【解決手段】 事前の水の浸漬が不要な加工米102と、略米粒大のこんにゃく加工物103とを電子レンジ加熱調理用包装袋101に組み込む。加工米102は、事前の水浸漬が不要な加工米であれば、いずれのものも使用することができ、本実施形態では無洗で事前の水浸漬が不要であれば、炊飯時間の短縮は特に不要だが、いわゆる早炊き米も使用することができる。また、こんにゃく加工物103は、通常のこんにゃく製品を米粒大に成形したものを用いるが、混合される加工米102の量に合わせて定められる水分を包装袋に充填できれば、米飯混合用に様々に開発されている乾燥こんにゃくも含む、こんにゃく加工物も使用することができる。
前記電子レンジ加熱調理用包装手段は、上方の開口部の内側に配置された、所定の引張力で開閉自在な密閉手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の加工食品。
前記密閉手段は、前記電子レンジ加熱調理用包装手段の前記上部開口部の下部内面に前記上部開口部に沿って設けられていることを特徴とする請求項5に記載の加工食品。
前記密閉手段は対をなす係合部材を含み、係合する面と反対の面を前記電子レンジ加熱調理用包装手段の内面に各々貼り付けられることを特徴とする請求項6に記載の加工食品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、確かに水の浸漬も不要で炊飯時間の短縮も期待できるが、電子レンジで炊飯する場合、水分中に溶け出したでんぷんにより吹きこぼれが発生し、電子レンジ内を汚染するだけでなく、吹きこぼれが多量な場合出来上がりの米飯の食味も劣化するという問題がある。また、特許文献2のこんにゃく加工物も米と混合して炊飯する場合水の浸漬が必要であり、炊飯時間も長く、容器に密封して電子レンジで加熱すると、加熱された水分が水蒸気となって、密封した容器を不要に破損して周囲を汚染するという問題がある。
【0006】
本発明は上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、事前の水の浸漬が不要な加工米をこんにゃく加工物と混合させ、電子レンジ加熱調理用包装袋に密封して電子レンジで加熱調理することにより、吹きこぼれることなく、短時間で米飯を炊飯することができる加工食品並びにその製造方法および調理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、加工食品であって、事前の水の浸漬が不要な加工米と、加工米に対して所定の割合の略米粒大のこんにゃく加工物と、封入された加工食品が加熱され水蒸気が発生して内圧が所定の圧力まで高まると、部分的に開封して内圧が上昇しないようにする開封手段を有する電子レンジ加熱調理用包装手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の加工食品において、加工米は、予め生米に加工を施すことにより、炊飯する際に事前の水の浸漬が不要であり、かつ炊飯時間も短縮されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の加工食品において、こんにゃく加工物は、加工米を炊飯するために必要な量の水分とともに樹脂製包装袋に密封されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の加工食品において、水分は、調味されたスープであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の加工食品において、電子レンジ加熱調理用包装手段は、上方の開口部の内側に配置された、所定の引張力で開閉自在な密閉手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の加工食品において、密閉手段は、電子レンジ加熱調理用包装手段の上部開口部の下部内面に上部開口部に沿って設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の加工食品に記載の発明は、密閉手段は対をなす係合部材を含み、係合する面と反対の面を電子レンジ加熱調理用包装手段の内面に各々貼り付けられることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項5ないし7のいずれかに記載の加工食品において、密閉手段は、開封手段が部分的に開封する内圧よりも高い内圧まで開封しない強度を有することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の加工食品を加熱調理する加工食品調理方法であって、加工米と前記こんにゃく加工物とを混合して、電子レンジ加熱調理用包装手段に充填する充填ステップと、電子レンジにより、加工米とこんにゃく加工物とを所定時間加熱して炊飯する加熱ステップとを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項5ないし8のいずれかに記載の加工食品を加熱調理する加工食品調理方法であって、加工米とこんにゃく加工物とを混合して、電子レンジ加熱調理用包装手段に充填し、密閉手段を閉じて密封する充填密封ステップと、電子レンジにより、加工米とこんにゃく加工物とを所定時間加熱して炊飯する加熱ステップと、炊飯された加工食品を、密閉手段を開封して食に供する開封ステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、加工食品を製造する方法であって、略米粒大のこんにゃく加工物を所定の量の水分とともに樹脂製包装袋に封入するステップと、こんにゃく加工物が封入された樹脂製包装袋とともに、事前の水の浸漬が不要な加工米であって、こんにゃく加工物の量と前記所定の量の水分とに対応する量の加工米を、封入された加工食品が加熱され水蒸気が発生して内圧が所定の圧力まで高まると、部分的に開封して内圧が上昇しないようにする開封手段を有する電子レンジ加熱調理用包装手段に充填するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、事前の水の浸漬が不要な加工米と、加工米に対して所定の割合の略米粒大のこんにゃく加工物と、封入された加工食品が加熱され水蒸気が発生して内圧が所定の圧力まで高まると、部分的に開封して内圧が上昇しないようにする開封手段を有する電子レンジ加熱調理用包装手段とを備えているので、電子レンジ等で簡単に加熱調理するだけで吹きこぼれを起こすことなく、食味に優れた米飯を炊くことができる加工食品並びにその製造方法および調理方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の加工食品並びにその製造方法および調理方法について図面を参照して実施形態を説明する。なお、異なる図面でも、同一の処理、構成を示すときは同一の符号を用いる。
【0021】
[加工米とこんにゃく加工物]
本発明は、米を電子レンジを用いて加熱調理することにより、手軽に安全に炊飯し、専用の炊飯器などで炊いた米飯と食味に大きな差がない米飯を取得することが可能な方法を提案するものである。本来、電子レンジによる炊飯はいくつかの点で、専用の炊飯器などを用いた従来の炊飯法に比し課題があった。まず、一般に炊飯に際して効率よく米を一粒一粒加熱してアルファ化するには、加熱容器内で米粒を対流させることが重要であり、電子レンジで加熱する場合も、使用する容器は水分中を米が対流できるようなスペースを必要とする。
【0022】
また、炊飯する際には通常ある程度加熱が進むと吹きこぼれが発生して、電子レンジ内部を汚染するだけでなく、吹きこぼれにより旨味も喪失してしまうため、食味も落ちるという課題がある。ここで、吹きこぼれは水分中に米から溶け出したでんぷんが水分の表面に膜を張る結果、加熱による沸騰から生成される水蒸気が抜けることができずに膜も含めて容器の外にこぼれ出すことによって発生する。専用の炊飯器では、容器の構造や調整弁、加熱の制御などにより吹きこぼれが発生しないように調整されているが、電子レンジで加熱調理する場合も吹きこぼれに対応するためには専用の容器を使用することとなり、手軽には炊飯できないものとなってしまう。さらに、洗米や事前の水浸漬が必要であることを考慮すると、結局電子レンジを使用して炊飯しても、専用の炊飯器で炊飯しても手間が大きく変わらず、電子レンジによる加熱調理の意義がないという課題もある。
【0023】
洗米や事前の水浸漬については、近年無洗米や、早炊き米などの製造技術が向上し、様々な加工米が提供され、その目的に応じて、洗米も事前の水浸漬も不要で、食味も勝るとも劣らない加工米が提供されている。また、加熱調理時の対流も、例えば
図1に示すような本実施形態の電子レンジ加熱調理包装袋101のように底部にマチを設けて自立性を持たせた包装袋であれば、立てた状態で電子レンジ内にセットして加熱調理することができるので、加熱調理時に十分な対流を期待することができる。さらに、本実施形態の電子レンジ加熱調理包装袋101のガス解放機構103により加熱時には適度な内圧の下で炊飯することができる。しかし、吹きこぼれに関しては、以上の従来の手法では対応することはできない。
【0024】
一方、近年の健康志向ブームやローカーボダイエットの浸透などにより、米飯を摂取する場合でもできるだけ炭水化物の摂取を低減させるため、米を炊飯する際に様々な食材を加えて、米だけで炊いた同じ量の米飯に比較して、低カロリー、低炭水化物とする手法が提案されている。その中でも、米のみで炊いた米食と食味や食感に差が少ないものとして、乾燥こんにゃくなどを添加して炊飯する手法が知られている。具体的には、こんにゃくを米粒大に成形したり、表面を加工したりしたこんにゃく加工物を米とともに混合して炊飯することにより、香や味、食感なども米のみで炊飯した米飯と大差がないものを得ることができるこんにゃく加工物が提案されている。このようして例えば米の10%ないし20%をこんにゃく加工物で代替することができれば、こんにゃくの主成分であるグルコマンナンは体内で吸収されないから、結果的にカロリー及び炭水化物の摂取を10%ないし20%低減することができる。
【0025】
現在米のみの米飯については、わざわざ電子レンジ内で水と米から炊飯しなくても、炊飯済みの米飯を電子レンジで加熱や解凍するだけで食に供することができる様々な製品が提供されているものの、現状こんにゃく加工物については、ユーザが米と混合して炊飯器などで炊飯しなければならないので、本発明者らは、こんにゃく加工物を混合して炊飯する米飯について電子レンジを用いて手軽に加熱調理することができないかを種々研究した。その結果、ある種のこんにゃく加工物を使用すると、米の混合物を電子レンジで加熱調理しても吹きこぼれが発生しないことを発見した。これは、こんにゃく製造時に使用された消泡剤が残留しており、その効果で吹きこぼれの原因であるでんぷんの膜が除去されているとも考えられるが、こんにゃくに含まれる何らかの成分がでんぷん膜の発生を抑止しているとも考えられる。
【0026】
いずれにしても、事前の水の浸漬が不要な加工米と、略米粒大のこんにゃく加工物と、封入された加工食品が加熱され水蒸気が発生して内圧が所定の圧力まで高まると、部分的に開封して内圧が上昇しないようにする開封手段を有する電子レンジ加熱調理用包装手段とを組み合わせることにより、特殊な容器や、複雑な加熱調整などをすることなく、電子レンジで低カロリー、低炭水化物の米飯を炊飯することが可能な加工食品を得ることができた。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態の加工食品の一例を示す図であり、
図2は、本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理用包装袋の斜視図である。また、
図3は、本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理用包装袋の側面図である。本実施形態の加工食品の一例は
図1に示すように、事前の水の浸漬が不要な加工米102と、略米粒大のこんにゃく加工物103とを電子レンジ加熱調理用包装袋101に組み込んだものである。
【0028】
加工米102は、事前の水浸漬が不要な加工米であれば、いずれのものも使用することができ、本実施形態では無洗で事前の水浸漬が不要であれば、炊飯時間の短縮は特に不要だが、いわゆる早炊き米も使用することができる。ここで、加工米は通常のうるち米とすることもできるし、低アミロース米やもち米を使用することができる。例えば、もち米を使用する場合は加工食品は所謂おこわとなる。
【0029】
また、こんにゃく加工物103は、通常のこんにゃく製品を米粒大に成形したものを用いるが、混合される加工米102の量に合わせて定められる水分を提供することができれば、米飯混合用に様々に開発されている乾燥こんにゃくも含む、様々なこんにゃく加工物も使用することができる。
【0030】
電子レンジ加熱調理用包装袋101は、基本的に加工米102とこんにゃく加工物103とを保存、運搬する際の包装袋であるが、加熱調理時には加熱調理容器の役割を果たすので、ユーザは特別な容器を用意しなくても電子レンジによる炊飯が可能となる。
図2を参照して電子レンジ加熱調理用包装袋101を説明すると、本実施形態の電子レンジ加熱調理用包装袋101は、包装袋上部202は封止されており、開封手段であるガス解放機構203を備える。底部201はマチになっており内容物を充填すると広がって容量を確保するとともに、底部201を下にして安定して自立できる形状となっている。また、電子レンジ加熱調理用包装袋101は、前面部材204と、前面部材204に接合された背面部材205とから構成され袋状に構成されている。すなわち、前面部材204と背面部材205とは、両側端縁部104を熱融着でシールし、底部201は内側に折り返してガセット形式で形成される。
【0031】
前面部材204は、熱融着性を有するシート状の可撓性フィルムで形成され、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート又はこれらを積層したものに酸化アルミニウムや酸化ケイ素等の無機化合物が蒸着された基材層に、ポリプロピレン(PP)等からなる熱融着性層を積層させて形成することができる。もちろん、部材同士が熱融着可能な材料であれば、任意であり、例えば、通常の加熱用袋に用いられるヒートシ一ル性を有するプラスチックフィルムが適用可能であり、例えば熱融着性を有する熱可塑性樹脂からなる単層のフィルム・シート類、熱融着性を有する熱可塑性樹脂を他の熱可塑性樹脂等と積層した多層フィルムなどが使用できるが、これに限られず本技術分野で知られた材料を用いることができる。
【0032】
図2に示すように、本実施形態の電子レンジ加熱調理用包装袋101の前面部材204は、左右の両側端縁部104の間に形成されるガス解放機構203を備える。ガス解放機構203は、本技術分野で知られたいずれかの機構を用いることができるが、例えば、両側端縁部104の延在方向の中央部よりも上部202側に偏った位置に、両側端縁部104の延在方向と直交する方向の全幅にわたって設けることができる。
図2に示すように、ガス解放機構203は、前面部材204の一部を合掌状に折り込み、かつ、その折り返し部を切断することで形成される。ガス解放機構203は、互いに重なる一対の平面部と、その上辺部側に設けられ、折り返し部を切断して形成される先端で開放され、一対の平面部の下辺部で袋内に連通する。
【0033】
なお、本実施形態では、電子レンジ加熱調理用包装袋に加工米とこんにゃく加工物が同梱されているように記載しているが、これに限られず、別々の経路でユーザが入手し、以上を組み合わせて、電子レンジにより炊飯することもできるし、その他、本技術分野で知られた方法で本発明を実施することができる。
【0034】
[加工食品の製造方法]
図4は、本発明の一実施形態の加工食品の製造方法の一連の流れの一例を示す図である。本実施形態の加工食品は、加工米とこんにゃく加工物が、加熱調理容器としても用いられる電子レンジ加熱調理用包装袋101に収納されている。
図4を参照して本実施形態の加工食品製造方法を説明すると、先ず、こんにゃくを米粒状に成形し、必要な水分とともにこんにゃく包装袋に封入する(ステップS401)。こんにゃく加工物の寸法、形状は炊き上がりの米飯の米粒と略同形状、同寸法が好ましい。ただし、一般にこんにゃくは米とともに加熱しても特に寸法が変化することはないため、寸法を炊きあがりの米飯と同程度にすることにより、食感に違和感を覚えないようにさせることもでき、また弾力性が米よりも高いことからより小さくすることにより、弾力性の差を感じさせないようにすることもできる。
【0035】
同じく電子レンジ加熱調理用包装袋101に収納される加工米102の量に合わせてこんにゃく包装袋内に封入する水分の量は定められる。すなわち、事前の水浸漬不要である加工米102を炊飯するために必要な水分の(したがって、通常炊飯器等で炊飯する場合であって、炊飯前に浸漬される時間を考慮されるときの、浸漬される量の水分を除く炊飯に必要な)量の水分がこんにゃく加工物に加え封入される。一般に、炊飯前の浸漬により10〜20%炊飯前に米に水分が吸収されるとされることから、こんにゃく包装袋に充填しておく必要がある水分の量は、電子レンジ加熱調理用包装袋に同梱される加工米が生米である場合に炊飯に使用される水分量の80〜90%程度になると考えられる。水分量はこのほかに、こんにゃく加工物の状態等に合わせて適宜変更することができる。また、こんにゃく加工物の量は、米とともに炊いて、通常の米飯として違和感のない範囲は10〜20%程度であるため、通常はこの範囲とすることが好ましいが、より低カロリー、低炭水化物の効果を高めるためにはより多い量とすることもできる。
【0036】
次に、生米に事前の水の浸漬が不要な加工を施して包装袋に封入し(ステップS402)、こんにゃくを封入された包装袋103と加工米の包装袋102とを電子レンジ加熱調理用包装袋101に同梱する(ステップS403)。ここで、こんにゃく、加工米の包装袋はそれぞれの内容物が実際に炊飯するまで接触しないようにするためのものであるので、本技術分野で知られた、例えば樹脂製の包装袋とすることができ、その材質、寸法等は本技術分野で知られたいずれかの技術を用いることができる。また、加工米も上述の様に早炊き米など、事前の水の浸漬を不要とするいずれの加工法も用いることができる。もちろん、加工方法により、加熱調理条件が異なってくるので、後述する調理方法においてはその加工米に適合させて、電子レンジの出力や加熱時間も適宜決定するものとする。
【0037】
その後、電子レンジ加熱調理用包装袋101を封止する(ステップS404)。
[加工食品の調理方法]
次に、本実施形態の製造方法により製造された加工食品を電子レンジ等で調理する方法を説明する。
図5は、本発明の一実施形態の加工食品の加熱調理方法の一連の流れの一例を示す図であり、
図6は、加熱時の動作を説明するための図である。
【0038】
まず、電子レンジ加熱調理用包装袋101に梱包されている加工米とこんにゃく加工物を取り出して包装袋102、103を開封し、加工米とこんにゃく加工物とを電子レンジ加熱調理用包装袋101内で混合させ(ステップS501)何らかの方法で封止し、電子レンジ内に立位で載置して加熱を開始する(ステップS502)。上述の様に、本実施形態の電子レンジ加熱調理用包装袋101は、底部201にマチがあり内容物が充填されると広がって、安定した自立性を有するので
図6のような態様で電子レンジ内で安定して加熱されるので、内部で対流が起こり、専用の炊飯器で炊飯したときと同様に米の一粒一粒に効率よく熱を加えることができる。このように加熱され、こんにゃく包装袋に封入されていた水分が加熱されて、米が炊かれる(ステップS503)。
【0039】
さらに、加熱を続けると、米飯および水分への加熱により包装袋内の内圧が上昇して開封手段が開封する。すなわち、
図6に示すように、電子レンジ加熱調理用包装袋101では、電子レンジで内容物の水分が加熱されて高温になるとともに、水蒸気が発生して矢印601に示すように内部の圧力が上昇すると本体が膨張し、ガス解放機構203の先端部に力が集中的に加わるようになる。これにより、ガス解放シール部において、先端部を起点に2枚の平面部が剥離し、この剥離したガス解放シール部からの水蒸気602が、ガス解放機構203の内部から外部に排出される。その状態で安定した内圧の下、所定の時間加熱をすると米飯603が炊きあがり、食に供することが可能となる(ステップS504)。
【0040】
[第2実施形態]
上述の第1実施形態では、本発明を適用した基本的な加工食品の製造方法と調理方法について説明したが、本実施形態では、より実際に即して電子レンジ加熱調理用包装袋に封止や開封が容易にできるファスナー機構のような留め部構造を備える。
図7は、本実施形態の加工食品の一例を示す図であり、
図8は、本実施形態で用いる電子レンジ加熱調理用包装袋の一例の斜視図である。また、
図9は、本実施形態で用いる電子レンジ加熱調理用包装袋の一例の側面図である。本実施形態の加工食品も第1実施形態と同様に、事前の水の浸漬が不要な加工米706と、略米粒大のこんにゃく加工物707とを電子レンジ加熱調理用包装袋701に梱包している。
図8に示すように、電子レンジ加熱調理用包装袋701は、加工米、こんにゃく加工物等の内容物を充填した後封止するための本体に密閉手段である留め部702、および開封手段であるガス解放機構703を備える。底部705はマチになっており内容物を封入すると広がって容量を確保できるようになっている。
【0041】
図9に示すように、電子レンジ加熱調理用包装袋701は、前面部材904と、前面部材904に接合された背面部材905とから構成され袋状に構成されているが、製法、素材などは上述の第1実施形態と同様である。また、前面部材904の内面には、PP等からなる帯状の雄係合部材902が手前から奥に向けて設けられている。雄係合部材902は、後述する帯状の雌係合部材901と係合して上部開口部を開閉自在に密閉する。
【0042】
密閉手段である留め部702の構造について説明する。
図9に示すように、留め部702は、袋の外縁を開封自在に密閉することが可能な雄係合部材902及び雌係合部材901からなる一対の係合部材を備え、雄係合部材902と雌係合部材901とが面状に接触し合って密閉される。両係合部材とも帯状に形成され、係合する面と反対の面は電子レンジ加熱調理用包装袋701の内側に貼り付けられる面となっており、その面が電子レンジ加熱調理用包装袋701の上部開口部の内側に開口部に沿って貼り付けられている。
【0043】
本実施形態の電子レンジ加熱調理用包装袋701では、加工米706とこんにゃく加工物707とを、留め部102を開いて開口部から投入し、留め部102を閉じて加熱することもできる。電子レンジ加熱調理用包装袋701は上述の様にスタンディングタイプ、すなわち安定して自立する形状になっているので、加工米706とこんにゃく加工物707とを充填すると、下部705の底面フィルムで形成されたマチが開き、立てたときの安定感がよくなる。その後、留め部702を係合させて電子レンジ加熱調理用包装袋701の開口を閉じ、立てた状態で電子レンジに入れて、一定時間加熱する。なお、本実施形態の加工食品の製造方法は、電子レンジ加熱調理用包装袋701に留め部構造702が設けられた以外は第1実施形態と同様だからここでは省略する。
【0044】
[本実施形態の加工食品の調理方法]
次に、本実施形態の加工食品を電子レンジ等で調理する方法を説明する。
図10は、本実施形態の加工食品の一例の加熱調理方法の一連の流れの一例を示す図であり、
図11は、本実施形態の加工食品の一例の加熱時の動作を説明するための図である。また、
図12は、本実施形態の被覆部の位置の異なる電子レンジ加熱調理用包装袋の加熱時の動作を説明するための図である。
【0045】
図10に示すように、先ず本実施形態の電子レンジ加熱調理用包装袋701には加工米706とこんにゃく加工物707が梱包されているので、電子レンジ加熱調理用包装袋701の上部(留め部構造702の上部)で開封し、加工米706とこんにゃく加工物707とを取り出す(ステップS1001)。次に、電子レンジ加熱調理用包装袋701から取り出した包装袋706、707を開封し、加工米とこんにゃく加工物とを電子レンジ加熱調理用包装袋701内で混合させ、留め部を閉じて封止し(ステップS1002)、電子レンジ内に立位で載置して加熱を開始する(ステップS1003)。上述の様に、本実施形態の電子レンジ加熱調理用包装袋701は、安定した自立性を有するので
図11のような態様で電子レンジ内で安定して加熱されるので、内部で対流が起こり、専用の炊飯器で炊飯したときと同様に米の一粒一粒に効率よく熱を加えることができる。このように加熱されると、こんにゃく包装袋に封入されていた水分が加熱されて、米が炊かれる(ステップS1004)。
【0046】
さらに、加熱を続けると、米飯および水分への加熱により包装袋内の内圧が上昇して開封手段が開封する。すなわち、
図11に示すように、電子レンジ加熱調理用包装袋701では、電子レンジで内容物の水分が加熱されて高温になるとともに、水蒸気が発生して矢印1101に示すように内部の圧力が上昇すると本体が膨張し、ガス解放機構703の先端部に力が集中的に加わるようになる。これにより、ガス解放シール部において、先端部を起点に2枚の平面部が剥離し、この剥離したガス解放シール部からの水蒸気が、ガス解放機構703の内部から外部に排出される。その状態で安定した内圧の下、所定の時間加熱をすると米飯が炊きあがり、食に供することが可能となる(ステップS1005)。
[留め部の被覆構造]
上記の説明では、留め部702のみを用いる例を説明したが、一般に留め部702はその素材から熱に弱かったり、解放強度が低かったりしてガス解放機構が開封される前に開封されるような場合があり、留め部の素材や構造を特殊なものにすることで回避することもできるが、以下に説明する被腹部を設けることにより容易に対処することもできる。
図12は、本実施形態の留め部に被覆部を有する電子レンジ加熱調理用包装袋の側面図であり、
図13は、被覆部を有する場合の加熱調理時の動作を説明するための図である。
図14は、本実施形態の被覆部の位置の異なる電子レンジ加熱調理用包装袋の加熱時の動作を説明するための図である。
【0047】
本実施形態では、留め部702は、雄係合部材902及び雌係合部材901の一方の下部に、係合部材と同様に開口部に沿って帯状の被覆部1201を備えることもできる。
図12において、被覆部1201は雌係合部材901の下部に設けられているが、雄係合部材902の下部であってもよい。また、被覆部1201は、電子レンジ加熱調理用包装袋701の内面に熱融着等で貼り付けてもいいし、係合部材の下部に取り付けたり、係合部材と一体的に形成したりすることができる。被覆部1201は、PP等からなり可撓性があるが適度の弾性を有していて、通常は一定の形状を維持し応力や圧力がかかることにより変形するが、耐熱性が高いものが望ましい。被覆部1201の断面は
図12に示すように貼り付けられているのと反対側の電子レンジ加熱調理用包装袋の内面に沿うような形状となっており、通常の加熱しない状態で電子レンジ加熱調理用包装袋の内面に接触又は近接しているが、後述する加熱の際には水蒸気の圧力により袋内面に密着し係合部全体を被覆するように作用する。したがって、加熱時に同様の作用が得られればこのような形状である必要はない。
【0048】
一方、
図13に示すように、留め部702では、電子レンジ加熱調理用包装袋701内の圧力が上昇すると、被覆部1201が水蒸気の圧力で、取り付けられているのとは反対の電子レンジ加熱調理用包装袋の内面に貼りつくような形で変形し、係合部付近を被覆する。このため、圧力は矢印1301に示すような方向に働き、係合部材を引き離すようには働かないので、係合の引張力が弱くても係合が解かれて留め部702が解放され、開口部から内容物が噴出する恐れはない。すなわち、被覆部1201が熱融着されているのと反対側の接触部1303に張り付くことにより、雌係合部材901の下部の被覆部1201が熱融着されている基部1302を頂点として電子レンジ加熱調理用包装袋701は膨らむ。このため、応力は係合部には働かず基部1302を頂点として被覆部1201と背面部材905に応力が生じることとなる。なお、ガス解放機構703における、より確実なガス解放を実現するため、内圧に対する留め部702の開封強度は、ガス解放機構703の開封強度よりも十分高くしておく。
【0049】
また、本実施形態は、対の係合部のいずれか一方の下部に被覆部を設けることに特徴があるが、被覆部の取り付ける位置は特に制限はない。例えば、
図14に示すように被覆部を係合部材よりも上部に取り付けて、加熱時に応力が働く頂点が基部1401にくるようにしても、同様の効果が得られる。
【0050】
さらに、逆に
図12および14に示す位置よりさらに下部に被覆部を取り付けることもできる。すなわち、
図15に示すように被覆部1501をより下方に取り付けるが、位置としては例えば10mm下方とするのが好適である。このように構成された電子レンジ加熱調理用包装袋1503は、
図16に示すように、上述のより上方に被覆部を取り付けた場合と同様に基部1502を頂点として応力が生じ、係合部には応力が働かないので係合が解かれることはない。また、このように、係合部から一定以上離間させた位置に被覆部1501を取り付けることにより、高熱の内容物や水蒸気は被覆部1501により遮断されるから、耐熱性の低い係合部材を使用しても熱による影響から回避することができる。すなわち、従来のジッパーのような留め部の素材としては、係合したときの密封性などを考慮したものが使用されており、専ら加熱時の温度を考慮して製造された電子レンジ加熱調理用包装袋の内面ほど耐熱性が高くなく、加熱により袋内が高温になり、高温の水蒸気に曝されていると、係合部の係合力が低下し、容易に開放されてしまうことから、耐熱性が低い係合部材を使用した場合、熱に長時間曝されると係合力が低下して、大きな応力が働かなくても係合が解けて開口部が開く恐れがある。したがって、このような位置に被覆部1501を設けることにより、熱源から係合部を遠ざけることとなるので、熱による係合力の低下を回避することができる。
【0051】
なお、電子レンジ加熱調理用包装袋701、1503の底部705の底面フィルム折り込み部の高さ、および袋の外形寸法は、収納される内容物の大きさにより適宜決めることができる。ただし、電子レンジ加熱調理用包装袋701、1503の外形寸法は、使用する電子レンジの収納部の大きさや回転トレーの直径により大きさが制限されるため、制限に合ったサイズにする必要がある。家庭用の電子レンジの載置皿は、通常、直径280mm程度であるため、袋の幅は280mm以下にすることが好ましい。
【0052】
[第3実施形態]
上述の第1および2実施形態では、本発明を適用した基本的な加工食品として、加工米と米粒大に成形したこんにゃく加工物とを混合して炊飯する例を説明した。本実施形態では、こんにゃく加工物に替えて、こんにゃくを含む炊き込みご飯の材料を用いる。
図17は、本発明の一実施形態の加工食品のさらに別の例を示す図である。
図17に示すように、加工米102および電子レンジ加熱調理用包装袋101は同様であるが、加工米とともに同梱されるのは、炊き込みご飯の材料およびスープ1701であり、調理の際は加工米102と炊き込みご飯の材料およびスープ1701とを混合して電子レンジ加熱調理用包装袋101に充填して、電子レンジで加熱調理する。水分としては、炊き込みご飯の内容に合わせて調味されたスープとなるが、基本的に水分量の考え方は、上述の第1および2実施形態と同様である。また、本実施形態では、炊き込みご飯としたが、これに限られずピラフやその他調味された米飯系加工食品に適用することができる。
【0053】
[実施例]
加工食品の一実施例を説明する。
【0054】
加工米としては、いわゆる早炊き米を使用する。また、こんにゃく加工物としては、通常のこんにゃくを米粒状に成形したものを用意した。混合比率は、加工米80%、こんにゃく加工物20%とした。試験結果は以下の通りだが、本実施形態の調理方法により加工米とこんにゃく加工物とを混合して、電子レンジ加熱調理用包装に封入し電子レンジ庫内に載置し、所定の加熱時間を設定して加熱した結果、加熱が終了すると吹きこぼれもなく、専用の炊飯装置で炊飯した米と同様の食味の米飯を得ることができた。
【0055】
[加熱調理試験]
加工保存されている加工米を、こんにゃく加工物ととともに電子レンジ加熱調理用包装袋に充填して、留め部構造で封止し、500Wの電子レンジで加熱調理した時間とその時の状態を記録した。添加する水分の量は加工米と同量とした。加熱の結果、500Wの電子レンジで加熱から約3分30秒後に電子レンジ加熱調理用包装が内圧で膨張し、約4分30秒後に蒸気抜きシール部から蒸気の噴出が開始され、さらに加熱を続けると、吹きこぼれることなく約6分後に無事炊飯が完了した。また、こんにゃく加工物を炊き込みご飯の材料に替えても同様の結果が得られ、食味もほとんど米のみで炊飯した場合と大差はなかった。本試験は、加工米として通常のうるち米を用いたが、低アミロース米やもち米に加工を施した加工米も使用することができる。その場合は、水分量、加熱時間は適宜調整するものとする。
【0056】
また、比較例として、本実施例の加工米と同様の早炊き米を電子レンジを用いて通常の容器で調理した結果、先ず500Wで6分ほど加熱するが、4分程度経過して炊飯が進むと吹きこぼれが発生しそうになるので炊飯状況を確認しながら、度々加熱を停止する必要があった。さらに、その後、150〜200Wで5分ほど再加熱して余分な水分を除去する必要があった。