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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-121431(P2020-121431A)
(43)【公開日】2020年8月13日
(54)【発明の名称】モデル材クリア組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20200717BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20200717BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20200717BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20200717BHJP
【FI】
   B29C64/112
   B33Y70/00
   B29C64/264
   C08F2/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-13177(P2019-13177)
(22)【出願日】2019年1月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳朗
(72)【発明者】
【氏名】中山 健
【テーマコード(参考)】
4F213
4J011
【Fターム(参考)】
4F213AB04
4F213AB14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL96
4J011QA37
4J011QB24
4J011SA02
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA63
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA07
(57)【要約】
【課題】波長360〜410nmの範囲にピーク波長を有する、従来一般に広く使用されているLED光源により硬化することができる、無色または無彩色のクリアな立体光造形物でありながら、高い硬度を有する立体光造形物を得ることのできる、マテリアルジェット光造形法に適したモデル材クリア組成物を提供すること。
【解決手段】ピーク波長が360nm〜410nmの範囲にあるLED光源を用いるマテリアルジェット光造形法において使用されるモデル材クリア組成物であって、重合性化合物、光重合開始剤および増感剤を含んでなり、前記光重合開始剤の吸収波長の最大値が400nm以下であり、前記増感剤がジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセンからなる群から選択され、該モデル材クリア組成物から形成される造形物の硬化収縮変形度が15mm以下である、モデル材クリア組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピーク波長が360nm〜410nmの範囲にあるLED光源を用いるマテリアルジェット光造形法において使用されるモデル材クリア組成物であって、重合性化合物、光重合開始剤および増感剤を含んでなり、前記光重合開始剤の吸収波長の最大値が400nm以下であり、前記増感剤がジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセンからなる群から選択され、該モデル材クリア組成物から形成される造形物の硬化収縮変形度が15mm以下である、モデル材クリア組成物。
【請求項2】
増感剤が、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセンおよび9,10−ビスオクタノイルオキシアントラセンから選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のモデル材クリア組成物。
【請求項3】
増感剤の含有量が、モデル材クリア組成物の総質量に対して0.01〜2質量%である、請求項1または2に記載のモデル材クリア組成物。
【請求項4】
光重合開始剤が、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
【請求項5】
光重合開始剤の含有量が、モデル材クリア組成物の総質量に対して0.1〜5質量%である、請求項1〜4のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
【請求項6】
25℃における粘度が1mPa・s以上500mPa・s未満である、請求項1〜5のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
【請求項7】
モデル材クリア組成物のガラス転移温度が30〜70℃である、請求項1〜6のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
【請求項8】
単官能重合性化合物または二官能重合性化合物を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
【請求項9】
重合性化合物としてアクリロイルモルホリンを含む、請求項1〜8のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のモデル材クリア組成物と、マテリアルジェット光造形法によりサポート材を造形するためのサポート材組成物とを含んでなる、マテリアルジェット光造形用組成物セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マテリアルジェット光造形法において使用されるモデル材クリア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は消費電力が小さく、長寿命であるなどの利点を有することから、従来、マテリアルジェット光造形法の光源としても広く用いられている。しかしながら、LED光源を利用して硬化させるタイプのモデル材組成物に使用される主な光重合開始剤は、一般に400nmを超える波長域に光吸収を示すため、得られる光造形物が黄色に着色し、無色または無彩色のクリアな光造形物が得られにくいという問題がある。かかる問題を解決するために、例えば、特許文献1には、400nmを超える波長域に光吸収を示さない光重合開始剤を含むインク組成物を、波長275〜310nmの間にピークを有するLED光源を用いて硬化させて3次元造形物を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−1226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるような波長275〜310nmの間にピークを有するLED光源は、短波長エネルギーを使用するものであり、ピーク波長が360〜410nm付近にあるLED光源と同程度のエネルギー源として用いる場合には高い電圧をかける必要があるため発熱を伴いやすく、また、消費電力が大きくなるなど、安全面およびコスト面からマテリアルジェット光造形法の光源として実用的ではない。また、発熱を抑えて安全な範囲で利用しようとするとエネルギーが低くなり、得られる光造形物の十分な硬度を確保することが困難となる他、冷却装置を設ける場合には大掛かりな設備が必要となり、コスト面でも不利である。このため、安全面やコスト面を考慮すると、ピーク波長が360〜410nm付近にあるLED光源を用いることがより実用的であるといえる。そのようなLED光源を利用したマテリアルジェット光造形法においてより複雑で高精細な立体造形物を作製するためには、その硬度の向上も不可欠であり、無色透明の外観的に優れる立体光造形物でありながら、高い硬度を有する立体光造形物を得ることのできるモデル材クリア組成物に対する強い要求が存在する。
【0005】
そこで、本発明は、波長360〜410nmの範囲にピーク波長を有する、従来一般に広く使用されているLED光源により硬化することができる、無色または無彩色のクリアな立体光造形物でありながら、高い硬度を有する立体光造形物を得ることのできる、マテリアルジェット光造形法に適したモデル材クリア組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]ピーク波長が360nm〜410nmの範囲にあるLED光源を用いるマテリアルジェット光造形法において使用されるモデル材クリア組成物であって、重合性化合物、光重合開始剤および増感剤を含んでなり、前記光重合開始剤の吸収波長の最大値が400nm以下であり、前記増感剤がジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセンからなる群から選択され、該モデル材クリア組成物から形成される造形物の硬化収縮変形度が15mm以下である、モデル材クリア組成物。
[2]増感剤が、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセンおよび9,10−ビスオクタノイルオキシアントラセンから選択される少なくとも1種を含む、前記[1]に記載のモデル材クリア組成物。
[3]増感剤の含有量が、モデル材クリア組成物の総質量に対して0.01〜2質量%である、前記[1]または[2]に記載のモデル材クリア組成物。
[4]光重合開始剤が、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンからなる群から選択される、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
[5]光重合開始剤の含有量が、モデル材クリア組成物の総質量に対して0.1〜5質量%である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
[6]25℃における粘度が1mPa・s以上500mPa・s未満である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
[7]モデル材クリア組成物のガラス転移温度が30〜70℃である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
[8]単官能重合性化合物または二官能重合性化合物を含む、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
[9]重合性化合物としてアクリロイルモルホリンを含む、前記[1]〜[8]のいずれかに記載のモデル材クリア組成物。
[10]前記[1]〜[9]のいずれかに記載のモデル材クリア組成物と、マテリアルジェット光造形法によりサポート材を造形するためのサポート材組成物とを含んでなる、マテリアルジェット光造形用組成物セット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、波長360〜410nmの範囲にピーク波長を有する、従来一般に広く使用されているLED光源により硬化することができる、無色または無彩色のクリアな立体光造形物でありながら、高い硬度を有する立体光造形物を得ることのできる、マテリアルジェット光造形法に適したモデル材クリア組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
<モデル材クリア組成物>
本発明のモデル材クリア組成物は、ピーク波長が360〜410nmの範囲にあるLED光源を用いるマテリアルジェット光造形法において使用されるモデル材組成物である。本発明のモデル材クリア組成物は、光重合開始剤、並びに、ジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセンからなる群から選択される増感剤を含んでなり、含まれる光重合開始剤の吸収波長の最大値は400nm以下である。吸収波長の最大値が400nm以下である光重合開始剤を特定の構造を有する増感剤と組み合わせて用いることにより、ピーク波長が360〜410nmの範囲にある一般的なLED光源を用いて硬化させた場合であっても得られる光造形物が着色し難く、無色または無彩色の高い透明性を維持しながら、変形や硬化収縮を低減できる高い硬度を確保し得るため、外観に優れ、かつ複雑で高精細な光造形物を得るのに適したモデル材クリア組成物となる。
【0010】
本発明のモデル材クリア組成物に含まれる光重合開始剤の吸収波長の最大値は400nm以下である。光重合開始剤が400nmを超える波長域に吸収を有する場合、ピーク波長が360〜410nmの範囲にある一般的なLED光源を用いて硬化させた際に黄色くなるなど着色しやすくなり、無色または無彩色で高い透明性を有する光造形物を得ることが困難となる。本発明のモデル材クリア組成物に含まれる光重合開始剤の吸収波長の最大値は、好ましくは380nm以下、より好ましくは360nm以下である。着色抑制の観点からは、400nm以下の範囲に吸収を示し、かつ、前記吸収波長の最大値が400nm以下の範囲であれば、吸収波長の最小値は特に限定されるものではない。上記上限下限値の範囲内に光吸収を示す光重合開始剤であれば、無色または無彩色で高い透明性を有する光造形物を、360〜410nmの範囲にピーク波長を有する一般的なLED光源を用いて得ることができる。なお、光重合開始剤の吸収波長は、例えば、溶媒中で紫外可視分光光度計を用いて測定できる。溶媒は、光重合開始剤を溶解し得る溶媒であり、例えばアセトニトリル等が挙げられる。
【0011】
本発明のモデル材クリア組成物において、光重合開始剤は、光を照射することによりラジカル反応を促進する化合物であって、吸収波長の最大値が400nm以下である限り特に限定されるものではなく、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどのα−ヒドロキシアルキルフェノン化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンジルメチルケタール化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、無色または無彩色で透明性の高い光造形物を得ることができ、かつ、本発明のモデル材クリア組成物が含むジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセンからなる群から選択される増感剤との組み合わせにおいて、変形や硬化収縮を生じ難い高い硬度を実現し得る観点から、アルキルフェノン系光重合開始剤が好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0012】
上記光重合開始剤として市販品を用いてもよい。そのような市販品としては、具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)1173、イルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア127、イルガキュア2959、イルガキュア651(以上、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0013】
モデル材クリア組成物における光重合開始剤の含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%である。光重合開始剤の含有量が上記下限値以上であると、未反応の重合成分を十分に低減させて、硬化性を十分に高めることができる。一方、光重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、光造形物中に未反応のまま残存する光重合開始剤の量を低減することができ、未反応の光重合開始剤が残存することにより生じる光造形物の黄変を抑制することができる。
【0014】
本発明のモデル材クリア組成物は、360〜410nmの範囲にピーク波長を有する一般的なLED光源を用いて硬化させた際の十分に高い着色抑制効果を達成するために、光重合開始剤として、400nmを超える波長域に吸収を示す光重合開始剤を実質的に含まないことが好ましい。本発明において「実質的に含まない」とは、400nmを超える波長域に吸収を示す光重合開始剤の含有量が、モデル材クリア組成物の総質量に基づいて0.5質量%以下であることを意味し、400nmを超える波長域に吸収を示す光重合開始剤の含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に基づいて、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%である。
【0015】
本発明のモデル材クリア組成物は、ジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセンからなる群から選択される少なくとも1種の増感剤を含む。着色がなく透明性の高い光造形物を得るために用いられるモデル材クリア組成物では、光重合開始剤に起因する着色が顕著に表れやすいため、多くの場合、着色剤を含むモデル材組成物と比較して光重合開始剤の量を少なくすることが望まれる。光重合開始剤の含有量を少なくする場合、モデル材組成物の硬化性が下がる傾向にあるためこれを補う必要性が生じる。一方、一般に光を吸収する性質を有する顔料や染料等の着色剤を含むモデル材組成物と比較して、同程度の光重合開始剤を含む場合には光重合開始剤や重合性化合物等に光エネルギーが作用しやすく、重合反応が促進されやすくなる。このため、組成物の硬化が必要以上に進みやすく、モデル材クリア組成物では着色剤を含むモデル材組成物と比較して変形や硬化収縮の問題がより顕著に表れやすいという問題もある。また、3次元の立体造形物では2次元の造形物(印刷物)と比較して厚みが生じるため、わずかな着色であっても認識されやすく、着色や透明性の低下の問題も顕著に生じやすい。本発明のモデル材クリア組成物では、吸収波長の最大値が400nm以下である上記光重合開始剤との組み合わせにおいて、ジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセンからなる群から選択される特定の構造を有する増感剤を用いることにより、モデル材クリア組成物の良好な硬化性を維持したまま硬化収縮を改善するとともに、3次元立体造形物として十分に許容される程度まで着色を抑制し、透明性が高く高精度な光造形物を、360〜410nmの範囲にピーク波長を有する一般的なLED光源を用いて得ることができる。
【0016】
本発明のモデル材クリア組成物が含み得るジアルコキシアントラセンとしては、例えば下記式(1):
〔式(1)中、Rは互いに独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基またはアリルオキシ基のうちいずれかを表し、XおよびYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のうちのいずれかを表す〕
で表されるアントラセン化合物が挙げられる。具体的には、例えば、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−メチルヘキシルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−プロピルヘキシルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ブチルヘキシルオキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0017】
また、本発明のモデル材クリア組成物が含み得るビスアルカノイルオキシアントラセンとしては、例えば下記式(2):
〔式(2)中、Rは互いに独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基またはアリルオキシ基のうちのいずれかを表し、XおよびYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のうちのいずれかを表す〕
で表されるアントラセン化合物が挙げられる。具体的には、例えば、9,10−ビスオクタノイルオキシアントラセン、9,10−ビスプロピオニルオキシアントラセン、9,10−ビスブチリルオキシアントラセン、9,10−ビスヘキサノイルオキシアントラセン、9,10−ビスヘプタノイルオキシアントラセン、9,10−ビスオクタノイルオキシアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキサノイルオキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0018】
上記アントラセン化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、400nm付近の波長域に感応して前記光重合開始剤を活性化することができ、360〜410nmの範囲にピーク波長を有する一般的なLED光源を用いた場合にモデル材クリア組成物の良好な硬化性を維持したまま硬化収縮を改善するとともに、無色または無彩色の3次元立体光造形物を得られやすいことから、増感剤としては、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセンおよび9,10−ビスオクタノイルオキシアントラセンから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0019】
本発明のモデル材クリア組成物は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲においてジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセン以外の公知の増感剤を含んでいてもよい。そのような増感剤としては、例えばチオキサントン系増感剤等が挙げられる。ジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセン以外の増感剤を含む場合、本発明のモデル材クリア組成物におけるその含有量は、モデル材クリア組成物に含まれるジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセン100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下であり、ジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセン以外の増感剤を含まないことが特に好ましい。
【0020】
本発明のモデル材クリア組成物における増感剤の含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に対して、好ましくは0.01〜2質量%である。増感剤の含有量が上記範囲であると、光重合開始剤を十分に活性化することができ、モデル材クリア組成物の良好な硬化性を維持したまま硬化収縮を効果的に抑制することができる。増感剤の含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に対して、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、より好ましくは1.5質量%以下である。なお、モデル材クリア組成物が複数種の増感剤を含む場合、上記増感剤の含有量は、モデル材クリア組成物に含まれる全ての増感剤の総量を意味する。
【0021】
本発明のモデル材クリア組成物は重合性化合物を含む。本発明のモデル材クリア組成物は、30〜70℃のガラス転移温度を有することが好ましく、モデル材クリア組成物が前記ガラス転移温度を有するようモデル材クリア組成物を構成する重合性化合物を選択することが好ましい。そのような重合性化合物として、本発明のモデル材クリア組成物は、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が25℃以上である少なくとも1つの単官能または二官能重合性モノマー(以下、「重合性モノマー(A)」ともいう)を含むことが好ましい。重合性モノマー(A)は反応性希釈剤として機能するとともに、硬化収縮を抑えながら硬化性を促進し、光造形物の造形精度の向上に寄与する。特に、重合性モノマー(A)と、好ましくは後述する重合性モノマー(B)および/またはオリゴマーとを組み合わせてモデル材クリア組成物を構成することにより、硬化性を制御しやすく、着色のないクリアな光造形物でありながら硬化収縮を抑え、得られる光造形物に高い硬度および耐脆性をバランスよく付与し得るモデル材クリア組成物を得ることができる。
【0022】
ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上である単官能重合性モノマー(以下、「単官能重合性モノマー(A1)」ともいう)は、ホモポリマーのガラス転移温度が25℃以上であり、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であって、分子内に重合性基を1つ有する重合性モノマーである。単官能重合性モノマー(A1)が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、光硬化における反応効率や反応速度等の観点から、単官能重合性モノマー(A1)が有する重合性基はラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基がより好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がさらに好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方またはいずれかを表し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリルアミド」等においても同様である。
【0023】
本発明のモデル材クリア組成物において、単官能重合性モノマー(A1)は、好ましくは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上であり、分子内にエチレン性二重結合を1つ有する単官能エチレン性不飽和単量体である。具体的には、例えば、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、分子内に、脂環式構造、芳香環構造または複素環構造等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、ならびに(メタ)アクリルアミドおよびN−ビニルラクタム類などの窒素原子を含有する単官能エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。なお、本明細書において、脂環式構造は炭素原子が環状に結合した脂肪族の環状構造を、芳香環構造は炭素原子が環状に結合した芳香族の環状構造を、複素環構造は炭素原子および1以上のヘテロ原子が環状に結合した構造をいう。
【0024】
ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数5〜25の、より好ましくは炭素数5〜10の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタアクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数9〜15の脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、芳香環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数9〜15の芳香環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられる。
【0027】
ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、複素環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数9〜15の複素環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
また、上記(メタ)アクリレートとは異なる、窒素原子を含有する単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド〔例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N,N−アクリロイルモルホリン等〕、N−ビニルラクタム類〔例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等〕、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、モデル材クリア組成物が含む単官能重合性モノマー(A1)としては、分子内に環状構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体が好ましい。単官能重合性モノマー(A1)が分子内に環状構造を有するものであると、環状構造を有さない他の単量体と比較して、得られる光造形物のガラス転移温度が高くなる傾向にあり、硬度や耐熱性をより効果的に改善し得る。本発明のモデル材クリア組成物が重合性化合物として単官能重合性モノマー(A1)を含む場合、ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、分子内に環状構造を有する単官能重合性モノマーの含有量は、単官能重合性モノマー(A1)の総質量に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、モデル材クリア組成物に含まれる全ての単官能重合性モノマー(A1)が分子内に環状構造を有するものであってもよい。特に、環状構造として多環型の環状構造を有するもの、および、架橋型の環状構造を有する単官能重合性モノマーを用いることにより、得られる光造形物の耐脆性の改善効果に優れる傾向にあるため、単官能重合性モノマー(A1)として多環型または架橋型の環状構造を有する単官能重合性モノマーを含むことが好ましい。単官能重合性モノマー(A1)は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
本発明の好ましい一態様においてモデル材クリア組成物は、単官能重合性モノマー(A1)として、(メタ)アクリレート系の単量体を含み、特に好ましくは、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリレート系の単量体を含む。分子内に環状構造を有する(メタ)アクリレート系の単量体としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートおよび環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートまたは環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、イソボルニルアクリレートが特に好ましい。中でも、分子内に脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリレート系単量体を含むことにより、他の芳香環構造や複素環構造を有する単量体と比較して、光造形物のガラス転移温度が高くなり、硬度や耐熱性に優れる。
【0031】
また、本発明の別の一態様においてモデル材クリア組成物は、単官能重合性モノマー(A1)として、アクリロイルモルホリンを含み得る。アクリロイルモルホリンはガラス転移温度が高く、高い硬化性を有するため、モデル材クリア組成物が重合性化合物としてアクリロイルモルホリンを含むことにより、得られる光立体造形物に高い硬度を付与することができる。また、アクリロイルモルホリンは希釈剤としても好適に機能するため、組成物の粘度を適度な範囲に維持したまま、得られる光造形物の耐脆性を向上させるために有用となるオリゴマー等の成分をモデル材クリア組成物中により多く配合し得るため、アクリロイルモルホリンを含むことにより、高い強度と適度な靱性とをバランスよく併せ持つ光造形物を得ることができる。さらに、本発明のモデル材クリア組成物を、後述するような水溶性のサポート材組成物と組み合わせて用いる場合、極性を有するモノマーであってサポート材を除去する除去溶剤として使用される水などの極性溶媒に溶けやすいアクリロイルモルホリンを、サポート材組成物に使用することができる。モデル材クリア組成物が、サポート材組成物に用いられるアクリロイルモルホリンを含むことにより、表面張力が高いためサポート材とモデル材との界面の混ざりを防ぎながら、サポート材とモデル材との極性を近づけることで、サポート材とモデル材の濡れ性を向上させることができる。このため、アクリロイルモルホリンをモデル材クリア組成物が含むことにより、光造形物の作製中において、モデル材とサポート材との境界を維持する効果が高くなるため、良好な寸法精度で光造形物を得ることができる。
【0032】
本発明のモデル材クリア組成物がアクリロイルモルホリンを含む場合、その含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に対して、好ましくは10〜70質量%である。アクリロイルモルホリンの含有量が上記下限値以上であると、得られる光造形物の硬度を効果的に向上させることができる。また、アクリロイルモルホリンの含有量が上記上限値以下であると、硬化収縮の度合を抑制しやすく、精度よく光造形物を得ることができる上に、光造形物の耐脆性を向上させ得る。本発明のモデル材クリア組成物において、アクリロイルモルホリンの含有量は、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。また、無色または無彩色で透明性の高い光造形物を得る観点からは、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0033】
本発明のモデル材クリア組成物において、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上である二官能重合性モノマー(以下、「二官能重合性モノマー(A2)」ともいう)は、ホモポリマーのガラス転移温度が25℃以上であり、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であって、分子内に重合性基を2つ有する重合性モノマーである。二官能重合性モノマー(A2)が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、光硬化における反応効率や反応速度等の観点から、二官能重合性モノマー(A2)が有する重合性基はラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基がより好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がさらに好ましい。
【0034】
本発明のモデル材クリア組成物において、二官能重合性モノマー(A2)は、好ましくは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上であり、分子内にエチレン性二重結合を2つ有する二官能エチレン性不飽和単量体である。具体的には、例えば、直鎖または分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、環状構造含有ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。二官能重合性モノマー(A2)は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
直鎖または分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、好ましくは、炭素数10〜20の直鎖または分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートであり、例えば、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート等が挙げられる。
【0036】
環状構造含有ジ(メタ)アクリレートは、好ましくは炭素数15〜30の環状構造含有ジ(メタ)アクリレートであり、例えば、エトキシ化(EO3mol)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、希釈性と反応性の観点から、(メタ)アクリレート系の単量体であることが好ましく、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートがさらに好ましく、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0038】
本発明において、重合性モノマー(A)はホモポリマーとした際に25℃以上のガラス転移温度を有するが、該ガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上である。ガラス転移温度が25℃以上であると、モデル材クリア組成物を光硬化して得られる光造形物に高い硬度を付与することができる。重合性モノマー(A)におけるガラス転移温度の上限は、特に限定されるものではないが、通常、200℃以下であり、好ましくは150℃以下である。なお、上記ガラス転移温度は、単官能重合性モノマー(A1)および二官能重合性モノマー(A2)において同様である。
【0039】
本発明のモデル材クリア組成物において、重合性モノマー(A)は、単官能重合性モノマー(A1)のみからなってもよく、二官能重合性モノマー(A2)のみからなってもよく、単官能重合性モノマー(A1)と二官能重合性モノマー(A2)とからなっていてもよい。通常、二官能重合性モノマー(A2)が多くなるほど、モデル材クリア組成物の硬化速度が速くなり、得られるモデル材の硬度が高くなる傾向にあり、単官能重合性モノマー(A1)と二官能重合性モノマー(A2)とを組み合わせて用いることにより、硬化性、機械的強度および硬度を制御しやすく、これらのバランスに優れたモデル材クリア組成物を得ることができる。
【0040】
本発明のモデル材クリア組成物における、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上である単官能または二官能の重合性モノマー(A)の含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、さらに特に好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。重合性化合物(A)の含有量が上記範囲であると、適度な希釈性と反応性を付与できる。なお、2種以上の重合性モノマー(A)を含む場合、上記範囲はその合計含有量に対する範囲を意味する。
【0041】
本発明のモデル材クリア組成物は、重合性化合物として、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が25℃未満である少なくとも1つの単官能または二官能重合性モノマー(以下、「重合性モノマー(B)」ともいう)を含むことが好ましい。重合性モノマー(B)は反応性希釈剤として機能するとともに、硬化収縮を抑えながら硬化性を促進し、光造形物の造形精度の向上に寄与する。特に、前述の重合性モノマー(A)と、好ましくは後述するオリゴマーとを組み合わせてモデル材クリア組成物を構成することにより、硬化性を制御しやすく、硬化収縮を抑えながら、得られる光造形物に高い硬度および耐脆性をバランスよく付与し得るモデル材クリア組成物を得ることができる。
【0042】
ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃未満である単官能重合性モノマー(以下、「単官能重合性モノマー(B1)」ともいう)は、ホモポリマーのガラス転移温度が25℃未満であり、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であって、分子内に重合性基を1つ有する重合性モノマーである。単官能重合性モノマー(B1)が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、光硬化における反応効率や反応速度等の観点から、単官能重合性モノマー(B1)が有する重合性基はラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基がより好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がさらに好ましい。
【0043】
ホモポリマーとして25℃未満のガラス転移温度を有し、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数5〜30の、より好ましくは炭素数9〜20の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、アルコキシ化ラウリルアクリレート等が挙げられる。
【0044】
ホモポリマーとして25℃未満のガラス転移温度を有し、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数8〜20の脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
【0045】
ホモポリマーとして25℃未満のガラス転移温度を有し、芳香環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数8〜20の芳香環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、2-フェノキシエチルアクリレート、エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート、アルコキシ化フェノールアクリレート等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、モデル材クリア組成物が含む単官能重合性モノマー(B1)としては、分子内に環状構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体が好ましい。分子内に環状構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体は、分子内に環状構造を有さない他の単量体と比較してモデル材の密着力の向上に寄与する傾向にある。例えば、造形時に硬化して得られるモデル材と印刷ステージや造形土台メディア等との密着性を高めることができるため、単官能重合性モノマー(B1)として分子内に環状構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体を含むことにより造形中の反りの抑制効果や造形中の硬化収縮によりモデル材が造形土台から剥がれるなどして造形不良となることを抑制する効果が期待できる。本発明のモデル材クリア組成物が重合性化合物として単官能重合性モノマー(B1)を含む場合、ホモポリマーとして25℃未満のガラス転移温度を有し、分子内に環状構造を有する単官能重合性モノマーの含有量は、単官能重合性モノマー(B1)の総質量に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、モデル材クリア組成物に含まれる全ての単官能重合性モノマー(B1)が分子内に環状構造を有するものであってもよい。単官能重合性モノマー(B1)として、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
本発明の好ましい一態様においてモデル材クリア組成物は、単官能重合性モノマー(B1)として、(メタ)アクリレート系の単量体を含み、特に好ましくは、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリレート系の単量体を含む。
【0048】
本発明のモデル材クリア組成物において、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃未満である二官能重合性モノマー(以下、「二官能重合性モノマー(B2)」ともいう)は、ホモポリマーのガラス転移温度が25℃未満であり、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であって、分子内に重合性基を2つ有する重合性モノマーである。二官能重合性モノマー(B2)が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、光硬化における反応効率や反応速度等の観点から、二官能重合性モノマー(B2)が有する重合性基はラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基がより好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がさらに好ましい。
【0049】
本発明のモデル材クリア組成物において、二官能重合性モノマー(B2)は、好ましくは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃未満であり、分子内にエチレン性二重結合を2つ有する二官能エチレン性不飽和単量体である。具体的には、例えば、直鎖または分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、環状構造含有ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。二官能重合性モノマー(B2)は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
本発明のモデル材クリア組成物において用いる二官能重合性モノマー(B2)としては、例えば、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシ化(2)ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジメタクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
【0051】
本発明において、重合性モノマー(B)はホモポリマーとした際に25℃未満のガラス転移温度を有するが、該ガラス転移温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。ガラス転移温度が25℃未満であると、硬化収縮を低減することができ、ガラス転移温度25℃以上の重合性モノマーと組み合わせることで造形物の硬化収縮を最適化できる。重合性モノマー(B)におけるガラス転移温度の下限は、特に限定されるものではないが、通常−70℃以上であり、好ましくは−20℃以上である。なお、上記ガラス転移温度は、単官能重合性モノマー(B1)および二官能重合性モノマー(B2)、並びに、後述する多官能重合性モノマー(B3)において同様である。
【0052】
本発明のモデル材クリア組成物において、重合性モノマー(B)は、単官能重合性モノマー(B1)のみからなってもよく、二官能重合性モノマー(B2)のみからなってもよく、単官能重合性モノマー(B1)と二官能重合性モノマー(B2)とからなっていてもよい。通常、二官能重合性モノマー(B2)が多くなるほど、モデル材クリア組成物の硬化速度が速くなり、得られるモデル材の硬度が高くなる傾向にあり、単官能重合性モノマー(B1)と二官能重合性モノマー(B2)とを組み合わせて用いることにより、硬化性、機械的強度および硬度を制御しやすく、これらのバランスに優れたモデル材クリア組成物を得ることができる。
【0053】
本発明のモデル材クリア組成物における、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃未満である単官能または二官能の重合性モノマー(B)の含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上、さらに特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。重合性化合物(B)の含有量が上記範囲であると、適度な希釈性と反応性を付与できる。なお、2種以上の重合性モノマー(B)を含む場合、上記範囲はその合計含有量に対する範囲を意味する。
【0054】
さらに、本発明のモデル材クリア組成物は、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃未満である三官能以上の多官能重合性モノマー(以下、「多官能重合性モノマー(B3)」ともいう)を含んでいてもよい。多官能重合性モノマー(B3)は、ホモポリマーのガラス転移温度が25℃未満であり、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であって、分子内に重合性基を3つ以上有する重合性モノマーである。一般に、多官能重合性化合物を配合することにより得られる光造形物の硬度が高くなる一方、硬化収縮が生じやすくなる傾向にあるが、多官能重合性化合物として多官能重合性モノマー(B3)を用いることにより硬化収縮を抑制しながら光造形物の硬度を適度に高めることができる。本発明のモデル材クリア組成物が多官能重合性化合物を含む場合、多官能重合性化合物として多官能重合性モノマー(B3)を用いることが好ましく、多官能重合性化合物が多官能重合性モノマー(B3)のみであることがより好ましい。多官能重合性モノマーを含むことにより得られる光造形物の硬度が高くなる傾向にあり、多官能重合性モノマーの含有量が多くなると硬化収縮が生じやすくなるが、多官能重合性モノマーとして、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃未満である多官能重合性モノマー(B3)を用いることにより、ガラス転移温度が25℃以上である多官能重合性モノマーを用いる場合よりも硬化収縮を和らげることができる。多官能重合性モノマー(B3)が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、光硬化における反応効率や反応速度等の観点から、多官能重合性モノマー(B3)が有する重合性基はラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基がより好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がさらに好ましい。
【0055】
本発明のモデル材クリア組成物において、多官能重合性モノマー(B3)は、好ましくは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃未満であり、分子内にエチレン性二重結合を3つ以上有する多官能エチレン性不飽和単量体である。具体的には、例えば、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。多官能重合性モノマー(B3)として、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
本発明のモデル材クリア組成物が多官能重合性モノマー(B3)を含む場合、その含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。多官能重合性モノマー(B3)の含有量が上記上限以下であれば、得られる光造形物の硬度を上げ過ぎることなく、硬化収縮を効果的に抑制し得るモデル材クリア組成物を得ることができる。多官能重合性モノマー(B3)の含有量の下限値は特に限定されるものではなく、本発明のモデル材クリア組成物は多官能重合性モノマー(B3)を全く含まなくてもよい(すなわち、0質量%)。
【0057】
本発明のモデル材クリア組成物は、重合性化合物として、オリゴマーを含むことが好ましい。オリゴマーは、活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分である。オリゴマーを配合することにより、得られる光造形物の破断強度を高め、適度な靱性を有し、曲げても割れにくい光造形品を得ることができる。
ここで、本明細書中において「オリゴマー」とは、重量平均分子量Mwが500〜10,000のものをいう。オリゴマーの好ましい重量平均分子量Mwは800以上であり、より好ましくは1,000を超えるものをいう。重量平均分子量Mwは、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。オリゴマーとして1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。オリゴマーとしては、二官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、二官能オリゴマーがより好ましい。また、材料選択の幅が広く、様々な特性を有する材料を選択できる観点から、好ましくはウレタン基を有するオリゴマーであり、より好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、さらに好ましくはウレタンアクリレートオリゴマーである。
【0059】
オリゴマーのガラス転移温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。オリゴマーのガラス転移温度が上記範囲内であると、硬度を維持したまま粘り強い光造形物が作成できる。
【0060】
本発明のモデル材クリア組成物がオリゴマーを含有する場合、その含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に対して、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、また、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。オリゴマーの含有量が上記上限下限の範囲内にあると、モデル材クリア組成物の粘度を適度な範囲に維持したまま、得られる光造形物の破断強度を高め、適度な靱性を有し、曲げても割れにくい光造形品を得ることができる。
【0061】
本発明のモデル材クリア組成物は、重合性化合物として少なくとも1種の単官能重合性化合物または二官能重合性化合物を含むことが好ましい。本発明のモデル材クリア組成物を構成する単官能重合性化合物および/または二官能重合性化合物は、得られるモデル材クリア組成物のガラス転移温度が所望の温度となるよう、当該分野において従来公知の重合性化合物から、例えば、先に例示した重合性モノマー(A)および(B)、並びに、オリゴマー等から適宜選択することができる。
【0062】
本発明のモデル材クリア組成物における単官能重合性化合物および二官能重合性化合物の含有量は、重合性化合物の総質量に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、モデル材クリア組成物を構成する重合性化合物が全て単官能重合性化合物および/または二官能重合性化合物であってもよい。モデル材クリア組成物における単官能重合性化合物および二官能重合性化合物の含有量が上記下限以上であると、得られる光造形物の硬度を制御し易く、適度な硬度を付与しながら、硬化収縮を効果的に抑制し得るモデル材クリア組成物を得ることができる。
【0063】
言い換えると、本発明のモデル材クリア組成物が多官能重合性化合物を含む場合、単官能重合性化合物および二官能重合性化合物の含有量が多官能重合性化合物の含有量より多いことが好ましい。具体的には、本発明のモデル材クリア組成物に含まれる多官能重合性化合物の含有量は、重合性化合物の総質量に対して、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%未満、さらに好ましくは10質量%未満、特に好ましくは5質量%未満である。また、本発明の一態様において、モデル材クリア組成物は多官能重合性化合物を全く含んでいなくてもよい。
【0064】
本発明のモデル材クリア組成物のガラス転移温度は、好ましくは30〜70℃である。モデル材クリア組成物のガラス転移温度が上記範囲内であると、硬化収縮を効果的に抑制しながら、精度よく、適度な硬度を有する光造形物を得ることができる。モデル材クリア組成物のガラス転移温度は、例えば、これを構成する重合性化合物の種類やその量、組み合わせ等により制御することができる。例えば、重合性モノマー(A)と重合性モノマー(B)とを組み合わせて含むことにより、モデル材クリア組成物のガラス転移温度が制御しやすくなり、所望の硬度を有する光造形物を得やすくなるとともに、必要に応じてオリゴマーをさらに含むことにより、得られる光造形物の靱性も制御しやすくなる。本発明のモデル材クリア組成物のガラス転移温度は、より好ましくは35℃以上であり、また、より好ましくは65℃以下である。
なお、重合性化合物およびモデル材クリア組成物のガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0065】
本発明のモデル材クリア組成物における重合性化合物の含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に対して、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、また、好ましくは99.9質量%以下であり、より好ましくは99.5質量%以下である。
【0066】
モデル材クリア組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、保存安定剤、表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤、希釈溶媒、増粘剤等の添加剤を含有し得る。
【0067】
表面調整剤は、モデル材クリア組成物の表面張力を適切な範囲に調整する成分であり、その種類は特に限定されない。モデル材クリア組成物の表面張力を適切な範囲にすることで、吐出性を安定化させることができるとともに、モデル材クリア組成物とサポート材組成物との界面混じりを抑制することができる。その結果、寸法精度が良好な造形物を得ることができる。
【0068】
表面調整剤としては、例えば、シリコーン系化合物等が挙げられる。シリコーン系化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーン系化合物等が挙げられる。具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリアラルキル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらとして、商品名でBYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570(以上、ビックケミー社製)、TEGO−Rad2100、TEGO−Rad2200N、TEGO−Rad2250、TEGO−Rad2300、TEGO−Rad2500、TEGO−Rad2600、TEGO−Rad2700(以上、デグサ社製)、グラノール100、グラノール115、グラノール400、グラノール410、グラノール435、グラノール440、グラノール450、B−1484、ポリフローATF−2、KL−600、UCR−L72、UCR−L93(共栄社化学社製)等を用いてもよい。また、シリコーン系化合物以外の表面調整剤(例えば、フッ素系表面調整剤等)を用いてもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
モデル材クリア組成物が表面調整剤を含有する場合、その含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。表面調整剤の含有量が上記の範囲内である場合、モデル材クリア組成物の表面張力を適切な範囲に調整しやすい。
【0070】
保存安定剤は、モデル材クリア組成物の保存安定性を高めることができる成分である。また、熱エネルギーにより重合性化合物が重合することで生じるヘッド詰まりを防止することができる。保存安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物(HALS)、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ニトロソアミン系化合物等が挙げられる。具体的には、ハイドロキノン、メトキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、IRGASTAB UV-10、IRGASTAB UV-22、FIRSTCURE ST−1(ALBEMARLE社製)、t−ブチルカテコール、ピロガロール、BASF社製のTINUVIN 111 FDL、TINUVIN 144、TINUVIN 292、TINUVIN XP40、TINUVIN XP60、TINUVIN 400等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
モデル材クリア組成物が保存安定剤を含有する場合、上記効果を得やすい観点から、その含有量はモデル材クリア組成物100質量部に対して、好ましくは0.05〜3質量部であり、より好ましくは0.1〜2質量部である。
【0072】
本発明のモデル材クリア組成物は、着色剤を含まないか、またはブルーイング剤等の顔料および/または染料を少量含むのみである、高い透明性を有するクリア組成物である。モデル材クリア組成物における着色剤の含有量は、モデル材クリア組成物の総質量に基づいて、通常0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下であり、その下限は0質量%以上である。
【0073】
本発明のモデル材クリア組成物は、光硬化して得られる光造形物に高い透明性や透過性を付与するとともに、硬化収縮抑制効果に優れるため、本発明のモデル材クリア組成物から形成される造形物の硬化収縮変形度は15mm以下であり、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは5mm以下である。本発明のモデル材クリア組成物は、着色し難く、硬化収縮変形も生じ難いため、優れた外観や高い造形精度を求められる複雑で緻密な立体造形物の作製に好適に用いることができる。なお、硬化収縮変形度が低いほど精度よく立体光造形物を得ることができるため、硬化収縮変形度の下限値は理想的には0mmである。
【0074】
本発明において、上記硬化収縮変形度は、以下の手順に従い測定される値を意味する。
PETフィルム上に設けた100mm×100mm×1mmの枠内にモデル材クリア組成物を流し入れ、該組成物を光照射により硬化させて得られる硬化物が硬化前と比較して硬化収縮により変形し、PETフィルム面から上方に反った高さを測定する。反った高さの変位量として硬化収縮変形度を算出する。なお、詳細な測定方法は、後述の実施例に記載する。
【0075】
本発明のモデル材クリア組成物は、マテリアルジェット光造形法に用いるため、25℃で1mPa・s以上500mPa・s未満の粘度を有することが好ましい。マテリアルジェットノズルからの吐出性を良好にする観点から、25℃における粘度が20〜400mPa・sであることが好ましく、20〜300mPa・sであることがより好ましい。上記粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。モデル材クリア組成物の粘度は、重合性化合物の種類およびその配合比率、希釈溶媒や増粘剤の種類およびその添加量等を調整することにより制御することができる。
【0076】
本発明のモデル材クリア組成物の表面張力は、好ましくは24〜34mN/mであり、より好ましくは28〜30mN/mである。表面張力が上記範囲内であると、マテリアルジェットの高速吐出時においてもノズルからの吐出液滴を正常に形成することができ、適切な液滴量や着弾精度を確保することやサテライトの発生を抑制することが可能であり、造形精度を向上させやすくなる。本発明においてモデル材クリア組成物の表面張力は、表面調整剤の種類およびその配合量等を調整することにより制御することができる。
【0077】
本発明のモデル材クリア組成物の製造方法は特に限定されず。例えば、混合攪拌装置等を用いて、モデル材クリア組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
【0078】
<マテリアルジェット光造形用組成物セット>
複雑な形状や緻密な形状を高い精度で造形するために、本発明のモデル材クリア組成物は、立体造形中にモデル材を支持するためのサポート材と組み合わせて用いることが好ましい。したがって、本発明は、本発明のモデル材クリア組成物と、マテリアルジェット光造形法によりサポート材を造形するためのサポート材組成物とを含んでなるマテリアルジェット光造形用組成物セットも対象とする。
【0079】
<サポート材組成物>
サポート材組成物は、光硬化によりサポート材を与える、サポート材用の光硬化性組成物である。モデル材を作成後、サポート材をモデル材(光造形物)から物理的に剥離することにより、または、サポート材を有機溶媒もしくは水に溶解させることにより、モデル材から除去することができ、モデル材クリア組成物から形成された光造形物が得られる。本発明のモデル材クリア組成物は、サポート材組成物として従来公知の種々の組成物との組み合わせにおいて用いることができるが、サポート材を除去する際にモデル材を破損することがなく、環境に優しく、細部まできれいにかつ容易にサポート材を除去することができるため、本発明の光造形用組成物セットを構成するサポート材組成物は水溶性であることが好ましい。
【0080】
そのような水溶性のサポート材組成物としては、例えば、アクリロイルモルホリン並びにポリアルキレングリコールを含むものが挙げられる。
【0081】
サポート材組成物がアクリロイルモルホリンを含むことにより、水溶解性に優れたサポート材を得ることができる。また、例えば、モデル材クリア組成物とサポート材組成物がともにアクリロイルモルホリンを含む場合、得られるモデル材(光造形物)には高い硬度を付与しつつ、硬度が上がり反りやすくなる傾向にあるモデル材クリア組成物を、高い硬度を有するサポート材が強固に支持することで、反りを生じ難く、良好な寸法精度で光造形物を得ることができる。
【0082】
サポート材組成物に含まれるアクリロイルモルホリンの含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、20〜90質量部であることが好ましく、より好ましくは30質量部以上であり、さらに好ましくは40質量部以上であり、より好ましくは80質量部以下であり、さらに好ましくは70質量部以下である。アクリロイルモルホリンの含有量が上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させることなく、サポート材の水による除去性を向上させることができる。
【0083】
本発明において、サポート材組成物は、アクリロイルモルホリンに加えて、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体を含んでいてもよい。水溶性の単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、炭素数5〜15の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等〕、数平均分子量(Mn)200〜1,000の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、PEG−PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等〕、炭素数3〜15の(メタ)アクリルアミド誘導体〔例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等〕等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
サポート材組成物が水溶性単官能エチレン性不飽和単量体を含む場合、その含有量は、上記サポート材組成物100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。水溶性単官能エチレン性不飽和単量体の含有量が上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させることなく、サポート材の水による除去性を向上させることができる。
【0085】
サポート材組成物に含まれるポリアルキレングリコールとしては、オキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を有する、直鎖型、多鎖型の化合物が挙げられる。オキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールを含むことにより、サポート材のサポート力を低下させずに水除去性をより向上し得ることができる。また、水に溶解するものであれば、末端にアルキル基を含んでいてもよく、例えば、好ましくは炭素数6以下のアルキル鎖を含んでいてもよい。
【0086】
このようなオキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールとして、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
オキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールの数平均分子量(M)は、100〜5000であることが好ましく、より好ましくは200〜3000である。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が上記範囲内であると、硬化前の組成物中ではアクリロイルモルホリンや水溶性単官能エチレン性不飽和単量体と相溶しやすくなる一方、光照射後のアクリロイルモルホリンや水溶性単官能エチレン性不飽和単量体の硬化物とは相溶し難くなり、サポート材の水または水溶性溶剤による除去が容易になる。
【0088】
サポート材組成物におけるオキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールの含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、例えば、20〜95質量部であってよく、好ましくは20質量部以上であり、好ましくは49質量部以下である。オキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールの含有量が、上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させずにサポート材の水または水溶性溶媒による除去性を向上させることができる。
【0089】
さらに、サポート材組成物は水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。水溶性有機溶剤は、サポート材組成物を光硬化させて得られるサポート材の水への溶解性を向上させる成分である。また、サポート材組成物を低粘度に調整する機能も有する。
【0090】
水溶性有機溶剤としては、グリコール系溶剤を用いることが好ましく、具体的には、例えば、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアセテート、テトラエチレングリコールモノアセテート、テトラプロピレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテートなどのグリコールエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールモノエーテルアセテート系溶剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
中でも、低粘度のサポート材組成物を調製しやすく、また、硬化して得られるサポート材が水溶解性に優れる点から、水溶性有機溶剤としては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0092】
サポート材組成物における水溶性有機溶剤の含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、35質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、また、より好ましくは30質量部以下である。水溶性有機溶剤の含有量が、上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させずにサポート材の水または水溶性溶媒による除去性を向上させることができる。
【0093】
また、サポート材組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、紫外線、近紫外線または可視光領域の波長の光を照射するとラジカル反応を促進する化合物であれば、特に限定されない。光重合開始剤としては、例えば、炭素数14〜18のベンゾイン化合物〔例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等〕、炭素数8〜18のアセトフェノン化合物〔例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等〕、炭素数14〜19のアントラキノン化合物〔例えば、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等〕、炭素数13〜17のチオキサントン化合物〔例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等〕、炭素数16〜17のケタール化合物〔例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等〕、炭素数13〜21のベンゾフェノン化合物〔例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等〕、炭素数22〜28のアシルフォスフィンオキサイド化合物〔例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド〕、これらの化合物の混合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、光重合開始剤としては、市販されている製品を用いてもよく、例えば、BASF社のIRGACURE TPO等が挙げられる。
【0094】
サポート材組成物における光重合開始剤の含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは1〜5質量部である。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、未反応の重合成分を十分に低減させて、サポート材の硬化性を十分に高めやすい。
【0095】
本発明におけるサポート材組成物の粘度は、マテリアルジェットノズルからの吐出性を良好にする観点から、25℃において1〜500mPa・sであることが好ましく、20〜400mPa・sであることがより好ましい。上記粘度の測定は、JIS Z 8 803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。
【0096】
本発明において、サポート材組成物の表面張力は、好ましくは24〜30mN/mであり、より好ましくは24.5〜29.5mN/mであり、さらに好ましくは25〜29mN/mである。表面張力が上記範囲内であると、ノズルからの吐出液滴を正常に形成することができ、適切な液滴量や着弾精度を確保することやサテライトの発生を抑制することが可能であり、高い造形精度を確保しやすくなる。なお、サポート材組成物の表面張力は、モデル材クリア組成物における表面張力の測定方法と同様の方法に従い測定することができる。
【0097】
本発明において、サポート材組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、混合攪拌装置等を用いて、サポート材組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
【0098】
<光造形物の製造方法>
マテリアルジェット方式による光造形法により、本発明のモデル材クリア組成物から立体造形物を製造することができる。特に、本発明のモデル材クリア組成物は、波長360〜410nmの範囲にピーク波長を有する、従来一般に広く使用されているLED光源を用いるマテリアルジェット光造形法に好適である。本発明のモデル材クリア組成物により光造形物を製造する方法としては、マテリアルジェット方式による光造形法により立体造形物を製造する方法である限り特に限定されないが、モデル材クリア組成物を光硬化させてモデル材を得ると共に、サポート材組成物を光硬化させてサポート材を得る工程と、モデル材からサポート材を除去する工程とを含む方法が好ましい。
【0099】
具体的には、例えば、作製する物体の3次元CADデータをもとに、マテリアルジェット方式で積層して立体造形物を構成するモデル材クリア組成物のデータ、および、作製途上の立体造形物を支持するサポート材組成物のデータを作製し、さらにマテリアルジェット方式の3Dプリンタで各組成物を吐出するスライスデータを作製し、作製したスライスデータに基づきモデル材クリア組成物およびサポート材組成物をそれぞれ吐出後、光硬化処理を層ごとに繰り返し、モデル材クリア組成物の硬化物(モデル材)およびサポート材組成物の硬化物(サポート材)からなる造形物を作製することができる。
【0100】
モデル材クリア組成物およびサポート材組成物を硬化させる光としては、例えば、遠赤外線、赤外線、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、α線、γ線およびエックス線等の活性エネルギー線が挙げられる。これらの中でも、硬化作業の容易性および効率性の観点から、近紫外線または紫外線であることが好ましくい。
【0101】
光源としては、従来公知の高圧水銀灯、メタルハライドランプを用いてもよいが、設備を小型化することができ、かつ、消費電力が小さいという観点からは、LED方式であることが好ましい。特に、本発明のモデル材クリア組成物は、ピーク波長が360nm〜410nmの範囲にあるLED光源を用いて硬化させた場合の着色抑制効果および硬化収縮抑制効果に優れるため、ピーク波長が360nm〜410nmの範囲にあるLEDを光源として用いることが好ましく、光が深層まで届きやすくなり、造形物の硬度および寸法精度を向上させることができることから、中心波長が385〜410nmのUV-LEDを用いることが好ましい。光量は、造形品の硬度および寸法精度の観点から、200〜500mJ/cmが好ましい。
【0102】
立体造形物を構成する各層の厚みは、造形精度の観点からは薄いほうが好ましいが、造形速度とのバランスからは5〜30μmが好ましい。
【0103】
モデル材とサポート材とが組み合わされた造形物からサポート材を除去してモデル材からなる光造形品を得ることができる。サポート材の除去は、例えば、サポート材を溶解させる除去溶剤に得られた造形物を浸漬し、サポート材を柔軟にした後、ブラシなどでモデル材表面からサポート材を除去して行うことが好ましい。サポート材の除去溶剤には水、水溶性溶剤、例えばグリコール系溶剤、アルコール系溶剤などを用いてもよい。これらは、単独で、あるいは複数用いてもよい。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0105】
1.モデル材クリア組成物
実施例において用いたモデル材クリア組成物を構成する成分の詳細および略号を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
(1)モデル材クリア組成物の調製
表2に示す各組成に従い、各モデル材クリア組成物を構成する成分を、それぞれ、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、実施例1〜3および比較例1〜7のモデル材クリア組成物を調製した。
【0108】
(2)モデル材クリア組成物の物性
上記実施例および比較例において調製した各モデル材クリア組成物の粘度およびガラス転移温度を、以下に示す方法に従い測定した。結果を表2に示す。
【0109】
<粘度の測定>
各モデル材クリア組成物の粘度は、R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃、コーン回転数5rpmの条件下測定した。
【0110】
<ガラス転移温度の測定>
各モデル材クリア組成物のガラス転移温度は、TG−DTA2000S Thermo Plus Evo II、DSC8230(株式会社リガク社製)を用いて測定した。測定は、昇温温度10℃/分、測定温度範囲−60℃〜200℃の範囲で行った。
【0111】
(3)モデル材クリア組成物の硬化物の物性および特性の評価
上記実施例および比較例において調製したモデル材クリア組成物から硬化物を作製し、各硬化物の物性および特性を、以下に示す方法に従い評価した。各結果を表2に示す。
【0112】
<モデル材クリア組成物の硬化物の作製>
シリコンゴムシート(厚さ1mm、十川ゴム社製食品産業用ゴムシート(K-125<50>)を120mm×120mmの長方形に切り取った後、該長方形の中心部分から、100mm×100mmの正方形をくり抜くことにより、正方形の枠を作製した。次いで、東レ社製PETフィルム(ルミラーS−10#25 厚さ23μm)の上に、前記正方形の枠を圧着して貼り付けることにより、型を作製した。前記型の枠内に、実施例および比較例のモデル材クリア組成物を10g流し入れ、紫外線照射装置(LEDランプ、385nm、照射光量:500mJ/cm)を用いて照射した。硬化物をシリコンゴムシート(正方形の枠)から取り出すことにより、実施例および比較例の評価用サンプルを作製した。前記評価用サンプルを用いて、硬化性、着色評価および硬化収縮の評価を行った。
【0113】
<硬化性>
上記方法で作製したモデル材クリア組成物の硬化物における硬化性を、以下の基準に従い評価した。
○:硬化して、固体となった。
×:液状のままであった、または、表面にタック感が残った(触ると指紋がつく)。
【0114】
<着色の評価>
作製した硬化物を白色PETフィルム(帝人社製テイジンテトロンフィルムU292W)上に置き、フィルム上の硬化物上面より分光測色計X−Rite939(エックスライト社製)にて条件:光源D65、視野角10°にて色相L*a*b*の値を測定した。黄変の着色を示す黄色味を示す数値であるb*を確認し、b*<2であれば黄色の着色が少ない(評価:○)と判定した。
【0115】
<硬化収縮変形度の測定>
上記方法に従いモデル材クリア組成物から硬化物を作製し、硬化前と比較して得られた硬化物が最大に反った部分の設置面からの高さ(PETフィルム面から硬化物の上面までの高さ)を計測し、硬化物(1mm)の厚みを引いた値を変位量(mm)として算出し、硬化収縮変形度とした。値が大きいほど硬化収縮が大きいと評価される。
【0116】
【表2】
【0117】
表2の結果から明らかな通り、ジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセンから選択される増感剤を含む本発明のモデル材クリア組成物(実施例1〜4)では、385nmのLED光源により、硬化収縮を抑えながら、着色のない光造形物が得られた。一方、増感剤を含まない(比較例3)、または、ジアルコキシアントラセンおよびビスアルカノイルオキシアントラセン以外の増感剤を用いた(比較例7)モデル材クリア組成物では、385nmのLED光源によりモデル材クリア組成物が硬化しなかった。