【実施例】
【0063】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
各実施例、比較例における各種測定、観察は下記のようにして行った。
(水分散体中のセルロース繊維の平均繊維径)
1μm以上の繊維径については水分散体を繊維が1本ずつ単離されるように、十分に希釈分散させた後に、プレパラートを作製し、マイクロスコープ(キーエンス社製、装置名:VHX−500)による観察にて、各繊維の繊維径を50本観察し、その平均値を平均繊維径とした。また、1μm未満の繊維径については水分散体を繊維が1本ずつ単離されるように、十分に希釈分散させた後に、雲母片に滴下し、自然乾燥後に、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所社製 SPM−9700)による観察にて、各繊維の繊維径を50本観察し、その平均値を平均繊維径とした。
【0065】
(構成糖分析:ヘミセルロースの割合)
構成糖の分析は、還元糖分析システムを用いて測定した。この方法はカラム分離後、150℃のほう酸およびアルギニンで糖反応(メイラード反応)させ、蛍光検出する方式である。還元糖の分析システムの構成としては、島津製作所社製、コントローラCBM−20A、送液ポンプLC−20AD、オートサンプラSIL−20AC、カラムオープンCTO−20AC、蛍光検出器RF−20Axs、化学反応槽CRB−6Aを用いた。サンプルは解繊処理後の水分を含んだ試料を使用した。加熱乾燥により乾燥した後の試料を0.03g秤量し、70%の硫酸300μlに浸して1時間置いた。純水8.4mlを添加し、110℃で加熱、減圧環境下で60分維持した。その後、試料をガラスファイバーでろ過し、純水で10mlに定容する。試料1容量に対し、濃度40%の水酸化バリウム溶液を2容量添加し、試料溶液中の硫酸を塩析させた。
【0066】
その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過したものを分析に供した。液体クロマトグラフ分析は、カラム:Asahipack NH2P−50 4E(250mmL.×4.6mm i.d.;S/NJ17T0192)、およびAsahipack NH2P−50G 4(10mmL.×4.0mm i.d;S/NP2810002)を用いた。移動相としてアセトニトリル/水/りん酸=85/15/0.3(v/v/v)、カラム温度45℃、流量0.8ml/min、注入量10μlで分析を行った。検出条件としては、検出器:RF−20Ax、反応液5g/Lアルギニン、0.4mol/Lほう酸、0.2mol/L水酸化カリウムの混合水溶液を用いた。反応温度は150℃、反応コイルは2m×0.5mm、検出波長:励起波長320nm、蛍光波長470nmで実施し、各セルロース繊維の糖全量に対するラムノース、キシロース、アラビノース、フルクトース、マンノース、グルコース、セロビオースの割合(%)を調べた。そしてヘミセルロースの構成糖であるラムノース、キシロース、アラビノース、フルクトース、マンノースの検出量の合計割合(%)からヘミセルロースの割合を求めた。
【0067】
(セルロースI型結晶の確認)
X線回折装置は(リガク社製、装置名:回転対陰極形X線発生装置ロータフレックスRU−200B)により加速電圧40kV,加速電流150mAでNiフィルターを通したCuKα線(A=1.542)を用いて同社製粉末X線回折用横型ゴニオメーターにて測定した。回折強度は回折角2θの範囲を5°から35°に対して測定した。セルロース繊維の広角X線回折像測定により得られる回折プロファイル(広角X線回折像)において、走査角2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の二つの位置に典型的なセルロースI型結晶に起因するピークをもつかどうかで、セルロースI型結晶の有無を確認した。
【0068】
(分子量測定)
セルロース繊維の分子量は、粘度法を用いて測定した。具体的には、セルロース繊維水分散体を凍結乾燥することで乾燥粉末試料を得た後、各セルロース繊維のサンプルを銅エチレンジアミン溶液に溶解させ、オストワルド粘度計を用いて、溶媒に対する溶液の相対粘度から、固有粘度を求め、各セルロース繊維の分子量(粘度平均分子量)を算出した。
【0069】
(粒度分布測定)
繊維の解繊度を簡易的に測定するためにメジアン径を測定した。メジアン径(頻度の累積が50%になる粒子径)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法(堀場製作所社製、装置名:LA−300)で求めた。測定前に超音波による分散処理を5分間実施し、粒度分布測定を行った。
【0070】
(乾燥後の繊維形状判定:電子顕微鏡による観察)
セルロース繊維乾燥体の形状を確認するために電子顕微鏡(日本電子社製、装置名:JCM−5700)を用いて繊維外観の確認を行った。それぞれの繊維がバラバラに解れて繊維状になっているものはA、繊維状になっておらず繊維が複数本全体にわたって凝集している凝集体となっているものはD、その中間で、繊維同士が一部凝集して部分凝集体となっているものが半分未満の場合をB、部分凝集体となっているものが半分以上あるものをCと判定した。なお、A及びB判定を合格とする。
【0071】
(乾燥後の平均繊維径)
乾燥後の繊維形状判定で繊維状体が確認されたものについて、セルロース繊維乾燥体の繊維径を測定するために電子顕微鏡(日本電子社製、装置名:JCM−5700)を用いて繊維径測定を行った。各繊維の繊維径を50本観察し、その平均値を平均繊維径とした。
【0072】
(製造例1)
原料セルロースとして綿花由来のコットンを用い、セルロース繊維水分散体を作製した。
まず、カッティングミル(フリッチュ社製 Pulverisette 15)にてコットンを粉砕し、綿粉状セルロースを得た。得られた綿粉状セルロースを10質量%の濃度になるようにイオン交換水で分散液を調製し、湿式微粒化装置(スギノマシン社製 スターバースト)にて解繊処理を10回実施し、繊維を解した。その後、構成糖分析により、セルロース繊維の構成糖におけるヘミセルロース分の割合を測定した。また、得られたセルロース繊維水分散体を凍結乾燥することで乾燥粉末試料を得た後、粘度法により、その平均分子量を求め、X線回折測定により、セルロースI型結晶の有無の確認を行った。次に得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に界面活性剤として縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を、セルロース固形分100質量部に対して10質量部になるように添加し、十分に撹拌混合した。
セルロース繊維水分散体におけるセルロース繊維の平均繊維径、及び粒度分布の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0073】
その後、80℃で4時間、撹拌しながら加熱乾燥させることで、水分を除去し、粒状のセルロース繊維乾燥体を得た。得られた粒状のセルロース繊維乾燥体をピンミル(奈良機械製作所社製、装置名:サンプルミル)を用いて粉砕処理を実施し、セルロース繊維乾燥体を得た。粉砕処理の回転数は16,000rpmとし、スクリーン0.2mmとした。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを電子顕微鏡により確認した(
図1)。乾燥後の繊維形状を判定し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1、
図1より、繊維径数μmのセルロース繊維乾燥体が得られることが分かる。
【0076】
(製造例2)
製造例1と同様に得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に界面活性剤として縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を添加することなく、製造例1と同様に加熱乾燥させて、粒状の乾燥体を得た。さらに粒状の乾燥体は製造例1と同様にピンミルを用いて粉砕処理を実施し、セルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを電子顕微鏡により確認した(
図2)。乾燥後の繊維形状を判定し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表2に示す。
【0077】
(製造例3)
製造例1と同様にして得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に界面活性剤として縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を、セルロース繊維(固形分)100質量部に対して1質量部になるように添加し、十分に撹拌混合した。その後、製造例1と同様に加熱乾燥させることで、粒状の乾燥体を得た。さらに粒状の乾燥体は製造例1と同様にピンミルを用いて粉砕処理を実施し、セルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを電子顕微鏡により確認した(
図3)。乾燥後の繊維形状を判定し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表2に示す。
【0078】
(製造例4)
製造例1と同様にして得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に界面活性剤として縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を、セルロース繊維(固形分)100質量部に対して3質量部になるように添加し、十分に撹拌混合した。その後、加熱乾燥させることで、粒状の乾燥体を得た。さらに粒状の乾燥体は製造例1と同様にピンミルを用いて粉砕処理を実施し、セルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを電子顕微鏡により確認した(
図4)。乾燥後の繊維形状を判定し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表2に示す。
【0079】
(製造例5)
製造例1と同様にして得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に界面活性剤として縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を、セルロース固形分に対して5質量部になるように添加し、十分に撹拌混合した。その後、加熱乾燥させることで、粒状の乾燥体を得た。さらに粒状の乾燥体は製造例1と同様にピンミルを用いて粉砕処理を実施し、セルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを電子顕微鏡により確認した(
図5)。乾燥後の繊維形状を判定し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表2に示す。
【0080】
(製造例6)
製造例1と同様にして得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に、界面活性剤としてのオレイン酸(品名:オレイン酸、メーカー名:富士フィルム和光純薬)を、セルロース繊維(固形分)100質量部に対して5質量部になるように添加し、十分に撹拌混合した。その後、加熱乾燥させることで、粒状の乾燥体を得た。さらに粒状の乾燥体は製造例1と同様にピンミルを用いて粉砕処理を実施し、セルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを電子顕微鏡により確認した(
図6)。乾燥後の繊維形状を判定し、繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
セルロース繊維100質量部に対する界面活性剤の添加量は1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましいことがわかった。界面活性剤を加えることで乾式粉砕によりセルロース繊維がより解れていることがわかった。
なお、上記製造例で得られたセルロース繊維乾燥体におけるセルロース繊維の繊維長さは、各繊維径の10倍以上であった。
【0083】
(樹脂へのセルロース繊維の分散性確認)
分散性の評価はセルロース繊維と複合化した樹脂プレスシートを、マイクロスコープ(キーエンス社製、装置名:VHX−500)により観察し、視野角3.1mm×4.3mmの範囲で50か所、表3に示す分散評価指標を用いて、凝集物の有無やそのサイズを測定し、各乾燥体の樹脂への分散性を評価した。凝集物は最大径で200μm以上のサイズを基準に行った。
【0084】
【表3】
【0085】
(引張試験)
精密万能試験装置(島津製作所社製、装置名:オートグラフAG−50KNXD)により、JIS K7161に準拠して、25℃における引張り試験を行い、引張強度、引張弾性率、ひずみを測定した。試験片は射出成型により、所定のダンベル片(JIS K7161)、全長150mm、エッジ部の幅20mm、厚さ3.25mm、狭い部分の幅12.7mmの試験片を得た。試験条件として、試験速度10mm/min、つかみ具間距離60mmに設定した。
【0086】
[実施例1]
原料セルロースとして市販のクラフトパルプを用い、セルロース繊維水分散体を作製した。まず、カッティングミル(フリッチュ社製、装置名:Pulverisette 15)にてパルプを粉砕し、綿粉状セルロースを得た。得られた綿粉状セルロースを10質量%の濃度になるようにイオン交換水で分散液を調製し、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、装置名:スターバースト)にて解繊処理を3回実施し、繊維を解した。製造例1と同様に構成糖分析、分子量測定、X線回折測定を行った。次に得られた10質量%のセルロース繊維水分散体に界面活性剤として縮合リシノール酸エステル(品名:CRS−75、メーカー名:阪本薬品工業)を、セルロース固形分100質量部に対して10質量部になるように添加し、十分に撹拌混合した。
その後は製造例1と同様にして、平均繊維径と粒度分布を測定した。結果を表4に示す。また、製造例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを製造例1と同様に電子顕微鏡により確認し、乾燥後に繊維状である場合はその平均繊維径を測定した。その結果を表4に示す。
【0087】
(ポリプロピレンとの複合化と評価)
表4に示す配合比でセルロース繊維、マレイン酸変性ポリプロピレン(品名:ユーメックス Y−1010、メーカー名:三洋化成)、ポリプロピレン(品名:PX600N、メーカー名:サンアロマー)を計量後、ブレンダーを用いて20,000rpmの条件で1分間撹拌混合した。その後、二軸混練機(Xplore Instruments社製)によって溶融混錬を行った。混練条件は、200℃、120rpm、混練時間は10分間実施した。混練後、射出成型により所定のダンベル片(JIS K7161)としてのセルロース繊維樹脂複合体を作製した。得られたダンベル片は、7日以上状態調整後、精密万能試験装置(島津製作所社製、製品名:オートグラフAG−50KNXD)により引張り試験を行った。試験条件として、試験速度10mm/min、つかみ具間距離60mmに設定した。機械的物性(引張強度、引張弾性率、ひずみ)の結果を表4に示す。
また、混練後に得られたストランドを長さ約3mmで切り出し、複合樹脂ペレットを得た。得られた複合樹脂ペレットをテフロン(登録商標)シートで挟み、熱プレス装置にて12MPa、2分、200℃のプレス処理を行い樹脂プレスシートを得た。得られた樹脂プレスシートは、マイクロスコープにより観察し、表3に示す分散評価方法を用いて、凝集物の有無やそのサイズを測定し、樹脂への分散性を評価した。
【0088】
[実施例2]
製造例1のセルロース繊維乾燥体を用い、実施例1と同様の方法でポリプロピレンとの複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0089】
[実施例3]
湿式微粒化装置での解繊処理回数を2回に変更し、それ以外は製造例1と同様の方法で、セルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを製造例1と同様に電子顕微鏡により確認し、平均繊維径等を測定した(表4)。その後、実施例1と同様の方法でポリプロピレンとの複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0090】
[比較例1]
セルロース繊維乾燥体を含まない樹脂体の比較例として、表4に示す配合割合でポリプロピレン単体でのサンプル作製を行った。試験片の作製方法は実施例1と同様の方法で試作し、評価した。
【0091】
[比較例2]
原料としてFMa−10010(スギノマシン社製 10質量%セルロース水分散体)を用いた。その後の工程は製造例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表4に示す。
また、製造例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを製造例1と同様に電子顕微鏡により確認し、平均繊維径等を測定した(表4)。その後、実施例1と同様の方法でポリプロピレンとの複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0092】
[比較例3]
原料としてWFo−10010(スギノマシン社製 10質量%セルロース水分散体)を用いた。その後の工程は製造例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表4に示す。
また、製造例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを製造例1と同様に電子顕微鏡により確認し、平均繊維径等を測定した(表4)。その後、実施例1と同様の方法でポリプロピレンとの複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0093】
[比較例4]
原料セルロースとして綿花由来のコットンを用い、セルロース繊維水分散体を作製した。
まず、カッティングミル(フリッチュ社製、装置名:Pulverisette 15)にてコットンを粉砕し、綿粉状セルロースを得た。湿式微粒化装置による解繊処理を実施せず、得られた綿粉状セルロースを10質量%の濃度になるようにイオン交換水で分散液を調製した。その後の工程は製造例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表4に示す。
また、製造例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを製造例1と同様に電子顕微鏡により確認し、平均繊維径等を測定した(表4)。その後、実施例1と同様の方法でポリプロピレンとの複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0094】
[比較例5]
原料としてWFo−10010の低解繊処理品(スギノマシン社製、10質量%セルロース水分散体、1回解繊処理品)を用いた。その後の工程は製造例1と同様にして、セルロース繊維水分散体を作製した。製造例1と同様にして、構成糖分析、分子量測定、X線回折測定、平均繊維径測定、及び粒度分布測定を行った。結果を表4に示す。
また、製造例1と同様にしてセルロース繊維乾燥体を得た。得られたセルロース繊維乾燥体が繊維状になっているかどうかを製造例1と同様に電子顕微鏡により確認し、平均繊維径等を測定した(表4)。その後、実施例1と同様の方法でポリプロピレンとの複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0095】
【表4】
【0096】
[実施例4]
(ポリプロピレンとの複合化と評価)
製造例1のセルロース繊維乾燥体を用い、表5に示す配合比でセルロース繊維乾燥体、マレイン酸変性ポリプロピレン(品名:ユーメックス Y−1010、メーカー名:三洋化成)、ポリプロピレン(品名:PX600N、メーカー名:サンアロマー)を計量後、ブレンダーを用いて20,000rpmの条件で1分間撹拌混合した。その後、二軸混練機(Xplore Instruments社製)によって溶融混錬を行った。混練条件は、200℃、120rpm、混練時間は10分間実施した。混練後、射出成型により所定のダンベル片(JIS K7161)としてのセルロース繊維樹脂複合体を作製した。得られたダンベル片は、7日以上状態調整後、精密万能試験装置(島津製作所社製、製品名:オートグラフAG−50KNXD)により引張り試験を行った。試験条件として、試験速度10mm/min、つかみ具間距離60mmに設定した。機械的物性(引張強度、引張弾性率、ひずみ)の結果を表5に示す。
また、混練後に得られたストランドを長さ約3mmで切り出し、複合樹脂ペレットを得た。得られた複合樹脂ペレットをテフロン(登録商標)シートで挟み、熱プレス装置にて12MPa、2分、200℃のプレス処理を行い樹脂プレスシートを得た。得られた樹脂プレスシートは、マイクロスコープにより観察し、表3に示す分散評価方法を用いて、凝集物の有無やそのサイズを測定し、樹脂への分散性を評価した。作製したダンベル片のセルロース繊維比率は1質量%である。
【0097】
[実施例5]
製造例1のセルロース繊維乾燥体を用い、表5に示す配合比で、実施例4と同様の方法でポリプロピレンとの複合化を実施し、同様に評価した。機械的物性(引張強度、引張弾性率、ひずみ)の結果を表5に示す。作製したダンベル片のセルロース繊維比率は5質量%である。
【0098】
[実施例6]
製造例1のセルロース繊維乾燥体を用い、表5に示す配合比で、実施例4と同様の方法でポリプロピレンとの複合化を実施し、同様に評価した。機械的物性(引張強度、引張弾性率、ひずみ)の結果を表5に示す。作製したダンベル片のセルロース繊維比率は20質量%である。
【0099】
[実施例7]
製造例1のセルロース繊維乾燥体を用い、表5に示す配合比で、実施例4と同様の方法でポリプロピレンとの複合化を実施し、同様に評価した。機械的物性(引張強度、引張弾性率、ひずみ)の結果を表5に示す。作製したダンベル片のセルロース繊維比率は30質量%である。
【0100】
【表5】
【0101】
[実施例8]
(ナイロン6との複合化と評価)
実施例1のセルロース繊維乾燥体を用い、表6に示す配合比でセルロース繊維乾燥体、ナイロン6(東レ社製 アミランCM1007)を計量後、ブレンダーを用いて20,000rpmの条件で1分間撹拌混合した。撹拌混合後、水分除去のため、80℃のオーブンで2日間乾燥処理を行った。その後、二軸混練機(Xplore Instruments社製)によって溶融混錬を行った。混練条件は、260℃、120rpm、混練時間は8分間実施した。混練後、射出成型により所定のダンベル片(JIS K7161)を得た。得られたダンベル片は、7日以上状態調整後、精密万能試験装置(島津製作所社製、製品名:オートグラフAG−50KNXD)により引張り試験を行った。試験条件として、試験速度10mm/min、つかみ具間距離60mmに設定した。得られた機械的物性(引張強度、引張弾性率、ひずみ)の結果を表6に示す。また、混練後に得られたストランドを長さ約3mmで切り出し、複合樹脂ペレットを得た。得られた複合樹脂ペレットをテフロン(登録商標)シートで挟み、熱プレス装置にて12MPa、2分、260℃のプレス処理を行い樹脂プレスシートを得た。得られた樹脂プレスシートは、マイクロスコープにより観察し、表3に示す分散評価方法を用いて、凝集物の有無やそのサイズを測定し、樹脂への分散性を評価した。
【0102】
[実施例9]
セルロース繊維乾燥体として実施例2のセルロース繊維乾燥体を用いた以外は実施例8と同様の方法でナイロン6との複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0103】
[実施例10]
セルロース繊維乾燥体として実施例3のセルロース繊維乾燥体を用いた以外は実施例8と同様の方法でナイロン6との複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0104】
[比較例6]
セルロース繊維乾燥体を含まない樹脂体の比較例として、表6に示す配合割合でナイロン6単体でのサンプル作製を行った。また試験片の作製方法は実施例8と同様の方法で試作し、評価した。
【0105】
[比較例7]
セルロース繊維乾燥体として比較例2のセルロース繊維乾燥体を用いた以外は実施例8と同様の方法でナイロン6との複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0106】
[比較例8]
セルロース繊維乾燥体として比較例3のセルロース繊維乾燥体を用いた以外は実施例8と同様の方法でナイロン6との複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0107】
[比較例9]
セルロース繊維乾燥体は比較例4で調製したものと同様のものを使用した。また実施例8と同様の方法でナイロン6との複合化を実施し、同様の方法にて評価した。
【0108】
【表6】
【0109】
平均繊維径が0.1〜20μmのセルロース繊維乾燥体では分散性が高く、引張強度、引張弾性率がともに向上していることが確認できる。
【0110】
[実施例11]
(ナイロン6との複合化と評価)
製造例1のセルロース繊維乾燥体を用い、表7に示す配合比でセルロース繊維乾燥体、ナイロン6(東レ社製 アミランCM1007)をブレンダーを用いて20,000rpmの条件で1分間撹拌混合した。撹拌混合後、水分除去のため、80℃のオーブンで2日間乾燥処理を行った。その後、二軸混練機(Xplore Instruments社製)によって溶融混錬を行った。混練条件は、260℃、120rpm、混練時間は8分で射出成型を行い、所定のダンベル片(JIS K7161)を得た。得られたダンベル片は、7日以上状態調整後、精密万能試験装置(オートグラフAG−50KNXD 島津製作所製)により引張り試験を行った。試験条件として、試験速度10mm/min、つかみ具間距離60mmに設定した。得られた機械的物性(引張強度、引張弾性率、ひずみ)ついて表7に示す。作製したダンベル片のセルロース繊維比率は1質量%である。
【0111】
[実施例12]
製造例1のセルロース繊維乾燥体を用い、表7に示す配合比で、実施例11と同様の方法でナイロン6との複合化を実施し、同様に評価した。作製したダンベル片のセルロース繊維比率は5質量%である。
【0112】
[実施例13]
製造例1のセルロース繊維乾燥体を用い、表7に示す配合比で、実施例11と同様の方法でナイロン6との複合化を実施し、同様に評価した。作製したダンベル片のセルロース繊維比率は20質量%である。
【0113】
[実施例14]
製造例1のセルロース繊維乾燥体を用い、表7に示す配合比で、実施例11と同様の方法でナイロン6との複合化を実施し、同様に評価した。作製したダンベル片のセルロース繊維比率は30質量%である。
【0114】
【表7】