【解決手段】アンテナ装置100は、情報を記憶保持するICチップ12と、所定の通信周波数帯域を利用して外部と通信するアンテナ部20とを備え、アンテナ部20は、導線30を巻回することにより形成されており、導線30の両端部32が、アンテナ部の共振周波数の調整部21を構成している。
前記ボビン部材は、前記ICチップ搭載部よりも前記導線の前記両端部の延伸方向における先端側の位置に、前記導線の前記両端部を互いに離間させる導線分断用突起を有し、
前記ボビン部材の前記外周部における前記一箇所から前記導線分断用突起までの間においては、前記導線の前記両端部が互いに並列に延在しており、
前記導線の前記両端部が、それぞれ前記導線分断用突起に係合しており、
前記導線の前記両端部において前記導線分断用突起よりも先端側の部分が、互いに撚り合わされて前記調整部を構成している請求項5に記載のアンテナ装置。
情報を記憶保持するICチップと、導線を巻回することにより形成されていて所定の通信周波数帯域を利用して外部と通信するアンテナ部と、絶縁性のボビン部材と、を備えるアンテナ装置を製造する方法であって、
前記ボビン部材として、当該ボビン部材の外周部よりも内側の位置に配置されているICチップ搭載部と、当該ボビン部材の外周部よりも内側の位置に配置されている絡げ部と、を有するものを準備する工程と、
前記ICチップを前記ICチップ搭載部に搭載する工程と、
前記導線の一端部における先端部を前記絡げ部に巻回して絡げる工程と、
前記ボビン部材の外周部に前記導線を巻回することにより前記アンテナ部を形成する工程と、
前記導線の他端部における先端部を、当該導線の前記一端部における前記先端部と同じ巻回方向で前記絡げ部に絡げる工程と、
前記導線の前記一端部と前記他端部との各々において前記絡げ部と前記ボビン部材の前記外周部との間に位置する部位をそれぞれ前記ICチップに対して電気的に接続する工程と、
前記絡げ部を前記ボビン部材から切り離す工程と、
前記絡げ部を回転させることによって、前記導線の両端部を互いに撚り合わせて、撚り合わせ部を形成する工程と、
前記撚り合わせ部の先端部を前記ボビン部材に固定する工程と、
前記導線の前記両端部において、前記撚り合わせ部よりも先端側の部位を、切除する工程と、
前記導線、前記ボビン部材及び前記ICチップを封止する工程と、
を備え、
前記撚り合わせ部を形成する工程での撚り合わせの程度と、前記導線の前記両端部を切除する工程での切断位置と、の少なくともいずれか一方を調節することによって、前記アンテナ部の共振周波数を調整する、アンテナ装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0010】
図1から
図3のいずれかに示すように、本実施形態に係るアンテナ装置100は、情報を記憶保持するICチップ12と、所定の通信周波数帯域を利用して外部と通信するアンテナ部20とを備えている。アンテナ部20は、導線30を巻回することにより形成されている。導線30の両端部32が、アンテナ部20の共振周波数の調整部21を構成している。
ここで、調整部21は、両端部32の少なくとも一部分により構成されている。すなわち、両端部32の一部分が調整部21を構成していてもよいし、両端部32の全体が調整部21を構成していてもよい。本実施形態の場合、両端部32の一部分によって調整部21が構成されている。
【0011】
本実施形態によれば、アンテナ装置100が調整部21を備えていることによって、アンテナ装置100の製造に際して、容易にアンテナ部20の共振周波数を調整することができる。つまり、本実施形態によれば、アンテナ部20がより正確に所定の共振周波数で作動する構成を実現しやすくなる。
【0012】
本実施形態の場合、導線30は絶縁被覆されている。
そして、調整部21は、導線30の両端部32を互いに撚り合わせることにより構成されている。すなわち、導線30の一端部33と他端部35とを互いに撚り合わせることによって、調整部21が構成されている。以下の説明では、調整部21のことを撚り合わせ部と称することがある。
導線30の両端部32を互いに撚り合わせることにより調整部21が構成されているので、アンテナ装置100の製造に際して、両端部32の撚り合わせの程度や、撚り合わせ部の長さを調節することによって、アンテナ部20の共振周波数を調整することができる。
更に、両端部32を互いに撚り合わせることにより調整部21が構成されているので、調整部21の形成後にアンテナ装置100を封止部80によって封止する際において調整部21の形状の変動を抑制できることから、調整部21の容量の変動を抑制することができる。
調整部21は、例えば、
図1等に示すように直線状に延在している。ただし、調整部21は弧状等の曲線状に延在していてもよい。
【0013】
なお、本発明において、調整部21は、必ずしも、両端部32を互いに撚り合わせることにより構成された撚り合わせ部でなくてもよく、例えば、導線30の一端部33と他端部35とが互いに並列に延在して調整部21を構成していてもよい。
【0014】
アンテナ装置100は、絶縁性のボビン部材40を更に備えている。アンテナ部20は、導線30がボビン部材40の外周部41に巻回されることにより形成されている。
導線30がボビン部材40の外周部41に巻回されることによりアンテナ部20が形成されているので、アンテナ部20の形状を安定的に維持することができ、アンテナ部20の特性を容易に狙い通りのものとすることができる。
ボビン部材40は、例えば樹脂材料により成形することができる。
本実施形態の場合、アンテナ部20は、1本の導線30により構成されている。ただし、本発明において、アンテナ部20を構成する導線30は2本以上であってもよい。
以下の説明では、導線30においてボビン部材40の外周部41に巻回されている部分のことを、巻回部31と称することがある。
【0015】
ここで、ボビン部材40について詳述する。
ボビン部材40は、例えば、円環状の外周部41と、外周部41の内側に配置されている第1支持部50及び第2支持部70と、を備えて構成されている。
【0016】
外周部41は、扁平な円環状に形成されている。
外周部41は、円環状の円環部42と、第1鍔部45及び第2鍔部46と、を備えている。
第1鍔部45は、円環部42の厚み方向における一端部から当該円環部42の外周方向に向けて張り出しており、第2鍔部46は、円環部42の厚み方向における他端部から当該円環部42の外周方向に向けて張り出している。第1鍔部45及び第2鍔部46の各々も、扁平な円環状に形成されている。第1鍔部45と第2鍔部46とは互いに平行に対向している。
【0017】
以下の説明は、ボビン部材40の軸方向における一方側(第1鍔部45側)が下、当該軸方向における他方側(第2鍔部46側)が上であるものとして行う。
【0018】
外周部41には、巻回溝44が形成されており、巻回溝44内において導線30が巻回されることによって、アンテナ部20が形成されている。巻回溝44は、第1鍔部45と第2鍔部46との互いの対向面と、円環部42の外周面と、により画定されている。
一例として、巻回溝44の幅(上下寸法)、すなわち第1鍔部45と第2鍔部46との対向間隔は、導線30の外径と同等の寸法に設定されている。このため、導線30の巻回部31における各ターンは、互いに同一平面内に位置しており、導線30は、巻回溝44に1周(1ターン)巻き付けられる度に、導線30の外径分だけ、外周部41の径方向における外側に変位している。
第2鍔部46の周方向における一箇所には、切欠形状部47が形成されており、第2鍔部46は周方向において部分的に欠落している。この切欠形状部47の平面形状は特に限定されないが、例えば、
図2に示すように矩形状となっている。
円環部42の周方向において切欠形状部47と対応する部分は、低段部43となっている。低段部43においては、円環部42に部分的に窪みが形成されており、円環部42が第2鍔部46の厚み分だけ低段となっている。
低段部43は、円環部42の径方向における一端から他端に亘って形成されている。
外周部41の径方向において、低段部43と切欠形状部47とは相互に隣接している。
低段部43の平面形状は、例えば、
図2に示すように矩形状となっている。
外周部41の周方向において、切欠形状部47の一端縁の位置と低段部43の一端縁の位置とは互いに一致しており、これら一端縁は外周部41の径方向と平行に直線状に並んでいる。同様に、外周部41の周方向において、切欠形状部47の他端縁の位置と低段部43の他端縁の位置とは互いに一致しており、これら他端縁は外周部41の径方向と平行に直線状に並んでいる。
【0019】
例えば、第1支持部50及び第2支持部70の各々は、外周部41の径方向に延在している。例えば、第1支持部50の延在方向と第2支持部70の延在方向とは互いに直交している。第1支持部50及び第2支持部70の各々は、例えば、板状に形成されており、互いに同一平面上に配置されている。
例えば、第1支持部50の一端部は、外周部41の周方向における一箇所に接続されており、第1支持部50の他端部は、外周部41の周方向における他の部分に接続されている。
同様に、第2支持部70の一端部は、外周部41の周方向における一部分に接続されており、第2支持部70の他端部は、外周部41の周方向における他の一部分に接続されている。
【0020】
第1支持部50は、例えば、ICチップ搭載部51と、調整部支持部57と、反対側端部61と、を有する。ICチップ搭載部51、調整部支持部57及び反対側端部61の各々は板状に形成されている。
ICチップ搭載部51は、第1支持部50の一端部に配置されており、反対側端部61は、第1支持部50の他端部に配置されている。調整部支持部57は、ICチップ搭載部51と反対側端部61との間に配置されており、ICチップ搭載部51と反対側端部61とを相互に接続している。
【0021】
ICチップ搭載部51の平面形状は特に限定されないが、ICチップ搭載部51は、例えば、
図2に示すように、矩形状に形成されている。
ICチップ搭載部51の上面には、後述するCOB(Chip On Board)10が搭載される領域である基板搭載領域52が形成されている。基板搭載領域52は、外周部41の径方向において低段部43と隣接する位置に配置されている。基板搭載領域52は、例えば、凹部となっており、低段部43よりも更に低段となっている。基板搭載領域52も、例えば、矩形状に形成されている。
ICチップ搭載部51の上面には、更に、導線30の両端部32(一端部33と他端部35)を互いに離間させる導線分断用突起54が形成されている。導線分断用突起54は、例えば、外周部41の径方向において、基板搭載領域52と隣接する位置(基板搭載領域52を基準として、外周部41の上記一箇所とは反対側)に配置されている。
導線分断用突起54は、例えば、第1支持部50の延在方向に対して直交する方向に延在する突条である。導線30の外径をDとすると、導線分断用突起54の長手方向における寸法(長手寸法)は、導線分断用突起54の長手方向における切欠形状部47及び低段部43の寸法よりも、およそ2Dだけ小さく設定されている。
例えば、ICチップ搭載部51には、当該ICチップ搭載部51を上下に貫通する貫通穴53が形成されている(
図6、
図7(a)、
図7(b))
【0022】
調整部支持部57の上面には、調整部21を収容する溝58が形成されている。溝58は、第1支持部50の延在方向に沿って直線状に延在している。溝58の深さ及び幅の各々は、調整部21の太さと同等であるか、又は、調整部21の太さよりも若干大きい程度に設定されている。
溝58内に調整部21が配置されている。例えば、調整部21の先端部は、接着剤59によって溝58に固定されている。
例えば、溝58の底面の高さ位置は、ICチップ搭載部51の上面(基板搭載領域52でも導線分断用突起54でもない部分の上面)の高さ位置と等しい。換言すれば、調整部支持部57の上面(溝58ではない部分の上面)の高さ位置は、ICチップ搭載部51の上面の高さ位置よりも高い。
図3に示すように、調整部支持部57におけるICチップ搭載部51との境界部には、段差部55が形成されている。この段差部55は、例えば、ICチップ搭載部51側から調整部支持部57側に向けて高くなる傾斜面であり、溝58の幅方向における両側にそれぞれ形成されている。なお、溝58の一端部は、段差部55の配置領域に位置している。
溝58と導線分断用突起54とは、第1支持部50の延在方向において相互に離間している。
図2に示すように、溝58と導線分断用突起54との距離は、導線分断用突起54の長手寸法よりも大きいことが好ましい。
【0023】
反対側端部61は、外周側端部62と内周側部63とを備えている。
外周側端部62は、反対側端部61におけるICチップ搭載部51側とは反対側の端部、すなわち反対側端部61と外周部41との接続部である。内周側部63は、外周側端部62よりも外周部41の径方向における内側に配置されている。
内周側部63には、当該内周側部63を上下に貫通するU字状のスリット64が形成されている。これにより、反対側端部61は、外周側端部62から調整部支持部57側に向けて突出している支持片65を有する形状となっている。
【0024】
切欠形状部47、低段部43、導線分断用突起54、溝58及び支持片65の各々の幅中心が、第1支持部50の延在方向に沿う一直線上に並んで配置されている。
【0025】
第2支持部70は、例えば、一端部71と、他端部72と、中間部73と、を有する。一端部71、他端部72及び中間部73の各々は板状に形成されている。
一端部71には当該一端部71を上下に貫通する貫通穴74が形成されており、同様に、他端部72には当該他端部72を上下に貫通する貫通穴74が形成されている。
【0026】
調整部支持部57及び中間部73はそれぞれ一方向に長尺に形成されており、調整部支持部57と中間部73とが十字型に交差している。
外周部41の内側において、第1支持部50と第2支持部70との間の領域には、ボビン部材40を上下に貫通する開口48が形成されている。ボビン部材40には、例えば、4つの開口48が形成されている。各開口48は、例えば、中心角が90度の扇形のような形状となっている。
【0027】
本実施形態の場合、第1支持部50は外周部41の径方向における両端間に跨がって配置されている。これにより、ボビン部材40をより安定的な構造のものとすることができる。
同様に、第2支持部70は外周部41の径方向における両端間に跨がって配置されている。これにより、ボビン部材40をより安定的な構造のものとすることができる。
また、ボビン部材40は、第1支持部50とは別に第2支持部70を有し、第1支持部50と第2支持部70とが互いに連結されている。これにより、第1支持部50が第2支持部70によって支持されているので、ボビン部材40をより安定的な構造のものとすることができる。
【0028】
ボビン部材40は、以上のように構成されている。
【0029】
図1から
図3に示すように、COB10は、例えば、基板11と、基板11の裏面に搭載されているICチップ12(
図2参照)と、を備えている。
COB10は、基板搭載領域52に接着固定されることなどによって、基板搭載領域52に搭載されている。
基板11の上面は、例えば、第2鍔部46の上面よりも低段に配置されている。
【0030】
ボビン部材40の外周部41における一箇所から導線30の両端部32がそれぞれボビン部材40の内側に向けて延伸している。
つまり、調整部21は、ボビン部材40において、外周部41よりも内側の領域に配置されている。このため、アンテナ装置100の大型化を抑制しつつ、アンテナ装置100が調整部21を有する構造を実現することができる。
本実施形態の場合、ボビン部材40の外周部41における一箇所から導線30の両端部32がそれぞれボビン部材40の径方向内側に向けて直線状に延伸している。
【0031】
ここで、導線30の両端部32は、導線30の一端部33及び他端部35の総称である。両端部32は、例えば、導線30において巻回部31を除く部分の全体である。
導線30の一端部33及び他端部35の各々は、間接又は直接にICチップ12に対して電気的に接続されている。
本実施形態の場合、一端部33及び他端部35の各々は、基板11の上面に形成された図示しないパターンに対して電気的に接続されている。つまり、一端部33及び他端部35の各々の一部分について、絶縁被覆を除去することにより導体が露出しており、一端部33及び他端部35の各々が半田13によって基板11のパターンに対して電気的に接続されている。これにより、一端部33及び他端部35の各々がICチップ12に対して電気的に接続されている。
【0032】
このように、ボビン部材40は、外周部41よりも内側の位置に配置されたICチップ搭載部51を有し、ICチップ搭載部51にICチップ12が搭載されており、ICチップ12に対して導線30の両端部32の各々(一端部33及び他端部35)が電気的に接続されている。
これにより、アンテナ装置100の大型化を抑制しつつ、アンテナ装置100がICチップ搭載部51及びICチップ12を有する構造を実現することができる。
【0033】
図2に示すように、一端部33と他端部35とは、外周部41の周方向における一箇所から導線分断用突起54までは、互いに並列に(より詳細には互いに平行に)延在している。つまり、一端部33は、切欠形状部47の一端縁からボビン部材40の内側に向けて延びており、低段部43の一端縁における上面を通って、基板11の上面に至り、導線分断用突起54の一端部に係合し、更に、溝58側に延びている。また、一端部35は、切欠形状部47の他端縁からボビン部材40の内側に向けて延びており、低段部43の他端縁における上面を通って、基板11の上面に至り、導線分断用突起54の他端部に係合し、更に、溝58側に延びている。
一端部33と他端部35との各々は、導線分断用突起54に対する係合箇所において折れ曲がり、溝58に向かっている。
導線分断用突起54から溝58に向けて、一端部33と他端部35との互いの間隔が狭まっている。溝58内には、一端部33と他端部35とが撚り合わされることにより形成された調整部21が配置されている。
【0034】
このように、ボビン部材40は、ICチップ搭載部51よりも導線30の両端部32の延伸方向における先端側の位置に、導線30の両端部32を互いに離間させる導線分断用突起54を有する。ボビン部材40の外周部41における一箇所から導線分断用突起54までの間においては、導線30の両端部32が互いに並列に延在している。導線30の両端部32が、それぞれ導線分断用突起54に係合している。導線30の両端部32において導線分断用突起54よりも先端側の部分が、互いに撚り合わされて調整部21を構成している。
このため、導線30とICチップ12との接続部(本実施形態の場合、導線30と基板11との接続部)、すなわち半田13の形成箇所に作用する引っ張り力を低減することができる。
なお、本発明において、導線分断用突起54は、1個の突起に限らず、一端部33と他端部35とをそれぞれ位置決めする一対の突起であってもよい。
【0035】
また、ボビン部材40は、当該ボビン部材40の外周部41よりも内側の位置に、調整部21を収容する溝58を有する。このため、調整部21の位置ずれを抑制できることから、アンテナ部20の特性を容易に狙い通りのものとすることができる。例えば、後述する封止部80を形成する際においても、調整部21の位置ずれを抑制することができる。
溝58は、例えば、第1支持部50の延在方向に沿って形成されている。
【0036】
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、本実施形態に係るアンテナ装置100は、導線30、ボビン部材40及びICチップ12を封止している封止部80を更に備えている。封止部80は、非磁性金属と樹脂との混合物により構成されている。
封止部80が非磁性金属と樹脂との混合物により構成されているため、アンテナ装置100を構造的により安定的なものとすることができ、封止部80の存在によるアンテナ部20の特性の変動を抑制でき、且つ、アンテナ装置100をメタリック感のある外観(質感)のものとすることができる。
【0037】
封止部80は、導線30の少なくとも一部分と、ボビン部材40の少なくとも一部分と、ICチップ12の少なくとも一部分と、を内包している。本実施形態の場合、封止部80は、ボビン部材40の全体、導線30の全体及びCOB10の全体を内包している。
以下の説明では、アンテナ装置100において、封止部80を除く部分を、アンテナ本体110と称する。
本実施形態の場合、封止部80は、アンテナ本体110の全体を内包している。
【0038】
本実施形態の場合、ボビン部材40は円盤状に形成されており、封止部80はボビン部材40を内包する円盤状に形成されている。
換言すれば、ボビン部材40は、扁平な車輪形状に形成されており、導線30が車輪形状の外周に沿って巻回されている。また、アンテナ装置100は、円盤状に形成されている。
ここで、ボビン部材40の軸方向における当該ボビン部材40の寸法は、ボビン部材40の外径よりも小さく、好ましくはボビン部材40の外径の1/5以下であり、より好ましくはボビン部材40の外径の1/10以下である。
【0039】
図5はアンテナ装置100の等価回路図である。
コイル91は、導線30の巻回部31により構成されている。コイル91の両端は、半田13において、それぞれICチップ12に対して電気的に接続されている。
また、調整部21の両端も、半田13においてそれぞれICチップ12に対して電気的に接続されている。
このため、コイル91と調整部21とが互いに並列にICチップ12に対して接続されている。
調整部21は、コンデンサを構成している。
アンテナ装置100の製造に際して、調整部21の容量値を調節することによって、アンテナ部20の共振周波数を所望の値に調整することができる。
【0040】
ここで、アンテナ部20における1ターン分の導線30の多寡によるアンテナ部20の共振周波数の変化量よりも、ボビン部材40の外周部41における一箇所からボビン部材40の内側に向けて延伸している導線30の両端部32の有無によるアンテナ部20の共振周波数の変化量が小さいことが好ましい。
ここで、アンテナ装置100のアンテナ部20の共振周波数と、アンテナ装置100から両端部32を除去した場合のアンテナ部20の共振周波数と、の差分をΔ1とする。また、アンテナ装置100から両端部32を除去した場合のアンテナ部20の共振周波数と、アンテナ装置100から両端部32を除去し、更に、アンテナ部20における1ターン分の導線30を除去した場合のアンテナ部20の共振周波数と、の差分をΔ2とする。すると、Δ1はΔ2よりも小さいことが好ましい。つまり、一例として、調整部21は、巻回部31における導線30の巻回数の増減では調整できないような、微小な共振周波数の調整を行うのに用いられる。
【0041】
本実施形態に係るアンテナ装置100の用途は特に限定されない。
一例として、アンテナ装置100は、アミューズメント用途のコインや、地下鉄などの乗車用や遊園地などの入場用のトークンなどのような、金融機能を有するものとすることができる。また、アンテナ装置100は、カード型のものであってもよい。アンテナ装置100には、例えば、RFID(Radio Frequency IDentifier)の機能を持たせることもできる。
【0042】
次に、アンテナ装置100を製造する方法の例を説明する。
【0043】
アンテナ装置100を製造するに際して、例えば、
図6、
図7(a)及び
図7(b)に示すボビン部材40を準備する。この段階でのボビン部材40の構造は、上述したボビン部材40の構造と比べて、絡げ部67を有する点で相違しており、その他の点は同様である。
絡げ部67は、例えば、支持片65の先端部から上方に向けて起立している角柱形状のものである。
【0044】
先ず、ボビン部材40の基板搭載領域52に接着剤を塗布し、COB10を基板搭載領域52に搭載する。
【0045】
次に、導線30をボビン部材40に巻回する。
先ず、導線30の一端部33の先端部34(
図8参照)を絡げ部67に巻き付けて絡げる。
次に、導線30をボビン部材40の外周部41の巻回溝44に一方向に(
図2では反時計回りに)巻回して巻回部31を形成する。
次に、導線30の他端部35の先端部36(
図8参照)を絡げ部67に巻き付けて絡げる。
次に、導線30の一端部33と他端部35の一部分における絶縁被覆をレーザ照射などにより除去し、半田13を用いて一端部33及び他端部35の各々を基板11のパターンに対して溶接により接合することで電気的に接続する。
次に、絡げ部67を当該絡げ部67の基端部にて折り、絡げ部67をボビン部材40から分離させる。以下、ボビン部材40から分離した絡げ部67を分離片68(
図8)と称する。
次に、分離片68を回転(ツイスト)させることによって、一端部33と他端部35とを相互に撚り合わせる。これにより、調整部21を形成する。
ここで、絡げ部67に対して先端部34を巻き付ける方向と先端部36を巻き付ける方向とは、互いに同方向にしておくことによって、一端部33と他端部35とがばらけてしまうことが抑制され、より容易に調整部21を形成することができる。
調整部21を形成したら、調整部21を溝58内に配置し、調整部21の先端部を接着剤59により溝58に固定する。そして、導線30の両端部32において調整部21よりも先端側の部位を切除する。
こうして、アンテナ本体110を作製することができる。
なお、調整部21を形成する際や、調整部21を溝58に固定する際には、外周部41の一箇所から導線分断用突起54までの間において一端部33と他端部35とが互いに並列に延在する状態を維持する。そのためには、例えば、一端部33と他端部35とが導線分断用突起54の両端部に対してそれぞれ係合した状態となるよう、一端部33と他端部35とを押さえ付ける。
【0046】
ここで、調整部21における一端部33と他端部35との撚り合わせの程度(単位長さあたりのねじり量)と、調整部21の長さと、の少なくともいずれか一方を調節することによって、アンテナ部20の共振周波数を調整することができる。
【0047】
なお、以上の工程において、必要により、ボビン部材40の貫通穴74や貫通穴53に治具を差し込むことによって、ボビン部材40の位置決めや保持を行うことができる。一例として、ボビン部材40の貫通穴74や貫通穴53に治具を差し込んで、ボビン部材40を軸周りに回転させることによって、ボビン部材40に導線30を巻回することができる。
【0048】
次に、アンテナ本体110を封止部80によって封止する。
こうして、アンテナ装置100が得られる。
【0049】
このように、本実施形態に係るアンテナ装置の製造方法は、情報を記憶保持するICチップ12と、導線30を巻回することにより形成されていて所定の通信周波数帯域を利用して外部と通信するアンテナ部20と、絶縁性のボビン部材40と、を備えるアンテナ装置100を製造する方法である。
この製造方法は、ボビン部材40として、ボビン部材40の外周部41よりも内側の位置に配置されているICチップ搭載部51と、当該ボビン部材40の外周部41よりも内側の位置に配置されている絡げ部67と、を有するものを準備する工程を備える。
この製造方法は、更に、ICチップ12をICチップ搭載部51に搭載する工程と、導線30の一端部33における先端部34を絡げ部67に巻回して絡げる工程と、ボビン部材40の外周部41に導線30を巻回することによりアンテナ部20を形成する工程と、導線30の他端部35における先端部36を、当該導線30の一端部33における先端部34と同じ巻回方向で絡げ部67に絡げる工程と、を備える。
この製造方法は、更に、導線30の一端部33と他端部35との各々において絡げ部67とボビン部材40の外周部41との間に位置する部位をそれぞれICチップ12に対して電気的に接続する工程を備える。
この製造方法は、更に、絡げ部67をボビン部材40から切り離す(分離させる)工程と、絡げ部67を回転させることによって、導線30の両端部32を互いに撚り合わせて、撚り合わせ部(調整部21)を形成する工程を備える。
この製造方法は、更に、撚り合わせ部の先端部をボビン部材40に固定する工程と、導線30の両端部32において撚り合わせ部よりも先端側の部位を切除する工程と、導線30、ボビン部材40及びICチップ12を封止する工程と、を備える。
【0050】
この製造方法は、更に、撚り合わせ部を形成する工程での撚り合わせの程度と、導線30の両端部32を切除する工程での切断位置と、の少なくともいずれか一方を調節することによって、アンテナ部20の共振周波数を調整する工程を備える。
アンテナ装置100が送信アンテナの場合、この工程の際には、例えば、アンテナ装置100から送信される信号を受信するリーダ装置(不図示)を用いてアンテナ部20を共振させ、リーダ側の読み取り値(共振の強さ)が最大となるように、撚り合わせの程度と切断位置とを調節する。
【0051】
アンテナ装置100は、複数個が互いに近接して用いられる場合がある。その場合、複数のアンテナ装置100の相互間での磁気の影響によって、各アンテナ装置100におけるアンテナ部20の共振周波数が低下し、アンテナ部20の所望の動作ができなくなることがある。
特に、複数個(複数枚)のアンテナ装置100が互いに積み重ねられて用いられる場合などにおいては、アンテナ部20の共振周波数の低下がより顕著となる。
そこで、アンテナ部20の共振周波数を調整する工程では、所定数のアンテナ装置100が互いに積み重ねられた状態での各アンテナ部20の共振周波数が所定の通信周波数帯域に収まるように、調整することが挙げられる。すなわち、複数個のアンテナ装置100の各々のアンテナ部20は、所定の通信周波数帯域よりも高い共振周波数を有しており、所定数のアンテナ装置100が互いに積み重ねられた際に、それぞれのアンテナ部20の共振周波数が所定の通信周波数帯域に降下するようになっていることが好ましい一例である。
ここで、所定数のアンテナ装置100のアンテナ部20が互いに同軸に位置するようにしてアンテナ装置100が積み重ねられた際に、それぞれのアンテナ部20の共振周波数が所定の通信周波数帯域に降下するようになっていることが好ましい一例である。複数のアンテナ装置100のアンテナ部20が互いに同軸に位置する状態とは、例えば、各アンテナ装置100のボビン部材40の外周部41の中心軸が互いに同軸となる状態である。
所定数のアンテナ装置100が互いに積み重ねられた状態での各アンテナ部20の共振周波数は、所定の通信周波数帯域の中心値から±2%の範囲に収まることが好ましい。
また、上記所定数は、20以上40以下とすることができる。
なお、アンテナ部20の通信周波数帯域は、特に限定されず、一例として、130〜135kHzの帯域、13.56MHz帯域、433MHz帯域、900MHz帯域、及び2.45GHz帯域が挙げられる。
【0052】
以上、図面を参照して実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0053】
例えば、上記実施形態の構成では調整部21の容量が不足する場合には、基板11にチップコンデンサ93(
図9参照)を搭載してもよい。この場合、
図9に示すように、チップコンデンサ93の一対の端子には、導線30の両端部32がそれぞれ電気的に接続されており、アンテナ部20とチップコンデンサ93とにより並列LC共振回路が構成される。なお、チップコンデンサ93の容量は、調整部21の容量よりも大きい。
このように、アンテナ装置100は、基板11に搭載された容量素子(チップコンデンサ93)を更に備え、導線30の両端部32が容量素子の一対の端子にそれぞれ電気的に接続されており、容量素子とアンテナ部20とにより並列LC共振回路が構成されていてもよい。
【0054】
また、上記においては、ボビン部材40が開口48を有する例を説明したが、ボビン部材40は、開口48を有しており、開口48の部分がボビン部材40を構成する樹脂材料で埋まった構造であってもよい。
【0055】
また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0056】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)情報を記憶保持するICチップと、所定の通信周波数帯域を利用して外部と通信するアンテナ部と、を備え、
前記アンテナ部は、導線を巻回することにより形成されており、
前記導線の両端部が、前記アンテナ部の共振周波数の調整部を構成しているアンテナ装置。
(2)前記導線は絶縁被覆されており、
前記調整部は、前記導線の前記両端部を互いに撚り合わせることにより構成されている(1)に記載のアンテナ装置。
(3)当該アンテナ装置は、絶縁性のボビン部材を更に備え、
前記アンテナ部は、前記導線が前記ボビン部材の外周部に巻回されることにより形成されている(1)又は(2)に記載のアンテナ装置。
(4)前記ボビン部材の前記外周部における一箇所から前記導線の前記両端部がそれぞれ前記ボビン部材の内側に向けて延伸している(3)に記載のアンテナ装置。
(5)前記ボビン部材は、前記外周部よりも内側の位置に配置されたICチップ搭載部を有し、
前記ICチップ搭載部に前記ICチップが搭載されており、
前記ICチップに対して前記導線の前記両端部の各々が電気的に接続されている(4)に記載のアンテナ装置。
(6)前記ボビン部材は、前記ICチップ搭載部よりも前記導線の前記両端部の延伸方向における先端側の位置に、前記導線の前記両端部を互いに離間させる導線分断用突起を有し、
前記ボビン部材の前記外周部における前記一箇所から前記導線分断用突起までの間においては、前記導線の前記両端部が互いに並列に延在しており、
前記導線の前記両端部が、それぞれ前記導線分断用突起に係合しており、
前記導線の前記両端部において前記導線分断用突起よりも先端側の部分が、互いに撚り合わされて前記調整部を構成している(5)に記載のアンテナ装置。
(7)前記アンテナ部における1ターン分の前記導線の多寡による前記共振周波数の変化量よりも、
前記ボビン部材の前記外周部における一箇所から前記ボビン部材の内側に向けて延伸している前記導線の前記両端部の有無による前記共振周波数の変化量が小さい(4)から(6)のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
(8)前記ボビン部材は、当該ボビン部材の前記外周部よりも内側の位置に、前記調整部を収容する溝を有する(3)から(7)のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
(9)前記導線、前記ボビン部材及び前記ICチップを封止している封止部を更に備え、
前記封止部は、非磁性金属と樹脂との混合物により構成されている(3)から(8)のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
(10)前記ボビン部材は円盤状に形成されており、
前記封止部は前記ボビン部材を内包する円盤状に形成されている(9)に記載のアンテナ装置。
(11)情報を記憶保持するICチップと、導線を巻回することにより形成されていて所定の通信周波数帯域を利用して外部と通信するアンテナ部と、絶縁性のボビン部材と、を備えるアンテナ装置を製造する方法であって、
前記ボビン部材として、当該ボビン部材の外周部よりも内側の位置に配置されているICチップ搭載部と、当該ボビン部材の外周部よりも内側の位置に配置されている絡げ部と、を有するものを準備する工程と、
前記ICチップを前記ICチップ搭載部に搭載する工程と、
前記導線の一端部における先端部を前記絡げ部に巻回して絡げる工程と、
前記ボビン部材の外周部に前記導線を巻回することにより前記アンテナ部を形成する工程と、
前記導線の他端部における先端部を、当該導線の前記一端部における前記先端部と同じ巻回方向で前記絡げ部に絡げる工程と、
前記導線の前記一端部と前記他端部との各々において前記絡げ部と前記ボビン部材の前記外周部との間に位置する部位をそれぞれ前記ICチップに対して電気的に接続する工程と、
前記絡げ部を前記ボビン部材から切り離す工程と、
前記絡げ部を回転させることによって、前記導線の両端部を互いに撚り合わせて、撚り合わせ部を形成する工程と、
前記撚り合わせ部の先端部を前記ボビン部材に固定する工程と、
前記導線の前記両端部において、前記撚り合わせ部よりも先端側の部位を、切除する工程と、
前記導線、前記ボビン部材及び前記ICチップを封止する工程と、
を備え、
前記撚り合わせ部を形成する工程での撚り合わせの程度と、前記導線の前記両端部を切除する工程での切断位置と、の少なくともいずれか一方を調節することによって、前記アンテナ部の共振周波数を調整する、アンテナ装置の製造方法。