【実施例】
【0172】
実施例1.Tenconライブラリの構築
Tencon(配列番号1)は、ヒトテナシン−Cからの15個のFN3ドメインのコ
ンセンサス配列から設計された、免疫グロブリン様足場構造のフィブロネクチンIII型
(FN3)ドメインである(Jacobs et al.,Protein Engin
eering,Design,and Selection,25:107〜117,2
012;米国特許出願公開第2010/0216708号)。Tenconの結晶構造は
、7個のβ鎖をつなぐ6回表面露出ループを示す。これらのループ又は各ループ内の選択
された残基を無作為化して、フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのライブラリ
を構築することができ、このライブラリを用いて特異的標的に結合する新規分子を選択す
ることができる。
【0173】
Tencon
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESE
KVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHR
SNPLSAEFTT(配列番号1)
【0174】
TCL1ライブラリの構築
Tencon(配列番号1)のFGループのみを無作為化するように設計されたライブ
ラリTCL1を、cisディスプレイシステムで用いるために構築した(Jacobs
et al.,Protein Engineering,Design,and Se
lection,25:107〜117,2012)。このシステムにおいて、Tacプ
ロモーター、Tenconライブラリコード配列、RepAコード配列、cisエレメン
ト、及びoriエレメントの配列を組み入れる一本鎖DNAを作製する。インビトロ転写
/翻訳系で発現させると、それがコードされるDNAに対してcisで結合したTenc
on−RepA融合タンパク質の複合体が産生される。次に、標的分子に結合する複合体
を単離して、以下に記述されるようにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅する
。
【0175】
cisディスプレイで用いるためのTCL1ライブラリの構築は、PCRの連続ラウン
ドによって得られ、最終的に直鎖状の二本鎖DNA分子が二等分して産生された;5’断
片は、プロモーターとTencon配列とを含むが、3’断片はrepA遺伝子とcis
及びoriエレメントとを含む。これらの二等分分子を制限酵素消化によって結合させて
、完全な構築物を産生する。TCL1ライブラリは、TenconのFGループ、KGG
HRSN(配列番号86)のみに無作為アミノ酸を組み入れるように設計された。このラ
イブラリの構築にNNSコドンを用い、それによって20個全てのアミノ酸と1つの終止
コドンがFGループにおそらく組み入れられた。TCL1ライブラリは、多様性を更に増
加させるために、それぞれが異なる長さの、7〜12残基の無作為化FGループを有する
、6個の個別のサブライブラリを含む。Tenconに基づくライブラリの設計を表2に
示す。
【0176】
【表2】
*TAPDAAFD:配列番号1の残基22〜28
**KGGHRSN:配列番号86
Xは、NNSコドンによってコードされる縮重アミノ酸を指す。
#は、本文に記述される「設計されたアミノ酸分布」を指す。
【0177】
TCL1ライブラリを構築するために、連続ラウンドのPCRを行ってTacプロモー
ターを付加して、FGループに縮重を作製し、最終的なアセンブリのために必要な制限部
位を付加した。第一に、FGループの5’でプロモーター配列及びTencon配列を含
むDNA配列を、2段階のPCRによって作製した。完全なTencon遺伝子配列に対
応するDNAをPCR鋳型として、プライマーPOP2220(配列番号2)及びTC5
’toFG(配列番号3)と共に用いた。この反応から得られたPCR産物を、プライマ
ー130mer(配列番号4)及びTc5’toFGと共に次のラウンドのPCR増幅の
鋳型として用いて、Tenconに対する5’及びプロモーターの付加を完了した。次に
、第一段階で産生されたDNA産物を縮重ヌクレオチドを含むフォワードプライマーPO
P2222(配列番号5)、及びリバースプライマーTCF7(配列番号6)、TCF8
(配列番号7)、TCF9(配列番号8)、TCF10(配列番号9)、TCF11(配
列番号10)、又はTCF12(配列番号11)によって、増幅することによって、多様
性をF:Gループに導入した。PCRサイクルを最少にして、ライブラリの多様性を最大
にするために、それぞれのサブライブラリに関して、100μLのPCR反応を少なくと
も8回実施した。このPCR産物少なくとも5μgを、ゲル精製して、プライマーPOP
2222(配列番号5)及びPOP2234(配列番号12)による次のPCR段階に用
い、Tencon配列の3’末端に6×Hisタグ及びNotI制限部位が付加された。
このPCR反応は、わずか15回のPCRサイクル及び鋳型DNA少なくとも500ng
を用いて行われた。得られたPCR産物をゲル精製して、NotI制限酵素によって消化
して、Qiagenカラムで精製した。
【0178】
ライブラリの3’断片は、PspOMI制限部位、repA遺伝子のコード領域、並び
にcis及びoriエレメントを含む、ディスプレイのためのエレメントを含む一定のD
NA配列である。PCR反応は、M13フォワードプライマー及びM13リバースプライ
マーと共にこのDNA断片を含むプラスミド(pCR4Blunt)(Invitrog
en)を用いて行った。得られたPCR産物を、PspOMIで終夜消化して、ゲル精製
した。ライブラリDNAの5’部分をrepA遺伝子を含む3’DNAにライゲートする
ために、5’DNAの2pmolを、NotI及びPspOMI酵素並びにT4リガーゼ
の存在下で3’repA DNAの等モル量にライゲートした。37℃で終夜ライゲーシ
ョン後、ライゲートしたDNAの少量をゲルに載せてライゲーション効率をチェックした
。ライゲートしたライブラリ産物を、12のPCR増幅に分けて、プライマー対POP2
250(配列番号13)及びDidLigRev(配列番号14)を用いて12サイクル
のPCR反応を行った。TCL1ライブラリの各サブライブラリに関するDNAの収率は
、32〜34μgの範囲であった。
【0179】
ライブラリの品質を評価するために、ワーキングライブラリの少量を、プライマーTc
on5new2(配列番号15)及びTcon6(配列番号16)によって増幅して、リ
ガーゼ非依存的クローニングにより改変pETベクターにおいてクローニングした。プラ
スミドDNAをBL21−GOLD(DE3)コンピテント細胞(Stratagene
)に形質転換して、無作為に採取したコロニー96個をT7プロモータープライマーを用
いてシークエンシングした。同一の配列は認められなかった。全体的に、フレームシフト
変異を有することなく完全なプロモーター及びTenconコード配列を有したのは、ク
ローンのおよそ70〜85%であった。終止コドンを有するクローンを除く機能的配列の
割合は、59%〜80%であった。
【0180】
TCL2ライブラリの構築
TenconのBC及びFGループの両方が無作為化されて、それぞれの位置でのアミ
ノ酸の分布が厳密に制御されているTCL2ライブラリを構築した。表3は、TCL2ラ
イブラリにおける所望のループ位置でのアミノ酸分布を示す。設計されたアミノ酸分布は
2つの目的を有した。第一に、ライブラリを、Tencon結晶構造の解析及び/又はホ
モロジーモデリングに基づいて、Tenconのフィールディング及び安定性にとって構
造的に重要となると予測される残基に向けて偏らせた。例えば、29番目の位置は、Te
nconが折り畳まれた際に疎水性コアの中に埋もれることから、疎水性アミノ酸のサブ
セットのみとなるように固定した。第二の設計は、高親和性結合体を効率よく産生するた
めに、抗体の重鎖HCDR3に選択的に認められる残基の分布となるようにアミノ酸分布
を偏らせることを含んだ((Birtalan et al.,J Mol Biol
377:1518〜28,2008;Olson et al.,Protein Sc
i 16:476〜84,2007)。この目標に向かって、表3の「設計された分布」
は、以下の分布を指す:6%アラニン、6%アルギニン、3.9%アスパラギン、7.5
%アスパラギン酸、2.5%グルタミン酸、1.5%グルタミン、15%グリシン、2.
3%ヒスチジン、2.5%イソロイシン、5%ロイシン、1.5%リジン、2.5%フェ
ニルアラニン、4%プロリン、10%セリン、4.5%トレオニン、4%トリプトファン
、17.3%チロシン、及び4%バリン。この分布には、メチオニン、システイン、及び
終止コドンが含まれない。
【0181】
【表3】
*残基の番号は、配列番号1のTencon配列に基づく。
【0182】
TCL2ライブラリの5’断片は、プロモーターと、ライブラリのプールとして化学合
成された(Sloning Bioltechnology)Tencon(配列番号1
)のコード配列とを含んだ。このDNAプールは、少なくとも1×10
11個の異なるメ
ンバーを含んだ。RepAとのライゲーションのために、断片の末端で、BsaI制限部
位を設計に含めた。
【0183】
ライブラリの3’断片は、6×Hisタグ、repA遺伝子のコード領域、及びcis
エレメントを含む、ディスプレイのためのエレメントを含む一定のDNA配列であった。
DNAを、既存のDNA鋳型(上記)及びプライマーLS1008(配列番号17)及び
DidLigRev(配列番号14)を用いて、PCR反応によって調製した。完全なT
CL2ライブラリをアセンブルするために、BsaI消化5’TenconライブラリD
NAの全体で1μgを、同じ酵素による制限消化によって調製した3’断片3.5μgに
ライゲートした。終夜ライゲーションの後、DNAをQiagenカラムによって精製し
て、260nmでの吸光度を測定することによってDNAを定量した。ライゲートしたラ
イブラリ産物を、プライマー対POP2250(配列番号13)及びDidLigRev
(配列番号14)を用いて12サイクルのPCR反応によって増幅した。それぞれがライ
ゲートしたDNA産物50ngを鋳型として含む、全体で72回の反応を行った。TCL
2ワーキングライブラリDNAの総収率は、約100μgであった。ライブラリTCL1
に関して先に記述したように、少量のワーキングライブラリをサブクローニングして、シ
ークエンシングした。同一の配列は認められなかった。フレームシフト変異を有すること
なく完全なプロモーター及びTenconコード配列を含んだのは、配列の約80%であ
った。
【0184】
TCL14ライブラリの構築
上部(BC、DE、及びFG)及び下部(AB、CD、及びEF)ループ、例えば、F
N3ドメインにおける報告された結合表面は、FN3構造の中心を形成するβ鎖によって
分離される。ループのみによって形成された表面とは異なる形状を有するFN3ドメイン
の2つの「側面」に存在する代替表面を、FN3ドメインの1つの側面で2つの逆平行β
鎖、すなわちC鎖とFβ鎖、及びCDループとFGループによって形成して、本明細書に
おいて以降C−CD−F−FG表面と呼ぶ。
【0185】
Tenconの代替表面を無作為化するライブラリは、
図4に示されるように、C鎖と
F鎖の表面露出残基並びにCD及びFGループの一部を無作為に選択することによって作
製した。Tencon(配列番号1)と比較して以下の置換を有するTencon変種、
Tencon27(配列番号99)を用いて、ライブラリを作製した:E11R、L17
A、N46V、E86I。このライブラリを構築するために用いた方法の詳細な記述は、
米国特許出願第13/852,930号に記述される。
【0186】
実施例2:EGFRに結合してEGF結合を阻害するフィブロネクチンIII型(FN
3)ドメインの選択
ライブラリのスクリーニング
cisディスプレイを用いて、TCL1及びTCL2ライブラリからEGFR結合ドメ
インを選択した。IgG1 Fcに融合したEGFRの組み換え型ヒト細胞外ドメイン(
R&D Systems)を、標準的な方法を用いてビオチニル化して、これをパニング
のために用いた(配列番号73の完全長EGFRの25〜645番目の残基)。インビト
ロ転写及び翻訳(ITT)に関して、ライブラリDNA 2〜6μgを0.1mM co
mpleteアミノ酸、1×S30プレミクス成分、及びS30抽出物(Promega
)30μLと共に全量100μL中で30℃でインキュベートした。1時間後、ブロッキ
ング溶液(2%ウシ血清アルブミン、100μg/mLニシン精子DNA、及び1mg/
mLヘパリンを添加したPBS、pH7.4)
450μLを添加して、反応を氷中で15
分間インキュベートした。EGFR−Fc:EGF複合体は、ブロッキング溶液中で組み
換え型ヒトEGF(R&D Systems)とビオチニル化組み換え型EGFR−Fc
とを、室温で1時間混合することによって、EGFR対EGFのモル比1:1及び10:
1でアセンブルされた。結合に関して、ブロックされたITT反応物500μLをEGF
R−Fc:EGF複合体100μLと混合して、室温で1時間インキュベートした後、結
合した複合体をニュートラアビジン又はストレプトアビジン磁気ビーズによって吸引した
。非結合ライブラリメンバーを、PBST及びPBSで連続的に洗浄することによって除
去した。洗浄後、65℃に10分間加熱することによって、結合した複合体からDNAを
溶出させ、PCRによって増幅し、更なるパニングラウンドのために制限酵素消化及びラ
イゲーションによってRepAをコードするDNA断片に結合させた。各ラウンドにおい
て、標的EGFR−Fcの濃度を200nMから50nMへと連続的に低下させて、洗浄
のストリンジェンシーを増加させることによって、高親和性結合体を単離した。ラウンド
4及び5において、非結合及び弱く結合したFN3ドメインを、PBS中で10倍モル過
剰量の非ビオチニル化EGFR−Fcの存在下で終夜洗浄することによって除去した。
【0187】
パニング後、選択したFN3ドメインをオリゴTcon5new2(配列番号15)及
びTcon6(配列番号16)を用いてPCRによって増幅し、リガーゼ非依存的クロー
ニングサイトを含めるように改変されたpETベクターにサブクローニングして、標準的
な分子生物学技術を用いて大腸菌において可溶性で発現させるためにBL21−GOLD
(DE3)(Stratagene)細胞に形質転換した。精製及び検出を可能にするた
めに、C−末端ポリヒスチジンタグをコードする遺伝子配列を、各FN3ドメインに付加
した。1mLの96ウェルブロックにおいて、100μg/mLカルベニシリンを添加し
た2YT培地中で、培養物を37℃で吸光度が0.6〜0.8となるまで増殖させた後、
IPTGを1mMとなるように添加し、その時点で温度を30℃に低下させた。およそ1
6時間後に細胞を遠心沈降させて回収し、−20℃で凍結した。各ペレットをBugBu
ster(登録商標)HT溶解緩衝液(Novagen EMD Bioscience
s)0.6mL中で、室温で45分間振とうさせながらインキュベートすることによって
細胞溶解物を得た。
【0188】
細胞上でEGFRに結合するFN3ドメインの選択
より生理的な意味で異なるFN3ドメインのEGFR結合能を評価するために、そのA
431細胞結合能を測定した。A431細胞(American Type Cultu
re Collection,カタログ番号CRL−1555)は、約2×10
6個の受
容体/細胞でEGFRを過剰発現する。細胞を不透明な黒色96ウェルプレートに5,0
00個/ウェルで播種して、37℃の湿潤5% CO
2環境で終夜接着させた。FN3ド
メイン発現細菌溶解物をFACS染色緩衝液(Becton Dickinson)中で
1,000倍希釈して、同じプレートを3枚作製して室温で1時間インキュベートした。
溶解物を除去して、細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液によって3回洗浄
した。細胞を、FACS染色緩衝液中で1:100に希釈した抗ペンタHis−Alex
a 488抗体コンジュゲート(Qiagen)50μL/ウェルと共に室温で20分間
インキュベートした。細胞を150μL/ウェルのFACS染色緩衝液によって3回洗浄
した後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを満たし、Acumen eX3リーダ
ーを用いて488nmで蛍光を読み取った。FN3ドメインを含む細菌溶解物を、そのA
431細胞結合能に関してスクリーニングし(TCL1及びTCL2ライブラリに関して
1320個の粗細菌溶解物)、結合がバックグラウンドシグナルより10倍以上高い陽性
クローンが516個同定された。TCL14ライブラリからの溶解物300個を、結合に
関してスクリーニングし、EGFRに結合する独自のFN3ドメイン配列58個が得られ
た。
【0189】
細胞上でEGFRに対するEGF結合を阻害するFN3ドメインの選択
EGFR結合の作用機序の特徴をよりよく調べるために、同定された様々なFN3ドメ
インクローンのEGFR結合能を、A431細胞を用いてEGF競合的に測定し、A43
1結合アッセイスクリーニングと同時に行った。A431細胞を不透明な黒色96ウェル
プレートに5,000個/ウェルで播種して、37℃の湿潤5% CO
2環境で終夜接着
させた。細胞を、50μL/ウェルの1:1,000倍希釈した細菌溶解物と共に、同じ
プレートを3枚作製して室温で1時間インキュベートした。ビオチニル化EGF(Inv
itrogen、カタログ番号E−3477)を、最終濃度30ng/mLとなるように
各ウェルに添加して、室温で10分間インキュベートした。細胞を、150μL/ウェル
のFACS染色緩衝液によって3回洗浄した。細胞を、FACS染色緩衝液中で1:10
0に希釈したストレプトアビジン−フィコエリスリンコンジュゲート(Invitrog
en)50μL/ウェルと共に室温で20分間インキュベートした。細胞を150μL/
ウェルのFACS染色緩衝液によって3回洗浄した後、ウェルにFACS染色緩衝液10
0μLを満たし、Acumen eX3リーダーを用いて600nmで蛍光を読み取った
。
【0190】
FN3ドメインを含む細菌溶解物を、上記のEGF競合アッセイにおいてスクリーニン
グした。TCL1及びTCL2ライブラリに関して1320個の粗細菌溶解物をスクリー
ニングして、EGF結合を50%超阻害する陽性クローンを451個同定した。
【0191】
同定されたFN3ドメイン結合EGFRの発現及び精製
HisタグFN3ドメインを His MultiTrap(商標)HPプレート(G
E Healthcare)によって澄明化大腸菌溶解物から精製して、20mMリン酸
ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、及び250mMイミダゾールを含むpH7.4
の緩衝液で溶出した。精製試料を、PD MultiTrap(商標)G−25プレート
(GE Healthcare)を用いる分析のために、pH7.4のPBSに交換した
。
【0192】
サイズ排除クロマトグラフィー分析
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、EGFRに結合するFN3ドメインの凝集状
態を決定した。各精製FN3ドメインのアリコート(10μL)をSuperdex 7
5 5/150カラム(GE Healthcare)に流速0.3mL/分でpH7.
4のPBSを移動相として注入した。カラムからの溶出を、280nmの吸光度によって
モニターした。SECによって高レベルの凝集を示したセンチリンを更なる分析から除外
した。
【0193】
EGFR−Fcからの選択されたEGFR結合FN3ドメインのオフレート
選択したEGFR結合FN3ドメインをスクリーニングして、高親和性結合体の選択を
容易にするために、ProteOn XPR−36機器(BioRad)においてEGF
R−Fcに対する結合の遅いオフレート(k
off)を示すドメインを同定した。ヤギ抗
ヒトFc IgG(R&D Systems)を、チップ上の水平方向の6本全てのリガ
ンド流路において5μg/mLの濃度で、0.005% Tween−20を含むPBS
中で流速30μL/分でアミンカップリング(pH5.0)によって直接固定した。固定
密度は、平均で約1500応答単位(RU)であり、異なる流路間の変動は5%未満であ
った。EGFR−Fcは、垂直のリガンド方向で、密度およそ600RUで抗ヒトFc
IgG表面上で捕捉された。試験したFN3ドメインを全て、1μMの濃度に標準化して
、その水平方向の結合に関して試験した。スクリーニングの処理能力を最大にするために
、FN3ドメインに関して6本全てのアナライト流路を用いた。解離相を、100μL/
分の流速で10分間モニターした。スポット間結合シグナルを、アナライトと固定された
IgG表面との間の非特異的結合をモニターするための参照として用いて、すべての結合
反応から差し引いた。処理された結合データを1:1の単純なラングミュア結合モデルに
局所的にフィットさせて、捕捉されたEGFR−Fcに対するそれぞれのFN3ドメイン
の結合のk
offを引き出した。
【0194】
EGF刺激EGFRリン酸化の阻害
精製EGFR結合FN3ドメインを、A431細胞におけるEGFRのEGF刺激リン
酸化の阻害能に関して1つの濃度で試験した。EGFRのリン酸化を、EGFR pho
spho(Tyr1173)キット(Meso Scale Discovery)を用
いてモニターした。細胞を、透明な96ウェル組織培養処置プレート(Nunc)におい
て10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco)と共にGlutamax(商標)を含む
RPMI培地(Gibco)100μL/ウェル中で20,000個/ウェルで播種し、
37℃の湿潤5% CO
2環境で終夜接着させた。培養培地を完全に除去して、細胞を3
7℃の湿潤5% CO
2環境で、FBSを含まない培地100μL/ウェル中で終夜枯渇
させた。次に、細胞を、湿潤5% CO
2環境で、濃度2μMのEGFR結合FN3ドメ
インを含む予め加温した(37℃)枯渇培地100μL/ウェルによって37℃で1時間
処置した。対照は、枯渇培地のみで処置した。最終濃度が50ng/mL EGFとなる
ように100ng/mL組み換え型ヒトEGF(R&D Systems、カタログ番号
236−EG)及び1μM EGFR結合FN3ドメインを含む予め加温した(37℃)
枯渇培地100μL/ウェルを添加して軽く混合し、37℃、5% CO
2で15分間イ
ンキュベートすることにより、細胞を刺激した。一組の対照ウェルは、陰性対照として刺
激しないままであった。培地を完全に除去して、細胞を、Complete溶解緩衝液(
Meso Scale Discovery)100μL/ウェルによって、製造元の指
示に従って、室温で振とうさせながら10分間溶解した。1173番目のチロシンでリン
酸化されたEGFRを測定するように構成されたアッセイプレート(Meso Scal
e Discovery)を、製造元の指示に従って提供されたブロッキング溶液によっ
て室温で1.5〜2時間ブロックした。プレートを、1X Tris洗浄緩衝液(Mes
o Scale Discovery)200μL/ウェルによって4回洗浄した。細胞
溶解物のアリコート(30μL/ウェル)をアッセイプレートに移し、これをプレート密
封フィルム(VWR)で覆い、振とうさせながら室温で1時間インキュベートした。アッ
セイプレートをTris洗浄緩衝液200μL/ウェルで4回洗浄した後、氷冷検出抗体
溶液(Meso Scale Discovery)25μLを、気泡を入れないように
注意して各ウェルに添加した。プレートを振とうさせながら室温で1時間インキュベート
した後、Tris洗浄緩衝液200μL/ウェルによって4回洗浄した。読み取り緩衝液
(Meso Scale Discovery)150μL/ウェルを添加して、製造元
がインストールしたアッセイ特異的デフォルト設定を用いてSECTOR(登録商標)I
mager 6000機器(Meso Scale Discovery)で読み取るこ
とにより、シグナルを検出した。EGF刺激陽性対照シグナルの%阻害を、各EGFR結
合FN3ドメインに関して計算した。
【0195】
EGF刺激EGFRリン酸化の阻害を、TCL1及びTCL2ライブラリから同定され
た232個のクローンに関して測定した。これらのクローンのうち22個が、1μMの濃
度でEGFRのリン酸化を50%以上阻害した。発現が不良であるか、又はサイズ排除ク
ロマトグラフィーにより多量体であると判断されたクローンを除去した後、クローン9個
を、更に物理学的に特徴を調べるために先に進めた。これらのクローンのBC及びFGル
ープ配列を表4に示す。選択された9個のクローン中8個が、共通のFGループ配列(H
NVYKDTNMRGL;配列番号95)を有し、いくつかのクローンではそのBCルー
プ配列に有意な類似性領域が認められた。
【0196】
【表4】
【0197】
実施例3:EGF結合を阻害するEGFR結合FN3ドメインの特徴づけ
大規模発現、精製、及びエンドトキシンの除去
表4に示された9個のFN3ドメインを、詳細な特徴づけのためにより多くの材料を提
供するよう規模を拡大した。各EGFR結合FN3ドメイン変種を含む終夜培養物を用い
て、終夜培養物を1/80希釈して100μg/mLアンピシリンを添加したTerri
ficブロス培地0.8Lを新しい培地に接種して、振とうさせながら37℃でインキュ
ベートした。600nmでの吸光度が約1.2〜1.5に達すると、IPTGを最終濃度
1mMとなるように添加することによって培養物を誘導し、温度を30℃に低下した。4
時間後、遠心沈降によって細胞を回収して、細胞沈降物を必要となるまで−80℃で保存
した。
【0198】
細胞溶解に関して、融解した沈降物を、25U/mL Benzonase(登録商標
)(Sigma−Aldrich)及び1kU/mL rLysozyme(商標)(N
ovagen EMD Biosciences)を添加した1X BugBuster
(登録商標)に、沈降物1グラムあたりBugBuster(登録商標)5mLの割合で
浮遊させた。軽く撹拌しながら、溶解を室温で1時間進行させた後、4℃、56,000
×gで50分間遠心沈降させた。上清を回収して0.2μmのフィルターで濾過した後、
GE Healthcare AKTAexplorer 100sクロマトグラフィー
システムを用いて、緩衝液A(50mM Tris−HCl pH7.5、500mM
NaCl、10mMイミダゾール)によって予め平衡にした5mL HisTrap F
Fカラムにロードした。カラムを、カラム容積の20倍の緩衝液Aによって洗浄し、カラ
ム容積の6倍量の16%緩衝液B(50mM Tris−HCl pH7.5、500m
M NaCl、250mMイミダゾール)によって更に洗浄した。FN3ドメインを、カ
ラム容積の10倍量の50% Bによって溶出した後、カラム容積の6倍量の50〜10
0% Bの勾配によって溶出した。FN3ドメインタンパク質を含む分画をプールしてM
illipore 10K MWCO濃縮器を用いて濃縮し、濾過後、PBSで予め平衡
にしたHiLoad(商標)16/60 Superdex(商標)75カラム(GE
Healthcare)にロードした。サイズ排除カラムから溶出したタンパク質単量体
のピークは保持された。
【0199】
エンドトキシンは、ActiClean Etox樹脂(Sterogene Bio
separations)によるバッチアプローチを用いて除去した。エンドトキシンの
除去前に、樹脂を1N NaOHによって37℃で2時間(又は4℃で終夜)前処置し、
pH試験紙によって測定してpHが約7で安定化するまで、PBSによって十分に洗浄し
た。精製タンパク質を、0.2μmフィルターで濾過したのち、Etox樹脂1mLをタ
ンパク質10mL対樹脂1mLの比率で添加した。樹脂に対するエンドトキシンの結合を
、軽く回転させながら室温で少なくとも2時間進行させた。樹脂を、500×gで2分間
の遠心沈降によって除去して、タンパク質上清を保持した。エンドトキシンレベルを、E
ndoSafe(登録商標)−PTS(商標)カートリッジを用いて測定し、EndoS
afe(登録商標)−MCSリーダー(Charles River)で分析した。エン
ドトキシンレベルが、最初のEtox処置後に5EU/mgを超える場合、エンドトキシ
ンレベルが5EU/mg以下に減少するまで上記の技法を繰り返した。エンドトキシンレ
ベルが5EU/mgを超え、Etoxによる2回連続の処置後に安定化された場合、残り
のエンドトキシンを除去するために、そのタンパク質に関する陰イオン交換又は疎水性相
互作用クロマトグラフィーの条件が確立された。
【0200】
選択されたEGFR結合FN3ドメインのEGFR−Fcに対する親和性(EGFR−
Fc親和性)の決定
組み換え型EGFR細胞外ドメインに対する選択されたEGFR結合FN3ドメインの
結合親和性を、Proteon Instrument(BioRad)を用いて表面プ
ラズモン共鳴法によって更に特徴を調べた。アッセイの設定(チップの調製、EGFR−
Fc捕捉)は、オフレート分析に関して先に記述したものと類似であった。選択されたE
GFR結合FN3ドメインを、1μM濃度で水平方向に3倍連続希釈で試験した。緩衝液
試料もまた、ベースラインでの安定性をモニターするために注入した。各EGFR結合F
N3ドメインの全ての濃度に関する解離相を、流速100μL/分で30分間(オフレー
トスクリーニングから約10
−2s
−1のk
offを有するドメインに関して)、又は1
時間(約10
−3s
−1又はそれより遅いk
offを有するドメインに関して)モニター
した。2組の参照データを、反応データから差し引いた:1)EGFR結合FN3ドメイ
ンと固定したIgG表面との非特異的相互作用を修正するためのスポット間シグナル;2
)捕捉されたEGFR−Fc表面の経時的な解離によるベースラインの揺れを補正するた
めの緩衝液チャネルシグナル。各FN3ドメインに関してすべての濃度での処理された結
合データを1:1の単純なラングミュア結合モデルに全体的にフィットさせて、速度論(
k
on、k
off)及び親和性(K
D)定数の推定値を引き出した。表5は構築物のそれ
ぞれに関する速度論定数を示し、親和性は200pMから9.6nMまで変化する。
【0201】
細胞上でEGFRに対する選択されたEGFR−結合FN3ドメインの結合(A431
細胞結合アッセイ)
A431細胞を不透明な黒色96ウェルプレートに5,000個/ウェルで播種して、
37℃の湿潤5% CO
2環境で終夜接着させた。精製EGFR結合FN3ドメイン(1
.5nM〜30μM)を、同じプレートを3枚ずつ作製して、細胞(50μL)に室温で
1時間添加した。上清を除去して、細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液に
よって3回洗浄した。細胞を、FACS染色緩衝液中で1:100に希釈した抗ペンタH
is−Alexa 488抗体コンジュゲート(Qiagen)50μL/ウェルと共に
室温で20分間インキュベートした。細胞を150μL/ウェルのFACS染色緩衝液に
よって3回洗浄した後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを満たし、Acumen
eX3リーダーを用いて488nmで蛍光を読み取った。データを、FN3ドメインモ
ル濃度の対数に対して未加工の蛍光シグナルとしてプロットして、EC
50値を計算する
ためにGraphPad Prism 4(GraphPad Software)を用
いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線にフィットさせた。表5は、構築物の
それぞれに関して、2.2〜20μMを超える範囲のEC
50を報告する。
【0202】
選択されたEGFR結合FN3ドメインを用いた細胞上のEGFRに対するEGF結合
の阻害(A431細胞EGF競合アッセイ)
A431細胞を不透明な黒色96ウェルプレートに5,000個/ウェルで播種して、
37℃の湿潤5% CO
2環境で終夜接着させた。精製EGFR結合FN3ドメイン(1
.5nM〜30μM)を、同じプレートを3枚ずつ作製して、細胞(50μL/ウェル)
に室温で1時間添加した。ビオチニル化EGF(Invitrogen、カタログ番号E
−3477)を、最終濃度30ng/mLとなるように各ウェルに添加して、室温で10
分間インキュベートした。細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液によって3
回洗浄した。細胞を、FACS染色緩衝液中で1:100に希釈したストレプトアビジン
−フィコエリスリンコンジュゲート(Invitrogen)50μL/ウェルと共に室
温で20分間インキュベートした。細胞を150μL/ウェルのFACS染色緩衝液によ
って3回洗浄した後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを満たし、Acumen
eX3リーダーを用いて600nmで蛍光を読み取った。データを、FN3ドメインモル
濃度の対数に対して未加工の蛍光シグナルとしてプロットして、IC
50値を計算するた
めにGraphPad Prism 4(GraphPad Software)を用い
て、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線にフィットさせた。表5は、1.8〜1
21nMの範囲のIC
50値を報告する。
【0203】
EGF刺激EGFRリン酸化の阻害(ホスホ−EGFRアッセイ)
EGF刺激EGFRリン酸化を有意に阻害した選択されたFN3ドメインを、阻害に関
するIC
50値を測定することによってより完全に評価した。EGF刺激EGFRリン酸
化の阻害を、「EGF刺激EGFRリン酸化の阻害」において先に記述したように、FN
3ドメイン濃度を変化させて(0.5nM〜10μM)評価した。データを、FN3ドメ
インモル濃度の対数に対してエレクトロケミルミネッセンスシグナルとしてプロットして
、GraphPad Prism 4(GraphPad Software)を用いて
、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線にデータをフィットさせることによって、
IC
50値を決定した。表5は、18nM〜>2.5μMの範囲のIC
50値を報告する
。
【0204】
ヒト腫瘍細胞の増殖の阻害(NCI−H292増殖及びNCI−H322増殖アッセイ
)
EGFR依存的細胞増殖の阻害を、EGFR結合FN3ドメインに対する暴露後のEG
FR過剰発現ヒト腫瘍細胞株NCI−H292及びNCI−H322(American
Type Culture Collection、それぞれカタログ番号CRL−1
848及びCRL−5806)の生存率を測定することによって評価した。細胞を、不透
明な白色96ウェル組織培養処置プレート(Nunc)において、Glutamax(商
標)、並びに10%熱不活化ウシ胎児血清(Gibco)及び1%ペニシリン/ストレプ
トマイシン(Gibco)を添加した10mM HEPESを含むRPMI培地(Gib
co)100μL/ウェル中で500個/ウェル(NCI−H292)又は1,000個
/ウェル(NCI−H322)で播種し、37℃の湿潤5% CO
2環境で終夜接着させ
た。細胞を、EGFR結合FN3ドメインの濃度範囲を含むリン酸緩衝生理食塩水(PB
S)を5μL/ウェル添加することによって処置した。対照を5μL/ウェルのPBSの
み、又は25mMエチレンジアミン四酢酸のPBS溶液によって処置した。細胞を、37
℃、5% CO
2で120時間インキュベートした。CellTiter−Glo(登録
商標)試薬(Promega)75μL/ウェルを添加した後、プレートシェーカー上で
2分間混合し、室温の暗所で更に10分間インキュベートすることによって生存細胞を検
出した。プレートを、ルミネッセンスモードに設定したSpectraMax M5プレ
ートリーダー(Molecular Devices)で読み取り、読み取り時間は、溶
媒のみのブランクに対して0.5秒/ウェルであった。データをFN3ドメインモル濃度
の対数に対するPBS処置細胞増殖の百分率としてプロットした。GraphPad P
rism 4(GraphPad Software)を用いて、様々な勾配を有するシ
グモイド用量反応曲線の等式にデータをフィットさせることによって、IC
50値を決定
した。表5は、NCI−H292及びNCI−H322細胞をそれぞれ用いて、5.9n
M〜1.15μN及び9.2nM〜3.1μM超の範囲のIC
50値を示す。
【0205】
表5は、各アッセイのEGFR結合FN3ドメインの生物特性の要約を示す。
【0206】
【表5】
【0207】
実施例4:EGFR結合FN3ドメインの改変
EGFR結合FN3ドメインのサブセットを、各分子の立体構造の安定性を増加させる
ように、改変した。変異体L17A、N46V、及びE86I(米国特許出願公開第20
11/0274623号に記述)をDNA合成によって、クローンP54AR4−83、
P54CR4−31、及びP54AR4−37に組み入れた。新規変異体P54AR4−
83v2、P54CR431−v2、及びP54AR4−37v2を、上記のように発現
させて精製した。PBS中での示差走査熱量測定を用いて、対応する親分子の安定性と比
較するために、各変異体の安定性を評価した。表6は、各クローンが有意に安定化され、
T
mの平均値は18.5℃増加することを示す。
【0208】
【表6】
【0209】
実施例5:EGFR結合FN3ドメインのシステイン改変と化学コンジュゲーション
FN3ドメインのシステイン変異体を、基礎となるTencon分子及びシステイン残
基を有しないその変種から作製する。これらの変異は、低分子薬、蛍光タグ、ポリエチレ
ングリコール、又は他の任意の数の化学実体を化学コンジュゲートするための部位として
役立つように、独自のシステイン残基を、基礎となるTencon配列(配列番号1)又
は他のFN3ドメインに組み入れるために、当技術分野で公知の標準的な分子生物学技術
を用いて作製され得る。選択される変異部位は、特定の基準を満たさなければならない。
例えば、遊離のシステインを含むように変異させたTencon配列は、(i)大腸菌に
おいて高度に発現され、(ii)高レベルの溶解度及び熱安定性を維持し、並びに(ii
i)コンジュゲーションの際に標的抗原に対する結合を維持しなければならない。Ten
con足場は、わずか約90〜95個のアミノ酸であることから、化学コンジュゲーショ
ンのための理想的な位置を厳密に決定するために、1システイン変種を、足場のあらゆる
位置で容易に構築することができる。
【0210】
EGFRに結合するP54AR4−83v2変異体(配列番号27)の1〜95番目(
又はN−末端メチオニンが存在するときには2〜96番目)の位置の各個々のアミノ酸残
基をシステインに変異させて、最善の化学コンジュゲーション部位を評価した。
【0211】
構築、発現、及び精製
P54AR4−83v2の各個々のシステイン変種のアミノ酸配列を、大腸菌発現のた
めの選択的コドンを用いてタンパク質をコードする核酸配列に逆転写して、合成遺伝子を
作製した(DNA 2.0)。これらの遺伝子を、T5プロモーター配列によって駆動さ
れる発現のために、pJexpress401ベクター(DNA2.0)にクローニング
し、大腸菌株BL21(Agilent)に形質転換した。P54AR4−83v2「シ
ステインスキャン」ライブラリは、96ウェルプレート上にアレイにしたグリセロールス
トックとして提供され、それぞれの発現及び精製は、実施例2に記述される同じ技法に従
った。
【0212】
化学コンジュゲーション
P54AR4−83v2「システインスキャン」ライブラリに関して、コンジュゲーシ
ョンを精製プロセスに組み入れた
。澄明化した溶解物中のシステイン変種は、溶解物をウ
ェルに添加して、100×gで5分間遠心沈降させることにより、His−trap H
Pプレート(カタログ番号28−4008−29、GE Healthcare)を用い
て96ウェルフォーマットでNi−NTA樹脂に結合させた。樹脂を緩衝液Aで3回洗浄
した後、N−エチルマレイミド(NEM)を1.5mM溶液の500μLとして添加した
。ロティサリーシェーカーで室温で1時
間インキュベートした後、過剰量のNEMを遠心
沈降によって除去して、緩衝液Aによって3回洗浄した。コンジュゲートされたシステイ
ン変種を150μLの緩衝液Bによって2回溶出し、Ultracel−10メンブレン
(カタログ番号MAUF1010、Millipore)を有するMultiScree
n Filter Plates又は96−ウェルPD MultiTrapプレート(
カタログ番号28−9180−06、GE Healthcare)によってPBSに交
換した。コンジュゲートを質量分析によって特徴を調べた(表7)。発現が不良であるか
(5mL培養物から得られたタンパク質が0.1mg未満、又は質量分析によって検出し
てタンパク質が得られない)又はNEMに対するコンジュゲーションが不良である(質量
分析によって測定してコンジュゲーションが80%未満)システイン変種を、更なる分析
から除外した。これによって、発現が不良であるためにL1C、W21C、Q36C、E
37C、A44C、D57C、L61C、Y67C、及びF92Cが除外され、コンジュ
ゲーション効率が低いためにA17C、L19C、I33C、Y35C、Y56C、L5
8C、T65C、V69C、I71C、及びT94Cが除外された。
【0213】
【表7-1】
【0214】
【表7-2】
【表7-3】
【0215】
分析的サイズ排除クロマトグラフィー
P54AR4−83v2の各NEMコンジュゲートシステイン変種のサイズ排除クロマ
トグラフィーを、実施例2に記述されるように行った。表8は、結果を要約する。Abs
280シグナルを積分して、単量体領域のピーク(5.5〜6分)を、オリゴマー領域の
ピーク(4〜5.3分)と比較することにより、各タンパク質の%単量体を決定した。
【0216】
【表8-1】
【0217】
【表8-2】
【表8-3】
【0218】
EGFR結合アッセイ
P54AR4−83v2のNEMコンジュゲートシステイン変種のEGFRに対する相
対的結合親和性を、実施例2に記述されるように評価した。表9は、P54AR4−83
v2親タンパク質と比較した各システイン変種のEGFR結合親和性の比率を示すデータ
を要約する。ELISAアッセイによって決定した場合に、EGFRに対する結合が減少
した(10nMタンパク質によって処置したとき、P54AR4−83v2親に関して観
察されたシグナルの65%未満)システインコンジュゲートを更なる分析から除外した:
P2C、A3C、P4C、K5C、L7C、D23C、W25C、F27C、Y28C、
F31C、S55C、G73C、H75C、V77C、Y78C、T81C、N82C、
M83C、及びG85C。
【0219】
【表9-1】
【0220】
【表9-2】
【0221】
熱安定性
システイン−NEMコンジュゲートの熱安定性を、示差走査熱量測定(DSC)によっ
て評価した。試験したコンジュゲートは、高レベルでコンジュゲートを効率よく発現し、
EGFR結合を保持することが決定されたコンジュゲートであった。加えて、BC及びF
Gループ内のシステイン変種は除外した。安定性データは、VP−DSC機器(Micr
oCal)で毎分1℃の走査速度で、変種のアリコート400μLを25℃から100℃
まで加熱することによって得られた。その試料に関して、熱によるフォールディング/ア
ンフォールディングの可逆性を評価するために、第2の同一の走査を行った。融解温度を
計算するために、データを2状態アンフォールディングモデルにフィットさせた(表10
)。融解温度が低下した(63℃以下又はP54AR4−83v2の親より8℃超下)、
又は非可逆的アンフォールディングを示したシステイン変種を更なる分析から除外した:
V9C、V12C、T13C、R18C、E29C、E39C、G42C、V49C、P
50C、G51C、P63C。
【0222】
【表10-1】
【表10-2】
【0223】
細胞障害性アッセイ
P54AR4−83v2システイン変種を、NEMコンジュゲーションに関して記述さ
れる方法論を用いて、酵素切断可能なVal−Citリンカー又は非切断型PEG
4リン
カー(VC−MMAF7;
図2を参照されたい)を介して、細胞障害性チューブリン阻害
剤であるモノメチルアウリスタチンF(MMAF)にコンジュゲートした。先の段階で除
外後に残っている32個の変種を、P54AR4−83v2親(配列番号217及び25
5)、及び陰性対照としてのTencon(配列番号265)と共にコンジュゲートした
。
【0224】
殺細胞を、システイン変種−細胞毒素コンジュゲートに暴露後のEGFR過剰発現ヒト
腫瘍細胞株H1573の生存率を測定することによって評価した。細胞を黒色ウェルの透
明底の組織培養処置プレート(Falccon 353219)に、5%ウシ胎児血清(
Gibco)を含むフェノールレッド不含RPMI培地(Gibco 11835−03
0)100μL/ウェル中で7000個/ウェルで播種した。細胞を、37℃の湿潤5%
CO
2環境で終夜接着させた。96ウェルプレートから培地を吸引して、細胞を新しい培
地50μL、及び新しい培地中に溶解した2×阻害剤50μLで処置した。細胞の生存率
を、70時間でCellTiterGlo(Promega)によるエンドポイントアッ
セイによって決定した。GraphPad Prism 5(GraphPad Sof
tware)を用いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線の等式にデータをフ
ィットさせることによって、IC
50値を決定した。表11は、CellTiterGl
oデータの分析から得られたIC
50値を報告する。83v2−cys/vcMMAFコ
ンジュゲートの2つの複製物の平均IC
50値は、0.7nMであった。試験したコンジ
ュゲート32個中4個が、親の値(約1.4nM)より2倍超高いIC
50値を有したこ
とから、廃棄した:L32C、T68C、Y72C、及びV74C。加えて、3つのコン
ジュゲートが親より2倍超強力なIC
50値を与え、薬物コンジュゲートに処方するため
に特に適切であり得る:N6C、E53C、及びT93C。
【0225】
【表11】
【0226】
最終的なシステイン変種
試験した96個の位置の中で、システイン変種28個が、大腸菌における高い発現レベ
ルの保持、チオール−マレイミド化学を介した効率的なコンジュゲーション、標的抗原E
GFRに対する結合の保持、熱安定性の保持、及び可逆的アンフォールディング特性、並
びにシステイン変種を細胞障害剤にコンジュゲートしたときに高いEGFR発現を有する
細胞の障害性の保持に関する基準を満たすことが判明した。これらの位置は、N6C(配
列番号210及び248)、V8C(配列番号189及び227)、S10C(配列番号
190及び228)、E11C(配列番号191及び229)、E14C(配列番号19
2及び230)、D15C(配列番号193及び231)、S16C(配列番号194及
び232)、S20C(配列番号195及び233)、S30C(配列番号196及び2
34)、Q34C(配列番号197及び235)、S38C(配列番号198及び236
)、K40C(配列番号199及び237)、V41C(配列番号200及び238)、
I45C(配列番号201及び239)、L47C(配列番号202及び240)、T4
8C(配列番号203及び241)、E53C(配列番号204及び242)、R54C
(配列番号205及び243)、T59C(配列番号206及び244)、G60C(配
列番号207及び245)、K62C(配列番号208及び246)、G64C(配列番
号209及び247)、T68C(配列番号210及び248)、S70C(配列番号2
11及び249)、L88C(配列番号212及び250)、S89C(配列番号213
及び251)、A90C(配列番号214及び252)、I91C(配列番号215及び
253)、並びにT93C(配列番号216及び254)である。83v2タンパク質の
構造におけるこれらの28の位置の場所を
図3に示す。
【0227】
実施例6:c−Metに結合してHGF結合を阻害するフィブロネクチンIII型(F
N3)ドメインの選択
ヒトc−Metに関するパニング
c−Metに特異的に結合することができるFN3ドメインを同定するために、TCL
14ライブラリを、ビオチニル化ヒトc−Met細胞外ドメイン(bt−c−Met)に
対してスクリーニングした。選択するために、TCL14ライブラリ3μgを、大腸菌S
30 Linear Extract(Promega,Madison,WI)中でイ
ンビトロで転写及び翻訳し、発現させたライブラリをCisブロック(2% BSA(S
igma−Aldrich,St.Louis,MO)、100μg/mlニシン精子D
NA(Promega)、1 mg/mLヘパリン(Sigma−Aldrich))に
よってブロックした。選択するために、bt−c−Metを400nM(ラウンド1)、
200nM(ラウンド2及び3)、及び100nM(ラウンド4及び5)の濃度で添加し
た。結合したライブラリメンバーを、ニュートラアビジン磁気ビーズ(Thermo F
isher,Rockford,IL)(ラウンド1、3及び5)、又はストレプトアビ
ジン磁気ビーズ(Promega)(ラウンド2及び4)を用いて回収し、ビーズを50
0μLのPBS−Tで5〜14回洗浄した後、500μLのPBSで2回洗浄することに
よって、非結合ライブラリメンバーを除去した。
【0228】
改善された親和性を有するFN3ドメイン分子を同定するために、追加の選択ラウンド
を行った。簡単に説明すると、ラウンド5からの生成物を、上記のように調製して、以下
の変更を加えて追加の反復選択ラウンドに供した:bt−c−Metとのインキュベーシ
ョンを1時間から15分に減少させて、ビーズ捕獲を20分から15分に減少させ、bt
−c−Metを25nM(ラウンド6又は7)又は2.5nM(ラウンド8及び9)に減
少させ、更に1時間の洗浄を過剰量の非ビオチニル化c−Metの存在下で行った。これ
らの変更の目的は、おそらくより早いオンレートとより遅いオフレートを有する結合体を
同時に選択して、実質的により低いK
Dを生じることであった。
【0229】
ラウンド5、7及び9の生成物を、TCON6(配列番号30)及びTCON5 E8
6Iショート(配列番号31)プライマーを用いてリガーゼ非依存的クローニングサイト
(pET15−LIC)を含む改変pET15ベクター(EMD Bioscience
s,Gibbstown、NJ)にPCRクローニングして、標準的なプロトコールを用
いて、形質転換及びIPTG(最終濃度1mM、30°℃で16時間)誘導後にC−末端
His6タグタンパク質として、タンパク質を発現させた。細胞を遠心沈降によって回収
した後、0.2mg/mLニワトリ卵白リゾチーム(Sigma−Aldrich)を添
加したBugbuster HT(EMD Biosciences)によって溶解した
。細菌溶解物を遠心沈降によって澄明化して、上清を新しい96ウェル深底プレートに移
した。
【0230】
c−Metに対するHGF結合を阻害するFN3ドメインのスクリーニング
大腸菌溶解物に存在するFN3ドメインを、生化学フォーマットで精製c−Met細胞
外ドメインに対するHGF結合の阻害能に関してスクリーニングした。組み換え型ヒトc
−Met Fcキメラ(PBS中で0.5μg/mL、100μL/ウェル)を96ウェ
ル白色Maxisorpプレート(Nunc)にコーティングして、4℃で終夜インキュ
ベートした。プレートを、Biotekプレート洗浄器において、0.05% Twee
n 20(TBS−T,Sigma−Aldrich)を含むTris緩衝生理食塩水3
00μL/ウェルによって2回洗浄した。アッセイプレートを、StartingBlo
ck T20(200μL/ウェル、Thermo Fisher Scientifi
c,Rockland,IL)によって振とうさせながら室温(RT)で1時間ブロック
して、TBS−T 300μLによって2回洗浄した。FN3ドメイン溶解物を、Ham
ilton STARplusロボットシステムを用いて、StartingBlock
T20(1:10〜1:100,000)中で希釈した。溶解物(50μL/ウェル)
を、アッセイプレートにおいてRTで振とうさせながら1時間インキュベートした。プレ
ートを洗浄せずに、bt−HGF(StartingBlock T20中で1μg/m
L、50μL/ウェル、ビオチニル化)を、振とうさせながらRTで30分間プレートに
添加した。Tencon27溶解物を含む対照ウェルに、StartingBlock
T20又は希釈したbt−HGFのいずれかを添加した。プレートを300μL/ウェル
のTBS−Tによって4回洗浄して、100μL/ウェルのストレプトアビジン−HRP
(TBS−T中で1:2000、Jackson Immunoresearch、We
st Grove,PA)と共に、RTで振とうさせながら30〜40分間インキュベー
トした。再度、プレートをTBS−Tで4回洗浄した。シグナルを発生させるために、製
造元の指示に従って調製したPODケミルミネッセンス基質(50μL/ウェル、Roc
he Diagnostics,Indianapolis,IN)をプレートに添加し
て、およそ3分以内に、SoftMax Proを用いてMolecular Devi
ces M5において発光を読み取った。%阻害は、以下の計算式を用いて決定した:1
00−((RLU
sample−RLU平均値
No bt−HGF control)/
(RLU平均値
bt−HGF control−RLU平均値
No bt−HGF co
ntrol)
*100)50%又はそれより高い%阻害の値は、ヒットであると考えられ
た。
【0231】
FN3ドメインのハイスループット発現及び精製
HisタグFN3ドメインを His MultiTrap(商標)HPプレート(G
E Healthcare)によって澄明化大腸菌溶解物から精製して、20mMリン酸
ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、及び250mMイミダゾールを含むpH7.4
の緩衝液で溶出した。精製試料を、PD MultiTrap(商標)G−25プレート
(GE Healthcare)を用いる分析のために、pH7.4のPBSに交換した
。
【0232】
c−Metに対するHGF結合の阻害のIC
50決定
選択されたFN3ドメインを、HGF競合アッセイにおいて更に特徴を調べた。精製F
N3ドメインの用量反応曲線を、上記のアッセイを利用して作製した(開始濃度5μM)
。%阻害の値を計算した。データを、FN3ドメインモル濃度の対数に対する%阻害とし
てプロットして、GraphPad Prism 4を用いて、様々な勾配を有するシグ
モイド用量反応曲線にデータをフィットさせることによって、IC
50値を決定した。
【0233】
ラウンド5から、1:10の希釈で活性を示す35個のユニーク配列が同定され、IC
50値は、0.5〜1500nMの範囲であった。ラウンド7は、1:100の希釈で活
性を示す39個のユニーク配列を生じ、IC
50値は、0.16〜2.9nMの範囲であ
った。ラウンド9からは66個のユニーク配列が同定されたが、この場合、ヒットは、1
:1000の希釈で活性であると定義された。ラウンド9では、0.2nMもの低いIC
50値が観察された(表13)。
【0234】
実施例7:c−Metに結合して、HGF結合を阻害するFN3ドメインの特徴づけ
FN3ドメインを、実施例2において先に記述したように発現及び精製した。サイズ排
除クロマトグラフィー及び速度論分析をそれぞれ、実施例1及び2において先に記述した
ように行った。表12は、C鎖、CDループ、F鎖、及びFGループの配列、並びに各ド
メインに関する完全なアミノ酸配列の配列番号を示す。
【0235】
【表12】
Cループ残基は、表記の配列番号の28〜37番目の残基に対応する。
CD鎖残基は、表記の配列番号の38〜43番目の残基に対応する。
Fループ残基は、表記の配列番号の65〜74番目の残基に対応する。
FG鎖残基は、表記の配列番号の75〜81番目の残基に対応する。
【0236】
細胞におけるc−Metに対する選択されたc−Met結合FN3ドメインの結合
NCI−H441細胞(カタログ番号HTB−174,American Type
Culture Collection,Manassas,VA)を、20,000個
/ウェルでポリ−D−リジンコーティングした黒色透明底の96ウェルプレート(BD
Biosciences,San Jose,CA)に播種して、37℃、5% CO
2
で終夜接着させた。精製FN3ドメイン(50μL/ウェル;0〜1000nM)を、同
じプレートを2枚ずつ作製して、4℃で1時間細胞に添加した。上清を除去して、細胞を
、FACS染色緩衝液(150μL/ウェル、BD Biosciences,カタログ
番号554657)によって3回洗浄した。細胞を、ビオチニル化抗HIS抗体(FAC
S染色緩衝液中で1:160倍希釈、50μL/ウェル、R&D Systems、カタ
ログ番号BAM050)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS染色
緩衝液(150μL/ウェル)で3回洗浄後、ウェルを抗マウスIgG1−Alexa4
88コンジュゲート抗体(FACS染色緩衝液中で1:80倍希釈、50μL/ウェル、
Life Technologies,カタログ番号A21121)と共に4℃で30分
間インキュベートした。細胞をFACS染色緩衝液(150μL/ウェル)によって3回
洗浄し、FACS染色緩衝液(50μL/ウェル)中で放置した。総蛍光を、Acume
n eX3リーダーを用いて決定した。データを、FN3ドメインモル濃度の対数に対し
て未加工の蛍光シグナルとしてプロットして、GraphPad Prism 4(Gr
aphPad Software)を用いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲
線にフィットさせて、EC
50値を計算した。FN3ドメインは、結合活性の範囲を示す
ことが見いだされ、表13に示されるようにEC
50値は、1.4〜22.0であった。
【0237】
HGF刺激c−Metリン酸化の阻害
精製FN3ドメインを、Meso Scale Discovery(Gaither
sburg,MD)のc−Met phospho(Tyr1349)キットを用いて、
NCI−H441におけるc−MetのHGF刺激リン酸化の阻害能に関して試験した。
細胞を、透明な96ウェル組織培養処置プレートにおいて、10%ウシ胎児血清(FBS
,Life Technologies)を添加したRPMI培地100μL/ウェル中
で20,000個/ウェルで播種し、37℃、5% CO
2で終夜接着させた。培養培地
を完全に除去して、細胞を37℃、5% CO
2で、無血清RPMI培地(100μL/
ウェル)中で終夜枯渇させた。次に、細胞に、濃度20μM以下のFN3ドメインを含む
新しい無血清RPMI培地(100μL/ウェル)を、37℃、5% CO
2で
1時間添
加した。対照は、培地のみで処置した。細胞を、100ng/mL組み換え型ヒトHGF
(100μL/ウェル、R&D Systems、カタログ番号294−HGN)によっ
て刺激して、37℃、5% CO
2で15分間インキュベートした。一組の対照ウェルは
、陰性対照として刺激しないままであった。培地を完全に除去して、細胞を、製造元の指
示に従って、RTで振とうさせながらComplete溶解緩衝液(50μL/ウェル、
Meso Scale Discovery)によって10分間溶解した。リン酸化c−
Metを測定するように構成されたアッセイプレートを、製造元の指示に従って、提供さ
れたブロッキング溶液によって室温で1時間ブロックした。次に、プレートを、Tris
洗浄緩衝液(200μL/ウェル、Meso Scale Discovery)によっ
て3回洗浄した。細胞溶解物(30μL/ウェル)をアッセイプレートに移して、振とう
させながらRTで1時間インキュベートした。次に、アッセイプレートをTris洗浄緩
衝液によって4回洗浄した後、氷冷の検出抗体溶液(25μL/ウェル、Meso Sc
ale Discovery)を、振とうさせながらRTで各ウェルに1時間添加した。
プレートをTris洗浄緩衝液によって4回すすいだ。150読み取り緩衝液(150μ
L/ウェル、Meso Scale Discovery)を添加して、製造元のインス
トールしたアッセイ特異的デフォルト設定を用いて、SECTOR(登録商標)Imag
er 6000機器(Meso Scale Discovery)において読み取るこ
とにより、シグナルを検出した。データを、FN3ドメインモル濃度の対数に対するエレ
クトロケミルミネッセンスシグナルとしてプロットして、GraphPad Prism
4を用いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線にデータをフィットさせるこ
とによって、IC
50値を決定した。FN3ドメインは、表13に示されるように、4.
6〜1415nMの範囲のIC50値でリン酸化c−Metを阻害することが見いだされ
た。
【0238】
ヒト腫瘍細胞増殖の阻害
c−Met依存的細胞増殖の阻害を、c−Met結合FN3ドメインに対する暴露後の
U87−MG細胞(American Type Culture Collectio
n、カタログ番号HTB−14)の生存率を測定することによって評価した。細胞を、不
透明な白色96ウェル組織培養処置プレート(Nunc)において10% FBSを添加
したRPMI培地100μL/ウェル中で8000個/ウェルで播種し、37℃、5%
CO
2で終夜接着させた。播種後24時間で、培地を吸引して、細胞に無血清RPMI培
地を添加した。血清枯渇の24時間後、c−Met結合FN3ドメインを含む無血清培地
(30μL/ウェル)を添加することによって、細胞を処置した。細胞を、37℃、5%
CO
2で72時間インキュベートした。生存細胞を、CellTiter−Glo(登
録商標)試薬(Promega)100μL/ウェルを添加した後、プレートシェーカー
において10分間混合することによって検出した。プレートを、ルミネッセンスモードに
設定したSpectraMax M5プレートリーダー(Molecular Devi
ces)で読み取り、読み取り時間は、0.5秒/ウェルであった。データをFN3ドメ
インモル濃度の対数に対する未加工発光単位(RLU)としてプロットした。Graph
Pad Prism 4を用いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線の等式に
データをフィットさせることによって、IC
50値を決定した。表13は、1nM〜10
00nM超の範囲のIC
50値を報告する。
【0239】
【表13】
【0240】
c−Met結合FN3ドメインの熱安定性
【0241】
PBS中での示差走査熱量測定を用いて、各FN3ドメインの安定性を評価した実験の
結果を表14に示す。
【0242】
【表14】
【0243】
実施例8二重特異性抗EGFR/c−Met分子の作製及び特徴づけ
二重特異性EGFR/c−Met分子の作製
実施例1〜6に記述したEGFRとc−Met結合FN3ドメインの多数の組み合わせ
を合わせて、EGFRとc−Metの両方に結合することができる二重特異性分子を作製
した。更に、配列番号107〜110に示されるアミノ酸配列を有するEGFR結合FN
3ドメイン、及び配列番号111〜114に示されるアミノ酸配列を有するc−Met結
合FN3ドメインを作製して、二重特異性分子に結合した。以下のフォーマットが維持さ
れるように配列番号50〜72、及び106(表15)に記載のアミノ酸配列をコードす
るように、合成遺伝子を作製した:EGFR結合FN3ドメインの後にペプチドリンカー
、その後にc−Met結合FN3ドメイン。精製を助けるために、C−末端にポリヒスチ
ジンタグを組み入れた。表15に記述される分子に加えて、2つのFN3ドメイン間のリ
ンカーを、表16に記載の内容に従って、長さ、配列組成、及び構造に従って変化させた
。そのようなFN3ドメインを連結させるために、多数の他のリンカーを用いることがで
きると予想される。二重特異性EGFR/c−Met分子を発現させて、単特異性EGF
R又はc−MetFN3ドメインに関して記述したように、IMAC及びゲル濾過クロマ
トグラフィー工程を用いて、大腸菌から精製した。
【0244】
【表15】
【0245】
【表16】
【0246】
二重特異性EGFR/c−Met分子は単特異性分子単独と比較して効力を増強し、結
合力を示唆する
NCI−H292細胞を、96ウェルプレートにおいて、10% FBSを含むRPM
I培地中で播種した。24時間後、培地を無血清RPMIに交換した。血清枯渇の24時
間後、細胞を多様な濃度のFN3ドメインによって処置した:高親和性単特異性EGFR
FN3ドメイン(P54AR4−83v2)、弱親和性単特異性c−Met FN3ド
メイン(P114AR5P74−A5)、2つの単特異性EGFR及びc−Met FN
3ドメインの混合物、又は高親和性EGFR FN3ドメインに連結させた低親和性c−
Met FN3ドメインからなる二重特異性EGFR/c−Met分子(ECB1)。細
胞を、単特異性又は二重特異性分子によって1時間処置した後、EGF、HGF、又はE
GFとHGFの組み合わせによって37℃、5% CO
2で15分間刺激した。細胞をM
SD溶解緩衝液によって溶解して、適当なMSDアッセイプレートを用いて、上記のよう
に製造元の指示に従って、細胞のシグナリングを評価した。
【0247】
低親和性c−Met FN3ドメインは、610nMのIC
50でc−Metのリン酸
化を阻害した(
図6)。予想されるように、EGFR FN3ドメインは、c−Metリ
ン酸化を阻害することができず、単特異性分子の混合物は、c−Met FN3ドメイン
単独と同一であるように思われた。しかし、二重特異性EGFR/c−Met分子は、1
nMのIC
50でc−Metのリン酸化を阻害し(
図6)、c−Met単特異性分子単独
と比較して効力の改善の2対数を超えるシフトをもたらした。
【0248】
結合力の効果を通してc−Met及び/又はEGFRリン酸化の阻害を増強する二重特
異性EGFR/c−Met分子の可能性を、多様なc−Met及びEGFR密度及び比率
を有する多数の細胞タイプにおいて評価した(
図7)。NCI−H292、NCI−H4
41、又はNCI−H596細胞を、96ウェルプレートにおいて、10% FBSを含
むRPMI培地中で播種した。24時間後、培地を無血清RPMIに交換した。血清枯渇
の24時間後、細胞を多様な濃度の単特異性EGFR結合FN3ドメイン、単特異性c−
Met FN3ドメイン、又は二重特異性EGFR/c−Met分子(ECB5、P53
A1R5−17v2及びP114AR7P94−A3からなる)によって処置した。細胞
を、単特異性又は二重特異性分子によって1時間処置した後、EGF、HGF、又はEG
FとHGFの組み合わせによって37℃、5% CO
2で15分間刺激した。細胞をMS
D溶解緩衝液によって溶解して、適当なMSDアッセイプレートを用いて、上記のように
製造元の指示に従って、細胞のシグナリングを評価した。
【0249】
図7(A〜C)は、3つの異なる細胞株における二重特異性EGFR/cMet分子と
比較して、単特異性EGFR結合FN3ドメインを用いたEGFRの阻害を示す。EGF
Rリン酸化アッセイにおける結合力を評価するために、中等度の親和性のEGFR結合F
N3ドメイン(1.9nM)(P53A1R5−17v2)を、高親和性c−Met結合
FN3ドメインに連結させた同じEGFR結合FN3ドメイン(0.4nM)(P114
AR7P94−A3)を含む二重特異性EGFR/c−Met分子と比較した。H292
及びH596細胞において、EGFRのリン酸化の阻害は、単特異性分子と二重特異性分
子とで同等であり(
図7A及び7B)、その理由はおそらく、これらの細胞株がEGFR
対c−Met受容体の高い比率を有するためであった。この理論を試験するために、EG
FRリン酸化の阻害を、EGFRより多くのc−Met受容体を示すNCI−H441細
胞において評価した。NCI−H441細胞を、二重特異性EGFR/c−Met分子に
よって処置すると、単特異性EGFR結合FN3ドメインと比較してEGFRリン酸化の
阻害に関するIC
50を30倍減少させた(
図7C)。
【0250】
二重特異性EGFR/c−Met分子によって効力が増加する可能性を、EGFRに対
して高い親和性(0.26nM)及びc−Met(10.1nM)に対して中等度の親和
性を有する分子を用いて、c−Metリン酸化アッセイにおいて評価した。NCI−H2
92及びNCI−H596細胞の両方において、c−Metのリン酸化の阻害は、単特異
的c−Met結合FN3ドメインと比較して二重特異性分子ではそれぞれ、134倍及び
1012倍増強された(
図7D及び7E)。
【0251】
二重特異性EGFR/c−Met分子によるEGFR及びc−Metリン酸化の阻害に
関する効力の増加は、シグナリング及び増殖の阻害の増強に言い換えられることが確認さ
れた。これらの実験に関して、FN3 EGFR結合及びc−Met結合FN3ドメイン
の混合物を二重特異性EGFR/c−Met分子と比較した。表17及び18に記述され
るように、ERKリン酸化のIC
50(表17)及びH292細胞の増殖(表18)は、
単特異性結合体の混合物と比較して、細胞を二重特異性EGFR/c−Met分子で処置
すると、減少した。二重特異性EGFR/c−Met分子に関するERKリン酸化の阻害
のIC
50は、単特異性EGFR及びc−Met FN3ドメインの混合物と比較して1
43倍低く、このアッセイにおける分子の効力に対する結合力の効果を示した。表17に
おいて、単特異性EGFR及びc−Met結合FN3ドメインは、完全に活性を阻害せず
、それゆえ示されたIC
50値は、下限であるとみなすべきである。増殖アッセイを、混
合物又は二重特異性フォーマットで連結された形のいずれかとして、EGFR及びc−M
et結合FN3ドメインの異なる組み合わせを用いて行った。二重特異性EGFR/c−
Met分子の阻害又は増殖のIC
50は、単特異性の親EGFR又はc−Met結合FN
3ドメインの混合物と比較して34〜236倍低かった。このことは受容体のレベルで観
察された結合力の効果(
図6及び
図7)が、細胞シグナリングの阻害(表17)及び細胞
増殖の阻害(表18)の改善に言い換えられることを確認した。
【0252】
【表17】
【0253】
【表18】
【0254】
インビトロ腫瘍異種移植片:PK/PD
単特異性及び二重特異性FN3ドメイン分子のインビボでの効能を決定するために、腫
瘍細胞を、ヒトHGFを分泌するように改変した(マウスHGFはヒトHGFに結合しな
い)。ヒトHGFを、レンチウイルス感染を用いてNCI−H292細胞において安定に
発現させた(ヒトHGFを発現するレンチウイルスDNAベクター(受託番号X1632
2)及びGenecopoeiaからのレンチウイルスパッケージングキット)。感染後
、HGF発現細胞を4μg/mLピューロマイシン(Invitrogen)によって選
択した。ヒトHGFタンパク質を、Meso Scale Discoveryのアッセ
イプレートを用いてプールした細胞の条件培地で検出した。
【0255】
SCID Beigeマウスに、ヒトHGFを発現するNCI−H292細胞(容積2
00μLのCultrex(Trevigen)中で2.0×10
6個)を各動物の背側
脇腹に皮下接種した。腫瘍の測定は、腫瘍の体積が150〜250mm
3の範囲となるま
で週に2回行った。次に、マウスに、二重特異性EGFR/c−Met分子(半減期を増
加させるためにアルブミン結合ドメインに連結させた)又はPBSビヒクルの1回腹腔内
投与を行った。投与後6時間又は72時間目に、腫瘍を摘出して、直ちに液体窒素中で凍
結した。心穿刺により、血液試料を、プロテアーゼ阻害剤を含む3.8%クエン酸中に採
取した。採取後直ちに、血液試料を遠心沈降させて、得られた血漿を試験管に移し、−8
0℃で保存した。腫瘍の重量を測定し、小片に切断して、HALTプロテアーゼ/ホスフ
ァターゼ阻害剤(Pierce)、50mMフッ化ナトリウム(Sigma)、2mM活
性化オルトバナジン酸ナトリウム(Sigma)、及び1mM PMSF(Meso S
cale Discovery)を有するRIPA緩衝液を含むLysing Matr
ix A試験管(LMA)中で溶解した。溶解物をLMAマトリクスから取り出して、遠
心沈降して不溶性タンパク質を除去した。可溶性の腫瘍タンパク質を、BCAタンパク質
アッセイによって定量して、腫瘍溶解緩衝液中で同等のタンパク質レベルに希釈した。リ
ン酸化c−Met、EGFR、及びERKを、Meso Scale Discover
yのアッセイプレートを用いて測定した(製造元のプロトコルに従って、及び上記のよう
に)。
【0256】
図
8は、実験の結果を示す。各二重特異性EGFR/c−Met分子は、6時間及び7
2時間の両方で、リン酸化c−Met、EGFR、及びERKレベルを有意に減少させた
。図
8に示したデータは、c−Met及びEGFRの両方を同時に阻害する重要性、及び
各受容体に関する二重特異性EGFR/c−Met分子の親和性が下流のERKの阻害に
おいてどのような役割を果たすかを示している。高親和性EGFR結合FN3ドメインを
含む分子(P54AR4−83v2;図において「8
3」で示す、K
D=0.26nM)
は、6時間及び72時間の両方で中等度親和性EGFR結合FN3ドメインを含む分子(
P53A1R5−17v2;図において「17」で示す、K
D=1.9nM)と比較して
大きい程度にEGFRのリン酸化を阻害した。試験した4つ全ての二重特異性分子は、親
和性によらず、6時間の時点でERKのリン酸化を完全に阻害した。72時間の時点で、
高親和性c−Met結合ドメインを含む分子(P114AR7P94−A3;図において
「A3」として示す、K
D=0.4nM)は、中等度親和性c−Met結合FN3ドメイ
ンを含む分子(P114AR5P74−A5;図において「A5」として示す、K
D=1
0.1nM;Figure 6)と比較してERKのリン酸化を有意に阻害した。
【0257】
各二重特異性EGFR/c−Met分子の濃度を、投与後6時間及び72時間の血液中
及び腫瘍中で測定した(
図9)。興味深いことに、中等度親和性EGFR結合ドメイン(
P53A1R5−17v2;K
D=1.9nM)は、他の分子と比較して6時間で有意に
より多くの腫瘍での蓄積を示したが、高親和性c−Met結合FN3ドメイン(P114
AR7P94−A3;K
D=0.4nM)は示さず、その差は72時間までに消失した。
腫瘍外の細胞は、EGFR及びc−Met両方の表面発現レベルがより低く、それゆえ、
中等度親和性EGFR分子は、高親和性EGFR結合FN3ドメインと比較して、正常組
織に堅固に結合しないという仮説を立てることができる。それゆえ、より多くの遊離の中
等度親和性EGFR結合FN3ドメインが腫瘍との結合に利用できる。それゆえ、各受容
体に対して適切な親和性を同定することにより、全身毒性の減少及び腫瘍蓄積の増加を有
する治療薬を同定することができる。
【0258】
二重特異性EGFR/c−Met分子による腫瘍の効能試験
SCID Beigeマウスに、ヒトHGFを発現するNCI−H292細胞(200
μLのCultrex(Trevigen)中で2.0×10
6個)を各動物の背側脇腹
に皮下接種した。植え込みの1週間後、マウスを同等の腫瘍体積(平均腫瘍体積=77.
9±1.7mm
3)を有する群に分けた。マウスに、二重特異性分子を週に3回投与して
、腫瘍の体積を週に2回記録した。腫瘍の増殖阻害(TGI)を、c−Met及びEGF
Rに対して様々な親和性を有する4つの異なる二重特異性分子について観察した。
図10
は、c−Met結合FN3ドメインが中等度親和性を有するとき、中等度親和性EGFR
結合FN3ドメインと比較して高親和性EGFR結合FN3ドメインを含む分子で処置し
たマウスでは腫瘍増殖の遅れが観察されたことから、c−Met及びEGFRの両方を阻
害する恩典を示す(△対▲、P54AR4−83v2−P114AR5P74−A5をP
53A1R5−17−P114AR5P74−A5と比較)。加えて、データは、高又は
中等度親和性EGFR結合FN3ドメインのいずれかを含む二重特異性分子として高親和
性c−Met結合FN3ドメインを有する重要性を示しているが、高親和性c−Met結
合FN3ドメインは、最も高い効能を示した(灰色の点線と黒色の実線、P54AR4−
83v2−P114AR7P94−A3とP53A1R5−17v2−P114AR7P
94−A3)。
【0259】
二重特異性分子並びにEGFR及びc−Metの他の阻害剤の効能
二重特異性EGFR/c−Met分子(ECB38)及び低分子阻害剤クリゾチニブ(
c−Met阻害剤)及びエルロチニブ(EGFR阻害剤)、セツキシマブ(抗EGFR抗
体)のそれぞれ単剤としての、並びにクリゾチニブとエルロチニブの併用のインビボ治療
効能を、SCID/BeigeマウスにおけるH292−HGFヒト肺がん皮下異種移植
片モデルの処置において評価した(
図11)。
【0260】
H292−HGF細胞を、ウシ胎児血清(10%v/v)及びL−グルタミン(2mM
)を添加したRPMI1640培地中で、5% CO2を含む空気環境下で37℃でイン
ビトロで維持した。細胞を、トリプシン−EDTA処置によって週に2回サブクローニン
グした。指数増殖相で増殖する細胞を回収して、腫瘍接種のために計数した。
【0261】
各マウスの右脇腹領域に、腫瘍を発達させるためのcultrexを含むPBS(1:
1)0.1mL中のH292−HGF腫瘍細胞(2×10
6個)を皮下接種した。平均腫
瘍サイズが139mm
3に達したときに処置を開始した。各試験群における試験物質の投
与及び動物番号を、以下の実験計画表に示す(表26)。腫瘍細胞接種日を0日目とした
。
【0262】
【表19】
N:動物数p.o.:経口投与i.p.:腹腔内注射を週に3回;用量は、週の1、3
、及び5日目に投与する。
QD:1日1回。Q4d:4日ごとに1回クリゾチニブとエルロチニブの併用の間隔は
0.5時間であった。投与体積は、体重に基づいて調節した(10l/g)。a:群分け
後の14日目には投与を行わなかった。
【0263】
処置開始前、全ての動物の体重を測定して、腫瘍体積を測定した。腫瘍体積は任意の所
定の処置の有効性に影響を及ぼし得ることから、その腫瘍体積に基づく無作為ブロックデ
ザインを用いてマウスを群分けした。これによって、全ての群がベースラインで確実に同
等となる。無作為化ブロックデザインを用いて、実験動物を群に割り付けした。第一に、
実験動物をその初回腫瘍体積に従って均一ブロックに分けた。次に、各ブロック内で処置
に対する実験動物の無作為化を行った。実験動物を割り付けするために無作為化ブロック
デザインを用いることにより、各動物が、所定の処置に割り付けられる確率が同じである
ことが確保され、それゆえ、系統的誤差が減少した。
【0264】
通常のモニタリング時に、動物を、運動性、飼料及び水の摂取の目視での推定、体重増
加/減少(体重は週に2回測定した)、つやのない眼/毛、及び他の任意の異常な効果な
どの、通常行動に及ぼす腫瘍増殖及び処置の任意の影響に関してチェックした。
【0265】
主要なエンドポイントは、腫瘍の増殖を遅らせることができるか否か、又は腫瘍を有す
るマウスを治癒できるか否かであった。腫瘍の大きさは、カリパスを用いて2つの寸法を
週に2回測定して、a及びbがそれぞれ、腫瘍の長径及び短径である、式:V=0.5a
×b
2を用いて体積をmm
3で表記した。次に、腫瘍サイズをT−C及びT/C値の計算
のために用いた。T−Cは、処置群の平均腫瘍サイズが1000mm
3に達するのに要す
る時間(日数)としてTから計算され、Cは、対照群の平均腫瘍サイズが同じサイズに達
するまでの時間(日数)であった。T/C値(%)は、抗腫瘍効能の指標であった。T及
びCはそれぞれ、所定の日の処置群及び対照群の平均体積であった。完全な腫瘍の退縮(
CR)は、触診下限(62.5mm
3)より下まで低減された腫瘍として定義される。部
分的な腫瘍退縮(PR)は、初回の腫瘍体積から低減された腫瘍として定義される。少な
くとも3回以上連続した腫瘍測定でCR又はPRが持続することは、CP又はPRが持続
可能であると考えられるために必要である。
【0266】
体重減少が20%を超える動物、又は群の平均腫瘍サイズが2000mm
3を超える動
物は安楽死させた。最終投与後2週間の観察後に試験を終了した。
【0267】
各時点の各群の腫瘍体積に関して、平均値及び平均値の標準誤差(SEM)を含む要約
統計量を提供する(以下の表19に示す)。群における腫瘍体積の差の統計分析は、一元
配置ANOVAの後にGames−Howell(等分散を仮定しない)を用いる個々の
比較を用いることによって評価した。データは全て、SPSS 18.0を用いて分析し
た。p<0.05は、統計学的に有意であると考えられた。
【0268】
【表20】
【0269】
ビヒクル処置群(群1)の平均腫瘍サイズは、腫瘍接種後23日目に1,758mm
3
に達した。用量レベル25mg/kgの二重特異性EGFR/c−Met分子によって処
置すると(群2)、全てのマウスにおいて完全な腫瘍の退縮(CR)が起こり、これは3
回より多くの連続腫瘍測定の間持続した(平均値TV=23mm
3、T/C値=1%、2
3日目でのビヒクル群と比較してp=0.004)。
【0270】
用量レベル50mg/kgの単剤としてのクリゾチニブによる処置(群3)は、抗腫瘍
活性を示さなかった;平均腫瘍サイズは23日目に2,102mm
3であった(T/C値
=120%、ビヒクル群と比較してp=0.944)。
【0271】
用量レベル50mg/kgの単剤としてのエルロチニブによる処置(群4)は、軽微な
抗腫瘍活性を示したが、ビヒクル群と比較して有意差は認められなかった。平均腫瘍サイ
ズは23日目で1,122mm
3であり(T/C値=64%、ビヒクル群と比較してp=
0.429)、1,000mm
3の腫瘍サイズではビヒクル群と比較して腫瘍増殖の4日
間の遅れを示した。
【0272】
クリゾチニブ(50mg/kg、群5)とエルロチニブ(50mg/kg、群5)の併
用は、有意な抗腫瘍活性を示した。平均腫瘍サイズは23日目で265mm
3であり(T
/C値=15%、p=0.008)、1,000mm
3の腫瘍サイズではビヒクル群と比
較して腫瘍増殖の17日間の遅れを示した。
【0273】
単剤としての用量レベル1mg/マウスのセツキシマブ(群6)は、有意な抗腫瘍活性
を示した。平均腫瘍サイズは23日目で485mm
3であり(T/C値=28%、p=0
.018)、1,000mm
3の腫瘍サイズではビヒクル群と比較して腫瘍増殖の17日
間の遅れを示した。
図11は、様々な治療の抗腫瘍活性を示す。
【0274】
【表21】
【0275】
ビヒクル群では中等度から重度の体重減少が観察され、これは腫瘍の負荷の増加による
ものであり得る。マウス3匹が死亡し、23日目までにBWL>20%となったマウス1
匹を安楽死させた。群2では二重特異性EGFR/c−Met分子の軽度の毒性が観察さ
れた。処置機関の間にBWL>20%となったマウス3匹を安楽死させた。2週間の観察
期間の間処置を中止すると、体重は徐々に回復した。クリゾチニブ又はエルロチニブ単剤
治療群では、ビヒクル群と比較してより重度の体重減少が観察され、処置関連毒性を示唆
した。クリゾチニブとエルロチニブの併用は、投与相の間、一般的に認容されたが、試験
終了時には重度の体重減少が観察され、これは非処置期間での急速な腫瘍増殖の再開によ
るものであり得る。セツキシマブの単剤治療は、試験において良好に認容された。腫瘍増
殖の再開により、試験終了時に限って体重減少が観察された。
【0276】
要約すると、25mg/kgの二重特異性EGFR/c−Met分子(週に3回×3週
間)は、SCID/BeigeマウスのH292−HGFヒト肺がん異種移植片モデルに
おいて完全奏功をもたらした。処置は、マウス10匹中7匹において認容され、マウス1
0匹中3匹には重度の体重減少が起こった。
図11及び表20は、処置後の時点での腫瘍
サイズに及ぼす様々な治療の影響を示す。
【0277】
実施例9:二重特異性EGFR/c−Met分子の半減期延長
タンパク質の腎臓での濾過を低減させ、このようにタンパク質の血清半減期を増加させ
るために様々な方法が記述されており、これには、ポリエチレングリコール(PEG)又
は他のポリマーによる修飾、アルブミンとの結合、アルブミン又は他の血清タンパク質に
結合するタンパク質ドメインとの融合、アルブミンとの遺伝的融合、IgG fcドメイ
ンとの融合、及び長い非構造アミノ酸配列との融合が挙げられる。
【0278】
流体力学半径を増加させるために、分子のC−末端で遊離のシステインを組み入れるこ
とによって、二重特異性EGFR/c−Met分子をPEGによって修飾した。最も一般
的に、システイン残基の遊離のチオール基を用いて、標準的な方法を用いてマレイミド又
はヨードアセテミド(iodoacetemide)基で官能化したPEG分子に結合させる。100
0、2000、5000、10,000、20,000、又は40,000kDaの直鎖
状PEGを含む様々な型のPEGを用いて、タンパク質を修飾することができる。これら
の分子量の分枝状PEGもまた、修飾のために用いることができる。PEG基はまた、い
くつかの例において二重特異性EGFR/c−Met分子中の一級アミンを通して結合さ
せることもできる。
【0279】
PEG化に加えて、二重特異性EGFR/c−Met分子の半減期は、天然に存在する
3−へリックスバンドルの血清アルブミン結合ドメイン(ABD)又はコンセンサスアル
ブミン結合ドメイン(ABDCon)との融合分子としてこれらのタンパク質を産生する
ことによって延長した。これらのタンパク質ドメインを、表16に記述される任意のリン
カーを介してc−Met結合FN3ドメインのC−末端に連結させた。ABD又はABD
Conドメインもまた、一次配列のEGFR結合FN3ドメインとc−Met結合FN3
ドメインの間に配置され得る。
【0280】
実施例10:選択した二重特異性EGFR/c−Met分子の特徴づけ
選択したEGFR/c−Met分子を、EGFR及びc−Metの両方に対するその親
和性、EGFR及びc−Met自己リン酸化のその阻害能、並びにHGF細胞の増殖に及
ぼすその効果に関して特徴を調べた。組み換え型EGFR及び/又はc−Met細胞外ド
メインに対する二重特異性EGFR/c−Met分子の結合親和性を、実施例3に記述さ
れるプロトコルに従ってProteon Instrument(BioRad)を用い
る表面プラズモン共鳴法によって調べた。特徴づけの結果を表21に示す。
【0281】
【表22】
【0282】
実施例11:システイン改変二重特異性EGFR/c−Met分子の作製及び特徴づけ
二重特異性EGFR/c−Met分子の作製
P54AR4−83v2変異体(実施例5)のシステインスキャニングから得られたデ
ータに基づき、二重特異性EGFR/c−Met分子において、P54AR4−83v2
(配列番号27)、cMet結合体P114AR7P95−C5v2(配列番号114)
、及び半減期延長のためのアルブミン結合ドメインからなるECB147(配列番号21
8及び256)と表示されるシステイン変異体も設計した。これらの3つのドメインは、
(Ala−Pro)
5リンカー(配列番号81)によって接続される。1個、2個、又は
4個のシステインを有する変種を、FN3ドメインの1つのC−末端、リンカー領域、又
はLys−62位置での置換によって設計した(配列番号219〜225及び257〜2
63)。別の二重特異性変種ECB82cys(配列番号226及び264)は、3つ全
てのドメインがAPリンカーによって接続されたP54AR4−83v2(配列番号27
)、P114AR7P94−A3v22(配列番号111)、及びアルブミン結合ドメイ
ンの変種、並びに1つのC−末端システインからなる。非標的化Tencon足場構造(
配列番号265)の追加のシステイン変種もまた、対照コンジュゲートの構築のために用
いた。変種は全て、先の実施例に記述されるように構築して、発現させ、精製した。純度
はSDS−PAGE分析によって評価した。Superdex 75 5/150カラム
(GE Healthcare)を用いる分析的サイズ排除クロマトグラフィーは、FN
3ドメイン調製物が凝集物を含まず、単量体タンパク質と一貫する時間で溶出することを
示している。質量分析により、理論的質量と一致した質量が決定された(表22)。
【0283】
【表23】
【0284】
化学コンジュゲーション
精製二重特異性システイン変種をマレイミド含有分子に化学的にコンジュゲートするた
めに、タンパク質を最初にTCEPで還元して遊離のチオールを生成した。各二重特異性
システイン変種1〜2mgを、中性pHで過剰量のTCEP(Sigma、カタログ番号
646547)と混合して、RTで30〜60分間インキュベートした。3倍量の飽和硫
酸アンモニウム溶液(4.02M)を添加して、システイン変種を沈殿させることによっ
て、TCEPを除去した
。16000〜20000×gで4℃で20分間遠心沈降して上
清を除去後、タンパク質沈降物をPBS又はリン酸ナトリウム緩衝液に溶解して、マレイ
ミド含有分子の5〜10倍過剰量と直ちに混合した。反応を室温で30〜60分間インキ
ュベートした後、過剰量のマレイミドを除去するために、システイン又はβ−メルカプト
エタノールなどの過剰量の遊離のチオールによって停止させた。非結合マレイミドを、Z
eba脱塩カラム(Thermo、カタログ番号89890)で、Tosoh G300
0SWxlカラム(#P4619−14N;7.8mm×30cm;5μm)を備えた分
取用SECによって、又はシステイン変種をNi−NTA樹脂に結合させて、洗浄して、
本質的に上記のように溶出させることによって除去した。コンジュゲートの特徴を、SD
S−PAGE及び質量分析によって調べた。この一般法を用いて、二重特異性システイン
変種を、蛍光マレイミド(Thermo、カタログ番号62245)、PEG24−マレ
イミド(Quanta Biodesign、カタログ番号10319)、及びマレイミ
ド−細胞毒素分子に、様々なリンカー(
図2の構造を参照)によってコンジュゲートした
。
【0285】
EGF刺激EGFRリン酸化の阻害
精製二重特異性PEG24−マレイミドコンジュゲートを、ヒト腫瘍細胞株NCI−H
292(American Type Culture Collection、カタロ
グ番号CRL−1848)において、Meso Scale Discovery(Ga
ithersburg,MD)のEGFR phospho(Tyr1173)キットを
用いて、実施例3に記述されるように、EGFRのEGF刺激リン酸化の阻害能に関して
試験した。コンジュゲートを、ECB147とはアミノ酸2個が異なる非修飾ECB38
(配列番号109)と比較した。コンジュゲート及びECB38は、表23に示されるよ
うに、類似のIC
50値でEGFRを阻害し、設計された部位での修飾が標的の結合に有
意に影響を及ぼさないことを証明した。
【0286】
【表24】
【0287】
HGF刺激c−Metリン酸化の阻害
精製二重特異性PEG24−マレイミドコンジュゲートをまた、Meso Scale
Discovery(Gaithersburg,MD)のc−Met phosph
or(Tyr1349)キットを用いて、NCI−H292細胞におけるc−MetのH
GF刺激リン酸化の阻害能に関して、実施例7に記述されるように試験した。コンジュゲ
ート及びECB38は、表24に示されるように、類似のIC
50でcMetを阻害し、
これらの部位での修飾が標的の結合に有意に影響を及ぼさないことを証明した。
【0288】
【表25】
【0289】
細胞障害性アッセイ
ECB147システイン変種、83v2−cys、又はアウリスタチンファミリーの細
胞障害性チューブリン阻害剤に連結されたTencon−cysからなるコンジュゲート
(図2)を、がん細胞における標的依存的細胞障害性に関して試験した。阻害剤を、非切
断型PEG
4リンカー、又は酵素切断型バリン−シトルリン又はバリン−リジンリンカー
を介してシステイン含有タンパク質に連結させた。殺細胞を、実施例4に記述される技法
を用いて、タンパク質−細胞毒素コンジュゲートに暴露後のEGFR過剰発現ヒト腫瘍細
胞株H1573及びA431並びにEGFR陰性腫瘍細胞株MDA−MB−435の生存
率を測定することによって評価した。表25は、66、72、又は90時間の時点で、C
ellTiterGlo又はIncuCyteオブジェクトカウントデータの分析から得
られたIC
50を報告する。タンパク質−薬物コンジュゲートは、標的抗原EGFRを発
現する細胞の強力な殺細胞を示した。多数の薬物のコンジュゲートもまた、調べた多くの
細胞株において細胞障害性の増加を示した。
【0290】
【表26】
【0291】
【表27-1】
【0292】
【表27-2】
【0293】
【表27-3】
【0294】
【表27-4】
【0295】
【表27-5】
【0296】
【表27-6】
【0297】
配列番号73,PRT,ヒト,EGFR
1 mrpsgtagaa llallaalcp asraleekkv cqgt
snkltq lgtfedhfls lqrmfnncev
61 vlgnleityv qrnydlsflk tiqevagyvl ial
ntverip lenlqiirgn myyensyala
121 vlsnydankt glkelpmrnl qeilhgavrf sn
npalcnve siqwrdivss dflsnmsmdf
181 qnhlgscqkc dpscpngscw gageencqkl tk
iicaqqcs grcrgkspsd cchnqcaagc
241 tgpresdclv crkfrdeatc kdtcpplmly np
ttyqmdvn pegkysfgat cvkkcprnyv
301 vtdhgscvra cgadsyemee dgvrkckkce gp
crkvcngi gigefkdsls inatnikhfk
361 nctsisgdlh ilpvafrgds fthtppldpq el
dilktvke itgflliqaw penrtdlhaf
421 enleiirgrt kqhgqfslav vslnitslgl rs
lkeisdgd viisgnknlc yantinwkkl
481 fgtsgqktki isnrgensck atgqvchalc sp
egcwgpep rdcvscrnvs rgrecvdkcn
541 llegeprefv enseciqchp eclpqamnit ct
grgpdnci qcahyidgph cvktcpagvm
601 genntlvwky adaghvchlc hpnctygctg pg
legcptng pkipsiatgm vgalllllvv
661 algiglfmrr rhivrkrtlr rllqerelve pl
tpsgeapn qallrilket efkkikvlgs
721 gafgtvykgl wipegekvki pvaikelrea ts
pkankeil deayvmasvd nphvcrllgi
781 cltstvqlit qlmpfgclld yvrehkdnig sq
yllnwcvq iakgmnyled rrlvhrdlaa
841 rnvlvktpqh vkitdfglak llgaeekeyh ae
ggkvpikw malesilhri ythqsdvwsy
901 gvtvwelmtf gskpydgipa seissilekg er
lpqppict idvymimvkc wmidadsrpk
961 freliiefsk mardpqrylv iqgdermhlp sp
tdsnfyra lmdeedmddv vdadeylipq
1021 qgffsspsts rtpllsslsa tsnnstvaci d
rnglqscpi kedsflqrys sdptgalted
1081 siddtflpvp eyinqsvpkr pagsvqnpvy h
nqplnpaps rdphyqdphs tavgnpeyln
1141 tvqptcvnst fdspahwaqk gshqisldnp d
yqqdffpke akpngifkgs taenaeylrv
1201 apqssefiga
【0298】
【表28】
【0299】
配列番号75,PRT,ヒト,テナシン−C
1 mgamtqllag vflaflalat eggvlkkvir hkrq
sgvnat lpeenqpvvf nhvyniklpv
61 gsqcsvdles asgekdlapp sepsesfqeh tvd
genqivf thriniprra cgcaaapdvk
121 ellsrleele nlvsslreqc tagagcclqp at
grldtrpf csgrgnfste gcgcvcepgw
181kgpncsepec pgnchlrgrc idgqcicddg ftg
edcsqla cpsdcndqgk cvngvcicfe
241 gyagadcsre icpvpcseeh gtcvdglcvc hd
gfagddcn kplclnncyn rgrcvenecv
301 cdegftgedc selicpndcf drgrcingtc yc
eegftged cgkptcphac htqgrceegq
361 cvcdegfagv dcsekrcpad chnrgrcvdg rc
ecddgftg adcgelkcpn gcsghgrcvn
421 gqcvcdegyt gedcsqlrcp ndchsrgrcv eg
kcvceqgf kgydcsdmsc pndchqhgrc
481 vngmcvcddg ytgedcrdrq cprdcsnrgl cv
dgqcvced gftgpdcael scpndchgqg
541 rcvngqcvch egfmgkdcke qrcpsdchgq gr
cvdgqcic hegftgldcg qhscpsdcnn
601 lgqcvsgrci cnegysgedc sevsppkdlv vt
evteetvn lawdnemrvt eylvvytpth
661 egglemqfrv pgdqtstiiq elepgveyfi rv
failenkk sipvsarvat ylpapeglkf
721 ksiketsvev ewdpldiafe tweiifrnmn ke
degeitks lrrpetsyrq tglapgqeye
781 islhivknnt rgpglkrvtt trldapsqie vk
dvtdttal itwfkplaei dgieltygik
841 dvpgdrttid ltedenqysi gnlkpdteye vs
lisrrgdm ssnpaketft tgldaprnlr
901 rvsqtdnsit lewrngkaai dsyrikyapi sg
gdhaevdv pksqqattkt tltglrpgte
961 ygigvsavke dkesnpatin aateldtpkd lq
vsetaets ltllwktpla kfdryrlnys
1021 lptgqwvgvq lprnttsyvl rglepgqeyn v
lltaekgrh kskparvkas teqapelenl
1081 tvtevgwdgl rlnwtaadqa yehfiiqvqe a
nkveaarnl tvpgslravd ipglkaatpy
1141 tvsiygviqg yrtpvlsaea stgetpnlge v
vvaevgwda lklnwtapeg ayeyffiqvq
1201 eadtveaaqn ltvpgglrst dlpglkaath y
titirgvtq dfsttplsve vlteevpdmg
1261 nltvtevswd alrlnwttpd gtydqftiqv q
eadqveeah nltvpgslrs meipglragt
1321 pytvtlhgev rghstrplav evvtedlpql g
dlavsevgw dglrlnwtaa dnayehfviq
1381 vqevnkveaa qnltlpgslr avdipgleaa t
pyrvsiygv irgyrtpvls aeastakepe
1441 ignlnvsdit pesfnlswma tdgifetfti e
iidsnrlle tveynisgae rtahisglpp
1501 stdfivylsg lapsirtkti satattealp l
lenltisdi npygftvswm asenafdsfl
1561 vtvvdsgkll dpqeftlsgt qrklelrgli t
gigyevmvs gftqghqtkp lraeivteae
1621 pevdnllvsd atpdgfrlsw tadegvfdnf v
lkirdtkkq sepleitlla pertrditgl
1681 reateyeiel ygiskgrrsq tvsaiattam g
spkevifsd itensatvsw raptaqvesf
1741 rityvpitgg tpsmvtvdgt ktqtrlvkli p
gveylvsii amkgfeesep vsgsfttald
1801 gpsglvtani tdsealarwq paiatvdsyv i
sytgekvpe itrtvsgntv eyaltdlepa
1861 teytlrifae kgpqksstit akfttdldsp r
dltatevqs etalltwrpp rasvtgyllv
1921 yesvdgtvke vivgpdttsy sladlspsth y
takiqalng plrsnmiqti fttigllypf
1981 pkdcsqamln gdttsglyti ylngdkaeal e
vfcdmtsdg ggwivflrrk ngrenfyqnw
2041 kayaagfgdr reefwlgldn lnkitaqgqy e
lrvdlrdhg etafavydkf svgdaktryk
2101 lkvegysgta gdsmayhngr sfstfdkdtd s
aitncalsy kgafwyrnch rvnlmgrygd
2161 nnhsqgvnwf hwkghehsiq faemklrpsn f
rnlegrrkr a
【0300】
【表29-1】
【表29-2】
【0301】
>配列番号101
PRT
ヒト
cMet
1 mkapavlapg ilvllftlvq rsngeckeal akse
mnvnmk yqlpnftaet piqnvilheh
61 hiflgatnyi yvlneedlqk vaeyktgpvl ehp
dcfpcqd csskanlsgg vwkdninmal
121 vvdtyyddql iscgsvnrgt cqrhvfphnh ta
diqsevhc ifspqieeps qcpdcvvsal
181 gakvlssvkd rfinffvgnt inssyfpdhp lh
sisvrrlk etkdgfmflt dqsyidvlpe
241 frdsypikyv hafesnnfiy fltvqretld aq
tfhtriir fcsinsglhs ymemplecil
301 tekrkkrstk kevfnilqaa yvskpgaqla rq
igaslndd ilfgvfaqsk pdsaepmdrs
361 amcafpikyv ndffnkivnk nnvrclqhfy gp
nhehcfnr tllrnssgce arrdeyrtef
421 ttalqrvdlf mgqfsevllt sistfikgdl ti
anlgtseg rfmqvvvsrs gpstphvnfl
481 ldshpvspev ivehtlnqng ytlvitgkki tk
iplnglgc rhfqscsqcl sappfvqcgw
541 chdkcvrsee clsgtwtqqi clpaiykvfp ns
apleggtr lticgwdfgf rrnnkfdlkk
601 trvllgnesc tltlsestmn tlkctvgpam nk
hfnmsiii snghgttqys tfsyvdpvit
661 sispkygpma ggtlltltgn ylnsgnsrhi si
ggktctlk svsnsilecy tpaqtistef
721 avklkidlan retsifsyre dpivyeihpt ks
fistwwke plnivsflfc fasggstitg
781 vgknlnsvsv prmvinvhea grnftvacqh rs
nseiicct tpslqqlnlq lplktkaffm
841 ldgilskyfd liyvhnpvfk pfekpvmism gn
envleikg ndidpeavkg evlkvgnksc
901 enihlhseav lctvpndllk lnselniewk qa
isstvlgk vivqpdqnft gliagvvsis
961 talllllgff lwlkkrkqik dlgselvryd ar
vhtphldr lvsarsvspt temvsnesvd
1021 yratfpedqf pnssqngscr qvqypltdms p
iltsgdsdi sspllqntvh idlsalnpel
1081 vqavqhvvig psslivhfne vigrghfgcv y
hgtlldndg kkihcavksl nritdigevs
1141 qfltegiimk dfshpnvlsl lgiclrsegs p
lvvlpymkh gdlrnfirne thnptvkdli
1201 gfglqvakgm kylaskkfvh rdlaarncml d
ekftvkvad fglardmydk eyysvhnktg
1261 aklpvkwmal eslqtqkftt ksdvwsfgvl l
welmtrgap pypdvntfdi tvyllqgrrl
1321 lqpeycpdpl yevmlkcwhp kaemrpsfse l
vsrisaifs tfigehyvhv natyvnvkcv
1381 apypsllsse dnaddevdtr pasfwets
【0302】
【表30-1】
【0303】
【表30-2】
【0304】
【表30-3】
【0305】
【表30-4】
【0306】
【表30-5】
【0307】
【表30-6】
【0308】
【表30-7】
【0309】
【表30-8】
【0310】
【表30-9】
【0311】
>配列番号179
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメインのFGループ
HNVYKDTNX
9RGL;
式中X
9は、M又はIである
>配列番号180
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメインのFGループ
LGSYVFEHDVML(配列番号180),
>配列番号181
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメインのBCループ
X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8(配列番号181);式中、
X
1はA、T、G、又はDであり、
X
2はA、D、Y、又はWであり、
X
3はP、D、又はNであり、
X
4はLであるか、又は存在せず、
X
5はD、H、R、G、Y、又はWであり、
X
6はG、D、又はAであり、
X
7はA、F、G、H、又はDであり、及び
X
8はY、F、又はLである。
>配列番号182
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメイン
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8DS
FLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVS
IYGVHNVYKDTNX
9RGLPLSAEFTT(配列番号182),
X
1はA、T、G、又はDであり、
X
2はA、D、Y、又はWであり、
X
3はP、D、又はNであり、
X
4はLであるか、又は存在せず、
X
5はD、H、R、G、Y、又はWであり、
X
6はG、D、又はAであり、
X
7はA、F、G、H、又はDであり、
X
8はY、F、又はLであり、及び
X
9はM又はIである。
>配列番号183
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメイン
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8DS
FLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVS
IYGVLGSYVFEHDVMLPLSAEFTT(配列番号183)の配列を更に含
み、
式中、
X
1はA、T、G、又はDであり、
X
2はA、D、Y、又はWであり、
X
3はP、D、又はNであり、
X
4はLであるか、又は存在せず、
X
5はD、H、R、G、Y、又はWであり、
X
6はG、D、又はAであり、
X
7はA、F、G、H、又はDであり、及び
X
8はY、F、又はLである。
>配列番号184
PRT
人工
C−met結合FN3ドメインC鎖及びCDループ配列
DSFX
10IRYX
11EX
12X
13X
14X
15GX
16(配列番号184)、
式中
X
10はW、F、又はVであり、
X
11はD、F、又はLであり、
X
12はV、F、又はLであり、
X
13はV、L、又はTであり、
X
14はV、R、G、L、T、又はSであり、
X
15はG、S、A、T、又はKであり、及び
X
16は、E、又はDである。及び
>配列番号185
PRT
人工
c−Met結合FN3ドメインF鎖及びFGループ
TEYX
17VX
18IX
19X
20VKGGX
21X
22SX
23(配列番号185
)、式中
X
17はY、W、I、V、G、又はAであり、
X
18はN、T、Q、又はGであり、
X
19はL、M、N、又はIであり、
X
20は、G、又はSであり、
X
21は、S、L、G、Y、T、R、H、又はKであり、
X
22はI、V、又はLであり、及び
X
23はV、T、H、I、P、Y、T、又はLである。
>配列番号186
PRT
人工
c−Met結合FN3ドメイン
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFX
10IRYX
1
1EX
12X
13X
14X
15GX
16AIVLTVPGSERSYDLTGLKPGT
EYX
17VX
18IX
19X
20VKGGX
21X
22SX
23PLSAEFTT(配
列番号186)を更に含み、
式中
X
10はW、F、又はVであり、及び
X
11はD、F、又はLであり、
X
12はV、F、又はLであり、
X
13はV、L、又はTであり、
X
14はV、R、G、L、T、又はSであり、
X
15はG、S、A、T、又はKであり、
X
16は、E、又はDであり、
X
17はY、W、I、V、G、又はAであり、
X
18はN、T、Q、又はGであり、
X
19はL、M、N、又はIであり、
X
20は、G、又はSであり、
X
21は、S、L、G、Y、T、R、H、又はKであり、
X
22はI、V、又はLであり、及び
X
23はV、T、H、I、P、Y、T、又はLである。
>配列番号187
PRT
人工
二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子のEGFR FN3ドメイ
ン
LPAPKNLVVSX
24VTX
25DSX
26RLSWDDPX
27AFYX
28
SFLIQYQX
29SEKVGEAIX
30LTVPGSERSYDLTGLKPGT
EYTVSIYX
31VHNVYKDTNX
32RGLPLSAX
33FTT(配列番号
187)であって、式中
X
24は、E、N、又はRであり、
X
25は、E、又はPであり、
X
26は、L、又はAであり、
X
27は、H、又はWであり、
X
28は、E、又はDであり、
X
29は、E、又はPであり、
X
30は、N、又はVであり、
X
31はG、又はYであり、
X
32は、M、又はIであり、及び
X
33は、E、又はIである
>配列番号188
二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子のc−Met FN3ドメ
イン
LPAPKNLVVSX
34VTX
35DSX
36RLSWTAPDAAFDSFWI
RYFX
37FX
38X
39X
40GX
41AIX
42LTVPGSERSYDLTGL
KPGTEYVVNIX
43X
44VKGGX
45ISPPLSAX
46FTT(配列番
号188)であって、式中、
X
34は、E、N、又はRであり、
X
35は、E、又はPであり、
X
36は、L、又はAであり、
X
37は、E、又はPであり、
X
38は、V、又はLであり、
X
39は、G、又はSであり、
X
40は、S、又はKであり、
X
41は、E、又はDであり、
X
42は、N、又はVであり、
X
43は、L、又はMであり、
X
44は、G、又はSであり、
X
45は、S、又はKであり、及び
X
46は、E、又はIである。
【0312】
【表31-1】
【0313】
【表31-2】
【0314】
【表31-3】
【0315】
【表31-4】
【0316】
【表31-5】
【0317】
【表31-6】
【表31-7】
【表31-8】
【表31-9】
本発明は次の実施態様を含む。
(1)配列番号1に基づくFN3ドメインの6、8、10、11、14、15、16、2
0、30、34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、60、62
、64、70、88、89、90、91、及び93番目の残基からなる群より選択される
位置で少なくとも1つのシステイン置換を含む、単離されたシステイン改変フィブロネク
チンIII型(FN3)ドメイン。
(2)システイン置換が、配列番号111〜114又は122〜137の6、8、10、
11、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、5
3、54、59、60、62、64、70、88、89、90、91、及び93番目の残
基からなる群より選択される位置にある、上記(1)に記載のシステイン改変フィブロネ
クチンIII型(FN3)ドメイン。
(3)配列番号27のアミノ酸配列から少なくとも1つのシステイン置換を有する配列番
号27のアミノ酸配列を含む単離システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ド
メインであって、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対す
る上皮成長因子(EGF)の結合を遮断する、単離システイン改変FN3ドメイン。
(4)配列番号114のアミノ酸配列から少なくとも1つのシステイン置換を有する配列
番号114のアミノ酸配列を含む単離システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3
)ドメインであって、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)に特異的に結合して、c−M
etに対する肝細胞増殖因子(HGF)の結合を遮断する、単離システイン改変FN3ド
メイン。
(5)半減期延長部分を更に含む、上記(1)に記載のシステイン改変フィブロネクチン
III型(FN3)ドメイン。
(6)前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG)
、又は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、上記(6)に記載のシステイ
ン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
(7)(i)1つ又は2つ以上のヌクレオチド残基を、システイン改変FN3ドメインを
コードするようにシステインアミノ酸残基をコードするヌクレオチド残基に交換すること
によって、親FN3ドメインの核酸配列を変異させることと、
(ii)前記システイン改変FN3ドメインを発現させることと、
(iii)前記システイン改変FN3ドメインを回収することと、
を含む、システイン改変FN3ドメインを調製する方法。
(8)前記FN3ドメインが配列番号1に基づくものであり、前記変異させる工程が部位
特異的変異誘発を行うことを含む、上記(7)に記載の方法。
(9)前記システイン改変FN3ドメインを大腸菌(E.coli)において発現させる
ことを含む、上記(8)に記載の方法。
(10)前記回収する工程の後に、前記システイン改変FN3ドメインを、チオール反応
性化学試薬と反応させて、化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3ドメイン
を生成することを更に含む、上記(8)に記載の方法。
(11)前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変
FN3ドメインのEGFR結合を測定することを更に含む、上記(10)に記載の方法。
(12)前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変
FN3ドメインの付加後のEGFR過剰発現腫瘍細胞株の細胞増殖阻害を測定することを
更に含む、上記(11)に記載の方法。
(13)前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変
FN3ドメインのc−Met結合を測定することを更に含む、上記(11)に記載の方法
。
(14)前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変
FN3ドメインの付加後のc−Met発現腫瘍細胞株の細胞増殖阻害を測定することを更
に含む、上記(11)に記載の方法。
(15)前記チオール反応性試薬がマレイミド部分を含む、上記(11)に記載の方法。
(16)前記マレイミド部分を含むチオール反応性試薬が、NEM、MMAE、及びMM
AFからなる群より選択される、上記(15)に記載の方法。
(17)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3ドメインが、EGFR
過剰発現H1573細胞において測定されるとき、約1.7×10
-10M〜約1.3×1
0
-9Mの細胞増殖IC
50を有する、上記(16)に記載の方法。
(18)配列番号189〜216、及び227〜254からなる群より選択されるアミノ
酸配列を含む、単離システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
(19)第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインと第2のFN3ドメインと
を含む、単離システイン改変二重特異性FN3分子であって、前記第1のFN3ドメイン
が、前記第1のFN3ドメインの6、8、10、11、14、15、16、20、30、
34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、60、62、64、7
0、88、89、90、91、及び93番目の残基からなる群から選択される位置でシス
テイン置換を含み、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対
する上皮成長因子(EGF)の結合を遮断し、前記第2のFN3ドメインが肝細胞増殖因
子受容体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HG
F)の結合を遮断する、単離システイン改変二重特異性FN3分子。
(20)前記第2のFN3ドメインが、前記第2のFN3ドメインの6、8、10、11
、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、53、
54、59、60、62、64、70、88、89、90、91、及び93番目の残基か
らなる群より選択される位置でシステイン置換を含む、上記(19)に記載の単離システ
イン改変二重特異性FN3分子。
(21)配列番号219〜226、及び257〜264からなる群より選択されるアミノ
酸配列を含む、上記(20)に記載の単離システイン改変二重特異性FN3分子。
(22)前記分子がチオール反応性試薬に化学的にコンジュゲートされている、上記(2
0)に記載の単離システイン改変二重特異性分子。
(23)前記チオール反応性試薬がマレイミド部分である、上記(22)に記載の単離シ
ステイン改変二重特異性分子。
(24)前記マレイミド部分が、NEM、PEG24−マレイミド、フルオレセインマレ
イミド、MMAE、及びMMAFからなる群より選択される、上記(23)に記載の単離
システイン改変二重特異性分子。
(25)前記第1のFN3ドメインが、50ng/mLヒトEGFを用いてNCI−H2
92細胞において測定されるとき、約0.9×10
-9M〜約2.3×10
-9MのIC
50値
でEGFRの1173番目のチロシン残基でEGFによって誘発されるEGFRのリン酸
化を阻害し、前記第2のFN3ドメインが、100ng/mLヒトHGFを用いてNCI
−H292細胞において測定されるとき、約4×10
-10M〜約1.3×10
-9MのIC
5
0値でc−Metの1349番目のチロシン残基でHGFによって誘発されるc−Met
のリン酸化を阻害する、上記(24)に記載のシステイン改変二重特異性分子。
(26)前記システイン改変二重特異性分子が、
(i)EGFR過剰発現H1573細胞において測定されるとき、約5.0×10
-11
M〜約5.8×10
-10Mと、
(ii)EGFR過剰発現A731細胞において測定されるとき、約7.8×10
-12
M〜約1.1×10
-9Mと、
からなる群より選択される細胞増殖IC
50値を有する、上記(25)に記載のシステイ
ン改変二重特異性分子。
(27)半減期延長部分を更に含む、上記(26)に記載のシステイン改変二重特異性分
子。
(28)前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG
)、又は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、上記(27)に記載のシス
テイン改変二重特異性分子。
(29)(i)1つ又は2つ以上のヌクレオチド残基を、システイン改変二重特異性分子
をコードするようにシステイン残基をコードするヌクレオチド残基に交換することによっ
て、親二重特異性分子の核酸配列を変異させることと、
(ii)前記システイン改変二重特異性分子を発現させることと、
(iii)前記システイン改変二重特異性分子を回収することと、
を含む、単離システイン改変二重特異性分子を調製する方法。
(30)前記変異させる工程が、部位特異的変異誘発を行うことを含む、上記(29)に
記載の方法。
(31)前記システイン改変二重特異性分子を大腸菌において発現させることを含む、上
記(30)に記載の方法。
(32)前記回収する工程の後に、前記システイン改変二重特異性分子を、チオール反応
性化学試薬と反応させて、化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子
を生成することを更に含む、上記(30)に記載の方法。
(33)(i)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子のEG
FR結合を測定することと、
(ii)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子による、細
胞株におけるEGF刺激EGFRリン酸化の阻害を測定することと、
(iii)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子による、
細胞株におけるHGF刺激c−Metリン酸化の阻害を測定することと、
(iv)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子の添加後の
EGFR過剰発現腫瘍細胞株の増殖阻害を測定することと、
からなる群より選択される工程を更に含む、上記(32)に記載の方法。
(34)本明細書に記載されたいずれかの発明。