【解決手段】造形物の造形方法は、n層目の焼結層の上面に任意の高さを有する変形部が生じた場合、次のn+1層目の焼結層を形成する際に当該変形部が生じた領域を避けてn+1層目の粉末層にレーザを照射する。そして、当該未焼結部分は、n+2層目の粉末層を形成した後、n+2層目の粉末層とともに焼結される。
作成目標とする造形物の造形データに基づき、造形テーブル上に形成された金属の材料粉末からなる各粉末層の所定領域にレーザを照射し、焼結層を積層形成する造形物の造形方法であって、
最も上側に位置するn層目の焼結層の上面の3次元形状データを取得する3次元形状データ取得工程と、
前記3次元形状データに基づき、前記n層目の焼結層の上面に対して凸となる任意の高さの変形部が生じているか否かを検知する変形部検出工程と、
前記変形部が生じている場合、前記変形部が生じた領域の座標データを含む2次元データを生成する2次元データ生成工程と、
初期のn+1層目の造形データと前記2次元データの座標を一致させて比較し、前記初期のn+1層目の造形データにて定義されたレーザ照射領域から前記2次元データにて定義された前記変形部が生じた領域を除外した、修正後のn+1層目の造形データを生成する修正後のn+1層目の造形データ生成工程と、
前記n層目の焼結層上に前記n+1層目の粉末層を形成するn+1層目の粉末層形成工程と、
前記修正後のn+1層目の造形データに基づき、前記n+1層目の粉末層にレーザを照射して焼結することによりn+1層目の焼結層を形成する、変形部が生じた領域を除くn+1層目の焼結層形成工程と、
前記n+1層目の焼結層上にn+2層目の粉末層を形成するn+2層目の粉末層形成工程と、
n+2層目の造形データに基づき、前記n+1層目の粉末層の前記変形部が生じた領域および前記n+2層目の粉末層にレーザを照射して焼結することにより、前記変形部が生じた領域の前記n+1層目の焼結層およびn+2層目の焼結層を形成する、前記変形部が生じた領域の前記n+1層目の焼結層およびn+2層目の焼結層形成工程と、
を備えていることを特徴とする造形物の造形方法。
前記n+1層目の粉末層形成工程では、材料粉末が貯蓄されたリコータヘッドによって材料粉末を供給するとともに前記リコータヘッドに取り付けられたブラシ状のブラシブレードによって平坦化することにより、前記n層目の焼結層上に前記n+1層目の粉末層を形成することを特徴とする前記1に記載の造形物の造形方法。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のような積層造形装置では、レーザ照射条件の設定ミスにより、レーザを照射して焼結層を形成する際に火花が飛び散り、この火花に含まれる材料粉末の残滓が焼結層の表面に付着して突起状の異常焼結部が発生することがある。そして、焼結層の上に形成される粉末層の厚みよりも発生した異常焼結部の高さが高い場合、当該粉末層の上面から異常焼結部が突出し、粉末層を平坦化させるブレードと異常焼結部とが衝突してブレードに損傷が生じるおそれがある。
【0005】
このような問題を解決するために、切削工具によって異常焼結部を切除することにより、造形加工を中断させることなく積層造形物の製造を行うことができる装置として、特許文献2に記載の積層造形装置がある。この積層造形装置では、各焼結層を形成する度に焼結層の表面に生じた異常焼結部の有無を検出し、異常焼結部が生じている場合、粉末層形成時のブレードの経路上にある異常焼結部を切除している。
【0006】
また、引用文献2のように切削を行わずとも、適切なレーザ照射条件のもとで造形を行うことにより、上記問題の元凶となる異常焼結部の発生を未然に防ぐことが可能である。
【0007】
それに対して、適切なレーザ照射条件のもとで造形を行った場合であっても、焼結層の一部領域に明らかに盛り上がっているような変形が発生することがある。より具体的には、例えば、材料粉末を焼結した際に生じるヒュームと呼ばれる煙やレーザが透過するレンズの汚れ、フォーカスシフトによるレーザの焦点位置のずれ等、事前に予期することのできない焼結条件の変化に伴う影響により、レーザの照射エネルギーが低下して焼結層を構成する材料粉末の一部が未焼結状態となり、低い照射エネルギーで焼結された領域がその周辺領域に対して凸となるように盛り上がることがある。
【0008】
このような変形が発生した場合、当該変形部をそのまま放置した状態で次回以降の焼結層を形成し続けると様々な問題を生じるおそれがあり、しばしば、変形が大きくなってブレードが引っ掛かってしまうことがある。
【0009】
ここで、粉末層一層当たりの厚みは、焼結後の焼結層の厚みが約50μmとなるように、約80μmに設定されている。材料粉末の粒径が約10〜50μmであることから、各粉末層の厚みは非常に薄いことが分かる。
【0010】
そのため、変形部の高さが当該焼結層の上に形成される粉末層の厚みより低く、その先端部が粉末層の上面から飛び出ていなくとも、粉末層を平坦化させている際、所定高さ以上に達した変形部が要因となってブレードに引っ掛かりが生じるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、予期することのできない焼結条件の変化に伴い発生した変形部が要因となって生じるブレードの引っ掛かりを未然に防止することができる造形物の造形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明の造形物の造形方法は、作成目標とする造形物の造形データに基づき、造形テーブル上に形成された金属の材料粉末からなる各粉末層の所定領域にレーザを照射し、焼結層を積層形成する造形物の造形方法であって、最も上側に位置するn層目の焼結層の上面の3次元形状データを取得する3次元形状データ取得工程と、前記3次元形状データに基づき、前記n層目の焼結層の上面に対して凸となる任意の高さの変形部が生じているか否かを検知する変形部検出工程と、前記変形部が生じている場合、前記変形部が生じた領域の座標データを含む2次元データを生成する2次元データ生成工程と、初期のn+1層目の造形データと前記2次元データの座標を一致させて比較し、前記初期のn+1層目の造形データにて定義されたレーザ照射領域から前記2次元データにて定義された前記変形部が生じた領域を除外した、修正後のn+1層目の造形データを生成する修正後のn+1層目の造形データ生成工程と、前記n層目の焼結層上に前記n+1層目の粉末層を形成するn+1層目の粉末層形成工程と、前記修正後のn+1層目の造形データに基づき、前記n+1層目の粉末層にレーザを照射して焼結することによりn+1層目の焼結層を形成する、変形部が生じた領域を除くn+1層目の焼結層形成工程と、前記n+1層目の焼結層上にn+2層目の粉末層を形成するn+2層目の粉末層形成工程と、n+2層目の造形データに基づき、前記n+1層目の粉末層の前記変形部が生じた領域および前記n+2層目の粉末層にレーザを照射して焼結することにより、前記変形部が生じた領域の前記n+1層目の焼結層およびn+2層目の焼結層を形成する、前記変形部が生じた領域の前記n+1層目の焼結層およびn+2層目の焼結層形成工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明では、n層目の焼結層の上面に任意の高さを有する変形部が生じた場合、次のn+1層目の焼結層を形成する際に当該変形部が生じた領域を避けてn+1層目の粉末層にレーザを照射する。そして、当該未焼結部分は、n+2層目の粉末層を形成した後、n+2層目の粉末層とともに焼結される。これにより、上述した変形が特定箇所に継続的に生じることを防止し、造形中の造形物を変形部が生じる前の状態にリセットすることができる。従って、粉末層形成時のブレードの引っ掛かりを未然に防止することができる。
【0014】
第2の発明の造形物の造形方法は、前記第1の発明において、前記n+1層目の粉末層形成工程では、材料粉末が貯蓄されたリコータヘッドによって材料粉末を供給するとともに前記リコータヘッドに取り付けられたブラシ状のブラシブレードによって平坦化することにより、前記n層目の焼結層上に前記n+1層目の粉末層を形成することを特徴とするものである。
【0015】
本発明では、n+1層目の粉末層形成工程では、材料粉末が貯蓄されたリコータヘッドによって材料粉末を供給するとともにリコータヘッドに取り付けられたブラシ状のブラシブレードによって平坦化することにより、n層目の焼結層上にn+1層目の粉末層を形成する。これにより、n層目の焼結層の上面にn+1層目の粉末層の厚みよりも高い高さを有する上記異常焼結部や変形部が生じた場合であってもブレードとの引っ掛かりを回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、予期することのできない焼結条件の変化に伴い発生した変形部によって生じるブレードの引っ掛かりを未然に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
積層造形装置1は、焼結式材料粉末積層造形装置である。
図1、
図2に示すように、積層造形装置1の造形槽内には、造形室1Aが設けられている。造形室1Aには、図示しない不活性ガス供給装置から不活性ガスが供給される。これにより、造形室1A内は、酸素濃度が可能な限り低くなるように構成されている。また、造形室1Aには、造形テーブル2Aが収容されている。造形テーブル2Aの上側には、金属の材料粉末が敷き詰められる造形空間が形成される。造形テーブル2Aの上には、その上側で造形物が積層造形される造形プレート4が配置される。
【0020】
図1、
図2に示すように、粉末層形成装置2は、造形テーブル2Aと、造形テーブル2Aを支持するとともに昇降させる支持機構2Bと、支持機構2Bに動作を伝達する伝達機構2Cと、支持機構2Bを駆動する支持機構駆動モータを含む図示しない駆動装置等を有している。造形テーブル2Aは、粉末層を形成する度に、次に形成される粉末層の厚さに相当する分だけ下降する。
【0021】
図3、
図4に示されるように、リコータヘッド3は、ブレード3Aと材料貯蓄箱3Bとガイド機構3Cとからなる。ガイド機構3Cは、一対の軸受31と、各軸受31R,31Lがそれぞれ受ける一対の軸材32であるガイドレール32R,32Lを有している。リコータヘッド3は、後述するブレードサーボモータ制御装置19の走査指令に基づき、ガイド機構3Cのガイドレール32R,32Lに沿って造形テーブル2A上を左右方向に移動する。これにより、材料貯蓄箱3Bから造形テーブル2A上に材料粉末を供給するとともにブレード3Aによって平坦化することにより、造形プレート4上に粉末層を形成する。
【0022】
粉末層の形成後にリコータヘッド3が待機する待機場所の上方には、材料貯蓄箱3Bに材料粉末を供給する図示しない材料供給装置が備えられている。材料供給装置は、造形物の造形中、材料貯蓄箱3Bの中の材料粉末が不足しないように、適宜、材料貯蓄箱3Bに材料粉末を供給する。
【0023】
レーザ照射装置5は、造形プレート4上の粉末層の一部または全領域に焼結層を形成する。レーザ照射装置5は、2つのガルバノミラーを含むレーザ走査装置5Aとレーザ発振器5Bと焦点レンズ5Cと、それらを制御するレーザ制御装置20等を有している。
【0024】
レーザ発振器5Bから出力される所定のエネルギーを有するレーザは、レーザ伝達部材を通して、レーザ走査装置5Aのガルバノミラーに到達する。一対のガルバノミラーによって反射されたレーザは、焦点レンズ5Cで収束され、造形室1Aの天板に穿設されている通孔に設けられた透過レンズ1Dを通過する。焦点レンズ5Cで収束されたレーザは、予め定められているスポット径で照射される。また、レーザ照射位置の原点は、粉末層に対して直交するように、レーザ発振器5Bから鉛直方向にレーザを照射したときの照射位置であって、粉末層が形成される造形プレート4の中心位置と略一致する。
【0025】
レーザ照射装置5のレーザ走査装置5Aは、造形室1Aの天板上に設置される。レーザ走査装置5Aの各ガルバノミラーは、それぞれガルバノミラーを回転させる図示しない電動アクチュエータを備えている。電動アクチュエータは、レーザ制御装置20の走査指令に従って駆動する。レーザ走査装置5Aは、レーザ制御装置20によってレーザのスポットを各照射領域の一端側から他端側へと順に所定の走査経路に沿って所定の移動速度で移動させる。
【0026】
図5に示すように、CAD装置12は、積層造形装置1によって造形される造形物のソリッドデータを作成するためのものである。CAD装置12は、造形物のソリッドデータを作成する演算部13と演算部13で作成されたソリッドデータを記憶する記憶部14等を備えている。なお、ソリッドデータとは、所定の造形物の形状および寸法を示す三次元データである。
【0027】
CAM装置15は、CAD装置12によって作成されたソリッドデータから造形データを生成するためのものである。CAM装置15は、CAD装置12によって作成されたソリッドデータから造形データを生成する演算部16と、CAD装置12によって作成されたソリッドデータ、および、演算部16で生成された造形データを記憶する記憶部17等を備えている。なお、造形データとは、所定の造形物を造形する際の積層造形装置を構成する各装置の動作手順を示したものである。造形データには、例えば、レーザの照射領域の座標データが含まれている。レーザの照射領域の座標データは、レーザ照射部5から粉末層に向けて照射されるレーザの照射領域を層ごとに定義するために用いられる。
【0028】
数値制御装置6は、記憶部7と演算部8等を備えている。記憶部7には、CAM装置15で生成された造形物の造形データ等が記憶される。演算部8は、記憶部7に記憶された造形データ等を解読する解読部9と、解読部9によって解読された造形データに基づき指令を出力する指令部10と、指令部10からの指令を上述した各装置に分配して出力する分配出力部11等を有している。
【0029】
ブレードサーボモータ制御装置19には、演算部8の指令部10からの移動指令が信号或いはデータで入力される。図示しないブレードサーボモータは、ブレードサーボモータ制御装置19から送信された指令に基づき、造形テーブル2A上でブレード3Aを水平方向に往復移動させる。
【0030】
レーザ制御装置20は、図示しないアクチュエータ制御装置および駆動電流供給装置等を備えている。レーザ制御装置20は、造形データに基づき、アクチュエータ制御装置に走査指令を信号あるいはデータで出力する。レーザ照射装置5の各電動アクチュエータは、駆動電流供給装置から走査指令に従う駆動電流の供給を受けて、所望の方向にガルバノミラーを傾斜させる。
【0031】
また、本実施形態では、n層目の焼結層の上面にn+1層目の焼結層の厚み以上の高さを有する変形部が生じた場合、次のn+1層目の焼結層を形成する際に当該変形部が生じた領域を避けてレーザを照射する。そして、当該未焼結部分は、n+2層目の粉末層とともに焼結される。以下では、n層目の焼結層形成後からn+2層目の焼結層を形成するまでの各装置の制御および動作について、
図7〜
図10を参照しつつ、
図5のブロック図および
図6のフローチャートに沿って詳細に説明する。
【0032】
まず、3次元測定器18は、造形中の造形物の最上層であるn層目の焼結層の上面の3次元形状データD1を取得する(ステップS1)。
図1,
図2に示すように、3次元測定器18は、例えば、カメラ18aとプロジェクタ18bとからなる。カメラ18aおよびプロジャクタ18bは、造形槽1A内の上部に設置される。カメラ18aおよびプロジャクタ18bは、格子投影法を用いることにより、n層目の焼結層の上面の3次元形状データD1を取得する。3次元形状データD1は、n層目の焼結層の上面に対して凸となる変形部が生じた領域の座標データおよび当該変形部の高さのデータ等を含んでいる。3次元形状データD1は、形状修正演算装置21の記憶部22に記憶される。
【0033】
次に、形状修正演算装置21の演算部23は、3次元形状データD1を解析し、変形部の有無を検知する(ステップS2)。より具体的には、形状修正演算装置21の演算部23は、例えば、
図7(a)に示すように、n層目の焼結層26の上面に生じた変形部26a〜26iの高さを解析し、n層目の焼結層26の上に形成されるn+1層目の焼結層28の厚みh1以上の高さを有する変形部26a〜26eを検出した場合、「n層目の焼結層に変形部が生じている」と判断する。また、n層の焼結層の上面に生じたすべての変形部の高さがn+1層目の焼結層の厚みよりも低い場合、形状修正演算装置21の演算部23は、「n層目の焼結層に変形部は生じていない」と判断する。なお、粉末層の厚みとその粉末層が焼結された焼結層の厚みのデータは、形状修正演算装置21の記憶部22に記憶されている。例えば、約80μmの厚みの粉末層である場合、その粉末層を焼結して得られる焼結層の厚みは約50μmとなる。
【0034】
「n層目の焼結層に変形部が生じている」と判断した場合、形状修正演算装置21の演算部23は、n+1層目の焼結層の厚み以上の高さを有する変形部が生じた領域の座標データを含む2次元データD2を生成する(ステップS3)。より具体的には、2次元データD2は、例えば、
図7(b)のように表され、
図7(a)に示す変形部26aが生じた領域は領域R1a、変形部26bが生じた領域は領域R1b、変形部26cが生じた領域は領域R1c、変形部26dが生じた領域は領域R1d、変形部26eが生じた領域は領域R1eに対応している。2次元データD2は、形状修正演算装置21からCAM装置15に送信され、記憶部17に記憶される。
【0035】
CAM装置15の演算部16は、n+1層目の焼結層を形成する際の初期の造形データD3と2次元データD2の座標を一致させて比較し、初期の造形データD3によって定義された本来のn+1層目のレーザ照射領域から変形部が生じた領域を除外した、修正後のn+1層目の造形データD4を生成する(ステップS4)。修正後のn+1層目の造形データD4は、例えば、
図9に示すように、
図8に示す本来のn+1層目のレーザ照射領域R2から
図7(b)に示す変形部26a〜26eが生じた領域R1を除外した領域R3として表される。修正後のn+1層目の造形データD4は、CAM装置15の記憶部17に記憶される。修正後のn+1層目の造形データD4は、CAM装置15から数値制御装置6に送信され、記憶部7に記憶される。
【0036】
数値制御装置6に設けられた演算部8の解読部9は、修正後のn+1層目の造形データD4を解読する。指令部10は、修正後のn+1層目の造形データD4に指示されている順番で、分配出力部16を介してブレードサーボモータ制御装置19およびレーザ制御装置20等に指令を出力し、n+1層目の粉末層および焼結層を形成する(ステップS5、ステップS6)。より具体的には、図示しない支持機構駆動モータを駆動させることにより、造形テーブル2Aを下降させる。なお、造形テーブル2Aの下降量は、全ての層において一定である。言い換えれば、すべての粉末層の厚みは一定である。次に、リコータヘッド3は、例えば、
図10(a)に示すように、ブレードサーボモータ制御装置19からの指令に基づき、n層目の焼結層26の上にn+1層目の粉末層27を形成する。その後、例えば、
図10(b)に示すように、レーザ照射装置5は、レーザ制御装置20からの指令に基づき、n+1層目の粉末層27上に新たに定義された照射領域R3にレーザを照射し、n+1層目の焼結層28を形成する。
【0037】
なお、上記ステップS2において、形状修正演算装置21が「n層目の焼結層に変形部は生じていない」と判断した場合、数値制御装置6は、n+1層目の初期の造形データD3に基づき、積層造形装置1を制御する各装置に指令を出力し、n+1層目の粉末層および焼結層を形成する(ステップS7、ステップS8)。
【0038】
次に、数値制御装置6に設けられた演算部8の解読部9は、初期のn+2層目の造形データD5を解読する。指令部10は、初期のn+2層目の造形データD5に指示されている順番で、分配出力部16を介してブレードサーボモータ制御装置19およびレーザ制御装置20等に指令を出力し、n+2層目の粉末層および焼結層を形成する(ステップS9、ステップS10)。より具体的には、図示しない支持機構駆動モータを駆動させることにより、造形テーブル2Aを下降させる。そして、リコータヘッド3は、例えば、
図11(a)に示すように、ブレードサーボモータ制御装置19からの指令に基づき、n+1層目の焼結層28の上にn+2層目の粉末層29を形成する。その後、例えば、
図11(b)に示すように、レーザ照射装置5は、レーザ制御装置20からの指令に基づき、未焼結となっている領域R1のn+1層目の粉末層27、および、n+2層目の粉末層29にレーザを照射し、変形部26a〜26eが生じた領域R1のn+1層目の焼結層28およびn+2層目の焼結層30を形成する。
【0039】
なお、未焼結となっている領域R1にレーザを照射する際には、その他の領域に対してレーザの照射条件を変化させても構わない。より具体的には、例えば、その他の領域と比較して、照射経路を辿るレーザの移動速度を遅くする、或いは、レーザの照射エネルギーを高くしても構わない。
【0040】
(作用・効果)
本実施形態では、n層目の焼結層の上面に、n層目の焼結層の上に形成されるn+1層目の焼結層の厚み以上の高さを有する変形部が生じた場合、本来のn+1層目のレーザ照射領域から変形部が生じた領域を除外した修正後のn+1層目の造形データD4を生成し、造形データD4に基づいてn+1層目の粉末層にレーザ照射を行い、変形部が生じた領域を除いた領域が焼結されたn+1層目の焼結層を形成する。そして、変形部が生じた領域は、変形部の上にn+1層目の粉末層とn+2層目の粉末層とを形成した後に焼結される。これにより、上述した変形が特定箇所に継続的に生じることを防止し、造形中の造形物を変形部が生じる前の状態にリセットすることができる。従って、粉末層形成時のブレードの引っ掛かりを未然に防止することができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0042】
本実施形態では、各粉末層の厚みは一定であると記載したが、各粉末層の厚みは、その下の焼結層に生じた変形部の高さに応じて変化させても構わない。言い換えれば、造形テーブル2Aの下降量は、その下の焼結層に生じた変形部の高さに応じて変化させても構わない。より具体的には、その下の焼結層に生じた変形部のうち、最も高さの高い変形部よりも粉末層の厚みが厚くなるように、3次元形状データD1の解析結果に応じて造形テーブル2Aの下降量を層毎に適宜変化させても構わない。これにより、粉末層の上面から変形部が飛び出ることを防止し、当該変形部とブレード3Aとの衝突を確実に防止することができる。
【0043】
また、ブレード3Aは、ブラシ状のブラシブレードによって構成されていても構わない。これにより、n層目の焼結層にn+1層目の粉末層の厚みよりも高い高さを有する異常焼結部や変形部が生じた場合であっても、ブレードを損傷させることなく粉末層を形成することができる。
【0044】
また、カメラ18aおよびプロジャクタ18bは、格子投影法を用いることにより、n層目の焼結層の上面の3次元形状データD1を取得すると記載したが、n層目の焼結層の上面の3次元形状データD1が取得可能であれば、3次元測定器およびその取得方法は如何なるものであっても構わない。例えば、プロジャクタ18bに替えて、材料粉末が焼結されない範囲内の出力を有する微弱なレーザをレーザ照射装置5から投影してn層目の焼結層の上面をスキャンし、n層目の焼結層の上面の3次元形状データD1を取得しても構わない。
【0045】
また、n層目の焼結層26の上に形成されるn+1層目の焼結層28の厚みh1以上の高さを有する変形部26a〜26eを検出した場合、「n層目の焼結層に変形部が生じている」と判断すると記載したが、「n層目の焼結層に変形部が生じている」と判断する変形部の高さは、任意に設定して構わない。例えば、「n層目の焼結層に変形部が生じている」と判断する変形部の高さを各層の厚みよりも十分小さい値、或いは、ゼロよりも大きい値に設定し、変形部が生じた全ての領域を避けてn+1層目の粉末層をレーザ焼結しても構わない。
【0046】
また、形状修正演算装置21は、例えば、3次元測定器18等、積層造形装置1を構成する何れかの装置内に設けられていても構わない。
【0047】
また、上述した一連の工程は、一層毎、或いは、複数の焼結層を形成する度に行っても構わない。
作成目標とする造形物の造形データに基づき、造形テーブル上に形成された金属の材料粉末からなる各粉末層の所定領域にレーザを照射し、焼結層を積層形成する造形物の造形方法であり、最も上側に位置するn層目の焼結層に前記粉末層の厚みよりも小さい高さを有する変形部が発生する場合の造形物の造形方法であって、
前記n層目の焼結層の上面の3次元形状データを取得する3次元形状データ取得工程と、
前記3次元形状データに基づき、前記n層目の焼結層の上面に対して凸となる高さの変形部が生じているか否かを検知する変形部検出工程と、
前記変形部が生じている場合、前記変形部が生じた領域の座標データを含む2次元データを生成する2次元データ生成工程と、
事前に作成されたn+1層目の造形データと前記2次元データの座標を一致させて比較し、前記n+1層目の造形データにて定義されたレーザ照射領域から前記2次元データにて定義された前記変形部が生じた領域を除外した、修正後のn+1層目の造形データを生成する修正後のn+1層目の造形データ生成工程と、
前記n層目の焼結層上に前記変形部が生じた領域を含むn+1層目の粉末層を形成するn+1層目の粉末層形成工程と、
前記修正後のn+1層目の造形データに基づき、前記n+1層目の粉末層にレーザを照射して焼結することによりn+1層目の焼結層を形成する、変形部が生じた領域を除くn+1層目の焼結層形成工程と、
前記n+1層目の焼結層上にn+2層目の粉末層を形成するn+2層目の粉末層形成工程と、
n+2層目の造形データに基づき、前記n+1層目の粉末層の前記変形部が生じた領域および前記n+2層目の粉末層にレーザを照射して焼結することにより、前記変形部が生じた領域の前記n+1層目の焼結層およびn+2層目の焼結層を形成する、前記変形部が生じた領域の前記n+1層目の焼結層およびn+2層目の焼結層形成工程と、を備えていることを特徴とする造形物の造形方法。
前記n+1層目の粉末層形成工程では、材料粉末が貯蓄されたリコータヘッドによって材料粉末を供給するとともに前記リコータヘッドに取り付けられたブラシ状のブラシブレードによって平坦化することにより、前記n層目の焼結層上に前記n+1層目の粉末層を形成することを特徴とする請求項1記載の造形物の造形方法。