【解決手段】台車枠500と軸箱体504との間に介装されて上下方向に伸縮可能なコイルばね30と、台車枠500側の部材と軸箱体504側の部材との間に介装され、同心状に配置される第2円筒積層ゴム50とを備え、コイルばね30及び第2円筒積層ゴム50によって軸箱体504が台車枠500に弾性的に支持される鉄道車両用の軸箱支持装置100において、第2円筒積層ゴム50の中央には、台車枠500側に取り付けられるテーパ円筒ピンである支軸509aが挿入され、第2円筒積層ゴム50の最内面に配置される円筒部材である内周管50aは、その先端部に外周ネジ部50eを備える。
台車枠と軸箱体との間に介装されて上下方向に伸縮可能なコイルばねと、前記台車枠側の部材と前記軸箱体側の部材との間に介装され、同心状に配置される円筒積層ゴムとを備え、前記コイルばね及び前記円筒積層ゴムによって前記軸箱体が前記台車枠に弾性的に支持される鉄道車両用軸箱支持装置において、
前記円筒積層ゴムの中央には、前記台車枠側に取り付けられるテーパ円筒ピンが挿入され、
前記円筒積層ゴムの最内面に配置される円筒部材は、その先端部に雄ネジ部を備えていること、
を特徴とする鉄道車両用軸箱支持装置。
台車枠と軸箱体との間に介装されて上下方向に伸縮可能なコイルばねと、前記台車枠側の部材と前記軸箱体側の部材との間に介装され、同心状に配置される円筒積層ゴムとを備え、前記コイルばね及び前記円筒積層ゴムによって前記軸箱体が前記台車枠に弾性的に支持される鉄道車両用軸箱支持装置において、
前記円筒積層ゴムの中央には、前記台車枠側に取り付けられるテーパ円筒ピンが挿入され、
前記円筒積層ゴムの最内面に配置される円筒部材は、その外周先端に治具係合部を備え、
前記治具係合部に、中央に貫通ネジ穴部が設けられた治具が取り付けられ、
前記貫通ネジ穴部に、ネジを貫通させて螺合する事で、前記ネジ端部が前記テーパ円筒ピンの端部を押し上げ、
相対的に、前記円筒積層ゴムの前記円筒部材を前記治具が引っ張ること、
を特徴とする鉄道車両用軸箱支持装置。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両の台車に用いる軸箱支持装置に、円筒形状のゴム体を同心状に配置した円筒積層ゴムを用いて前後左右方向の振動を吸収する構成を採用する方法が提案され広く普及している。台車に用いられるコイルばねが上下荷重を負担し、前後左右荷重と軸箱の支持案内は円筒積層ゴムが負担する。こうすることで、高速走行安定性や横圧の低減など曲線走行性能をバランス良く向上させることができる。
【0003】
特許文献1には、鉄道車両用軸箱支持装置に関する技術が開示されている。軸箱上部と台車枠のバネ帽との間に配置されるコイルバネ内に軸箱を支持する軸箱上部円筒積層ゴムを配置するとともに、車体前後方向に延びる軸箱の支持腕を、軸箱側部円筒積層ゴムを介して台車枠に支持させている。この際に、両円筒積層ゴムの少なくとも一方を剛性切り替え可能としている。
【0004】
特許文献2には、鉄道車両の軸箱支持装置に関する技術が開示されている。車軸を支持した軸箱体からコイルばねを介して台車枠を弾性支持しており、コイルばねの下端部または上端部にコイルばねと同心に円筒積層ゴムを配置している。さらに、円筒積層ゴムの外径はコイルばねの内径よりも大きく、円筒積層ゴムを車軸の中心の水平方向線よりも上方又は下方に配置したものである。
【0005】
特許文献3には、鉄道車両用軸箱支持装置に関する技術が開示されている。コイルばね及び円筒積層ゴムによって軸箱体を台車枠に対して弾性的に支持した軸箱支持装置において、円筒積層ゴムでは内周管が下部軸バネ座の支持軸部の周面に固定され、外周管が上部軸バネ座の円筒部の内周面に対して上下方向に摺動可能なパイプ部材を設けている。これによって、鉄道車両が空車の状態では一次バネを柔らかくすることができる一方で、満車の状態では一次バネを硬くすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
円筒積層ゴムを用いた軸箱支持装置は、例えば特許文献1や特許文献3に示される様なタンデム型や、特許文献2及び特許文献3に示される様なウイング型に代表されるように、台車の4箇所に設置された軸箱支持装置は、円筒積層ゴムを2つ、前後に或いは平行に並べて使うケースがある。しかしながら、この様な円筒積層ゴムを2つ使うケースでは、組み付けに際してシビアな位置決めを要求される事が多く、少なくとも片側の支軸にテーパ円筒ピンを用いることで、組み付け性を改善している。
【0008】
ところが、テーパ円筒ピンを支軸に用いると、例えば車両走行による振動などの影響で楔効果が働き、鉄道車両を走行させるうちに支軸と円筒積層ゴムの内筒がより強固に嵌合してしまうことがある。そうすると、メンテナンスにあたっては、油圧ジャッキなどを用いて支軸から円筒積層ゴムを抜く作業が必要となる。しかし、特許文献1乃至特許文献3にも示すように、台車周りには様々な機器がついているために作業性が悪く、油圧ジャッキなどを用いた大掛かりな作業を行うには不向きであることが分かった。このために、もっと簡易に支軸から円筒積層ゴムを抜く方法が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明はこの様な課題を解決する為により簡易に支軸から円筒積層ゴムを抜くことが可能な構成を有する鉄道車両用軸箱支持装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両用軸箱支持装置は、以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)台車枠と軸箱体との間に介装されて上下方向に伸縮可能なコイルばねと、前記台車枠側の部材と前記軸箱体側の部材との間に介装され、同心状に配置される円筒積層ゴムとを備え、前記コイルばね及び前記円筒積層ゴムによって前記軸箱体が前記台車枠に弾性的に支持される鉄道車両用軸箱支持装置において、前記円筒積層ゴムの中央には、前記台車枠側に取り付けられるテーパ円筒ピンが挿入され、前記円筒積層ゴムの最内面に配置される円筒部材は、その先端部に雄ネジ部を備えていること、を特徴とする。
【0012】
上記(1)に記載の態様によって、円筒積層ゴムの最内面に配置される円筒部材の先端にネジ部を設けたことで、これを利用して円筒積層ゴムをテーパ円筒ピンより外すことができる。ネジ部を利用することで、円筒積層ゴムに対して回転する力を加えることが可能である点も、取り外しに対しては有利だと考えられる。これは、課題に示したとおり、円筒積層ゴムはテーパ円筒ピンに挿入されることで、楔効果が働いて強固に保持されることが考えられるからである。これに対して油圧ジャッキなどを用いた大掛かりな装置をもちいるのでは無く、ネジが切られた治具などを用いて取り外しを可能とすることで、作業性の向上を図ることができる。
【0013】
(2)(1)に記載の鉄道車両用軸箱支持装置において、前記雄ネジ部に、前記雄ネジ部と係合する雌ネジ部が形成された外筒部と前記テーパ円筒ピンの端部に当接する凸部とを有する治具が、付けられることで、前記雄ネジ部に前記外筒部の雌ネジ部が螺合しながら前記凸部が前記テーパ円筒ピンの端部を押し上げ、相対的に、前記円筒積層ゴムの前記円筒部材を前記治具が引っ張ること、が好ましい。
【0014】
上記(2)に記載の態様によって、外筒部が螺合するに従って、円筒積層ゴムを治具に設けられた凸部がテーパ円筒ピンの端部を押し上げるように作用する一方で、ネジ部に外筒部が係合する過程で回転する力が発生するため、円筒積層ゴムの外筒部を回転させる力が作用する。この結果、円筒積層ゴムがテーパ円筒ピンにしっかりと係合している場合でも容易に軸箱支持装置より取り外すことが可能となる。
【0015】
(3)台車枠と軸箱体との間に介装されて上下方向に伸縮可能なコイルばねと、前記台車枠側の部材と前記軸箱体側の部材との間に介装され、同心状に配置される円筒積層ゴムとを備え、前記コイルばね及び前記円筒積層ゴムによって前記軸箱体が前記台車枠に弾性的に支持される鉄道車両用軸箱支持装置において、前記円筒積層ゴムの中央には、前記台車枠側に取り付けられるテーパ円筒ピンが挿入され、前記円筒積層ゴムの最内面に配置される円筒部材は、その外周先端に治具係合部を備え、前記治具係合部に、中央に貫通ネジ穴部が設けられた治具が取り付けられ、前記貫通ネジ部に、ネジを貫通させて螺合する事で、前記ネジ端部が前記テーパ円筒ピンの端部を押し上げ、相対的に、前記円筒積層ゴムの前記円筒部材を前記治具が引っ張ること、が好ましい。
【0016】
上記(3)に記載の態様によって、(1)及び(2)同様に円筒積層ゴムを軸箱支持装置から取り外す事が可能となる。(2)の態様との違いは、治具に貫通ネジ部が設けられ、ネジを回転させる事で円筒積層ゴムを軸箱支持装置から取り外す点だが、ネジ構造を利用して回転を発生させる点では(1)や(2)と共通する思想であると言える。この結果、コンパクトな治具を用いて容易に円筒積層ゴムの取り外しを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1に、第1実施形態の、鉄道車両用軸箱支持装置が適用されている台車枠500の平面図を示す。鉄道車両には1両に付き2つの台車が設けられ、その台車には台車枠500が用いられる。
図1に示される台車枠500は、枕木方向に延びる1つの横梁502と、横梁502の両端部からレール方向に延びる2つの側梁503とを備えている。側梁503の両端には、それぞれ軸箱支持装置100が設けられる。つまり、台車枠500には合計4つの軸箱支持装置100が設けられている。
【0019】
図2に、軸箱支持装置100の側面断面を図に示す。
図2では、説明のために部分的に断面として説明している。
図3に、軸箱支持装置100の平面図を示す。軸箱支持装置100は、
図2に示すように側梁503と軸箱体504との間に設けられていて、軸箱体504を台車枠500(側梁503)に対して弾性的に支持するものである。そして、軸箱支持装置100は、車両の走行時にレールから伝わる小刻みな振動を台車枠500に伝えないように吸収し、車両を安定走行させる機能を有する。なお、台車枠500は車体から上下方向及び水平方向の荷重を受けて、その荷重は軸箱支持装置100に伝達される。
【0020】
軸箱支持装置100は、第1円筒積層ゴム40及び第2円筒積層ゴム50の2つの積層ゴムを直列的に配置したいわゆるタンデム型である。軸箱体504は、図示しない枕木方向に延びる車軸を回転自在に支持する軸受けを収容している。車軸の中心を車軸中心線O2が貫き、車軸には図示しない車輪が連結される。よって、車輪は車軸中心線O2を回転中心にして回転することとなる。軸箱支持装置100は、
図2に示すように、主に、下部軸ばね座10と上部軸ばね座20と、コイルばね30と、第1円筒積層ゴム40と第2円筒積層ゴム50とを備えている。
【0021】
下部軸ばね座10は、コイルばね30の下側に配置されるものであり、軸箱体504側に設けられた部材である。この下部軸ばね座10は、軸箱体504の真上に配置されている。そして、ばね中心線O1の同軸上に中心を有する円柱状の支持軸部10aと、この支持軸部10aの下端から周方向に張り出しているフランジ部10bとを有している。なお、ばね中心線O1は車軸中心線O2と直交して鉛直方向に延びる。下部軸ばね座10は、ライナー11を介して軸箱体504の上部に配置される。上部軸ばね座20は、コイルばね30の上側に配置されるものであり、側梁503に固定される部材である。
【0022】
上部軸ばね座20は、ばね中心線O1と同軸的に延びる円筒部20aと、この円筒部20aの上端から周方向に張り出して形成されるフランジ部20bと、フランジ部20bより上方に延設される円環部20cを有している。円筒部20aの内部には、下部軸ばね座10の支持軸部10aの上部が挿入される。円環部20cには、ゴムキャップ21を取り付けるために取付孔20dが形成されている。ゴムキャップ21は、水滴や粉塵が円筒部20aの内部に侵入することを防止する機能がある。上部軸ばね座20は、防振ゴム22を介して側梁503の内面503aに取り付けられている。
【0023】
コイルばね30は、軸箱支持装置100の一次ばねとして機能するものであり、主に鉛直方向に作用する荷重を伸縮することによって受け止め振動を減衰させるように作用する。このコイルばね30は、上部軸ばね座20のフランジ部20bと下部軸ばね座10のフランジ部10bとの間に配置される。
【0024】
第1円筒積層ゴム40は、軸箱支持装置100の一次ばねとして機能し、主に水平方向に作用する荷重を水平方向に歪むことで受け止める。この第1円筒積層ゴム40は、コイルばね30の内側に配置され、上部軸ばね座20の内周面20eと下部軸ばね座10の周面10cとの間に保持されている。
【0025】
図4に、第1円筒積層ゴム40の断面図を示す。
図4は、
図2のXX断面に相当する。第1円筒積層ゴム40は、
図4に示すように、筒状体が同心円状に配置されている。円環状の内周管40a及び外周管40bと、円弧状に湾曲された金属プレート40c及びゴムプレート40dとを有している。そして、弾性変形するゴム部40Aが、円弧状に一体形成されていて、各ゴム部40Aの間に各間隙部40Bが形成されている。
【0026】
各ゴム部40Aでは、金属プレート40cが、内周管40aと外周管40bとの間で径方向に三層設けられていて、径外方向に向かうにしたがって周方向長さが長くなっている。そして、ゴムプレート40dの間と、外周管40bと外側の金属プレート40cの間に、加硫成型によって接着している。この第1円筒積層ゴム40は、各間隙部40Bが車両の前後側(レール方向側)になるように配置されている。
【0027】
図5に、第2円筒積層ゴム50の断面図を示す。
図5は、
図2のYY断面に相当する。
図6に、第2円筒積層ゴム50の側面断面図を示す。
図6の第2円筒積層ゴム50は、部品単体として表現している。第2円筒積層ゴム50は、軸箱支持装置100の一次ばねとして機能するものであり、主に水平方向に作用する荷重を水平方向に歪むことで受け止める。この第2円筒積層ゴム50は、
図2に示すように、軸箱体504に対してレール方向の後ろ側に配置されている。
【0028】
ここで、軸箱体504には、レール方向の後ろ側に延びる支持腕505が設けられている。この支持腕505に円環状の円筒リング506が形成されている。また、側梁503の下面503bに支持座507が設けられている。その支持座507に受け部材508及び内筒部材509が取り付けられている。そして、その内筒部材509のうち上下方向に延びる支軸509aが円筒リング506の内部に挿入されている。この支軸509aの周面はテーパ状になっている。第2円筒積層ゴム50は、
図5に示すように、筒状体が同心円状に配置されている。円環状の内周管50a及び外周管50bと、円弧状に湾曲された金属プレート50c及びゴムプレート50dとを有している。
【0029】
内周管50aの内周面は、
図6に示すように下側に行くにつれて狭くなるテーパ状になっていて、
図2に示すように支軸509aの周面に組み付けられている。このテーパは1/10勾配に設定されている。内周管50aの内周面及び支軸509aの周面がテーパ状になっているのは、第2円筒積層ゴム50を支軸509aに対して組み付け易くするためである。第2円筒積層ゴム50は、上下のCリング51によって円筒リング506の中でほぼ動かないように位置決めされている。
【0030】
そして、
図5に示すように、この第2円筒積層ゴム50でも、弾性変形するゴム部50Aが、扇形状で一体形成されていて、各ゴム部50Aの間に間隙部50Bが形成されている。各ゴム部50Aでは、金属プレート50cが、内周管50aと外周管50bとの間で径方向に三段設けられていて、径外方向に向かうにしたがって弧の長さが長くなっている。そして、ゴムプレート50dが、内周管50aと内側の金属プレート50cの間に、加硫成型によって接着している。
【0031】
この第2円筒積層ゴム50は、各間隙部50Bが車両の左右側、枕木方向側になるように配置されている。即ち、第2円筒積層ゴム50の各間隙部50Bと第1円筒積層ゴム40の各間隙部40Bは、周方向に90度ずれている。そして、
図6に示すように内周管50aの下側先端外周面には外周ネジ部50eが形成されている。また、
図2に示すように、第2円筒積層ゴム50の下部には、蓋体520がボルト521によって固定されている。蓋体520は、支軸509aの先端に設けられた保持穴509bにボルト521が螺合されることで、第2円筒積層ゴム50の脱落防止や保護が行われる。
【0032】
第1実施形態の鉄道車両用軸箱支持装置は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0033】
まず、第2円筒積層ゴム50の分離が容易になる点が効果として挙げられる。これは、第1実施形態の鉄道車両用の軸箱支持装置100が、台車枠500と軸箱体504との間に介装されて上下方向に伸縮可能なコイルばね30と、台車枠500側の部材と軸箱体504側の部材との間に介装され、同心状に配置される第2円筒積層ゴム50とを備え、コイルばね30及び第2円筒積層ゴム50によって軸箱体504が台車枠500に弾性的に支持される鉄道車両用の軸箱支持装置100において、第2円筒積層ゴム50の中央には、台車枠500側に取り付けられるテーパ円筒ピンである支軸509aが挿入され、第2円筒積層ゴム50の最内面に配置される円筒部材である内周管50aは、その外周先端に外周ネジ部50eを備えていること、を特徴とするからである。
【0034】
ここで、第2円筒積層ゴム50の取り外しの手順について説明する。
図7に、第2円筒積層ゴム50の先端と治具200の断面図を示す。治具200は、支軸509aより第2円筒積層ゴム50を取り外す際に用いられる。治具200は、内側に内ネジ部201aが形成されている外筒体201と、溝部203に隔てられて中央部に配置される凸部202と、下部に設けられた六角頭204とを有している。
【0035】
図8に、内ネジ部201aと外周ネジ部50eが螺合している様子を断面図に示す。
図9に、凸部202が支軸509aの先端を押す様子を断面図に示す。第2円筒積層ゴム50を取り外すにあたって、
図2に示されていた支軸509aの先端に取り付けられていた蓋体520及びボルト521を外す。その後、
図7に示すように治具200を第2円筒積層ゴム50の先端に取り付ける。具体的には、内ネジ部201aと外周ネジ部50eが螺合するように治具200を回転させて行く。この際には、六角頭204に図示しないスパナなどの工具をかけて回転させる。
【0036】
支軸509aに凸部202が当接し、更に治具200をねじ込むことで、相対的に第2円筒積層ゴム50の内周管50aが引っ張られる。治具200を回転させることで、外周ネジ部50eに外筒体201が螺合しながら凸部202が支軸509aの端部を押し上げる。そうすると、支軸509aに対して内周管50aは治具200によって回転力が伝えられる事になり、徐々に支軸509aから内周管50aが引き抜かれる。そうして
図7に示す状態から
図9に示す状態となり、支軸509aに対して第2円筒積層ゴム50を下方向に引っ張り出すことができるので、第2円筒積層ゴム50を台車枠500より取り外すことが可能となる。
【0037】
課題でも示した通り、支軸509aの外周面はテーパ状に形成されており、一方の第2円筒積層ゴム50の内周管50aもテーパ状に形成されていて、鉄道車両走行時の振動や、錆や汚れが入り込むなどの影響で、楔効果が働くことにより強固に嵌合してしまうケースがある。よって、第2円筒積層ゴム50を台車枠500から取り外すにあたって、油圧ジャッキなどを用いるなど、比較的大掛かりな装置を必要とすることがあった。しかし、第1実施形態で示したように、内周管50aの端面外周に外周ネジ部50eを設けておくことで、治具200を用いて第2円筒積層ゴム50の取り外しが容易に実現出来るようになった。
【0038】
治具200は、
図7乃至
図9に示すとおりに十分に小さく、六角頭204が備えられることで、スパナやラチェットレンチなどの工具を用いて作業が可能である。従って、大きな作業スペースを必要とせず、周囲に他の機器がついていたとしても、作業を行うことができる。つまり、作業性が向上し、作業時間の短縮にも寄与するものと考えられる。こうした台車のメンテナンス性の向上は、車体の運用においても十分に利点となり得る。
【0039】
次に、第2の実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態の構成とほぼ同じであるが、治具の形状が少し異なる。その点について以下に図を用いて説明する。
【0040】
図10に、第2実施形態の第2円筒積層ゴムの先端と治具300の断面図を示す。第2実施形態の治具300は、第1実施形態の治具200と同じ機能を持っているが、第1実施形態では凸部202が治具200の一部として一体的に作られているのに対して、第2実施形態の治具300では、外筒体301に貫通するボルト304の端部によって、支軸509aの端部に当接する構成となっている。第2実施形態の治具300は、
図10に示すように外筒体301にボルト304が貫通する形で備えられており、外筒体301の底部にはボルト304が貫通するためのねじ孔303が備えられている。
【0041】
ボルト304は全ネジになっており外筒体301に対して締め込まれており、ねじ孔303とボルト304が係合する事で、ボルト304の頭を工具で回転させることで、外筒体301ごと回転する。そして、ボルト304のネジ部302の端部が支軸509aに当接し、更に治具300をねじ込む事で、相対的に第2円筒積層ゴム50の内周管50aが引っ張られる。治具300を回転させることで、外周ネジ部50eに外筒体301が螺合しながらネジ部302の端部が支軸509aの端部を押し上げる。
【0042】
そうすると、支軸509aに対して内周管50aは治具300によって回転力が伝えられる事になり、徐々に支軸509aから内周管50aが引き抜かれる。そうして、第1実施形態同様に
図7に示す状態から
図9に示す状態となり、支軸509aに対して第2円筒積層ゴム50を下方向に引っ張り出すことができるので、第2円筒積層ゴム50を台車枠500より取り外すことが可能となる。ここで、ボルト304は、外筒体301と別部品であるために、ボルト304のネジ部302の長さを変えることが可能であり、ネジ部302の長さを変えることで、治具300のバリエーションを増やす事ができる。
【0043】
次に、第3の実施形態について説明する。第3実施形態は、第2実施形態の構成と同じであるが、治具300の運用が異なる。
【0044】
図11に、第3実施形態の、第2円筒積層ゴムの先端と治具の断面図を示す。この場合、外筒体301はボルト304より先に外周ネジ部50eに取り付けられ、その状態で、ネジ部302を挿入している。ネジ部302だけを回転させる点で、外筒体301ごと回転する場合と異なるが、こうすることで、相対的に支軸509aに対して第2円筒積層ゴム50を下方向に引っ張り出すことができる点は同様である。その結果、第2円筒積層ゴム50を、支軸509aから抜き取ることができる。予め外筒体301の内ネジ部201aとネジ部302の突出量の関係を気にしないで済む点で優れる。
【0045】
なお、第3実施形態においては、外筒体301と内周管50aとの係合部分の螺合が進むことで第2円筒積層ゴム50を引っ張る構造になっていないので、この部分の係合方法を他の手法にする事を妨げない。例えば、内周管50aにピン孔を設け、外筒体301の外側からピンを挿し込むような係合方法でも良い。
【0046】
次に、第4の実施形態について説明する。第4実施形態は、第2実施形態の構成とほぼ同じであるが、ナットを備える点で異なる。その点について以下に図を用いて説明する。
【0047】
図12に、第4実施形態の、第2円筒積層ゴムの先端と治具350の断面図を示す。第4実施形態の治具350は、
図11に示すように外筒体301にボルト306が貫通する形で備えられている点で第2実施形態及び第3実施形態と同じであるが、ナット305が備えられている点で異なる。この場合、ボルト306をナット305で固定し、ダブルナットとして機能する為に、ネジ部302を任意の長さに変える事が可能である。第2実施形態では、ボルト304のネジ部302の長さを変更するためにボルト304を取り替える旨記載しているが、ネジ部302を必要な長さに調整してナット305によってロックすることが出来るので、より手間が省ける。
【0048】
また、ナット305でボルト306をロックした状態で治具350を回転させて、第2円筒積層ゴム50を台車枠500から外すことが可能となる点は第2実施形態と同じであるが、第3実施形態のように、先に外筒体301を外周ネジ部50eに取り付け、ナット305を緩めた状態でボルト306を回転させるという運用も可能である。ネジ部302が必要な長さになった時点でナット305をロックして、更にボルト306を回転するといった手順をとれば、現場でネジ部302の長さ調整をする事がよりスムーズに行えると考えられる。
【0049】
以上、本発明に係る鉄道車両用軸箱支持装置に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第1実施形態乃至第4実施形態ではタンデム型の軸箱支持装置についての事例を紹介したが、他の方式の軸箱支持装置に本発明を適用することを妨げない。また、軸箱支持装置100の構成についても、あくまで例示に過ぎないため、他の構成の軸箱支持装置に本発明を適用することを妨げない。