【解決手段】質問応答システム25の機能を、質問受付回答システム10と第1次回答システム30の機能に分離する。質問受付回答システムで受け付けた質問を、第1次回答システムに送る。第1次回答システムは、質問に対する第1次回答を作成して質問受付回答システムに返信する。質問受付回答システムは、受信した第1次回答に基づいて最終回答を作成し、質問端末に送信する。第1次回答システムに、共通属性を有する複数の想定質問については同一の第1次回答となるように、複数の想定質問と第1次回答を機械学習させる。第1次回答を受信した質問受付回答システムは、受領した第1次回答に対応する共通属性を有する複数の想定質問の全ての回答を含む最終回答を作成する。最終回答は、最終回答記憶部18に記憶する。
質問端末からの質問を受け付ける質問受付回答システムと、該質問受付回答システムからの質問を受け取り該質問に対応する第1次回答を前記質問受付回答システムに返信する第1次回答システムとを備え、
前記質問受付回答システムは、前記第1次回答システムからの前記第1次回答に対応する最終回答を記憶しており、前記第1次システムからの前記第1次回答を受け取ったときに、該第1次回答に対応する前記最終回答を読みだして前記質問端末に返信する質問応答システム。
前記第1次回答システムは、あらかじめ定められた所定の範囲の質問に対して同一の識別子を前記第1次回答として前記質問受付回答システムに送信するよう学習しており、
前記質問受付回答システムは、前記識別子に対応する文字情報、音声情報及び/又は画像情報を前記質問端末に対する最終回答として記憶しており、前記第1次回答システムから前記第1次回答として前記識別子を受信したときに、該識別子に対応する前記最終回答を読みだして、質問を受け付けた前記質問端末に返信することを特徴とする請求項2に記載の質問応答システム。
さらに画像解析及び画像認識システムを備えており、前記質問端末からの画像データによる質問を受け付けて、該画像データによる質問に対応する前記最終回答として文字情報、音声情報及び/又は画像情報を前記質問端末に返信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の質問応答システム。
質問端末からの質問を受け付ける質問受付回答システムと、該質問受付回答システムからの質問を受け取り該質問に対応する第1次回答を前記質問受付回答システムに返信する第1次回答システムとを備える質問応答方法であって、
(a)前記質問受付回答システムにおいて、前記質問端末からの質問を受け付けて、該質問を前記第1次回答システムに送信するステップと、
(b)前記第1次回答システムにおいて、前記質問受付回答システムからの前記質問を受け付けて、該質問に対する第1次回答を所定の識別子として出力して前記質問受付システムに送信するステップと、
(c)前記質問受付回答システムにおいて、前記第1次回答システムから前記識別子を受信したときに、複数の識別子に対応して記憶している最終回答候補の中から受信した前記識別子に対応する前記最終回答候補を読みだして、該読みだした最終回答候補を最終回答として前記質問を送信した前記質問端末に送信するステップと、
を備える質問応答システムの質問応答方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のシステムにおいては、質問に対する回答精度を上げるために、大量の知識データを収集して機械学習させる必要があった。また質問応答システムを導入した後の運用管理においても、人工知能等に関する高度の知識を必要とした。
そのため、質問応答システムの導入にあたっては、膨大な知識データの収集及び運用開始前の機械学習に、多くの時間と手間と膨大なコストが必要であった。さらに、システムの運用開始後においても人工知能の知識更新のための機械学習やシステムのメンテナンスに多くの時間とコストが必要であり、人工知能等を利用する質問応答システムの運用管理には、人工知能に関する専門知識有する人材の確保が必要であった。
【0008】
特許文献3は、システム稼働後の運用管理面での問題点に鑑み、メンテナンスモードにおいて、システム管理端末を使用してシステム管理者が応答内容決定手段からの応答データログ等を受信することや、入力をシミュレートして知識データの妥当性を検証できるようにしている。また、この特許文献3の発明は、システム管理者が人工知能に関する高度に専門的な知識を有していなくとも、メンテナンスモードにおいて人工知能への想定質問文字列や応答文字列の変更を行うことができるように支援するものである。
【0009】
しかし、想定質問文の入力やそれに対する応答文の変更は、人工知能の知識データそのものを変更するものである。そのため、特許文献3のシステムにおいても、ログデータの収集や確認、及び入力のシミュレートに関しては高度の知識は要求されないものの、システム管理者には、人工知能に関する一定程度の専門的スキルが求められる(特許文献3の(0048)の後段の記載を参照)。また、これらの人工知能の知識データの変更には、ニューラルネットワークを再構築するための再学習等が必要となり、人工知能に関する専門的知識の他に、多くの時間と手間を必要とする。したがって、従来の人工知能を用いた質問応答システムにおいては、専門知識を有しないシステム利用者が、自社で導入した質問応答システムを改善して順次成長させていくことに直接関与することはできなかった。
また、従来の人工知能を使った質問応答システムでは、システムを実際に運用しながら質問に対する具体的な回答内容を適宜柔軟に変更する簡単な仕組みがないために、質問応答システムを各システム利用者の要望に合わせて柔軟に進化させていくことが困難だった。
【0010】
以上の状況下、資力の乏しい中小企業が質問応答システムの導入を希望しても、従来の質問応答システムでは導入に膨大なコストがかかること、及びシステム運用管理のための専門的な人材確保が必要となること等が大きな障壁となり、システム導入のハードルは極めて高いものであった。また、この導入障壁を乗り越えることができたとしても、質問応答システムをシステム利用者が自社のニーズの変化に合わせて直接システムを改善し、システムを成長させていくということはできなかった。さらに、従来の質問応答システムでは、簡単な構成を追加するだけで、複数種類の言語の質問に対応することはできなかった。
【0011】
本発明は上記のような従来の質問応答システムの問題点及び社会的ニーズに鑑みてなされたものであり、システム導入コストを低減化でき、システム運用開始後においては簡単に最終回答を変更することができ、質問応答システムを改善し進化させることができる人工知能を利用した質問応答システム、同質問応答システムを構成する質問受付回答システム、第1次回答システム、及びそれらを用いた質問応答方法を提供することを目的とする。
また本発明の他の目的は、簡単な構成で多種類の言語による質問を受け付け、質問の言語に応じて所定の回答言語により質問端末に対して最終回答を提供することができる簡単な構成の質問応答システム、同質問応答システムを構成する質問受付回答システム、第1次回答システム、及びそれらを用いた質問応答方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明の他の目的は、複数の利用者で共有でき、導入コストを下げることができる人工知能を利用した質問応答システム、同質問応答システムを構成する質問受付回答システム、第1次回答システム、並びにそれらを用いた質問応答方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、質問応答システムを、質問を受け付けて質問に対する最終回答を質問端末に返信する質問受付回答システムと人工知能を備える第1次回答システムとに分離した構成とし、第1次回答システムは質問受付回答システムからの要求に応じて質問に対する第1次回答を識別子として提供し、質問受付回答システムは最終回答候補を第1次回答システムから受領する前記第1次回答の識別子に対応づけて記憶しておき、前記第1次回答システムからの第1次回答に基づいて前記最終回答候補を読み出して、最終回答を質問端末装置に返信するものである。
【0013】
本発明の第1の態様に係る質問応答システムは、質問端末からの質問を受け付けて該質問に対する最終回答を前記質問端末に返信するコンピュータを用いた質問受付回答システムと、人工知能を備えており要求に応じて質問に対する第1次回答を返信する第1次回答システムとを分離して備える質問応答システムであって、
前記第1次回答システムは、
前記質問受付回答システムからの前記質問に対する前記第1次回答の返信要求を受け付けて、前記人工知能に前記質問受付回答システムから受信した前記質問を入力し、前記人工知能からの前記質問に対する第1次回答を前記質問受付回答システムに対して送信するインターフェース手段と、
複数の想定質問と、該想定質問に対応する第1次回答として所定の識別子とを機械学習することにより、前記質問受付回答システムからの要求に応じて、該質問受付回答システムからの質問に対する第1次回答を前記識別子として出力する人工知能とを、備え、
前記質問受付回答システムは、
前記質問端末からの質問を受け付ける受付手段と、
前記質問受付手段により受け付けた前記質問を前記第1次回答システムに送信して前記第1次回答を要求し、前記第1次回答システムからの前記第1次回答を受け取る第1次回答問合手段と、
前記人工知能により機械学習した前記識別子と1:1に紐付して、該識別子に対応する最終回答候補を記憶している最終回答記憶部と、
前記第1次回答システムから受信した前記第1次回答に基づいて、前記最終回答記憶部から前記第1次回答の前記識別子に対応する前記最終回答候補を読み出して、読み出した該最終回答候補に基づいて前記質問端末に対して最終回答を返信する最終回答手段と
を備えることを特徴とする。
【0014】
ここで、第1次回答を提供する第1次回答システムとしては、商用サービスの目的で提供されている汎用の人工知能システムを利用することができ、質問受付回答システムと第1次回答システムは通信ネットワークを介して接続することができる。このように質問応答システムを質問受付回答システムと第1次回答システムとに分離することにより、本質問受付回答システムが、人工知能と切り離されているため、第1次回答システムの人工知能の機械学習と、質問受付回答システムの最終回答候補とを切り離して設計することができる。また人工知能の機械学習とは別に、質問への回答のヒット率と切り離して独自に修正、変更、追加することも可能となる。
【0015】
本発明の第1の態様に係る質問受付回答システムは、質問端末からの質問を受け付けるコンピュータを用いた質問受付回答システムと、人工知能を備え、複数の想定質問と、該想定質問に対応する第1次回答として所定の識別子とを機械学習しており、前記質問受付回答システムからの質問に対する第1次回答を前記識別子として出力する第1次回答システムとを分離して備える質問応答システムにおける前記質問受付回答システムであって、
前記質問端末からの質問を受け付ける質問受付手段と、
前記質問受付手段により受け付けた前記質問を前記第1次回答システムに送信して前記第1次回答を要求し、前記第1次回答システムからの前記第1次回答を受け取る第1次回答問合手段と、
前記第1次回答システムにおいて機械学習した前記識別子と1:1に紐付けして、該識別子に対応する最終回答候補を記憶している最終回答記憶部と、
前記第1次回答システムから受信した前記第1次回答に基づいて、前記最終回答記憶部から前記第1次回答の前記識別子と対応する前記最終回答候補を読み出して、読み出した該最終回答候補に基づいて前記質問端末に対して最終回答を返信する最終回答手段と、
を備えることを特徴とする。
この態様に係る発明は、上述した、質問受付回答システムと第1次回答システムを組み合わせた質問受付回答システムを構成するサブコンビネーション発明である。
【0016】
さらに本発明の他の態様にかかる質問応答システムまたは質問受付回答システムは、前記第1次回答システムの前記人工知能が、共通属性を備える1又は複数の想定質問を一つのグループとした複数の前記質問グループを構成する多数の前記想定質問と、前記質問グループと1:1で対応する一つの識別子を前記各質問グループに含まれる前記想定質問の第1次回答とするよう機械学習していることを特徴とする。
【0017】
上記質問応答システムまたは質問受付回答システムにおいて、前記質問受付手段は、さらに前記質問端末からの前記質問に付随する該質問の固有属性情報を取得するよう構成することができ、前記最終回答記憶部は、必要に応じて、前記固有属性情報に対応して異なる最終回答候補を記憶するように構成することができる。
固有属性情報としては、利用者システムの識別情報、質問の言語の種類を示す言語情報などが含まれる。利用者システムの識別情報は、質問を受け付ける際に通信経路情報や、通信経路において利用者システムから付加される情報に基づいて取得可能である。質問の言語情報は、質問入力の際に指定するように構成しても、質問端末のOSや質問応答のためのアプリケーション等の言語指定情報から入手する等、周知技術により取得することができる。
【0018】
本発明の他の態様にかかる質問応答システムまたは質問受付回答システムは、取得した前記固有属性情報に基づいて、前記質問が経由した利用者システムの識別情報を取得し、
前記最終回答記憶部は前記各最終回答候補として、前記各識別子に紐付して記憶される最終回答のベースとなる基本回答、又は、必要に応じて前記各識別子及び前記利用者システムの識別情報に紐付して記憶され前記各基本回答と内容の異なる固有回答とを記憶しており、
前記最終回答手段は前記第1次回答の前記識別子及び前記質問に対応する前記利用者システムの識別情報に基づいて、前記最終回答記憶部から、前記基本回答又は前記固有回答を読み出して、読み出した前記基本回答または前記固有回答を最終回答として前記質問端末に送信することを特徴とする。
利用者システムの識別情報は、上述した通り、質問が質問受付回答システムに届くまでに経由した通信経路情報又は通信過程で付与される情報から前記利用者システムの識別情報を固有属性情報として取得することが可能である。
【0019】
また、本発明の他の態様に係る質問応答システム又は質問受付回答システムでは、前記第1次回答システムの前記人工知能が、一つの質問グループ内に異なる言語からなる共通属性を有する複数の想定質問を含む複数の質問グループから構成されるすべての前記想定質問と、同じ質問グループに含まれる異なる言語からなる前記複数の想定質問に対する第1次回答は、いずれの前記想定質問に対しても言語の種類に関係なくすべて同じ識別子の前記第1次回答を出力するよう機械学習しており、前記質問受付回答システムから質問を受けたときに、該質問に対する前記第1次回答として、該質問に対応する前記識別子を前記インターフェース手段に出力するよう構成されていることを特徴とする。
第1次回答システムの人工知能に、共通属性を有する言語の異なる複数の想定質問の回答を、同じ一つの第1次回答を出力するように機械学習させることにより、共通属性を有する言語の異なる質問に対して、同じ第1次回答が出力される。最終回答候補は、第1次回答に紐付して記憶されているので、第1次回答が同じであれば、質問の言語が異っても、同じ最終回答が質問端末に送信されることになる。最終回答の回答言語は、質問の言語に無関係に同じすべて同じ言語の最終回答を返信するようにしても、質問言語が外国語のときには、英語の最終回答を返信するようにしても、さらに、質問言語と同じ回答言語の最終回答を返信するように構成しても良い。
ここで、「異なる言語からなる共通属性を有する複数の想定質問」には、言語が異なる実質的に同じ意味の想定質問を含んでいる。
【0020】
本発明の他の態様に係る質問応答システム又は質問受付回答システムは、前記質問受付回答システムが、前記質問受付手段により、受信した質問の前記固有属性情報中に含まれる質問言語情報を取得し、前記最終回答記憶部は、前記質問言語情報に基づいて決められる回答言語による実質的に同じ内容の複数の言語の前記最終回答候補を、前記識別子及び前記回答言語の種類に対応づけて記憶しており、
前記最終回答手段は、取得した前記質問言語情報に基づいて前記質問に対応する前記回答言語の情報を取得して、取得した前記第1次回答の識別子と、前記回答言語の情報に基づいて、前記質問に対応する前記回答言語からなる前記最終回答候補を読み出して、前記質問に対応する最終回答として、前記質問言語に対応する前記回答言語の最終回答を返信することを特徴とする。
この構成により、質問の言語が外国語の場合には、回答言語を英語その他の言語にすることや、質問言語と同じ回答言語で最終回答を返信することが可能となる。
【0021】
本発明の他の態様に係る質問応答システム又は質問受付回答システムは、前記第1次回答システムが、前記質問に対する第1次回答を抽出するとともにその回答確信度を出力し、前記質問受付回答システムが、前記第1次回答システムから受信した回答確信度に応じて第1次回答に紐付けして記憶されている前記基本回答又は前記固有回答を前記最終回答記憶部から読み出して、前記質問に対する最終回答を前記質問端末に送信することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の他の態様に係る質問応答システム又は質問受付回答システムは、さらに前記質問端末との交信記録、前記第1次回答システムとの交信記録、質問の固有属性情報等の質問受付から最終回答までの各種情報を記憶する稼働履歴記憶部と、権限に応じて、利用者システムから、前記稼働履歴記憶部に記憶している前記各種情報の閲覧、並びに前記最終回答記憶部に記憶している前記最終回答候補又は前記固有回答の修正、追加、変更を含むメンテナンスが可能なメンテナンス手段と、を備えることを特徴とする。
この構成により、第1次回答システム及び質問応答システムを容易にメンテナンスすることが可能となる。特に質問応答システムのメンテナンスについては、人工知能の知識は不要であり、最終回答候補である基本回答や、固有回答を変更することにより、簡単にシステムの改善を行うことが可能となる。
また、前記メンテナンス手段により、前記最終回答記憶部に記憶する前記最終回答候補、前記基本回答、又は前記固有回答の内容を、権限に応じて、前記第1次回答システムの前記想定質問に制限されることなく、追加、修正、変更、削除などの更新ができるように構成することもできる。
【0023】
稼働履歴記憶部には、システム全体およびシステム利用者ごとの質問・回答数、平均回答確信度、回答確信度が基準値以下の件数と比率、第1次回答の識別子ごとの質問回答数と平均回答確信度、回答確信度が低かった質問と回答の一覧リストなどの情報を含めることができる。これらの情報は、メンテナンス手段により閲覧することができ、これらの情報によりシステムの利用状況や回答精度などシステムの運用状況の把握が容易に可能となる。また、質問受付回答システム及び、最終回答記憶部は第1次回答システムとは切り離されているので、人工知能に関する専門知識が無くとも、メンテナンス手段により、最終回答記憶部に記憶している最終回答を変更し、修正(本明細書においては、特に反対の意を明示していない場合には、「修正」という用語には一部を訂正又は変更することだけでなく、追加することも含むものとして使用する)することができる。したがって、システム管理者だけでなく、人工知能に関する高度の知識を有しないシステム利用者であっても、与えられた所定の権限内で、基本回答や固有回答等の最終回答を修正・変更・追加することができるようになった。
【0024】
またメンテナンス手段には、想定質問、共通属性、質問群又は第1次回答を修正、変更又は追加して、第1次回答システムに再度機械学習させる機能を付加するよう構成することもできる。このような稼働履歴記憶部及びメンテナンス手段により、回答確信度が低い質問と回答の記録を抽出したリストを出力することや、集計や統計データからの分析データに応じて、回答確信度の低い想定質問や質問群を統廃合して、より適切な回答を行う質問応答システムとなるように改善・進化させることが可能となる。
【0025】
本発明の第1の態様に係る第1次回答システムは、質問端末からの質問を受け付けて該質問に対する最終回答を前記質問端末に返信するコンピュータを用いた質問受付回答システムと、複数の想定質問と該想定質問に対応する第1次回答として所定の識別子とを機械学習することにより、質問受付回答システムからの質問に対する第1次回答を前記識別子として出力する人工知能を備える第1次回答システムとを分離して備える質問応答システムにおける前記第1次回答システムであって、
前記質問受付回答システムからの質問及び前記第1次回答の要求を受け付けて、前記人工知能に前記質問を入力し、前記人工知能からの前記質問に対する第1次回答を前記質問受付回答システムに対して送信するインターフェース手段と、
異なる言語による多数の想定質問と、該多数の想定質問を、言語に関係なく共通属性を有する複数の前記想定質問を一つのグループとする複数の質問グループとして、該各質問グループのそれぞれと1:1に対応する各識別子を、前記個々の質問グループに属する前記複数の想定質問に共通の第1次回答として機械学習しており、前記質問受付回答システムから質問を受けたときに、該質問に対する前記第1次回答を前記識別子として前記インターフェース手段に出力する人工知能と、を備えることを特徴とする。
【0026】
この発明は、上述した質問受付回答システムを構成する第1次回答システムに係るものであり、質問応答システムのサブコンビネーション発明である。
この構成によると、第1次回答システムに対して、質問言語が異なっていても共通属性を有する想定質問については、共通の一つの第1次回答(識別子)を出力するように機械学習させることにより、質問の言語が異なっても共通属性を有する質問に対しては同じ識別番号が第1次回答として出力される。したがって、質問言語が異なっても、同じ最終回答を質問端末に返信することができる。母国語以外の言語で正確な質問文書を作成することは比較的難易度が高いので、質問だけでも母国語で質問できると正確な質問が可能となり、正確な回答を得ることが可能となる。一方、一般的に、文書読解能力は文書作成能力に比べて高いので、回答言語は母国語でなくても理解できる可能性が高い。
また、最終回答する際の回答言語を質問の言語に応じて予め決めておき、回答言語ごとの最終回答候補を記憶しておくことにより、質問の言語情報に応じて、所定の回答言語で最終回答を返信するように構成することも可能である。
【0027】
本発明の第1の態様に係る質問応答システムの質問応答方法は、質問端末からの質問をコンピュータにより受け付けて該質問に対する回答を前記質問端末に返信する質問受付回答システムと、人工知能を備えており、複数の想定質問と該複数の想定質問の回答となる所定の識別子を第1次回答として機械学習して、入力された質問に応じて第1次回答として識別子を返信する第1次回答システムとを備える質問応答システムにおける質問応答方法であって、
(a) 前記質問受付回答システムにおいて、質問端末からの質問を受け付けて、該質問を第1次回答システムに送信するステップと、
(b) 前記第1次回答システムにおいて、前記質問受付回答システムからの前記質問を受け付けて、該質問を、前記人工知能に入力して該入力した質問に対する前記第1次回答を前記識別子として出力し、前記人工知能から出力された前記第1次回答の識別子を前記質問受付回答システムに送信するステップと、
(c)前記質問受付回答システムにおいて、 前記第1次回答システムから前記第1次回答として前記識別子を受信したときに、前記人工知能が機械学習している前記識別子に紐付けして最終回答候補を記憶している最終回答記憶部から、受信した前記識別子に対応する前記最終回答候補を読み出して、該読み出した最終回答候補を最終回答として前記質問端末に対して返信するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0028】
本発明の第1の態様に係る質問受付回答システムの質問応答方法は、質問端末からの質問をコンピュータにより受け付けて該質問に対する回答を前記質問端末に返信する質問受付回答システムと、人工知能を備えており、複数の想定質問と該複数の想定質問の回答となる所定の識別子を第1次回答として機械学習して、入力された質問に応じて第1次回答として識別子を返信する第1次回答システムとを備える質問応答システムにおける前記質問受付回答システムの質問応答方法であって、
(a1) 前記質問受付回答システムにおいて、質問端末からの質問を受け付けて、該質問を前記第1次回答システムに送信するステップと、
(b1) 前記第1次回答システムから前記第1次回答として前記識別子を受信したときに、前記人工知能が機械学習している前記識別子に紐付けして最終回答候補を記憶している最終回答記憶部から、受信した前記識別子に対応する前記最終回答候補を読み出して、該読み出した最終回答候補を最終回答として前記質問端末に対して返信するステップと、
を備えことを特徴とする。
【0029】
本発明の他の態様に係る質問応答システムまたは質問受付回答システムの質問応答方法は、前記ステップ(a)または(a1)が、
(a−1) 質問端末から質問を受け付けるステップと、
(a−2) 前記質問に付随する該質問の固有属性情報を取得して記憶するステップと、
(a−3) 前記質問を前記第1次回答システムに送信するステップと、
を備え、
前記ステップ(c)または(b1)は、
(c−1) 前記第1次回答システムから前記第1次回答として前記識別子を受信するステップと、
(c−2) 前記ステップ(a−1)で記憶した固有属性情報から、利用者システムの識別情報を取得するステップと、
(c−3) 前記識別子に対応する最終回答候補を基本回答と利用者特有の固有回答とに分けて記憶している回答記憶部から、前記第1次回答の識別子と前記利用者システムの識別情報に基づいて、対応する前記基本回答または前記固有回答を読み出すステップと、
(c−4) 前記読み出した前記基本回答または前記固有回答を前記質問端末に返信するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の第1の態様に係る質問応答システムの多言語質問の応答方法は、質問端末からの質問をコンピュータにより受け付けて該質問に対する回答を前記質問端末に返信する質問受付回答システムと、人工知能を備えており、一つの質問グループ内に異なる言語からなる共通属性を有する複数の想定質問を含む複数の質問グループから構成されるすべての前記想定質問と、同じ質問グループに含まれる異なる言語からなる前記複数の想定質問に対する第1次回答は、いずれの前記想定質問に対しても言語の種類に関係なくすべて同じ識別子の前記第1次回答を出力するよう機械学習しており、入力された質問に応じて第1次回答として前記識別子を返信する第1次回答システムとを備える質問応答システムにおける多言語質問の応答方法であって、
(a) 前記質問受付回答システムにおいて、 質問端末からの質問を受け付けて、前記質問に付随する該質問の固有属性情報から前記質問の言語情報を取得して記憶し、前記質問および前記第1次回答システムが前記質問の言語情報を必要とする場合には、前記質問の言語情報を合わせて前記質問を前記第1次回答システムに送信するステップと、
(b) 前記第1次回答システムにおいて、前記質問受付回答システムからの前記質問を受け付けて、該質問を、前記人工知能に入力して該入力した質問に対する前記第1次回答を前記識別子として出力し、前記人工知能から出力された前記第1次回答の識別子を前記質問受付回答システムに送信するステップと、
(c)前記質問受付回答システムにおいて、 前記第1次回答システムから前記第1次回答として前記識別子を受信したときに、前記人工知能が機械学習している前記識別子に紐付けして最終回答候補を記憶している回答記憶部から、受信した前記識別子に対応する前記最終回答候補を読み出して、該読み出した最終回答候補を最終回答として前記質問端末に対して返信するステップと、
を備えることを特徴とする。
ここで、「異なる言語からなる共通属性を有する複数の想定質問」には、言語が異なる実質的に同じ意味の想定質問を含んでいる。
【0031】
本発明の第1の態様に係る質問受付回答システムの多言語質問の受付応答方法は、質問端末からの質問をコンピュータにより受け付けて該質問に対する回答を前記質問端末に返信する質問受付回答システムと、人工知能を備えており、一つの質問グループ内に異なる言語からなる共通属性を有する複数の想定質問を含む複数の質問グループから構成されるすべての前記想定質問と、同じ質問グループに含まれる異なる言語からなる前記複数の想定質問に対する第1次回答は、いずれの前記想定質問に対しても言語の種類に関係なくすべて同じ識別子の前記第1次回答を出力するよう機械学習して、入力された質問に応じて第1次回答として識別子を返信する第1次回答システムとを備える質問応答システムにおける前記質問受付回答システムの質問受付応答方法であって、
(a1) 前記質問受付回答システムにおいて、 前記質問端末からの質問を受け付けて、 前記質問に付随する該質問の固有属性情報から前記質問の言語情報を取得して記憶し、前記質問および前記第1次回答システムが前記質問の言語情報を必要とする場合には、前記質問の言語情報を合わせて前記第1次回答システムに送信するステップと、
(b1) 前記第1次回答システムから前記第1次回答として前記識別子を受信したときに、前記人工知能が機械学習している前記識別子に紐付けして最終回答候補を記憶している最終回答記憶部から、受信した前記識別子に対応する前記最終回答候補を読み出して、該読み出した最終回答候補を最終回答として前記質問端末に対して返信するステップと、
を備えることを特徴とする。
本発明は、請求項16に係る発明のサブコンビネーション発明である。ここで、「異なる言語からなる共通属性を有する複数の想定質問」には、言語が異なる実質的に同じ意味の想定質問を含んでいる。
【0032】
本発明の他の態様に係る質問応答システム又は質問受付回答システムの多言語質問の受付応答方法は、前記ステップ(c)または(b1)が、
(c−1) 前記第1次回答システムから前記第1次回答として前記識別子を受信するステップと、
(c−2) 前記ステップ(a)又は(a1)で記憶した前記言語情報などを基にした回答言語の確定ルールに従って決定された回答言語情報を取得するステップと、
(c−3) 機械学習した前記識別子と前記回答言語情報とに紐付されて、前記回答言語情報で指定された回答言語より最終回答記憶部に記憶している最終回答候補を、前記第1次回答として受信した前記識別子と取得した前記回答言語情報に対応する前記最終回答候補を読み出すステップと、
(c−4) 前記読み出した前記回答言語による最終回答候補を、最終回答として前記質問端末に返信するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0033】
本発明の第1の態様にかかる第1次回答システムの回答方法は、質問端末から質問を受け付けて前記質問端末に回答を返信する質問受付回答システムと、該質問受付回答システムからの要求に応じて、前記質問に対する第1次回答を識別子として出力する人工知能を備える第1次回答システムとを用いた質問応答システムにおける前記第1次回答システムの回答方法であって、
(a) 一つの質問グループ中に言語に関係なく共通属性を有する複数の想定質問を含む複数の前記質問グループを構成する多数の想定質問と、前記複数の各質問グループと1:1で対応する識別子を前記各想定質問の第1次回答として前記人工知能に機械学習させるステップと、
(b) 前記質問受付回答システムから受け取った質問を前記人工知能に入力して、該人工知能から第1次回答として前記識別子を出力するステップと、
(c) 前記第1次回答として出力された前記識別子を、前記質問に対する第1次回答として前記質問受付回答システムに送信するステップと、
を備えることを特徴とする
前記ステップ(a)において、前記各質問グループに含まれる共通属性を備える前記複数の想定質問は、実質的に同じ意味であって言語が異なる想定質問を含むように構成することが好ましい。
本発明は、請求項16に係る発明のサブコンビネーション発明である。
【発明の効果】
【0034】
本発明の質問応答システムでは、質問受付回答システムと人工知能を有する第1次回答システムとに分離した上で、質問に対する最終回答候補を質問受付回答システムに、第1次回答システムの第1次回答に紐付して記憶しておき、第1次回答システムからの第1次回答に応じて、質問受付回答システムの最終回答候補を読み出して最終回答を返信するように構成している。これにより、最終回答候補の内容を人工知能とは無関係に自由に修正、変更することができるようになった。すなわち、人工知能に関する専門知識がなくとも、所定の権限の範囲内において最終回答を自由に変更することができるので、例えば第1次回答システムからの第1次回答の回答確信度が低いときであっても、当該質問に対する最終回答を質問に合わせた最終回答とするように変更することにより、機械学習をさせることなく、実質的に回答確信度を上げるというような改善、メンテナンスが可能となる。
【0035】
また、質問に対する応答の精度を高くするためには、システム導入の当初からできるだけ多くの想定質問を機械学習させることが望ましいが、機械学習させる想定質問と回答の数を増やすと、システム導入コストが高くなる。これに対して、本願発明では、最終回答候補を第1次回答システムとは分離した別の質問受付回答システムに記憶するので、回答の内容を想定質問に直接回答する内容より広い範囲に膨らませた最終回答候補を記憶させておくことが可能となる。これにより、第1次回答が一定の回答確信度を得られる範囲において、人工知能に機械学習させていない想定質問の回答も最終回答候補の回答内容に含めて記憶しておくことにより、質問に対する回答の満足度を上げることが可能となる。したがって、本発明では、第1次回答システムに機械学習させる想定質問と回答の数を従来よりも少なくした上で、最終回答候補の回答内容を充実させることが可能である。すなわち、人工知能に機械学習させる想定質問の数を従来よりも少なくすることができ、運用開始時の質問応答システムの導入コストを下げること、及び運用開始時の人工知能の機械学習の負荷を低減することが可能となる。
【0036】
また本発明の他の態様に係る質問応答システムでは、質問受付回答システムと第1次回答システムを分離した上で、システム利用者ごとの異なる最終回答候補を合わせて記憶しておくことにより、複数のシステム利用者が一つの質問応答システムを共同利用することができる。これにより、個々のシステム利用者にとって、システム導入コストを下げることが可能となる。
【0037】
また、本発明の他の態様に係る質問応答システムは、質問受付回答システムと第1次回答システムを分離した上で、言語の異なる複数の想定質問であっても共通属性を有する想定質問は一つの同じ第1次回答となるように機械学習させ、質問受付回答システムに異なる回答言語による最終回答候補を記憶することにより、簡単な構成により異なる言語による質問を受け付けることが出来る。回答言語は一つの言語で回答するように構成することも、質問の言語に応じた所定の複数の回答言語により回答するように構成することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下図面を参照して、本発明に係る質問応答システム、質問受付回答システム、第1次回答システム及び質問応答方法について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る質問応答システムの利用形態及び全体の概略構成を模式的に説明するための図である。
図1では本発明に係る質問応答システム25を構成する質問受付回答システム10及び第1次回答システム30と、質問端末90から発信された質問が本発明の質問応答システム25に受け付けられて、質問端末90に対して最終回答が返信されるまでに共同する各種装置及び通信網の一部を例示している。
【0040】
質問端末90からの質問は、通信ネットワーク91を介して接続されている利用者(業者等)のプラットフォームとなるシステム(以下「利用者システム」と称する)40上の質問受け付けページを経由して、質問受付回答システム10に送信される。質問端末90が利用者システム40に接続されているデスクトップPC、又はスマートフォン等の端末装置である場合には、質問は利用者システム40から質問受付回答システム10に直接送信される。ここで通信ネットワーク91は、図示していない無線通信ネットワークや中継局等の設備や複数のネットワークを含んでいるものとする(システム提供者のLANも含む)。なお、
図1及び
図2においては、利用者システム40が外部ネットワークに接続されている形態を示しているが、質問応答システムを提供する提供者のローカル・エリア・ネットワークに接続されていても良い。
【0041】
なお、
図1〜
図14の説明においては、質問応答システムの利用者として業者A〜Nを例示している。しかし、本発明の質問応答システムの利用者は、いわゆる商業や工業を営む業者に限定されない。すなわち、営利法人や営利団体等に限定されず、例えば、大学、病院、自治体、組合などを含むあらゆる組織又は個人のいずれも本発明に係る質問応答システムの利用者(システム利用者)となり得る。
【0042】
図1中、25は本発明の第1の実施形態に係る質問応答システムであり、質問受付回答システム10及び第1次回答システム30を備えている。第1次回答システム30は人工知能等の知識データベースを備えており、質問受付回答システムの一部を構成する最終回答記憶部18は質問に対する回答である最終回答候補を記憶している。最終回答記憶部18は、サーバまたはデータベース等の記憶装置から構成することができる。最終回答記憶部18は、質問受付回答システム10の内部の記憶装置であっても、LANを介して接続されていても、外部の通信ネットワークを介して接続されていても良い。
図1においては、最終回答記憶部18は、質問受付回答システム10の内部の記憶装置として存在しても、ネットワークに接続された記憶装置として存在しても良いという意味で、破線で示している。
図3に、質問受付回答システム10の主要機能を示す構成例として、機能ブロック図を示している。
【0043】
質問受付回答システム10は、CPU,ROM,RAM等を備えるサーバ等のハードウェアと基本ソフトウェアその他の各種のソフトウェアとにより構成されており、通信ネットワーク91を介して質問を受ける質問受付手段と、第1次回答システム30に対して第1次回答を問合せる第1次回答問合手段、質問端末90に最終回答を返信する最終回答手段、及び最終回答部等を備えるコンピュータシステムである。
第1次回答システム30は、質問を受け付け人工知能からの回答を返信するインターフェース手段と、想定質問と回答とを機械学習することにより、第1次回答を識別子として出力する人工知能とを備えているコンピュータシステムである。
【0044】
従来の質問応答システムでは、回答の満足度を高めるために膨大な量の想定質問と回答を機械学習させることが必要であった。そのため、人工知能の機械学習に用いる膨大な想定質問データや回答データの収集と、これらのデータの機械学習に多くの時間と労力が必要となっていた。また質問応答システムの精度を改善、更新するために、人工知能の機械学習が必須であった。
これに対して、本発明の質問応答システム25では、質問受付回答システム10と、人工知能を備える第1次回答システム30を明確に分離した構成として、第1次回答システム30による第1次回答と、実際に返信する最終回答とを切り離している。これにより、人工知能を備える第1次回答システム30と、最終回答を返信する質問受付回答システム10を切り離して別々に改善し進化させることができる。すなわち本発明に係る質問応答システム25は、人工知能を機械学習させることによりシステムを改善進化させることができるのに加えて、質問応答ログ等の解析に基づいて、質問応答システム25の最終回答候補の内容を適宜、追加し変更することにより、質問に対してより適切な回答ができるように質問応答システム25を進化改善させていくことが可能となる。
【0045】
また、本発明では、このように最終回答候補を簡単に変更改善することができることを前提にシステム構築ができるので、導入時点において、人工知能へ機械学習させる想定質問の数と第1次回答数とを従来に比べて減らして、最終回答候補を充実させることも可能となる。これにより、導入時のコストや導入時に機械学習負荷を減らすことができる。
【0046】
まず、人工知能を備える第1次回答システム30に対して機械学習させる想定質問と、第1次回答システム30から質問に対する回答として出力される第1次回答について説明する。
従来の人工知能に対しては、複数の想定質問と想定質問に対する回答とを機械学習(教師有り学習)させる。市役所における質問応答システムの例を用いて説明すると、一般的には、例えば、「税金を納めるには、どこへいったら良いでしょうか」または「税金の支払はどの窓口でしょうか」というような質問に対しては、「2階の3番窓口が税金関係の窓口です」というような回答を出力するように機械学習させる。しかし、本発明の第1次回答システム30では、想定質問の具体的な回答ではなく特定の識別子を第1次回答として出力するように機械学習する。ここで識別子の形態は、第1次回答を特定できる固有の識別子であればどのようなものでも良いが、個々の第1次回答を特定できる範囲で、短く簡単な構成が望ましい。本明細書では「100」のような単純な3桁の数字の識別子を出力するものとして説明する。
【0047】
換言すると、第1次回答システム30では、何らかの共通する属性(以下単に「共通属性」と称する)を有する複数の想定質問については、いずれの想定質問についても一つの同じ識別子を第1次回答として出力するように機械学習させる。共通属性の大きさ・範囲は任意に設定できる。
【0048】
本明細書においては、一つの共通属性を有する想定質問の束を質問グループと称する。すなわち、共通の意味を有する複数の想定質問が一つの質問グループに属し、一つの質問グループ内に含まれる各想定質問に共通する概念(属性)に対して、共通の一つの第1次回答(識別子)を出力するように機械学習させる。この場合、第1次回答(識別子)の数は、質問グループの数と同じ数となり、同一の質問グループに属する各想定質問については、同じ第1次回答(識別子)が出力される。例えば、上記の税金支払いの想定質問の例で、「税金」に関する質問に対応する回答を一つの質問グループにした場合には、税金に関する想定質問については、すべて共通に一つの識別子が第1次回答として出力されるように機械学習されることになる。
【0049】
何を共通属性とするかは質問グループに応じて決めることができる。例えば、上述の「税金の支払い」に関する想定質問の例においては、「税金を支払うための場所」が共通属性となっている。ここで、「税金の払い戻し」や「税金の相談」を、同じ質問グループとするか、別の質問グループとするかは自由に決めることができる。例えば、共通属性の枠をより広げて、税金に関することはすべて一つの回答とすることもできる。この場合「税金」を一つの共通属性として一つの質問グループを構成し、税金に関する多くの想定質問についての第1次回答は、すべて1つの識別子として出力されることになる。
質問受付回答システム10から質問を受けとると、第1次回答システム30は、人工知能による質問に対する第1次回答として、回答確信度とともに所定の識別子を質問受付回答システムに返信する。
【0050】
質問受付回答システム10では、最終回答記憶部18に、最終回答候補が第1次回答システムで機械学習した識別子(第1次回答)と紐付されて記憶される。各最終回答候補は、少なくとも各質問グループに含まれる共通属性を有する複数の想定質問に対するすべての回答を包含するものであることが好ましく、さらに、機械学習済みの想定質問への直接的な回答だけではなく、関連する質問に対する回答も含むように構成することもできる。このことにより、回答の満足度を保ちながら、システム導入期間や導入コストを低減することが可能となる。そのため、最終回答候補は複数の想定質問に対する回答その他の予測される回答等多くの回答内容を含むため、本発明における最終回答候補は長くなる傾向となる。質問受付回答システム10が第1次回答システム30から第1次回答(識別子)を受信したときに、当該識別子に対応する最終回答候補を読み出すため、各識別子に紐付けされて、最終回答記憶部18に記憶される。
【0051】
最終回答記憶部18には、最終回答候補として、少なくとも各質問グループに属するすべて想定質問に対する回答の土台となる基本回答が、各質問グループの第1次回答に対応する識別子に紐付されて記憶されている。各識別子に対応する最終回答候補として基本回答のみが記憶されている場合には、基本回答がそのままその識別子の最終回答となる。基本回答の内容としては、紐付される識別子に対応する質問グループに関連するすべての想定質問に対する回答が含まれることが好ましい。より好ましくは当該質問グループの想定質問には含まれていなくとも、その質問グループと同じ共通属性の予想される質問に対する回答をも含んでいることが望ましい。最終回答記憶部18には、最終回答候補として基本回答に加えて、固有回答を記憶することができる。固有回答とは、基本枠組みは基本回答と同じ内容であるが、基本回答を置き換えたもの、または基本回答にさらに新たな情報を追加した最終回答候補である。したがって、質問受付回答システム10は、第1次回答システム30から質問に対する第1次回答(識別子)を受信すると、最終回答記憶部18の最終回答候補から、受信した識別子に対応する最終回答候補として、基本回答または固有回答のいずれか一方を読み出して、それを質問の最終回答として質問端末90に返信する。
【0052】
後程具体例を用いて説明するように、固有回答は、質問に対する回答内容がシステム利用者に応じて異なる場合などに用いられる。
例えば、質問端末90から送信される質問の固有属性情報に基づいて、システム利用者を特定する情報(識別番号等)を取得し、最終回答記憶部18から、第1次回答システム30から受信した第1次回答(識別子)とシステム利用者の識別番号に紐付されている「基本回答又は固有回答」を読み出す。これにより、第1次回答が同じ識別子であっても、システム利用者の識別番号に対応する固有回答を読み出して、システム利用者毎に異なる最終回答を返信することができる。
【0053】
ここで、「質問の固有属性情報」とは、質問端末90から受信する個々の質問に固有の情報であり、例えば、質問端末90に関する情報、質問者の入力した質問以外の情報、質問端末90から質問応答システムへの通信情報や通信経路情報、質問の相手に関する情報(システム利用者の識別番号等)、質問の言語や回答言語に関する情報等の各種情報を含むことができる。これらの「質問の固有属性情報」は、通信情報や通信経路情報等から質問受付回答システム10等により自動的に取得する構成としても、必要に応じて質問者に対して情報の入力を要求する構成としても良い。また、システム利用者の特定情報は、質問が利用者システム40を経由して送信される際に、当該利用者システム40においてシステム利用者の識別番号を付加する構成としても良い。
【0054】
固有回答を使用する典型的な利用形態として、基本回答の内容とは異なる、システム利用者固有の営業時間や場所を追加した最終回答を返信したい場合がある。例えば、不動産業者であるシステム利用者に対して、質問端末から、不動産取扱業者に関する質問に、当該システム利用者(不動産業者)固有の営業時間や場所を知らせたい場合がある。このようなときには、第1次回答に対応する回答として、基本回答に加えて当該システム利用者(不動産業者)の営業時間や場所を含む固有回答を最終回答記憶部に記憶しておく。これにより、第1次回答とシステム利用者の識別番号とに基づいて、当該システム利用者の固有回答が読み出されて、最終回答としてシステム利用者の営業時間や場所が質問端末90に返信されることになる。
【0055】
また、後ほど詳細に説明するように、第1次回答システムの人工知能に、質問グループの中に共通属性を有する言語の異なる想定質問を含ませて、想定質問と第1次回答を機械学習させることにより、複数種類の質問言語による質問を受け付けることができるようにすることができる。質問に対する回答の言語は、質問の言語と必ずしも同じ言語で回答する必要はなく、質問応答システムに標準設定された言語で最終回答を返信するように構成しても良い。文書の読解能力は文書作成能力に比べて比較的高いため、母国語でなくても、回答を読んで理解することができる人が多いため、必ずしも質問言語と同じ言語で回答する必要性は高くない。回答を作成するコストを下げ、導入期間を短くするために、質問言語のみを多言語化することは有用である。もう少し導入コスト及び導入時間に余裕がある場合には、回答言語を日本語、英語または中国語などの利用される可能性の高い言語に限定して回答できるように構成することも有用である。質問の言語と同じ言語で最終回答するように構成することも可能である。各回答言語による最終回答を第1次回答の各識別子と質問言語に応じた回答言語情報とに紐付して、各種回答言語による最終回答を最終回答記憶部に18に記憶しておくことにより、複数の回答言語による最終回答を返信することが可能となる。
【0056】
以上の説明から明らかなように、本発明は第1次回答システム30と質問受付回答システム10とを分離して、第1次回答システム30における人工知能の機械学習と、質問受付回答システム10における最終回答の作成及び更新をそれぞれ別々に独立して行うことができるように構成している。その上で、第1次回答システム30と質問受付回答システム10とは、想定質問の共通属性という概念と、第1次回答の識別子とでつなげられている。したがって、機械学習させる想定質問と第1次回答(識別子)と最終回答と整合させ、想定質問と最終回答候補とが互いにつながりを持つ構造とすることができる。したがって、機械学習させる想定質問に対して、柔軟な構造の最終回答候補を構築することができ、また質問応答システム25のメンテナンスやシステムの改善や更新についても、第1次回答システム30と質問応答システム25とをそれぞれ別個独立に行うことが可能となる。
【0057】
以上のように、第1次回答システム30と質問受付回答システム10とを分離して、最終回答候補を柔軟に構築できるため、適用する質問応答システムの分野に応じて、システム導入コストや負荷を軽減する種々の工夫や取組が可能となる。
例えば、専門分野や特定業種の特定分野に絞り込むことにより、質問の予測や求められる回答が比較的明確となるので、想定質問の数を少なくして第1次回答システム30に機械学習させ、質問受付回答システムの最終回答候補には人工知能に機械学習させていない質問に対応する回答内容を含ませることが可能となる。これにより、機械学習想定質問の数及び第1次回答の数を抑制しつつ、最終回答の質を向上させることが可能となる。すなわち、導入時の負荷を大幅に軽減できるので、導入コスト及び運用開始までの時間を短縮することが可能となる。
また、対象となる質問の範囲を、専門分野、特定業種と特定分野の質問に絞り込むことにより、想定質問の数を絞り込むことができる。専門分野や特定業種の特定分野に絞り込むことにより、質問の予測が比較的容易となるので、共通属性の種類の数を少なくすることができる。
【0058】
さらに、基本的には、最終回答候補は共通属性を有する想定質問の回答をすべて含み、さらに想定質問に関連する回答を含むものである。そのため、一つの質問に対して、質問に関連する分野における質問頻度の高い多くの回答を含む最終回答が、一度の質問に対して同時に提供されることになる。したがって、最終回答中には質問者が次に予定していた質問の回答も含まれている可能性が高く、その場合には、第2回目以降の質問が不要となり、質問の抑制効果も生まれる。
【0059】
このように第1次回答システム30と質問受付回答システム10を分離して構成することにより、想定質問と第1次回答を減らして機械学習の負荷を減らし、質問応答システム25の構築及び導入コストを下げることができる。また、受け付け可能な質問の範囲を絞り込むことにより、想定質問を整理しつつ共通属性の数を絞り込むことにより機械学習させる想定質問の数及び第1次回答(識別子)の数を大幅に絞り込むことができる。例えば、正答率を上げるために、従来は最低でも数万件以上必要とされる想定質問と回答の数を、質問の範囲を特定の業種の特定の業務に絞ることにより、本発明ではわずか500〜1000個程度の数の想定質問と第1次回答に絞り込み、これらを機械学習させることで、質問応答システムの運用を開始することを可能となった。
【0060】
また、業種や業務を絞り込むことにより、業種や業務に対応させて標準化した精度の高い想定質問を創出して、質問応答システムを構築できるため、同じ質問応答システムを同業者間で共同して使用することも可能となる。複数の同業者で一つの質問応答システムを共同使用することができると、導入費用を共同負担できるので、さらにシステム導入障壁を下げることが可能となる。
一つ質問応答システム25の同業者による共同利用に関しては、前述したように、最終回答記憶部18に固有回答を記憶させ、質問の固有属性情報に基づいて利用業者毎に異なる最終回答を返信ができる構成とすることにより、利用者ごとの個性に応じた個別の最終回答が可能となるので、さらに好ましい共同利用形態を実現することが可能となる。
以上説明した「共通属性」、「想定質問」、「第1次回答」、「基本回答」、「固有回答」については、後ほど具体例を用いて、より詳しく説明する。
【0061】
なお、本発明の第1次回答を提供する第1次回答システム30において、インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションのWATSON(WATSONは登録商標である)などを人工知能の汎用サービスとして使用することができる。
【0062】
上述の説明では、質問応答システムの第1の実施形態として、第1次回答システム30が通信ネットワーク91を介して第1次回答システム30と接続されている構成例を示した。
しかし、
図2に一例として示すように、本発明に係る他の実施形態に係る質問応答システム25‘は、質問受付回答システム26と第1次回答システム27とを外部の通信ネットワークを介さずに、内部回線又は専用通信回線を介して接続しても良い。
図2の構成では、質問受付回答システム26と第1次回答システム27が内部回線(専用回線等)により接続されている点が異なるのみで、質問受付回答システム26及び第1次回答システム27の基本的構成及び機能は、それぞれ
図1の質問受付回答システム10及び第1次回答システム30と同じである。
【0063】
図1では質問応答システム25を運用管理するシステム提供者の管理端末(システム管理端末50)が通信ネットワーク91に接続されている例を示している。通信ネットワーク91がLANも含むと説明したことからも明らかであるが、システム管理端末50は質問応答システム25(25’)と内部通信システム(LAN)で接続する構成とすることも可能である。
【0064】
次に、質問受付回答システム10(26)の主な構成例について、
図3(a)を参照して説明する。
図3(a)は、本発明の質問受付回答システム10(26)の構成を例示する機能ブロック図であり、例えば、CPU、バスコントロール及びレジスタその他の制御回路、入出力装置、メモリー、ハードディスク等のハードウェア、及びこれらのハードウェアを制御するソフトウェアと各種プログラム等により構成される。
質問受付回答システム10(26)は、基本構成として、送受信機能を有する通信インターフェース11と、外部からの質問を受け付ける受付手段12、質問端末90及び質問に関する情報を記億している稼働履歴記憶部13、第1次回答問合手段14、最終回答手段15とを備えている。また、メンテナンス手段16も備えることが望ましい。
【0065】
質問受付回答システム10(26)の受付手段12は、質問端末90からの質問を受け付けるとともに、質問の固有属性情報を例えば稼働履歴記憶部13等に記憶する。第1次回答問合手段14は、受付手段12から受信した質問を第1次回答システム30(27)に問い合わせて、第1次回答システム30(27)から、第1次回答及び可能な場合にはその回答確信度を受け取る。第1次回答問合手段14は第1次回答システム30(27)から第1次回答と回答確信度を受け取ると、最終回答手段15にそれらの情報を出力する。最終回答手段15は、第1次回答手段から受信した第1次回答が所定の条件を満足するとき(例えば回答確信度が所定の閾値以上のとき)に、第1次回答及び質問の固有属性に対応する最終回答候補(基本回答又は固有回答)を最終回答記憶部18(28)から読みだして、質問端末90に送信する。稼働履歴記憶部13は、質問の受付から最終回答までの各工程の稼働履歴、例えば、質問の固有属性、質問内容、第1次回答、回答確信度、最終回答等を必要に応じて記憶する。なお、上記及び以下の説明においては、第1次回答システム30(27)から第1次回答とともに常に回答確信度を受け取る例を示しているが、第1次回答システム30(27)から回答確信度を受領することは必須ではない。また回答確信度に代えて他の類似する情報を受信する構成とすることもできる。
【0066】
上記においては、第1次回答システム30(27)から、一つの第1次回答(識別子)を受け取る例を示しているが、第1次回答システムから複数の第1次回答候補識別子のリストを受け取り、質問受付回答システム10(26)で適切な唯一の第1次回答(識別子)を選択し、最終回答を取得することも可能である。
【0067】
メンテナンス手段16は、システム管理者又はシステム利用者からのログ情報及び各種稼働情報の収集、解析、及びメンテナンス要求を受け付け、情報の収集分析及びメンテナンス等の処理を実行する。メンテナンス手段16により、例えば人工知能に関する専門知識を持たないシステム利用者であっても、質問応答システム25(25‘)のシステム管理者とは別個独立に、所定の権限範囲内において、最終回答記憶部18(28)の最終回答の内容の一部を独自に管理し修正・変更することができる。
【0068】
図3(b)は、
図3(a)の最終回答手段15の構成の一例を示す機能ブロック図である。
第1次回答システム30(27)から第1次回答を受信すると、第1次回答問合手段14から最終回答手段15に第1次回答が送信される。最終回答手段15の最終回答制御部35は第1次回答を受信すると、固有属性情報取得部36を介して稼働履歴記憶部13に記憶している当該質問の固有属性情報を取得して、最終回答制御部35に送信する。最終回答制御部35は、第1次回答の識別子及び固有属性情報(システム利用者の情報等)に基づいて、最終回答取得部37に対して最終回答記憶部18(28)から第1次回答に対応する基本回答もしくは固有回答を取得するよう指令をする。最終回答取得部37により取得した基本回答、又は固有回答は最終回答送信部38に送られて、最終回答制御部35の制御の下、最終回答として通信インターフェース11を介して質問端末90に送信される。
【0069】
図4は、
図3(a)に示すメンテナンス手段16の構成例を示す機能ブロック図である。メンテナンス手段16は、初期設定手段21と、分析手段22と、データ更新手段23を備えている。初期設定手段21を介して、システム管理端末50からの操作を受け付け、システム構築時に複数の想定質問及び第1次回答(識別子)の入力と設定、第1次回答システム30(27)の機械学習データの設定等の作業を行い、最終回答記憶部18(28)に最終回答候補(基本回答及び必要に応じて固有回答)を記憶する。
分析手段22は、稼働履歴記憶部13に記憶されている質問、第1次回答、最終回答、回答確信度等の統計情報、例えばシステム利用者毎の質問と回答数、回答グループごとの質問と回答数、平均回答確信度、回答確信度が基準値以下の件数と比率など、各種統計データを作成する。これらの統計データは所定の権限を有する者のみがモニタリングすることができる。
【0070】
データ更新手段23は、利用者システム40の管理端末及びシステム管理端末50からのアクセスを受け付け、所望のデータの更新を行う。
システム管理端末50からは、第1次回答システム30(27)の知識データを機械学習させることにより更新することや、最終回答記憶部18(28)の最終回答候補の内容の更新をすることができる。例えば、質問に対する第1次回答の回答確信度が低いときには、新たな想定質問や第1次回答(識別子)を追加して第1次回答システム30(27)の人工知能機に機械学習をさせることができる。また、質問受付回答システムの最終回答記憶部に新たな識別子に対応する最終回答候補を作成することや、既に存在する基本回答や固有回答の追加・修正・変更等を行うことができる。初期設定手段21は、データ更新手段23にその機能を統合することも可能である。
【0071】
システム利用者は、利用者システム(40)の管理端末から、当該システム利用者のアクセスログ情報を読出し、稼働履歴や分析データを閲覧でき、所定の許された範囲内で、最終回答記憶部18(28)に記憶されている最終回答データの修正、変更をすることができる。
これにより、人工知能に関する専門知識の有無にかかわらず、システム利用者(業者)が自ら最終回答記憶部18(28)の最終回答の内容の変更又は修正・追加等が可能となる。すなわち、システム利用者(業者等)は、システム提供者に依頼しなくとも、所定の許された範囲内で、通信ネットワークを介して接続されている利用者システム40の管理端末を用いて最終回答記憶部18に記憶されている最終回答(基本回答及び固有回答)を修正し、更新することができる。
【0072】
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る質問応答システム25(25‘)における質問端末90からの質問に対する回答の基本的な流れを説明する。なお、以下の説明においては、質問の固有属性情報を用いて固有回答を提供する処理手順の例を説明するが、質問応答システム25(25‘)において、固有属性情報を利用するかどうか、固有回答を提供するかどうかは自由に選択することができる。
質問端末90から質問q1を受信すると(ステップS1)、受付手段12は質問の固有属性情報及び質問内容等を稼働履歴記憶部13(他の記憶部であっても良い)に記憶するとともに(ステップS2)、第1次回答問合手段14から、質問q1の第1次回答を第1次回答システム30(27)に対して問い合わせる(ステップS3)。
【0073】
第1次回答システム30(27)は、質問q1に対する第1次回答(最終回答の識別子:
図5のa1〜an)を抽出し、第1次回答問合手段14に対して返信する。第1次回答システム30(27)は、例えば回答確信度の高い順に1つ以上の第1次回答(識別子)と、当該第1次回答に対応する回答確信度を第1次回答問合手段14に送信する。第1次回答問合手段14が、第1次回答システム30(27)から第1次回答を受信すると(ステップS4)、最終回答手段15に送られる。最終回答手段15では、第1次回答(識別子)が質問者に返信するための所定の条件を満足しているかどうか、例えば、受信した第1次回答の中でもっとも回答確信度の高い第1次回答の回答確信度が所定の閾値を超えているかどうか等を検証する(ステップS5)。
【0074】
第1次回答が所定の条件を満足する場合(ステップS5;Yes)には、最終回答手段15により当該質問の固有属性情報を取得して、システム利用者の識別情報等を得る(ステップS6)。質問の固有属性情報は、稼働履歴記憶部13等に記憶されており、例えば固有属性情報から質問の通信経路(出自)を確認することにより、当該質問がどのシステム利用者(業者)を経由して来たかを調べて、システム利用者(業者)を特定することができる。次に取得した第1次回答とシステム利用者(業者)の情報(識別情報)に基づいて、第1次回答に対応する基本回答候補又はそのシステム利用者(業者)に対応する固有回答候補を取得する(ステップS7)。受信した第1次回答が複数ある場合には、最終回答として返信する最終回答候補(基本回答候補又は固有回答候補)を絞り込む。例えば、受信した第1次回答(識別子)の一番高い回答確信度に対応する基本回答候補又は固有回答候補を、最終回答記憶部18(28)から取得する(ステップS7)。
その後、取得した最終回答候補が最終回答手段15から、質問のあった質問端末90に送信される(ステップS9)。
【0075】
ステップS5において第1次回答が所定の条件を満たさない場合(ステップS5;No)、例えば、回答確信度が所定の閾値以下の場合には、質問q1に対する適切な最終回答候補がない場合のために用意されている所定の回答、例えば、「もう少し具体的に質問して下さい」などの所定の回答を取得して(ステップS8)、最終回答手段15から質問端末90に送信する(ステップS9)。ここで、ステップS5において、第1次回答が所定の条件を満足しない場合の最終回答は、特別の識別番号に紐付して最終回答記憶部18(28)に記憶しておくことも可能であるし、プログラム内にデータとして埋め込んでおくこともできる。なお、
図5において、ステップS5とステップS6の処理工程は、順序を入れ替えても良い。
【0076】
質問端末90に対して最終回答が送信されると、稼働履歴記憶部13に質問及び最終回答に関する履歴その他のログデータを含む各種情報が記憶される(ステップS10)。第1次回答システム30(27)から回答確信度の高い順に複数の第1次回答が提示される場合には、稼働履歴記憶部13にはすべての回答確信度又は予め決められた順位までの回答確信度を記憶することが望ましい。
【0077】
以上の説明から明らかなように、第1次回答システム30(27)からは、入力された質問が近似する想定質問の属する質問グループに対応する第1次回答(識別子)と、システムが機能を備えている場合にはその回答確信度が出力される。
ところで、質問者は、自分がアクセスしたシステム利用者(業者A〜Nのいずれか)に質問したと思っている。したがって、質問の内容によっては、質問端末90の質問を中継した業者A〜Nの利用者システム40に応じて異なる回答を返す必要が生じる。例えば、営業時間の問い合わせに関する質問の場合には、質問を経由した業者毎に正しい営業時間を回答する必要がある。このような場合には、システム利用者の固有回答候補を用意しておき、稼働履歴記憶部13等に記憶している質問の固有属性情報に基づいてシステム利用者の識別番号を取得して、質問を経由したシステム利用者(業者A〜N)に応じた固有回答を取得することにより、システム利用者ごとの営業時間を知らせる最終回答を返信する。
【0078】
図6から
図11を参照して、第1次回答システム30(27)に機械学習させる想定質問、質問グループと結びついた第1次回答及び、最終回答記憶部18(28)に最終回答候補として記憶される基本回答及び固有回答について、具体例を用いて説明する。
図6〜
図11の例において、業者とは本質問応答システムの利用を希望するシステム利用者のことであり、不動産取引に関する業務を行う業者である。
図6〜
図11の例では、複数の業者(業者A〜N)が質問応答システム25(25‘)の利用契約をしており、各業者A〜Nの利用者システム40のそれぞれの質問ページを介して、質問応答システム25(25‘)にアクセスできるものとする。また、
図6〜9は、質問グループの具体例を示しており、
図10及び
図11では、最終回答記憶部18(28)に記憶される基本回答候補と固有回答候補の例を示している。
【0079】
質問応答システム25(25’)は、各質問がどの利用者システム40を経由して来たかという情報(通信経由情報:質問の固有属性情報の一部)等に基づいて、その質問に関連するシステム利用者(業者)を特定してシステム利用者特有の固有回答候補を取得する。システム利用者(業者)が、固有の追加情報を求めない場合には、基本回答候補が取得されて、最終回答として質問端末90に送信される。
図6〜
図11の例では示していないが、システム利用者(業者)毎の固有回答は認めずに、すべての質問に対して基本回答のみを最終回答とするシンプルな構成とすることも可能である。
【0080】
まず
図6〜
図9を参照して、第1次回答システム30(27)に学習させる想定質問と第1次回答について、具体例を用いて説明する。なお、以下の説明では、一つの質問グループに複数の想定質問が含まれるという構成例を示している。
図6は、質問グループQ1〜QNにおける各質問グループの共通属性の内容、及び各質問グループQ1〜QNに1:1で対応する第1次回答の関係を例示する図である。以下の図においては、質問グループのことを適宜「質問群」として表示している。
図6では、第1次回答は識別子101〜NNNとしている。この識別子は第1次回答を特定できれば良く、表現形式は自由である。各質問グループQ1〜QNは、グループ毎にそれぞれ共通属性という概念でまとめられた複数の想定質問を有しており、
図7〜
図9に各質問グループQ1〜QNのそれぞれに含まれる複数の想定質問の一部を具体例として示している。
【0081】
図6では、質問グループQ1は、「不動産の取扱い業者」という共通属性を有するグループであり、第1次回答が識別子「101」であることが例示されている。質問グループQ2は、「住宅ローンの借り入れの目安」という共通属性を有し、第1次回答の識別子が「102」であることが例示されている。同様に質問グループQNは、「地域情報収集の際のポイント」という共通属性を有し、第1次回答の識別子が「NNN」であることが例示されている。
この識別子は、後述する質問受付回答システム10又は26において最終回答を作成する際に使用される識別子と同じであり、後ほど
図10及び
図11を参照して説明する最終回答候補と紐付される識別子である。
【0082】
図7〜
図9には、質問グループQ1、Q2、及びQNの複数の想定質問の具体例が示されている。
図7では、質問グループQ1の共通属性である「不動産取扱い業者」に対応する複数の想定質問Q1(1)〜Q1(n)を具体的に例示している。また、
図8では、質問グループQ2の共通属性である「住宅ローンの借り入れの目安」に対応する複数の想定質問Q2(1)〜Q2(9)の具体例を示している。同様に
図9には、質問グループQNの共通属性である「地域情報の収集の際のポイント」に対応する複数の想定質問QN(1)〜QN(12)の具体例を示している。
【0083】
図7では質問グループQ1のn個の想定質問に対する第1次回答として、すべて一つの「101」という識別子が指定されている。すなわち、「不動産取扱い業者」を共通属性とする質問グループQ1内のn個の想定質問に対する第1次回答はすべて一つの識別子101となる。これに対応して最終回答記憶部18(28)には、第1次回答の識別子101と対応する基本回答候補が記憶されており、識別子101に対応する基本回答候補はその基本回答候補の中に、質問グループ内の複数の想定質問Q1(1)〜Q1(n)に共通属性に対応するすべての答を含んでいる回答の束である。最終回答記憶部18(28)に記憶されている最終回答候補の具体例については、後程、
図10及び
図11を参照して説明する。
【0084】
同様に
図8には、質問グループQ2に対応する複数の想定質問Q2(1)〜Q2(9)が具体的に例示されており、それらの複数の想定質問Q2(1)〜Q2(9)に対する第1次回答として、すべて同じ一つの識別子「102」が指定される。
図9にも同様に、共通の属性である「地域の情報収集の際のポイント」に関する質問グループQNに関する12個の想定質問QN(1)〜QN(12)を具体的に例示しており、これら12個の想定質問に対応する第1次回答としてすべて同じ識別子「NNN」が指定されている。
【0085】
図10及び
図11に、最終回答記憶部18(28)に記憶される基本回答候補及び固有回答候補の具体例を例示する。
図10及び
図11に示す第1次回答(識別子)の欄の表示は、第1次回答システム30(27)からの第1次回答である
図6〜9に示す識別子101〜NNNと対応している。最終回答記憶部18(28)には、第1次回答システム30(27)から受領する第1次回答の識別子101〜NNNのそれぞれに対応させて、「基本回答候補」及び、システム利用者(業者A〜N)が希望する場合には、希望するシステム利用者に対応する「固有回答候補」を記憶している。
図10,
図11の利用者(業者)識別子の欄においては、システム利用者の識別子として「業者A」、「業者B」などと表示しているが、システム利用者(業者)を特定できる識別子であれば数字、文字、記号等自由に使用できる。なお、
図10、
図11では利用者を特定する情報を、システム利用者の識別子としているが、これは各利用者を特定する識別子であれば良く、「利用者システムの識別情報」であっても良い。
【0086】
システム利用者(業者)識別子は、業者A〜N毎に割り当てられた固有の識別子であり、この業者の識別子に紐付されてそれぞれの業者毎の固有回答候補が最終回答記憶部18(28)に記憶されている。
図10及び
図11には、最終回答として割り当てられた基本回答候補の内容が例示されている。
図10及び
図11の第1次回答の識別子「102」、及び「NNN」を参照すると、第1次回答の識別子「102」欄には業者Bの識別子に対応する固有回答候補がなく、第1次回答の識別子「NNN」の欄には、業者A及び業者Cの識別子に対応する固有回答候補がない。このように、システム利用者(業者)の固有回答候補の設定は必須ではなく、システム利用者(業者)の希望により、任意に設定することができる。また、すべての第1次回答に対して又は特定の第1次回答について、固有回答候補をすべてなくして基本回答候補のみとする構成にしても良い。
システム利用者(業者)の識別子は、質問毎に質問の固有属性から各質問におけるシステム利用者(業者)の識別子が割り出されて、各質問に対応する基本回答候補又は、対応する固有回答候補が最終回答記憶部18(28)から読みだされる。
【0087】
図10、
図11に基本回答候補の具体的な回答内容が例示されている。この基本回答候補の内容からわかるように、最終回答となる基本回答候補及び固有回答候補は、共通属性の質問グループの複数の想定質問に関連するすべての回答を含む比較的長い回答となっている。これは、最終回答を、各質問グループに含まれる複数の想定質問に関連するすべて回答を含む回答の束としたことに基づくものである。この構成により、第1次回答システムに機械学習させる想定質問と第1次回答の数を少なくしても、質問に対する最終回答への質問者の満足度を一定程度以上に維持することが可能となる。想定質問は問われる可能性の高い質問を厳選しているので、想定質問に対する全ての回答を含む基本回答は質問者にとって多くの有用な情報を含んでいる。したがって、一つの質問に対する基本回答が、当該質問者が次に質問する予定であった質問についての回答を含んでいる可能性もあり、この場合には、質問者の満足度をさらにあげることができる。
このように複数の想定質問に幅広い質問の意味を持たせることにより、学習データの作成や人工知能の機械学習時間を1/10、1/100以下にすることが可能となり、人工知能を利用した質問応答サービスを非常に安いコストで効率よく提供することが可能となる。
【0088】
また、第1次回答システム30(27)からは、質問がどの利用者システムを経由したか等の質問の固有属性とは無関係に、同じ質問グループに属する想定質問については常に同じ第1次回答(識別子)が出力される。これに対して質問受付回答システム10(26)では、当該第1次回答に紐付けして記憶されている基本回答候補に変えて、必要に応じてシステム利用者固有の固有回答候補を読み出して、読みだした固有回答を最終回答として質問端末90に送信する。そのため、第1次回答の識別子とシステム利用者の識別情報(システム利用者の識別子)に紐付して固有回答候補が記憶されている。固有回答候補は、第1次回答の識別子に対応する基本回答候補を、システム利用者に合わせて置き換えたものである。
このように、最終回答記憶部18(28)に記憶されている最終回答候補(基本回答候補及び固有回答候補)は、人工知能とは分離された記憶データであるため、人工知能に対する機械学習とは無関係にその内容を適宜変更し、又は追加することが可能である。したがって、最終回答記憶部18(28)に記憶している最終回答候補の変更又は追加等のメンテナンス作業には、人工知能に関する高度の専門知識は不要となる。但し、基本回答候補については、第1次回答システムの第1次回答と対応しており、最終回答のベースとなり各システム利用者に共通の回答内容であるので、システム利用者が変更できないように制限するのが好ましい。
【0089】
以上の説明から明らかなように、本発明による質問応答システム25(25’)は、エンドユーザ又は潜在的なエンドユーザからの質問に対して効率的に応答するために経験や実績を通じて蓄積された想定質問及び最終回答候補等のデータコンテンツ、並びに質問に応答して適切な回答を自動的に提供するための設備、例えば人工知能システム等の高度のコンピュータシステム及びデータベース等を、業種や業務が共通する複数のシステム利用者(業者等)で共同して利用することが可能となる。このような共同利用を可能とした質問応答システムの構築が可能となることにより、質問応答システムを初めて導入する場合の構築費用を大幅に抑制できるだけでなく、システム導入期間を短縮することができる。
また、同じデータやシステムを共有する業者が後から導入する場合においては、すでにデータおよびシステム環境の構築が完了している状態にあるので、極めて短期間で優れた質問応答システムを安心して導入できるという効果を有している。又、多くの利用者で質問応答システムを共同利用するため、短期間に1社では得られない多種多様な多くの質問を受けることができる。そのため、短い期間でより良いシステムに成長させていくことが可能となる。
【0090】
本発明による質問受付回答システム10(26)は、上述したようにメンテナンス手段16を備えており、初期設定手段21により、第1次回答システム30(27)及び最終回答記憶部18(28)の初期設定を行う。
図12を用いて、第1次回答システム30(27)及び最終回答記憶部18(28)の初期設定手順について、説明する。
【0091】
図12は、第1次回答システム30(27)及び最終回答記憶部18(28)の初期設定についての基本作業の手順を例示するフローチャートである。システム構築のために、まず、想定質問と、想定質問の共通属性、質問グループ、第1次回答、最終回答(基本回答、固有回答)、及び質問の固有属性を確定する(ステップS21)。
そのために、システム利用者(業種)の業務を分析して複数の想定質問を作成し、全ての想定質問に対する回答を作成する。想定質問は、共通属性を有する複数の想定質問を一つの質問グループにまとめ、第1次回答は質問グループと1:1に対応する識別子とする。最終回答候補のうち、基本回答候補は一つの質問グループ内の複数の想定質問に関連する回答をすべて網羅する内容とする。また、固有属性情報を決めて、固有属性情報と紐付けする固有回答候補の範囲及び内容を決める。その際に、固有属性情報に言語情報を含めることもできる。その場合には、各種言語による想定質問と必要に応じて異なる最終回答候補を用意する。このような最終回答候補を、質問グループ毎に全ての質問グループについて作成する。
【0092】
次に第1次回答システム30(27)に、各質問グループQ1〜QNに含まれるすべての想定質問と、各質問グループと1:1に対応する第1次回答(識別子)とを機械学習させる(ステップS22)。さらに、最終回答記憶部18(28)に第1次回答の識別子と基本回答候補を紐づけして記憶させる(ステップS23)。上述したように、ステップS23において、第1次回答に対応する一つの識別子に対して基本回答候補だけでなく、共通の基本回答候補をベースとしてシステム利用者毎に異なる固有回答候補を、各第1次回答及びシステム利用者の識別子に紐付して記憶するように構成しても良い。なおステップS22と、ステップS23は順番を入れ替えても、同時に行っても良い。
【0093】
本発明による質問応答システム25(25’)は、上述したようにメンテナンス手段16を備えている。このメンテナンス手段16により、質問・回答の履歴を定期的に(又は不定期)に確認し、統計情報を作成し分析する等、継続的にシステムの利用効果をモニタリングすることを通じて、基本回答候補や固有回答候補の修正・追加等が可能である。
【0094】
本発明の質問応答システム25(25’)は、モニタリングの結果から第1次回答システム30(27)の機械学習や最終回答記憶部18(28)に記憶している最終回答候補をメンテナンスすることにより、継続的に成長していくことができる。さらに、回答確信度の低い質問を定期的にチェックすることは、各利用業者が自身はで気づいていない「既存顧客や潜在顧客のニーズ」を知るきっかけにつながり、単に質問に回答するという質問応答システム25(25’)の本来の目的にとどまらず、事業の成長に必要な顧客や市場の情報を収集する手段になり得る。また、以下に説明するように、基本回答候補及び固有回答候補については、一定の条件の下、人工知能の知識のないシステム利用者であってもメンテナンス可能であるので、システム利用者が利用している質問応答システムを、システム利用者自らが継続的に改善成長させていくことができる。
また、本質問応答システムは、複数のシステム利用者で共同利用が可能であるため、1社で利用するよりもはるかに多くの多種多様な質問を受けることができる。そのため、システム提供者による質問応答システム25(25‘)全体のメンテナンスの際に、多種多様な課題に対応すべくに想定質問及び基本回答候補が修正改善されて、質問応答システムの成長速度が速くなることが期待される。この質問応答システムの成長については、すべての共同利用者がこの恩恵を受けることができる。
【0095】
図13及び
図14を参照して、システム利用者(業者)又はシステム管理者による第1次回答システム30(27)及び、最終回答記憶部18(28)のメンテナンスの手順について説明する。まず、システム利用者(業者)による最終回答記憶部18(28)の修正・変更手順について、説明する。
【0096】
図13は、システム利用者(業者)が、自社固有の最終回答を修正・変更するための処理手順を示すフローチャートである。
システム利用者(業者)は、いずれかの通信ネットワークを介して質問応答システム25(25‘)に接続されているシステム利用者の管理端末を用いて、質問応答システム25(25’)のメンテナンス手段16(
図3、
図4参照)にアクセスして、当該システム利用者に対して質問のあったアクセスログ等の記録から、質問及び第1次回答の回答確信度の分布、平均回答確信度等その他の最終回答の状況を確認し、最終回答候補(基本回答及び固有回答)の内容の修正・変更・追加等を検討することができる。質問端末からの質問に対して適切な最終回答ができなかったケースや、最終回答をしているが第1次回答の回答確信度が低かったケースがある場合には、システム利用者(業者)自らが自己に与えられた権限の範囲内で、又はシステム管理者に依頼して、最終回答記憶部に記憶している最終回答候補を修正又は追加することができる。
【0097】
図13に示すように、システム利用者(業者)は定期的又は不定期にアクセスログを確認し解析する(ステップS31)。その場合、最終回答記憶部18(28)に記憶されている最終回答(基本回答及び固有回答)の修正又は変更を希望する場合(ステップS32;Yes)には、次に最終回答を修正・変更等する権限があるかどうかが確認される(ステップS33)。なお、
図13では記載していないが、システム利用者(業者)が稼働履歴情報を閲覧してログ等の解析をする場合(ステップS31)にも、事前にその担当者にアクセス権限があるかどうかを確認するようにすることが望ましい。システム利用者(業者)に修正・変更等する権限なければ、修正又は変更等は認められずにメンテナンス処理は終了する(ステップS33:No)。修正・変更等する権限が認められている場合には(ステップS33:Yes)、最終回答記憶部18(28)に記憶されているシステム利用者(業者)の権限内において最終回答候補について修正(変更又は追加を含む)をすることができる(ステップS34)。
【0098】
例えば、質問端末90から、質問q1として「営業時間について知りたい」との質問があり、既に当該システム利用者の固有回答が設けてある場合には、臨時休業などの業者固有の情報を既存の固有回答候補に追記することができる。なお、システム利用者(業者)が、ログデータ等を解析した結果に基づいて、システム利用者の権限を超える修正を希望する場合、例えば、基本回答候補の変更、第1次回答システム30(27)への既存の質問グループに対する想定質問の追加、新たな共通属性を有する質問グループの追加や基本回答候補の修正又は追加等を希望する場合には、質問応答システムのシステム管理者に検討を依頼する。
【0099】
図14は、システム管理者による質問応答システム25(25’)全体のメンテナンス処理手順を例示すフローチャートである。このメンテナンス処理手順は、質問応答システム全体の運用管理をするシステム管理者がシステム管理端末50を介して行う処理手順である。
メンテナンスを開始する場合(ステップS41)、まず、この稼働履歴へのアクセス権限があるかどうかが確認され(ステップS42)、アクセス権限がなければ本処理フローは終了する(ステップS42;No)。アクセス権限を有する場合には(ステップS42;Yes)、稼働履歴記憶部13に記憶されているシステム全体のアクセス状況、質問及び回答のログデータや、統計データなどの分析データを確認し、解析する(ステップS43)。
【0100】
最終回答記憶部18(28)の最終回答候補を修正・変更等(追加を含む、以下同じ)する場合には(ステップS44;Yes)、その修正・変更等の権限があるかどうかが確認される(ステップS45)。修正・変更等の権限があれば(ステップS45:Yes)、基本回答・固有回答の変更、又は新しく業者の固有回答が追加される(ステップS46)。修正・変更等の権限がなければ処理を終了させる(ステップS45:No)。最終回答候補のうち、システム管理者には基本回答候補の修正・変更等のみを許可し、固有回答候補の修正・変更等についてはシステム管理者には許可せず、固有回答候補についてはシステム利用者のみが修正・変更等の権限を有するように構成しても良い。
この図は、システム管理者に最終回答候補と機械学習の権限を分離して持たせている例であり、両方の権限を一つの権限でまかなっても良い。
【0101】
最終回答候補の修正又は変更をしない場合(ステップS44;No)、又は最終回答記憶部18(28)の最終回答候補の修正・変更等が終了すると(ステップS46)、次に、人工知能システムである第1次回答システム30(27)に想定質問等を追加して機械学習させるかどうかについて確認する(ステップS47)。追加の機械学習の必要が無い場合には(ステップS47;No)、本メンテナンス処理を終了する。追加の機械学習をさせる場合には(ステップS47;Yes)、第1次回答システム30(27)に想定質問又は第1次回答(識別子)を修正・変更等する権限があるかどうかが確認される(ステップS48)。修正又は変更権限がある場合には(ステップS48;Yes)、想定質問及び第1次回答に関して所望の追加・修正・削除を行い第1次回答システムに機械学習をさせて(ステップS49)、システムのメンテナンス処理を終了する。修正権限が無い場合には(ステップS47;No)、機械学習はせずにメンテナンス処理を終了する。
【0102】
以上説明したシステム利用者(業者)によるメンテナンス処理(
図13)及びシステム管理者によるメンテナンス処理(
図14)は、例えば、以下のようなルールに基づいて、データの更新、変更を行うようにすることにより、質問応答システム25(25’)を順次進化させて回答確信度の高いシステムにステップバイステップで、確実に成長させることが可能となる。
【0103】
<回答確信度が低い場合の対応ルール例>
(1)質問の内容がまったくの未知のもので、最終回答に該当するものがなかった場合には、第1次回答システム30(27)に質問と回答の識別子のペアを追加するとともに、最終回答記憶部18(28)に最終回答も追加する。このメンテナンスは、システム管理者が実施する。
(2)質問の内容が未知であったが、既存の最終回答に適切なものが存在している場合には、第1次回答システム30(27)に質問と既存の最終回答の識別子のペアを追加する。この場合もシステム管理者が実施する。
【0104】
<回答確信度は基準値を超えているが、回答の内容が妥当でない場合の対応ルール例>
(1)質問の内容は既知であるが、最終回答の内容が妥当でない場合は、最終回答記憶部18(28)の最終回答のデータのみをシステム管理者が修正する。
(2) 共通の回答である基本回答を、関連する業者全部に共通して修正する必要がある場合には、最終回答記憶部18(28)の基本回答をシステム管理者が修正することができる。
(3)共通の回答である基本回答が、一部のシステム利用者(業者)の内容にそぐわない場合には、システム利用者(業者)のシステム管理者が自社の業者識別番号に対応する最終回答領域に基本回答をコピーして、基本回答の内容を修正することができる。この際、共通の回答には影響しない自社のみの最終回答を修正する場合には、業者の識別子ごとに追加・修正可能である。
【0105】
<質問グループを分割することで、より回答精度が上がると想定される場合の対応ルール>
(1)質問・回答回数の多い回答識別子が存在し、回答の範囲を狭めて質問グループと最終回答を分割した方が、より利用者の満足度が向上することが想定される場合には、現在一つに登録されている質問グループと最終回答を分割する。このメンテナンス処理は、システム管理者が実施する。
(2)質問に対する回答の長さが長くなり過ぎた場合も、質問回数が多い場合と同様に質問グループと最終回答を分割することが望ましい。このメンテナンス処理は、システム管理者が実施する。
【0106】
<多種類の言語への対応>
上述した実施形態及び具体例においては、質問言語及び回答言語として日本語を用いた想定質問及び最終回答を例示して、本発明の質問応答システムを説明した。
本発明にかかる質問応答システム25(25‘)では、想定質問のグループ化と質問の固有属性情報を利用することにより、多種類の言語による質問に対応することが可能である。以下に、本発明に係る質問応答システム25(25‘)において、複数種類の言語による質問及び回答に対応する構成の一例を、想定質問及び最終回答候補の具体例を示して説明する。
【0107】
質問者と回答者の母国語が異なる場合には、質問者又は回答者のいずれか一方が他方の母国語に精通していないと、円滑なコミュニケーションが難しい。このような場面において、質問者の母国語による質問を受け付けることができる質問応答システムがあれば、質問者は正しい文書による明確な質問文の作成が可能となる。このように母国語で質問することができると質問の質が向上するため、質問応答システムから適切な回答が提供される確率が格段に向上する。
【0108】
したがって、質問応答システムにおいては、各種言語による質問を受け付ける仕組みが望まれる。なお、一般的に、文書作成能力に比べると文書の読解能力は母国語でなくても比較的高いので、質問に対する回答は必ずしも、質問者の母国語である必然性は低い。例えば、費用対効果の観点から、質問言語の種類は広く認めつつ、回答言語は質問応答システムの設置国における主要言語、英語及び中国語等の世界で広く使用されている言語の数種に絞り込むことも可能である。
【0109】
このような多言語に対応可能な質問応答システムは、行政機関、大学、病院等の各種相談案内業務における人的負担を大幅に軽減することができる。例えば、地方自治体において、新しく転居してきた人の転入手続の窓口、住民票提供窓口、税金支払い窓口等の各種手続きの窓口や施設がどこにあるかというような単純な質問について、各種言語により質問応答システムを介して自動的に対応することができるだけでも、人による個別対応労力を大幅に削減できる。
特に、初めての相談や相談の初期段階では、質問の多くが形式的な又は単純で基本的な質問事項であることが多いので、他言語による質問を受け付ける質問応答システムは、外国人の質問者及び利用機関の双方にとって、極めて有用なシステムとなる。
また、このような質問応答システムに、質問者が遠隔地から自身のスマートフォンなどを利用して事前に質問出来ることは、これまで現地で質問する必要がある場合に比べ、質問者及び利用機関の双方にとって、極めて有用なシステムとなる。
【0110】
本発明に係る質問応答システム25(25‘)では、本発明の基本的な構成に簡単な構成を付加するだけで、多種類の言語に対応可能な質問応答システム25(25‘)を構築することができる。
本発明に係る質問応答システム25(25‘)では、共通属性が同じ想定質問であれば質問の言語が異なっても同じ質問グループに属するものとして構成した上で、質問言語の種類の違いを、質問の固有属性の一部として認識することにより、多種類の言語の質問と回答に対応する。
そのために、言語の種類は異なるが同じ意味内容を有する複数の想定質問については、共通属性が同一の質問グループに属するものとして、第1次回答システム30(27)に機械学習させる。同時に最終回答記憶部18(28)に、回答言語の種類ごとの最終回答候補(基本回答候補または固有回答候補)を記憶させる。当該質問応答システム25(25‘)に設定されたデフォルトとなる言語の回答を基本回答候補とし、それ以外の言語の回答を固有回答候補として登録する。
【0111】
多種類の言語による質問に対応する場合には、質問の言語に応じた正しい第1次回答を抽出し、質問された言語に対応する適切な言語で回答することが必要となる。質問の言語及び回答言語を確定するためには、質問者に希望の質問言語と回答言語を入力させることが出来る。最も簡易な方法として、質問端末90から質問応答システム25(25‘)にアクセスがあったときに、質問端末の質問入力画面から、質問言語、回答言語の種類を指定する言語選択ボタンを設けることができる。この場合、希望する言語の種類をブルダウン方式、又はラジオボタン方式等により、所定の言語を選択するようにして、質問応答システムで対応可能な言語の種類のみを指定できるような構成とすることが望ましい。
また、質問言語の種類を、質問受付回答システム10(26)又は第1次回答システム30(27)が質問文の形態(文字コードのビット構成等)から推論する機能を有している場合には、質問受付回答システム10(26)又は第1次回答システム30(27)により質問文から言語の種類を判断することも可能である。さらに、質問言語の種類については、質問端末と質問応答システム間の通信に必要な共通情報から取得することも可能である。したがって、質問者の入力がなくとも、質問言語を想定することは可能である。回答言語については、質問言語に応じて所定のルールで確定するよう初期設定しておけば対応可能である。
【0112】
希望する質問言語及び回答言語の種類は質問とともに質問受付回答システム10(26)に送られて、質問の固有属性の一部として、例えば、稼働履歴記憶部13などに記憶される。ここで回答言語は自動的に入力言語と同じ言語とするよう構成することが利用者の利便性向上につながる。しかし、文書読解能力は文書作成能力に比べて格段に高いということに鑑み、システム導入時の負荷を軽減するという観点、及び質問応答システム25(25‘)の応答負荷を軽減するという観点等から、回答言語の種類は、英語又は日本語のみとする等、質問の言語の種類よりも少ない種類の言語で回答する構成としても良い。
【0113】
前述したように、まず、第1次回答システム30(27)から複数種類の言語による質問を受け付けて、質問の言語の違いに拘わらず適切な第1次回答を得ることが必要となる。そのために、同じ共通属性を有する複数の想定質問を言語の種類に応じて作成し、一つの共通属性を有する複数の言語の想定質問は一つの質問グループとして、各質問グループと1:1に対応する第1次回答が得られるように、第1次回答システムに対して、機械学習させる。
例えば、共通属性を有する日本語の質問、英語の質問、中国語の質問等の複数の言語による想定質問を、それぞれ同じ質問グループに属する想定質問とした各質問グループQ1〜QNを作成する。ここで同じ共通属性を有する各種言語ごとの想定質問は、一つの言語で作成した想定質問を他の言語で直訳又は意訳した同一の意味内容の想定質問としても良いが、同一でなくとも、各種言語文化を考慮したほぼ同等の意味を有する想定質問としても良い。次に、各種言語による想定質問を含む質問グループQ1〜QNを、各質問グループQ1〜QNと1:1で対応する第1次回答が得られるように、機械学習させる。これにより、第1次回答システム30(27)からは、質問言語の種類の違いに関わらず、同じ質問グループに属する想定質問に対しては同じ一つの第1次回答(識別子)が得られる。
【0114】
質問受付回答システム10(26)においては、各回答言語に合わせて各種言語による最終回答候補を第1次回答と1:1に対応させて最終回答記憶部18に記憶する。したがって、第1次回答システム30(27)から第1次回答を受信したときに、当該第1次回答の識別子と質問の言語情報(識別子)とに基づいて、適切な回答言語の最終回答候補を読み出して、質問端末90に最終回答を返信することができる。
【0115】
先述した業者識別子のような言語以外の固有回答候補との組み合わせも可能である。第1次回答に対応する基本回答候補と、システム利用者(業者)ごとに異なる固有回答候補を、言語の種類に合わせて用意しておくことにより、質問言語に応じた適切な言語によりシステム利用者毎の固有回答候補を読み出して、最終回答とすることが可能となる。最終回答として、複数種類の固有属性の組み合わせに対応する固有回答候補を用意するかどうかは、必要に応じて適宜設定できる。行政機関、大学等で単独で使用する場合などにおいて、一つの質問応答システムを複数の機関で利用しない場合には、固有回答候補は必ずしも必要ではない。
【0116】
質問受付回答システム10(26)は質問端末90からの質問を受信すると、受付手段12により質問の固有属性情報から質問の言語情報を取得して、例えば稼働履歴記憶部13等に記憶する。記憶場所は稼働履歴記憶部13に限らず、別途質問の個別属性情報を記憶する場所を設けても良い。質問を受信したら第1次回答問合手段14により、第1次回答システム30(27)に対して質問に対応する第1次回答を要求する。この場合、第1次回答システム30(27)が質問の言語情報を要求する場合には、質問受付回答システム10(26)から質問文及びその言語情報を送付し、質問の言語情報を要求しない場合には、質問文のみを送付する。質問受付回答システム10(26)は、第1次回答システム30(27)から第1次回答を受信したら、稼働履歴記憶部13に記憶している言語情報に基づいて回答言語の識別子を取得する。その後第1次回答の識別子及び回答言語情報(識別子)に基づいて、適切な回答言語による最終回答候補を取得する。
【0117】
図15から
図19を参照して、各種類の言語による質問に応答できる質問応答システムを構築する場合の、質問グループ、想定質問、及び最終回答について、行政機関における質問と回答を想定した具体例を用いて説明する。
図15〜
図19は、質問グループQ1〜QNと、各質問グループにおける日本語と英語と中国語による想定質問Q1(1)〜QN(8)と、日本語と英語と中国語による最終回答候補(基本回答候補と固有回答候補)の具体例を単純化して示している。
【0118】
図15は、本発明に係る質問応答システムを市役所で導入すると仮定し、他種類の言語による質問を受けつける場合において、質問グループQ1〜QNについて、各質問グループの想定質問の共通属性、及び質問グループに対応する第1次回答の具体例を示している。
図15の例では質問グループQ1の共通属性は「転入手続き」、質問グループQ2の共通属性は「住民票の取得」、質問グループQNの共通属性は「税金の支払い」であり、第1次回答はそれぞれ「101」〜「NNN」である。
図16〜
図18は、それぞれ質問グループQ1、Q2、QNに含まれる想定質問と第1次回答(識別子)を示し、
図19はおよび最終回答候補の具体例を示している。
なお、
図19においては、説明をシンプルにするため、言語ごとの最終回答のみを示しているが、言語以外の固有回答についても言語の種類ごとに設けることが可能である。
【0119】
図16には、日本語の想定質問数は4個、英語は3個、中国語は2個の例を示している。言語毎の想定質問の数は同じ数としてもよいが、
図16に示すように言語ごとの想定質問の数は、必ずしも同じ数とする必要はない。質問応答システム導入の初期段階では、無理をして多くの想定質問を用意するよりも、基本的な質問に対して回答できることを優先して英語又は中国語の質問に対応できるようにする方が、質問者だけでなく利用機関の利便性の向上にもつながる場合が多い。文化の異なる外国人の方が基本的な事項がわからないことが多いため、外国人の質問者への対応の必要性が予想されるためである。また、質問文の意味は、各言語を通じて同じ内容の質問文としても良いが、慣習、文化等に合せて言語毎に意味やニュアンスの異なる質問文としても良い。
【0120】
図17に示す質問グループQ2においては、共通属性として「住民票の取得」が選択されており、質問グループQ2の第1次回答は「102」である。質問グループQ2に属する想定質問として、
図17に複数の言語による想定質問の具体例が示されている。質問グループQNにおいては、共通属性として「税金の支払い」が選択されており、質問グループQNの第1次回答は「NNN」である。また、質問グループQNの想定質問として、
図18に複数の言語の想定質問の具体例が示されている。
【0121】
図16、
図17及び
図18では、日本語、英語の具体的な質問文を例示しており、中国語については、日本語を用いて模式的に示している。
図からわかるように、例えば質問グループQ1内の質問に対する第1次回答は、
図16に示すように、どの種類の言語による質問であっても、いずれも識別子「101」の一つだけである。すなわち、質問文は日本語、英語、中国語による想定質問があるが、いずれの言語の想定質問であっても、質問グループQ1に対する第1次回答は、識別子「101」だけである。これは、
図17、
図18に示すように質問グループQ2及びQNおいても同じであり、想定質問の言語の如何にかかわらず、質問グループQ2の第1次回答は「102」であり、質問グループQNの回答は「NNN」である。
第1次回答システムにおいては、これらの各質問グループに属するすべての想定質問と第1次回答とが機械学習され、第1次回答システムからの第1次回答は、言語の如何にかかわらず、すべて同じ回答「101」〜「NNN」となるように構成されている。
【0122】
図19に、第1次回答、質問の固有属性の一部である言語識別子、及び最終回答記憶部18(28)に記憶される最終回答候補の具体例を示す。なお、
図19の例では、各種言語の取り扱いをわかり易く説明するために、言語情報以外の固有回答候補は示さず各種言語による最終回答候補のみを示している。しかし、
図5〜
図11を参照して説明した例と同じように、言語ごとの最終回答候補に加えて、システム利用者(業者)毎に異なる固有回答候補を回答言語の種類ごとに用意しておくことにより、適切な回答言語による最終回答を質問端末90に返信するよう構成することができる。
【0123】
質問応答システムが第1次回答を取得すると、最終回答手段15は稼働履歴記憶部13に記憶している質問の固有属性情報から回答言語の言語識別子を取得し、第1次回答と言語識別子に対応する最終回答候補を最終回答記憶部18から読み出す。例えば、第1次回答として識別子「101」を取得し、回答言語の言語識別子が英語の場合には、最終回答記憶部18から、
図19に記載されているような英語による最終回答候補が読み出されて、最終回答として質問端末90に送信される。
図19に示す例ではシステム利用者(業者)ごとの固有回答候補がないので、英語の最終回答候補がそのまま最終回答として返信するが、さらにシステム利用者(業者)の固有回答候補を各言語に対応させて設けることにより、英語の固有回答候補を最終回答として返信することも可能である。
【0124】
上述の説明においては、質問言語及び回答言語を質問者が個別に指定する例を示した。しかし質問言語に関する情報は、前述した通り、質問文の形態から質問受付回答システム10(26)又は第1次回答システム30(27)が自動判別することも可能である。また、質問者からの入力が無くとも、質問端末のOS、Webブラウザ等に設定された言語情報に基づいて、質問端末と質問応答システム間の通信に必要な共通情報として入手することも可能である。したがって、質問言語と回答言語を質問毎に利用者が設定するように構成することも、質問受付回答システム10(26)において自動的に入手可能な情報に基づいて質問言語を認識し、初期設定された言語で回答することも、質問者による指定と初期設定とを組み合わせた構成とすることも可能である。
【0125】
言語情報の認識には、質問者の言語指定、質問受付回答システム10(26)又は第1次回答システム30(27)による質問文からの自動判別機能による言語認識、又はWebブラウザ、OS等の設定言語情報に基づく言語認識について、プライオリティをつけて質問言語を確定するようにすることが好ましい。回答言語についても、質問言語と同じ言語とするようにすることも、質問言語と異なる言語で回答するように初期設定することもできる。回答言語の確定ルールについては、質問者の便宜、及びシステム効率等の観点に基づいて適宜採用することができる。
【0126】
図20に、質問言語の種類が異なる場合の処理手順の1例を示す。
ステップS1〜S4及びS9〜S10は、質問の固有属性情報で取り扱う情報が若干異なるものの、
図5に示す工程(ステップ)と同じであるので、
図20においても
図5と同じ番号を付して説明を簡略化する。
図5でも説明したように、質問端末90から質問q1を受け取ると(ステップS1)、質問の固有属性情報を取得して(質問の言語情報及びシステム利用者の情報等)を、例えば稼働履歴記憶部13に記憶するし(ステップS2)。このステップS2において、固有属性情報として質問の言語情報等を取得し記憶するのが、
図5のステップS2と異なる点である。その後、質問端末90から受信した質問を第1次回答システム30(27)に送信して第1次回答を要求する(ステップS3)。第1次回答システム30(27)は、質問q1を受信すると質問に対応する第1次回答を1個以上抽出して出力し、質問受付回答システム10(26)が第1次回答システム30(27)からの第1次回答を受信する(ステップS4)。ここまでの処理工程は、ステップS2において、質問の固有属性情報として質問の言語情報を取得して記憶することを除き、
図5の説明と同じである。
【0127】
質問の言語情報は、前述したように、質問者からの入力により取得するようにしても、質問端末90と質問受付回答システム10(26)との通信情報等に基づいて質問受付回答システム10(26)で自動的に取得するようにしても良い。質問者から回答言語が指定された場合には、ステップS2において、言語情報の一つとして回答言語情報も記憶されることが好ましい。これらの言語情報は所定の言語の識別子として記憶される。
以下の説明においては、質問の言語は中国語であり、質問者は回答言語としては何も指定しておらず、質問言語が中国語の場合には、最終回答も質問と同一言語である中国語で回答するものとして説明する。
なお、多種類の言語による質問に対する回答言語の数を少なくするため、又は中国語での回答準備が間に合わず最終回答記憶部に中国語による最終回答が用意されていない場合には、英語で回答するように構成することも可能である。この場合の構成としては、最終回答記憶部18(28)に、中国語の識別情報に紐付して英語による最終回答候補を記憶させておく構成と、回答言語が中国語の場合には最終回答記憶部18(28)の英語の最終回答候補を読み出すように初期設定しておく構成等、種々の対応が可能である。
【0128】
第1次回答システム30(27)から第1次回答を受信すると(ステップS4)、稼働履歴記憶部13等に記憶している回答言語の識別子及びシステム利用者の識別子等を取得する(ステップS55)。今、質問言語は中国語であり、質問者が回答言語を指定していないので、初期設定に従い、回答言語として中国語の識別子を取得する。同時に第1次回答が所定の条件を満足するかどうかが確認される(ステップS56)。
【0129】
第1次回答が一定の回答確信度を有する等の所定の条件を満足する場合には(S56:Yes)、第1次回答の識別子及び回答言語の識別子に基づいて最終回答記憶部18から回答言語に対応する最終回答候補が読み出される(ステップS57)。ここで、最終回答記憶部18(28)に言語以外の固有回答候補を記憶している場合には、システム利用者の識別子等に基づいて、システム利用者などに対応する固有回答候補が読み出される。
例えば、
図15〜
図19の例を参照して説明すると、中国語により「住民票を取りに来ました」との質問があった場合には、
図17に例示する想定質問Q2(7)に相当するので、質問受付回答システム10(26)は、第1次回答システム30から第1次回答識別子「102」(ステップS4)を受け取る。また、今、回答言語情報は質問時には指定されていないので、ステップS55において、回答言語として中国語の言語識別子を取得する。その後、
図19に示すように、第1次回答識別子「102」及び中国語の言語識別子に基づいて、最終回答記憶部18(28)から、第1次回答識別子の「102」の中国語の最終回答候補が読み出される(ステップS57)。
図19では中国語の最終回答候補の具体的な文書は示していないが、実際には、中国語の最終回答を記憶している。
【0130】
なお、
図19に示す例では、対応する言語以外の固有回答候補は用意されていないので、
図19に示す最終回答がそのまま最終回答となり(ステップS57)、質問端末90に送信される(ステップS9)。
ここで、対応する中国の言語以外の固有回答候補はないが、対応する所定の言語(例えば日本語)による固有回答候補がある場合には、その言語(日本語)による固有回答候補を最終回答として返信するように構成しても良い。最後に、質問者に返信した最終回答その他の情報が稼働履歴記憶部13に記憶される(ステップS10)。
【0131】
第1次回答が所定の条件を満足しない場合には(S56:No)、回答言語ごとに用意されている最終回答候補、例えば、「もう少し具体的に質問して下さい。」等の最終回答候補を、回答言語情報に基づいて最終回答記憶部18(28)から取得して(ステップS58)、質問端末90に送信する(ステップS9)。又はプログラムにより同様の最終回答を生成し(ステップS58)、質問端末90に送信するように構成しても良い(ステップS9)。
ここで、回答言語ごとに個別の最終回答候補を用意するのではなく、例えばすべての回答言語で「もう少し具体的に質問して下さい」と記載した複数の文書を一つの最終回答候補として用意しておき、第1次回答が所定の条件を満足しない場合には、すべての質問に対してその最終回答候補を読み出して返信するように構成することもできる。
その後、その質問に関する質問から最終回答までの各種情報を稼働履歴記憶部に記憶する(ステップS10)。
【0132】
<本発明の他の形態に係る質問応答システム:エンティティ機能>
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。
人工知能を備える第1次回答システム30(27)が、質問中に含まれる対象物(エンティティ)を知らせる機能を有している場合には、第1次回答システムに所定のエンティティを予め登録しておくことにより、機械学習させる想定質問の数を大幅に少なくすることが可能となる。
第1次回答システム30(27)が質問に含まれるエンティティを出力する機能を有する場合には、事前にエンティティを登録しておくことにより、第1次回答システムから第1次回答(識別子)とともに、質問に含まれているエンティティを受け取ることができる。
このエンティティの出力機能を活用するため、想定質問において「質問の意図」を共通属性とした質問グループと、その質問の意図に含まれる対象(エンティティ)を変数とする複数の想定質問を作成し、第1次回答システム30(27)に必要なエンティティを合わせて登録する。このように、各質問グループに対応する複数のエンティティを登録し、エンティティを変数とした複数の想定質問を用意することにより、登録したエンティティの数と作成した想定質問の数とを掛け合わせた数だけの想定質問が準備されたことになり、実際に機械学習する想定質問の数を大幅に少なくすることが可能となる。ここで、エンティティの登録は、質問グループ毎にエンティティを登録するのではなく、システム共通のエンティティとして登録することもできる。
【0133】
図21から
図27を参照しながら、エンティティを利用した質問応答システムにおける想定質問及び最終回答の方法を、具体例を参照しながら説明する。
図21〜
図27は、市役所における質問応答システム25(25‘)の例である。
図21は各質問グループQ1〜QNに属する想定質問の共通属性と第1次回答の識別子を例示している。
図21に示す例では、質問グループQ1〜QN−2はこれまでと同じ共通属性を有する想定質問で構成されている。
【0134】
各質問グループQ1〜QN−2では想定質問も、
図22から
図26に一部例示するように、今までに説明したものと同様の想定質問、及び各質問グループに対応する第1次回答「101」〜「NNN−2」が用意されている。したがって、第1次回答システム30(27)が質問を受け取り、当該質問が質問グループQ1〜QN−2内のいずれかの想定質問に相当する場合、対応する第1次回答「101」〜「NNN−2」のいずれかが、第1次回答システム30(27)から質問受付回答システム10(26)に提供される。質問受付回答システム10(26)は、第1次回答として「101」〜「NNN−2」のいずれかを受信すると、
図27に例示するように受信した第1次回答の識別子に対応する最終回答候補(基本回答候補又は固有回答候補)を取得して、質問応答システムに返信する。
【0135】
これに対して、
図21の質問グループQN−1及びQNの共通属性は、それぞれ、「窓口への行き方」、「必要書類の取得」となっており、行先や必要書類等具体的な対象(エンティティ)が特定されていない。また、各質問グループQN−1及びQNに含まれる想定質問には、
図25及び
図26に示す通り、具体的にどの窓口に行きたいか、又はどのような書類を取得したいかという具体的な対象は含まれておらず、変数「xxx」となっている。すなわち、質問グループQN−1及びQNでは、共通属性が「何かをしたいという意図」となっており、その対象物(エンティ)が、「したいことの対象物」であるエンティ(行きたい「窓口」、又は欲しい「書類」)が、変数となっている。以下このような質問グループQN−1及びQNを、「インテント(意図)質問グループ」と称する。
一方、質問者からの質問が行先又は書類の取得を求めるものである場合には、その質問には必ず具体的な対象物が含まれているはずである。したがって、第1次回答システムから、第1次回答として「NNN−1」又は「NNN」を出力する場合には、同時に質問中に含まれているエンティティも出力されているはずである。
【0136】
質問受付回答システムでは、インテント(意図)質問グループQN−1,又はQNに対応する識別子「NNN−1」又は「NNN」を受信した場合には、質問に含まれるインテント(意図)に基づいて、質問に対応する適切な最終回答候補を作成して送信しなければならない。
そのために、質問受付回答システムは、
図28に例示すように、登録したエンティティに対応して最終回答を選択するための最終回答識別子を示す対応表を有しており、質問中に含まれるエンティを参照して、エンティティに対応する最終回答候補を記憶している最終回答候補の識別子を取得する。この最終回答候補の識別子は、対応する最終回答候補が通常の質問グループQ1〜QN−2に対応する識別子「101」〜「NNN−2」に存在する場合には、これらの識別子を指定する。もし、識別子「101」〜「NNN−2」に適切な最終回答が無い場合には、別途最終回答識別子と最終回答候補を設ける構成としても良い。
【0137】
第1次回答がインテント(意図)質問グループに対応する第1次回答「NNN−1」又は「NNN」である場合には、質問受付回答システムは、第1次回答システムから受信した第1次回答(識別子)とエンティの識別子から対応する最終回答候補の識別子を取得して、最終回答を取得する。
例えば、質問端末からの質問が「転入手続きにきたのですが」という質問だったとする。この質問に対するそのまま該当する想定質問は質問グループQN−1及びQNにはないので、インテント(意図)質問グループQN−1(1)が第1次回答「NNN−1」となると仮定する。その場合には、回答確信度の一番高い第1次回答の識別子が「NNN−1」と、エンティティ「転入手続き」が提供される。質問受付回答システムは、第1次回答識別子「NNN−1」とエンティティ識別子「転入手続き」を受信すると、
図28に例示する対応表から、最終回答候補の識別子「101」を取得し、
図27に示す第1次回答の識別子「101」に対応する最終回答候補を読み出して、最終候補として質問端末に送信する。
【0138】
インテント(意図)質問グループに対応する第1次回答「NNN−1」又は「NNN」を受信したにもかかわらず、エンティティが存在しない場合には、最終回答候補を取得できないので、
図28に示す通り、「どちらの窓口に行きたいかわかりませんでした」又は「どのような書類が必要かわかりませんでした」等の回答を最終回答として、質問端末に返信する。このようなケースは、質問端末からの質問として、エンティティとして登録していない窓口や必要書類が指定された場合が想定される。このようなログ情報を収集分析して、想定質問やエンティティの登録を変更することにより、質問に対する正答率を上げ、質問応答システム25(25‘)を進化させていくことが可能となる。
【0139】
以上の説明では、最終回答候補として、「基本回答候補」及び「固有回答候補」をそのまま最終回答とする例、「各種言語の基本回答候補や固有回答候補」を最終回答とする例、「第1次回答(識別子)とエンティティ識別子の組み合わせから得られた基本回答候補」を最終回答とする例を説明したが、他の組合せも可能であり、説明した構成を互いに組み合わせて得られるすべての構成も、本願発明の範囲に属するものである。
【0140】
なお、上記の説明で示した実施形態では、自然言語処理による質問グループの例のみを示したが、本発明に係る質問応答システム25(25‘)で取り扱う質問は、自然言語形式に基づく質問に限定されない。質問応答システム25(25‘)に、画像解析及び画像認識システムを組み込み、質問端末から画像データを受信することにより、画像に関連する最終回答を送信するように構成することもできる。画像による質問に対する応答とは、例えば、質問端末から、質問として特定の建物や建造物、動物、人物等の有体物の画像データを受信した場合に、その画像データに関する情報を最終回答として、返信するものである。
具体的には、リフォーム会社が扱う、キッチンなどの設備機器の外観写真を質問として受け付けると、この設備機器に関する情報を第1次回答として提供するような構成とすることもできる。質問応答システム25(25‘)は、当設備機器に関する情報を、自社向けの固有回答として登録することにより、業者ごとの適切な回答を質問者に返すことが可能となる。
【0141】
また、質問端末から画像データを受信することにより、画像に関する情報の回答を、質問者に適した言語で返信するように構成することもできる。
具体的な応用例としては、例えば観光ガイドに利用することができる。この場合、質問端末から目的地の画像を受け付け、画像認識技術と交通手段等の検索により目的地への行き方(電車乗り継ぎ方法等)を案内することなどができる。写真や通信情報から言語情報を取得することにより、乗継方法の説明を適切な言語で返信するように構成することもできる。
同様に、美術館等における作品の説明等についても、各種言語による案内が可能となる。