(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-118002(P2020-118002A)
(43)【公開日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】床の開口部の枠体の取付構造
(51)【国際特許分類】
E04F 19/08 20060101AFI20200710BHJP
【FI】
E04F19/08 101B
E04F19/08 103C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-12491(P2019-12491)
(22)【出願日】2019年1月28日
(71)【出願人】
【識別番号】392034746
【氏名又は名称】吉川化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】溝田 豊彦
(57)【要約】
【課題】枠体を一旦固定した後でも枠体の取付位置の調整を簡易に行うことができるようにすることによって、枠体を高い寸法精度で設置可能であり、床との間で高い気密性や荷重に耐え得る十分な強度を得ることができるとともに、床面との段差を小さくして躓きを防止するとともに、施工時の作業性、取扱性を向上することができる床の開口部の枠体の取付構造を提供すること。
【解決手段】床Fの開口部に配設する枠体1を、床F側の取付部、本実施例においては、根太Jに対してビス3によって取り付けられる枠体支持部材2を介して支持、固定するようにしたもので、ビス3の固定位置に対して、枠体支持部材2の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段として、枠体支持部材2に形成した長孔からなるビス挿通孔21を設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床の開口部に配設する枠体を、床側の取付部に対してビスによって取り付けられる枠体支持部材を介して支持、固定するようにした床の開口部の枠体の取付構造において、前記ビスの固定位置に対して、枠体支持部材又は枠体の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段を設けてなることを特徴とする床の開口部の枠体の取付構造。
【請求項2】
前記位置調整手段が、枠体支持部材に形成した長孔からなるビス挿通孔であることを特徴とする請求項1に記載の床の開口部の枠体の取付構造。
【請求項3】
前記位置調整手段が、枠体支持部材と枠体の上下方向の相対位置を変更して固定できるセレーション構造の固定部であることを特徴とする請求項1に記載の床の開口部の枠体の取付構造。
【請求項4】
前記位置調整手段が、枠体支持部材と枠体の上下方向の相対位置を変更して固定できるねじ構造の固定部であることを特徴とする請求項1に記載の床の開口部の枠体の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床の開口部の枠体の取付構造に関し、特に、床下収納庫や点検口のために形成された床の開口部の枠体の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床下収納庫や点検口のために形成された床の開口部には、当該開口部を開閉可能に塞ぐ蓋体を、安定して支持、設置することができるように、枠体を取り付けるようにしている。
【0003】
ところで、蓋体が設置された状態で室内と室外との通気があると冷暖房効率が低下することになるため、枠体には、床との間で高い気密性や荷重に耐え得る十分な強度が要求されるほか、床面との段差を小さくして躓きを防止するとともに、施工時の作業性、取扱性を向上させる必要がある。
【0004】
これらの要請に応えるため、枠体は、床や床を支持する根太に取り付けるようにされている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−213923号公報
【特許文献2】特開2008−208561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、床の開口部の枠体を、床や床を支持する根太に取り付けるようにした、従来の床の開口部の枠体の取付構造の場合、施工不良が見つかったときや床材の敷設作業に伴う枠体を一旦固定した後の枠体の取付位置の調整が行いにくいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の床の開口部の枠体の取付構造の有する問題点に鑑み、枠体を一旦固定した後でも枠体の取付位置の調整を簡易に行うことができるようにすることによって、枠体を高い寸法精度で設置可能であり、床との間で高い気密性や荷重に耐え得る十分な強度を得ることができるとともに、床面との段差を小さくして躓きを防止するとともに、施工時の作業性、取扱性を向上することができる床の開口部の枠体の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の床の開口部の枠体の取付構造は、床の開口部に配設する枠体を、床側の取付部に対してビスによって取り付けられる枠体支持部材を介して支持、固定するようにした床の開口部の枠体の取付構造において、前記ビスの固定位置に対して、枠体支持部材又は枠体の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段を設けてなることを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記位置調整手段を、枠体支持部材に形成した長孔からなるビス挿通孔で構成することができる。
【0010】
また、前記位置調整手段を、枠体支持部材と枠体の上下方向の相対位置を変更して固定できるセレーション構造の固定部で構成することができる。
【0011】
また、前記位置調整手段を、枠体支持部材と枠体の上下方向の相対位置を変更して固定できるねじ構造の固定部で構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の床の開口部の枠体の取付構造によれば、床の開口部に配設する枠体を、床側の取付部に対してビスによって取り付けられる枠体支持部材を介して支持、固定するようにした床の開口部の枠体の取付構造において、前記ビスの固定位置に対して、枠体支持部材又は枠体の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段を設けてなることから、枠体を一旦固定した後でも枠体の取付位置の調整を簡易に行うことができ、これによって、枠体を高い寸法精度で設置可能であり、床との間で高い気密性や荷重に耐え得る十分な強度を得ることができるとともに、床面との段差を小さくして躓きを防止するとともに、施工時の作業性、取扱性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の床の開口部の枠体の取付構造の第1実施例を示す縦断面図である。
【
図2-1】本発明の床の開口部の枠体の取付構造の実施例を示し、(a)は第1実施例、(b)は第2実施例、(c)は第3実施例を示す要部の縦断面図である。
【
図2-2】本発明の床の開口部の枠体の取付構造の実施例を示し、(d)は第4実施例、(e)は第5実施例を示す要部の縦断面図である。
【
図3】同床の開口部の枠体の取付構造の第1実施例の要部の縦断面図である。
【
図4】同床の開口部の枠体の取付構造の第1実施例の要部の正面図である。
【
図5】同床の開口部の枠体の取付構造の第2実施例の要部の縦断面図である。
【
図6】同床の開口部の枠体の取付構造の第2実施例の要部の正面図である。
【
図7】同床の開口部の枠体の取付構造の第3実施例の要部の縦断面図である。
【
図8】同床の開口部の枠体の取付構造の第3実施例の要部の正面図である。
【
図9】同床の開口部の枠体の取付構造の第4実施例の要部の縦断面図である。
【
図10】同床の開口部の枠体の取付構造の第4実施例の要部の正面図である。
【
図11】同床の開口部の枠体の取付構造の第5実施例の要部の縦断面図である。
【
図12】同床の開口部の枠体の取付構造の第5実施例の要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の床の開口部の枠体の取付構造の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1、
図2−1(a)及び
図3〜
図4に、本発明の床の開口部の枠体の取付構造の第1実施例を示す。
この床の開口部の枠体の取付構造は、床Fの開口部に配設する枠体1を、床F側の取付部、本実施例においては、根太Jに対してビス3によって取り付けられる枠体支持部材2を介して支持、固定するようにしたもので、ビス3の固定位置に対して、枠体支持部材2(及び枠体支持部材2を介して枠体1)の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段として、枠体支持部材2に形成した上下方向の長孔からなるビス挿通孔21を設けてなるようにしている。
【0016】
この場合において、枠体支持部材2は、枠体1に形成した、枠体支持部材2の設置部11(以下、単に、「設置部11」という。)に配置された状態で、上下方向は当接するように、水平方向は相対的な位置調整ができるようにされており、このため、設置部11の水平方向の寸法を、枠体支持部材2の水平方向の寸法より、例えば、数mm〜20mm程度大きく形成するようにしている。
【0017】
設置部11は、特に限定されるものではないが、通常、枠体支持部材2の1辺に所定間隔で3箇所、4辺合計で12箇所、形成するようにしている(後述の実施例においても同様。)。
また、設置部11は、下方に溝状の開口11aを備えるようにしている(後述の実施例においても同様。)。
【0018】
そして、枠体支持部材2は、枠体1に形成した設置部11に配置された状態で、上下方向は当接するようにしているため、枠体1の上下方向の位置を維持することに加えて、蓋体(図示省略)にかかる荷重を、外枠の鍔部とで分担して支持するようにしている。
また、枠体支持部材2は、設置部11の開口11aに位置する操作片26を備えており、これにより、枠体1を一旦固定した後に枠体1の取付位置の調整を行う場合に、操作片26を介して枠体支持部材2を動作できるようにしている(後述の実施例においても同様。)。
【実施例2】
【0019】
図2−1(b)及び
図5〜
図6に、本発明の床の開口部の枠体の取付構造の第2実施例を示す。
この床の開口部の枠体の取付構造は、床Fの開口部に配設する枠体1を、床F側の取付部、本実施例においては、根太Jに対してビス3によって取り付けられる枠体支持部材2を介して支持、固定するようにしたもので、ビス3の固定位置に対して、枠体1の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段として、枠体支持部材2に対する枠体1の上下方向の相対位置を変更して固定できるセレーション(鋸歯状)構造12、22の固定部4を設けてなるようにしている。
なお、セレーション(鋸歯状)構造12、22の歯数は限定されず、一方を爪状片(歯数:1)とすることもできる。
【0020】
この場合において、セレーション(鋸歯状)構造12、22の固定部4は、枠体支持部材2に対する枠体1の上方向の相対位置の変更を規制する(戻り止め)形状をしているが、この規制を解除する操作片23を枠体支持部材2に設けるようにしている。
【0021】
枠体支持部材2は、枠体1に形成した設置部11に配置された状態で、上下方向に相対的な位置調整ができるようにされており、このため、設置部11の上下方向の寸法を、枠体支持部材2の上下方向の寸法より、例えば、数mm〜10mm程度大きく形成するようにしている。
【0022】
そして、枠体支持部材2は、セレーション(鋸歯状)構造12、22の固定部4によって、枠体1の上下方向の位置を維持するようにしており、蓋体(図示省略)にかかる荷重は、主として、外枠の鍔部で支持するようにしている。
【実施例3】
【0023】
図2−1(c)及び
図7〜
図8に、本発明の床の開口部の枠体の取付構造の第3実施例を示す。
この床の開口部の枠体の取付構造は、床Fの開口部に配設する枠体1を、床F側の取付部、本実施例においては、根太Jに対してビス3によって取り付けられる枠体支持部材2を介して支持、固定するようにしたもので、ビス3の固定位置に対して、枠体1の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段として、枠体支持部材2に対する枠体1の上下方向の相対位置を変更して固定できるねじ構造の固定部5を設けてなるようにしている。
【0024】
枠体支持部材2は、枠体1に形成した設置部11に配置された状態で、上下方向及び水平方向に相対的な位置調整ができるようにされており、このため、設置部11の上下方向及び水平方向の寸法を、枠体支持部材2の上下方向及び水平方向の寸法より、それぞれ、例えば、数mm〜10mm及び数mm〜20mm程度大きく形成するようにしている。
【0025】
そして、枠体支持部材2は、ねじ構造の固定部5によって、枠体1の上下方向の位置を維持するようにしており、蓋体(図示省略)にかかる荷重は、主として、外枠の鍔部で支持するようにしている。
【実施例4】
【0026】
図2−2(d)及び
図9〜
図10に、本発明の床の開口部の枠体の取付構造の第4実施例(第1実施例の変形例)を示す。
この床の開口部の枠体の取付構造は、床Fの開口部に配設する枠体1を、床F側の取付部、本実施例においては、根太Jに対してビス3によって取り付けられる枠体支持部材2を介して支持、固定するようにしたもので、ビス3の固定位置に対して、枠体支持部材2(及び枠体支持部材2を介して枠体1)の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段として、枠体支持部材2に形成した水平方向の長孔からなるビス挿通孔21を設けてなるようにしている。
【0027】
この場合において、枠体支持部材2は、枠体1に水平方向に対して傾斜して形成した設置部11に配置された状態で、上下方向は当接するように、水平方向は相対的な位置調整ができるようにされており、このため、設置部11の水平方向の寸法を、枠体支持部材2の水平方向の寸法より、例えば、数mm〜20mm程度大きく形成するようにしている。
【0028】
そして、枠体支持部材2は、枠体1に形成した設置部11に配置された状態で、上下方向は当接するようにしているため、枠体1の上下方向の位置を維持することに加えて、蓋体(図示省略)にかかる荷重を、外枠の鍔部とで分担して支持するようにしている。
【実施例5】
【0029】
図2−2(e)及び
図11〜
図12に、本発明の床の開口部の枠体の取付構造の第5実施例を示す。
この床の開口部の枠体の取付構造は、床Fの開口部に配設する枠体1を、床F側の取付部、本実施例においては、根太Jに対してビス3によって取り付けられる枠体支持部材2を介して支持、固定するようにしたもので、ビス3の固定位置に対して、枠体支持部材2(及び枠体支持部材2を介して枠体1)の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段として、枠体支持部材2を中心側枠体支持部材2a及び外側枠体支持部材2bに分割して構成するようにしている。
【0030】
この場合において、枠体支持部材2の中心側枠体支持部材2aは、枠体支持部材2の外側枠体支持部材2bに水平方向に対して傾斜して形成した貫通孔24に配置された状態で、上下方向は当接するように、水平方向は相対的な位置調整ができるようにされており、このため、貫通孔24の水平方向の寸法を、中心側枠体支持部材2aの水平方向の寸法より、例えば、数mm〜20mm程度大きく形成するようにしている。
そして、枠体支持部材2の中心側枠体支持部材2a及び外側枠体支持部材2bには、中心側枠体支持部材2aと外側枠体支持部材2bとの水平方向の相対的な位置調整をした後、その状態が維持されるように、山形歯13及び爪状片25からなる固定部6を形成するようにしている。
【0031】
枠体支持部材2の外側枠体支持部材2bは、枠体1に形成した設置部11に配置された状態で、上下方向は当接するように、水平方向は相対的な位置調整ができるようにされており、このため、設置部11の水平方向の寸法を、外側枠体支持部材2bの水平方向の寸法より、例えば、数mm〜20mm程度大きく形成するようにしている。
【0032】
そして、枠体支持部材2の外側枠体支持部材2bは、枠体1に形成した設置部11に配置された状態で、上下方向は当接するようにしているため、枠体1の上下方向の位置を維持することに加えて、蓋体(図示省略)にかかる荷重を、外枠の鍔部とで分担して支持するようにしている。
【0033】
上記第1実施例〜第5実施例の床の開口部の枠体の取付構造によれば、床Fの開口部に配設する枠体1を、床側の取付部Jに対してビス3によって取り付けられる枠体支持部材2を介して支持、固定するようにするとともに、ビス3の固定位置に対して、枠体支持部材2又は枠体1の取付位置を上下方向に変更して固定できる位置調整手段を設けてなることから、枠体1を一旦固定した後でも枠体1の取付位置の調整を簡易に行うことができ、これによって、枠体1を高い寸法精度で設置可能であり、床Fとの間で高い気密性や荷重に耐え得る十分な強度を得ることができるとともに、床面との段差を小さくして躓きを防止するとともに、施工時の作業性、取扱性を向上することができる。
【0034】
以上、本発明の床の開口部の枠体の取付構造について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
具体的には、例えば、枠体支持部材2の1辺の中心に第1実施例のものを、その両側に実施例3のものを配置して、蓋体(図示省略)にかかる荷重の支持強度を高めながら、微調整を行うことができるようにしたり、枠体支持部材2の1辺の中心に第1実施例のものを、その両側に実施例4のものを設置部11の水平方向に対する傾斜を逆に形成して配置して、蓋体(図示省略)にかかる荷重の支持強度を高めながら、枠体1の水平方向の移動を規制できるようにする等、適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の床の開口部の枠体の取付構造は、枠体を一旦固定した後でも枠体の取付位置の調整を簡易に行うことができるようにすることによって、枠体を高い寸法精度で設置可能であり、床との間で高い気密性や荷重に耐え得る十分な強度を得ることができるとともに、床面との段差を小さくして躓きを防止するとともに、施工時の作業性、取扱性を向上することができるという特性を有していることから、床下収納庫や点検口のために形成された床の開口部の枠体の取付の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 枠体
11 設置部
11a 開口
12 セレーション(鋸歯状)構造
13 山形歯
2 枠体支持部材
2a 中心側枠体支持部材
2b 外側枠体支持部材
21 ビス挿通孔
22 セレーション(鋸歯状)構造
23 操作片
24 貫通孔
25 爪状片
26 操作片
3 ビス
4 固定部
5 固定部
6 固定部
F 床
J 根太(床側の取付部)