(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-126473(P2020-126473A)
(43)【公開日】2020年8月20日
(54)【発明の名称】素材提案装置、素材提案方法および素材提案プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/538 20190101AFI20200727BHJP
G06F 16/54 20190101ALI20200727BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20200727BHJP
G06T 11/80 20060101ALI20200727BHJP
【FI】
G06F16/538
G06F16/54
G06Q50/08
G06T11/80 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-18853(P2019-18853)
(22)【出願日】2019年2月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2018年2月13日開催 小田島祐貴が、平成29年度 国立大学法人電気通信大学総合情報学科メディア情報学コース卒業論文発表会にて、坂本真樹および小田島祐貴が発明した「室内空間における雰囲気を考慮した素材提案システムの構築に関する研究」について公開した。 (2)2018年5月22日掲載ウェブサイトのアドレス https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2018/subject/4O1−OS−3a−03/advanced 稲住朋彦、小田島祐貴、權眞煥、坂本 真樹が、上記ウェブサイトにて、坂本真樹および小田島祐貴が発明した「室内空間における雰囲気を考慮した素材提案システムの構築に関する研究」について公開した。 (3)2018年6月8日開催 稲住朋彦、小田島祐貴、權眞煥、坂本 真樹が、2018年度人工知能学会全国大会にて、坂本真樹および小田島祐貴が発明した「室内空間における雰囲気を考慮した素材提案システムの構築に関する研究」について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真樹
(72)【発明者】
【氏名】小田島 祐貴
【テーマコード(参考)】
5B050
5L049
【Fターム(参考)】
5B050BA07
5B050BA13
5B050EA19
5B050FA02
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】ユーザの感性に沿った素材を提案する。
【解決手段】素材提案装置1は、音象徴語と、音象徴語の印象評価値を対応づけた音象徴語評価値データ11と、素材の識別子と、素材の印象評価値とを対応づけた素材データ12を記憶する記憶装置10と、音象徴語評価値データから、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値を取得し、取得した印象評価値と素材データの印象評価値との類似度に基づいて、素材の識別子を取得する素材取得部21と、物の画像に、素材取得部が取得した素材の識別子に対応する素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力する出力部22を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音象徴語で表現されたユーザの要求に合う物の素材を提案する素材提案装置であって、
音象徴語と、前記音象徴語の印象評価値を対応づけた音象徴語評価値データと、
素材の識別子と、前記素材の印象評価値とを対応づけた素材データを記憶する記憶装置と、
前記音象徴語評価値データから、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値を取得し、取得した印象評価値と前記素材データの印象評価値との類似度に基づいて、素材の識別子を取得する素材取得部と、
前記素材取得部が取得した前記素材の識別子を出力する出力部
を備えることを特徴とする素材提案装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記物の画像に、前記素材取得部が取得した素材の識別子に対応する前記素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の素材提案装置。
【請求項3】
前記記憶装置はさらに、
前記物を構成する要素の識別子を含む構成データを記憶し、
前記素材データは、さらに、前記素材の識別子に、前記素材が用いられる前記要素の識別子を対応づけ、
前記素材取得部は、前記構成データの前記要素毎に、素材の識別子を取得し、
前記出力部は、前記物の画像の前記要素に対応する部分に、前記要素について、前記素材取得部が取得した素材の識別子に対応する前記素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の素材提案装置。
【請求項4】
前記素材取得部は、前記構成データの前記要素毎に、複数の素材の識別子を取得し、
前記出力部は、前記構成データの前記要素毎に取得した複数の素材の識別子に対応する前記素材のテクスチャ画像を、前記要素に対応づけて出力し、
前記物の画像のうち、前記要素に対応する部分に、前記要素について取得した複数の素材の識別子に対応する前記素材のテクスチャ画像からユーザが選択したテクスチャ画像を、貼り付けて出力する
ことを特徴とする請求項3に記載の素材提案装置。
【請求項5】
音象徴語で表現されたユーザの要求に合う物の素材を提案する素材提案方法であって、
コンピュータが、音象徴語と、前記音象徴語の印象評価値を対応づけた音象徴語評価値データと、素材の識別子と、前記素材の印象評価値とを対応づけた素材データを記憶装置に記憶するステップと、
前記コンピュータが、前記音象徴語評価値データから、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値を取得し、取得した印象評価値と前記素材データの印象評価値との類似度に基づいて、素材の識別子を取得するステップと、
前記コンピュータが、取得した前記素材の識別子を出力するステップ
を備えることを特徴とする素材提案方法。
【請求項6】
コンピュータに、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の素材提案装置として機能させるための素材提案プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音象徴語で表現されたユーザの要求に合う素材を提案する素材提案装置、素材提案方法および素材提案プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインテリアに関する関心および需要の高まりに伴い、ユーザ自身が、ユーザ所望のインテリアをデザインする要望が高まっている。この要望に伴い、ユーザ自身が、部屋または構造物の内装空間において、壁や床などの表層部材を適宜選択してシミュレートする技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、オノマトペ等の音象徴語に着目して、画像等を検索する技術がある(特許文献2)。特許文献2は、予め、音象徴語の形容詞対評価値と、画像の形容詞対評価値を算出し、形容詞対評価値の類似性に基づいて、音象徴語を表現する画像を検索することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−092276号公報
【特許文献2】特開2016−218708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においてユーザは、インテリア等に用いることができる膨大な素材から、所望の素材を選択する必要があり、ユーザの負担が大きい。
【0006】
従って本発明の目的は、ユーザの感性に沿った素材を提案する素材提案装置、素材提案方法および素材提案プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、音象徴語で表現されたユーザの要求に合う物の素材を提案する素材提案装置に関する。本発明の第1の特徴に係る素材提案装置は、音象徴語と、音象徴語の印象評価値を対応づけた音象徴語評価値データと、素材の識別子と、素材の印象評価値とを対応づけた素材データを記憶する記憶装置と、音象徴語評価値データから、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値を取得し、取得した印象評価値と素材データの印象評価値との類似度に基づいて、素材の識別子を取得する素材取得部と、素材取得部が取得した素材の識別子を出力するする出力部を備える。
【0008】
出力部は、物の画像に、素材取得部が取得した素材の識別子に対応する素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力しても良い。
【0009】
記憶装置はさらに、物を構成する要素の識別子を含む構成データを記憶し、素材データは、さらに、素材の識別子に、素材が用いられる要素の識別子を対応づけ、素材取得部は、構成データの要素毎に、素材の識別子を取得し、出力部は、物の画像の要素に対応する部分に、要素について、素材取得部が取得した素材の識別子に対応する素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力しても良い。
【0010】
素材取得部は、構成データの要素毎に、複数の素材の識別子を取得し、出力部は、構成データの要素毎に取得した複数の素材の識別子に対応する素材のテクスチャ画像を、要素に対応づけて出力し、物の画像のうち、要素に対応する部分に、要素について取得した複数の素材の識別子に対応する素材のテクスチャ画像からユーザが選択したテクスチャ画像を、貼り付けて出力しても良い。
【0011】
本発明の第2の特徴は、音象徴語で表現されたユーザの要求に合う物の素材を提案する素材提案方法に関する。本発明の第2の特徴に係る素材提案方法は、コンピュータが、音象徴語と、音象徴語の印象評価値を対応づけた音象徴語評価値データと、素材の識別子と、素材の印象評価値とを対応づけた素材データを記憶装置に記憶するステップと、コンピュータが、音象徴語評価値データから、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値を取得し、取得した印象評価値と素材データの印象評価値との類似度に基づいて、素材の識別子を取得するステップと、コンピュータが、取得した素材の識別子を出力するステップを備える。
【0012】
本発明の第3の特徴は、コンピュータに、本発明の第1の特徴に記載の素材提案装置として機能させるための素材提案プログラムに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザの感性に沿った素材を提案する素材提案装置、素材提案方法および素材提案プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る素材提案装置のハードウエアと機能ブロックを説明する図である。
【
図2】音象徴評価値データのデータ構造の一例を説明する図である。
【
図4】素材データのデータ構造の一例を説明する図である。
【
図5】構成データのデータ構造の一例を説明する図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る素材提案装置の素材取得部の処理を説明するフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態に係る素材提案装置の出力部の処理を説明するフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態に係る素材提案装置が出力する和室の画像の一例である。
【
図9】変形例に係る素材提案装置の出力部の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0016】
(素材提案装置)
図1に示す素材提案装置1は、ユーザ所望の感性を表現した音象徴語が入力されると、その音象徴語で表現されたユーザの要求に合う物の素材を提案し、提案した素材を用いた物のシミュレーション画像を出力する。本発明の実施の形態において音象徴語は、語音そのものが、ある特定のイメージを喚起する語であって、「すっきり」、「ざらざら」等のオノマトペに代表される。物の表面に用いる素材によって、物の印象が大きく異なることから、ユーザが所望する物の印象を音象徴語で表現し、素材提案装置1は、入力された音象徴語に基づいて、素材を提案する。素材提案装置1は、音象徴語に基づいて素材を特定することにより、ユーザの感性に沿った素材を提案する。
【0017】
本発明の実施の形態は、「物」は、形状が特定される物であって、物の表層部材を適宜設定できるものを言う。物の具体例として和室の場合を説明するが、自動車、家具、雑貨などの有体物であっても良いし、コンピュータ等で描画されるキャラクタ、アイテムなどの無体物でも良い。また、和室の内装と家具の組み合わせにおいて適切な素材を見つけたい場合など、物と物との組み合わせに適用しても良い。
【0018】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る素材提案装置1を説明する。素材提案装置1は、記憶装置10、処理装置20、入出力インタフェース30を備える一般的なコンピュータである。一般的なコンピュータが素材提案プログラムを実行することにより、
図1に示す機能を実現する。
【0019】
記憶装置10は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)、ハードディスク等であって、処理装置20が処理を実行するための入力データ、出力データおよび中間データなどの各種データを記憶する。処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)であって、記憶装置10に記憶されたデータを読み書きしたり、入出力インタフェース30とデータをやりとりしたりして、素材提案装置1における処理を実行する。入出力インタフェース30は、マウス、キーボード等の入力装置、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置、通信ネットワークに接続するための通信制御装置等と、処理装置20を接続する。入出力インタフェース30は、入力装置または通信ネットワークから入力された指示等を処理装置20に入力し、処理装置20の出力結果等を出力装置または通信ネットワークに出力する。
【0020】
記憶装置10は、素材提案プログラムを記憶するとともに、音象徴語評価値データ11、素材データ12および構成データ13を記憶する。
【0021】
音象徴語評価値データ11は、
図2に示すように、音象徴語と、音象徴語の印象評価値を対応づけたデータである。本発明の実施の形態において印象評価値は、
図3に示すように「明るい−暗い」、「温かい−冷たい」などの形容詞対毎の評価値を含む。音象徴語の印象評価値は、音韻の語中の位置によって、音象徴語の印象が異なる可能性がある。従って音象徴語は第1モーラと第2モーラに分解され、各モーラについて、子音行、濁音、拗音、小母音、母音、語尾の要素と反復の有無等を特定した結果に基づいて、音象徴語の印象評価値が算出される。
【0022】
素材データ12は、素材提案装置1が提案する各素材のデータを蓄積する。素材データ12は、
図4に示すように、素材の識別子と、素材が用いられる要素の識別子と、素材の印象評価値を対応づけたデータである。素材データ12は、さらに、素材の識別子に、その素材の表層のテクスチャ画像を対応づけても良い。
【0023】
素材は、物を構成する要素に用いられる部材である。要素は、物を構成する部分であって、素材が用いられる単位である。例えば物が和室の場合、要素は、壁、床、天井等であって、壁、床、天井のそれぞれに、一つの素材が用いられる。
【0024】
素材は、材質、模様等によって区分される。例えば、床に用いる素材として、い草で作られた畳、和紙で作られた畳、ポリプロピレンで作られた畳など、材質等の異なる複数の素材があり、畳の縁の模様等によって、さらに複数の素材に区分されても良い。また壁に用いる素材として、土、珪藻土、和紙、壁紙などの素材があり、和紙または壁紙に設けられる模様等によって、さらに複数の素材に区分されても良い。壁と天井に適用可能な壁紙など、一つの素材に対して複数の要素が対応づけられても良い。
【0025】
素材の印象評価値は、
図3に示すように形容詞対毎の評価値を含む。素材の印象評価値は、音象徴語評価値データ11の各音象徴語の印象評価値と対応する形式で表現される。例えば、素材の印象評価値は、音象徴語の印象評価値の形容詞対のうち、視覚的な印象、またはインテリアデザインに関連が深いと考えられる形容詞対の評価値のみを有しても良い。
【0026】
素材の印象評価値は、素材のテクスチャ画像の画像特徴量から印象評価値が特定されても良いし、ユーザによるアンケートにより与えられても良い。
【0027】
アンケートにより印象評価値を特定する場合、素材を視認したユーザに、ユーザが想起したオノマトペ等の音象徴語を回答させ、回答された音象徴語の印象評価値から、素材の印象評価値が特定される。一つの素材について、複数の音象徴語が想起された場合、想起された音象徴語の印象評価値の平均等(各形容詞対の評価値の平均等)から、素材の音象徴語の印象評価値が特定されても良い。
【0028】
また他の方法として、各素材について、
図3に示す各形容詞対の評価値をユーザに回答させて、その回答に基づいて、素材の印象評価値が特定されても良い。この際、
図3に示す形容詞対のうち、視覚的な印象、またはインテリアデザインに関連が深いと考えられる形容詞対について評価値をユーザに回答させても良い。視覚的な印象、またはインテリアデザインに関連が深いと考えられる形容詞対は例えば、「明るい−暗い」、「温かい−冷たい」、「快適−不快」、「かたい−やわらかい」、「美しい−醜い」、「高級感のある−安っぽい」、「自然な−人工的な」、「湿った−乾いた」、「シンプルな−複雑な」、「滑る−粘つく」、「つやのある−つやのない」、「凸凹な−平らな」、「なめらかな−粗い」および「派手な−地味な」等である。
【0029】
構成データ13は、
図5に示すように、物を構成する要素の識別子を含むデータである。物が一つの要素で構成される場合、構成データ13は、一つの要素の識別子を含む。物が複数の要素で構成される場合、構成データは複数の要素の識別子を含む。物が和室の場合、構成データ13は、壁、床、天井等の各要素の識別子を含む。構成データ13はさらに、物にテクスチャ画像を貼り付けてシミュレーションするために、各要素の位置を特定するデータを対応づける。
【0030】
処理装置20は、素材取得部21および出力部22を備える。
【0031】
素材取得部21は、音象徴語評価値データ11から、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値を取得し、取得した印象評価値と素材データ12の印象評価値との類似度に基づいて、素材の識別子を取得する。素材取得部21は、ユーザが入力した音象徴語を表現する素材を特定する。
【0032】
素材取得部21は、音象徴語の印象評価値を構成する各評価値と、素材データ12の素材の印象評価値を構成する各評価値を比較して、類似度を算出する。本発明の実施の形態において類似度は、コサイン類似度を用いる。
【0033】
素材取得部21は、素材データ12から、音象徴語の印象評価値に近い印象評価値を有する素材の識別子を取得する。素材取得部21は、音象徴語の印象評価値に、最も類似度が高い印象評価値を有する素材の識別子を取得しても良いし、類似度が所定値以上の素材の識別子を取得しても良いし、類似度が高いものから所定数の素材の識別子を取得しても良い。
【0034】
物が複数の要素によって構成される場合、素材取得部21は、構成データ13の要素毎に、素材の識別子を取得する。素材取得部21は、構成データ13の要素について、素材データ12のその要素に対応する素材のうち、音象徴語の印象評価値と類似度が高い素材の識別子を取得する。素材取得部21は、構成データ13で特定される各要素について、素材の識別子を取得する処理を繰り返す。物が和室の場合、素材取得部21は、素材データ12から、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値に近い素材の識別子を、床、壁および天井等の各要素について取得する。
【0035】
図6を参照して、素材取得部21による素材取得処理を説明する。
【0036】
ステップS101において素材取得部21は、音象徴語評価値データ11から、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値を取得する。
【0037】
素材取得部21は、構成データ13の各要素について、ステップS102およびステップS103の処理を繰り返す。
【0038】
ステップS102において素材取得部21は、素材データ12から、処理対象の要素に対応する素材の識別子を抽出する。ステップS103において素材取得部21は、ステップS103で抽出した素材の識別子から、ステップS101で取得した音象徴語の印象評価値に近い印象評価値を有する素材の識別子を取得する。より具体的には、素材取得部21は、ステップS101で取得した音象徴語の印象評価値とのコサイン類似度が最も高い素材の識別子を取得する。
【0039】
素材取得部21は、構成データ13の各要素について、ステップS102およびステップS103を処理すると、終了する。
【0040】
出力部22は、素材取得部21が取得した素材の識別子を出力する。ここで出力される素材の識別子は、素材に付与されたコード番号でも良いし、い草で作られた畳などの素材の説明でも良いし、素材のテクスチャ画像であっても良い。
【0041】
また出力部22は、物の要素について、物の画像に、素材取得部21が取得した素材の識別子に対応する素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力しても良い。ユーザは、素材提案装置1が提案した素材の質感を、視認することができる。
【0042】
物が複数の要素によって構成される場合、出力部22は、物の画像の要素に対応する部分に、その要素について、素材取得部21が取得した素材の識別子に対応する素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力する。出力部22は、構成データ13を参照して、要素の位置を特定する。出力部22は、特定した位置に、その要素について特定した素材のテクスチャ画像を貼り付けて、出力する。
【0043】
図7を参照して、出力部22による出力処理を説明する。
【0044】
出力部22は、構成データ13の各要素について、ステップS201の処理を繰り返す。ステップS201において出力部22は、処理対象の要素の位置に、その要素について取得した素材のテクスチャ画像を貼り付ける。
【0045】
構成データ13の各要素についてステップS201の処理が終了すると、ステップS202において出力部22は、素材のテクスチャを貼り付けた物の画像を出力し、処理を終了する。
【0046】
本発明の実施の形態において素材提案装置1は、各要素について最もコサイン類似度が高い素材を提案する場合を説明したがこれに限らない。例えば、上位から所定数以内にコサイン類似度が高い素材または所定値以上のコサイン類似度を有する素材から、1以上の素材を提案しても良い。また物が複数の要素によって構成される場合、各要素の複数の素材からランダムに選択して、複数の素材のテクスチャ画像を組み合わせた画像を出力しても良い。
【0047】
図8を参照して、素材提案装置1による出力画像の一例を説明する。
図8(a)は、音印象語として「ざらざら」が入力された際の出力画像で、
図8(b)は、音印象語として「すっきり」が入力された際の出力画像である。
【0048】
図8(a)および
図8(b)に示す各画像を提示し、各画像から想起される音象徴語のアンケート回答により、本発明の実施の形態に係る素材提案装置1を評価する。
図8(a)から想起される音象徴語として、「ざらざら」、「つるつる」および「ぎらぎら」の中から最適なものを選択させた結果、「ざらざら」の回答が最も多く得られた。同様に
図8(b)から想起される音象徴語として、「きらきら」、「すっきり」および「ごわごわ」の中から最適なものを選択させた結果、「すっきり」の回答が最も多く得られた。これらの結果から、本発明の実施の形態に係る素材提案装置1は、人の感性に合った素材を提案していることがわかる。
【0049】
このように、本発明の実施の形態に係る素材提案装置1は、ユーザから物の素材に対してイメージする音象徴語が入力されると、その音象徴語の印象評価値に類似する印象評価値を有する素材を提案する。これにより、ユーザは、素材に対する充分な知識がない場合でも、また膨大な素材に目を通さない場合でも、ユーザのイメージに近い素材を見つけ出すことができる。
【0050】
また物が複数の要素で構成される場合、従来であれば、各要素に用いる素材の相性等も考慮する必要があり、ユーザが素材を選択することが困難な場合があった。これに対し本発明の実施の形態に係る素材提案装置1は、物の各要素について、ユーザが入力した音象徴語に対応する素材を選択する。一つの音象徴語から選択された各素材は、共通するイメージを有するので、素材提案装置1は、統一感のある素材で組み合わされ、調和の取れた外観を提案することができる。従ってユーザは、素材の組み合わせの相性等を考慮することなく、音象徴語に対応する素材の情報を得ることができる。
【0051】
このように本発明の実施の形態に係る素材提案装置1は、ユーザの感性に沿った音象徴語から、ユーザの感性に沿った素材を提案することができる。
【0052】
(変形例)
本発明の実施の形態において、素材提案装置1が、入力された音象徴語に対応する素材の識別子を出力する場合を説明したが、これに限らない。素材提案装置1は、入力された音象徴語に対応する複数の素材を提示し、ユーザに選択させても良い。
【0053】
変形例において素材取得部21は、構成データ13の要素毎に、複数の素材の識別子を取得する。
【0054】
出力部22は、構成データ13の要素毎に取得した複数の素材の識別子に対応する素材のテクスチャ画像を、要素に対応づけて出力する。出力部22はさらに、物の画像のうち、要素に対応する部分に、要素について取得した複数の素材の識別子に対応する素材のテクスチャ画像からユーザが選択したテクスチャ画像を、貼り付けて出力する。
【0055】
図9に変形例に係る出力部22による出力処理を説明する。
【0056】
出力部22は、構成データ13の各要素について、ステップS251ないしステップS252の処理を繰り返す。ステップS251において出力部22は、処理対象の要素に対応する複数の素材のテクスチャ画像を表示し、ユーザにいずれかのテクスチャ画像を選択させる。ステップS252において出力部22は、処理対象の要素の位置に、その要素について選択された素材のテクスチャ画像を貼り付ける。
【0057】
構成データ13の各要素についてステップS251およびステップS252の処理が終了すると、ステップS253において出力部22は、素材のテクスチャを貼り付けた物の画像を出力し、処理を終了する。
【0058】
素材提案装置1は、ユーザが入力した音象徴語に対応する素材の数を絞り込んでユーザに提示することで、ユーザは、所望のイメージに近い素材から、嗜好にあった素材を選択することができる。
【0059】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態とその変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0060】
例えば、本発明の実施の形態に記載した素材提案装置は、
図1に示すように一つのハードウエア上に構成されても良いし、その機能や処理数に応じて複数のハードウエア上に構成されても良い。また、既存の情報処理システム上に実現されても良い。
【0061】
また本発明の実施の形態に示した処理順序は一例であって、この順序に限定されるものではない。
【0062】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 素材提案装置
10 記憶装置
11 音象徴語評価値データ
12 素材データ
13 構成データ
20 処理装置
21 素材取得部
22 出力部
【手続補正書】
【提出日】2020年3月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音象徴語で表現されたユーザの要求に合う物の素材を提案する素材提案装置であって、
音象徴語と、前記音象徴語の印象評価値を対応づけた音象徴語評価値データと、
素材の識別子と、前記素材の印象評価値とを対応づけた素材データを記憶する記憶装置と、
前記音象徴語評価値データから、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値を取得し、取得した印象評価値と前記素材データの印象評価値との類似度に基づいて、素材の識別子を取得する素材取得部と、
前記素材取得部が取得した前記素材の識別子を出力する出力部
を備えることを特徴とする素材提案装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記物の画像に、前記素材取得部が取得した素材の識別子に対応する前記素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の素材提案装置。
【請求項3】
前記記憶装置はさらに、
前記物を構成する要素の識別子を含む構成データを記憶し、
前記素材データは、さらに、前記素材の識別子に、前記素材が用いられる前記要素の識別子を対応づけ、
前記素材取得部は、前記構成データの前記要素毎に、素材の識別子を取得し、
前記出力部は、前記物の画像の前記要素に対応する部分に、前記要素について、前記素材取得部が取得した素材の識別子に対応する前記素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の素材提案装置。
【請求項4】
前記素材取得部は、前記構成データの前記要素毎に、複数の素材の識別子を取得し、
前記出力部は、前記構成データの前記要素毎に取得した複数の素材の識別子に対応する前記素材のテクスチャ画像を、前記要素に対応づけて出力し、
前記物の画像のうち、前記要素に対応する部分に、前記要素について取得した複数の素材の識別子に対応する前記素材のテクスチャ画像からユーザが選択したテクスチャ画像を、貼り付けて出力する
ことを特徴とする請求項3に記載の素材提案装置。
【請求項5】
前記素材取得部は、複数の素材の識別子を取得し、
前記出力部は、取得した複数の素材の識別子にそれぞれ対応する複数の前記素材のテクスチャ画像を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の素材提案装置。
【請求項6】
前記出力部が出力した前記複数の素材のテクスチャ画像から、一の素材のテクスチャ画像をユーザに選択させる選択手段を更に備え、
前記出力部は、前記物の画像に、前記選択手段により選択された前記素材のテクスチャ画像を貼り付けて出力する
ことを特徴とする請求項5に記載の素材提案装置。
【請求項7】
前記素材を視認したユーザにより回答された音象徴語の印象評価値から、前記素材データが生成される
ことを特徴とする請求項1に記載の素材提案装置。
【請求項8】
前記素材を視認したユーザの回答から特定された印象評価値から、前記素材データが生成される
ことを特徴とする請求項1に記載の素材提案装置。
【請求項9】
音象徴語で表現されたユーザの要求に合う物の素材を提案する素材提案方法であって、
コンピュータが、音象徴語と、前記音象徴語の印象評価値を対応づけた音象徴語評価値データと、素材の識別子と、前記素材の印象評価値とを対応づけた素材データを記憶装置に記憶するステップと、
前記コンピュータが、前記音象徴語評価値データから、ユーザが入力した音象徴語の印象評価値を取得し、取得した印象評価値と前記素材データの印象評価値との類似度に基づいて、素材の識別子を取得するステップと、
前記コンピュータが、取得した前記素材の識別子を出力するステップ
を備えることを特徴とする素材提案方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の素材提案装置として機能させるための素材提案プログラム。