【解決手段】本発明によれば、材料粉体を撒布して材料層を形成し前記材料層にビームを照射して固化層を形成することを繰り返して所望の三次元造形物が造形される造形領域と、互いに垂直方向に積み重なるように配置された加熱器を有する加熱部と冷却器を有する冷却部とを有する温調部と、を含む造形テーブルと、前記造形テーブルを垂直方向に移動させる造形テーブル駆動機構と、前記温調部を前記造形テーブル駆動機構に1つの固定箇所で着脱自在に固定するチャック装置とを備える、積層造形装置が提供される。
材料粉体を撒布して材料層を形成し前記材料層にビームを照射して固化層を形成することを繰り返して所望の三次元造形物が造形される造形領域と、互いに垂直方向に積み重なるように配置された加熱器を有する加熱部と冷却器を有する冷却部とを有する温調部と、を含む造形テーブルと、
前記造形テーブルを垂直方向に移動させる造形テーブル駆動機構と、
前記温調部を前記造形テーブル駆動機構に1つの固定箇所で着脱自在に固定するチャック装置と、を備える、積層造形装置。
前記シャフトは、少なくとも前記第1のボルトの上面と前記第1のナットの下面との間において垂直方向に貫通する貫通孔が形成される、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の積層造形装置。
前記チャック装置と前記造形テーブル駆動機構との間に設けられ、温度が一定に維持される恒温部をさらに備える、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、それぞれが独立して発明を構成する。
【0011】
(1.積層造形装置100)
本発明の実施形態に係る積層造形装置100は、材料層8を形成し、この材料層8の照射領域に例えばレーザ光Lであるビームを照射して溶融または焼結する工程を繰り返すことで、複数の固化層を積層して所望の形状を有する三次元造形物を生成する積層造形装置である。
【0012】
図1に示すように、本発明の積層造形装置100は、チャンバ1と、照射装置13と、材料層形成装置3と、加工装置50と、を備える。チャンバ1は、所定の造形領域Rを覆い、所定濃度の不活性ガスで充満される。
【0013】
チャンバ1内には、所望の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の分割層毎に、造形領域Rに材料層8を形成する材料層形成装置3が設けられる。材料層形成装置3は、ベース台4とリコータヘッド11とを有する。本実施形態においては、材料層8を形成する材料は、材料粉体からなる。材料粉体は、例えば金属粉であり、例えば平均粒径20μmの球形である。
【0014】
ベース台4には造形テーブル5が設けられ、造形テーブル5の上面に所望の三次元造形物が積層造形される。換言すれば、造形テーブル5は所望の三次元造形物が形成される造形領域Rを有する。造形テーブル5は、造形テーブル駆動機構31によって駆動されて垂直方向(
図1の矢印U方向)に移動することができる。本実施形態においては、積層造形装置100の使用時には、造形テーブル5上にベースプレート33が配置され、その上に1層目の材料層8が形成される。なお、材料層8の照射領域は、造形領域R内に存在し、所望の三次元造形物の輪郭形状で規定される領域とおおよそ一致する。
【0015】
造形テーブル5の周りには、周壁26が設けられる。本実施形態では、造形テーブル5と周壁26との間に、蛇腹部材20が設けられている。蛇腹部材20は、造形テーブル5の熱が周囲の部材に伝達することを防止する。未固化の材料粉体は、蛇腹部材20の内部に保持される。造形テーブル5の詳細は後述する。
【0016】
図2に示すリコータヘッド11は、材料収容部11aと、材料供給部11bと、材料排出部と、を有する。材料収容部11aは材料粉体を収容する。材料供給部11bは、材料収容部11aの上面に設けられ、不図示の材料供給装置から材料収容部11aに供給される材料粉体の受口となる。材料排出部は、材料収容部11aの底面に設けられ、材料収容部11a内の材料粉体を排出する。材料排出部は、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に延びるスリット形状に構成される。また、リコータヘッド11の両側面には、それぞれブレード12が設けられる。ブレード12は、材料粉体を撒布する。すなわち、ブレード12は、材料排出部から排出された材料粉体を平坦化して材料層8を形成する。
【0017】
チャンバ1は所定濃度の不活性ガスが供給されるとともに、材料層8の溶融時に発生するヒュームを含んだ不活性ガスを排出している。好ましくは、チャンバ1から排出された不活性ガスは、ヒュームが除去されチャンバ1に返送される。具体的には、チャンバ1には、不活性ガス供給装置15と、ダクトボックス21,23を介してヒュームコレクタ19が接続されている。チャンバ1に設けられる不活性ガスの供給口および排出口の位置および個数は特に限定されない。なお、本発明において、不活性ガスとは、材料と実質的に反応しないガスをいい、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等から材料の種類に応じて適当なものが選択される。
【0018】
不活性ガス供給装置15は、不活性ガスを供給する機能を有し、例えば、周囲の空気から所定濃度の不活性ガスを生成する不活性ガス発生装置、または所定濃度の不活性ガスが貯留されたガスボンベである。不活性ガス発生装置は、膜分離方式、PSA方式等、生成する不活性ガスの種類や濃度に応じて種々の方式のものが採用できる。不活性ガス供給装置15は、チャンバ1に設けられた供給口から不活性ガスの供給を行い、チャンバ1内を所定濃度の不活性ガスで充満させる。
【0019】
チャンバ1の排出口から排出されたヒュームを多く含む不活性ガスはヒュームコレクタ19へと送られ、ヒュームが除去された上でチャンバ1へと返送される。ヒュームコレクタ19はヒュームを除去する機能を有していればよく、例えば、電気集塵機またはフィルタである。
【0020】
加工装置50は、スピンドルヘッド52を有する加工ヘッド51と、加工ヘッド51を駆動する加工ヘッド駆動装置を備える。加工ヘッド駆動装置は、例えば、ベッドに固定されX軸方向に延びるX軸ガイドレールと、X軸ガイドレールに沿って摺動するX軸スライダと、X軸スライダに固定されるX軸移動体と、X軸移動体に固定されY軸方向に延びるY軸ガイドレールと、Y軸ガイドレールに沿って摺動するY軸スライダと、Y軸スライダに固定されるY軸移動体と、Y軸移動体に固定されZ軸方向に延びるZ軸ガイドレールと、Z軸ガイドレールに沿って摺動し加工ヘッド51が固定されるZ軸スライダと、を有する。スピンドルヘッド52は、エンドミル等の切削工具を把持して回転させることができるように構成されており、固化層の表面や不要部分に対して切削加工を行うことができる。切削工具は複数種類の切削工具であることが好ましく、使用する切削工具は不図示の自動工具交換装置によって、造形中にも交換可能である。以上の構成によって、加工装置50は、チャンバ1内の任意の位置において、固化層に対して切削加工を施すことができるようになっている。
【0021】
なお、上記実施形態に代えて、加工装置としては、バイト等の切削工具を把持するとともに切削工具を垂直方向の回転軸に沿って回動させる旋回機構が設けられた加工ヘッドと、加工ヘッドを水平駆動するための加工ヘッド駆動装置を備えるものであってよい。加工ヘッド駆動装置は、例えば、一対の第1水平移動機構と、一対の第1水平移動機構に設けられているガントリと、ガントリに取り付けられており加工ヘッドが固定された第2水平移動機構と、を有する。
【0022】
照射装置13は、チャンバ1の上方に設けられる。照射装置13は、造形領域R上に形成される材料層8の所定箇所にレーザ光L等のビームを照射して照射位置の材料層8を溶融または焼結させ、固化層を形成する。
図2に示すように、照射装置13は、光源42と、2軸のガルバノスキャナと、フォーカス制御ユニット44と、を有する。なお、ガルバノスキャナは、ガルバノミラー43a,43bと、ガルバノミラー43a,43bをそれぞれ回転させる不図示のアクチュエータと、を備えている。
【0023】
光源42はレーザ光Lを照射する。ここで、レーザ光Lは、材料粉体を固化可能なレーザであって、例えば、CO2レーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザ等である。なお、光源42は、電子ビームを照射するものであってもよい。
【0024】
フォーカス制御ユニット44は、光源42より出力されたレーザ光Lを集光し所望のスポット径に調整する。ガルバノミラー43a,43bは、光源42より出力されたレーザ光Lを制御可能に2次元走査する。ガルバノミラー43a,43bは、それぞれ、不図示の制御装置から入力される回転角度制御信号の大きさに応じて回転角度が制御される。かかる特徴により、ガルバノスキャナの各アクチュエータに入力する回転角度制御信号の大きさを変化させることによって、所望の位置にレーザ光Lを照射することができる。
【0025】
ガルバノミラー43a,43bを通過したレーザ光Lは、チャンバ1に設けられた保護ウインドウ1aを透過して造形領域Rに形成された材料層8に照射される。保護ウインドウ1aは、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光LがファイバーレーザまたはYAGレーザの場合、保護ウインドウ1aは石英ガラスで構成可能である。
【0026】
チャンバ1の上面には、保護ウインドウ1aを覆うように保護ウインドウ汚染防止装置17が設けられる。保護ウインドウ汚染防止装置17は、円筒状の筐体17aと、筐体17a内に配置された円筒状の拡散部材17cを備える。筐体17aと拡散部材17cの間に不活性ガス供給空間17dが設けられる。また、筐体17aの底面には、拡散部材17cの内側に開口部17bが設けられる。拡散部材17cには多数の細孔17eが設けられており、不活性ガス供給空間17dに供給された清浄な不活性ガスは細孔17eを通じて清浄室17fに充満される。そして、清浄室17fに充満された清浄な不活性ガスは、開口部17bを通じて保護ウインドウ汚染防止装置17の下方に向かって噴出される。
【0027】
(2.造形テーブル駆動機構31)
図3を参照して、造形テーブル駆動機構31について説明する。以下に説明する造形テーブル駆動機構31の構成はあくまで一例であり、造形テーブル5を垂直方向に移動することができる構成であれば、他の形態でもよい。
図3に示すように、造形テーブル駆動機構31は、ガイドベース55と、ガイドベース55に対して上下方向に駆動可能であり且つ造形テーブル5と接続されるスライドベース56と、不図示のねじ送り機構と、を備える。ねじ送り機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合されたナット部材と、ねじ軸を回転駆動するモータを備える。
【0028】
ガイドベース55には、スライド機構57が取り付けられている。スライド機構57は、レール57aと、レール57aに沿ってスライド移動可能なスライド部材57bを備える。また、ガイドベース55は、ねじ送り機構のねじ軸を支持する。
【0029】
スライドベース56には、スライド部材57bと、ねじ送り機構のナット部材と、が取り付けられている。モータによりねじ軸を回転させることで、ナット部材がねじ送りされて上下に移動する。これにともない、スライド部材57bがレール57aに沿って上下方向に移動することにより、スライドベース56が上下方向に移動し、造形テーブル5が垂直方向に移動する。
【0030】
スライドベース56の上側には、恒温部73が設けられる。恒温部73は、その内部にたとえば常温の水を流通することにより、一定の温度を維持することが可能に構成される。このようにすれば、造形テーブル駆動機構31の熱変位を抑制することができる。恒温部73の上側には、後述するチャック装置80が取り付けられる。
【0031】
(3.造形テーブル5)
図5を参照し、造形テーブル5の構成を説明する。
図5は、領域D(
図4参照)におけるA−A断面図(
図3参照)に相当する。
【0032】
図5に示すように、造形テーブル5は、造形テーブルの温度を調整する温調部74を備える。また、造形テーブル5を造形テーブル駆動機構31に固定するチャック装置80が造形テーブル5の下方に設けられる。
【0033】
温調部74は、加熱部75と冷却部76とを含む。加熱部75と冷却部76とは、互いに垂直方向に積み重なるように配置される。本実施形態では、冷却部76の上側に加熱部75が配置される。このようにすることで、加熱部75を下側に配置した場合と比べて、チャック装置80や造形テーブル駆動機構31に伝わる加熱部75からの熱を低減することができる。ただし、冷却部76の下側に加熱部75が配置される構成としてもよい。
【0034】
加熱部75は、加熱器75aを備える。加熱器75aは、例えば、発熱体を有する電気ヒータや、内部に熱媒を流通可能な配管である。加熱部75は、加熱器75aにより、例えば300度まで加熱可能に構成される。冷却部76は、冷却器76aを備える。冷却器76aは、例えば、内部に冷媒を流通可能な配管である。冷却部76は、冷却器76aにより、例えば−20度まで冷却可能に構成される。温調部74は、チャック装置80によって、造形テーブル駆動機構31に対し1つの固定箇所で着脱可能に固定される。特に、造形テーブル5の造形テーブル駆動機構31に対する固定箇所は、造形テーブル5の平面視における中心部であることが望ましい。造形テーブル5の中心部を1点で拘束することで、より好ましく温調部74の位置ずれが防止される。
【0035】
(4.チャック装置80)
チャック装置80は、造形テーブル5の下側に配置される。以下に説明するチャック装置80の構成はあくまで一例であり、造形テーブル5を造形テーブル駆動機構31に対し1つの固定箇所で着脱可能に固定することができる構成であれば、他の形態でもよい。チャック装置80は不図示の制御装置によって制御され、造形テーブル5の固定および固定解除が切り換えられる。チャック装置80は、ベース81と、ベース81上に配置された有底円筒状のクランプユニット82と、クランプユニット82と係止するセンタリングプレート87と、クランプユニット82内に挿通されるシャフト83とを備える。
【0036】
クランプユニット82内には、シャフト83を保持する係止部材として複数のロッキングボール84が配置されている。複数のロッキングボール84は等間隔に円状に配置されている。ロッキングボール84がシャフト83の係止部83dと係止することにより、シャフト83がクランプユニット82内で把持される。係止部材は、ツメ状やピン状のものであってもよい。
【0037】
図7に示すように、クランプユニット82の上面には、平面視における同心円状に、それぞれ第1の凸部85aと第2の凸部85bが複数設けられている。さらに、クランプユニット82の上面には、平面視における中心から放射状に形成された嵌合部86が設けられている。嵌合部86の上面は、水平方向の基準面を規定するように研磨されている。
【0038】
センタリングプレート87には、第1の凸部85aが挿通するための第1の開口88a、および第2の凸部85bが挿通するための第2の開口88bが設けられている。さらにセンタリングプレート87の下面には、嵌合部86に嵌合する支え足89が取り付けられている。
【0039】
このような構成とすることにより、クランプユニット82の第1の凸部85aが、センタリングプレート87の第1の開口88aに挿通することにより、センタリングプレート87の回転方向の位置決めが行われる。また、クランプユニット82の嵌合部86に、支え足89が嵌合することにより、センタリングプレート87の高さ方向における位置決めが行われる。
【0040】
図6に示すように、シャフト83は、第1のボルト83aと、チャッキング栓83cと、第1のナット83bとを有する。少なくとも第1のボルト83aおよび第1のナット83bは、筒状に構成されている。換言すれば、シャフト83の内部は、少なくとも第1のボルト83aの上面と第1のナット83bの下面との間において垂直方向に貫通している。好ましくは、チャッキング栓83cも筒状に構成され、第1のボルト83aの上面とチャッキング栓83cの下面との間において、垂直方向に貫通している。このように、シャフト83の内部に形成された孔を貫通孔98と呼ぶ。第1のボルト83aの頭部は、温調部74に係止される。チャッキング栓83cは、クランプユニット82によって把持される。換言すれば、チャッキング栓83cに形成された係止部83dが、係止部材であるロッキングボール84と係止する。第1のナット83bは、第1のボルト83aのねじ部とチャッキング栓83cのねじ部に螺合する。シャフト83は、造形テーブル5に設けられる挿通孔内に挿通される。シャフト83が挿通する挿通孔は、好ましくは、造形テーブル5の平面視における中心部に設けられる。このような構成により、造形テーブル5がクランプユニット82に固定される。
【0041】
さらに好ましくは、第1のボルト83aの頭部は加熱部75に係止し、第1のナット83bは冷却部76に係止することにより、加熱部75および冷却部76を締結する。温調部74の締結箇所は、好ましくは温調部74の平面視における中心部である。
【0042】
加熱部75および冷却部76は、第1のボルト83aと第1のナット83bの締結箇所とは異なる箇所、すなわち本実施形態においては温調部74の平面視における中心部とは異なる箇所で、複数の締結具によって、さらに締結されている。締結具は、具体的には第2のボルト93および第2のナット94を含む。温調部74には、複数の挿通孔が設けられており、これらの挿通孔は、温調部74に配置されている。第2のボルト93および第2のナット94は、各挿通孔内に配置される。
【0043】
第2のボルト93の頭部は加熱部75に係止し、第2のナット94は冷却部76に係止し、第2のボルト93のねじ部と第2のナット94が螺合することにより、加熱部75および冷却部76を締結する。なお、第2のボルト93の頭部が冷却部76に係止し、第2のナット94が加熱部75に係止するよう構成してもよい。ここで、第2のボルト93および第2のナット94による締結は、第1のボルト83aおよび第1のナット83bによる締結よりも低い締結力で締結されている。このように構成することで、加熱部75と冷却部76を十分締結するとともに、熱による膨張や収縮の拘束点を第1のボルト83aと第1のナット83bの締結箇所、すなわち本実施形態では中心部とすることができ、加熱部75と冷却部76間の位置ずれが発生することを防ぐことができる。
【0044】
ここで、第2のボルト93と加熱部75との間、および第2のナット94と冷却部76との間の少なくとも一方には、緩み止めワッシャ95が配置されることが好ましい。換言すれば、締結具は緩み止めワッシャ95をさらに含むことが好ましい。なお、第2のボルト93が冷却部76に係止し、第2のナット94が加熱部75に係止するよう構成する場合には、第2のボルト93と冷却部76との間、および第2のナット94と加熱部75との間の少なくとも一方に緩み止めワッシャ95が配置されることが好ましい。本実施形態では、第2のボルト93側と第2のナット94側のそれぞれに、緩み止めワッシャ95が配置される。緩み止めワッシャ95は、例えば皿ワッシャである。このように緩み止めワッシャ95を配置することにより、締結力を弱くしても第2のボルト93および第2のナット94が緩むのを抑えることができる。
【0045】
造形テーブル5の上部には凹部が形成され、当該凹部内には、材料層8の一層目が形成されるベースプレート33を固定するための固定プレート96が装填される。固定プレート96の厚みと凹部の深さとが一致するように凹部が形成され、固定プレート96が凹部内に配置されたとき、固定プレート96と造形テーブル5との上面が一致する。本実施形態では、固定プレート96はボルトによって造形テーブル5に固定されるが、その他の固定手段で固定されてもよい。ベースプレート33は、平面視における中心部が固定ボルト97によって固定プレート96に固定される。ベースプレート33を固定プレート96に固定するにあたっては、造形テーブル5を造形テーブル駆動機構31から取り外した状態で、貫通孔98から工具を挿入し、固定ボルト97を回転させる。貫通孔98が第1のボルト83aおよび第1のナット83b間に形成されている場合は、工具を挿入するためにはチャッキング栓83cを一度取り外す必要がある。本実施形態のように、貫通孔98が第1のボルト83aおよびチャッキング栓83c間に形成されている場合は、チャッキング栓83cが第1のナット83bに螺合したまま、貫通孔98に工具を挿入できるため、より望ましい。固定ボルト97の頭部は固定プレート96に係止し、固定ボルト97のねじ部はベースプレート33に形成されたタップ穴と螺合する。貫通孔98は、後述する固定ボルト97を回転させる工具が挿入可能な大きさを有していればよい。
【0046】
このような構成とすることにより、三次元造形物の大きさ、ひいてはベースプレート33の大きさにかかわらず、同じ固定プレート96を用いることができる。また、固定プレート96の大きさを比較的小型にすることができるため、加熱および冷却による固定プレート96の膨張および収縮の影響を低減することができる。また、ベースプレート33の大部分を直接造形テーブル5と接触させることが可能となり、加熱部75および冷却部76による加熱および冷却の効率が向上する。なお、固定プレート96を使用せず、直接ベースプレート33を造形テーブル5に固定してもよい。
【0047】
(5.三次元造形物の製造方法)
図8から
図12を用いて、積層造形装置100を用いた三次元造形物の製造方法について説明する。なお、
図8から
図12では、視認性を考慮し
図1から
図7で示していた積層造形装置100の構成要素を一部省略している。
【0048】
本実施形態の積層造形装置100は、造形テーブル5を比較的高温または低温に温度調整する場合や、造形途中に造形テーブル5の加熱および冷却を繰り返す場合など、比較的造形テーブル5の温度変化が大きい、または温度変化の頻度が高い三次元造形物の製造方法に対して特に有効である。以下においては、造形途中に造形テーブル5の加熱および冷却を繰り返す三次元造形物の製造方法として、材料層8を形成する材料としてマルテンサイト系金属を使用し、1層または複数層の固化層を形成する毎に固化層に対して温度調整を行って意図的にマルテンサイト変態を進行させる造形方法が例示される。より具体的には、1層または複数層の固化層が新たに造形される毎に、新たに造形された固化層を加熱温度T1、冷却温度T2、加熱温度T1の順番で温度調整を行う。なお、固化層のマルテンサイト変態開始温度をMsおよび固化層のマルテンサイト変態終了温度をMf、とすると、下記式(1)から(3)の関係が全て満たされる。
T1≧Mf (1)
T1>T2 (2)
T2≦Ms (3)
【0049】
固化後、冷却される前の固化体9はオーステナイト相を含む状態であって、冷却温度T2に冷却することによってオーステナイト相の少なくとも一部がマルテンサイト相へと変態する。
【0050】
図8には、造形テーブル駆動機構31から取り外した状態の造形テーブル5が示される。造形テーブル5には、固定プレート96およびシャフト83が固定されている。まず、前述の通り、造形テーブル5を造形テーブル駆動機構31から取り外した状態で、固定ボルト97によりベースプレート33を固定プレート96に固定する。このようにして造形テーブル5上にベースプレート33が載置された造形テーブル5を造形テーブル駆動機構31に載置し、チャック装置80により造形テーブル駆動機構31に固定する。造形テーブル5を造形テーブル駆動機構31に固定する前または後に、造形テーブル5の周囲に蛇腹部材20が取り付けられる。
【0051】
図9に示すように、造形テーブル5上にベースプレート33を載置した状態で造形テーブル5の高さを適切な位置に調整する。造形テーブル5の高さを調整した後、固化層形成工程を行う。固化層形成工程では、造形テーブル5に設けられた加熱部75によって造形テーブル5が材料層8の固化に適した温度にまで予熱される。本実施形態では、予熱温度は加熱温度T1と同一である。造形テーブル5を加熱温度T1まで加熱した状態で、以下に示すリコート工程と固化工程とを1回以上繰り返す。
【0052】
リコート工程では、材料収容部11a内に材料粉体が充填されているリコータヘッド11を、矢印B方向の左側から右側に移動させる。これにより、ベースプレート33上に材料層8が形成される。
【0053】
次に、
図10に示すように、固化工程において、材料層8の照射領域にレーザ光Lを照射することで、当該照射領域を溶融または焼結させ、ベースプレート33上に1層目の固化層9aを形成する。
【0054】
複数の固化層に対して温度調整を行う場合は、引き続き、
図11に示すように、造形テーブル5の高さを材料層8の厚さ分下げ、再度、リコート工程と固化工程とを行う。具体的には、リコータヘッド11を造形領域Rの右側から左側に移動させ、造形領域上に材料層8を形成する。そして、材料層8の照射領域にレーザ光Lを照射して溶融または焼結させ、ベースプレート33上に2層目の固化層9bを形成する。
【0055】
このように、固化層形成工程では、複数の固化層9a,9b...の形成を繰り返すことによって、固化体9が形成される。これら順次積層される固化層同士は、互いに強く固着される。また、固化層形成工程中、造形テーブル5は加熱部75によって加熱温度T1に温度調整されている。すなわち、固化体9を加熱温度T1に加熱する加熱工程が固化層形成工程と平行して行われる。
【0056】
以上の工程を繰り返して、
図12に示すように、予め定められた1つまたは複数の固化層が形成された後、造形テーブル5に設けられた冷却部76によって冷却工程が行われる。冷却工程では、固化体9の温度を冷却温度T2まで冷却する。
【0057】
冷却工程が完了すると、再度造形テーブル5の温度を加熱温度T1に設定し、固化層形成工程が行われる。少なくとも次の固化工程が行われるまでには、造形テーブル5の温度は加熱温度T1に温度調整され、材料層8の温度は加熱温度T1に再加熱される。また、所定数の固化層を形成する毎に、固化層の端面に対して、加工装置50によって加工を行う加工工程を実施してもよい。
【0058】
このような工程を繰り返して所望の三次元造形物が造形される。また、必要に応じて、積層造形装置100で造形した三次元造形物に対し、後加工を行ってもよい。後加工を行う場合は、三次元造形物を放電加工機やマシニングセンタ等の後加工を行う装置(以下、後加工装置)に移設する。この際、後加工装置にも積層造形装置100のクランプユニット82と取付姿勢が同様になるように調整したクランプユニットを設けておき、クランプユニット82とシャフト83を用いて三次元造形物が載置された造形テーブル5を固定することにより、後加工における位置決めの精度を維持することが可能となる。
【0059】
クランプユニットの取付姿勢の調整は、例えば下記のように行われる。直方体形状のマスターパレットを用意する。マスターパレットには、センタリングプレートとチャッキング栓が固定され、チャッキング栓は積層造形装置100のクランプユニット82および後加工装置のクランプユニットにそれぞれ着脱自在に把持される。まず、積層造形装置100のクランプユニット82にマスターパレットを固定させ、マスターパレットの側面の平行度および上面の平面度が所望の値になるよう、クランプユニット82の取付姿勢を調整する。次に、マスターパレットを後加工装置のクランプユニットに移設し、固定する。マスターパレットの側面の平行度および上面の平面度が、積層造形装置100に固定したときと同様の値になるよう、後加工装置のクランプユニットの取付姿勢を調整する。このようにすれば、積層造形装置100のクランプユニット82と、後加工装置のクランプユニットの取付姿勢とが略一致する。
【0060】
ここで、三次元造形物を後加工装置に移設する具体的手順を説明する。まず、不図示の吸引装置等で蛇腹部材20内の未固化の材料粉体を除去する。次に、チャック装置80による造形テーブル5の固定を解除し、造形テーブル5を積層造形装置100から取り外す。蛇腹部材20は、造形テーブル5を取り外す前または後に、造形テーブル5から取り外される。積層造形装置100から取り外された造形テーブル5には、固定プレート96およびベースプレート33が載置され、ベースプレート33上には三次元造形物が積層造形されている。また、造形テーブル5には、シャフト83が固定されている。造形テーブル5ごと後加工装置のクランプユニットに三次元造形物を載置し、造形テーブル5を後加工装置に固定する。このようにすれば、後加工にあたり三次元造形物を造形テーブル5から取り外すことなく、また、積層造形装置100と同様の取り付け姿勢で後加工装置に造形テーブル5を載置することができるので、容易に位置決め作業が行える。
【0061】
以上のようにして、本実施形態の積層造形装置100においては、造形テーブル5と造形テーブル駆動機構31とが、1つの固定箇所で着脱自在に固定される。そのため、造形中における造形テーブル5の位置ずれが起きにくく、後工程における位置決め作業性も向上する。その結果、精度の高い積層造形を実施することが可能となる。