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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-118495(P2020-118495A)
(43)【公開日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】原子炉の運転方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/00 20060101AFI20200710BHJP
【FI】
   G21C5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-8188(P2019-8188)
(22)【出願日】2019年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】日野 哲士
(72)【発明者】
【氏名】三輪 順一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】現行炉心から、燃料有効長の異なる燃料装荷する炉心への移行時において、炉心の熱的余裕を確保した炉心移行方法を提供する。
【解決手段】炉心に備える長尺燃料1から短尺燃料3に移行する際に、長尺燃料1を調整用燃料2(長尺燃料1と短尺燃料3の間の燃料有効長を持つ燃料)に置き換える工程を挟む。複数の第1燃料集合体を備える炉心にて運転する第1運転工程と、炉心から第1燃料集合体を取り出し、取り出した第1燃料集合体のあった位置に、第1燃料集合体より燃料有効長が短い第2燃料集合体を装荷して運転する第2運転工程と、炉心から第1燃料集合体または第2燃料集合体を取り出し、取り出した第1燃料集合体または第2燃料集合体のあった位置に、第2燃料集合体より燃料有効長が短い第3燃料集合体を装荷して運転する第3運転工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1燃料集合体を備える炉心にて運転する第1運転工程と、
前記炉心から前記第1燃料集合体を取り出し、取り出した前記第1燃料集合体のあった位置に、前記第1燃料集合体より燃料有効長が短い第2燃料集合体を装荷して運転する第2運転工程と、
前記炉心から前記第1燃料集合体または前記第2燃料集合体を取り出し、取り出した前記第1燃料集合体または前記第2燃料集合体のあった位置に、前記第2燃料集合体より燃料有効長が短い第3燃料集合体を装荷して運転する第3運転工程と、を有する原子炉の運転方法。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉の運転方法であって、
前記第1燃料集合体の燃料有効長が、前記第3燃料集合体の燃料有効長の2倍以上である原子炉の運転方法。
【請求項3】
請求項1に記載の原子炉の運転方法であって、
第2運転工程の実施により、炉心が備える燃料集合体が全て第2燃料集合体となる状態になった後に、前記第3運転工程を開始する開始する原子炉の運転方法。
【請求項4】
請求項1に記載の原子炉の運転方法であって、
3つ並んだ第1燃料集合体のうちの中央の第1燃料集合体を取り出して、取り出した前記第1燃料集合体のあった位置に前記第2燃料集合体を装荷して運転し、
残る2つの第1燃料集合体のうちの一方の第1燃料集合体を取り出して、取り出した前記第1燃料集合体のあった位置に前記第3燃料集合体を装荷して運転し、
残った第1燃料集合体を取り出して、取り出した前記第1燃料集合体のあった位置に前記第3燃料集合体を装荷して運転し、
前記第2燃料集合体を取り出して、取り出した前記第2燃料集合体のあった位置に前記第3燃料集合体を装荷して運転する原子炉の運転方法。
【請求項5】
請求項1に記載の原子炉の運転方法であって、
前記第1燃料集合体と前記第2燃料集合体の入れ替えを2回実施し、炉心が1つ以上の前記第1燃料集合体と2つの前記第2燃料集合体を備えた状態になった後に、前記第1燃料集合体と前記第3燃料集合体の入れ替えを開始する原子炉の運転方法。
【請求項6】
請求項1に記載の原子炉の運転方法であって、
前記第3燃料集合体の下部に装荷される核分裂性物質の装荷量が、前記第3燃料集合体の上部に装荷される核分裂性物質の装荷量よりも小さい原子炉の運転方法。
【請求項7】
請求項1に記載の原子炉の運転方法であって、
前記第2燃料集合体の燃料有効長と前記第3燃料集合体の燃料有効長との比が、前記第2燃料集合体のチャンネルボックス内の流路面積の2乗と前記第3燃料集合体のチャンネルボックス内の流路面積の2乗の比とほぼ等しい原子炉の運転方法。
【請求項8】
請求項7に記載の原子炉の運転方法であって、
前記第2燃料集合体に装荷される燃料棒の本数は、前記第3燃料集合体に装荷される燃料棒の本数よりも少ない原子炉の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は沸騰水型原子炉炉心の移行方法に係り、特に、現行の沸騰水型原子炉の炉心から、超ウラン元素の燃焼を主な目的として、現行の沸騰水型原子炉の燃料よりも有効長が短く、かつ燃料棒を密に配置した燃料を装荷した炉心への移行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在運転中の燃料集合体及び十字型制御棒を装荷している沸騰水型原子炉において燃料集合体内の燃料棒を三角格子稠密に配置するとともに、運転中にチャンネルボックス内でボイドを発生させることによって中性子スペクトルを硬化させた沸騰水型原子炉(以下、低減速スペクトル沸騰水型原子炉と称する)が特許文献1に提唱されている。
【0003】
低減速スペクトル沸騰水型原子炉では中性子スペクトルの硬化のため、冷却材である水(冷却水)の流量減少などの理由によりチャンネルボックス内のボイド率が増加した際に投入される反応度であるボイド反応度係数の負の絶対値が減少するという課題がある。これを解決するため、特許文献1の構成では燃料において核分裂性物質を装荷する高さ方向長さ(以下、燃料有効長)を現行燃料よりも短くした燃料(以下、短尺燃料)を用い、ボイド率が増加した際に軸方向の中性子漏洩を増大させることで負のボイド反応度係数を保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−66690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の炉心を実現するために、既設の沸騰水型原子炉に短尺燃料を装荷することが考えられる。このとき、既設の沸騰水型原子炉に既に装荷されている、相対的に燃料の長い現行燃料(以下、長尺燃料)を無駄にしない観点から、運転サイクル毎に長尺燃料を燃焼の進んだものから一部取り出し、代わりに短尺燃料を装荷していくことで、既設炉心に装荷される燃料を全て短尺燃料にすることが望ましい。ところが、長尺燃料と短尺燃料が混在する移行時には、炉心下部の燃料装荷量が炉心上部と比較し多くなるため、炉心下部の発熱量が極端に大きくなり、炉心の熱的余裕が小さくなる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、極端に異なる燃料有効長を有する燃料が炉心に混在するため生じる。そこで上記課題を解決するために、炉心に備える長尺燃料から短尺燃料に移行する際に、長尺燃料を調整用燃料(長尺燃料と短尺燃料の間の燃料有効長を持つ燃料)に置き換える工程を挟む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ある燃料有効長の燃料が装荷された炉心から、異なる燃料有効長の燃料が装荷された炉心へ移行する際に、炉心の熱的余裕の減少を緩和できる。これにより、長尺燃料が装荷された既設の沸騰水型原子炉から、超ウラン核種の燃焼を主な目的とした、短尺燃料を装荷した低減速スペクトル沸騰水型原子炉炉心に、安全性を確保しながら移行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】原子炉の運転方法の概念図である。
図2】ABWRの概略構成図である。
図3】長尺燃料の燃料集合体の概略構成図である。
図4】短尺燃料の燃料集合体の概略構成図である。
図5】調整用燃料の燃料集合体の概略構成図である。
図6図3〜5の燃料集合体が複数体装荷されるABWR炉心の概略構成図である。
図7】実施例1の移行炉心の燃料装荷パターンの説明図である。
図8】実施例1と比較例1の相対値を示す最大線出力密度のグラフである。
図9】実施例2と比較例2の相対値を示す最大線出力密度のグラフである。
図10】実施例3の調整用燃料の構成である。
図11】実施例3と比較例3の相対値を示す最大線出力密度のグラフである。。
図12】実施例3の調整用燃料の構成である。
図13】実施例4と比較例4の相対値を示す最大線出力密度のグラフである。
図14】その他の炉心の移行方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、燃料集合体及びそれを装荷する沸騰水型原子炉の炉心が適用される沸騰水型原子炉とは、再循環ポンプを備え冷却材として水(冷却水)を原子炉圧力容器外へ通流し再び原子炉圧力容器内のダウンカマへ流入させることで冷却水を循環させる通常の沸騰水型原子炉(Boiling Water Reactor:BWR)、インターナルポンプを備え冷却水を原子炉圧力容器内で循環させる改良型沸騰水型原子炉(Advanced Boiling Water Reactor:ABWR)、ABWRにおけるインターナルポンプを不要とする高経済性単純化沸騰水型原子炉(Economic Simplified Boiling Water Reactor:ESBWR)等を含む。
【0010】
以下では、移行前の炉心として混合酸化物(以下MOX)を用いた長尺燃料を全数装荷したABWRを、移行後の炉心として特許文献1に記載されているように、現行燃料の正方格子チャンネルボックス内に燃料棒を三角格子稠密に配置し、有効長が長尺燃料の半分である短尺燃料を装荷した炉心を、及び調整用燃料として燃料有効長が長尺燃料と短尺燃料との間である構成を例として説明する。なお、上述のように、本発明に係る燃料集合体および炉心は、横断面十字状の制御棒(十字型制御棒)を装荷する燃料集合体の体数が異なる他の沸騰水型原子炉にも適用可能である。
【0011】
図1に本実施形態に係る原子炉の運転方法の概念図を示す。第N運転サイクルの移行前炉心(現行炉心)は長尺燃料1の燃料集合体のみで構成する。第N+1運転サイクルの移行中炉心では、第N運転サイクルの現行炉心が備える複数の長尺燃料1の燃料集合体から1つの長尺燃料1の燃料集合体を取り出し、調整用燃料2の燃料集合体を装荷する。この工程を繰り返し、第N+2運転サイクルの移行中炉心では、第N+1運転サイクルの移行中炉心が備える複数の長尺燃料1の燃料集合体から1つの長尺燃料1の燃料集合体を取り出し、調整用燃料2の燃料集合体を装荷する。さらに、第N+3運転サイクルの移行中炉心では、第N+2運転サイクルの移行中炉心が備える最後の長尺燃料1の燃料集合体を取り出し、調整用燃料2の燃料集合体を装荷する。これにより、第N+3運転サイクルの移行中炉心は調整用燃料2の燃料集合体のみで構成するものとなる。
【0012】
第N+4運転サイクルの移行中炉心では、第N+3運転サイクルの移行中炉心が備える複数の調整用燃料2の燃料集合体から1つの調整用燃料2の燃料集合体を取り出し、短尺燃料3の燃料集合体を装荷する。この工程を繰り返し、第N+5運転サイクルの移行中炉心では、第N+4運転サイクルの移行中炉心が備える複数の調整用燃料2の燃料集合体から1つの調整用燃料2の燃料集合体を取り出し、短尺燃料2を装荷する。さらに、第N+6運転サイクルの移行後炉心では、第N+5運転サイクルの移行中炉心が備える最後の調整用燃料2の燃料集合体を取り出し、短尺燃料3の燃料集合体を装荷する。これにより、第N+6運転サイクル(図1ではN+mと示す)の移行後炉心は短尺燃料3の燃料集合体のみで構成するものとなる。
【0013】
このような移行方法の採用によって、燃料有効長が極端に異なる長尺燃料1の燃料集合体と短尺燃料3の燃料集合体が混在することによる炉心移行時の熱的余裕の減少を緩和する。
【実施例1】
【0014】
図2はABWRの概略構成図である。ABWRについて説明する。実施例1の燃料集合体(詳細後述する)が装荷される炉心を備えるABWR20は、原子炉圧力容器21内に円筒状の炉心シュラウド26を備える。炉心シュラウド26内に、複数体の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心22が設置されている。また、原子炉圧力容器21内には、気水分離器28、蒸気乾燥器29が設けられている。気水分離器28は、炉心22を覆うシュラウドヘッド30に取り付けられ、上方へと延伸する。蒸気乾燥器29は、気水分離器28の上方に配される。
【0015】
上部格子板24は、炉心シュラウド26の内部、シュラウドヘッド30の下方、かつ炉心22の上方に位置する。炉心支持板23は、炉心シュラウド26の内部、かつ炉心22の下方に位置する。複数の燃料支持金具25が炉心支持板23に設置されている。
【0016】
また、原子炉圧力容器21内には、燃料集合体の核反応を制御するため炉心22へ複数の横断面十字状の制御棒(図示せず)を挿入可能とする制御棒案内管32が設けられている。原子炉圧力容器21の底部より下方に設置された制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)内に制御棒駆動機構33を備え、制御棒は制御棒駆動機構33に連結されている。原子炉圧力容器21の底部には下鏡34が設けられ、下鏡34の下方より原子炉圧力容器21の内部へ貫通するよう複数のインターナルポンプ31が設置されている。
【0017】
複数のインターナルポンプ31は、複数の制御棒案内管32の最外周部より外側であって、環状に相互に所定の間隔にて離間し、複数台配されている。これにより、インターナルポンプ31は、制御棒案内管32等と干渉することはない。そして、各インターナルポンプ31のインペラが、円筒状の炉心シュラウド26と原子炉圧力容器21の内面との間に形成される環状のダウンカマ26の内部に設けられている。原子炉圧力容器21内の冷却材である水(冷却水)は、各インターナルポンプ31のインペラにより、ダウンカマ27を介して、下鏡34側から炉心22へ供給される。炉心22内に流入する冷却水は、燃料集合体(図示せず)の核反応により加熱され気液二相流となり、気水分離器28へ流入する。気水分離器28を通流する気液二相流は、湿分を含む蒸気(気相)と水(液相)に分離され、液相は再び冷却水としてダウンカマ27へ降下する。一方、蒸気(気相)は、蒸気乾燥器29へと導入され湿分が除去された後、主蒸気配管35を介してタービン(図示せず)へ供給される。復水器等を介して給水配管36より原子炉圧力容器21内に流入する冷却水は、ダウンカマ27内を下方へと通流する(降下する)。このように、インターナルポンプ31は、炉心22で発生する熱を効率良く冷却するため、冷却水を炉心22へ強制循環させる。
【0018】
図3は、炉心22に装荷される長尺燃料の燃料集合体の概略構成図(垂直方向の断面図と、水平方向の断面図)である。図3の右に示す燃料集合体300は、横断面が正方形のチャンネルボックス301の内部に、直径約10 mmの燃料棒302を74本、正方格子状に配置している。なお、各燃料棒302は上下両端部を上部タイプレート及び下部タイプレート(図示せず)にて、また、燃料棒302の途中を軸方向に一定間隔で離間する燃料スペーサー(図示せず)によって保持されている。チャンネルボックス301の内側には燃料棒302、および外径約34 mmの水ロッド303が配置されており、燃料棒302および水ロッド303の外側かつチャンネルボックスの内側領域は、水領域と呼ばれる減速材304で満たされている。チャンネルボックス301の外側にはギャップ水領域と呼ばれる飽和水305が設けられている。
【0019】
図3の左に示す燃料集合体301は軸方向の構成として燃料有効長約3.7mの燃料領域を有している。燃料棒302は、劣化ウランの酸化物或いは劣化ウランに核分裂プルトニウムを含む超ウラン核種を富化したMOXペレット(図示せず)を被覆管(図示せず)に充填している。
【0020】
図4は、炉心22に装荷される短尺燃料の燃料集合体の概略構成図(垂直方向の断面図と、水平方向の断面図)である。図4の右に示す燃料集合体400は、横断面が正方形のチャンネルボックス401の内部に243本の燃料棒402を三角稠密配置している。なお、各燃料棒402は上下両端部を上部タイプレート及び下部タイプレート(図示せず)にて、また、燃料棒402の途中を軸方向に一定間隔で離間する燃料スペーサー(図示せず)によって保持されている。チャンネルボックス401の外側には飽和水であるギャップ水領域403と十字型制御棒(横断面十字状の制御棒)404が挿入されている。以上の構成により、燃料に対して冷却水が占める割合を減らすことで、炉心22内の中性子スペクトルを硬化した(高エネルギー側にシフトした)低減速スペクトルBWRを実現している。また図4の左に示す燃料集合体400はMOXペレットを充填した燃料有効長約1.8mの燃料領域を有する。
【0021】
図5は、炉心22に装荷される調整用燃料の燃料集合体の概略構成図(垂直方向の断面図と、水平方向の断面図)である。図5の右に示す燃料集合体500は、横断面(水平断面)の構成が正方形のチャンネルボックス501の内部に燃料棒502を三角稠密配置している図4の構成と同じであるが、燃料有効長が約2.8mである点で図4の構成と異なる。燃料棒502は上下両端部を上部タイプレート及び下部タイプレート(図示せず)にて、また、燃料棒502の途中を軸方向に一定間隔で離間する燃料スペーサー(図示せず)によって保持されている。チャンネルボックス501の外側には飽和水であるギャップ水領域503と十字型制御棒504(横断面十字状の制御棒)が挿入されている。
【0022】
図6は、図3〜5に示す燃料集合体300、400、500が複数体装荷されるABWR炉心22の概略構成図(水平方向の断面図)である。炉心22に872体の燃料集合体601が正方格子状に装荷されており、最外周に配される複数体の燃料集合体601を除き、相互に隣接する4体の燃料集合体601は、十字型制御棒602を囲むよう炉心22に装荷されている。上述の図3〜5の右に示す燃料集合体300、400、500の概略構成図(水平断面図)は、上記4体の燃料集合体の内の1体の燃料集合体601を示している。図4図5の右に示すように、概略構成図(水平断面図)が正方形のチャンネルボックス401、チャンネルボックス501を構成する1つの角部で接続する2辺が、十字型制御棒602の2本のブレードと僅かな間隙を介して対向するよう炉心22に装荷されている。
【0023】
実施例1の炉心移行方法の効果を説明するため、比較例(図3の燃料集合体300を長尺燃料として全数装荷する炉心22から、図4の燃料集合体400を短尺燃料として装荷する炉心22へ移行する際に、長尺燃料から短尺燃料に直接置き換えて移行した場合)と、実施例1(図3の燃料集合体300を長尺燃料として全数装荷する炉心22から、図4の燃料集合体400を短尺燃料として装荷する炉心22へ移行する際に、いったん調整用燃料の燃料集合体500に置き換えた後、調整用燃料を短尺燃料に置き換えて移行した場合)について、熱的余裕を示す指標である最大線出力密度を比較する。
【0024】
図7は、実施例1の移行炉心の燃料装荷パターンの説明図である。水平断面を示すABWRの1/4炉心700の料体数(四角の枠で示す)は218である。四角内の数字「1」は滞在サイクル数1の燃料の装荷位置を示し、四角の中の数字「2」は滞在サイクル2の燃料の装荷位置を示し、四角内の数字「なし」は滞在サイクル数3以降の燃料の装荷位置を示す。ABWRの1/4炉心700は、滞在サイクル数1の燃料701の50体と、滞在サイクル数2の燃料702の50体を有する。なお、図7の燃料装荷パターンでは、出力の高い炉心中央部において滞在サイクル数1の燃料701と滞在サイクル数2の燃料702が隣接しないことを特徴としている。後述するように、滞在サイクル数2の燃料702には相対的に燃焼の進んでいない長尺燃料が装荷されており、滞在サイクル数1の燃料701の位置に短尺燃料を装荷した場合に、相対的に出力の高い長尺燃料の炉心下部の出力が増加することによる熱的余裕の減少を抑制するためである。
【0025】
次に、実施例1に係る炉心移行時の燃料交換方法について説明する。図7に示すABWRの1/4炉心700の運転サイクルが終了したタイミングで、滞在サイクル数の最も多い燃料を取り出す。次にその取り出した燃料の位置に、残った燃料の中で滞在サイクル数の最も多い燃料を移動する。なお、このとき、最初に取り出した滞在サイクル数の燃料の数よりも、次に移動すべき滞在サイクル数の燃料の数が多い場合には、移動すべき滞在サイクル数の燃料の中で燃焼が進んだものから順に取り出す。これを滞在サイクル数1の燃料まで繰り返す。すなわち、図7で四角内に「2」と示された滞在サイクル数2の燃料は滞在サイクル数3(図示せず)の燃料があった位置に移動し、四角内に「1」と示された滞在サイクル数1の燃料は図7で四角内に「2」と示された位置に移動する。そして、最後に調整用燃料を図7で四角内に「1」と示された滞在サイクル数1の燃料があった位置に装荷する。
【0026】
次に、実施例1の効果を示す。発明者らは、長尺燃料で構成する炉心から短尺燃料で構成する炉心への移行に際し、長尺燃料と短尺燃料が混在し、短尺燃料の存在により炉心軸方向出力が炉心下部で大きくなることで、移行炉心の熱的余裕の指標の一つである最大線出力密度が、長尺燃料側で小さくなることを見出した。炉心を短尺燃料で構成する場合には、短尺燃料がもともと炉心下部に相当する燃料有効長で出力を発生できるように、長尺燃料よりも燃料棒本数を多く設定している。しかし、長尺燃料では炉心下部に相当する燃料有効長で出力を発生することを想定していないため、炉心下部の出力分布の増加への対策はなく、長尺燃料と短尺燃料が混在すると熱的余裕が減少してしまう。
【0027】
こうした課題を鑑み、実施例1に係る発明の本質は、長尺燃料と短尺燃料の間の燃料有効長を有する調整用燃料を装荷することで、炉心下部の出力が極端に高くなることを防ぐことにある。なお、この調整用燃料による効果は長尺燃料集合体の燃料有効長が、短尺燃料集合体の燃料有効長の2倍以上となる場合に有効である。
【0028】
図8は、実施例1と比較例1の相対値を示す最大線出力密度のグラフである。実施例1の最大線出力密度Aは、長尺燃料を装荷した炉心22に対し、長尺燃料を全て調整用燃料と入れ替えた上で、調整用燃料を短尺燃料に入れ替えた炉心22に移行した場合の運転サイクル毎の最大線出力密度である。比較例1の最大線出力密度Bは、長尺燃料を装荷した炉心22に対し、長尺燃料を短尺燃料に入れ替えた炉心22に移行した場合の最大線出力密度である。図8の折れ線は、最大線出力密度Bに対する最大線出力密度Aの相対値である。移行第一サイクル、移行第二サイクル期間のいずれの期間においても相対値は1未満であり、実施例1に示す炉心移行方法を採用した原子炉の運転方法は、炉心の熱的余裕の減少の緩和の観点で効果が高いことが分かる。
【0029】
なお、本実施例では、長尺燃料を装荷した炉心から短尺燃料を装荷した炉心への移行方法を示したが、逆に短尺燃料を装荷した炉心から、長尺燃料を装荷した炉心への移行方法としても適用できる。
【実施例2】
【0030】
発明者らはさらに、長尺燃料の中でも、相対的に燃焼の進んでいない燃料で線出力密度が高くなり、これらの燃料の炉心下部での出力増加を抑制することが有効であることを見出した。すなわち、図8の移行第一サイクル、移行第二サイクルでは、最大線出力密度はそれぞれ滞在サイクル数2および3の長尺燃料で発生したものである。また、移行第3サイクル以降でも、残った長尺燃料で最大線出力密度が発生しているが、これら長尺燃料は滞在サイクル数が4以上となって燃料の出力自体が低下しているため、最大線出力密度の絶対値が低下し熱的余裕の観点からは問題がないことが分かった。この観点から実施例2では、実施例1において特に最大線出力密度の高くなる移行第一サイクルおよび移行第二サイクルのみ、取り出した長尺燃料の代わりに調整用燃料を装荷し、その後の運転サイクルでは取り出した長尺燃料の代わりに短尺燃料を装荷する。
【0031】
図9は、実施例2と比較例2の相対値を示す最大線出力密度のグラフである。実施例2の最大線出力密度Cは、長尺燃料を装荷した炉心22に対し、移行第一サイクルおよび移行第二サイクルだけ長尺燃料を調整用燃料と入れ替えた上で、その後は長尺燃料を短尺燃料に入れ替えた炉心22に移行した場合の運転サイクル毎の最大線出力密度である。比較例2の最大線出力密度Dは、長尺燃料を装荷した炉心22に対し、長尺燃料を短尺燃料に入れ替えた炉心22に移行した場合の最大線出力密度である。図8の折れ線は、最大線出力密度Dに対する最大線出力密度Cの相対値である。
【0032】
図9に示すように、移行第三サイクルまで最大線出力密度が低下している。なお、移行第四サイクルでは最大線出力密度が、調整用燃料を用いずに移行した場合と比較して同等あるいは高くなる時期があるが、既に短尺燃料に移行し、最大線出力密度の絶対値が小さくなり熱的余裕が相対的に大きくなっているため問題ない。
【0033】
実施例2によれば、実施例1と比較して、より少ない移行サイクル数で全て短尺燃料に取り換えることが可能となる。従って、短尺燃料を用いる本来の目的である超ウラン核種の燃焼を効果的に図ることができる。
【実施例3】
【0034】
発明者はさらに、図4の調整用燃料と長尺燃料が隣接する際、長尺燃料で最も出力が高い領域は調整用燃料の中央付近であることを見出した。調整用燃料の中央付近の位置は、長尺燃料の下端から約1mの位置であるため、調整用燃料を用いたとしても長尺燃料の出力は依然として下側に偏る傾向がある。このことから、図4の調整用燃料の構成を修正し、長尺燃料のより上領域で出力が大きくなるように調節することができれば、長尺燃料の炉心下部での出力増加をより効果的に抑制できる。この観点から実施例3では、実施例1の調整用燃料構成に対し、軸方向の核分裂性物質の装荷量を変更する。
【0035】
図10は、実施例3の調整用燃料の概略構成図(水平方向の断面図)である。図10の右側は調整用燃料の燃料集合体1000のチャンネルボックス1001、燃料棒10002、ギャップ水領域1003および制御棒1004は図5の構成と同じである。図10の左に燃料の軸方向の構成を示す。実施例3では、調整用燃料の燃料集合体1000の下端から約1.8mの領域で、プルトニウム富化度が13w%の燃料を、燃料の上端から約1mの領域でプルトニウム富化度が16w%の燃料構成とした。この構成により、調整用燃料の上部における出力を大きくし、それに伴い長尺燃料の炉心下部での出力増加を抑制できる。
【0036】
図11は、実施例3と比較例3の相対値を示す最大線出力密度のグラフである。実施例3の最大線出力密度Eは、図3の長尺燃料の燃料集合体300を全数装荷するABWRの炉心22から、図10の調整用燃料の燃料集合体1000を装荷した炉心へ移行する第一サイクルにおける最大線出力密度である。比較例3の最大線出力密度Fは、図3の長尺燃料の燃料集合体300を全数装荷するABWRの炉心22から、図5の調整用燃料の燃料集合体500を装荷した炉心へ移行する第一サイクルにおける最大線出力密度である。図11の折れ線は、最大線出力密度Fに対する最大線出力密度Eの相対値である。
【0037】
図11に示す通り、実施例3により、線出力が最も高くなる燃焼初期において、調整用燃料の燃料集合体1000を用いることで最大線出力密度を小さくすることができる。サイクル末期には調整用燃料の燃料集合体1000を用いた際には最大線出力密度が高くなるが、サイクル末期では最大線出力密度の絶対値が小さくなり熱的余裕が相対的に大きくなっているため問題ない。
【0038】
実施例3によれば、調整用燃料の軸方向の燃料構成を変える事で、炉心移行時の炉心下部における出力増加を抑制することができる。
【実施例4】
【0039】
発明者はさらに調整用燃料と短尺燃料の圧力損失の差に着目した。すなわち、調整用燃料は短尺燃料の燃料有効長を長くする構成となっているため、調整用燃料の圧力損失は、短尺燃料より大きくなる。圧力損失が大きくなると、その燃料内に配分される冷却水流量が少なくなり、熱的余裕を示す他の指標である限界出力比が小さくなるなどの課題が生じる可能性がある。そのため、調整用燃料には短尺燃料との圧力損失の違いを補正しつつ、炉心下部の出力増加を抑制する構成が望ましい。この観点から実施例4では、実施例1の調整用燃料構成に加え、調整用燃料内に配される燃料棒の数を少なくする。
【0040】
図12に実施例4で用いる調整用燃料の構成を示す。図12の右側は調整用燃料の燃料集合体1200の水平断面図を示しており、チャンネルボックス1201、燃料棒1202、ギャップ水領域1203および制御棒1204は図5の構成と同じである。燃料集合体1200に配される燃料棒の本数は、短尺燃料との圧力損失を合わせるため、流路面積(チャンネルボックス内側の面積から、燃料棒の占める面積を引いたもの)の2乗が、調整用燃料と短尺燃料の有効長の比となるよう、図5の燃料棒数から39本引いた204本としている。図12の左図は調整用燃料の軸方向構成を示しており、図5の調整用燃料と同じ燃料有効長である。
【0041】
図13は、実施例4と比較例4の相対値を示す最大線出力密度のグラフである。実施例4の最大線出力密度Gは、図3の長尺燃料の燃料集合体300を全数装荷するABWRの炉心22から、図12の調整用燃料の燃料集合体1200を装荷した炉心へ移行した場合の運転サイクル毎の最大線出力密度である。比較例4の最大線出力密度Hは長尺燃料を装荷した炉心22に対し、長尺燃料を短尺燃料に入れ替えた炉心22に移行した場合の運転サイクル毎の最大線出力密度である。図11の折れ線は、最大線出力密度Fに対する最大線出力密度Eの相対値である。
【0042】
図13では、移行時の炉心下部での出力増加が顕著である移行第一、第二および第三サイクルについて示している。図13に示す様に、長尺燃料を装荷した炉心から短尺燃料へ移行する移行第一サイクルから移行第三サイクル期間において、炉心の最大線出力密度が小さくなっている。
【0043】
実施例4によれば、調整用燃料の燃料棒本数を短尺燃料と異なるものにしたとしても、実施例1と同様に炉心移行時の炉心下部における出力増加を抑制することができる。
【実施例5】
【0044】
図14は、その他の炉心の移行方法である。3つ並んだ長尺燃料の燃料集合体のうちの中央の長尺燃料の燃料集合体を取り出して、取り出した長尺燃料の燃料集合体のあった位置に調整用燃料の燃料集合体を装荷して運転する。次に、残る2つの長尺燃料の燃料集合体のうちの一方の長尺燃料の燃料集合体を取り出して、取り出した長尺燃料の燃料集合体のあった位置に短尺燃料の燃料集合体を装荷して運転する。次に、残った長尺燃料の燃料集合体を取り出して、取り出した長尺燃料の燃料集合体のあった位置に短尺燃料の燃料集合体を装荷して運転する。次に、調整用燃料の燃料集合体を取り出して、取り出した調整用燃料集合体のあった位置に短尺燃料の燃料集合体を装荷して運転する。
【0045】
このように、2つの長尺燃料の燃料集合体の間に挟まれる位置にだけ調整用燃料の燃料集合体を配置することは、熱的余裕の抑制及び効率的な燃料集合体の入れ替えを考慮すると有効である。
【符号の説明】
【0046】
1…長尺燃料、2…調整用燃料、3…短尺燃料、20…ABWR、
21…原子炉圧力容器、22…炉心、23…炉心支持板、24…上部格子板
25…燃料支持金具、26…炉心シュラウド、27…ダウンカマ、
28…気水分離器、29…蒸気乾燥器、30…シュラウドヘッド、
31…インターナルポンプ、32…制御棒案内管、33…制御棒駆動機構、34…下鏡、
35…主蒸気配管、36…給水配管、
300…燃料集合体、301…チャンネルボックス、302…燃料棒、
303…水ロッド、304…減速材、305…飽和水、
400…燃料集合体、401…チャンネルボックス、402…燃料棒、
403…飽和水、404…制御棒、
500…燃料集合体、501…チャンネルボックス、502…燃料棒、
503…飽和水、504…制御棒
601…燃料集合体、602…十字型制御棒、
700…ABWRの1/4炉心、701…滞在サイクル数1の燃料、
702…滞在サイクル数2の燃料、703…滞在サイクル数3以上の燃料、
1000…燃料集合体、1001…チャンネルボックス、
1001…燃料棒、1003…飽和水、1004…制御棒、
1200…燃料集合体、1201…チャンネルボックス、
1201…燃料棒、1203…飽和水、1204…制御棒、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14