特開2020-117438(P2020-117438A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-117438(P2020-117438A)
(43)【公開日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】ガラスシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/02 20060101AFI20200710BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20200710BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20200710BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20200710BHJP
【FI】
   C03B33/02
   B28D5/00 Z
   B28D7/04
   B26F3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-79028(P2020-79028)
(22)【出願日】2020年4月28日
(62)【分割の表示】特願2019-30182(P2019-30182)の分割
【原出願日】2009年10月30日
(31)【優先権主張番号】12/262,800
(32)【優先日】2008年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン イー ディマーティノ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エイ セカンド ジョーゼフ
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
4G015
【Fターム(参考)】
3C060AA08
3C060CB03
3C060CB14
3C060CB15
3C069AA03
3C069BA01
3C069BA08
3C069BB04
3C069CA11
3C069CB01
3C069CB03
3C069EA05
4G015FA01
4G015FB01
4G015FC04
4G015FC11
4G015FC14
(57)【要約】
【課題】ガラスシートのエッジの剪断箇所に振動による影響が及ばないようにする。
【解決手段】分割機構およびクラック開始部材を有する非罫書式分割機が、移動ガラスシートのクラックを生じる所定位置において応力プロファイルを形成し、クラック開始部材が移動ガラスシートの所定位置に接触して移動ガラスシートの一部をせん断する。
【選択図】図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスシートの製造方法であって、
進行方向に前記ガラスシートを移動させる工程と、
分割機構およびクラック開始部材を有する非罫書式分割機を用いて移動ガラスシートを分割する工程であって、前記分割機構が、
前記移動ガラスシート内の所定の位置にクラックを生じさせる応力プロファイルを前記移動ガラスシート内に生成して、次に前記クラック開始部材が前記移動ガラスシートに接触して前記所定の位置に前記クラックを生成し、該クラックが前記移動ガラスシート内の所望の経路に沿って伝搬して、前記移動ガラスシートの一部をせん断して、前記移動ガラスシートの残存部分から分割する工程と、
を備えることを特徴とする、ガラスシートの製造方法。
【請求項2】
前記移動ガラスシートから前記一部をせん断して切り離す前記クラックの、前記移動方向に関して上流位置で前記ガラスシートを両面で安定させる工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記クラックを生成する上流位置で前記ガラスシートを安定させる工程が、少なくとも1対の軌道の間で、前記ガラスシートを移動させる工程を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記クラックを生成する上流位置で前記ガラスシートを安定させる工程が、少なくとも1対のローラの間で、前記ガラスシートを移動させる工程を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ガラスシートを移動方向に移動させる工程の前に、バッチ材料を溶解して溶融ガラスを形成し、該溶融ガラスを処理して前記ガラスシートを形成する工程と、
該ガラスシートを延伸する工程と、
を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記移動ガラスシートの前記残存部分の厚さは、100μm未満であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記分割装置が、前記移動ガラスシートから前記エッジを分割する前に前記移動ガラスシート上のコーティングを切断或いは部分的に切断するカッターをさらに有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
ガラスシートの製造方法であって、
進行方向に前記ガラスシートを移動させる工程と、
分割機構およびクラック開始部材を有する非罫書式分割機を用いて前記ガラスシートを分割する工程であって、前記分割機構が、
前記ガラスシート内の所定の位置にクラックを生じさせる応力プロファイルを前記ガラスシート内に生成して、次に前記クラック開始部材が前記ガラスシートに接触して前記所定の位置に前記クラックを生成し、該クラックが前記移動ガラスシート内の所望の経路に沿って伝搬して、前記移動ガラスシートの一部をせん断して、前記移動ガラスシートの残存部分から分割する工程と、
を備えることを特徴とする、ガラスシートの製造方法。
【請求項9】
前記ガラスシートから前記一部をせん断して切り離す前記クラックの、前記移動方向に関して上流位置で前記ガラスシートを両面で安定させる工程をさらに有することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記クラックを生成する上流位置で前記ガラスシートを安定させる工程が、少なくとも1対の軌道の間で、前記ガラスシートを移動させる工程を有することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記クラックを生成する上流位置で前記ガラスシートを安定させる工程が、少なくとも1対のローラの間で、前記ガラスシートを移動させる工程を有することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記ガラスシートを移動方向に移動させる工程の前に、バッチ材料を溶解して溶融ガラスを形成し、該溶融ガラスを処理して前記ガラスシートを形成する工程と、
該ガラスシートを延伸する工程と、を含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記ガラスシートの前記残存部分の厚さは、100μm未満であることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記分割装置が、前記移動ガラスシートから前記エッジを分割する前に前記移動ガラスシート上のコーティングを切断或いは部分的に切断するカッターをさらに有することを特徴とする請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスシートの製造方法およびガラス製造システムに関する。一実施の形態において、この装置は、ガラスシートへの罫書きを必要とすることなく、静止しているガラスシートを分割する。別の実施形態において、この装置は、移動しているガラスシートから外側エッジを除去するために、この移動しているガラスシートへの罫書きを必要とすることなくこれを分割する。
【背景技術】
【0002】
今日ガラス産業においては、ガラスシートに罫書きするために、ダイヤモンドスクライバ、カーバイド罫書きホイール、およびレーザ罫書き装置などの罫書き装置が一般に使用されており、これらを用いてガラスシートを所望の形状に分割することができる。ダイヤモンドスクライバは、ガラス産業において100年以上もの間使用されている。カーバイド罫書きホイールは、ガラス産業において約100年に亘り使用されており、一方レーザ罫書き装置は約30年間使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念なことに、こういった罫書き装置はガラスシートの表面に損傷を与え、このため分割されたガラスシートのエッジ強度は大幅に制限されてしまう。したがって、ガラスシートの罫書きおよび分割に関連するこのような欠点および他の欠点に対処し得る、外側エッジを処理する装置および方法を求める要望がある。本発明は、こういった要望および他の要望を満足させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のガラスシートの製造方法は、進行方向に前記ガラスシートを移動させる工程と、分割機構およびクラック開始部材を有する非罫書式分割機を用いて移動ガラスシートを分割する工程であって、前記分割機構が、前記移動ガラスシート内の所定の位置にクラックを生じさせる応力プロファイルを前記移動ガラスシート内に生成して、次に前記クラック開始部材が前記移動ガラスシートに接触して前記所定の位置に前記クラックを生成し、該クラックが前記移動ガラスシート内の所望の経路に沿って伝搬して、前記移動ガラスシートの一部をせん断して、前記移動ガラスシートの残存部分から分割する工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0005】
本発明のガラス製造方法は、進行方向に前記ガラスシートを移動させる工程と、分割機構およびクラック開始部材を有する非罫書式分割機を用いて前記ガラスシートを分割する工程であって、前記分割機構が、前記ガラスシート内の所定の位置にクラックを生じさせる応力プロファイルを前記ガラスシート内に生成して、次に前記クラック開始部材が前記ガラスシートに接触して前記所定の位置に前記クラックを生成し、該クラックが前記移動ガラスシート内の所望の経路に沿って伝搬して、前記移動ガラスシートの一部をせん断して、前記移動ガラスシートの残存部分から分割する工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0006】
一態様において、静止しているガラスシートを分割する装置を提供し、この装置は、(a)支持プレート;(b)支持プレートから上方に向かって延在している第1安定化面;(c)支持プレートから上方に向かって延在しているアンビル面であって、ガラスシートが、支持プレートと、第1安定化面と、アンビル面との上に位置付けられる、このアンビル面;(d)ガラスシートの上に置かれ、このガラスシートに対して、第1安定化面およびアンビル面とは反対側の面上に位置付けられ、さらに第1安定化面に対してよりもアンビル面に対して、より近接して位置付けられている、第2安定化面;および(e)ガラスシートの上に置かれ、このガラスシートに対して、第1安定化面およびアンビル面とは反対側の面の、第1安定化面およびアンビル面の間に位置付けられる圧迫面であって、この圧迫面が、ガラスシートの方へと動かされたとき、応力プロファイルをガラスシート内に生成するようアンビル面に接近した隣接位置でガラスシートに接触し、この応力プロファイルが、ガラスシートにクラックを生成しかつガラスシートを2つの分かれたガラスシートに分割するものである、この圧迫面、を備えている。この装置は重要であり、というのもガラスシートを分割して得られたエッジの品質は、汚染されていない状態であり、かつ従来の被罫書エッジよりも仕上がりおよび強度において優れているためである。
【0007】
別の態様において、移動しているガラスシートへの罫書きを必要とすることなく、この移動しているガラスシートを分割する分割装置を提供する。一実施の形態において、この分割装置は、移動ガラスシート内に応力プロファイルを生成する分割機構(例えば、ローラ、軌道(tracks)など)を備え、この応力プロファイルが、移動ガラスシートの少なくとも1つのエッジをせん断するよう、移動ガラスシートの既定の位置にクラックを生成する。この装置は重要であり、というのもガラスシートを分割して得られたエッジの品質は、汚染されていない状態であり、かつ従来の被罫書エッジよりも仕上がりおよび強度において優れているためである。
【0008】
さらに別の態様においては、ガラス製造システム(および対応する方法)が提供され、このシステムは、(a)バッチ材料を溶解し、さらに溶融ガラスを形成する、少なくとも1つの槽;(b)溶融ガラスを受け取って移動ガラスシートを成形する、成形装置;(c)移動ガラスシートを延伸する牽引ローラアセンブリ;(d)移動ガラスシートを分割するための、1以上の分割装置を含む非罫書式分割機であって、分割装置夫々が(i)移動ガラスシート内に応力プロファイルを生成する分割機構(例えば、ローラ、軌道など)であって、この応力プロファイルが、移動ガラスシートのエッジをせん断するよう、移動ガラスシートの既定の位置に、後に形成されるクラックを生成する、この分割機構と;(ii)移動ガラスシート内にクラックが形成された後にクラック伝播波の波前面を制御し、かつ、せん断されたエッジを、残存部分の移動ガラスシートから離れるよう導く、少なくとも2対の安定化ローラ対と;(iii)せん断されたエッジを残存部分の移動ガラスシートから離れるようさらに導く、少なくとも1対の方向変更用ローラ対とを含むものである、この非罫書式分割機;(e)残存部分の移動ガラスシートを安定させる、少なくとも1つのシート安定化装置;および(f)残存部分の移動ガラスシートが巻き付けられる巻取りローラ、を備えている。
【0009】
本発明の態様は、一部は詳細な説明、図面、および以下の任意の請求項の中で明記され、そして一部は詳細な説明から導かれるであろうし、あるいは本発明を実施することにより理解できるであろう。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に例示かつ説明のためのものであり、開示される本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0010】
本発明のより完全な理解は、以下の詳細な説明を添付の図面とともに参照することにより得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態により静止しているガラスシートをせん断するために使用し得る、例示的装置を示す斜視図
図2A】本発明の一実施の形態により静止しているガラスシートをせん断するために、図1に示した装置を使用する手法を図式的に示した図
図2B】本発明の一実施の形態により静止しているガラスシートをせん断するために、図1に示した装置を使用する手法を図式的に示した図
図2C】本発明の一実施の形態により静止しているガラスシートをせん断するために、図1に示した装置を使用する手法を図式的に示した図
図3A】本発明の一実施の形態により静止しているガラスシートをせん断するために、図1に示した装置を使用する手法を図式的に示した図
図3B】本発明の一実施の形態により静止しているガラスシートをせん断するために、図1に示した装置を使用する手法を図式的に示した図
図3C】本発明の一実施の形態により静止しているガラスシートをせん断するために、図1に示した装置を使用する手法を図式的に示した図
図4A】罫書きせずに分割されたガラスシートに対して行われた、2点曲げ試験の結果を示す図
図4B】従来の被罫書ガラスシートに対して行われた、2点曲げ試験の結果を示す図
図5】本発明の一実施の形態による、2点曲げ試験を受けたいくつかの罫書きせずに分割されたガラスシートの応力の結果を示すグラフ
図6】本発明の一実施の形態による、2点曲げ試験を受けたいくつかの罫書きせずに分割されたガラスシートの応力の結果を示すグラフ
図7】本発明の一実施の形態により移動しているガラスシートをせん断してその外側エッジを除去する非罫書式分割機を使用している、例示的なガラス製造システムを示す概略図
図8】本発明の一実施の形態による図7に示した非罫書式分割機の構成要素をより詳細に示す斜視図
図9A】本発明の一実施の形態による図8に示した非罫書式分割機の一部である、例示的な同時分割装置に関連する種々の構成要素を示す図
図9B】本発明の一実施の形態による図8に示した非罫書式分割機の一部である、例示的な同時分割装置に関連する種々の構成要素を示す図
図9C】本発明の一実施の形態による図8に示した非罫書式分割機の一部である、例示的な同時分割装置に関連する種々の構成要素を示す図
図9D】本発明の一実施の形態による図8に示した非罫書式分割機の一部である、例示的な同時分割装置に関連する種々の構成要素を示す図
図9E】本発明の一実施の形態による図8に示した非罫書式分割機の一部である、例示的な同時分割装置に関連する種々の構成要素を示す図
図9F】本発明の一実施の形態による図8に示した非罫書式分割機の一部である、例示的な同時分割装置に関連する種々の構成要素を示す図
図10】本発明の別の実施形態による、コーティングされたガラスシートからエッジを分割するために構成し得る非罫書式分割装置の構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、本発明の一実施の形態による静止しているガラスシート102の分割に使用し得る、例示的装置100の斜視図が示されている。例示的装置100は、ダイセット106と連係しているアーバープレス104を含み、このダイセットはガラスシート102を支持およびせん断するために使用される。ダイセット106は底部支持台108を含み、この底部支持台の上には複数の支持バー110a、110bおよび110c(3つ図示)が置かれている。さらに、ダイセット106は、支持バー110a、110bおよび110cの上に置かれているガラス支持部材112を含む。ガラス支持部材112は、このガラス支持部材から上方に向かって延在している安定化面114とアンビル面116とを有しており、安定化面114はアンビル面116ほど上には延びていない(拡大図参照)。あるいは、安定化面114およびアンビル面116を支持バー110bに取り付け、そしてこれらをガラス支持部材112に貫通させるようにして上方に向けて延在させてもよい。ガラスシート102は、1以上のマイクロメータ118aおよび118b(例として)、または他の適切な位置決めおよび位置合わせ装置を用いて、ガラス支持部材112上の所望の分割用位置に位置付けることができる。この適切な位置決めおよび位置合わせ装置としては、ガラスシート102を所望の位置に位置付けるようプログラム可能な電子的に制御される線形アクチュエータなどが挙げられる。
【0013】
底部支持台108は、この底部支持台から上方に向かって延在している4つのアライメントシャフト120を有し、このシャフトの上には上板122が置かれている。上板122には可動に固定された応力ライザ(stress riser)124が設けられ、応力ライザ124を下方へ動かすと、これがガラスシート102に作用してガラスシート102をせん断することができる。この例において、応力ライザ124はアーバープレス104の可動アーム126に取り付けられており、そしてハンドコントローラ128を使用して、可動アーム126と取り付けられた応力ライザ124とを、ガラスシート102の方へあるいはガラスシート102から離れる方へ移動させる。応力ライザ124は、この応力ライザから下方に向かって延在している圧迫面130を備え、この圧迫面がガラスシート102に作用してこれをせん断する(拡大図参照)。圧迫面130は、アンビル面116とガラスシート102との両方に平行な状態で配置されかつ移動する。あるいは、ガラスシートの分割がガラスシートの一方のエッジから始まりシートを横切って伝播するよう、最初に圧迫面がガラスシートの一方のエッジのみで接触するように、圧迫面130をアンビル面116およびガラスシート102と少し角度を有するように配置して、下方に移動させてもよい。所望であれば、応力ライザ124は、ガラスシート102の側面エッジ(または上部エッジ)に罫書きするために使用し得る罫書き開始部材132をこれに取り付けて備えてもよい。さらに、ダイセット106は、応力ライザ124とマイクロメータ118aおよび118bとの間の位置でガラスシート102上に置かれる、安定化面134(安定化バー134)を含む。あるいは、安定化バー134はガラスシート102の全長に亘って延在している必要はなく、代わりにガラスシート102の1以上のエッジ上に置いてもよい。装置100を使用してガラスシート102をせん断し得る手法に関する詳細な論考について、図2および3を参照して次に説明する。
【0014】
図2A〜2Cおよび3A〜3Cを参照すると、本発明の一実施の形態により図1に示した装置100を用いてガラスシート102をせん断し得る手法に関し、図式的に示した様々な図が示されている。明瞭にするため、これらの図には、ガラス支持部材112、安定化面114、アンビル面116、圧迫面130、安定化面134、およびガラスシート102のみが、装置100の分割操作の説明を助けるために示されている。図2Aおよび3Aは第1ステップを示しており、このステップではガラスシート102がガラス支持部材112上の所望の位置に置かれる。ガラスシート102は、安定化面114、アンビル面116、およびガラス支持部材112の上に置かれ、一方で圧迫面130および安定化面134はガラスシート102の上に置かれる。一実施の形態においては、安定化面114、アンビル面116、圧迫面130、および安定化面134の全てを、ガラスシート102を損傷するのを防ぐのを助けるため、ゴムコーティングまたはプラスチックコーティングを有するものとしてもよい。さらに、安定化面114、アンビル面116、圧迫面130、および安定化面134は、異なる形状で図示されているが、つまりこれらを、例えば丸い形状、楕円形状、長方形形状、または正方形形状を含む、任意の形状のものとしてもよい。この実施形態において、アンビル面116および圧迫面130は、特にその夫々向かい合っている隣接しているエッジ136および137では、一般に角張った形状であり、これらのエッジは、ガラスシート102内に高い局所的応力を生成するよう、互いに接近し隣接して位置付けられる。アンビル面116および圧迫面130の向かい合っている隣接するエッジ136および137間の水平間隔は、分割対象のガラスシートの厚さの増加に伴って増加させてもよい。さらに、面116および130のエッジは、ガラスシート102の分割面に明確に画成された応力場を提供するよう、比較的尖ったものである。前述したような他の形状を同様に機能させることも可能である。この例において、ガラスシート102は、罫書き開始部材132によりつけられた開始切り目202をその側面エッジに有するものであった。所望であれば、開始切り目202をレーザ(図示なし)によって作られたものとしてもよい。開始切り目202は随意的なものであり、ガラスシート102のせん断に必須のものではない。ガラスシート102がポリマーまたはゴムでコーティングされている場合には、切断バーを用いて、ガラスシート102を分割する前にこのコーティングを除去する助けとしてもよい。
【0015】
図2Bおよび3Bは第2ステップを示しており、このステップ中ガラスシート102は、力Fを加えることによって生成される応力場を内部に有する。この力Fは、応力ライザ124と特に圧迫面130とをガラスシート102の上へと下方に動かすことにより生じるものである。応力場が生成されさらに増大すると、開始切り目202が開いてクラックがガラスシート102の全長に伝わる。開始切り目202は、ガラスシート102の所望の位置で分割を開始させるのを確実にする助けとなる。図2Bは、ガラスシート102の側面エッジ204の写真をさらに示しているが、このエッジは従来の手法で罫書きされたものである。
【0016】
図2Cおよび3Cは第3ステップを示したものであり、ガラスシート102の所望の切断部206と、この分割が、所望の位置で開始されて、ガラスシート102内に略対称に位置付けられた応力場に対応して所望の経路に沿って伝播したこととを示している。応力場は、圧迫面130のガラスシート102上への下方への動きにより生成された。図2Cは、圧迫面130のガラスシート102上への下方への動きにより形成された、ガラスシート102のエッジ206の写真をさらに示している(図2Bと比較されたい)
図4Aおよび4Bを参照すると、罫書きせずに分割されたガラスシート102(図4A)と従来方法による被罫書ガラスシート400(図4B)とに対して行われた、2点曲げ試験の結果を夫々示す2つの図が図示されている。ガラスシート102および400は、分割方法以外は同一のものであり、2点曲げ試験を用いてこのガラスシート102および400の小さい面積上での曲げ応力を評価した。この試験では、2つのプレート402および404を使用して、ガラスシート102および400夫々を圧縮する。その後、ガラスシート102および400が破損したときに、2つのプレート402および404の間の距離を測定する。この距離は、ガラスシート102および400の応力を処理する性能に反比例し、2つのプレート402および404間の距離が小さければ小さいほど、ガラスシート102および400のガラスエッジの抵抗強度は高いものとなる。図4Aにおいて、罫書きされていないガラスシート102は、2つのプレート402および404の圧縮によって破損したときに比較的小さい半径を有し、ガラスエッジの強度が600MPaよりも大きいことを示した。図4Bにおいて、従来の被罫書ガラスシート400は、2つのプレート402および404の圧縮によって破損したときに比較的大きい半径を有し、ガラスエッジの強度が約200MPaであることを示した。
【0017】
図5を参照すると、前述の圧縮試験を受けたいくつかの被試験ガラスシート102が、平均600〜1000MPaの応力を処理する性能を有していたことを示すグラフが図示されており、これは、従来のカーバイドホイールによる被罫書ガラスシート400(200MPa)や従来のレーザによる被罫書ガラスシート400(300MPa)よりも平均すると少なくとも3倍優れている(注:グラフのy軸は「確率」を表し、そしてx軸は「応力(MPa)」を表す)。この試験においてガラスシート102の厚さは100μmであり、そしてグラフの「菱形」は圧縮測定を示し、グラフの「三角」は引張測定を示す。圧縮測定は、プレート402および404(図4A参照)の圧縮によって被試験ガラスシート102の内側部分406が破損した時点を示す。引張測定は、プレート402および404(図4A参照)の圧縮によって被試験ガラスシート102の外側部分408が破損した時点を示す。
【0018】
図6を参照すると、前述の圧縮試験を受けたいくつかの被試験ガラスシート102の応力の結果を示すグラフが図示されている(注:グラフのy軸は「%」を表し、そしてx軸は「2点曲げ強度(MPa)」を表す)。この試験において、レーザ罫書きによる開始切り目202を有し、グラフに「丸」および実線で示されている被試験ガラスシート102の組は、平均609.8MPaの応力を処理する性能を有していた。罫書きによる開始切り目202を有していない、グラフに「四角」および破線で示されている被試験ガラスシート102の別の組は、平均749.1MPaの応力を処理する性能を有していた。機械的に罫書きによる開始切り目202を有し、グラフに「菱形」および点線で示されている被試験ガラスシート102のさらに別の組は、平均807.0MPaの応力を処理する性能を有していた。ガラスシート102の厚さは全て約100μmであった。これらの結果を見て出し得る結論は、非罫書式の方法によれば、従来のレーザ、罫書きホイール、またはスクライバによる方法よりも、はるかに優れたエッジ強度および品質結果を生ずるということである。ガラス表面に切り込まれた応力発生箇所がないと、従来の接触および非接触のガラス罫書き/分割方法に関連する微小クラックや傷の可能性が最小限に抑えられる。
【0019】
図1に戻って参照すると、装置100がオフラインのガラスシート分割系であって、ガラス製造業者が、ガラスシート102(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)基板102または他の基板102)の生産ライン外での分割を要するプロセスの改善に、これを使用し得ることは、当業者には明らかであろう。一実施の形態において、装置100はゴムまたはプラスチックで被覆された金属バー114、116、130および134を有し、これらが、薄いガラスシート102内に応力分布が形成されるように薄いガラスシート102を湾曲させる。応力が十分高いレベルに達すると、薄いガラスシート102内の高応力領域でクラックが開始される。生じたクラックは、応力が解放されるまで薄いガラスシート102の幅に亘り伝播する。薄いガラスシート102は、非常にランダムな原子構造を持つアモルファス材料であるため、典型的には面に沿った切断に抵抗し、代わりに粉々になりやすく、またクラックが形成されると見た目にはランダムな方向に伝わっていく。これは本発明では発生しないが、というのも、装置100は薄いガラスシート102の表面に常に連続して応力を加えるのを確実にする圧迫面130を有し、これにより、応力場や応力分布が維持され、かつ、クラックの伝播が、薄いガラスシート102の分割が完了するまで、薄いガラスシート102上の既定の経路に沿って所望の方向に進むためである。
【0020】
装置100は他のいくつかの利益、利点、および特徴をさらに有しており、そのいくつかを以下に示す(例として)。
・装置100は調整が容易であるため、種々の部品を単に、追加したり、除去したり、または調整したりすることによって、薄いガラスシート102を分割する様々な構成を得ることができる。
・分割されるガラスシート102の曲げ強度がより強いことは、ガラスシート102が薄いフレキシブルディスプレイの製造に使用されるときに望ましいことである。
・装置100によれば、ガラスエッジ関連の不良がより少なくなり、このため許容できるガラスシート102の生産量が増加することによって製造コストが削減される。
・装置100によれば、分割されたガラスシート102の主要な基板エッジの属性が強化される(図4〜6参照)
・提案した非罫書式分割技術についてより深い理解を得ることができるよう、装置100は容易に変更することができる。
・装置100によれば、罫書きされていないエッジ206の強度は相当高いため、高応力下のガラスシート102の不良に関連するリスクが緩和される。
・装置100は、100μm未満の厚さを有する、ガラスシート102または他の薄い基板を分割することができる。
・分割設備のパフォーマンスおよび分割されたガラスシート102の品質を測定するために、装置100は、モーションセンサ、レーザセンサ、ソニックセンサなどを含む、様々な種類のセンサを組み込むことができる。
・装置100またはその変形版は、ガラスシートの商業生産用に容易に自動化できると考えられ、その一例については、図7〜9を参照して以下で論じる。別の例では、スロットドロープロセスがガラスシートを所与の速度で提供する。ガラスシートの向きは、鉛直から水平にカテナリーにより変化させる。このとき水平面となって移動しているガラスシートはローラによって支持されており、そして周期的に開始切り目が入れられて、オペレータにより手動で割られる。オペレータの仕事は、所望のガラス長に達した時点を示す近接センサを追加した、装置100に類似した機械によって自動化することができる。この長さは、適切にクラックを開始するために望ましい、開始切り目の位置に対応することになる。分割バーが、近接センサを備えた線形アクチュエータおよび閉ループ制御により、所望の時点で駆動される。この作用とともに、分割を開始するのに必要な時点に相当する、切り目が入れられたガラスと同じ相対位置でバーを維持するために、ストロークが100mm未満と短い、移動アンビル装置(TAM)機構を採用してもよい。バーは、次の分割イベントを待つために、その後同じホームポジションに戻ることになる。
【0021】
図7を参照すると、例示的なガラス製造システム700の概略図が示されており、このシステムは、本発明の一実施の形態により移動しているガラスシート705をせん断してその外側エッジ706aおよび706bを除去する、非罫書式分割機702を使用している。図示のように例示的なガラス製造システム700は、溶解槽710、清澄槽715、混合槽720(例えば、攪拌チャンバ720)、送出槽725(例えば、ボウル725)、成形槽730、牽引ローラアセンブリ735、非罫書式分割機702、1対のシート安定化装置740aおよび740b、巻取りローラ745、およびコントローラ150を含む。
【0022】
溶解槽710では、ガラスバッチ材料が矢印712で示されているように導入されて溶解され、溶融ガラス726が形成される。清澄槽715(例えば、清澄管715)は、溶解槽710から溶融ガラス726(この時点では図示なし)を受け入れる高温処理エリアを有し、この中で溶融ガラス726から気泡が除去される。清澄槽715は、清澄管−攪拌チャンバ接続管722によって混合槽720(例えば、攪拌チャンバ720)に接続される。そして、混合槽720は、攪拌チャンバ‐ボウル接続管727によって送出槽725に接続される。
【0023】
送出槽725は、溶融ガラス726を下降管728および注入口729に通して成形槽730(例えば、アイソパイプ730)内へと送出する。成形槽730は溶融ガラス726を受け入れる開口736を含み、溶融ガラスはトラフ737の中へと流れ入ると、これから溢れ出て、2つの側面738aおよび738bを流れ落ちた後に底部739として知られる位置で融合する(図8参照)。底部739は2つの側面738aおよび738bが合流する位置であり、そして2つの溢れ出た溶融ガラス726の壁は、ガラスシート705を形成するよう底部739で再結合(例えば、再融合)した後、牽引ローラアセンブリ735によって下方に延伸される。非罫書式分割機702は、ガラスシート705から外側エッジ706aおよび706bを除去するようガラスシート705をせん断して、ガラスシート705´を成形する。せん断された外側エッジ706aおよび706bは、砕かれて1対のカレット容器741aおよび741b内に収集される。シート安定化装置740aおよび740bは、残存している部分のガラスシート705´を巻取りローラ745へと導く。この例においてコントローラ150(例えば、コンピュータ150)は、プロセッサ実行可能命令を格納するメモリ151を有し、さらに、プロセッサ実行可能命令を実行して牽引ローラアセンブリ735、非罫書式分割機702、シート安定化装置740aおよび740b、および巻取りローラ745を制御する、プロセッサ153を有する。
【0024】
図8を参照すると、本発明の一実施の形態による図7に示した例示的なガラス製造システム700に関連する、非罫書式分割機702といくつもの他の構成要素とのうちのいくつかを、より詳細に示す斜視図が図示されている。非罫書式分割機702は、2つの分割装置703aおよび703b、コントローラ150、およびカレット容器741aおよび741bを含む。動作時、分割装置703aおよび703bの夫々は、移動しているガラスシート705内に応力プロファイルを生成するよう外部応力を加え、この応力プロファイルが、移動しているガラスシート705の既定の位置に後に形成されるクラックを生成して、ガラスシート705に罫書きすることを必要とすることなく外側エッジ706aおよび706bを分割し除去する。さらに、分割装置703aおよび703bによって残存部分のガラスシート705´が曲がり始め、そしてシート安定化装置740aおよび740bを活用することで、残存しているガラスシート705´を巻取りローラ745に巻き取ることができる。この例では厚さ100μm未満の残存しているガラスシート705´は、2点曲げ応力下で600MPaを超えるエッジ強度を有し、これはこの応力下でのエッジ強度が300MPa以内であった従来の被罫書ガラスシートから大幅に改善された値である(図4〜6参照)。例示的な同時分割装置703aおよび703b夫々の一部である、様々な構成要素に関する詳細な論考は、図9A〜9Fを参照して以下に説明する。
【0025】
図9A〜9Fを参照すると、本発明の一実施の形態による例示的な同時分割装置703a(例として)に関連する種々の構成要素を示した複数の図が示されている。図9Aは分割装置703aの左側面図であるが、この図は一連のローラを通って移動しているガラスシート705を示し、この一連のローラには、第1ローラ対902aおよび902c、第2ローラ対904aおよび904c、可動クラック開始部材906、第3ローラ対908aおよび908c、第4ローラ対910aおよび910c、および第5ローラ対912aおよび912cが含まれる。例示的な分割装置703aにおいて、ガラスシート705はさらに、第1エアベアリング対914aおよび914c(ローラ908aおよび908cとローラ910aおよび910cとの間に位置する)、第2エアベアリング対916aおよび916c(ローラ910aおよび910cとローラ912aおよび912cとの間に位置する)、および第3エアベアリング対918aおよび918c(ローラ912aおよび912cの後に位置する)を通って移動する。
【0026】
さらに、この特定の図には見られないが、例示的な分割装置703aはいくつかの他のローラ組902bおよび902d、904bおよび904d、908bおよび908d、910bおよび910d、並びに912bおよび912dを有し、これらは夫々、第1ローラ対902aおよび902c、第2ローラ対904aおよび904c、第3ローラ対908aおよび908c、第4ローラ対910aおよび910c、および第5ローラ対912aおよび912cに隣接して位置している(図9B〜9F参照)。同様に、この特定の図には見られないが、例示的な分割装置703aはいくつかの他のエアベアリング組914bおよび914d、916bおよび916d、および918bおよび918dをさらに含み、これらは夫々、第1エアベアリング対914aおよび914c、第2エアベアリング対916aおよび916c、および第3エアベアリング対918aおよび918cに隣接して位置している(図9C〜9D参照)。
【0027】
図9Aでは、ローラ902a〜902d、904a〜904d、908a〜908d、910a〜910dおよび912a〜912d、およびエアベアリング914a〜914d、916a〜916dおよび918a〜918dを操作する、例えば、駆動装置、モータ、電磁弁、エア装置などの種々の構成要素を、コントローラ150と連係させることができる(図8をさらに参照されたい)。コントローラ150は、1対のクラック伝播スキャナ920aおよび920b、1対のシート形状干渉計922aおよび922b、および1対の温度スキャナ924aおよび924bなどの種々の機器とさらに連係して、移動しているガラスシート705から外側エッジ706aを分割するのを助けることができる。クラック伝播スキャナ920aおよび920bは、移動しているガラスシート705の様々な位置のクラックを見つけたり辿ったりするために使用されることになる。シート形状干渉計922aおよび922bは、移動しているガラスシート705の様々な位置での応力プロファイルを監視するために使用されることになる。温度スキャナ924aおよび924bは、移動しているガラスシート705の様々な位置での温度勾配を監視するために使用されることになる。これらのローラ902a〜902d、904a〜904d、908a〜908d、910a〜910dおよび912a〜912d、およびエアベアリング914a〜914d、916a〜916dおよび918a〜918dの機能は、これらのローラ902a〜902d、904a〜904d、908a〜908d、910a〜910dおよび912a〜912d、およびエアベアリング914a〜914d、916a〜916dおよび918a〜918dの配置に関する論考を終えた後に明らかになるであろう。
【0028】
図9Bを参照すると、例示的な同時分割装置703aの上面図が示されており、移動ガラスシート705が間を通って移動する、第1ローラ対902aおよび902cと、その隣接ローラ902bおよび902dとが示されている。図示のように、ローラ902aおよび902bの夫々は湾曲面950aおよび950b(例えば、高温シリコン950aおよび950b)を有し、そしてその対向するローラ902cおよび902dの夫々は平坦面950cおよび950d(例えば、高温シリコン950cおよび950d)を有している。ローラ902cおよび902dは、その対応する対向するローラ902aおよび902bに対して傾斜させることも可能である。例えば、ローラ902cおよび902dを0°〜5°の間の任意の角度φだけ傾斜させることができる。この例では、ローラ902cはローラ902aに対し傾斜していないが、ローラ902dはローラ902bに対し約2.5°傾斜している。すなわち、湾曲したローラ902bと傾斜したローラ902dが移動ガラスシート705に作用して移動ガラスシート705内に応力プロファイルを生成する間、ローラ902aおよび902cは移動ガラスシート705の外側エッジ706aの安定化を助ける(注:図に示されているガラスシート705の曲りは強調されたものである)。所望であれば、ローラ902a〜902dにチャネル952(例として)などの温度制御機構を組み込むことができ、この中に流体を流して各面950a〜950dの温度を制御することができる。この例では、移動ガラスシート705に所望の応力プロファイルを生成するのを助けるために、この図には見られないがローラ904a〜904dが配置されて、ローラ902a〜902dと同様に機能することになる。あるいは、移動ガラスシート705が通過するはずであったローラ902a〜902dおよび904a〜904dの代わりに、1以上の軌道対(または何らかの他の機構)を使用することもでき、この場合軌道の1つがこれから延在している突出部を有し、この突出部が移動ガラスシート705に作用して、移動ガラスシート705の外側エッジ706aをせん断するために移動ガラスシート705内の既定の位置に形成されるクラックを生成する、所望の応力プロファイルを、ガラスシート705内に生成することになる。
【0029】
図9Cを参照すると、例示的な同時分割装置703aの前面図が示されており、ローラ902a、902b、904a、904b、908a、908b、910a、910b、912aおよび912b、クラック開始部材906、およびエアベアリング914a、914b、916a、916b、918aおよび918bが示されている。この図はさらに、移動ガラスシート705の外側エッジ706aをせん断するよう同時分割装置703aを操作しているときに移動ガラスシート705に存在する、高応力領域954、弓状波956、非罫書波の波前面958、低応力領域960、および分割ライン962(または、クラック962)を示している。分割ライン962(または、クラック962)はローラ902bおよび902dの位置調整によって生成することができ、また、クラック開始部材906(使用する場合)を、形成された場合には移動ガラスシート705内の所望の経路に沿って伝播されるクラック962の開始を助けるよう、移動ガラスシート705の既定の位置に作用を及ぼすように動かしてもよい。
【0030】
図9Dおよび9Eを参照すると、せん断された外側エッジ706aおよび残存部分のガラスシート705´が通過するローラ908a〜908dの左側面図および上面図が夫々示されている。具体的には、安定化ローラ908a〜908dは、クラック962が移動ガラスシート705内に形成された後に非罫書波の波前面958(クラック伝播波の波前面958)の制御を助け、さらに、せん断された外側エッジ706aを残存部分のガラスシート705´から離れるよう導く。図9Eに示すように、第1安定化ローラ対908aおよび908cは、硬質のカバー964a(高デュロメータ)を有するローラ908aと軟質のカバー964b(低デュロメータ)を有するローラ908cとを含み、せん断された外側エッジ706aがその間を通過する。第2安定化ローラ対908bおよび908dは、軟質のカバー964c(低デュロメータ)を有するローラ908bと硬質のカバー964d(高デュロメータ)を有するローラ908dとを含み、残存部分の移動ガラスシート705´がその間を通過する。ローラ908bおよび908cの軟質のカバー964cおよび964bは、柔軟であって、ローラ908aおよび908dの対応する硬質のカバー964aおよび964dと作用すると変形し、これが結果として、せん断された外側エッジ706aの向きを残存部分のガラスシート705から´離れるように変更させることになる。ガラスシート705´は比較的強度の高いエッジ(例えば、600MPa以上)を有しており、このためガラスシート705´を巻取りローラ745上に比較的小さい直径で巻くことが可能となる。
【0031】
図9Fを参照すると、せん断された外側エッジ706aと残存部分のガラスシート705´とが通過する、ローラ908a〜908d、910a〜910dおよび912a〜912d、およびエアベアリング914a〜914d、916a〜916dおよび918a〜918dの左側面図が示されている。上述したように、安定化ローラ908a〜908dは、せん断されたエッジ706aを残存部分のガラスシート705´から離れるよう導く。他のローラ910a〜910dおよび912a〜912d、およびエアベアリング914a〜914d、916a〜916dおよび918a〜918dは、せん断されたエッジ706aを残存部分のガラスシート705´から離れるよう導くのをさらに助ける。具体的には、ローラ910a、910c、912aおよび912c、およびエアベアリング914a、914c、916a、916c、918aおよび918cは、せん断された外側エッジ706aをカレット容器741a(図8参照)の方へと導くよう設置される。これに対し、ローラ910b、910d、912bおよび912d、およびエアベアリング914b、914d、916b、916d、918bおよび918dは、残存部分のガラスシート705´を、シート安定化装置740aおよび740b、および巻取りローラ745(図8参照)へと導くよう設置される。
【0032】
ここで図10を参照すると、本発明の別の実施形態により、移動しているコーティングガラスシート705からエッジ706aを分割するために構成し得る、非罫書式分割装置703aのさらなる構造を示す左側面図が示されている。この実施形態においては、ガラスシート705の一方または両方の面に、ローラ1004aおよび1004bによってポリマーコーティング1002が適用される。あるいは、ガラスシート705を、ロールシート、プレカットシート、または吹付けコーティングや浸漬コーティングを用いて、コーティングすることができる。コーティング1002は、ポリマー、プラスチック、またはゴム様のものから形成してもよい。ガラスシート705の物理的分割を可能にするために、コーティング1002の分離やコーティング1002の部分的切断が必要となる。例えば、切断用刃1006aおよび1006b、または、機械的に接触するカッター、固定式または回転式ナイフ、あるいは非接触式のレーザ切断、マイクロフレーム、空気ジェット、高温ガスジェット(アルゴンガスなど)、化学薬品ジェット(chemical jet)、ウォータージェットなどの他の手段を用いて、コーティング1002を部分的に切断したりガラスシート705から分離したりすることができる。図示のように、コーティング1002の部分的切断は、過剰な切断力を回避する力フィードバック制御(例えば、スプリング1008aおよび1008b)に機械的カッター1006aおよび1006bを取り付けて達成することができる。この部分的切断によってコーティング1002が十分に弱まるため、前述したローラ910a〜910dおよび912a〜912dを用いてガラスのビード部分706aをガラスシート705本体から分割するときに、コーティング1002は容易に破壊される。機械的カッター1006aおよび1006bがガラスシート705に接触するとガラスシート705の表面に悪影響を与え得るが、部分的切断ではこのような接触を防ぐことができるため望ましい。
【0033】
これまで述べた論考を考慮すると、本発明の実施形態によるガラス分割方法を実施する例示的なガラス製造システム700は、(a)バッチ材料を溶解し、さらに溶融ガラスを形成する、少なくとも1つの槽710、715、720および725(ステップ1);(b)溶融ガラスを受け取って移動ガラスシート705を成形する、成形装置730(ステップ2);(c)移動ガラスシート705を延伸する牽引ローラアセンブリ735(ステップ3);(d)移動ガラスシート705を分割するための非罫書式分割機702(ステップ4)であって、非罫書式分割機702が1以上の分割装置703aおよび703bを含み、この分割装置703aおよび703b夫々が(i)移動ガラスシート705内に応力プロファイルを生成する分割機構(例えば、ローラ902a〜902dおよび904a〜904d、軌道など)であって、この応力プロファイルが、移動ガラスシート705のエッジ706aおよび706bをせん断するよう、移動ガラスシート705の既定の位置に、後に形成されるクラック962を生成する、この分割機構と;(ii)移動ガラスシート705内に形成されて後に伝播するクラック962を開始するため、移動ガラスシート705の既定の位置に作用を及ぼす、クラック開始部材906と(随意);(iii)移動ガラスシート705内にクラック962が形成された後にクラック伝播波の波前面958を制御し、かつ、せん断されたエッジ706aまたは706bを、残存部分の移動ガラスシート705´から離れるよう導く、少なくとも2対の安定化ローラ対908a〜908dと;(iv)せん断されたエッジ706aおよび706bを残存部分の移動ガラスシート705´から離れるようさらに導く、少なくとも1対の方向変更用ローラ対910a〜910dおよび912a〜912dと;(v)せん断されたエッジ706aおよび706bを残存部分の移動ガラスシート705´から離れるようさらに導く、少なくとも1対のエアベアリング対914a〜914d、916a〜916dおよび918a〜918dとを含むものである、この非罫書式分割機;(e)残存部分の移動ガラスシート705´を安定させる、1以上のシート安定化装置740aおよび740b(ステップ5);および(f)残存部分の移動ガラスシート705´が巻き付けられる巻取りローラ745(ステップ6)、を含むことになるのは明らかであろう。
【0034】
さらに、非罫書式分割機702は、1以上のクラック伝播スキャナ920aおよび920b、シート形状干渉計922aおよび922b、および温度スキャナ924aおよび924bと連係し、分割装置703aおよび703bを制御して移動ガラスシート705の外側エッジ706aおよび706bをせん断する、コントローラ150をさらに含んでもよい。この非罫書式分割方法の1つの利点は、せん断されたガラスシート705´が従来の被罫書ガラスシートと比較すると相当強度の高いエッジを有しているため、巻取りローラ745上に比較的小さい直径で巻くことができるということである。さらに、種々の構造、すなわち縦長、横長、ロール状、カテナリー状の、LCDや他の脆弱材料を、この非罫書式分割技術を用いて分割することができる。
【0035】
ガラスシートを製造するために溶融ガラスを延伸する任意の種類のガラス製造システムが、本発明の非罫書式分割機702をさらに組み込み、そして使用することができることを、当業者は容易に理解できるであろう。実際、非罫書式分割機702は、例えばプレキシガラスシートやLCD基板などのガラスシートに加え、他の種類の材料を分割するために使用することも可能であろう。したがって、本発明の非罫書式分割機702は、ある様式に限定されると解釈されるべきではない。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態について、添付の図面に示し、かつ前述の詳細な説明の中で説明してきたが、本発明は開示された実施形態に限られるものではなく、以下の請求項により明記および画成される本発明の精神から逸脱することなく、多くの再構成、改変および置換えが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0037】
102 ガラスシート
112 ガラス支持部材
114、134 安定化面
116 アンビル面
130 圧迫面
702 非罫書式分割機
703a、703b 分割装置
705 ガラスシート
705´ 残存部分のガラスシート
740a、740b シート安定化装置
745 巻取りローラ
902a〜902d ローラ対
904a〜904d ローラ対
908a〜908d 安定化ローラ
910a〜910d 方向変更用ローラ対
912a〜912d 方向変更用ローラ対
958 クラック伝播波の波前面
962 クラック
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10