【解決手段】インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、クロモグラニンA、インスリン、B鎖インスリン、プレプロインスリンおよびプロインスリンからなる群より選択され、1型糖尿病、自己免疫性糖尿病および潜在性自己免疫性糖尿病から選択される自己免疫疾患の予防および/または処置のための方法における使用のためのβ細胞自己抗原であって、該方法は、被験体に、該β細胞自己抗原を含む組成物を、リンパ管内注射、リンパ節内への直接注射、または皮内注射によって投与することを含む、β細胞自己抗原。
少なくとも1種類のβ細胞自己抗原を含む組成物を、50ナノモル/リットルより上の血清ビタミンDレベルを有する被験体に投与することを含む、自己免疫疾患の予防および/または処置のための方法。
該β細胞(cella)自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、クロモグラニンA、インスリン、B鎖インスリン、プロインスリンまたはプレプロインスリンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
該被験体が50〜150ナノモル/リットル、例えば60〜100ナノモル/リットル、75〜100ナノモル/リットルまたは100〜1500ナノモル/リットルの血清ビタミンDレベルを有する被験体である、請求項1または2に記載の方法。
該被験体の前処置が、少なくとも1種類のβ細胞自己抗原を含む該組成物を前記被験体に投与する前に好ましくは7〜90日間のビタミンDおよび/またはビタミンDアナログの投与および/またはUVB線への曝露を含む、請求項4に記載の方法。
該シクロオキシゲナーゼ阻害薬が、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸、サルサラート(ジサルシド)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびニメスリドからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
該β細胞自己抗原(autoanigen)を含む組成物をリンパ管内注射、リンパ節内への直接注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、静脈内注射、鼻腔内、経粘膜もしくは舌下適用;あるいは経口、例えば、錠剤、ペレット剤、顆粒剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性の液剤、懸濁剤、乳剤、スプレー剤としての投与、または乾燥粉末化形態を液体媒体で再構成したものとしての投与によって投与することを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
該β細胞自己抗原が、使用される自己抗原ごとの注射1回あたり1〜15μg、より好ましい2〜10μg、最も好ましい2〜5μgの量で投与される、請求項15に記載の方法。
該β細胞自己抗原を含む組成物を少なくとも2回、より好ましい少なくとも3回、最も好ましい少なくとも4回投与することを含み、各投与を少なくとも14日間空ける、より好ましくは少なくとも30日間空ける、請求項15または16に記載の方法。
該β細胞自己抗原を含む組成物が、3〜4ヶ月間の最初の処置期間では1〜4週間空けて、任意選択で、6〜9ヶ月間の連続処置期間では2〜3ヶ月空けて投与される、請求項18に記載の方法。
該β細胞自己抗原の量を、処置期間の開始時の1回の投与あたり1〜5μgから最終投与において1回の投与あたり約40〜100μgまで増大させる、請求項18または19に記載の方法。
被験体に、少なくとも1種類のβ細胞自己抗原を含む組成物をリンパ管内注射またはリンパ節内への直接注射によって投与することを含む、自己免疫疾患の予防および/または処置のための方法。
該β細胞自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、クロモグラニンA、インスリン、B鎖インスリン、プレプロインスリンまたはプロインスリンからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
該β細胞自己抗原が、使用される自己抗原ごとの注射1回あたり1〜15μg、より好ましい2〜10μg、最も好ましい2〜5μgの量で投与される、請求項21に記載の方法。
該β細胞自己抗原を含む組成物を少なくとも2回、より好ましい少なくとも3回、最も好ましい少なくとも4回投与することを含み、各投与を少なくとも14日間空ける、より好ましくは少なくとも30日間空ける、請求項21、22または23に記載の方法。
該シクロオキシゲナーゼ阻害薬が、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸、サルサラート(ジサルシド)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびニメスリドからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
さらに、ビタミンD、ビタミンDアナログ、チロシンキナーゼ阻害薬、γ−アミノ酪酸もしくはγ−アミノ酪酸アナログを該被験体に投与すること、および/または該被験体をUVB線に曝露することを含む、請求項21〜29のいずれか1項に記載の方法。
ビタミンDおよび/またはビタミンDアナログの投与および/またはUVB光への曝露が、少なくとも1種類のβ細胞自己抗原を含む組成物を前記被験体に投与する前に7〜90日間行なわれる、請求項30に記載の方法。
被験体に少なくとも1種類のβ細胞自己抗原を、漸増用量で数週間、数ヶ月間または数年間にわたって投与することを含む、自己免疫疾患の予防および/または処置のための方法。
該β細胞自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、クロモグラニンA、インスリン、B鎖インスリン、プレプロインスリンまたはプロインスリンからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
該β細胞自己抗原を含む組成物を、3〜4ヶ月間の最初の処置期間では1〜4週間空けて、任意選択で、6〜9ヶ月間の連続処置期間では2〜3ヶ月空けて投与する、請求項34に記載の方法。
該β細胞自己抗原の量を、処置期間の開始時の1回の投与あたり1〜5μgから最終投与において1回の投与あたり約40〜100μgまで増大させる、請求項34、35また
は36に記載の方法。
該シクロオキシゲナーゼ阻害薬が、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸、サルサラート(ジサルシド)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびニメスリドからなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
さらに、ビタミンD、ビタミンDアナログ、チロシンキナーゼ阻害薬、γ−アミノ酪酸もしくはγ−アミノ酪酸アナログを該被験体に投与すること、および/または該被験体をUVB線に曝露することを含む、請求項34〜42のいずれか1項に記載の方法。
ビタミンDおよび/またはビタミンDアナログの投与および/またはUVB光への曝露が、少なくとも1種類のβ細胞自己抗原を含む組成物を前記被験体に投与する前に7〜90日間、例えば、7000〜70000IU/週の量の3〜48ヶ月のビタミンDおよび/またはビタミンDアナログの投与が行なわれる、請求項43に記載の方法。
該β細胞自己抗原を含む組成物をリンパ管内注射、リンパ節内への直接注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、静脈内注射、鼻腔内、経粘膜もしくは舌下適用;あるいは経口、例えば、錠剤、ペレット剤、顆粒剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性の液剤、懸濁剤、乳剤、スプレー剤としての投与、または乾燥粉末化形態を液体媒体で再構成したものとしての投与によって投与することを含む、請求項34〜45のいずれか1項に記載の方法。
該β細胞自己抗原が、使用される自己抗原ごとの注射1回あたり1〜15μg、より好ましい2〜10μg、最も好ましい2〜5μgの量で投与される、請求項47に記載の方法。
該β細胞自己抗原を含む組成物を少なくとも2回、より好ましい少なくとも3回、最も好ましい少なくとも4回投与することを含み、各投与を少なくとも14日間空ける、より好ましくは少なくとも30日間空ける、請求項47または48に記載の方法。
各々の表面上に少なくとも1種類の第1の抗原と少なくとも1種類の第2の抗原が固定化された複数の粒子を含む組成物であって、該第1の抗原がβ細胞自己抗原であり、該第2の抗原が寛容原またはβ細胞自己抗原のいずれかであり、さらに任意選択で、医薬的に許容され得るアジュバント、賦形剤、溶媒および/またはバッファーを含む組成物。
すべてのβ細胞自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、クロモグラニンA、インスリン、B鎖インスリン、プレプロインスリンまたはプロインスリンからなる群より選択される、請求項51に記載の組成物。
各粒子の表面上に、寛容原およびβ細胞自己抗原からなる群より選択される2、3、4、5、6、7、8、9または10種類の異なる抗原が固定化されている、請求項51〜57のいずれか1項に記載の組成物。
該少なくとも1種類のβ細胞自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、クロモグラニンA、インスリン、B鎖インスリン、プレプロインスリンまたはプロインスリンからなる群より選択される、請求項59に記載の
組成物。
該IL−10誘発性化合物がチロシンキナーゼ阻害薬、例えばダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブ、スニチニブまたはその組合せである、請求項62に記載の組成物。
該シクロオキシゲナーゼ阻害薬が、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸、サルサラート(ジサルシド)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびニメスリドからなる群より選択される、請求項66に記載の組成物。
iia)ビタミンD、ビタミンDアナログ、チロシンキナーゼ阻害薬、γ−アミノ酪酸およびγ−アミノ酪酸アナログからなる群より選択されるIL−10誘発性化合物;ならびに
iib)ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害薬、CTLA−4化合物またはTNFα阻害薬
を含むものである、請求項59〜70のいずれか1項に記載の組成物。
自己免疫疾患、例えば1型糖尿病または自己免疫性糖尿病の予防および/または処置のための方法における使用のための請求項51〜72のいずれか1項に記載の組成物。
該β細胞自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、クロモグラニンA、インスリン、B鎖インスリン、プロインスリンまたはプレプロインスリンからなる群より選択される、請求項76に記載の医薬品キット。
少なくとも1種類の組成物が、チロシンキナーゼ阻害薬、例えばダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブ、スニチニブまたはその組合せを含むものである、請求項76〜79のいずれか1項に記載の医薬品キット。
少なくとも1種類の組成物が、シクロオキシゲナーゼ阻害薬、例えばイブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸、サルサラート(ジサルシド)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびニメスリドを含むものである、請求項76〜81のいずれか1項に記載の医薬品キット。
少なくとも1種類の組成物が、TNFα阻害薬、例えば(such as of)アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブおよびインフリキシマブを含むものである、請求項76〜83のいずれか1項に記載の医薬品キット。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
免疫防御システムは、多くの防御システムと同様、数多くの、ほとんどが相互作用的な部分からなる。自然システムというのが存在し、これは、基本的には、パターン認識受容体(例えばToll様受容体)を介して、どちらかと言えばよく知られた一般的な微生物抗原(ag)に反応すると考えられている;獲得システムというのが存在し、これは、広くさまざまな外来侵入生物に対する応答に適応することができ、さらには、新たに同じagとの遭遇が生じた場合に速やかに反応する記憶細胞を創出および維持できるものである。
【0004】
自己免疫疾患では、適応免疫系は一般的には、少なくとも1種類の自己抗原(self−antigen)(auto−antigen,aag)に反応するものである。充分に理解はされていないが、自己免疫はいくつかの様式で誘発され得る。論考されている考えられ得る誘因の例としては、限定されないが、ウイルスに対する自然応答、食事、ビタミン、ストレス、マイクロバイオーム、ワクチン、抗生物質および他の薬物が挙げられる。遺伝的素因は、さらなる重要な要素である。
【0005】
内因的に生じる自己抗原の場合、これは、細胞内部でプロセシングされ、そのペプチドが細胞表面に輸送されてMHC−I分子と会合状態になり、種々の細胞、例えば、ナイーブCD8+ T細胞;既に成熟している細胞傷害性CD8+ T細胞;および/またはCD8+ 記憶エフェクターT細胞に提示される。ナイーブCD8+ T細胞を活性化させて細胞傷害性T細胞に成熟させるためは、CD28を伴う共刺激性の副シグナルが必要である。
【0006】
細胞内部のものでない自己抗原は通常、樹状細胞(DC)またはマクロファージなどの抗原提示細胞(APC)によって取り込まれ、プロセシングされたペプチドがMHC−II分子と会合状態で輸送され、ナイーブ、成熟または記憶CD4+ T細胞に提示される。また、この場合も、ナイーブCD4+ T細胞をTヘルパー(Th)細胞の形態に活性化させるために、CD28が関与している第2の共刺激シグナルが必要である。通常、2つの形態のTh細胞:Th1;Th2が論考される。
【0007】
APC−MHCII−aag複合体とCD4+ T細胞受容体(TCR)との遭遇時に、どの型のTh細胞が生成するかは、いくつかの要素、例えば、DCの成熟度および提示
された時点の周囲環境(限定されないが、IL−10の利用可能性が挙げられる)に依存する。Th1細胞はIFNgなどの炎症性サイトカインを分泌し、炎症細胞媒介応答を刺激するが、Th2細胞は、典型的にはIL4を分泌し、BCが非細胞溶解性の中和抗体を産生する体液性応答を刺激する。「コーティング」および補体結合(抗体依存性細胞傷害)のための抗体は通常、自然システムによって刺激される。
【0008】
各B−リンパ球(BC)は、固定化された抗体分子の形態の固有の特異的なB細胞受容体(BCR)を発現する。TCは、コグネートagを(MHC分子の状況ではプロセシングされたペプチドとして)認識するが、B細胞は、天然形態の抗原(かかる非プロセシング抗原は通常、T細胞の活性化と相互作用しない)を認識し、たいていはTh2シグナル伝達の補助を伴って短寿命の抗体を産生形質細胞に分化し、その10%が長寿命の抗原特異的記憶BCになると考えられている。
【0009】
一般的に当該技術分野において、インスリンおよびインスリン関連分子は、成人の自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病および潜在性自己免疫性糖尿病に至るプロセスに関与している初期分子であると考えられている。寛容を誘導し、疾患の進行を停止または抑制するための種々のインスリン由来製剤を用いた大規模な臨床試験が行なわれ、現在も行なわれている。多くの他のβ細胞抗原分子およびそのペプチド、例えば限定されないが、GAD65も同じ目的で試験されており、他のもの、限定されないが、インスリンB鎖およびプロインスリンならびにその変形物が臨床展開のために調製されている。
【0010】
人において免疫系の発生中、自己を非自己と識別するために自己抗原反応性リンパ球がクローン的に消去されると考えられる。非自己反応性Tリンパ球が残り、続いてナイーブCD4+またはCD8+ T細胞に分化し、該細胞は、その特異的抗原と遭遇すると活性化され得る。しかしながら、一部の自己反応性リンパ球はこの消去プロセスを逸出する。自己抗原が隔離されている場合(例えば、細胞内部など)は、より多くが逸出する。しかしながら、豊富な分子の一例としてインスリンの場合、この消去プロセスを逸出するインスリン反応性リンパ球は比較的少なく、その結果、存在するインスリン反応性のナイーブCD4+またはCD8+ T細胞は比較的少ない。
【0011】
天然に存在する豊富な分子、例えばインスリンなどは、このプロセスが活性化CD8+
T細胞および/またはTLRシグナル伝達によって開始されない限り、通常、DCに吸着および提示されない。したがって、当該技術分野で認識されていなかったかもしれないことは、糖尿病に至る自己免疫過程が、多くの場合、標的器官の細胞上のMHCクラス−1と直接会合しているaagを認識する逸出CD8+ インスリン反応性ナイーブリンパ球によって開始され得るということである。したがって、遺伝的に素因を有する人の場合、インスリン反応性の「逸出」ナイーブCD8+胸腺細胞により、CD8+細胞傷害性細胞の発生を含む炎症プロセスが誘発され得、これによりさらに、自然システムに警告を発する(例えば、BCのインスリン抗体産生を高める)サイトカインが誘導され得る。一部のβ細胞は屈して(succumber)、隔離された抗原、例えばGAD65などを放出し、そのため、豊富な量のナイーブCD4+およびCD8+ TCが存在する。GAD65はさらに、特定のウイルス構造と共通性を有している場合があり得、これによりTLR様シグナル伝達がさらに刺激される。
【0012】
自己免疫反応が進行中、例えば、CTLA4分子の発現およびIL−10の分泌などの抗炎症機構が発現する。インスリンの場合、発生中の自己免疫疾患に対するADC−MHCIIの寄与は弱いため、かかる代償機構により、インスリンに対する耐性が自己抗原特異的様式で誘発される。しかしながら、GAD分子はDCに取り込まれてプロセシングされ、GADペプチドがナイーブCD4+TCに提示されて、これをTヘルパー細胞に活性化させる。このように、インスリンに対する一過的な(transcient)免疫反応
が、GADに対するより頑健な反応に置き換えられる。これにより、なぜ、遺伝的に素因を有する多くの小さな子供において第1の自己抗体が多くの場合インスリンに対するものであるのか、およびなぜ、かかる抗体が多くの場合、疾患が進行するにつれて消失するのかが説明される。
【0013】
Mocellin,Cytokine Growth Factor Rev.2004,The multifaceted relationshup between IL−10 and adaptive immunity:putting together the pieces of a puzzleには、どのようにしてインターロイキン−10(IL−10)が、いくつかの適応免疫関連細胞の機能をモジュレートする多面的サイトカインになるのかが記載されている。一般的には免疫抑制性分子とみなされているが、IL−10は、インビボモデルでは免疫賦活特性を有する。一例として、膵臓の膵島細胞による局所産生IL−10は、NODマウスにおいて自己免疫の進行を刺激するが、全身投与はβ細胞保存効果および抗炎症効果を有し得る。IL−10と適応免疫が関与している感染性疾患、自己免疫、アレルギー、がんおよび移植との関係に関する概要が示されている。
【0014】
Russel et al,Islets.2014,The impact of anti−inflammatory cytokines on the pancreatic β−cellにより、つい最近、インターロイキン(IL)−4、IL−10およびIL−13などの抗炎症性分子がβ細胞の機能およびバイアビリティの直接的な影響を及ぼし得るという証拠、およびこのようなサイトカインの循環レベルは1型糖尿病において低い場合があり得るという証拠が示され、抗炎症経路の標的化により1型糖尿病の治療の可能性がもたらされるかもしれないことが提案された。
【0015】
Calcinaro et al,Diabetologia.2005,Oral probiotic administration induces interleukin−10 production and prevents spontaneous autoimmune diabetes in the non−obese
diabetic mouseでは、善玉菌(probiotic bacteria)の早期経口投与によってNODマウスにおける糖尿病の発症が抑制されると結論づけられ、これは膵臓におけるIL−10発現の増大と関連しており、このとき、IL−10陽性膵島浸潤単核球が検出された。
【0016】
Van Dongen et al,Int J Cancer.2010 Aug 15;127(4):899−909.doi:10.1002/ijc.25113.Anti−inflammatory M2 type macrophages characterize metastasized and tyrosine kinase inhibitor−treated gastrointestinal stromal tumors(GIST)には、マクロファージ培養物中で腫瘍をチロシンキナーゼ阻害薬イマチニブおよびスニチニブで処理すると抗炎症性のIL−10の分泌が誘導されることが報告されており、このような阻害薬での処置がGISTにおける免疫抑制性の微小環境に寄与するかもしれないことを示す。全般的に、データにより、抑制機構が潜在的抗腫瘍応答を無効にする腫瘍−免疫相互作用の活性部位としてGISTが示された。チロシンキナーゼ阻害薬はこの負のバランスを促進させる可能性がある。
【0017】
Louvet et al,Proc Natl Acad Sci U S A.2008,Tyrosine kinase inhibitors reverse type 1 diabetes in nonobese diabetic miceには、どのようにしてチロシンキナーゼ(TK)阻害薬により自己免疫疾患の処置の機会
がもたらされるかが報告されている。イマチニブ(グリベック)での処置によりNODマウスにおけるT1Dが抑制され、逆転された。同様の結果がスニチニブ(スーテント)でも観察された。別のTK阻害薬PLX647ではわずかな有効性しか示されなかったが、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)の可溶性形態であるPDGFRβIgでは糖尿病が速やかに逆転された。イマチニブ処置では永続的な寛解がもたらされ、長期の有効性と寛容性は、T1Dの処置のための選択的キナーゼ阻害薬の使用を補助するチロシンキナーゼの組合せの阻害に依存するようである。
【0018】
Agostinoet et al,J Oncol Pharm Pract.Epub 2010,Effect of the tyrosine kinase inhibitors(sunitinib,sorafenib,dasatinib,and imatinib)on blood glucose levels in diabetic and nondiabetic patients in general clinical practiceには、どのようにチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が、ダサチニブ、イマチニブ、ソラフェニブおよびスニチニブで処置した患者の血中グルコース(BG)濃度に影響したかが記載されている。すべてにおいてBGの有意な低下が示された。これらの薬物の低血糖効果の機構は不明であるが、c−kitとPDGFRβが共通の標的キナーゼであった。
【0019】
Adorini,Ann N Y Acad Sci.2003,Tolerogenic dendritic cells induced by vitamin D receptor ligands enhance regulatory T cells inhibiting autoimmune diabetesには、1,25−ジヒドロキシビタミンD(3)により、CD40、CD80およびCD86共刺激分子の発現の低減、低IL−12ならびにIL−10分泌の向上を特徴とする寛容原性表現型を有するDCが誘導されることが報告されている。1,25−(OH)(2)D(3)での処置により、CD4(+)CD8(+)1型細胞の発生の欠陥およびCD4(+)CD25(+)制御性細胞の割合の増加を伴うマウス膵島同種移植片に対する寛容性が誘導され、また、非高カルシウム血性用量で糖尿病の発症が抑止され、1型糖尿病の処置に対するアプローチとしてビタミンDが示唆された。
【0020】
Heine et al,Eur J Immunol.2008,1,25−dihydroxyvitamin D(3)promotes IL−10 production in human B cellsには、1,25−ジヒドロキシビタミンD(3)(カルシトリオール)がB細胞によるIgEの発現を阻害し、樹状細胞およびT細胞によるIL−10の発現を向上させることが報告されている。活性化B細胞におけるビタミンDシグナル伝達、IL−10の発現および該細胞のカルシトリオールをその前駆物質から生成させる能力間の分子レベルでのリンクにより、25−ヒドロキシビタミンD(3))が免疫応答のモジュレータとして使用され得ることが示唆される。
【0021】
Niiro et al,Biochem Biophys Res Commun.1998,MAP kinase pathways as a route for regulatory mechanisms of IL−10 and IL−4 which inhibit COX−2 expression in human monocytesには、どのようにしてマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)が活性化されて、単球/マクロファージにおける炎症促進性分子の発現の調節に重要な役割を果たすかが記載されている。ヒト単球のリポ多糖(LPS)刺激により、単球においてCOX−2タンパク質およびCOX−2 mRNAの発現ならびにシグナル調節プロテインキナーゼ(ERK)2およびp38 MAPKが誘導される。LPSによるCOX−2 mRNA、COX−2タンパク質およびプロスタグランジン(PG)E2の誘
導は、ERKおよびp38 MAPKの特異的阻害薬によって阻害された。インターロイキン(IL)−10も同様にCOX−2発現を阻害した。ERK2およびp38 MAPKのLPS誘導性のリン酸化および活性化はIL−10によって有意に阻害され、炎症促進性分子のLPS誘導性発現のIL−10による阻害はMAPK活性化に対する両サイトカインの制御効果のためであり得ることが示唆された。
【0022】
Obermajer et al,Blood.2011,Positive feedback between PGE2 and COX2 redirects the differentiation of human dendritic cells toward stable myeloid−derived suppressor cellsには、どのようにして樹状細胞(DC)と骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)が免疫系において反対の役割を示すかが記載されている。
【0023】
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)は、PGE(2)合成の枢要な調節因子であり、CD1a(+)DCからのCD14(+)CD33(+)CD34(+)単球性MDSCへの発達の再指向における決定因子である。内因性PGE(2)ならびにリポ多糖、IL−1βおよびIFNγなどの多様なCOX2アクチベータはすべて、COX2の単球発現を誘発し、そのCD1a(+)DCへの分化をブロックし、典型的なMDSC関連抑制因子である内因性PGE(2)、IDO1、IL−4Rα、NOS2およびIL−10を誘発する。COX2阻害薬またはEP2およびEP4拮抗薬を用いたCOX2−PGE(2)フィードバックの破壊により、がん患者でMDSC関連抑制因子の生成および成熟MDSCのCTL阻害機能が抑制される。MDSCの誘導および持続におけるCOX2−PGE(2)フィードバックの中心的役割により、がん、自己免疫または移植における免疫応答を向上させるか、または抑制するための操作の潜在性が強調される。
【0024】
Lieb,Med Hypotheses.2007,Antidepressants,prostaglandins and the prevention and treatment of cancerには、推定される発癌機構が、シクロオキシゲナーゼの上方調節、癌遺伝子の合成および発現、ウイルスによる活性化、シグナル破壊、アポトーシス欠損、腫瘍のイニシエーションおよびプロモーション、血管新生、転移、免疫抑制、テロメラーゼ活性ならびに自己免疫であることが報告されている。すべて、プロスタグランジンによって調節される。X線写真により観察可能ながんの退縮が、非ステロイド系抗プロスタグランジン薬、例えば、インドメタシンおよびイブプロフェンを摂取した患者において記録されている。
【0025】
Kim,et al,Immune Netw.2010,Cyclooxygenase Inhibitors,Aspirin and Ibuprofen,Inhibit MHC−restricted Antigen Presentation in Dendritic Cellsには、NSAIDがT細胞およびB細胞に対して免疫調節効果を有すること、ならびにイブプロフェンが樹状細胞(DC)におけるMHCクラスIおよびクラスII拘束抗原提示を阻害することが報告されている。イブプロフェンは、DCの食作用活性、DC上の全MHC分子および共刺激分子の発現レベルを阻害しなかった。むしろ、イブプロフェンは、DC上の全MHC分子および共刺激分子の発現レベルを増大させた。この結果は、イブプロフェンが、食作用を受けた抗原の細胞内プロセシングを阻害することを示し、NSAIDの高用量での長期投与により、MHC分子と結合している抗原を提示するDCの能力が障害され得ることを示唆する。
【0026】
Gribben et al,Immunology 1994,CTLA4 mediates antigen−specific apoptosis of human T cellsには、CTLA4分子がどのようにして、TCRまたはCD28活性
化によって誘導されるT細胞拘束分子になるのかが記載されている。発生中の免疫応答時、炎症促進シグナルと非炎症促進性シグナル間にバランスがみられる。Mabまたは天然リガンドB7−1および2によるCD28またはCD28/CTLA4共通の結合領域の架橋により、正の共刺激シグナルが生じ、炎症促進性IL−2の上方調節がもたらされる。実際、CTLA4の架橋により、CD28に対する弱い共刺激シグナルがもたらされ得る。T細胞の活性化後、CD28発現が下方調節され、CTLA4が上方調節される。このとき、CD28の共刺激の非存在下でのCTLA4の架橋では、先に活性化されたT細胞の消去が誘導され得、これは、CTLA4が、T細胞の活性化状態に応じて共刺激と消去の誘導の両方を行ない得ることを示す。
【0027】
Posadas et al,Clinical Immunology 2009,Abatacept in the treatment of rheumatoid
arthritisには、関節リウマチ(RA)では、T細胞ならびにいくつかの他の細胞、例えば、樹状細胞DC、マクロファージおよび線維芽細胞において、活性化のマーカー、例えば、CD28および細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)が発現していることが記載されている。末梢血中において、ナイーブT細胞は、充分な機能的能力を有する活性化状態となるために、2つのシグナル:i)抗原提示細胞(APC)上のMHC分子と関連している抗原の、T細胞上の対応する抗原特異的T細胞受容体(TCR)への提示;およびii)T細胞上のCD28とAPC上のCD80/86との結合を必要とする。共刺激なしでのコグネート抗原によるナイーブT細胞の刺激はT細胞アネルギーをもたらすが、コグネート抗原の非存在下でのT細胞上への共刺激分子の結合は、T細胞に対して効果を有しない。
【0028】
この2つのシグナルによる成功裡の刺激後に活性化T細胞において上方調節される表面分子の1つはCTLA4である。これはCD80/80に、CD28に対するよりも高いアビディティで結合する。これにより、CD28の結合がブロックされるだけでなく、CTLA4により、新たに活性化されるT細胞に対する阻害性シグナルが誘導される。
【0029】
アバタセプト(Fc修飾CTLA4免疫グロブリン)は、ヒトCTLA4の細胞外部分とヒトIgG1の重鎖からなるT細胞枯渇性免疫調節性の融合タンパク質である。これは、ナイーブT細胞の活性化に関与している共刺激シグナルをブロックする。また、これがAPC上のCD80/86と結合すると、CD80/86誘発性IL−6が干渉されて低減され、これによりIL−1β、IFNγおよびIL−17などの炎症性サイトカインが下方調節され得る。さらにアバタセプトがCD80/86と結合すると、APC内にインドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)が誘発され得、これによりさらに、T細胞におけるアネルギーが誘導され得るとともに、活性化T細胞によるナイーブT細胞のパラクリン活性化が下方調節され得る。
【0030】
記憶CD4+ T細胞のリコール(再刺激)に影響を及ぼすアバタセプトの能力に関して矛盾する見解が提示されている。B細胞上に発現されたCD80/86は、アバタセプトが免疫調節機能を発揮し得るもう1つのさらなる経路かもしれないというものである。
【0031】
Patakas et al,abstract #723 ACR/ARHP,2013,Abatacept is Highly Effective At Inhibiting T cell Priming and Induces a Unique Transcriptional Profile In CD4+ T Cellsでは、アバタセプトの存在下でのオボアルブミンのscプライミングにより、どのように大量のIL−2が産生し、それにより、初めて抗原に曝露されたナイーブT細胞と似ているかが示された。このようなT細胞(Tcells cells)に含まれているTregおよびCD4+ T細胞は、他の(プライミングされていないか、またはナイーブ
)T細胞集団よりも少なく、その状態は、転写レベルでの樹状細胞の活性化の阻害を伴っていた。Patakasは、アバタセプトはT−DC間のコミュニケーションを有意にモジュレートして欠陥細胞のプライミングをもたらすが、これはアネルギー性寛容とは相違すると結論付けている。
【0032】
Orban et al,Lancet 2011,Co−stimulation modulation with abatacept in patients with recent−onset type 1 diabetes:a randomised,double−blind,placebo−controlled trialには、アバタセプトが内因性インスリン分泌(被刺激Cペプチドによって測定される)を、最初の6ヶ月ではプラセボと比べて有意に保存することが報告されており、その後、プラセボ群と平行して低下する。この初期の有益な効果は、アバタセプトが共刺激性B80/86−CD28シグナルをブロックしてナイーブT細胞の活性化が抑制されることによるものと考えられる。6ヶ月後の連続的なβ細胞機能の低下は、疾患が進行するにつれてT細胞の活性化が連続的に減衰することによるものと推測された。
【0033】
Orbanは、ナイーブT細胞の活性化には2つのシグナルが必要である(一方は、APC上のMHC分子と関連して提示される抗原に含まれるものであるが;他方は、T細胞上のCD28分子を伴う共刺激シグナルである)と述べているが、この治験では特異的抗原は使用されなかった。これは、アバタセプトが最初は成功裡にナイーブT細胞の細胞傷害性T細胞への活性化を抑制するが、これは結局、免疫系の他の部分(例えば、IL−2の分泌の増大など)によって相殺および/または代償され得、これが起こったとき、特異的抗原に対する寛容性を誘発するための時間枠がなくなるという推測の根拠となり得る。
【0034】
その後、Orban et al,Diabetes Care 2013,Costimulation Modulation With Abatacept in Patients With Recent−Onset Type 1 Diabetes:Follow−up 1 Year After Cessation of Treatmentにより、薬物投与の中止後1年間の有益な連続的効果が報告されたが、活性物群とプラセボ間の差は小さくなった。したがって、処置の開始後36ヶ月目、>0.2nmol/lのピーク被刺激Cペプチドを有していたのは活性物群の患者では35%であったのに対し、プラセボ被験体では30%であった。DR3陰性患者にはアバタセプト処置の効果がないことが指摘された。
【0035】
上記の2つのOrbanの試験は、単独療法薬としてのアバタセプトの免疫調節が、最近発症した1型糖尿病患者において持続的なβ細胞機能保存効果をもたせるには充分でないことを示す。
【0036】
Verhagen et al,PLOS 2014,CTLA−4 Modulates the Differentiation of Inducible Foxp3+ Treg Cells but IL−10 Mediates Their Function in Experimental Autoimmune Encephalomyelitisでは、IL−10の存在が、Tregの抑制性効果を強化するために重要な因子であると結論付けられている。
【0037】
GAD65(グルタミン酸デカルボキシラーゼの65kdアイソフォーム)は、β細胞刺激に応答した放出の増大を伴って膵島内で産生されるため、主要なβ細胞自己抗原である。このタンパク質は、自己免疫の免疫プロセスに深く影響していることが示されている。数多くの試験により、GADは実験動物の糖尿病を予防し得ることが示されている。GADとウイルスタンパク質との類似性は治療作用に重要であり得る。観察された効果は、
免疫プロセスの開始後でさえ、ヒトにおいて同じ効果を期待することが可能であり得ることを示唆する。組換えGADを水酸化アルミニウム(ミョウバン)中でLADA患者のフェーズII試験において製剤化し、1つの低用量Diamyd 20μgを投与すると、2年間まででプラセボ処置群と比べてβ細胞機能の改善がもたらされ、副作用はなかった。また、他の用量も試した:4μgでは効果は示されず、100μgでは20μgと同様の効果が示されたが、500μgでは効果は示されなかった。CD4+CD25+細胞/CD4− CD25−細胞の比の変化との関連がみられ、この効果の機構を示す。この背景により、フェーズII試験を、10〜18歳の最近発症した1型糖尿病患者において実施した。患者を、20μgのGAD−ミョウバン(Diamyd)をscで1日目と30日目、またはプラセボのいずれかに無作為化した。効果は30ヶ月後もなお著明であり、明らかにどちらも統計学的および臨床的に有意であり、GAD処置群ではプラセボ群と比べてCペプチドの減少が約半分であった。糖尿病の期間が<3ヶ月である患者には著しく良好な効果を有し、最初の15ヶ月間の追跡中、β細胞機能の低下はないか、または最小限であった。さらに48ヶ月後、期間が<6ヶ月である処置患者は有意に保存されたCペプチドを有しており、有害事象はなかった。
【0038】
続いて、フェーズIII治験を欧州、米国において開始した。欧州での治験では、334人の患者を集めて3つの群に分け、1つの群にはGAD−ミョウバン(Diamyd)20μgを1、30、90および270日目、別の群にはGAD−ミョウバン20μgを1日目と30日目、およびプラセボを90日目と270日目、第3の群にはプラセボを1、30、90および270日目とした。プラスの傾向(trens)がみられた(16%有効性,p=0.1)が、一次エンドポイントである混合食負荷試験(MMTT)後15ヶ月目の血清CペプチドAUCは満たされなかった。これにより、フェーズIII治験の早期終了が促された。しかしながら、欧州のフェーズIII治験では、統計学的に有意な有効性が、事前に指定されたいくつかの亜群において示された。さらに、45人のスウェーデン人患者は試験終了時の30ヶ月目の来院時に合格であり、2回の20μg用量のGAD−ミョウバン(Diamyd)を投与した15人の患者では30ヶ月後、プラセボと比べてCペプチドの有意な保存が示された。これらのスウェーデン人患者では15ヶ月目に有効性がなかったが、非北欧患者では15ヶ月目に有効性がみられたことは注目に値することであった。一部有効ではあるが、GAD−ミョウバンは、1型糖尿病のための臨床的に有効な処置レジメンの一部となるためには、他の化合物と併用する必要があり得ると結論付けられた。
【0039】
Denes et al,Diabetes Technol Ther.2010,Autoantigens plus interleukin−10 suppress diabetes autoimmunityには、自己抗原グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65)の断片と融合された免疫調節性コレラ毒素Bサブユニット(CTB)または免疫抑制性サイトカインのインターロイキン−10(IL−10)を発現する組換えワクシニアウイルス(rVV)株は、独立して、NODマウスの1型(真性)糖尿病(T1DM)においてわずかに低レベルの免疫抑制をもたらし得るが、ワクシニアウイルス(VV)媒介性のCTB::GAD融合体とIL−10タンパク質の組合せは、より有効で永続的なT1DMの免疫療法ストラテジーであることを示すと報告された。
【0040】
つい最近、Robert et al,Diabetes.2014,Oral delivery of glutamic acid decarboxylase (GAD)−65 and IL10 by Lactococcus lactis reverses diabetes in recent−onset NOD miceにより、T1D自己抗原GAD65370−575ペプチドの分泌制御のためのLactococcus lactis(LL)生菌と抗炎症性サイトカインのインターロイキン−10を短期コースで低用量の抗CD3と併用して経口送達すると、最近発症したNOD
マウスにおいて機能性β細胞量が保存されることが示された。
【0041】
Skyler et al,Diabetes 2011,Stopping Type 1 Diabetes,Attempts to Prevent or Cure
Type 1 Diabetes in Man(これは、参考文献も含めて、その全体が本明細書に組み込まれる)の、免疫モジュレータと抗原特異的療法薬を伴う併用レジメンは、T1Dの長期持続性の処置の理論的根拠を示す。
【0042】
Staeva et al,DIABETES,VOL.62,JANUARY 2013,Recent Lessons Learned from Prevention and Recent−Onset Type 1 Diabetes Immunotherapy Trials(これは、参考文献も含めて、その全体が本明細書に組み込まれる)により、自己抗原と抗炎症性化合物を含む併用療法の現在の意見および推奨評価の当該技術分野の水準が報告されている。
【0043】
Skyler,DIABETES TECHNOLOGY & THERAPEUTICS,Volume 16,Supplement 1,2014,Immune Intervention for Type 1 Diabetes,2012−2013(これは、その全体が本明細書に組み込まれる)には、当該技術分野における最近の治験が概説されている。
【0044】
Rigby et al,Current Opinion Endocrinol Diabetes Obes 2014,21:271−278,Targeted immune interventions for type 1 diabetes:not as easy as it looks!(これは、参考文献も含めて、その全体が本明細書に組み込まれる)には、自己免疫性糖尿病に対処するための取り組みの多くが記載されており、何百人もの参加者によるほぼ12の治験にもかかわらず、単独療法はみられないこと、および:a)T1D患者の異なる部分母集団は免疫介入に対して異なった応答を示すようであり、有意な不均一性が示唆され;b)有効な治療は、Teff細胞の阻害(枯渇、抑制能の向上または両方により)を、Tregの刺激(頻度または機能の増大、例えば、炎症促進性環境の除去により)と併用するものでなければならず;これには、Teff枯渇剤、Tregブースター剤および抗原を含む組合せが必要とされ得ると結論付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の好ましい実施形態は特許請求の範囲の従属項に示している。
定義
本明細書で用いている用語および表現はすべて、本開示の文脈から任意の他の表現が明白でない限り、本出願の出願日において該用語および表現に対して当業者によって示される意味を有しているものとする。しかしながら、明瞭性重視のため、一部の用語および表現を以下に明示的に定義する。
【0057】
「自己抗原(“autoantigen”または“self−antigen”)」は、自己抗体と相互作用して免疫応答を引き起こす能力を有する内在性組織構成要素である。「β細胞自己抗原」は膵臓のβ細胞に由来する自己抗原である。
【0058】
「自己抗体」は、これが産生される生物体の自己抗原と反応する抗体である。
用語「ビタミンD」にはビタミンD
2およびビタミンD
3が包含される。「ビタミンDアナログ」としては、偏見はないが、エルゴカルシフェロール、ジヒドロタキステロール、アルファカルシドール、カルシトリオール、コレカルシフェロールおよびカルシフェジオール、ならびにその組合せ、ならびに解剖治療化学分類法(Anatomical Therapeutic Chemical Classification System)のグループA11CCに分類される任意の他のビタミンDアナログが挙げられる。
【0059】
用語「シクロオキシゲナーゼ阻害薬」または「cox阻害薬」は、シクロオキシゲナーゼと結合し、それにより、その基質−酵素のアラキドン酸との結合ならびにエイコサノイド、プロスタグランジンおよびトロンボキサンの形成を妨げる化合物に関するものである。シクロオキシゲナーゼ阻害薬の亜群はシクロオキシゲナーゼ−2阻害薬であり、これはシクロオキシゲナーゼ−2に対する特異性を有するものである。
【0060】
用語「TNFα阻害薬」は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)の作用を阻害する化合物に関するものであり、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、ならびに解剖治療化学分類法のグループL04ABに分類される任意の他の化合物が包含される。
【0061】
「エピトープ」は、免疫応答を誘起することができ、かつ該応答に対抗するために産生された抗体またはT細胞受容体と結合し得る抗原の表面部分である。
【0062】
用語「γ−アミノ酪酸アナログ」には、ビガバトリンおよびバクロフェンが包含される。
【0063】
単数形「a」、「an」などが使用された表現には複数が包含されていると解釈されたい。
【0064】
本明細書で用いる場合、「共投与」は、本発明のレジメンの複数の化合物を、それらの投薬レジメンが重なり合うように投与することをいう。該化合物は、同時に投与される必要はない。
【0065】
略語「T1D」は「1型糖尿病」を表す。
発明の詳細な説明
インスリンに対する第1の自己抗体が遺伝的に素因を有する個体において、例えば限定されないが、DR3−ハプロタイプ個体などにおいて出現し、他の自己抗体は検出されない場合のとき、これはGAD反応性のCD8+およびCD4+ TCがまだ活性化されていないことを意味し得、インスリンに対する自己免疫は相殺性機構によって自己消去される可能性が高いため、β細胞抗原の使用を伴わずに抗炎症薬および/またはリンパ球分化阻害薬だけで該疾患を完全に止める機会の時間枠がもたらされる。あるとしてもわずかであるGAD反応性の活性化CD4+ Tヘルパー細胞がまだ生成していないこの状況において、活性化を炎症促進性Th1型から避けるように指向することは重要である。GAD抗体陽性個体および/または糖尿病患者では、通常Th2駆動性アジュバントとみなされているミョウバン中で製剤化されたGADおよび他のβ細胞抗原が、抗原特異的寛容化目的のために添加され得る。これにより炎症促進性細胞よりも多くのTh2細胞とTregが生成し得るが、いくつかの要因、例えば、内部環境要因によって寛容化効果が無効にされ得る。したがって、自己抗原のTh2駆動性製剤を単独療法薬として使用することは充分でない場合があり得、本発明により、β細胞寛容化プロトコルを向上させるための組成物および併用レジメンを開示する。
【0066】
自己免疫疾患において単独療法薬、例えば、GADおよびインスリン抗原;抗炎症性化合物、例えばCD3、CD20に対する抗体;サイモグロブリン、アバタセプト、アレファセプトまたはTNFα阻害薬(エタネルセプトなど)を投与することにより免疫調節を誘導するためのこれまでの試みでは、ある程度の有効性は示されているが、疾患発現後のこの効果または該薬の有効性の持続期間は、このようなアプローチを臨床に至らせるためには限定的である。本発明により、種々の度合の効果がもたらされるようにVit D強化DCを自己抗原および抗炎症薬と相乗的に作用させる自己免疫疾患の処置および予防のための新規なストラテジーを開示する。
【0067】
したがって、本発明により、自己免疫疾患、例えば自己免疫性糖尿病の予防および/または処置のための手段(例えば、方法、組成物および併用)を提供する。
【0068】
本発明は、ビタミンD(Vit D)により未成熟樹状細胞(DC)が強化されてより寛容原性となるという知見(これは、これまで、任意の自己免疫疾患過程を改変するのに充分であると証明されていなかった)を利用するものであり、Vit Dの投与を前記自己免疫疾患と関連している自己抗原の投与とタイムリーな様式で併用し、かくして、投与された自己抗原の寛容原性免疫調節を強化するものである。
【0069】
充分なVit D血清濃度を有する被験体の免疫系にDCが自己抗原を提示する寛容原性環境をさらに向上させるため、本発明により、一般的な抗炎症性化合物を自己抗原と一緒に使用する併用レジメンがT1Dの処置および予防に適しているという所見を開示する。
【0070】
その潜在的相乗効果以外に、本発明の化合物の共投与の別の利点は、自己免疫障害は多くの場合、複数の自己抗原に対する自己免疫応答を含んでいるという問題に関するものである。自己攻撃性リンパ球のすべてを、そのすべてのコグネート抗原による直接的な抗原特異的寛容化を用いてアネルギー化または消去することを試みることは、コグネート抗原すべてがわかっているとは限らないため困難であり得る。例えば、1型糖尿病(T1D)は、ランゲルハンス島に進入してβ細胞を破壊する自己攻撃性リンパ球によって引き起こされると考えられている。かかる細胞の活性化は、おそらく、遺伝的素因、環境的誘因(ウイルスなど)およびたぶん、例えば局所炎症促進反応によって引き起こされる膵臓(膵島細胞)に対する損傷が関与している多因子性である。
【0071】
自己攻撃性プロセスは通常、糖尿病前症のヒト個体が膵島細胞抗体のスクリーニングに
よって認定されたときにはかなり進行しているため、該疾患のこの段階では、1種類より多くの膵島抗原に対する攻撃性応答が進行中であることが想定され得る。さらに、慢性的非特異的全身性免疫抑制は、この糖尿病に罹患しているのは多くの場合、若年個体であり、一生の免疫抑制はインスリン治療単独と比べても許容され得ない副作用を伴うため、選択肢とみなされない。
【0072】
したがって、特異性を有し、全身性副作用が少ない治癒的免疫ベース介入は非常に望ましい。本発明の化合物の共投与は、自己免疫障害の標的である多数の自己抗原に対する寛容性を再確立するのに充分であり得るため、本発明の方法により多数の自己抗原標的の問題が回避される。
【0073】
また、本発明の化合物の共投与により、連続的な一生の投薬を必要とすることなく長期寛容性が再確立され得るため、本発明の方法により慢性的非特異的全身性免疫抑制の問題も回避される。
【0074】
理論に拘束されないが、本発明により、本発明の化合物の共投与が、一部において、制御性T細胞(および制御性抗原提示細胞(APC)も)の活性化/増殖を誘発することにより、長期寛容性を相乗的に確立する潜在能を有するということを提供する。
【0075】
制御性T細胞のいくつかの異なる表現型が報告されている。これらは、胸腺摘出術後に発生し得るものであり、全身性免疫モジュレーション後に誘発され得る。そのエフェクター機能は完全にはわかっていない。これらは、免疫系の固有のバランスの一部であると思われ、その減少により重度の免疫調節異常および自己免疫がもたらされる。規定の抗原特異性を有するTh2様調節因子が報告されている。これは、バイスタンダー抑制因子として作用すると考えられ、抗原特異的免疫処置後に発生する。Homann et al.,J.Immunol.(1999)163:1833−8。そのエフェクター機能に応じて、これはTh3(TGF−βプロデューサー)と呼ばれていた。この細胞は、特殊なエフェクター機能を有する抗原特異的リンパ球であり、Th2細胞のような挙動を示さない。したがって、いわゆるTh1/Th2パラダイムをこの細胞に当てはめることは間違いをもたらし得る。
【0076】
バイスタンダー抑制は抗原拡延現象に関するものである。抗原拡延は、局所自己免疫過程の進行中の必須要素であると考えられている。したがって、患者がいくつかの自己抗体を有する場合、自己攻撃性応答は多くの自己抗原(“self−antigen”または“autoantigen”)を伴うものであり得ることが想定され得る。自己抗原のほとんどは特定の自己免疫障害に対して同定され得るものでないため、各自己攻撃的特異性を、それぞれのMHC拘束要素とペプチドの知識を伴う治療レジメンで寛容化することは可能でない。本発明の方法による制御性細胞の誘導は、この状況においていくつかの利点を有する。例えば、T1Dにおける制御性T細胞はリンパ節および膵島においてバイスタンダー抑制因子として局所作用し得ることが知られており、これは、該細胞が、他の自己抗原特性を有する攻撃性のリンパ球を抑制し得ることを意味する。これは、抗原提示細胞(APC)のモジュレーションによって、例えば、免疫モジュレーション機能を有するサイトカインの分泌によって起こり得る。したがって、かかるバイスタンダー抑制因子である制御性T細胞により、厳密な特異性がわかっていないいくつかの他の自己抗原に対する自己攻撃が緩和され得る。
【0077】
遺伝的に素因を有する個体において豊富な第1の抗原または自己抗原、例えばインスリンなどに対する第1の自己抗体が存在するが、少なくとも1種類のさらなる第2の隔離(あまり豊富でない)自己抗原(1種類または複数種)に対する自己抗体は検出されないことは、発生中の潜在性疾患過程をその途中で、抗炎症手段および/またはリンパ球分化阻
害薬だけを用いて止める機会の時間枠が与えられ得る。実際、かかる弱い第1の自己抗原に対する炎症性応答は、胸腺でのクローン的消去プロセスからの逸出した比較的少数のインスリン特異的自己反応性CD8+およびCD4+ T細胞(TC)によって増幅され得るため、炎症は減衰され得、前記第1の抗原が、一部の実施形態において、他のおそらくより隔離型または一般的でない自己抗原に対する寛容性を誘発する寛容原として使用され得、これに対して、より多くの逸出した自己反応性CD8+およびCD4+ナイーブT細胞(TC)が活性化に利用可能になる。
【0078】
より強力な自己抗原(例えば、自己免疫性糖尿病の場合のGAD65など)であって、疾患過程を駆動し得る自己抗原に対して自己免疫が誘発される状況では、活性な寛容化の誘導のための前記強力な自己抗原を使用することなく、抗炎症手段および/またはリンパ球分化阻害薬だけを使用することが充分でない場合があり得る。他方で、1種類の強力な自己抗原のみ、例えば、通常Th2駆動性アジュバントとみなされている水酸化アルミニウム(ここでは、「ミョウバン」)などのアジュバント中で製剤化されたGAD65のみの使用は、制御性成分の活性化だけでなく、炎症促進性および/または細胞傷害性の分子および細胞、限定されないが、自然免疫系に属する分子、マクロファージ、樹状細胞、B細胞(BC)、T細胞(TC)または寛容化の相殺に寄与し得る他の要素(例えば、環境的要素)の活性化ももたらし得る。さらに、他の低Th2駆動性アジュバント製剤、例えば生理食塩水またはヒト血清アルブミンを使用してもよい。したがって、1種類の自己抗原の製剤を単独療法薬として使用することは充分でない場合があり得、本発明により、ミョウバン、生理食塩水またはヒト血清アルブミン中で製剤化されて投与された自己抗原の特異的寛容化効果を向上させるために、少なくとも2種類の自己抗原を使用する組成物および方法を開示する。
【0079】
本発明により、一態様において、少なくとも1種類の抗原を含む少なくとも1種類の医薬組成物を提供する。したがって、本発明による該少なくとも1種類の医薬組成物は、一部の実施形態において少なくとも2種類の抗原を含むものであり得る。他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の組成物は少なくとも3種類の自己抗原を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の組成物は少なくとも4種類の自己抗原を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該抗原は別々の組成物に製剤化され得る。本発明による抗原のすべてが同じ組成物に製剤化されることが最も好ましい。一部の実施形態では、抗原はすべて自己抗原であり、他の一部の実施形態では、一部または全部の抗原が、免疫系による制御性応答が発生した対象の抗原(寛容原)であり、それにより他の自己抗原に対する反応に寛容様式で影響を及ぼし得るものである。
【0080】
本発明の主題は、自己免疫疾患において攻撃されている自己構造物に対する寛容性の誘導を可能にする組成物、レジメンおよび方法を開示することである。特定の一実施形態では、少なくとも2種類の抗原を1つの担体粒子に会合させ、かくして、適応免疫系の1つの免疫細胞を、前記免疫細胞に対して種々の影響を有する該少なくとも2種類の抗原に曝露すると、自己免疫攻撃を受ける自己構造物に対する応答の改良がもたらされる。
【0081】
タンパク質抗原またはペプチド抗原を、免疫系が反応する対象の担体粒子に吸着、結合または封入させ、該粒子をヒト組織内に、例えば皮下注射によって挿入することにより、該タンパク質またはペプチドが免疫系による取込みのために標的化され得る。同様に、この取込みは樹状細胞またはマクロファージ(抗原提示細胞,APC)によっても行なわれる。このプロセスで取り込まれたタンパク質またはペプチドの一部がHLA(MHC)タンパク質によって適応免疫系に提示され、続いて適応免疫反応が起こる。適応応答は、自然免疫系の活性レベルに影響され、また、このプロセスにおいてHLAタンパク質によって提示された任意の抗原に対して存在する免疫応答に影響される。このような影響性タン
パク質は、該粒子に結合させたペプチドもしくはタンパク質、または同じプロセスにおいて取り込まれて提示された天然タンパク質、自己抗原もしくは寛容原(免疫系が寛容原性様式で反応する対象の抗原)であり得る。これらのタンパク質が同じ免疫細胞によって取り込まれた場合、これらは一緒に、HLAタンパク質によって細胞表面上に提示される。
【0082】
免疫系に対する非天然ペプチドの提示は、組織破壊に応答した自然免疫系からのシグナルの影響によるものであり、Th2の特徴であり得る。内因的抗原、例えば、自己抗体およびRNAヌクレオチドなども同じことをし得る。天然タンパク質、または応答が既に存在しているタンパク質は、適応免疫細胞によるシグナル伝達を始動させ、これが免疫応答全体に影響を及ぼし、寛容原性シグナルまたは既に存在しているTh1反応を活性化させる可能性があり得る。注射処置によって、およびナイーブ免疫細胞と抗原提示免疫細胞の相互作用によって誘導されたシグナル伝達が既に存在している応答よりも強い場合、新たな免疫応答、例えば記憶が形成される。
【0083】
同じ粒子担体上に存在させたタンパク質の組合せが注射され、同じAPCによって取り込まれて提示された場合、相互作用する対象の考えられ得る適応免疫細胞の数が増え、該タンパク質のうちの1つに対して起こり得る既に存在している反応ではなく、新規な免疫反応の形成の機会の増大がもたらされることにより、効果は相加的になる。
【0084】
タンパク質自己抗原を、免疫応答が既に存在している別のタンパク質(天然または外来)と一緒に同じ粒子担体にて注射した場合、該抗原に対する免疫応答は、この同伴抗原に対する応答(既に免疫系が確立されている)によって大きく影響される。同伴抗原が、対象の中枢性制御性T細胞が存在している天然タンパク質(例えば、IL10、インスリン、ヒト血清アルブミン、ヘモグロビンなど)である場合、応答は寛容方向に駆動される。このようなタンパク質が、既に人に免疫処置された抗原である場合(これは、ジフテリア(Diptheria)または破傷風トキソイドによくある)、免疫応答は、このような存在している反応(これは、たいてい炎症性反応である)に影響される。
【0085】
本発明は、本発明の化合物の共投与によって自己免疫を処置するため、および/または寛容性を確立もしくは誘発するための方法を包含している。自己免疫疾患の他に、本発明の方法はまた、アレルゲンに対する寛容性を確立するためにも使用され得、この場合、アレルギー性のペプチドまたはタンパク質が本発明の化合物と共投与され、ここで、抗原は、自己抗原ではなく、そのアレルギー性疾患に特異的なアレルゲン(抗原)である。
【0086】
一態様に関して本明細書に示した詳細事項、特に、自己抗原、影響抗原、IL−10誘発性化合物、ならびにナイーブTCおよびBCを活性化させ、活性化された記憶リンパ球による応答をリコールさせる免疫系の能力を低下させる化合物、投与のタイミングおよび様式に関する詳細事項は、必要な変更を加えて本発明の他のすべての態様に適用されることは理解されよう。
【0087】
方法
一態様において、本発明は、少なくとも1種類のβ細胞自己抗原を含む組成物を、50ナノモル/リットルより上の血清ビタミンDレベルを有する被験体に投与することを含む、自己免疫疾患の予防および/または処置のための方法に関する。したがって、少なくとも2種類の該分子の各々が、該抗原が提示される適応免疫細胞の反応に影響を及ぼし得る。
【0088】
被験体は、50〜150ナノモル/リットル、例えば60〜100ナノモル/リットル、75〜100ナノモル/リットルまたは100〜150ナノモル/リットルの血清ビタミンDレベルを有する被験体であり得る。
【0089】
該方法は、血清ビタミンDレベルを調整するための被験体の前処置を含むものであってもよく、かかる前処置は、少なくとも1種類のβ細胞自己抗原を含む組成物を前記被験体に投与する前に好ましくは7〜90日間のビタミンDおよび/またはビタミンDアナログの投与および/またはUVB線への曝露を含むものであり得る。
【0090】
該方法にはさらに、7000〜70000IU/週の量の3〜48ヶ月のビタミンDおよび/またはビタミンDアナログの投与が含められ得る。
【0091】
β細胞自己抗原は、見出し「自己抗原」で以下に論考しているようなβ細胞自己抗原であり得る。
【0092】
該方法にはさらに、見出し「シクロオキシゲナーゼ阻害薬」で以下に論考しているようなシクロオキシゲナーゼ阻害薬の投与が含められ得る。
【0093】
該方法にはさらに、見出し「CTLA4化合物」で以下に論考しているようなCTLA4化合物の投与が含められ得る。
【0094】
該方法にはさらに、見出し「TNFα阻害薬」で以下に論考しているようなTNFα阻害薬の投与が含められ得る。
【0095】
本発明により、自己免疫疾患の予防および/または処置を、それを必要とする個体において行なうための方法であって、前記個体に:
a)特異的抗原寛容化目的で、上記に列挙した自己免疫性疾患および炎症性疾患のうちの少なくとも1つと関連している少なくとも1種類の自己抗原もしくはその断片;またはかかる分子をコードしている核酸、プラスミドもしくはベクター。一実施形態では、自己抗原は、血清ビタミンDレベルが50〜150nM/l、より好ましくは75〜100nM/l、最も好ましくは100〜150nM/lである場合に投与される;および
b)APCの成熟能に干渉するため、前記個体に、ビタミンD、ビタミンDアナログ、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸アナログおよびチロシンキナーゼ阻害薬からなる群より選択される;上記に列挙した少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物を投与すること。一実施形態において、IL−10誘導はUVB光露光の使用によって向上または達成される;および
c)ナイーブTCおよびBCを活性化させ、活性化された記憶リンパ球による応答をリコールさせる免疫系の能力に干渉するため、NSAID化合物;CTLA−4化合物;またはTNFα阻害薬などの;上記に列挙した化合物を投与すること
を施すことを含む方法を提供する。
【0096】
本発明は、一部の態様において、自己免疫疾患、例えば1型糖尿病(T1D)および自己免疫性糖尿病の予防および/または処置のための方法に関する。
【0097】
本発明により、自己免疫疾患、例えばT1Dおよび自己免疫性糖尿病の処置のための方法であって、前記疾患を有する被験体に:
(a)抗原ペプチドを免疫系に寛容化様式で提示する抗原提示樹状細胞の能力を強化するためのVit D過程;
b)医薬用担体中で製剤化され、自己抗原に対する寛容性が回復または誘導されるのに充分な量で投与される自己抗原(例えばGAD65);および任意選択で、
c)治療用量の抗炎症性化合物、例えば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬(イブプロフェンなど)、またはより顕著なcox−2もしくはcox−1阻害薬
を投与することを含む方法を開示する。
【0098】
Vit D過程は好ましくは、自己抗原の投与の15〜90日前または自己抗原の投与の7〜90日前に開始され、液状剤または錠剤の形態で、1週あたり7000〜70000iuに相当する用量で3〜48ヶ月間投与される。
【0099】
ビタミンDでの前処置は、処置対象の被験体のビタミンDの血清レベルを約50ナノモル/リットルより上、または60、75もしくは100ナノモル/リットルより上まで上げることが目的である。被験体が既にこのレベルのビタミンDの血清レベルを有している場合、前処置を省いてもよい。
【0100】
本発明の別の実施形態では、Vit Dの血清濃度は光線療法によって向上され得る。この場合、被験体を、自己抗原の投与の15〜90日前に紫外線B波に好ましくは10〜120分間、毎日曝露する。光線療法は3〜48ヶ月間継続するのがよい。
【0101】
自己抗原の好ましい用量は、2〜4回の投与で少なくとも2週間空けて、より好ましくは1ヶ月空けて、注射によって投与する場合は各々、10〜200μgの抗原である。経口投与する場合は、好ましい用量は500mg〜5gを毎日、3ヶ月〜48ヶ月間である。イブプロフェンは好ましくは100〜800mgの日用量で60〜150日間投与され、この間に自己抗原の投与が行なわれる。
【0102】
自己抗原は、リンパ管内注射、リンパ節内への直接注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、鼻腔内、経粘膜もしくは舌下適用;あるいは経口、例えば、錠剤、ペレット剤、顆粒剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性の液剤、懸濁剤、乳剤、スプレー剤としての投与、または乾燥粉末化形態を液体媒体で再構成したものとしての投与によって投与され得る。抗炎症性化合物と自己抗原は、医薬的に許容され得る担体、賦形剤または希釈剤中/医薬的に許容され得る担体、賦形剤または希釈剤とともに投与され得る。
【0103】
本発明の一実施形態において、およびT1Dの処置または予防の場合、自己抗原の注射は、自己抗原ペプチドを膵臓のリンパ節に提示するAPC細胞の輸送の増大が可能になるように胃の片側領域または両側領域の皮下に行なわれる。
【0104】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原は、例えば、膵臓の排出リンパ節付近の胃の部分の皮下に投与される。一部の実施形態では、抗原の皮下注射容量は0.2〜2ml、より好ましい0.4〜0.6mlである。
【0105】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原は皮内注射によって投与される。
【0106】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の抗原が「ワクチン様」様式での皮下注射によって投与される場合、各場合の処置1回あたり少なくとも4〜250μg、より好ましくは10〜100μg 最も好ましくは10〜50μgの用量の該少なくとも1種類の各抗原が投与される。
【0107】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の抗原が「アレルギー様」様式での皮下注射によって投与される場合、使用される各自己抗原は種々の漸増投薬量スケジュールで使用され得る。かかる方法は、β細胞自己抗原を増大用量で数週間、数ヶ月間または数年間にわたって投与することを含むものであり得る。
【0108】
一実施形態では、β細胞自己抗原を含む組成物は、3〜4ヶ月間の最初の処置期間では
1〜4週間空けて、例えば2〜4週間空けて、または2週間空けて、任意選択で、6〜9ヶ月間の連続処置期間では2〜3ヶ月空けて投与される。
【0109】
一実施形態では、β細胞自己抗原の量を、処置期間の開始時の1回の投与あたり1〜5μgから最終投与において1回の投与あたり約40〜100μgまで増大させる。
【0110】
一実施形態では、該方法は漸増用量のβ細胞自己抗原(例えば、GAD65)の皮下注射を含むものであり、ベースライン(1ヶ月目)から開始して以下のとおり:0.4;0.8;2;3.2;4;6.4;8;12;16;20;24、32、40μgの自己抗原が毎週、それ以降は、40μgの自己抗原が15週目から27週目まで2、4および8週間間隔で投与される。その後は、40μgの自己抗原が8〜12週間毎に1年間投与される。ビタミンDは上記のとおりに投与され得る(1日目から)。
【0111】
好ましい投薬レジメンの一例は、1μg、5μg、20μg、50μgの漸増自己抗原用量で各用量を4週間空けて2回ずつの注射を含むものであり、これは28週間のGAD−ミョウバンでの処置であり得る。択一的に好ましい投薬スケジュールの一例は、例えば、0、15、30、45、60日目に4μg、8μg、16μg、20μg、40μgの漸増用量、続いて120、180、270日目に40μgを含むものである。
【0112】
本発明の一実施形態において、自己抗原の投与は、リンパ節内またはリンパ系内に直接行なわれ、存在するAPCに抗原ペプチドを免疫系に提示させる。自己抗原の投与が直接、リンパ節内またはリンパ系内に行なわれる場合、用量は、好ましくは各自己抗原につき1〜15μg、各自己抗原につきより好ましい2〜10μgまたは各自己抗原につき2〜5μgである。ミョウバン中の製剤が好ましい。
【0113】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原は鼠径部内、リンパ節内またはリンパ管内投与される。一部の実施形態では、抗原の鼠径部内注射容量は0.05〜0.2ml、より好ましい0.05〜0.15mlである。
【0114】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の抗原がリンパ節内またはリンパ管内注射によって投与される場合、好ましい投薬量は、使用される自己抗原ごとの注射1回あたり1〜15μg、より好ましい2〜10、最も好ましい2〜5μgであり、かかる投与は少なくとも2回、より好ましい少なくとも3回、最も好ましい少なくとも4回、少なくとも14日間空けて、より好ましくは少なくとも30日間空けて行なわれる。
【0115】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の抗原が静脈内投与される場合、少なくとも100〜10000μgの各抗原が、各場合の処置1回あたり少なくとも2回、少なくとも1週間空けて投与される。
【0116】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の抗原が経口投与される場合、少なくとも0.5〜5gの各抗原が各場合の処置1回あたり少なくとも1回、毎週投与される。
【0117】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の抗原は別々に、またはその他の抗原と一緒に、場合に応じてミョウバン、生理食塩水またはヒト血清アルブミン中で製剤化される。
【0118】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の医薬組成物は、少なくとも2種類の抗原を同じ担体粒子上に含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の医薬組成物は、少なくとも2種類の抗原を異なる担体粒子上に含むもの
である。一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも2種類の抗原は別々に、異なる時点および頻度で、具体的な抗原に適したレジメンおよび製剤で投与される。より好ましくは、該少なくとも2種類の抗原は同じ医薬組成物中に製剤化され、したがって同時に投与される。
【0119】
一部の実施形態では、該少なくとも1種類の抗原は、ミョウバンなどのアジュバント中で製剤化される。より具体的な実施形態では、該少なくとも1種類の抗原は生理食塩水またはヒト血清アルブミン中で製剤化される。
【0120】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の抗原と該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は同時に投与される。一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の抗原と該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は別々に投与される。
【0121】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は該少なくとも1種類の抗原と同時に投与される。一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物の投与は、該少なくとも1種類の抗原の最初の投与の1〜14日間前に開始される。一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物の投与は、該少なくとも1種類の自己抗原の最初の投与の少なくとも2週間前、好ましくは少なくとも10週間前に開始される。
【0122】
ビタミンDでの処置期間を含む一部の特定の実施形態によれば、1日あたり500〜10000IU、より好ましくは1000〜3000IUのビタミンD、例えばビタミンD3が投与される。
【0123】
ビタミンDでの処置期間を含む一部の特定の実施形態によれば、1週あたり7,000〜100,000IUのビタミンD、例えばビタミンD3が該少なくとも1種類の抗原の最初の投与の前に、その後は1日あたり500〜2000IUの維持用量として投与される。
【0124】
一部の実施形態では、ビタミンDでの処置期間は最初の抗原投与後60〜420日間である。
【0125】
ナイーブTCおよびBCを活性化させ、活性化された記憶リンパ球による応答をリコールさせる免疫系の能力を低下させる化合物、例えばNSAID化合物;CTLA−4化合物;またはTNFα阻害薬は、該少なくとも1種類の抗原および/または該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物と同時に投与してもよく、これらとは別々に投与してもよい。
【0126】
一部の実施形態では、ナイーブTCおよびBCを活性化させ、活性化された記憶リンパ球による応答をリコールさせる免疫系の能力を低下させる化合物はNSAID化合物、例えばCOX−阻害薬である。
【0127】
一部の特定の実施形態によれば、NSAIDでの処置期間は、該少なくとも1種類の抗原の最初の投与の少なくとも2週間前に開始する。
【0128】
一部の特定の実施形態によれば、COX阻害薬がイブプロフェンである場合、NSAID処置期間中、1日あたり少なくとも1回の400〜1000mg用量が投与される。
【0129】
NSAID処置期間は少なくとも4〜14週間、より好ましい4〜8週間である。
本方法において、抗炎症性化合物は経口または注射によって投与するのがよい。
【0130】
一部の実施形態では、ナイーブTCおよびBCを活性化させ、活性化された記憶リンパ球による応答をリコールさせる免疫系の能力を低下させる化合物はTNFα阻害薬である。
【0131】
TNFαがブロックされると、免疫応答の活性化状態が低減され、DCおよび他の免疫細胞の活性が低下する。さらに、TNFαは、リンパ系組織内のFSCおよびGCの構造を崩壊させ、B細胞機能を障害するため、抗原特異的エフェクターT細胞の活性化および自己抗体の産生が低減される。糖尿病の最近の前臨床データは、休止DCによって送達されたβ細胞抗原により、末梢性T細胞不応答が誘導され、進行中のβ細胞破壊が下方調節され、β細胞破壊が停止され得ることを示す。したがって、自己抗原−TNFα阻害薬の併用療法下では、自己抗体レベルおよびエフェクターT細胞の活性と数は比較的低下するが、自己抗原特異的Tregの数と機能は少なくとも維持される(maintained
maintained)。このような免疫学的プロセスが修正され、このような効果が記録されるには数ヶ月かかるが、この期間中、その急性のβ細胞保護効果および代謝性効果のため、TNFα阻害によってもまた、β細胞が直接、保存される。GAD65はT1DMの主要自己抗原の1つであることが知られているため、このアプローチにより、糖尿病の自己免疫応答の充分な最小必要量の制御性表現型への逸脱がもたらされ、β細胞の保存に対して有意な長期的効果がもたらされる。
【0132】
したがって、本発明の一態様において、TNF−α阻害薬、限定されないが例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブおよびエタネルセプトが抗炎症性化合物として使用される。エタネルセプトが使用される場合の好ましい用量は0.2〜1mg/kg
SQで1週間に1回または2回を2〜9ヶ月間である。
【0133】
一部の特定の実施形態によれば、TNFα阻害薬がエタネルセプトである場合、FDA承認投薬量である0、2および6週目に5mg/kgが好ましい。別の実施形態では、用量はフェーズIのTNFα阻害薬単独療法治験で使用されるものと同じ(0.4mg/kg(最大25mg)SQで週2回×26週間)である。最も好ましい別の実施形態では、2回だけの用量が最大25mg/投薬で、ビタミンDと自己抗原を含む併用処置レジメンにおいて使用される。
【0134】
一部の特定の実施形態によれば、TNFα阻害薬は、該少なくとも1種類の抗原の最初の投与の前に投与される。
【0135】
一部の実施形態では、ナイーブTCおよびBCを活性化させ、活性化された記憶リンパ球による応答をリコールさせる免疫系の能力を低下させる化合物はCTLA−4化合物、例えばアバタセプトである。具体的な実施形態によれば、該化合物がアバタセプトである場合、各場合の処置1回あたり少なくとも2〜20mg/kg用量のアバタセプトが投与され、該少なくとも1種類の抗原の最初の投与の時点の前後+/−7日以内に開始される。
【0136】
一部の特定の実施形態によれば、CTLA−4化合物は、該少なくとも1種類の抗原の最初の投与と同時に投与される。
【0137】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の抗原と、ナイーブTCおよびBCを活性化させ、活性化された記憶リンパ球による応答をリコールさせる免疫系の能力を低下させる化合物の投与は、14、28および45日目に、TC上のCD28のブロックが確実となり得るように場合に応じて+/−1週間で繰り返され、この場合、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物の最初の投与を1日目とする。
【0138】
一態様において、本発明により、T1Dと関連している1つ以上の症状を処置するための方法を提供する。T1Dと関連している症状としては、限定されないが、インスリン産生の低下、インスリン感受性の低下、高い血中グルコースレベル、インスリン産生細胞の破壊、および異常なCペプチドレベルが挙げられる。
【0139】
本発明の方法は、T1Dの処置および予防だけでなく、一般的に自己免疫性の疾患および障害の処置および予防にも関するものであり得る。例えば、グレーブス病、橋本甲状腺炎、低血糖症、多発性硬化症、混合型本態性クリオグロブリン血症、全身性エリテマトーデス(erthematosus)、関節リウマチ(RA)、セリアック病、T1D、またはその任意の組合せに苦しんでいる被験体。このような場合、該疾患に対して、該当する自己抗原が自己抗原として処置方法に含められる。本発明の一態様において、被験体は、抗原特異性を有するT細胞もしくはB細胞が関与している自己免疫応答、または自己抗原に対するT細胞受容体(TCR)抗原特異性もしくはB細胞受容体(BCR)抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)および/またはB細胞が関与している自己免疫応答に苦しんでいる被験体である。
【0140】
一部の特定の実施形態によれば、本発明により処置される個体は哺乳動物である。具体的な実施形態によれば、本発明により処置される個体はヒトである。一部の特定の実施形態によれば、本発明により処置される個体は幼児である。具体的な実施形態によれば、本発明により処置される個体は青年期のヒトである。具体的な実施形態によれば、本発明により処置される個体は成人のヒトである。
【0141】
一部の実施形態では、処置対象の被験体であるヒトは4歳より上である。
他の実施形態では、処置対象の被験体であるヒトは8歳以上である。
【0142】
他の実施形態では、処置対象の被験体であるヒトは10歳以上である。
一部の実施形態では、処置対象の被験体であるヒトは18歳以下である。
【0143】
一部の実施形態では、処置対象の被験体であるヒトは4〜10歳、または4〜18歳、または8〜18歳、または10〜18歳である。
【0144】
他の実施形態では、処置対象の被験体であるヒトは18歳以上である。
一部の実施形態では、処置対象の被験体であるヒトは18〜30歳である。
【0145】
組成物
本発明ではまた、各々の表面上に少なくとも1種類の第1の抗原と少なくとも1種類の第2の抗原が固定化された複数の粒子を含む組成物であって、第1の抗原がβ細胞自己抗原であり、第2の抗原が寛容原またはβ細胞自己抗原のいずれかであり、さらに任意選択で、医薬的に許容され得るアジュバント、賦形剤、溶媒および/またはバッファーを含む組成物も開示する。
【0146】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原はアジュバント中で製剤化される。具体的な実施形態によれば、アジュバントはミョウバンである。他の具体的な実施形態では、該少なくとも1種類の抗原は、生理食塩水中またはヒト血清アルブミン中で製剤化される。より具体的な実施形態では、自己抗原は、プラスミドとして、またはウイルスベクター(アデノ随伴ウイルスベクターもしくは単純ヘルペスウイルスベクターなど)にコードさせて投与され得る。
【0147】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原は、以下に論考するも
のである。
【0148】
本発明による組成物は、1種類より多くの自己抗原を含むものであってもよい。したがって、一部の特定の実施形態によれば、該組成物は少なくとも2種類の自己抗原を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該組成物は少なくとも3種類の自己抗原を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該組成物は少なくとも4種類の自己抗原を含むものである。
【0149】
したがって、具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともGAD(例えばGAD−65)とインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともインスリノーマ抗原−2とインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともZnT8とインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともIGRPとインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともクロモグラニンAとインスリンを含むものである。
【0150】
他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともGAD(例えばGAD−65)とB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともインスリノーマ抗原−2とB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともZnT8とB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともIGRPとB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともクロモグラニンAとB鎖インスリンを含むものである。
【0151】
他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともGAD(例えばGAD−65)とプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともインスリノーマ抗原−2とプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともZnT8とプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともIGRPとプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともクロモグラニンAとプロインスリンを含むものである。
【0152】
他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともインスリンとB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともインスリンとプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともB鎖インスリンとプロインスリンを含むものである。
【0153】
具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともGAD(例えばGAD−65)と、インスリンとB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともGAD(例えばGAD−65)と、インスリンとプロインスリンを含むものである。さらに他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともGAD(例えばGAD−65)と、B鎖インスリンとプロインスリンを含むものである。さらに他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともインスリンと、B鎖インスリンとプロインスリンを含むものである。
【0154】
他の具体的な実施形態によれば、該組成物はGAD(例えばGAD−65)、インスリン、B鎖インスリンおよびB鎖インスリンを含むものである。
【0155】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原、例えば少なくとも2種類の該自己抗原または少なくとも3種類の該自己抗原はアジュバント中で製剤化される
。
【0156】
自己抗原は、水酸化(hydroxid)アルミニウム、MAS−1、ヒト血清アルブミン、脂質乳剤などのアジュバント中で製剤化され得る。
【0157】
具体的な実施形態によれば、アジュバントはミョウバンである。
一実施形態では、本発明は、
i)少なくとも1種類のβ細胞自己抗原と、
iia)ビタミンD、ビタミンDアナログ、チロシンキナーゼ阻害薬、γ−アミノ酪酸およびγ−アミノ酪酸アナログからなる群より選択されるIL−10誘発性化合物;ならびに
iib)ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害薬、CTLA−4化合物またはTNFα阻害薬
のうちの少なくとも1種類;
と、任意選択で、医薬的に許容され得るアジュバント、賦形剤、溶媒および/またはバッファーと
を含む組成物に関する。
【0158】
また、本発明により、i)少なくとも1種類の自己抗原と、ii)少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物とを含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0159】
より具体的には、本発明により、i)インスリン、B鎖インスリン、プロインスリンおよびβ細胞自己抗原からなる群より選択される少なくとも1種類の自己抗原と、ii)ビタミンD、ビタミンDアナログおよびチロシンキナーゼ阻害薬からなる群より選択される少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0160】
本発明による組成物は、1種類より多くのIL−10誘発性化合物を含むものであってもよい。したがって、一部の特定の実施形態によれば、該組成物は少なくとも2種類のIL−10誘発性化合物を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該組成物は少なくとも3種類のIL−10誘発性化合物を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該組成物は少なくとも4種類のIL−10誘発性化合物を含むものである。
【0161】
したがって、具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDとチロシンキナーゼ阻害薬を含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDアナログとチロシンキナーゼ阻害薬を含むものである。
【0162】
より具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDとダサチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDとボスチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDとサラカチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDとイマチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDとスニチニブを含むものである。
【0163】
より具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDアナログとダサチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDアナログとボスチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDアナログとサラカチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDアナログとイマチニブを含むもの
である。他のより具体的な実施形態によれば、該組成物は少なくともビタミンDアナログとスニチニブを含むものである。
【0164】
一部の特定の実施形態によれば、該組成物は、さらに、iii)ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害薬、CTLA−4化合物またはTNFα阻害薬を含むものである。
【0165】
具体的な実施形態によれば、かかる化合物はシクロオキシゲナーゼ阻害薬、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。より具体的な実施形態によれば、NSAIDは、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸、サルサラート(ジサルシド)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびニメスリドからなる群より選択される。
【0166】
本発明の一実施形態において、タンパク質抗原/ペプチド抗原またはタンパク質抗原/ペプチド抗原の組合せを含む少なくとも1種類の該組成物は、個々のGMP作製タンパク質/ペプチド溶液を一緒に製剤化バッファー中に混合することにより製剤化される。合わせたタンパク質溶液は次いで、密閉された製剤化槽内にて定常混合下で滅菌濾過され、その後、滅菌されたアジュバント溶液がこの製剤化槽に添加される。このタンパク質含有粒子は、次いで無菌的に、滅菌および脱パイロジェン処理された注射液ガラスバイアルまたはプレフィルドシリンジに添加され、密封される。タンパク質吸着製品は、各バイアルから注射のために患者または被験体の組織内に無菌的に吸引され得る。
【0167】
製剤中で合わされるタンパク質の割合はさまざまであり得るが、最も好ましいのはグラム重量基準で等割合である。使用する場合、影響抗原(Influencing Antigen)の割合は、その他の抗原タンパク質またはペプチドの合計質量と少なくとも同等であるのがよい。影響抗原の割合は、その他の抗原の合計質量より多くてもよい。製剤化バッファーは等張性リン酸緩衝マンニトールバッファーであり得る。アジュバントは水酸化アルミニウム(ミョウバン)、リポソーム、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)微粒子または生理食塩水であり得る。
【0168】
本発明による医薬、医薬組成物または治療的併用は、ヒトおよび/または動物、好ましくはヒト、例えば幼児、小児および成人への適用に適した任意の形態であり得、当業者に知られた標準的な手順によって作製され得る。医薬、(医薬)組成物または治療的併用は、例えば、“Pharmaceutics:The Science of Dosage Forms”,第2版,Aulton,M.E.(編)Churchill Livingstone,Edinburgh(2002);“Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”,第2版,Swarbrick,J.およびBoylan 15 J.C.(編),Marcel Dekker,Inc.New York(2002);“Modern Pharmaceutics”,第4版,Banker G.S.およびRhodes C.T.(編)Marcel
Dekker,Inc.New York 2002 y “The Theory and Practice of Industrial Pharmacy”,Lachman L.,Lieberman H.およびKanig J.(編),Lea &
Febiger,Philadelphia(1986)の内容の表により当業者に知
られた標準的な手順によって作製され得る。それぞれの記載内容は引用により本明細書に組み込まれ、本開示の一部を構成する。用語「医薬」、「医薬組成物」および「医薬用製剤」は互換的に使用され得る。
【0169】
本発明による医薬、医薬組成物または治療的併用にはさらに、1種類以上の医薬的に許容され得る賦形剤が含められ得る。本発明による医薬、医薬組成物または治療的併用の調製に適した担体、希釈剤および賦形剤は、例えば、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”第6版、Raymond C.Rowe、Paul J.SheskeyおよびMarian E Quinn(編),American Pharmaceutical Association(2009年7月)(これは引用により本明細書に組み込まれ、本開示の一部を構成する)により当業者によく知られている。
【0170】
自己抗原
本発明による方法、組成物およびキットにおける使用に適した自己抗原はβ細胞自己抗原である。
【0171】
このようなものとしては:グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65もしくはGAD67もしくはGAD32)(Baekkeskov et al.,Nature(1990)347:151));インスリン(Palmer et al.,Science(1983)222:1337);例えば,インスリンB鎖の9〜23位のアミノ酸を含むB9−23ペプチド(Daniel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)93:956−960;Wong et al.,Nat.Med.(1999)5:1026−1031)プロインスリン;例えば,プロインスリンB鎖のCペプチド接合部にまたがる24〜36位のアミノ酸を含むB24−C36ペプチド(Chen et al.,J.Immunol.(2001)167:4926−4935;Rudy et al.,Mol.Med.,(1995)1:625〜633);HSP60(ヒートショックプロテイン60,Raz et al.,Lancet(2001),358:1749−53);ICA512/IA−2(膵島細胞抗原512;Rabin et al.,J.Immunol.(1994)152:3183)、インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、クロモグラニンA、B鎖インスリン、プレプロインスリン、プロインスリンII、細胞傷害性T−リンパ球エピトープがないプロインスリンペプチド、インスリンC13−A5ペプチド、膵島細胞抗原p69、または任意のペプチド、誘導体、例えばシトルリン化形態iDS、および上記のものの対応ヌクレオチドが挙げられる。
【0172】
種間のインスリン配列のアラインメントについては、Homann et al.,J.Immunol.(1999)63:1833−1838の表Iを参照のこと。
【0173】
具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原は、GAD−65またはGAD−67などのGAD(その断片、その誘導体、もしくはそのコード核酸を含む)である。
【0174】
より具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65、その断片、その誘導体、またはそのコード核酸である。より具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65である。他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65に由来する断片(すなわち、GAD65断片である。
【0175】
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はインスリノーマ抗原−2である。
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はZnT8である。
【0176】
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原は膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)である。
【0177】
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はクロモグラニンAである。
他の一部の特定の実施形態によれば、β細胞自己抗原はインスリンである。
【0178】
他の一部の特定の実施形態によれば、β細胞自己抗原はB鎖インスリンである。
他の一部の特定の実施形態によれば、β細胞自己抗原はプロインスリンである。
【0179】
他の一部の特定の実施形態によれば、β細胞自己抗原はプレプロインスリンである。
本発明の一部の態様では、寛容原が処置対象の被験体に投与される。寛容原は、その後の負荷刺激用量の抗原に対して特異的な免疫学的不応答状態を誘発する抗原である。本発明における使用のための好適な寛容原は天然の内在性ヒトタンパク質、および免疫系に対して大量に利用可能で曝露され、一般的に自己と認められる他の分子である。寛容原の例としては、IL−10、ヒト血清アルブミンもしくはヘモグロビンまたはγ−アミノ酪酸が挙げられる。
【0180】
本発明における使用のための自己抗原または寛容原は、完全長タンパク質として投与してもよく、あるいはまた、かかる完全長タンパク質の断片またはバリアントとして投与してもよい。ただし、自己抗原の断片またはバリアントは、元の自己抗原と比べて保存されており本発明による方法において有効な少なくとも1つのエピトープを有しているものとする。
【0181】
タンパク質である自己抗原または寛容原の断片は、元の自己抗原または寛容原と同じアミノ酸配列を有しているが少なくとも1つのN末端またはC末端のアミノ酸残基がないものである。自己抗原の断片は、元の自己抗原の少なくとも1つの該当するエピトープを含むものであるのがよい。自己抗原および寛容原の断片は好ましくは、少なくとも8個のアミノ酸長、例えば少なくとも10、15、20、30、40、50、60、70、80、90または100個のアミノ酸長を有するものである。
【0182】
タンパク質である自己抗原または寛容原のバリアントは、元の自己抗原または寛容原と100%未満同一、例えば99%、95%、90%、85%、80%、70%、60%または50%同一である(タンパク質配列アラインメントツール、例えば、European Bioinformatics Institute(Hinxton,GB)から入手可能なClustal Omegaによって比較したとき)アミノ酸配列を有するものであり得るとともに、自己抗原については同時に、元の自己抗原と比べて保存されている少なくとも1つの該当するエピトープを有するものであり得る。また、バリアントは、元の抗原または寛容原と比べて短い(すなわち、断片)または長いアミノ酸配列を有するものであってもよい。
【0183】
本発明において、自己抗原または寛容原の投与は、タンパク質または元のタンパク質のペプチド断片を含むものである自己抗原または寛容原を伴うものであり得る。また、該投与は、自己抗原または寛容原のバリアントの投与を伴うものであってもよい。
【0184】
さらに、該タンパク質またはペプチドは被験体に、医薬的に許容され得る担体中のタンパク質またはペプチドとして導入してもよく、該タンパク質またはペプチドを発現ベクターによってコードしてもよく、この場合、発現ベクターが導入される(例えば、被験体において自己抗原をpCMV−発現ベクターによって発現させる本実施例を参照のこと)。かかる発現ベクターは核酸、例えばDNAまたはRNAであり得、針注射、遺伝子銃、ジ
ェット式注射によって、または当該技術分野で知られたサイトフェクチン(cytofectin)の補助を伴って送達され得る。核酸は、生理食塩水中、金ビーズ上、リポソーム内または脂質製剤中で製剤化され得る。発現ベクターによる自己抗原の投与に関するさらなる説明(および投与され得る具体的な抗原)については、米国特許出願公開公報US2002/0107210(これは引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0185】
IL−10誘発性化合物
一部の態様において、本発明の方法、組成物およびキットにはIL−10誘発性化合物が使用される。
【0186】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はビタミンD、例えば1,25−ジヒドロキシビタミンDである。
【0187】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はビタミンDアナログ、例えばTX527である。
【0188】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物には、UVB線による血清ビタミンDの強化体が含まれる。
【0189】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はチロシンキナーゼ阻害薬、例えばダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブ、スニチニブまたはその組合せである。
【0190】
具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブである。
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブである。
【0191】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はサラカチニブである。
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はイマチニブである。
【0192】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はスニチニブである。
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬は、ダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブおよびスニチニブのうちの少なくとも2種類の組合せである。例えば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとボスチニブの組合せであり得る。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとサラカチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとイマチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとスニチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブとサラカチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブとイマチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブとスニチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はイマチニブとスニチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとボスチニブとサラカチニブの組合せである。
【0193】
本発明による組成物は、1種類より多くのIL−10誘発性化合物を含むものであってもよい。したがって、一部の特定の実施形態によれば、該組成物は少なくとも2種類のIL−10誘発性化合物を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該組成物は少なくとも3種類のIL−10誘発性化合物を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該組成物は少なくとも4種類のIL−10誘発性化合物を含むものである。
【0194】
シクロオキシゲナーゼ阻害薬
一部の態様において、本発明の方法、組成物およびキットには1種類以上のシクロオキシゲナーゼ阻害薬が使用される。
【0195】
このようなシクロオキシゲナーゼ阻害薬は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)であり得る。より具体的な実施形態によれば、NSAIDは、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸、サルサラート(ジサルシド)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびニメスリドからなる群より選択される。
【0196】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はプロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジンまたはロキソプロフェンである。
【0197】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬は酢酸誘導体、例えばインドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナクまたはナブメトンである。
【0198】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はサリチレート、例えばアスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸またはサルサラートである。
【0199】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はエノール酸(オキシカム)誘導体、例えばピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムまたはイソキシカムである。
【0200】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はアントラニル酸誘導体、例えばメフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸またはトルフェナム酸である。
【0201】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬は選択的COX−2阻害薬、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブまたはエトリコキシブである。
【0202】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はイブプロフェンである。
【0203】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はデクスイブプロフェンである。
【0204】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はナプロキセンである。
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はフェノプロフェンである。
【0205】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はケトプロフェンである。
【0206】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はデクスケトプロフェンである。
【0207】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はフルルビプロフェンである。
【0208】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はオキサプロジンである。
【0209】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はロキソプロフェンである。
【0210】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はインドメタシンである。
【0211】
イブプロフェンは主にcox−2をブロックするが、ある程度cox−1もブロックする。イブプロフェンは、免疫系に対して狭いIL−1遮断薬よりもいくぶん広い効果および深刻なリスクのないかなり顕著な抗炎症効果を有する。イブプロフェンの使用によりβ細胞の炎症が緩和され、Vit D強化DCが、T細胞に提示された自己抗原由来のペプチドに対する寛容性を誘導することが可能になり、それにより被験体のβ細胞が保護される。
【0212】
CTLA4化合物
一部の態様において、本発明の方法、組成物およびキットにはCTLA−4化合物、例えば細胞傷害性T−リンパ球関連抗原4免疫グロブリンが使用される。
【0213】
より具体的な実施形態によれば、CTLA−4化合物はアバタセプトである。
アバタセプト(Fc修飾CTLA4免疫グロブリン)は、ヒトCTLA4の細胞外部分とヒトIgG1の重鎖からなるT細胞枯渇性免疫調節性の融合タンパク質である。これは、ナイーブT細胞の活性化に関与している共刺激シグナルをブロックする。また、これがAPC上のCD80/86と結合すると、CD80/86誘発性IL−6が干渉されて低減され得、これによりIL−1β、IFNγおよびIL−17などの炎症性サイトカインが下方調節され得る。さらにアバタセプトがCD80/86と結合すると、APC内にインドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)が誘発され得、これによりさらに、T細胞におけるアネルギーが誘導され得るとともに、活性化T細胞によるナイーブT細胞のパラクリン活性化が下方調節され得る。B細胞上に発現されたCD80/86は、アバタセプトが免疫調節機能を発揮し得るもう1つのさらなる経路かもしれない。
【0214】
TNFα阻害薬
一部の態様において、本発明の方法、組成物およびキットにはTNFα阻害薬、例えばアダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブまたはインフリキシマブが使用される。より具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はアダリムマブである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はセルトリズマブである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はエタネルセプトである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はゴリムマブである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はインフリキシマブである。
【0215】
キット
本発明によりまた、本発明の方法に関連するキットを提供する。例えば、一態様において、キットは:(a)抗炎症性化合物;(b)自己抗原;および(c)ビタミンDならびに任意選択で、d)本発明のレジメンのための使用説明書を備えたものであり得る。
【0216】
本発明ではまた、
i)β細胞自己抗原を含む組成物と、
iia)ビタミンD、ビタミンDアナログ、チロシンキナーゼ阻害薬、γ−アミノ酪酸およびγ−アミノ酪酸アナログからなる群より選択されるIL−10誘発性化合物を含む組成物;ならびに
iib)ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害薬、CTLA−4化合物またはTNFα阻害薬を含む組成物
のうちの少なくとも1種類と
を備えた医薬品キットも開示する。
【0217】
本発明ではまた、
i)β細胞自己抗原を含む組成物と、
iia)ビタミンD、ビタミンDアナログ、チロシンキナーゼ阻害薬、γ−アミノ酪酸およびγ−アミノ酪酸アナログからなる群より選択されるIL−10誘発性化合物を含む組成物;ならびに
iib)ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害薬、CTLA−4化合物またはTNFα阻害薬を含む組成物
のうちの少なくとも1種類と
を備えた医薬品キットも開示する。
【0218】
本発明ではまた、少なくとも2種類の医薬組成物(すなわち、医薬)を含むキットの製造における:
i)本明細書において列挙した群内の自己免疫性疾患および炎症性疾患のうちの少なくとも1つと関連している少なくとも1種類の抗原もしくはその断片;またはかかる分子をコードしている核酸;ならびに
ii)群:ビタミンD(例えば1,25−ジヒドロキシビタミンD)から選択される少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物。他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はビタミンDアナログ、例えばTX527である。他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はチロシンキナーゼ阻害薬、例えばダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブ、スニチニブまたはその組合せである;ならびに
iii)ナイーブTCおよびBCを活性化させ、活性化された記憶リンパ球による応答をリコールさせる免疫系の能力を低下させる少なくとも1種類の化合物、例えばCOX−阻害薬;CTLA−4化合物;またはTNFα阻害薬;本明細書において列挙したもの);
のうちの少なくとも2種類を含む組成物の使用も開示する。
【0219】
該少なくとも2種類の医薬組成物のうちの1つは、ミョウバン、生理食塩水またはヒト血清アルブミン中で、プレフィルドバイアルまたはシリンジ内の注射用剤として製剤化された該少なくとも1種類の抗原を含むものであり得、該少なくとも2種類の医薬組成物のうちの別のものは、経口投与のための錠剤の形態のIL−10誘発性化合物を含むものであり得る。
【0220】
本発明の一部の実施形態により、i)本明細書において列挙した群から選択される少なくとも1種類の抗原と、ii)群:COX−阻害薬;CTLA−4化合物;およびTNFα阻害薬から選択される、ナイーブリンパ球を活性化させるか、または活性型もしくは記憶リンパ球をリコールする樹状細胞の能力を低下させる少なくとも1種類の化合物とを含む少なくとも2種類の医薬組成物を含むキットを提供する。一例として、該少なくとも2種類の医薬組成物のうちの1つは、ミョウバン、生理食塩水またはヒト血清アルブミン中で、プレフィルドバイアルまたはシリンジ内の注射用剤として製剤化された該少なくとも1種類の抗原を含むものであり得、該少なくとも2種類の医薬組成物のうちの別のものは、COX−阻害薬;CTLA−4化合物;およびTNFα阻害薬の群から選択される1種類の化合物を含むものであり得る。
【0221】
本発明の一部の実施形態により、i)本明細書において列挙した群から選択される少なくとも1種類の抗原と、;ii)ビタミンD、ビタミンDアナログおよびチロシンキナーゼ阻害薬からなる群より選択される少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物と、iii)群:COX−阻害薬;CTLA−4化合物;およびTNFα阻害薬から選択される、ナイーブリンパ球を活性化させるか、または活性型もしくは記憶リンパ球をリコールする樹状細胞の能力を低下させる少なくとも1種類の化合物を含む少なくとも3種類の医薬組成物を含むキットを提供する。一例として、該少なくとも3種類の医薬組成物のうちの1つは、ミョウバン、生理食塩水またはヒト血清アルブミン中で、プレフィルドバイアルまたはシリンジ内の注射用剤として製剤化された該少なくとも1種類の抗原を含むものであり得、該少なくとも3種類の医薬組成物のうちの別のものは、ビタミンD、ビタミンDアナログ、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸アナログおよびチロシンキナーゼ阻害薬からなる群より選択される少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物を含むものであり得、該少なくとも3種類の医薬組成物のうちの第3のものは、COX−阻害薬;CTLA−4化合物;およびTNFα阻害薬の群から選択される1種類の化合物を含むものであり得る。
【0222】
医療的使用
本発明の組成物は治療において、特に、自己免疫疾患の予防および/または処置において使用され得る。したがって、本発明の組成物は医薬組成物であり得る。
【0223】
一部の特定の実施形態によれば、該組成物は医薬としての使用のためのもの、例えば自己免疫疾患の予防および/または処置における使用のためのものである。
【0224】
具体的な実施形態によれば、該組成物は1型糖尿病、例えば1型の予防および/または処置における使用のためのものである。
【0225】
他の具体的な実施形態によれば、該組成物は自己免疫性糖尿病の予防および/または処置における使用のためのものである。
【0226】
他の具体的な実施形態によれば、該組成物は潜在性自己免疫性糖尿病の予防および/または処置における使用のためのものである。
【0227】
さらに他の具体的な実施形態によれば、該組成物は、自己免疫性糖尿病の再発、例えば、膵島細胞移植または他の細胞療法(例えば、幹細胞療法)を受けた自己免疫性糖尿病を有する個体(例えば、ヒト)の自己免疫性糖尿病の再発の予防および/または処置における使用のためのものである。
【0228】
本発明により、さらなる一態様において、自己免疫疾患の予防および/または処置における使用のために少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物と併用する自己抗原を提供
する。
【0229】
より具体的には、本発明により、自己免疫疾患の予防および/または処置における使用のために少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物、例えばビタミンD、ビタミンDアナログおよびチロシンキナーゼ阻害薬からなる群より選択される少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物と併用する、インスリン、B鎖インスリン、プロインスリンおよびβ細胞自己抗原からなる群より選択される自己抗原を提供する。
【0230】
一部の特定の実施形態によれば、自己抗原はβ細胞自己抗原、例えば、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)またはクロモグラニンAである。
【0231】
具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65などのGAD(その断片、その誘導体、またはそのコードヌクレオチドを含む)である。
【0232】
より具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65、その断片、その誘導体、またはそのコードヌクレオチドである。より具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65である。他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65に由来する断片(すなわち、GAD65断片である。
【0233】
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はインスリノーマ抗原−2である。
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はZnT8である。
【0234】
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原は膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)である。
【0235】
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はクロモグラニンAである。
一部の特定の実施形態によれば、自己抗原はインスリンである。
【0236】
他の一部の特定の実施形態によれば、自己抗原はB鎖インスリンである。
他の一部の特定の実施形態によれば、自己抗原はプロインスリンである。
【0237】
一部の特定の実施形態によれば、自己抗原はアジュバント中で製剤化される。
具体的な実施形態によれば、アジュバントはミョウバンである。
【0238】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はビタミンD、例えば1,25−ジヒドロキシビタミンDである。
【0239】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はビタミンDアナログ、例えばTX527である。
【0240】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はチロシンキナーゼ阻害薬、例えばダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブ、スニチニブまたはその組合せである。
【0241】
具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブである。
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブである。
【0242】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はサラカチニブである。
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はイマチニブである。
【0243】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はスニチニブである。
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬は、ダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブおよびスニチニブのうちの少なくとも2種類の組合せである。例えば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとボスチニブの組合せであり得る。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとサラカチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとイマチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとスニチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブとサラカチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブとイマチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブとスニチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はイマチニブとスニチニブの組合せである 他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとボスチニブとサラカチニブの組合せである。
【0244】
一部の特定の実施形態によれば、自己抗原はさらに、ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害薬、CTLA−4化合物またはTNFα阻害薬と併用して使用される。
【0245】
具体的な実施形態によれば、かかる化合物はシクロオキシゲナーゼ阻害薬、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。より具体的な実施形態によれば、NSAIDは、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸、サルサラート(ジサルシド)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびニメスリドからなる群より選択される。
【0246】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はプロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジンまたはロキソプロフェンである。
【0247】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬は酢酸誘導体、例えばインドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナクまたはナブメトンである。
【0248】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はサリチレート、例えばアスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸またはサルサラートである。
【0249】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はエノール酸(オキシカム)誘導体、例えばピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムまたはイソキシカムである。
【0250】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はアントラニル酸誘導体、例えばメフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸またはトルフェナム酸である。
【0251】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬は選択的COX−2阻害薬、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブまたはエトリコキシブである。
【0252】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はイブプロフェンである。
【0253】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はデクスイブプロフェンである。
【0254】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はナプロキセンである。
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はフェノプロフェンである。
【0255】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はケトプロフェンである。
【0256】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はデクスケトプロフェンである。
【0257】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はフルルビプロフェンである。
【0258】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はオキサプロジンである。
【0259】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はロキソプロフェンである。
【0260】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はインドメタシンである。
【0261】
他の具体的な実施形態によれば、かかる化合物はCTLA−4化合物、例えば細胞傷害性T−リンパ球関連抗原4免疫グロブリンである。
【0262】
より具体的な実施形態によれば、CTLA−4化合物はアバタセプトである。
他の具体的な実施形態によれば、かかる化合物はTNFα阻害薬、例えばアダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブまたはインフリキシマブである。より具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はアダリムマブである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はセルトリズマブである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はエタネルセプトである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はゴリムマブである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はインフリキシマブである。
【0263】
他の具体的な実施形態によれば、自己抗原は、潜在性自己免疫性糖尿病、例えば、GAD−抗体陽性個体の潜在性自己免疫性糖尿病の予防および/または処置における使用のた
めのものである。
【0264】
具体的な実施形態によれば、自己免疫疾患は1型糖尿病である。
他の具体的な実施形態によれば、自己免疫疾患は自己免疫性糖尿病である。
【0265】
他の具体的な実施形態によれば、自己免疫疾患は潜在性自己免疫性糖尿病である。
他の具体的な実施形態によれば、自己免疫疾患は、自己免疫性糖尿病の再発、例えば、膵島細胞移植または他の細胞療法(例えば、幹細胞療法)を受けた自己免疫性糖尿病を有する個体(例えば、ヒト)の自己免疫性糖尿病の再発である。
【0266】
したがって、本発明により、少なくとも1種類の自己抗原と少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物を含む併用(例えば、治療的併用)を提供する。
【0267】
より具体的には、本発明により、i)インスリン、B鎖インスリン、プロインスリンおよびβ細胞自己抗原からなる群より選択される少なくとも1種類の自己抗原と、ii)ビタミンD、ビタミンDアナログおよびチロシンキナーゼ阻害薬からなる群より選択される少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物を含む併用(例えば、治療的併用)を提供する。
【0268】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原はβ細胞自己抗原、例えば、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ抗原−2、ZnT8、膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)またはクロモグラニンAである。
【0269】
具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65などのGAD(その断片、その誘導体、またはそのコードヌクレオチドを含む)である。
【0270】
より具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65、その断片、その誘導体、またはそのコードヌクレオチドである。より具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65である。他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はGAD−65に由来する断片(すなわち、GAD65断片である。
【0271】
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はインスリノーマ抗原−2である。
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はZnT8である。
【0272】
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原は膵島特異的グルコース−6−リン酸触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)である。
【0273】
他の具体的な実施形態によれば、β細胞自己抗原はクロモグラニンAである。
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原はインスリンである。
【0274】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原はB鎖インスリンである。
【0275】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原はプロインスリンである。
【0276】
本発明による併用は、1種類より多くの自己抗原を含むものであってもよい。したがって、一部の特定の実施形態によれば、該併用は少なくとも2種類の自己抗原を含むもので
ある。他の一部の特定の実施形態によれば、該併用は少なくとも3種類の自己抗原を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該併用は少なくとも4種類の自己抗原を含むものである。
【0277】
したがって、具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともGAD(例えばGAD−65)とインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともインスリノーマ抗原−2とインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともZnT8とインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともIGRPとインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともクロモグラニンAとインスリンを含むものである。
【0278】
他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともGAD(例えばGAD−65)とB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともインスリノーマ抗原−2とB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともZnT8とB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともIGRPとB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともクロモグラニンAとB鎖インスリンを含むものである。
【0279】
他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともGAD(例えばGAD−65)とプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともインスリノーマ抗原−2とプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともZnT8とプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともIGRPとプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともクロモグラニンAとプロインスリンを含むものである。
【0280】
他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともインスリンとB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともインスリンとプロインスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともB鎖インスリンとプロインスリンを含むものである。
【0281】
具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともGAD(例えばGAD−65)、インスリンとB鎖インスリンを含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともGAD(例えばGAD−65)と、インスリンとプロインスリンを含むものである。さらに他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともGAD(例えばGAD−65)と、B鎖インスリンとプロインスリンを含むものである。さらに他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともインスリンと、B鎖インスリンとプロインスリンを含むものである。
【0282】
他の具体的な実施形態によれば、該併用はGAD(例えばGAD−65)、インスリン、B鎖インスリンおよびB鎖インスリンを含むものである。
【0283】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原、例えば少なくとも2種類の該自己抗原または少なくとも3種類の該自己抗原はアジュバント中で製剤化される。
【0284】
具体的な実施形態によれば、アジュバントはミョウバンである。
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はビタ
ミンDまたはビタミンDアナログである。具体的な実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はビタミンDである。
【0285】
より具体的な実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は1,25−ジヒドロキシビタミンDである。
【0286】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はビタミンDアナログ、例えばTX527である。
【0287】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物はチロシンキナーゼ阻害薬、例えばダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブ、スニチニブまたはその組合せである。
【0288】
具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブである。
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブである。
【0289】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はサラカチニブである。
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はイマチニブである。
【0290】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はスニチニブである。
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬は、ダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブおよびスニチニブのうちの少なくとも2種類の組合せである。例えば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとボスチニブの組合せであり得る。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとサラカチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとイマチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとスニチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブとサラカチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブとイマチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はボスチニブとスニチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はイマチニブとスニチニブの組合せである。他のより具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害薬はダサチニブとボスチニブとサラカチニブの組合せである。
【0291】
本発明による併用は1種類より多くのIL−10誘発性化合物を含むものであってもよい。したがって、一部の特定の実施形態によれば、該併用は少なくとも2種類のIL−10誘発性化合物を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該併用は少なくとも3種類のIL−10誘発性化合物を含むものである。他の一部の特定の実施形態によれば、該併用は少なくとも4種類のIL−10誘発性化合物を含むものである。
【0292】
したがって、具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDとチロシンキナーゼ阻害薬を含むものである。他の具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDアナログとチロシンキナーゼ阻害薬を含むものである。
【0293】
より具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDとダサチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDとボスチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDとサラカチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDとイマチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDとスニチニブを含むものである。
【0294】
より具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDアナログとダサチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDアナログとボスチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDアナログとサラカチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDアナログとイマチニブを含むものである。他のより具体的な実施形態によれば、該併用は少なくともビタミンDアナログとスニチニブを含むものである。
【0295】
一部の特定の実施形態によれば、該併用はさらに、iii)ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害薬、CTLA−4化合物またはTNFα阻害薬を含むものである。
【0296】
具体的な実施形態によれば、かかる化合物はシクロオキシゲナーゼ阻害薬、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。より具体的な実施形態によれば、NSAIDは、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸、サルサラート(ジサルシド)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびニメスリドからなる群より選択される。
【0297】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はプロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジンまたはロキソプロフェンである。
【0298】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬は酢酸誘導体、例えばインドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナクまたはナブメトンである。
【0299】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はサリチレート、例えばアスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル(ドロビッド)、サリチル酸またはサルサラートである。
【0300】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はエノール酸(オキシカム)誘導体、例えばピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムまたはイソキシカムである。
【0301】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はアントラニル酸誘導体、例えばメフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸またはトルフェナム酸である。
【0302】
一部の特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬は選択的COX−2阻害薬、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブまたはエトリコキシブである。
【0303】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はイブプロフェンである。
【0304】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はデクスイブプロフェンである。
【0305】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はナプロキセンである。
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はフェノプロフェンである。
【0306】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はケトプロフェンである。
【0307】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はデクスケトプロフェンである。
【0308】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はフルルビプロフェンである。
【0309】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はオキサプロジンである。
【0310】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はロキソプロフェンである。
【0311】
より具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害薬はインドメタシンである。
【0312】
他の具体的な実施形態によれば、かかる化合物はCTLA−4化合物、例えば細胞傷害性T−リンパ球関連抗原4免疫グロブリンである。
【0313】
より具体的な実施形態によれば、CTLA−4化合物はアバタセプトである。
他の具体的な実施形態によれば、かかる化合物はTNFα阻害薬、例えばアダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブまたはインフリキシマブである。より具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はアダリムマブである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はセルトリズマブである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はエタネルセプトである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はゴリムマブである。他のより具体的な実施形態によれば、TNFα阻害薬はインフリキシマブである。
【0314】
本発明の併用は治療において、特に、自己免疫疾患の予防および/または処置において使用され得る。したがって、本発明の併用は治療的併用であり得る。
【0315】
一部の特定の実施形態によれば、該併用は医薬としての使用のためのもの、例えば自己免疫疾患の予防および/または処置における使用のためのものである。
【0316】
具体的な実施形態によれば、該併用は、1型糖尿病の予防および/または処置における使用のためのものである。
【0317】
他の具体的な実施形態によれば、該併用は、自己免疫性糖尿病の予防および/または処
置における使用のためのものである。
【0318】
他の具体的な実施形態によれば、該併用は、潜在性自己免疫性糖尿病の予防および/または処置における使用のためのものである。
【0319】
さらに他の具体的な実施形態によれば、該併用は、自己免疫性糖尿病の再発、例えば、膵島細胞移植または他の細胞療法(例えば、幹細胞療法)を受けた自己免疫性糖尿病を有する個体(例えば、ヒト)の自己免疫性糖尿病の再発の予防および/または処置における使用のためのものである。
【0320】
本発明により、さらなる一態様において、i)少なくとも1種類の自己抗原、例えば、上記に詳述したような少なくとも1種類の自己抗原、ii)少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物、例えば、上記に詳述したような少なくとも1種類のIL−10、および任意選択で、iii)ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えば、上記に詳述したようなナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物を含む組成物または併用の、医薬の製造における使用を提供する。
【0321】
本発明により、さらなる一態様において、自己免疫疾患の予防および/または処置を、それを必要とする個体において行なうための方法(1つまたは複数)であって、前記個体に少なくとも1種類の自己抗原、例えば、上記に詳述したような少なくとも1種類の自己抗原を投与すること;および前記個体に少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物、例えば、上記に詳述したような少なくとも1種類のIL−10を投与することを含む方法(1つまたは複数)を提供する。
【0322】
一部の特定の実施形態によれば、該方法はさらに、前記個体にナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えば、上記に詳述したようなナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物を投与することを含む。
【0323】
一部の特定の実施形態によれば、本発明により処置される個体は哺乳動物である。
具体的な実施形態によれば、本発明により処置される個体はヒトである。
【0324】
一部の特定の実施形態によれば、本発明により処置される個体は成人である。
具体的な実施形態によれば、本発明により処置される個体は成人のヒトである。
【0325】
本発明による医薬、医薬組成物または治療的併用は、ヒトおよび/または動物、好ましくはヒト、例えば幼児、小児および成人への適用に適した任意の形態であり得、当業者に知られた標準的な手順によって作製され得る。医薬、(医薬)組成物または治療的併用は、例えば、“Pharmaceutics:The Science of Dosage Forms”,第2版,Aulton,M.E.(編)Churchill Livingstone,Edinburgh(2002);“Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”,第2版,Swarbrick,J.およびBoylan J.C.(編),Marcel Dekker,Inc.New York(2002);“Modern Pharmaceutics”,第4版,Banker G.S.およびRhodes C.T.(編)Marcel Dekker,Inc.New York 2002 y “The Theory and
Practice of Industrial Pharmacy”,Lachman L.,Lieberman H.およびKanig J.(編),Lea & Febiger,Philadelphia(1986)の内容の表により当業者に知られた
標準的な手順によって作製され得る。それぞれの記載内容は引用により本明細書に組み込まれ、本開示の一部を構成する。用語「医薬」、「医薬組成物」および「医薬用製剤」は互換的に使用され得る。
【0326】
本発明の医薬組成物は、例えば、非経口、例えば、筋肉内、腹腔内または静脈内注射、経粘膜または舌下適用;あるいは経口、例えば、錠剤、ペレット剤、顆粒剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性の液剤、懸濁剤、乳剤、スプレー剤としての投与、または乾燥粉末化形態を液体媒体で再構成したものとしての投与で投与され得る。
【0327】
同様に、本発明に従って使用される該少なくとも1種類の自己抗原は、例えば、非経口、例えば、筋肉内、腹腔内または静脈内注射、経粘膜または舌下適用;あるいは経口、例えば、錠剤、ペレット剤、顆粒剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性の液剤、懸濁剤、乳剤、スプレー剤としての投与、または乾燥粉末化形態を液体媒体で再構成したものとしての投与で投与され得る。
【0328】
同様に、本発明に従って使用される該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は、例えば、非経口、例えば、筋肉内、腹腔内または静脈内注射、経粘膜または舌下適用;あるいは経口、例えば、錠剤、ペレット剤、顆粒剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性の液剤、懸濁剤、乳剤、スプレー剤としての投与、または乾燥粉末化形態を液体媒体で再構成したものとしての投与で投与され得る。
【0329】
同様に、本発明の治療的併用は、例えば、非経口、例えば、筋肉内、腹腔内または静脈内注射、経粘膜または舌下適用;あるいは経口、例えば、錠剤、ペレット剤、顆粒剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性の液剤、懸濁剤、乳剤、スプレー剤としての投与、または乾燥粉末化形態を液体媒体で再構成したものとしての投与で投与され得る。
【0330】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原は鼠径部内投与される。
【0331】
他の一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原は、例えば、膵臓の排出リンパ節付近の胃の部分の皮内または皮下に投与される。具体的な実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原は皮内投与される。他の具体的な実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原は皮下投与される。
【0332】
本発明による医薬、医薬組成物または治療的併用にはさらに、1種類以上の医薬的に許容され得る賦形剤が含められ得る。
【0333】
本発明による医薬、医薬組成物または治療的併用の調製に適した担体、希釈剤および賦形剤は、例えば、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”第6版,Raymond C.Rowe,Paul J.SheskeyおよびMarian E Quinn(編),American Pharmaceutical Association(2009年7月)(これは引用により本明細書に組み込まれ、本開示の一部を構成する)により当業者によく知られている。
【0334】
該少なくとも1種類の自己抗原と該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は同時に投与しても別々に投与してもよい。一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原と該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は同時に投与される。一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原と該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は別々に投与される。
【0335】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は、該少なくとも1種類の自己抗原の投与の前に投与される。具体的な実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は、該少なくとも1種類の自己抗原の最初の投与の少なくとも1日前、例えば少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前または少なくとも1週間前に投与される。したがって、かかる実施形態によれば、IL−10誘発性化合物(1種類または複数種)の過程は、該少なくとも1種類の自己抗原の最初の投与の少なくとも1日前、例えば少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前または少なくとも1週間前に開始される。
【0336】
より具体的な実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物は、該少なくとも1種類の自己抗原の最初の投与の少なくとも1週間前、例えば少なくとも2週間前に投与される。したがって、かかる実施形態によれば、IL−10誘発性化合物(1種類または複数種)の過程は、該少なくとも1種類の自己抗原の最初の投与の少なくとも1週間前、例えば少なくとも2週間前に開始される。
【0337】
ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物は、該少なくとも1種類の自己抗原および/または該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物と同時に投与しても別々に投与してもよい。一部の特定の実施形態によれば、CTLA−4化合物は、該少なくとも1種類の自己抗原と同時に投与される。他の一部の特定の実施形態によれば、ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物は、該少なくとも1種類の自己抗原と別々に投与される。
【0338】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物とナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物は同時に投与される。一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類のIL−10誘発性化合物とナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物は別々に投与される。
【0339】
具体的な実施形態によれば、ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物、例えば10mg/kgのアバタセプトなどが、該少なくとも1種類の自己抗原の最初の投与時の前後+/−7日で投与される。
【0340】
一部の特定の実施形態によれば、該少なくとも1種類の自己抗原の投与とナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物の投与は、14、28および45日目に、T細胞上のCD28のブロックが確実となり得るように場合に応じて+/−1週間で繰り返される。
【0341】
一部の特定の実施形態によれば、各場合の処置1回あたり2〜20ug用量の少なくとも1種類のGAD(例えばGAD−65)(ミョウバン中で任意選択的に製剤化する)が投与される。
【0342】
一部の特定の実施形態によれば、各場合の処置1回あたり1000〜2000IUの少なくとも1種類のビタミンD(例えばビタミンD3)が投与される。
【0343】
一部の特定の実施形態によれば、1週あたり7,000〜70,000IUのビタミンD(例えばビタミンD3)を該少なくとも1種類の自己抗原の最初の投与前に1〜10週間および該少なくとも1種類の自己抗原の最後の投与後に4週間投与することにより、APCがより寛容原性となる。
【0344】
一部の特定の実施形態によれば、GAD(例えばGAD−65)(ミョウバン中で任意選択的に製剤化する)の投与は、ナイーブCD4+ T細胞を活性化させる樹状細胞の能力を低下させる化合物の各投与のおよそ1週間後に行なわれる。
【0345】
一部の特定の実施形態によれば、各場合の処置1回あたり400mg用量の少なくとも1種類のNSAID(例えばイブプロフェン)が投与される。
【0346】
本発明では、分子生物学の当業者によく知られたポリヌクレオチド操作手法を含む慣用的な分子生物学の方法が理解されていることを想定している。よく知られたかかる手法の例は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual
第2版,Sambrook et al.,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)を見るとよい。慣用的な分子生物学的手法の例としては、限定されないが、インビトロ結合、制限酵素エンドヌクレアーゼ消化、PCR、細胞形質転換、ハイブリダイゼーション、電気泳動、DNAシーケンシングなどが挙げられる。
【0347】
また、本発明では、免疫学の当業者によく知られた慣用的な免疫生物学的方法が理解されていることを想定している。基本的な情報および方法は、Current Protocols in Immunology,編集者Bierer et al.,第4巻,John Wiley & Sons,Inc.(これには:実験動物の飼育および取扱い、免疫応答の誘導、リンパ球機能のインビトロアッセイ、リンパ球機能のインビボアッセイ、免疫蛍光および細胞分取、サイトカインおよびその細胞受容体、ヒトにおける免疫学的試験、タンパク質、ペプチドの単離および解析、分子生物学、細胞活性化の生化学、補体、自然免疫、自己免疫性疾患および炎症性疾患の動物モデル(これには、NODマウスモデル、SLEマウスモデル(狼瘡の)、および制御性T細胞の枯渇による自己免疫疾患の誘導に関する章が含まれている)、抗原のプロセシングおよび提示、免疫分子および受容体の改変、免疫系におけるリガンド−受容体相互作用、顕微鏡検査、ならびに一般的な免疫系の遺伝子およびタンパク質に関する略号および専門用語(例えば、リンパ球表面分子のCD分類)に関する教示が含まれている)を見るとよい。
【0348】
実施例
以下の実施例により、本発明の種々の態様の安全性と有効性を確立するために行なわれ得る試験を開示する。本実施例で使用したβ細胞自己抗原はグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)であり、本明細書に記載の任意の他のβ細胞自己抗原で置き換えてもよい。
【実施例1】
【0349】
最近1型糖尿病を発症した患者における臨床試験 試験デザイン:
本試験は、4群での多施設無作為二重盲検プラセボ対照比較臨床試験である。
【0350】
A群の患者には、経口で1日あたり400mgのイブプロフェンを90日間、毎朝投与した。また、1日目から患者には、経口で1日あたり2000IUのビタミンDを15ヶ月間(すなわち、1日あたり25滴)と、15日目と45日目にプライム−ブーストレジメンで胃領域に20μgのDiamyd(登録商標)(GADベース糖尿病治療薬)の2回の皮下注射も投与した。
【0351】
B群には、経口で1日あたり2000IUのビタミンDを15ヶ月間(すなわち、1日あたり25滴)と、15日目と45日目にプライム−ブーストレジメンで20μgのDiamydの2回の皮下注射を投与した。
【0352】
C群には、経口で1日あたり2000IUのビタミンDを15ヶ月間(すなわち、1日
あたり25滴)投与し、15日目と45日目にプライム−ブーストレジメンで20μgのDiamydの2回の皮下注射を2つの異なる部位に投与する(これにより、各場合で合計40μgのDiamydが投与される)。
【0353】
D群にはプラセボを投与した。
患者を、盲検試験期間の6ヶ月間を含む合計30ヶ月間追跡する。
【0354】
処置群の説明:
患者を適格性について、処置開始の2〜4週間前のスクリーニングの来院時(来院1回目)に評価した。来院2回目(1日目,ベースライン)のとき、試験に適格である患者を4つの処置群のうちの1つに無作為化した:
− 15人の患者を、経口懸濁剤としてのイブプロフェン;400mgを毎朝、1日目から90日目まで、また、1日目から450日目まで1日あたり2000IU(すなわち、1日あたり25滴)のビタミンDの経口液滴剤の投与に割り付けた。さらに、20μgのDiamydを用いて1回およびプラセボを用いて1回の皮下注射を胃領域の2つの異なる部位に、各々、15日目と45日目に、すなわちプライム・ブースター投与で投与した(合計で40μg用量のDiamydを与える)。
【0355】
− 15人の患者を、経口懸濁剤としてのプラセボを毎朝、1日目から90日目まで、また、1日目から450日目まで1日あたり2000IU(すなわち、1日あたり25滴)のビタミンDの経口液滴剤の投与に割り付けた。さらに、20μgのDiamydを用いて1回およびプラセボを用いて1回の皮下注射を胃領域の2つの異なる部位に、各々、15日目と45日目に、すなわちプライム・ブースター投与で投与した(合計で40μg用量のDiamydを与える)。
【0356】
− 15人の患者を、経口懸濁剤としてのプラセボを毎朝、1日目から90日目まで、また、1日目から450日目まで1日あたり2000IU(すなわち、1日あたり25滴)のビタミンDの経口液滴剤の投与に割り付けた。さらに、20μgのDiamydを用いた2回の皮下注射を胃領域の2つの異なる部位に、各々、15日目と45日目に、すなわちプライム・ブースター投与で投与した(合計で80μg用量のDiamydを与える)。
【0357】
− 15人の患者を、経口懸濁剤としてのプラセボを毎朝、1日目から90日目まで、プラセボ経口液滴剤を1日目から450日目まで、プラセボを用いた2回の皮下注射(胃領域の2つの異なる部位に投与)(各々、15日目と45日目)の投与に割り付けた。
【0358】
有効性の可変量:
一次および二次有効性エンドポイントには
・MMTT時のCペプチドの変化(90分間の値および0から120分までのAUC平均値)
・0.2nmol/Lより上の最大被刺激Cペプチドレベルを有する患者の割合
・バイオマーカー,機械論的データ
・空腹時Cペプチド,ベースラインと6ヶ月目との変化
を含める。
【0359】
安全性の可変量:
安全性評価には、注射部位における反応の観察結果、GAD65Ab力価、有害事象(AE)の発生、検査測定値、バイタルサイン、神経学的評価、および限定的身体検査を含める。
【0360】
6ヶ月間の試験を終了した20人の患者の結果は、diamydを含めた処置を施した患者群では、プラセボ処置群と比べてβ細胞機能の改善がみられることを示す。
【0361】
【表1】
【実施例2】
【0362】
最近1型糖尿病を発症した成人の残存インスリン分泌能を、GAD−抗原(Diamyd(登録商標))療法薬をリンパ節内に投与することにより保存するためのパイロット試験(DIAGNODE)
1.1 背景および理論的根拠
小児の1型糖尿病(T1D)の発生率は、スウェーデンでは、フィンランドに次いで世界中で2番目に高く、急速に増え続けている。T1Dは、本発明者らの国では、小児および青年期の若者の間で、群を抜いて最も一般的な慢性の重篤な命を脅かす疾患であり、1
型糖尿病の発生率は若年成人においても高い。この疾患は、極めて深刻な世界的問題になる傾向にある。この疾患はインスリン不足を特徴とする。たとえ、数例の患者が診断時に、かなり印象的な残存β細胞機能(1)を有しているとしても、その欠損はすぐに非常に顕著になり、最終的には完全に欠損する(2,3)。残存インスリン分泌能は極めて重要である。稀な症例では、β細胞機能は診断直後に糖代謝が正常になるほど大きく改善し、かなりの間、インスリンが必要とされなくなる、すなわち、患者は、いわゆる完全寛解となる(4)。患者が完全寛解の状態である限り、運動および食事に関しておそらくいくつか推奨される健全な生活様式以上の積極的な処置は必要ない。症状がなく、急性合併症がなく、完全寛解のままであれば、かかる個体がいかなるときも後期合併症を発症し得ることは考えにくい。化学的(chemical)糖尿病または耐糖能異常を有する個体の場合と同様に、グルコースまたは脂質の代謝のわずかな異常が大血管性合併症のリスクを高めることがあり得る。完全寛解は稀であるが、一部寛解はそうではない(4)。この期間中、患者は通常、ほぼ正常な血中グルコース値を有し、軽度の低血糖症すらなく、ケトアシドーシスの症状発現もない。患者の体調はよく、小児では成長が正常であり、必要とされる制限事項はほとんどなく(あるとすれば食べ物に関して)、患者は低血糖症となることなく様々な運動をすることができ、在宅時血中グルコース試験値が非常に良好であるため、生活の質は非常に良好である。ケトアシドーシスのリスクを減らすためには、ほんの少しの残存インスリン分泌能で充分である(5)。さらに、DCCT治験において、まったく中等度の残存インスリン分泌能(>0.20pmol/mlの血清Cペプチドでのβ細胞刺激に対する応答)であっても合併症の予防に重要な役割を果たすことが示されている(6)。この効果は、残存インスリン分泌能によって妥当に、良好な血糖バランスに達することがより容易になるはずであるという事実によるものであり得るが、Cペプチド自体が生理学的機能を有していることも考えられ得る。実際、Cペプチドが血管透過性に影響を及ぼし、網膜血管における漏出を低減させ、それに加えて神経機能に対してプラスの効果を有することが報告されている(7)が、Cペプチド自体の効果はまだ論争中である。
【0363】
1.1.1 自然過程に影響を及ぼす要素
T1Dの診断時、膵臓のβ細胞の80〜90%が破壊されていると主張されている。しかしながら、このことの証拠は乏しく、おそらく、主要な問題は機能の低下であるということであろう。さらに、一部の患者はかなり良好な残存インスリン分泌能を有し、他の一部の患者はそうでないため、患者間に大きな差がある。診断直後は、特に、積極的なインスリン処置を施した場合、Cペプチド産生の増大がみられ、同時に、インスリン感受性の改善もみられる。良好な代謝調節はβ細胞に対する環境および代謝を改善するようであり、β細胞機能は保存され、これがさらに、より良好な代謝調節に寄与し、逆も同様である。自己免疫過程の強度も役割を果たしており、1型糖尿病を有する小児は1型糖尿病を有する成人よりも高い攻撃性の免疫プロセスを有することは明白なようであるが、依然としてその過程を推定することは困難である。一部の試験では、高濃度の自己抗体を投与した後、より急激にインスリン分泌が低下することが示唆されているが、別の試験では、かかる関係はみられておらず、反対ですらある。これまでのところ、β細胞減少が推定される細胞媒介性免疫の特別な徴候は判明していないが、本発明者らの独自の試験では、該疾患過程が、特定のサイトカイン、例えばIFNgの増加とIL−10、IL−13の減少を伴った免疫系のT−ヘルパー−1(Th−1)逸脱と関連していることが示された。
【0364】
β細胞機能に対するインスリン処置の効果
はるかに以前、該疾患の第1期中での積極的インスリン処置により一部寛解が長期化し、この所見は、残存インスリン分泌能の改善によって確認および実証され得た(2)。強化処置により残存β細胞機能が少なくとも一定期間、改善するようである(8)だけでなく、長期のプラスの効果も有する場合があり得る(9)。積極的処置によって実験動物における糖尿病が予防または遅延されることが示されているだけでなく、試験により、かか
る処置によって高リスク個体における糖尿病が予防できるかもしれないことも示されている(10)。しかしながら、大規模での糖尿病予防治験において試験した場合、非経口インスリン処置では糖尿病は予防されなかった(11)。インスリンでの経口処置なら効果を有したかもしれず(12)、したがって、さらなる試験が必要である。
【0365】
1.1.2 介入
1970年代、T1Dが自己免疫疾患であることが明らかになり、したがって、免疫介入が試行された。本発明者らは、糖尿病の小児において世界で最初の免疫介入試験を行ない、このとき、既に30年前、新規に診断された小児および青年期の若者においてプラズマフェレーシスを使用し、ある程度のプラスの効果がみられた(13)。この処置の副作用として、64kDの重量を有する新しいタンパク質が血漿中に見出され(14)、これは後に、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)であることが示された。免疫介入の概念の立証とみなすと、ブレークスルーはシクロスポリンであり、これは、疑いなく自己免疫性破壊性プロセスを減速させ、残存インスリン分泌能の改善をもたらしたが、免疫抑制の他の治験では効果は最小限であった(特に、小児において)(15,16,17)か、または重篤すぎる有害事象もしくはリスクが示された(18,19)。免疫系をモジュレートするための取り組みにおいて、本発明者らはフォトフェレーシスを使用した。免疫系に対する明白な効果が二重盲検プラセボ対照比較治験において示されたが(20)、臨床効果は最小限であり、残存β細胞機能の改善はほとんどみられ得なかった(21)。このように、免疫介入は成功しなかったので、本発明者らの関心は、ニコチンアミドおよびジアゾキシドなどの保護剤に向いたが、効果はないか一時的なものであった(22,23,24)。
【0366】
β細胞破壊に至る免疫プロセスの知識の増大とともに、免疫介入が重要なT細胞に標的化されるようにより精密に指向させることが可能になっている。破壊性免疫プロセスをブロックしようと試みた抗CD3抗体を用いた前途有望な試験が行なわれた。抗CD3を用いた北米およびフランスでの両治験の結果により、破壊性自己免疫過程をブロックすることが可能であり、それにより、β細胞機能の低下が少なくとも遅延されることが示されている(25,26)。残存インスリン分泌能の低下は有意に減速したが、残念ながら、その低下が遅延されたのは1年間だけであったようであり、その後は、Cペプチドの下降線はプラセボ群の下降線と平行になった。さらに、大部分の患者でいくらかのサイトカイン放出症候群(CRS)が起こり、かなり重篤な場合もあり得、また、いくつかの副作用がほとんどの患者にみられた。本発明者らは、最近の2つのフェーズIII治験のうちの1つ(Protege治験)に参加した。これは、一次エンドポイントは達成できなかったが、最も集中的な処置をした群では、実際、残存インスリン分泌能のいくらかの保存および低インスリン必要量での良好なHbA1cの達成が示された(27;Sherry,Hagopian,Ludvigsson et al Lancet 2011)。新たな試験が必要であるが、この型の処置単独が一般的な臨床使用のための許容される解決策になるとは考えにくい。かかる処置が、この処置を受ける以外は(otherwise)健常な個体(その多くは絶対に糖尿病を発症しないであろうと思われる)において予防的処置として許容されることは、さらに可能性が低い。
【0367】
1.1.3 自己抗原を用いた免疫療法
アレルギー性疾患の処置では、少量の疾患特異的抗原を用いた免疫療法が長年、効率的に使用されている。この処置のメカニズムは依然として不明であるが、免疫応答の免疫モジュレーションと制御性細胞の誘導が示唆されている。自己免疫疾患では、かかる処置で好成績なものはなかったが、試行すべきである(28)。糖尿病傾向の動物での実験では、ヒートショックプロテインでの処置によって糖尿病の発症が遅滞または遅延され得るかもしれないことが示されている。成人での試験におけるDiapep277ペプチドの使用により、ほぼなんらの有害事象なくインスリン分泌の有意な保存が示された(29)。
しかしながら、T1Dを有する小児および青年期の若者での後の治験(30)では効果は示されなかった。いわゆるLADA(成人潜在性自己免疫性糖尿病)におけるDiapep277処置薬を用いた試験が進行中であり、中間報告結果(IDF,Dubai 2011年12月およびADA 2012年6月の報告)は、Diapep277での処置により、軽度の1型糖尿病を有する成人においてβ細胞機能が保存され得ることを示唆している。しかしながら、グルカゴン刺激後に弱いCペプチド保存がみられただけであり、混合食負荷試験後では効果は全くみられなかったため、および積極的処置群とプラセボ間で免疫マーカーに少しも差がなかったため、この結果は少し不確かである。インスリンでの積極的処置は、実験動物において糖尿病を予防または遅延させることが示されているだけでなく、非盲検の予備試験では、かかる処置によって高リスク個体における糖尿病が予防され得ることが示された(10)。インスリンは、明らかにβ細胞特異的自己抗原であり、高リスク個体における糖尿病を予防するために非経口投与されてきた(DPT)が効果はなく、一方、同じ目的での経口インスリン投与は、わずかに効果を有するものであり得る(12)。
【0368】
1.1.4 GAD−ミョウバンを用いたこれまでの臨床試験
1.1.4.1 GAD−ワクチン接種
GAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)は、β細胞刺激に対する応答としての放出増大を伴って膵島内で産生されるため、自己抗原とみなされ得る。このタンパク質は、自己免疫の免疫プロセスに深く影響していることが示されている(31,32,33,34)。いくつかの試験で、実際、GADにより実験動物において糖尿病が予防され得ることが示されている(35〜42)。GADとウイルスタンパク質との類似性は治療的作用に重要であり得る。観察される効果は、免疫プロセスの開始後のものであっても、ヒトにおいて免疫プロセスの開始後に同じ効果を期待できるかもしれないことを示唆するものである。LADA患者でのフェーズII試験において、低用量の一例であるDiamyd 20μgの投与により、2年間までプラセボ処置群と比べて改善されたβ細胞機能がもたらされ、副作用はなかった。また、他の用量も試験した:4μgでは効果は示されず、100μgでは20μgと同様の効果が示されたが、500μgでは効果は示されなかった。いずれの用量でもなんら有害事象は示されず、数年間の追跡後もなお、そうである(43)。CD4+CD25+細胞/CD4− CD25−細胞の比の変化との関連性がみられ、この効果のメカニズムを示す。この前途有望な背景により、本発明者らは、最近発症した10〜18歳の1型糖尿病患者においてフェーズII試験を開始した。処置が早いほど緩徐進行LADA患者に効果があるという考えに基づいて、本発明者らは、介入時にT1D糖尿病の期間が18ヶ月間までの患者を組み入れた。患者を、20μgのGAD−ミョウバン(Diamyd)をscで1日目と30日目、またはプラセボのいずれかに無作為化した。効果は30ヶ月後もなお著明であり、明らかにどちらも統計学的および臨床的に有意であり(44)、GAD処置群ではプラセボ群と比べてCペプチドの減少が約半分であった。糖尿病の期間が<3ヶ月である患者には著しく良好な効果を有し、最初の15ヶ月間の追跡中、β細胞機能の低下はないか、または最小限であった。ワクチン接種時に期間が<6ヶ月である患者ではほぼ全員に効果がみられた。なおさらには、他の介入処置とは対照的に、この効果は全く有害事象なしで得られ、この処置を非常に有望にした!さらに48ヶ月後、期間が<6ヶ月である処置患者は有意に保存されたCペプチドを有しており、依然として有害事象はなかった(45)。このときまでは、GAD処置は非常に前途有望と思われた。2つのフェーズIII治験が、1つは欧州でJohnny Ludvigsson(JL)をPIとして、1つは米国でJerry PalmerをPI、およびJLを治験分担医師として行なわれた。欧州での治験では、334人の患者を集めて3つの群に分け、1つの群にはGAD−ミョウバン(Diamyd)20μgを1、30、90および270日目、別の群にはGADミョウバン20μgを1日目と30日目およびプラセボを90日目と270日目、第3の群にはプラセボを1、30、90および270日目とした。一次エンドポイントである混合食負荷試験(MMTT)後15ヶ月目の血清
CペプチドAUCは満たされなかった!(CペプチドAUC p=0.1;空腹時Cペプチド p=0.07)(46)。このことが会社(Diamyd Medical+Johnson&Johnson)にフェーズIII治験を早期に終了することを促した。しかしながら、フェーズIII治験ではいくつかのプラスの効果も示された。このように、統計学的に有意な有効性が、事前に指定されたいくつかの亜群において見られた。さらに、45人のスウェーデン人患者は試験終了時の30ヶ月目の来院時に合格であり、2回の20μg用量のGAD−ミョウバン(Diamyd)を投与した15人の患者では30ヶ月後、プラセボと比べてCペプチドの有意な保存が示された!これは、スウェーデン人患者は15ヶ月後に有効性がなかったが、非北欧国では15ヶ月後に有効性がみられたため、特に注目に値する。
【0369】
1.1.4.2 フェーズIIとフェーズIIIの異なる結果に対して考えられ得る理由
フェーズIIIの無作為化では、活性薬を投与した患者では、10〜11歳群の方が16〜18歳群よりも高頻度にしたが、プラセボでは、年齢が高い方の群において活性薬よりも高頻度にした。これが結果に影響したかもしれない。フェーズIIの患者は3月〜4月に処置し、3月〜4月に処置した患者はフェーズIIIにおいてGAD処置の有意な効果も有した。フェーズII治験ではワクチン接種を認めなかったが、フェーズIIIではインフルエンザワクチン接種を許容した。残念ながら、H1N1型インフルエンザの流行により、ほぼすべての患者がワクチン接種を受けるに至り、その多くがGAD−ワクチン接種も一緒に受けた。
【0370】
スウェーデンおよびフィンランドでは、ワクチンに、自己免疫に対する免疫系への影響が疑われているスクアレンが含有されており、これらの2つの国では、GAD処置の有効性はみとめられなかったが、他の欧州諸国では有効性は有意であった。GAD処置と近接したインフルエンザワクチン接種を受けなかったスウェーデンの患者の方がGAD処置の有効性が良好であった(46)。
【0371】
1.1.4.3 進行中のDIABGAD−1治験
2013年1月からフェーズII DIABGAD−1治験がスウェーデンで進行中である。これは、最近1型糖尿病を発症した10〜18歳の60人の患者の治験であり、患者は、二重盲検プラセボ対照比較無作為化試験において、それぞれGAD−ミョウバン20μgで40μgを2回、30日間隔での投与で、2000単位のビタミンDを毎日、450日間およびイブプロフェン400mgを毎日90日間と併用して処置している。募集人数に達し、現在は終了している。60人の患者は無作為化され、別の4人の患者がスクリーニングを受け、スクリーニング結果を待っている。これまでのところ、治験薬と関連していると判断される重篤な有害事象はなく、非常に軽微な有害事象はあるが、GAD−ミョウバンの注射部位の軽度の一過性の反応以外は処置とは関連していない。6ヶ月間の追跡後に全患者の中間解析が既に計画されているが、さらに延長して解析を15ヶ月後と30ヶ月後に行なう。
【0372】
1.1.5.リンパ節内免疫療法
抗原療法は、抗原をリンパ節内のT細胞に提示して該抗原に対する免疫系と寛容性の新たなバランスを得ることを目的とするものである。これまでの自己免疫疾患の処置では、抗原が抗原提示細胞/樹状細胞に提示され、これによってさらに該抗原が免疫系のT細胞に提示されることが期待されるように、抗原は経口、鼻腔内または皮下のいずれかで投与されていた。しかしながら、動物試験により、リンパ管内注射によって関連する強力なT細胞応答が誘発されることが示されており(47,48)、アレルギー分野では臨床試験により、抗原/アレルゲンのリンパ節内への直接提示は従来の投与よりも有効なようであることが示されている(49)。使用されるアレルゲンは低用量となり得、処置回数は大
きく低減され得、処置関連有害事象はみとめられていない。患者において鼠径部リンパ節は容易に到達可能であり、注射に伴う痛みは静脈穿刺のものより少ないと評価されている(50)。このような背景により、本発明者らの目的は、同じアプローチが、自己免疫形態である1型糖尿病を有する患者に使用され得るかどうかを試験することである。倫理的理由のため、本発明者らは成人において最初のパイロット試験を行なう。
【0373】
1.2 仮説
フェーズIIのGAD治験の有望な結果およびフェーズIIIの欧州での治験の一部プラスの結果は、GAD−ミョウバン(Diamyd)の投与は自己免疫過程を低減させ、残存インスリン分泌能の保存に寄与し得るという考えを裏付けている。これまでの試験ではDiamydの用量は20〜100μgの間のどれかであるのがよいと示されていたため、リンパ節内に直接投与する場合は3μgという低用量の3回投与で充分なはずである。GAD−ミョウバン(Diamyd)のリンパ節内への直接注射は、重篤な有害事象をもたらさず、所望の免疫学的効果を有し、有効性を改善するであろう(今後の試験で示される)。
【0374】
2.リスク−便益解析
1型糖尿病の発生率は、スウェーデンでは、フィンランドに次いで世界中の他のどの国よりも高い。発生率は数十年間で連続的に増え続けている。この疾患は治癒され得ず、予防することはできない。非常につらく、集中的で高価な処置にもかかわらず、多くの患者では命を脅かす重篤な急性合併症および後期合併症の両方が起こり、死亡率はたいへん高い。診断時、多くの患者は、いくらかわずかな残存インスリン分泌能を有している。そうでさえあれば、血中グルコースを安定に維持することがはるかに容易になり、低血糖症の発生率ならびにケトアシドーシスのリスクが低下する。患者ならびに糖尿病を有する子供の親の生活の質は、いくらかの残存インスリン分泌能さえあれば良好になる。
【0375】
成人の1型糖尿病は、疾患過程が多くの場合、より軽度であり、残存インスリン分泌能の低下が遅く、血中グルコースのコントロールがより容易であるため、小児および青年期の若者における該疾患とは異なる。しかしながら、なお大きな類似性があり、同様の処置および合併症ならびにβ細胞機能の保存が成人においても非常に重要である。
【0376】
残存インスリン分泌能の保存の有益性が大きいことは明白であり、したがって、この機能の保存を目的とした治療はかなりつらく、さらに危険かつ高価な処置を正当化させている。このように、1型糖尿病を発症時にCD3−受容体に対するモノクローナル抗体などの薬物で処置することは正当であるとみなされているが、これは、基本的には全患者に有害事象を引き起こし、その一部はかなり重篤ですらある有害事象およびリスクを引き起こす。純粋な細胞成長抑止薬ですら使用されている。
【0377】
本発明者らが提案する試験において、本発明者らは、はるかに高用量で小児および成人への投与に使用されている処置であって、数千例の患者の何年もの追跡期間中に有害事象がほとんどみられない処置であるGAD−ミョウバン(Diamyd)4μg×3回を使用する。本発明者らの試験において、本発明者らは非常に低用量を使用することを計画し、これは、一般リスクはさらに低下することが期待されるが、投与がリンパ節内で直接的あり、これにより局所反応が生じるかもしれないことを意味する。免疫系に対する効果はより顕著になり得るが、なんらの有害効果はもたらされないはずである。これまでのアレルギーでの試験(治験分担医師の1人であるHelene Zachrissonによってミョウバン−製剤化アレルゲンのリンパ節内注射が行なわれたもの)では、全身にも局所にもなんらの有害効果は示されていない)。安全性の理由のため、これが、リンパ節内へのこの型の自己抗原処置によるこれまでで最初のパイロット試験であるため、本発明者らは、まず、自由にインフォームドコンセントを示すことができる成人において試みる。
成人の1型糖尿病は若年患者よりもいくぶん軽度ではあるが、β細胞機能を保存することは非常に重要であり、したがって、提案する処置は成人患者にとっても治療的に非常に重要であり得る。
【0378】
賛否両論を要約すると、今回の参加患者、今後の試験の患者の両方にとって、非常に重要な治療上の有益性の可能性は明白であるとともに、リスクは非常に小さい。この試験が良好な処置の発展に寄与すれば、これは、大勢の患者にとって途方もなく重要なものとなろう。
【0379】
3.本試験の目的
本パイロット試験の本発明者らの目的は、GAD−ミョウバンが処置関連の重篤な有害事象なくリンパ節内に投与され、1型糖尿病の残存インスリン分泌能の保存における有効性を改善するための同じ手法での今後のフェーズII−試験が可能であり得るかどうかに関する情報を得ることである。したがって、本発明者らは、この処置によってなんらかの有害事象が生じるかどうか、ならびにどのように処置レジメンが免疫系に影響し、所望のTh−2逸脱、制御性T細胞の増加および願わくば残存β細胞機能の保存の徴候を引き起こすのかを見たいと思っている。このパイロット試験(6ヶ月間の追跡)の短期間での結果に基づき、本発明者らは次いで、若年患者を組み入れてより頑健な情報を得るために、より長期のフェーズII治験をデザインしたいと思うかもしれない。その際の長期の主目的は、患者に耐容性があり、安全であり、残存インスリン分泌能を保存することができ、患者によりよい生活の質をもたらし得、急性合併症が少なく、長期的には後期合併症のリスクが少ない、若年患者における1型糖尿病発症時の処置法を見出すことである。
【0380】
4.目的
目的:
Diamydのリンパ腺内への直接投与の安全性を評価すること、および免疫応答(51〜54)および内因性インスリン分泌の保存に対する効果(ベースライン時と6、15および30ヶ月後に測定する)を評価すること。
【0381】
5.母集団
最近1型糖尿病を発症したLinkoeping大学病院の成人患者に試験に関する情報を与え、治験への参加を依頼する。
【0382】
5.1 組み入れ基準
1.患者および保護者/親によって示されたインフォームドコンセント
2.糖尿病の期間が<6ヶ月であるADA分類による1型糖尿病
3.1型糖尿病の診断時、年齢が18.00〜29.99歳
4.空腹時Cペプチド≧0.12nmol/ml
5.陽性GADAだが<50000ランダム単位
6.女性は妊娠回避に同意しなければならず、尿での妊娠検査が陰性である
7.患者は、GAD−ミョウバン/プラセボの最後の投与の1年後まで充分な避妊の使用に同意しなければならない。
【0383】
5.2 除外基準
1.免疫抑制療法での処置歴または処置中(だが、局所または吸入ステロイド薬は許容する)
2.任意の炎症性薬物での連続処置(例えば、頭痛のため、または数日間の発熱に関連する散発的処置は許容する)
3.インスリン以外の任意の経口または注射による抗糖尿病の投薬物での処置
4.貧血の既往歴またはスクリーニング時の有意に異常な血液検査結果
5.てんかん、頭部外傷もしくは脳血管の傷害の既往歴、または近位筋の運動単位の連続活動の臨床的特徴
6.過去におけるワクチンまたは他の薬物に対する急性反応の臨床的に有意な既往歴
7.予定の最初の試験薬物の投与前4ヶ月以内の任意のワクチン(例えばインフルエンザワクチン)での処置、または試験薬物の最後の注射後、4ヶ月までに任意のワクチンでの処置の予定.
8.過去3ヶ月以内の新規化学物質での他の臨床治験への参加
9.このプロトコルの条項に従うことができないか、または従うことが嫌である
10.アルコール中毒または薬物中毒の既往歴
11.最初の投薬前の2週間以内の糖尿病以外の有意な疾病
12.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または肝炎の判明
13.授乳中または妊娠中の女性(妊娠している可能性がある女性は、GAD−ミョウバン処置前の24時間以内の現地での尿中βHCGによって除外しなければならない)
14.最後のGAD−ミョウバン処置後1年まで充分な避妊を使用しようと思わない男性または女性
15.関連する重篤な疾患または病状(例えば、皮下注射を不可能にする活動性の皮膚感染症)の存在、これは、治験担当医師の意見で患者は試験に不適格となる
16.使用説明書に従うことができない、および/または試験プロトコルに従うことができないと治験担当医師によって判断された場合
5.3 募集およびスクリーニング
適格被験体は試験の説明を受け、書面の患者情報を受け取る。試験の性質を検討する時間を持った後、治験チームに質問する機会が与えられる。この後、被験体が参加に同意した場合は、書面のインフォームドコンセント用紙に署名して日付を自ら記入する。次いで、患者は署名して日付を記入した患者情報/インフォームドコンセント用紙のコピーを受け取る。
【0384】
5.4 患者の撤退
ヘルシンキ宣言に従い、治験担当医師は患者に、任意の時点で試験から撤退する権利を有していること、およびこれが今後の処置ついてなんら偏見をもつことにはならないことを説明しなければならない。しかしながら、安全性の問題が起こらない限り、本発明者らは、有効性および安全性の可変量を解析するため、また、試験から撤退させる患者のために、試験の全期間中、患者を追跡することを計画している。どのような種類の撤退理由も、適切なCRFに記録しなければならない。
【0385】
試験からの撤退には種々のカテゴリーがある:完全撤退(すなわち、治験薬の中止、また、有効性および安全性の評価は継続)
試験へのこれ以上の参加および追跡来院(<例えば、血液検査>)からの撤退の標準的な理由は:
・患者の判断(参加の同意の撤回)
・患者がうっかり追跡を忘れる
であり得る
・さらなる治験薬の摂取からの撤退(だが、追跡来院および安全性評価は継続)の標準的な理由は:
・許容され得ない有害事象
・患者の要望
・治験担当医師の自由裁量
・患者がうっかり追跡を忘れる/欠席
・併発性疾病
・患者が妊娠する
であり得る。
【0386】
このように、リンパ節内GAD−ミョウバンは、試験に組み入れ後の患者が
−脳の損傷、てんかん、頭部外傷、神経系疾患
−1型糖尿病以外の任意の活動性の重篤なホルモン系の疾患
−他の重度の自己免疫疾患(セリアック病(これは組み入れを許容する)以外)
−免疫抑制処置
−がん、がんの処置
−インスリン以外の任意の他の糖尿病薬
−任意のワクチン接種
−薬物/アルコール中毒
を有した場合、
または患者
−試験中に妊娠したか、もしくは安全な避妊薬の使用をこれ以上は嫌がる
状態である場合、患者に投与すべきでない。
【0387】
しかしながら、患者が試験から撤退した場合はいつでも、またはそれ以上の任意の来院がない理由がどんなものでも、該患者(来院<>)に関する最後の試験評価は終了しなければならない−なぜ患者は試験から撤退したのかの理由(1つまたは複数)を記載する。患者に関するすべての記録書類は、できるだけ完全でなければならない。欠席による撤退は、治験担当医師が欠席の理由を聞いて追跡しなければならない。併発性疾病または有害事象による撤退は、症例報告書に充分に記録しなければならず、入手可能な場合および/または適宜、補助情報を追加する。
【0388】
6.処置手順
6.1 試験デザインおよび処置
治験は、男女とも18.00〜29.99歳であり、スクリーニング時(来院1回目)に6ヶ月以内のT1Dと診断され、空腹時Cペプチドレベルが0.12nmol/L以上のGADA陽性T1D患者における単一施設非盲検パイロット試験である。全部でおよそ5人の患者をリンシェーピング市(スウェーデン)内の1つの施設に集める。患者を、処置開始の10〜21日前のスクリーニングの来院時(来院1回目)に適格性について評価する。スクリーニングを受けた患者に連続するスクリーニング番号を割り付け、このスクリーニング番号を、試験全体を通して患者の識別に使用する。
【0389】
試験への組み入れ資格を得た患者を、次いで、その後の来院時に以下の表1に従って治験薬を投与される試験に登録する。患者を、施設への8回の来院を含む合計30ヶ月の試験期間、追跡する。
【0390】
治験来院の概要については以下の表1を参照のこと。
【0391】
【表2】
【0392】
6.2 評価および手順
1.新規に診断された1型糖尿病患者に対する標準的なインスリン処置、教育および心理社会的サポート
2.体液、電解質および酸塩基平衡の正規化
3.その後、試験に関する情報
4.患者が遅くとも診断の120日後にインフォームドコンセントを示した場合、CペプチドおよびGADAの濃度以外の基準に従って適格の患者の空腹時静脈血試料を用いてスクリーニングを行なう(来院1回目)。
【0393】
5.ベースライン(来院2回目)時、6、15および30ヶ月目、MMTTによる残存内因性インスリン分泌の評価。治験来院ごとに、血液試料によってHbA1c、安全性(血液検査および化学検査)、自己抗体力価(GAD65,IA−2)、免疫学を追跡する。内因性インスリン量/24時間、有害事象および併用薬を治験来院ごとに記録する。
【0394】
6.自己報告の低血糖症(他人による助けが必要および/または発作および/または意識不明と定義する)を治験来院ごとに記録する。
【0395】
7.他の医学的問題の症状または徴候があれば、臨床医の自由裁量で処置すべきである。
【0396】
検査は以下のセクション7の表2に従って、症例報告書(CRF)に概要が示された順に行なう。
【0397】
6.2.1 全来院、来院1回目〜7回目
患者は、一晩の絶食(>10時間,水は許容する)後の午前中に、すべての治験来院に出席しなければならないことに注意のこと。感染の形跡(発熱など)がある患者では、5日間、または患者が回復するまでこの完結(complete)来院を遅らせなければならない。
【0398】
6.2.2 GAD−ミョウバンの投与,来院2、3および4回目
投与後、患者は次の1時間、治験施設の近辺に滞在するものとし、投与部位を治験担当医師/スタディナースが注射の1時間後に検査する。
【0399】
6.2.3 混合食負荷試験(MMTT),来院2、5、6および7回目
・MMTTはCRFの使用説明書に従って行なわればならない。患者は:
・一晩の絶食(>10時間)後に治験施設に来なければならない、すなわち、患者は食べ物を食べられないが、水は飲んでもよい。
【0400】
・MMTTの前の6時間以内は短期作用性/直接作用性のインスリンを摂取してはならない。患者は、MMTTの前日/前の晩の基礎インスリンの摂取は許容するが、MMTTの前の午前中は不可である。
【0401】
・CSII(インスリンポンプ)を伴う患者は基礎インスリン投与を継続しなければならないが、MMTTの前の最後の6時間は、追加ボーラス投与は行なわない
・治験日の午前中、患者の家庭用血中グルコース測定器で4〜12mmol/Lによって規定する範囲の空腹時血漿グルコースレベルを有する患者でなければならない。患者が上記の基準のすべてを満たしていない場合、MMTTをスケジュール変更しなければならず、患者は、可能であれば5日以内に治験施設に戻さなければならない。
【0402】
安全性の理由のために被験体がインスリンを摂食または摂取する必要がある場合も、来院をスケジュール変更しなければならない。
【0403】
6.3 試験室試験および検査:
1.免疫学的試験:
a.自己抗体(抗GAD65、抗インスリン、抗IA−2、ZnT8)
b.関連サイトカインおよびケモカインを調べる(下記参照)
c.T細胞を分類し、試験する(下記参照)
2.遺伝学:
a.HLA測定を行ない、遺伝子を糖尿病の発症と関連づける
b.糖尿病関連遺伝子の重要性を明らかにするためのアレイ試験
3.ウイルスアッセイ:
a.遺伝学的、免疫学的および微生物学的試験が使用され得る。
【0404】
4.糖尿病の状態:
a.HbA1c
b.空腹時グルコースおよび空腹時Cペプチド
c.食事刺激性グルコースおよびCペプチド
5.安全性のための血液試料採取:
a.血液検査
b.化学検査
6.4 病歴
治験担当医師による被験体の過去の病歴の完全な調査を行ない、CRFの病歴の項目に記録する。
【0405】
既に存在している病状/疾患はすべて、スクリーニングの来院時(来院1回目)に、CRFの病歴の項に報告する。
【0406】
被験体の1型糖尿病の診断日および1型糖尿病の家族歴も記録する。
6.5 神経学的検査を含む身体検査
スクリーニング来院時(来院1回目)、患者は一般身体検査および神経学的検査を受け、任意の所見は、既に存在している病状としてCRFの病歴の項に報告する。
【0407】
その後の治験来院の際、患者は、新たな疾病状態または既に存在しているものの任意の悪化について検査される。既に存在している病状または新たな病状の任意の変化CRFのAEの頁および併用薬の頁に示された任意の薬物治療の項目に入力しなければならない。
【0408】
患者は、医師による限定的身体検査に加えて、スクリーニング時、0、6、15および
30ヶ月目に、規格化された臨床神経学的検査を受ける。神経学的検査は、神経筋疾患のあるかもしれない軽度の徴候、例えば、強度障害、バランスおよび協応を検出するために行なう。
【0409】
神経学的検査には:
・四肢の反射
・ロンベルグ試験(バランスおよび協応)
・線上を2メートル歩かせる(バランスおよび協応)
・左および右の片足で、それぞれ15秒間、立たせる(バランスおよび協応)
・指鼻試験(協応)
・真似(脳神経)
・バビンスキー反射(中枢機能)
・筋強度(握手)二頭筋、三頭筋、遠位伸筋、および屈筋
を含める。
【0410】
また、これらの検査は、スケジューリングされた次の来院までの間に、治験担当医師の自由裁量で繰り返される場合もあり得る。脳波図(EEG)を用いた神経系疾患に関するスクリーニングは、感度および特異性が低いため含めない。しかしながら、神経学的機能障害のなんらかの徴候が検出された場合は、患者は、さらなる評価のために神経科医に調べてもらわなければならない。
【0411】
6.7 併用薬
試験中、使用している併用薬がある場合は、治験担当医師が本試験に関連するとみなすものであれ、そうでなかれ、CRFの併用薬ログ(log)に報告しなければならない。以下のセクション8.5も参照されたい。
【0412】
7. 手順のスケジューリング
【0413】
【表3】
【0414】
7.1 来院
最初の来院であるスクリーニング来院(来院1回目)は予定の来院2回目(ベースライン)の10〜21日間前に行なわなければならない。次いで、来院3回目と4回目は±3日間(2回目と3回目のGAD−ミョウバン投与)および来院5回目、6回目は±14日間および来院7回目は±30日間の来院時間枠でスケジューリングしなければならない。来院はすべて、来院スケジュールによるベースライン来院(来院2回目)から起算しなければならないことに注意されたい。また、来院は、試験プロトコルが順守されるように来院時間枠内になされなければならないことにも注意されたい。
【0415】
患者来院のスケジュール、来院時間枠および試験薬物投与については、上記の表1および2を参照されたい。
【0416】
8.治験薬
8.1 治験薬
以下の医薬品を本試験において使用する:
治験薬:GAD−ミョウバン(Diamyd),4μg×3回(1ヶ月間隔で3回投与)
IMPサプライヤー:Diamyd Medical AB(ストックホルム,スウェーデン)
8.2 サプライ
GAD−ミョウバン(Diamyd)の製剤はDiamyd Medicalによって供給。これは、包装済みの投薬物としてDiamyd Medicalから各地の薬局に供給される。投与はすべて病院で行ない、権限を与えられた熟練の治験スタッフのみによって取り扱われる。治験薬には、地方条例に従って情報がラベル表示される。GAD−ミョウバンは、保護された場所(例えば、鍵付きキャビネットまたは薬物保管庫)の冷蔵庫内に2〜8℃で保存し、意図されない使用から保護する。治験薬にはすべて、地方条例に従って情報がラベル表示される。
【0417】
8.3 投薬量および投与
GAD−ミョウバン:4μgを鼠径部領域のリンパ節内に1ヶ月間隔で3回投与(超音波手法の補助により)
8.4 処置期間
8.3参照
8.5 併用薬
全身性の免疫モジュレーション薬およびインスリン以外の他の糖尿病薬は、市販品であれ、そうでなかれ不可である。
【0418】
9.応答の可変量および転帰
9.1 有効性の探索的評価
9.1.1.有効性の可変量
これはフェーズIのパイロット試験であるため、有効性の一次エンドポイントはないが、それでも、本発明者らは
・空腹時CペプチドおよびMMTT時のCペプチド(90分間の値および0から120分までのAUC平均値)のベースラインからそれぞれ6ヶ月目、15ヶ月目、30ヶ月目までの変化
・例えば、IFN−γ、TNF−α、IL−1β、IL−17に対するIL−5、10、13の比の増大および制御性T細胞の増加として観察される細胞媒介性免疫応答のTh2逸脱。ベースラインとその後の来院時との間の変化
・炎症マーカー、例えばTNF−α、IL−1β、IL−2、IL−17.ベースラインとその後の来院時との間の変化
・ヘモグロビンA1c(HbA1c),ベースラインとその後の来院時との間の変化
・体重1kgあたり24時間あたりの内因性インスリン量,ベースラインとその後の来院時との間の変化
を追跡する。
【0419】
10.統計学的方法論およびデータ管理
10.1 試験デザイン
DIAGNODE−1試験は非盲検のフェーズIの介入パイロット試験である。
【0420】
治験参加者:新規に診断された古典的1型糖尿病患者:N=5.年齢18〜29.99歳.スウェーデン内の1つの内分泌クリニックから募集
10.2 症例数設定
検定力分析:このパイロット試験に関する正式な検定力分析は行なわない。
【0421】
10.3 統計学的解析の計画
簡単には、以下のような解析を計画する:
連続可変量はすべて、以下の記述統計:観察結果の数(n)、平均値、標準偏差、最小値、中央値および最大値で示す。分類的性質の可変量はすべて、頻度とパーセンテージで示す。記述統計の集計は来院ごとに分ける。適宜、ベースライン(スクリーニング)記述統計も含める。
【0422】
個体群統計および他のベースラインの特徴
個体群統計およびベースラインの特徴は記述統計(要約表)を用いて示す。
【0423】
安全性の可変量および有効性データ
AE/SAEデータは、観察されたすべてのAE/SAEの頻度および発生率を規格化された表作成を用いて示す。頻度および発生率は各患者ベースで計算する。有害事象は全身、因果関係および重症度によってまとめる。他の安全性データは記述統計によって示す。
【0424】
Cペプチドおよび免疫系に関する有効性データならびに有害事象および他の安全性データは記述的にまとめる。
【0425】
6ヶ月後、安全性データの解析(結果をフェーズIIのDIAGNODE治験のデザインに使用する)。
【0426】
10.4 試験母集団
治療企図母集団
患者は、その群の全治験薬投与のうち少なくとも1回の投与を受け、後日の来院時に評価を受けた場合、有効性の解析の当該一次治療企図母集団に含める。
【0427】
プロトコル毎の母集団
厳密なプロトコル毎の母集団を対象にするため、被験体は、なんら大きな違反なく試験プロトコルに従わなくてはならなかった。抜けた任意の検査は繰り越した最後の観察結果を代用するが、1回以下の来院時の検査がなくなり得る。
【0428】
全母集団
少なくとも1回の処置(来院2回目)を受けた後に撤退した任意の患者は安全性解析(有害事象および安全性パラメータ)に含める。全患者のデータを一覧にし、撤退患者のリストを、すべての撤退理由とともに示す。
【0429】
10.5 データ収集/症例報告書
症例報告書(CRF)は、各患者のデータを記録するために供給される。正確なデータ収集がタイムリーな様式でなされることが重要であるため、治験担当医師または委任された者はCRFを迅速に完成させるものとする。モニターにより、CRFについてさらなるデータまたはデータの解明が求められた場合は、その要請に対して適当な時期に満足のいくように回答がなされなければならない。
【0430】
確実にこのような症例報告書を正確に完成させることは、治験担当医師の責任である。
治験担当医師は指定された署名の頁に署名し、症例報告書が正確であり、完成されていることを確証する。
【0431】
読み易さを確保するため、CRFはブロック体の大文字で、黒または青のボールペン(鉛筆、マジックペンまたは万年筆ではなく)で完成させるのがよい。CRFに対する何らかの訂正は治験担当医師またはその指名者が行なわなければならない。元の記入事項に一本線を引かなければならない。訂正部には日付とイニシャルを記載しなければならない。正しくない記入事項は、修正液を塗ったり、消し去ったり、なんらかの様式で判読できないようにしてはならない。先の検査から変化がない場合であっても、データ収集を完全にするために、CRFの各セクションにおいて繰り返された質問には漏れなく回答しなければならない。抜けているデータについてはすべて、治験担当医師が正当な説明を行なわなければならない。
【0432】
10.6 データ管理
データは暗号化してコンピュータデータベースに入力する。データ(データの品質管理を含む)の取り扱いは、規制当局のガイドライン(例えば、医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization)[ICH]および医薬品の臨床試験の実施の基準(Good Clinical Practice)[GCP])に準拠する。
【0433】
11.規制当局の行政手続き
任意の規制要件は、試験開始前に満たされていなければならない。スポンサーは規制当局の承認を適切な当局に対して申請しなければならない。治験施設、設備、検査室ならびにすべてのデータ(原始データを含む)および記録書類は当局による検査が可能になっていなければならない。
【0434】
11.2 患者情報/インフォームドコンセント
治験担当医師には、患者に対し、試験の性質、目的、考えられ得るリスクおよび便益に関して口頭および書面での充分で適切な情報を与える責任がある。また、患者は、任意の時点で試験から自由に撤退できることを通知されていなければならない。患者は、署名する前に情報を読んで理解するための妥当な期間を与えられなければならない。治験担当医師は、署名されたインフォームドコンセントを全患者から、患者をいずれかの試験関連手順に含める前に入手する責任がある。患者情報およびインフォームドコンセント用紙のコピーを患者に渡す。
【0435】
11.4 患者の処置計画
すべての患者は試験中、1型糖尿病の標準治療を受け続ける。個々に試験を終了した後、患者は、治験参加前に受けていた標準処置に戻される。
【実施例3】
【0436】
この実施例の治療レジメン(regime)は「オルトゴナル」作用を有し、T1Dの自己免疫を長期的に緩和する。免疫系をエタネルセプトによって下方調節させ、これによってさらにβ細胞周囲の炎症を下方調節させると同時に、β細胞自己抗原(GAD)を、寛容性誘発能をビタミンDでの処理によって向上させた樹状細胞によって提示させる。
【0437】
試験:GAD−ミョウバン(Diamyd(登録商標))、エタネルセプトおよびビタミンDからなる併用療法の寛容性を、1型糖尿病と新規に診断された小児および青年期の若者において評価するための非盲検の治験
活性成分:組換えヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼ(rhGAD65)、カルシフェロール(ビタミンD)、エタネルセプト
開発段階:フェーズIIa
目的:
・rhGAD65、ビタミンDおよびエタネルセプトでの併用療法の寛容性を評価する
・上記の処置がどのように免疫系および内因性インスリン分泌に影響するかを評価する
試験デザイン:
本試験は、多施設非盲検パイロット臨床試験である。すべての患者に、1日目から1日あたり2000IUのビタミンDを経口で15ヶ月間投与し、1日目から90日目までエタネルセプト(エンブレル)の皮下注射を0.8mg/kg体重(最大50mg)で1週間に1回行ない、20μgのDiamydの2回の皮下注射をプライム−ブーストレジメンで30日目と60日目に行なう。患者を寛容性について6ヶ月間(本試験期間,6回の来院)、その後、さらに24ヶ月間(延長試験期間,3回の来院)評価する。全試験期間は30ヶ月間である。
【0438】
被験体の選択:患者は、年齢が8.00〜17.99歳であり、スクリーニング時にその前の100日以内に1型糖尿病(T1D)と診断された患者でなければならない。患者は、空腹時Cペプチドが≧0.12nmol/L(0.36ng/mL)であり、高レベルのGAD65抗体が存在している場合、登録に適格である。
【0439】
予定被験体数:およそ20人の患者を登録する。
処置群の説明:
単独の1つの処置群である。患者を適格性について、処置開始の2〜4週間前のスクリーニングの来院時(来院1回目)に評価する。来院2回目(1日目)、試験に適格である患者に、上記のとおりに処置を開始する。
【0440】
エンドポイント
一次エンドポイント:
Diamyd、ビタミンDおよびエタネルセプトでの併用療法の寛容性を、6ヶ月目(本試験期間)、9、15および30ヶ月目(延長試験期間)に評価すること
寛容性を評価するための可変量:
・注射部位における反応
・感染
・有害事象(AE)の発生
・重篤な有害事象の発生
・生理学的および神経学的評価
・検査測定値(生化学検査および血液検査)、例えば、血清中のカルシウムおよびビタミンD
・GAD65AB力価(GADA)
二次エンドポイント:
上記の処置がどのように、免疫系および内因性インスリン分泌に影響するかを、6ヶ月目(本試験期間)、9、15および30ヶ月目(延長試験期間)に評価すること
免疫系に対する影響を評価するための可変量:
・炎症マーカー、特に、TNF−α、IL−1β、IL−2、IL−17
・例えば、IFN−γ、TNF−α、IL−1βおよびIL−17に対するIL−5、10、13の比の増大として観察される細胞媒介性免疫応答のTh2逸脱
・制御性T細胞の増加
内因性インスリン分泌の効果を評価するための可変量:
・MMTT時のCペプチド(90分間の値および0から120分までのAUC平均値)
・0.2nmol/Lより上の最大被刺激Cペプチドレベルを有する患者の割合
・空腹時Cペプチド
・ヘモグロビンA1c(HbA1c)
・体重1kgあたり24時間あたりの内因性インスリン量
症例数:
これは、処置が耐容性であるかどうかを調べるだけの非盲検パイロット試験であり、β細胞機能および/または免疫系に対してマイナスの効果を引き起こさないため、実際の症例数計算は行なわない。
【0441】
すべての可変量は記述的にまとめる。
【実施例4】
【0442】
治験名:小児における1型(真性)糖尿病の進行に対するGABAまたはGABA/GAD併用の効果
開発段階:ヒトにおけるパイロット試験
目的:
・最近発症した1型糖尿病における残存インスリン分泌能の保存に対するGABAでの処置の安全性および影響を評価する。
【0443】
・最近発症した1型糖尿病における残存インスリン分泌能の保存に対するGAD−ミョウバン(Diamyd(登録商標))+GABAの2回の投与での処置の安全性および影響を評価する。
【0444】
試験デザイン:試験は、3群の無作為二重盲検プラセボ対照比較臨床試験である。患者に
i)経口GABA,kgあたりの用量設定で1日2回、12ヶ月間+20μgのDiamydの2回の皮下注射をプライム−ブーストレジメンで30日間にわたって
ii)経口GABA,kgあたりの用量設定で1日2回、12ヶ月間
iii)プラセボ
のいずれかを投与する。
【0445】
患者を合計12ヶ月追跡する。
被験体の選択:患者は、年齢が4〜17歳であり、無作為化の前4週間以内に1型糖尿病(T1D)と診断された被験体でなければならない。患者は、高レベルのGAD65抗体が存在している場合、登録に適格である。
【0446】
予定被験体数:およそ75人の患者を登録する。
処置群の説明:
患者を適格性について、無作為化の前に評価する。来院1回目(1日目,ベースライン)に、試験に適格である患者を3つの処置群のうちの1つに無作為化する。
【0447】
・25人の患者を、経口GABAを1日2回、kgあたりの用量設定で1日目から12ヶ月目までの投与に割り付ける。また、20μgのDiamyd(GAD−ミョウバン)を用いた2回の皮下注射を1日目と1ヶ月目に、すなわち、1回のプライム投与と1回のブースター投与を行なう(合計で40μg用量のDiamydを与える)。
【0448】
・25人の患者を、経口GABAを1日2回、kgあたりの用量設定で1日目から12ヶ月目までの投与に割り付ける。また、プラセボDiamydを用いた2回の皮下注射を1日目と1ヶ月目に行なう
・25人の患者を、経口プラセボGABAを1日2回、kgあたりの用量設定で1日目から12ヶ月目までの投与に割り付ける。また、プラセボDiamydを用いた2回の皮下注射を1日目と1ヶ月目に行なう
一次エンドポイント:
・膵臓のβ細胞機能に対するGABAおよびGABA+GAD−ミョウバン併用の効果(年齢適合プラセボ対照と比べた食事刺激性Cペプチド分泌レベルによって測定)を、1年間の処置の前と後に評価する。
【0449】
二次エンドポイント:
・自己免疫性糖尿病の自己抗体:GAD−65、ICA512および亜鉛トランスポーター8(ZnT8A)に対するGABAおよびGABA+GAD−ミョウバン併用の効果ならびにHbA1c、空腹時および刺激時のグルコースおよびグルカゴンレベル、空腹時Cペプチドならびに参加者の1日のインスリン使用量に対する効果を、ベースラインからその後の来院まで評価する
・GABAおよびGABA/GAD−ミョウバン併用の安全性を評価する
安全性
安全性評価には、注射部位における反応の観察結果、有害事象(AE)の発生、検査測定値、神経学的評価、および限定的身体検査を含める。
【0450】
症例数:
本試験案の症例数は75例の小児;処置群50例およびプラセボ群25例である。これらの群間のベースラインから12ヶ月後のCペプチド測定値の一次比較のため、αを0.05およびCペプチドAUCの平均(SD)を1.0(0.4)と仮定すると、この症例数では、25%差を検出するためには約40%の検定力および50%差を検出するためには約97%の検定力となる。有害事象および他のデータは記述的にまとめる。
【実施例5】
【0451】
活性成分名:組換えヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼ(rhGAD65)
治験名:多数の膵島細胞自己抗体を有する小児において、Diamyd(登録商標)の安全性および1型糖尿病への進行に対する効果を調べるための二重盲検無作為化医師主導型試験
目的:
・主目的は、Diamyd(登録商標)が1型糖尿病のリスクがある小児において安全であることを実証することである。被験体を5年間追跡する。
【0452】
・副次的目的は、Diamyd(登録商標)が、多数の陽性膵島細胞自己抗体によって示される進行中の持続性β細胞自己免疫を有する小児において、臨床的1型糖尿病に至るこの自己免疫過程を遅延または停止させ得るかどうかを評価することである。
【0453】
試験デザイン:
本試験は、単一施設での2群の無作為二重盲検プラセボ対照比較臨床試験である。試験参加者に、Diamyd(登録商標)20μgまたはプラセボのいずれかの2回の皮下注射を、プライム−ブーストレジメンで30日間にわたって行なう。試験参加者を5年間追跡する。
【0454】
診断後介入プロトコル(PDIP)
試験薬物の有効期間を保留して、試験期間中に臨床的1型糖尿病と診断された小児に、本試験の予防パートでどの処置群に無作為化されたかに関係なく、本治験において診断後介入プロトコル(PDIP)で、引き続き、さらに2回のDiamyd(登録商標)の注射を受けることを提案する場合があり得る。
【0455】
被験体の選択:
被験体は、4.00歳より上であり、GADAと少なくとも1種類のさらなる1型糖尿病関連自己抗体が陽性である(IA−2Ab>5、ZnT8R/W/Q/A Ab>72
またはIAA>0.8)被験体でなければならない。
【0456】
予定被験体数:50人の患者を登録する。
処置群の説明:
患者を適格性について、最初の注射のおよそ30日間前のスクリーニングの来院時(来院0回目)に評価する。来院1回目(1日目)、試験に適格である患者を2つの処置群のうちの1つに無作為化する:
・25人の患者を、20μgのDiamyd(登録商標)を用いた2回の皮下注射を1日目と30日目の投与、すなわち、1回のプライム投与と1回のブースター投与に割り付ける。
【0457】
・25人の患者を、プラセボの2回の皮下注射を1日目と30日目に各1回の投与に割り付ける。
【0458】
診断後介入プロトコル(PDIP)
糖尿病の診断から4ヶ月以内に、参加者は、Diamyd(登録商標)20μgの1回の注射を診断後追跡中に1日目に、続いてDiamyd(登録商標)の2回目の注射を30日目にプライムブースト様式で受ける(診断前にプラセボの投与に無作為化された参加者には総用量40μgのDiamyd(登録商標)を投与し、診断前にDiamyd(登録商標)の投与に無作為化された参加者には総用量80μgのDiamyd(登録商標)を投与する)。
【0459】
症例数:
50例までの小児にDIAPREV−IT 2への参加を依頼する。1種類より多くの陽性膵島細胞自己抗体を有する小児の50%は5年間以内に1型糖尿病を発症することが予測される。
【0460】
解析:
処置の安全性と有効性の両方に取り組むために試験データの解析を行なう。
【実施例6】
【0461】
治験名:多数の膵島細胞自己抗体を有する小児において、ビタミンDと併用したDiamyd(登録商標)の安全性および1型糖尿病への進行に対する効果を調べるための二重盲検無作為化医師主導型試験
活性成分名:組換えヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼ(rhGAD65)、カルシフェロール(ビタミンD3)
目的:
・主目的は、比較的高い用量のビタミンDで処置した小児でDiamyd(登録商標)が、多数の陽性膵島細胞自己抗体によって示される進行中の持続性β細胞自己免疫を有する小児において、臨床的1型糖尿病に至るこの自己免疫過程を遅延または停止させ得るかどうかを評価することである。
【0462】
・副次的目的は、Diamyd(登録商標)が1型糖尿病のリスクがある小児において安全であることを実証することである。
【0463】
試験デザイン:
本試験は、単一施設での2群の無作為二重盲検プラセボ対照比較臨床試験である。試験参加者に、Diamyd(登録商標)20μgまたはプラセボのいずれかの2回の皮下注射を、プライム−ブーストレジメンで30日間にわたって行なう。すべての試験参加者にビタミンDを2000IEの日用量で全試験期間中、補給する(どの処置群に無作為化さ
れるかに関係なく)。試験参加者を5年間追跡する。
【0464】
診断後介入プロトコル(PDIP)
試験薬物の有効期間を保留して、試験期間中に臨床的1型糖尿病と診断された小児に、本試験の予防パートでどの処置群に無作為化されたかに関係なく、本治験において診断後介入プロトコル(PDIP)で、引き続き、さらに2回のDiamyd(登録商標)の注射を受けることを提案する場合があり得る。PDIPに登録された小児はすべて、元の予防プロトコルを中止し、PDIPによる安全性と有効性について徹底的に、またはPDIPでのDiamyd(登録商標)の最初の注射後15ヶ月間、追跡される。
【0465】
被験体の選択:
被験体は、年齢が4.00〜17.99歳であり、GADAと少なくとも1種類のさらなる1型糖尿病関連自己抗体(IA−2A、ZnT8R/W/QAまたはIAA)が陽性である被験体でなければならない。
【0466】
予定被験体数:およそ80人の患者を登録する。
処置群の説明:
患者を適格性について、最初の注射のおよそ30日間前のスクリーニングの来院時(来院0回目)に評価する。来院1回目(1日目)、試験に適格である患者を2つの処置群のうちの1つに無作為化する:
・およそ40人の患者を、20μgのDiamyd(登録商標)を用いた2回の皮下注射を1日目と30日目の投与、すなわち、1回のプライム投与と1回のブースター投与に割り付ける。
【0467】
・およそ40人の患者を、プラセボの2回の皮下注射を1日目と30日目に各1回の投与に割り付ける。
【0468】
どちらの処置群にもビタミンD3を2000IEの日用量で5年間の全試験期間中、補給する。
【0469】
診断後介入プロトコル(PDIP)
・臨床的1型糖尿病の診断から4ヶ月以内に、参加者は、本試験の予防パート(診断前)でどの処置群に無作為化されたかに関係なく、PDIPの1日目にDiamyd(登録商標)20μgの1回の注射、続いて、30日目にDiamyd(登録商標)の2回目の注射をプライムブースト様式で受ける。
【0470】
エンドポイント:
一次エンドポイント:
最初の注射後5年目における、プラセボ処置群と比べたときのDiamyd(登録商標)処置群における臨床的1型糖尿病と診断された被験体の割合。
【0471】
二次エンドポイント:
ベースライン時に正常な糖代謝を有する小児の群における安全性および正常から糖代謝異常への代謝状態の変化、ならびにプラセボで処置した小児と比較したときの、ベースラインスクリーニング時に糖代謝異常を有した小児における、Diamyd(登録商標)で処置した多数の膵島自己抗体を有する非糖尿病の小児における代謝状態の進行を評価すること。
【0472】
安全性を評価するための可変量:
・注射部位の反応
・有害事象(AE)の発生
・検査測定値(生化学検査および全血球算定(CBC)を含む血液検査)、例えば、血清中のカルシウムおよびビタミンD3
・尿検査
・神経学的評価を含む身体検査
・エピトープ特異的GADA力価、アイソタイプおよび亜型ならびにGADAに対する抗イディオタイプ自己抗体
代謝状態:
・a)F−グルコース≧6.1mmol/L
b)OGTTにおいて30、60、90分目の最大p−グルコース≧11.1mmol/L
c)OGTT時の120分間のp−グルコース≧7.8mmol/L
d)HbA1c≧39mmol/mol
のいずれかによって規定される正常から糖代謝異常への変化
糖代謝異常は2回目の来院時に確認しなければならない。このエンドポイントをベースラインスクリーニング時に正常な糖代謝を有した小児の群に使用する。
【0473】
・2回目の来院に確認される、上記の可変量のうちの1つまたはいくつかから糖代謝低下のさらなる徴候への糖代謝異常の進行。このエンドポイントを、ベースライン時に糖代謝異常を有した小児の群に使用する。
【0474】
探索的エンドポイント:
・追跡1、2、3および4年目における臨床的1型糖尿病と診断された被験体の割合
・ベースライン来院から臨床的1型糖尿病の診断までの期間
・種々の時点における以下の枢要な代謝可変量のベースラインからの変化:HbA1c、IvGTTでの第1相インスリン応答およびK値、OGTTでのp−グルコースおよびCペプチドのAUC、OGTT後120分間のグルコースおよびCペプチド、空腹時のCペプチド、インスリンおよびグルコース
・他の代謝可変量のベースラインからの変化:IvGTTでのCペプチド、グルコースおよびインスリンのAUC、OGTTでのインスリンのAUC、OGTT時のp−グルコース最大変化
症例数:
80例までの小児にDIAPREV−IT 2への参加を依頼する。多数の自己抗体を有する未処置の小児の50%が5年間以内に1型糖尿病を発症することが予測される。この頻度は、これまでに、糖尿病患者の親戚および一般集団において同様に報告されている。処置された小児の20%が同期間内に1型糖尿病を発症する場合、本発明者らは、40+40=80例の小児の群でα=5%で82%の検定力を有することになる。P値<0.05を有意性レベルとして使用する。
【0475】
解析:
処置の安全性と有効性の両方に取り組むために試験データの解析を行なう。統計解析の前に統計解析計画書(SAP)を作成する。
【0476】
解析は、パラメトリック統計を用いることによって行なう。可変量の正規性の基準が満たされない場合は(例えば、コルモゴロフ−スミルノフ検定)、ウィルコクスン型のノンパラメトリック統計を使用する。4フィールドテーブルをフィッシャーの正確確率検定を用いて解析する。糖尿病までの期間は、生命表解析、例えばカプラン−マイヤーおよびコックス回帰を用いて解析する。有効性の解析は、パープロトコル(PP)ベースならびに治療企図(ITT)ベースで行なう。ITTでは、繰り越した最後の観察結果を適用する。
【0477】
有害事象および他の安全性データは記述的にまとめる。
【実施例7】
【0478】
治験名:1型糖尿病と新規診断された若年成人において安全性、免疫応答および糖尿病状態を評価するためのビタミンDと併用した漸増反復用量のDiamyd(登録商標)のフェーズIIの2群での多施設無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験
活性成分名:組換えヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼ(rhGAD65)およびカルシフェロール(ビタミンD)
目的:
主目的
・漸増反復用量のDiamyd(登録商標)をビタミンDと併用して投与することの安全性を評価すること
副次的目的
・漸増反復用量のDiamyd(登録商標)をビタミンDと併用して投与することの免疫系の影響を評価すること
・漸増反復用量のDiamyd(登録商標)をビタミンDと併用して投与する前と後において糖尿病状態の可変量をDiamydとプラセボで比較すること
試験デザイン:
本試験は、2群での多施設無作為二重盲検プラセボ対照比較臨床試験である。適格患者に、最初のDiamyd(登録商標)注射の前の1ヶ月間、1日あたりビタミンDを経口で投与する。1ヶ月目(ベースライン)から全患者に維持用量のビタミンDをさらに5ヶ月間投与する。
【0479】
漸増用量(またはプラセボ)のDiamyd(登録商標)の毎週皮下注射を1ヶ月目(ベースライン)から13週間にわたって(用量は段階的に増大)投与し、それ以降は、最大用量を2、4および8週間空けて(15週目から27週目まで)投与する(維持用量)。次いで、維持用量を8〜12週間毎に1年間投与する。患者を、安全性および免疫学的パラメータについて6ヶ月目に評価し、次いで、糖尿病状態の可変量について15ヶ月目と30ヶ月目に評価する。全試験期間は30ヶ月間である。
【0480】
被験体の選択:患者は、年齢が18〜30歳であり、スクリーニング時に前の6ヶ月以内に1型糖尿病(T1D)と診断された被験体でなければならない。患者は、空腹時Cペプチドが≧0.12nmol/L(0.36ng/mL)であり、高レベルのGAD65抗体が存在している場合、登録に適格である。
【0481】
予定被験体数:およそ40人の患者を登録する。
処置群の説明:
患者を適格性について、無作為化の2〜4週間前のスクリーニングの来院時(−14〜28日目)に評価する。すべての適格患者に1日目から、1日あたり7000IUのビタミンDを経口で1ヵ月間(month days)、最初のDiamyd(登録商標)/プラセボ注射前にビタミンDレベルが>70nM/Lより上になることが確実になるように投与する。1ヶ月目(ベースライン)から全患者に、1日あたり2000IUの維持用量のビタミンDをさらに5ヶ月間投与する。
【0482】
1日目、試験に適格である患者を2つの処置群のうちの1つに無作為化する:
・およそ20人の患者を、漸増用量のDiamyd(登録商標)の皮下注射、ベースライン(1ヶ月目)から開始して以下のとおり:0.4;0.8;2;3.2;4;6.4;8;12;16;20;24、32、40μgのDiamyd(登録商標)を毎週の投与に割り付け、それ以降は、40μgのDiamyd(登録商標)を15週目から27週
目まで2、4および8週間空けて投与する。その後は、40μgのDiamyd(登録商標)を8〜12週間毎に1年間投与する。ビタミンDは上記のとおりに投与する(1日目から)。
【0483】
・およそ20人の患者を、上記と同じタイムスケジュールでのプラセボの皮下注射の投与に割り付ける。ビタミンDは上記のとおりに投与する(ビタミンDのプラセボはなし)。
【0484】
患者を、6ヶ月目、15ヶ月目および30ヶ月目の3回の追跡来院で追跡する。
エンドポイント:
一次エンドポイント:
漸増反復用量のDiamyd(登録商標)をビタミンD処置と併用して投与することの安全性を6、15および30ヶ月目に評価すること。
【0485】
安全性を評価するための可変量:
・注射部位の反応
・有害事象(AE)の発生
・検査測定値(生化学検査および血液検査)
・尿検査(微量アルブミン尿症、クレアチニン)
・神経学的評価を含む身体検査
・GAD65AB力価(GADA)
二次エンドポイント:
漸増反復用量のDiamyd(登録商標)をビタミンD処置と併用して投与する前と後において、Diamydおよびプラセボとの間の免疫系の影響および糖尿病状態の可変量を15ヶ月目と30ヶ月目に評価すること。
【0486】
免疫系に対する影響を評価するための可変量:
・炎症マーカー(TNF−α、IL−1β、IL−2、IL−17)
・細胞媒介性免疫応答のTh2逸脱(IFN−γ、TNF−α、IL−1βおよびIL−17に対するIL−5、10、13の比の増大として観察される)
・制御性T細胞の増加
内因性インスリン分泌の効果を評価するための可変量:
・ヘモグロビンA1c(HbA1c),ベースラインとその後の来院時との間の変化
・体重1kgあたり24時間あたりの内因性インスリン量,ベースラインとその後の来院時との間の変化
・低血糖症の自己報告の症状発現の回数
・空腹時Cペプチド,ベースラインとその後の来院時との間の変化
・MMTT時の0から120分までのCペプチドのAUC平均値,ベースラインとその後の来院時との間の変化
・MMTT時の30、60、90および120分目におけるCペプチド測定値
・MMTT時の最大Cペプチド、ベースラインとその後の来院時との間の変化
・0.2nmol/Lより上の最大被刺激Cペプチドレベルを有する患者の割合
症例数:
これは、種々の処置が安全であるかどうかを調べるだけの試験であり、β細胞機能および/または免疫系に対してマイナスの効果を引き起こさないため、実際の症例数計算は行なわない。有害事象および他の安全性データは記述的にまとめる。免疫学的パラメータおよび糖尿病状態の可変量は記述的にまとめる。