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特開2020-11969システイン改変フィブロネクチンIII型ドメイン結合分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-11969(P2020-11969A)
(43)【公開日】2020年1月23日
(54)【発明の名称】システイン改変フィブロネクチンIII型ドメイン結合分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/78 20060101AFI20191220BHJP
   C07K 14/71 20060101ALI20191220BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20191220BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20191220BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20191220BHJP
【FI】
   C07K14/78ZNA
   C07K14/71
   C07K19/00
   C12P21/02 C
   C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】120
(21)【出願番号】特願2019-160835(P2019-160835)
(22)【出願日】2019年9月4日
(62)【分割の表示】特願2016-522781(P2016-522781)の分割
【原出願日】2014年10月13日
(31)【優先権主張番号】61/890,539
(32)【優先日】2013年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智裕
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバーグ,シャローム
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】リン,トリシア
(72)【発明者】
【氏名】オニール,キャリン
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CE06
4B064CE07
4B064CE12
4B064DA05
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA20
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA22
4H045GA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】均一な化学的コンジュゲーションを受けることができ、抗体コンジュゲートが直面する問題を回避することができる分子の提供。
【解決手段】1つ又は2つ以上の遊離のシステインアミノ酸を含む、システイン改変単特異性及び二重特異性EGFR(上皮成長因子受容体)及び/又はc−Met(チロシンキナーゼ受容体)とFN3ドメイン(フィブロネクチンIII型ドメイン)とを含有する分子。該分子は、親分子の核酸配列を変異誘発させること、及びシステイン改変FN3ドメイン含有単特異性又は二重特異性分子をコードするように、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を、システインに交換すること;システイン改変FN3ドメイン含有分子を発現させること;並びにシステイン改変FN3ドメイン含有分子を回収すること、によって調製される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号18〜29及び107〜110のいずれかのアミノ酸配列における6、8、1
0、11、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48
、53、54、59、60、62、64、70、88、89、90、91、及び93番目
の位置からなる群より選択される位置又は配列番号122〜137のいずれかのアミノ酸
配列におけるこれらの位置と同等の位置からなる群より選択される位置で少なくとも1つ
のシステイン置換を含む、単離されたシステイン改変フィブロネクチンIII型(FN3
)ドメイン。
【請求項2】
半減期延長部分を更に含む、請求項1に記載のシステイン改変フィブロネクチンIII
型(FN3)ドメイン。
【請求項3】
前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG)、又
は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、請求項2に記載のシステイン改変
フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
【請求項4】
(i)配列番号18〜29、107〜110及び122〜137のいずれかのアミノ酸
配列をコードする核酸配列において、1つ又は2つ以上のヌクレオチド残基を、請求項1
に記載のシステイン改変FN3ドメインをコードするようにシステインアミノ酸残基をコ
ードするヌクレオチド残基に交換することによって、前記核酸配列を変異させることと、
(ii)前記システイン改変FN3ドメインを発現させることと、
(iii)前記システイン改変FN3ドメインを回収することと、
を含む、システイン改変FN3ドメインを調製する方法。
【請求項5】
前記変異させる工程が部位特異的変異誘発を行うことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記システイン改変FN3ドメインを大腸菌(E.coli)において発現させること
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記回収する工程の後に、前記システイン改変FN3ドメインを、チオール反応性化学
試薬と反応させて、化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3ドメインを生成
することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3
ドメインのEGFR結合を測定することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3
ドメインの付加後のEGFR過剰発現腫瘍細胞株の細胞増殖阻害を測定することを更に含
む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記チオール反応性試薬がマレイミド部分を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記マレイミド部分を含むチオール反応性試薬が、NEM、MMAE、及びMMAFか
らなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3ドメインが、EGFR過剰発
現H1573細胞において測定されるとき、約1.7×10-10M〜約1.3×10-9
の細胞増殖IC50を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
配列番号189〜216及び227〜254からなる群より選択されるアミノ酸配列を
含む、単離システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
【請求項14】
第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインと第2のFN3ドメインとを含む
、単離システイン改変二重特異性FN3分子であって、
前記第1のFN3ドメインが、配列番号18〜29及び107〜110のアミノ酸配列
における6、8、10、11、14、15、16、20、30、34、38、40、41
、45、47、48、53、54、59、60、62、64、70、88、89、90、
91、及び93番目の位置からなる群から選択される位置または配列番号122〜137
におけるこれらの位置と同等の位置からなる群から選択される位置でシステイン置換を含
み、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対する上皮成長因
子(EGF)の結合を遮断し、
前記第2のFN3ドメインが、配列番号111〜114のアミノ酸配列における6、8
、10、11、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、
48、53、54、59、60、62、64、70、83、84、85、86、及び88
番目の位置からなる群から選択される位置でシステイン置換を含み、肝細胞増殖因子受容
体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HGF)の
結合を遮断する、単離システイン改変二重特異性FN3分子。
【請求項15】
配列番号219〜226及び257〜264からなる群より選択されるアミノ酸配列を
含む、請求項14に記載の単離システイン改変二重特異性FN3分子。
【請求項16】
前記分子がチオール反応性試薬に化学的にコンジュゲートされている、請求項14に記
載の単離システイン改変二重特異性分子。
【請求項17】
前記チオール反応性試薬がマレイミド部分である、請求項16に記載の単離システイン
改変二重特異性分子。
【請求項18】
前記マレイミド部分が、NEM、PEG24−マレイミド、フルオレセインマレイミド
、MMAE、及びMMAFからなる群より選択される、請求項17に記載の単離システイ
ン改変二重特異性分子。
【請求項19】
前記第1のFN3ドメインが、50ng/mLヒトEGFを用いてNCI−H292細
胞において測定されるとき、約0.9×10-9M〜約2.3×10-9MのIC50値でEG
FRの1173番目のチロシン残基でEGFによって誘発されるEGFRのリン酸化を阻
害し、前記第2のFN3ドメインが、100ng/mLヒトHGFを用いてNCI−H2
92細胞において測定されるとき、約4×10-10M〜約1.3×10-9MのIC50値で
c−Metの1349番目のチロシン残基でHGFによって誘発されるc−Metのリン
酸化を阻害する、請求項18に記載のシステイン改変二重特異性分子。
【請求項20】
前記システイン改変二重特異性分子が、
(i)EGFR過剰発現H1573細胞において測定されるとき、約5.0×10-11
M〜約5.8×10-10Mと、
(ii)EGFR過剰発現A731細胞において測定されるとき、約7.8×10-12
M〜約1.1×10-9Mと、
からなる群より選択される細胞増殖IC50値を有する、請求項19に記載のシステイン
改変二重特異性分子。
【請求項21】
半減期延長部分を更に含む、請求項20に記載のシステイン改変二重特異性分子。
【請求項22】
前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG)、又
は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、請求項21に記載のシステイン改
変二重特異性分子。
【請求項23】
(i)配列番号18〜29、107〜11及び122〜137のいずれかのアミノ酸配
列と配列番号111〜114のいずれかのアミノ酸配列とを含むアミノ酸配列をコードす
る核酸配列において、1つ又は2つ以上のヌクレオチド残基を、請求項14に記載のシス
テイン改変二重特異性分子をコードするようにシステイン残基をコードするヌクレオチド
残基に交換することによって、前記核酸配列を変異させることと、
(ii)前記システイン改変二重特異性分子を発現させることと、
(iii)前記システイン改変二重特異性分子を回収することと、
を含む、単離システイン改変二重特異性分子を調製する方法。
【請求項24】
前記変異させる工程が、部位特異的変異誘発を行うことを含む、請求項23に記載の方
法。
【請求項25】
前記システイン改変二重特異性分子を大腸菌において発現させることを含む、請求項2
3に記載の方法。
【請求項26】
前記回収する工程の後に、前記システイン改変二重特異性分子を、チオール反応性化学
試薬と反応させて、化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子を生成
することを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
(i)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子のEGFR結
合を測定することと、
(ii)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子による、細
胞株におけるEGF刺激EGFRリン酸化の阻害を測定することと、
(iii)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子による、
細胞株におけるHGF刺激c−Metリン酸化の阻害を測定することと、
(iv)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子の添加後の
EGFR過剰発現腫瘍細胞株の増殖阻害を測定することと、
からなる群より選択される工程を更に含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システイン残基によって改変されている結合分子並びにそれらを作製及び使
用する方法に関する。より詳しくは、本発明は、システインによって改変されているEG
FR及び/又はc−Metに結合し得るフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン分
子に向けられる。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体(EGFR又はErbB1又はHER1)は、c−erbB1がん
原遺伝子によってコードされる170kDaの膜貫通型糖タンパク質である。EGFRは
、HER2(ErbB2)、HER3(ErbB3)、及びHER4(ErbB4)を含
む受容体型チロシンキナーゼ(RTK)のヒト上皮成長因子受容体(HER)ファミリー
メンバーである。これらのRTKは、リガンド結合細胞外ドメイン(ECD)、1回膜貫
通ドメイン、及び触媒キナーゼドメインとC−末端テールとを含む細胞内ドメインからな
る相同な構造を共有する。EGFRシグナリングは、リガンドの結合後に、受容体の立体
構造の変化、二量体化、及びトランス自己リン酸化が誘導され(Ferguson et
al.,Annu Rev Biophys,37:353〜73,2008)、それ
によってシグナル伝達カスケードを開始することによって始まり、最終的に細胞増殖及び
生存を含む広く多様な細胞機能に影響を及ぼす。EGFRの発現又はキナーゼ活性の増加
は、広範囲のヒトがんに関係しており、そのためEGFRは治療介入にとっての魅力的な
標的となる(Mendelsohn et al.,Oncogene 19:6550
〜6565,2000;Grunwald et al.,J Natl Cancer
Inst 95:851〜67,2003;Mendelsohn et al.,S
emin Oncol 33:369〜85,2006)。更に、EGFR遺伝子コピー
数とタンパク質発現の両方の増加は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるIRESS
A(商標)(ゲフィチニブ)に対する小細胞肺がんの好ましい応答に関連している(Hi
rsch et al.,Ann Oncol 18:752〜60,2007)。
【0003】
EGFR治療は、低分子と抗EGFR抗体の両方を含み、結腸直腸がん、膵臓がん、頭
頚部がん、及び非小細胞肺がん(NSCLC)の処置のために承認されている(Base
lga and Arteaga,J Clin Oncol 23:2445〜245
9(20005;Gill et al.,J Biol Chem,259:7755
〜7760,1984;Goldstein et al.,Clin Cancer
Res,1:131 1〜1318;1995;Prewett et al.,Cli
n Cancer Res,4:2957〜2966,1998)。
【0004】
抗EGFR治療の効能は、腫瘍のタイプ及び腫瘍におけるEGFRの変異/増幅状態に
依存し得るが、皮膚毒性が起こることがある(De Roock et al.,Lan
cet Oncol 11:753〜762,2010;Linardou et al
.,Nat Rev Clin Oncol,6:352〜366,2009;Li a
nd Perez−Soler,Targ Oncol 4:107〜119,2009
)。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、非小細胞肺がん(NSCLC)の二
次選択治療として一般的に用いられているが、耐性経路により投与は12か月以内に中止
されることが多い(Riely et al.,Clin Cancer Res 12
:839〜44,2006)。
【0005】
c−Metは、チロシンキナーゼ受容体をコードする。c−Metは、発がん物質によ
る処置によって、構成的に活性な融合タンパク質であるTPR−METを生じることが見
いだされたことから、1984年にがん原遺伝子として初めて同定された(Cooper
et al.,Nature 311:29〜33,1984)。c−Metをそのリ
ガンドであるHGFを通して活性化すると、増殖、運動性、浸潤、転移、上皮−間葉転換
、血管新生/創傷治癒、及び組織再生を含む多くの細胞プロセスを刺激する(Chris
tensen et al.,Cancer Lett 225:1〜26,2005;
Peters and Adjei,Nat Rev Clin Oncol 9:31
4〜26,2012)。c−Metは、一本鎖タンパク質として合成され、これはタンパ
ク質分解によって、ジスルフィド結合で結合する50kDaのαサブユニットと140k
Daのβサブユニットに切断される(Ma et al.,Cancer and Me
tastasis Reviews,22:309〜325,2003)。c−Metは
、Ron及びSeaなどの他の膜受容体と構造的に類似であり、細胞外リガンド結合ドメ
イン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメイン(チロシンキナーゼドメインとC−末端テー
ル領域とを含む)で構成される。HGF:c−Met結合の正確な化学量論は不明である
が、一般的に、2つのHGF分子が2つのc−Met分子に結合して、受容体の二量体化
、並びに1230、1234、及び1235番目のチロシンで自己リン酸化が起こると考
えられている(Stamos et al.,The EMBO Journal 23
:2325〜2335,2004)。リガンド非依存型のc−Met自己リン酸化もまた
、遺伝子の増幅、変異、又は受容体の過剰発現により起こり得る。
【0006】
c−Metは、胃がん、肺がん、結腸がん、乳がん、膀胱がん、頭頚部がん、卵巣がん
、前立腺がん、甲状腺がん、膵臓がん、及びCNSのがんを含む多くのタイプのがんにお
いて、しばしば増幅、変異、又は過剰発現されている。キナーゼドメインに典型的に局在
するミスセンス変異は、遺伝性の乳頭状腎細胞がん(PRCC)では共通して見いだされ
、散発性のPRCCでは13%に見いだされている(Schmidt et al.,O
ncogene 18:2343〜2350,1999)。これに対し、c−Metのセ
マフォリン又は膜近傍ドメインに局在するc−Met変異は、胃がん、頭頚部がん、肝臓
がん、卵巣がん、NSCLC、及び甲状腺がんにおいてしばしば見出されている((Ma
et al.,Cancer and Metastasis Reviews,22
:309〜325,2003;Sakakura et al.,Chromosome
s and Cancer,1999.24:299〜305)。c−Metの増幅は、
脳がん、結腸直腸がん、胃がん、及び肺がんにおいて検出されており、しばしば疾患の進
行度と相関する(Ma et al.,Cancer and Metastasis
Reviews,22:309〜325,2003)。非小細胞肺がん(NSCLC)及
び胃がんのそれぞれ、4%及び20%までが、c−Metの増幅を示す(Sakakur
a et al.,Chromosomes and Cancer,1999.24:
299〜305:Sierra and Tsao,Therapeutic Adva
nces in Medical Oncology,3:S21〜35,2011)。
遺伝子の増幅がない場合であっても、c−Met過剰発現は、肺がんにおいてしばしば観
察される(Ichimura et al.,Jpn J Cancer Res,87
:1063〜9,1996)。その上、臨床試料において、ほぼ半数の肺腺がんが高レベ
ルのc−Met及びHGFを示し、そのいずれも腫瘍の増殖速度の増強、転移、及び予後
不良と相関した(Sierra and Tsao,Therapeutic Adva
nces in Medical Oncology,3:S21〜35,2011;S
iegfried et al.,Ann Thorac Surg 66:1915〜
8,1998)。
【0007】
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性となった全ての腫瘍のほぼ60%が、c
−Met発現を増加させ、c−Metを増幅し、又はその唯一の公知のリガンドであるH
GFを増加させ(Turke et al.,Cancer Cell,17:77〜8
8,2010)、このことは、c−Metを通してのEGFRの代償的経路が存在するこ
とを示唆している。c−Metの増幅は、EGFRキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブに
対して耐性となり、Her3経路を通して生存の増強を示す培養細胞において初めて同定
された(Engelman et al.,Science,316:1039〜43,
2007)。これを、臨床試料において更にバリデートしたところ、c−Metの増幅を
示したのは、エルロチニブ又はゲフィチニブのいずれかに対する耐性を獲得した患者43
人中9人に対し、無処置患者では62人中2人のみであった。興味深いことに、処置患者
9人中4人はまた、EGFR活性化変異T790Mを獲得し、このことは、同時の耐性経
路を証明している(Beat et al.,Proc Natl Acad Sci
U S A,104:20932〜7,2007)。
【0008】
がんにおけるEGFRとc−Metとの両方の個々の役割は、今では十分に確立されて
おり、これらの標的は、併用治療にとって魅力的となる。いずれの受容体も、同じ生存及
び抗アポトーシス経路(ERK及びAKT)を通してシグナルを伝達し;このため、この
経路対を共に阻害すると、代償経路が活性化される可能性を制限して、それによって全有
効性を改善させ得る。EGFRとc−Metを標的とする併用治療は、NSCLに対して
Tarceva(エルロチニブ)と抗c−Met一価抗体とを併用する臨床試験(Spi
gel et al.,2011 ASCO Annual Meeting Proc
eedings 2011,Journal of Clinical Oncolog
y:Chicago,IL.p.7505)、及びTarceva(エルロチニブ)とc
−Metの低分子阻害剤であるARQ−197とを併用する臨床試験(Adjei et
al.,Oncologist,16:788〜99,2011)において試験されて
いる。併用治療又は二重特異性抗EGFR/c−Met分子は、例えば、国際公開公報第
2008/127710号、米国特許出願公開第2009/0042906号、国際公開
公報第2009/111691号、国際公開公報第2009/126834号、国際公開
公報第2010/039248号、国際公開公報第2010/115551号に開示され
ている。
【0009】
治療のためにEGFR及び/又はc−Metシグナリング経路に拮抗する現在の低分子
及び高分子(すなわち、抗体)アプローチは、低分子ではおそらく特異性が欠如し、その
ためオフターゲット活性の可能性及び低分子阻害剤で見られる用量制限毒性により、準最
適であり得る。典型的な二価の抗体では、膜結合受容体のクラスタリング及び下流のシグ
ナリング経路の望ましくない活性化が起こり得うるが、一価の抗体(半分のアーム)は、
製造プロセスに顕著な複雑さ及び費用をもたらす。
【0010】
したがって、更に細胞障害剤をコンジュゲートすることができ、このようにこれらの強
力な化合物をEGFR/c−Met発現腫瘍細胞に標的化して、これらのEGFR/c−
Met阻害剤の抗腫瘍活性を増強する、更なる単特異性及び二重特異性EGFR及び/又
はc−Met阻害剤が必要である。抗体薬物コンジュゲートは、当技術分野に存在するも
のの、薬物部分を結合させる従来の手段では、一般的に、薬物部分が抗体上の多数の部位
に結合した不均一な分子混合物を生じる。例えば、細胞障害剤は、典型的に、抗体にしば
しば多数存在するリジン残基を通して抗体にコンジュゲートされており、そのため、不均
一な抗体−薬物コンジュゲート混合物を生成する。反応条件に応じて、不均一な混合物は
典型的に、0〜約8個、又はそれより多くの薬物部分が結合した抗体分布を含む。加えて
、薬物部分対抗体の特定の整数比を有するコンジュゲートのそれぞれのサブグループには
、薬物部分が抗体上の様々な部位に結合したおそらく不均一な混合物が存在する。分析及
び調製方法は、コンジュゲーション反応により生じる不均一な混合物中の抗体−薬物コン
ジュゲート種分子を分離及び特徴付けするには不適切である。抗体は、大きく、複雑で、
構造的に多様な生体分子であり、しばしば多くの反応性官能基を有する。抗体とリンカー
試薬及び薬物−リンカー中間体との抗体の反応性は、pH、濃度、塩濃度、及び共溶媒な
どの要因に依存する。更に、多段階のコンジュゲーションプロセスは、反応条件を制御並
びに反応物質及び中間体を特徴づけする際の難しさにより、再現性がないことがあり得る
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
抗体に存在するシステインを介した化学的コンジュゲーションもまた、証明されている
。しかし、タンパク質の様々なアミノ酸をシステインアミノ酸に変異させることによるシ
ステインのチオール基の改変は、おそらく問題が多く、特に、不対(遊離のシステイン)
残基又は反応若しくは酸化にとって比較的近づきやすい残基の場合には問題が多い。タン
パク質表面上の不対システイン残基は、対を形成して酸化し、分子間ジスルフィドを形成
することができ、それによってタンパク質の二量体又は多量体を形成することができる。
ジスルフィド二量体形成により、新しいシステインは、薬物、リガンド、又は他の標識と
のコンジュゲーションに関して非反応性となる。更に、タンパク質が、新たに改変された
システインと既存のシステイン残基との間で酸化的に分子内ジスルフィド結合を形成すれ
ば、いずれのシステイン基も、活性部位関与及び相互作用にとって利用できない。加えて
、タンパク質は、三次構造のミスフォールディング又は喪失により、不活性又は非特異的
となり得る(Zhang et al(2002)Anal.Biochem.311:
1〜9)。
【0012】
このため、均一な化学的コンジュゲーションを受けることができ、抗体コンジュゲート
が直面する問題を回避することができる分子が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、配列番号27に基づくFN3ドメインの6、8、10、11、14、15、
16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、6
0、62、64、70、88、89、90、91、及び93番目の残基、並びに関連する
FN3ドメインにおける同等の位置からなる群より選択される位置で少なくとも1つのシ
ステイン置換を含む、単離システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン
を提供する。ドメイン又はタンパク質中のある位置でのシステイン置換は、既存のアミノ
酸残基をシステイン残基に交換することを含む。
【0014】
本発明はまた、配列番号27のアミノ酸配列から少なくとも1つのシステイン置換を有
する配列番号27のアミノ酸配列を含み、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結
合して、EGFRに対する上皮成長因子(EGF)の結合を遮断する、単離システイン改
変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインも提供する。
【0015】
本発明は更に、配列番号114のアミノ酸配列から少なくとも1つのシステイン置換を
有する配列番号114のアミノ酸配列を含み、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)に特
異的に結合して、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HGF)の結合を遮断する、単離
システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供する。
【0016】
本発明は、システイン改変FN3ドメインを生成するためにシステイン置換が行われ得
る新規位置を提供する。前記位置には、配列番号11〜114及び/又は配列番号122
〜137の6、8、10、11、14、15、16、20、30、34、38、40、4
1、45、47、48、53、54、59、60、62、64、70、88、89、90
、91、又は93番目の残基の1つ又は2つ以上が挙げられる。
【0017】
本発明の1つの態様は、システイン改変FN3ドメインをコードするように1つ又は2
つ以上のアミノ酸残基をシステイン残基に交換することにより、親FN3ドメインの核酸
配列を変異させること;システイン改変FN3ドメインを発現させること;及びシステイ
ン改変FN3ドメインを単離すること、によって単離システイン改変FN3ドメインを調
製するプロセスである。
【0018】
本発明のもう一つの態様は、FN3ドメインがマレイミド部分を含む化学試薬に共有結
合している、化学的にコンジュゲートされた単離システイン改変FN3ドメインである。
【0019】
本発明のもう一つの実施形態は、EGFR過剰発現及び/又はc−Met発現腫瘍細胞
株の増殖を阻害することができる、化学的にコンジュゲートされた単離システイン改変F
N3ドメインである。
【0020】
本出願はまた、第1及び第2のFN3ドメインが、6、8、10、11、14、15、
16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、6
0、62、64、70、88、89、90、91、及び93番目の残基からなる群から選
択される位置でシステイン置換を含む、第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメ
インと第2のFN3ドメインとを含み、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合
して、EGFRに対する上皮成長因子(EGF)の結合を遮断し、第2のFN3ドメイン
が肝細胞増殖因子受容体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対する肝細胞
増殖因子(HGF)の結合を遮断する、単離システイン改変二重特異性FN3分子を提供
する。
【0021】
本発明のもう一つの態様は、二重特異性分子がマレイミド部分を含む化学試薬に共有結
合している、化学的にコンジュゲートされた単離システイン改変二重特異性分子である。
【0022】
本発明の更なる態様は、システイン改変二重特異性分子をコードするように、1つ又は
2つ以上のアミノ酸残基をシステイン残基に交換することにより、親FN3二重特異性分
子の核酸配列を変異させること;システイン改変分子を発現させること;及びシステイン
改変二重特異性分子を単離すること、によって単離システイン改変二重特異性FN3を調
製するプロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】EGFR結合FN3ドメインのアミノ酸アライメントである。BC及びFGループを、配列番号18の22〜28番目及び75〜86番目の残基を四角で囲んで示す。いくつかの変種は、熱安定性を改善するL17A、N46K、及びE86I置換を含む(残基の番号はTencon配列番号1に従う)。
図1B】EGFR結合FN3ドメインのアミノ酸アライメントである。BC及びFGループを、配列番号18の22〜28番目及び75〜86番目の残基を四角で囲んで示す。いくつかの変種は、熱安定性を改善するL17A、N46K、及びE86I置換を含む(残基の番号はTencon配列番号1に従う)。
図2】細胞毒素/リンカー構造。
図3】P54AR4−83v2タンパク質(配列番号27)の結晶構造のリボン表示である。システイン置換に寛容な位置として同定された最終的な位置を、棒で示し、黒色で示す。結合ループBC/FGを薄い灰色で示す。
図4】無作為化C−CD−F−FG交互表面を有する、Tencon27足場構造(配列番号99)とTCL14ライブラリ(配列番号100)の配列アライメントであるループ残基を四角で囲む。ループ及び鎖を配列の上に示す。
図5A】c−Met結合FN3ドメインの配列アライメントである。CループとCD鎖及びFループとFG鎖を四角で囲み、これらは29〜43番目の残基及び65〜81番目の残基に及ぶ。
図5B】c−Met結合FN3ドメインの配列アライメントである。CループとCD鎖及びFループとFG鎖を四角で囲み、これらは29〜43番目の残基及び65〜81番目の残基に及ぶ。
図6】単特異性又は二重特異性FN3ドメイン含有分子で前処置して、HGFで刺激したH292細胞におけるc−Metリン酸化の阻害を示す。単特異性c−Met結合FN3ドメイン(P114AR5P74−A5、図でA5として示す)の単独又はEGFR結合FN3ドメイン(P54AR4−83v2、図で83v2として示す)との併用と比較して、二重特異性EGFR/c−Met分子(ECB1)の効力の実質的な増加が観察された。
図7】単特異性又は二重特異性FN3ドメイン含有分子で前処置した細胞におけるEGFR及びc−Metリン酸化の阻害である。高レベルのEGFRを発現する細胞株H292(A)及びH596(B)において、抗EGFR単特異性及び二重特異性FN3ドメイン含有分子は、EGFRリン酸化の減少において等しい効力を有する。c−Metと比較して低レベルのEGFRを発現する細胞株H441(C)において、二重特異性EGFR/c−Met分子は、単特異性EGFR結合FN3ドメイン単独と比較してEGFRリン酸化阻害の効力を改善する。EGFRと比較して低レベルのc−Metを有する細胞株H292(D)及びH596(E)において、c−Metリン酸化の阻害は、単特異性c−Met結合FN3ドメイン単独と比較して二重特異性EGFR/c−Met分子では有意に増強される。試験で使用した分子は:二重特異性ECB5(図で17−A3として示す)、単特異性EGFR結合FN3ドメインP53A1R5−17(図で「17」として示す)、二重特異性EGFR/c−Met分子ECB3(図で83−H9として示す)、及び単特異性c−Met結合FN3ドメインP114AR7P93−H9(図においてH9として示す)であった。
図8】二重特異性EGFR/c−Met分子を投与したマウスから単離した腫瘍における6時間又は72時間の薬力学的シグナリングを示す。全ての分子は、6時間及び72時間の両方でc−Met、EGFR、及びERKリン酸化を有意に減少させ、阻害の程度は、EGFR及び/又はc−Metに対するFN3ドメインの親和性に依存した。二重特異性分子は、高い(83はp54AR4−83v2である)又は中等度(図の「17v2」は、P53A1R5−17v2である)の親和性を有するEGFR結合FN3ドメインを、高い(図の「A3」はP114AR7P94−A3である)又は中等度(図の「A5」はP114AR5P74−A5である)の親和性を有するc−Met結合FN3ドメインに連結させることによって作製された。
図9】:アルブミン結合ドメイン(ABD)に結合した種々の親和性を有する二重特異性EGFR/c−Met分子の血漿中(上)及び腫瘍(下)での蓄積を、IP投与後6時間(左)及び72時間(右)で示す。投与後6時間で、中等度親和性のEGFR結合FN3ドメイン(17v2)及び高親和性c−Met結合ドメイン(83v2)を有する二重特異性分子を投与したマウスにおいて腫瘍での蓄積は最大である。二重特異性分子は、以下の高親和性又は中等度親和性EGFR又はc−Met結合FN3ドメインを組み入れた:83v2−A5−ABD(ECB18;EGFR/cMetに関して高/中等度)83v2−A3−ABD(ECB38;高/高)17v2−A5(ECB28;中等度/中等度)17v2−A3−ABD(ECB39;中等度/高)。83v2はp54AR4−83v2を意味し;17v2はp53A1R5−17v2を意味し;A3はp114AR7P94−A3を意味し;A5はp114AR5P74−A5を意味する。
図10】H292−HGF腫瘍異種移植片をSCID beigeマウスに植え込んだ。腫瘍の平均体積がおよそ80mmに達したとき、マウスに二重特異性EGFR/c−Met分子(25mg/kg)又はPBSビヒクルを1週間に3回投与した。二重特異性分子は全て、腫瘍の増殖を減少させ、腫瘍の増殖阻害(TGI)は、c−Met及びEGFRに対する分子の親和性に依存した。(高EGFR−高cMetは、p54AR4−83v2−p114AR7P94−A3(ECB38)を意味し;高EGFR−中等度cMetは、p54AR4−83v2−p114AR5P74−A5(ECB18)を意味し;中等度EGFR−高cMetは、p53A1R5−17v2−p114AR7P94−A3(ECB39)を意味し;中等度EGFR−中等度cMetは、p53A1R5−17−p114AR5P74−A5(ECB28)を意味する)。
図11】H292−HGF腫瘍異種移植片をSCID beigeマウスに植え込んでマウスを異なる治療によって処置した。治療の抗腫瘍活性を示す。(二重特異性EGFR/c−Metは、p54AR4−83v2−p114AR7P94−A3−ABD(ECB38)を意味し;他の治療は、クリゾチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、及びクリゾチニブとエルロチニブの併用である)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で用いられる用語「フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン」(FN3
ドメイン)は、フィブロネクチン、テナシン、細胞内細胞骨格タンパク質、サイトカイン
受容体、及び原核細胞酵素を含むタンパク質においてしばしば存在するドメインを意味す
る(Bork and Doolittle,Proc Nat Acad Sci U
SA 89:8990〜8994,1992;Meinke et al.,J Bac
teriol 175:1910〜1918,1993;Watanabe et al
.,J Biol Chem 265:15659〜15665,1990)。例示的な
FN3ドメインは、ヒトテナシンCに存在する異なる15個のFN3ドメイン、ヒトフィ
ブロネクチン(FN)に存在する異なる15個のFN3ドメイン、及び例えば米国特許出
願公開第2010/0216708号に記述される非天然の合成FN3ドメインである。
個々のFN3ドメインは、ドメイン番号とタンパク質の名称で呼ばれ、例えばテナシンの
3番目のFN3ドメイン(TN3)又はフィブロネクチンの10番目のFN3ドメイン(
FN10)と呼ばれる。
【0025】
本明細書で使用される用語「置換する」、又は「置換した」、又は「変異する」、又は
「変異した」は、その配列の変種を生成するために、ポリペプチド又はポリヌクレオチド
の配列に1つ又は2つ以上のアミノ酸又はヌクレオチドを変化させること、欠失させるこ
と、又は挿入することを指す。
【0026】
本明細書で使用される用語「無作為化する」、又は「無作為化した」、又は「多様化し
た」、又は「多様化する」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に少なくとも1つ
の置換、挿入、又は欠失を作製することを指す。
【0027】
本明細書で使用される用語「変種」は、1つ又は2つ以上の修飾、例えば、置換、挿入
、又は欠失によって、基準ポリペプチド又は基準ポリヌクレオチドとは異なっている、ポ
リペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0028】
本明細書で使用される用語「特異的に結合する」又は「特異的結合」は、1×10−6
M若しくはそれより低い、例えば1×10−7M若しくはそれより低い、1×10−8
若しくはそれより低い、1×10−9M若しくはそれより低い、1×10−10M若しく
はそれより低い、1×10−11M若しくはそれより低い、1×10−12M若しくはそ
れより低い、又は1×10−13M若しくはそれより低い解離定数(K)で、本発明の
FN3ドメインが既定の抗原に結合する能力を指す。典型的に、本発明のFN3ドメイン
は、例えばProteon Instrument(BioRad)を用いる表面プラズ
モン共鳴によって測定した場合に非特異的抗原(例えば、BSA又はカゼイン)に対する
そのKより少なくとも10倍低いKで既定の抗原(すなわち、EGFR又はc−Me
t)に結合する。このように、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイ
ン含有分子は、EGFR及びc−Metの両方に対して少なくとも1×10−6M又はそ
れより低い結合親和性(K)でそれぞれのEGFR及びc−Metに特異的に結合する
。しかし、既定の抗原に特異的に結合する本発明の単離FN3ドメインは、他の関連する
抗原、例えば他の種からの同じ既定の抗原(ホモログ)に対して交叉反応性を有し得る。
【0029】
用語「ライブラリ」は、変種のコレクションを指す。ライブラリは、ポリペプチド又は
ポリヌクレオチド変種で構成され得る。
【0030】
本明細書で使用される用語「安定性」は、例えばEGFR又はc−Metなどの既定の
抗原に対する結合などの、その正常な機能活性のうちの少なくとも1つを保持するように
、生理学的条件下で分子が折りたたみ状態を維持できること指す。
【0031】
本明細書で使用される「上皮成長因子受容体」又は「EGFR」は、配列番号73及び
GenBank受託番号NP_005219に示される配列を有するヒトEGFR(HE
R−1又はErb−B1としても知られる)(Ullrich et al.,Natu
re 309:418〜425,1984)、並びにその天然に存在する変種を意味する
。そのような変種には、周知のEGFRvIII及び他の選択的スプライス変種(例えば
、SwissProt受託番号P00533−1、P00533−2、P00533−3
、P00533−4として同定される変種)、変種GLN−98、ARG−266、Ly
s−521、ILE−674、GLY−962、及びPRO−988(Livingst
on et al.,NIEHS−SNPs,environmental genom
e project,NIEHS ES15478)が挙げられる。
【0032】
本明細書において使用される「EGFRリガンド」は、EGF、TGF−α、ヘパリン
結合EGF(HB−EGF)、アンフィレグリン(AR)、及びエピレグリン(EPI)
を含むEGFRの全ての(例えば、生理的)リガンドを包含する。
【0033】
本明細書において使用される「上皮成長因子」は、配列番号74に示されるアミノ酸配
列を有する周知のアミノ酸53個のヒトEGFを指す。
【0034】
本明細書で使用される「肝細胞増殖因子受容体」又は「c−Met」は、配列番号10
1又はGenBank受託番号NP_001120972に示されるアミノ酸配列を有す
るヒトc−Met及びその天然の変種を指す。
【0035】
本明細書で使用される「肝細胞増殖因子」は、切断されてジスルフィド結合で結合した
α鎖とβ鎖の二量体を形成する、配列番号102に示されるアミノ酸配列を有する周知の
ヒトHGFを指す。
【0036】
本明細書で互換的に使用される「結合を遮断する」、又は「結合を阻害する」とは、二
重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の本発明のFN3ドメインが、
EGFRに対するEGF及び/又はc−Metに対するHGFなどのEGFRリガンドの
結合を遮断できること又は阻害できることを指し、部分的及び完全な遮断/阻害の両方を
包含する。本発明のFN3ドメイン、又は本発明の二重特異性EGFR/c−Met F
N3ドメイン含有分子によるEGFRに対するEGF及び/又はc−Metに対するHG
FなどのEGFRリガンドの遮断/阻害は、遮断又は阻害がない場合のEGFRに対する
EGFRリガンド結合及び/又はc−Metに対するHGF結合と比較して、正常レベル
のEGFRシグナリング及び/又はc−Metシグナリングを部分的又は完全に減少させ
る。本発明のFN3ドメイン、又は二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含
有分子は、阻害が少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%
、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%
、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%であるとき、EGFRに対す
るEGF及び/又はc−Metに対するHGFなどのEGFRリガンドの「結合を遮断す
る」。結合の阻害は、周知の方法、例えば本発明のFN3ドメイン又は二重特異性EGF
R/c−Met FN3ドメイン含有分子に暴露されたEGFR発現A431細胞でのビ
オチニル化EGFの結合の阻害をFACSを用いて測定することによって、又はc−Me
t細胞外ドメイン上のビオチニル化HGFの結合の阻害を周知の方法及び本明細書に記述
の方法を用いて測定することによって、測定することができる。
【0037】
用語「EGFRシグナリング」は、EGFRに対するEGFRリガンドの結合により誘
発されるシグナル伝達を指し、それによってEGFRにおける少なくとも1つのチロシン
残基の自己リン酸化が起こる。例示的なEGFRリガンドはEGFである。
【0038】
本明細書で使用される「EGFRシグナリングを中和する」とは、EGFなどのEGF
Rリガンドによって誘発されるEGFRシグナリングを、本発明のFN3ドメインが、少
なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、
75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、
97%、98%、99%又は100%阻害できることを指す。
【0039】
用語「c−Metシグナリング」は、c−Metに対するHGFの結合により誘発され
るシグナル伝達を指し、それによってc−Metにおける少なくとも1つのチロシン残基
の自己リン酸化が起こる。典型的に、HGFが結合すると、1230、1234、又は1
235番目の位置で少なくとも1つのチロシン残基が自己リン酸化される。
【0040】
本明細書で使用される「c−Metシグナリングを中和する」とは、HGFによって誘
発されるc−Metシグナリングを、本発明のFN3ドメインが、少なくとも30%、3
5%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、8
5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、9
9%又は100%阻害できることを指す。
【0041】
本明細書で互換的に使用される「過剰発現する」、「過剰発現された」、及び「過剰発
現している」は、同じ組織タイプの正常な細胞と比較して表面上に測定可能な高レベルの
EGFR及び/又はc−Metを有するがん細胞又は悪性細胞を指す。そのような過剰発
現は、遺伝子増幅、又は転写若しくは翻訳の増加によって、引き起こされ得る。EGFR
及び/又はc−Metの発現及び過剰発現は、周知のアッセイを用いて、例えば生存細胞
又は溶解細胞におけるELISA、免疫蛍光、フローサイトメトリー、又はラジオイムノ
アッセイを用いて測定することができる。あるいは又は加えて、EGFR及び/又はc−
Metコード核酸分子のレベルは、例えば蛍光インサイチューハイブリダイゼーション、
サザンブロッティング、又はPCR技術を用いて細胞中で測定され得る。EGFR及び/
又はc−Metは、正常細胞と比較して、細胞表面上のEGFR及び/又はc−Metの
レベルが少なくとも1.5倍高いとき、過剰発現されている。
【0042】
本明細書で使用される「Tencon」は、配列番号1に示され、米国特許出願公開第
2010/0216708号に記述される合成フィブロネクチンIII型(FN3)ドメ
インを指す。
【0043】
本明細書で使用される「がん細胞」又は「腫瘍細胞」は、インビボ、エクスビボ、及び
組織培養のいずれかにおいて、新しい遺伝材料の取り込みを必ずしも伴わない自発的又は
人為的な表現型の変化を有するがん様、前がん様、又は形質転換細胞を指す。形質転換は
、形質転換ウイルスの感染及び新たなゲノム核酸の取り込み、又は外因性の核酸の取り込
みにより発生し得るが、自然に又は発がん物質に対する暴露後にも発生して、それによっ
て内因性の遺伝子を変異させ得る。形質転換/がんは、例えば、インビトロ、インビボ、
及びエクスビボにおける、形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖制御、病巣の形成、
増殖、悪性度、腫瘍特異的マーカーレベル、浸潤性、ヌードマウスなどの適した動物宿主
における腫瘍の増殖又は抑制等によって例示される(Freshney,Culture
of Animal Cells:A Manual of Basic Techn
ique(3rd ed.1994))。
【0044】
用語「ベクター」は、生物系の内部で複製され得る、又はこうした系の間を移動するこ
とができるポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは典型的に、生物系
においてこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持を促進するように機能する複製起点、
ポリアデニル化シグナル又は選択マーカーなどのエレメントを含んでいる。このような生
物系の例としては、細胞、ウイルス、動物、植物、及びベクターを複製することができる
生物学的成分を利用する再構成生物系を挙げることができる。ベクターを構成するポリヌ
クレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はこれらのハイブリッド分子であり得る。
【0045】
用語「発現ベクター」は、発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコ
ードされるポリペプチドの翻訳を指示するために、生物系又は再構成生物系において利用
することができるベクターを意味する。
【0046】
用語「ポリヌクレオチド」は、糖−リン酸骨格又は他の同等の共有結合化学により共有
的に連結されたヌクレオチド鎖からなる分子を意味する。二本鎖及び一本鎖のDNA及び
RNAが、ポリヌクレオチドの典型例である。
【0047】
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ペプチド結合により連結されてポリペプ
チドを形成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を意味する。約50個未満のア
ミノ酸からなる小さいポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれる場合もある。
【0048】
本明細書で使用される用語「二重特異性EGFR/c−Met分子」又は「二重特異性
EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子」は、EGFR結合FN3ドメインと、
別個のc−Met結合FN3ドメインとで構成され、それらが直接又はリンカーを介して
互いに共有結合している分子を意味する。例示的な二重特異性EGFR/c−Met結合
分子は、EGFRに特異的に結合する第1のFN3ドメインと、c−Metに特異的に結
合する第2のFN3ドメインとを含む。
【0049】
本明細書で使用される「価数」は、分子中の抗原に対して特異的な結合部位が明記され
た数存在することを指す。そのため、用語「1価」、「2価」、「4価」、及び「6価」
はそれぞれ、抗原に対して特異的な結合部位が分子中に1個、2個、4個、及び6個存在
することを指す。
【0050】
本明細書で使用される「混合物」は、互いに共有結合していない2つ以上のFN3ドメ
インの試料又は調製物を指す。混合物は、2つ以上の同一のFN3ドメイン又は別個のF
N3ドメインからなり得る。
【0051】
組成物
本発明は、システイン改変単特異性及び二重特異性EGFR/c−Met結合FN3ド
メイン含有分子並びにそれらを作製及び使用する方法を提供する。
【0052】
単特異性EGFR結合分子
本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対する上
皮成長因子(EGF)の結合を遮断し、それにより治療応用及び診断応用において広く使
用することができるフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供する。本発明は
、本発明のFN3ドメインをコードするポリヌクレオチド又はその相補的核酸、ベクター
、宿主細胞、並びにそれらを作製及び使用する方法を提供する。
【0053】
本発明のFN3ドメインは、高親和性でEGFRに結合して、EGFRシグナリングを
阻害することから、低分子EGFR阻害剤と比較して特異性及び減少したオフターゲット
毒性の点で、並びに従来の抗体治療と比較して改善された組織浸透の点で恩典を提供し得
る。
【0054】
本発明の1つの実施形態は、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、E
GFRに対する上皮成長因子(EGF)の結合を遮断する単離フィブロネクチンIII型
(FN3)ドメインである。
【0055】
本発明のFN3ドメインは、A431細胞を使用して、本発明のFN3ドメインの存在
下又は非存在下でインキュベートしたA431細胞上で600nMのストレプトアビジン
−フィコエリスリンコンジュゲートを用いて結合したビオチニル化EGFからの蛍光の量
を検出する競合アッセイにおいて、約1×10−7Mより低い、約1×10−8Mより低
い、約1×10−9Mより低い、約1×10−10Mより低い、約1×10−11Mより
低い、又は約1×10−12Mより低いIC50値でEGFRに対するEGFの結合を遮
断し得る。例示的なFN3ドメインは、配列番号18〜29、107〜110、又は12
2〜137のアミノ酸配列を有するEGFR結合FN3ドメインなどであり、約1×10
−9M〜約1×10−7MのIC50値でEGFRに対するEGFの結合を遮断し得る。
本発明のFN3ドメインは、同じアッセイ条件を用いて、本発明のFN3ドメインの非存
在下でのEGFRに対するEGFの結合と比較して、EGFRに対するEGFの結合を少
なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、
75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、
97%、98%、99%、又は100%遮断し得る。
【0056】
本発明のFN3ドメインは、同じアッセイ条件を用いて、本発明のFN3ドメインの非
存在下でのシグナリングレベルと比較して、EGFRシグナリングを少なくとも30%、
35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、
85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、
99%、又は100%遮断し得る。
【0057】
EGFRにEGFなどのリガンドが結合すると、受容体の二量体化、自己リン酸化、受
容体内部の細胞質チロシンキナーゼドメインの活性化、並びにDNA合成(遺伝子活性化
)及び細胞周期進行又は分裂の調節に関係する多数のシグナル伝達及びトランス活性化経
路の開始を刺激する。EGFRシグナリングが阻害されると、1つ又は2つ以上の下流の
EGFRシグナリング経路が阻害され、それによってEGFRの中和は、細胞増殖及び分
化、血管新生、細胞運動性、及び転移の阻害を含む、様々な効果を有し得る。
【0058】
EGFRシグナリングは、様々な周知の方法を用いて、例えばチロシンY1068、Y
1148、及びY1173のいずれかでの受容体の自己リン酸化(Downward e
t al.,Nature 311:483〜5,1984)及び/又は天然若しくは合
成基質のリン酸化を測定することにより測定され得る。リン酸化は、ホスホチロシン特異
的抗体を用いるELISAアッセイ又はウェスタンブロットなどの周知の方法を用いて検
出することができる。例示的なアッセイは、Panek et al.,J Pharm
acol Exp Thera 283:1433〜44,1997及びBatley
et al.,Life Sci 62:143〜50,1998において見いだされ得
る。
【0059】
1つの実施形態において、本発明のFN3ドメインは、50ng/mLヒトEGFを用
いてA431細胞において測定されるとき、約2.5×10−6Mより低い、例えば約1
×10−6Mより低い、約1×10−7Mより低い、約1×10−8Mより低い、約1×
10−9Mより低い、約1×10−10Mより低い、約1×10−11Mより低い、又は
約1×10−12Mより低いIC50値で、EGFRの1173番目の残基位置のチロシ
ンでのEGF誘発EGFRリン酸化を阻害する。
【0060】
1つの実施形態において、本発明のFN3ドメインは、50ng/mLヒトEGFを用
いてA431細胞において測定されるとき、約1.8×10−8M〜約2.5×10−6
MのIC50値で、EGFRの1173番目の残基位置のチロシンでのEGF誘発EGF
Rリン酸化を阻害する。そのような例示的なFN3ドメインは、配列番号18〜29、1
07〜110、又は122〜137のアミノ酸配列を有するドメインである。
【0061】
1つの実施形態において、本発明のFN3ドメインは、当業者によって実践される表面
プラズモン共鳴又はKinexa法によって決定する場合、約1×10−8Mより低い、
例えば、約1×10−9Mより低い、約1×10−10Mより低い、約1×10−11
より低い未満、約1×10−12Mより低い、又は約1×10−13Mより低い解離定数
(K)でヒトEGFRに結合する。いくつかの実施形態において、本発明のFN3ドメ
インは、約2×10−10M〜約1×10−8MのKでヒトEGFRに結合する。EG
FRに対するFN3ドメインの親和性は、任意の適した方法を用いて実験により決定する
ことができる。(例えば、Berzofsky,et al.,「Antibody−A
ntigen Interactions,」In Fundamental Immu
nology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New Yor
k,NY(1984);Kuby,Janis Immunology,W.H.Fre
eman and Company:New York,NY(1992);及び本明細
書に記述される方法を参照されたい)。特定のFN3ドメイン−抗原相互作用に関して測
定される親和性は、異なる条件(例えば、モル浸透圧濃度、pH)下で測定すれば、異な
り得る。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、K、Kon、K
ff)の測定は、好ましくは、標準化された足場タンパク質及び抗原溶液、並びに本明細
書で記載される緩衝液などの標準化された緩衝液を用いて行われる。
【0062】
EGFRに結合する本発明の例示的なFN3ドメインには、配列番号18〜29、10
7〜110、又は122〜137のFN3ドメインが挙げられる。
【0063】
1つの実施形態において、EGFRに特異的に結合するFN3ドメインは、配列番号2
7のアミノ酸配列と少なくとも87%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0064】
1つの実施形態において、EGFRに特異的に結合するFN3ドメインは、以下を含む

がM若しくはIである、配列HNVYKDTNXRGL(配列番号179)、又
は配列LGSYVFEHDVML(配列番号180)を含むFGループ;並びに
配列X(配列番号181)を含むBCループ;式中、
はA、T、G、又はDであり、
はA、D、Y、又はWであり、
はP、D、又はNであり、
はLであるか、又は存在せず、
はD、H、R、G、Y、又はWであり、
はG、D、又はAであり、
はA、F、G、H、又はDであり、及び
はY、F又はLである。
【0065】
EGFRに特異的に結合して、EGFRの自己リン酸化を阻害する本発明のFN3ドメ
インは、構造の特徴として、XがM若しくはIである、配列HNVYKDTNXRG
L(配列番号179)、又は配列LGSYVFEHDVML(配列番号180)を含むF
Gループを含み得る。そのようなFN3ドメインは更に、長さがアミノ酸8又は9個で、
配列X(配列番号181)によって定義され、50ng
/mLヒトEGFを用いてA431細胞において測定されるとき、約2.5×10−6
より低いのIC50値で、及び約1.8×10−8M〜約2.5×10−6MのIC50
値で、EGFRの自己リン酸化を阻害するBCループを含み得る。
【0066】
EGFRに特異的に結合して、EGFRの自己リン酸化を阻害する本発明のFN3ドメ
インは、
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWXDS
FLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVS
IYGVHNVYKDTNXRGLPLSAEFTT(配列番号182)の配列、又は
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWXDS
FLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVS
IYGVLGSYVFEHDVMLPLSAEFTT(配列番号183)の配列を更に含
み、
式中、
はA、T、G、又はDであり、
はA、D、Y、又はWであり、
はP、D、又はNであり、
はLであるか、又は存在せず、
はD、H、R、G、Y、又はWであり、
はG、D、又はAであり、
はA、F、G、H、又はDであり、
はY、F、又はLであり、及び
はM又はIである。
【0067】
EGFR結合FN3ドメインを作製して、周知の方法及び本明細書に記述の方法を用い
て、そのEGFR自己リン酸化阻害能に関して試験することができる。
【0068】
本発明のもう一つの実施形態は、EGFRに特異的に結合する単離FN3ドメインであ
り、単離FN3ドメインは配列番号18〜29、107〜110、又は122〜137に
示される配列を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、EGFR結合FN3ドメインは、例えば半減期延長分子
の発現及び/又はコンジュゲーションを促進するために、特定のFN3ドメインのN−末
端に連結された開始メチオニン(Met)又はC−末端に連結されたシステイン(Cys
)を含む。
【0070】
本発明のもう一つの実施形態は、EGFRに特異的に結合して、EGFRに対するEG
Fの結合を遮断する単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインであり、FN3ド
メインは配列番号1のTencon配列に基づいて設計されたライブラリから単離される
【0071】
単特異性c−Met結合分子
本発明は、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対
する肝細胞増殖因子(HGF)の結合を遮断し、それにより治療応用及び診断応用におい
て広く使用することができるフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供する。
本発明は、本発明のFN3ドメインをコードするポリヌクレオチド又はその相補的核酸、
ベクター、宿主細胞、並びにそれらを作製及び使用する方法を提供する。
【0072】
本発明のFN3ドメインは、高親和性でc−Metに結合して、c−Metシグナリン
グを阻害することから、低分子c−Met阻害剤と比較して、特異性及び減少したオフタ
ーゲット毒性の点で、並びに従来の抗体治療と比較して改善された組織浸透の点で恩典を
提供し得る。本発明のFN3ドメインは、一価であり、それゆえ他の二価分子に関して起
こりうる望ましくない受容体クラスタリング及び活性化を防止する。
【0073】
本発明の1つの実施形態は、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)に特異的に結合して
、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HGF)の結合を遮断する単離フィブロネクチン
III型(FN3)ドメインである。
【0074】
本発明のFN3ドメインは、本発明のFN3ドメインの存在下でc−Met−Fc融合
タンパク質に対するビオチニル化HGFの結合の阻害を検出するアッセイにおいて、約1
×10−7Mより低い、約1×10−8Mより低い、約1×10−9Mより低い、約1×
10−10Mより低い、約1×10−11Mより低い、又は約1×10−12Mより低い
IC50値でc−Metに対するHGFの結合を遮断し得る。例示的なFN3ドメインは
、約2×10−10M〜約6×10−8MのIC50値でc−Metに対するHGのF結
合を遮断し得る。本発明のFN3ドメインは、同じアッセイ条件を用いて、本発明のFN
3ドメインの非存在下でのc−Metに対するHGFの結合と比較して、c−Metに対
するHGFの結合を少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60
%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%遮断し得る。
【0075】
本発明のFN3ドメインは、同じアッセイ条件を用いて、本発明のFN3ドメインの非
存在下でのシグナリングレベルと比較して、c−Metシグナリングを少なくとも30%
、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%
、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
、99%、又は100%阻害し得る。
【0076】
c−MetにHGFが結合すると、受容体の二量体化、自己リン酸化、受容体内部の細
胞質チロシンキナーゼドメインの活性化、並びにDNA合成(遺伝子活性化)及び細胞周
期進行又は分裂の調節に関係する多数のシグナル伝達及びトランス活性化経路の開始を刺
激する。c−Metシグナリングが阻害されると、1つ又は2つ以上の下流のc−Met
シグナリング経路が阻害され、そのためc−Metの中和は、細胞増殖及び分化、血管新
生、細胞運動性、及び転移の阻害を含む、様々な効果を有し得る。
【0077】
c−Metシグナリングは、様々な周知の方法を用いて、例えば少なくとも1つのチロ
シン残基Y1230、Y1234、及びI1235での受容体の自己リン酸化及び/又は
天然若しくは合成基質のリン酸化を測定することによって測定され得る。リン酸化は、例
えばELISAアッセイ又はウェスタンブロットにおいてホスホチロシンに対して特異的
な抗体を用いて検出することができる。チロシンキナーゼ活性に関するいくつかのアッセ
イ(Panek et al.,J Pharmacol Exp Thera 283
:1433〜44,1997;Batley et al.,Life Sci 62:
143〜50,1998)。
【0078】
1つの実施形態において、本発明のFN3ドメインは、100ng/mL組み換え型ヒ
トHGFを用いてNCI−H441細胞において測定されるとき、約1×10−6Mより
低い、例えば約1×10−7Mより低い、約1×10−8Mより低い、約1×10−9
より低い、約1×10−10Mより低い、約1×10−11Mより低い、約1×10−1
Mより低い、又は約1×10−12Mより低いIC50値で、c−Metの1349番
目の残基位置でのHGF誘発c−Metリン酸化を阻害する。
【0079】
1つの実施形態において、本発明のFN3ドメインは、100ng/mL組み換え型ヒ
トHGFを用いてNCI−H441細胞において測定されるとき、約4×10−9M〜約
1×10−6MのIC50値で、c−MetのY1349のチロシンでのHGF誘発c−
Metリン酸化を阻害する。
【0080】
1つの実施形態において、本発明のFN3ドメインは、当業者によって実践される表面
プラズモン共鳴又はKinexa法によって決定するとき、約1×10−7M、約1×1
−8M、約1×10−9M、約1×10−10M、約1×10−11M、約1×10
12M、約1×10−13M、約1×10−14M、又は約1×10−15Mに等しいか
又はそれより低い解離定数(K)でヒトc−Metに結合する。いくつかの実施形態に
おいて、本発明のFN3ドメインは、約3×10−10M〜約5×10−8MのKでヒ
トc−Metに結合する。c−Metに関するFN3ドメインの親和性は、任意の適した
方法を用いて実験により決定することができる。(例えば、Berzofsky,et
al.,「Antibody−Antigen Interactions,」In F
undamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Rave
n Press:New York,NY(1984);Kuby,Janis Imm
unology,W.H.Freeman and Company:New York
,NY(1992);及び本明細書に記述される方法を参照されたい)。特定のFN3ド
メイン−抗原相互作用に関して測定される親和性は、異なる条件(例えば、モル浸透圧濃
度、pH)下で測定すれば、異なり得る。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメー
タ(例えば、K、Kon、Koff)の測定は、好ましくは、標準化された足場タンパ
ク質及び抗原溶液、並びに本明細書で記載される緩衝液などの標準化された緩衝液を用い
て行われる。
【0081】
c−Metに結合する本発明の例示的なFN3ドメインには、配列番号32〜49、又
は111〜114のアミノ酸配列を有するFN3ドメインが挙げられる。
【0082】
1つの実施形態において、c−Metに特異的に結合するFN3ドメインは、配列番号
41のアミノ酸配列と少なくとも83%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0083】
1つの実施形態において、c−Metに特異的に結合するFN3ドメインは、以下を含
む:
配列DSFX10IRYX11EX12131415GX16(配列番号184
)を含むC鎖及びCDループ、式中
10はW、F、又はVであり、
11はD、F、又はLであり、
12はV、F、又はLであり、
13はV、L、又はTであり、
14はV、R、G、L、T、又はSであり、
15はG、S、A、T、又はKであり、及び
16は、E、又はDであり、及び
配列TEYX17VX18IX1920VKGGX2122SX23(配列番号1
85)を含むF鎖及びFGループ、式中
17はY、W、I、V、G、又はAであり、
18はN、T、Q、又はGであり、
19はL、M、N、又はIであり、
20は、G、又はSであり、
21は、S、L、G、Y、T、R、H、又はKであり、
22はI、V、又はLであり、及び
23はV、T、H、I、P、Y、T、又はLである。
【0084】
c−Metに特異的に結合して、c−Metの自己リン酸化を阻害する本発明のFN3
ドメインは、配列
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFX10IRYX
EX12131415GX16AIVLTVPGSERSYDLTGLKPGT
EYX17VX18IX1920VKGGX2122SX23PLSAEFTT(配
列番号186)を更に含み、
式中、
10はW、F、又はVであり、及び
11はD、F、又はLであり、
12はV、F、又はLであり、
13はV、L、又はTであり、
14はV、R、G、L、T、又はSであり、
15はG、S、A、T、又はKであり、
16はE、又はDであり、
17はY、W、I、V、G、又はAであり、
18はN、T、Q、又はGであり、
19はL、M、N、又はIであり、
20はG、又はSであり、
21は、S、L、G、Y、T、R、H、又はKであり、
22はI、V、又はLであり、及び
23はV、T、H、I、P、Y、T、又はLである。
【0085】
本発明のもう一つの実施形態は、c−Metに特異的に結合する単離FN3ドメインで
あり、FN3ドメインは配列番号32〜49、又は111〜114に示される配列を含む
【0086】
本発明のもう一つの実施形態は、c−Metに特異的に結合して、c−Metに対する
HGFの結合を遮断する単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインであり、FN
3ドメインは配列番号1のTencon配列に基づいて設計されたライブラリから単離さ
れる。
【0087】
Tencon配列に基づくライブラリからのEGFR又はc−Met FN3ドメイン
の単離
Tencon(配列番号1)は、ヒトテナシン−Cからの15個のFN3ドメインのコ
ンセンサス配列から設計された天然に存在しないフィブロネクチンIII型(FN3)ド
メインである(Jacobs et al.,Protein Engineering
,Design,and Selection,25:107〜117,2012;米国
特許出願公開第2010/0216708号)。Tenconの結晶構造は、FN3ドメ
インの特徴である7個のβ鎖をつなぐ6回表面露出ループを示し、β鎖は、A、B、C、
D、E、F、及びGと呼ばれ、ループは、AB、BC、CD、DE、EF、及びFGルー
プと呼ばれる(Bork and Doolittle,Proc Natl Acad
Sci USA 89:8990〜8992,1992;米国特許第6,673,90
1号)。これらのループ又は各ループ内の選択された残基を、フィブロネクチンIII型
(FN3)ドメインのライブラリを構築するために無作為化することができ、これらを用
いてEGFRに結合する新規分子を選択することができる。表1は、Tencon(配列
番号1)における各ループ及びβ鎖の位置及び配列を示す。
【0088】
これにより、以下に記述されるライブラリTCL1又はTCL2などの、Tencon
配列に基づいて設計されたライブラリは、無作為化FGループ、又は無作為化BC及びF
Gループを有し得る。Tencon BCループは、長さがアミノ酸7個であり、このた
め、1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸を、BCループで多様化させてTen
con配列に基づいて設計したライブラリにおいて無作為化してもよい。Tencon
FGループは、長さがアミノ酸7個であり、このため、1、2、3、4、5、6、又は7
個のアミノ酸を、FGループで多様化させてTencon配列に基づいて設計したライブ
ラリにおいて無作為化してもよい。Tenconライブラリにおけるループでの更なる多
様性は、ループでの残基の挿入及び/又は欠失によって達成され得る。例えば、FG及び
/又はBCループを、アミノ酸1〜22個伸長させてもよく、又はアミノ酸1〜3個減少
させてもよい。TenconにおけるFGループは、長さがアミノ酸7個であり、抗体重
鎖における対応するループは、残基4〜28個の範囲である。最大の多様性を提供するた
めに、FGループを、残基4〜28個の抗体CDR3の長さの範囲に対応するように、配
列並びに長さを多様化させてもよい。例えば、追加の1、2、3、4、又は5個のアミノ
酸によってループを伸長させることにより、FGループの長さを更に多様化させることが
できる。
【0089】
Tencon配列に基づいて設計されたライブラリはまた、FN3ドメインの側面を形
成する無作為化された代替表面を有してもよく、それらは2つ以上のβ鎖と少なくとも1
つのループを含んでもよい。そのような1つの代替表面は、C及びFのβ鎖、並びにCD
及びFGループのアミノ酸によって形成される(C−CD−F−FG表面)。Tenco
nの代替C−CD−F−FG表面に基づくライブラリの設計を図4に示し、そのようなラ
イブラリの詳細な作製は米国特許出願第13/852,930号に記述される。
【0090】
Tencon配列に基づいて設計されたライブラリはまた、11、14、17、37、
46、73、又は86番目の位置(残基の番号付けは配列番号1に対応する)の残基で置
換を有し、改善された熱安定性を示すTencon変種などのTencon変種に基づい
て設計されたライブラリを含む。例示的なTencon変種は、米国特許出願第2011
/0274623号に記述され、配列番号1のTenconと比較してE11R、L17
A、N46V、E86Iの置換を有するTencon27(配列番号99)を含む。
【0091】
【表1】
【0092】
Tencon及び他のFN3配列に基づくライブラリは、無作為又は既定の組のアミノ
酸を用いて、選択された残基位置で無作為化することができる。例えば、ライブラリにお
いて無作為置換を有する変種を、天然に存在する20個全てのアミノ酸をコードするNN
Kコドンを用いて作製することができる。他の多様化スキームにおいて、アミノ酸Ala
、Trp、Tyr、Lys、Thr、Asn、Lys、Ser、Arg、Asp、Glu
、Gly、及びCysをコードするために、DVKコドンを使用することができる。ある
いは、20個全てのアミノ酸残基を生じさせ、同時に停止コドンの頻度を低減するために
、NNSコドンを使用することができる。多様化させる位置で偏りのあるアミノ酸分布を
有するFN3ドメインのライブラリは、例えばSlonomics(登録商標)技術(h
ttp:_//www_sloning_com)を用いて合成することができる。この
技術は、何千もの遺伝子合成プロセスにとって十分な万能構築ブロックとして作用する、
既製の二本鎖トリプレットのライブラリを使用する。トリプレットのライブラリは、あら
ゆる所望のDNA分子を構築するのに必要な、全ての考えられる配列組合せを示す。コド
ン指定は、周知のIUBコードによる。
【0093】
本発明のEGFR又はc−Metに特異的に結合するFN3ドメインは、RepAをコ
ードするDNA断片に、足場タンパク質をコードするDNA断片をライゲートして、イン
ビトロ翻訳後に形成される、それぞれのタンパク質がそれがコードするDNAに安定に会
合する(米国特許第7,842,476号;Odegrip et al.,Proc
Natl Acad Sci U S A 101,2806〜2810,2004)タ
ンパク質−DNA複合体のプールを作製するために、CISディスプレイを用いてTen
conライブラリなどのFN3ライブラリを作製すること、及び当技術分野で周知の及び
実施例で記述される任意の方法によってEGFR及び/又はc−Metに対する特異的結
合に関してライブラリをアッセイすることによって単離することができる。用いることが
できる例示的な周知の方法は、ELISA、サンドイッチイムノアッセイ、並びに競合的
及び非競合的アッセイである(例えば、Ausubel et al.,eds,199
4,Current Protocols in Molecular Biology
,Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkを参
照されたい)。EGFR又はc−Metに特異的に結合する同定されたFN3ドメインを
、EGFRに対するEGFの結合、又はc−Metに対するHGFの結合などのEGFR
リガンドの遮断能に関して、及び本明細書に記述の方法を用いてEGFR及び/又はc−
Metシグナリングの阻害能に関して更に特徴を調べる。
【0094】
本発明のEGFR又はc−Metに特異的に結合するFN3ドメインは、ライブラリを
作製するために鋳型として任意のFN3ドメインを用いること、及び本明細書に提供され
る方法を用いてEGFR及び/又はc−Metに特異的に結合する分子に関してライブラ
リをスクリーニングすることによって作製することができる。用いることができる例示的
なFN3ドメインは、テナシンCの3番目のFN3ドメイン(TN3)(配列番号75)
、フィブコン(配列番号76)、及びフィブロネクチンの10番目のFN3ドメイン(F
N10)(配列番号77)である。標準的なクローニング及び発現技術を用いて、インビ
トロでライブラリを発現又は翻訳させるために、ベクターにおいてライブラリをクローニ
ングするか、又はライブラリの二本鎖cDNAカセットを合成する。例えば、リボソーム
ディスプレイ(Hanes and Pluckthun,Proc Natl Aca
d Sci USA,94,4937〜4942,1997)、mRNAディスプレイ(
Roberts and Szostak,Proc Natl Acad Sci U
SA,94,12297〜12302,1997)、又は他の無細胞系(米国特許第5,
643,768号)を用いることができる。FN3ドメイン変種のライブラリは、例えば
任意の適したバクテリオファージの表面上に表示された融合タンパク質として発現され得
る。バクテリオファージの表面上に融合ポリペプチドを表示する方法は周知である(米国
特許出願第2011/0118144号;国際公開公報第WO2009/085462号
米国特許第6,969,108号;米国特許第6,172,197号;米国特許第5,2
23,409号;米国特許第6,582,915号;米国特許第6,472,147号)
【0095】
本発明のEGFR又はc−Metに特異的に結合するFN3ドメインは、熱安定性を改
善するため、並びに熱フォールディング及びアンフォールディングの可逆性を改善するた
めなどの特性を改善するために改変することができる。タンパク質及び酵素の見かけの熱
安定性を増加させるために、類似の高熱安定性配列との比較に基づく合理的設計、ジスル
フィド架橋を安定化する設計、α−へリックス性向を増加させる変異、塩架橋の改変、タ
ンパク質の表面電荷の変化、定方向進化、及びコンセンサス配列の組成を含むいくつかの
方法が適用されている(Lehmann and Wyss,Curr Opin Bi
otechnol,12,371〜375,2001)。高熱安定性は、発現したタンパ
ク質の収率を増加させ、溶解度又は活性を改善し、免疫原性を減少させ、製造におけるコ
ールドチェーンの必要性を最小化することができる。Tencon(配列番号1)の熱安
定性を改善するために置換することができる残基は、11、14、17、37、46、7
3、又は86番目の残基位置であり、米国特許出願公開第2011/0274623号に
記述されている。これらの残基に対応する置換を、本発明の分子を含むFN3ドメイン又
は二重特異性FN3ドメインに組み入れることができる。
【0096】
本発明のもう一つの実施形態は、EGFRに特異的に結合してEGFRに対するEGF
の結合を遮断し、配列番号18〜29、107〜110、122〜137に示される配列
を含み、Tencon(配列番号1)における11、14、17、37、46、73、及
び86番目の位置に対応する1つ又は2つ以上の残基位置で置換を更に含む、単離FN3
ドメインである。
【0097】
本発明のもう一つの実施形態は、c−Metに特異的に結合してc−Metに対するH
GFの結合を遮断し、配列番号32〜49、又は111〜114に示される配列を含み、
Tencon(配列番号1)における11、14、17、37、46、73、及び86番
目の位置に対応する1つ又は2つ以上の残基位置で置換を更に含む、単離FN3ドメイン
である。
【0098】
例示的な置換は、E11N、E14P、L17A、E37P、N46V、G73Y、及
びE86Iの置換である(番号付けは配列番号1に従う)。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明のFN3ドメインは、Tencon(配列番号1
)における置換L17A、N46V、及びE86Iに対応する置換を含む。
【0100】
EGFRに特異的に結合するFN3ドメイン(図1)は、Tencon(配列番号1)
と比較して伸長したFGループを有する。それゆえ、Tencon(配列番号1)におけ
る11、14、17、37、46、73、及び86番目の位置に対応する残基は、配列番
号24のFN3ドメインを除き、図1A及び1Bに示されるEGFR FN3ドメインに
おける11、14、17、37、46、73、及び91番目の残基であり、対応する残基
は、BCループにおける1つのアミノ酸の挿入により、11、14、17、38、74、
及び92番目の残基である。
【0101】
本発明のもう一つの実施形態は、EGFRに特異的に結合してEGFRに対するEGF
の結合を遮断し、配列番号18〜29、107〜110、又は122〜137に示される
配列を含み、任意でTencon(配列番号1)における置換L17A、N46V、及び
E86Iに対応する置換を有する、単離FN3ドメインである。
【0102】
本発明のもう一つの実施形態は、c−Metに特異的に結合してc−Metに対するH
GFの結合を遮断し、配列番号32〜49、又は111〜114に示されるアミノ酸配列
を含み、任意でTencon(配列番号1)における置換L17A、N46V、及びE8
6Iに対応する置換を有する、単離FN3ドメインである。
【0103】
タンパク質安定性及びタンパク質不安定性の測定は、タンパク質完全性の同じ又は異な
る態様として見ることができる。タンパク質は、熱、紫外線又は電離放射線、溶液中の場
合には周囲の浸透圧モル濃度及びpHの変化、小さな孔寸法での濾過によって課される力
学的剪断力、紫外線放射、γ線照射によるなどの電離放射線、化学的若しくは熱脱水、又
はタンパク質構造の破壊を引き起こし得るその他の任意の作用若しくは力によって引き起
こされる変性に対して感受性がある、又は「不安定」である。分子の安定性は、標準方法
を用いて決定することができる。例えば、分子の安定性は、標準方法を用いて、分子の半
分がアンフォールドされるセ氏での温度である、熱融解(「TM」)温度を測定すること
によって決定することができる。典型的には、TMが高いほど、分子はより安定している
。熱に加えて、化学環境もまた、タンパク質が特定の三次元構造を維持する能力を変化さ
せる。
【0104】
1つの実施形態において、EGFR又はc−Metに結合するFN3ドメインは、TM
の増加によって測定した場合に、改変前の同じドメインと比較して、少なくとも5%、1
0%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、6
0%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%又はそれより高い
安定性の増加を示す。
【0105】
化学変性も同様に、様々な方法によって測定することができる。化学変性剤には、塩酸
グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、尿素、アセトン、有機溶媒(DMF、ベ
ンゼン、アセトニトリル)、塩(硫酸アンモニウム、臭化リチウム、塩化リチウム、臭化
ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム)、還元剤(例えば、ジチオスレイトール
、β−メルカプトエタノール、ジニトロベンゼン、及び水素化ホウ素ナトリウムなどの水
素化物)、非イオン性及びイオン性洗浄剤、酸(例えば、塩酸(HCl)、酢酸(CH
COOH)、ハロゲン化酢酸)、疎水性分子(例えば、リン脂質)、及び標的化変性剤が
挙げられる。変性の程度の定量化は、標的分子の結合能などの機能的特性の喪失、又は凝
集傾向、これまで溶媒が到達できなかった残基の露出、若しくはジスルフィド結合の破壊
若しくは形成などの物理化学的特性に依存し得る。
【0106】
1つの実施形態において、EGFR又はc−Metに結合する本発明のFN3ドメイン
は、化学変性剤として塩酸グアニジニウムを用いることによって測定した場合に、改変前
の同じ足場と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、3
5%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、8
5%、90%、又は95%又はそれより高い安定性の増加を示す。安定性の増加は、周知
の方法を用いて、塩酸グアニジンの濃度を増加させた処置の際のトリプトファン蛍光の減
少の関数として測定することができる。
【0107】
本発明のFN3ドメインは、例えば、価数を増加させ、このため標的分子結合の結合力
を増加させる手段として、又は2つ以上の異なる標的分子に同時に結合する二重特異性又
は多重特異性の足場を作製する手段として、単量体、二量体、又は多量体として作製され
得る。二量体及び多量体は、例えばアミノ酸リンカー、例えばポリグリシン、グリシン及
びセリン、又はアラニン及びプロリンを含むリンカーを含めることによって単特異性、二
重特異性、又は多重特異性タンパク質足場を連結させることによって作製され得る。例示
的なリンカーには、(GS)、(配列番号78)、(GGGGS)(配列番号79)
、(AP)(配列番号80)、(AP)(配列番号81)、(AP)10(配列番号
82)、(AP)20(配列番号83)、A(EAAAK)AAA(配列番号84)リ
ンカーが挙げられる。二量体及び多量体を、NからC−方向に互いに連結させてもよい。
ポリペプチドを新規連結融合ポリペプチドに接続するために天然に存在する、並び人工の
ペプチドリンカーを用いることは、文献において周知である(Hallewell et
al.,J Biol Chem 264,5260〜5268,1989;Alft
han et al.,Protein Eng.8,725〜731,1995;Ro
binson & Sauer,Biochemistry 35,109〜116,1
996;米国特許第5,856,456号)。
【0108】
二重特異性EGFR/c−Met結合分子
本発明の分子を含む二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメインは、低分子EG
FR阻害剤と比較して、特異性及び低減されたオフターゲット毒性の点で、通並びに常の
抗体治療薬と比較して改善された組織浸透の点で恩典を提供し得る。本発明は、少なくと
も部分的に、本発明の分子を含む二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメインが、
EGFR結合及びc−Met結合FN3ドメインの混合物と比較すると、有意に改善され
た相乗的阻害効果を提供するという意外な発見に基づいている。分子は、腫瘍への浸透及
び保持を最大にするためにEGFR及びc−Metの両方に対して特異的親和性となるよ
うに適合され得る。
【0109】
本発明の1つの実施形態は、第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインと第
2のFN3ドメインとを含む単離二重特異性FN3ドメイン含有分子であり、第1のFN
3ドメインは、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対する
上皮成長因子(EGF)の結合を遮断し、第2のFN3ドメインは、肝細胞増殖因子受容
体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HGF)の
結合を遮断する。
【0110】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、任意のEGF
R結合FN3ドメインと本発明の任意のc−Met結合FN3ドメインとを直接又はリン
カーを介して共有的に連結させることによって作製され得る。したがって、二重特異性分
子の第1のFN3ドメインは、EGFR結合FN3ドメインに関する上記の特徴を有し得
て、二重特異性分子の第2のFN3ドメインは、c−Met結合FN3ドメインに関する
上記の特徴を有し得る。
【0111】
1つの実施形態において、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子
の第1のFN3ドメインは、50ng/mLヒトEGFを用いてA431細胞において測
定されるとき、約2.5×10−6Mより低いIC50値でEGFRの1173番目のチ
ロシン残基でEGFによって誘発されるEGFRのリン酸化を阻害し、二重特異性EGF
R/c−Met FN3ドメイン含有分子の第2のFN3ドメインは、100ng/mL
ヒトHGFを用いてNCI−H441細胞において測定されるとき、約1.5×10−6
Mより低いIC50値でc−Metの1349番目のチロシン残基でHGFによって誘発
されるc−Metのリン酸化を阻害する。
【0112】
もう1つの実施形態において、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有
分子の第1のFN3ドメインは、50ng/mLヒトEGFを用いてA431細胞におい
て測定されるとき、約1.8×10−8M〜約2.5×10−6MのIC50値でEGF
Rの1173番目のチロシン残基でEGFによって誘発されるEGFRのリン酸化を阻害
し、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の第2のFN3ドメイン
は、100ng/mLヒトHGFを用いてNCI−H441細胞において測定されるとき
、約4×10−9M〜約1.5×10−6MのIC50値でc−Metの1349番目の
チロシン残基でHGFによって誘発されるc−Metのリン酸化を阻害する。
【0113】
もう一つの実施形態において、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有
分子の第1のFN3ドメインは、約1×10−8Mより低い解離定数(K)でヒトEG
FRに結合し、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の第2のFN
3ドメインは、約5×10−8Mより低いのKでヒトc−Metに結合する。
【0114】
EGFR及びc−Metの両方に結合する二重特異性分子において、第1のFN3ドメ
インは、約2×10−10M〜約1×10−8MのKでヒトEGFRに結合し、第2の
FN3ドメインは、約3×10−10M〜約5×10−8MのKでヒトc−Metに結
合する。
【0115】
EGFR及びc−Metに関する二重特異性EGFR/c−Met分子の親和性は、単
特異性分子に関して先に記述したように決定することができる。
【0116】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子の第1のFN3ドメインは、A431細
胞を使用し、第1のFN3ドメインの存在下又は非存在下でインキュベートしたA431
細胞において600nMのストレプトアビジン−フィコエリスリンコンジュゲートを用い
て結合したビオチニル化EGFからの蛍光量を検出するアッセイにおいて、約1×10
M〜約1.5×10−7MのIC50値でEGFRに対するEGFの結合を遮断し得る
。本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子の第1のFN3ドメインは、同じアッセ
イ条件を用いて、第1のFN3ドメインの非存在下でのEGFRに対するEGFの結合と
比較するとき、EGFRに対するEGFの結合を少なくとも30%、35%、40%、4
5%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、9
1%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100
%遮断し得る。
【0117】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子の第2のFN3ドメインは、第2のFN
3ドメインの存在下でc−Met−Fc融合タンパク質に対するビオチニル化HGFの結
合の阻害を検出するアッセイにおいて、約2×10−10M〜約6×10−8MのIC
値でc−Metに対するHGFの結合を遮断し得る。二重特異性EGFR/c−Met
分子の第2のFN3ドメインは、同じアッセイ条件を用いて、第2のFN3ドメインの非
存在下でのc−Metに対するHGFの結合と比較するとき、c−Metに対するHGF
の結合を少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%
、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%
、96%、97%、98%、99%、又は100%遮断し得る。
【0118】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子は、同じアッセイ条件を用いて、本発明
の二重特異性EGFR/c−Met分子の非存在下でのシグナリングレベルと比較すると
き、EGFR及び/又はc−Metシグナリングを少なくとも30%、35%、40%、
45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、
91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は10
0%阻害し得る。
【0119】
EGFR及びc−Metシグナリングは、単特異性分子に関して先に記述した様々な周
知の方法を用いて測定され得る。
【0120】
EGFRに特異的に結合する第1のFN3ドメインと、c−Metに特異に結合する
第2のFN3ドメインとを含む本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子は、第1及
び第2のFN3ドメインの混合物によって観察される相乗的阻害と比較するとき、EGF
R及びc−Metシグナリングの相乗的阻害及び腫瘍細胞増殖の有意な増加をもたらす。
相乗的阻害は、例えば、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子によ
る、及び1つがEGFRに結合し、他方がc−Metに結合する2つの単特異性分子の混
合物によるERKリン酸化の阻害を測定することによって評価され得る。本発明の二重特
異性EGFR/c−Met分子は、2つの単特異性FN3ドメインの混合物に関するIC
50値と比較すると、少なくとも約100倍小さい、例えば少なくとも500、1000
、5000、又は10,000倍小さいIC50でERKリン酸化を阻害し得るが、この
ことは、2つの単特異性FN3ドメインの混合物と比較して、二重特異性EGFR/c−
Met FN3ドメイン含有分子では効力が少なくとも100倍増加したことを示す。例
示的な二重特異性EGFR−c−Met FN3ドメイン含有分子は、約5×10−9
又はそれより低いIC50値でERKリン酸化を阻害し得る。ERKのリン酸化は、標準
的な方法及び本明細書に記述の方法を用いて測定することができる。
【0121】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、7.5ng/
mL HGFを添加した10%FBSを含む培地によって細胞増殖が誘導される、第1の
FN3ドメインと第2のFN3ドメインとの混合物によるH292細胞増殖の阻害のIC
50値と比較して、少なくとも30倍低いIC50値でH292細胞増殖を阻害し得る。
本発明の二重特性分子は、第1のFN3ドメインと第2のFN3ドメインの混合物による
腫瘍細胞増殖阻害のIC50値と比較して、約30、40、50、60、70、80、9
0、100、150、200、300、400、500、600、700、800、又は
約1000倍低いIC50値で腫瘍細胞増殖を阻害し得る。腫瘍細胞増殖の阻害は、標準
的な方法及び本明細書に記述される方法を用いて測定することができる。
【0122】
本発明のもう1つの実施形態は、第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン
と第2のFN3ドメインとを含む二重特異性FN3ドメイン含有分子であり、第1のFN
3ドメインは、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対する
上皮成長因子(EGF)の結合を遮断し、第2のFN3ドメインは、肝細胞増殖因子受容
体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HGF)の
結合を遮断し、
第1のFN3ドメインは、
がM若しくはIである、配列HNVYKDTNXRGL(配列番号179)、又
は配列LGSYVFEHDVML(配列番号180)を含むFGループ;及び
配列X(配列番号181)を含むBCループであって

はA、T、G、又はDであり、
はA、D、Y、又はWであり、
はP、D、又はNであり、
はLであるか、又は存在せず、
はD、H、R、G、Y、又はWであり、
はG、D、又はAであり、
はA、F、G、H、又はDであり、及び
はY、F、又はLであるBCループとを含み、並びに
第2のFN3ドメインは、
配列DSFX10IRYX11EX12131415GX16(配列番号184
)を含むC鎖及びCDループ、式中
10はW、F、又はVであり、
11はD、F、又はLであり、
12はV、F、又はLであり、
13はV、L、又はTであり、
14はV、R、G、L、T、又はSであり、
15はG、S、A、T、又はKであり、及び
16はE、又はDであり、及び
配列TEYX17VX18IX1920VKGGX2122SX23(配列番号1
85)を含むF鎖及びFGループ、式中
17はY、W、I、V、G、又はAであり、
18はN、T、Q、又はGであり、
19はL、M、N、又はIであり、
20はG、又はSであり、
21は、S、L、G、Y、T、R、H、又はKであり、
22はI、V、又はLであり、及び
23はV、T、H、I、P、Y、T、又はLである。
【0123】
もう一つの実施形態において、二重特異性分子は、以下の配列を含む、EGFRに結合
する第1のFN3ドメインを含む:
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWXDS
FLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVS
IYGVHNVYKDTNXRGLPLSAEFTT(配列番号182)の配列、又は
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWXDS
FLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVS
IYGVLGSYVFEHDVMLPLSAEFTT(配列番号183)の配列であって
式中、配列番号X及びXにおいて、
はA、T、G、又はDであり、
はA、D、Y、又はWであり、
はP、D、又はNであり、
はLであるか、又は存在せず、
はD、H、R、G、Y、又はWであり、
はG、D、又はAであり、
はA、F、G、H、又はDであり、
はY、F、又はLであり、及び
はM又はIである。
【0124】
もう一つの実施形態において、二重特異性分子は、以下の配列を含む、c−Metに結
合する第2のFN3ドメインを含む:
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFX10IRYX
EX12131415GX16AIVLTVPGSERSYDLTGLKPGT
EYX17VX18IX1920VKGGX2122SX23PLSAEFTT(配
列番号186)であって、
式中、
10はW、F、又はVであり、及び
11はD、F、又はLであり、
12はV、F、又はLであり、
13はV、L、又はTであり、
14はV、R、G、L、T、又はSであり、
15はG、S、A、T、又はKであり、
16はE、又はDであり、
17はY、W、I、V、G、又はAであり、
18はN、T、Q、又はGであり、
19はL、M、N、又はIであり、
20はG、又はSであり、
21は、S、L、G、Y、T、R、H、又はKであり、
22はI、V、又はLであり、及び
23はV、T、H、I、P、Y、T、又はLである。
【0125】
例示的な二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、配列番号50
〜72、106、118〜121、又は138〜165に示されるアミノ酸配列を含む。
【0126】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子は、XがM若しくはIである、配列H
NVYKDTNXRGL(配列番号179)、又は配列LGSYVFEHDVML(配
列番号180)を含む、EGFRに結合する第1のFN3ドメインのFGループなどの、
EGFR自己リン酸化の阻害などのその機能的特徴に関連する一定の構造的特徴を含む。
【0127】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン
含有分子は、
50ng/mLヒトEGFを用いてA431細胞において測定されるとき、約8×10
−7Mより低いIC50値でEGFRの1173番目のチロシン残基でEGFによって誘
発されるEGFRのリン酸化を阻害し、
100ng/mLヒトHGFを用いてNCI−H441細胞において測定されるとき、
約8.4×10−7Mより低いIC50値でc−Metの1349番目のチロシン残基で
HGFによって誘発されるc−Metのリン酸化を阻害し、
7.5ng HGFを含む10%FBSによって細胞増殖が誘導される、HGFによっ
て誘発されるNCI−H292細胞増殖を、約9.5×10−6Mより低いIC50値で
阻害し、
約2.0×10−8Mより低いKでEGFRに結合し、
約2.0×10−8Mより低いKでc−Metに結合する。
【0128】
もう1つの実施形態において、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメ
イン含有分子は、
50ng/mLヒトEGFを用いてA431細胞において測定されるとき、約4.2×
10−9M〜8×10−7MのIC50値でEGFRの1173番目のチロシン残基でE
GFによって誘発されるEGFRのリン酸化を阻害し、
100ng/mLヒトEGFを用いてNCI−H441細胞において測定されるとき、
約2.4×10−8M〜約8.4×10−7MのIC50値でc−Metの1349番目
のチロシン残基でHGFによって誘発されるc−Metのリン酸化を阻害し、
7.5ng HGFを含む10%FBSによって細胞増殖が誘導される、HGFによっ
て誘発されるNCI−H292細胞増殖を、約2.3×10−8M〜約9.5×10
MのIC50値で阻害し、
約2×10−10M〜約2.0×10−8MのKでEGFRに結合し、
約1×10−9M〜約2.0×10−8MのKでc−Metに結合する。
【0129】
1つの実施形態において、二重特異性EGFR/c−Met分子は、以下の配列を含む
EGFR結合FN3ドメイン、
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWXDS
FLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVS
IYGVHNVYKDTNXRGLPLSAEFTT(配列番号182)であって、式

は、Dであり、
は、Dであり、
は、Pであり、
は、存在せず、
は、H、又はWであり、
は、Aであり、
は、Fであり、
は、Yであり、及び
はM又はIである、と、
以下の配列を含むc−Met結合FN3ドメイン、
PAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFX10IRYX11
EX12131415GX16AIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTE
YX17VX18IX1920VKGGX2122SX23PLSAEFTT(配列
番号186)であって
式中、
10は、Wであり、
11は、Fであり、
12は、Fであり、
13は、V、又はLであり、
14は、G、又はSであり、
15は、S、又はKであり、
16は、E、又はDであり、
17は、Vであり、
18は、Nであり、
19は、L、又はMであり、
20は、G、又はSであり、
21は、S、又はKであり、
22は、Iであり、及び
23が、Pである、とを含む。
【0130】
例示的な二重特異性EGFR/c−Met分子は、配列番号57、61、62、63、
64、65、66、67、及び68に示される配列を有する分子である。
【0131】
本発明の二重特異性分子は、上記のTencon(配列番号1)における11、14、
17、37、46、73、及び86番目の位置に対応する、第1のFN3ドメイン及び/
又は第2のFN3ドメインにおける1つ又は2つ以上の残基位置での置換と、29番目の
位置での置換とを更に含みうる。例示的な置換は、E11N、E14P、L17A、E3
7P、N46V、G73Y、E86I、及びD29Eの置換である(番号付けは配列番号
1に従う)。当業者は、以下に記載されるその側鎖が関連するアミノ酸ファミリー内での
アミノ酸などの、他のアミノ酸を置換のために用いることができることを認識するであろ
う。作製された変種を、本明細書に記述の方法を用いて、その安定性及びEGFR及び/
又はc−Metに対する結合に関して試験することができる。
【0132】
1つの実施形態において、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子
は、EGFRに特異的に結合する第1のFN3ドメインと、c−Metに特異的に結合す
る第2のFN3ドメインとを含み、第1のFN3ドメインは、以下の配列
LPAPKNLVVSX24VTX25DSX26RLSWDDPX27AFYX28
SFLIQYQX29SEKVGEAIX30LTVPGSERSYDLTGLKPGT
EYTVSIYX31VHNVYKDTNX32RGLPLSAX33FTT(配列番号
187)であって、式中
24は、E、N、又はRであり、
25は、E、又はPであり、
26は、L、又はAであり、
27は、H、又はWであり、
28は、E、又はDであり、
29は、E、又はPであり、
30は、N、又はVであり、
31はG、又はYであり、
32は、M、又はIであり、及び
33は、E、又はIである、配列を含み、
及び第2のFN3ドメインは、配列
LPAPKNLVVSX34VTX35DSX36RLSWTAPDAAFDSFWI
RYFX37FX383940GX41AIX42LTVPGSERSYDLTGL
KPGTEYVVNIX4344VKGGX45ISPPLSAX46FTT(配列番
号188)であって、式中、
34は、E、N、又はRであり、
35は、E、又はPであり、
36は、L、又はAであり、
37は、E、又はPであり、
38は、V、又はLであり、
39は、G、又はSであり、
40は、S、又はKであり、
41は、E、又はDであり、
42は、N、又はVであり、
43は、L、又はMであり、
44は、G、又はSであり、
45は、S、又はKであり、及び
46は、E、又はIである、配列を含む。
【0133】
他の実施形態において、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は
、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも87%同一であるアミノ酸配列を含む第1の
FN3ドメインと、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも83%同一であるアミノ酸
配列を含む第2のFN3ドメインとを含む。
【0134】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met、FN3ドメイン含有分子は、腫瘍での蓄積
を最大にするためにEGFR及びc−Metに対する特異的親和性となるように適合され
得る。
【0135】
本発明のもう1つの実施形態は、第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン
と第2のFN3ドメインとを含む単離二重特異性FN3ドメイン含有分子であり、第1の
FN3ドメインは、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対
する上皮成長因子(EGF)の結合を遮断し、第2のFN3ドメインは、肝細胞増殖因子
受容体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HGF
)の結合を遮断し、第1のFN3ドメイン及び第2のFN3ドメインは、配列番号1のT
encon配列に基づいて設計されたライブラリから単離される。
【0136】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、EGFR結合
FN3ドメインと本発明のc−Met結合FN3ドメインとを周知の方法を用いて共有的
に連結させることによって作製され得る。FN3ドメインは、リンカー、例えばポリグリ
シン、グリシン及びセリン、又はアラニン及びプロリンを含むリンカーによって連結され
得る。例示的なリンカーには、(GS)、(配列番号78)、(GGGGS)(配列
番号79)、(AP)(配列番号80)、(AP)(配列番号81)、(AP)10
(配列番号82)、(AP)20(配列番号83)、A(EAAAK)AAA(配列番
号84)リンカーが挙げられる。ポリペプチドを新規連結融合ポリペプチドに接続するた
めに天然に存在する、並びに人工のペプチドリンカーを用いることは、文献において周知
である(Hallewell et al.,J Biol Chem 264,526
0〜5268,1989;Alfthan et al.,Protein Eng.8
,725〜731,1995;Robinson & Sauer,Biochemis
try 35,109〜116,1996;米国特許第5,856,456号)。本発明
の二重特異性EGFR/c−Met分子は、第1のFN3ドメインのC−末端から第2の
FN3ドメインのN−末端に、又は第2のFN3ドメインのC−末端から第1のFN3ド
メインのN−末端に共に連結され得る。任意のEGFR結合FN3ドメインが、c−Me
t結合FN3ドメインに共有的に連結され得る。例示的なEGFR結合FN3ドメインは
、配列番号18〜29、107〜110、及び122〜137に示されるアミノ酸配列を
有するドメインであり、例示的なc−Met結合FN3ドメインは、配列番号32〜49
、及び111〜114に示されるアミノ酸配列を有するドメインである。二重特異性分子
に連結されるEGFR結合FN3ドメインは、そのN−末端で開始メチオニン(Met)
を更に含み得る。
【0137】
二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の変種は、本発明の範囲内
である。例えば、得られた変種が、親分子と比較して、EGFR及びc−Metに対して
類似の選択性及び効力を保持する限り、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイ
ン含有分子に置換を行うことができる。例示的な改変は、例えば、結果として親分子の特
徴と類似の特徴を有する変種が得られる保存的置換である。保存的置換とは、その側鎖が
関連するアミノ酸ファミリー間で起こる置換である。遺伝子コードされるアミノ酸は、4
つのファミリーに分類することができる:(1)酸性(アスパラギン酸塩、グルタミン酸
塩);(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン);(3)非極性(アラニン、バ
リン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトフ
ァン);及び(4)非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セ
リン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、時
に、芳香族アミノ酸として共に分類される。又は、アミノ酸のレパートリーを、(1)酸
性(アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩);(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチ
ジン)、(3)脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン
、トレオニン)、ただしセリン及びトレオニンは、任意で脂肪族−ヒドロキシルとして個
別に分類される;(4)芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);(5
)アミド(アスパラギン、グルタミン);及び(6)イオウ含有(システイン及びメチオ
ニン)(Stryer(ed.),Biochemistry,2nd ed,WH F
reeman and Co.,1981)として分類することができる。二重特異性分
子の特性を改善するために、異なるクラス間のアミノ酸のアミノ酸残基の置換を伴う非保
存的置換を、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子に行うことがで
きる。ポリペプチド又はその断片のアミノ酸配列の変化が機能相同体をもたらすか否かは
、本明細書に記載のアッセイを用いて、修飾ポリペプチド又は断片が、非修飾いポリペプ
チド又は断片と同様の様式で反応を生じる能力を評価することによって、容易に決定され
得る。1つより多くの置換が起こっているペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を、同
様に容易に試験することができる。
【0138】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、例えば標的分
子結合の価数及びその結果として結合力を増加させる手段として、二量体又は多量体とし
て作製され得る。多量体は、例えば、周知の方法を用いてアミノ酸リンカーを含めること
によって、1つ又は2つ以上のEGFR結合FN3ドメインと1つ又は2つ以上のc−M
et結合FN3ドメインとを連結して、EGFR又はc−Metのいずれかに対して少な
くとも二重特異性である少なくとも3つの個々のFN3ドメインを含む分子を形成するこ
とによって作製され得る。
【0139】
本発明のもう1つの実施形態は、第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン
と第2のFN3ドメインとを含む二重特異性FN3ドメイン含有分子であり、第1のFN
3ドメインは、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対する
上皮成長因子(EGF)の結合を遮断し、第2のFN3ドメインは、肝細胞増殖因子受容
体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HGF)の
結合を遮断し、配列番号50〜72、又は106に示されるアミノ酸配列を含む分子であ
る。
【0140】
半減期延長部分
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子又は単特異性EG
FR/c−Met FN3ドメインは、例えば共有的相互作用を介して、他のサブユニッ
トを組み入れてもよい。本発明の1つの態様において、二重特異性EGFR/c−Met
FN3ドメイン含有分子は、半減期延長部分を更に含む。例示的な半減期延長部分は、
アルブミン、アルブミン結合タンパク質及び/又はドメイン、トランスフェリン及びその
断片及び類似体、並びにFc領域である。例示的なアルブミン結合ドメインは、配列番号
117に示される。
【0141】
抗体定常領域の全て又は一部を、本発明の分子に結合させて、抗体様特性、特にC1q
結合などのFcエフェクター機能、補体依存性細胞障害性(CDC)、Fc受容体結合、
抗体依存性細胞障害性(ADCC)、貪食、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、B
CR)のダウンレギュレーションなどの、Fc領域に関連する特性を付与してもよく、こ
れらの活性に関与するFcにおける残基を修飾することによって更に修飾することができ
る(論評に関しては、Strohl,Curr Opin Biotechnol.20
,685〜691,2009を参照されたい)。
【0142】
本発明の二重特異性分子には、PEG5000又はPEG20,000などのポリエチ
レングリコール(PEG)分子、例えばラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ス
テアリン酸エステル、アラキジン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレイン酸エステル、
アラキドン酸エステル、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン
二酸などの異なる鎖長の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ポリリジン、オクタン、炭水化物(
デキストラン、セルロース、オリゴ糖又は多糖)などの更なる部分を、所望の特性を得る
ために組み込むことができる。これらの部分は、タンパク質足場コード配列との直接融合
体であってもよく、標準的なクローニング及び発現技術によって作製してもよい。あるい
は、周知の化学カップリング方法を用いて、組み換え技術によって産生された本発明の分
子にその部分を結合させることができる。
【0143】
周知の方法を用いて、システイン残基を分子のC−末端に組み入れて、PEG化した基
をシステインに結合させることによって、PEG化部分を、例えば、本発明の二重特異性
又は単特異性分子に付加してもよい。C−末端システインを有する例示的な二重特異性分
子は、配列番号170〜178に示されるアミノ酸配列を有する分子である。
【0144】
追加の部分を組み入れた本発明の単特異性又は二重特異性分子を、いくつかの周知のア
ッセイによって、機能性に関して比較してもよい。例えば、Fcドメイン及び/又はFc
ドメイン変種を組み入れることにより変化した単特異性及び/又は二重特異性分子特性を
、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、又はFcRn受容体などの可溶性型受容
体を用いるFc受容体結合アッセイにおいてアッセイしてもよく、又は例えばADCC若
しくはCDCを測定する周知の細胞系アッセイを用いて、又はインビボモデルにおける本
発明の分子の薬物動態特性を評価してアッセイしてもよい。
【0145】
ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞
本発明は、インビトロ転写/翻訳のために使用される直鎖DNA配列、その組成物の真
核、原核、又はフィラメントファージ発現、分泌及び/又はディスプレイと適合するベク
ター、又はその定方向変異原を含む、単離ポリヌクレオチドとして、又は発現ベクターの
一部として、又は直鎖DNA配列の一部として、本発明のEGFR結合若しくはc−Me
t結合FN3ドメイン又は二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子を
コードする核酸を提供する。.特定の例示ポリヌクレオチドが本明細書で開示されるが、
しかしながら、所与の発現システム中の遺伝コードの縮重又はコドン選択性を考えたとき
に、本発明の結合タンパク質をコードする他のポリヌクレオチド、及び本発明のタンパク
質足場のライブラリも、また本発明の範囲内である。
【0146】
本発明の1つの実施形態は、配列番号18〜29、107〜110、又は122〜13
7のアミノ酸配列を有するEGFRに特異的に結合するFN3ドメインをコードする単離
ポリヌクレオチドである。
【0147】
本発明の1つの態様は、配列番号97〜98、又は168〜169のポリヌクレオチド
配列を含む単離ポリヌクレオチドである。
【0148】
本発明の1つの実施形態は、配列番号32〜49、又は111〜114に示される配列
のアミノ酸配列を有するc−Metに特異的に結合するFN3ドメインをコードする単離
ポリヌクレオチドである。
【0149】
本発明の1つの実施形態は、配列番号50〜72、106、118〜121、又は13
8〜165のアミノ酸配列を有する二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含
有分子をコードする単離ポリヌクレオチドである。
【0150】
本発明の1つの実施形態は、配列番号115〜116、又は166〜167のポリヌク
レオチドを含む単離ポリヌクレオチドである。
【0151】
本発明のポリヌクレオチドは、自動ポリヌクレオチド合成装置での固相ポリヌクレオチ
ド合成などの化学合成により作製され、完全な一本鎖又は二本鎖分子に構築され得る。あ
るいは、本発明のポリヌクレオチドは、PCRに続いて慣用的なクローニングを行うなど
の他の技術により作製され得る。所定の公知の配列のポリヌクレオチドを作製又は得る技
術は、当技術分野で周知である。
【0152】
本発明のポリヌクレオチドは、プロモーター又はエンハンサー配列、イントロン、ポリ
アデニル化シグナル、RepA結合を促進するcis配列等などの、少なくとも1つの非
コード配列を含み得る。ポリヌクレオチド配列はまた、例えば、タンパク質の精製又は検
出を容易にするためのヘキサヒスチジンタグ又はHAタグなどのマーカー又はタグ配列、
シグナル配列、RepA、Fcなどの融合タンパク質パートナー、又はpIX若しくはp
IIIなどのバクテリオファージコートタンパク質をコードする追加のアミノ酸をコード
する追加の配列も含むことができる。
【0153】
本発明のもう1つの実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを少なくとも1つ含むベク
ターである。そのようなベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロ
ウイルス発現ベクター、トランスポゾンに基づいたベクター、又は任意の手段によって所
定の生物又は遺伝子的バックグラウンドに本発明のポリヌクレオチドを導入するのに適し
た他の任意のベクターであり得る。そのようなベクターは、そのようなベクターによって
コードされるポリペプチドの発現を制御、調節、誘発、又は許容することができる核酸配
列エレメントを含む発現ベクターであり得る。このようなエレメントは、転写エンハンサ
ー結合部位、RNAポリメラーゼ開始部位、リボソーム結合部位、及び所定の発現系にお
いてコードされたポリペプチドの発現を促進する他の部位を含み得る。このような発現系
は、当該技術分野において公知の細胞に基づく系、又は無細胞系であり得る。
【0154】
本発明のもう1つの実施形態は、本発明のベクターを含む宿主細胞である。本発明の単
特異性EGFR結合若しくはc−Met結合FN3ドメイン、又は二重特異性EGFR/
c−Met FN3ドメイン含有分子は、任意で、当技術分野で周知であるように、細胞
株、混合細胞株、不死化細胞、又は不死化細胞のクローン集団によって作製することがで
きる。例えば、Ausubel,et al.,ed.,Current Protoc
ols in Molecular Biology,John Wiley & So
ns,Inc.,NY,NY(1987〜2001);Sambrook,et al.
,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2
nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989);H
arlow and Lane,Antibodies,a Laboratory M
anual,Cold Spring Harbor,NY(1989);Collig
an,et al.,eds.,Current Protocols in Immu
nology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994〜20
01);Colligan et al.,Current Protocols in
Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY
,(1997〜2001)を参照されたい。
【0155】
発現のために選択される宿主細胞は、哺乳動物起源であり得るか、又はCOS−1、C
OS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、He G2、653、SP
2/0、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫若しくは植物細胞、又はその任意の誘
導体、不死化若しくは形質転換細胞から選択され得る。あるいは、宿主細胞は、ポリペプ
チドをグリコシル化することができない種又は生物、例えば、BL21、BL21(DE
3)、BL21−GOLD(DE3)、XL1−Blue、JM109、HMS174、
HMS174(DE3)、及び天然若しくは改変大腸菌種(E. coli spp)、クレブシエ
ラ種(Klebsiella spp)、又はシュードモナス種(Pseudomonas spp)の菌株などの原核
細胞又は生物から選択され得る。
【0156】
本発明の別の実施形態は、EGFR若しくはc−Metに特異的に結合する単離FN3
ドメイン、又は単離二重特異性EGFR−c−Met FN3ドメイン含有分子が発現さ
れる条件で、本発明の単離宿主細胞を培養することと、ドメイン又は分子を精製すること
とを含む、EGFR若しくはc−Metに特異的に結合する本発明の単離FN3ドメイン
、又は本発明の単離二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子を作製す
る方法である。
【0157】
EGFR若しくはc−Metに特異的に結合するFN3ドメイン又は本発明の単離二重
特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、周知の方法、例えばプロテイ
ンA精製、硫酸アンモニウム、又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン
交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマ
トグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフ
ィー、及びレクチンクロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
によって、組み換え型細胞培養から精製することができる。
【0158】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子及びEGFR結合
若しくはc−Met結合FN3ドメインの使用
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合F
N3ドメイン、若しくはc−Met結合FN3ドメインは、ヒト疾患又は細胞、組織、臓
器、体液、若しくは一般的に宿主における特定の病態を診断、モニター、調節、処置、軽
減、発生を予防するために役立つ、又は症状を低減するために用いられ得る。本発明の方
法を用いて任意の分類に属する動物患者を治療することができる。このような動物の例と
しては、ヒト、齧歯類、イヌ、ネコ、及び家畜などの哺乳動物が挙げられる。
【0159】
本発明の1つの態様は、本発明の単離二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイ
ン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン若しくはc−Met結合FN3ドメインに細胞
を接触させることを含む、EGFR及び/又はc−Metを発現する細胞の増殖又は繁殖
を阻害する方法である。
【0160】
本発明のもう1つの態様は、EGFR及び/又はc−Met発現腫瘍又はがん細胞の増
殖又は転移が阻害されるように、本発明の単離二重特異性EGFR/c−Met FN3
ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン若しくはc−Met結合FN3ドメイン
の有効量を対象に投与することを含む、対象におけるEGFR及び/又はc−Met発現
腫瘍又はがん細胞の増殖又は転移を阻害する方法である。
【0161】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合F
N3ドメイン若しくはc−Met結合FN3ドメインは、EGFR、c−Met、EGF
、又は他のEGFRリガンド又はHGFの異常な活性化又は産生を特徴とする任意の疾患
若しくは障害、又は悪性疾患若しくはがんを伴ってもよく又は伴わなくてもよいEGFR
若しくはc−Met発現に関連する障害、を処置するために用いることができ、EGFR
、c−Met、EGF、又は他のEGFRリガンド、又はHGFの異常な活性化及び/又
は産生は、疾患又は障害を有する又はその素因を有する対象の細胞又は組織に存在する。
【0162】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、がん及び良性
腫瘍を含む腫瘍の処置のために用いられ得る。本発明の二重特異性分子による処置に対し
て感受性があるがんには、EGFR及び/又はc−Metを過剰発現するがんが挙げられ
る。本発明の二重特異性分子による処置に対して感受性がある例示的ながんには、上皮細
胞がん、乳がん、卵巣がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺がん、結腸直
腸がん、肛門がん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頚部がん、卵巣がん、膵臓がん
、皮膚がん、口腔がん、食道がん、膣がん、子宮頚がん、脾臓のがん、精巣がん、胃がん
、胸腺のがん、結腸がん、甲状腺がん、肝臓がん、又は散発性若しくは遺伝性の乳頭状腎
細胞がん(PRCC)が挙げられる。
【0163】
c−Metに特異的に結合して、c−Metに対するHGFの結合を遮断する本発明の
FN3ドメインは、がん及び良性腫瘍を含む腫瘍の処置のためであり得る。本発明のc−
Met結合FN3ドメインによる処置に対して感受性があるがんには、c−Metを過剰
発現するがんが挙げられる。本発明のFN3ドメインによる処置に対して感受性がある例
示的ながんには、上皮細胞がん、乳がん、卵巣がん、肺がん、結腸直腸がん、肛門がん、
前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頚部がん、卵巣がん、膵臓がん、皮膚がん、口腔が
ん、食道がん、膣がん、子宮頚がん、脾臓のがん、精巣がん、及び胸腺のがんが挙げられ
る。
【0164】
EGFRに特異的に結合して、EGFRに対するEGFの結合を遮断する本発明のFN
3ドメインは、がん及び良性腫瘍を含む腫瘍の処置のために用いられ得る。本発明のFN
3ドメインによる処置に対して感受性があるがんには、EGFR又は変種を過剰発現する
がんが挙げられる。本発明のFN3ドメインによる処置に対して感受性がある例示的なが
んには、上皮細胞がん、乳がん、卵巣がん、肺がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺が
ん、腎臓がん、膀胱がん、頭頚部がん、卵巣がん、膵臓がん、皮膚がん、口腔がん、食道
がん、膣がん、子宮頚がん、脾臓のがん、精巣がん、及び胸腺のがんが挙げられる。
【0165】
投与/医薬組成物
治療的用途に関して、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有
分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、医薬的に許容
される担体中で活性成分としてドメイン又は分子の有効量を含む医薬組成物として調製さ
れ得る。用語「担体」は、それと共に活性化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、
又はビヒクルを指す。そのようなビヒクルは、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等の、石
油、動物、植物、又は合成起源のものを含む、水及び油などの液体であってよい。例えば
、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いることができる。これらの溶液は滅菌
され、一般には粒子状物質を含まない。これらは、通常の周知の滅菌技術(例えば、濾過
)によって滅菌することができる。組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされる
製薬上許容される補助物質、例えばpH調整剤及び緩衝剤、安定化剤、増粘剤、滑剤及び
着色剤等を含むことができる。そのような医薬製剤中の本発明の分子の濃度は幅広く変化
してよく、すなわち約0.5重量%未満、通常は約1重量%又は少なくとも約1重量%か
ら最大で15又は20重量%まで変化してもよく、また、選択される特定の投与様式に従
って、主として必要とされる用量、液体の体積、粘度等に基づいて選択される。好適なビ
ヒクル、及び他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む製剤は、例えば、R
emington:The Science and Practice of Pha
rmacy,21st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincot
t Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2
006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing
pp 691〜1092に記載され、特にpp.958〜989を参照されたい。
【0166】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合F
N3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインの治療用途のための投与様式は、非経口
投与、例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、又は皮下、肺、経粘膜(口腔、鼻内、膣内
、直腸)などの、宿主に作用物質を送達する任意の適した経路であり得て、錠剤、カプセ
ル剤、液剤、粉剤、ゲル剤、粒剤中での製剤を用いて、シリンジ、植え込みデバイス、浸
透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、又は当技術分野で周知の、当業者によって
認識される他の手段に含まれ得る。部位特異的投与は、例えば、関節内、気管支内、腹内
、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋
内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内
、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、血管内、膀胱内、病巣内、膣内、直腸、口腔内、
舌下、鼻腔内、又は経皮送達によって達成され得る。
【0167】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mLの滅菌緩衝水、及び約1n
g〜約100mg、例えば約50ng〜約30mg、又はより好ましくは約5mg〜約2
5mgの本発明のFN3ドメインを含むように調製することができる。同様に、静脈内注
入用の本発明の医薬組成物は、約250mlの滅菌リンゲル液と、約1mg〜約30mg
、例えば約5mg〜約25mgの本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメ
イン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン、又はc−Met結合FN3ドメインを含む
ように構成することができる。非経口投与可能な組成物を調製するための実際の方法が周
知であり、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sci
ence」、15th ed.,Mack Publishing Company,E
aston,PAに、より詳細に記載されている。
【0168】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合F
N3ドメイン、又はc−Met結合FN3ドメインは、保存のために凍結乾燥して、使用
前に適した担体中で溶解することができる。この技術は、通常のタンパク調製物に関して
有効であることが示されており、当該技術分野で公知の凍結乾燥法及び溶解技術を用いる
ことができる。
【0169】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合F
N3ドメイン、又はc−Met結合FN3ドメインを、対象に1回投与してもよく、又は
投与を、例えば1日後、2日後、3日後、5日後、6日後、1週間後、2週間後、3週間
後、1か月後、5週間後、6週間後、7週間後、2か月後、又は3か月後に繰り返しても
よい。反復投与は、同じ用量又は異なる用量で行うことができる。投与は、1回、2回、
3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、又はそれより多く繰り返してもよ
い。
【0170】
二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメ
イン、又はc−Met結合FN3ドメインは、第2の治療物質と併用して、同時に、連続
的に、又は個別に投与され得る。第2の治療物質は、化学療法剤、抗血管新生剤、又は細
胞障害剤であり得る。がんを処置するために使用するとき、二重特異性EGFR/c−M
et FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン、又はc−Met結合FN
3ドメインは、手術、放射線療法、化学療法、又はその併用などの通常のがん治療と組み
合わせて用いられ得る。本発明のFN3ドメインと併用して用いることができる例示的な
作用物質は、HER2、HER3、HER4、VEGFのアンタゴニスト、並びにIre
ssa(登録商標)(ゲフィチニブ)及びTarceva(エルロチニブ)などのタンパ
ク質チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0171】
本発明は一般論として記述されてきているが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲を
限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【実施例】
【0172】
実施例1.Tenconライブラリの構築
Tencon(配列番号1)は、ヒトテナシン−Cからの15個のFN3ドメインのコ
ンセンサス配列から設計された、免疫グロブリン様足場構造のフィブロネクチンIII型
(FN3)ドメインである(Jacobs et al.,Protein Engin
eering,Design,and Selection,25:107〜117,2
012;米国特許出願公開第2010/0216708号)。Tenconの結晶構造は
、7個のβ鎖をつなぐ6回表面露出ループを示す。これらのループ又は各ループ内の選択
された残基を無作為化して、フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのライブラリ
を構築することができ、このライブラリを用いて特異的標的に結合する新規分子を選択す
ることができる。
【0173】
Tencon
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESE
KVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHR
SNPLSAEFTT(配列番号1)
【0174】
TCL1ライブラリの構築
Tencon(配列番号1)のFGループのみを無作為化するように設計されたライブ
ラリTCL1を、cisディスプレイシステムで用いるために構築した(Jacobs
et al.,Protein Engineering,Design,and Se
lection,25:107〜117,2012)。このシステムにおいて、Tacプ
ロモーター、Tenconライブラリコード配列、RepAコード配列、cisエレメン
ト、及びoriエレメントの配列を組み入れる一本鎖DNAを作製する。インビトロ転写
/翻訳系で発現させると、それがコードされるDNAに対してcisで結合したTenc
on−RepA融合タンパク質の複合体が産生される。次に、標的分子に結合する複合体
を単離して、以下に記述されるようにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅する
【0175】
cisディスプレイで用いるためのTCL1ライブラリの構築は、PCRの連続ラウン
ドによって得られ、最終的に直鎖状の二本鎖DNA分子が二等分して産生された;5’断
片は、プロモーターとTencon配列とを含むが、3’断片はrepA遺伝子とcis
及びoriエレメントとを含む。これらの二等分分子を制限酵素消化によって結合させて
、完全な構築物を産生する。TCL1ライブラリは、TenconのFGループ、KGG
HRSN(配列番号86)のみに無作為アミノ酸を組み入れるように設計された。このラ
イブラリの構築にNNSコドンを用い、それによって20個全てのアミノ酸と1つの終止
コドンがFGループにおそらく組み入れられた。TCL1ライブラリは、多様性を更に増
加させるために、それぞれが異なる長さの、7〜12残基の無作為化FGループを有する
、6個の個別のサブライブラリを含む。Tenconに基づくライブラリの設計を表2に
示す。
【0176】
【表2】
TAPDAAFD:配列番号1の残基22〜28
**KGGHRSN:配列番号86
Xは、NNSコドンによってコードされる縮重アミノ酸を指す。
#は、本文に記述される「設計されたアミノ酸分布」を指す。
【0177】
TCL1ライブラリを構築するために、連続ラウンドのPCRを行ってTacプロモー
ターを付加して、FGループに縮重を作製し、最終的なアセンブリのために必要な制限部
位を付加した。第一に、FGループの5’でプロモーター配列及びTencon配列を含
むDNA配列を、2段階のPCRによって作製した。完全なTencon遺伝子配列に対
応するDNAをPCR鋳型として、プライマーPOP2220(配列番号2)及びTC5
’toFG(配列番号3)と共に用いた。この反応から得られたPCR産物を、プライマ
ー130mer(配列番号4)及びTc5’toFGと共に次のラウンドのPCR増幅の
鋳型として用いて、Tenconに対する5’及びプロモーターの付加を完了した。次に
、第一段階で産生されたDNA産物を縮重ヌクレオチドを含むフォワードプライマーPO
P2222(配列番号5)、及びリバースプライマーTCF7(配列番号6)、TCF8
(配列番号7)、TCF9(配列番号8)、TCF10(配列番号9)、TCF11(配
列番号10)、又はTCF12(配列番号11)によって、増幅することによって、多様
性をF:Gループに導入した。PCRサイクルを最少にして、ライブラリの多様性を最大
にするために、それぞれのサブライブラリに関して、100μLのPCR反応を少なくと
も8回実施した。このPCR産物少なくとも5μgを、ゲル精製して、プライマーPOP
2222(配列番号5)及びPOP2234(配列番号12)による次のPCR段階に用
い、Tencon配列の3’末端に6×Hisタグ及びNotI制限部位が付加された。
このPCR反応は、わずか15回のPCRサイクル及び鋳型DNA少なくとも500ng
を用いて行われた。得られたPCR産物をゲル精製して、NotI制限酵素によって消化
して、Qiagenカラムで精製した。
【0178】
ライブラリの3’断片は、PspOMI制限部位、repA遺伝子のコード領域、並び
にcis及びoriエレメントを含む、ディスプレイのためのエレメントを含む一定のD
NA配列である。PCR反応は、M13フォワードプライマー及びM13リバースプライ
マーと共にこのDNA断片を含むプラスミド(pCR4Blunt)(Invitrog
en)を用いて行った。得られたPCR産物を、PspOMIで終夜消化して、ゲル精製
した。ライブラリDNAの5’部分をrepA遺伝子を含む3’DNAにライゲートする
ために、5’DNAの2pmolを、NotI及びPspOMI酵素並びにT4リガーゼ
の存在下で3’repA DNAの等モル量にライゲートした。37℃で終夜ライゲーシ
ョン後、ライゲートしたDNAの少量をゲルに載せてライゲーション効率をチェックした
。ライゲートしたライブラリ産物を、12のPCR増幅に分けて、プライマー対POP2
250(配列番号13)及びDidLigRev(配列番号14)を用いて12サイクル
のPCR反応を行った。TCL1ライブラリの各サブライブラリに関するDNAの収率は
、32〜34μgの範囲であった。
【0179】
ライブラリの品質を評価するために、ワーキングライブラリの少量を、プライマーTc
on5new2(配列番号15)及びTcon6(配列番号16)によって増幅して、リ
ガーゼ非依存的クローニングにより改変pETベクターにおいてクローニングした。プラ
スミドDNAをBL21−GOLD(DE3)コンピテント細胞(Stratagene
)に形質転換して、無作為に採取したコロニー96個をT7プロモータープライマーを用
いてシークエンシングした。同一の配列は認められなかった。全体的に、フレームシフト
変異を有することなく完全なプロモーター及びTenconコード配列を有したのは、ク
ローンのおよそ70〜85%であった。終止コドンを有するクローンを除く機能的配列の
割合は、59%〜80%であった。
【0180】
TCL2ライブラリの構築
TenconのBC及びFGループの両方が無作為化されて、それぞれの位置でのアミ
ノ酸の分布が厳密に制御されているTCL2ライブラリを構築した。表3は、TCL2ラ
イブラリにおける所望のループ位置でのアミノ酸分布を示す。設計されたアミノ酸分布は
2つの目的を有した。第一に、ライブラリを、Tencon結晶構造の解析及び/又はホ
モロジーモデリングに基づいて、Tenconのフィールディング及び安定性にとって構
造的に重要となると予測される残基に向けて偏らせた。例えば、29番目の位置は、Te
nconが折り畳まれた際に疎水性コアの中に埋もれることから、疎水性アミノ酸のサブ
セットのみとなるように固定した。第二の設計は、高親和性結合体を効率よく産生するた
めに、抗体の重鎖HCDR3に選択的に認められる残基の分布となるようにアミノ酸分布
を偏らせることを含んだ((Birtalan et al.,J Mol Biol
377:1518〜28,2008;Olson et al.,Protein Sc
i 16:476〜84,2007)。この目標に向かって、表3の「設計された分布」
は、以下の分布を指す:6%アラニン、6%アルギニン、3.9%アスパラギン、7.5
%アスパラギン酸、2.5%グルタミン酸、1.5%グルタミン、15%グリシン、2.
3%ヒスチジン、2.5%イソロイシン、5%ロイシン、1.5%リジン、2.5%フェ
ニルアラニン、4%プロリン、10%セリン、4.5%トレオニン、4%トリプトファン
、17.3%チロシン、及び4%バリン。この分布には、メチオニン、システイン、及び
終止コドンが含まれない。
【0181】
【表3】
残基の番号は、配列番号1のTencon配列に基づく。
【0182】
TCL2ライブラリの5’断片は、プロモーターと、ライブラリのプールとして化学合
成された(Sloning Bioltechnology)Tencon(配列番号1
)のコード配列とを含んだ。このDNAプールは、少なくとも1×1011個の異なるメ
ンバーを含んだ。RepAとのライゲーションのために、断片の末端で、BsaI制限部
位を設計に含めた。
【0183】
ライブラリの3’断片は、6×Hisタグ、repA遺伝子のコード領域、及びcis
エレメントを含む、ディスプレイのためのエレメントを含む一定のDNA配列であった。
DNAを、既存のDNA鋳型(上記)及びプライマーLS1008(配列番号17)及び
DidLigRev(配列番号14)を用いて、PCR反応によって調製した。完全なT
CL2ライブラリをアセンブルするために、BsaI消化5’TenconライブラリD
NAの全体で1μgを、同じ酵素による制限消化によって調製した3’断片3.5μgに
ライゲートした。終夜ライゲーションの後、DNAをQiagenカラムによって精製し
て、260nmでの吸光度を測定することによってDNAを定量した。ライゲートしたラ
イブラリ産物を、プライマー対POP2250(配列番号13)及びDidLigRev
(配列番号14)を用いて12サイクルのPCR反応によって増幅した。それぞれがライ
ゲートしたDNA産物50ngを鋳型として含む、全体で72回の反応を行った。TCL
2ワーキングライブラリDNAの総収率は、約100μgであった。ライブラリTCL1
に関して先に記述したように、少量のワーキングライブラリをサブクローニングして、シ
ークエンシングした。同一の配列は認められなかった。フレームシフト変異を有すること
なく完全なプロモーター及びTenconコード配列を含んだのは、配列の約80%であ
った。
【0184】
TCL14ライブラリの構築
上部(BC、DE、及びFG)及び下部(AB、CD、及びEF)ループ、例えば、F
N3ドメインにおける報告された結合表面は、FN3構造の中心を形成するβ鎖によって
分離される。ループのみによって形成された表面とは異なる形状を有するFN3ドメイン
の2つの「側面」に存在する代替表面を、FN3ドメインの1つの側面で2つの逆平行β
鎖、すなわちC鎖とFβ鎖、及びCDループとFGループによって形成して、本明細書に
おいて以降C−CD−F−FG表面と呼ぶ。
【0185】
Tenconの代替表面を無作為化するライブラリは、図4に示されるように、C鎖と
F鎖の表面露出残基並びにCD及びFGループの一部を無作為に選択することによって作
製した。Tencon(配列番号1)と比較して以下の置換を有するTencon変種、
Tencon27(配列番号99)を用いて、ライブラリを作製した:E11R、L17
A、N46V、E86I。このライブラリを構築するために用いた方法の詳細な記述は、
米国特許出願第13/852,930号に記述される。
【0186】
実施例2:EGFRに結合してEGF結合を阻害するフィブロネクチンIII型(FN
3)ドメインの選択
ライブラリのスクリーニング
cisディスプレイを用いて、TCL1及びTCL2ライブラリからEGFR結合ドメ
インを選択した。IgG1 Fcに融合したEGFRの組み換え型ヒト細胞外ドメイン(
R&D Systems)を、標準的な方法を用いてビオチニル化して、これをパニング
のために用いた(配列番号73の完全長EGFRの25〜645番目の残基)。インビト
ロ転写及び翻訳(ITT)に関して、ライブラリDNA 2〜6μgを0.1mM co
mpleteアミノ酸、1×S30プレミクス成分、及びS30抽出物(Promega
)30μLと共に全量100μL中で30℃でインキュベートした。1時間後、ブロッキ
ング溶液(2%ウシ血清アルブミン、100μg/mLニシン精子DNA、及び1mg/
mLヘパリンを添加したPBS、pH7.4)450μLを添加して、反応を氷中で15
分間インキュベートした。EGFR−Fc:EGF複合体は、ブロッキング溶液中で組み
換え型ヒトEGF(R&D Systems)とビオチニル化組み換え型EGFR−Fc
とを、室温で1時間混合することによって、EGFR対EGFのモル比1:1及び10:
1でアセンブルされた。結合に関して、ブロックされたITT反応物500μLをEGF
R−Fc:EGF複合体100μLと混合して、室温で1時間インキュベートした後、結
合した複合体をニュートラアビジン又はストレプトアビジン磁気ビーズによって吸引した
。非結合ライブラリメンバーを、PBST及びPBSで連続的に洗浄することによって除
去した。洗浄後、65℃に10分間加熱することによって、結合した複合体からDNAを
溶出させ、PCRによって増幅し、更なるパニングラウンドのために制限酵素消化及びラ
イゲーションによってRepAをコードするDNA断片に結合させた。各ラウンドにおい
て、標的EGFR−Fcの濃度を200nMから50nMへと連続的に低下させて、洗浄
のストリンジェンシーを増加させることによって、高親和性結合体を単離した。ラウンド
4及び5において、非結合及び弱く結合したFN3ドメインを、PBS中で10倍モル過
剰量の非ビオチニル化EGFR−Fcの存在下で終夜洗浄することによって除去した。
【0187】
パニング後、選択したFN3ドメインをオリゴTcon5new2(配列番号15)及
びTcon6(配列番号16)を用いてPCRによって増幅し、リガーゼ非依存的クロー
ニングサイトを含めるように改変されたpETベクターにサブクローニングして、標準的
な分子生物学技術を用いて大腸菌において可溶性で発現させるためにBL21−GOLD
(DE3)(Stratagene)細胞に形質転換した。精製及び検出を可能にするた
めに、C−末端ポリヒスチジンタグをコードする遺伝子配列を、各FN3ドメインに付加
した。1mLの96ウェルブロックにおいて、100μg/mLカルベニシリンを添加し
た2YT培地中で、培養物を37℃で吸光度が0.6〜0.8となるまで増殖させた後、
IPTGを1mMとなるように添加し、その時点で温度を30℃に低下させた。およそ1
6時間後に細胞を遠心沈降させて回収し、−20℃で凍結した。各ペレットをBugBu
ster(登録商標)HT溶解緩衝液(Novagen EMD Bioscience
s)0.6mL中で、室温で45分間振とうさせながらインキュベートすることによって
細胞溶解物を得た。
【0188】
細胞上でEGFRに結合するFN3ドメインの選択
より生理的な意味で異なるFN3ドメインのEGFR結合能を評価するために、そのA
431細胞結合能を測定した。A431細胞(American Type Cultu
re Collection,カタログ番号CRL−1555)は、約2×10個の受
容体/細胞でEGFRを過剰発現する。細胞を不透明な黒色96ウェルプレートに5,0
00個/ウェルで播種して、37℃の湿潤5% CO環境で終夜接着させた。FN3ド
メイン発現細菌溶解物をFACS染色緩衝液(Becton Dickinson)中で
1,000倍希釈して、同じプレートを3枚作製して室温で1時間インキュベートした。
溶解物を除去して、細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液によって3回洗浄
した。細胞を、FACS染色緩衝液中で1:100に希釈した抗ペンタHis−Alex
a 488抗体コンジュゲート(Qiagen)50μL/ウェルと共に室温で20分間
インキュベートした。細胞を150μL/ウェルのFACS染色緩衝液によって3回洗浄
した後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを満たし、Acumen eX3リーダ
ーを用いて488nmで蛍光を読み取った。FN3ドメインを含む細菌溶解物を、そのA
431細胞結合能に関してスクリーニングし(TCL1及びTCL2ライブラリに関して
1320個の粗細菌溶解物)、結合がバックグラウンドシグナルより10倍以上高い陽性
クローンが516個同定された。TCL14ライブラリからの溶解物300個を、結合に
関してスクリーニングし、EGFRに結合する独自のFN3ドメイン配列58個が得られ
た。
【0189】
細胞上でEGFRに対するEGF結合を阻害するFN3ドメインの選択
EGFR結合の作用機序の特徴をよりよく調べるために、同定された様々なFN3ドメ
インクローンのEGFR結合能を、A431細胞を用いてEGF競合的に測定し、A43
1結合アッセイスクリーニングと同時に行った。A431細胞を不透明な黒色96ウェル
プレートに5,000個/ウェルで播種して、37℃の湿潤5% CO環境で終夜接着
させた。細胞を、50μL/ウェルの1:1,000倍希釈した細菌溶解物と共に、同じ
プレートを3枚作製して室温で1時間インキュベートした。ビオチニル化EGF(Inv
itrogen、カタログ番号E−3477)を、最終濃度30ng/mLとなるように
各ウェルに添加して、室温で10分間インキュベートした。細胞を、150μL/ウェル
のFACS染色緩衝液によって3回洗浄した。細胞を、FACS染色緩衝液中で1:10
0に希釈したストレプトアビジン−フィコエリスリンコンジュゲート(Invitrog
en)50μL/ウェルと共に室温で20分間インキュベートした。細胞を150μL/
ウェルのFACS染色緩衝液によって3回洗浄した後、ウェルにFACS染色緩衝液10
0μLを満たし、Acumen eX3リーダーを用いて600nmで蛍光を読み取った
【0190】
FN3ドメインを含む細菌溶解物を、上記のEGF競合アッセイにおいてスクリーニン
グした。TCL1及びTCL2ライブラリに関して1320個の粗細菌溶解物をスクリー
ニングして、EGF結合を50%超阻害する陽性クローンを451個同定した。
【0191】
同定されたFN3ドメイン結合EGFRの発現及び精製
HisタグFN3ドメインを His MultiTrap(商標)HPプレート(G
E Healthcare)によって澄明化大腸菌溶解物から精製して、20mMリン酸
ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、及び250mMイミダゾールを含むpH7.4
の緩衝液で溶出した。精製試料を、PD MultiTrap(商標)G−25プレート
(GE Healthcare)を用いる分析のために、pH7.4のPBSに交換した
【0192】
サイズ排除クロマトグラフィー分析
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、EGFRに結合するFN3ドメインの凝集状
態を決定した。各精製FN3ドメインのアリコート(10μL)をSuperdex 7
5 5/150カラム(GE Healthcare)に流速0.3mL/分でpH7.
4のPBSを移動相として注入した。カラムからの溶出を、280nmの吸光度によって
モニターした。SECによって高レベルの凝集を示したセンチリンを更なる分析から除外
した。
【0193】
EGFR−Fcからの選択されたEGFR結合FN3ドメインのオフレート
選択したEGFR結合FN3ドメインをスクリーニングして、高親和性結合体の選択を
容易にするために、ProteOn XPR−36機器(BioRad)においてEGF
R−Fcに対する結合の遅いオフレート(koff)を示すドメインを同定した。ヤギ抗
ヒトFc IgG(R&D Systems)を、チップ上の水平方向の6本全てのリガ
ンド流路において5μg/mLの濃度で、0.005% Tween−20を含むPBS
中で流速30μL/分でアミンカップリング(pH5.0)によって直接固定した。固定
密度は、平均で約1500応答単位(RU)であり、異なる流路間の変動は5%未満であ
った。EGFR−Fcは、垂直のリガンド方向で、密度およそ600RUで抗ヒトFc
IgG表面上で捕捉された。試験したFN3ドメインを全て、1μMの濃度に標準化して
、その水平方向の結合に関して試験した。スクリーニングの処理能力を最大にするために
、FN3ドメインに関して6本全てのアナライト流路を用いた。解離相を、100μL/
分の流速で10分間モニターした。スポット間結合シグナルを、アナライトと固定された
IgG表面との間の非特異的結合をモニターするための参照として用いて、すべての結合
反応から差し引いた。処理された結合データを1:1の単純なラングミュア結合モデルに
局所的にフィットさせて、捕捉されたEGFR−Fcに対するそれぞれのFN3ドメイン
の結合のkoffを引き出した。
【0194】
EGF刺激EGFRリン酸化の阻害
精製EGFR結合FN3ドメインを、A431細胞におけるEGFRのEGF刺激リン
酸化の阻害能に関して1つの濃度で試験した。EGFRのリン酸化を、EGFR pho
spho(Tyr1173)キット(Meso Scale Discovery)を用
いてモニターした。細胞を、透明な96ウェル組織培養処置プレート(Nunc)におい
て10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco)と共にGlutamax(商標)を含む
RPMI培地(Gibco)100μL/ウェル中で20,000個/ウェルで播種し、
37℃の湿潤5% CO環境で終夜接着させた。培養培地を完全に除去して、細胞を3
7℃の湿潤5% CO環境で、FBSを含まない培地100μL/ウェル中で終夜枯渇
させた。次に、細胞を、湿潤5% CO環境で、濃度2μMのEGFR結合FN3ドメ
インを含む予め加温した(37℃)枯渇培地100μL/ウェルによって37℃で1時間
処置した。対照は、枯渇培地のみで処置した。最終濃度が50ng/mL EGFとなる
ように100ng/mL組み換え型ヒトEGF(R&D Systems、カタログ番号
236−EG)及び1μM EGFR結合FN3ドメインを含む予め加温した(37℃)
枯渇培地100μL/ウェルを添加して軽く混合し、37℃、5% COで15分間イ
ンキュベートすることにより、細胞を刺激した。一組の対照ウェルは、陰性対照として刺
激しないままであった。培地を完全に除去して、細胞を、Complete溶解緩衝液(
Meso Scale Discovery)100μL/ウェルによって、製造元の指
示に従って、室温で振とうさせながら10分間溶解した。1173番目のチロシンでリン
酸化されたEGFRを測定するように構成されたアッセイプレート(Meso Scal
e Discovery)を、製造元の指示に従って提供されたブロッキング溶液によっ
て室温で1.5〜2時間ブロックした。プレートを、1X Tris洗浄緩衝液(Mes
o Scale Discovery)200μL/ウェルによって4回洗浄した。細胞
溶解物のアリコート(30μL/ウェル)をアッセイプレートに移し、これをプレート密
封フィルム(VWR)で覆い、振とうさせながら室温で1時間インキュベートした。アッ
セイプレートをTris洗浄緩衝液200μL/ウェルで4回洗浄した後、氷冷検出抗体
溶液(Meso Scale Discovery)25μLを、気泡を入れないように
注意して各ウェルに添加した。プレートを振とうさせながら室温で1時間インキュベート
した後、Tris洗浄緩衝液200μL/ウェルによって4回洗浄した。読み取り緩衝液
(Meso Scale Discovery)150μL/ウェルを添加して、製造元
がインストールしたアッセイ特異的デフォルト設定を用いてSECTOR(登録商標)I
mager 6000機器(Meso Scale Discovery)で読み取るこ
とにより、シグナルを検出した。EGF刺激陽性対照シグナルの%阻害を、各EGFR結
合FN3ドメインに関して計算した。
【0195】
EGF刺激EGFRリン酸化の阻害を、TCL1及びTCL2ライブラリから同定され
た232個のクローンに関して測定した。これらのクローンのうち22個が、1μMの濃
度でEGFRのリン酸化を50%以上阻害した。発現が不良であるか、又はサイズ排除ク
ロマトグラフィーにより多量体であると判断されたクローンを除去した後、クローン9個
を、更に物理学的に特徴を調べるために先に進めた。これらのクローンのBC及びFGル
ープ配列を表4に示す。選択された9個のクローン中8個が、共通のFGループ配列(H
NVYKDTNMRGL;配列番号95)を有し、いくつかのクローンではそのBCルー
プ配列に有意な類似性領域が認められた。
【0196】
【表4】
【0197】
実施例3:EGF結合を阻害するEGFR結合FN3ドメインの特徴づけ
大規模発現、精製、及びエンドトキシンの除去
表4に示された9個のFN3ドメインを、詳細な特徴づけのためにより多くの材料を提
供するよう規模を拡大した。各EGFR結合FN3ドメイン変種を含む終夜培養物を用い
て、終夜培養物を1/80希釈して100μg/mLアンピシリンを添加したTerri
ficブロス培地0.8Lを新しい培地に接種して、振とうさせながら37℃でインキュ
ベートした。600nmでの吸光度が約1.2〜1.5に達すると、IPTGを最終濃度
1mMとなるように添加することによって培養物を誘導し、温度を30℃に低下した。4
時間後、遠心沈降によって細胞を回収して、細胞沈降物を必要となるまで−80℃で保存
した。
【0198】
細胞溶解に関して、融解した沈降物を、25U/mL Benzonase(登録商標
)(Sigma−Aldrich)及び1kU/mL rLysozyme(商標)(N
ovagen EMD Biosciences)を添加した1X BugBuster
(登録商標)に、沈降物1グラムあたりBugBuster(登録商標)5mLの割合で
浮遊させた。軽く撹拌しながら、溶解を室温で1時間進行させた後、4℃、56,000
×gで50分間遠心沈降させた。上清を回収して0.2μmのフィルターで濾過した後、
GE Healthcare AKTAexplorer 100sクロマトグラフィー
システムを用いて、緩衝液A(50mM Tris−HCl pH7.5、500mM
NaCl、10mMイミダゾール)によって予め平衡にした5mL HisTrap F
Fカラムにロードした。カラムを、カラム容積の20倍の緩衝液Aによって洗浄し、カラ
ム容積の6倍量の16%緩衝液B(50mM Tris−HCl pH7.5、500m
M NaCl、250mMイミダゾール)によって更に洗浄した。FN3ドメインを、カ
ラム容積の10倍量の50% Bによって溶出した後、カラム容積の6倍量の50〜10
0% Bの勾配によって溶出した。FN3ドメインタンパク質を含む分画をプールしてM
illipore 10K MWCO濃縮器を用いて濃縮し、濾過後、PBSで予め平衡
にしたHiLoad(商標)16/60 Superdex(商標)75カラム(GE
Healthcare)にロードした。サイズ排除カラムから溶出したタンパク質単量体
のピークは保持された。
【0199】
エンドトキシンは、ActiClean Etox樹脂(Sterogene Bio
separations)によるバッチアプローチを用いて除去した。エンドトキシンの
除去前に、樹脂を1N NaOHによって37℃で2時間(又は4℃で終夜)前処置し、
pH試験紙によって測定してpHが約7で安定化するまで、PBSによって十分に洗浄し
た。精製タンパク質を、0.2μmフィルターで濾過したのち、Etox樹脂1mLをタ
ンパク質10mL対樹脂1mLの比率で添加した。樹脂に対するエンドトキシンの結合を
、軽く回転させながら室温で少なくとも2時間進行させた。樹脂を、500×gで2分間
の遠心沈降によって除去して、タンパク質上清を保持した。エンドトキシンレベルを、E
ndoSafe(登録商標)−PTS(商標)カートリッジを用いて測定し、EndoS
afe(登録商標)−MCSリーダー(Charles River)で分析した。エン
ドトキシンレベルが、最初のEtox処置後に5EU/mgを超える場合、エンドトキシ
ンレベルが5EU/mg以下に減少するまで上記の技法を繰り返した。エンドトキシンレ
ベルが5EU/mgを超え、Etoxによる2回連続の処置後に安定化された場合、残り
のエンドトキシンを除去するために、そのタンパク質に関する陰イオン交換又は疎水性相
互作用クロマトグラフィーの条件が確立された。
【0200】
選択されたEGFR結合FN3ドメインのEGFR−Fcに対する親和性(EGFR−
Fc親和性)の決定
組み換え型EGFR細胞外ドメインに対する選択されたEGFR結合FN3ドメインの
結合親和性を、Proteon Instrument(BioRad)を用いて表面プ
ラズモン共鳴法によって更に特徴を調べた。アッセイの設定(チップの調製、EGFR−
Fc捕捉)は、オフレート分析に関して先に記述したものと類似であった。選択されたE
GFR結合FN3ドメインを、1μM濃度で水平方向に3倍連続希釈で試験した。緩衝液
試料もまた、ベースラインでの安定性をモニターするために注入した。各EGFR結合F
N3ドメインの全ての濃度に関する解離相を、流速100μL/分で30分間(オフレー
トスクリーニングから約10−2−1のkoffを有するドメインに関して)、又は1
時間(約10−3−1又はそれより遅いkoffを有するドメインに関して)モニター
した。2組の参照データを、反応データから差し引いた:1)EGFR結合FN3ドメイ
ンと固定したIgG表面との非特異的相互作用を修正するためのスポット間シグナル;2
)捕捉されたEGFR−Fc表面の経時的な解離によるベースラインの揺れを補正するた
めの緩衝液チャネルシグナル。各FN3ドメインに関してすべての濃度での処理された結
合データを1:1の単純なラングミュア結合モデルに全体的にフィットさせて、速度論(
on、koff)及び親和性(K)定数の推定値を引き出した。表5は構築物のそれ
ぞれに関する速度論定数を示し、親和性は200pMから9.6nMまで変化する。
【0201】
細胞上でEGFRに対する選択されたEGFR−結合FN3ドメインの結合(A431
細胞結合アッセイ)
A431細胞を不透明な黒色96ウェルプレートに5,000個/ウェルで播種して、
37℃の湿潤5% CO環境で終夜接着させた。精製EGFR結合FN3ドメイン(1
.5nM〜30μM)を、同じプレートを3枚ずつ作製して、細胞(50μL)に室温で
1時間添加した。上清を除去して、細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液に
よって3回洗浄した。細胞を、FACS染色緩衝液中で1:100に希釈した抗ペンタH
is−Alexa 488抗体コンジュゲート(Qiagen)50μL/ウェルと共に
室温で20分間インキュベートした。細胞を150μL/ウェルのFACS染色緩衝液に
よって3回洗浄した後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを満たし、Acumen
eX3リーダーを用いて488nmで蛍光を読み取った。データを、FN3ドメインモ
ル濃度の対数に対して未加工の蛍光シグナルとしてプロットして、EC50値を計算する
ためにGraphPad Prism 4(GraphPad Software)を用
いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線にフィットさせた。表5は、構築物の
それぞれに関して、2.2〜20μMを超える範囲のEC50を報告する。
【0202】
選択されたEGFR結合FN3ドメインを用いた細胞上のEGFRに対するEGF結合
の阻害(A431細胞EGF競合アッセイ)
A431細胞を不透明な黒色96ウェルプレートに5,000個/ウェルで播種して、
37℃の湿潤5% CO環境で終夜接着させた。精製EGFR結合FN3ドメイン(1
.5nM〜30μM)を、同じプレートを3枚ずつ作製して、細胞(50μL/ウェル)
に室温で1時間添加した。ビオチニル化EGF(Invitrogen、カタログ番号E
−3477)を、最終濃度30ng/mLとなるように各ウェルに添加して、室温で10
分間インキュベートした。細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液によって3
回洗浄した。細胞を、FACS染色緩衝液中で1:100に希釈したストレプトアビジン
−フィコエリスリンコンジュゲート(Invitrogen)50μL/ウェルと共に室
温で20分間インキュベートした。細胞を150μL/ウェルのFACS染色緩衝液によ
って3回洗浄した後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを満たし、Acumen
eX3リーダーを用いて600nmで蛍光を読み取った。データを、FN3ドメインモル
濃度の対数に対して未加工の蛍光シグナルとしてプロットして、IC50値を計算するた
めにGraphPad Prism 4(GraphPad Software)を用い
て、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線にフィットさせた。表5は、1.8〜1
21nMの範囲のIC50値を報告する。
【0203】
EGF刺激EGFRリン酸化の阻害(ホスホ−EGFRアッセイ)
EGF刺激EGFRリン酸化を有意に阻害した選択されたFN3ドメインを、阻害に関
するIC50値を測定することによってより完全に評価した。EGF刺激EGFRリン酸
化の阻害を、「EGF刺激EGFRリン酸化の阻害」において先に記述したように、FN
3ドメイン濃度を変化させて(0.5nM〜10μM)評価した。データを、FN3ドメ
インモル濃度の対数に対してエレクトロケミルミネッセンスシグナルとしてプロットして
、GraphPad Prism 4(GraphPad Software)を用いて
、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線にデータをフィットさせることによって、
IC50値を決定した。表5は、18nM〜>2.5μMの範囲のIC50値を報告する
【0204】
ヒト腫瘍細胞の増殖の阻害(NCI−H292増殖及びNCI−H322増殖アッセイ

EGFR依存的細胞増殖の阻害を、EGFR結合FN3ドメインに対する暴露後のEG
FR過剰発現ヒト腫瘍細胞株NCI−H292及びNCI−H322(American
Type Culture Collection、それぞれカタログ番号CRL−1
848及びCRL−5806)の生存率を測定することによって評価した。細胞を、不透
明な白色96ウェル組織培養処置プレート(Nunc)において、Glutamax(商
標)、並びに10%熱不活化ウシ胎児血清(Gibco)及び1%ペニシリン/ストレプ
トマイシン(Gibco)を添加した10mM HEPESを含むRPMI培地(Gib
co)100μL/ウェル中で500個/ウェル(NCI−H292)又は1,000個
/ウェル(NCI−H322)で播種し、37℃の湿潤5% CO環境で終夜接着させ
た。細胞を、EGFR結合FN3ドメインの濃度範囲を含むリン酸緩衝生理食塩水(PB
S)を5μL/ウェル添加することによって処置した。対照を5μL/ウェルのPBSの
み、又は25mMエチレンジアミン四酢酸のPBS溶液によって処置した。細胞を、37
℃、5% COで120時間インキュベートした。CellTiter−Glo(登録
商標)試薬(Promega)75μL/ウェルを添加した後、プレートシェーカー上で
2分間混合し、室温の暗所で更に10分間インキュベートすることによって生存細胞を検
出した。プレートを、ルミネッセンスモードに設定したSpectraMax M5プレ
ートリーダー(Molecular Devices)で読み取り、読み取り時間は、溶
媒のみのブランクに対して0.5秒/ウェルであった。データをFN3ドメインモル濃度
の対数に対するPBS処置細胞増殖の百分率としてプロットした。GraphPad P
rism 4(GraphPad Software)を用いて、様々な勾配を有するシ
グモイド用量反応曲線の等式にデータをフィットさせることによって、IC50値を決定
した。表5は、NCI−H292及びNCI−H322細胞をそれぞれ用いて、5.9n
M〜1.15μN及び9.2nM〜3.1μM超の範囲のIC50値を示す。
【0205】
表5は、各アッセイのEGFR結合FN3ドメインの生物特性の要約を示す。
【0206】
【表5】
【0207】
実施例4:EGFR結合FN3ドメインの改変
EGFR結合FN3ドメインのサブセットを、各分子の立体構造の安定性を増加させる
ように、改変した。変異体L17A、N46V、及びE86I(米国特許出願公開第20
11/0274623号に記述)をDNA合成によって、クローンP54AR4−83、
P54CR4−31、及びP54AR4−37に組み入れた。新規変異体P54AR4−
83v2、P54CR431−v2、及びP54AR4−37v2を、上記のように発現
させて精製した。PBS中での示差走査熱量測定を用いて、対応する親分子の安定性と比
較するために、各変異体の安定性を評価した。表6は、各クローンが有意に安定化され、
の平均値は18.5℃増加することを示す。
【0208】
【表6】
【0209】
実施例5:EGFR結合FN3ドメインのシステイン改変と化学コンジュゲーション
FN3ドメインのシステイン変異体を、基礎となるTencon分子及びシステイン残
基を有しないその変種から作製する。これらの変異は、低分子薬、蛍光タグ、ポリエチレ
ングリコール、又は他の任意の数の化学実体を化学コンジュゲートするための部位として
役立つように、独自のシステイン残基を、基礎となるTencon配列(配列番号1)又
は他のFN3ドメインに組み入れるために、当技術分野で公知の標準的な分子生物学技術
を用いて作製され得る。選択される変異部位は、特定の基準を満たさなければならない。
例えば、遊離のシステインを含むように変異させたTencon配列は、(i)大腸菌に
おいて高度に発現され、(ii)高レベルの溶解度及び熱安定性を維持し、並びに(ii
i)コンジュゲーションの際に標的抗原に対する結合を維持しなければならない。Ten
con足場は、わずか約90〜95個のアミノ酸であることから、化学コンジュゲーショ
ンのための理想的な位置を厳密に決定するために、1システイン変種を、足場のあらゆる
位置で容易に構築することができる。
【0210】
EGFRに結合するP54AR4−83v2変異体(配列番号27)の1〜95番目(
又はN−末端メチオニンが存在するときには2〜96番目)の位置の各個々のアミノ酸残
基をシステインに変異させて、最善の化学コンジュゲーション部位を評価した。
【0211】
構築、発現、及び精製
P54AR4−83v2の各個々のシステイン変種のアミノ酸配列を、大腸菌発現のた
めの選択的コドンを用いてタンパク質をコードする核酸配列に逆転写して、合成遺伝子を
作製した(DNA 2.0)。これらの遺伝子を、T5プロモーター配列によって駆動さ
れる発現のために、pJexpress401ベクター(DNA2.0)にクローニング
し、大腸菌株BL21(Agilent)に形質転換した。P54AR4−83v2「シ
ステインスキャン」ライブラリは、96ウェルプレート上にアレイにしたグリセロールス
トックとして提供され、それぞれの発現及び精製は、実施例2に記述される同じ技法に従
った。
【0212】
化学コンジュゲーション
P54AR4−83v2「システインスキャン」ライブラリに関して、コンジュゲーシ
ョンを精製プロセスに組み入れた澄明化した溶解物中のシステイン変種は、溶解物をウ
ェルに添加して、100×gで5分間遠心沈降させることにより、His−trap H
Pプレート(カタログ番号28−4008−29、GE Healthcare)を用い
て96ウェルフォーマットでNi−NTA樹脂に結合させた。樹脂を緩衝液Aで3回洗浄
した後、N−エチルマレイミド(NEM)を1.5mM溶液の500μLとして添加した
。ロティサリーシェーカーで室温で1時インキュベートした後、過剰量のNEMを遠心
沈降によって除去して、緩衝液Aによって3回洗浄した。コンジュゲートされたシステイ
ン変種を150μLの緩衝液Bによって2回溶出し、Ultracel−10メンブレン
(カタログ番号MAUF1010、Millipore)を有するMultiScree
n Filter Plates又は96−ウェルPD MultiTrapプレート(
カタログ番号28−9180−06、GE Healthcare)によってPBSに交
換した。コンジュゲートを質量分析によって特徴を調べた(表7)。発現が不良であるか
(5mL培養物から得られたタンパク質が0.1mg未満、又は質量分析によって検出し
てタンパク質が得られない)又はNEMに対するコンジュゲーションが不良である(質量
分析によって測定してコンジュゲーションが80%未満)システイン変種を、更なる分析
から除外した。これによって、発現が不良であるためにL1C、W21C、Q36C、E
37C、A44C、D57C、L61C、Y67C、及びF92Cが除外され、コンジュ
ゲーション効率が低いためにA17C、L19C、I33C、Y35C、Y56C、L5
8C、T65C、V69C、I71C、及びT94Cが除外された。
【0213】
【表7-1】
【0214】
【表7-2】
【表7-3】
【0215】
分析的サイズ排除クロマトグラフィー
P54AR4−83v2の各NEMコンジュゲートシステイン変種のサイズ排除クロマ
トグラフィーを、実施例2に記述されるように行った。表8は、結果を要約する。Abs
280シグナルを積分して、単量体領域のピーク(5.5〜6分)を、オリゴマー領域の
ピーク(4〜5.3分)と比較することにより、各タンパク質の%単量体を決定した。
【0216】
【表8-1】
【0217】
【表8-2】
【表8-3】
【0218】
EGFR結合アッセイ
P54AR4−83v2のNEMコンジュゲートシステイン変種のEGFRに対する相
対的結合親和性を、実施例2に記述されるように評価した。表9は、P54AR4−83
v2親タンパク質と比較した各システイン変種のEGFR結合親和性の比率を示すデータ
を要約する。ELISAアッセイによって決定した場合に、EGFRに対する結合が減少
した(10nMタンパク質によって処置したとき、P54AR4−83v2親に関して観
察されたシグナルの65%未満)システインコンジュゲートを更なる分析から除外した:
P2C、A3C、P4C、K5C、L7C、D23C、W25C、F27C、Y28C、
F31C、S55C、G73C、H75C、V77C、Y78C、T81C、N82C、
M83C、及びG85C。
【0219】
【表9-1】
【0220】
【表9-2】
【0221】
熱安定性
システイン−NEMコンジュゲートの熱安定性を、示差走査熱量測定(DSC)によっ
て評価した。試験したコンジュゲートは、高レベルでコンジュゲートを効率よく発現し、
EGFR結合を保持することが決定されたコンジュゲートであった。加えて、BC及びF
Gループ内のシステイン変種は除外した。安定性データは、VP−DSC機器(Micr
oCal)で毎分1℃の走査速度で、変種のアリコート400μLを25℃から100℃
まで加熱することによって得られた。その試料に関して、熱によるフォールディング/ア
ンフォールディングの可逆性を評価するために、第2の同一の走査を行った。融解温度を
計算するために、データを2状態アンフォールディングモデルにフィットさせた(表10
)。融解温度が低下した(63℃以下又はP54AR4−83v2の親より8℃超下)、
又は非可逆的アンフォールディングを示したシステイン変種を更なる分析から除外した:
V9C、V12C、T13C、R18C、E29C、E39C、G42C、V49C、P
50C、G51C、P63C。
【0222】
【表10-1】
【表10-2】
【0223】
細胞障害性アッセイ
P54AR4−83v2システイン変種を、NEMコンジュゲーションに関して記述さ
れる方法論を用いて、酵素切断可能なVal−Citリンカー又は非切断型PEGリン
カー(VC−MMAF7;図2を参照されたい)を介して、細胞障害性チューブリン阻害
剤であるモノメチルアウリスタチンF(MMAF)にコンジュゲートした。先の段階で除
外後に残っている32個の変種を、P54AR4−83v2親(配列番号217及び25
5)、及び陰性対照としてのTencon(配列番号265)と共にコンジュゲートした
【0224】
殺細胞を、システイン変種−細胞毒素コンジュゲートに暴露後のEGFR過剰発現ヒト
腫瘍細胞株H1573の生存率を測定することによって評価した。細胞を黒色ウェルの透
明底の組織培養処置プレート(Falccon 353219)に、5%ウシ胎児血清(
Gibco)を含むフェノールレッド不含RPMI培地(Gibco 11835−03
0)100μL/ウェル中で7000個/ウェルで播種した。細胞を、37℃の湿潤5%
CO環境で終夜接着させた。96ウェルプレートから培地を吸引して、細胞を新しい培
地50μL、及び新しい培地中に溶解した2×阻害剤50μLで処置した。細胞の生存率
を、70時間でCellTiterGlo(Promega)によるエンドポイントアッ
セイによって決定した。GraphPad Prism 5(GraphPad Sof
tware)を用いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線の等式にデータをフ
ィットさせることによって、IC50値を決定した。表11は、CellTiterGl
oデータの分析から得られたIC50値を報告する。83v2−cys/vcMMAFコ
ンジュゲートの2つの複製物の平均IC50値は、0.7nMであった。試験したコンジ
ュゲート32個中4個が、親の値(約1.4nM)より2倍超高いIC50値を有したこ
とから、廃棄した:L32C、T68C、Y72C、及びV74C。加えて、3つのコン
ジュゲートが親より2倍超強力なIC50値を与え、薬物コンジュゲートに処方するため
に特に適切であり得る:N6C、E53C、及びT93C。
【0225】
【表11】
【0226】
最終的なシステイン変種
試験した96個の位置の中で、システイン変種28個が、大腸菌における高い発現レベ
ルの保持、チオール−マレイミド化学を介した効率的なコンジュゲーション、標的抗原E
GFRに対する結合の保持、熱安定性の保持、及び可逆的アンフォールディング特性、並
びにシステイン変種を細胞障害剤にコンジュゲートしたときに高いEGFR発現を有する
細胞の障害性の保持に関する基準を満たすことが判明した。これらの位置は、N6C(配
列番号210及び248)、V8C(配列番号189及び227)、S10C(配列番号
190及び228)、E11C(配列番号191及び229)、E14C(配列番号19
2及び230)、D15C(配列番号193及び231)、S16C(配列番号194及
び232)、S20C(配列番号195及び233)、S30C(配列番号196及び2
34)、Q34C(配列番号197及び235)、S38C(配列番号198及び236
)、K40C(配列番号199及び237)、V41C(配列番号200及び238)、
I45C(配列番号201及び239)、L47C(配列番号202及び240)、T4
8C(配列番号203及び241)、E53C(配列番号204及び242)、R54C
(配列番号205及び243)、T59C(配列番号206及び244)、G60C(配
列番号207及び245)、K62C(配列番号208及び246)、G64C(配列番
号209及び247)、T68C(配列番号210及び248)、S70C(配列番号2
11及び249)、L88C(配列番号212及び250)、S89C(配列番号213
及び251)、A90C(配列番号214及び252)、I91C(配列番号215及び
253)、並びにT93C(配列番号216及び254)である。83v2タンパク質の
構造におけるこれらの28の位置の場所を図3に示す。
【0227】
実施例6:c−Metに結合してHGF結合を阻害するフィブロネクチンIII型(F
N3)ドメインの選択
ヒトc−Metに関するパニング
c−Metに特異的に結合することができるFN3ドメインを同定するために、TCL
14ライブラリを、ビオチニル化ヒトc−Met細胞外ドメイン(bt−c−Met)に
対してスクリーニングした。選択するために、TCL14ライブラリ3μgを、大腸菌S
30 Linear Extract(Promega,Madison,WI)中でイ
ンビトロで転写及び翻訳し、発現させたライブラリをCisブロック(2% BSA(S
igma−Aldrich,St.Louis,MO)、100μg/mlニシン精子D
NA(Promega)、1 mg/mLヘパリン(Sigma−Aldrich))に
よってブロックした。選択するために、bt−c−Metを400nM(ラウンド1)、
200nM(ラウンド2及び3)、及び100nM(ラウンド4及び5)の濃度で添加し
た。結合したライブラリメンバーを、ニュートラアビジン磁気ビーズ(Thermo F
isher,Rockford,IL)(ラウンド1、3及び5)、又はストレプトアビ
ジン磁気ビーズ(Promega)(ラウンド2及び4)を用いて回収し、ビーズを50
0μLのPBS−Tで5〜14回洗浄した後、500μLのPBSで2回洗浄することに
よって、非結合ライブラリメンバーを除去した。
【0228】
改善された親和性を有するFN3ドメイン分子を同定するために、追加の選択ラウンド
を行った。簡単に説明すると、ラウンド5からの生成物を、上記のように調製して、以下
の変更を加えて追加の反復選択ラウンドに供した:bt−c−Metとのインキュベーシ
ョンを1時間から15分に減少させて、ビーズ捕獲を20分から15分に減少させ、bt
−c−Metを25nM(ラウンド6又は7)又は2.5nM(ラウンド8及び9)に減
少させ、更に1時間の洗浄を過剰量の非ビオチニル化c−Metの存在下で行った。これ
らの変更の目的は、おそらくより早いオンレートとより遅いオフレートを有する結合体を
同時に選択して、実質的により低いKを生じることであった。
【0229】
ラウンド5、7及び9の生成物を、TCON6(配列番号30)及びTCON5 E8
6Iショート(配列番号31)プライマーを用いてリガーゼ非依存的クローニングサイト
(pET15−LIC)を含む改変pET15ベクター(EMD Bioscience
s,Gibbstown、NJ)にPCRクローニングして、標準的なプロトコールを用
いて、形質転換及びIPTG(最終濃度1mM、30°℃で16時間)誘導後にC−末端
His6タグタンパク質として、タンパク質を発現させた。細胞を遠心沈降によって回収
した後、0.2mg/mLニワトリ卵白リゾチーム(Sigma−Aldrich)を添
加したBugbuster HT(EMD Biosciences)によって溶解した
。細菌溶解物を遠心沈降によって澄明化して、上清を新しい96ウェル深底プレートに移
した。
【0230】
c−Metに対するHGF結合を阻害するFN3ドメインのスクリーニング
大腸菌溶解物に存在するFN3ドメインを、生化学フォーマットで精製c−Met細胞
外ドメインに対するHGF結合の阻害能に関してスクリーニングした。組み換え型ヒトc
−Met Fcキメラ(PBS中で0.5μg/mL、100μL/ウェル)を96ウェ
ル白色Maxisorpプレート(Nunc)にコーティングして、4℃で終夜インキュ
ベートした。プレートを、Biotekプレート洗浄器において、0.05% Twee
n 20(TBS−T,Sigma−Aldrich)を含むTris緩衝生理食塩水3
00μL/ウェルによって2回洗浄した。アッセイプレートを、StartingBlo
ck T20(200μL/ウェル、Thermo Fisher Scientifi
c,Rockland,IL)によって振とうさせながら室温(RT)で1時間ブロック
して、TBS−T 300μLによって2回洗浄した。FN3ドメイン溶解物を、Ham
ilton STARplusロボットシステムを用いて、StartingBlock
T20(1:10〜1:100,000)中で希釈した。溶解物(50μL/ウェル)
を、アッセイプレートにおいてRTで振とうさせながら1時間インキュベートした。プレ
ートを洗浄せずに、bt−HGF(StartingBlock T20中で1μg/m
L、50μL/ウェル、ビオチニル化)を、振とうさせながらRTで30分間プレートに
添加した。Tencon27溶解物を含む対照ウェルに、StartingBlock
T20又は希釈したbt−HGFのいずれかを添加した。プレートを300μL/ウェル
のTBS−Tによって4回洗浄して、100μL/ウェルのストレプトアビジン−HRP
(TBS−T中で1:2000、Jackson Immunoresearch、We
st Grove,PA)と共に、RTで振とうさせながら30〜40分間インキュベー
トした。再度、プレートをTBS−Tで4回洗浄した。シグナルを発生させるために、製
造元の指示に従って調製したPODケミルミネッセンス基質(50μL/ウェル、Roc
he Diagnostics,Indianapolis,IN)をプレートに添加し
て、およそ3分以内に、SoftMax Proを用いてMolecular Devi
ces M5において発光を読み取った。%阻害は、以下の計算式を用いて決定した:1
00−((RLUsample−RLU平均値No bt−HGF control)/
(RLU平均値bt−HGF control−RLU平均値No bt−HGF co
ntrol100)50%又はそれより高い%阻害の値は、ヒットであると考えられ
た。
【0231】
FN3ドメインのハイスループット発現及び精製
HisタグFN3ドメインを His MultiTrap(商標)HPプレート(G
E Healthcare)によって澄明化大腸菌溶解物から精製して、20mMリン酸
ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、及び250mMイミダゾールを含むpH7.4
の緩衝液で溶出した。精製試料を、PD MultiTrap(商標)G−25プレート
(GE Healthcare)を用いる分析のために、pH7.4のPBSに交換した
【0232】
c−Metに対するHGF結合の阻害のIC50決定
選択されたFN3ドメインを、HGF競合アッセイにおいて更に特徴を調べた。精製F
N3ドメインの用量反応曲線を、上記のアッセイを利用して作製した(開始濃度5μM)
。%阻害の値を計算した。データを、FN3ドメインモル濃度の対数に対する%阻害とし
てプロットして、GraphPad Prism 4を用いて、様々な勾配を有するシグ
モイド用量反応曲線にデータをフィットさせることによって、IC50値を決定した。
【0233】
ラウンド5から、1:10の希釈で活性を示す35個のユニーク配列が同定され、IC
50値は、0.5〜1500nMの範囲であった。ラウンド7は、1:100の希釈で活
性を示す39個のユニーク配列を生じ、IC50値は、0.16〜2.9nMの範囲であ
った。ラウンド9からは66個のユニーク配列が同定されたが、この場合、ヒットは、1
:1000の希釈で活性であると定義された。ラウンド9では、0.2nMもの低いIC
50値が観察された(表13)。
【0234】
実施例7:c−Metに結合して、HGF結合を阻害するFN3ドメインの特徴づけ
FN3ドメインを、実施例2において先に記述したように発現及び精製した。サイズ排
除クロマトグラフィー及び速度論分析をそれぞれ、実施例1及び2において先に記述した
ように行った。表12は、C鎖、CDループ、F鎖、及びFGループの配列、並びに各ド
メインに関する完全なアミノ酸配列の配列番号を示す。
【0235】
【表12】
Cループ残基は、表記の配列番号の28〜37番目の残基に対応する。
CD鎖残基は、表記の配列番号の38〜43番目の残基に対応する。
Fループ残基は、表記の配列番号の65〜74番目の残基に対応する。
FG鎖残基は、表記の配列番号の75〜81番目の残基に対応する。
【0236】
細胞におけるc−Metに対する選択されたc−Met結合FN3ドメインの結合
NCI−H441細胞(カタログ番号HTB−174,American Type
Culture Collection,Manassas,VA)を、20,000個
/ウェルでポリ−D−リジンコーティングした黒色透明底の96ウェルプレート(BD
Biosciences,San Jose,CA)に播種して、37℃、5% CO
で終夜接着させた。精製FN3ドメイン(50μL/ウェル;0〜1000nM)を、同
じプレートを2枚ずつ作製して、4℃で1時間細胞に添加した。上清を除去して、細胞を
、FACS染色緩衝液(150μL/ウェル、BD Biosciences,カタログ
番号554657)によって3回洗浄した。細胞を、ビオチニル化抗HIS抗体(FAC
S染色緩衝液中で1:160倍希釈、50μL/ウェル、R&D Systems、カタ
ログ番号BAM050)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS染色
緩衝液(150μL/ウェル)で3回洗浄後、ウェルを抗マウスIgG1−Alexa4
88コンジュゲート抗体(FACS染色緩衝液中で1:80倍希釈、50μL/ウェル、
Life Technologies,カタログ番号A21121)と共に4℃で30分
間インキュベートした。細胞をFACS染色緩衝液(150μL/ウェル)によって3回
洗浄し、FACS染色緩衝液(50μL/ウェル)中で放置した。総蛍光を、Acume
n eX3リーダーを用いて決定した。データを、FN3ドメインモル濃度の対数に対し
て未加工の蛍光シグナルとしてプロットして、GraphPad Prism 4(Gr
aphPad Software)を用いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲
線にフィットさせて、EC50値を計算した。FN3ドメインは、結合活性の範囲を示す
ことが見いだされ、表13に示されるようにEC50値は、1.4〜22.0であった。
【0237】
HGF刺激c−Metリン酸化の阻害
精製FN3ドメインを、Meso Scale Discovery(Gaither
sburg,MD)のc−Met phospho(Tyr1349)キットを用いて、
NCI−H441におけるc−MetのHGF刺激リン酸化の阻害能に関して試験した。
細胞を、透明な96ウェル組織培養処置プレートにおいて、10%ウシ胎児血清(FBS
,Life Technologies)を添加したRPMI培地100μL/ウェル中
で20,000個/ウェルで播種し、37℃、5% COで終夜接着させた。培養培地
を完全に除去して、細胞を37℃、5% COで、無血清RPMI培地(100μL/
ウェル)中で終夜枯渇させた。次に、細胞に、濃度20μM以下のFN3ドメインを含む
新しい無血清RPMI培地(100μL/ウェル)を、37℃、5% CO1時間
加した。対照は、培地のみで処置した。細胞を、100ng/mL組み換え型ヒトHGF
(100μL/ウェル、R&D Systems、カタログ番号294−HGN)によっ
て刺激して、37℃、5% COで15分間インキュベートした。一組の対照ウェルは
、陰性対照として刺激しないままであった。培地を完全に除去して、細胞を、製造元の指
示に従って、RTで振とうさせながらComplete溶解緩衝液(50μL/ウェル、
Meso Scale Discovery)によって10分間溶解した。リン酸化c−
Metを測定するように構成されたアッセイプレートを、製造元の指示に従って、提供さ
れたブロッキング溶液によって室温で1時間ブロックした。次に、プレートを、Tris
洗浄緩衝液(200μL/ウェル、Meso Scale Discovery)によっ
て3回洗浄した。細胞溶解物(30μL/ウェル)をアッセイプレートに移して、振とう
させながらRTで1時間インキュベートした。次に、アッセイプレートをTris洗浄緩
衝液によって4回洗浄した後、氷冷の検出抗体溶液(25μL/ウェル、Meso Sc
ale Discovery)を、振とうさせながらRTで各ウェルに1時間添加した。
プレートをTris洗浄緩衝液によって4回すすいだ。150読み取り緩衝液(150μ
L/ウェル、Meso Scale Discovery)を添加して、製造元のインス
トールしたアッセイ特異的デフォルト設定を用いて、SECTOR(登録商標)Imag
er 6000機器(Meso Scale Discovery)において読み取るこ
とにより、シグナルを検出した。データを、FN3ドメインモル濃度の対数に対するエレ
クトロケミルミネッセンスシグナルとしてプロットして、GraphPad Prism
4を用いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線にデータをフィットさせるこ
とによって、IC50値を決定した。FN3ドメインは、表13に示されるように、4.
6〜1415nMの範囲のIC50値でリン酸化c−Metを阻害することが見いだされ
た。
【0238】
ヒト腫瘍細胞増殖の阻害
c−Met依存的細胞増殖の阻害を、c−Met結合FN3ドメインに対する暴露後の
U87−MG細胞(American Type Culture Collectio
n、カタログ番号HTB−14)の生存率を測定することによって評価した。細胞を、不
透明な白色96ウェル組織培養処置プレート(Nunc)において10% FBSを添加
したRPMI培地100μL/ウェル中で8000個/ウェルで播種し、37℃、5%
COで終夜接着させた。播種後24時間で、培地を吸引して、細胞に無血清RPMI培
地を添加した。血清枯渇の24時間後、c−Met結合FN3ドメインを含む無血清培地
(30μL/ウェル)を添加することによって、細胞を処置した。細胞を、37℃、5%
COで72時間インキュベートした。生存細胞を、CellTiter−Glo(登
録商標)試薬(Promega)100μL/ウェルを添加した後、プレートシェーカー
において10分間混合することによって検出した。プレートを、ルミネッセンスモードに
設定したSpectraMax M5プレートリーダー(Molecular Devi
ces)で読み取り、読み取り時間は、0.5秒/ウェルであった。データをFN3ドメ
インモル濃度の対数に対する未加工発光単位(RLU)としてプロットした。Graph
Pad Prism 4を用いて、様々な勾配を有するシグモイド用量反応曲線の等式に
データをフィットさせることによって、IC50値を決定した。表13は、1nM〜10
00nM超の範囲のIC50値を報告する。
【0239】
【表13】
【0240】
c−Met結合FN3ドメインの熱安定性
【0241】
PBS中での示差走査熱量測定を用いて、各FN3ドメインの安定性を評価した実験の
結果を表14に示す。
【0242】
【表14】
【0243】
実施例8二重特異性抗EGFR/c−Met分子の作製及び特徴づけ
二重特異性EGFR/c−Met分子の作製
実施例1〜6に記述したEGFRとc−Met結合FN3ドメインの多数の組み合わせ
を合わせて、EGFRとc−Metの両方に結合することができる二重特異性分子を作製
した。更に、配列番号107〜110に示されるアミノ酸配列を有するEGFR結合FN
3ドメイン、及び配列番号111〜114に示されるアミノ酸配列を有するc−Met結
合FN3ドメインを作製して、二重特異性分子に結合した。以下のフォーマットが維持さ
れるように配列番号50〜72、及び106(表15)に記載のアミノ酸配列をコードす
るように、合成遺伝子を作製した:EGFR結合FN3ドメインの後にペプチドリンカー
、その後にc−Met結合FN3ドメイン。精製を助けるために、C−末端にポリヒスチ
ジンタグを組み入れた。表15に記述される分子に加えて、2つのFN3ドメイン間のリ
ンカーを、表16に記載の内容に従って、長さ、配列組成、及び構造に従って変化させた
。そのようなFN3ドメインを連結させるために、多数の他のリンカーを用いることがで
きると予想される。二重特異性EGFR/c−Met分子を発現させて、単特異性EGF
R又はc−MetFN3ドメインに関して記述したように、IMAC及びゲル濾過クロマ
トグラフィー工程を用いて、大腸菌から精製した。
【0244】
【表15】
【0245】
【表16】
【0246】
二重特異性EGFR/c−Met分子は単特異性分子単独と比較して効力を増強し、結
合力を示唆する
NCI−H292細胞を、96ウェルプレートにおいて、10% FBSを含むRPM
I培地中で播種した。24時間後、培地を無血清RPMIに交換した。血清枯渇の24時
間後、細胞を多様な濃度のFN3ドメインによって処置した:高親和性単特異性EGFR
FN3ドメイン(P54AR4−83v2)、弱親和性単特異性c−Met FN3ド
メイン(P114AR5P74−A5)、2つの単特異性EGFR及びc−Met FN
3ドメインの混合物、又は高親和性EGFR FN3ドメインに連結させた低親和性c−
Met FN3ドメインからなる二重特異性EGFR/c−Met分子(ECB1)。細
胞を、単特異性又は二重特異性分子によって1時間処置した後、EGF、HGF、又はE
GFとHGFの組み合わせによって37℃、5% COで15分間刺激した。細胞をM
SD溶解緩衝液によって溶解して、適当なMSDアッセイプレートを用いて、上記のよう
に製造元の指示に従って、細胞のシグナリングを評価した。
【0247】
低親和性c−Met FN3ドメインは、610nMのIC50でc−Metのリン酸
化を阻害した(図6)。予想されるように、EGFR FN3ドメインは、c−Metリ
ン酸化を阻害することができず、単特異性分子の混合物は、c−Met FN3ドメイン
単独と同一であるように思われた。しかし、二重特異性EGFR/c−Met分子は、1
nMのIC50でc−Metのリン酸化を阻害し(図6)、c−Met単特異性分子単独
と比較して効力の改善の2対数を超えるシフトをもたらした。
【0248】
結合力の効果を通してc−Met及び/又はEGFRリン酸化の阻害を増強する二重特
異性EGFR/c−Met分子の可能性を、多様なc−Met及びEGFR密度及び比率
を有する多数の細胞タイプにおいて評価した(図7)。NCI−H292、NCI−H4
41、又はNCI−H596細胞を、96ウェルプレートにおいて、10% FBSを含
むRPMI培地中で播種した。24時間後、培地を無血清RPMIに交換した。血清枯渇
の24時間後、細胞を多様な濃度の単特異性EGFR結合FN3ドメイン、単特異性c−
Met FN3ドメイン、又は二重特異性EGFR/c−Met分子(ECB5、P53
A1R5−17v2及びP114AR7P94−A3からなる)によって処置した。細胞
を、単特異性又は二重特異性分子によって1時間処置した後、EGF、HGF、又はEG
FとHGFの組み合わせによって37℃、5% COで15分間刺激した。細胞をMS
D溶解緩衝液によって溶解して、適当なMSDアッセイプレートを用いて、上記のように
製造元の指示に従って、細胞のシグナリングを評価した。
【0249】
図7(A〜C)は、3つの異なる細胞株における二重特異性EGFR/cMet分子と
比較して、単特異性EGFR結合FN3ドメインを用いたEGFRの阻害を示す。EGF
Rリン酸化アッセイにおける結合力を評価するために、中等度の親和性のEGFR結合F
N3ドメイン(1.9nM)(P53A1R5−17v2)を、高親和性c−Met結合
FN3ドメインに連結させた同じEGFR結合FN3ドメイン(0.4nM)(P114
AR7P94−A3)を含む二重特異性EGFR/c−Met分子と比較した。H292
及びH596細胞において、EGFRのリン酸化の阻害は、単特異性分子と二重特異性分
子とで同等であり(図7A及び7B)、その理由はおそらく、これらの細胞株がEGFR
対c−Met受容体の高い比率を有するためであった。この理論を試験するために、EG
FRリン酸化の阻害を、EGFRより多くのc−Met受容体を示すNCI−H441細
胞において評価した。NCI−H441細胞を、二重特異性EGFR/c−Met分子に
よって処置すると、単特異性EGFR結合FN3ドメインと比較してEGFRリン酸化の
阻害に関するIC50を30倍減少させた(図7C)。
【0250】
二重特異性EGFR/c−Met分子によって効力が増加する可能性を、EGFRに対
して高い親和性(0.26nM)及びc−Met(10.1nM)に対して中等度の親和
性を有する分子を用いて、c−Metリン酸化アッセイにおいて評価した。NCI−H2
92及びNCI−H596細胞の両方において、c−Metのリン酸化の阻害は、単特異
的c−Met結合FN3ドメインと比較して二重特異性分子ではそれぞれ、134倍及び
1012倍増強された(図7D及び7E)。
【0251】
二重特異性EGFR/c−Met分子によるEGFR及びc−Metリン酸化の阻害に
関する効力の増加は、シグナリング及び増殖の阻害の増強に言い換えられることが確認さ
れた。これらの実験に関して、FN3 EGFR結合及びc−Met結合FN3ドメイン
の混合物を二重特異性EGFR/c−Met分子と比較した。表17及び18に記述され
るように、ERKリン酸化のIC50(表17)及びH292細胞の増殖(表18)は、
単特異性結合体の混合物と比較して、細胞を二重特異性EGFR/c−Met分子で処置
すると、減少した。二重特異性EGFR/c−Met分子に関するERKリン酸化の阻害
のIC50は、単特異性EGFR及びc−Met FN3ドメインの混合物と比較して1
43倍低く、このアッセイにおける分子の効力に対する結合力の効果を示した。表17に
おいて、単特異性EGFR及びc−Met結合FN3ドメインは、完全に活性を阻害せず
、それゆえ示されたIC50値は、下限であるとみなすべきである。増殖アッセイを、混
合物又は二重特異性フォーマットで連結された形のいずれかとして、EGFR及びc−M
et結合FN3ドメインの異なる組み合わせを用いて行った。二重特異性EGFR/c−
Met分子の阻害又は増殖のIC50は、単特異性の親EGFR又はc−Met結合FN
3ドメインの混合物と比較して34〜236倍低かった。このことは受容体のレベルで観
察された結合力の効果(図6及び図7)が、細胞シグナリングの阻害(表17)及び細胞
増殖の阻害(表18)の改善に言い換えられることを確認した。
【0252】
【表17】
【0253】
【表18】
【0254】
インビトロ腫瘍異種移植片:PK/PD
単特異性及び二重特異性FN3ドメイン分子のインビボでの効能を決定するために、腫
瘍細胞を、ヒトHGFを分泌するように改変した(マウスHGFはヒトHGFに結合しな
い)。ヒトHGFを、レンチウイルス感染を用いてNCI−H292細胞において安定に
発現させた(ヒトHGFを発現するレンチウイルスDNAベクター(受託番号X1632
2)及びGenecopoeiaからのレンチウイルスパッケージングキット)。感染後
、HGF発現細胞を4μg/mLピューロマイシン(Invitrogen)によって選
択した。ヒトHGFタンパク質を、Meso Scale Discoveryのアッセ
イプレートを用いてプールした細胞の条件培地で検出した。
【0255】
SCID Beigeマウスに、ヒトHGFを発現するNCI−H292細胞(容積2
00μLのCultrex(Trevigen)中で2.0×10個)を各動物の背側
脇腹に皮下接種した。腫瘍の測定は、腫瘍の体積が150〜250mmの範囲となるま
で週に2回行った。次に、マウスに、二重特異性EGFR/c−Met分子(半減期を増
加させるためにアルブミン結合ドメインに連結させた)又はPBSビヒクルの1回腹腔内
投与を行った。投与後6時間又は72時間目に、腫瘍を摘出して、直ちに液体窒素中で凍
結した。心穿刺により、血液試料を、プロテアーゼ阻害剤を含む3.8%クエン酸中に採
取した。採取後直ちに、血液試料を遠心沈降させて、得られた血漿を試験管に移し、−8
0℃で保存した。腫瘍の重量を測定し、小片に切断して、HALTプロテアーゼ/ホスフ
ァターゼ阻害剤(Pierce)、50mMフッ化ナトリウム(Sigma)、2mM活
性化オルトバナジン酸ナトリウム(Sigma)、及び1mM PMSF(Meso S
cale Discovery)を有するRIPA緩衝液を含むLysing Matr
ix A試験管(LMA)中で溶解した。溶解物をLMAマトリクスから取り出して、遠
心沈降して不溶性タンパク質を除去した。可溶性の腫瘍タンパク質を、BCAタンパク質
アッセイによって定量して、腫瘍溶解緩衝液中で同等のタンパク質レベルに希釈した。リ
ン酸化c−Met、EGFR、及びERKを、Meso Scale Discover
yのアッセイプレートを用いて測定した(製造元のプロトコルに従って、及び上記のよう
に)。
【0256】
は、実験の結果を示す。各二重特異性EGFR/c−Met分子は、6時間及び7
2時間の両方で、リン酸化c−Met、EGFR、及びERKレベルを有意に減少させた
。図に示したデータは、c−Met及びEGFRの両方を同時に阻害する重要性、及び
各受容体に関する二重特異性EGFR/c−Met分子の親和性が下流のERKの阻害に
おいてどのような役割を果たすかを示している。高親和性EGFR結合FN3ドメインを
含む分子(P54AR4−83v2;図において「8」で示す、K=0.26nM)
は、6時間及び72時間の両方で中等度親和性EGFR結合FN3ドメインを含む分子(
P53A1R5−17v2;図において「17」で示す、K=1.9nM)と比較して
大きい程度にEGFRのリン酸化を阻害した。試験した4つ全ての二重特異性分子は、親
和性によらず、6時間の時点でERKのリン酸化を完全に阻害した。72時間の時点で、
高親和性c−Met結合ドメインを含む分子(P114AR7P94−A3;図において
「A3」として示す、K=0.4nM)は、中等度親和性c−Met結合FN3ドメイ
ンを含む分子(P114AR5P74−A5;図において「A5」として示す、K=1
0.1nM;Figure 6)と比較してERKのリン酸化を有意に阻害した。
【0257】
各二重特異性EGFR/c−Met分子の濃度を、投与後6時間及び72時間の血液中
及び腫瘍中で測定した(図9)。興味深いことに、中等度親和性EGFR結合ドメイン(
P53A1R5−17v2;K=1.9nM)は、他の分子と比較して6時間で有意に
より多くの腫瘍での蓄積を示したが、高親和性c−Met結合FN3ドメイン(P114
AR7P94−A3;K=0.4nM)は示さず、その差は72時間までに消失した。
腫瘍外の細胞は、EGFR及びc−Met両方の表面発現レベルがより低く、それゆえ、
中等度親和性EGFR分子は、高親和性EGFR結合FN3ドメインと比較して、正常組
織に堅固に結合しないという仮説を立てることができる。それゆえ、より多くの遊離の中
等度親和性EGFR結合FN3ドメインが腫瘍との結合に利用できる。それゆえ、各受容
体に対して適切な親和性を同定することにより、全身毒性の減少及び腫瘍蓄積の増加を有
する治療薬を同定することができる。
【0258】
二重特異性EGFR/c−Met分子による腫瘍の効能試験
SCID Beigeマウスに、ヒトHGFを発現するNCI−H292細胞(200
μLのCultrex(Trevigen)中で2.0×10個)を各動物の背側脇腹
に皮下接種した。植え込みの1週間後、マウスを同等の腫瘍体積(平均腫瘍体積=77.
9±1.7mm)を有する群に分けた。マウスに、二重特異性分子を週に3回投与して
、腫瘍の体積を週に2回記録した。腫瘍の増殖阻害(TGI)を、c−Met及びEGF
Rに対して様々な親和性を有する4つの異なる二重特異性分子について観察した。図10
は、c−Met結合FN3ドメインが中等度親和性を有するとき、中等度親和性EGFR
結合FN3ドメインと比較して高親和性EGFR結合FN3ドメインを含む分子で処置し
たマウスでは腫瘍増殖の遅れが観察されたことから、c−Met及びEGFRの両方を阻
害する恩典を示す(△対▲、P54AR4−83v2−P114AR5P74−A5をP
53A1R5−17−P114AR5P74−A5と比較)。加えて、データは、高又は
中等度親和性EGFR結合FN3ドメインのいずれかを含む二重特異性分子として高親和
性c−Met結合FN3ドメインを有する重要性を示しているが、高親和性c−Met結
合FN3ドメインは、最も高い効能を示した(灰色の点線と黒色の実線、P54AR4−
83v2−P114AR7P94−A3とP53A1R5−17v2−P114AR7P
94−A3)。
【0259】
二重特異性分子並びにEGFR及びc−Metの他の阻害剤の効能
二重特異性EGFR/c−Met分子(ECB38)及び低分子阻害剤クリゾチニブ(
c−Met阻害剤)及びエルロチニブ(EGFR阻害剤)、セツキシマブ(抗EGFR抗
体)のそれぞれ単剤としての、並びにクリゾチニブとエルロチニブの併用のインビボ治療
効能を、SCID/BeigeマウスにおけるH292−HGFヒト肺がん皮下異種移植
片モデルの処置において評価した(図11)。
【0260】
H292−HGF細胞を、ウシ胎児血清(10%v/v)及びL−グルタミン(2mM
)を添加したRPMI1640培地中で、5% CO2を含む空気環境下で37℃でイン
ビトロで維持した。細胞を、トリプシン−EDTA処置によって週に2回サブクローニン
グした。指数増殖相で増殖する細胞を回収して、腫瘍接種のために計数した。
【0261】
各マウスの右脇腹領域に、腫瘍を発達させるためのcultrexを含むPBS(1:
1)0.1mL中のH292−HGF腫瘍細胞(2×10個)を皮下接種した。平均腫
瘍サイズが139mmに達したときに処置を開始した。各試験群における試験物質の投
与及び動物番号を、以下の実験計画表に示す(表26)。腫瘍細胞接種日を0日目とした
【0262】
【表19】
N:動物数p.o.:経口投与i.p.:腹腔内注射を週に3回;用量は、週の1、3
、及び5日目に投与する。
QD:1日1回。Q4d:4日ごとに1回クリゾチニブとエルロチニブの併用の間隔は
0.5時間であった。投与体積は、体重に基づいて調節した(10l/g)。a:群分け
後の14日目には投与を行わなかった。
【0263】
処置開始前、全ての動物の体重を測定して、腫瘍体積を測定した。腫瘍体積は任意の所
定の処置の有効性に影響を及ぼし得ることから、その腫瘍体積に基づく無作為ブロックデ
ザインを用いてマウスを群分けした。これによって、全ての群がベースラインで確実に同
等となる。無作為化ブロックデザインを用いて、実験動物を群に割り付けした。第一に、
実験動物をその初回腫瘍体積に従って均一ブロックに分けた。次に、各ブロック内で処置
に対する実験動物の無作為化を行った。実験動物を割り付けするために無作為化ブロック
デザインを用いることにより、各動物が、所定の処置に割り付けられる確率が同じである
ことが確保され、それゆえ、系統的誤差が減少した。
【0264】
通常のモニタリング時に、動物を、運動性、飼料及び水の摂取の目視での推定、体重増
加/減少(体重は週に2回測定した)、つやのない眼/毛、及び他の任意の異常な効果な
どの、通常行動に及ぼす腫瘍増殖及び処置の任意の影響に関してチェックした。
【0265】
主要なエンドポイントは、腫瘍の増殖を遅らせることができるか否か、又は腫瘍を有す
るマウスを治癒できるか否かであった。腫瘍の大きさは、カリパスを用いて2つの寸法を
週に2回測定して、a及びbがそれぞれ、腫瘍の長径及び短径である、式:V=0.5a
×bを用いて体積をmmで表記した。次に、腫瘍サイズをT−C及びT/C値の計算
のために用いた。T−Cは、処置群の平均腫瘍サイズが1000mmに達するのに要す
る時間(日数)としてTから計算され、Cは、対照群の平均腫瘍サイズが同じサイズに達
するまでの時間(日数)であった。T/C値(%)は、抗腫瘍効能の指標であった。T及
びCはそれぞれ、所定の日の処置群及び対照群の平均体積であった。完全な腫瘍の退縮(
CR)は、触診下限(62.5mm)より下まで低減された腫瘍として定義される。部
分的な腫瘍退縮(PR)は、初回の腫瘍体積から低減された腫瘍として定義される。少な
くとも3回以上連続した腫瘍測定でCR又はPRが持続することは、CP又はPRが持続
可能であると考えられるために必要である。
【0266】
体重減少が20%を超える動物、又は群の平均腫瘍サイズが2000mmを超える動
物は安楽死させた。最終投与後2週間の観察後に試験を終了した。
【0267】
各時点の各群の腫瘍体積に関して、平均値及び平均値の標準誤差(SEM)を含む要約
統計量を提供する(以下の表19に示す)。群における腫瘍体積の差の統計分析は、一元
配置ANOVAの後にGames−Howell(等分散を仮定しない)を用いる個々の
比較を用いることによって評価した。データは全て、SPSS 18.0を用いて分析し
た。p<0.05は、統計学的に有意であると考えられた。
【0268】
【表20】
【0269】
ビヒクル処置群(群1)の平均腫瘍サイズは、腫瘍接種後23日目に1,758mm
に達した。用量レベル25mg/kgの二重特異性EGFR/c−Met分子によって処
置すると(群2)、全てのマウスにおいて完全な腫瘍の退縮(CR)が起こり、これは3
回より多くの連続腫瘍測定の間持続した(平均値TV=23mm、T/C値=1%、2
3日目でのビヒクル群と比較してp=0.004)。
【0270】
用量レベル50mg/kgの単剤としてのクリゾチニブによる処置(群3)は、抗腫瘍
活性を示さなかった;平均腫瘍サイズは23日目に2,102mmであった(T/C値
=120%、ビヒクル群と比較してp=0.944)。
【0271】
用量レベル50mg/kgの単剤としてのエルロチニブによる処置(群4)は、軽微な
抗腫瘍活性を示したが、ビヒクル群と比較して有意差は認められなかった。平均腫瘍サイ
ズは23日目で1,122mmであり(T/C値=64%、ビヒクル群と比較してp=
0.429)、1,000mmの腫瘍サイズではビヒクル群と比較して腫瘍増殖の4日
間の遅れを示した。
【0272】
クリゾチニブ(50mg/kg、群5)とエルロチニブ(50mg/kg、群5)の併
用は、有意な抗腫瘍活性を示した。平均腫瘍サイズは23日目で265mmであり(T
/C値=15%、p=0.008)、1,000mmの腫瘍サイズではビヒクル群と比
較して腫瘍増殖の17日間の遅れを示した。
【0273】
単剤としての用量レベル1mg/マウスのセツキシマブ(群6)は、有意な抗腫瘍活性
を示した。平均腫瘍サイズは23日目で485mmであり(T/C値=28%、p=0
.018)、1,000mmの腫瘍サイズではビヒクル群と比較して腫瘍増殖の17日
間の遅れを示した。図11は、様々な治療の抗腫瘍活性を示す。
【0274】
【表21】
【0275】
ビヒクル群では中等度から重度の体重減少が観察され、これは腫瘍の負荷の増加による
ものであり得る。マウス3匹が死亡し、23日目までにBWL>20%となったマウス1
匹を安楽死させた。群2では二重特異性EGFR/c−Met分子の軽度の毒性が観察さ
れた。処置機関の間にBWL>20%となったマウス3匹を安楽死させた。2週間の観察
期間の間処置を中止すると、体重は徐々に回復した。クリゾチニブ又はエルロチニブ単剤
治療群では、ビヒクル群と比較してより重度の体重減少が観察され、処置関連毒性を示唆
した。クリゾチニブとエルロチニブの併用は、投与相の間、一般的に認容されたが、試験
終了時には重度の体重減少が観察され、これは非処置期間での急速な腫瘍増殖の再開によ
るものであり得る。セツキシマブの単剤治療は、試験において良好に認容された。腫瘍増
殖の再開により、試験終了時に限って体重減少が観察された。
【0276】
要約すると、25mg/kgの二重特異性EGFR/c−Met分子(週に3回×3週
間)は、SCID/BeigeマウスのH292−HGFヒト肺がん異種移植片モデルに
おいて完全奏功をもたらした。処置は、マウス10匹中7匹において認容され、マウス1
0匹中3匹には重度の体重減少が起こった。図11及び表20は、処置後の時点での腫瘍
サイズに及ぼす様々な治療の影響を示す。
【0277】
実施例9:二重特異性EGFR/c−Met分子の半減期延長
タンパク質の腎臓での濾過を低減させ、このようにタンパク質の血清半減期を増加させ
るために様々な方法が記述されており、これには、ポリエチレングリコール(PEG)又
は他のポリマーによる修飾、アルブミンとの結合、アルブミン又は他の血清タンパク質に
結合するタンパク質ドメインとの融合、アルブミンとの遺伝的融合、IgG fcドメイ
ンとの融合、及び長い非構造アミノ酸配列との融合が挙げられる。
【0278】
流体力学半径を増加させるために、分子のC−末端で遊離のシステインを組み入れるこ
とによって、二重特異性EGFR/c−Met分子をPEGによって修飾した。最も一般
的に、システイン残基の遊離のチオール基を用いて、標準的な方法を用いてマレイミド又
はヨードアセテミド(iodoacetemide)基で官能化したPEG分子に結合させる。100
0、2000、5000、10,000、20,000、又は40,000kDaの直鎖
状PEGを含む様々な型のPEGを用いて、タンパク質を修飾することができる。これら
の分子量の分枝状PEGもまた、修飾のために用いることができる。PEG基はまた、い
くつかの例において二重特異性EGFR/c−Met分子中の一級アミンを通して結合さ
せることもできる。
【0279】
PEG化に加えて、二重特異性EGFR/c−Met分子の半減期は、天然に存在する
3−へリックスバンドルの血清アルブミン結合ドメイン(ABD)又はコンセンサスアル
ブミン結合ドメイン(ABDCon)との融合分子としてこれらのタンパク質を産生する
ことによって延長した。これらのタンパク質ドメインを、表16に記述される任意のリン
カーを介してc−Met結合FN3ドメインのC−末端に連結させた。ABD又はABD
Conドメインもまた、一次配列のEGFR結合FN3ドメインとc−Met結合FN3
ドメインの間に配置され得る。
【0280】
実施例10:選択した二重特異性EGFR/c−Met分子の特徴づけ
選択したEGFR/c−Met分子を、EGFR及びc−Metの両方に対するその親
和性、EGFR及びc−Met自己リン酸化のその阻害能、並びにHGF細胞の増殖に及
ぼすその効果に関して特徴を調べた。組み換え型EGFR及び/又はc−Met細胞外ド
メインに対する二重特異性EGFR/c−Met分子の結合親和性を、実施例3に記述さ
れるプロトコルに従ってProteon Instrument(BioRad)を用い
る表面プラズモン共鳴法によって調べた。特徴づけの結果を表21に示す。
【0281】
【表22】
【0282】
実施例11:システイン改変二重特異性EGFR/c−Met分子の作製及び特徴づけ
二重特異性EGFR/c−Met分子の作製
P54AR4−83v2変異体(実施例5)のシステインスキャニングから得られたデ
ータに基づき、二重特異性EGFR/c−Met分子において、P54AR4−83v2
(配列番号27)、cMet結合体P114AR7P95−C5v2(配列番号114)
、及び半減期延長のためのアルブミン結合ドメインからなるECB147(配列番号21
8及び256)と表示されるシステイン変異体も設計した。これらの3つのドメインは、
(Ala−Pro)リンカー(配列番号81)によって接続される。1個、2個、又は
4個のシステインを有する変種を、FN3ドメインの1つのC−末端、リンカー領域、又
はLys−62位置での置換によって設計した(配列番号219〜225及び257〜2
63)。別の二重特異性変種ECB82cys(配列番号226及び264)は、3つ全
てのドメインがAPリンカーによって接続されたP54AR4−83v2(配列番号27
)、P114AR7P94−A3v22(配列番号111)、及びアルブミン結合ドメイ
ンの変種、並びに1つのC−末端システインからなる。非標的化Tencon足場構造(
配列番号265)の追加のシステイン変種もまた、対照コンジュゲートの構築のために用
いた。変種は全て、先の実施例に記述されるように構築して、発現させ、精製した。純度
はSDS−PAGE分析によって評価した。Superdex 75 5/150カラム
(GE Healthcare)を用いる分析的サイズ排除クロマトグラフィーは、FN
3ドメイン調製物が凝集物を含まず、単量体タンパク質と一貫する時間で溶出することを
示している。質量分析により、理論的質量と一致した質量が決定された(表22)。
【0283】
【表23】
【0284】
化学コンジュゲーション
精製二重特異性システイン変種をマレイミド含有分子に化学的にコンジュゲートするた
めに、タンパク質を最初にTCEPで還元して遊離のチオールを生成した。各二重特異性
システイン変種1〜2mgを、中性pHで過剰量のTCEP(Sigma、カタログ番号
646547)と混合して、RTで30〜60分間インキュベートした。3倍量の飽和硫
酸アンモニウム溶液(4.02M)を添加して、システイン変種を沈殿させることによっ
て、TCEPを除去した16000〜20000×gで4℃で20分間遠心沈降して上
清を除去後、タンパク質沈降物をPBS又はリン酸ナトリウム緩衝液に溶解して、マレイ
ミド含有分子の5〜10倍過剰量と直ちに混合した。反応を室温で30〜60分間インキ
ュベートした後、過剰量のマレイミドを除去するために、システイン又はβ−メルカプト
エタノールなどの過剰量の遊離のチオールによって停止させた。非結合マレイミドを、Z
eba脱塩カラム(Thermo、カタログ番号89890)で、Tosoh G300
0SWxlカラム(#P4619−14N;7.8mm×30cm;5μm)を備えた分
取用SECによって、又はシステイン変種をNi−NTA樹脂に結合させて、洗浄して、
本質的に上記のように溶出させることによって除去した。コンジュゲートの特徴を、SD
S−PAGE及び質量分析によって調べた。この一般法を用いて、二重特異性システイン
変種を、蛍光マレイミド(Thermo、カタログ番号62245)、PEG24−マレ
イミド(Quanta Biodesign、カタログ番号10319)、及びマレイミ
ド−細胞毒素分子に、様々なリンカー(図2の構造を参照)によってコンジュゲートした
【0285】
EGF刺激EGFRリン酸化の阻害
精製二重特異性PEG24−マレイミドコンジュゲートを、ヒト腫瘍細胞株NCI−H
292(American Type Culture Collection、カタロ
グ番号CRL−1848)において、Meso Scale Discovery(Ga
ithersburg,MD)のEGFR phospho(Tyr1173)キットを
用いて、実施例3に記述されるように、EGFRのEGF刺激リン酸化の阻害能に関して
試験した。コンジュゲートを、ECB147とはアミノ酸2個が異なる非修飾ECB38
(配列番号109)と比較した。コンジュゲート及びECB38は、表23に示されるよ
うに、類似のIC50値でEGFRを阻害し、設計された部位での修飾が標的の結合に有
意に影響を及ぼさないことを証明した。
【0286】
【表24】
【0287】
HGF刺激c−Metリン酸化の阻害
精製二重特異性PEG24−マレイミドコンジュゲートをまた、Meso Scale
Discovery(Gaithersburg,MD)のc−Met phosph
or(Tyr1349)キットを用いて、NCI−H292細胞におけるc−MetのH
GF刺激リン酸化の阻害能に関して、実施例7に記述されるように試験した。コンジュゲ
ート及びECB38は、表24に示されるように、類似のIC50でcMetを阻害し、
これらの部位での修飾が標的の結合に有意に影響を及ぼさないことを証明した。
【0288】
【表25】
【0289】
細胞障害性アッセイ
ECB147システイン変種、83v2−cys、又はアウリスタチンファミリーの細
胞障害性チューブリン阻害剤に連結されたTencon−cysからなるコンジュゲート
図2を、がん細胞における標的依存的細胞障害性に関して試験した。阻害剤を、非切
断型PEGリンカー、又は酵素切断型バリン−シトルリン又はバリン−リジンリンカー
を介してシステイン含有タンパク質に連結させた。殺細胞を、実施例4に記述される技法
を用いて、タンパク質−細胞毒素コンジュゲートに暴露後のEGFR過剰発現ヒト腫瘍細
胞株H1573及びA431並びにEGFR陰性腫瘍細胞株MDA−MB−435の生存
率を測定することによって評価した。表25は、66、72、又は90時間の時点で、C
ellTiterGlo又はIncuCyteオブジェクトカウントデータの分析から得
られたIC50を報告する。タンパク質−薬物コンジュゲートは、標的抗原EGFRを発
現する細胞の強力な殺細胞を示した。多数の薬物のコンジュゲートもまた、調べた多くの
細胞株において細胞障害性の増加を示した。
【0290】
【表26】
【0291】
【表27-1】
【0292】
【表27-2】
【0293】
【表27-3】
【0294】
【表27-4】
【0295】
【表27-5】
【0296】
【表27-6】
【0297】
配列番号73,PRT,ヒト,EGFR
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【0298】
【表28】
【0299】
配列番号75,PRT,ヒト,テナシン−C
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【0300】
【表29-1】
【表29-2】
【0301】
>配列番号101
PRT
ヒト
cMet
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【0302】
【表30-1】
【0303】
【表30-2】
【0304】
【表30-3】
【0305】
【表30-4】
【0306】
【表30-5】
【0307】
【表30-6】
【0308】
【表30-7】
【0309】
【表30-8】
【0310】
【表30-9】
【0311】
>配列番号179
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメインのFGループ
HNVYKDTNXRGL;
式中Xは、M又はIである
>配列番号180
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメインのFGループ
LGSYVFEHDVML(配列番号180),
>配列番号181
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメインのBCループ
(配列番号181);式中、
はA、T、G、又はDであり、
はA、D、Y、又はWであり、
はP、D、又はNであり、
はLであるか、又は存在せず、
はD、H、R、G、Y、又はWであり、
はG、D、又はAであり、
はA、F、G、H、又はDであり、及び
はY、F、又はLである。
>配列番号182
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメイン
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWXDS
FLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVS
IYGVHNVYKDTNXRGLPLSAEFTT(配列番号182),
はA、T、G、又はDであり、
はA、D、Y、又はWであり、
はP、D、又はNであり、
はLであるか、又は存在せず、
はD、H、R、G、Y、又はWであり、
はG、D、又はAであり、
はA、F、G、H、又はDであり、
はY、F、又はLであり、及び
はM又はIである。
>配列番号183
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメイン
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWXDS
FLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVS
IYGVLGSYVFEHDVMLPLSAEFTT(配列番号183)の配列を更に含
み、
式中、
はA、T、G、又はDであり、
はA、D、Y、又はWであり、
はP、D、又はNであり、
はLであるか、又は存在せず、
はD、H、R、G、Y、又はWであり、
はG、D、又はAであり、
はA、F、G、H、又はDであり、及び
はY、F、又はLである。
>配列番号184
PRT
人工
C−met結合FN3ドメインC鎖及びCDループ配列
DSFX10IRYX11EX12131415GX16(配列番号184)、
式中
10はW、F、又はVであり、
11はD、F、又はLであり、
12はV、F、又はLであり、
13はV、L、又はTであり、
14はV、R、G、L、T、又はSであり、
15はG、S、A、T、又はKであり、及び
16は、E、又はDである。及び
>配列番号185
PRT
人工
c−Met結合FN3ドメインF鎖及びFGループ
TEYX17VX18IX1920VKGGX2122SX23(配列番号185
)、式中
17はY、W、I、V、G、又はAであり、
18はN、T、Q、又はGであり、
19はL、M、N、又はIであり、
20は、G、又はSであり、
21は、S、L、G、Y、T、R、H、又はKであり、
22はI、V、又はLであり、及び
23はV、T、H、I、P、Y、T、又はLである。
>配列番号186
PRT
人工
c−Met結合FN3ドメイン
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFX10IRYX
EX12131415GX16AIVLTVPGSERSYDLTGLKPGT
EYX17VX18IX1920VKGGX2122SX23PLSAEFTT(配
列番号186)を更に含み、
式中
10はW、F、又はVであり、及び
11はD、F、又はLであり、
12はV、F、又はLであり、
13はV、L、又はTであり、
14はV、R、G、L、T、又はSであり、
15はG、S、A、T、又はKであり、
16は、E、又はDであり、
17はY、W、I、V、G、又はAであり、
18はN、T、Q、又はGであり、
19はL、M、N、又はIであり、
20は、G、又はSであり、
21は、S、L、G、Y、T、R、H、又はKであり、
22はI、V、又はLであり、及び
23はV、T、H、I、P、Y、T、又はLである。
>配列番号187
PRT
人工
二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子のEGFR FN3ドメイ

LPAPKNLVVSX24VTX25DSX26RLSWDDPX27AFYX28
SFLIQYQX29SEKVGEAIX30LTVPGSERSYDLTGLKPGT
EYTVSIYX31VHNVYKDTNX32RGLPLSAX33FTT(配列番号
187)であって、式中
24は、E、N、又はRであり、
25は、E、又はPであり、
26は、L、又はAであり、
27は、H、又はWであり、
28は、E、又はDであり、
29は、E、又はPであり、
30は、N、又はVであり、
31はG、又はYであり、
32は、M、又はIであり、及び
33は、E、又はIである
>配列番号188
二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子のc−Met FN3ドメ
イン
LPAPKNLVVSX34VTX35DSX36RLSWTAPDAAFDSFWI
RYFX37FX383940GX41AIX42LTVPGSERSYDLTGL
KPGTEYVVNIX4344VKGGX45ISPPLSAX46FTT(配列番
号188)であって、式中、
34は、E、N、又はRであり、
35は、E、又はPであり、
36は、L、又はAであり、
37は、E、又はPであり、
38は、V、又はLであり、
39は、G、又はSであり、
40は、S、又はKであり、
41は、E、又はDであり、
42は、N、又はVであり、
43は、L、又はMであり、
44は、G、又はSであり、
45は、S、又はKであり、及び
46は、E、又はIである。
【0312】
【表31-1】
【0313】
【表31-2】
【0314】
【表31-3】
【0315】
【表31-4】
【0316】
【表31-5】
【0317】
【表31-6】
【表31-7】
【表31-8】
【表31-9】

本発明は次の実施態様を含む。
(1)配列番号1に基づくFN3ドメインの6、8、10、11、14、15、16、2
0、30、34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、60、62
、64、70、88、89、90、91、及び93番目の残基からなる群より選択される
位置で少なくとも1つのシステイン置換を含む、単離されたシステイン改変フィブロネク
チンIII型(FN3)ドメイン。
(2)システイン置換が、配列番号111〜114又は122〜137の6、8、10、
11、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、5
3、54、59、60、62、64、70、88、89、90、91、及び93番目の残
基からなる群より選択される位置にある、上記(1)に記載のシステイン改変フィブロネ
クチンIII型(FN3)ドメイン。
(3)配列番号27のアミノ酸配列から少なくとも1つのシステイン置換を有する配列番
号27のアミノ酸配列を含む単離システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ド
メインであって、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対す
る上皮成長因子(EGF)の結合を遮断する、単離システイン改変FN3ドメイン。
(4)配列番号114のアミノ酸配列から少なくとも1つのシステイン置換を有する配列
番号114のアミノ酸配列を含む単離システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3
)ドメインであって、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)に特異的に結合して、c−M
etに対する肝細胞増殖因子(HGF)の結合を遮断する、単離システイン改変FN3ド
メイン。
(5)半減期延長部分を更に含む、上記(1)に記載のシステイン改変フィブロネクチン
III型(FN3)ドメイン。
(6)前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG)
、又は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、上記(6)に記載のシステイ
ン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
(7)(i)1つ又は2つ以上のヌクレオチド残基を、システイン改変FN3ドメインを
コードするようにシステインアミノ酸残基をコードするヌクレオチド残基に交換すること
によって、親FN3ドメインの核酸配列を変異させることと、
(ii)前記システイン改変FN3ドメインを発現させることと、
(iii)前記システイン改変FN3ドメインを回収することと、
を含む、システイン改変FN3ドメインを調製する方法。
(8)前記FN3ドメインが配列番号1に基づくものであり、前記変異させる工程が部位
特異的変異誘発を行うことを含む、上記(7)に記載の方法。
(9)前記システイン改変FN3ドメインを大腸菌(E.coli)において発現させる
ことを含む、上記(8)に記載の方法。
(10)前記回収する工程の後に、前記システイン改変FN3ドメインを、チオール反応
性化学試薬と反応させて、化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3ドメイン
を生成することを更に含む、上記(8)に記載の方法。
(11)前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変
FN3ドメインのEGFR結合を測定することを更に含む、上記(10)に記載の方法。
(12)前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変
FN3ドメインの付加後のEGFR過剰発現腫瘍細胞株の細胞増殖阻害を測定することを
更に含む、上記(11)に記載の方法。
(13)前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変
FN3ドメインのc−Met結合を測定することを更に含む、上記(11)に記載の方法

(14)前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変
FN3ドメインの付加後のc−Met発現腫瘍細胞株の細胞増殖阻害を測定することを更
に含む、上記(11)に記載の方法。
(15)前記チオール反応性試薬がマレイミド部分を含む、上記(11)に記載の方法。
(16)前記マレイミド部分を含むチオール反応性試薬が、NEM、MMAE、及びMM
AFからなる群より選択される、上記(15)に記載の方法。
(17)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3ドメインが、EGFR
過剰発現H1573細胞において測定されるとき、約1.7×10-10M〜約1.3×1
-9Mの細胞増殖IC50を有する、上記(16)に記載の方法。
(18)配列番号189〜216、及び227〜254からなる群より選択されるアミノ
酸配列を含む、単離システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
(19)第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインと第2のFN3ドメインと
を含む、単離システイン改変二重特異性FN3分子であって、前記第1のFN3ドメイン
が、前記第1のFN3ドメインの6、8、10、11、14、15、16、20、30、
34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、60、62、64、7
0、88、89、90、91、及び93番目の残基からなる群から選択される位置でシス
テイン置換を含み、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合して、EGFRに対
する上皮成長因子(EGF)の結合を遮断し、前記第2のFN3ドメインが肝細胞増殖因
子受容体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HG
F)の結合を遮断する、単離システイン改変二重特異性FN3分子。
(20)前記第2のFN3ドメインが、前記第2のFN3ドメインの6、8、10、11
、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、53、
54、59、60、62、64、70、88、89、90、91、及び93番目の残基か
らなる群より選択される位置でシステイン置換を含む、上記(19)に記載の単離システ
イン改変二重特異性FN3分子。
(21)配列番号219〜226、及び257〜264からなる群より選択されるアミノ
酸配列を含む、上記(20)に記載の単離システイン改変二重特異性FN3分子。
(22)前記分子がチオール反応性試薬に化学的にコンジュゲートされている、上記(2
0)に記載の単離システイン改変二重特異性分子。
(23)前記チオール反応性試薬がマレイミド部分である、上記(22)に記載の単離シ
ステイン改変二重特異性分子。
(24)前記マレイミド部分が、NEM、PEG24−マレイミド、フルオレセインマレ
イミド、MMAE、及びMMAFからなる群より選択される、上記(23)に記載の単離
システイン改変二重特異性分子。
(25)前記第1のFN3ドメインが、50ng/mLヒトEGFを用いてNCI−H2
92細胞において測定されるとき、約0.9×10-9M〜約2.3×10-9MのIC50
でEGFRの1173番目のチロシン残基でEGFによって誘発されるEGFRのリン酸
化を阻害し、前記第2のFN3ドメインが、100ng/mLヒトHGFを用いてNCI
−H292細胞において測定されるとき、約4×10-10M〜約1.3×10-9MのIC5
0値でc−Metの1349番目のチロシン残基でHGFによって誘発されるc−Met
のリン酸化を阻害する、上記(24)に記載のシステイン改変二重特異性分子。
(26)前記システイン改変二重特異性分子が、
(i)EGFR過剰発現H1573細胞において測定されるとき、約5.0×10-11
M〜約5.8×10-10Mと、
(ii)EGFR過剰発現A731細胞において測定されるとき、約7.8×10-12
M〜約1.1×10-9Mと、
からなる群より選択される細胞増殖IC50値を有する、上記(25)に記載のシステイ
ン改変二重特異性分子。
(27)半減期延長部分を更に含む、上記(26)に記載のシステイン改変二重特異性分
子。
(28)前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG
)、又は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、上記(27)に記載のシス
テイン改変二重特異性分子。
(29)(i)1つ又は2つ以上のヌクレオチド残基を、システイン改変二重特異性分子
をコードするようにシステイン残基をコードするヌクレオチド残基に交換することによっ
て、親二重特異性分子の核酸配列を変異させることと、
(ii)前記システイン改変二重特異性分子を発現させることと、
(iii)前記システイン改変二重特異性分子を回収することと、
を含む、単離システイン改変二重特異性分子を調製する方法。
(30)前記変異させる工程が、部位特異的変異誘発を行うことを含む、上記(29)に
記載の方法。
(31)前記システイン改変二重特異性分子を大腸菌において発現させることを含む、上
記(30)に記載の方法。
(32)前記回収する工程の後に、前記システイン改変二重特異性分子を、チオール反応
性化学試薬と反応させて、化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子
を生成することを更に含む、上記(30)に記載の方法。
(33)(i)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子のEG
FR結合を測定することと、
(ii)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子による、細
胞株におけるEGF刺激EGFRリン酸化の阻害を測定することと、
(iii)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子による、
細胞株におけるHGF刺激c−Metリン酸化の阻害を測定することと、
(iv)前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変二重特異性分子の添加後の
EGFR過剰発現腫瘍細胞株の増殖阻害を測定することと、
からなる群より選択される工程を更に含む、上記(32)に記載の方法。
(34)本明細書に記載されたいずれかの発明。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【手続補正書】
【提出日】2019年10月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号111〜114のいずれかのアミノ酸配列における6、8、10、11、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、60、62、64、70、83、84、85、86、及び88番目の位置からなる群より選択される位置で少なくとも1つのシステイン置換を含む、単離されたシステイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
【請求項2】
配列番号114のアミノ酸配列において少なくとも1つのシステイン置換を有するアミノ酸配列を含む単離システイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインであって、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)に特異的に結合して、c−Metに対する肝細胞増殖因子(HGF)の結合を遮断する、単離システイン改変FN3ドメイン。
【請求項3】
半減期延長部分を更に含む、請求項1又は2に記載のシステイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
【請求項4】
前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG)、又は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、請求項3に記載のシステイン改変フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
【請求項5】
(i)配列番号111〜114のいずれかのアミノ酸配列をコードする核酸配列において、1つ又は2つ以上のヌクレオチド残基を、請求項1に記載のシステイン改変FN3ドメインをコードするようにシステインアミノ酸残基をコードするヌクレオチド残基に交換することによって、前記核酸配列を変異させることと、
(ii)前記システイン改変FN3ドメインを発現させることと、
(iii)前記システイン改変FN3ドメインを回収することと、
を含む、システイン改変FN3ドメインを調製する方法。
【請求項6】
前記変異させる工程が部位特異的変異誘発を行うことを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記システイン改変FN3ドメインを大腸菌(E.coli)において発現させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記回収する工程の後に、前記システイン改変FN3ドメインを、チオール反応性化学試薬と反応させて、化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3ドメインを生成することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3ドメインのc−Met結合を測定することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応させる工程の後に、前記化学的にコンジュゲートされたシステイン改変FN3ドメインの付加後のc−Met発現腫瘍細胞株の細胞増殖阻害を測定することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記チオール反応性試薬がマレイミド部分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記マレイミド部分を含むチオール反応性試薬が、NEM、MMAE、及びMMAFからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。