前記アミド変性シリコーンは、化1中のpが100〜500の整数であり、qが1〜10の整数であり、アミド当量が3000〜30000g/molである場合のものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
前記アミド変性シリコーン以外のシリコーンオイル、鉱物油、脂肪酸エステル、及び液状ポリオレフィンから選ばれる少なくとも一つを含む平滑剤を含有し、前記平滑剤の25℃における動粘度が5〜50mm2/sである請求項1〜5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
前記平滑剤と前記アミド変性シリコーンの含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤を80〜99.9質量%、及び前記アミド変性シリコーンを0.1〜20質量%の割合で含有する請求項6又は7に記載の合成繊維用処理剤。
前記平滑剤と前記アミド変性シリコーンの含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤を95〜99.9質量%、及び前記アミド変性シリコーンを0.1〜5質量%の割合で含有する請求項7又は8に記載の合成繊維用処理剤。
請求項1〜10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤を、合成繊維100質量%に対し0.1〜10質量%の割合となるよう付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、捲糸体とした場合の捲き形状不良を抑制するとともに加工物の加工品位を向上させることのできる合成繊維を得る合成繊維用処理剤、及び合成繊維の処理方法を提供する処にある。また、捲糸体とした場合の捲き形状不良を抑制するとともに加工物の加工品位を向上させることのできる合成繊維を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の問題を解決すべく研究した結果、捲糸体とした場合の捲き形状不良を抑制するとともに加工物の加工品位を向上させることのできる合成繊維を得るに当たり、特定のアミド変性シリコーンを含有して成るものが正しく好適であることを見出した。
【0006】
上記課題を解決する合成繊維用処理剤は、合成繊維に付着させて用いられる合成繊維用処理剤であって、下記の化1で示されるアミド変性シリコーンを含有して成る。
【0007】
【化1】
化1において、X
1,X
2は、メチル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又は水酸基であり、且つX
1、及びX
2のうち少なくとも一つは炭素数1〜4のアルコキシ基又は水酸基である。X
3は、下記の化2で示されるアミド変性基である。R
1は、炭素数1〜5のアルキル基である。pは、4〜1200の整数である。qは、1〜100の整数である。
【0008】
【化2】
化2において、R
2,R
3は、それぞれ独立して、炭素数2〜5のアルキレン基である。
【0009】
R
4は、1〜4価のカルボン酸から一つの水酸基を除いた残基である。rは、0又は1である。
上記合成繊維用処理剤において、前記アミド変性シリコーンは、化1中のX
1、及びX
2がメチル基、又は水酸基であり、且つX
1、及びX
2のうち少なくとも一つは水酸基である場合のものであることが好ましい。
【0010】
上記合成繊維用処理剤において、前記アミド変性シリコーンは、化1中のX
1、及びX
2が水酸基である場合のものであることが好ましい。
上記合成繊維用処理剤において、前記アミド変性シリコーンは、化1中のpが15〜700の整数であり、R
1がメチル基である場合のものであることが好ましい。
【0011】
上記合成繊維用処理剤において、前記アミド変性シリコーンは、化1中のpが100〜500の整数であり、qが1〜10の整数であり、アミド当量が3000〜30000g/molである場合のものであることが好ましい。
【0012】
上記合成繊維用処理剤において、前記アミド変性シリコーン以外のシリコーンオイル、鉱物油、脂肪酸エステル、及び液状ポリオレフィンから選ばれる少なくとも一つを含む平滑剤を含有し、前記平滑剤の25℃における動粘度が5〜50mm
2/sであることが好ましい。
【0013】
上記合成繊維用処理剤において、前記平滑剤は、前記アミド変性シリコーン以外のシリコーンオイルを含むものであることが好ましい。
上記合成繊維用処理剤において、前記平滑剤と前記アミド変性シリコーンの含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤を80〜99.9質量%、及び前記アミド変性シリコーンを0.1〜20質量%の割合で含有することが好ましい。
【0014】
上記合成繊維用処理剤において、前記平滑剤と前記アミド変性シリコーンの含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤を95〜99.9質量%、及び前記アミド変性シリコーンを0.1〜5質量%の割合で含有することが好ましい。
【0015】
上記合成繊維用処理剤において、前記合成繊維は、ポリウレタン系弾性繊維であることが好ましい。
上記課題を解決する合成繊維の処理方法は、上記合成繊維用処理剤を、合成繊維100質量%に対し0.1〜10質量%の割合となるよう付着させる。
【0016】
上記課題を解決する合成繊維は、上記合成繊維用処理剤が付着している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、捲糸体とした場合の捲き形状不良を抑制できるとともに加工物の加工品位を向上させることができる合成繊維を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明に係る合成繊維用処理剤(以下、本発明の処理剤という)について説明する。本発明の処理剤は、下記の化3で示される特定のアミド変性シリコーンを含有して成るものである。また、本発明の処理剤は、平滑剤を含有するものであることが好ましい。
【0019】
(特定のアミド変性シリコーン)
本発明の処理剤に供する特定のアミド変性シリコーンは下記の化3で示されるものである。
【0020】
【化3】
化3中のX
1、X
2は、メトキシ基、エトキシ基、プロトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基又メチル基又は水酸基であり、且つX
1、及びX
2のうち少なくとも一つは炭素数1〜4のアルコキシ基又は水酸基である。なかでもX
1及びX
2がメチル基又は水酸基であり、且つX
1及びX
2のうち少なくとも一つは水酸基である場合のものが好ましく、X
1及びX
2が水酸基である場合のものがより好ましい。
【0021】
化3中のX
3は、下記の化4で示されるアミド変性基である。
【0022】
【化4】
化4中のR
2,R
3は、それぞれ独立して、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の炭素数2〜5のアルキレン基であり、rは、0又は1である。R
4は1〜4価のカルボン酸から一つの水酸基を除いた残基であり、カルボン酸に関して、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級脂肪酸であってもよく、環状の脂肪酸であってもよく、芳香族環を含有する脂肪酸であってもよい。前記カルボン酸としては、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、アジピン酸、セバシン酸、安息香酸等が挙げられる。
【0023】
前記した化3中のR
1は、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であり、pは、4〜1200の整数であり、qは、1〜100の整数であるが、なかでもpが15〜700の整数であり、またR
1がメチル基である場合のものが好ましく、pが100〜500の整数であり、また化3中のqが1〜10の整数である場合のものがより好ましい。
【0024】
また、化3で示されるアミド変性シリコーンは、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
具体的に化3で示されるアミド変性シリコーンとしては、側鎖に3−脂肪酸アミドプロピル基、N−(2−脂肪酸アミドエチル)−3−アミノプロピル基を持った両末端水酸基変性アミド変性シリコーン等が挙げられるが、なかでも側鎖にN−(2−脂肪酸アミドエチル)−3−アミノプロピル基を持った両末端水酸基変性アミド変性シリコーンがより好ましい。
【0025】
化3で示されるアミド変性シリコーンとしては、イソプロピルアルコールとキシレンの1:1混合溶媒中に試料を精秤し、0.1N塩酸水溶液で滴定を行うという一般的な滴定法により求められるアミド当量が3000〜30000g/molである場合のものが好ましい。
【0026】
(平滑剤)
本発明の処理剤に供する平滑剤は、化3で示されるアミド変性シリコーン以外のシリコーンオイル、鉱物油、脂肪酸エステル及び液状ポリオレフィンから選ばれる一つ又は二つ以上からなり、且つ25℃における動粘度が5〜50mm
2/sのものである。
【0027】
化3で示されるアミド変性シリコーン以外のシリコーンオイルとしては、例えば、(1)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位から成るポリジメチルシロキサン類、(2)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位と炭素数2〜4のアルキル基を含むジアルキルシロキサン単位とから成るポリジアルキルシロキサン類、及び(3)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とから成るポリシロキサン類等が挙げられ、公知の物の参考例としては次のようなものがある。
【0028】
25℃における動粘度が5mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96L−5cs)、25℃における動粘度が10mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96−10cs)、25℃における動粘度が20mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96−20cs)、25℃における動粘度が30mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96−30cs)、25℃における動粘度が50mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96−50cs)。
【0029】
また鉱物油としては、パラフィン成分、ナフテン成分及びアロマ成分等を含有する一般的な石油留分が挙げられ、公知の物の参考例としては次のようなものがある。25℃における動粘度が10mm
2/sである鉱物油(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモピュアスピンD)、25℃における動粘度が15mm
2/sである鉱物油(富士興産株式会社製の商品名フッコールNT−60)、25℃における動粘度が40mm
2/sである鉱物油(富士興産株式会社製の商品名フッコールNT−100)。
【0030】
更に脂肪酸エステルとしては、例えば、(1)ブチルステアラート、オクチルステアラート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソペンタコサニルイソステアラート等の、脂肪族1価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、(2)1,6−ヘキサンジオールジデカノアート、トリメチロールプロパンモノオレアートモノラウラート、トリメチロールプロパントリラウラート、ひまし油等の天然油脂等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、(3)アジピン酸ジラウリル、アゼライン酸ジオレイル等の、脂肪族1価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル等が挙げられる。
【0031】
更にまた液状ポリオレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン等を重合して得られるポリαオレフィン等が挙げられる。
なかでも、平滑剤としては、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイルを含有するものが好ましい。かかる平滑剤としては、25℃における動粘度が5〜50mm
2/sのものを用いる。本発明において動粘度は、JIS−K2283(石油製品動粘度試験方法)に記載されたキャノンフェンスケ粘度計を用いた方法により求められる値である。
【0032】
(その他成分)
本発明の処理剤には、本発明の効果を損なわない範囲内にて、必要に応じその他の成分を併用することもできる。かかるその他の成分としては、例えば、帯電防止剤、膠着防止剤、つなぎ剤、濡れ性向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤等、合成繊維用処理剤として公知の成分が挙げられる。
【0033】
(特定のアミド変性シリコーン及び平滑剤の含有割合)
本発明の処理剤は、化3で示されるアミド変性シリコーンを0.08〜20質量%の割合で含有することが好ましく、0.09〜5.0質量%の割合で含有することがより好ましい。本発明の処理剤は、平滑剤を64〜99.9質量%の割合で含有することが好ましく、85.5〜99.9質量%の割合で含有することがより好ましい。
【0034】
また、本発明の処理剤は、化3で示されるアミド変性シリコーン及び平滑剤の含有割合の合計を100質量%としたとき、化3で示されるアミド変性シリコーンの含有割合が0.1〜20質量%であり、平滑剤の含有割合が80〜99.9質量%であることが好ましく、アミド変性シリコーンの含有割合が0.1〜5質量%であり、平滑剤の含有割合が95〜99.9質量%であることがより好ましい。
【0035】
次に、本発明に係る合成繊維の処理方法(以下、本発明の処理方法という)について説明する。本発明の処理方法は、前記した本発明の処理剤を希釈することなくニート給油法によって、合成繊維100質量%に対し0.1〜10質量%の割合となるよう付着させることを特徴とする処理方法である。付着方法としては、ガイド給油法、ローラー式給油法、スプレー給油法等、公知の方法を用いることができる。
【0036】
本発明の処理方法に用いられる合成繊維としては、例えば、ポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられるが、なかでもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。
【0037】
本発明において、ポリウレタン系弾性繊維は、実質的にポリウレタンを主構成部とする弾性繊維を意味し、通常はセグメント化したポリウレタンを85質量%以上含有する長鎖の重合体から紡糸されるものを意味する。
【0038】
長鎖の重合体は、所謂ソフトセグメントとハードセグメントとを有する。ソフトセグメントは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル等の比較的長鎖のセグメントであり、ハードセグメントは、イソシアナートとジアミン又はジオール鎖伸長剤との反応により誘導される比較的短鎖のセグメントである。かかる長鎖の重合体は通常、ヒドロキシル末端のソフトセグメント前駆体を有機ジイソシアネートでキャッピングしてプレポリマを生成させ、このプレポリマをジアミン又はジオールで鎖伸長させて製造する。
【0039】
ソフトセグメントについて、前記のポリエーテルには、テトラメチレングリコール、3一メチル−1,5−ペンタンジオール、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン等から誘導されるものが含まれるが、なかでもテトラメチレングリコールから誘導されるものが好ましい。また前記のポリエステルには、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等と、アジピン酸、コハク酸等の二塩基酸とから誘導されるものが含まれる。更に前記のポリエーテルエステルには、ポリエーテルとポリエステル等とから誘導されるものが含まれる。
【0040】
ソフトセグメント前駆体のキャッピングに用いる前記の有機ジイソシアネートとしては、ビス−(p−イソシアナートフェニル)−メタン(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ビス−(4−イソシアナートシクロヘキシル)−メタン(PICM)、へキサメチレンジイソシアネート、3,3,5−トリメチル−5−メチレンシクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられるが、なかでもMDIが好ましい。
【0041】
プレポリマの鎖伸長に用いる前記のジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が挙げられる。
プレポリマの鎖伸長に用いる前記のジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ一ル、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びパラキシリレンジオール等が挙げられる。以上、ポリウレタン系弾性繊維の原料となる長鎖の重合体について説明したが、本発明において、かかる長鎖の重合体の重合方法は特に制限されない。
【0042】
ポリウレタン系弾性繊維の原料となる長鎖の重合体は、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の耐候剤、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤、酸化チタン、酸化鉄等の各種顔料、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化セシウム、銀イオン等の機能性添加剤等を含有することができる。
【0043】
長鎖の重合体を原料として用いてポリウレタン系弾性繊維を紡糸するときに用いる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が挙げられるが、DMAcが好ましい。溶液の全質量を基準にして、長鎖の重合体の濃度を30〜40質量%、特に35〜38質量%とするのが、溶媒を用いた乾式紡糸法に好適である。
【0044】
通常、鎖伸長剤としてジオールを用いた場合、ポリウレタン系弾性繊維は溶融紡糸法、乾式紡糸法又は湿式紡糸法等により紡糸され、また鎖伸長剤としてジアミンを用いた場合、ポリウレタン系弾性繊維は乾式紡糸法により紡糸される。本発明において、紡糸法は特に制限されないが、溶媒を用いた乾式紡糸法が好ましい。
【0045】
最後に、本発明に係る合成繊維について説明する。本発明に係る合成繊維は、本発明の処理剤が付着している合成繊維であり、以上説明した本発明の処理方法によって得られる。
【0046】
以上説明した本発明によると、捲糸体とした場合の捲き形状不良を抑制できるとともに、加工物の加工品位を向上させることができる合成繊維が得られる。したがって、本発明により得られる合成繊維を用いることにより、近年の高度な要求に応える優れた加工品位の加工物が得られやすくなる。
【0047】
特に、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、X
1、及びX
2が水酸基であるものを用いた場合には、加工物の風合いを向上させる効果が大きくなる。
また、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、pが15〜700の整数であり、R
1がメチル基であるものを用いた場合には、加工時におけるスカム発生を抑制することによる加工品位を向上させる効果が大きくなる。
【0048】
また、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、pが100〜500の整数であり、qが1〜10の整数であり、アミド当量が3000〜30000g/molであるものを用いた場合には、平滑性が良くなり、擦過による糸切れが抑制されることによる加工品位の向上効果が得られ、捲き形状不良を抑制する効果と加工品位を向上させる効果とを高いレベルで両立させることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれら実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0050】
試験区分1(平滑剤の調製)
2成分以上で構成される場合には、それらを表1に記載の割合(質量比)で混合して、表1に記載の平滑剤を調製した。
【0051】
【表1】
表1に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
【0052】
S5:25℃における動粘度が5mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
S10:25℃における動粘度が10mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
S20:25℃における動粘度が20mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
S30:25℃における動粘度が30mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
S50:25℃における動粘度が50mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
M6:25℃における動粘度が6mm
2/sである鉱物油
M10:25℃における動粘度が10mm
2/sである鉱物油
M15:25℃における動粘度が15mm
2/sである鉱物油
M21:25℃における動粘度が21mm
2/sである鉱物油
M40:25℃における動粘度が40mm
2/sである鉱物油
試験区分2(アミド変性シリコーンの合成)
・アミド変性シリコーン(AS−1)の合成
シロキサン部分の繰り返し単位が40である、両末端水酸基変性ポリジメチルシロキサン27000g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン206g、水酸化カリウム40%水溶液3.3gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った。その後、水32gを添加し、減圧で脱水操作を行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン27000gを得た。得られたアミノ変性シリコーン27000gにオレイン酸2814gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(AS−1)27000gを得た。
【0053】
・アミド変性シリコーン(AS−2)〜(AS−9)(AS−11)の合成
化3に示す一般式のp、qの数値に応じて、シロキサン部分の繰り返し単位を変更し、両末端水酸基変性ポリジメチルシロキサンに代替、及び併用して使用する他、X
3の構造に応じたアミン、脂肪酸を使用し、アミド変性シリコーン(AS−1)と同様に合成を行った。
【0054】
・アミド変性シリコーン(AS−10)の合成
N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミンを3−(ジメトキシメチルシリル)プロピルアミンに替えて、アミド変性シリコーン(AS−1)と同様に合成を行った。
【0055】
・アミド変性シリコーン(AS−12)の合成
シロキサン部分の繰り返し単位が40である、両末端シラノール変性ポリジメチルシロキサン30543g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン1032g、水酸化カリウム40%水溶液4.0gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った。その後、水135gを添加し、減圧で脱水操作を行なった後、ジメチルジメトキシシラン60gを添加、撹拌しつつ90℃で2時間反応を行い、減圧で脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン31000gを得た。得られたアミノ変性シリコーン31000gにテレフタル酸85gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(AS−12)31000gを得た。
【0056】
・アミノ変性シリコーン(Ras−1)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162、水18g、水酸化カリウム40%水溶液10.3g、オクタメチルシクロテトラシロキサン13320g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン206gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン(Ras−1)13000gを得た。
【0057】
・アミノ変性シリコーン(Ras−2)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162g、水54g、水酸化カリウム40%水溶液0.4g、ジメチルジメトキシシラン361g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン206gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン(Ras−2)500gを得た。
【0058】
・アミド変性シリコーン(Ras−3)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162g、水54g、水酸化カリウム40%水溶液5.2g、オクタメチルシクロテトラシロキサン5932g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン413gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン6400gを得た。得られたアミノ変性シリコーン6400gにアジピン酸291gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(Ras−3)6655gを得た。
【0059】
・アミド変性シリコーン(Ras−4)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162g、水54g、水酸化カリウム40%水溶液2.4g、オクタメチルシクロテトラシロキサン2225g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン413gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン2700gを得た。得られたアミノ変性シリコーン2700gにトリメリット酸419gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(Ras−4)3082gを得た。
【0060】
・アミド変性シリコーン(Ras−5)の合成
メチルハイドロジェンポリジメチルシロキサン(メチルハイドロジェンシロキサン単位2個、ジメチルシロキサン単位30個、トリメチルシロキサン単位1個、トリメチルシリル単位1 個から構成されたもの)2505g、ペンタノイルポリアルキレングリコールモノアリルエーテル( ポリアルキレングリコールがエチレンオキシ単位3 個とプロピレンオキシ単位3 個とがランダム結合したもの)897g、触媒として塩化白金6 水和物0.1g及びトルエン2000mlを反応容器に仕込み、反応系の温度を110℃に保ち、10時間付加反応を行なった。反応系からキシレンを減圧留去した後、触媒を濾別し、中間体としてポリエーテル変性シリコーンを得た。別に、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン490g及び水144gを反応容器に仕込み、反応系の温度を40℃に保ち、2時間重合反応を行なった後、80℃で2時間減圧脱水処理し、中間体としてアミノ基含有ポリシロキサンを得た。かくして得たポリエーテル変性シリコーン1701g及びアミノ基含有ポリシロキサン135gを反応容器に仕込み、均一に混合した後、水酸化カリウム0.1gを加えて、反応系の温度を98℃に保ち、24時間反応を行なった。反応物を酢酸で中和した後、更に無水トリメリット酸193gを加え、反応系の温度を150〜175℃として、6時間アミド化反応を行ない、アミド変性シリコーン(Ras−5)を得た。
【0061】
・アミド変性シリコーン(Ras−6)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162g、水54g、水酸化カリウム40%水溶液10.4g、オクタメチルシクロテトラシロキサン11123g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン206gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン11000gを得た。得られたアミノ変性シリコーン11000gにテレフタル酸160gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(Ras−6)11142gを得た。
【0062】
各変性シリコーンの構成を表2に示す。
【0063】
【表2】
表2において、「B−1」は、「−C
3H
6−COO−Y
1−C
4H
9」で示されるポリエーテル変性基であって且つ、Y
1がプロピレンオキシ単位3個とエチレンオキシ単位3個とがランダム結合したポリアルキレンオキシ基である場合のポリエーテル変性基である。
【0064】
試験区分3(合成繊維用処理剤の調製)
・実施例1 表1に記載の平滑剤(L−1)99部、表2に記載のアミド変性シリコーン(AS−1)1部を、20〜35℃の範囲内の温度で均一になるまで混合して実施例1の合成繊維用処理剤を調製した。
【0065】
・実施例2〜17及び比較例1〜3
実施例1の合成繊維用処理剤と同様にして、実施例2〜17及び比較例1〜3の合成繊維用処理剤を調製した。これらの内容を表3にまとめて示した。
【0066】
【表3】
表3に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
【0067】
L−1〜L−9:表1に記載の平滑剤
AS−1〜AS−12,Ras−1〜Ras−6:表2に記載のアミノ変性シリコーン及びアミド変性シリコーン
Ras−7:粘度900mm
2/s(25℃)、官能基当量2700g/molのアミドポリエーテル変性シリコーン
・試験区分4(合成繊維への合成繊維用処理剤の付着及び評価)
・合成繊維としてのポリウレタン系弾性繊維への合成繊維用処理剤の付着
ビス−(p−イソシアネートフェニル)−メタン/テトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1800)=1.58/1(モル比)の混合物を常法により90℃で3時間反応させ、キャップドグリコールを得た後、このキャップドグリコールをN,N’−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという)で希釈した。次にエチレンジアミン及びジエチルアミンを含むDMAc溶液を前記のキャップドグリコールのDMAc溶液に加え、室温で高速攪拌装置を用いて混合し、鎖伸長させてポリマを得た。更にDMAcを加えて前記のポリマ濃度が約35%のDMAc溶液とし、このDMAc溶液に、ポリマに対して酸化チタンを4.7%、ヒンダードアミン系耐侯剤を3.0%及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を1.2%となるように添加し、混合して均一なポリマ混合溶液とした。このポリマ混合溶液を用いて、公知のスパンデックスで用いられる乾式紡糸方法により、単糸数4本からなる44dtexの弾性糸を紡糸し、巻き取り前のオイリングローラーから各例の合成繊維用処理剤をそのままニートの状態でローラー給油した。かくしてローラー給油したものを、巻き取り速度550m/分で、長さ57mmの円筒状紙管に、巻き幅42mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて巻き取り、乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを得た。合成繊維用処理剤の付着量の調節は、オイリングローラーの回転数を調整することで行い、目標値7.0%で付着させた。
【0068】
・測定及び評価
前記で得た乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維パッケージを下記の測定及び評価に供し、結果を表3にまとめて示した。
【0069】
・捲糸体の形状の評価
前記のパッケージ(1kg巻き)について、捲き幅の最大値(Wmax)と最小幅(Wmin)を計測し、双方の差(Wmax−Wmin)からバルジを求め、下記の基準で評価した。
【0070】
◎:バルジが4mm未満。
○:バルジが4〜10mm。
×:バルジが10mm以上。
【0071】
・加工時のスカム発生の評価
前記のパッケージ(1kg巻き)捲糸体をミニチュア整経機に10本仕立て、25℃で65%RHの雰囲気下に糸速度300m/分で1500km巻き取った。このとき、ミニチュア整経機のクシガイドでのスカムの蓄積状態を肉眼観察し、下記の基準で評価した。
【0072】
◎:スカムの付着がほとんどなかった。
○:スカムがやや付着しているが、糸の安定走行に問題はなかった。
×:スカムの付着及び蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。
【0073】
・平滑性の評価
摩擦測定メーター(エイコー測器社製、SAMPLE FRICTION UNIT MODEL TB−1)を用い、二つのフリーローラー間に直径1cmで表面粗度2Sのクロムメッキ梨地ピンを配置し、このクロムメッキ梨地ピンに対し、前記のパッケージ(500g巻き)から引き出したポリウレタン系弾性繊維の接触角度が90度となるようにした。25℃で60%RHの条件下、入側で初期張力(T
1)5gをかけ、100m/分の速度で走行させたときの出側の2次張力(T
2)を0.1秒毎に1分間測定した。下記の数1から摩擦係数を求め、下記の基準で評価した。
【0074】
【数1】
◎:摩擦係数が0.150以上0.220未満。
【0075】
○:摩擦係数が0.220以上0.260未満。
△:摩擦係数が0.260以上0.300未満。
×:摩擦係数が0.300以上。
【0076】
・風合いの評価
試料糸を用いて織物ストレッチ布帛を作製し、染色等の後加工を行い、その外観品位を評価した。先ず、試料糸を、カチオン可染ポリエステル糸(168dtex/48fil)でカバリング加工した。その際のカバリング機での条件を、ヨリ数=450t/m、ドラフト=3.0として得られたカバリング糸をヨコ糸用とし、またヨリ数700T/M、ドラフト=3.5として得られたカバリング糸をタテ糸用とした。次に、得られたカバリング糸をそれぞれヨコ糸、タテ糸として用い、タテ糸を5100本(荒巻整経1100本)で糊付け整経した後、レビアー織機を用いて2/1綾組織で製織した。そして製織で得られた生機を常法に従い精練加工、中間セット(185℃)、減量加工を行ない、更にカチオン染料を用いた染色加工、乾燥、仕上げ剤処理、及び180℃、布帛20m/分、セットゾーン24mの条件で仕上げセットを行った。
【0077】
このように後加工を行った後のストレッチ布帛の風合いを、主に生地の波打ちに注目して、下記の基準で評価した。
◎:波打ちが全くなく、手触りが滑らか。
【0078】
○:波打ちがあるがほとんど気にならない。
×:波打ちが気になり、手触りにひっかかりがある。
表3の結果からも明らかなように、本発明の処理剤及び処理方法によると、合成繊維の製造において、優れた捲形状を有するパッケージを得ることができ、また後加工でのスカム発生や擦過による糸切れが少なく、結果として編地の表面が滑らかで加工品位に優れた合成繊維を得ることができるのである。
【0079】
特に、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、X
1、及びX
2が水酸基であるものを用いた実施例1〜14は、当該要件を満たさないものを用いた実施例15〜17と比較して、風合いが更に向上している。
【0080】
また、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、pが15〜700の整数であり、R
1がメチル基であるものを用いた実施例1〜12では、当該要件を満たさないものを用いた実施例13〜17と比較して、加工時におけるスカム発生が更に抑制されている。
【0081】
また、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、pが100〜500の整数であり、qが1〜10の整数であり、アミド当量が3000〜30000g/molであるものを用いた実施例1〜6では、当該要件を満たさないものを用いた実施例7〜10と比較して、捲き形状不良を抑制する効果と、合成繊維の平滑性が向上する効果が高いレベルで両立している。
前記アミド変性シリコーン以外のシリコーンオイル、鉱物油、脂肪酸エステル、及び液状ポリオレフィンから選ばれる少なくとも一つを含む平滑剤を含有し、前記平滑剤の25℃における動粘度が5〜50mm2/sである請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
前記平滑剤と前記アミド変性シリコーンの含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤を80〜99.9質量%、及び前記アミド変性シリコーンを0.1〜20質量%の割合で含有する請求項2又は3に記載の合成繊維用処理剤。
前記平滑剤と前記アミド変性シリコーンの含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤を95〜99.9質量%、及び前記アミド変性シリコーンを0.1〜5質量%の割合で含有する請求項2又は3に記載の合成繊維用処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明に係る合成繊維用処理剤(以下、本発明の処理剤という)について説明する。本発明の処理剤は、下記の化3で示される特定のアミド変性シリコーンを含有して成るものである。また、本発明の処理剤は、平滑剤を含有するものであることが好ましい。
【0016】
(特定のアミド変性シリコーン)
本発明の処理剤に供する特定のアミド変性シリコーンは下記の化3で示されるものである。
【0017】
【化3】
化3中のX1、X2は、水酸基である。
【0018】
また、参考例として、化3中のX
1、X
2は、メトキシ基、エトキシ基、プロトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基又メチル基又は水酸基であり、且つX
1、及びX
2のうち少なくとも一つは炭素数1〜4のアルコキシ基又は水酸基である
場合を例示する。なかでもX
1及びX
2がメチル基又は水酸基であり、且つX
1及びX
2のうち少なくとも一つは水酸基である場合のものが好ましく、X
1及びX
2が水酸基である場合のものがより好ましい。
【0019】
化3中のX
3は、下記の化4で示されるアミド変性基である。
【0020】
【化4】
化4中のR
2,R
3は、それぞれ独立して、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の炭素数2〜5のアルキレン基であり、rは、0又は1である。R
4は1〜4価のカルボン酸から一つの水酸基を除いた残基であり、カルボン酸に関して、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級脂肪酸であってもよく、環状の脂肪酸であってもよく、芳香族環を含有する脂肪酸であってもよい。前記カルボン酸としては、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、アジピン酸、セバシン酸、安息香酸等が挙げられる。
【0021】
前記した化3中のR
1は、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であり、pは、
100〜500の整数であり、qは、
1〜10の整数である
。
【0022】
また、参考例として、pは、4〜1200の整数であり、qは、1〜100の整数である場合を例示する。なかでもpが15〜700の整数であり、またR1がメチル基である場合のものが好ましく、pが100〜500の整数であり、また化3中のqが1〜10の整数である場合のものがより好ましい。
【0023】
また、化3で示されるアミド変性シリコーンは、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
具体的に化3で示されるアミド変性シリコーンとしては、側鎖に3−脂肪酸アミドプロピル基、N−(2−脂肪酸アミドエチル)−3−アミノプロピル基を持った両末端水酸基変性アミド変性シリコーン等が挙げられるが、なかでも側鎖にN−(2−脂肪酸アミドエチル)−3−アミノプロピル基を持った両末端水酸基変性アミド変性シリコーンがより好ましい。
【0024】
化3で示されるアミド変性シリコー
ンは、イソプロピルアルコールとキシレンの1:1混合溶媒中に試料を精秤し、0.1N塩酸水溶液で滴定を行うという一般的な滴定法により求められるアミド当量が3000〜30000g/molである
。
【0025】
(平滑剤)
本発明の処理剤に供する平滑剤は、化3で示されるアミド変性シリコーン以外のシリコーンオイル、鉱物油、脂肪酸エステル及び液状ポリオレフィンから選ばれる一つ又は二つ以上からなり、且つ25℃における動粘度が5〜50mm
2/sのものである。
【0026】
化3で示されるアミド変性シリコーン以外のシリコーンオイルとしては、例えば、(1)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位から成るポリジメチルシロキサン類、(2)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位と炭素数2〜4のアルキル基を含むジアルキルシロキサン単位とから成るポリジアルキルシロキサン類、及び(3)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とから成るポリシロキサン類等が挙げられ、公知の物の参考例としては次のようなものがある。
【0027】
25℃における動粘度が5mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96L−5cs)、25℃における動粘度が10mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96−10cs)、25℃における動粘度が20mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96−20cs)、25℃における動粘度が30mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96−30cs)、25℃における動粘度が50mm
2/sであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製の商品名KF−96−50cs)。
【0028】
また鉱物油としては、パラフィン成分、ナフテン成分及びアロマ成分等を含有する一般的な石油留分が挙げられ、公知の物の参考例としては次のようなものがある。25℃における動粘度が10mm
2/sである鉱物油(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモピュアスピンD)、25℃における動粘度が15mm
2/sである鉱物油(富士興産株式会社製の商品名フッコールNT−60)、25℃における動粘度が40mm
2/sである鉱物油(富士興産株式会社製の商品名フッコールNT−100)。
【0029】
更に脂肪酸エステルとしては、例えば、(1)ブチルステアラート、オクチルステアラート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソペンタコサニルイソステアラート等の、脂肪族1価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、(2)1,6−ヘキサンジオールジデカノアート、トリメチロールプロパンモノオレアートモノラウラート、トリメチロールプロパントリラウラート、ひまし油等の天然油脂等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、(3)アジピン酸ジラウリル、アゼライン酸ジオレイル等の、脂肪族1価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル等が挙げられる。
【0030】
更にまた液状ポリオレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン等を重合して得られるポリαオレフィン等が挙げられる。
なかでも、平滑剤としては、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイルを含有するものが好ましい。かかる平滑剤としては、25℃における動粘度が5〜50mm
2/sのものを用いる。本発明において動粘度は、JIS−K2283(石油製品動粘度試験方法)に記載されたキャノンフェンスケ粘度計を用いた方法により求められる値である。
【0031】
(その他成分)
本発明の処理剤には、本発明の効果を損なわない範囲内にて、必要に応じその他の成分を併用することもできる。かかるその他の成分としては、例えば、帯電防止剤、膠着防止剤、つなぎ剤、濡れ性向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤等、合成繊維用処理剤として公知の成分が挙げられる。
【0032】
(特定のアミド変性シリコーン及び平滑剤の含有割合)
本発明の処理剤は、化3で示されるアミド変性シリコーンを0.08〜20質量%の割合で含有することが好ましく、0.09〜5.0質量%の割合で含有することがより好ましい。本発明の処理剤は、平滑剤を64〜99.9質量%の割合で含有することが好ましく、85.5〜99.9質量%の割合で含有することがより好ましい。
【0033】
また、本発明の処理剤は、化3で示されるアミド変性シリコーン及び平滑剤の含有割合の合計を100質量%としたとき、化3で示されるアミド変性シリコーンの含有割合が0.1〜20質量%であり、平滑剤の含有割合が80〜99.9質量%であることが好ましく、アミド変性シリコーンの含有割合が0.1〜5質量%であり、平滑剤の含有割合が95〜99.9質量%であることがより好ましい。
【0034】
次に、本発明に係る合成繊維の処理方法(以下、本発明の処理方法という)について説明する。本発明の処理方法は、前記した本発明の処理剤を希釈することなくニート給油法によって、合成繊維100質量%に対し0.1〜10質量%の割合となるよう付着させることを特徴とする処理方法である。付着方法としては、ガイド給油法、ローラー式給油法、スプレー給油法等、公知の方法を用いることができる。
【0035】
本発明の処理方法に用いられる合成繊維としては、例えば、ポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられるが、なかでもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。
【0036】
本発明において、ポリウレタン系弾性繊維は、実質的にポリウレタンを主構成部とする弾性繊維を意味し、通常はセグメント化したポリウレタンを85質量%以上含有する長鎖の重合体から紡糸されるものを意味する。
【0037】
長鎖の重合体は、所謂ソフトセグメントとハードセグメントとを有する。ソフトセグメントは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル等の比較的長鎖のセグメントであり、ハードセグメントは、イソシアナートとジアミン又はジオール鎖伸長剤との反応により誘導される比較的短鎖のセグメントである。かかる長鎖の重合体は通常、ヒドロキシル末端のソフトセグメント前駆体を有機ジイソシアネートでキャッピングしてプレポリマを生成させ、このプレポリマをジアミン又はジオールで鎖伸長させて製造する。
【0038】
ソフトセグメントについて、前記のポリエーテルには、テトラメチレングリコール、3一メチル−1,5−ペンタンジオール、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン等から誘導されるものが含まれるが、なかでもテトラメチレングリコールから誘導されるものが好ましい。また前記のポリエステルには、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等と、アジピン酸、コハク酸等の二塩基酸とから誘導されるものが含まれる。更に前記のポリエーテルエステルには、ポリエーテルとポリエステル等とから誘導されるものが含まれる。
【0039】
ソフトセグメント前駆体のキャッピングに用いる前記の有機ジイソシアネートとしては、ビス−(p−イソシアナートフェニル)−メタン(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ビス−(4−イソシアナートシクロヘキシル)−メタン(PICM)、へキサメチレンジイソシアネート、3,3,5−トリメチル−5−メチレンシクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられるが、なかでもMDIが好ましい。
【0040】
プレポリマの鎖伸長に用いる前記のジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が挙げられる。
プレポリマの鎖伸長に用いる前記のジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ一ル、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びパラキシリレンジオール等が挙げられる。以上、ポリウレタン系弾性繊維の原料となる長鎖の重合体について説明したが、本発明において、かかる長鎖の重合体の重合方法は特に制限されない。
【0041】
ポリウレタン系弾性繊維の原料となる長鎖の重合体は、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の耐候剤、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤、酸化チタン、酸化鉄等の各種顔料、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化セシウム、銀イオン等の機能性添加剤等を含有することができる。
【0042】
長鎖の重合体を原料として用いてポリウレタン系弾性繊維を紡糸するときに用いる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が挙げられるが、DMAcが好ましい。溶液の全質量を基準にして、長鎖の重合体の濃度を30〜40質量%、特に35〜38質量%とするのが、溶媒を用いた乾式紡糸法に好適である。
【0043】
通常、鎖伸長剤としてジオールを用いた場合、ポリウレタン系弾性繊維は溶融紡糸法、乾式紡糸法又は湿式紡糸法等により紡糸され、また鎖伸長剤としてジアミンを用いた場合、ポリウレタン系弾性繊維は乾式紡糸法により紡糸される。本発明において、紡糸法は特に制限されないが、溶媒を用いた乾式紡糸法が好ましい。
【0044】
最後に、本発明に係る合成繊維について説明する。本発明に係る合成繊維は、本発明の処理剤が付着している合成繊維であり、以上説明した本発明の処理方法によって得られる。
【0045】
以上説明した本発明によると、捲糸体とした場合の捲き形状不良を抑制できるとともに、加工物の加工品位を向上させることができる合成繊維が得られる。したがって、本発明により得られる合成繊維を用いることにより、近年の高度な要求に応える優れた加工品位の加工物が得られやすくなる。
【0046】
特に、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、X
1、及びX
2が水酸基であるものを用いた場合には、加工物の風合いを向上させる効果が大きくなる。
また、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、pが15〜700の整数であり、R
1がメチル基であるものを用いた場合には、加工時におけるスカム発生を抑制することによる加工品位を向上させる効果が大きくなる。
【0047】
また、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、pが100〜500の整数であり、qが1〜10の整数であり、アミド当量が3000〜30000g/molであるものを用いた場合には、平滑性が良くなり、擦過による糸切れが抑制されることによる加工品位の向上効果が得られ、捲き形状不良を抑制する効果と加工品位を向上させる効果とを高いレベルで両立させることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれら実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例
、参考例、及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0049】
試験区分1(平滑剤の調製)
2成分以上で構成される場合には、それらを表1に記載の割合(質量比)で混合して、表1に記載の平滑剤を調製した。
【0050】
【表1】
表1に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
【0051】
S5:25℃における動粘度が5mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
S10:25℃における動粘度が10mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
S20:25℃における動粘度が20mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
S30:25℃における動粘度が30mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
S50:25℃における動粘度が50mm
2/sであるポリジメチルシロキサン
M6:25℃における動粘度が6mm
2/sである鉱物油
M10:25℃における動粘度が10mm
2/sである鉱物油
M15:25℃における動粘度が15mm
2/sである鉱物油
M21:25℃における動粘度が21mm
2/sである鉱物油
M40:25℃における動粘度が40mm
2/sである鉱物油
試験区分2(アミド変性シリコーンの合成)
・アミド変性シリコーン(AS−1)の合成
シロキサン部分の繰り返し単位が40である、両末端水酸基変性ポリジメチルシロキサン27000g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン206g、水酸化カリウム40%水溶液3.3gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った。その後、水32gを添加し、減圧で脱水操作を行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン27000gを得た。得られたアミノ変性シリコーン27000gにオレイン酸2814gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(AS−1)27000gを得た。
【0052】
・アミド変性シリコーン(AS−2)〜(AS−9)(AS−11)の合成
化3に示す一般式のp、qの数値に応じて、シロキサン部分の繰り返し単位を変更し、両末端水酸基変性ポリジメチルシロキサンに代替、及び併用して使用する他、X
3の構造に応じたアミン、脂肪酸を使用し、アミド変性シリコーン(AS−1)と同様に合成を行った。
【0053】
・アミド変性シリコーン(AS−10)の合成
N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミンを3−(ジメトキシメチルシリル)プロピルアミンに替えて、アミド変性シリコーン(AS−1)と同様に合成を行った。
【0054】
・アミド変性シリコーン(AS−12)の合成
シロキサン部分の繰り返し単位が40である、両末端シラノール変性ポリジメチルシロキサン30543g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン1032g、水酸化カリウム40%水溶液4.0gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った。その後、水135gを添加し、減圧で脱水操作を行なった後、ジメチルジメトキシシラン60gを添加、撹拌しつつ90℃で2時間反応を行い、減圧で脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン31000gを得た。得られたアミノ変性シリコーン31000gにテレフタル酸85gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(AS−12)31000gを得た。
【0055】
・アミノ変性シリコーン(Ras−1)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162、水18g、水酸化カリウム40%水溶液10.3g、オクタメチルシクロテトラシロキサン13320g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン206gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン(Ras−1)13000gを得た。
【0056】
・アミノ変性シリコーン(Ras−2)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162g、水54g、水酸化カリウム40%水溶液0.4g、ジメチルジメトキシシラン361g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン206gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン(Ras−2)500gを得た。
【0057】
・アミド変性シリコーン(Ras−3)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162g、水54g、水酸化カリウム40%水溶液5.2g、オクタメチルシクロテトラシロキサン5932g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン413gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン6400gを得た。得られたアミノ変性シリコーン6400gにアジピン酸291gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(Ras−3)6655gを得た。
【0058】
・アミド変性シリコーン(Ras−4)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162g、水54g、水酸化カリウム40%水溶液2.4g、オクタメチルシクロテトラシロキサン2225g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン413gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン2700gを得た。得られたアミノ変性シリコーン2700gにトリメリット酸419gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(Ras−4)3082gを得た。
【0059】
・アミド変性シリコーン(Ras−5)の合成
メチルハイドロジェンポリジメチルシロキサン(メチルハイドロジェンシロキサン単位2個、ジメチルシロキサン単位30個、トリメチルシロキサン単位1個、トリメチルシリル単位1個から構成されたもの)2505g、ペンタノイルポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(ポリアルキレングリコールがエチレンオキシ単位3 個とプロピレンオキシ単位3 個とがランダム結合したもの)897g、触媒として塩化白金6水和物0.1g及びトルエン2000mlを反応容器に仕込み、反応系の温度を110℃に保ち、10時間付加反応を行なった。反応系からキシレンを減圧留去した後、触媒を濾別し、中間体としてポリエーテル変性シリコーンを得た。別に、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン490g及び水144gを反応容器に仕込み、反応系の温度を40℃に保ち、2時間重合反応を行なった後、80℃で2時間減圧脱水処理し、中間体としてアミノ基含有ポリシロキサンを得た。かくして得たポリエーテル変性シリコーン1701g及びアミノ基含有ポリシロキサン135gを反応容器に仕込み、均一に混合した後、水酸化カリウム0.1gを加えて、反応系の温度を98℃に保ち、24時間反応を行なった。反応物を酢酸で中和した後、更に無水トリメリット酸193gを加え、反応系の温度を150〜175℃として、6時間アミド化反応を行ない、アミド変性シリコーン(Ras−5)を得た。
【0060】
・アミド変性シリコーン(Ras−6)の合成
ヘキサメチルジシロキサン162g、水54g、水酸化カリウム40%水溶液10.4g、オクタメチルシクロテトラシロキサン11123g、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン206gをガラス製の反応容器に入れ、撹拌しつつ90℃まで昇温し、4時間反応を行った後、減圧で脱水、脱メタノールを行い、セライトを用いて濾過を行い、アミノ変性シリコーン11000gを得た。得られたアミノ変性シリコーン11000gにテレフタル酸160gをガラス製の反応容器内に入れ、撹拌しつつ120℃まで昇温し、窒素気流下で4時間反応を行った。その後反応物を冷却し、アミド変性シリコーン(Ras−6)11142gを得た。
【0061】
各変性シリコーンの構成を表2に示す。
【0062】
【表2】
表2において、「B−1」は、「−C
3H
6−COO−Y
1−C
4H
9」で示されるポリエーテル変性基であって且つ、Y
1がプロピレンオキシ単位3個とエチレンオキシ単位3個とがランダム結合したポリアルキレンオキシ基である場合のポリエーテル変性基である。
【0063】
試験区分3(合成繊維用処理剤の調製)
・実施例1 表1に記載の平滑剤(L−1)99部、表2に記載のアミド変性シリコーン(AS−1)1部を、20〜35℃の範囲内の温度で均一になるまで混合して実施例1の合成繊維用処理剤を調製した。
【0064】
・実施例2〜
6、参考例1〜11及び比較例1〜3
実施例1の合成繊維用処理剤と同様にして、実施例2〜
6、参考例1〜11及び比較例1〜3の合成繊維用処理剤を調製した。これらの内容を表3にまとめて示した。
【0065】
【表3】
表3に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
【0066】
L−1〜L−9:表1に記載の平滑剤
AS−1〜AS−12,Ras−1〜Ras−6:表2に記載のアミノ変性シリコーン及びアミド変性シリコーン
Ras−7:粘度900mm
2/s(25℃)、官能基当量2700g/molのアミドポリエーテル変性シリコーン
・試験区分4(合成繊維への合成繊維用処理剤の付着及び評価)
・合成繊維としてのポリウレタン系弾性繊維への合成繊維用処理剤の付着
ビス−(p−イソシアネートフェニル)−メタン/テトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1800)=1.58/1(モル比)の混合物を常法により90℃で3時間反応させ、キャップドグリコールを得た後、このキャップドグリコールをN,N’−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという)で希釈した。次にエチレンジアミン及びジエチルアミンを含むDMAc溶液を前記のキャップドグリコールのDMAc溶液に加え、室温で高速攪拌装置を用いて混合し、鎖伸長させてポリマを得た。更にDMAcを加えて前記のポリマ濃度が約35%のDMAc溶液とし、このDMAc溶液に、ポリマに対して酸化チタンを4.7%、ヒンダードアミン系耐侯剤を3.0%及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を1.2%となるように添加し、混合して均一なポリマ混合溶液とした。このポリマ混合溶液を用いて、公知のスパンデックスで用いられる乾式紡糸方法により、単糸数4本からなる44dtexの弾性糸を紡糸し、巻き取り前のオイリングローラーから各例の合成繊維用処理剤をそのままニートの状態でローラー給油した。かくしてローラー給油したものを、巻き取り速度550m/分で、長さ57mmの円筒状紙管に、巻き幅42mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて巻き取り、乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを得た。合成繊維用処理剤の付着量の調節は、オイリングローラーの回転数を調整することで行い、目標値7.0%で付着させた。
【0067】
・測定及び評価
前記で得た乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維パッケージを下記の測定及び評価に供し、結果を表3にまとめて示した。
【0068】
・捲糸体の形状の評価
前記のパッケージ(1kg巻き)について、捲き幅の最大値(Wmax)と最小幅(Wmin)を計測し、双方の差(Wmax−Wmin)からバルジを求め、下記の基準で評価した。
【0069】
◎:バルジが4mm未満。
○:バルジが4〜10mm。
×:バルジが10mm以上。
【0070】
・加工時のスカム発生の評価
前記のパッケージ(1kg巻き)捲糸体をミニチュア整経機に10本仕立て、25℃で65%RHの雰囲気下に糸速度300m/分で1500km巻き取った。このとき、ミニチュア整経機のクシガイドでのスカムの蓄積状態を肉眼観察し、下記の基準で評価した。
【0071】
◎:スカムの付着がほとんどなかった。
○:スカムがやや付着しているが、糸の安定走行に問題はなかった。
×:スカムの付着及び蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。
【0072】
・平滑性の評価
摩擦測定メーター(エイコー測器社製、SAMPLE FRICTION UNIT MODEL TB−1)を用い、二つのフリーローラー間に直径1cmで表面粗度2Sのクロムメッキ梨地ピンを配置し、このクロムメッキ梨地ピンに対し、前記のパッケージ(500g巻き)から引き出したポリウレタン系弾性繊維の接触角度が90度となるようにした。25℃で60%RHの条件下、入側で初期張力(T
1)5gをかけ、100m/分の速度で走行させたときの出側の2次張力(T
2)を0.1秒毎に1分間測定した。下記の数1から摩擦係数を求め、下記の基準で評価した。
【0073】
【数1】
◎:摩擦係数が0.150以上0.220未満。
【0074】
○:摩擦係数が0.220以上0.260未満。
△:摩擦係数が0.260以上0.300未満。
×:摩擦係数が0.300以上。
【0075】
・風合いの評価
試料糸を用いて織物ストレッチ布帛を作製し、染色等の後加工を行い、その外観品位を評価した。先ず、試料糸を、カチオン可染ポリエステル糸(168dtex/48fil)でカバリング加工した。その際のカバリング機での条件を、ヨリ数=450t/m、ドラフト=3.0として得られたカバリング糸をヨコ糸用とし、またヨリ数700T/M、ドラフト=3.5として得られたカバリング糸をタテ糸用とした。次に、得られたカバリング糸をそれぞれヨコ糸、タテ糸として用い、タテ糸を5100本(荒巻整経1100本)で糊付け整経した後、レビアー織機を用いて2/1綾組織で製織した。そして製織で得られた生機を常法に従い精練加工、中間セット(185℃)、減量加工を行ない、更にカチオン染料を用いた染色加工、乾燥、仕上げ剤処理、及び180℃、布帛20m/分、セットゾーン24mの条件で仕上げセットを行った。
【0076】
このように後加工を行った後のストレッチ布帛の風合いを、主に生地の波打ちに注目して、下記の基準で評価した。
◎:波打ちが全くなく、手触りが滑らか。
【0077】
○:波打ちがあるがほとんど気にならない。
×:波打ちが気になり、手触りにひっかかりがある。
表3の結果からも明らかなように、本発明の処理剤及び処理方法によると、合成繊維の製造において、優れた捲形状を有するパッケージを得ることができ、また後加工でのスカム発生や擦過による糸切れが少なく、結果として編地の表面が滑らかで加工品位に優れた合成繊維を得ることができるのである。
【0078】
特に、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、X
1、及びX
2が水酸基であるものを用いた実施例1〜
6及び参考例1〜8は、当該要件を満たさないものを用いた
参考例9〜11と比較して、風合いが更に向上している。
【0079】
また、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、pが15〜700の整数であり、R
1がメチル基であるものを用いた実施例1〜
6及び参考例1〜6では、当該要件を満たさないものを用いた
参考例7〜11と比較して、加工時におけるスカム発生が更に抑制されている。
【0080】
また、化3で示されるアミド変性シリコーンとして、pが100〜500の整数であり、qが1〜10の整数であり、アミド当量が3000〜30000g/molであるものを用いた実施例1〜6では、当該要件を満たさないものを用いた
参考例1〜4と比較して、捲き形状不良を抑制する効果と、合成繊維の平滑性が向上する効果が高いレベルで両立している。