【課題】白金族元素を利用することなく触媒活性(触媒作用)を有する陽極及び陰極を備え、白金レスの陽極及び陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができる電気分解装置を提供する。
【解決手段】電気分解装置10の陽極11A,11B及び陰極12A,12Bは、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成したアロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体と、アロイ粉体を両面に担持させた所定面積のカーボン電極板とから形成されている。陽極11A,11B及び陰極12A,12Bでは、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている。
陽極及び陰極と、前記陽極と前記陰極との間に位置してそれら極を接合する電極接合体膜とを備え、前記陽極及び前記陰極に電気を通電し、該陽極で酸化反応を起こすとともに該陰極で還元反応を起こすことで所定の水溶液を化学分解する電気分解装置において、
前記陽極及び前記陰極が、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成したアロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体と、前記アロイ粉体を両面に担持させた所定面積のカーボン電極板とから形成され、前記金属粉体混合物では、前記選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されていることを特徴とする電気分解装置。
前記カーボン電極板の両面には、該カーボン電極板の厚み方向へ重なる前記アロイ粉体によってアロイ粉体積層ポーラス構造物が形成され、前記電気分解装置では、前記電極接合体膜と前記アロイ粉体積層ポーラス構造物とが隙間なく重なり合っている請求項1に記載の電気分解装置。
前記遷移金属の粉体の粒径が、10μm〜200μmの範囲にあり、前記アロイ粉体の粒径が、10μm〜200μmの範囲にあり、前記カーボン電極板の厚み寸法が、0.03mm〜0.3mmの範囲にある請求項1又は請求項2に記載の電気分解装置。
前記金属粉体混合物が、Ni(ニッケル)の粉体を主成分とし、前記金属粉体混合物では、前記Niの仕事関数と該Niを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から前記Niの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の電気分解装置。
前記金属粉体混合物の全重量に対する前記Ni(ニッケル)の粉体の重量比が、30%〜50%の範囲にあり、前記Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、前記Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項4に記載の電気分解装置。
前記金属粉体混合物が、Fe(鉄)の粉体を主成分とし、前記金属粉体混合物では、前記Feの仕事関数と該Feを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から前記Feの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の電気分解装置。
前記金属粉体混合物の全重量に対する前記Fe(鉄)の粉体の重量比が、30%〜50%の範囲にあり、前記Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、前記Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項6に記載の電気分解装置。
前記金属粉体混合物が、Cu(銅)の粉体を主成分とし、前記金属粉体混合物では、前記Cuの仕事関数と該Cuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から前記Cuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の電気分解装置。
前記金属粉体混合物の全重量に対する前記Cu(銅)の粉体の重量比が、30%〜50%の範囲にあり、前記Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、前記Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項8に記載の電気分解装置。
前記アロイ成形物では、前記選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている請求項1ないし請求項9いずれかに記載の電気分解装置。
前記金属粉体混合物作成工程が、前記遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、前記アロイ粉体作成工程が、前記アロイ成形物を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する請求項11に記載の電気分解装置の電極製造方法。
前記金属粉体圧縮物作成工程が、前記金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧して前記金属粉体圧縮物を作る請求項11又は請求項12に記載の電気分解装置の電極製造方法。
前記アロイ成形物作成工程が、前記遷移金属選択工程によって選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属を溶融させる温度で前記金属粉体圧縮物を焼成し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体を接合する請求項11ないし請求項13いずれかに記載の電気分解装置の電極製造方法。
前記アロイ粉体担持工程が、0.03mm〜0.3mmの厚み寸法の前記カーボン電極板の両面に前記アロイ粉体を担持させ、前記カーボン電極板の厚み方向へ重なる前記アロイ粉体によって該カーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物を形成する請求項11ないし請求項14いずれかに記載の電気分解装置の電極製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の水素発生装置の触媒体は、金属の成形体の表面を陽極酸化して金属の酸化物を含む金属酸化物膜を形成する工程と、金属酸化物膜に脱水素触媒を担持させる工程とから作られる。金属酸化物膜に脱水素触媒を担持させる工程では、 ヘキサクロロ白金(IV)酸イオンを含む酸性の塩化白金水溶液を金属酸化物膜と接触させることによって金属酸化物膜にヘキサクロロ白金(IV)酸イオンを付着させるとともに、ヘキサクロロ白金(IV)酸イオンが付着している金属酸化物膜を焼成して金属酸化物膜に脱水素触媒として白金を担持させる。
【0005】
電気分解装置の電極として各種の白金担持カーボンが広く利用されている。しかし、白金族元素は、貴金属であり、その生産量に限りがある希少な資源であることから、その使用量を抑えることが求められている。さらに、今後の電気分解装置の普及に向けて高価な白金以外の金属を利用した非白金触媒を有する廉価な電極の開発が求められている。
【0006】
本発明の目的は、白金族元素を利用することなく触媒活性(触媒作用)を有する陽極及び陰極を備え、白金レスの陽極及び陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる電気分解装置を提供することにある。本発明の他の目的は、白金族元素を利用することなく、廉価に作ることができ、十分な触媒活性(触媒作用)を有する電気分解装置の陽極及び陰極を製造する電極製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、陽極及び陰極と、陽極と陰極との間に位置してそれら極を接合する電極接合体膜とを備え、陽極及び陰極に電気を通電し、陽極で酸化反応を起こすとともに陰極で還元反応を起こすことで所定の水溶液を化学分解する電気分解装置である。
【0008】
前記第1の前提における本発明の電気分解装置の特徴は、陽極及び陰極が、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成したアロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体と、アロイ粉体を両面に担持させた所定面積のカーボン電極板とから形成され、金属粉体混合物では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されていることにある。
【0009】
本発明の電気分解装置の一例として、カーボン電極板の両面には、カーボン電極板の厚み方向へ重なるアロイ粉体によってアロイ粉体積層ポーラス構造物が形成され、電気分解装置では、電極接合体膜とアロイ粉体積層ポーラス構造物とが隙間なく重なり合っている。
【0010】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、遷移金属の粉体の粒径が、10μm〜200μmの範囲にあり、アロイ粉体の粒径が、10μm〜200μmの範囲にあり、カーボン電極板の厚み寸法が、0.03mm〜0.3mmの範囲にある。
【0011】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、金属粉体混合物が、Ni(ニッケル)の粉体を主成分とし、金属粉体混合物では、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0012】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、金属粉体混合物の全重量に対するNi(ニッケル)の粉体の重量比が、30%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0013】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、金属粉体混合物が、Fe(鉄)の粉体を主成分とし、金属粉体混合物では、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0014】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、金属粉体混合物の全重量に対するFe(鉄)の粉体の重量比が、30%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0015】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、金属粉体混合物が、Cu(銅)の粉体を主成分とし、金属粉体混合物では、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0016】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、金属粉体混合物の全重量に対するCu(銅)の粉体の重量比が、30%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0017】
本発明の電気分解装置の他の一例として、アロイ成形物では、選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている。
【0018】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、電気分解装置に使用する陽極及び陰極を製造する電極製造方法である。
【0019】
前記第2の前提における本発明の電極製造方法の特徴は、電極製造方法が、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属粉体圧縮物を作る金属粉体圧縮物作成工程と、金属粉体圧縮物作成工程によって作られた金属粉体圧縮物を所定温度で焼成してアロイ成形物を作るアロイ成形物作成工程と、アロイ成形物作成工程によって作られたアロイ成形物を微粉砕してアロイ粉体を作るアロイ粉体作成工程と、アロイ粉体作成工程によって作られたアロイ粉体を所定面積のカーボン電極板の両面に担持させるアロイ粉体担持工程とを有することにある。
【0020】
本発明の電極製造方法の一例としては、金属粉体混合物作成工程が、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、アロイ粉体作成工程が、アロイ成形物を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する。
【0021】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、金属粉体圧縮物作成工程が、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧して金属粉体圧縮物を作る。
【0022】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、アロイ成形物作成工程が、遷移金属選択工程によって選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属を溶融させる温度で金属粉体圧縮物を焼成し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体を接合する。
【0023】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、アロイ粉体担持工程が、0.03mm〜0.3mmの厚み寸法のカーボン電極板の両面にアロイ粉体を担持させ、カーボン電極板の厚み方向へ重なるアロイ粉体によってカーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物を形成する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る電気分解装置によれば、それに使用される陽極及び陰極が各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成したアロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体と、アロイ粉体を両面に担持させた所定面積のカーボン電極板とから形成され、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、アロイ粉体を有する白金レスの陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、白金レスの陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮し、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0025】
カーボン電極板の厚み方向へ重なるアロイ粉体によってカーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物が形成され、電極接合体膜とアロイ粉体積層ポーラス構造物とが隙間なく重なり合っている電気分解装置は、カーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物を形成することで、アロイ粉体の比表面積を大きくすることができ、アロイ粉体の触媒作用を十分に利用することができるとともに、アロイ粉体積層ポーラス構造物を有する陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、白金レスの陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを確実に発生させることができる。
【0026】
遷移金属の粉体の粒径が10μm〜200μmの範囲にあり、アロイ粉体の粒径が10μm〜200μmの範囲にあり、カーボン電極板の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にある電気分解装置は、カーボン電極板の厚み寸法を前記範囲にすることで、陽極及び陰極の電気抵抗を小さくすることができ、陽極及び陰極を電流がスムースに流れるから、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを確実に発生させることができる。
【0027】
金属粉体混合物がNi(ニッケル)の粉体を主成分とし、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電気分解装置は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、Niの粉体を主成分とした白金レスの陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮し、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0028】
金属粉体混合物の全重量に対するNi(ニッケル)の粉体の重量比が30%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電気分解装置は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Niの粉体の重量比やNiの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、Niの粉体を主成分とした陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、Niの粉体を主成分とした白金レスの陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮し、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0029】
金属粉体混合物がFe(鉄)の粉体を主成分とし、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電気分解装置は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、Feの粉体を主成分とした白金レスの陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮し、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0030】
金属粉体混合物の全重量に対するFe(鉄)の粉体の重量比が30%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電気分解装置は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Feの粉体の重量比やFeの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、Feの粉体を主成分とした陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、Feの粉体を主成分とした白金レスの陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮し、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0031】
金属粉体混合物がCu(銅)の粉体を主成分とし、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電気分解装置は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、Cuの粉体を主成分とした白金レスの陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮し、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0032】
金属粉体混合物の全重量に対するCu(銅)の粉体の重量比が30%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電気分解装置は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Cuの粉体の重量比やCuの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、Cuの粉体を主成分とした陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、Cuの粉体を主成分とした白金レスの陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮し、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0033】
選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている電気分解装置は、遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が溶融することでアロイ成形物を作ることができるとともに、アロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体を作ることができるから、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を備えた陽極及び陰極が白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮し、白金レスの陽極及び陰極を使用した電気分解装置において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0034】
本発明に係る電気分解装置の陽極及び陰極を製造する電極製造方法によれば、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属粉体圧縮物を作る金属粉体圧縮物作成工程と、金属粉体圧縮物作成工程によって作られた金属粉体圧縮物を所定温度で焼成してアロイ成形物を作るアロイ成形物作成工程と、アロイ成形物作成工程によって作られたアロイ成形物を微粉砕してアロイ粉体を作るアロイ粉体作成工程と、アロイ粉体作成工程によって作られたアロイ粉体を所定面積のカーボン電極板の両面に担持させるアロイ粉体担持工程とから陽極及び陰極を作るから、白金族元素を利用しない白金レスの電気分解装置の陽極及び陰極を廉価に作ることができ、触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であり、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な陽極及び陰極を作ることができる。
【0035】
金属粉体混合物作成工程が遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、アロイ粉体作成工程がアロイ成形物を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する電気分解装置の電極製造方法は、遷移金属を前記範囲の粒径に微粉砕することでアロイ成形物を作ることができるとともに、アロイ成形物を前記範囲の粒径に微粉砕することでアロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する白金レスの陽極及び陰極を作ることができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有して電気分解装置に好適に使用することが可能な陽極及び陰極を作ることができる。
【0036】
金属粉体圧縮物作成工程が金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧して金属粉体圧縮物を作る電気分解装置の電極製造方法は、金属粉体混合物を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、金属粉体圧縮物を作ることができ、その金属粉体圧縮物を焼成してアロイ成形物を作ることができるとともに、アロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有して電気分解装置に好適に使用することが可能な白金レスの陽極及び陰極を作ることができる。
【0037】
アロイ成形物作成工程が遷移金属選択工程によって選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属を溶融させる温度で金属粉体圧縮物を焼成し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体を接合する電気分解装置の電極製造方法は、遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が溶融することでアロイ成形物を作ることができるとともに、アロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体を作ることができ、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有して電気分解装置に好適に使用することが可能な白金レスの陽極及び陰極を作ることができる。電極製造方法は、遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属をバインダーとして遷移金属の粉体を接合するから、陽極及び陰極が高い強度を有してその形状を維持することができ、破損や損壊を防ぐことが可能な電気分解装置の陽極及び陰極を作ることができる。
【0038】
アロイ粉体担持工程が0.03mm〜0.3mmの厚み寸法のカーボン電極板の両面にアロイ粉体を担持させ、カーボン電極板の厚み方向へ重なるアロイ粉体によってカーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物を形成する電気分解装置の電極製造方法は、アロイ粉体の比表面積を大きくしたアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する白金レスの陽極及び陰極を作ることができるとともに、カーボン電極板の厚み寸法を前記範囲にすることで、陽極及び陰極の電気抵抗を小さくすることができ、電流をスムースに流すことが可能であり、電気分解装置において短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な陽極及び陰極を作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
一例として示す電気分解装置10の側面図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る電気分解装置及び電気分解装置に使用する陽極及び陰極の製造方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、一例として示す陽極11A及び陰極12Aの斜視図であり、
図3は、陽極11A及び陰極12Aの一例として示す部分拡大正面図である。
図4は、
図3のA−A線端面図である。
図2では、厚み方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0041】
電気分解装置10(水素ガス発生装置)は、陽極11A又は陽極11B(アノード)と、陰極12A又は陰極12B(カソード)と、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bの間に位置(介在)する固体高分子電解質膜13(電極接合体膜)(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)と、陽極給電部材14及び陰極給電部材15と、陽極用貯水槽16及び陰極用貯水槽17と、陽極主電極18及び陰極主電極19とから形成されている。
【0042】
電気分解装置10は、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bに電気を通電し、陽極11A又は陽極11Bで酸化反応を起こすとともに陰極12A又は陰極12Bで還元反応を起こすことで所定の水溶液を化学分解する。電気分解装置10では、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12B、固体高分子電解質膜13が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体20 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体20を陽極給電部材14と陰極給電部材15とが挟み込んでいる。固体高分子電解質膜13は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0043】
陽極給電部材14は、陽極11A又は陽極11Bの外側に位置して陽極11A又は陽極11Bに密着し、陽極11A又は陽極11Bに+の電流を給電する。陽極用貯水槽16は、陽極給電部材14の外側に位置して陽極給電部材14に密着している。陽極主電極18は、陽極用貯水槽16の外側に位置して陽極給電部材14に+の電流を給電する。陰極給電部材15は、陰極12A又は陰極12Bの外側に位置して陰極12A又は陰極12Bに密着し、陰極12A又は陰極12Bに−の電流を給電する。陰極用貯水槽17は、陰極給電部材15の外側に位置して陰極給電部材15に密着している。陰極主電極19は、陰極用貯水槽17の外側に位置して陰極給電部材15に−の電流を給電する。
【0044】
電気分解装置10(水素ガス発生装置)に使用する陽極11A及び陰極12Aは、
図2に示すように、前面21及び後面22を有するとともに、所定の面積及び所定の厚み寸法を有し、その平面形状が四角形に成形されている。なお、陽極11A(陽極11Bを含む)や陰極12A(陰極12Bを含む)の平面形状に特に制限はなく、四角形の他に、その用途にあわせて円形や楕円形、多角形等の他のあらゆる平面形状に成形することができる。
【0045】
陽極11A及び陰極12Aは、アロイ粉体23(合金粉体)と所定面積のカーボン電極板24(カーボン電極薄板)とから形成されている。アロイ粉体23は、アロイ成形物(合金成形物)(
図12参照)を微粉砕することから作られている。アロイ粉体23は、その粒径が10μm〜200μmの範囲にある。アロイ成形物は、粉状に加工(微粉砕)された各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物(
図12参照)を圧縮した後に焼成(焼結)することから作られている。遷移金属としては、3d遷移金属や4d遷移金属が使用される。3d遷移金属には、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)が使用される。4d遷移金属には、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀)が使用される。
【0046】
遷移金属の粉体には、粉状に加工(微粉砕)されたTi(チタン)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたCr(クロム)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたMn(マンガン)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたFe(鉄)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたCo(コバルト)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたNi(ニッケル)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたCu(銅)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたZn(亜鉛)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたNb(ニオブ)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたMo(モリブデン)粉体、粉状に加工されたAg(銀)粉体が使用される。
【0047】
Tiの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたTi)やCrの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたCr)、Mnの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたMn)、Feの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたFe)、Coの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたCo)、Niの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたNi)、Cuの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたCu)、Znの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたZn)、Nbの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたNb)、Moの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたMo)、Agの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたAg)は、それらの粒径が10μm〜200μmの範囲にある。
【0048】
金属粉体混合物では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数(物質から電子を取り出すのに必要なエネルギー)の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている。Tiの仕事関数は、4.14(eV)、Crの仕事関数は、4.5(eV)、Mnの仕事関数は、4.1(eV)、Feの仕事関数は、4.67(eV)、Coの仕事関数は、5.0(eV)、Niの仕事関数は、5.22(eV)、Cuの仕事関数は、5.10(eV)、Znの仕事関数は、3.63(eV)、Nbの仕事関数は、4.01(eV)、Moの仕事関数は、4.45(eV)、Agの仕事関数は、4.31(eV)である。なお、白金の仕事関数は、5.65(eV)である。
【0049】
金属粉体混合物の一例としては、粉状に加工(微粉砕)されたNi(ニッケル)の粉体を主成分とし、Niの粉体とNiを除く粉状に加工(微粉砕)されたその他の少なくとも2種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物である。
【0050】
主成分となるNi(ニッケル)の粉体とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とを混合した金属粉体混合物は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。Niの粉体を主成分としたアロイ成形物では、選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている。Niを主成分としたアロイ粉体23は、Niの粉体を主成分とした金属粉体混合物を圧縮した後に焼成することから作られたアロイ成形物を微粉砕した粒径が10μm〜200μmの微粉砕物である。
【0051】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした金属粉体混合物では、金属粉体混合物の全重量に対するNiの粉体の重量比が30%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Fe(鉄)粉体、Co(コバルト)粉体、Cu(銅)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Fe(鉄)粉体、Co(コバルト)粉体、Cu(銅)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの他の少なくとも1種類)の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある。
【0052】
Ni(ニッケル)を主成分としたアロイ粉体23(Niを主成分とした合金粉体)の具体例としては、Niの粉体、Cuの粉体、ZNの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成してアロイ成形物を作り、そのアロイ成形物を微粉砕した粒径が10μm〜200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体23は、金属粉体混合物の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物の全重量に対するCuの粉体重量比が42%、金属粉体混合物の全重量に対するZnの粉体重量比が10%である。Niの融点が1455℃、Cuの融点が1084.5℃、Znの融点が419.85℃であるから、Znの粉体及びCuの粉体が溶融し、溶融したZn及びCuがバインダーとなってNiの粉体を接合している。
【0053】
Ni(ニッケル)を主成分としたアロイ粉体23の他の具体例としては、Niの粉体、Mnの粉体、Moの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成してアロイ成形物を作り、そのアロイ成形物を微粉砕した粒径が10μm〜200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体23は、金属粉体混合物の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物の全重量に対するMnの粉体重量比が7%、金属粉体混合物の全重量に対するMoの粉体重量比が45%である。Niの融点が1455℃、Mnの融点が1246℃、Moの融点が2623℃であるから、Mnの粉体及びNiの粉体が溶融し、溶融したMn及びNiがバインダーとなってMoの粉体を接合している。
【0054】
金属粉体混合物の他の一例としては、粉状に加工(微粉砕)されたFe(鉄)の粉体を主成分とし、Feの粉体とFeを除く粉状に加工(微粉砕)されたその他の少なくとも2種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物である。
【0055】
主成分となるFe(鉄)の粉体とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とを混合した金属粉体混合物は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。Feの粉体を主成分としたアロイ成形物では、選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている。Feを主成分としたアロイ粉体23は、Feの粉体を主成分とした金属粉体混合物を圧縮した後に焼成することから作られたアロイ成形物を微粉砕した粒径が10μm〜200μmの微粉砕物である。
【0056】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした金属粉体混合物では、金属粉体混合物の全重量に対するFeの粉体の重量比が30%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Co(コバルト)粉体、Ni(ニッケル)粉体、Cu(銅)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Co(コバルト)粉体、Ni(ニッケル)粉体、Cu(銅)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの他の少なくとも1種類)の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある。
【0057】
Fe(鉄)を主成分としたアロイ粉体23(Feを主成分とした合金粉体)の具体例としては、Feの粉体、Niの粉体、Cuの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成してアロイ成形物を作り、そのアロイ成形物を微粉砕した粒径が10μm〜200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体23は、金属粉体混合物の全重量に対するFeの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物の全重量に対するNiの粉体重量比が48%、金属粉体混合物の全重量に対するCuの粉体重量比が4%である。Feの融点が1536℃、Niの融点が1455℃、Cuの融点が1084.5℃であるから、Cuの粉体及びNiの粉体が溶融し、溶融したCu及びNiがバインダーとなってFeの粉体を接合している。
【0058】
Fe(鉄)を主成分としたアロイ粉体23の他の具体例としては、Feの粉体、Tiの粉体、Agの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成してアロイ成形物を作り、そのアロイ成形物を微粉砕した粒径が10μm〜200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体23は、金属粉体混合物の全重量に対するFeの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物の全重量に対するTiの粉体重量比が46%、金属粉体混合物の全重量に対するAgの粉体重量比が6%である。Feの融点が1536℃、Tiの融点が1666℃、Agの融点が961.93℃であるから、Agの粉体及びFeの粉体が溶融し、溶融したAg及びFeがバインダーとなってTiの粉体を接合している。
【0059】
金属粉体混合物の他の一例としては、粉状に加工(微粉砕)されたCu(銅)の粉体を主成分とし、Cuの粉体とCuを除く粉状に加工(微粉砕)されたその他の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物である。
【0060】
主成分となるCu(銅)の粉体とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とを混合した金属粉体混合物は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。Cuの粉体を主成分としたアロイ成形物では、選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている。Cuを主成分としたアロイ粉体23は、Cuの粉体を主成分とした金属粉体混合物を圧縮した後に焼成することから作られたアロイ成形物を微粉砕した粒径が10μm〜200μmの微粉砕物である。
【0061】
Cu(銅)の粉体を主成分とした金属粉体混合物では、金属粉体混合物の全重量に対するCuの粉体の重量比が30%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Fe(鉄)粉体、Co(コバルト)粉体、Ni(ニッケル)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Fe(鉄)粉体、Co(コバルト)粉体、Ni(ニッケル)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの他の少なくとも1種類)の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある。
【0062】
Cu(銅)を主成分としたアロイ粉体23(Cuを主成分とした合金粉体)の具体例としては、Cuの粉体、Feの粉体、Znの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成してアロイ成形物を作り、そのアロイ成形物を微粉砕した粒径が10μm〜200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体23は、金属粉体混合物の全重量に対するCuの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物の全重量に対するFeの粉体重量比が48%、金属粉体混合物の全重量に対するZnの粉体重量比が4%である。Cuの融点が1084.5℃、Feの融点が1536℃、Znの融点が419.58℃であるから、Znの粉体及びCuの粉体が溶融し、溶融したZn及びCuがバインダーとなってFeの粉体を接合している。
【0063】
Cu(銅)を主成分としたアロイ粉体23の他の具体例としては、Cuの粉体、Feの粉体、Agの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成してアロイ成形物を作り、そのアロイ成形物を微粉砕した粒径が10μm〜200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体23は、金属粉体混合物の全重量に対するCuの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物の全重量に対するFeの粉体重量比が46%、金属粉体混合物の全重量に対するAgの粉体重量比が6%である。Cuの融点が1084.5℃、Feの融点が1536℃、Agの融点が961.93℃であるから、Agの粉体及びCuの粉体が溶融し、溶融したAg及びCuがバインダーとなってFeの粉体を接合している。
【0064】
カーボン電極板24は、前面25及び後面26を有するとともに、所定面積及び所定の厚み寸法L1を有し、その平面形状が四角形に成形されている。なお、カーボン電極板24の平面形状に特に制限はなく、四角形の他に、円形や楕円形、多角形等の他のあらゆる平面形状に成形することができる。カーボン電極板24の一例としては、数μm〜数10μmのカーボングラファイト(黒鉛)粉末と導電性バインダー(導電性結合材)とを冷間静水圧プレスによって成形した後、約3000℃で黒鉛化したシート状の電極材を使用する。カーボン電極板24の他の一例としては、数μm〜数10μmのカーボングラファイト(黒鉛)粉末と導電性バインダー(導電性結合材)とを押出型から押し出し成形した後、約3000℃で黒鉛化したシート状の電極材を使用する。カーボン電極板24としては、ガラス状カーボンを使用することもできる。
【0065】
カーボン電極板24は、その厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。カーボン電極板24の前面25の全域及び後面26の全域(両面の全域)には、
図4に示すように、既述の複数のアロイ粉体23が担持されている。カーボン電極板24の前面25の全域及び後面26の全域は、アロイ粉体23によって被覆されている。アロイ粉体23は、カーボン電極板24の前面25の全域及び後面26の全域(両面)に導電性バインダー(導電性結合材)やプラズマ溶射によって担持される。なお、電気分解装置10(水素ガス発生装置)では、固体高分子電解質膜13とカーボン電極板24の両面(前後面25,26)に担持された複数のアロイ粉体23とが隙間なく重なり合い、固体高分子電解質膜13とそれらアロイ粉体23とが隙間なく密着している。
【0066】
カーボン電極板24の厚み寸法L1が0.03mm未満では、その強度が低下し、衝撃が加えられたときにカーボン電極板24(陽極11A,11B及び陰極12A,12B)が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合がある。カーボン電極板24の厚み寸法L1が0.3mmを超過すると、カーボン電極板24(陽極11A,11B及び陰極12A,12B)の電気抵抗が大きくなり、カーボン電極板24(陽極11A,11B及び陰極12A,12B)に電流がスムースに流れず、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bが電気分解装置10に使用されたときに電気分解装置10において電気分解を効率よく行うことができず、電気分解装置10において短時間に多量の水素ガスを発生させることができない。
【0067】
カーボン電極板24は、その厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にあるから、カーボン電極板24(陽極11A,11B及び陰極12A,12B)が高い強度を有してその形状を維持することができ、カーボン電極板24に衝撃が加えられたときのカーボン電極板24の破損や損壊を防ぐことができる。さらに、厚み寸法L1を前記範囲にすることで、カーボン電極板24(陽極11A,11B及び陰極12A,12B)の電気抵抗を小さくすることができ、カーボン電極板24(陽極11A,11B及び陰極12A,12B)に電流がスムースに流れ、陽極11A(又は陽極11B)及び陰極12A(又は陰極12B)が電気分解装置10に使用されたときに電気分解装置10において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置10において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0068】
図5は、他の一例として示す陽極11B及び陰極12Bの部分拡大正面図であり、
図6は、
図5のB−B線端面図である。
図5に示す陽極11B及び陰極12Bが
図3の陽極11A及び陰極12Aと異なるところは、カーボン電極板24の厚み方向へ重なる複数のアロイ粉体23によってアロイ粉体積層ポーラス構造物27がカーボン電極板24の前面25及び後面26(両面)に形成されている点にあり、その他の構成は
図3の陽極11A及び陰極12Aと同一であるから、
図3と同一の符号を付すとともに、
図3の陽極11A及び陰極12Aの説明を援用することで、この陽極11B及び陰極12Bのその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0069】
陽極11B及び陰極12Bは、
図3のそれらと同様に、電気分解装置10(水素ガス発生装置)のアノード及びカソードとして使用される(
図1参照)。陽極11B及び陰極12Bは、前面21及び後面22を有するとともに、所定面積及び所定の厚み寸法を有し、その平面形状が四角形に成形されている。陽極11B及び陰極12Bは、アロイ粉体23(合金粉体)と、両面(前後面25,26)にアロイ粉体23を担持させた所定面積のカーボン電極板24とから形成されている。
【0070】
カーボン電極板24の前面25の全域と後面26の全域(両面の全域)とには、カーボン電極板24の厚み方向へ重なり合った(積層された)複数のアロイ粉体23によってアロイ粉体積層ポーラス構造物27が形成されている。カーボン電極板24の前面25の全域及び後面26の全域は、アロイ粉体23によって被覆されている。アロイ粉体23は、アロイ成形物(合金成形物)を微粉砕することから作られている。アロイ成形物は、粉状に加工(微粉砕)された各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成(焼結)することから作られている。
【0071】
遷移金属や金属粉体混合物、アロイ成形物、アロイ粉体23は、
図3の陽極11A及び陰極12Aのそれらと同一である。遷移金属粉体の粒径やアロイ粉体23の粒径、カーボン電極板24の厚み寸法L1は、
図3の陽極11A及び陰極12Aのそれらと同一である。なお、電気分解装置10では、固体高分子電解質膜13とカーボン電極板24の両面(前後面25,26)に担持された複数のアロイ粉体23によって形成されたアロイ粉体積層ポーラス構造物27とが隙間なく重なり合い、固体高分子電解質膜13とアロイ粉体積層ポーラス構造物27とが隙間なく密着している。
【0072】
アロイ粉体積層ポーラス構造物27には、径が異なる多数の微細な流路28(通路孔)が形成されている。それら流路28(通路孔)には、水(水溶液)が通流する。それら流路28(通路孔)は、カーボン電極板24の前面25の側に開口する複数の通流口29とカーボン電極板24の後面26の側に開口する複数の通流口29とを有し、陽極11B及び陰極12Bの前面25に向かってアロイ粉体積層ポーラス構造物27を貫通しているとともに、陽極11B及び陰極12Bの後面26に向かってアロイ粉体積層ポーラス構造物27を貫通している。
【0073】
それら流路28は、カーボン電極板24の厚み方向へ不規則に曲折しながら延びているとともに、カーボン電極板24の外周縁から中心に向かってカーボン電極板24の径方向へ不規則に曲折しながら延びている。カーボン電極板24の径方向へ隣接して厚み方向へ曲折して延びるそれら流路28は、径方向において部分的につながり、一方の流路28と他方の流路28とが互いに連通している。カーボン電極板24の厚み方向へ隣接して径方向へ曲折して延びるそれら流路28は、厚み方向において部分的につながり、一方の流路28と他方の流路28とが互いに連通している。
【0074】
それら流路28(通路孔)の開口面積(開口径)は、カーボン電極板24の厚み方向に向かって一様ではなく、厚み方向に向かって不規則に変化しているとともに、カーボン電極板24の径方向に向かって一様ではなく、径方向に向かって不規則に変化している。それら流路28は、その開口面積(開口径)が大きくなったり、小さくなったりしながら厚み方向と径方向とへ不規則に開口している。また、前面25に開口する通流口29と後面26に開口する通流口29とは、その開口面積(開口径)が一様ではなく、その面積が相違している。それら流路28(通路孔)の開口径や通流口29の開口径は、1μm〜100μmの範囲にある。
【0075】
アロイ粉体積層ポーラス構造物27は、その空隙率が15%〜30%の範囲にあり、その相対密度が70%〜85%の範囲にある。アロイ粉体積層ポーラス構造物27の空隙率が15%未満であって相対密度が85%を超過すると、アロイ粉体積層ポーラス構造物27に多数の微細な流路28(通路孔)が形成されず、アロイ粉体積層ポーラス構造物27の比表面積を大きくすることができない。アロイ粉体積層ポーラス構造物27の空隙率が30%を超過し、相対密度が70%未満では、流路28(通路孔)の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、アロイ粉体積層ポーラス構造物27の強度が低下し、衝撃が加えられたときにアロイ粉体積層ポーラス構造物27が容易に破損又は損壊し、その形態を維持することができない場合がある。
【0076】
アロイ粉体積層ポーラス構造物27は、その空隙率及び相対密度が前記範囲にあるから、アロイ粉体積層ポーラス構造物27が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路28(通路孔)を有する多孔質となり、アロイ粉体積層ポーラス構造物27の比表面積を大きくすることができ、それら流路28(通路孔)を水(水溶液)が通流しつつ水(水溶液)をアロイ粉体積層ポーラス構造物27の接触面(アロイ粉体23の表面)に広く接触させることができる。
【0077】
アロイ粉体積層ポーラス構造物27は、その密度が5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲にある。アロイ粉体積層ポーラス構造物27の密度が5.0g/cm
2未満では、アロイ粉体積層ポーラス構造物27の強度が低下し、衝撃が加えられたときにアロイ粉体積層ポーラス構造物27が容易に破損又は損壊し、その形態を維持することができない場合がある。アロイ粉体積層ポーラス構造物27の密度が7.0g/cm
2を超過すると、アロイ粉体積層ポーラス構造物27に多数の微細な流路28(通路孔)が形成されず、アロイ粉体積層ポーラス構造物27の比表面積を大きくすることができない。
【0078】
カーボン電極板24の両面(前後面25,26)に形成されたアロイ粉体積層ポーラス構造物27は、その密度が前記範囲にあるから、アロイ粉体積層ポーラス構造物27が多数の微細な流路28(通路孔)を有する多孔質に成形され、アロイ粉体積層ポーラス構造物27の比表面積を大きくすることができ、それら流路28(通路孔)を水(水溶液)が通流しつつ水(水溶液)をアロイ粉体積層ポーラス構造物27の接触面(アロイ粉体23の表面)に広く接触させることができる。
【0079】
それら遷移金属の粉体の粒径が10μm未満では、遷移金属の粉体によって流路28(通路孔)が塞がれ、アロイ粉体積層ポーラス構造物27に多数の微細な流路28を形成することができず、アロイ粉体積層ポーラス構造物27の比表面積を大きくすることができない。それら遷移金属の粉体の粒径が200μmを超過すると、流路28(通路孔)の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、アロイ粉体積層ポーラス構造物27に多数の微細な流路28を形成することができず、アロイ粉体積層ポーラス構造物27の比表面積を大きくすることができない。それら遷移金属の粉体の粒径が前記範囲にあるから、アロイ粉体積層ポーラス構造物27が多数の微細な流路28(通路孔)を有する多孔質に成形され、アロイ粉体積層ポーラス構造物27の比表面積を大きくすることができ、それら流路28を水(水溶液)が通流しつつ水(水溶液)をアロイ粉体積層ポーラス構造物27の接触面(アロイ粉体23の表面)に広く接触させることができる。
【0080】
図7は、電気分解装置10を使用した電気分解の一例を説明する図であり、
図8は、電気分解装置10を利用した水素ガス生成システム30の一例を示す図である。
図7に示す電気分解では、水(水溶液)を電気分解し、水素と酸素とを発生させているが、水(H
2O)の他に、電気分解装置10を使用してNaOH水溶液、H
2SO
4水溶液、NaCl水溶液、AgNO
3水溶液、CuSO
4水溶液の電気分解が行われる。
【0081】
電気分解装置10における水の電気分解では、
図7に矢印で示すように、陽極用貯水槽16及び陰極用貯水槽17に水(H
2O)が給水され、陽極主電極18に電源から+の電流が給電されるとともに、陰極主電極19に電源から−の電流が給電される。陽極主電極18に給電された+の電流が陽極給電部材14から陽極11A又は陽極11B(アノード)に給電され、陰極主電極19に給電された−の電流が陰極給電部材15から陰極12A又は陰極12B(カソード)に給電される。
【0082】
陽極11A又は陽極11B(電極)では、2H
2O→4H
++4e
−+O
2の陽極反応(触媒作用)によって酸素が生成され、陰極12A又は陰極12B(電極)では、4H
++4e
−→2H
2の陰極反応(触媒作用)によって水素が生成される。プロトン(水素イオン:H
+)は、固体高分子電解質膜13内を通って陽極11又は陽極11Bから陰極12A又は陰極12B(電極)へ移動する。固体高分子電解質膜12には、陽極11A又は陽極11Bで生成されたプロトンが通流する。少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属から陽極11A又は陽極11B(電極)や陰極12A又は陰極12B(電極)が形成されているから、陽極11A又は陽極11Bや陰極12A又は陰極12Bが優れた触媒活性(触媒作用)を示し、電気分解装置10において効率よく電気分解が行われ、短時間に多量の水素ガスが発生する。
【0083】
なお、NaOH水溶液の電気分解では、陽極11A又は陽極11Bにおいて4OH
−→2H
2O+O
2+4e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12A又は陰極12Bにおいて2H
2O+2e
−→2OH
−+H
2の陰極反応(触媒作用)が起こる。H
2SO
4水溶液の電気分解では、陽極11A又は陽極11Bにおいて2H
2O→O
2+4H
++4e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12A又は陰極12Bにおいて2H
++2e
−→H
2の陰極反応(触媒作用)が起こる。
【0084】
NaCl水溶液の電気分解では、陽極11A又は陽極11Bにおいて2Cl
−→Cl
2+2e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12A又は陰極12Bにおいて2H
2O+2e
−→2OH
−+H
2の陰極反応(触媒作用)が起こる。AgNO
3水溶液の電気分解では、陽極11A又は陽極11Bにおいて2H
2O→O
2+4H
++4e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12A又は陰極12BにおいてAg
++e
−→Agの陰極反応(触媒作用)が起こる。CuSO
4水溶液の電気分解では、陽極11A又は陽極11Bにおいて2H
2O→O
2+4H
++4e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12A又は陰極12BにおいてCu
2++2e
−→Cuの陰極反応(触媒作用)が起こる。
【0085】
水素ガス生成システム30は、電気分解装置10と、電気分解装置10の陽極11A又は陽極11B及びと陰極12A又は陰極12Bとに電気を給電する直流電源31と、水(純水)を貯水する貯水タンク32と、水(純水)を給水する給水ポンプ33と、酸素気液分離器34と、水(純水)を給水する2台の循環ポンプ35,36と、水素気液分離器37と、水素を貯めるボンベ38(水素タンク)とから形成されている。
【0086】
水素ガス生成システム30は、貯水タンク32に貯水された水(純水)が給水ポンプ33によって酸素気液分離器34に給水され、酸素気液分離器34から流出した水が電気分解装置10に給水される。直流電源31から電気分解装置10に電気が給電され、電気分解装置10において電気分解が行われることで水が水素と酸素とに分解される。酸素は、酸素気液分離器34に流入し、気液分離された後、大気に放出される。酸素気液分離器34において気液分離された水は循環ポンプ35によって再び電気分解装置10に給水される。水素は、水素気液分離器37に流入し、気液分離された後、ボンベ38(水素タンク)に流入する。水素気液分離器37において気液分離された水は循環ポンプ36によって再び電気分解装置10に給水される。
【0087】
図9は、燃料極40(陰極12A又は陰極12B)及び空気曲41(陽極11A又は陽極11B)を使用した固体高分子形燃料電池39の側面図であり、
図10は、陽極11A又は陽極11B(空気極41)及び陰極12A又は陰極12B(燃料極40)の起電圧試験の結果を示す図である。
図11は、陽極11A又は陽極11B(空気極41)及び陰極12A又は陰極12B(燃料極40)のI−V特性試験の結果を示す図である。
【0088】
図9では、負荷50接続された状態を示しているが、起電圧試験では、負荷50が存在せず、無負荷である。起電圧試験及びI−V特性試験では、
図9に示す固体高分子形燃料電池39に電気分解装置10において使用した陽極11A又は陽極11B(空気極41)及び陰極12A又は陰極12B(燃料極40)を使用し、無負荷においてその起電圧を測定し、固体高分子形燃料電池39に負荷50を接続し、そのI−V特性を測定した。
【0089】
固体高分子形燃料電池39は、
図9に示すように、燃料極40(陰極12A又は陰極12B)及び空気極41(陽極11A又は陽極11B)と、燃料極40及び空気極41の間に位置(介在)する固体高分子電解質膜13(電極接合体膜)(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)と、燃料極40の厚み方向外側に位置するセパレータ42(バイポーラプレート)と、空気極41の厚み方向外側に位置するセパレータ43(バイポーラプレート)とから形成されている。
【0090】
それらセパレータ42,43には、反応ガス(水素や酸素等)の供給流路が刻設されている(彫り込まれている)。燃料極40や空気極41、固体高分子電解質膜13が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体44(Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体44をそれらセパレータ42,43が挟み込んでいる。固体高分子電解質膜13は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。燃料極40とセパレータ42との間には、ガス拡散層45が形成され、空気極41とセパレータ43との間には、ガス拡散層46が形成されている。燃料極40とセパレータ42との間であってガス拡散層45の上部及び下部には、ガスシール47が設置されている。空気極41とセパレータ43との間であってガス拡散層46の上部及び下部には、ガスシール48が設置されている。
【0091】
固体高分子形燃料電池39では、燃料極40(陰極12A又は陰極12B)に水素(燃料)が供給され、空気極41(陽極11A又は陽極11B)に空気(酸素)が供給される。燃料極40では、水素がH
2→2H
++2e
−の反応(触媒作用)によってプロトン(水素イオン、H
+)と電子とに分解される。その後、プロトンが固体高分子電解質膜13内を通って燃料極40から空気極41へ移動し、電子が導線49内を通って空気極41へ移動する。固体高分子電解質膜13には、燃料極40で生成されたプロトンが通流する。空気極41では、固体高分子電解質膜13から移動したプロトンと導線49を移動した電子とが空気中の酸素と反応し、4H
++O
2+4e→2H
2Oの反応によって水が生成される。少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属から燃料極40(陰極12A又は陰極12B)や空気極41(陽極11A又は陽極11B)が形成されているから、燃料極40(陰極12A又は陰極12B)や空気極41(陽極11A又は陽極11B)が優れた触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0092】
起電圧試験では、水素ガスを注入してから15分の間、燃料極40(陰極12A又は陰極12B)と空気極41(陽極11A又は陽極11B)との間(電極間)の電圧(V)を測定した。
図10の起電圧試験の結果を示す図では、横軸に測定時間(min)を表し、縦軸に燃料極40(陰極12A又は陰極12B)と空気極41(陽極11A又は陽極11B)との間(電極間)の電圧(V)を表す。白金族元素を利用した(担持させた)電極(白金電極)を使用した場合、固体高分子形燃料電池39では、
図10の起電圧試験の結果を示す図から分かるように、電極間の電圧が1.079(V)前後であったのに対し、燃料極40(白金レス電極)及び空気極41(白金レス電極)を使用した固体高分子形燃料電池39では、燃料極40(陰極12A又は陰極12B)と空気極41(陽極11A又は陽極11B)との間(電極間)の電圧(起電力)が1.01(V)〜1.02(V)であった。
【0093】
I−V特性試験では、燃料極40(陰極12A又は陰極12B)と空気極41(陽極11A又は陽極11B)との間(電極間)に負荷50を接続し、電圧と電流との関係を測定した。
図11のI−V特性試験の結果を示す図では、横軸に電流(A)を表し、縦軸に電圧(V)を表す。燃料極40(白金レス電極)及び空気極41(白金レス電極)を使用した固体高分子形燃料電池39では、
図11のI−V特性試験の結果を示す図から分かるように、白金族元素を利用した(担持させた)電極(白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池の電圧降下率と大差のない結果が得られた。
図10の起電圧試験の結果や
図11のI−V特性試験の結果に示すように、白金族元素を利用していない非白金の燃料極40(陰極12A又は陰極12B)及び空気極41(陽極11A又は陽極11B)が電子を放出させて水素イオンとなる反応を促進させる優れた触媒作用を有するとともに、白金を利用した電極と略同様の酸素還元機能(触媒作用)を有することが確認された。
【0094】
電気分解装置10は、それに使用される陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成したアロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体23と、アロイ粉体23を両面(前後面25,26)に担持させた所定面積のカーボン電極板24とから形成され、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、アロイ粉体23又はアロイ粉体積層ポーラス構造物27を有する白金レスの陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bが白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、白金レスの陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを使用した電気分解装置10において電気分解を効率よく行うことができるとともに、電気分解装置10において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0095】
電気分解装置10は、カーボン電極板24の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にあるから、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bの電気抵抗を小さくすることができ、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bに電流をスムースに流すことができ、白金レスの陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを利用して電気分解を確実に行うことができる。
【0096】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とし、カーボン電極板24の厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲にある陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを使用した電気分解装置10は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bが白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができるとともに、カーボン電極板24の厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bの電気抵抗を小さくすることができ、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを電流がスムースに流れ、白金レスの陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを使用した電気分解装置10において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置10において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0097】
Fe(鉄)の粉体を主成分とし、カーボン電極板24の厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲にある陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを使用した電気分解装置10は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bが白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができるとともに、カーボン電極板24の厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bの電気抵抗を小さくすることができ、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを電流がスムースに流れ、白金レスの陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを使用した電気分解装置10において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置10において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0098】
Cu(銅)の粉体を主成分とし、カーボン電極板24の厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲にある陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを使用した電気分解装置10は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bが白金族元素を含む陽極及び陰極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む陽極及び陰極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができるとともに、カーボン電極板24の厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bの電気抵抗を小さくすることができ、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを電流がスムースに流れ、白金レスの陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを使用した電気分解装置10において電気分解を効率よく行うことができ、電気分解装置10において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0099】
図12は、電気分解装置10に使用する陽極11A,11B及び陰極12A,12Bの製造方法を説明する図である。陽極11A又は陽極11B(電極)及び陰極12A又は陰極12B(電極)は、
図12に示すように、遷移金属選択工程S1、金属粉体混合物作成工程S2、金属粉体圧縮物作成工程S3、アロイ成形物作成工程S4、アロイ粉体作成工程S5、アロイ粉体担持工程S6を有する電極製造方法によって製造される。
【0100】
遷移金属選択工程S1では、各種の遷移金属51から選択する少なくとも3種類の遷移金属51の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属51の中から少なくとも3種類の遷移金属51(Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀))を選択する。
【0101】
遷移金属選択工程S1において、既述のように、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体混合物53(アロイ粉体23やアロイ粉体積層ポーラス構造物27)では、Cu(銅)及びZN(亜鉛)を選択し、又は、Mn(マンガン)及びMo(モリブデン)を選択する。Fe(鉄)を主成分とした金属粉体混合物53(アロイ粉体23やアロイ粉体積層ポーラス構造物27)では、Ni(ニッケル)及びCu(銅)を選択し、又は、Ti(チタン)及びAg(銀)を選択する。Cu(銅)を主成分とした金属粉体混合物53(アロイ粉体23やアロイ粉体積層ポーラス構造物27)では、Fe(鉄)及びZn(亜鉛)を選択し、又は、Fe(鉄)及びAg(銀)を選択する。
【0102】
金属粉体混合物作成工程S2では、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属51の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物53を作る。金属粉体混合物作成工程S2において、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体混合物53(アロイ粉体23やアロイ粉体積層ポーラス構造物27)では、遷移金属選択工程S1によって選択されたNi、Cu(銅)、ZN(亜鉛)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してNiの粉体52、Cuの粉体52、Znの粉体52を作成する。次に、Niの粉体52やCuの粉体52、Znの粉体52を混合機に投入して混合機によってNiの粉体52、Cuの粉体52、Znの粉体52を攪拌・混合し、Niの粉体52、Cuの粉体52、Znの粉体52が均一に混合・分散した金属粉体混合物53を作る。
【0103】
又は、遷移金属選択工程S1によって選択されたNi(ニッケル)、Mn(マンガン)、Mo(モリブデン)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してNiの粉体52、Mnの粉体52、Moの粉体52を作成する。次に、Niの粉体52やMnの粉体52、Moの粉体52を混合機に投入して混合機によってNiの粉体52、Mnの粉体52、Moの粉体52を攪拌・混合し、Niの粉体52、Mnの粉体52、Moの粉体52が均一に混合・分散した金属粉体混合物53を作る。
【0104】
金属粉体混合物作成工程S2において、Fe(鉄)を主成分とした金属粉体混合物53(アロイ粉体23やアロイ粉体積層ポーラス構造物27)では、遷移金属選択工程S1によって選択されたFe、Ni(ニッケル)、Cu(銅)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してFeの粉体52、Niの粉体52、Cuの粉体52を作成する。次に、Feの粉体52やNiの粉体52、Cuの粉体52を混合機に投入して混合機によってFeの粉体52、Niの粉体52、Cuの粉体52を攪拌・混合し、Feの粉体52、Niの粉体52、Cuの粉体52が均一に混合・分散した金属粉体混合物53を作る。
【0105】
又は、遷移金属選択工程S1によって選択されたFe(鉄)、Ti(チタン)、Ag(銀)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してFeの粉体52、Tiの粉体52、Agの粉体52を作成する。次に、Feの粉体52やTiの粉体52、Agの粉体52を混合機に投入して混合機によってFeの粉体52、Tiの粉体52、Agの粉体52を攪拌・混合し、Feの粉体52、Tiの粉体52、Agの粉体52が均一に混合・分散した金属粉体混合物53を作る。
【0106】
金属粉体混合物作成工程S2において、Cu(銅)を主成分とした金属粉体混合物53(アロイ粉体23やアロイ粉体積層ポーラス構造物27)では、遷移金属選択工程S1によって選択されたCu、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してCuの粉体52、Feの粉体52、Znの粉体52を作成する。次に、Cuの粉体52やFeの粉体52、Znの粉体52を混合機に投入して混合機によってCuの粉体52、Feの粉体52、Znの粉体52拌・混合し、Cuの粉体52、Feの粉体52、Znの粉体52が均一に混合・分散した金属粉体混合物53を作る。
【0107】
又は、遷移金属選択工程S1によって選択されたCu(銅)、Fe(鉄)、Ag(銀)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してCuの粉体52、Feの粉体52、Agの粉体52を作成する。次に、Cuの粉体52やFeの粉体52、Agの粉体52を混合機に投入して混合機によってCuの粉体52、Feの粉体52、Agの粉体52を攪拌・混合し、Cuの粉体52、Feの粉体52、Agの粉体52が均一に混合・分散した金属粉体混合物53を作る。
【0108】
金属粉体圧縮物作成工程S3では、金属粉体混合物作成工程S2によって作られた金属粉体混合物53を所定圧力で加圧し、金属粉体混合物53を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物54を作る。金属粉体圧縮物作成工程S3では、金属粉体混合物53を所定の金型に入れ、金型をプレス機によって加圧(プレス)するプレス加工によって金属粉体圧縮物54を作る。プレス加工時におけるプレス圧(圧力)は、500Mpa〜800Mpaの範囲にある。
【0109】
プレス圧(圧力)が500Mpa未満では、金属粉体混合物53を十分に圧縮することができず、所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物54を作ることができない。プレス圧(圧力)が800Mpaを超過すると、アロイ成形物作成工程S4によって作られるアロイ成形物55の硬度が必要以上に高くなり、アロイ粉体作成工程S5によって所期する粒径のアロイ粉体23を作ることができない。電極製造方法は、金属粉体混合物53を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、所定硬度の金属粉体圧縮物54を作ることができ、その金属粉体圧縮物54を焼成して所定硬度のアロイ成形物55を作ることができるとともに、アロイ成形物55を微粉砕した所定粒径のアロイ粉体23を作ることができる。
【0110】
金属粉体圧縮物作成工程S3において、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体圧縮物54では、Niの粉体52、Cu(銅)の粉体52、ZN(亜鉛)粉体52を混合した金属粉体混合物53の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物53をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物53を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物54を作る。又は、Niの粉体52、Mn(マンガン)の粉体52、Mo(モリブデン)の粉体52を混合した金属粉体混合物53の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物53をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物53を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物54を作る。
【0111】
金属粉体圧縮物作成工程S3において、Fe(鉄)を主成分とした金属粉体圧縮物54では、Feの粉体52、Ni(ニッケル)の粉体52、Cu(銅)の粉体52を混合した金属粉体混合物53の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物53をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物53を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物54を作る。又は、Feの粉体52、Ti(チタン)の粉体52、Ag(銀)の粉体52を混合した金属粉体混合物53の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物53をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物53を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物54を作る。
【0112】
金属粉体圧縮物作成工程S3において、Cu(銅)を主成分とした金属粉体圧縮物54では、Cuの粉体52、Fe(鉄)の粉体52、Zn(亜鉛)の粉体52を混合した金属粉体混合物53の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物53をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物53を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物54を作る。又は、Cuの粉体52、Fe(鉄)の粉体52、Ag(銀)の粉体52を混合した金属粉体混合物53の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物53をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物53を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物54を作る。
【0113】
アロイ成形物作成工程S4では、金属粉体圧縮物作成工程S3によって作られた金属粉体圧縮物54を炉(蒸気過熱炉や電気炉等)に投入し、金属粉体圧縮物54を炉において所定温度で焼成(焼結)し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物55を作る。アロイ成形物作成工程S4では、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属51のうちの少なくとも2種類の遷移金属51を溶融させる温度で金属粉体圧縮物54を長時間焼成する。焼成(焼結)時間は、3時間〜6時間である。アロイ成形物作成工程S4では、所定面積及び所定厚みに圧縮された金属粉体圧縮物54の焼成時において、少なくとも2種類の遷移金属51の粉体52が溶融し、溶融した遷移金属51をバインダーとして他の遷移金属51の粉体52を接合(固着)する。
【0114】
アロイ成形物作成工程S4において、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体圧縮物54では、Niの粉体52、Cu(銅)の粉体52、ZN(亜鉛)粉体52を混合した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を炉において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物55を作る。Niの粉体52、Cuの粉体52、Znの粉体52から形成されたアロイ成形物55では、Zn及びCuの粉体52を溶融させる温度(例えば、1100℃〜1200℃)で金属粉体圧縮物54を焼成(焼結)し、溶融したZn及びCuの粉体52によってNiの粉体52が接合(固着)される。
【0115】
アロイ成形物作成工程S4において、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体圧縮物54では、Niの粉体52、Mn(マンガン)の粉体52、Mo(モリブデン)の粉体52を混合した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を炉において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物55を作る。Niの粉体52、Mnの粉体52、Moの粉体52から形成されたアロイ成形物55では、Mn及びNiの粉体52を溶融させる温度(例えば、1460℃〜1500℃)で金属粉体圧縮物54を焼成し、溶融したMn及びNiの粉体52によってMoの粉体52が接合(固着)される。
【0116】
アロイ成形物作成工程S4において、Fe(鉄)を主成分とした金属粉体圧縮物54では、Feの粉体52、Ni(ニッケル)の粉体52、Cu(銅)の粉体52を混合した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を炉において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物55を作る。Feの粉体52、Niの粉体52、Cuの粉体52から形成されたアロイ成形物55では、Cu及びNiの粉体52を溶融させる温度(例えば、1460℃〜1500℃)で金属粉体圧縮物54を焼成し、溶融したCu及びNiの粉体52によってFeの粉体52が接合(固着)される。
【0117】
アロイ成形物作成工程S4において、Fe(鉄)を主成分とした金属粉体圧縮物54では、Feの粉体52、Ti(チタン)の粉体52、Ag(銀)の粉体52を混合した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を炉において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物55を作る。Feの粉体52、Tiの粉体52、Agの粉体52から形成されたアロイ成形物55では、Ag及びFeの粉体52を溶融させる温度(例えば、1540℃〜1600℃)で金属粉体圧縮物54を焼成し、溶融したAg及びFeの粉体52によってTiの粉体52が接合(固着)される。
【0118】
アロイ成形物作成工程S4において、Cu(銅)を主成分とした金属粉体圧縮物54では、Cuの粉体52、Fe(鉄)の粉体52、Zn(亜鉛)の粉体52を混合した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を炉において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物55を作る。Cuの粉体52、Feの粉体52、Znの粉体52から形成されたアロイ成形物55では、Zn及びCuの粉体52を溶融させる温度(例えば、1090℃〜1200℃)で金属粉体圧縮物54を焼成し、溶融したZn及びCuの粉体52によってFeの粉体52が接合(固着)される。
【0119】
アロイ成形物作成工程S4において、Cu(銅)を主成分とした金属粉体圧縮物54では、Cuの粉体52、Fe(鉄)の粉体52、Ag(銀)の粉体52を混合した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を炉において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物55を作る。Cuの粉体52、Feの粉体52、Agの粉体52から形成されたアロイ成形物55では、Ag及びCuの粉体52を溶融させる温度(例えば、1090℃〜1200℃)で金属粉体圧縮物54を焼成し、溶融したAg及びCuの粉体52によってFeの粉体52が接合(固着)される。
【0120】
アロイ粉体作成工程S5では、アロイ成形物作成工程S4によって作られたアロイ成形物55を微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してアロイ粉体23を作る。Ni(ニッケル)を主成分としたアロイ粉体23(Niを主成分とした合金粉体)の一例としては、Niの粉体52、Cuの粉体52、ZNの粉体52を均一に混合・分散した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を焼成してアロイ成形物55を作り、そのアロイ成形物55を微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。Ni(ニッケル)を主成分としたアロイ粉体23の他の一例としては、Niの粉体52、Mnの粉体52、Moの粉体52を均一に混合・分散した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を焼成してアロイ成形物55を作り、そのアロイ成形物55を微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。
【0121】
Fe(鉄)を主成分としたアロイ粉体23(Feを主成分とした合金粉体)の一例としては、Feの粉体52、Niの粉体52、Cuの粉体52を均一に混合・分散した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を焼成してアロイ成形物55を作り、そのアロイ成形物55を微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。Fe(鉄)を主成分としたアロイ粉体23の他の一例としては、Feの粉体52、Tiの粉体52、Agの粉体52を均一に混合・分散した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を焼成してアロイ成形物55を作り、そのアロイ成形物55を微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。
【0122】
Cu(銅)を主成分としたアロイ粉体23(Cuを主成分とした合金粉体)の一例としては、Cuの粉体52、Feの粉体52、Znの粉体52を均一に混合・分散した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を焼成してアロイ成形物55を作り、そのアロイ成形物55を微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。Cu(銅)を主成分としたアロイ粉体23の他の一例としては、Cuの粉体52、Feの粉体52、Agの粉体52を均一に混合・分散した金属粉体混合物53を圧縮した金属粉体圧縮物54を焼成してアロイ成形物55を作り、そのアロイ成形物55を微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。
【0123】
アロイ粉体担持工程S6では、アロイ粉体作成工程S5によって作られた複数のアロイ粉体23を所定面積及び0.03mm〜0.3mmの厚み寸法L1のカーボン電極板24の前面25の全域と後面26の全域(両面の全域)とに担持させる。又は、アロイ粉体担持工程S6では、複数のアロイ粉体23をカーボン電極板24の厚み方向へ重なり合うように(積層するように)、それらアロイ粉体23を所定面積及び0.03mm〜0.3mmの厚み寸法L1のカーボン電極板24の前面25の全域と後面26の全域(両面の全域)とに担持させ、カーボン電極板24の厚み方向へ重なり合う(積層した)複数のアロイ粉体23によって既述のアロイ粉体積層ポーラス構造物27を形成する。アロイ粉体担持工程S6では、アロイ粉体23をカーボン電極板24の両面(前後面25,26)に導電性バインダー(導電性結合材)やプラズマ溶射によって担持する。
【0124】
電気分解装置10に使用する陽極11A,11B及び陰極12A,12Bの電極製造方法は、各種の遷移金属51から選択する少なくとも3種類の遷移金属51の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属51の中から少なくとも3種類の遷移金属51を選択する遷移金属選択工程S1と、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属51の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物53を作る金属粉体混合物作成工程S2と、金属粉体混合物作成工程S2によって作られた金属粉体混合物53を所定圧力で加圧して金属粉体圧縮物54を作る金属粉体圧縮物作成工程S3と、金属粉体圧縮物作成工程S3によって作られた金属粉体圧縮物54を所定温度で焼成してアロイ成形物55を作るアロイ成形物作成工程S4と、アロイ成形物作成工程S4によって作られたアロイ成形物55を微粉砕してアロイ粉体23を作るアロイ粉体作成工程S5と、アロイ粉体作成工程S5によって作られたアロイ粉体23を所定面積のカーボン電極板24の両面(前後面25,26)に担持させるアロイ粉体担持工程S6との各工程によって陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを製造するから、白金族元素を利用しない白金レスの陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを廉価に作ることができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有して電気分解装置10に好適に使用することが可能な陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを作ることができる。
【0125】
電気分解装置10に使用する陽極11A,11B及び陰極12A,12Bの電極製造方法は、厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲のカーボン電極板24の前面25の全域と後面26の全域とにアロイ粉体23を担持させ、複数のアロイ粉体23を備えた陽極11A及び陰極12A、又は、複数のアロイ粉体23が重なり合ったアロイ粉体積層ポーラス構造物27が形成された陽極11B及び陰極12Bを作ることができるから、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bの電気抵抗を低くすることができ、陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bに電流がスムースに流れ、触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であり、電気分解装置10において短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な陽極11A又は陽極11B及び陰極12A又は陰極12Bを作ることができる。