特開2020-121049(P2020-121049A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-121049医療画像診断支援装置、医療画像撮影装置、画像管理サーバ及び医療画像診断支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-121049(P2020-121049A)
(43)【公開日】2020年8月13日
(54)【発明の名称】医療画像診断支援装置、医療画像撮影装置、画像管理サーバ及び医療画像診断支援方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20200717BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20200717BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20200717BHJP
   G16H 30/00 20180101ALI20200717BHJP
【FI】
   A61B6/03 360J
   A61B6/03 360T
   A61B6/03 360Q
   A61B8/14
   A61B5/055 380
   G16H30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-16227(P2019-16227)
(22)【出願日】2019年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】519037924
【氏名又は名称】合同会社modorado
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 純一
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 嘉明
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
4C601
5L099
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA35
4C093DA02
4C093FF09
4C093FF16
4C093FF19
4C093FF20
4C093FF28
4C093FG01
4C093FG13
4C093FG16
4C093FH07
4C096AB38
4C096AB44
4C096AC04
4C096AC05
4C096AC06
4C096AD14
4C096DC20
4C096DC22
4C096DC28
4C096DD07
4C096DE07
4C096DE09
4C601EE10
4C601JC37
4C601KK02
4C601KK31
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】撮像した医療画像の中から注目病態の存在を迅速に判別することができる医療画像診断支援装置、医療画像撮影装置、画像管理サーバ及び医療画像診断支援方法を提供すること。
【解決手段】モダリティ1が撮像した医療画像Dから注目病態の存在の判別支援を行う医療画像診断支援装置10であって、医療画像D上において注目病態が発生する可能性のある組織を含む関心領域Eを設定する関心領域設定部と、関心領域E内において注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して所定の色情報を付与する色情報付与部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療画像撮影装置が撮像した医療画像から注目病態の存在の判別支援を行う医療画像診断支援装置であって、
前記医療画像上において前記注目病態が発生する可能性のある組織を含む関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記関心領域内において前記注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して他の領域と区別可能な態様の表示情報を付与する情報付与部と
を備えることを特徴とする医療画像診断支援装置。
【請求項2】
前記関心領域設定部は、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を基準に前記関心領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の医療画像診断支援装置。
【請求項3】
前記関心領域設定部は、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を機械学習によって学習しておき、該機械学習によって求めた解剖学的構造位置を基準に、撮像した前記医療画像の前記関心領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の医療画像診断支援装置。
【請求項4】
前記情報付与部は、前記関心領域内において前記注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して所定の色情報を付与することを特徴とする請求項1に記載の医療画像診断支援装置。
【請求項5】
前記情報付与部は、前記関心領域において前記注目病態が存在しない正常画像と前記注目病態が存在する異常画像とをもとに前記注目病態の存在可能性を機械学習によって学習しておき、撮像した前記医療画像の前記関心領域に前記注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、前記注目病態の存在可能性の高い領域に前記色情報を付与することを特徴とする請求項4に記載の医療画像診断支援装置。
【請求項6】
前記注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、その旨のアノテーションを前記医療画像に付加する情報付加部を備えたことを特徴とする請求項5に記載の医療画像診断支援装置。
【請求項7】
前記画素値は、所定範囲の画素値であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置。
【請求項8】
前記医療画像は、造影剤を用いていない単純検査画像であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置。
【請求項9】
前記医療画像は、X線CT画像、MRI画像及び超音波画像を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置。
【請求項10】
前記医療画像は、X線CT画像であり、前記画素値はCT値を変換した値であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置。
【請求項11】
前記注目病態は、血栓及び血腫であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置を備えた医療画像撮影装置。
【請求項13】
前記医療画像撮影装置が撮像した前記医療画像を受け付けて管理し、少なくとも前記医療画像の読影支援を行う画像管理サーバであって、
請求項1〜11のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置を備えたことを特徴とする画像管理サーバ。
【請求項14】
前記医療画像撮影装置が撮像した前記医療画像を受け付けて管理し、少なくとも前記医療画像の読影支援を行うクラウド上の画像管理サーバであって、
請求項1〜11のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置を備えたことを特徴とする画像管理サーバ。
【請求項15】
医療画像撮影装置が撮像した医療画像から注目病態の存在の判別支援を行う医療画像診断支援装置の医療画像診断支援方法であって、
前記医療画像上において前記注目病態が発生する可能性のある組織を含む関心領域を設定する関心領域設定ステップと、
前記関心領域内において前記注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して他の領域と区別可能な態様の表示情報を付与する情報付与ステップと
を含むことを特徴とする医療画像診断支援方法。
【請求項16】
前記関心領域設定ステップは、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を基準に前記関心領域を設定することを特徴とする請求項15に記載の医療画像診断支援方法。
【請求項17】
前記関心領域設定ステップは、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を機械学習によって学習しておき、該機械学習によって求めた解剖学的構造位置を基準に、撮像した前記医療画像の前記関心領域を設定することを特徴とする請求項15に記載の医療画像診断支援方法。
【請求項18】
前記情報付与ステップは、前記関心領域内において前記注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して所定の色情報を付与することを特徴とする請求項15に記載の医療画像診断支援方法。
【請求項19】
前記情報付与ステップは、前記関心領域において前記注目病態が存在しない正常画像と前記注目病態が存在する異常画像とをもとに前記注目病態の存在可能性を機械学習によって学習しておき、撮像した前記医療画像の前記関心領域に前記注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、前記注目病態の存在可能性の高い領域に前記色情報を付与することを特徴とする請求項18に記載の医療画像診断支援方法。
【請求項20】
前記注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、その旨のアノテーションを前記医療画像に付加する情報付加ステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の医療画像診断支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像した医療画像の中から注目病態の存在を迅速に判別することができる医療画像診断支援装置、医療画像撮影装置、画像管理サーバ及び医療画像診断支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医師が患者を診断する際、医師自身のこれまでの経験や医学書、症例報告書、症例データベース等から調査した情報に基づいて診断を行う。この際、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波CT装置などによって撮像された断層画像は医師の診断支援に有用なものとなる。
【0003】
特許文献1には、非造影CT画像と造影CT画像との差分画像をもとに、血管に属する石灰化プラークを自動検出するものが記載されている。特許文献1は、造影CT画像では血流のある臓器や血管が強調される点と、非造影CT画像では石灰化プラークを容易に見つける点とを利用し、位置特定された血管内の石灰化プラークを検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−41247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年になって、患者の全身のCT画像を高速にスキャンすることが可能になり、短時間で全身のCTスライス画像を得ることができる。このCT画像の情報量は極めて豊富である。しかしながら、このCT画像の中から必要な情報を短時間で拾い上げることは容易ではない。例えば、救急診療や急性期診療においては、血栓や血腫などの注目病態の存在を迅速に判別することが重要であるが、経験豊富な医師であっても、このCT画像から注目病態の存在を見逃す場合がある。この注目病態の存在の見逃しは、救急診療や急性期診療において致命的なものとなる。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであって、撮像した医療画像の中から注目病態の存在を迅速に判別することができる医療画像診断支援装置、医療画像撮影装置、画像管理サーバ及び医療画像診断支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、医療画像撮影装置が撮像した医療画像から注目病態の存在の判別支援を行う医療画像診断支援装置であって、前記医療画像上において前記注目病態が発生する可能性のある組織を含む関心領域を設定する関心領域設定部と、前記関心領域内において前記注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して他の領域と区別可能な態様の表示情報を付与する情報付与部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の発明において、前記関心領域設定部は、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を基準に前記関心領域を設定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、前記関心領域設定部は、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を機械学習によって学習しておき、該機械学習によって求めた解剖学的構造位置を基準に、撮像した前記医療画像の前記関心領域を設定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記情報付与部は、前記関心領域内において前記注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して所定の色情報を付与することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記情報付与部は、前記関心領域において前記注目病態が存在しない正常画像と前記注目病態が存在する異常画像とをもとに前記注目病態の存在可能性を機械学習によって学習しておき、撮像した前記医療画像の前記関心領域に前記注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、前記注目病態の存在可能性の高い領域に前記色情報を付与することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、その旨のアノテーションを前記医療画像に付加する情報付加部を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記画素値は、所定範囲の画素値であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記医療画像は、造影剤を用いていない単純検査画像であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、前記医療画像は、X線CT画像、MRI画像及び超音波画像を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記の発明において、前記医療画像は、X線CT画像であり、前記画素値はCT値を変換した値であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記の発明において、前記注目病態は、血栓及び血腫であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、医療画像撮影装置であって、上記の発明のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記医療画像撮影装置が撮像した前記医療画像を受け付けて管理し、少なくとも前記医療画像の読影支援を行う画像管理サーバであって、上記の発明のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記医療画像撮影装置が撮像した前記医療画像を受け付けて管理し、少なくとも前記医療画像の読影支援を行うクラウド上の画像管理サーバであって、上記の発明のいずれか一つに記載の医療画像診断支援装置を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、医療画像撮影装置が撮像した医療画像から注目病態の存在の判別支援を行う医療画像診断支援装置の医療画像診断支援方法であって、前記医療画像上において前記注目病態が発生する可能性のある組織を含む関心領域を設定する関心領域設定ステップと、前記関心領域内において前記注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して他の領域と区別可能な態様の表示情報を付与する情報付与ステップとを含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、上記の発明において、前記関心領域設定ステップは、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を基準に前記関心領域を設定することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、上記の発明において、前記関心領域設定ステップは、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を機械学習によって学習しておき、該機械学習によって求めた解剖学的構造位置を基準に、撮像した前記医療画像の前記関心領域を設定することを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上記の発明において、前記情報付与ステップは、前記関心領域内において前記注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して所定の色情報を付与することを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、上記の発明において、前記情報付与ステップは、前記関心領域において前記注目病態が存在しない正常画像と前記注目病態が存在する異常画像とをもとに前記注目病態の存在可能性を機械学習によって学習しておき、撮像した前記医療画像の前記関心領域に前記注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、前記注目病態の存在可能性の高い領域に前記色情報を付与することを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、上記の発明において、前記注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、その旨のアノテーションを前記医療画像に付加する情報付加ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、撮像した医療画像の中から注目病態の存在を迅速に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本実施例に係る医療画像診断支援装置の概要を説明するための説明図である。
図2図2は、図1に示した画像管理サーバの構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、画像管理サーバによる医療画像診断支援処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、変形例1による医療画像撮像装置の構成を示す機能ブロック図である。
図5図5は、変形例2による画像管理サーバの構成を示す機能ブロック図である。
図6図6は、本応用例による画像管理サーバの構成を示す機能ブロック図である。
図7図7は、本応用例による医療画像診断支援処理の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る医療画像診断支援装置、医療画像撮影装置、画像管理サーバ及び医療画像診断支援方法の好適な実施例を詳細に説明する。
【0030】
<医療画像診断支援装置の概要>
まず、本実施例に係る医療画像診断支援装置10の概要について説明する。図1は、本実施例に係る医療画像診断支援装置10の概要を説明するための説明図である。
【0031】
図1に示すように、画像管理サーバ2は、医療画像診断支援装置10を有する。画像管理サーバ2は、モダリティ1に接続される。モダリティ1は、例えばX線CT装置であり、X線CT装置によって撮像した医療画像は画像管理サーバ2に順次送られる。また、画像管理サーバ2は、端末装置13に接続される。端末装置13は、例えば読影医が操作する端末であり、画像管理サーバ2が保存する医療画像に対する読影を行う。画像管理サーバ2は、例えば、DICOM規格等で医療画像の管理を行う。
【0032】
医療画像診断支援装置10は、医療画像撮影装置としてのモダリティ1が撮像した医療画像から、血栓及び血腫などの注目病態の存在の判別支援を行う。図1(a)は、医療画像Dの一例を示している。医療画像Dは、腹部CT画像である。CT画像は、X線が吸収される度合いに応じたグレースケール画像であり、X線の吸収が大きい骨は白色となる。例えば、図1(a)では、脊柱101及び肋骨111はX線の吸収が大きく白色となる。また、図1(a)において黒色となっている部分はX線の吸収が小さい脂肪である。CT値は、水を0、空気を−1000に設定される条件下で、CT撮影された組織の密度を水を原点とした相対値で表し、−1000〜1000の値をもつ。したがって、CT画像はCT値の分布画像でもある。なお、医療画像Dは、非造影CT画像(単純検査画像)である。
【0033】
ここで、血栓及び血腫などの注目病態のCT値は、45〜75である。CT値は3次元の最小立方体のボクセル値ではあるが、一般的な256階調の画素値に変換できる。血栓及び血腫の注目病態が発生する箇所(関心領域)は、下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105である。これらの箇所は、血液のCT値を表すが、これ以外の組織、例えば肝臓106のCT値が45〜75であるため、関心領域との区分が付きにくい。
【0034】
そこで、医療画像診断支援装置10は、図1(b)に示すように、まず、医療画像D上において注目病態が発生する可能性のある組織を含む関心領域Eを設定する。この関心領域Eは、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を基準に設定する。骨及び臓器を含む解剖学的構造位置が関心領域Eの設定のための基準指標となる。例えば、医療画像診断支援装置10は、脊柱101の脊柱管形状をもとに脊柱101の中心Pを通る中心線Cを決定し、中心Pを円の中心とし、中心線Cを中心に角度θ、半径Rの扇形領域を関心領域Eとして設定する。なお、図1(b)では、角度θは45度とし、半径Rは5cmとしている。この関心領域Eには、上記の下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105が含まれる。なお、関心領域Eの設定時、脊柱101以外に肋骨111が形成する楕円形状を考慮してもよい。また、1枚の医療画像のみではなく、隣接する医療画像(スライス画像)をもとに求めた3次元形状の組織を基準に関心領域Eを設定してもよい。
【0035】
なお、この関心領域Eの設定は、注目病態が発生する可能性のある組織には個人差があるため、比較的個人差が小さく、明瞭なCT値を有する骨などの組織を基準にし、この基準位置から注目病態が発生する可能性のある組織の相対的位置を特定するものである。したがって、扇状に限らず、例えば、下向大動脈102を囲む円領域を関心領域としてもよい。
【0036】
その後、医療画像診断支援装置10は、図1(c)に示すように、関心領域E内のCT値が45〜75の画素に対して所定の色情報、例えば、赤色、黄色等を付与する。したがって、上記の下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105のみに色情報が付与される。
【0037】
この色情報が付与された領域は、血栓及び血腫の注目病態の存在可能性がある領域であり、この領域が強調されることになる。これにより、読影医は、注目病態の存在を迅速に判別することができる。具体的に、読影医は、色情報が付与された領域が、下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105などの本来の組織形状と異なる部分に色付けされていたり、あるいは色付けされた部分が本来の組織形状と異なる形状となっている場合、血栓又は血腫が存在すると判別することができる。
【0038】
図1(c)では、下向大動脈102及び上腸間膜動脈104にそれぞれ血腫102a、104aの病態の存在を確認できる。なお、上記の血栓及び血腫のCT値を血液のCT値として、45〜75の範囲としていたが、この範囲はさらに血液の新鮮さ等を考慮して狭めてもよいし、逆に広げてもよい。
【0039】
このように、本実施例では、血栓及び血腫などの注目病態の存在可能性のある組織を含む関心領域Eを設定し、この関心領域E内において注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して所定の色情報を付与するようにしているので、客観的な注目病態の判別が可能で、読影医による注目病態の見逃し率を軽減することができる。特に、救急診療あるいは急性期診療では、読影の迅速性が求められるが、このような時間の制限がある場合であっても、注目病態の判別が容易になる。
【0040】
<医療画像診断支援装置を含む画像管理サーバの構成>
次に、図1に示した画像管理サーバ2の構成について説明する。図2は、図1に示した画像管理サーバ2の構成を示す機能ブロック図である。画像管理サーバ2は、入力部3、表示部4、通信部5、記憶部6、制御部7及び医療画像診断支援装置10を有する。
【0041】
入力部3は、キーボード又はマウス等の入力デバイスであり、表示部4は、液晶パネル等の表示デバイスであり、通信部5は、モダリティ1、端末装置13、あるいは図示しないネットワークを介して他の装置に接続するための通信インタフェース部である。
【0042】
記憶部6は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等からなる記憶デバイスであり、医療画像D1を含む医療情報D10を記憶する。
【0043】
医療画像診断支援装置10は、関心領域設定部11及び色情報付与部12を有する。関心領域設定部11は、モダリティ1から医療画像上において前記注目病態が発生する可能性のある組織を含む関心領域Eを設定する。色情報付与部12は、関心領域E内において注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して所定の色情報を付与する。
【0044】
制御部7は、画像管理サーバ2の全体を制御する制御部であり、情報処理制御部8を有する。制御部15は、情報処理制御部8に対応するプログラムを不揮発性メモリや磁気ディスク装置などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0045】
情報処理制御部8は、接続される装置からの要求に応じて、医療情報D10の蓄積、閲覧、複写、移動、削除、さらに特定情報の削除、特定情報の切り出しなどの情報処理を行う。特に、情報処理制御部8は、接続される医療画像診断支援装置10に対し、モダリティ1が撮像した医療画像Dに対する注目病態の存在の判別支援処理を施した医療画像D1を生成する処理を実行させる。なお、医療画像診断支援装置10の機能、すなわち医療画像診断支援機能は、ソフトウェアあるいはハードウェアとして制御部7内に設けるようにしてもよい。
【0046】
<医療画像診断支援処理>
次に、画像管理サーバ2による医療画像診断支援処理について説明する。図3は、画像管理サーバ2による医療画像診断支援処理手順を示すフローチャートである。図3に示すように、制御部7は、モダリティ1から医療画像Dを受け付ける(ステップS101)と、関心領域設定部11に対して、医療画像D上において、血栓及び血腫の注目病態が発生する可能性のある組織を含む関心領域Eを設定する処理を行わせる(ステップS102)。その後、制御部7は、色情報付与部12に対して、関心領域E内において注目病態の存在可能性を示す画素値を有する領域に対して所定の色情報を付与する処理を行わせ(ステップS103)、医療画像D1として記憶部6内の医療情報D10内に格納し、本処理を終了する。
【0047】
<変形例1>
なお、図4に示すように、医療画像診断支援装置10は、モダリティ1内に搭載するようにしてもよい。モダリティ1は、撮像した医療画像Dを医療画像診断支援装置10に送り、医療画像診断支援装置10が医療画像診断支援処理した医療画像D1をモダリティ1から外部に送出する。
【0048】
<変形例2>
また、図5に示すように、医療画像診断支援装置10を含む画像管理サーバ2に対応する画像管理サーバ32をクラウド30上に配置してもよい。この場合、モダリティ1及び端末装置13を接続する、例えば医療機関内のローカルサーバ22は、画像管理サーバ32に接続される。ローカルサーバ22は、モダリティ1が撮像した医療画像Dを画像管理サーバ32に送信する。画像管理サーバ32は、受け付けた医療画像Dに対して、医療画像診断支援装置10を用いて医療画像診断支援処理を行った医療画像D1を生成して格納する。また、読影医が操作する端末装置13は、ローカルサーバ22を介して画像管理サーバ32にアクセスし、生成された医療画像D1を読影する。
【0049】
<応用例>
本応用例では、上記の医療画像診断支援装置10による医療画像診断支援処理を、ディープラーニングを含む機械学習によって学習した機能によって行うようにしている。
【0050】
図6は、本応用例による画像管理サーバ2の構成を示す機能ブロック図である。図6に示すように、本応用例による画像管理サーバ2は、医療画像診断支援装置10内の関心領域設定部41及び色情報付与部42の処理を、ディープラーニングを含む機械学習によって学習した機能によって行う。また、注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、その旨のアノテーションを医療画像D1に付加する情報付与部43を有する。その他の構成は、図2に示した構成と同じである。
【0051】
関心領域設定部41は、骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を機械学習によって学習しておき、該機械学習によって求めた解剖学的構造位置を基準に、撮像した医療画像Dの関心領域Eを設定する。
【0052】
例えば、図7(a)に示すように、予め骨及び臓器を含む解剖学的構造位置を多数の医療画像を用いて機械学習しておき、この機械学習した脊柱などの解剖学的構造位置を基準に、撮像した医療画像Dの関心領域E102〜E105を設定する。各関心領域E102〜E105は、それぞれ下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105の組織に対応する。なお、下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105の組織の解剖学的構造位置をさらに学習しておき、下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105の組織をさらに詳細に特定するようにしてもよい。この場合、下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105の組織の3次元構造を参照して特定するようにしてもよい。図7(a)では、下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105の組織を中心に、下向大動脈102、下向大静脈103、上腸間膜動脈104、上腸間膜静脈105の組織を含む円領域を関心領域E102〜E105としている。
【0053】
色情報付与部42は、関心領域E102〜E105において、血栓及び血腫などの注目病態が存在しない正常画像と、血栓及び血腫などの注目病態が存在する異常画像とをもとに注目病態の存在可能性を機械学習によって学習しておき、図7(b)に示すように、撮像した医療画像Dの関心領域に注目病態の存在可能性の高い領域があるか否かを判別し、注目病態の存在可能性の高い領域がある場合、図7(c)に示すように、注目病態の存在可能性の高い領域に色情報を付与する。
【0054】
色情報付与部42が色情報付与部12と異なる点は、注目病態が存在する可能性のある組織ではなく、注目病態の存在可能性の高い領域、具体的には注目病態のみに色情報を付与することである。これにより、医療画像診断支援装置10が医療画像を予備的に読影したことになり、読影医は、この読影結果を確認することになる。
【0055】
また、本応用例では、色情報付与部12が、図7(c)に示すように、注目病態の存在可能性の高い領域、例えば血腫102a,104aがある場合、その旨のアノテーションA1,A2を医療画像D1に付加するようにしている。
【0056】
本応用例では、機械学習された医療画像診断支援装置10を用いて、注目病態の存在可能性の高い領域を検出し、色情報を付与するようにしているので、さらに迅速に注目病態の存在を判別することができる。
【0057】
なお、上記の医療画像は2次元画像として説明したが、これに限らず、複数のスライス画像をもとに注目病態の3次元形状に色情報を付与するようにしてもよい。
【0058】
また、上記では、医療画像DをX線CT画像として説明したが、これに限らず、MRI画像、超音波CT画像であってもよいし、さらに、1枚のX線画像、MRI画像、超音波画像であってもよい。
【0059】
さらに、上記では、注目病態の一例として血栓及び血腫について説明したが、血栓及び血腫も、ヒトの部位によって多種存在する。例えば、頭部であれば、クモ膜下出血、急性期脳梗塞、脳静脈洞血栓症があり、胸部であれば、心筋梗塞、大動脈瘤切迫破裂、大動脈解離、肺血栓塞栓症があり、腹部では、上腸間膜動脈閉塞/解離、非閉塞性腸管虚血があり、脊椎には、脊椎硬膜外血腫などがある。
【0060】
なお、注目病態の一例として血栓及び血腫について説明したが、注目病態は血栓及び血腫に限らず、他の内因性病態であってもよい。さらに、注目病態は、外因性病態、例えば、組織の損傷や挫傷、出血であってもよい。
【0061】
また、上記一連の説明では、関心領域E内のCT値が所定の範囲内の値となる画素に対して所定の色情報、例えば、赤色、黄色等を付与する場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、色情報以外の態様で該当する画素を強調することもできる。例えば、関心領域E内のCT値が所定の範囲内の値となる画素の画素値を他の領域の画素の画素値と区別可能な画素値とすることができ、また、これらの画素からなる領域に特定の図形を対応付けて強調表示することもできる。
【0062】
なお、上記の実施例、変形例及び応用例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の医療画像診断支援装置、医療画像撮影装置、画像管理サーバ及び医療画像診断支援方法は、撮像した医療画像の中から注目病態の存在を迅速に判別する場合に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 モダリティ
2 画像管理サーバ
3 入力部
4 表示部
5 通信部
6 記憶部
7 制御部
8 情報処理制御部
10 医療画像診断支援装置
11,41 関心領域設定部
12,42 色情報付与部
13 端末装置
15 制御部
22 ローカルサーバ
30 クラウド
32 画像管理サーバ
43 情報付与部
101 脊柱
102 下向大動脈
102a,104a 血腫
103 下向大静脈
104 上腸間膜動脈
105 上腸間膜静脈
106 肝臓
111 肋骨
A1,A2 アノテーション
C 中心線
D,D1 医療画像
D10 医療情報
E,E102〜E105 関心領域
P 中心
R 半径
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7