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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-118185(P2020-118185A)
(43)【公開日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】差動装置用ギヤ及び差動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/08 20060101AFI20200710BHJP
   F16H 48/38 20120101ALI20200710BHJP
【FI】
   F16H48/08
   F16H48/38
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-7925(P2019-7925)
(22)【出願日】2019年1月21日
(11)【特許番号】特許第6498855号(P6498855)
(45)【特許公報発行日】2019年4月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 謙次
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健二
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA22
3J027FA36
3J027FA37
3J027FB02
3J027HA01
3J027HB07
3J027HC02
3J027HC03
3J027HC07
3J027HC12
(57)【要約】
【課題】軽量化した差動装置用ギヤ20及び差動装置10を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、デフケース11内に収容された差動装置用ギヤ20であって、シャフトLに外嵌される筒状の軸筒部23と、軸筒部23の外周面23aから突出する環状の環状壁部24と、環状壁部24からシャフトLの軸線方向の一側に突出するギヤ部25と、環状壁部24の外周面24aから突出する補強リブ26と、環状壁部24の内部を肉抜きして成り、シャフトLの軸線方向の他側に開口する第1凹部31と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフケース内に収容された差動装置用ギヤであって、
シャフトに外嵌される筒状の軸筒部と、
前記軸筒部の外周面から突出する環状の環状壁部と、
前記環状壁部から前記シャフトの軸線方向の一側に突出するギヤ部と、
前記環状壁部の外周面から突出する補強リブと、
前記環状壁部の内部を肉抜きして成り、前記シャフトの軸線方向の他側に開口する第1凹部と、
を備えていることを特徴とする差動装置用ギヤ。
【請求項2】
前記第1凹部の内面から前記軸線方向の一側に肉抜きして成る第2凹部を備え、
前記ギヤ部を構成する複数の歯のそれぞれは、前記第2凹部により中空となっていることを特徴とする請求項1に記載の差動装置用ギヤ。
【請求項3】
前記差動装置用ギヤは、デフピニオンギヤと噛合するサイドギヤであり、
前記第1凹部の内面のうち外側周面は、前記第1凹部の開口に近づくにつれて径方向外側に位置するように傾斜していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の差動装置用ギヤ。
【請求項4】
前記第1凹部内で径方向に延在し、前記第1凹部内を周方向に区画する複数のガイドリブを備え、
前記ガイドリブにおいて前記軸線回りの一側を向く一側面は、径方向外側に向うにつれて前記軸線周りの他側に位置するように傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の差動装置用ギヤ。
【請求項5】
前記軸筒部の外周面は、前記第1凹部の内側周面を構成するとともに、軸方向に平坦に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の差動装置用ギヤ。
【請求項6】
前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の差動装置用ギヤを備えたことを特徴とする差動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動装置用ギヤ及び差動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FFベースの四輪駆動車の後部には終減速装置が搭載されており、この終減速装置により推進軸から伝達された駆動力が減速されて左右の後輪に伝達する。また、終減速装置内には、左右の後輪に対して異なる回転速度に振り分けて伝達する差動装置が設けられている。このような差動装置は、下記特許文献に示すように、デフケースと、デフケース内に配置されデフケースの回転軸と直交するピニオンシャフトと、ピニオンシャフトに支持される一対のデフピニオンギヤと、一対のデフピニオンギヤと噛合する一対のサイドギヤとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−141549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記したデフピニオンギヤとサイドギヤは、高い強度を有し重量化しているため、従来から軽量化が求められている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、軽量化した差動装置用ギヤ及び差動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る差動装置用ギヤは、デフケース内に収容された差動装置用ギヤであって、シャフトに外嵌される筒状の軸筒部と、前記軸筒部の外周面から突出する環状の環状壁部と、前記環状壁部から前記シャフトの軸線方向の一側に突出するギヤ部と、前記環状壁部の外周面から突出する補強リブと、前記環状壁部の内部を肉抜きして成り、前記シャフトの軸線方向の他側に開口する第1凹部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、差動装置用ギヤが第1凹部により軽量化する。また、補強リブにより強度を確保できる。また、第1凹部に潤滑油が貯留され、摺動部(環状壁部の外周面)並びにギヤ部の噛み合い箇所に継続して潤滑油が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における終減速装置の後部を水平方向に切った断面を上方から視た断面図である。
図2図1の破線IIで囲まれた範囲を拡大した拡大図である。
図3】第1実施形態の左サイドギヤを左方から視た左側面図である。
図4図3のIV−IV線の矢視断面図である。
図5】差動装置内における潤滑油の流路を説明するための概略図である。
図6】第2実施形態における差動装置の一部を拡大した拡大図であり、詳細には、図7のVI−VI線の矢視断面図である。
図7】第2実施形態の左サイドギヤを左方から視た左側面図である。
図8】第3実施形態における差動装置の一部を拡大した拡大図である。
図9】第4実施形態における差動装置の一部を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
続いて各実施形態の差動装置を適用した終減速装置について図面を参照しながら説明する。各実施形態で共通する技術的要素には、共通の符号を付するとともに説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
終減速装置1は、FFベースの四輪駆動車に搭載され、プロペラシャフトから伝達された動力を減速したうえで左右の後輪に伝達する装置である。
図1に示すように、終減速装置1は、ドライブピニオン2と、リングギヤ3と、差動装置10と、これらを収容するハウジング4とを備えている。
【0011】
ドライブピニオン2は、前後方向に延びる軸線O1を中心に回転する棒状の部品であり、ドライブピニオン2の後部に円錐台状のピニオンギヤ2aが形成されている。
リングギヤ3は、左右方向に延びる軸線O2を中心に回転するリング状の部品である。リングギヤ3は、噛合するピニオンギヤ2aよりも大径に形成され、ピニオンギヤ2aから伝達される動力を減速している。リングギヤ3は、差動装置10の後述するデフケース11のフランジ15に対しボルト3aで締結されている。
ハウジング4内の下部には潤滑油が貯留しており、回転するリングギヤ3がこの潤滑油を掻き上げ、各部品に飛沫した潤滑油が供給される。
【0012】
差動装置10は、軸線O2を中心に回転するデフケース11と、デフケース11に固定され軸線O2に直交する方向に延びるピニオンシャフト12と、ピニオンシャフト12を中心として回転する一対のデフピニオンギヤ13、13と、一対のデフピニオンギヤ13、13に噛合する一対のサイドギヤ20、20と、各サイドギヤ20の外周側に配置される一対のワッシャ27,27と、を備えている。
【0013】
デフケース11は、略球体状を呈するとともに軸線O2方向に開口するデフケース本体14と、デフケース本体14の外周面から突出するフランジ15と、デフケース本体14の左端部から突出する円筒状の左ボス部16と、デフケース本体14の右端部から突出する円筒状の右ボス部17と、を備えている。
【0014】
デフケース本体14の内周面14aは、ピニオンシャフト12の中心線O3と軸線O2との交点Oを中心に略球面状に形成されている。
【0015】
左ボス部16は、左テーパーローラーベアリング6を介して、ハウジング4の左壁部に支持されている。左ボス部16の左開口は、ハウジング4の下部に貯留される潤滑油が流入するための入口となっている。また、左ボス部16の内周面には、螺旋溝16aが形成されており、左ボス部16内に流入した潤滑油は、螺旋溝16aにより案内されてデフケース本体14内に案内される。
【0016】
右ボス部17は、右テーパーローラーベアリング7を介して、ハウジング4の右壁部に支持されている。
右ボス部17の右開口は、ハウジング4の下部に貯留される潤滑油が流入するための入口となっている。右ボス部17の内周面には、螺旋溝17aが形成されており、右ボス部17の内部に流入した潤滑油は、螺旋溝17aにより案内されてデフケース本体14内に案内される。
【0017】
なお、ハウジング4の左壁部において、左ボス部16と対向する部位には、左貫通穴4aが形成されている。そして、左ドライブシャフト(図1の仮想線L参照)は、左貫通穴4aと左ボス部16内を貫通し、右端部がデフケース本体14内に配置される。
同様に、ハウジング4の右壁部において、右ボス部17と対向する部位には、右貫通穴4bが形成されている。そして、右ドライブシャフト(図1の仮想線R参照)は、右貫通穴4bと右ボス部17内を貫通し、左端部がデフケース本体14内に配置される。
【0018】
一対のサイドギヤ20,20は、ピニオンシャフト12の左側に配置された左サイドギヤ21と、ピニオンシャフト12の右側に配置された右サイドギヤ22と、を備えている。また、左サイドギヤ21と右サイドギヤ22は、互いに同一形状に形成されている。以下、左サイドギヤ21を代表例として説明し、右サイドギヤ22の説明を省略する。
【0019】
図2に示すように、左サイドギヤ21は、金型を用いて製造された鍛造品であり、軸線O2を中心とする円筒状の軸筒部23と、軸筒部23の外周面23aから突出する環状の環状壁部24と、デフピニオンギヤ13と噛合するギヤ部25と、環状壁部24の外周面24bから突出する補強リブ26と、環状壁部24又はギヤ部25を肉抜きして成る凹部30と、を備えている。尚、本発明のサイドギヤ20は、鍛造品に限定されず、焼結により製造されたものであってもよい。
【0020】
軸筒部23内には、左ドライブシャフト(図1の仮想線L参照)の右端部が挿入されている。また、軸筒部23の内周面には、左ドライブシャフトのスプライン軸(不図示)とスプライン嵌合するスプライン溝23bが形成され、軸線O2回りに相対回転しないようになっている。
【0021】
なお、軸筒部23の左端部23cと対向する左ボス部16の右端部には、左ボス部16の内径よりも拡径した拡径溝14bが形成され、この拡径溝14b内に軸筒部23の左端部23cが収容されている。また、軸筒部23の左端部23cと拡径溝14bは離間しており、隙間Sが形成されている。
【0022】
環状壁部24は、ギヤ部25を支持するための部位である。
環状壁部24の断面形状は、軸筒部23の外周面23aから径方向外側に向うにつれて左側に位置するように傾斜している。このため、環状壁部24の左側面24aと軸筒部23の外周面23aとの間には、断面視で略三角形状の空間(第1凹部31)が形成されている。なお、第1凹部31の詳細は後述する。
また、環状壁部24の外周面24bは、デフケース本体14の内周面14aと対向するとともに円弧状に形成されている。
【0023】
図3に示すように、ギヤ部25は、軸線O2を中心に周方向に配列された複数の歯25aにより構成されている。なお、図3の仮想線Mは、歯25aの内周部分(環状壁部24に隠れて視認できない部分)を示している。
【0024】
図2に示すように、補強リブ26は、環状壁部24の外周面24bからデフケース本体14の内周面14aに向って突出する断面略台形状のリブである。また、補強リブ26は、外周面24bの右端に位置している。
図3に示すように、補強リブ26は、軸線O2方向から視ると円形状を呈し、周方向に連続している。
【0025】
図2に示すように、ワッシャ27は、環状壁部24の外周面24bとデフケース本体14の内周面14aとの間に介在する環状の金属部品である。ワッシャ27の厚みは、補強リブ26の突出量よりも大きく、補強リブ26がデフケース本体14の内周面14aに当接(摺接)しないようになっている。
以上から、終減速装置1に動力が伝達されてデフケース11が軸線O2回りに回転する場合、左サイドギヤ21は、ギヤ部25が噛合しているデフピニオンギヤ13から左方へ離間するような荷重を受ける。このため、ワッシャ27は、環状壁部24の外周面24bに押圧されてデフケース本体14の内周面14aに押し付けられる。さらに、左サイドギヤ21がデフケース11に相対回転する場合、環状壁部24の外周面24bがワッシャ27に対し摺動したり、ワッシャ27がデフケース本体14の内周面14aに対し摺動したりする。言い換えると、外周面24bは、デフケース11に対して摺動する摺動部を構成している。尚、本実施例ではデフケース本体14の内周面14aと、外周面24bとの間に、ワッシャ27を設ける構成となっているが、本発明はワッシャ27を設けない構成としてもよい。
【0026】
凹部30は、環状壁部24の内部を肉抜きして成る空間であり、左方に開口する第1凹部31(図2参照)と、第1凹部31の内面からさらに右方に肉抜きして成る第2凹部32(図4参照)と、を備えている。
【0027】
図3に示すように、第1凹部31は、軸線O2方向を中心に周方向に連続しており、環状を呈している。
図2に示すように、第1凹部31の断面形状は、前記したように断面視で略三角形状に形成されている。第1凹部31の外周側を囲む外側周面31aは、環状壁部24の左側面24aにより構成され、開口31c側に向うにつれて径方向外側に位置するように傾斜している。第1凹部31の内周側を囲む内側周面31bは、軸筒部23の外周面23aにより構成されている。
また、軸筒部23の外周面23a(第1凹部31の内側周面31bを含む)は、軸線O2方向に平坦に形成されている。
【0028】
図3に示すように、第2凹部32は、軸線O2方向から視た場合、ギヤ部25の各歯25aと重なるように形成されている(図3の仮想線Mを参照)。
図4に示すように、第2凹部32は、第1凹部31の外側周面31a(環状壁部24の左側面24a)から右方に延びており、歯25aの内部を肉抜きして成る空間である。また、第2凹部32の断面形状は、略三角形状を呈している。
【0029】
次に潤滑油の流路について図5を参照しながら説明する。
左右輪の差回転により左ボス部16が軸線O2回りに回転すると、ハウジング4(図1参照)内から左ボス部16内に流入した潤滑油は、螺旋溝16aにより右側(左サイドギヤ21側)に案内される(矢印A1参照)。
左ボス部16の右開口から流出した潤滑油は、軸線O2の径方向外側に向う遠心力が作用して隙間S内に入り込み、デフケース本体14の内周面14aに到達する(矢印A2参照)。また、潤滑油には、引き続き遠心力が作用しているため、デフケース本体14の内周面14aに沿って径方向外側に移動する(矢印A3参照)。
【0030】
ここで、デフケース本体14の内周面14aと環状壁部24の外周面24aとの間には、ワッシャ27及び補強リブ26が介在し、流路が狭くなっている。よって、補強リブ26を超えてギヤ部25及びデフピニオンギヤ13に供給される潤滑油(矢印A4参照)の量が制限される。
この結果、ワッシャ27及び補強リブ26により堰き止められた潤滑油は、デフケース本体14の内周面14aと環状壁部24の左側面24aと軸筒部23の外周面23aとに囲まれる空間に滞り、第1凹部31内と第2凹部32内に貯留される。
【0031】
以上、第1実施形態によれば、第1凹部31により環状壁部24が肉抜きされ、一対のサイドギヤ20,20が従来のものよりも軽量化している。一方で、環状壁部24は、補強リブ26により強度が向上し、所定強度が確保されている。
また、第1凹部31には、潤滑油が貯留されている。このため、摺動部(環状壁部24の外周面24b)や、サイドギヤ20のギヤ部25とデフピニオンギヤ13との噛み合い箇所に潤滑油を継続して供給することができる。
【0032】
ギヤ部25の各歯25aのそれぞれは、第2凹部32により肉抜きされて中空になっており、一対のサイドギヤ20,20がさらに軽量化している。また、第2凹部32内に貯留する潤滑油は、各歯25aを内部から冷却することができ、冷却性能に優れる。
【0033】
図5に示すように、第1凹部31の外側周面31a(環状壁部24の左側面24a)は、第1凹部31の開口31c側に近づくにつれて径方向外側に位置するように傾斜している。よって、第1凹部31内に貯留する潤滑油は、遠心力が作用すると、外側周面31aに沿って開口31c側に移動する(図5の矢印B参照)。以上から、第1凹部31内に貯留される潤滑油は、積極的に摺動部(環状壁部24の外周面24b)に供給されるようになり、サイドギヤ20のギヤ部25とデフピニオンギヤ13との噛み合い箇所に潤滑油を継続して供給することができる。
【0034】
また、軸筒部23の外周面23aは平坦に形成されていることから、潤滑油が外周面23aに沿って右方に移動する場合であってもスムーズに移動し(図5の矢印C参照)、第1凹部31内に貯留するようになる。
【0035】
また、第1凹部31及び第2凹部32は、三角形状を呈していることから、製造時において第1凹部31及び第2凹部32を形成する金型を左方に抜き易く、製造が容易となる。
【0036】
(第2実施形態)
次に第2実施形態の差動装置110について説明する。
図6に示すように、差動装置110は、デフケース11と、ピニオンシャフト12と、一対のデフピニオンギヤ13(一方のみ図示)と、一対のサイドギヤ120(左サイドギヤ121のみ図示)と、一対のワッシャ27(一方のみ図示)と、を備えている。なお、デフケース11、ピニオンシャフト12、一対のデフピニオンギヤ13、13、並びに一対のワッシャ27については、第1実施形態で説明したため説明を省略する。
【0037】
左サイドギヤ121は、軸筒部23と、環状壁部24と、ギヤ部25と、補強リブ26と、凹部30(第1凹部31、第2凹部32)と、環状壁部24の左側面24aから左方に突出する複数のガイドリブ33と、を備えている。なお、軸筒部23、環状壁部24、ギヤ部25、補強リブ26、並びに凹部30(第1凹部31、第2凹部32)については第1実施形態で説明したため説明を省略する。
【0038】
ガイドリブ33は、第1凹部31の開口31c近傍まで突出している。
図7に示すように、ガイドリブ33は、軸線O2方向から視て、第2凹部32の間に位置し、径方向に延在している。このため、第1凹部31内の外周側は、複数のガイドリブ33により周方向に区画されている。
【0039】
ガイドリブ33は、軸線O2を中心に右回り方向(図7の矢印D1参照)を向く右側面33aと、左回り方向(図7の矢印D2参照)を向く左側面33bと、を備えている。
右側面33aは、軸線O2から径方向外側に向うにつれて左回り方向に位置するように傾斜している。また、左側面33bは、軸線O2から径方向外側に向うにつれて右回り方向に位置するように傾斜している。
【0040】
以上、第2実施形態によれば、左右輪の差回転によりデフケース11が軸線O2回りに回転すると、左サイドギヤ121も軸線O2回りに回転する。
ここで、ガイドリブ33が右回り方向(図7の矢印D1参照)に移動すると、ガイドリブ33間に貯留する潤滑油は、ガイドリブ33の右側面33aにより径方向外側に案内される(図7の矢印E1参照)。
また、ガイドリブ33が左回り方向(図7の矢印D2参照)に移動すると、ガイドリブ33間に貯留する潤滑油は、ガイドリブ33の左側面33bにより径方向外側に案内される(図7の矢印E2参照)。
以上から、左右輪の差回転が生じている場合において、摺動部(環状壁部24の外周面24b)に向って潤滑油が流れるようになり、サイドギヤ20のギヤ部25とデフピニオンギヤ13との噛み合い箇所に潤滑油が継続して供給される。
【0041】
(第3実施形態)
次に第3実施形態の差動装置210について説明する。
図8に示すように、差動装置210は、デフケース11と、ピニオンシャフト12と、一対のデフピニオンギヤ13(一方のみ図示)と、一対のサイドギヤ220(左サイドギヤ221のみ図示)と、一対のワッシャ27(一方のみ図示)を備えている。なお、デフケース11、ピニオンシャフト12、一対のデフピニオンギヤ13、13、並びに一対のワッシャ27については、第1実施形態で説明したため説明を省略する。
【0042】
左サイドギヤ221は、軸筒部223と、環状壁部24と、ギヤ部25と、補強リブ26と、第1凹部231(凹部230)と、を備えている。なお、環状壁部24、ギヤ部25、並びに補強リブ26については第1実施形態で説明したため説明を省略する。
【0043】
軸筒部223の外周面223aのうち第1凹部231の内周側を囲む部分(内側周面231b)は、右方に向うにつれて径方向外側に位置し傾斜している。このため、第1凹部231の断面形状は、略正三角形状となっている。
以上、第3実施形態によれば、隙間Sを通過した潤滑油に作用する遠心力が弱く、潤滑油が軸筒部223の外周面223aに沿って右方に移動しても、内側周面231bにより径方向外側に案内される(図8の矢印F参照)。よって、摺動部(環状壁部24の外周面24b)に向って潤滑油が流れ易くなり、サイドギヤ20のギヤ部25とデフピニオンギヤ13との噛み合い箇所に潤滑油が継続して供給される
【0044】
(第4実施形態)
次に第4実施形態の差動装置310について説明する。
図9に示すように、差動装置310は、デフケース11と、ピニオンシャフト12と、一対のデフピニオンギヤ313(一方のみ図示)と、一対のサイドギヤ20,20と、一対のワッシャ27,27と、を備えている。なお、デフケース11、ピニオンシャフト12、一対のサイドギヤ20、並びに一対のワッシャ27については、第1実施形態で説明したため説明を省略する。
【0045】
デフピニオンギヤ313は、軸線O3を中心とする円筒状の軸筒部323と、軸筒部323の外周面323aから突出する環状の環状壁部324と、サイドギヤ20と噛合するギヤ部325と、環状壁部324の外周面324bから突出する補強リブ326と、環状壁部324又はギヤ部325を肉抜きして成る凹部330と、を備えている。
【0046】
軸筒部324の外周面324aとデフケース本体14の内周面14aとの間には、摺接部材であるワッシャ327が介在している。
よって、サイドギヤ20がデフケース11に相対回転する場合、環状壁部324の外周面324bがワッシャ327に対し摺動したり、ワッシャ327がデフケース本体14の内周面14aに対し摺動したりする。
【0047】
凹部330は、環状壁部324の内部を肉抜きして成る空間であり、前方に開口する第1凹部331と、第1凹部331の内面からさらに後方に肉抜きして成る第2凹部322と、を備えている。
第1凹部331は、断面形状が略四角形状を呈しているとともに、軸線O3方向を中心に周方向に連続し、環状を呈している。
第2凹部332は、第1凹部331の底部からさらに後方に延びており、歯325aの内部を肉抜きしている。よって、第2凹部332は、軸線O3方向から視た場合、ギヤ部325の各歯325aと重なるように形成されている。
【0048】
次に、デフケース本体14の図示しない開口を介して、デフケース本体14の内部に流入した潤滑油の流路について説明する。
左右輪の差回転により差動装置310が軸線O2回りに回転すると、潤滑油に遠心力が作用し、潤滑油は、ピニオンシャフト12の外周面の図示しない溝部を通過して軸筒部323の前方側に流れる(矢印G1参照)。
また、デフケース本体14の内周面14aと環状壁部324の外周面324aとの間には、ワッシャ327及び補強リブ326が介在し、流路が狭くなっている。よって、補強リブ326を超えてギヤ部325に供給される潤滑油(矢印G2参照)の量が制限される。この結果、ワッシャ327及び補強リブ326により堰き止められた潤滑油は、第1凹部331内と第2凹部332内に貯留される。
【0049】
以上、第4実施形態によれば、第1凹部331により環状壁部324が肉抜きされ、一対のデフピニオンギヤ313が従来のものよりも軽量化している。一方で、環状壁部324は、補強リブ326により強度が向上し、所定強度が確保されている。また、第1凹部331には、潤滑油が貯留されている。このため、摺動部(環状壁部324の外周面324b)や、デフピニオンギヤ313のギヤ部325とサイドギヤ20との噛み合い箇所に潤滑油を継続して供給することができる。
【0050】
ギヤ部325の各歯325aのそれぞれは、第2凹部332により肉抜きされて中空になっており、一対のデフピニオンギヤ313がさらに軽量化している。また、第2凹部332内に貯留する潤滑油は、各歯325aを内部から冷却することができ、冷却性能に優れる。
【0051】
以上、各実施形態について説明したが、本発明における第1凹部の断面形状は、三角形状に限らず、半円形状や四角形状などでもよく、特に限定されない。また、本発明の凹部は、第1凹部のみから構成され、第2凹部を備えていなくてもよい。また、本発明における第1凹部の外側周面は、開口側に近づくにつれて径方向外側に傾斜する傾斜面でなくてもよい。
【0052】
また、第2実施形態のガイドリブ33は、両側面(右側面33a及び左側面33b)が傾斜面となっているが、本発明においては、両側面のうち少なくても一方が傾斜面となっているものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 終減速装置
10,110、210 差動装置
11 デフケース
12 ピニオンシャフト(シャフト)
13,313 デフピニオンギヤ(差動装置用ギヤ)
14 デフケース本体
15 フランジ
16 左ボス部
17 右ボス部
20,120,220 サイドギヤ(差動装置用ギヤ)
21,121,221 左サイドギヤ
22 右サイドギヤ
23,223,323 軸筒部
23a 外周面
24,324 環状壁部
24a 左側面
24b 外周面
25,325 ギヤ部
26,326 補強リブ
27,327 ワッシャ
30,230 凹部
31,231,331 第1凹部
31a,331a 外側周面
31b,231b 内側周面
31c 開口
32,332 第2凹部
33 ガイドリブ
33a 右側面
33b 左側面
L ドライブシャフト(シャフト)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9