(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-124303(P2020-124303A)
(43)【公開日】2020年8月20日
(54)【発明の名称】オフセット修正の歯冠補綴物の成形方法およびその歯冠補綴物
(51)【国際特許分類】
A61C 5/77 20170101AFI20200727BHJP
A61C 13/34 20060101ALI20200727BHJP
【FI】
A61C5/77
A61C13/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-17529(P2019-17529)
(22)【出願日】2019年2月2日
(71)【出願人】
【識別番号】514033297
【氏名又は名称】株式会社医科歯科ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082832
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 邦章
(72)【発明者】
【氏名】藤原 芳生
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159RR15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歯冠補綴物のエッジ部を的確な辺縁部に再現する。
【解決手段】治療用歯の所要部を削ってスキャンして所要画像のSTLデータを取得するとともにCADデータに取り込み、上記CADデータに取り込んだ複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁状態に修正して、このエッジ部を修正したCAD画像にもとづいて歯冠補綴物を形成するようにしている。削って型取りしてその複製歯を形成し、その形成した複製歯をスキャンして所要画像のSTLデータを取得して、CADデータに取り込んだ複製歯の支持台の棚を水平状に修正して、エッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁状態に修正して、このエッジ部を修正したCAD画像にもとづいて歯冠補綴物を形成することが好ましい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用歯の所要部を削ってスキャンして当該複製歯用のSTLデータおよび/またはCADデータを取り込み、
上記CADデータに取り込んだ当該治療用歯の複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁部に修正して、このエッジ部を修正したCADデータにもとづいて歯冠補綴物を成形することを特徴とするオフセット修正の歯冠補綴物の成形方法。
【請求項2】
治療用歯の所要部を削って型取りして当該複製歯を作り、その作った複製歯をスキャンしてSTLデータを取得するとともにCADデータに取り込み、
上記CADデータに取り込んだ複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁状態に修正して歯冠補綴物を成形することを特徴とする請求項1に記載のオフセット修正の歯冠補綴物の成形方法。
【請求項3】
CADデータに取り込んだ複製歯の支台歯の棚を水平状に修正して、当該CADデータのエッジ部を所定量のオフセットを設け、さらに所定の斜めの拡張オフセット、垂直の垂直オフセットの辺縁部に修正して歯冠補綴物を成形することを特徴とする請求項1または2に記載のオフセット修正の歯冠補綴物の成形方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のオフセット修正の歯冠補綴物の成形方法において、当該治療用歯の複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁部に修正して、このエッジ部を修正したCADデータにもとづいて歯冠補綴物を形成したことを特徴とするオフセット修正の歯冠補綴物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分野におけるオフセット修正の歯冠補綴物の成形方法およびその歯冠補綴物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前、虫歯や亀裂が生じた歯の治療にあっては、虫歯部分等を削って所要の型取りをし、その型取りから複製品を作り、スキャンしたりして歯冠補綴物を作成して補綴している。
【0003】
しかし、型取りした複製品をスキャンすると、エッジロス現象が生じ、そのままデザインするとエッジ部が実際とは相違する形状となって、正確に適合しない不具合なものとなるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−517144号公報
【特許文献2】特開2009−101124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、スキャンによるSTLデータでは、歯冠補綴物のエッジ部を的確に表現することができなく、角がとれて丸くなるもので、エッジ部の所要の辺縁部の的確な再現をすることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、治療用歯の所要部を削ってスキャンして当該複製歯用のSTLデータおよび/またはCADデータを取り込み、上記CADデータに取り込んだ当該治療用歯の複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁部に修正して、このエッジ部を修正したCADデータにもとづいて歯冠補綴物を成形することを特徴とするオフセット修正の歯冠補綴物の成形方法を提供するにある。
【0007】
また、本発明は、治療用歯の所要部を削って型取りして当該複製歯を形成し、その形成した複製歯をスキャンしてSTLデータを取得するとともにCADデータに取り込み、上記CADデータに取り込んだ複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁状態に修正して、このエッジ部を修正したCAD画像にもとづいて歯冠補綴物を成形することを特徴とするオフセット修正の歯冠補綴物の成形方法を提供するにある。
【0008】
さらに、本発明は、CADデータに取り込んだ複製歯の支台歯の棚を水平状に修正して、当該CADデータのエッジ部を所定量のオフセットを設け、さらに所定の斜めの拡張オフセット、垂直の垂直オフセットの辺縁部に修正して歯冠補綴物を成形することを特徴とするオフセット修正の歯冠補綴物の成形方法を提供するにある。
【0009】
またさらに、本発明は、上記オフセット修正の歯冠補綴物の成形方法において、当該治療用歯の複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁部に修正して、このエッジ部を修正したCADデータにもとづいて歯冠補綴物を形成したことを特徴とするオフセット修正の歯冠補綴物を提供するにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、特許請求の範囲の請求項1のように、治療用歯の所要部を削ってスキャンして当該複製歯用のSTLデータおよび/またはCADデータを取り込み、上記CADデータに取り込んだ当該治療用歯の複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁部に修正して、このエッジ部を修正したCADデータにもとづいて歯冠補綴物を成形することによって、歯冠補綴物のエッジ部の辺縁部を的確に再現することができ、よい適合状態の歯冠補綴物を成形することができる。
【0011】
また、請求項2のように、治療用歯の所要部を削って型取りして当該複製歯を作り、その作った複製歯をスキャンしてSTLデータを取得するとともにCADデータに取り込み、上記CADデータに取り込んだ複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁状態に修正して、このエッジ部を修正したCAD画像にもとづいて歯冠補綴物を成形することによって、スキャンによるSTLデータでは歯冠補綴物のエッジ部に角がとれて丸くなく、エッジ部の所要の的確な辺縁部に再現ができなかったが、CADデータに取り込んで所要のオスセットを設けたエッジ部の辺縁部に的確に修正できて、よい適合状態の歯冠補綴物を成形することができる。
【0012】
さらに、請求項3のように、CADデータに取り込んだ複製歯の支台歯の棚を水平状に修正して、当該CADデータのエッジ部を所定量のオフセットを設け、さらに所定の斜めの拡張オフセット、垂直の垂直オフセットの辺縁部に修正して歯冠補綴物を成形することによって、スキャンによるSTLデータでは歯冠補綴物のエッジ部に角がとれて丸くなるものであったが、所定のオフセットを設け、斜めの拡張オフセット、垂直の垂直オフセットのエッジ部の的確な辺縁部に修正できて、エッジ部の辺縁部を的確に作成できて、よい適合状態の歯冠補綴物を成形することができる。
【0013】
またさらに、請求項4のように、上記オフセット修正の歯冠補綴物の成形方法において、当該治療用歯の複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁部に修正して、このエッジ部を修正したCADデータにもとづいて歯冠補綴物を形成したことによって、上記したように歯冠補綴物のエッジ部の辺縁部に的確に表現することができ、よい適合状態の歯冠補綴物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例の歯冠補綴物作成の概要フロー図、
【
図2】同上のスキャンのSTLデータからCADデータに取り込んだ状態の説明用図、
【
図3】同上のスキャンのSTLデータからCADデータに取り込み、CADによるエッジ部修正の説明用拡大図、
【
図4】同上の支台歯の棚が斜め状態時のCADによるエッジ部修正の説明用拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のオフセット修正の歯冠補綴物の成形方法およびその歯冠補綴物は、治療用歯の所要部を削ってスキャンして当該複製歯用のSTLデータおよび/またはCADデータを取り込み、上記CADデータに取り込んだ当該治療用歯の複製歯のエッジ部を所要のオフセットを設けた辺縁部に修正して、このエッジ部を修正したCADデータにもとづいて歯冠補綴物を成形することを特徴としている。
【0016】
オフセット修正の歯冠補綴物1は、先ず
図1のフローチャートのように患者の虫歯や亀裂歯等の治療用歯について、その所要部分を削って、その歯冠補綴物用の型取りをする。
【0017】
そして、その型取りにもとづいて歯冠補綴物用の複製歯を作成し、その複製歯をインハウス型等のスキャナーでスキャンしてSTLデータとして取得するとともに、所要のCAD装置にCADデータとして取り込む。
【0018】
スキャナーよるSTLデータでは、
図2のように歯冠補綴物1の周部のエッジ部を的確に表現することができなく、角がとれて丸くなり、エッジ部の所要の辺縁部に的確に再現ができないので、これを修正して、あたかも角が再現できているように歯冠補綴物1を作ることにある。
【0019】
デフォルトのマージン設定では、
図3のように周部のエッジ部の角がとれてしまっている部分で再現してしまう。そこで、
図3のように歯冠補綴物1の支台歯の棚に対して水平または所定の傾斜角度のオフセットA、100〜160度の斜めの拡張オフセットB、垂直の垂直オフセットCのエッジとして所要の修正をして所要の歯冠補綴物1を作ることができる。
【0020】
エッジロスは、エッジより内側10〜200ミクロン位のところで生じるので、その辺りを辺縁として設定し、そこから不足分の10〜300ミクロン、好ましくは10〜200ミクロン位を棚の延長線上でデザインによる延長とすると臨床的に十分なものとできる。
【0021】
図4のように歯冠補綴物1の支台歯の棚が斜めの場合、オフセットAを斜めとなった棚に平行状に設け、100〜160度の所要の斜めの拡張オフセットB、垂直の垂直オフセットCのエッジとして所要の修正をして所要の歯冠補綴物1を作ることができる。
【0022】
このように歯冠補綴物1の支台歯の棚に対して、オフセットAを自由に角度調整可能に設定しておけば、オフセットAを所要のマイナスからプラスの角度にわたって支台歯の棚の角度に対応することができ、エッジロスをかなりの精度に修正可能である。オフセットAの角度調整には、支台歯の棚を水平状にCAD修正して作成したりするなど適宜に行なうことができる。
【0023】
上記では、治療用歯を型取りして複製歯を作成したが、STLデータまたはCADデータを取り込んだり、口腔内スキャナーによるスキャンでSTLデータおよび/またはCADデータを取り込み、上記のように修正することもできる。
【0024】
なお、本発明は、インプラントのものについても適用できる他、上記した本発明の趣旨にもとずいて適宜の実施態様が採択できるものである。
【実施例】
【0025】
図1以下は、本発明の実施例を示すものである。歯冠補綴物1の成形には、
図1のフローチャートのように患者の虫歯の治療用歯について、その所要部分を削って、その歯冠補綴物用の型取りをし、その型取りにもとづいて歯冠補綴物用の複製歯を作成し、その複製歯をインハウス型等のスキャナーでスキャンしてSTLデータとして取得するとともに、CAD装置にCADデータとして取り込む。
【0026】
デフォルトのマージン設定では、
図2のように角がとれてしまっている部分で再現してしまう。そこで、
図3のように歯冠補綴物1の支台歯の棚に対して100ミクロンのオフセットAを支台歯の延長上に延ばし、100ミクロンの120〜150度の斜めの拡張オフセットB、100ミクロンの垂直の垂直オフセットCのエッジとして全周縁部を修正して所要の歯冠補綴物1を作った。
【0027】
エッジロスは、エッジより内側10〜200ミクロン位のところで生じるので、その辺りを辺縁として設定し、そこから不足分の200〜300ミクロンを棚の延長線上でデザインによる延長とすると臨床的に十分なものとでき、加工中に割れが生じなくて所要の厚みの、よりよい適合状態に実現することができた。
【0028】
また、
図4のように歯冠補綴物1の支台歯の棚が斜めの場合、100ミクロンのオフセットAを斜めになった棚に平行状にCAD修正して設け、図のように100ミクロンの120〜140度の斜めの拡張オフセットB、100ミクロンの垂直の垂直オフセットCのエッジとして全周縁部を修正して所要の歯冠補綴物1を作ることができる。
【0029】
このように歯冠補綴物1の支台歯の棚に対して、オフセットAを自由に角度調整可能に設定しておけば、オフセットAを所要のマイナスからプラスの角度のわたって支台歯の棚の角度に対応することができ、エッジロスをかなりの精度に修正できる。
【0030】
上記では、治療用歯を型取りして複製歯を作成したが、口腔内スキャナーによるスキャンでSTLデータおよび/またはCADデータを取り込み、上記のように修正することもできる。本発明は、インプラントのものについても適用できる他、上記した本発明の趣旨にもとずいて適宜の実施態様を採択できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、歯科分野における歯の治療、インプラントに広く利用することかできる。
【符号の説明】
【0032】
1…歯冠補綴物 A…オフセット B…拡張オフセット C…垂直オフセット