特開2020-124686(P2020-124686A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-124686(P2020-124686A)
(43)【公開日】2020年8月20日
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/02 20060101AFI20200727BHJP
   B01D 24/38 20060101ALI20200727BHJP
   B01D 29/88 20060101ALI20200727BHJP
【FI】
   B01D23/10 B
   B01D23/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-18927(P2019-18927)
(22)【出願日】2019年2月5日
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】中野 和典
(72)【発明者】
【氏名】橋本 純
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA01
4D116AA06
4D116AA08
4D116BA06
4D116BA07
4D116BB01
4D116BC28
4D116BC45
4D116BC47
4D116DD01
4D116DD05
4D116DD06
4D116EE02
4D116EE03
4D116EE06
4D116EE11
4D116FF01A
4D116FF02A
4D116FF12B
4D116GG01
4D116GG09
4D116KK01
4D116QA02C
4D116QA02D
4D116QB44
4D116RR01
4D116UU20
4D116VV09
4D116VV14
(57)【要約】
【課題】水を再利用可能としながら外部動力を必要とせずに原水の濾過を行う濾過装置において、原水に含まれる固体成分が堆積することによる処理能力の低下を抑える。
【解決手段】処理水を排出する底部2aを有すると共に内部に処理前の原水を貯留可能な原水貯留空間R1を有する貯水容器2と、貯水容器2の内部空間を原水貯留空間R1と濾材4が収容されると共に底部2aに接続された濾材収容空間R2とに区画する円筒区画壁3と、濾材収容空間R2に収容される濾材4とを備え、円筒区画壁3が、水平方向に液体を通過可能であると共に、貯水容器2の内部空間を水平方向に原水貯留空間R1と濾材収容空間R2とに区画している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に処理水を排出する排出部を有すると共に内部に処理前の原水を貯留可能な原水貯留空間を有する貯水容器と、
前記貯水容器の内部空間を前記原水貯留空間と濾材が収容されると共に前記排出部に接続された濾材収容空間とに区画する区画壁と、
前記濾材収容空間に収容される濾材と
を備え、
前記区画壁は、水平方向に液体を通過可能であると共に、前記貯水容器の前記内部空間を水平方向に前記原水貯留空間と前記濾材収容空間とに区画する
ことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記原水貯留空間の下部も前記排出部に接続されており、前記原水貯留空間の底部にも濾材が配置されていることを特徴とする請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記区画壁の下部が前記濾材に埋設されていることを特徴とする請求項2記載の濾過装置。
【請求項4】
前記区画壁が軸心を鉛直方向に向けた筒形状とされていることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の濾過装置。
【請求項5】
開口された先端部が前記原水貯留空間に配置され、前記貯水容器の外部から前記原水貯留空間に前記原水を案内する原水供給管を備えることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記原水供給管は、前記原水貯留空間の内部に位置する途中部位が前記先端部に向けて下降するように傾斜配置され、前記途中部位の上部が上方に向けて開口されていることを特徴とする請求項5記載の濾過装置。
【請求項7】
前記原水貯留空間に配置され、前記原水貯留空間に供給される前記原水を受けると共に前記原水に含まれる固体成分の一部を捕捉して液体成分を通過させる予備濾過容器を備えることを特徴とする請求項1〜6いずれか一項に記載の濾過装置。
【請求項8】
前記予備濾過容器は、前記貯水容器に対して着脱可能とされていることを特徴とする請求項7記載の濾過装置。
【請求項9】
前記予備濾過容器の側壁部と前記貯水容器の側壁部とが離間して配置されていることを特徴とする請求項7または8記載の濾過装置。
【請求項10】
前記貯水容器の内部に着脱可能に収容されると共に前記区画壁を支持する区画壁支持ケースを備えることを特徴とする請求項1〜9いずれか一項に記載の濾過装置。
【請求項11】
前記区画壁支持ケースの側壁部と前記貯水容器の側壁部とが離間して配置されていることを特徴とする請求項10記載の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まり等により、上下水道への接続や外部電源からの給電を要しないゼロエミッション型の水洗トイレが提案されている。このような水洗トイレでは、トイレから排出された原水を動力が不要の濾過装置によって固液分離し、さらに固液分離された液体成分を活性炭処理等の必要な後処理を施してからトイレタンクに還流している。
【0003】
上述のような水洗トイレに設置される濾過装置は、外部動力が必要とされないように、濾材を底部に敷き詰めた容器に原水を注ぎ、重力によって濾材を原水が通過するようにしている(例えば特許文献1の図7参照)。このようにして原水が濾材を上方から下方に通過する過程で、原水に含まれる固体成分が分離され、容器の底部から処理水が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−104896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような濾過装置においては、濾材上に供給された原水が濾材中に進水する際に固体成分が濾材上に残り、この固体成分は濾材に下方から支持されるため、そのまま濾材上に堆積することになる。このため、従来の濾過装置では、徐々に堆積物が溜まることで濾過速度が低下し、最終的には詰まることになる。例えば被災地では、短時間に多くの人数がトイレを使用することが想定され、短時間で濾過装置が詰まってしまうことが想定される。また、このような濾過装置が短時間で詰まるという問題は、ゼロエミッション型の水洗トイレに限られるものではなく、水を再利用しながら生活排水や工場排水を濾過する濾過装置に対して同様に生じる問題である。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、水を再利用可能としながら外部動力を必要とせずに原水の濾過を行う濾過装置において、原水に含まれる固体成分が堆積することによる処理能力の低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、濾過装置であって、下部に処理水を排出する排出部を有すると共に内部に処理前の原水を貯留可能な原水貯留空間を有する貯水容器と、上記貯水容器の内部空間を上記原水貯留空間と濾材が収容されると共に上記排出部に接続された濾材収容空間とに区画する区画壁と、上記濾材収容空間に収容される濾材とを備え、上記区画壁が、水平方向に液体を通過可能であると共に、上記貯水容器の上記内部空間を水平方向に上記原水貯留空間と上記濾材収容空間とに区画するという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記原水貯留空間の下部も上記排出部に接続されており、上記原水貯留空間の底部にも濾材が配置されているという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記区画壁の下部が上記濾材に埋設されているという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記区画壁が軸心を鉛直方向に向けた筒形状とされているという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、開口された先端部が上記原水貯留空間に配置され、上記貯水容器の外部から上記原水貯留空間に上記原水を案内する原水供給管を備えるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記原水供給管が、上記原水貯留空間の内部に位置する途中部位が上記先端部に向けて下降するように傾斜配置され、上記途中部位の上部が上方に向けて開口されているという構成を採用する。
【0014】
第7の発明は、上記第1〜第6いずれかの発明において、上記原水貯留空間に配置され、上記原水貯留空間に供給される上記原水を受けると共に上記原水に含まれる固体成分の一部を捕捉して液体成分を通過させる予備濾過容器を備えるという構成を採用する。
【0015】
第8の発明は、上記第7の発明において、上記予備濾過容器が、上記貯水容器に対して着脱可能とされているという構成を採用する。
【0016】
第9の発明は、上記第7または第8の発明において、上記予備濾過容器の側壁部と上記貯水容器の側壁部とが離間して配置されているという構成を採用する。
【0017】
第10の発明は、上記第1〜第9いずれかの発明において、上記貯水容器の内部に着脱可能に収容されると共に上記区画壁を支持する区画壁支持ケースを備えるという構成を採用する。
【0018】
第11の発明は、上記第10の発明において、上記区画壁支持ケースの側壁部と上記貯水容器の側壁部とが離間して配置されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液体を水平方向に通過可能な区画壁によって、貯水容器の内部空間が水平方向に原水貯留空間と濾材収容空間に区画されている。このような本発明の原水貯留空間に原水を供給すると、原水が水平方向に移動して濾材収容空間に進入する。このとき、濾材によって原水から分離された固体成分は、少なくとも一部が重力によって貯水容器の底部に移動して堆積する。このため、本発明によれば、貯水容器の底部に溜まる堆積物によって、原水貯留空間から濾材収容空間に原水が進入可能な面積が減少することを抑制することができ、堆積物によって濾材への進入経路が全て塞がるまでの時間を長く確保することが可能となる。したがって、本発明によれば、水を再利用可能としながら外部動力を必要とせずに原水の濾過を行う濾過装置において、原水に含まれる固体成分が堆積することによる処理能力の低下を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態における濾過装置の概略構成を示す模式図であり、(a)が斜視図、(b)が縦断面図である。
図2】本発明の第1実施形態における濾過装置が備える供給ホースの途中部位を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態における濾過装置の動作説明図であり、(a)が使用開始直後を示す図であり、(b)が使用開始から一定時間経過後を示す図である。
図4】本発明の実施例による測定結果を示すグラフであり、濾過水量が0.5Lであるときの原水の投入回数と濾過時間との関係を示すグラフである。
図5】本発明の実施例による測定結果を示すグラフであり、濾過水量Vが1Lであるときの原水の投入回数と濾過時間との関係を示すグラフである。
図6】本発明の実施例による測定結果を示すグラフであり、濾過水量Vが2Lであるときの原水の投入回数と濾過時間との関係を示すグラフである。
図7】本発明の実施例による測定結果を示すグラフであり、縦軸に濾過水量を取り、横軸に投入数を取って濾過時間が5分における測定結果を示すグラフである。
図8】本発明の第2実施形態における濾過装置の概略構成を示す模式図であり、(a)が斜視図、(b)が縦断面図である。
図9】本発明の第2実施形態における濾過装置の分解図である。
図10】本発明の濾過装置の変形例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る濾過装置の一実施形態について説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における濾過装置1の概略構成を示す模式図であり、(a)が斜視図、(b)が縦断面図である。本実施形態の濾過装置1は、水洗トイレから排出された排水等の有機物からなる固体成分を多く含む排水を原水Xとし、この原水Xから固体成分を分離した処理水Yを排出するものである。図1に示すように、本実施形態の濾過装置1は、貯水容器2と、円筒区画壁3(区画壁)と、濾材4と、供給ホース5(原水供給管)とを備えている。
【0023】
貯水容器2は、上部が開放された略有底円筒形の容器であり、底部2aと筒状の側壁部2bとを有している。底部2aは、液体が通過可能とされている。つまり、本実施形態においては、貯水容器2の下部を形成する底部2aが、貯水容器2から外部に処理水Yを排出する排出部となっている。このような底部2aは、例えば、側壁部2bと一体化された底板の中央部に開口を設け、この底板上に、濾材4を形成する後述のガラス片よりも目が細かい防虫網を上下面に貼付した人工芝材を載置することにより形成することができる。このような人工芝材を載置することによって、底部2aに空気層を形成することができる。
【0024】
側壁部2bは、底部2aと接続されており、上端から下端に向かうに連れて縮径されている。このような側壁部2bは、上方から見て円盤状の底部2aを径方向外側から囲うように配置されている。
【0025】
円筒区画壁3は、貯水容器2の底部2aに立設された円筒状の部材であり、軸心Lが鉛直方向を向くように配置されている。この円筒区画壁3は、軸心Lを中心とする径方向において液体を通過可能とする多数の空孔を有している。つまり、円筒区画壁3は、液体を通過可能に形成されている。
【0026】
なお、円筒区画壁3に形成された空孔の大きさは、各々が後述のガラス片の粒径よりも小さく設定されている。なお、複数のパンチ孔が設けられた円筒部材や、液体を通過可能な多孔質体からなる円筒部材を円筒区画壁3として用いることも可能である。
【0027】
このような円筒区画壁3は、貯水容器2の内部を水平方向に原水貯留空間R1と濾材収容空間R2とに区画する。本実施形態では、円筒区画壁3の外側が原水貯留空間R1とされ、円筒区画壁3の内側が濾材収容空間R2とされている。つまり、円筒区画壁3は、貯水容器2の内部を、水平方向に分けて2つの空間に区画しており、これらの2つの空間のうち一方を原水貯留空間R1とし、他方を濾材収容空間R2としている。
【0028】
なお、本実施形態においては、上述のように貯水容器2の底部2aが排水部とされている。このため、原水貯留空間R1及び濾材収容空間R2は、いずれも下部が排水部に接続されている。したがって、原水貯留空間R1の下部及び濾材収容空間R2の下部のいずれもから貯水容器2の外部に液体を排出することが可能となっている。
【0029】
濾材4は、液体が通過可能とされており、供給される原水Xに含まれる固体成分を捕捉すると共に液体成分を処理水Yとして通過させる。このような濾材4は、本実施形態においては、細かな多数のガラス片によって形成されている。なお、濾材4は、ガラス片以外の材料によって形成することも可能である。例えば、砂利等の粒状体によって濾材4を形成することができる。
【0030】
また、本実施形態において濾材4は、濾材収容空間R2の全領域と、原水貯留空間R1の底部領域とに設けられている。つまり、濾材収容空間R2の全領域と、原水貯留空間R1の下端から4分の1程度の高さまでガラス片が埋設されており、このガラス片が埋設された領域が濾材4とされている。円筒区画壁3は、このような濾材4に下部が埋設された状態で立設されている。
【0031】
なお、本実施形態において、濾材4は、同一材料(ガラス片)によって一体的に形成されているが、説明の便宜上、濾材収容空間R2に配置された部位を水平濾過部4aと称し、原水貯留空間R1の底部に配置された部位を底部濾過部4bと称する。つまり、水平濾過部4aは、円筒区画壁3の内側を埋設する円柱形状とされた部位であり、下面が貯水容器2の底部2aに接続されている。
【0032】
水平濾過部4aは、原水貯留空間R1から円筒区画壁3を水平方向に通過して供給された原水Xの固体成分を液体成分から分離する。水平濾過部4aに進入した原水Xの液体成分は、重力によって下方に移動し、貯水容器2の底部2aから処理水Yとして貯水容器2の外部に排出される。
【0033】
また、底部濾過部4bは、円筒区画壁3を囲む環状とされた部位であり、下面が貯水容器2の底部2aに接続されている。底部濾過部4bは、底部濾過部4bの上方から供給された原水Xの固体成分を液体成分から分離する。底部濾過部4bに進入した原水Xの液体成分は、重力によって下方に移動し、貯水容器2の底部2aから処理水Yとして貯水容器2の外部に排出される。
【0034】
供給ホース5は、貯水容器2の上部から挿し込まれたホースであり、開口された先端部が底部濾過部4bの上面に載置された状態で設けられている。また、供給ホース5の途中部位は、図1(a)に示すように、貯水容器2の側壁部2bの内壁面に沿って螺旋状に巻回されながら、先端部に向けて下降するように傾斜配置されている。
【0035】
図2は、供給ホース5の途中部位を模式的に示す斜視図である。この図に示すように、供給ホース5の途中部位は、上部にスリット5aが設けられており、これによって上方に向けて開口されている。
【0036】
本実施形態においてスリット5aは、供給ホース5の先端部から供給ホース5の延在方向に沿って連続的に形成されており、供給ホース5の全長のうち原水貯留空間R1に収容された領域に設けられている。つまり、このような供給ホース5は、スリット5aが設けられている範囲においては、延在方向と直交する断面形状が上方に向けて開口された円弧形状とされている。
【0037】
このスリット5aは、原水貯留空間R1に固体成分Zが堆積し、供給ホース5の先端側が固体成分Z中に埋設されても、供給ホース5を流れる原水が原水貯留空間R1に流れ込むことを可能とするための部位である。
【0038】
このような供給ホース5は、貯水容器2の外部にて、原水Xを貯留するコンテナ等と接続されており、コンテナから供給される原水Xを原水貯留空間R1に案内する。なお、コンテナを貯水容器2よりも上方に配置することによって、原水Xの位置エネルギにより外部動力を必要とせずに原水Xを原水貯留空間R1に供給ホース5を介して供給することができる。
【0039】
続いて、上述のように構成された本実施形態の濾過装置1の動作について、図3を参照して説明する。
【0040】
なお、このような構成の本実施形態の濾過装置1において水洗トイレから排出される排水を濾過処理する場合には、原水貯留空間R1の空間容積を、水洗トイレから一度に排出される排水量よりも大きくする必要がある。濾過装置1において、原水Xを濾過処理するまでに一定の時間を要すること、及び、原水貯留空間R1に徐々に固体成分が堆積して空間容積が減少することを考慮すると、原水貯留空間R1の空間容積は水洗トイレから一度に排出される排水量よりも十分に大きくすることが好ましい。
【0041】
このような場合には、特に本実施形態の濾過装置1の使用開始時期において、水洗トイレからの一度に排出されて原水貯留空間R1に供給される原水Xは、原水貯留空間R1に対して十分に小さい。原水貯留空間R1の空間容積は特に限定されるものではない。ただし、以下の説明では、原水貯留空間R1の空間容積は水洗トイレから一度に排出される排水量よりも十分に大きいものとして、バッチ式に原水Xが原水貯留空間R1に供給される状態での本実施形態の濾過装置1の動作説明を行う。
【0042】
図3(a)は、使用開始直後における本実施形態の濾過装置1の状態を模式的に示す縦断面図である。また、図3(b)は、使用開始から一定時間経過後における本実施形態の濾過装置1の状態を模式的に示す縦断面図である。
【0043】
まず、使用が開始され、供給ホース5を介して原水貯留空間R1に原水Xが供給されると、原水Xは原水貯留空間R1に一旦溜まる。原水貯留空間R1に溜まった原水Xの液体成分の一部は、水平方向に移動して円筒区画壁3を通過して濾材4の水平濾過部4aに浸透して供給される。
【0044】
また、原水Xの液体成分の残部は、濾材4の底部濾過部4bに上方から浸透して供給される。このように原水Xの液体成分が濾材4に供給されるに伴って、原水Xの固体成分は濾材4の表面に残り、原水Xから分離される。
【0045】
水平濾過部4aに供給された原水Xの液体成分は、水平濾過部4aに沿って下方に移動し、貯水容器2の底部2aから処理水Yとして排出される。また、底部濾過部4bに供給された原水Xの液体成分も、底部濾過部4bの内部を下方に移動し、貯水容器2の底部2aから処理水Yとして排出される。つまり、原水Xの液体成分は、濾材4を通過して処理水Yとして排出される。
【0046】
原水Xが水平濾過部4aに供給されることによって、水平濾過部4aの表面に濾しとられた固体成分Zは、重力の作用によって少なくとも一部が水平濾過部4aの表面から剥離して原水貯留空間R1を原水Xと共に移動する。このように、水平濾過部4aの表面から剥離して原水貯留空間R1を下方に移動した固体成分は、底部濾過部4b上に堆積する。このため、水平濾過部4aの表面は、原水Xの固体成分Zが少なく、原水Xの液体成分が進入しやすい状態が維持される。
【0047】
なお、原水Xが底部濾過部4bに供給されることによって、底部濾過部4bの表面に濾しとられた固体成分Zは、重力の作用によって底部濾過部4bの上面に堆積されたままとなる。そして、一定時間が経過すると、図3(b)に示すように、底部濾過部4b上に固体成分Zが厚く堆積した状態となる。このように、底部濾過部4b上に固体成分Zが厚く堆積した状態であっても、水平濾過部4aの表面に残存する固体成分Zは少ないため、原水貯留空間R1に供給された原水Xは、水平濾過部4aに水平移動することができる。
【0048】
なお、底部濾過部4b上に堆積した固体成分Zも、原水Xの液体成分を下方に向けて通過させることが可能である。このため、液体成分の通過速度が濾材4と比較して遅いものの、固体成分Zは、新たな濾材として機能し、底部濾過部4bに向けて液体成分を通過させる。
【0049】
以上説明したような本実施形態の濾過装置1においては、処理水Yを排出する底部2aを有すると共に内部に処理前の原水Xを貯留可能な原水貯留空間R1を有する貯水容器2と、貯水容器2の内部空間を原水貯留空間R1と濾材4が収容されると共に底部2aに接続された濾材収容空間R2とに区画する円筒区画壁3と、濾材収容空間R2に収容される濾材4とを備えている。さらに、本実施形態の濾過装置1においては、円筒区画壁3が、水平方向に液体を通過可能であると共に、貯水容器2の内部空間を水平方向に原水貯留空間R1と濾材収容空間R2とに区画している。
【0050】
このような本実施形態の濾過装置1によれば、液体を水平方向に通過可能な円筒区画壁3によって、貯水容器2の内部空間が水平方向に原水貯留空間R1と濾材収容空間R2に区画されている。このような本実施形態の濾過装置1の原水貯留空間R1に原水Xを供給すると、原水Xが水平方向に移動して濾材収容空間R2に進入する。
【0051】
このとき、濾材4によって原水Xから分離された固体成分Zは、少なくとも一部が重力によって貯水容器2の底部(本実施形態では底部濾過部4b上)に移動して堆積する。このため、本実施形態の濾過装置1によれば、堆積物によって、原水貯留空間R1から濾材収容空間R2に原水Xが進入可能な面積が減少することを抑制することができ、堆積物によって濾材4への進入経路が全て塞がるまでの時間を長く確保することが可能となる。
【0052】
したがって、本実施形態の濾過装置1によれば、水を再利用可能としながら外部動力を必要とせずに原水の濾過を行う上で、原水Xに含まれる固体成分が堆積することによる処理能力の低下を抑えることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の濾過装置1においては、原水貯留空間R1の下部も貯水容器2の底部2aに接続されており、原水貯留空間R1の底部にも濾材4(底部濾過部4b)が配置されている。このため、濾材収容空間R2のみに濾材4を配置する場合(すなわち水平濾過部4aのみを設ける場合)と比較して、濾過装置1の処理能力を向上させることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態の濾過装置1においては、円筒区画壁3の下部が濾材4に埋設されている。このため、円筒区画壁3を貯水容器2に対して直接固定しなくても、円筒区画壁3を安定して支持することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態の濾過装置1においては、円筒区画壁3が軸心Lを鉛直方向に向けた筒形状とされている。このため、円筒区画壁3の径方向外側から均等に原水Xを水平濾過部4aに供給することが可能となる。このため、区画壁を矩形や板状とする場合と比較して、原水貯留空間R1の全域を均等に濾過することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態の濾過装置1においては、開口された先端部が原水貯留空間R1に配置され、貯水容器2の外部から原水貯留空間R1に原水Xを案内する供給ホース5を備えている。原水貯留空間R1の上方から原水Xを落水させることも可能であるが、この場合には、原水Xが落水した場合の衝撃によって、貯水容器2の内部に固体成分Zが偏って堆積されてしまう。
【0057】
これに対して、本実施形態の濾過装置1によれば、供給ホース5によって衝撃を少なくして原水Xを原水貯留空間R1に供給することができる。したがって、本実施形態の濾過装置1によれば、貯水容器2の内部にて固体成分Zが偏って堆積されることを抑止することができる。
【0058】
また、本実施形態の濾過装置1においては、供給ホース5は、原水貯留空間R1の内部に位置する途中部位が先端部に向けて下降するように傾斜配置され、途中部位の上部が上方に向けて開口されている。このため、本実施形態の濾過装置1によれば、供給ホース5の先端側が固体成分Z中に埋設されても、供給ホース5を流れる原水が原水貯留空間R1に流れ込むことが可能となる。
【0059】
(実施例)
続いて、上記第1実施形態の濾過装置1の実施例について説明する。本実施例では、直径の異なる円筒区画壁3を備えた濾過装置1を用いて実験を行い、さらに比較対象として円筒区画壁3を備えない濾過装置を用いた実験も行った。
【0060】
なお、以下の説明では、上述の円筒区画壁3を備えない濾過装置を比較用濾過装置と称する。また、直径が相対的に小さな円筒区画壁3を備える濾過装置1を小径濾過装置と称し、直径が相対的に大きな円筒区画壁3を備える濾過装置1を大径濾過装置と称する。
【0061】
また、比較用濾過装置は、円筒区画壁3を備えないため原水貯留空間R1と濾材収容空間R2とが区画されておらず、貯水容器2に対して底部濾過部4bと同じ高さで一様に濾材4を設置した構成を有している。
【0062】
比較用濾過装置、小径濾過装置及び大径濾過装置の貯水容器2(リス興業(株)製造:シール容器深11型)としては、いずれも外径寸法が直径309mm、高さ252mmで、容量は11Lの容器を用いた。また、上記容器の底部中心に直径22mmの穴を空け、その穴を覆うサイズの防虫網(50mm×50mm)と、空気層を確保するための人工芝のマット(ワタナベ工業(株)製造:システムターフR−グリーン)を直径200mmになるように切って容器の底に敷き、その上を直径300mmに切った防虫網で覆った。
【0063】
小径濾過装置の円筒区画壁3としては、内径52mm、外径60mmの網状の筒を用いた。また、大径濾過装置の円筒区画壁3としては、内径107mm、外径114mmの網状の筒を用いた。これらの筒としては、それぞれ長さ210mmの細いネトロンパイプ(大日本プラスチック(株)製造:EP−50(全開孔))と太いネトロンパイプ(大日本プラスチック(株)製造:EP−100(全開孔))を用いた。
【0064】
比較用濾過装置では、リサイクルガラス(0mm〜10mm)を高さ60mmになるように貯水容器2に敷詰めて濾材とした。小径濾過装置及び大径濾過装置では、円筒区画壁3を貯水容器2の底部2aの中央に立てて置き、リサイクルガラスを円筒区画壁3の周囲に高さ60mmに敷詰めるとともに、円筒区画壁3の上部まで詰めて濾材4とした。
【0065】
また、供給ホース5としては、内径18mm、外径22mm、長さ60mmの透明ビニールホースに幅2mmのスリット5aを入れたスロープ状のホースを作製して用いた。この供給ホース5は、内径13mm、外径18mm、長さ70mmである透明塩ビパイプを用いてTS給水栓用エルボに接続し、さらに貯水容器2の上方に配置されたコンテナに接続した。このような供給ホース5を用いることで、原水X(トイレットペーパー水溶液)を一定の流量で流し込むことができるように工夫した。
【0066】
また、比較用濾過装置における濾材の上面(原水Xとの接触面)の面積は475cmであった。また、小径濾過装置の底部濾過部4bの上面の面積は447cmであり、大径濾過装置の底部濾過部4bの上面の面積は373cmであった。
【0067】
このような比較用濾過装置、小径濾過装置及び大径濾過装置に対して、上部に設置したコンテナから原水Xを一定量で供給し、貯水容器2の底部2aから排出された処理水Yの水量をメスシリンダーで測定した。ここで使用したコンテナ(アステージ(株)製造:NF ボックス#11)の内径寸法は、幅278mm、奥行き153mm、高さ165mm で容量は7Lである。また原水Xの流量を調節するため、供給ホース5の入口に厚さ0.5mm、直径18mmのPET樹脂板を嵌め、この樹脂板の中央に直径7mmの穴を開けた。また、比較用濾過装置、小径濾過装置及び大径濾過装置を支えるためにラック(ドウシシャ(株)製造:PE5050−2P)を使用し、貯水容器2の底部2aから流出した処理水Yの水量(濾過水量Vをメスシリンダー(サンプラテック(株)製造:1077−1PC)で測定した。
【0068】
一般にトイレ1回の使用に必要とする水の量は6.5Lであり、また1回のトイレットペーパーの使用量を0.8m(1.54g)としたときの濃度を再現し、より明確に測定値の差が得られるように2倍の濃度で実験を行った。まず3Lの原水Xをコンテナに流し込む。流し入れた原水Xが濾過された後、これを繰り返して投入数N=10回毎に測定を行った。すなわち、3Lの原水Xをコンテナに供給し、濾過水量VがV=0.5L、1L、2Lで得られる濾過時間T(sec)と、濾過時間T=5minでの濾過水量Vを測定した。
【0069】
図4図6に測定結果を示す。図4は濾過水量Vが0.5Lであるときの測定結果を示すグラフであり、図5は濾過水量Vが1Lであるときの測定結果を示すグラフであり、図6は濾過水量Vが2Lであるときの測定結果を示すグラフである。なお、図4図6において、縦軸は濾過時間Tを示し、横軸は原水Xの投入数Nを示している。また、図4図6(また後述する図7)において、〇印が比較用濾過装置での測定結果を示し、□印が小径濾過装置での測定結果を示し、△印が大径濾過装置での測定結果を示している。
【0070】
図4に示す測定結果では、小径濾過装置と大径濾過装置における濾過時間Tは、図中のP点まではほぼ一致していて、あまり差は認められない。しかし比較用濾過装置における濾過時間Tに注目して見ると、小径濾過装置及び大径濾過装置よりも短くなっている。またP点以降では濾過時間Tは、大径濾過装置<小径濾過装置<比較用濾過装置の順で長くなっている。図5及び図6に示す測定結果では、いずれの濾過装置も図中のP点までほぼ一致していて濾過時間Tに差は認められない。しかし、P点以降は徐々に濾過方式の影響が認められ、投入数N=240回では、明らかに大径濾過装置<小径濾過装置<比較用濾過装置の順で濾過時間Tが長くなっている。
【0071】
投入数N=240回の時においては、固体成分Zすなわちトイレットペーパーの堆積物は、比較用濾過装置の濾材の上面、小径濾過装置の底部濾過部4b及び大径濾過装置の底部濾過部4bの上面の全面を覆っていた。しかしながら、円筒区画壁3に注目すると、小径濾過装置及び大径濾過装置では、円筒区画壁3の側面が露出して初期状態を保っており、常に原水Xの液体成分が水平濾過部4aに流れ込むことが可能な状態となっていた。
【0072】
図7は、縦軸に濾過水量Vを取り、横軸に投入数Nを取って濾過時間T=5minにおける測定結果を示すグラフである。〇印と△印に注目すると、図中のP点までは〇印の比較用濾過装置が△印の大径濾過装置よりも濾過水量Vを多く得ることが出来るのに対し、P点以降は逆転することが分かる。
【0073】
また、図7で示す濾過時間T=5min(=300sec)の実験結果におけるP点で示す濾過水量V=2Lの測定値は、比較用濾過装置、小径濾過装置及び大径濾過装置で得られた測定値に差はあまり見られなかった。これは図6で示す濾過水量V=2Lの測定結果におけるP点で示す濾過時間T=300sec(=5min)の測定値と一致するもので、差が認められないのは当然である。
【0074】
一方、濾過時間Tは比較用濾過装置における濾材の上面(原水Xとの接触面)の面積や、底部濾過部4bの上面の面積に依存するはずである。いま、比較用濾過装置の濾材の上面面積を基準の100%として、底部濾過部4bの上面面積の面積比を示せば小径濾過装置で94%、大径濾過装置で79%となるので、水平濾過部4aの影響を除いた濾過時間Tは、小径濾過装置及び大径濾過装置では比較用濾過装置より長くなるはずである。これは堆積物の厚さからも理解される。堆積物の厚さは比較用濾過装置と小径濾過装置ではあまり変化は認められないが、大径濾過装置ではかなり厚くなっていた。つまり、投入数N=240回における濾過時間Tは、水平濾過部4aを用いない場合には、比較用濾過装置<小径濾過装置<大径濾過装置の順で長くなるはずである。しかしながら、水平濾過部4aの効果により、小径濾過装置及び大径濾過装置の濾過時間Tは、予想よりもかなり短くなっている。
【0075】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。図8は、本発明の第2実施形態における濾過装置1Aの概略構成を示す模式図であり、(a)が斜視図、(b)が縦断面図である。また、図9は、図8(b)の分解断面図である。
【0076】
これらの図に示すように、本実施形態の濾過装置1Aは、外側貯水容器6と、区画壁支持ケース7と、空気管8と、内側バスケット9(予備濾過容器)と、蓋部10とを備えている。なお、図8(a)及び図9においては、蓋部10を省略して図示している。
【0077】
外側貯水容器6は、上部が開放された有底の容器であり、平面視において矩形状とされている。この外側貯水容器6は、底部6aと、側壁部6bと、排出ポート6c(排出部)とを有している。
【0078】
本実施形態において底部6a及び側壁部6bは、液体が通過不能とされており、平面視矩形状の底部6aを囲うように側壁部6bが設けられている。排出ポート6cは、側壁部6bの底部6aの近傍を水平方向に貫通するように、側壁部6bに対して嵌合されている。この排出ポート6cは、外側貯水容器6の内部空間と外部空間とを接続するポートであり、外側貯水容器6の内部空間から処理水Yを外部に排出可能とする部位である。このような排出ポート6cは、上述のように、側壁部6bの底部6aの近傍に配置されており、外側貯水容器6の下部に設けられている。
【0079】
区画壁支持ケース7は、外側貯水容器6よりも小型の上部が開放された有底の容器であり、外側貯水容器6の内部に配置されている。本実施形態の濾過装置1Aにおいては、円筒区画壁3が複数設けられている。区画壁支持ケース7は、これらの円筒区画壁3を収容かつ支持する平面視矩形状の容器である。
【0080】
この区画壁支持ケース7は、底部7aと、側壁部7bとを有している。底部7aは、円筒区画壁3が立設され、円筒区画壁3を下方から支持している。この底部7aには、円筒区画壁3が設置される領域に対して上下に貫通する開口を有している。このため、円筒区画壁3の下端から排出された処理水Yは、底部7aの開口を通じて区画壁支持ケース7の外部に排出可能とされている。
【0081】
側壁部7bは、外側貯水容器6の側壁部6bに対して水平方向に離間されている。このため、区画壁支持ケース7の側壁部7bと、外側貯水容器6の側壁部6bとの間には、外側貯水容器6の底部6aに連通する空間が設けられている。したがって、仮に区画壁支持ケース7の内部から原水Xが溢れたとしても、区画壁支持ケース7から溢れた原水Xは、外側貯水容器6に受け止められる。よって、濾過装置1Aの外部に原水Xが漏出することが防止される。
【0082】
さらに、区画壁支持ケース7は、円筒区画壁3を下方から支持すると共に、外側貯水容器6に対して着脱可能に収容されている。このため、図9に示すように、区画壁支持ケース7を外側貯水容器6に対して持ち上げることによって、区画壁支持ケース7ごと円筒区画壁3を外側貯水容器6から取り出すことができる。
【0083】
本実施形態において円筒区画壁3は、区画壁支持ケース7の内部に複数(本実施形態では図8(a)に示すように8つ)設けられている。本実施形態においても、円筒区画壁3は、液体を通過可能な材料によって形成された円筒形状とされている。
【0084】
なお、図8(a)に示すように、本実施形態においては、複数の円筒区画壁3のうち、2つの円筒区画壁3の直径が他の円筒区画壁3よりも小さい。具体的には、複数の円筒区画壁3が内側バスケット9を囲うように環状に配列されており、これらのうち2つが区画壁支持ケース7の内側に内側バスケット9を載置するスペースを確保するために小径とされている。
【0085】
このような本実施形態の濾過装置1Aでは、円筒区画壁3は、外側貯水容器6の内部空間の一部である区画壁支持ケース7の内部空間を、水平方向にて原水貯留空間R1と濾材収容空間R2とに区画している。
【0086】
また、本実施形態の濾過装置1Aでは、濾材4は、各々の円筒区画壁3の内部に収容された水平濾過部4aと、外側貯水容器6の底部6a上に配置された底部濾過部4bとに加えて、区画壁支持ケース7の底部7a上に配置された区画壁支持ケース濾過部4cを備えている。
【0087】
区画壁支持ケース濾過部4cは、原水貯留空間R1に貯留された原水Xが円筒区画壁3の内部に進入せずに区画壁支持ケース7の底部7aに設けられた開口から漏出することを防止する。また、区画壁支持ケース濾過部4cは、円筒区画壁3の下部を囲い、円筒区画壁3を支持している。
【0088】
空気管8は、外側貯水容器6の側壁部6bの上部に対して接続されている。この空気管8は、外側貯水容器6の側壁部6bを貫通して設けられており、外側貯水容器6の内部と外部との間で空気を出し入れするための流路を形成している。
【0089】
内側バスケット9は、原水Xに含まれる大型の固体成分(固体成分の一部)を捕捉し、原水Xに含まれる液体成分を透過させる網状の部材からなる容器である。この内側バスケット9は、区画壁支持ケース7に着脱可能に収容されており、複数の円筒区画壁3によって囲まれた領域に配置されている。
【0090】
このような内側バスケット9は、平面視矩形状の底部9aと、平面視で底部9aを囲う側壁部9bとを有している。側壁部9bは、区画壁支持ケース7の側壁部7bに対して水平方向に離間されている。このため、内側バスケット9の側壁部9bと、区画壁支持ケース7の側壁部7bとの間には、区画壁支持ケース7の底部7aに連通する空間が設けられている。したがって、仮に内側バスケット9の内部から原水Xが溢れたとしても、内側バスケット9から溢れた原水Xは、区画壁支持ケース7に受け止められる。
【0091】
この内側バスケット9は、蓋部10に設けられた後述の原水供給ポート10bの下方に配置されている。このような内側バスケット9は、原水供給ポート10bを介して外側貯水容器6の内部に供給される原水Xを受け、原水Xに含まれる大型の固体成分を捕捉して液体成分を通過させる。
【0092】
蓋部10は、外側貯水容器6の側壁部6bの上端縁に着脱可能に載置され、外側貯水容器6の内部空間を上方から覆っている。この蓋部10は、外側貯水容器6を上方から覆う本体部10aと、平面視で本体部10aの中央に配置される原水供給ポート10bとを備えている。この原水供給ポート10bは、本体部10aを上下方向に貫通して設けられており、原水Xを蓋部10の外側から外側貯水容器6の内部に供給するための流路を形成している。なお、蓋部10は、不図示のボルト等によって外側貯水容器6に対して着脱可能に締結されている。
【0093】
このような構成の本実施形態の濾過装置1Aにて、外部から原水Xが原水供給ポート10bから外側貯水容器6の内部空間に供給されると、原水Xは内側バスケット9の内部に落水する。内側バスケット9に供給された原水Xは、内側バスケット9の側壁部9bを通過して内側バスケット9の外側に流入する。このとき、原水Xに含まれる大型の固体成分は、内側バスケット9に捕捉される。
【0094】
内側バスケット9から排出された原水Xの液体成分は、水平方向に移動して円筒区画壁3を通過して濾材4の水平濾過部4aに浸透して供給される。このように原水Xの液体成分が濾材4に供給されるに伴って、原水Xの固体成分は濾材4の表面に残り、原水Xから分離される。
【0095】
水平濾過部4aに供給された原水Xの液体成分は、水平濾過部4aに沿って下方に移動し、区画壁支持ケース7の底部7aに設けられた開口から処理水Yとして排出される。さらに処理水Yは、底部濾過部4bを介して排出ポート6cに到達し、排出ポート6cから外側貯水容器6の外部に排出される。
【0096】
原水Xが水平濾過部4aに供給されることによって、水平濾過部4aの表面に濾しとられた固体成分Zは、重力の作用によって少なくとも一部が水平濾過部4aの表面から剥離して原水貯留空間R1を底部に向かって移動する。このように、水平濾過部4aの表面から剥離して原水貯留空間R1を底部に向かって移動した固体成分は、区画壁支持ケース濾過部4c上に堆積する。このため、水平濾過部4aの表面は、原水Xの固体成分Zが少なく、原水Xの液体成分が進入しやすい状態が維持される。
【0097】
一定時間が経過すると、区画壁支持ケース濾過部4c上に固体成分Zが厚く堆積した状態となる。このように、区画壁支持ケース濾過部4c上に固体成分Zが厚く堆積した状態であっても、水平濾過部4aの表面に残存する固体成分Zは少ないため、原水貯留空間R1に供給された原水Xは、水平濾過部4aに水平移動することができる。
【0098】
また、内側バスケット9に対して固体成分Zが多く溜まった場合には、蓋部10を外側貯水容器6から取り外し、さらに内側バスケット9を区画壁支持ケース7から離脱させることによって、内側バスケット9に溜まった固体成分Zを容易に取り出すことができる。例えば、新しい内側バスケット9を設置することによって、すぐに濾過装置1Aを再稼働させることが可能となる。また、内側バスケット9を固体成分Zと共に後処理可能な材料によって形成することで、内側バスケット9から固体成分Zを除去する必要がなくなり、後処理が容易となる。
【0099】
また、例えば、内側バスケット9を設置せずに濾過装置1Aを使用することも可能である。このような場合に区画壁支持ケース7に対して固体成分Zが多く溜まった場合には、区画壁支持ケース7を外側貯水容器6から離脱させることによって、区画壁支持ケース7に溜まった固体成分Zを容易に取り出すことができる。例えば、円筒区画壁3や水平濾過部4a等が設置された新しい区画壁支持ケース7を設置することによって、すぐに濾過装置1Aを再稼働させることが可能となる。
【0100】
また、内側バスケット9を設置せずに濾過装置1Aを使用する場合には、例えば、排出ポート6cや原水供給ポート10bをバルブ等で閉塞した状態で外側貯水容器6の内部に外部から水を供給し、供給した水と共に固体成分Zを吸引することで排出することも可能である。
【0101】
以上のような本実施形態の濾過装置1Aにおいては、原水貯留空間R1に配置され、原水貯留空間R1に供給される原水Xを受けると共に原水Xに含まれる固体成分Zの一部を捕捉して液体成分を通過させる内側バスケット9を備えている。このため、本実施形態の濾過装置1Aによれば、原水Xが円筒区画壁3に到達するために、原水Xに含まれる固体成分Zの一部を予め原水Xから分離することができる。したがって、本実施形態の濾過装置1Aによれば、円筒区画壁3の表面をより詰まりにくくすることが可能となる。
【0102】
また、本実施形態の濾過装置1Aにおいては、内側バスケット9は、外側貯水容器6に対して着脱可能とされている。このため、内側バスケット9を外側貯水容器6から取り外すことによって、容易に内側バスケット9に捕捉された固体成分Zを外側貯水容器6から取り出すことが可能となる。
【0103】
また、本実施形態の濾過装置1Aにおいては、内側バスケット9の側壁部9bと、区画壁支持ケース7の側壁部7bとが水平方向に離間して配置されている。さらに、内側バスケット9の側壁部9bと、外側貯水容器6の側壁部6bとも水平方向に離間して配置されている。このため、仮に内側バスケット9の内部から原水Xが溢れたとしても、内側バスケット9から溢れた原水Xは、外側貯水容器6の外部に漏出することがない。
【0104】
また、本実施形態の濾過装置1Aにおいては、外側貯水容器6の内部に着脱可能に収容されると共に円筒区画壁3を支持する区画壁支持ケース7を備えている。このため、区画壁支持ケース7を外側貯水容器6から取り外すことによって、容易に円筒区画壁3を外側貯水容器6から取り出すことが可能となる。
【0105】
また、本実施形態の濾過装置1Aにおいては、区画壁支持ケース7の側壁部7bは、外側貯水容器6の側壁部6bに対して水平方向に離間されている。このため、仮に区画壁支持ケース7の内部から原水Xが溢れたとしても、区画壁支持ケース7から溢れた原水Xを、外側貯水容器6で受け止めることができ、濾過装置1Aの外部への原水Xの漏出を防止することができる。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0107】
例えば、上記実施形態においては、円筒区画壁3の外側を原水貯留空間R1とし、円筒区画壁3に囲まれた内側を濾材収容空間R2とする構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
図10は、濾過装置を模式的に示した平面図である。例えば、図10(a)に示すように、円筒区画壁3に囲まれた内側を原水貯留空間R1とし、円筒区画壁3の外側を濾材収容空間R2とすることも可能である。このような場合には、円筒区画壁3の外側に濾材4が充填配置されることになる。
【0109】
また、例えば、図10(b)に示すように、大きさの異なる区画壁11を二重管状に配置し、これらの区画壁11に挟まれた空間を濾材収容空間R2とする構成を採用することも可能である。また、内側の区画壁11に囲まれた空間を原水貯留空間R1とする。このような場合には、区画壁11に挟まれた空間に濾材4が充填配置されることになる。なお、外側の区画壁11のさらに外側を原水貯留空間R1とすることも可能である。
【0110】
また、上記実施形態においては、濾材4が同一材料によって形成された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、水平濾過部4aを形成する材料と、底部濾過部4bを形成する材料とを異ならせることも可能である。例えば、水平濾過部4aは、底部濾過部4bよりも高さ寸法が大きいことから、液体が下端までたどり着く経路が底部濾過部4bよりも長い。このため、水平濾過部4aの密度を底部濾過部4bよりも小さくし、水平濾過部4aへの進水速度を高めるようにしても良い。
【0111】
また、上記実施形態においては、水平濾過部4aの密度が高さ方向に均一である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、水平濾過部4a上に堆積する固体成分Zの厚さ寸法が大きくなるほど、固体成分Zを液体成分が通過しにくくなる。このため、水平濾過部4aを上部に向かうに連れて密度を小さくし、固体成分Zの厚さ寸法が大きくなるほど、水平濾過部4aに液体が供給されやすいようにすることも可能である。具体的には、水平濾過部4aの上部に向かうに連れて濾材4を形成するガラス片の粒径を大きくして空隙を増やすことで、水平濾過部4aを上部に向かうに連れて密度を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0112】
1……濾過装置、1A……濾過装置、2……貯水容器、2a……底部(排出部)、2b……側壁部、3……円筒区画壁(区画壁)、4……濾材、4a……水平濾過部、4b……底部濾過部、4c……区画壁支持ケース濾過部、5……供給ホース(原水供給管)、5a……スリット、6……外側貯水容器(貯水容器)6a……底部、6b……側壁部、6c……排出ポート(排出部)、7……区画壁支持ケース、7a……底部、7b……側壁部、8……空気管、9……内側バスケット(予備濾過容器)、9a……底部、9b……側壁部、10……蓋部、10a……本体部、10b……原水供給ポート、11……区画壁、L……軸心、R1……原水貯留空間、R2……濾材収容空間、X……原水、Y……処理水、Z……固体成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10