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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-124660(P2020-124660A)
(43)【公開日】2020年8月20日
(54)【発明の名称】汚泥かき寄せ機及び無端チェーン
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/18 20060101AFI20200727BHJP
【FI】
   B01D21/18 G
   B01D21/18 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-17642(P2019-17642)
(22)【出願日】2019年2月4日
(71)【出願人】
【識別番号】510314792
【氏名又は名称】株式会社エーワンテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100158850
【弁理士】
【氏名又は名称】明坂 正博
(72)【発明者】
【氏名】金田 英一
(72)【発明者】
【氏名】金田 義明
(72)【発明者】
【氏名】野口 義弘
(57)【要約】
【課題】十分な強度を有し、腐食に強い汚泥かき寄せ機及び無端チェーンを提供すること。
【解決手段】長尺のフライト体を、その長手方向に対して垂直な方向に走行させて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せる汚泥かき寄せ機であって、複数の前記フライト体が所定の間隔で固定された複数のチェーンリンクを連結軸によって枢着して無端に連結した一対の無端チェーンと、前記沈殿池内に配設され、張架された前記無端チェーンを循環駆動させることによって前記池底に沈殿した汚泥を前記フライト体により掻き寄せる主務スプロケットホイール及び従動スプロケットホイールとを備え、前記無端チェーンにおける前記チェーンリンク及び前記連結軸がPC(ポリカーボネート)で構成されることを特徴とする汚泥かき寄せ機。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のフライト体を、その長手方向に対して垂直な方向に走行させて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せる汚泥かき寄せ機であって、
複数の前記フライト体が所定の間隔で固定された複数のチェーンリンクを連結軸によって枢着して無端に連結した一対の無端チェーンと、
前記沈殿池内に配設され、張架された前記無端チェーンを循環駆動させることによって前記池底に沈殿した汚泥を前記フライト体により掻き寄せる主務スプロケットホイール及び従動スプロケットホイールとを備え、
前記無端チェーンにおける前記チェーンリンク及び前記連結軸がPC(ポリカーボネート)で構成されることを特徴とする汚泥かき寄せ機。
【請求項2】
前記チェーンリンクに挿入された前記連結軸の一端側に取り付けられる抜け止め用のピンフックをさらに備え、
前記ピンフックがPCで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項3】
前記ピンフックには中抜き孔が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項4】
前記複数のチェーンリンクを連結する複数の前記連結軸において、隣り合う前記連結軸は互い違いの向きに挿入されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項5】
前記複数のチェーンリンクは、各々、
前記連結軸を挿入するための第1の貫通孔(ボス)を有する筒状の基部と、
前記基部の両端から長手方向に対し垂直方向に左右対称に各々延在する一対のプレート部とを備え、
前記プレート部は、各々
前記基部とは反対側に連結軸を挿入するための第2の貫通孔(ボス)と、前記第2の貫通孔の周囲を取り囲むようにして、前記プレート部同士が対向する内側主面と反対側の外側主面に対して垂直方向に隆起した第1のリブ部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項6】
前記一対のプレート部は、各々、
前記外側主面に対して垂直方向に隆起し、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔にかけて延在する第2のリブ部を有することを特徴とする請求項5に記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項7】
前記第2のリブ部は、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔に向けて途中で分岐した略Y字型に設けられたことを特徴とする請求項6に記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項8】
長尺のフライト体を、その長手方向に対して垂直な方向に走行させて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せる汚泥かき寄せ機で用いられる無端チェーンであって、
前記無端チェーンは、
複数の前記フライト体が所定の間隔で固定された複数のチェーンリンクを連結軸によって枢着して無端に連結されてなり、
前記チェーンリンク及び前記連結軸がPC(ポリカーボネート)で構成されることを特徴とする無端チェーン。
【請求項9】
前記チェーンリンクに挿入された前記連結軸の一端側に取り付けられる抜け止め用のピンフックをさらに備え、
前記ピンフックがPCで構成されたことを特徴とする請求項8に記載の無端チェーン。
【請求項10】
前記ピンフックには中抜き孔が設けられたことを特徴とする請求項9に記載の無端チェーン。
【請求項11】
前記複数のチェーンリンクを連結する複数の前記連結軸において、隣り合う前記連結軸は互い違いの向きに挿入されたことを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の無端チェーン。
【請求項12】
前記複数のチェーンリンクは、各々、
前記連結軸を挿入するための第1の貫通孔(ボス)を有する筒状の基部と、
前記基部の両端から長手方向に対し垂直方向に左右対称に各々延在する一対のプレート部とを備え、
前記プレート部は、各々
前記基部とは反対側に連結軸を挿入するための第2の貫通孔(ボス)と、前記第2の貫通孔の周囲を取り囲むようにして、前記プレート部同士が対向する内側主面と反対側の外側主面に対して垂直方向に隆起した第1のリブ部を有することを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれかに記載の無端チェーン。
【請求項13】
前記一対のプレート部は、各々、
前記外側主面に対して垂直方向に隆起し、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔にかけて延在する第2のリブ部を有することを特徴とする請求項12に記載の無端チェーン。
【請求項14】
前記第2のリブ部は、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔に向けて途中で分岐した略Y字型に設けられたことを特徴とする請求項13に記載の無端チェーン。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥かき寄せ機及び無端チェーンに関し、特に、長尺のフライト体を、その長手方向に対して垂直な方向に走行させて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せる汚泥かき寄せ機及び無端チェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場では、下水道の汚水を浄化し、河川、湖沼または海へ放流している。下水処理場に入ってきた汚水は、スクリーンによりゴミが除去された後、ポンプで最初沈殿池に送られる。ここでは、主に比重差を利用して、重力沈降により御水中の沈殿しやすい汚れが除去される。次に、汚水は、生物反応槽に送られ、返送汚泥が加えられて高濃度の微生物によって有機物の吸着、摂取、消化分解が行われる。次に、汚水は、最終沈殿池に送られる。この最終沈殿池では、活性汚泥をゆっくり沈殿させ上澄みを河川、湖沼または海へ放流し、最終沈殿池の活性汚泥はポンプで生物反応槽に送られ再び使用される。
【0003】
最終沈殿池では、汚泥かき寄せ機により、最終沈殿池の池底に堆積する汚泥がかき寄せられて集泥ピットに集められる。ここで、下水中には腐食成分が含まれていることから、最終沈殿池の池底に沈殿した汚泥には腐食成分が凝縮されている。このため、従来から汚泥かき寄せ機に腐食対策が行われている。
【0004】
例えば、従来の汚泥かき寄せ機では、腐食を防止するために構成部材をステンレス製としている。しかしながら、汚泥かき寄せ機をステンレス製としても、フライト体内部に腐食成分が凝縮された汚泥が詰まり、経時的にそれが腐敗してくると、フライト体が内面から腐食する虞がある。
【0005】
そこで、特許文献1に開示される発明では、ステンレス鋼で形成されて内部に中空部を有するフライト体において、フライト体の何れかの面に内部の中空部と連通する開口部を形成することが提案されている。また、この開口部は、掻寄背面に設けられることが好ましく、掻寄背面と両端面とに設けられることがさらに好ましいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−283786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される発明では、かき寄せ機自体をステンレス鋼で構成しているものの、ステンレス鋼が経年劣化により腐食する虞がある。そこで、腐食を防止するために、汚泥かき寄せ機の構成部材を樹脂製としたものがある。
【0008】
しかし、下水処理の汚泥は、硫化水素が含まれ強い腐食性を有している。このため、汚泥かき寄せ機の構成部材を樹脂製とする場合、硫化水素の強い酸性による腐食を防止するためにPOM(ポリアセタール又はポリオキシメチレン)を使用することが多い。しかしながらPOMは、耐酸性に優れるがホルムアルデヒドを含んでおり、このホルムアルデヒドが溶出するため上水の処理には使用することができないという問題がある。
【0009】
また、汚泥かき寄せ機の構成部材をPOMとした場合、摺動性の問題から、無端チェーンを構成するチェーンリンクを接続する連結軸(ピン)の構成部材としてナイロンが使用される。しかしながら、ナイロン製の連結軸(ピン)は、吸水率が約3%であることから、水中で使用する汚泥かき寄せ機では、ナイロン製ピンが膨潤し、チェーンリンクの動きが悪く(しぶく)なる。また、近年水温が上昇していることで、無端チェーンの伸びが心配されるが、POMやナイロンは、熱膨張率が高いため無端チェーンがスプロケットホイールから脱輪する虞がある。
【0010】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、十分な強度を有し、腐食に強い汚泥かき寄せ機及び無端チェーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決すべく、本発明に係る汚泥かき寄せ機は、長尺のフライト体を、その長手方向に対して垂直な方向に走行させて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せる汚泥かき寄せ機であって、複数の前記フライト体が所定の間隔で固定された複数のチェーンリンクを連結軸によって枢着して無端に連結した一対の無端チェーンと、前記沈殿池内に配設され、張架された前記無端チェーンを循環駆動させることによって前記池底に沈殿した汚泥を前記フライト体により掻き寄せる主務スプロケットホイール及び従動スプロケットホイールとを備え、前記無端チェーンにおける前記チェーンリンク及び前記連結軸がPC(ポリカーボネート)で構成されることを特徴とする。
【0012】
上記のように本発明に係る汚泥かき寄せ機は、無端チェーンにおけるチェーンリンク及び連結軸がPCで構成されている。PCは、有害物質(例えば、ホルムアルデヒド)を放出しないため、下水処理だけでなく上水処理においても使用することができる。また、PCの引張強度はPOM(ポリアセタール又はポリオキシメチレン)よりも高く、経年劣化によるチェーンの伸びが少ない。さらに、PCを用いることでステンレスよりも腐食に強く、かつ安価な汚泥かき寄せ機を提供することができる。また、PCはPOMに比較して再利用が容易であるため資源を有効利用することができる。なお、PCを着色しない又は透光性を有する程度(内部状態がわかる程度)に着色した場合、チェーンリンク及び連結軸が透光性を有しているため、PCによる成型時に生じやすい内部の気泡の状態を目視で的確に把握することができる。また、チェーンリンクを接続する連結軸の構成部材がナイロンではなくPCであるため、ナイロンのように連結軸が膨潤し、チェーンリンクの動きが悪く(しぶく)なる虞を低減することができる。また、POMやナイロンよりも熱膨張率が低いため無端チェーンがスプロケットホイールから脱輪する虞を低減することができる。
【0013】
また、本発明に係る汚泥かき寄せ機では、前記チェーンリンクに挿入された前記連結軸の一端側に取り付けられる抜け止め用のピンフックをさらに備え、前記ピンフックがPCで構成されたことを特徴とする。また、前記ピンフックには中抜き孔が設けられていることを特徴とする。上記のように本発明に係る汚泥かき寄せ機では、連結軸の抜け止め用のピンフックがPCで構成されているため、POMよりも引張強度が高く、経年劣化による耐久性も高く、ステンレスよりも腐食に強く、安価な汚泥かき寄せ機を提供することができる。また、ピンフックに中抜き孔が設けられていることで、PCによる成型時に気泡が混入することを抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る汚泥かき寄せ機では、前記複数のチェーンリンクを連結する複数の前記連結軸において、隣り合う前記連結軸は互い違いの向きに挿入されたことを特徴とする。上記のように本発明に係る汚泥かき寄せ機における隣り合う前記連結軸が互い違いの向きに挿入されていることで、連結軸の形状の非対称性に基づく無端チェーンの伸びのアンバランスが抑制され、無端チェーンの進行方向への直進性を保ちやすくなる。
【0015】
また、本発明に係る汚泥かき寄せ機の前記複数のチェーンリンクは、各々、前記連結軸を挿入するための第1の貫通孔(ボス)を有する筒状の基部と、前記基部の両端から長手方向に対し垂直方向に左右対称に各々延在する一対のプレート部とを備え、前記プレート部は、各々前記基部とは反対側に連結軸を挿入するための第2の貫通孔(ボス)と、前記第2の貫通孔の周囲を取り囲むようにして、前記プレート部同士が対向する内側主面と反対側の外側主面に対して垂直方向に隆起した第1のリブ部を有することを特徴とする。
【0016】
上記のように本発明に係る汚泥かき寄せ機の各チェーンリンクを構成する一対のプレート部は、基部とは反対側に連結軸を挿入するための第2の貫通孔(ボス)を有し、この第2の貫通孔の周囲を取り囲むようにして、プレート部同士が対向する内側主面と反対側の外側主面に対して垂直方向に隆起した第1のリブ部を有する。このチェーンリンクでは、力の掛かる連結軸を挿入する第2の貫通孔の周囲にプレート部同士が対向する内側主面と反対側の外側主面に対して垂直方向に隆起した第1のリブ部を設けるようにしたので、各部材が合成樹脂材料で構成されていても十分な強度を得ることが出来る。
【0017】
また、本発明に係る汚泥かき寄せ機の前記複数のチェーンリンクの前記一対のプレート部は、各々、前記外側主面に対して垂直方向に隆起し、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔にかけて延在する第2のリブ部を有することを特徴とする。
【0018】
上記のように本発明に係る汚泥かき寄せ機の複数のチェーンリンクの一対のプレート部は、各々、外側主面に対して垂直方向に隆起し、第1の貫通孔から第2の貫通孔にかけて延在する第2のリブ部を有するので、さらに強度を高めることができる。
【0019】
また、本発明に係る汚泥かき寄せ機において、前記第2のリブ部は、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔に向けて途中で分岐した略Y字型に設けられたことを特徴とする。このように、第2のリブ部が略Y字型に設けられることで、一対のプレート部における間の開いている第2の貫通孔側の補強効果をさらに高めることができる。
【0020】
本発明に係る無端チェーンは、長尺のフライト体を、その長手方向に対して垂直な方向に走行させて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せる汚泥かき寄せ機で用いられる無端チェーンであって、複数の前記フライト体が所定の間隔で固定された複数のチェーンリンクを連結軸によって枢着して無端に連結されてなり、前記チェーンリンク及び前記連結軸がPC(ポリカーボネート)で構成されることを特徴とする。
【0021】
上記のように本発明に係る無端チェーンは、チェーンリンク及び連結軸がPCで構成されているため、有害物質(例えば、ホルムアルデヒド)を放出せず、下水処理だけでなく上水処理においても使用することができる。また、PCの引張強度はPOMよりも高く、経年劣化によるチェーンの伸びが少ない。さらに、PCを用いることでステンレスよりも腐食に強く、かつ安価な汚泥かき寄せ機を提供することができる。また、PCはPOMに比較して再利用が容易であるため資源を有効利用することができる。なお、PCを着色しない又は透光性を有する程度(内部状態がわかる程度)に着色した場合、チェーンリンク及び連結軸が透光性を有しているため、PCで成形した場合の内部の気泡の状態を目視で的確に把握することができる。また、チェーンリンクを接続する連結軸の構成部材がナイロンではなくPCであるため、ナイロンのように連結軸が膨潤し、チェーンリンクの動きが悪く(しぶく)なる虞を低減することができる。また、POMやナイロンよりも熱膨張率が低いため無端チェーンがスプロケットホイールから脱輪する虞を低減することができる。
【0022】
また、本発明に係る無端チェーンでは、前記チェーンリンクに挿入された前記連結軸の一端側に取り付けられる抜け止め用のピンフックをさらに備え、前記ピンフックがPCで構成されたことを特徴とする。また、前記ピンフックには中抜き孔が設けられていることを特徴とする。上記のように本発明に係る無端チェーンでは、連結軸の抜け止め用のピンフックがPCで構成されているため、POMよりも引張強度が高く、経年劣化による耐久性も高く、ステンレスよりも腐食に強く、安価な無端チェーンを提供することができる。また、ピンフックに中抜き孔が設けられていることで、PCによる成型時に気泡が混入することを抑制することができる。
【0023】
また、本発明に係る無端チェーンでは、前記複数のチェーンリンクを連結する複数の前記連結軸において、隣り合う前記連結軸は互い違いの向きに挿入されたことを特徴とする。上記のように本発明に係る無端チェーンにおける隣り合う前記連結軸が互い違いの向きに挿入されていることで、連結軸の形状の非対称性に基づく無端チェーンの伸びのアンバランスが抑制され、無端チェーンの進行方向への直進性を保ちやすくなる。
【0024】
また、本発明に係る無端チェーンの前記複数のチェーンリンクは、各々、前記連結軸を挿入するための第1の貫通孔(ボス)を有する筒状の基部と、前記基部の両端から長手方向に対し垂直方向に左右対称に各々延在する一対のプレート部とを備え、前記プレート部は、各々前記基部とは反対側に連結軸を挿入するための第2の貫通孔(ボス)と、前記第2の貫通孔の周囲を取り囲むようにして、前記プレート部同士が対向する内側主面と反対側の外側主面に対して垂直方向に隆起した第1のリブ部を有することを特徴とする。
【0025】
上記のように本発明に係る無端チェーンの各チェーンリンクを構成する一対のプレート部は、基部とは反対側に連結軸を挿入するための第2の貫通孔(ボス)を有し、この第2の貫通孔の周囲を取り囲むようにして、プレート部同士が対向する内側主面と反対側の外側主面に対して垂直方向に各々隆起した第1のリブ部を有する。このチェーンリンクでは、力の掛かる連結軸を挿入する第2の貫通孔の周囲にプレート部同士が対向する内側主面と反対側の外側主面に対して垂直方向に隆起した第1のリブ部を設けるようにしたので、各部材が合成樹脂材料で構成されていても十分な強度を得ることが出来る。
【0026】
また、本発明に係る無端チェーンの前記複数のチェーンリンクの前記一対のプレート部は、各々、前記外側主面に対して垂直方向に隆起し、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔にかけて延在する第2のリブ部を有することを特徴とする。
【0027】
上記のように本発明に係る無端チェーンの複数のチェーンリンクの一対のプレート部は、各々、外側主面に対して垂直方向に隆起し、第1の貫通孔から第2の貫通孔にかけて延在する第2のリブ部を有するので、さらに強度を高めることができる。
【0028】
また、本発明に係る無端チェーンにおいて、前記第2のリブ部は、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔に向けて途中で分岐した略Y字型に設けられたことを特徴とする。このように、第2のリブ部が略Y字型に設けられることで、一対のプレート部における間の開いている第2の貫通孔側の補強効果をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、十分な強度を有し、腐食に強い汚泥かき寄せ機及び無端チェーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】沈殿池及び汚泥かき寄せ機の断面図である。
図2】スプロケットホイールの平面図である。
図3】無端チェーンを構成するチェーンリンクの構成図である。
図4】無端チェーンの一部における分解斜視図である。
図5】スプロケットホイールと無端チェーンとの噛み合いを示す図である。
図6】支持部材の断面図である。
図7】他の実施形態におけるスプロケットホイールと無端チェーンとの噛み合いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、下水場における沈殿池Aの縦断面を示した図である。沈殿池A内には、実施形態に係る汚泥かき寄せ機1が設置されている。
【0032】
図1に示すように、汚泥かき寄せ機1は、フライト体100と、無端チェーン200と、主務スプロケットホイール300と、従動スプロケットホイール400と、駆動手段500とを備える。沈殿池Aの左右壁には、それぞれ主務スプロケットホイール300と、複数の従動スプロケットホイール400とが設置されており、主務スプロケットホイール300には、主務スプロケットホイール300を駆動回転させるモータ520を備えた駆動装置(駆動手段)500が動力伝達ベルト510を介して連結されている。
【0033】
ここで、主務スプロケットホイール300は、沈殿池Aの長手方向端部における水面WL近くに支持部材600により沈殿池Aの壁面に支持され、一の従動スプロケットホイール400は、沈殿池Aの長手方向略中央における水面WL近くに支持され、他の従動スプロケットホイール400は、沈殿池Aの長手方向両端側における池底BT近くに支持部材600により沈殿池Aの壁面に支持されている。
【0034】
無端チェーン200は、沈殿池Aの左右壁に夫々設けられた主務スプロケットホイール300及び複数の従動スプロケットホイール400に回動自在に張架された左右一対の無端チェーン200からなり、複数のチェーンリンク210(図3参照)を連結軸によって枢着して無端に連結されている。
【0035】
沈殿池Aの左側の壁及び右側の壁の各々に沿って設けられた左右一対の無端チェーン200の間には、所定の間隔で長尺のフライト体100が架け渡されて固定されており、主務スプロケットホイール300を回転動作させ、無端チェーン200を沈殿池A内で図1に向かって時計回り(CW)に循環駆動させることにより池底に沈殿した汚泥がフライト体100により汚泥ピット(排出溝)15へと掻き寄せられる。
【0036】
ここで、本実施形態の汚泥かき寄せ機1の無端チェーン200におけるチェーンリンク210(図3参照)及び連結軸240(図4参照)は、PC(ポリカーボネート)で構成されている。
【0037】
また、本実施形態の汚泥かき寄せ機1の主務スプロケットホイール300及び従動スプロケットホイール400の各部材は、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)又はPC(ポリカーボネート)から選択される合成樹脂材料で構成されることが好ましい。また、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1の主務スプロケットホイール300及び従動スプロケットホイール400の各部材を構成する合成樹脂であるPET又はPENは、非着色の状態で透明又は半透明であること、すなわち結晶化していないことが好ましい。
【0038】
(スプロケットホイール)
図2は、主務スプロケットホイール300の平面図である。以下、図2を参照して、主務スプロケットホイール300の構成について説明する。図2に示すように、主務スプロケットホイール300は、PET、PEN又はPCから選択される合成樹脂材料からなる円盤形状の部材であり、中央にシャフト(主軸)を通すための貫通孔301を有する。
【0039】
主務スプロケットホイール300は、円周上に所定の幅で形成された歯部302を有する。歯部302が無端チェーン200と噛み合うことで、主務スプロケットホイール300を回転動作させて無端チェーン200を循環駆動させることができる。また、主務スプロケットホイール300には、強度確保の観点から貫通孔301に周囲を取り囲むようにして隆起したリブ部303と、該リブ部303から主務スプロケットホイール300の外周側(歯部302)に向かって延在する複数本のリブ部304と、リブ部304間に設けられた複数の中抜き孔305Hと、が設けられている。なお、従動スプロケットホイール400の構成は、主務スプロケットホイール300の構成と同じであるため重複する説明は省略する。
【0040】
(無端チェーン)
図3は、無端チェーンを構成するチェーンリンクの構成図である。図3(a)には、無端チェーン200を構成するチェーンリンク210の上面図が示される。図3(b)には、無端チェーン200を構成するチェーンリンク210の側面図が示される。
図4は、無端チェーンの一部における分解斜視図である。なお、図4には、無端チェーン200のうち4つのチェーンリンク210の部分の分解斜視図が示される。
以下、図3及び図4を参照して、無端チェーン200の構成について説明する。図4に示すように、無端チェーン200は、複数のチェーンリンク210が連結されて構成される。各チェーンリンク210はPCからなり、連結軸240を挿入するための第1の貫通孔210H(ボス)を有する筒状の基部211と、基部211の両端211A,211Bから長手方向に対し垂直方向に左右対称に各々延在する一対のプレート部220,230とを備える。
【0041】
プレート部220,230は、各々基部211とは反対側に連結軸240(図4参照)を挿入するための第2の貫通孔(ボス)220H,230Hと、第2の貫通孔220H,230Hの周囲を取り囲むようにして、プレート部220,230同士が対向する内側主面220A,230Aと反対側の外側主面220B,230Bに対して垂直方向に隆起した第1のリブ部220D,230Dを有する。また、一対のプレート部220,230は、各々、外側主面220B,230Bに対して垂直方向に隆起し、第1の貫通孔210Hから第2の貫通孔220H,230Hにかけて延在する第2のリブ部220E,230Eを有する。そして、無端チェーン200の回転方向に対して上手側のチェーンリンク210の第2の貫通孔220H,230Hと、下手側のチェーンリンク210の第1の貫通孔210Hとを連結軸240(図4参照)により枢着して無端に連結することで無端チェーン200を得ることができる。
【0042】
ここで、基部211に設けられた第1の貫通孔210H(ボス)から基部211とは反対側に設けられた連結軸240を挿入するための第2の貫通孔(ボス)220H,230Hまでの直線距離L1は約152.4mmである。また、チェーンリンク210の強度を確保するために、一対のプレート部220,230の前端部T1の厚みD1は、7mm以上であることが好ましく、後端部T2の厚みD2は、5mm以上であることが好ましい。
【0043】
また、第2のリブ部220E,230Eの各々は、第1の貫通孔210Hから第2の貫通孔220H,230Hにかけて途中で分岐した略Y字型に設けられる。すなわち、第2のリブ部220E,230Eの各々は、プレート部220,230の中央部から第1の貫通孔210H側に延在する1本の中央部分231と、中央部分231から第2の貫通孔220H,230H側へ二手に分かれて所定の角度で拡がり第1のリブ部220D,230Dまで延在する枝部分232とを有する。
【0044】
一方、一対のプレート部220,230における間の閉じている第1の貫通孔210H側は、1本の中央部分231によって補強され、材料の抑制を図ることができる。なお、第2のリブ部220E,230Eの各々の隆起の高さは、第1の貫通孔210Hから第2の貫通孔220H,230Hにかけて徐々に高くなるよう設けられていてもよい。これにより、第2のリブ部220E,230Eによってチェーンリンク210の幅を不要に拡げることがなくなる。
【0045】
また、第1のリブ部220D,230Dの周辺に、複数のリブ部235が放射状に設けられていてもよい。図4に示す例では、第1のリブ部220D,230Dの各々の周辺に3つのリブ部235が設けられている。これにより、プレート部220,230における第1のリブ部220D,230Dの各々の周辺の強度をさらに高めることができる。
【0046】
なお、一対のプレート部220,230の第2の貫通孔220H,230Hの周囲を取り囲むようにして、プレート部220,230同士が対向する内側主面220A,230Aに対して垂直方向に各々隆起した第3のリブ部を設けるようにしてもよい。この場合、第3のリブ部の厚みは、0.5mm〜1.5mmの範囲であることが好ましい。また、第3のリブ部は、その断面形状が台形状となっており、該台形の最上面が所定の幅を有する平坦面となっていることが好ましい。
【0047】
図4に示すように、無端チェーン200は、複数のチェーンリンク210を連結軸240によって枢着して無端に連結されたものである。複数のチェーンリンク210のうちのいずれかには、フライト体100を取り付けるための固定部材270が設けられる。
【0048】
無端チェーン200において、隣り合う2つのチェーンリンク210の一方のチェーンリンク210の基部211側が、他方のチェーンリンク210の基部211とは反対側のプレート部220,230の間に挿入される。そして、両チェーンリンク210の第1の貫通孔210Hと第2の貫通孔230Hとが合わされた状態で、第1の貫通孔210H及び第2の貫通孔230Hを貫くように連結軸240を挿入するによって、2つのチェーンリンク210が連結される。
【0049】
連結軸240の端部には軸部分よりも径の大きな頭部241が設けられる。したがって、連結軸240の先端(頭部241とは反対側)から第1の貫通孔210H及び第2の貫通孔230Hに挿入することで、頭部241がチェーンリンク210に当たる位置まで差し込むことができる。頭部241の外周の一部には平坦部2411が設けられており、第1のリブ部230Dに設けられた凸部2301と位置合わせされることで、挿入した連結軸240の回転が防止される。
【0050】
連結軸240の先端側には切り欠き部243が設けられる。切り欠き部243は軸部分の両側に設けられる。これにより、連結軸240を第1の貫通孔210H及び第2の貫通孔230Hに挿入した状態で、第1の貫通孔210H及び第2の貫通孔230Hから突き抜けた連結軸240の先端の切り欠き部243に、抜け止め用のピンフック250を嵌め込むことができる。ピンフック250は略C字型のクリップ部材である。切り欠き部243の位置にピンフック250を嵌め込むことで、嵌め込んだピンフック250の脱落防止効果が高まる。
【0051】
本実施形態に係る無端チェーン200では、ピンフック250がPCで構成されていることが好ましい。また、ピンフック250には、中抜き孔250Hが設けられていることが好ましい。図4に示す例では、1つのピンフック250に3つの中抜き孔250Hが設けられている。
【0052】
また、本実施形態に係る無端チェーン200では、複数のチェーンリンク210を連結する複数の連結軸240において、隣り合う連結軸240を互い違いの向きに挿入している。すなわち、隣り合う2つの連結軸240において、先端の向き(または、頭部241の向き)が互い違いになっている(連結軸240の挿入方向が互い違い)。
【0053】
図5は、スプロケットホイールと無端チェーンとの噛み合いを示す図である。図5に示すように、チェーンリンク210を連結した際にできる隙間210S(図3参照)に主務スプロケットホイール300の円周上に所定の幅で形成された歯部302が入り込んで噛み合うことにより、図1に示すように、主務スプロケットホイール300の回転に伴い無端チェーン200が沈殿池A内で図1に向かって時計回り(CW)に循環駆動することにより池底に沈殿した汚泥がフライト体100により汚泥ピット(排出溝)15へと掻き寄せられる。
【0054】
図6は、支持部材600の断面図である。支持部材600は、底部600Sが沈殿池Aの壁面に固定され、上部には主務スプロケットホイール300又は従動スプロケットホイール400を回転自在に係合するための括れ部610が設けられている。支持部材600は、強度を確保するために括れ部610の厚みD1が12mm以上、肩部620の厚みD2が15mm以上、本体部630の厚みD3が13mm以上であることが好ましい。なお、支持部材600は、主務スプロケットホイール300又は従動スプロケットホイール400が回転摺動することからこすれ音が発生する虞がある。そのような場合は、支持部材600や主務スプロケットホイール300、従動スプロケットホイール400を摺動性に優れる材料、例えば、樹脂ベアリング等に使用されるUHMW(超高分子量ポリエチレン)で構成するようにしてもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1は、長尺のフライト体100を、その長手方向に対して垂直な方向に走行させて、沈殿池Aの池底BTに堆積する汚泥を掻き寄せる汚泥かき寄せ機1である。汚泥かき寄せ機1は、複数のフライト体100が所定の間隔で固定された複数のチェーンリンク210を連結軸によって枢着して無端に連結した一対の無端チェーン200と、沈殿池内に配設され、張架された無端チェーン200を循環駆動させることによって池底BTに沈殿した汚泥をフライト体100により掻き寄せる主務スプロケットホイール300及び従動スプロケットホイール400とを備える。
【0056】
そして、汚泥かき寄せ機1は、無端チェーン200におけるチェーンリンク210及び連結軸240がPCで構成される。このため、汚泥かき寄せ機1は、腐食に強く、かつ安価となる。また、PCの引張強度はPOMよりも高く、経年劣化によるチェーンの伸びが少ない。また、ステンレス鋼で構成される汚泥かき寄せ機よりも重量が軽いため、現場での施工期間も短縮することができ、施工費用も従来と比して安価となる。また、PCは、POM(ポリアセタール又はポリオキシメチレン)のようにホルムアルデヒドのような有害物質を放出しないため、下水処理だけでなく、上水処理においても使用することができる。また、PCはPOMに比較して再利用が容易であるため資源を有効利用することができる。
【0057】
さらに、PCを着色しない又は透光性を有する程度(内部状態がわかる程度)に着色した場合、チェーンリンク210及び連結軸240が透光性を有しているため、PCで成形した場合の内部の気泡の状態を目視で的確に把握することができる。すなわち、本実施形態において、チェーンリンク210及び連結軸240などの部材を構成するPCの透光性とは、部材の内部に混入した気泡を部材の外部から目視で把握できる程度の光(可視光(波長360nm〜830nm程度の光))の透過性を有することを言う。
【0058】
チェーンリンク210及び連結軸240をPCで成型する際、射出成形などの工程の途中で内部に気泡が混入すると、チェーンリンク210及び連結軸240の強度不足を招く恐れがある。また、気泡が混入していたとしても、部材の中心部分に混入した微小な気泡であれば強度に問題はなく、部材の表面近傍に混入している所定サイズより大きな気泡については強度に影響を及ぼす可能性がある。
【0059】
PCを着色しない又は透光性を有する程度(内部状態がわかる程度)に着色した場合、チェーンリンク210及び連結軸240が透光性を有することで、成型したチェーンリンク210及び連結軸240を組み付ける前に目視で気泡の状態(気泡の有無、混入位置、大きさなど)を容易に把握することができ、不良品や不良の可能性のあるものを、組み付け前に除外することができる。
【0060】
チェーンリンク210及び連結軸240の一つひとつの気泡は小さくても、長い無端チェーン200を構成するためには多数のチェーンリンク210及び連結軸240が必要になる。したがって、一つひとつ気泡をチェックして、良品となる多数のチェーンリンク210及び連結軸240を事前に選別して無端チェーン200を構成することにより、強度及び耐久性に優れた無端チェーン200を提供することが可能となる。特に、汚泥かき寄せ機1で使用される無端チェーン200は、視認性の良くない汚水の中で循環駆動されるため、稼働中に無端チェーン200の状態を確認することは非常に困難である。したがって、信頼性の高いチェーンリンク210及び連結軸240を選別して無端チェーン200を構成することは、汚泥かき寄せ機1において非常に重要である。
【0061】
また、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1及び無端チェーン200では、チェーンリンク210に挿入された連結軸240の一端側に取り付けられる抜け止め用のピンフック250をさらに備え、ピンフック250がPCで構成されたことを特徴とする。ピンフック250がPCで構成されていることで、POMよりも引張強度が高く、経年劣化による耐久性も高く、ステンレスよりも腐食に強く、安価な無端チェーン200を提供することができる。
【0062】
また、チェーンリンク210を接続する連結軸240の構成部材がナイロンではなくPCであるため、ナイロンのように連結軸240が膨潤し、チェーンリンク210の動きが悪く(しぶく)なる虞を低減することができる。また、POMやナイロンよりも熱膨張率が低いため無端チェーン200が主務スプロケットホイール300や従動スプロケットホイール400から脱輪する虞を低減することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1及び無端チェーン200では、ピンフック250に中抜き孔250Hが設けられていることを特徴とする。このような汚泥かき寄せ機1では、連結軸240の抜け止め用のピンフック250がPCで構成されているため、POMよりも引張強度が高く、経年劣化による耐久性も高く、ステンレスよりも腐食に強く、安価な汚泥かき寄せ機1を提供することができる。また、ピンフック250に中抜き孔250Hが設けられていることで、PCによる成型時に気泡が混入することを防止することができる。気泡が混入していないことで、ピンフック250の強度を高めることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1及び無端チェーン200では、複数のチェーンリンク210を連結する複数の連結軸240において、隣り合う連結軸240が互い違いの向きに挿入されたことを特徴とする。これにより、連結軸240の形状の非対称性に基づく無端チェーン200の伸びのアンバランスが抑制され、無端チェーン200の進行方向への直進性を保ちやすくなる。
【0065】
また、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1及び無端チェーン200の複数のチェーンリンク210は、各々、連結軸240を挿入するための第1の貫通孔(ボス)210Hを有する筒状の基部211と、基部211の両端211A,211Bから長手方向に対し垂直方向に左右対称に各々延在する一対のプレート部220,230とを備える。
【0066】
そして、プレート部220,230は、各々基部211とは反対側に連結軸240を挿入するための第2の貫通孔(ボス)220H,230Hと、第2の貫通孔220H,230Hの周囲を取り囲むようにして、プレート部220,230同士が対向する内側主面220A,230Aと反対側の外側主面220B,230Bに対して垂直方向に隆起した第1のリブ部220D,230Dを有することを特徴とする。
【0067】
上記のように本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1の各チェーンリンク210を構成する一対のプレート部220,230は、基部211とは反対側に連結軸240を挿入するための第2の貫通孔(ボス)220H,230Hを有している。そして、この第2の貫通孔220H,230Hの周囲を取り囲むようにして、プレート部220,230同士が対向する内側主面220A,230Aと反対側の外側主面220B,230Bに対して垂直方向に隆起した第1のリブ部220D,230Dを有する。このため、チェーンリンク210の各部材が合成樹脂材料で構成されていても十分な強度を得ることが出来る。
【0068】
また、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1及び無端チェーン200の複数のチェーンリンク210の一対のプレート部220,230は、各々、外側主面220B,230Bに対して垂直方向に隆起し、第1の貫通孔210Hから第2の貫通孔220H,230Hにかけて延在する第2のリブ部220E,230Eを有するので、さらに強度を高めることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1及び無端チェーン200において、第2のリブ部220E,230Eは、第1の貫通孔210Hから第2の貫通孔230Hに向けて途中で分岐した略Y字型に設けられたことを特徴とする。このように、第2のリブ部220E,230Eが第2の貫通孔220H,230H側に二手に分かれた略Y字型に設けられることで、一対のプレート部220,230における間の開いている第2の貫通孔220H,230H側の補強効果をさらに高めることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1の主務スプロケットホイール300及び従動スプロケットホイール400の各部材を構成する合成樹脂であるPET、PEN又はPCは非着色の状態で透明又は半透明であること、すなわち結晶化していないことが好ましい。
【0071】
PET、PEN又はPCは、非結晶状態では可視光に対して透明もしくは半透明(非着色状態の場合)であるが、結晶化すると非着色の状態で白色又は乳白色となる。PET、PEN又はPCが結晶化すると外力に対して弱くなり、割れや欠けが生じやすくなる。汚泥かき寄せ機の無端チェーン200、主務スプロケットホイール300及び従動スプロケットホイール400には大きな力(通常500Kg以上の力が加わり、製品性能として3000Kgの力が印加されても破断等しないことが求められる)が加わるため結晶化していないことが好ましい。
【0072】
なお、この実施形態でいう「非結晶状態(結晶化していない状態)」とは、実用状態において非結晶状態または結晶化度が相当低い、あるいは結晶サイズが微細である、などの場合のことを言い、該場合においてPET、PEN又はPCが透明プラスチックとなる。一方、実用状態である程度結晶化度が高くなっている場合は不透明プラスチックとなる。これは、ポリマーは大きな分子なので全体が結晶化することは殆ど不可能であり、全体としては微結晶と非結晶の部分が混在し、その結晶と非結晶部の屈折率が異なるため、その界面で光の屈折や乱反射が起こり、その結果全体として不透明になると考えられる。
【0073】
このような大きな力のかかる主務スプロケットホイール300及び従動スプロケットホイール400の各部材を構成する合成樹脂に、非着色状態で透明又は半透明である結晶化していないPET、PEN又はPCを用いることで割れや欠けが生じにくく十分な強度を有した汚泥かき寄せ機1を提供することができる。
【0074】
さらに、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1の無端チェーン200を構成するチェーンリンク210が備える一対のプレート部220,230の前端部T1の厚みD1は、7mm以上であり、後端部T2の厚みD2は、5mm以上である。このため、大きな力のかかるチェーンリンク210に十分な強度を確保することができ、無端チェーン200に切断等の不具合が生じる虞を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る汚泥かき寄せ機1は、無端チェーン200を構成するチェーンリンク210が備える一対のプレート部220,230の第2の貫通孔220H,230Hの周囲を取り囲むようにして、プレート部220,230同士が対向する内側主面220A,230Aに対して垂直方向に各々隆起した厚みが0.5mm〜1.5mmの第3のリブ部を設けてもよい。この場合、該第3のリブ部は、その断面形状が台形状となっており、該台形の最上面が所定の幅を有する平坦面となっていることが好ましい。
【0076】
第3のリブ部を設けることで、無端チェーン200の長手方向に対して平行に力がかかるようになり、チェーンリンク210に捩れや拗れ等、ななめ方向に無理な力がかかることを効果的に抑制することができる。このため無端チェーン200に切断等の不具合が生じる虞をより効果的に抑制することができる。
【0077】
(引張強度の例)
ここで、無端チェーンの材料におけるPC及びPOMの引張強度の試験結果について説明する。
引張強度の試験では、チェーンリンク210及び連結軸240をPCで構成した試料と、同じ形状のチェーンリンク210及び連結軸240について材料をPOMで構成した試料とを各々3つ用意した。PCで構成した試料を、試料−PC1,試料−PC2及び試料−PC3とする。POMで構成した試料を、試料−POM1,試料−POM2及び試料−POM3とする。
【0078】
また、試料は、3つのチェーンリンク210を連結軸240で連結した3連チェーンである。引張強度の試験は、試料の両端を保持し、速度2mm/minで引っ張った際の最大強度(チェーンリンク210又は連結軸240が破断するまでの引っ張った際に印加された力)を測定した。試験結果を以下の表1及び表2に示す。表1はPCで構成した試料の試験結果であり、表2はPOMで構成した試料の試験結果である。なお、上記破断とは、チェーンリンク210又は連結軸240の一部にヒビや欠けが生じたような状態ではなく、3つのチェーンリンク210を連結軸240で連結した3連チェーンが完全に断裂した状態のことである。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
上記引張強度の試験の結果、PCで構成した試料の最大強度の平均は約35.05kNであり、POMで構成した試料の最大強度の平均は約31.17kNである。このように、PCのほうがPOMに比べて強度が高いことがわかる。特に、汚泥かき寄せ機1の無端チェーン200はチェーンリンク210を数百個から千個程度連結させて循環動作をさせるため、高い強度が要求される。汚泥かき寄せ機1の無端チェーン200としてPCを用いることで、POMよりも優れた特性(特に、引張強度)を発揮できることが分かる。
【0082】
(その他の実施形態)
図7は、他の実施形態におけるスプロケットホイールと無端チェーンとの噛み合いを示す図である。上記実施形態では、図5に示すように、チェーンリンク210を連結した際にできる隙間210Sに主務スプロケットホイール300の円周上に所定の幅で形成された歯部302が入り込んで噛み合う構成とした。
【0083】
しかし、スプロケットホイールと無端チェーンとの噛み合い上記実施形態に限られず、例えば、図7に示すように、無端チェーン200を構成するチェーンリンク210の下部に窪み(ノッチ)210Nを設け、このチェーンリンク210の下部に窪み(ノッチ)210Nに主務スプロケットホイール300が備える係合ピン300Pが係合し、チェーンリンク210に主務スプロケットホイール300の回転力が伝達される構成としてもよい。
【0084】
以上説明したように、本発明に係る汚泥かき寄せ機及び無端チェーンによれば、十分な強度を有し、腐食に強い汚泥かき寄せ機及び無端チェーンを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上で説明したように、本発明は、十分な強度を有し、腐食に強い汚泥かき寄せ機及び無端チェーンを提供することができる。このため、下水処理場において、最終沈殿池の池底に堆積する汚泥をかき寄せて集泥ピットに集める汚泥かき寄せ機に好適である。また、無端チェーンとしてPCを用いているので上水場においても使用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 汚泥かき寄せ機
15 汚泥ピット(排出溝)
100 フライト体
200 無端チェーン
210 チェーンリンク
210H 第1の貫通孔(ボス)
211 基部
211A,211B 基部の端部
220,230 プレート部
220H,230H 第2の貫通孔(ボス)
220A,230A 内側主面
220B,230B 外側主面
220C,230C 第1のリブ部
220D,230D 第1のリブ部
220E,230E 第2のリブ部
231 中央部分
232 枝部分
235 リブ部
240 連結軸
241 頭部
243 切り欠き部
250 ピンフック
250H 中抜き孔
270 固定部材
300 主務スプロケットホイール
301 貫通孔
302 歯部
305H 中抜き孔
400 従動スプロケットホイール
500 駆動手段
510 伝達ベルト
520 モータ
600 支持部材
610 括れ部
620 肩部
630 本体部
600S 底部
2301 凸部
2411 平坦部
A 沈殿池
WL 水面
BT 池底

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2020年5月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のフライト体を、その長手方向に対して垂直な方向に走行させて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せる汚泥かき寄せ機であって、
複数の前記フライト体が所定の間隔で固定された複数のチェーンリンクを連結軸によって枢着して無端に連結した一対の無端チェーンと、
前記沈殿池内に配設され、張架された前記無端チェーンを循環駆動させることによって前記池底に沈殿した汚泥を前記フライト体により掻き寄せる主務スプロケットホイール及び従動スプロケットホイールとを備え、
前記複数のチェーンリンクは、各々、
前記連結軸を挿入するための第1の貫通孔(ボス)を有する筒状の基部と、
前記基部の両端から長手方向に対し垂直方向に左右対称に各々延在する一対のプレート部とを備え、
前記一対のプレート部は、各々
前記基部とは反対側に連結軸を挿入するための第2の貫通孔(ボス)と、
前記第2の貫通孔の周囲を取り囲むようにして、前記プレート部同士が対向する内側主面とは反対側の外側主面に対して垂直方向に隆起した円筒状の第1のリブ部と、
前記外側主面に対して垂直方向に隆起し、前記プレート部の中央部から前記第1の貫通孔側に延在する1本の中央部分と、前記中央部分から前記第2の貫通孔側へ二手に分かれて所定の角度で拡がり前記第1のリブ部まで延在する枝部分とで構成される略Y字型に設けられた第2のリブ部と、を有し、
前記無端チェーンは、
前記無端チェーンの進行方向に対して前記第1のリブ部が前方側となるように前記複数のチェーンリンクを連結軸によって枢着して無端に連結されてなることを特徴とする汚泥かき寄せ機。
【請求項2】
前記第2のリブ部の各々の隆起の高さは、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔にかけて徐々に高くなるよう設けられていることを特徴とする請求項1に記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項3】
前記第1のリブ部及び前記第2のリブ部とは異なる複数のリブ部が、前記第1のリブ部の周辺に放射状に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項4】
前記無端チェーンにおける前記チェーンリンク及び前記連結軸がPC(ポリカーボネート)で構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項5】
前記チェーンリンクに挿入された前記連結軸の一端側に取り付けられる抜け止め用のピンフックをさらに備え、
前記ピンフックがPCで構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項6】
前記ピンフックには中抜き孔が設けられたことを特徴とする請求項に記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項7】
前記複数のチェーンリンクを連結する複数の前記連結軸において、隣り合う前記連結軸は互い違いの向きに挿入されたことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の汚泥かき寄せ機。
【請求項8】
長尺のフライト体を、その長手方向に対して垂直な方向に走行させて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せる汚泥かき寄せ機で用いられる無端チェーンであって、
前記無端チェーンは、
複数の前記フライト体が所定の間隔で固定された複数のチェーンリンクを連結軸によって枢着して無端に連結されてなり、
前記複数のチェーンリンクは、各々、
前記連結軸を挿入するための第1の貫通孔(ボス)を有する筒状の基部と、
前記基部の両端から長手方向に対し垂直方向に左右対称に各々延在する一対のプレート部とを備え、
前記一対のプレート部は、各々
前記基部とは反対側に連結軸を挿入するための第2の貫通孔(ボス)と、
前記第2の貫通孔の周囲を取り囲むようにして、前記プレート部同士が対向する内側主面とは反対側の外側主面に対して垂直方向に隆起した円筒状の第1のリブ部と、
前記外側主面に対して垂直方向に隆起し、前記プレート部の中央部から前記第1の貫通孔側に延在する1本の中央部分と、前記中央部分から前記第2の貫通孔側へ二手に分かれて所定の角度で拡がり前記第1のリブ部まで延在する枝部分とで構成される略Y字型に設けられた第2のリブ部と、を有し、
前記無端チェーンの進行方向に対して前記第1のリブ部が前方側となるように前記複数のチェーンリンクを連結軸によって枢着して無端に連結されてなることを特徴とする無端チェーン。
【請求項9】
前記第2のリブ部の各々の隆起の高さは、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔にかけて徐々に高くなるよう設けられていることを特徴とする請求項8に記載の無端チェーン。
【請求項10】
前記第1のリブ部及び前記第2のリブ部とは異なる複数のリブ部が、前記第1のリブ部の周辺に放射状に設けられていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の無端チェーン。
【請求項11】
前記チェーンリンク及び前記連結軸がPC(ポリカーボネート)で構成されることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の無端チェーン。
【請求項12】
前記チェーンリンクに挿入された前記連結軸の一端側に取り付けられる抜け止め用のピンフックをさらに備え、
前記ピンフックがPCで構成されたことを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれかに記載の無端チェーン。
【請求項13】
前記ピンフックには中抜き孔が設けられたことを特徴とする請求項12に記載の無端チェーン。
【請求項14】
前記複数のチェーンリンクを連結する複数の前記連結軸において、隣り合う前記連結軸は互い違いの向きに挿入されたことを特徴とする請求項8乃至請求項13のいずれかに記載の無端チェーン。