(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-117503(P2020-117503A)
(43)【公開日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/44 20060101AFI20200710BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20200710BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20200710BHJP
【FI】
A61K33/44
A61K9/20
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-10322(P2020-10322)
(22)【出願日】2020年1月24日
(31)【優先権主張番号】特願2019-11047(P2019-11047)
(32)【優先日】2019年1月25日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】阪田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD05
4B018MD10
4B018MD29
4B018MD30
4B018MD35
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF08
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC40
4C076DD29
4C076DD41C
4C076DD67
4C076DD68C
4C076FF01
4C076FF04
4C076FF09
4C076FF36
4C086AA10
4C086HA06
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA20
4C086ZC01
(57)【要約】
【課題】
炭の有効利用を目的として、炭を配合した組成物の硬度、摩損度が改善され、摂取し易い経口組成物を提供することにある。
【解決手段】
(A)炭及び(B)流動化剤を含有することを特徴とする経口組成物。
【選択図】
なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭(B)流動化剤及び(C)滑沢剤を含有し、硬度が2kgf以上であり、摩損度が3%以下であることを特徴とする固形状の経口組成物。
【請求項2】
(A)炭及び(B)流動化剤を含有することを特徴とする経口組成物。
【請求項3】
(A)炭及び(B)流動化剤を含有し、(B)の含有量が(A)及び(B)の合計量に対して5質量%以上であることを特徴とする経口組成物。
【請求項4】
組成物中に含まれる(B)の含有量が10質量%以下であることを特徴とする、請求項3のいずれかに記載の経口組成物。
【請求項5】
(A)炭及び(C)滑沢剤とを含有し、(C)の含有量が(A)及び(C)の合計量に対して70質量%以下であることを特徴とする経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭を含有する経口組成物に関する。
【0002】
炭は大部分を占める炭素の他、酸素、水素、カルシウムなどからなる多孔質の物質であり、その微細な穴に多様な物質を吸着させる性質がある。
【0003】
炭は、着色成分を吸着することによる脱色剤(特許文献1)、臭気物質を吸着する脱臭剤(特許文献2)として工業的に用いられており、ろ過及び精製の助剤として利用されている。また、近年、炭の有する効果を利用したサプリメントが注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−65591号公報
【特許文献2】特開2013−81649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、炭を配合した組成物は成形性が悪く、特に炭を高含有量とする場合、錠剤などの固形状の組成物に成形しにくいという課題があった。
【0006】
本発明の課題は、炭の有効利用を目的として、炭を配合した組成物の硬度、摩損度が改善され、摂取し易い経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、炭、流動化剤及び滑沢剤を含有する経口組成物においては、優れた硬度特性及び摩損度特性を有する固形状の経口組成物が得られることを見出し、本発明に至った。特に、炭及び流動化剤を特定の配合割合とすること、経口組成物中の流動化剤を特定の配合割合とすること、炭及び滑沢剤を特定の配合割合とすることにより、さらに優れた硬度、摩損度を有する錠状の経口組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明の概要は、以下の通りである。
[1](A)炭及び(B)流動化剤を含有することを特徴とする経口組成物。
[2] (B)の含有量が(A)及び(B)の合計量に対して5質量%以上であることを特徴とする[1]に記載の経口組成物。
[3](B)の含有量が10質量%以下であることを特徴とする、[1]〜[2]のいずれかに記載の経口組成物。
[4](A)炭及び(C)滑沢剤とを含有し、(C)の含有量が(A)及び(C)の合計量に対して70質量%以下であることを特徴とする経口組成物。
[5](A)炭、(B)流動化剤及び(C)滑沢剤を含有することを特徴とする経口組成物。
[6] (A)炭、(B)流動化剤及び(C)滑沢剤を含有し、硬度が2kgf以上であることを特徴とする固形状の経口組成物。
[7](A)炭、(B)流動化剤及び(C)滑沢剤を含有し、300回転における摩損度が3%以下であることを特徴とする固形状の経口組成物。
[8](A)が活性炭であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の経口組成物。
[9](A)が植物由来であることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれかに記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた硬度及び摩損度を有する固形状の経口組成物を提供することができる。特に、炭及び流動化剤を特定の配合割合とすること、経口組成物における流動化剤を特定の配合割合とすること、炭及び滑沢剤を特定の配合割合とすることにより、さらに優れた硬度を有する固形状の経口組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の経口組成物について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
(A)炭
炭は、草木類や有機化合物、合成樹脂を高温条件で処理したものであり、主に燃料や、ろ過及び精製の助剤としてとして使用される。本発明で使用できる炭の原料としては、経口摂取可能であれば特に制限はなく、例えば、備長炭に用いられるウバメガシ、クヌギ、クリ、カラマツ、アカマツ、スギ等の木、竹、ヤシ殻、胡桃殻、籾殻等が挙げられる。また、炭としては、原料を乾留し、さらに高温処理により賦活化して得られる活性炭を用いることが好ましい。活性炭は、吸着能が賦活化されていれば特に制限されないが、例えば市販品である場合、原料の規格書等に活性炭の表記のあるものが挙げられる。本発明において使用できる炭の形状としては、食用に適していれば特に制限されないが、例えば、粉末状、顆粒状、繊維状、形成炭等が挙げられ、粉末状、顆粒状であることが好ましい。本発明の炭の原料としては、竹、アカマツ、ヤシ殻、籾殻を用いることが好ましく、竹、ヤシ殻、籾殻が特に好ましい。特に、本発明の経口組成物が錠状、チュアブル状である場合には、特定の他素材と組み合わせた際に硬度の向上効果及び摩損度低減効果を発揮することから、ヤシ殻由来の活性炭を用いることが最も好ましい。
【0012】
本発明の経口組成物中における(A)炭の含有量は特に制限されないが、0.0001〜75質量%が好ましく、0.001〜50質量%がより好ましく、0.01〜30質量%がさらに好ましい。
【0013】
(B)流動化剤
流動化剤とは、混合末や顆粒の流動性を改善する目的で使用されるものである。本発明に使用できる流動化剤としては、上記目的を達成することが可能な成分であれば特に制限はなく、例えば、タルク、二酸化ケイ素(軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素)、親水性シリカ、疎水性シリカ、ケイ酸カルシウム、アルキルホスフェイト(PAP)、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。流動化剤は、市販品を使用することができる。本発明においては、優れた固形状の経口組成物が得られることから、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムが好ましく、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタンがより好ましく、特に硬度の向上効果及び摩損度低減効果に優れた経口組成物が得られることから、二酸化ケイ素が最も好ましい。
【0014】
本発明の経口組成物中における(B)流動化剤の含有量は特に制限されないが、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。また、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が特に好ましい。上記配合比とすることにより、硬度が高くなり、摩損度が低減された経口組成物を得ることができる。
【0015】
(C)滑沢剤
滑沢剤とは、錠剤用の粉末を圧縮する際に打錠機杵臼と錠剤間の摩擦を緩和し、スティッキングなどの打錠障害を防ぐために使用するものである。本発明に使用できる滑沢剤としては、上記目的を達成することが可能な成分であれば特に制限はなく、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸又はその塩、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル、植物油脂、硬化油などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよし、2種以上を併用してもよい。滑沢剤は、市販品を使用することができる。本発明においては、ステアリン酸又はその塩、脂肪酸エステル、ナタネ硬化油が好ましく、硬度、摩損度に優れた経口組成物を得られることから、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステルがより好ましい。
【0016】
本発明の経口組成物中における(C)滑沢剤の含有量は特に制限されないが、0.01〜30%質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。上記配合比とすることにより、硬度が高くなり、摩損度が低減された経口組成物を得ることができる。
【0017】
本発明において、(A)炭の含有量は、(A)炭及び(B)流動化剤の合計量に対し、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、99質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。同様に、(A)炭の含有量は、(A)炭及び(C)滑沢剤の合計量に対し、1質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上である。また、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。さらに、(A)炭の含有量は、(A)炭、(B)流動化剤及び(C)滑沢剤の合計量に対し、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上である。また、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。上記配合比とすることにより、硬度が高くなり、摩損度が低減された経口組成物を得ることができる。
【0018】
本発明において、(B)流動化剤の含有量は、(A)炭及び(B)流動化剤の合計量に対し、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上でり、特に好ましくは5質量%以上である。また、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。同様に、(B)流動化剤の含有量は、(A)炭、(B)流動化剤及び(C)滑沢剤の合計量に対し、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。上記配合比とすることにより、硬度が高くなり、摩損度が低減された経口組成物を得ることができる。
【0019】
本発明において、(C)滑沢剤の含有量は、(A)炭及び(C)滑沢剤の合計量に対し、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上である。また、90質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下である。同様に、(C)滑沢剤の含有量は、(A)炭、(B)流動化剤及び(C)滑沢剤の合計量に対し、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上である。また、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。上記配合比とすることにより、硬度が高くなり、摩損度が低減された経口組成物を得ることができる。
【0020】
本発明においては、(A)炭、(B)流動化剤及び(C)滑沢剤の他に、経口組成物に使用可能な成分を使用できる。例えば、動植物由来成分、賦形剤、結合剤、崩壊剤、各種担体、安定(化)剤、界面活性剤、可塑剤、可溶(化)剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、吸着剤、矯味剤、抗酸化剤、光沢化剤、コーティング剤、剤皮、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、清涼化剤、着色剤、着香剤、香料、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘稠化剤、粘稠剤、発泡剤、pH調整剤、稀釈剤、分散剤、崩壊補助剤、崩壊延長剤、芳香剤、防湿剤、防腐剤、保存剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、帯電防止剤、保湿剤、付湿剤等を挙げることができる。
【0021】
本発明の経口組成物の形態としては、例えば、粉末状、固形状(錠状、顆粒状、細粒状、チュアブル状、粒状、棒状、板状、ブロック状、丸状、カプレット状、スティック状)ソフトカプセルやハードカプセル等のカプセル状等を挙げることができる。これらの中でも、粉末状又は固形状が好ましく、粉末状、錠状、顆粒状、細粒状、チュアブル状の形態がより好ましい。
【0022】
本発明の経口組成物が固形状である場合の硬度は摂取し易さの観点から0.5kgf以上が好ましく、1kgf以上がより好ましく、2kgf以上が特に好ましい。また、30kgf以下が好ましく、25kgf以下がより好ましく、20kgf以下が特に好ましい。硬度は、例えば日本薬局方に記載された方法に準じて測定することができる。
【0023】
また、本発明の経口組成物が固形状である場合の摩損度は摂取し易さの観点から10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、5%以下が特に好ましく、3%以下がとりわけ好ましい。摩損度とは、固形状の経口組成物における欠け、割れ及び削れの発生の程度のことを言い、摩損度の測定方法としては、例えば日本薬局方に記載された方法に準じて測定することができる。
【0024】
また、本発明の経口組成物が固形状である場合の崩壊時間は400秒以下が好ましく、300秒以下がより好ましく、250秒以下が特に好ましい。崩壊時間は、例えば日本薬局方に記載された方法に準じて測定することができる。
【0025】
本発明の経口組成物は、硬度が2kgf以上、かつ、摩損度が3%以下であることが、成形性に優れると同時に摂取後の効果が早期に発揮されることが期待でき、好ましい。
【0026】
本発明の経口組成物は、食品、特に、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、健康食品として使用することが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
炭含有組成物の製造(1)
表1に記載の割合で原料を混合し、250mgの錠剤を製造した。打錠時の圧力は3.0kNであり、錠剤の厚さは5.8mmであった。
【0029】
【表1】
【0030】
錠剤の評価
得られた錠剤について、各物性を評価した。硬度は錠剤硬度計(岡田精工社製)を用いて評価した。摩損度は、測定する錠剤の質量(初期質量)を電子天秤にて測定し、錠剤摩損度試験器の中に計量した錠剤を投入して、300回転させた。試験終了後、錠剤を試験機から取り出し、錠剤に付着している粉を軽く拭き取った後、質量を測定し(試験後質量)、初期質量に対する減少質量の質量百分率を算出した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2より、流動化剤及び滑沢剤を含有していない比較例1は、錠剤として成形することができなかった。一方、流動化剤及び滑沢剤を含有する本願発明の組成物は錠状の組成物として成形でき、3kgf以上の硬度を有するものであった。また、摩損度はいずれも1.1%未満と非常に低いことから、欠けや破損しにくい、優れた錠剤が得られたことがわかった。
【0033】
炭含有組成物の製造(2)
表3に記載の割合で原料を混合し、250mgの錠剤を製造した。打錠時の圧力は3.0kNであった。
【0034】
【表3】
【0035】
得られた錠剤の崩壊時間を測定した。崩壊時間の測定は日本薬局方記載の方法に準じて行った。崩壊時間はいずれも180秒以下であり、優れた崩壊性を示した。
【0036】
[本発明の経口組成物の製造]
(錠剤の製造)
下記表4の組成からなる錠剤(300mg)を製造した。得られた錠剤は、硬度及び摩損度に優れた経口組成物であった。
【0037】
【表4】
【0038】
下記表5の組成からなる錠剤(300mg)を製造した。得られた錠剤は、硬度及び摩損度に優れた経口組成物であった。
【0039】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、炭及び流動化剤を含有する経口組成物において、炭及び滑沢剤の配合量に対する滑沢剤の配合量の割合を調整することにより、硬度が高くなり、摩損度が低減された経口組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、炭、並びに、流動化剤及び滑沢剤から選ばれる少なくとも1種を含有する経口組成物においては、硬度が高くなり、摩損度が低減された経口組成物を提供することができる。特に、炭及び流動化剤を特定の配合割合とすること、経口組成物中の流動化剤を特定の配合割合とすること、炭及び滑沢剤を特定の配合割合とすることにより、さらに優れた硬度及び摩損度を有する経口組成物を提供することができる。