念図であり、(B)は全体構成を側方から見た概念図である。また、図2はアオコ濃縮回収装置の主としてアオコ濃縮槽の部分を示す斜視図である。また、図3は、図2のa−a線に沿った断面図である。
【0036】
図1に示すように、アオコ濃縮回収装置10は、湖沼、池、河川等のアオコが大量発生した閉鎖性水域12の岸辺に配置される。
【0037】
アオコ濃縮回収装置10は、主として、アオコ濃縮槽14と、アオコを含有するアオコ原水をアオコ濃縮槽14に取水するアオコ原水取水手段16と、マイクロバブル水生成手段18と、マイクロバブル膜形成手段20と、アオコ原水溢流手段22と、濾過流形成手段24と、アオコ回収手段26とで構成される。
(アオコ濃縮槽)
【0038】
図2及び図3に示すように、アオコ濃縮槽14は、マイクロバブル膜Aでアオコ原水を濾過することでマイクロバブル膜Aの上側にアオコが濃縮したアオコ濃縮液を得る槽であり、アオコ原水が供給されると共にマイクロバブル水生成手段18で生成されたマイクロバブル水が供給される。
【0039】
アオコ濃縮槽14の形状は、上面が開放された容器形状であれば円筒容器形状、四角容器形状等どのような形状でもよいが、本実施の形態では、図2に示すように四角容器形状の場合で示す。アオコ濃縮槽14のサイズは、特に限定されないが、本実施の形態では、縦横のサイズが約1mの正方形の底辺と、約1mの高さを有する四角容器形状のものを用いた。
【0040】
アオコ濃縮槽14の材質は、水槽としての頑丈さを有していれば金属製、プラスチック製、木製等のどのような材質でもよいが、本実施の形態では金属製のアオコ濃縮槽14を用いた。
(アオコ原水取水手段)
【0041】
図1に示すように、アオコ原水取水手段16は、アオコを含有するアオコ原水をアオコ濃縮槽14に取水するものであり、例えばアオコが繁茂した池等の閉鎖性水域12に取水口が配置された取水配管16Aと、取水ポンプ16Bとで構成される。
【0042】
アオコは、比較的に球状な藍藻類(数ミクロン程度のミクロシスチス:Microcystisが主な構成)であり、細胞内のガス胞によって水面から数cm程度下の表層水中に浮遊している。したがって、取水配管16Aの取水口は水面近傍に配置される。
【0043】
また、本発明のようにマイクロバブル膜Aによってアオコ原水を濾過する場合、アオコ以外のプラスチックゴミ、木片、木の葉等の夾雑物はマイクロバブル膜Aをかき乱して気泡消滅の原因になる。したがって、取水口に夾雑物を除去する夾雑物除去装置(図示せず)を設けることが好ましい。
【0044】
また、本発明のように、マイクロバブル膜Aでアオコ原水を濾過する場合、取水ポンプ16Bでアオコの気泡が破壊されるとアオコ自体の密度が大きくなり、マイクロバブル膜Aを通過して沈み易くなる。したがって、取水ポンプ16Bの種類としては、アオコの気泡を破壊しにくいポンプ、例えばモーノポンプやダイヤフラムポンプが好ましい。
(マイクロバブル水生成手段)
【0045】
マイクロバブル水生成手段18は、気泡径がマイクロオーダーレベルのマイクロバブルを含有するマイクロバブル水を生成するものであり、平均気泡径が5μm以下のマイクロバブルを含有するマイクロバブル水を生成することが好ましい。
【0046】
平均気泡径が5μm以下のマイクロバブルは、課題を解決するための手段で述べた水中長時間滞在特性、気泡小径維持特性、及びマイナス帯電特性が一層良くなるので、濾過性能に優れたマイクロバブル膜Aを形成できる。
【0047】
マイクロバブル水生成手段18は、例えば加圧溶解方式、高速旋回方式、超音波方式等の何れでもよいが、本実施の形態では加圧溶解方式を用いた。
【0048】
図1に示すように、マイクロバブル水生成手段18は、主として、空気と水とを高圧下で混合することにより空気が過飽和状態で溶解した空気飽和水を形成するエアー混合ポンプ18Aと、高圧下にある空気飽和水を減圧することで空気飽和水から溶解した溶存空気を発泡させる減圧ノズル18Bとで構成される。
【0049】
マイクロバブル水生成手段18で使用される水は、イオン化物質や不純物が多く含まれている水の方がマイクロバブルを生成し易く、水道水よりも工業用水、海水あるいは異物が除去された排水の方が好ましい。本実施の形態では、アオコ濃縮槽14のマイクロバブル膜Aによる濾過液を使用した。即ち、アオコ濃縮槽14の底部近傍に引き抜き管18Cの一端が接続され、他端がエアー混合ポンプ18Aの吸水口に接続される。引き抜き管18Cには、濾過液中のゴミ等の異物を除去するフィルタ(図示せず)が設けられる。
【0050】
エアー混合ポンプ18Aでは6MPa近傍の圧力下で水と空気を混合することが好ましく、減圧ノズルでは6MPaから2MPa近傍まで急激に減圧することが好ましい。
(マイクロバブル膜形成手段)
【0051】
マイクロバブル膜形成手段20は、生成したマイクロバブル水をアオコ濃縮槽14の液中に連続的に送り込むことによりアオコ濃縮槽14の液面近傍にマイクロバブルの気泡密集層である白濁したマイクロバブル膜Aを形成する。
【0052】
図1から図3に示すように、マイクロバブル膜形成手段20は、主として、マイクロバブル水生成手段18で生成されたマイクロバブル水をアオコ濃縮槽14内に送液する送液配管20Aと、マイクロバブル膜Aの下方に配設され、送液配管20Aで送液されたマイクロバブル水をアオコ濃縮槽14内に拡散する拡散管20Bと、で構成される。
【0053】
マイクロバブル膜Aの下方にマイクロバブル水の拡散管20Bを配設してアオコ濃縮槽14の液面Cの全体にマイクロバブルが拡散することで、マイクロバブル膜Aの部分によって膜厚が異なることがない均等なマイクロバブル膜Aを形成し易い。これにより、マイクロバブル膜Aの部分による濾過性能のバラツキをなくすことができる。
【0054】
また、拡散管20Bはアオコ濃縮槽14に水平方向に延設された少なくとも1本の円筒パイプの上面にマイクロバブル水を吹き出す吹出口20Cを等間隔で複数穿設した構造に形成される。拡散管20Bの先端部は閉塞され、基端部は送液配管20Aを介してマイクロバブル水生成手段18に接続される。
【0055】
拡散管20Bの吹出口20Cから吹き出されたマイクロバブル水中の気泡は、アオコ濃縮槽14の液面方向にゆっくりと上昇していき、液面近傍に気泡が密集した気泡密集層である乳白色のマイクロバブル膜Aを形成する。形成されるマイクロバブル膜Aの厚みは、拡散管20Bの吹出口20Cから吹き出されたマイクロバブル水の吹出量によって調整する。
【0056】
マイクロバブルは、気泡同士がマイナスに帯電しており互いに反発しアオコ濃縮槽14内に拡散し易いので、上記したアオコ濃縮槽14のサイズであれば1本の拡散管20Bでも問題ない。このため、本実施の形態では、アオコ濃縮槽14の幅方向の真ん中に1本の拡散管20Bを水平方向に配設した。しかし、アオコ濃縮槽14に形成されるマイクロバブル膜Aの厚み分布やアオコ濃縮槽14の容積に応じて複数本の拡散管20Bを配置することができる。
(アオコ原水溢流手段)
【0057】
図2に示すように、アオコ原水溢流手段22は、アオコ濃縮槽14に形成したマイクロバブル膜Aの上側の膜面近傍にアオコ原水を溢流させるものであり、2本の溢流管22Aと、取水配管16Aで取水されたアオコ原水を2本の溢流管22Aに分流させる分流管22Bとで構成される。
【0058】
溢流管22Aは円筒パイプ管の上面に長さ方向に沿ってスリット口22Cを形成したものであり、図2及び図3のようにスリット口22Cからアオコ原水が溢れ出る。
【0059】
マイクロバブル膜Aを形成するマイクロバブルは、時間の経過以外に外的な衝撃によって消滅する。したがって、アオコ濃縮槽14に供給するアオコ原水の供給方法としては、マイクロバブル膜Aに当たるアオコ原水の供給水流の衝撃をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0060】
本発明では、マイクロバブル膜Aの上側の膜面近傍に配設した溢流管22Aからアオコ原水を溢流させるようにしたので、アオコ原水がマイクロバブル膜Aの上に静かに載るように供給することができる。これにより、マイクロバブル膜Aに対する衝撃を小さくできるので、マイクロバブル膜Aの膜形成を安定化できる。
【0061】
溢流管22Aをマイクロバブル膜Aの上側の膜面近傍に配置するとは、溢流管22Aの管径にもよるが、溢流管22Aの円周下端がマイクロバブル膜Aの上面に接しない膜面近傍であることが好ましい。
(濾過流形成手段)
【0062】
濾過流形成手段24は、マイクロバブル膜Aの上側から下側に向かう水流を形成することにより溢流したアオコ原水をマイクロバブル膜Aで濾過するための濾過流を形成するものである。
【0063】
この濾過流により、図3に示すように、アオコ原水溢流手段24の溢流管22Aのスリット口22Cからマイクロバブル膜Aの上側に溢流されたアオコ原水は、マイクロバブル膜Aによって濾過され、マイクロバブル膜Aの上側にアオコが濃縮したアオコ濃縮液の液層(以下、「アオコ濃縮層B」という)が形成される。
【0064】
この場合、アオコ原水の溢流量と同等の液量をマイクロバブル膜Aの下側からアオコ濃縮槽14外に排出することにより、一定速度の濾過流を形成することが重要である。これにより、マイクロバブル膜Aがかく乱されないので、濾過性能を向上できる。
【0065】
更には、アオコ原水の溢流量と同等の液量をマイクロバブル膜Aの下側からアオコ濃縮槽14外に排出することにより、アオコ濃縮槽14の液面Cを一定に維持することが重要である。これにより、アオコ原水溢流手段24の溢流管22Aのスリット口22Cからマイクロバブル膜Aの上面までの距離、即ちマイクロバブル膜Aに対する溢流管22Aの位置を一定に維持することができる。
【0066】
図2及び図3に示すように、濾過流形成手段24としては、アオコ原水の溢流量と同等の液量をマイクロバブル膜Aの下側からアオコ濃縮槽14外に排出することができればどのようなメカニズムでもよいが、本実施の形態では、L字管28と排出管30とで構成するようにした。
【0067】
L字管28は水平部28Aと垂直部28BとでL字状に形成され、水平部28Aの端部がアオコ濃縮槽14の側面下部に連通して接続される。また、L字管28の垂直部28Bはアオコ濃縮槽14の基準液面より高く(例えばアオコ濃縮槽14の高さ)になるようにアオコ濃縮槽14に沿って立設され、垂直部28Bの端部は大気に解放される。これにより、L字管28はアオコ濃縮槽14との間で液面C高さが同一なU字状連通路を形成する。
【0068】
また、排出管30は、アオコ濃縮槽14の液面CであるL字管28の液面高さに位置に水平方向に接続される。これにより、アオコ濃縮槽14の液面Cが排出管30の高さよりも高くなると、元の液面Cに戻るまで排出管30からアオコ濃縮槽14の濾過液がアオコ濃縮槽14外に排出される。逆に、アオコ濃縮槽14の液面Cが排出管30の高さより低いときには排出管30から濾過液は排出されないので、アオコ原水がアオコ濃縮槽14に供給されてマイクロバブル膜Aで濾過される濾過液が増えることでアオコ濃縮槽14の液面Cに戻る。
【0069】
これにより、アオコ濃縮槽14へ溢流する溢流量の分だけ排出管30から排出されるので、濾過流が一定速度になると共にアオコ濃縮槽14の液面Cが変化しない。したがって、マイクロバブル膜Aがかく乱され難いと共に溢流管22Aとアオコ濃縮槽14の液面Cとの関係を常に一定に維持することができるので、溢流管22Aを当初設定したマイクロバブル膜Aの上側の膜面近傍に常に位置させることができる。
【0070】
また、L字管28の水平部28Aのアオコ濃縮槽14における接続位置は、上記した拡散管20Bよりも下方に位置することが好ましい。これにより、マイクロバブル膜Aを形成する気泡がL字管28に吸い込まれることを防止できると共に、マイクロバブル膜Aからの距離が遠くなるので、マイクロバブル膜Aに対して斜め下方ではなく真っ直ぐ下向きの濾過流が形成され易い。
【0071】
ここで、本発明におけるアオコ濃縮槽14の液面Cとは、図3に示すように、アオコ濃縮層Bの上面ではなく、アオコ濃縮回収装置10の運転前の準備としてアオコ濃縮槽14に水を貯留してマイクロバブル膜Aを形成したときのアオコ濃縮槽14の液面Cをいい、図3における排出管30の高さをいう。
(アオコ回収手段)
【0072】
図2及び図3に示すように、アオコ回収手段26は、マイクロバブル膜Aの上側に濃縮されたアオコを含むアオコ濃縮液の液層であるアオコ濃縮層Bに越流口26Bを有し、アオコ濃縮液をアオコ濃縮槽14外に排出するアオコ濃縮液排出管26Aとして構成される。
【0073】
これにより、マイクロバブル膜Aの上側に濃縮されたアオコ濃縮液は、アオコ濃縮液排出管26Aの越流口26Bからアオコ濃縮液排出管26Aの内部に越流し、アオコ濃縮槽14外に排出される。アオコ濃縮液排出管26Aによりアオコ濃縮槽14から排出されたアオコ濃縮液は、図2に示すように、アオコ回収容器26Cに回収される。
【0074】
また、アオコ濃縮液排出管26Aの越流口26Bは、溢流管22Aのスリット口22Cよりも低い位置になるように配置される。これにより、アオコ濃縮層Bに溢流管22Aが水没することがない。溢流管22Aがアオコ濃縮層Bに水没した状態でアオコ原水をスリット口22Cから溢流させると、アオコ濃縮層Bが攪拌されるので、マイクロバブル膜Aがかき乱され易くなる。この結果、マイクロバブル膜Aの気泡が破壊され易くなり濾過性能が低下する。
(アオコ回収手段の別態様)
【0075】
図4は、アオコ濃縮回収装置10におけるアオコ回収手段26の別態様の斜視図であり、図5は、図4のa−a線に沿った断面図である。
【0076】
アオコ回収手段26の別態様は、主として、マイクロバブル膜Aの上側に濃縮されたアオコ濃縮液からアオコを回収するものであり、表面がプラスに帯電している回転円板32と、レーキ34と、アオコ排出部材36とで構成される。
【0077】
回転円板32は、マイクロバブル膜Aの上側に濃縮されたアオコ濃縮液のアオコ濃縮層Bに回転円板32の外周部分が常時潜っているように縦向きに回転する。また、回転円板32の中心は、回転軸38及び減速器40を介してアオコ濃縮槽14の搭載台14Aに搭載されたモータ42に連結される。これにより、回転円板32は、外周部分がアオコ濃縮層Bに潜りながらゆっくりと回転(例えば5〜10rpm)し、アオコ濃縮層Bのマイナスに帯電したアオコをプラスに帯電した回転円板32に吸着させる。回転円板32に吸着されたアオコはレーキ34で掻き取られる。これにより、マイクロバブル膜Aによって濾過されたアオコ濃縮液のアオコを効率的且つ自動的に回収できる。
【0078】
この場合、回転円板32の外周部分はアオコ濃縮層Bに潜るが、マイクロバブル膜Aには接触しないようにする。回転円板32がマイクロバブル膜Aに接触すると、マイクロバブル膜Aをかき乱すので、マイクロバブル膜Aの膜形成が安定しない要因になる。
【0079】
濾過液流形成手段24でアオコ濃縮槽14の液面Cを一定に維持することで、回転円板32がマイクロバブル膜Aに接触しないようにすることができる。更に、回転円板32がマイクロバブル膜Aに確実に接触しないようにアオコ濃縮槽14の液面C位置を下げたい場合には、図4及び図5のように、L字管28の液面C位置よりも低い位置にアオコ濃縮槽14の濾過液を排出する補助排出管44及び排出バルブ46を設けて、液面Cを強制的に下げることもできる。
【0080】
レーキ34は、回転円板32に吸着したアオコを掻き取るものであり、例えば図4及び図5のように、アオコ排出部材36の内側に回転円板32の両面に接触して設けることができる。
【0081】
アオコ排出部材36は、アオコ回収容器26Cまで延びた樋状に形成され、基端部(上端部)に回転円板32が遊挿する切り欠き(図示せず)が形成される。そして、アオコ排出部材36の基端部の内側面と回転円板32の両面との隙間が埋まるように一対のレーキ34、34が対向して設けられる。レーキ34自体はアオコ排出部材36に固定される。
【0082】
これにより、回転円板32に付着したアオコは回転円板32が回転することでレーキ34によって掻き取られ、アオコ排出部材36に落下する。アオコ排出部材36に落下したアオコはアオコ排出部材36を滑ってアオコ回収容器26Cに回収される。
【0083】
したがって、アオコ回収手段26の第2の実施の形態によれば、マイクロバブル膜Aによって濾過されたアオコ濃縮液のアオコを第1の実施の形態よりも更に濃縮した状態で回収できる。
【0084】
また、回転円板32の表面をプラスに帯電させる方法としては、どのような方法でもよいが、回転円板32とレーキ34が接触して擦れあうことを利用する方法を好適に使用できる。即ち、回転円板32の材質に帯電列のプラス帯電物質(例えばアクリル樹脂、ガラス、ナイロン等)を使用し、レーキ34の材質に帯電列のマイナス帯電物質[例えば、テフロン(登録商標)、シリコーン等]を使用するとよい。
【0085】
これにより、回転円板32とレーキ34が接触して擦れあうことにより、回転円板32をプラスに帯電させることができるので、アオコの掻き取りと回転円板32のプラス帯電操作とを同時に行うことができる。
(アオコ群体分割機)
【0086】
図6は、本発明のアオコ濃縮回収装置10の全体構成にアオコ群分割機48を組み込んだ概念図である。
【0087】
閉鎖性水域12にアオコが大量発生すると、数十〜数百μmスケールの立体構造を有するアオコの群体がマット状になって水面を覆う。
【0088】
本発明のようにマイクロバブル膜Aを利用してアオコを濾過する濾過方式では、アオコ群体のようにアオコ同士が寄り集まって大きくなることで密度が大きくなり、マイクロバブル膜Aを通過して沈み易くなる。一方、群体を構成していない小さなアオコは密度が小さく、マイクロバブル膜Aを通過しにくく沈み難い。したがって、アオコ群体をそのまま取水してマイクロバブル膜Aで濾過すると、濾過効率が悪くなる。
【0089】
しかし、アオコ群体を細かく分割するときにアオコのガス胞を壊すと密度が大きくなってしまいマイクロバブル膜Aを通過して沈んでしまう。
【0090】
そこで、本発明の実施の形態のアオコ濃縮回収装置10では、アオコ原水溢流手段22の前段に、アオコ原水中のアオコ群体のアオコをアオコのガス胞を破壊しないように細かく分割するアオコ群分割機48を備えるようにした。これにより、マイクロバブル膜Aによるアオコの濾過効率を一層向上させることができる。この結果、マイクロバブル膜Aの上側に濃縮されるアオコ濃縮液の濃縮率を向上させることができ、一層効率的にアオコを回収することができる。
【0091】
アオコ群分割機48としては、アオコ群のアオコのガス胞を破壊しないように解すことができれば特に限定されないが、例えばアオコの群体を回転するトゲ付きドラムで小さな塊に解きほぐす解砕機を用いたり、アオコのガス胞を破壊しない程度のジェット流をアオコ群体に噴射してアオコ群体を小さく分割するジェット流噴射機を用いたりすることができる。また、取水ポンプ16Bとしてアオコの気泡を破壊しない程度の渦巻きを有する渦巻きポンプを使用することで、アオコ原水の取水機能とアオコ群分割機能の両方を行うことも可能である。アオコ群分割機48は、図6のように、取水配管16Aの途中に組み込んでも、あるいは取水配管16Aの取水口の位置に組み込んでもよい。
[アオコ濃縮回収方法]
【0092】
次に、上記の如く構成されたアオコ濃縮回収装置10によってアオコを濃縮して回収するアオコ濃縮回収方法を説明する。なお、アオコ回収手段26は、図4及び図5に示した別態様の場合で説明する。
【0093】
先ず、アオコ濃縮槽14内にアオコを含まない水、例えば工業用水あるいは閉鎖性水域12から取水してアオコや夾雑物を除去した水を貯留する。即ち、アオコ濃縮槽14に水を供給して、アオコ濃縮槽14に貯留される水深が濾過液流形成手段24の排出管30の高さになるまで貯留する。アオコ濃縮槽14に貯留される水深が排出管30の高さを超えると排出管から排出されるので、これによりアオコ濃縮槽14の液面Cが設定される。
【0094】
次に、マイクロバブル生成手段18を稼働してマイクロバブル膜形成手段20の散気管20Bからマイクロバブル水を吐出し、液面C近傍にマイクロバブルの気泡が密集した密集層であるマイクロバブル膜Aを形成する。これにより、アオコ濃縮回収の前準備が完了する。
【0095】
次に、アオコ原水取水手段16の取水配管16Aの取水口を閉鎖性水域12の表層水中に動かないように配置し、取水ポンプ16Bを稼働する。これにより、閉鎖性水域12の表層水中に浮遊するアオコを含有するアオコ原水をアオコ濃縮槽14に取水する。合わせて、アオコ回収手段26のモータ42を駆動し、減速機40を介して回転円板32をゆっくりと回転させる。
【0096】
そして、取水ポンプ16Bで取水されたアオコ原水を、アオコ原水溢流手段22の2本の溢流管22Aのスリット口22Cからマイクロバブル膜Aの上側に溢流させる。これにより、アオコ濃縮槽14の貯留量が液面Cより高くなるので、濾過流形成手段24の排出管30から貯留量の増加分がアオコ濃縮槽14から排出される。したがって、アオコ濃縮槽14には、マイクロバブル膜Aの上側から下側に向かう濾過流が自動的に形成される。これにより、アオコ原水はマイクロバブル膜Aにより濾過される。
【0097】
この濾過により、アオコ原水の水のみがマイクロバブル膜Aを透過して濾過液となり、マイクロバブル膜Aの上側にアオコが濃縮したアオコ濃縮液の液層が形成される。即ち、アオコ濃縮回収装置10の運転によって、図5に示すように、マイクロバブル膜Aの上側にアオコが濃縮されたアオコ濃縮液の液層であるアオコ濃縮層Bが形成される。
【0098】
マイクロバブル膜Aの上側に濃縮したアオコ濃縮液中のアオコは、アオコ回収手段26の回転円板32に付着する。そして、回転円板32に付着したアオコはレーキ34によって掻き取られ、アオコ排出部材36を介してアオコ回収容器26Cに回収される。
【0099】
本発明の実施の形態のアオコ濃縮回収装置10によれば、回収されたアオコの濃縮率を70%以上にすることが可能である。
【0100】
本発明のアオコ濃縮回収装置10では、マイクロバブル膜Aを構成するマイクロバブルの気泡は、時間や衝撃によって破壊して消滅するため、マイクロバブル膜Aを濾過膜として使用するには、マイクロバブル膜Aの厚みや気泡の密集性を一定に維持することが必要になる。
【0101】
本発明では、マイクロバブルを含有するマイクロバブル水をアオコ濃縮槽14の液中に連続的に送り込むだけでなく、マイクロバブル膜Aの上側の膜面近傍にアオコ原水を溢流させる溢流管22Aを有すると共にアオコ原水の溢流量とアオコ濃縮槽14からの排出量とを同等になるように構成した。
【0102】
これにより、溢流管22Aを常にマイクロバブル膜Aの膜面近傍に位置させることができるので、溢流するアオコ原水によるマイクロバブル膜への衝撃が小さくなり気泡が破壊されにくくなると共に、マイクロバブル膜Aが動揺しにくくなり気泡の密集性が維持され易くなる。この結果、マイクロバブル膜Aの厚みや気泡の密集性を一定に維持することができる。これにより、マイクロバブル膜Aの膜形成を安定化でき、アオコ原水を効率的に濾過することができる。
【0103】
このように、本発明では、アオコ原水からアオコを濾過する濾過膜としてマイクロバブル膜Aを使用するので、従来の濾過膜や金網を使用する場合のようにアオコが目詰まりするという現象が生じない。これにより、ほぼメンテナンスフリーのアオコ濃縮回収装置10を構成できる。
【0104】
また、本発明の実施の形態のアオコ濃縮回収装置10は、従来のアオコ回収のようにアオコを凝集剤で凝集させてからマイクロバブルで浮上させる浮上分離方式のように凝集剤を使用する必要がない。凝集剤を使用すると凝集物の密度が大きくなり、かえってマイクロバブル膜Aを沈むので濾過性能が低下する。この結果、ランニングコストを低減できる。
【0105】
これにより、本発明の実施の形態のアオコ濃縮回収装置10は、アオコ原水からアオコを効率的に回収でき、しかもほぼメンテナンスフリーで且つランニングコストを低減できるアオコ濃縮回収装置を提供することができる。
【0106】
また、本発明の実施の形態のアオコ濃縮回収装置10では、アオコ原水の濾過に通常の濾過フィルタや金網ではなくマイクロバブル膜Aを利用するが故の工夫として以下の構成を更に組み込んだ。
【0107】
(1)取水ポンプ16Bとしてアオコの気泡を破壊しないポンプを使用してアオコの密度が大きくならないようにし、マイクロバブル膜Aの上側に溢流したアオコ原水中のアオコがマイクロバブル膜Aを通過して沈みにくいようにした。これにより、マイクロバブル膜Aによるアオコの濾過効率を向上できるので、マイクロバブル膜の上側に濃縮されるアオコの濃縮率を向上できる。
【0108】
(2)更には、アオコ群分割機48によりアオコの気泡を壊さないようにアオコ群体を小さく分割するようにし、マイクロバブル膜Aの上側に溢流したアオコ原水中のアオコの密度が小さくなるようにした。これにより、マイクロバブル膜Aによるアオコの濾過効率を一層向上できるので、マイクロバブル膜Aの上側に濃縮されるアオコの濃縮率を向上できる。
【0109】
(3)また、夾雑物除去装置(図示せず)でアオコ原水に夾雑物が含有しないようにしたので、マイクロバブル膜Aに夾雑物による衝撃を与えないようにした。これにより、マイクロバブル膜Aの膜形成が安定化する。
【0110】
(4)また、アオコ回収手段26の別態様として、回転円板32がマイクロバブル膜Aに接触しないように配置されているので、マイクロバブル膜Aの膜形成が一層安定化する。また、回転円板32をプラスに帯電させるようにしたので、マイナスに帯電するアオコを効率的に付着することができ、アオコの回収効率を向上できる。
【符号の説明】
【0111】
10…アオコ濃縮回収装置、12…閉鎖性水域、14…アオコ濃縮槽、14A…搭載台、16…アオコ原水取水手段、16A…取水配管、16B…取水ポンプ、18…マイクロバブル水生成手段、18A…エアー混合ポンプ、18B…減圧ノズル、18C…引き抜き管、20…マイクロバブル膜形成手段、20A…送液配管、20B…拡散管、20C…吹出口、22…アオコ原水溢流手段、22A…溢流管、22B…分流管、22C…スリット口、24…濾過流形成手段、26…アオコ回収手段、26A…アオコ濃縮液排出管、26B…越流口、28…L字管、28A…水平部、28B…垂直部、30…排出管、32…回転円板、34…レーキ、36…アオコ排出部材、38…回転軸、40…減速機、42…モータ、44…補助排出管、46…排出バルブ、48…アオコ群分割機、A…マイクロバブル膜、B…アオコ濃縮層、C…液面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020年4月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アオコを含有するアオコ原水からアオコを濃縮して回収するアオコ濃縮回収装置において、
アオコ濃縮槽と、
前記アオコ濃縮槽に前記アオコ原水を取水するアオコ原水取水手段と、
気泡径がマイクロオーダーレベルのマイクロバブルを含有するマイクロバブル水を生成するマイクロバブル水生成手段と、
前記生成したマイクロバブル水を前記アオコ濃縮槽の液中に連続的に送り込むことにより前記アオコ濃縮槽の液面近傍にマイクロバブルの気泡密集層であるマイクロバブル膜を形成するマイクロバブル膜形成手段と、
前記形成したマイクロバブル膜の上側に前記アオコ原水を溢流させる溢流管を有するアオコ原水溢流手段と、
前記アオコ原水の溢流量と同等の液量を前記マイクロバブル膜の下側から前記アオコ濃縮槽外に排出して前記マイクロバブル膜の上側から下側に向かう流れを形成することにより前記溢流したアオコ原水を前記マイクロバブル膜で濾過するための濾過流を形成する濾過流形成手段と、
前記濾過により前記マイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコを前記アオコ濃縮槽外に回収するアオコ回収手段と、を備え
前記マイクロバブル膜形成手段は、
前記マイクロバブル水生成手段で生成されたマイクロバブル水を前記アオコ濃縮槽内に送液する送液配管と、
前記マイクロバブル膜の下方に配設され、前記送液配管で送液されたマイクロバブル水を前記アオコ濃縮槽内に拡散する拡散管と、を有し、
前記濾過流形成手段は、
前記拡散管の下方に一端が開口すると共に前記アオコ濃縮槽の前記液面よりも高い位置で大気に他端が開口するように前記アオコ濃縮槽に沿って立設され、前記アオコ濃縮槽との間で液面高さが同一なU字状連通路を形成するL字管と、
前記L字管の前記液面高さの位置に接続され、前記アオコ濃縮槽の液を排出する排出管と、を備えたことを特徴とするアオコ濃縮回収装置。
【請求項2】
アオコを含有するアオコ原水からアオコを濃縮して回収するアオコ濃縮回収装置において、
アオコ濃縮槽と、
前記アオコ濃縮槽に前記アオコ原水を取水するアオコ原水取水手段と、
気泡径がマイクロオーダーレベルのマイクロバブルを含有するマイクロバブル水を生成するマイクロバブル水生成手段と、
前記生成したマイクロバブル水を前記アオコ濃縮槽の液中に連続的に送り込むことにより前記アオコ濃縮槽の液面近傍にマイクロバブルの気泡密集層であるマイクロバブル膜を形成するマイクロバブル膜形成手段と、
前記形成したマイクロバブル膜の上側に前記アオコ原水を溢流させる溢流管を有するアオコ原水溢流手段と、
前記アオコ原水の溢流量と同等の液量を前記マイクロバブル膜の下側から前記アオコ濃縮槽外に排出して前記マイクロバブル膜の上側から下側に向かう流れを形成することにより前記溢流したアオコ原水を前記マイクロバブル膜で濾過するための濾過流を形成する濾過流形成手段と、
前記濾過により前記マイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコを前記アオコ濃縮槽外に回収するアオコ回収手段と、を備え
前記アオコ回収手段は、
前記マイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコを含むアオコ濃縮液の液層であるアオコ濃縮層に外周部分が浸漬して縦向きに回転すると共に表面がプラスに帯電した回転円板と、
前記回転円板に吸着したアオコを掻き取るレーキと、
前記レーキによって掻き取られたアオコを前記アオコ濃縮槽外に排出するアオコ排出部材と、を備えたことを特徴とするアオコ濃縮回収装置。
【請求項3】
前記マイクロバブル水生成手段は、平均気泡径が5μm以下のマイクロバブルを含有するマイクロバブル水を生成する請求項1または2に記載のアオコ濃縮回収装置。
【請求項4】
前記アオコ回収手段は、
前記マイクロバブル膜の上側に濃縮されたアオコを含むアオコ濃縮液の液層であるアオコ濃縮層に越流口を有し、前記アオコ濃縮液を前記アオコ濃縮槽外に排出するアオコ濃縮液排出管である請求項1からの何れか1項に記載のアオコ濃縮回収装置。
【請求項5】
前記アオコ原水溢流手段の前段には、前記アオコ原水中の群体状のアオコをアオコのガス胞を破壊しないように細かく分割するアオコ群分割機を備えた請求項1からの何れか1項に記載のアオコ濃縮回収装置。