【解決手段】第1の基材A1と第2の基材2との界面が接合部3により接合している構造を有する伸長性複合材料であって、前記第2の基材2の片面側に前記第1の基材A1を有し、前記第1の基材A1と前記第2の基材2とは、いずれも伸長性基材であり、前記伸長性複合材料に対して設定した伸長方向において、前記第1の基材A1の50%伸長時の永久歪が2.5〜25%であり、前記第2の基材2の50%伸長時の永久歪が0〜10%であり、前記第1の基材A1の永久歪は前記第2の基材2の永久歪よりも2.5%以上大きく、前記接合部3は、間隔を空けてパターン状に設けられており、且つ、前記接合部3どうしの間は非接合部4であることを特徴とする伸長性複合材料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1をはじめとする従来技術では、伸長しない不織布に伸縮部材(糸ゴム、伸縮フィルム等)を伸長状態で貼り合わせた後に伸長状態を解き、伸縮部材が収縮することによりギャザー状凹凸構造を形成しているため、得られた製品は既にギャザー状凹凸構造を有しており、製品の梱包時、輸送時等にかさばるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑みて完成されたものであり、梱包時、輸送時等にかさばらず、使用時に伸長動作により片面又は両面に風合いの良いギャザー状凹凸構造を容易に形成することができる伸長性複合材料を提供することを目的とする。
【0007】
なお、「伸長動作」とは、伸長性複合材料に対して設定した伸長方向に対して、伸長率が0%よりも大きく伸長させた時の動作(詳細には伸長後に伸長状態を解くまで)を意味し、「伸長率」とは、自然長状態を0%とした時の伸びの割合を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の永久歪特性を有する複数の基材どうしの界面を特定の接合部により接合している構造を有する伸長性複合材料が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の伸長性複合材料に関する。
1.第1の基材Aと第2の基材との界面が接合部により接合している構造を有する伸長性複合材料であって、前記第2の基材の片面側に前記第1の基材Aを有し、
(1)前記第1の基材Aと前記第2の基材とは、いずれも伸長性基材であり、前記伸長性複合材料に対して設定した伸長方向において、前記第1の基材Aの50%伸長時の永久歪が2.5〜25%であり、前記第2の基材の50%伸長時の永久歪が0〜10%であり、前記第1の基材Aの永久歪は前記第2の基材の永久歪よりも2.5%以上大きく、
(2)前記接合部は、間隔を空けてパターン状に設けられており、且つ、前記接合部どうしの間は非接合部である、
ことを特徴とする伸長性複合材料。
2.前記伸長性複合材料に伸長動作を加えた際に、前記第1の基材Aの前記非接合部がギャザー状凹凸構造を形成する、上記項1に記載の伸長性複合材料。
3.前記界面における前記接合部の面積率が20〜80%である、上記項1又は2に記載の伸長性複合材料。
4.前記第2の基材の他面側に第1の基材Bを更に有し、前記第2の基材と前記第1の基材Bとの界面が接合部により接合している構造を有しており、
前記第1の基材Bは、伸長性基材であり、前記伸長方向において、前記第1の基材Bの50%伸長時の永久歪が2.5〜25%であり、前記第1の基材Bの永久歪は前記第2の基材の永久歪よりも2.5%以上大きい、
上記項1〜3のいずれかに記載の伸長性複合材料。
5.上記項4に記載の前記接合部は、間隔を空けてパターン状に設けられており、且つ、前記接合部どうしの間は非接合部である、上記項4に記載の伸長性複合材料。
6.上記項5に記載の前記界面における前記接合部の面積率が20〜80%である、上記項5に記載の伸長性複合材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の伸長性複合材料は、特定の永久歪特性を有する複数の基材どうしの界面を特定の接合部により接合している構造を有し、使用前の製品状態ではギャザー状凹凸構造を有しておらず製品形状の見栄えが良く、梱包時、輸送時等にかさばらず、使用時に伸長動作により片面又は両面に風合いの良いギャザー状凹凸構造を容易に形成することができる。このような本発明の伸長性複合材料は、おむつをはじめとする各種の衛生製品のウエスト部分などに幅広く利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の伸長性複合材料について詳細に説明する。なお、以下の説明において、「A〜B」で示される数値範囲は、特に断らない限り「A以上B以下」を意味する。
【0013】
本発明の伸長性複合材料は、第1の基材Aと第2の基材との界面が接合部により接合している構造を有する伸長性複合材料であって、前記第2の基材の片面側に前記第1の基材Aを有し、
(1)前記第1の基材Aと前記第2の基材とは、いずれも伸長性基材であり、前記伸長性複合材料に対して設定した伸長方向において、前記第1の基材Aの50%伸長時の永久歪が2.5〜25%であり、前記第2の基材の50%伸長時の永久歪が0〜10%であり、前記第1の基材Aの永久歪は前記第2の基材の永久歪よりも2.5%以上大きく、
(2)前記接合部は、間隔を空けてパターン状に設けられており、且つ、前記接合部どうしの間は非接合部である、
ことを特徴とする。
【0014】
上記特徴を有する本発明の伸長性複合材料は、特定の永久歪特性を有する複数の基材どうしの界面を特定の接合部により接合している構造を有し、使用前の製品状態ではギャザー状凹凸構造を有しておらず製品形状の見栄えが良く、梱包時、輸送時等にかさばらず、使用時に伸長動作により片面又は両面に風合いの良いギャザー状凹凸構造を容易に形成することができる。このような本発明の伸長性複合材料は、おむつをはじめとする各種の衛生製品のウエスト部分などに幅広く利用することができる。
【0015】
なお、本発明の伸長性複合材料は、永久歪特性の異なる第1の基材と第2の基材との界面を実質的に非伸長状態で接合部により接合している構造を有するものであり、第2の基材の片面に第1の基材Aのみを有する構造であってもよく、第2の基材の他面に第1の基材Bを更に有する構造であってもよい。そして、少なくとも第1の基材Aと第2の基材との界面に特定の接合部が間隔を空けてパターン状に設けられていることにより(前記接合部どうしの間は非接合部である)、伸長性複合材料の伸長動作により第1の基材Aの非接合部がギャザー状凹凸構造に変化する。
【0016】
また、第1の基材Bは、第1の基材Aと同様に伸長性複合材料の伸長動作によりギャザー状凹凸構造に変化するように設定してもよく、ギャザー状凹凸構造が形成されないか又はその凹凸程度を小さく設定することにより伸長動作後の第1の基材A及び第1の基材Bの風合いが異なるように設定してもよい。例えば、第1の基材Aと第2の基材との界面の接合部は当該界面に印加された外部刺激(例えば、紫外線照射、熱印加、超音波照射等)及び接合するための加圧(例えば、ニップロールによる加圧等)により形成できるが、第2の基材と第1の基材Bとの界面をホットメルト接着剤などで接合パターンを形成することにより他面と異なる構成にすることができ、これにより風合いを異ならせて、おむつをはじめとする各種の衛生製品において、内側(肌側)と外側とで異なる感触や形状(意匠性)を付与することができる。
【0017】
以下、「接合部」の用語のうち、第1の基材A(任意に及びB)と第2の基材との界面に間隔を空けてパターン状に設けられており、且つ、前記接合部どうしの間が非接合部であるものを特に「本発明の接合部」ともいう。
【0018】
以下、各構成材料について詳細に説明する。
【0019】
第1の基材A、B
第1の基材A、Bは、それぞれ少なくとも一軸方向に伸長可能な伸長性材料であり、伸長性複合材料に対して設定した伸長方向において、50%伸長時の永久歪が2.5〜25%であり、好ましくは10〜20%である特性を有する。なお、伸長方向については、伸長性複合材料を伸長させた際に伸長方向と垂直方向にギャザー状凹凸構造が形成される関係にある(
図1と
図2、
図3と
図4の関係)。具体例を挙げて説明すると、例えば本発明の伸長性複合材料をおむつをはじめとする各種の衛生製品のウエスト部分などに適用する場合には、ウエスト部分を広げる方向が伸長性複合材料の伸長方向となる。
【0020】
なお、本明細書における永久歪の値は、伸長方向に直交する方向に25mm、伸長方向に100mm(つかみ具間距離は50mm)の試験片を作製し、島津製作所製の卓上形精密万能試験機「オートグラフAGS−X」を使用して引張速度300mm/分で50%伸長した後の上記つかみ具間距離を測定し、伸長前の初期つかみ具間距離に対する弛緩できない長さ(初期つかみ具間距離よりも伸びて長くなった部分の長さ)の割合(%)を求め、これを永久歪とした。
【0021】
つまり、〔(50%伸長後の長さ−初期の長さ)/初期の長さ〕×100(%)である。
【0022】
第1の基材A、Bは、それぞれの永久歪特性、及び後記する第2の基材に対して永久歪が2.5%以上大きいという要件を満たす限り、AとBは同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。また、実施形態の一つとして、第2の基材の片面に第1の基材Aを形成した場合には(
図1;界面には本発明の接合部3を有する)、伸長動作によりギャザー状凹凸構造1aを第2の基材2aの片面に形成することができる(
図2)。また、他の実施形態の一つとして第2の基材の両面に第1の基材A、Bをそれぞれ形成した場合には(
図3:両界面には本発明の接合部3をそれぞれ有する)、伸長動作によりギャザー状凹凸構造1aを第2の基材2aの両面にそれぞれ形成することができる(
図4)。なお、他の実施形態の一つとして、第2の基材の片面に第1の基材Aを
図1及び
図3と同様に形成し、第1の基材Bと第2の基材との界面をホットメルト接着剤で接合(例えばカーテン形状などで接合)させる構造に設定することにより、伸長動作により第2の基材2aの片面に第1の基材Aに基づくギャザー状凹凸構造1aを形成し、他面に凹凸構造がないか又はその凹凸程度が小さなギャザー状凹凸構造1aを形成してもよい(
図7)。
図7の下側の1aは図面上は平坦に図示しているが、凹凸構造がないか、又はその凹凸程度が小さなギャザー状凹凸構造の両方の場合を包含する。
【0023】
第1の基材A、Bの二種類を用いる場合には、性能が異なる素材(例えば性能が異なる不織布)を使い分けることにより、伸長性複合材料を衛生製品のウエスト部分に用いる際に肌側に肌になじみ易い素材を使用し、外側に通気性に優れた素材を使用することにより使用感を高めることができる。
【0024】
第1の基材A、Bの素材としては、伸長性材料であって上記永久歪の要件を満たすものである限り特に限定されないが、不織布であることが好ましく、いわゆるエアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布等と称される不織布を好適に利用することができる。その中でもとりわけスパンレース不織布を有するものが好ましく、例えば、Suominen社製スパンレース不織布「Fibrella(商標)F2650」、Suominen社製スパンレース不織布「Fibrella(商標)F6600」等を好適に利用することができる。
【0025】
第1の基材A、Bは、特に自然長状態から基材が破断するまで伸長した時の伸び切り伸長率が50%以上250%以下であることが好ましい。かかる伸び切り伸長率の範囲内であれば良好なギャザー状凹凸を形成することができる。
【0026】
第1の基材A、Bの目付量は限定的ではないが、5〜80g/m
2が好ましく、18〜35g/m
2がより好ましい。
【0027】
第1の基材A、Bの厚さは限定的ではないが、伸長動作前のそれぞれの厚さは0.08〜4.0mmが好ましく、0.1〜1.5mmがより好ましい。
【0028】
伸長動作後の厚さは、第1の基材と第2の基材との界面を本発明の接合部により接合した伸長性複合材料の第1の基材が形成するギャザー状凹凸構造の高さが加わるため、第2の基材とギャザー状凹凸構造に変化した第1の基材(第1の基材は第2の基材の片面又は両面のいずれの場合も含む)とを合わせた厚さとして、0.2〜10.0mmが好ましく、1.0〜4.5mmがより好ましい。
【0029】
第2の基材
第2の基材は、少なくとも一軸方向に伸長可能な伸長性材料であり、伸長性複合材料に対して設定した伸長方向において、50%伸長時の永久歪が0〜10%であり、好ましくは0〜6%である。前述の通り、第2の基材と第1の基材A、Bとを比較すると、第1の基材A、Bの方が第2の基材よりも上記永久歪が2.5%以上大きい。その中でも永久歪の差は8%以上大きいことが好ましく、10〜20%大きいことがより好ましい。このように永久歪の差が大きいほど
図2、
図4等に示されるギャザー状凹凸構造1aの大きさ(高さ)が大きくなり風合いのよいプリーツが得られ易い。なお、第2の基材は上記永久歪が0%超過の場合も含むため伸長性材料と称しているが、上記永久歪が0%の場合には伸長動作の後に完全に元の状態に戻ることを意味しており、その場合には伸縮性材料とも称することができる。
【0030】
第2の基材の素材及び形状としては、上記永久歪の特性を満たす限り特に限定されず、例えば、外部刺激として紫外線(UV)又は電子線を照射することにより硬化して第2の基材となる(加圧も経て本発明の接合部を形成する)ものであれば、例えば、UV硬化型アクリル共重合体、アクリル基を導入したポリマー(例えばウレタンアクリレートなど)等が挙げられる。また、これらの化合物の混合物であってもよく、必要に応じて単官能アクリレート、2官能アクリレート、多官能アクリレート、ポリマー、オリゴマー、粘着付与樹脂、可塑剤、ワックス、光重合開始剤、酸化防止剤等を更に配合した組成物でもよい。
【0031】
その他、第2の基材の素材であって超音波、熱等により本発明の接合部を形成するものであれば、例えば、ポリウレタンフィルム、ポリスチレンフィルム、伸縮性ホットメルト(HM)フィルム等の熱可塑性フィルム状伸長性部材、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム等の糸状伸長性部材、伸縮性ホットメルト(HM)をスパイラル塗工、オメガ塗工、カーテン塗工、ビード塗工等の方法で塗工してなる糸状伸長性部材、ポリウレタンなどのエラストマー繊維をシート状にした伸縮性不織布などが挙げられる。なお、上記説明は第2の基材の素材が超音波、熱等によって溶けるとともに接合のための加圧により第1の基材と接合することを主に意図しているが、本発明の接合部は第1の基材と第2の基材との界面において第1の基材が超音波、熱等によって溶けるとともに接合のための加圧により第2の基材と接合する態様であってもよい。
【0032】
外部刺激として紫外線(UV)又は電子線を照射することにより硬化して第2の基材となる(加圧も経て本発明の接合部を形成する)ものであれば、硬化させたフィルム状、シート状又は糸状のものが第2の基材の所定の永久歪の要件を満たせばよい。
【0033】
糸状伸長性部材の場合には、糸の流れ方向に伸長させるため伸長性複合材料の伸長方向と平行になるように糸状伸長性部材を配置すればよい。これらの伸縮性部材は、単独又は永久歪の要件を満たす限り2種以上を組み合わせてもよい。
【0034】
なお、永久歪の測定方法は、フィルム状又はシート状のものは前述した第1の基材の永久歪の測定方法に従えばよいが、糸状の場合には、永久歪の値は、糸状伸縮性部材1本について、伸長方向に100mm(つかみ具間距離は50mm)の試験片を作製し、島津製作所製の卓上形精密万能試験機「オートグラフAGS−X」を使用して引張速度300mm/分で50%伸長した後の上記つかみ具間距離を測定し、伸長前の初期つかみ具間距離に対する弛緩できない長さ(初期つかみ具間距離よりも伸びて長くなった部分の長さ)の割合(%)を求め、これを永久歪とした。
【0035】
つまり、〔(50%伸長後の長さ−初期の長さ)/初期の長さ〕×100(%)である。
【0036】
第2の基材は、特に自然長状態から基材が破断するまで伸長した時の伸び切り伸長率が50%以上であることが好ましい。かかる伸び切り伸長率の範囲内であれば第1の基材との組み合わせにより良好なギャザー状凹凸を形成することができる。
【0037】
第2の基材A、Bの目付量は限定的ではないが、0.01〜80g/m
2が好ましく、0.03〜35g/m
2がより好ましい。
【0038】
第2の基材の厚さは限定的ではないが、フィルム状又はシート状伸長性部材の場合は、伸長動作前の厚さは0.01〜4.0mmが好ましく、0.03〜2.0mmがより好ましい。糸状伸長性部材の場合は、繊度として100dtex〜1300dtexが好ましく、150dtex〜500dtexがより好ましい。
【0039】
糸状伸長性部材を用いる場合には、伸長性複合材料の伸長方向と平行になるように糸状伸長性部材を配置すればよく、隣接する糸状伸長性部材間の間隔(ピッチ距離)は0.5〜10.0mmが好ましく、1.0〜5.0mmがより好ましい。
【0040】
接合部と非接合部との形成方法
本発明の伸長性複合材料は、少なくとも第1の基材Aと第2の基材との界面が接合部により接合している構造を有しており、前記接合部は、間隔を空けてパターン状に設けられており、且つ、前記接合部どうしの間は非接合部である。ここで、「間隔を空けて」とは上述の通り非接合部を有していることを意味する。
【0041】
なお、接合部は、例えば第1の基材Aと第2の基材との界面に外部刺激を印加したり、接合するための加圧により形成することができる。ここで、「接合するための加圧」とは外部刺激(超音波、熱等)により第1の基材Aと第2の基材の少なくとも1つの基材の界面が溶けた界面どうしを接合するための加圧、又は外部刺激(紫外線(UV)、電子線等の照射)により硬化する前の第2の基材の表面を第1の基材Aに一部浸透させて接合部を形成し易くするための加圧である。「接合するための加圧」の方法として、基材の全面に加圧をかけてもよく、前記接合部のみを加圧してもよい。
【0042】
このように接合部がパターン状に間隔を空けて設けられていることにより、第1の基材Aと第2の基材とは接合部と非接合部とを交互に有しながら接合されているため、両基材が接合されていない非接合部において伸長動作により第1の基材Aと第2の基材との間の永久歪の差に起因してギャザー状凹凸構造が形成される(
図2、
図4の1a)。なお、
図4では第1の基材Bと第2の基材との界面にも本発明の接合部がパターン状に設けられていることにより、上下の1aはいずれもギャザー状凹凸構造となっている。他方、
図7では第1の基材Bと第2の基材との間はホットメルト接着剤層(非塗布幅を有していない)により実質的にベタ状に接合されているため、下側の1aは凹凸構造がないか又はその凹凸程度が小さなギャザー状凹凸構造となっている。
【0043】
なお、本発明の伸長性複合材料は、第1の基材A、Bと第2の基材とが実質的に非伸長状態で接合されているため、伸長動作前の状態ではギャザー状凹凸構造は形成されておらず、製品形状の見栄えが良く、梱包時、輸送時等にかさばらず、使用時に伸長動作により初めて片面又は両面にギャザー状凹凸構造が形成される。ここで、第一の基材A、Bと第2の基材とが異なるパターンで接合部を形成する場合には、例えば第一の基材Aを肌側に接する面とすると、第一の基材Aの面は風合いを良くするためにギャザー状凹凸構造(プリーツ)を形成させ、例えば第一の基材Bを外側の面(例えば衣服と接する面)としてプリーツを形成させないことで、アウターに影響し難い構造にすることができる。
【0044】
本発明の接合部を形成する際の外部刺激としては、例えば紫外線(UV)照射、電子線照射、超音波接着、熱接着等が挙げられる。紫外線照射又は電子線照射の場合は、第2の基材(両基材の界面)に対して少なくとも2段階で紫外線又は電子線を照射することにより接合部と非接合部とを形成することができる。具体的な例としては、適切にマスキングを施した上で1段階目に紫外線又は電子線を照射した部分が先に硬化して非接合部となり、1段階目に紫外線又は電子線を照射しなかった部分(前記マスキングを施した部分)を第1の基材に加圧などにより浸透させたあと、少なくとも前記浸透部分に2段階目の紫外線又は電子線を照射することで硬化させて両基材を接合した本発明の接合部となる。
【0045】
なお、1段階目の照射及び2段階目の照射のいずれにおいても、更に照射工程を細分化することにより、1段階目の照射領域の中で照射量の異なる部分、及び2段階目の照射領域の中で照射量の異なる部分を形成するなどにより、硬化後の基材の硬度、前記浸透部分における浸透量の相違、硬化後の基材の永久歪の相違等がある部分を形成することもでき、第1の基材に形成するギャザー状凹凸構造(プリーツ)の形状及び高さにバリエーションを持たせることもできる。
【0046】
超音波接着又は熱接着の場合は、第2の基材(第1の基材と第2の基材との界面)に少なくとも1段階の超音波又は熱を加え接合部と非接合部を形成する。具体的な例としては、第1の基材と第2の基材との界面を超音波又は熱により溶かした部分を加圧により貼り合せることで、第1の基材と第2の基材との界面に本発明の接合部を形成する。なお、上記説明は第2の基材の素材が超音波又は熱によって溶けるとともに接合のための加圧により第1の基材と接合することを主に意図しているが、本発明の接合部は第1の基材と第2の基材との界面において第1の基材が超音波又は熱によって溶けるとともに接合のための加圧により第2の基材と接合する態様であってもよい。
【0047】
本発明の伸長性複合材料は、本発明の接合部が間隔を空けてパターン状に設けられる。つまり、接合部と非接合部とが交互に形成されている。前記間隔は、一定間隔である方が伸長動作により形成されるギャザー状凹凸の高さが均一になりギャザー状凹凸の見栄えが良好になるが、一定間隔には限定されない。また、パターンは必ずしも連続的なパターン状である必要はなく間欠的なパターン状でもよい。
【0048】
図7に例示するように、第1の基材Bと第2の基材との間をホットメルト接着剤により接合する場合のホットメルト接着剤としては限定的ではないが、熱可塑性エラストマーを主成分とするホットメルト接着剤が好ましい。熱可塑性エラストマーを主成分とするホットメルト接着剤としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物からなるスチレン系ブロック共重合体を用いてなるゴム系ホットメルト接着剤;ポリオレフィン共重合体を用いてなるオレフィン系ホットメルト接着剤;エチレンを主鎖とした共重合体(エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン−アクリル酸メチルコポリマー(EMA)、エチレン−メタアクリル酸メチルコポリマー(EMMA)、エチレン−アクリル酸エチルコポリマー(EEA)、エチレン−n−ブチルコポリマー(EnBA)など)を用いてなるホットメルト接着剤が挙げられる。
【0049】
ホットメルト接着剤は、被着体(第1の基材B又は第2の基材)に塗工される前に、加熱溶融タンク内で加熱溶融される。加熱溶融させたホットメルト接着剤の塗工方法としては、接触塗工方法及び非接触塗工方法がある。
【0050】
接触塗工方法としては、例えば、スロットコーター塗工、ロールコーター塗工、コントロールシーム塗工、パターンコート塗工等、加熱溶融されたホットメルト接着剤を被着体へ直接塗布する方法が挙げられる。
【0051】
非接触塗工方法としては、例えば、ビード塗工、オメガ塗工、ファイバー状に塗布するカーテンスプレー塗工等が挙げられる。
【0052】
ホットメルト接着剤層はベタ状、又は間隔を空けてパターン状に設けられる。間隔を空ける場合には一定間隔である方が伸長動作により形成されるギャザー状凹凸の高さが均一になりギャザー状凹凸の見栄えが良好になるが、一定間隔には限定されない。また、パターンは必ずしも連続的なパターン状である必要はなく間欠的なパターン状でもよい。
【0053】
間隔を空けたパターン状の例としては、例えば、伸長性複合材料の伸長方向に直交する方向にビード状のホットメルト接着剤を並行に間隔を空けて設けた態様、伸長性複合材料の伸長方向に直交する方向にスロット状のホットメルト接着剤を並行に間隔を空けて設けた態様等が挙げられる。
【0054】
ビード状又はスロット状のホットメルト接着剤の塗布幅(実施例の表1の塗布幅に対応)は限定的ではないが、0.2〜50mmが好ましく、0.2〜18mmがより好ましく、1〜4mmが最も好ましい。また、塗付領域から塗付領域の距離(ピッチ距離;実施例の表1の非塗付幅に対応)は限定的ではないが、0.3〜20mmが好ましく、0.5〜15mmがより好ましく、2〜13mmが最も好ましい。
【0055】
第1の基材と第2の基材とが接合している接合部の面積率としては、接合部を形成するパターンにより異なるが、本発明の接合部を形成した界面では任意に設定した25mm×25mm四方において20〜80%が好ましく、20〜50%がより好ましく、25〜35%が最も好ましい。また、ホットメルト接着剤で接合する場合の塗布量は、0.01〜35g/m
2が好ましく、0.03〜16g/m
2がより好ましい。
【0056】
本発明の伸長性複合材料は、100%伸長時にギャザー状凹凸構造(プリーツ)が形成されることによる伸長性複合材料全体の厚みの増加率が150%以上であれば好ましく、500%以上であればより好ましい。このように厚みの増加率が150%以上であれば、風合いのよいプリーツが得られている。
【0057】
伸長性複合材料の製造方法
伸長性複合材料の製造方法としては、上記本発明の伸長性複合材料が得られる限り特に限定されないが、例えば、
図5(第1の基材は第1の基材A、Bの二種類)、
図6(第1の基材は第1の基材A、Bの二種類。但し第1の基材Aと第2の基材との界面はホットメルト接着剤により接合。)に示した方法により好適に製造することができる。
【0058】
図5に示す方法であれば、第1の基材Aの供給手段12から第1の基材Aを繰り出し、第2の基材(紫外線硬化前の基材)を実質的に非伸長状態で供給手段11から供給し、ロールの内側に紫外線発生装置を内蔵しロールの表面に紫外線を照射することが可能な紫外線照射ロールA14において、第2の基材に硬化させない部分だけ紫外線を透過させないマスキング処理を施し第1の基材と第2の基材との界面に先ず非接合部をパターン状に形成する。次いで、第1の基材Bの供給手段12から第1の基材Bを繰り出し、紫外線照射ロールA14で紫外線を照射しなかった部分において、ニップロール16で第1の基材と第2の基材を圧着(未硬化の第2の基材の一部を第1の基材Aに浸透)させ、紫外線照射ロールA14と同様な装置でマスキング処理されていない紫外線照射ロールB15で紫外線を照射し、第2の基材の全体を硬化させて伸長性複合材料を得た。得られた伸長性複合材料は巻き取りロール17により巻き取られる。第2の基材は予め非接合部を形成するための紫外線照射を実施していてもよく、紫外線照射ロールA14、紫外線照射ロールB15はロール式でなくともコンベア式等でもよく、多段階に紫外線を照射してもよい。
【0059】
他の実施形態として
図6に示す方法であれば、第1の基材Aの供給手段12から第1の基材Aを繰り出し、第2の基材(紫外線硬化前の基材)を実質的に非伸長状態で供給手段11から供給し、ロールの内側に紫外線発生装置を内蔵しロールの表面に紫外線を照射することが可能な紫外線照射ロールA14において、第2の基材に硬化させない部分だけ紫外線を透過させないマスキング処理を施し第1の基材と第2の基材との界面に先ず非接合部をパターン状に形成する。次いで、紫外線照射ロールA14で紫外線を照射しなかった部分をニップロール16で第1の基材Aと第2の基材を圧着(未硬化の第2の基材の一部を第1の基材Aに浸透)させ、紫外線照射ロールA14と同様な装置にマスキング処理されていない紫外線照射ロールB15で紫外線を照射し、第2の基材の全体を硬化させた。次いで、ホットメルト接着剤の供給手段13からホットメルト接着剤を間隔を空けてパターン状に供給しながら、第2の基材上に第1の基材Bの供給手段12から供給された第1の基材Bとホットメルト接着剤層とを積層し、ニップロール16を通して接合し、伸長性複合材料を得た。得られた伸長性複合材料は巻き取りロール17により巻き取られる。なお、第2の基材の供給手段11としては、溶融伸長性部材の供給手段として図示しているが、第2の基材がもともとフィルム状又はシート状伸長性部材である場合には、供給装置11を繰り出しロールに置き換えて実施すればよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0061】
実施例1〜7及び比較例1〜3
表1に示す第1の基材A、B、第2の基材及びホットメルト接着剤を使用し、表1に示す条件で伸長性複合材料を作製した。なお、表1に記載のウレタンアクリレートa,b及び伸縮性HM−1,−2はそれぞれ下記の成分からなる。比較例1及び2は、接合部がパターン状に設けられていない点で比較例であり、比較例3は第2の基材の50%伸長時の永久歪が本発明の規定を満たしていない点で比較例である。
<ウレタンアクリレートa>
ウレタンアクリレート(日本合成化学工業製「UV−3000B」)15質量部及び光重合開始剤(BASF製「イルガキュア−184」)0.2質量部
<ウレタンアクリレートb>
ウレタンアクリレート(日本化薬製「UXF−4001−M35」、メチルエチルケトン希釈品)15質量部及び光重合開始剤(BASF製「イルガキュア−184」)0.2質量部
<伸縮性HM−1>
スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)30質量部、スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBSS)30質量部、パラフィン系可塑剤14.5質量部、及びワックス25質量部
<伸縮性HM−2>
スチレン系熱可塑性エラストマー(SBS)28質量部、粘着付与剤60質量部、及びパラフィン系可塑剤10質量部
【0062】
[厚み変化率]
評価サンプルは前記記載である「伸長性複合材料の製造方法」から得ることができ、評価サンプルを100%伸長させ、荷重が加えられていない自然長状態に戻し、プリーツが形成された断面の高さを顕微鏡(例えば、KEYENCE社製、デジタルマイクロスコープVHX−700F)で50〜100倍の倍率で観察し、最も高い部分と第1と第2の基材が接している部分との差を測定する。伸長動作前の厚み(第1の基材の最も高い部分と第1と第2の基材が接している部分との差)と伸長動作後の厚みの変化率を厚み変化率としている。伸長動作前の厚みを100%として、厚み変化率を算出している。
【0063】
試験例1(プリーツの風合い評価)
[風合い評価]
モニター10人に伸縮複合材料の伸長動作後のサンプルを自然長状態での風合いの評価を、温度:25度、湿度:40%の環境下で行わせた。
【0064】
各モニターの評価に応じて、下記の点数を付け、モニター10人の平均点(少数点以下を四捨五入)を風合いの評価点とした。
【0065】
5点:風合いがよい、4点:風合いがややよい、3点:普通、2点:風合いがやや悪いc、1点:風合いが悪い
【0066】
[伸長動作前後における厚み評価]
伸長動作前後における厚みの変化率を測定した。
【0067】
厚み変化率は、×:120%未満、△:120%以上150%未満、○:150%以上500%未満、◎500%以上により評価した。
【0068】
【表1】