特開2020-125417(P2020-125417A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社スギノマシンの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-125417(P2020-125417A)
(43)【公開日】2020年8月20日
(54)【発明の名称】セルロース繊維水系分散体
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/02 20060101AFI20200727BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20200727BHJP
   C08B 15/00 20060101ALI20200727BHJP
【FI】
   C08L1/02
   C08K5/04
   C08B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-19371(P2019-19371)
(22)【出願日】2019年2月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100116159
【弁理士】
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】森本 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】峯村 淳
【テーマコード(参考)】
4C090
4J002
【Fターム(参考)】
4C090AA04
4C090BA24
4C090BC01
4C090BD19
4J002AB011
4J002EC056
4J002EF056
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002EH026
4J002EH036
4J002EH046
4J002EH056
4J002FA041
4J002FD316
4J002GB00
4J002GB01
4J002GB04
4J002GC00
4J002GK01
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】平均繊維径が0.1μm以上20μm以下で解れた乾燥状態のセルロース繊維乾燥体を製造することが可能なセルロース繊維水系分散体を提供する。
【解決手段】セルロース繊維を含むセルロース繊維水系分散体であって、前記セルロース繊維の平均繊維径が0.1μm以上20μm以下であり前記セルロース繊維の構成糖成分におけるヘミセルロース分の割合が50%以下である、セルロース繊維水系分散体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を含むセルロース繊維水系分散体であって、
前記セルロース繊維の平均繊維径が0.1μm以上20μm以下であり、
前記セルロース繊維の構成糖成分におけるヘミセルロース分の割合が50%以下である、セルロース繊維水系分散体。
【請求項2】
前記セルロース繊維が、セルロースI型結晶を有する請求項1に記載のセルロース繊維水系分散体。
【請求項3】
前記セルロース繊維の粘度平均分子量が10万以上である請求項1又は2に記載のセルロース繊維水系分散体。
【請求項4】
さらに、界面活性剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース繊維水系分散体。
【請求項5】
前記界面活性剤がステアリン酸、オレイン酸、グリセリン、及びポリグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース繊維水系分散体。
【請求項6】
前記界面活性剤がセルロース繊維100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロース繊維水系分散体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維水系分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、植物細胞壁の主成分であり、リグニン、ヘミセルロースと共存して植物体を支える役割を果たしている。また、地球上で最も多量に生産され、蓄積されている資源であり、その有効利用が望まれている。セルロースは、様々な工業分野で利用されているが、その1つにフィラーとしての利用が挙げられる。フィラーとは、強度や機能性向上、コスト低減のために樹脂やゴム、塗料等に添加される粒子や繊維状の物質のことである。
【0003】
高分子材料(ポリマー)の開発では、機能性フィラーとの複合化が重要な開発要素であり、フィラー形状の違いによって複合材料の物性へ与える影響が大きく異なる。特に、針状・繊維状フィラーには、力学的・熱的補強効果が高い、導電効率が高い、制振性の付与等の特徴がある。
また、無定形状若しくは球状のフィラーには、易加工性、物性の等方性、靱性への悪影響が小さい、成形後の変形が小さい等の特徴がある。
上記の中でもセルロースは、グルコースがβ−1,4−グリコシド結合で連なった天然高分子であり、アスペクト比が高く繊維状のフィラーとして有望である。
【0004】
繊維強化樹脂としてはガラス繊維が比較的コストが安く、成型、穴あけ加工等も容易で、補強効果が高く、現在幅広い分野で多く使用されている。しかし、ガラス繊維は、その密度が2.55g/cmであり、樹脂に対して重く、軽量化が必要な用途においては不利である。
【0005】
また近年は、航空機部材として炭素繊維を複合化したCFRPの実用化が進んでいる。炭素繊維(PAN系)の密度は1.82g/cmであり、ガラス繊維に比べ軽量かつ高強度の材料であるため、主に輸送機械を中心とする用途での応用開発が進められている。
【0006】
しかし、ガラス繊維やカーボン繊維を複合化させた樹脂は、リサイクル性が乏しく、焼却処分できないという課題が残る。このため、入手が比較的容易であり、環境にやさしいセルロースやキチン・キトサン等の天然物由来の繊維で代替しようとする取り組みが長く行われてきた。セルロースは、密度が1.5g/cmであり、ガラス繊維や炭素繊維よりも軽く、比較的高剛性であるため、繊維強化フィラーとしての可能性が注目されており、いくつかのセルロース複合化樹脂が上市されている。また、ガラス繊維やカーボン繊維とは異なり焼却することができ、サーマルリサイクル性がある。さらに近年、ナノセルロース、セルロースナノファイバーと呼ばれる繊維径100nm以下のナノファイバーを樹脂に添加して、補強効果を出す研究開発が進められている。
【0007】
ところで、セルロースは天然物であり、その繊維径は植物種によって決まっているが、代表的な植物繊維の繊維径は20〜50μmであり、元来の平均繊維径をさらに小さく加工、調整することは非常に困難である。
【0008】
例えば、特許文献1では、ゴムや樹脂の添加剤として、繊維径が20μm以下のセルロースを調製している。
特許文献2では、脂肪族ポリエステル樹脂に、セルロース繊維を添加することで結晶化ピーク時間を短縮し、結晶化度を高める方法が開示されている。
特許文献3では、脱水助剤としてセルロース繊維を利用しており、そのセルロースの繊維径として10〜30μmのものが開示されている。
特許文献4では、セルロース繊維を含む樹脂を製造するための方法として、水性媒体を用いずに、解繊されたセルロース繊維を樹脂中に均一に分散させる方法が開示されている。
特許文献5では、微小セルロース系繊維を含有する樹脂組成物及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3867117号公報
【特許文献2】特許第5592696号公報
【特許文献3】特許第4260045号公報
【特許文献4】特許第6005470号公報
【特許文献5】特許第5675066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の実施例に記載のセルロースは、繊維状ではなく扁平状のセルロース粒子であり、繊維形状をとったセルロース繊維は得られていない。
特許文献2で効果が見出されているセルロースは、扁平状のセルロース繊維でその平均径は20μmを超えている。
特許文献3で得られるセルロース繊維は含水物であり、水中での使用が前提となる。すなわち、平均繊維径が0.1〜20μmのセルロース繊維を乾燥状態で製造することについては言及されていない。
特許文献4では、その製法上、乾燥化された平均繊維径0.1〜20μmのセルロース繊維は単体で得ることはできておらず、溶媒中で分散させて重合反応を行う必要があり、一般的なフィラーとして、熱可塑性樹脂やゴム等への添加混合はできない。
特許文献5では、実施例で具体的に作製されているセルロース系繊維は平均繊維径が0.1μm未満であり、平均繊維径が0.1〜20μmのセルロース繊維を乾燥状態で製造することについては実質的な言及がなされていない。
【0011】
以上のように、従来技術では平均繊維径0.1〜20μmのセルロース繊維を乾燥状態で得ることについては具体的な言及がなく、このような繊維形状を維持したセルロース繊維の乾燥体が樹脂と複合化した際に優れた特性を示すことは知られていない。
【0012】
一方で、セルロース繊維をウォータージェット、グラインダー、高圧ホモジナイザー、ビーズミル等で解すことで平均繊維径20nmの微細セルロース繊維が得られることが知られている。また、化学処理を併用することでセルロースの繊維径を3nm程度に解す技術が知られている。これらの方法では水分散体として、繊維径0.1μm以下のナノファイバーを得ることが可能であるが、得られた水分散体を単純に乾燥させてしまうと角質化という現象が起こり、水分が除去される過程でセルロースが水素結合により強固なマクロ構造物を形成しまう。このため平均繊維径0.1μm以下のセルロース繊維は乾燥時の凝集作用が強く、解れた繊維の状態で乾燥したセルロース繊維を得るのは非常に困難である。
【0013】
以上から、本発明は上記に鑑みなされたものであり、平均繊維径が0.1μm以上20μm以下で解れた乾燥状態のセルロース繊維乾燥体を製造することが可能なセルロース繊維水系分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、平均繊維径が0.1μm以上20μm以下であって、セルロース繊維の構成糖成分におけるヘミセルロース分の割合が50%以下であるセルロース繊維を含有するセルロース繊維水系分散体により当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち本発明は下記のとおりである。
[1] セルロース繊維を含むセルロース繊維水系分散体であって、前記セルロース繊維の平均繊維径が0.1μm以上20μm以下であり、前記セルロース繊維の構成糖成分におけるヘミセルロース分の割合が50%以下である、セルロース繊維水系分散体。
[2] 前記セルロース繊維が、セルロースI型結晶を有する[1]に記載のセルロース繊維水系分散体。
[3] 前記セルロース繊維の粘度平均分子量が10万以上である[1]又は[2]に記載のセルロース繊維水系分散体。
[4] さらに、界面活性剤を含む[1]〜[3]のいずれかに記載のセルロース繊維水系分散体。
[5] 前記界面活性剤がステアリン酸、オレイン酸、グリセリン、及びポリグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[4]のいずれかに記載のセルロース繊維水系分散体。
[6] 前記界面活性剤がセルロース繊維100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である[1]〜[5]のいずれかに記載のセルロース繊維水系分散体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、平均繊維径が0.1μm以上20μm以下で解れた乾燥状態のセルロース繊維乾燥体を製造することが可能なセルロース繊維水系分散体を提供することができる。
セルロース繊維水系分散体から得られるセルロース繊維乾燥体は、樹脂と複合化した際の分散性が高く、補強効果に優れた樹脂複合体を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.セルロース繊維水系分散体]
本発明のセルロース繊維水系分散体の一実施形態(本実施形態)について以下詳細に説明する。
【0018】
本実施形態は、セルロース繊維を含むセルロース繊維水系分散体であって、セルロース繊維の平均繊維径が0.1μm以上20μm以下であり、セルロース繊維の構成糖成分におけるヘミセルロース分の割合が50%以下となっている。
ここで、セルロース繊維水系分散体における「水系」とは溶媒若しくは分散媒が水を50質量%以上含有することを意味する。溶媒若しくは分散媒が水だけで構成された水分散体でもよいが、添加剤等に起因する各種有機物で水に溶解できるものを含んでいてもよい。
【0019】
本実施形態においては、セルロース繊維の平均繊維径が0.1μm以上20μm以下であり、ナノファイバー(いわゆるセルロースナノファイバー)よりも繊維径の太い繊維とすることで、繊維形状の維持性を良好に保つことができる。すなわち、乾燥すると角質化による繊維形状の維持性が低下することがあるが、本発明ではこれを抑制することができる。また樹脂と複合化した際の引張強度や引張弾性率を大きく向上させることができるセルロース繊維乾燥体を得ることができる。さらに、セルロース繊維の構成糖成分におけるヘミセルロース分の割合が50%以下であることで、例えば、平均繊維径0.1μm以上20μm以下で解れた乾燥状態のセルロース繊維が良好に得られる。
【0020】
セルロース繊維の平均繊維径が0.1μm未満では、上記角質化の問題が生じてしまい、20μmを超えると、樹脂と複合化した際の引張強度や引張弾性率を大きく向上させることが難しくなる。平均繊維径は0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。また、平均繊維径は17μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
セルロース繊維の平均繊維径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
従来のナノファイバーを得ることができる方法で、例えば、平均繊維径を0.1μm以上20μm以下の間に制御する場合、粉砕の回数、圧力や回転数を調整することで考えられるが、ヘミセルロース分が多く含まれるセルロース原料を使用すると、ナノ繊維になりやすい部分となりにくい部分が共存し、繊維径分布がブロードになってしまう。このため0.1μm以上20μm以下の平均繊維径を得るには構成糖分析でセルロース繊維の構成糖全量を100%とした時に、グルコースの割合が50%以上であるセルロース、すなわちヘミセルロース分が50%以下のセルロースが好ましい。
【0022】
セルロース繊維におけるヘミセルロースの割合が50%を超えると既述の解れた乾燥状態のセルロース繊維が得られない。ヘミセルロースの割合は35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。また、ヘミセルロースの割合はより低いことが好ましい。
ヘミセルロースの割合は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0023】
なお、セルロース繊維におけるヘミセルロースの割合を50%以下とするには、原料セルロースにヘミセルロースの割合が低い、例えば、クラフトパルプ、コットン等を用いればよい。また、原料によっては、セルロース繊維をアルカリで処理するマーセル化処理を施すことでヘミセルロースの割合を50%以下とすることができる。
【0024】
ここで、ヘミセルロースとは、木材パルプ及び非木材パルプに含まれているセルロース以外の多糖類の総称である。パルプの主成分はセルロースであり、セルロースはグルコースのみが直鎖状に重合した結晶質の多糖類である。一方、ヘミセルロースはキシロース、マンノース、アラビノース、ガラクトース、グルクロン酸及びガラクツロン酸等の単糖類を含んだ分岐鎖を有する多糖類である。ヘミセルロースは、セルロースに比べて低分子量で非晶質の多糖類である。代表的なヘミセルロースとしては、例えば、キシラン、アラビノキシラン、マンナン、グルコマンナン、グルクロノキシラン等の多糖類が知られている。
【0025】
本実施形態に係るセルロース繊維は、セルロースI型結晶を有することが好ましい。セルロースI型結晶は、他の結晶構造(セルロースII、III、IV型構造)より結晶弾性率が高いため、高弾性率、高強度、低線膨張係数を得る際に有効である。
セルロース繊維がI型結晶構造を有することは、その広角X線回折像測定により得られる回折プロファイル(広角X線回折像)において、走査角2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の二つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
【0026】
セルロース繊維の粘度平均分子量は10万以上であることが好ましく、12万以上であることがより好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。粘度平均分子量は10万以上であることでセルロース繊維に起因する優れた物性をより良好に引き出すことができる。粘度平均分子量は、実際的には30万以下であることが好ましい。
粘度平均分子量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0027】
本実施形態に係るセルロース繊維水系分散体はさらに、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことで、セルロース繊維水系分散体やこれを乾燥して得られるセルロース繊維乾燥体の分散性をより良好にすることができる。
【0028】
本発明において使用される界面活性剤は、水およびエタノール・メタノール等水可溶性アルコールに溶解および分散可能なアニオン系、ノニオン系界面活性剤およびこれらの混合物であれば良く、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、グリセリン、ポリグリセリン誘導体、およびそれらの化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
ステアリン酸は、動物性・植物性脂肪で最も多く含まれる飽和脂肪酸であり、油脂成分として天然に広く分布する。ステアリン酸として、具体的には、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸PEG、ステアリン酸PEG−グリセリル、ステアリン酸PG、ステアリン酸アスコルビル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸グリコール、ステアリン酸グリセリド、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸コレステリル、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ビニル、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸バチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸ステアリル、ジステアリン酸グリセロール、ステアリン酸イソヘキサデシル、モノステアリン酸グリセロール、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸2−エチルヘキシル、モノイソステアリン酸グリセロール、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0030】
オレイン酸として、具体的には、オレイン酸、無水オレイン酸、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸グリシジル、オレイン酸銅(II)、オレイン酸コレステリル、ジオレイン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセリル、オレイン酸エステル、オレイン酸ブチルエステル、オレイン酸プロピルエステル、オレイン酸ジブチルアンモニウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチルエステル、N,N−ジエタノールオレイン酸アミド、N,N−ジエタノールオレイン酸アミド、オレイン酸4−メチルウンベリフェリル、トリオレイン酸トリメチロールプロパン、スルホスクシンイミジルオレイン酸ナトリウム、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、オレイン酸5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル等が挙げられる。
【0031】
グリセリンとして、具体的には、グリセリン、ジグリセリン、PPG−9ジグリセリル、PPG−14ポリグリセリル−2エーテル、ジグリセリンモノカプリレート、POP(9)ポリグリセリルエーテル、POP(14)ポリグリセリルエーテル、POP(24)ポリグリセリルエーテル、POE(13)ポリグリセリルエーテル、POE(20)ポリグリセリルエーテル、POE(30)ポリグリセリルエーテル、POE(40)ポリグリセリルエーテル、ポリグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル、アジピン酸、ジエチレングリコール、エチルヘキシルグリセリン、オクトキシグリセリン、オゾン化グリセリン、シクロヘキシルグリセリン、チオグリセリン、ビスジオレオイルグリセロホスホグリセリン2Na、ヘキシルグリセリン、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−6、ポリグリセリン−10、ポリグリセリン−20、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセライド、アセチル化モノグリセライド、有機酸モノグリセライド、中鎖脂肪酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール酸脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0032】
その他のグリセリンエステルとして、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、カプリル酸エステル、ベヘン酸エステル、エルカ酸エステル、縮合リシノール酸エステル等が挙げられる。
【0033】
界面活性剤としては、分散性をより向上させる観点から、ステアリン酸、オレイン酸、グリセリン、及びポリグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、ポリグリセリン誘導体が好ましく、ポリグリセリンと縮合リシノール酸とから構成されるポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等がより好ましい。
【0034】
界面活性剤はセルロース繊維(固形分)100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。1質量部以上であることで、セルロース繊維の凝集抑制効果が得られやすくなり、30質量部以下であることで、セルロース繊維に対して過剰量にならず、その結果、変色や乾燥不良が抑えられる。
界面活性剤は、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本実施形態に係るセルロース繊維水系分散体におけるセルロース繊維のメジアン径は、樹脂と複合化した際の物性向上の観点から、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、良好な分散性を維持する観点から、80μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。また、当該メジアン径は、水系分散体におけるセルロース繊維の分散性の尺度ともなり、上記範囲にあることで、良好な分散性が維持されているといえる。
セルロース繊維水系分散体におけるセルロース繊維のメジアン径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0036】
セルロース繊維水系分散体におけるセルロース繊維の割合(固形分濃度)は、優れた生産性を得る観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、なかでも15質量%以上であることが好ましい。なお実用的には、上限は30質量%程度となる。
一般に、セルロース繊維水系分散体における固形分濃度は実用上は多くて10質量%程度であるが、本実施形態のセルロース繊維水系分散体は、分散性が良好であるため、固形分濃度を比較的高くすることができる。
【0037】
以上のような本実施形態に係るセルロース繊維水系分散体は、例えば、下記のようなセルロース原料から、機械処理工程等を経て製造することができる。
【0038】
(セルロース原料)
セルロース繊維水系分散体の製造に用いられる原料セルロースは、セルロースI型結晶を有することが好ましい。例えば、木本系(針葉樹、広葉樹)、草本系、クラフトパルプ、コットン、ラミー、藻類、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。なかでも、クラフトパルプ、コットン(綿セルロース)等が好ましい。セルロースの構成糖としては、ヘミセルロースの含有率が低いものが好ましく、セルロース純度の高いものが好ましい。具体的には、構成等分析により検出された糖の全量を100%としたときに、構成糖のグルコースの割合が50%以上のものが好ましい。言い換えると、セルロース繊維の構成糖成分におけるヘミセルロース分の割合が50%以下のものが好ましい。これらのセルロース系繊維は、単独または二種以上組み合わせて使用してもよい。また、セルロース系原料の形状は、取り扱い性の観点から繊維状、粉末状、チップ状、フレーク状が好ましく、これらの混合物でもよい。
【0039】
(機械処理工程)
機械処理工程は、繊維径が20〜50μmのセルロース繊維を平均繊維径が0.1〜20μmになるようにフィブリル化する工程である。フィブリル化とは、繊維を解し、さらに毛羽立たせる工程である。機械処理の前にセルロース原料は水で希釈分散させ、セルロース濃度が0.1〜30質量%の分散液に調整されることが好ましい。フィブリル化には1〜20質量%がより好ましい。特に1〜20質量%であることでフィブリル化の効率が高くなり、粘度上昇を抑えることができる。
【0040】
機械処理の工程では、湿式粉砕する装置を利用することができ、粉砕装置としては湿式微粒化装置、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼式粉砕機)、高速解繊機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型のリファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、ホモミキサー、超音波分散機、ビーター等が挙げられる。
【0041】
繊維長さを維持したままフィブリル化ができる装置として、湿式微粒化装置が有効であり、好ましい。具体的には、直径0.1〜0.8mmの噴射ノズルを介して、100〜245MPaの高圧噴射処理により、衝突用硬質体に衝突、もしくは互いに衝突させて解繊する方法である。このフィブリル化手法は、市販されている高圧ホモジナイザーのように、狭い流路に分散流体を高圧低速で通過させることによるせん断力だけではなく、衝突用硬質体に衝突、もしくは互いに衝突させることによる衝突力や、キャビテーションを利用した、高圧での連続解繊が可能である。また、衝突処理を1回行うことを1パスとして、均―なセルロース繊維を得るには、好ましくは1〜30パス、さらに好ましくは1〜20パスの繰り返し衝突を行うのが好ましい。
【0042】
本工程において、原料セルロース繊維を、好ましくは、繊維径が0.1μm以上20μm以下になるように解繊する。これにより解繊されたセルロース繊維は乾燥時に強固な水素結合による凝集が抑えられる。乾燥工程で弱く凝集するものの、乾式粉砕の工程を経ることで平均繊維径が0.1μm以上20μm以下の繊維状に解すことが可能である。すなわち、本実施形態のセルロース繊維水系分散体におけるセルロース繊維の平均繊維径が乾燥した状態でも維持できる。
【0043】
(界面活性剤の添加混合)
本実施形態のセルロース繊維水系分散体に界面活性剤を含有させるには、水、エタノール、又はメタノール等の水可溶性アルコールに溶解および分散可能なアニオン系、ノニオン系界面活性剤を、機械処理工程を経て作製したセルロース繊維水系分散体に添加し、市販のプロペラ撹拌機、ブレンダー、リボンミキサー、自転公転式の撹拌脱泡機、プラネタリーミキサー等により、均一に撹拌混合する。また、機械処理工程の前に添加し、同時に湿式粉砕を行うことも可能である。
【0044】
[2.セルロース繊維乾燥体]
本実施形態に係るセルロース繊維水系分散体は、公知の乾燥処理(乾燥工程)により乾燥させることで、セルロース繊維乾燥体として利用に供することができる。なお、分散性をより向上させる観点から、乾燥工程後に粉砕工程を設けてもよい。
【0045】
以上のような本実施形態に係るセルロース繊維乾燥体は、本実施形態に係るセルロース繊維水系分散体の乾燥物であって、セルロース繊維の平均繊維径が0.1μm以上20μm以下であり、セルロース繊維の構成糖成分におけるヘミセルロース分の割合が50%以下であるセルロース繊維乾燥体といえる。当該セルロース繊維乾燥体は、含水量が10質量%以下であることが好ましい。例えば、実施例に記載の方法で乾燥を行えば、含水量を10質量%以下にすることができる。
【0046】
(乾燥工程)
乾燥方法は、特に限定されるものではなく、市販の乾燥装置を用いて乾燥させればよい。例えば、噴霧乾燥法を利用した噴霧乾燥装置、真空乾燥法を利用した乾燥装置、気流乾燥法を利用した気流式乾燥装置、熱風を利用した熱風乾燥装置、蒸気を利用した蒸気乾燥装置、遠心力を利用したスピン乾燥装置、振動の力を利用した振動乾燥装置、流動層乾燥法を利用した流動層乾燥装置、回転する加熱ドラムの表面に付着乾燥させるドラム式乾燥装置、凍結したスラリー分散液を真空で乾燥させる凍結乾燥装置等が挙げられる。
【0047】
(粉砕工程)
粉砕工程は、特に限定されるものではなく、市販の粉砕装置を用いて粉砕させればよい。例えば、ローラーの重力・遠心力が回転するテーブル・鉢形の粉砕容器に押しつけ圧縮粉砕するローラーミル、数気圧以上の圧搾・高圧空気や高圧ガスを噴出させ、ジェット気流で原料粒子を加速させ、粒子の衝突・衝撃作用によって粉砕させるジェットミル、高速回転のハンマーで供給粒子に衝撃を与え粉砕するハンマーミル、数十本のピンを向かい合った2枚の円板表面につけ、高速回転させることで対象物を粉砕するピンミル、水平軸を中心に容積の3分の1を満たす量の粉砕媒体を回転円筒の中に充填し、回転によって対象物を粉砕する回転ミル、円筒状またはトラフ状のミル内に粉砕媒体を充填し、ミルに振動を与えることで媒体が動き、粉砕する振動ミル、対象物と一緒に粉砕媒体を充填した容器が自転し、公転する機構による衝突力で粉砕する遊星ミル、約3〜10ミリメートルのボールを使って棒状の撹拌(かくはん)アームで対象物を粉砕するアトライター、容器の中に媒体となるビーズを充填し、アジテータの回転でビーズを衝突させ粉砕するビーズミル、回転するインペラが発生させる気流で、原材料同士を対向衝突させて粉砕する気流式粉砕機等が挙げられる。
【0048】
以上のようにして得られるセルロース繊維乾燥体は、平均繊維径が0.1μm以上20μm以下で解れた乾燥状態であるため、樹脂等と複合化する際にも取り扱い性がよく、かつ、良好な分散性を維持して樹脂中に存在できるため、強度や弾性率といった所望の特性が得られやすい。
【0049】
[3.セルロース繊維樹脂複合体]
本実施形態に係るセルロース繊維水系分散体は当該分散体の状態、あるいはそのセルロース繊維乾燥体として樹脂と複合化し、セルロース繊維樹脂複合体として、種々の成形体等に適用することができる。すなわち、本実施形態に係るセルロース繊維樹脂複合体は、本実施形態に係るセルロース繊維乾燥体と樹脂とが複合化したセルロース繊維樹脂複合体といえる。
【0050】
(熱可塑性樹脂)
混合する樹脂としては、溶融温度が300℃以下の熱可塑性樹脂等が挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、PET樹脂、ポリエチレンテレフタレート、PVA樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、アセタール樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、PBT樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、アセチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロースエチルセルロース等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独または二種類以上の組み合わせで使用することができる。
【0051】
本実施形態に係るセルロース繊維樹脂複合体におけるセルロース繊維乾燥体の含有量は、樹脂の種類にもよるが、好ましい物性を得る観点から、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
なお、本実施形態に係るセルロース繊維樹脂複合体においては、その効果を阻害しない範囲で公知の添加剤(相容化剤、熱安定剤、酸化防止剤等)を混合することができる。
【0052】
セルロース繊維樹脂複合体を作製するには、まず、セルロース繊維乾燥体と樹脂とを公知の方法で混合する。その後は、前分散として、ヘンシェルミキサー、ブレンダー、トリミックス等の撹拌機、及び混合装置を用いてドライブレンドを行うことが好ましい。その後、各種混練機を用いて、回転数、温度を指定して所定の時間混練し、セルロース繊維樹脂複合体を作製することができる。
【0053】
[4.セルロース繊維水系分散体、セルロース繊維乾燥体、セルロース繊維樹脂複合体のその他の構成]
以上のようなセルロース繊維水系分散体や、セルロース繊維乾燥体におけるセルロース繊維をフィラーとして用いる際の樹脂として、ポリオレフィン等のビニル系樹脂、ポリアミド等の重縮合系樹脂等に限らず、融点が300℃以下の熱可塑性樹脂であれば適用可能である。また、セルロースと等しい屈折率のエポキシ等の透明基材(樹脂)との複合化により新機能性透明フィルム・樹脂を合成することができる。特に、本実施形態に係るセルロース繊維は、水素結合形成可能なフェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタラート、ポリビニルアルコール等の高分子と複合化することで、強度ないし表面特性を変えることができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係るセルロース繊維は、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂との複合化により、これら樹脂の強度、耐熱性等の特性を向上できる。
【0055】
本実施形態によれば、セルロース繊維の表面改質(化学修飾)により、上記以外の性質を持つ樹脂、例えばセルロース繊維をアセチル化し、疎水性の性質を持たせることで、アクリル樹脂等の疎水性樹脂との複合化も可能になる。
【0056】
また、微細セルロース繊維によって得られる光学特性を活かした化粧品(サンスクリーン剤)や液晶基板、さらにセルロース繊維間に生じたナノオーダーの空隙を活かしたフィルターを製造できる。セルロースの水酸基を様々な官能基に置換することで、異なる特性・機能をもった分離・濾過材を製造できる。また、セルロース繊維の直径を制御することで、空隙の大きさを変えることができる。セルロース繊維を微細繊維化をすることで、その比表面積が増大することから吸着体として適している。これを乾燥させてできるフィルムはマイクロレベルで制御された空隙を持つ多孔質膜であることから、酵素等の生体触媒の固定化担体、分離精製等のクロマトグラフィー用の担体、あるいは細胞培養基質に利用できる。本実施形態に係るセルロース繊維をスピーカー等音響振動板の表面に塗布すると均一で硬質な皮膜が形成され、同様の効果を得ることができる。優れた音響特性を得るために、剛体として全体が統一振動する硬く高強度・高弾性率を有する素材が求められる。本実施形態に係るセルロース繊維は高結晶性を保ったまま微細化可能なため、高弾性率の音響振動板の素材として利用できる。
【0057】
また、天然物由来のカチオン性ポリマーであるキトサン繊維とアニオン性ポリマーであるセルロース繊維同士を組み合わせることで、アニオンとカチオンの電荷による静電引力の補強効果が期待され、より強固な複合繊維の創製も可能である。紙の強度に関与する最も主要な因子は繊維間の接着強さであり、セルロースの水酸基間の水素結合で決定される。このため紙の強度を高めるためには、水素結合を増やせばよく、紙力増強剤として使用できる。
【0058】
また、本実施形態に係るセルロース繊維は酸素非存在下(窒素あるいはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下)高温処理することで炭化できる。すなわち、バイオマス由来の炭素繊維を製造できる。マイクロレベルの小さな孔を大量に含む多孔質炭素は、脱臭剤や脱色剤、あるいは水浄化用のフィルターとして利用されており、本実施形態においては、天然繊維を炭化させてできるバイオナノ炭素繊維もそのような分野へ利用できる。また多孔質炭素はその小さな孔(細孔)に臭いや汚れの分子を捕らえるだけでなく、電気の力を借りればイオン(電荷を帯びた原子や分子)も捕らえることができる。捉えた電荷は取り出すこともできるので、これを利用して大容量のキャパシタ(コンデンサ)が開発されている。このようなキャパシタは、燃料電池自動車の補助電源や夜間の余った電力を蓄える貯蔵庫としても使えるので、近年、非常に注目されている。電気二重層キャパシタの静電容量は電気二重層に蓄えられる電荷量により決定されることから、電極の表面積が大きいほど大きな静電容量を得ることができるため、高い導電性と比表面積を有する活性炭が電極材料として用いられている。本実施形態においては、天然由来繊維を炭化させてできるバイオ炭素繊維は高比表面積を有し、細孔がナノレベルで制御されたメソポーラス活性炭であることから、電気二重層キャパシタ等の静電容量を飛躍的に高める電極材料として利用できる。
【0059】
また、本実施形態に係るセルロース繊維を衣料用洗剤としても応用できる。セルロースやセルロース誘導体は再汚染防止剤として古くから洗剤に活用されている。再汚染防止剤とは洗剤の界面活性剤の働きで被洗濯物から脱離した汚れ成分が再び衣類に付着するのを防止する機能を持ち、節水型の洗濯機の普及に伴い重要な技術である。本実施形態においては、セルロースをマイクロファイバー化することによって、その比表面積は増大し、従来のセルロース材料よりも効果的に再付着防止効果が期待できる。その他、セルロースの用途は広く、化粧品原料、薬物放出担体、食品への添加用途、医薬用製剤のコーティング剤、断熱材、触媒等への応用も期待される。
【0060】
上記では、本実施形態に係るセルロースを前提としているが、セルロースと同様にファイバー構造を有するバイオマス由来材料であるキチン、キトサン、シルク、カルボキシメチルセルロース等についても、類似の効果を得ることができる。
【実施例】
【0061】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
各実施例、比較例における各種測定、観察は下記のようにして行った。
(水分散体中のセルロース繊維の平均繊維径)
1μm以上の繊維径については水分散体を繊維が1本ずつ単離されるように、十分に希釈分散させた後に、プレパラートを作製し、マイクロスコープ(キーエンス社製、装置名:VHX−500)による観察にて、各繊維の繊維径を50本観察し、その平均値を平均繊維径とした。また、1μm未満の繊維径については水分散体を繊維が1本ずつ単離されるように、十分に希釈分散させた後に、雲母片に滴下し、自然乾燥後に、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製 SPM−9700)による観察にて、各繊維の繊維径を50本観察し、その平均値を平均繊維径とした。
【0063】
(構成糖分析:ヘミセルロースの割合)
構成糖の分析は、還元糖分析システムを用いて測定した。この方法はカラム分離後、150℃のほう酸およびアルギニンで糖反応(メイラード反応)させ、蛍光検出する方式である。還元糖の分析システムの構成としては、島津製作所社製、コントローラCBM−20A、送液ポンプLC−20AD、オートサンプラSIL−20AC、カラムオープンCTO−20AC、蛍光検出器RF−20Axs、化学反応槽CRB−6Aを用いた。サンプルは解繊処理後の水分を含んだ試料を使用した。加熱乾燥により乾燥した後の試料を0.03g秤量し、70%の硫酸300μlに浸して1時間置いた。純水8.4mlを添加し、110℃で加熱、減圧環境下で60分維持した。その後、試料をガラスファイバーでろ過し、純水で10mlに定容する。試料1容量に対し、濃度40%の水酸化バリウム溶液を2容量添加し、試料溶液中の硫酸を塩析させた。
【0064】
その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過したものを分析に供した。液体クロマトグラフ分析は、カラム:Asahipack NH2P−50 4E(250mmL.×4.6mm i.d.;S/NJ17T0192)、およびAsahipack NH2P−50G 4(10mmL.×4.0mm i.d;S/NP2810002)を用いた。移動相としてアセトニトリル/水/りん酸=85/15/0.3(v/v/v)、カラム温度45℃、流量0.8ml/min、注入量10μlで分析を行った。検出条件としては、検出器:RF−20Ax、反応液5g/Lアルギニン、0.4mol/Lほう酸、0.2mol/L水酸化カリウムの混合水溶液を用いた。反応温度は150℃、反応コイルは2m×0.5mm、検出波長:励起波長320nm、蛍光波長470nmで実施し、各セルロース繊維の糖全量に対するラムノース、キシロース、アラビノース、フルクトース、マンノース、グルコース、セロビオースの割合(%)を調べた。そしてヘミセルロースの構成糖であるラムノース、キシロース、アラビノース、フルクトース、マンノースの検出量の合計割合(%)からヘミセルロースの割合を求めた。
【0065】
(セルロースI型結晶の確認)
X線回折装置は(リガク社製、装置名:回転対陰極形X線発生装置ロータフレックスRU−200B)により加速電圧40kV,加速電流150mAでNiフィルターを通したCuKα線(A=1.542)を用いて同社製粉末X線回折用横型ゴニオメーターにて測定した。回折強度は回折角2θの範囲を5°から35°に対して測定した。セルロース繊維の広角X線回折像測定により得られる回折プロファイル(広角X線回折像)において、走査角2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の二つの位置に典型的なセルロースI型結晶に起因するピークをもつかどうかで、セルロースI型結晶の有無を確認した。
【0066】
(分子量測定)
セルロース繊維の分子量は、粘度法を用いて測定した。具体的には、セルロース繊維水分散体を凍結乾燥することで乾燥粉末試料を得た後、各セルロース繊維のサンプルを銅エチレンジアミン溶液に溶解させ、オストワルド粘度計を用いて、溶媒に対する溶液の相対粘度から、固有粘度を求め、各セルロース繊維の分子量(粘度平均分子量)を算出した。
【0067】
(粒度分布測定)
繊維の解繊度を簡易的に測定するためにメジアン径を測定した。メジアン径(頻度の累積が50%になる粒子径)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法(堀場製作所社製、装置名:LA−300)で求めた。
【0068】
(乾燥後の繊維形状判定:電子顕微鏡による観察)
セルロース繊維乾燥体の形状を確認するために電子顕微鏡(日本電子社製、装置名:JCM−5700)を用いて繊維外観の確認を行った。それぞれの繊維がバラバラに解れて繊維状になっているものはA、繊維状になっておらず繊維が複数本全体にわたって凝集している凝集体となっているものはD、その中間で、繊維同士が一部凝集して部分凝集体となっているものが半分未満の場合をB、部分凝集体となっているものが半分以上あるものをCと判定した。なお、A及びB判定を合格とする。
【0069】
(乾燥後の平均繊維径)
乾燥後の繊維形状判定で繊維状体が確認されたものについて、セルロース繊維乾燥体の繊維径を測定するために電子顕微鏡(日本電子社製、装置名:JCM−5700)を用いて繊維径測定を行った。各繊維の繊維径を50本観察し、その平均値を平均繊維径とした。また上記の繊維径の判定で繊維形状が得られていないものについては繊維径を測定できなかった。
【0070】
[実施例1]
原料として市販のクラフトパルプを用い、セルロース繊維水分散体を作製した。
まず、カッティングミル(フリッチュ社製、装置名:Pulverisette 15)にてパルプを粉砕し、綿粉状セルロースを得た。得られた綿粉状セルロースを10質量%の濃度になるようにイオン交換水で分散液を調製し、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、装置名:スターバースト)にて解繊処理を3回実施し、繊維を解した。その後、構成糖分析により、セルロース繊維の構成糖におけるヘミセルロース分の割合を測定した。また、得られたセルロース繊維水分散体を凍結乾燥することで乾燥粉末試料を得た後、粘度法により、その平均分子量を求め、X線回折測定により、セルロースI型結晶の有無の確認を行った。次に得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に界面活性剤として縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を、セルロース固形分100質量部に対して10質量部になるように添加し、十分に撹拌混合した。
得られたセルロース繊維水分散体におけるセルロース繊維の平均繊維径、及び粒度分布の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0071】
その後、80℃で4時間、撹拌しながら加熱乾燥させることで、水分を除去したセルロース繊維乾燥体を得た。さらに得られたセルロース乾燥体をピンミル(奈良機械製作所社製、装置名:サンプルミル)を用いて、粉砕処理を実施し、セルロース繊維を得た。得られたセルロース繊維が繊維状になっているかどうかを電子顕微鏡により確認し、乾燥後の繊維形状を判定し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2]
原料セルロースとして綿花由来のコットンを用い、セルロース繊維水分散体を作製した。カッティングミル(フリッチュ社製、装置名:Pulverisette 15)にてコットンを粉砕し、綿粉状セルロースを得た。得られた綿粉状セルロースを10質量%の濃度になるようにイオン交換水で分散液を調製し、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、装置名:スターバースト)にて解繊処理を10回実施し、繊維を解した。実施例1と同様に構成糖分析、分子量測定、X線回折測定を行った。次に得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に界面活性剤として縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を、セルロース固形分100質量部に対して10質量部になるように添加し、十分に撹拌混合した。その後は、実施例1と同様にして、平均繊維径と粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを実施例1と同様にして観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
原料セルロースとして綿花由来のコットンを用い、セルロース繊維水分散体を作製した。カッティングミル(フリッチュ社製、装置名:Pulverisette 15)にてコットンを粉砕し、綿粉状セルロースを得た。得られた綿粉状セルロースを10質量%の濃度になるようにイオン交換水で分散液を調製し、湿式微粒化装置(スギノマシン社製 スターバースト)にて解繊処理を2回実施し、繊維を解した。実施例1と同様に構成糖分析、分子量測定、X線回折測定を行った。次に得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に界面活性剤として縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を、セルロース固形分100質量部に対して10質量部になるように添加し、十分に撹拌混合した。その後は、実施例1と同様にして、平均繊維径と粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを実施例1と同様にして観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例4]
原料セルロースとして綿花由来のコットンを用い、セルロース繊維水分散体を作製した。カッティングミル(フリッチュ社製、装置名:Pulverisette 15)にてコットンを粉砕し、綿粉状セルロースを得た。得られた綿粉状セルロースを10質量%の濃度になるようにイオン交換水で分散液を調製し、湿式微粒化装置(スギノマシン社製 スターバースト)にて解繊処理を10回実施し、繊維を解した。次に得られた10質量%のセルロース繊維水分散体(界面活性剤なし)について、実施例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表1に示す。
また、10質量%のセルロース繊維水分散体を、80℃で4時間、撹拌しながら加熱乾燥させることで、水分を除去したセルロース繊維乾燥体を得た。さらに得られたセルロース乾燥体をピンミル(奈良機械製作所社製、装置名:サンプルミル)を用いて、粉砕処理を実施し、セルロース繊維を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを実施例1と同様にして観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
原料セルロースとして綿花由来のコットンを用い、セルロース繊維水分散体を作製した。まず、カッティングミル(フリッチュ社製、装置名:Pulverisette 15)にてコットンを粉砕し、綿粉状セルロースを得た。得られた綿粉状セルロースを10質量%の濃度になるようにイオン交換水で分散液を調製し、湿式微粒化装置(スギノマシン社製 スターバースト)にて解繊処理を10回実施し、繊維を解した。次に得られた10質量%のセルロース繊維水分散体(界面活性剤なし)について、実施例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表1に示す。
また、10質量%のセルロース繊維水分散体を、イオン交換水で希釈し、0.5質量%に調整したセルロース繊維分散体を得た。得られた水分散体をスプレードライヤー(藤崎電機社製、装置名:MDL-050B)を用いて噴霧乾燥を行った。
噴霧乾燥させることで、水分を除去したセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを実施例1と同様にして観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
原料としてFMa−10010(スギノマシン社製 10質量%セルロース水分散体)を用いた以外は実施例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを実施例1と同様にして観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例2]
原料としてBMa−10010(スギノマシン社製 10質量%セルロース水分散体)を用いた。その後の工程は実施例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを実施例1と同様にして観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例3]
原料セルロースとして綿花由来のコットンを用い、セルロース繊維水分散体を作製した。まず、カッティングミル(フリッチュ社製、装置名:Pulverisette 15)にてコットンを粉砕し、綿粉状セルロースを得た。湿式微粒化装置による解繊処理を実施せず、得られた綿粉状セルロースを10質量%の濃度になるようにイオン交換水で分散液を調製した。その後の工程は実施例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを実施例1と同様にして観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
[比較例4]
原料としてWFo−10010の低解繊処理品(スギノマシン社製 10質量%セルロース水分散体、1回解繊処理品)を用いた。その後の工程は実施例1と同様にして、セルロース繊維水分散体を作製した。実施例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを実施例1と同様にして観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
[実施例6〜8]
実施例2で得られた10質量%のセルロース繊維水分散体を使用した。実施例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表2に示す。
また、セルロース繊維100質量部に対し、界面活性剤としての縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を表2に示す量で添加した以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維乾燥体を得た。その後、セルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。結果を表2に示す。
【0081】
[実施例9]
セルロース繊維100質量部に対し、界面活性剤としてのオレイン酸(品名:オレイン酸、メーカー名:富士フィルム和光純薬)を表2に示す量で添加した以外は、実施例2と同様にして10質量%のセルロース繊維水分散体を作製した。実施例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表2に示す。
また、実施例1と同様にして、セルロース繊維乾燥体を得た。その後、セルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを観察し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。結果を表2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表1、表2より、すべての実施例では平均繊維径が0.1μm以上20μm以下で解れた乾燥状態のセルロース繊維乾燥体を製造することができていた。
なお、実施例の水系分散体におけるセルロース繊維の繊維長さは、各繊維径の10倍以上であった。
【0085】
次に、得られたセルロース繊維乾燥体と樹脂との複合化を行った。以下に実施例を示す。なお、複合化後の樹脂については下記のような評価を行った。
【0086】
(樹脂へのセルロース繊維の分散性確認)
分散性の評価はセルロース繊維と複合化した樹脂プレスシートを、マイクロスコープ(キーエンス社製、装置名:VHX−500)により観察し、視野角3.1mm×4.3mmの範囲で50か所、表3に示す分散評価指標を用いて、凝集物の有無やそのサイズを測定し、各乾燥体の樹脂への分散性を評価した。凝集物は最大径で200μm以上のサイズを基準に行った。
【0087】
【表3】
【0088】
(引張試験)
精密万能試験装置(島津製作所社製、装置名:オートグラフAG−50KNXD)により、JIS K7161に準拠して、25℃における引張り試験を行い、引張強度、引張弾性率、ひずみを測定した。試験片は射出成型により、所定のダンベル片(JISK7161)、全長150mm、エッジ部の幅20mm、厚さ3.25mm、狭い部分の幅12.7mmの試験片を得た。試験条件として、試験速度10mm/min、つかみ具間距離60mmに設定した。
【0089】
[実施例10]
(ポリプロピレンとの複合化と評価)
実施例2で得られたセルロース繊維乾燥体、マレイン酸変性ポリプロピレン(品名:ユーメックス Y−1010、メーカー名:三洋化成)、ポリプロピレン(品名:PX600N、メーカー名:サンアロマー)を表4に示す配合となるように計量後、ブレンダーを用いて20,000rpmの条件で1分間撹拌混合した。その後、二軸混練機(Xplore Instruments社製)によって溶融混錬を行った。混練条件は、200℃、120rpm、混練時間は10分間とした。混練後、射出成型により所定のダンベル片(JISK7161)としてのセルロース繊維樹脂複合体を作製した。
【0090】
得られたダンベル片は、7日以上状態調整後、精密万能試験装置(島津製作所社製、製品名:オートグラフAG−50KNXD)により引張り試験を行った。試験条件として、試験速度10mm/min、つかみ具間距離60mmに設定した。機械的物性(引張強度、引張弾性率、ひずみ)の結果を表4に示す。また、混練後に得られたストランドを長さ約3mmで切り出し、複合樹脂ペレットを得た。得られた複合樹脂ペレットをテフロン(登録商標)シートで挟み、熱プレス装置にて12MPa、2分、200℃のプレス処理を行い樹脂プレスシートを得た。得られた樹脂プレスシートは、マイクロスコープにより観察し、表3に示す分散評価方法を用いて、凝集物の有無やそのサイズを測定し、樹脂への分散性を評価した。
【0091】
[比較例5]
セルロース繊維を含まない樹脂体の比較例として、表4に示す配合割合でサンプル作製を行った。試験片は実施例10と同様の方法で試作し、評価した。
【0092】
【表4】
【0093】
[実施例11]
(ナイロン6との複合化と評価)
表5に示す配合比で実施例2で得られたセルロース繊維乾燥体、ナイロン6(品名:アミランCM1007、メーカー名:東レ)を計量後、ブレンダーを用いて20,000rpmの条件で1分間撹拌混合した。撹拌混合後、水分除去のため、80℃のオーブンで2日間乾燥処理を行った。その後、二軸混練機(Xplore Instruments社製)によって溶融混錬を行った。混練条件は、260℃、120rpm、混練時間は8分間とした。混練後、射出成型により所定のダンベル片(JISK7161)としてのセルロース繊維樹脂複合体を作製した。
【0094】
得られたダンベル片は、7日以上状態調整後、精密万能試験装置(島津製作所社製、製品名:オートグラフAG−50KNXD)により引張り試験を行った。試験条件として、試験速度10mm/min、つかみ具間距離60mmに設定した。得られた機械的物性(引張強度、引張弾性率、ひずみ)の結果を表5に示す。また、混練後に得られたストランドを長さ約3mmで切り出し、複合樹脂ペレットを得た。得られた複合樹脂ペレットをテフロン(登録商標)シートで挟み、熱プレス装置にて12MPa、2分、260℃のプレス処理を行い樹脂プレスシートを得た。得られた樹脂プレスシートは、マイクロスコープにより観察し、表3に示す分散評価方法を用いて、凝集物の有無やそのサイズを測定し、樹脂への分散性を評価した。
【0095】
[比較例6]
セルロース繊維を含まない樹脂体の比較例として、表5に示す配合割合でナイロン6単体でのサンプル作製を行った。また試験片は実施例11と同様の方法で試作し、評価した。
【0096】
【表5】