【解決手段】大型藻類50の移植を助力する移植補助材100は、複数の繊材1が互いに局所的に接合した立体網状繊材集合体10を有して成り、立体網状繊材集合体10は大型藻類50が海底に直接的に固着可能な間隙空間15を有している。
前記間隙空間は、前記海底への前記固着に際して前記大型藻類の仮根が前記繊材に付着することなく該間隙空間を貫通する貫通路となっている、請求項1〜3のいずれかに記載の移植補助材。
請求項1〜18のいずれかに記載の移植補助材と、前記大型藻類またはその前駆体の藻類前駆体を前記立体網状繊材集合体に拘束しておくための拘束部材とを有して成る移植補助キット。
前記立体網状繊材集合体が間隙空間を有しており、前記(ii)の後では、前記大型藻類または前記藻類前駆体が該立体網状繊材集合体の内部を横切るように該大型藻類または該藻類前駆体の仮根が前記間隙空間を通って成長し、それによって前記海底に対して前記大型藻類が直接的に固着する、請求項23に記載の大型藻類の移植方法。
前記大型藻類または前記藻類前駆体の仮根が前記海底に直接的に固着した後で、前記立体網状繊材集合体が前記自然分解に起因して少なくとも部分的に消失する、請求項26に記載の大型藻類の移植方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の一実施形態に係る移植補助材、移植補助キットおよび移植方法をより詳細に説明する。移植補助キットの発明は、移植補助材の説明に付随して、それに含める形で説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図面における各種の要素は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0018】
本明細書で直接的または間接的に用いる「上下方向」は、それぞれ図中における上下方向に相当する。より具体的な態様でいえば、海底に置かれた際に海底により近位となる方向が「下」(下側もしくは底側)に相当し、また、その逆方向が「上」(上側もしくは海面側)に相当する。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」に相当し、その逆向きが「上方向」に相当すると捉えることができる。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材または同じ意味内容を示すものとする。
【0019】
本明細書で言及する各種の数値範囲は、特段の言及がない限り、下限および上限の数値そのものも含むことを意図している。つまり、例えば1〜10といった数値範囲を例にとれば、下限値の“1”を含むと共に、上限値の“10”をも含むものとして解釈され得る。
【0020】
《移植補助材》
本発明は、大型藻類の移植を助力するための移植補助材に関する。本発明の移植補助材は、より簡易に海底に据え付けることができるツールである。かかる移植補助材は、特に、大型藻類などの海藻を浅海域の海底などに直接的に移植するのに好適に用いられる。
【0021】
図1に、本発明の移植補助材100の外観を示す。図示するように、本発明の移植補助材100は、立体網状繊材集合体10を有して成る。具体的には、複数の繊材1が互いに局所的に接合した立体網状繊材集合体10を有して成る。例えば、立体網状繊材集合体では、互いに交差するような繊材同士が局所的に接合(点接合)している。つまり、移植補助材100は、中実構造でなく、図示するように複雑に絡み合う“繊材”に起因して立体配置的および/または形態的にランダムな間隙空間15が複数形成または多く形成された構造となっている。
【0022】
本発明の移植補助材100の使用時のある態様を
図2に示す。移植補助材100には、移植が意図される大型藻類50(例えば図示する態様のように、その前駆体に相当する中間育成された藻類50’)が取り付けられ、かかる移植補助材100が海底に置かれる。
図2に示すように、取り付けられた藻類50’は、海底では移植補助材100の内部を横切るように成長することができる。特に、藻類50’の仮根55が立体網状繊材集合体10の間隙空間15を通るように藻類50’の成長がなされる。ある好適な態様において、藻類50’の仮根55は、移植補助材100の側面(移植補助部材としての側面)を経るのでなく、移植補助材100の内部を横切るように迂回少なく成長できる。
【0023】
図3および
図4に示すように、本発明の移植補助材100は海底200に対して直接用いられ、対象海域に移された大型藻類50または藻類前駆体50’は、その成長を通じて仮根55を海底200へと固定化できるようになる。本発明では、かかる海底200に対する大型藻類50の固着がその成長を通じて移植補助材100によって助力される。これにつき、本発明の移植補助材100は、大型藻類50の海底200への直接固着のための間隙空間15を立体網状繊材集合体10が備えるといった特徴を有している。換言すれば、移植補助材100の立体網状繊材集合体10は、藻類が海底に対して直接的に固着可能となるように立体配置的かつ形態的にランダムな繊材包囲空間15(繊材によって包囲された空間)を有しているといえる。これは、立体網状繊材集合体10が、海底への大型藻類の直接的固着を可能とする間隙空間を有していることを意味している。なお、本発明の移植補助材100では、立体配置的および/または形態的にランダムな間隙空間15ゆえ、藻類は移植補助材の内部を横切るように好適に成長することができるともいえる。ある好適な態様でいえば、藻類は立体網状繊材集合体(特にその繊材)に固定されるような絡み付きがなく、立体網状繊材集合体の間隙空間を通って海底に固着する。
【0024】
本明細書において「移植補助材」とは、広義には、大型藻類の海底への移植のための物品を意味しており、狭義には、移植対象となる大型藻類が海底に対して直接的に移植されるための物品(好ましくは、単一物品)を意味している。特に、ここでいう「補助」は、より具体的な態様に鑑みれば、大型藻類の仮根が海底に固着するのを助力することを指している。
【0025】
本明細書にいう「固着」とは、広義には、大型藻類が海底に結合する態様を意味しており、狭義には、大型藻類が海底に単に接するのではなく海底にしっかりと結合する態様を意味している。好ましくは、かかる「固着」によって、実海中で大型藻類が海底から離脱することなく安定的に存在できるように(例えば、波浪の作用を受けたとしても離脱することなく海底に長く留まり続けることができるように)強固に大型藻類が海底に結合することになる。このような「固着」ゆえ、本発明では、それを“活着”と称すこともできる。
【0026】
本発明の移植補助材は、好ましくは立体網状繊材集合体から成る。本明細書にいう「立体網状繊材集合体」とは、複数の繊材がランダムな方向に湾曲して互いに局所的に接合することで立体的に集合した構造体であり、全体として三次元的に網状を成す構造体である。
図1に示すようにランダムに配向する繊材1が互いに局所的な接合を成しており、それゆえ立体網状繊材集合体10では繊材接合部が設けられている。このような複数の繊材1の局所的な接合部に起因して間隙空間15は立体配置的かつ形態的にランダムな状態で設けられている(図示する態様から分かるように、接合部または点接合部を有する繊材の内側の中空部分が「間隙空間」となっている)。特に、かかる接合部・点接合部は、好ましくは繊材同士が融着されたものである。よって、複数の繊材(特に湾曲繊材、好ましくはランダムな湾曲繊材)が互いに接合した融着接合部(特に点融着部)を有し、そのような融着接合部(点融着部)を有するランダムな湾曲繊材の内側に形成されている中空部分が「間隙空間」に相当する。より具体的には、融着接合部によってもたらされている複数の繊材がなす閉領域(特に複数の繊材によって囲まれる閉領域、好ましくは平面視でみた場合の閉領域で、好ましくはランダムな閉領域)が間隙空間に相当する。また別の表現でいえば、複数のランダムな湾曲細材が互いに接合した点接合部(特に融着接合部・融着点接合部)を有し、そのような点接合部(特に融着接合部・融着点接合部)に起因してランダムな湾曲細材の内側に形成されている中空部分が「間隙空間」に相当するともいえる。
【0027】
立体網状繊材集合体に関していう「繊材」とは、全体が細長い形状を有するものの、布繊維(衣服などの繊維)や濾材繊維などよりも太く、かつ、立体網状繊維集合体においてランダムに曲がりくねった形態の樹脂製の細長部材のことを意味している。このような比較的太い繊材でありながらも、それらは上述した点接合・融着点接合を成している。よって、本発明における立体網状繊材集合体は、一般的な繊維品(日常的に目にする機会が多い繊維品)とは本質的に異なっており、すなわち、織布、編物、不織布、フエルトなどの繊維物とは本質的に異なるものである。例えば、本発明における繊材は、水濾過用濾材(より具体的には水槽用の水濾過濾材、例えば魚などの生物飼育用の水濾過濾材、より具体的には例えば観賞魚用の水濾過濾材、一例を挙げると、マット工房から販売されている“ローズマット”濾材)などの繊維よりも太く、かつ、それよりも長い細長部材である。また、立体網状繊材集合体に関していう「互いに局所的に接合する」とは、繊材の全体が接続された形態にあるのではなく、繊材同士が“点接続”するように(好ましくは、繊材の表面同士が局所的に接合するように、より好ましくは互いにランダムに異なる方向に向いた繊材同士が“点接触”するように)引っ付いた形態を実質的に意味している。更には、立体網状繊材集合体に関していう「複数の繊材」とは、例えば縦寸法15cm×横寸法15cm×厚み寸法1cmの直方体形状の立体網状繊維集合体を想定した場合、その中に100〜400本程度(例えば、150〜350本)の繊材が存在することを意味している。
【0028】
立体網状繊材集合体における繊材は、布製品および水濾過用濾材などの一般的な繊維品の繊維よりも太い。つまり、立体網状繊材集合体における繊材の線径(断面径)は、好ましくは0.6mm〜3mm程度であり、より好ましくは0.7mm〜2mm程度、例えば0.7mm〜1.5mmである。繊度が上記範囲内であると、布製品および水濾過用濾材(線径・断面径:約0.03mm)などの一般的な繊維品よりも太い繊維となり、より好適な強度および堅さが供され得る。なお、上記の線径(断面径)の値について詳述しておくと、「立体網状繊材集合体における繊材の線径・断面径」および「水濾過用濾材の繊維の線径・断面径」は、それぞれ以下の測定手法で得られた値である。
・立体網状繊材集合体における繊材の線径(断面径)
シンワ測定製のデジタルノギスを用いて、繊材の長手方向に対して直角になるように線径測定。繊維同士が融着している部分(“局所的な接合部”)は避け、任意に10箇所測定し、その相加平均値を算出。
・水濾過用濾材の繊維の線径(断面径)
キーエンス製のマイクロスコープVHX700Fを用いて、200倍に拡大した画像を撮影し、ピントの合ったところで、繊維の長手方向に対して直角になるように線径測定。繊維同士がからまっている部分は避け、任意に10箇所測定し、その相加平均値を算出。
【0029】
移植補助材100を成す立体網状繊材集合体10の繊材の長さは、布製品(代表的には衣服)、不織布および水濾過用濾材(特にウール状の水濾過用濾材)などの繊維製品の繊維よりも一般に長い。好ましくは、立体網状繊材集合体における繊材の平均長さは水濾過用濾材の繊維の長さよりも長くなっている。このように通常の繊維製品よりも長い繊材は、「大型藻類の海底への直接的固着を可能する間隙空間15」の形成に有効に寄与し得る。なお、ここでいう「水濾過用濾材」とは、よりきれいな水を得るための濾材(好ましくは綿状の濾材)を意味している。かかる水濾過用濾材は例えば魚(特に観賞魚)の水槽などに用いられる濾材であり、更なる明確性のため具体的な例示をしておくと「マット工房から販売されている“ローズマット”濾材」である。
【0030】
長い繊材につき詳述しておく。立体網状繊材集合体の繊材の平均長さは、250mm以上、好ましくは300mm以上、より好ましくは350mm以上であり、かつ、700mm以下、好ましくは650mm以下、より好ましくは600mm以下である(より端的にいえば、繊材の平均長さは250〜700mm、300〜650mmまたは350〜600mmであってよい)。ここでいう「繊材の長さ」とは、立体網状繊材集合体の繊材の接合を解除して直線状に伸ばしたと仮定した場合の長さのことを実質的に意味しており、「繊材の平均長さ」は、立体網状繊材集合体に含まれる複数の繊材長さの平均である。より具体的には、上記の繊材の平均長さの値は、縦20cm×横20cm×厚み1cmの直方体形状の立体網状繊材集合体サンプルから繊材を任意に抜き出し、次いで、繊材の一方の端をテープで固定した後で繊材が切れないように引っ張りながら繊材の他方の端をテープで固定して測定した値の平均(例えば3本の相加平均)である。同様にして、上記の「水濾過用濾材の繊維の長さ」は、縦20cm×横20cm×厚み1cmの直方体形状の水濾過用濾材から繊維を抜き出し、次いで、繊維の一方の端をテープで固定した後で繊維が切れないように引っ張りながら繊維の他方の端をテープで固定して測定した値の平均(例えば10本の相加平均)である。本発明では立体網状繊材集合体における繊材がこのように長繊材であるからこそ、繊材がランダムに曲がりくねった形態をとることで立体配置的かつ形態的にランダムな間隙空間15が好適に立体網状繊材集合体10にもたらされ易くなる。
【0031】
立体網状繊材集合体10の見掛け密度は、好ましくは0.020g/cm
3〜0.300g/cm
3、より好ましくは0.025g/cm
3〜0.200g/cm
3、さらに好ましくは0.030g/cm
3〜0.150g/cm
3、さらに好ましくは0.035g/cm
3〜0.100g/cm
3、特に好ましくは0.040g/cm
3〜0.080g/cm
3である。見掛け密度が上記範囲にある移植補助材は、比較的軽量であり、大型藻類の取付けおよび/または海底への据付けなどのハンドリングの点で望ましい。ここでいう見掛けの密度は、200mm×200mmの平面視サイズに立体網状繊材集合体を切断して得られる切断体(例えば厚さ1cm)に対して直径200mmの円盤状部材で1g/cm
2の圧力を付与したときの厚み寸法を測定し、次いで、得られた厚みから体積を求め、切断体の重さを体積で除することで測定される密度である。
【0032】
図1および
図2に示す形態から分かるように、立体網状繊材集合体10では繊材1から間隙空間15がもたらされている。特に、本発明における「間隙空間」は、繊材が局所的に接合すること(好ましくは繊材同士の点接合)でもたされている立体網状繊材集合体の中空部分(間隙)に相当する。かかる局所的に接合は、好ましくは、溶融状態の繊材がランダムな方向で互いに融着することでもたらされたものに相当する。それゆえ、立体網状繊材集合体では繊材(好ましくは長い繊材、より好ましくはランダムに曲がりくねった長繊材)に関して局所的な融着部(すなわち“点融着部”)が存在し、それによって複数の間隙空間がもたらされている。換言すれば、立体網状繊材集合体10は、ランダムに曲がりくねった細材または極細材1(湾曲細材・湾曲極細材)から成っているところ、その湾曲細材が複数の接合部(点接合部)、特に融着部(点融着部)を有することで「間隙空間」がもたらされているともいえる。また、融着接合部によってもたらされている複数の繊材がなす閉領域(すなわち、融着接合部を有する複数の湾曲繊材によって囲まれる閉領域)が立体網状繊材集合体の間隙空間に相当する。本発明における立体網状繊材集合体10の間隙空間は、目視で該集合体の向こう側が観測できる相対的に大きいサイズとなっているといった特徴を有する(換言すれば、立体網状繊材集合体を手にとって例えば20cm離して顔の前・目の前に位置付けると、その立体網状繊材集合体の向こう側が間隙空間を介して見ることができる)。これは、立体網状繊材集合体10の間隙空間が「繊維(特に短繊維)が密に詰まった不織体形態の集合体」よりも大きいサイズであることを意味している。つまり、繊維(特に短繊維)が密に詰まった不織体形態の集合体は遮りが大きく目視で向こう側が実質観測できないところ、本発明における立体網状繊材集合体10は、“間隙空間”に起因して遮りがより少なく目視で向こう側が観測できるようになっている(例えば
図23(A)および23(B)参照)。
【0033】
例えば、立体網状繊材集合体の平面視における間隙空間の平均サイズは、目視の観点でいえば、好ましくは3〜10mm程度、より好ましくは3〜8mm程度(例えば4〜7mm程度)となっている。また、より客観性が高い指標となる「ふるい試験法」に基づくと、立体網状繊材集合体の間隙空間のサイズ(最大サイズ)が3.5〜4.5mm、例えば3.75〜4.25mm程度(1つ例示すると4.0mm)となっている。この“ふるい試験法”による間隙空間の最大サイズは、種々の粒径から成る粒体群(例えば砂または砂利)が立体網状繊材集合体を通過するか否かの知見に基づいている。
【0034】
本明細書でいう「ふるい試験法による間隙空間の最大サイズ」とは、広義には、立体網状繊材集合体をふるいとして用いて種々の粒径範囲の砂利をふるい操作にかけた際、透過率50%に依拠して算出されるサイズを意味している。狭義には、「ふるい試験法による間隙空間の最大サイズ」は、実施例の《間隙空間のサイズの確認試験》に従って算出されるものであり、従って、以下の条件下のふるい試験にて透過率が50%超える条件からそれ未満となる条件を把握することで得られるサイズである。
● 形状およびサイズ
“網ふるい”として用いる立体網状繊材集合体の形状およびサイズは以下の通りである。
・形状:平板状(直方体形状)
・サイズ:縦寸法10cm、横寸法10cm、厚さ寸法1cm
● ふるいにかける砂利
「粒径4.0mm〜5.0mm」、「粒径3.0mm〜4.0mm」、「粒径2.4mm〜3.0mm」、「粒径2.0mm〜2.4mm」、「粒径1.7mm〜2.0mm」、「粒径0.9mm〜1.7mm」、「粒径0.5mm〜0.9mm」、「粒径0.25mm〜0.5mm」、「粒径0.1mm〜0.25mm」の9種類の砂利(特に《間隙空間のサイズの確認試験》における〈ふるい分け試験に用いた砂〉および「(I)砂利粒径の調整」に従って調製される9種類の砂利)
● ふるい分け試験
9種の砂利を2.0gずつ個々に精秤して立体網状繊材集合体の上に載せ1分間約60往復の割合となるように手動で振動させる。より具体的には、立体網状繊材集合体を両手で持ち、水平面内を一方向となるように、振幅約70mmで1分間約60往復の割合で振動させる。得られたふるい下の砂利の重量を精秤し、それぞれの砂利につきふるいを透過した割合をふるい下百分率として算出する(ふるい下百分率“100%”は、全ての砂利がふるいを透過したことを意味する一方、ふるい下百分率“0%”は、砂利がふるいを全く透過しなかったことを意味する)。9種類の砂利ごとにふるい下百分率を算出する。より客観性を高めるべく、かかるふるい分け試験は3回ずつ実施する(即ち、n=3とする)。
● 評価
9種類の粒径毎にふるい下百分率を棒グラフで表す。具体的には、グラフ縦軸を“ふるい下百分率”とし、グラフ横軸を9種類の粒径範囲とする。横軸は、粒径範囲が小さい順から大きくなるように並べる(《間隙空間のサイズの確認試験》における
図24参照)。
このようにして得られたグラフにおいて、横軸の値が大きくなるように順にみていった場合に“ふるい下百分率”が50%超える値からそれ未満となる条件を把握し、その境界となる値を「ふるい試験法による間隙空間の最大サイズ」とする。つまり、50%超える値から50%未満となる条件において、その50%未満における粒径範囲の最小値が「ふるい試験法による間隙空間の最大サイズ」とする(
図24に示す例でいえば、実施例1および2について横軸に沿って右へと順にみていくと「4.0〜5.0mm」の条件で50%未満となるので、その数値範囲の最小値の“4.0mm”が本発明でいう「間隙空間の最大サイズ」に相当する)。
【0035】
繊材自体の断面の構造および形状は特に限定されず、例えば中実構造および/または中空構造であってよく、円形断面および/または異形断面であってよい。また、2種以上の樹脂から繊材が構成されていてもよく、その場合の繊材の断面構造が芯鞘構造、偏心芯鞘構造、サイドバイド構造、分割構造および/または海島構造などであってよい。
【0036】
繊材の材質は、好ましくは樹脂材である。すなわち、繊材の元となる原料ペレットおよび溶融原料が樹脂成分を好ましくは含んでいる。かかる樹脂成分は熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、特に制限されるわけではないが、例えば、ポリオレフィン(例えばポリエチレンおよびポリプロピレンなど)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアミド(例えばナイロン66など)、ポリ塩化ビニルならびにポリスチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種である。なお、これらの樹脂を構成単位に含んだコポリマーまたはエラストマーであってもよく、更には、そのような樹脂材、コポリマーおよび/またはエラストマーなどが適宜ブレンドされたアロイ材であってもよい。本発明において繊材自体は、単独の種類の樹脂成分からなるものに限定されず、2種以上の種類の樹脂成分からなるものであってもよい。また、繊材には種々の添加剤が含まれていてもよい。例えば、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、顔料、光安定剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、発泡剤、着色剤、ブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤および可塑剤から成る群から選択される少なくとも1種の添加剤が含まれていてよい。更にいえば、繊材には、ガラスフィラー、カーボンフィラーのような無機または有機フィラーが含まれていてもよい。
【0037】
上記で説明した如くの立体網状繊材集合体は、本発明の移植補助材の根幹を成している。本発明の移植補助材100は、
図1および2に示す形態から分かるように、「繊材同士の複数の局所接合に起因したランダムな間隙構造15」を有している。ここでいうランダムな間隙構造とは、複数の間隙部が立体的配置および形態の観点でランダムになっていることを意味している。かかる間隙構造ゆえ、本発明の移植補助材では、大型藻類が間隙部を通って海底へと直接的に固着することができる。「固着」とは、上述したように好ましくは安定的・強固な結合を意味しているところ、本明細書にいう「海底に直接的に固着」は、大型藻類と海底とが間に介在物なく直に接するように大型藻類が海底に結合する態様を指している。
【0038】
ある好適な態様では、立体網状繊材集合体10の間隙空間15が、大型藻類の仮根が通過する空間(通過空間)となっている。つまり、立体網状繊材集合体10の繊材同士の局所接合によりもたらされる間隙部15が大型藻類の仮根55の貫通路になっている(
図2参照)。本発明の移植補助材は
図3および
図4に示すように海底200に直接的に据え置かれるところ、移植補助材100に取り付けられた大型藻類(
図3に示す態様では、中間育成された藻類50’)は、その仮根55が立体網状繊材集合体10の間隙空間15内を通って成長できる。例えば、仮根55が、その側面が繊材に触れつつも、繊材が成す間隙空間をすり抜けるように成長することができる。
図3は海底200に移植補助材100が据え置かれた直後の移植初期の態様を示している一方、
図4は、それよりも時間が経過した時期の態様を示している。
図2と併せて
図3および
図4を参照すると分かるように、立体網状繊材集合体10のランダムな間隙空間15を通って仮根55は成長できるようになる。このように間隙空間15がランダムな貫通空間となっているからこそ、移植対象の大型藻類の仮根が、少ない抵抗で立体網状繊材集合体10の内部を横切るように成長でき、より早期に海底へと到達することができる。つまり、移植補助材を介すると、大型藻類が過度な迂回をすることなく立体網状繊材集合体の間隙空間を通って成長でき、その点においても本発明はより自然な形態で海藻移植を実施できる。このような観点ゆえ、間隙空間15は、海底への固着に際して大型藻類の仮根が繊材に付着することなく間隙空間を貫通するための貫通路となっている。かかる貫通路は、立体網状繊材集合体の厚み方向(鉛直方向)に沿って延在する貫通形態を有する。特に、このような貫通路(複数の繊材がなす閉領域に相当する“間隙空間”が成す貫通路)は、図示する態様から分かるように、好ましくはランダムな貫通路となっている。ここでいう「ランダム」とは、貫通路の幅寸法(貫通路の延在方向に直交する方向の寸法)が、その貫通路の延在方向にて一定となっていない/変わるようになっており、および/または、貫通路の延在向きが一定でない/変わるようになっていることを意味している。移植補助材では、「複数の繊材がなす閉領域に相当する“間隙空間”の貫通路」がランダムであるからこそ、大型藻類の仮根の通過・貫通に適しているともいえる。
【0039】
本発明の移植補助材について、立体網状繊材集合体の目付けは好ましくは0.5〜2.0kg/m
2となっている。これは、立体網状繊材集合体が、その平面視で水濾過用濾材(一例を挙げると、マット工房から販売されている“ローズマット”濾材)などよりも繊材の点で太く、より好適な強度および堅さを有することに実質的に関係している。また、このような目付けは、立体網状繊材集合体が、より太い繊材と相俟って、目が粗いことにも間接的に関係し得る。あくまでも例示にすぎないが、本発明の移植補助材では、立体網状繊材集合体が、その平面視で約3mm〜20mm程度の比較的大きな間隙を有している。このような比較的大きな間隙ゆえ、移植対象となる大型藻類の仮根が、立体網状繊材集合体の内部を横切るように成長できる。つまり、平面視で約3mm〜20mm程度の比較的大きな間隙を通って大型藻類の仮根は成長でき、その結果、大型藻類が海底に対して直接的に固着できる。なお、立体網状繊材集合体の目付けは、より好ましくは1.0〜1.5kg/m
2であり、例えば約1.1kg/m
2または約1.4kg/m
2などであってよい。ここでいう目付けの数値は、200mm×200mmの平面視サイズに立体網状繊材集合体を切断して得られる切断体の重さをその平面視面積で除すことによって測定されたものを意味している。このような目付けであることによって、立体網状繊材集合体の繊材が太いものとなり(例えば、水濾過用濾材(一例を挙げると、マット工房から販売されている“ローズマット”濾材)などよりも繊材の点で太いものとなり)、ハンドリング性がよくなる。つまり。ハンドヘルド品(ハンドヘルドの移植補助材)またはハンディ品(ハンディタイプの移植補助材)としてより好適な剛性が供され得る。
【0040】
本発明の移植補助材は、海底に直接的に置かれて使用されるものである。つまり、本発明の移植補助材では、
図3に示すように立体網状繊材集合体10が海底200に直接的に接する。本明細書にいう「海底」とは、最も広義には、藻類の移植分野の当業者にとってみて当該藻類移植先として通常考えられるところ又は移植に用いられるところを意味している。好ましくは「海底」は自然の海底のみならず、人工の海底をも意味している。ここでいう“自然の海底”は、例えば岩礁または泥岩といった非人工的な海の底を指している一方、“人工の海底”は、海底に沈んだ人工物(例えば、制限するわけではないが、根固めブロックや藻礁ブロックなどの海底に存在する人工物)を好ましくは指している。このような“自然の海底”および“人工の海底”は、太陽光が直接届いて大型藻類が光合成できる比較的水深の浅い“海の底”に相当することが好ましい。ある1つの好適な態様でいえば「海底」は自然の海底である。
【0041】
図3に示す態様から分かるように、立体網状繊材集合体は海底と直接的に接する部材であり、海底200との間に介在物は設けられない。ここで移植補助材は、全体として間隙空間を有している。つまり、立体網状繊材集合体の内部ならず、立体網状繊材集合体の表面にも空隙が存在している。よって、立体網状繊材集合体の一方の空隙表面が海底との接触面となり、その面に位置付けられた繊材が海底と直接的に接することになる。このような説明から分かるように、本明細書にいう「海底に直接的に据え置かれる部材」とは、使用に際して海底との間に介在するものがなく、立体網状繊材集合体が直接的に海底に接するものであることを意味している。別の切り口でいえば、「海底に直接的に据え付けられる」は、立体網状繊材集合体の面には付加的な部材(特に、立体網状繊材集合体の面の全体に及ぶような部材)を備えおらず、その集合体面が実質的に全体として露出面を成していることを意味している(別の切り口でいえば、立体網状繊材集合体は、その全ての面が外部から間隙空間15に直接アクセスできるようになっている)。
【0042】
ある好適な態様では、移植補助材が全体として可撓性を有している。つまり、移植補助材100は全体として撓ませることができ、特に人の手によって加えられる力でもって撓ませることができる(
図5参照)。本発明の移植補助材は、立体網状繊材集合体が全体として間隙空間を有しており、それに起因して全体が可撓性を有しているともいえる。かかる可撓性ゆえ、大型藻類またはその前駆体の取り付けの点で操作性が良くなると共に、海底の形態に合わせて自在に移植補助材を据え置くことが可能となる(例えば、海底に起伏があったとしても海底形状に合わせて好適に移植補助材を据え置くことができる)。また、可撓性を呈するからこそ、大型藻類の成長などに伴い移植補助材が応力を受けたとしても、それに応じて移植補助材が適宜撓むことができ、大型藻類に対して過度な負荷が掛からない移植が実現され得る。
【0043】
本発明の移植補助材は、好ましくは、立体網状繊材集合体から成る単一品となっている。つまり、
図2に示す態様から分かるように、複数の繊材1が互いに局所的に接合した立体網状繊材集合体10のみが移植補助材100を成しており、他の部材が組み合わされていない。このような単一品であっても、海藻移植材として、そのまま使用することができる。これは、複数の繊材1が互いに局所的に接合して成る立体網状繊材集合体10が、上述の如く力を加えると全体的に撓ませることができるものの、決して軟らかいといったものでなく所望の堅さを有していることに起因する。つまり、移植補助材が仮に過度に軟らかい場合、藻類前駆体の取付けおよび/または海底への据付け操作を実施し難く、構造強度を上げるべく補強材と組み合わせる必要があるものの、本発明における立体網状繊材集合体では、繊材および/または繊材同士の接合部などに起因して所望の堅さがもたらされており、その必要は特にない。
【0044】
本明細書において「立体網状繊材集合体から成る単一品」とは、
図2〜
図4に示す形態から分かるように、あくまでも移植対象の土台となる部材が単一の部材から成ることを意味している。換言すれば、かかる土台部材とは異なると通常みなされる「海底への固定具」および「立体網状繊材集合体への大型藻類の取り付けに供するもの」を除いた移植補助材の本体として単一品であることを意味している。
図2に示す態様から分かるように、“単一品”であるからこそ、立体網状繊材集合体10の間隙空間15が外部に露出しており、外部から間隙空間15にアクセスできるようになっている(特に好ましくは立体網状繊材集合体の全ての面が外部からアクセスでき、特に遮るものはない)。なお、好ましくは、単一品の立体網状繊材集合体は、同様の立体網状繊材集合体が複数組み合わされた形態を有していない。つまり、本発明の移植補助は、好ましくは1ピースの立体網状繊材集合体から成っている(換言すれば、好ましくは立体網状繊材集合体はその複数のサブ・ピースが組み合わされたような形態を有していない)。
【0045】
立体網状繊材集合体の単一品ゆえ、本発明の移植補助材は、全体構成がシンプルかつ均一的になっており、大型海藻の移植に好適である。具体的には、実質的に1パーツ品であるので、例えば補強材などと組み合わされた2パーツ品または3パーツ品などの複数の部材から成るものと比べて、波浪などの影響を受けにくく、海底で安定に存在し得る(例えば、複数の部材から成るものは、波浪などの影響を受けて構成要素同士が分離されてしまう等の虞がある)。また、単一品ゆえに、2パーツ品または3パーツ品等と比べて、構造が均一的であり、それゆえ藻類前駆体の取付け箇所の自由度がより高く、より自然な移植の実施がもたらされ得る。
【0046】
上述の“所望の堅さ”に関連することであるが、本発明の移植補助材は、好ましくは非スプリング体となっている。つまり、バネまたはゴムように伸縮自在となっているものではなく、人が通常加える力によって伸びたり縮んだりしない構造となっている。これは、立体網状繊材集合体の「繊材同士の局所的な接合」および「繊材の材質」などに起因してもたらされる構造的特性である。
【0047】
図示する形態から分かるように、本発明の移植補助材の立体網状繊材集合体は、局所的に接合した複数の繊材が全体的に詰った(又は分布した)形態を有している。「全体的に詰った形態」とは、立体網状繊材集合体について、繊材が存在する繊材領域がどの箇所においても同様に存在していることを意味しており、非繊材領域(例えば、立体網状繊材集合体の繊材部分を部分的に除去した又は刳り抜いたような局所的な非繊材領域)が設けられていないことを意味している。つまり、立体網状繊材集合体の内部において繊材密度に極端な偏りがなく、好ましくは本発明の移植補助材の立体網状繊材集合体は、どの断面で切り取っても、その断面で同様な繊材密度を有している。1つ例を挙げると、立体網状繊材集合体は、非繊材領域が立体網状繊材集合体を貫通するような形態を有していない(例えば、一定または非一定の幅サイズの非繊材の中空部が立体網状繊材集合体の面方向またはそれと直交する方向などに延在するようにはなっていない)。
【0048】
ここで立体網状繊材集合体の製造方法について説明しておく。まず、原料樹脂の融点以上の温度に加熱した二軸押出機によって、樹脂を溶融混練する。次いで、複数の孔を有するTダイから、溶融状態の樹脂を連続的に下方向に吐出することによって紡糸すると、立体網状繊材集合体を成型できる。このとき、Tダイの直下に水浴(または湯浴)を設置し、水浴中に2つのコンベアを並行に設置し、コンベアの一部が水面上になるように配置する。溶融状態の樹脂からなる繊材が、2つのコンベアのクリアランス間において、水浴水面に達する際に、浮力が発生することで繊材がランダムな方向性を持つ。同時に、この多数の繊材は、2つのコンベアに挟まれ、除熱されながら水浴中を運ばれ、繊材同士が融着しながら固化することによって、立体網状繊材集合体が成型される。成型された立体網状繊材集合体は、適当な長さおよび形状に切断される。なお、立体網状繊材集合体の厚みは、2つのコンベアのクリアランス間の距離に依存し得る。
【0049】
本発明の移植補助材は、大型藻類の移植を助力するものである。かかる大型藻類について詳述する。
【0050】
本発明でいう「大型藻類」とは、広義には、微細藻類(マイクロアルジェ)などと区別され、それよりも相対的に大きいと一般に考えられる藻類を指している。狭義には、「大型藻類」は、手に取ってみることができ、沿岸海域などで基質に付着して生育する海藻のことを指している。特に制限するわけではないが、本発明において大型藻類と捉えてよいものを例示すると、褐藻(例えば、カジメ、アラメ、クロメ、ツルアラメ、サガラメ、ワカメ、コンブ類(真昆布、利尻昆布など)、ヒジキなど)、紅藻(例えば、アサクサノリ、マクサ、オオブサ、トサカノリ、モズクなど)、黄緑色藻類(クビレミドロ、フシナシミドロなど)、緑藻(例えば、アオサ、シオグサ、ミル、ツルギミドロ、フシマダラなど)、接合藻(例えば、アオミドロ、ホシミドロなど)、ならびに、車軸藻(例えば、シャジクモの仲間など)などを挙げることができる。
【0051】
ある好適な態様では、本発明の移植補助材は、褐藻の移植を助力する移植補助材となっている。つまり、ある1つの好適な態様に係る移植補助材は、磯焼けの対象の大型藻類の移植のための部材となっている。磯焼けの対象となり得る大型藻類としては褐藻があるところ、本発明の移植補助材では、その褐藻を海底に対して直接的に固着させることができる。本発明の移植補助材の使用対象となる褐藻は、たとえば、カジメ、アラメ、サガラメ、ワカメおよびコンブ類から成る群から選択される少なくとも1種であってよく、特にカジメ、アラメおよびサガラメから成る群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0052】
本発明の移植補助材は、あくまでも、藻類が海底に固着して成長するための移植材である。ある1つの好適な態様に係る本発明の移植補助材は、海藻がその繊材に絡みつくことは意図しておらず、繊材に絡み付かずに繊材間を仮根が通過することが意図されている。つまり、海藻が成長するためのマット(例えば海藻培養マット・シート)などとは異なる概念であるといえる。それゆえ、本発明の移植補助材において間隙空間は好ましくは大型藻類の仮根が通過する空間となっている。本発明の移植補助材は、そのような仮根通過空間が繊材の融着接合部によってもたらされている。より具体的には、本発明の移植補助材では、複数の繊材が、それぞれ湾曲した形態を有するとともに、その複数の繊材が互いに接合した融着接合部を有しており、かかる融着接合部によってもたらされている複数の繊材がなす閉領域が“間隙空間”を成している。そして、本発明では、そのような間隙空間が、好ましくは、海底への固着に際して大型藻類の仮根が繊材に付着することなく間隙空間を貫通する貫通路となっている。
【0053】
ある1つの好適な態様では、大型藻類の仮根が成長して間隙空間を通過するに際し、その成長などによっては、接合部(特に融着接合部)が解除されるようになっていてよい。つまり、成長に伴って大きくなった仮根から受ける力に起因して局所的な接合部が解除されるようになっていてもよい。つまり、接合状態が解除され得る。本発明の移植補助材の接合部(特に融着接合部または点接合するような融着部)は、異なる繊材同士または同じ線材について、表面同士が接するように接合しているので、その接合強度自体は強いものでない(例えば融着接合部は繊材の表面接合の形態を有しているといえる)。このような接合部ゆえ、分かり易い例でいえば人の手の力によって接合部を解しようと思えば解することができる。したがって、間隙空間を通過する仮根の成長に伴って、仮根が大きくなった際に、それから受ける応力に起因して接合部(特に融着接合部または点接合するような融着部)の解除がなされ得る。なお、本発明の移植補助材では、融着接合部または点接合するような融着部は複数存在し、またそれに伴って間隙空間も複数存在するので、かりに或る接合部(特に融着接合部または点接合するような融着部)が解かれたとしも、仮根は間隙空間に依然位置付けられることになり、そこを通過するように成長できる。よって、仮根が大きくなる成長に伴って藻類が海底により好適に固着され得る。このような好適態様ゆえ、本発明の移植補助材に設けられている複数の局所的な接合部は“解除可能接合部”あるいは“表面接触接合部”などと称すことができる。
【0054】
本発明の移植補助材は、種々の態様で具現化され得る。以下それについて説明する。
【0055】
(板形状の態様)
本発明の移植補助材は、好ましくは全体が扁平状を成している。つまり、
図1〜
図4に示すように、移植補助材100が“薄い”外観を有している。特に、本発明の移植補助材が全体として板形状(または平板形状)を有していてよい。これは、移植補助材を構成する立体網状繊材集合体自体が板形状に薄くなっていることを意味している。
【0056】
例えば、立体網状繊材集合体10は、全体厚さが5cm以下(0cmを含まず)、好ましくは全体厚さが4cm以下(0cmを含まず)、より好ましくは全体厚さが3cm以下(0cmを含まず)、より好ましくは2cm以下(0cmを含まず)、より好ましくは1cm以下(0cmを含まず)の板形状を有している。このような厚さの板形状の場合、移植対象となる大型藻類の仮根が立体網状繊材集合体の内部を横切って海底に対して直接的に固着し易くなる。立体網状繊材集合体の全体厚さが5cmよりも大きくなると、大型藻類の仮根が立体網状繊材集合体を通過する際の抵抗がトータルで大きくなると共に、かかる仮根が通過し切るまでの時間が増してしまう(つまり、海底に対する固着早期化の点でいえば、ある程度の薄さであることが好ましい)。立体網状繊材集合体の全体厚さの下限は、網状構造体を成し得るのに必要な程度であってよく、例えば、0.5cmである。ここで板形状にいう“板”といった用語は、柔軟に解釈されるものであり、板の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が行われた形状も板の概念に含まれる。また、かかる“板”は、幅方向における平面形状が、図示されるような正方形・矩形状に限らず、多角形状も含まれ、同様に多角形の特定の隅に対して角丸め等の加工が行われた形も“板”の概念に含まれる。
【0057】
(ハンドヘルドの態様)
本発明の移植補助材は、好ましくは持ち運び可能な補助材、すなわち、ハンドヘルド品(ハンドヘルドの移植補助材)またはハンディ品(ハンディタイプの移植補助材)となっている。これにつき、移植補助材は、容易な持運びに資する主面サイズを好ましくは有している。例えば、主面サイズ(即ち、移植補助材を厚み方向に沿って上側または下側から見た平面視におけるサイズ)は、かかる主面の辺長さや径などがセンチメータのオーダー(100cm未満)となっている。例えば移植補助材の主面形状が略正方形、略矩形、円形状または楕円形などである場合、その1辺(特に最大長さの辺)または最大径の寸法が、5cm以上100cm未満であってよく、さらには5cm以上50cm以下、5cm以上30cm以下または5cm以上20cm以下などであってよい。板形状の移植補助材の観点に立てば、移植補助材の厚さが4cm以下(0cmを含まず)、より好ましくは3cm以下(0cmを含まず)または2cm以下(0cmを含まず)でありながらも、移植補助材の主面の1辺(特に最大長さの辺)または最大径の寸法は5cm以上100cm未満(例えば、5cm以上50cm以下、5cm以上30cm以下または5cm以上20cm以下)となっていてよいことを意味している。
【0058】
(フラット面の態様)
本発明の移植補助材は、それを形作る各々の面がフラットになっていてよい。つまり、本発明の移植補助材では、立体網状繊材集合体を全体として形作る面が全体としてフラットになっている。これは、
図1に示す形態から分かるように、立体網状繊材集合体10を成す複数の繊材1がある平面内に実質的に収まっていることを意味している。例えば、上述の“板形状”の場合(特に、立方体または直方体から成る板形状の場合)、それを形作る6つの面が全てフラットになっていてよい。
【0059】
このようにフラットになっていると、移植対象となる藻類を実質的に等しいレベルで取り付けることが助力されたり、および/または、海底への移植が海底形状に合わせて等しいレベルで行うことができたりする。よって、“フラット”は、より自然な形態の移植に寄与し得るといえる。
【0060】
(キットの態様)
移植補助材はキットとして供されてもよい。つまり、本発明では、移植補助材が、より好適な使用の観点からキットとして供されていてもよい。例えば、本発明の移植補助キット1000は、「移植補助材100」と「大型藻類またはその前駆体を立体網状繊材集合体10に拘束するための拘束部材300」とを有して成る(
図6参照)。かかるキットでは、移植対象を立体網状繊材集合体に取り付けるために、拘束部材が好適に利用される。
【0061】
拘束部材300は、例えばゴム体から成るものであってよい。かかる場合、環状のゴム体の張力を利用して、例えば中間育成された藻類50’を立体網状繊材集合体10に取り付けてもよい(
図7参照)。
【0062】
また、本発明の移植補助キット1000は、立体網状繊材集合体10を海底に固定するための固定具400を有していてもよい(
図8参照)。つまり、立体網状繊材集合体が海底に据え置かれる際にその据え置きを安定化させる補助具と共に移植補助材が用いられてもよい。
【0063】
固定具400は、例えば、
図8に示すように釘具410を少なくとも有して成るものであってよい。釘具410を立体網状繊材集合体10を介して海底200に打ち付けると本発明の移植補助材100を海底200に対して安定的に据え置くことができる(
図3および
図4参照)。固定具400は、
図9に示すように、座金部材420および/または430などを更に有していてもよく、それによって、より安定的な据え付けが実現され得る。なお、特に海底が上述の“人工の海底”である場合には、固定具としてアンカーボルトを用いてもよい。
【0064】
本発明の立体網状繊材集合体10は、このように固定具400が用いられ得るといえども、その固定具のために加工が特に必要でなく、また、その固定具の設置のために形状を変えることなどは特に必要としない。つまり、本発明の立体網状繊材集合体10は間隙空間15があり、その空間を固定具400と立体網状繊材集合体10との係合に利用する。かかる場合、間隙空間15(複数の間隙空間の一部)は固定具のための固定用穴であるといえる。つまり、ある好適な態様の立体網状繊材集合体10では、間隙空間15(特に複数の間隙空間)は、海底への大型藻類の直接的固着のための間隙空間(穴)であるとともに、立体網状繊材集合体を海底に固定するための間隙空間(穴)にもなっている。換言すれば、本発明の立体網状繊材集合体10は、固定具、例えばボルト(アンカーボルドなど)やナットなどのために使用される穴や窪み(それ専用の穴や窪み)などは設けられていない。これにつき、上述したように、本発明の立体網状繊材集合体は、好ましくは全体として立方体・直方体の板形状を有しており(特に全体形状として凹凸状にはなっておらず)、より好ましくは立体網状繊材集合体の外観を形作る6つの面が全てフラットになっている(特に、立体網状繊材集合体の外観を形作る面にて“局所的に刳り抜かれたような部分”又は“局所的に貫通したような部分”などは存在していない)。
【0065】
なお、本発明の移植補助キットについていえば、固定具など機械的な部品の概念に限らず、固定材などの材料を有していてよい。例えば、固定材として水中ボンドを有していてもよい。水中ボンドの場合であっても、かかるボンドを介して移植補助材を海底に配置することができ、移植補助材をより安定的に海底に据え置くことができる。
【0066】
(繊材の海水分解性ポリマーの態様)
ある好適な態様に係る移植補助材は、海水分解性ポリマーから成っている。具体的には、本発明の移植補助材において、立体網状繊材集合体の繊材が、好ましくは海水分解性ポリマーを含んで成る。
【0067】
かかる態様では、海底に据え付けられた移植補助材が自然分解されることになる。これは、据置き初期において、立体網状繊材集合体は、大型藻類の海底への固着を助力するものの、固着後はその役目を終えて分解されることを意味している。よって、海水分解性ポリマーの態様では、より自然な形態で海藻移植を行うことができる。好ましくは、藻類前駆体またはそれが成長した大型藻類が海底に直接的に固着した後で、立体網状繊材集合体(特に「海水分解性ポリマーの繊材1’から構成された立体網状繊材集合体10’」)が自然分解に起因して少なくとも部分的に消失し得る(
図10参照)。
【0068】
海水分解性ポリマーは、アルカノエート系の樹脂成分を含んでなるものが好ましい。特に、ヒドロキシル基が付随したアルカン酸または何らかの修飾を受けたアルカン酸を構成モノマーとし、そのようなものがエステル結合して形成されたポリマーが海水分解性ポリマーとして用いられていることが好ましい。
【0069】
例えば、繊材の海水分解性ポリマーに含有される樹脂成分が、ポリヒドロキシアルカノエートとなっていることが好ましい。より具体的には、海水分解性ポリマーに含有される樹脂成分は、以下の一般式で示される繰り返し単位を含んだポリヒドロキシアルカノエートであってよい。
【化1】
(式中、RはC
nH
2n+1で表されるアルキル基であり、nは1以上15以下の整数である)
【0070】
例えば、ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、いわゆるPHBHであってよい。かかるPHBHの製法は、特に制限されるものでなく、公知の手法を用いてよい。例えば、国際公開(WO)2013/147139号に開示されている手法によってPHBHを得てよい。また、PHBHとして、市販のPHBHを用いてよく、例えば株式会社カネカのカネカ生分解性ポリマーPHBHのX131A、X151Aおよび/またはX331Nを用いてもよい。
【0071】
海水分解性ポリマーの繊材には、上記のポリヒドロキシアルカノエートの他に、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンセバセートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンアゼレートテレフタレート(PBAzT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)およびポリカプロラクトン(PCL)から成る群から選択される少なくとも1種が更に含まれていてもよい。これらの成分が付加的に含まれると、立体網状繊材集合体の繊材同士の接合(局所的な接合)が促進され得る。つまり、これらの成分が繊材材料に含まれると、立体網状繊材集合体の間隙空間がより好適にもたらされ易くなる。
【0072】
あくまでも一例であるが、海水分解性ポリマーがポリヒドロキシアルカノエートとしてPHBHを含み、更にPBAT(例えば、BASF社製、エコフレックスC1200)を含む海水分解性ポリマーを繊材が含んで成っていてもよい。かかる場合、海水分解性ポリマーは、100重量部のポリヒドロキシアルカノエートに対して、10〜100重量部のPBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)を含んでいてよい。また、可塑剤を更に含んでいてもよく、例えば海水分解性ポリマーが、100重量部のポリヒドロキシアルカノエートに対して、10〜100重量部のポリブチレンアジペートテレフタレートおよび5〜50重量部の可塑剤を含んでいてよい。可塑剤は、特に制限ないものの、変性グリセリン(例えば、理研ビタミン株式会社製、リケマールPL012)であってよい。
【0073】
《本発明の移植方法》
本発明では、上述の移植補助材(または移植補助キット)を用いて大型藻類を移植する方法も提供される。かかる本発明の移植方法は、
(i)海底に移植補助材を据え置くに先立って、大型藻類の前駆体となる藻類前駆体を移植補助材に取り付けること、および
(ii)藻類前駆体を取り付けた移植補助材を、海底に直接据え置くこと
を含んで成る。
【0074】
本発明の移植方法は、立体網状繊材集合体の移植補助材を用いて、それを海底に直接据え付けて大型藻類の移植を直接的に行うことを特徴とする。特に、立体網状繊材集合体の間隙空間を好適に利用しており、藻類の仮根が立体網状繊材集合体の間隙空間を通るように藻類を成長させている。
【0075】
本発明の方法では、移植対象となる藻類前駆体を取り付けた立体網状繊材集合体を海底に直接的に据え付け、かつ、その立体網状繊材集合体の間隙空間を藻類前駆体の通路に利用するので、藻類は海底に対して直接的に固着することができる。
【0076】
図11(A)および(B)ならびに
図12は、本発明の方法における主な工程を経時的に示している。図示する態様から分かるように、移植補助材100に対して大型藻類またはその藻類前駆体50’を取り付け(工程(i))、次いで、海底200に対して移植補助材100が直接据え置かれる(工程(ii))。
【0077】
本明細書において「藻類前駆体」とは、移植対象となる大型藻類につき、依然成長する余地のあるものを指している。ある1つの好適な態様では、藻類前駆体は、その仮根などを移植補助材に取り付けること(特に繊材と係合するように取り付けること)ができる程度にまで成長したもの(例えば、繊材との係合に適した程度の大きさまで中間育成された藻類)である。大型藻類そのものも成長する可能性が少しでもあるのであれば、本発明の製造方法の工程(i)で用いられる。
【0078】
工程(i)では、
図11(A)および(B)に示すように、立体網状繊材集合体10に対して移植対象物を取り付ける。具体的には、移植対象となる大型藻類またはその藻類前駆体50’を立体網状繊材集合体10に取り付ける。海底ではなく、陸上でそのような取り付けを行ってよい。例えば、中間育成された藻類を藻類前駆体50’として用い、それを立体網状繊材集合体10に取り付ける。
【0079】
工程(i)の取り付けでは、立体網状繊材集合体10の繊材1に係合させるようにして大型藻類またはその藻類前駆体50’が立体網状繊材集合体10に取り付けられることが好ましい。図示される態様では、立体網状繊材集合体10の繊材1が、中間育成された藻類の仮根55またはその一部(特に仮根の一部の側面)に接するような形態で藻類が立体網状繊材集合体10に取り付けられている。本発明の方法で用いる立体網状繊材集合体は「繊材同士の複数の局所接合が立体的となることでもたらさるランダム間隙構造」を有している。よって、立体網状繊材集合体の間隙空間15に対して大型藻類またはその藻類前駆体を差し込むことで、立体網状繊材集合体の繊材に係合させるように取り付けることができる。
【0080】
取付け状態をより安定化させるために、
図13に示すように適当な拘束部材300を用いてよい。つまり、大型藻類またはその藻類前駆体を立体網状繊材集合体に対して好適に拘束(例えば、好ましくは一時的に拘束)しておくための部材を付加的に用いてもよい。例えば、拘束部材300によって大型藻類またはその前駆体を繊材1に対して直接的に拘束させてよい。図示される態様では、拘束部材300としては、ゴム体(例えば環形状を有する輪状ゴム体)が用いられており、かかるゴム体でもって、中間育成された藻類の仮根55を立体網状繊材集合体10の繊材1に対して拘束させている。
【0081】
工程(i)に引き続いて工程(ii)を実施する。かかる工程では、
図12に示すように移植対象物(50,50’)が取り付けられた移植補助材100が海底200に直接据え置きされる。“磯焼け対策”として移植補助材(または移植補助キット)が用いられる場合、据え置かれる海底は“元藻場”の海底となり得る。特に、本発明の方法では、“直接据え置き”なので、自然の海底(岩礁および/または泥岩200’など)や人工の海底(海底にある人工物など)に対して立体網状繊材集合体10が直接的に接することになる(
図12参照)。
【0082】
海底への据え置きをより安定化させるために、適当な補助手段を用いてよい。立体網状繊材集合体の固定は、“点”で固定したり、あるいは、“面”で固定してもよい。つまり、立体網状繊材集合体のある部分を局所的に押さえ付けるように立体網状繊材集合体を海底に固定してよく、あるいは、より広範に押さえ付けるように立体網状繊材集合体を海底に固定してもよい。具体的には、固定具および/または固定材などによって、立体網状繊材集合体をより安定的に海底に固定化させてもよい。
図14では、固定具400を用いる態様が示されており、固定具400として特に釘具410が用いられている。例えば、図示するように、立体網状繊材集合体10を介して釘具410を海底200に打ち付けてよく、海底200に打ち付けられた釘具410から供される締付け力でもって、立体網状繊材集合体10を海底200に固定化してよい。
【0083】
本発明の方法で用いる立体網状繊材集合体は、「繊材同士の複数の局所接合が立体的に分布することでもたらされるランダム間隙構造」を有しているところ、その間隙空間が海底で好適に作用する。特に、海底での移植対象物の成長に間隙空間が好適に利用される。海底においては大型藻類またはその藻類前駆体は、光合成を通じて成長することになるが、その成長に伴って大きくなる仮根の通り道として立体網状繊材集合体の間隙空間が利用される。換言すれば、立体網状繊材集合体10の間隙空間15(すなわち、形状的および/または配置的にもランダムな穴15)を通ることで仮根55は好適に成長できる(
図2〜4参照)。
【0084】
立体網状繊材集合体の間隙空間を通るように仮根が成長することは、
図15に示すように立体網状繊材集合体10を横切るように大型藻類50または藻類前駆体50’が成長できることを意味している。よって、立体網状繊材集合体10に取り付けられた大型藻類50またはその藻類前駆体50’は、少ない抵抗で立体網状繊材集合体10の内部を横切って成長でき、よりスムーズに海底200’に至ることができる。
【0085】
ある好適な態様では、立体網状繊材集合体の内部を横切った大型藻類または藻類前駆体は、海底に対して活着するようになっている。換言すれば、工程(ii)の後では、大型藻類が立体網状繊材集合体を横切るように大型藻類の仮根が間隙空間を通って成長し、その間隙空間を介して海底に対して大型藻類が直接的に固着する。
【0086】
本発明の方法では、海水分解性の移植補助材を用いてよい。つまり、立体網状繊材集合体の繊材が海水分解性ポリマーを含んでいてよい。かかる場合、工程(ii)で海底に据え置かれた移植補助材100’は自然分解に付され得る(
図10参照)。あくまでも立体網状繊材集合体の繊材が海水分解性ポリマーから成るので、自然分解自体は、海水の作用を受けて為されるものである。特に、自然分解は、海水の作用を受けて徐々にそれが進行するものであり、据置き初期では立体網状繊材集合体の形状は保たれている。よって、大型藻類またはその藻類前駆体の海底への固着自体は特に阻害されない。
【0087】
ある好適な態様では、海水分解性の移植補助材は最終的には据え置き域で少なくとも部分的に消失する。
図16に示すように、藻類前駆体50’またはそれが成長した大型藻類50が海底200に直接的に固着した後で立体網状繊材集合体10が自然分解に起因して消失(例えば、全てが消失)することが好ましい。図示する態様から分かるように、かかる消失は、所望の海藻移植につながり、より自然な藻場復活に資する。
【0088】
本発明の方法において、使用する移植補助材の個数は単一に限らず、複数であってもよい。かかる場合、
図17に示すように、移植対象の藻類前駆体を取り付けた立体網状繊材集合体をより広範に据え付けることができる。つまり、“磯焼け対策”が求められる元藻場の海底がたとえ広く存在する場合であっても、その海底の性状・形状などに合わせて複数の移植補助材を組み合わせて対応することができる。図示する態様では、海水分解性の移植補助材を用いることが前提となっているが、かかる態様を参照すると分かるように、本発明では、複数の板形状の移植補助材を適宜組み合わせて使用することによって、より元の状態に近い自然な藻場復活が可能となる。
【0089】
本発明の移植方法に関連するその他の事項については、上述の《本発明の移植補助材》で実質的に説明しており、重複を避けるためここでの説明は省略する。
【0090】
以上、本発明の各種態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく、特許請求の範囲に規定される範囲から逸脱することなく種々の変更が為され得ると当業者は理解されよう。
【0091】
例えば、上記では立体網状繊材集合体が実質的に単一の構造を有する態様について説明してきたが、本発明は特にこれに限定されない。本発明の移植補助材において立体網状繊材集合体が複数層の構造から成るものであってよい。より好適な移植実現に資すべく例えば
図18に示すように立体網状繊材集合体10が2層構造(上側層10Aと下側層10Bとから成る構造)を有していてよい。海底に移植されて成長した大型藻類は波浪の影響などで海中でなびくが、その際に大型藻類に過度な応力が掛かからないように、上側層10Aを下側層10Bよりも相対的に“柔らかい”層としてもよい。なお、複数層構造によって層ごとに堅さ(硬さ)を変えることのみならず、局所的な領域において堅さが変わるような立体網状繊材集合体であってもよい。例えば、立体網状繊材集合体は、固定具(例えば
図8および
図9に示されるような固定具)の打ち込み箇所に相当する局所的部分(またはその近傍領域を含めた部分)が他の部分と比べて堅くなった網状繊材構造を有していてもよい。
【0092】
また、上記で参照した図面においては、海底への移植補助材の据え置きに先立って中間育成された大型藻類(特に藻類前駆体)が立体網状繊材集合体に取り付けられた態様となっているが、本発明は特にこれに限定されない。つまり、用途などの各種ニーズによって、海底への据え置きに先立って立体網状繊材集合体に取り付けられる大型藻類の形態(特に藻類前駆体の形態)は変わり得る。
【0093】
さらに、上記では本発明の移植補助材は、海底に据え置かれることを前提に説明してきたが、本発明は特にこれに限定されない。例えば、本発明の移植補助材を湖、池および川などの水の底に据え置かれるものとして用いてもよい。かかる場合、本明細書における「海底」はそれぞれ“湖底”、“池沼底”および“河川底”/“川底”などと読み換えて解すことになる。つまり、本発明における「海底」とは、海のみならず、湖、池、沼および河川・川などの底を包括的に含み、本発明における「大型藻類」とは、そのような湖、池、沼および河川・川の藻類に相当する。
【実施例】
【0094】
《移植補助材の効果確認試験》
本発明の移植補助材の効果を確認すべく試験を行った。特に、立体網状繊材集合体の間隙空間が大型藻類の海底への固着に有効であるかについて確認試験を実施した。
【0095】
(試験方法)
実施例および比較例で使用した試験基盤の外観を
図19に示す。実施例では、間隙空間を有する立体網状繊材集合体を試験基盤として用いた(以下では「実施例基盤」とも称する)。つまり、実施例試験体としては「ランダムに配向する複数の繊材同士の局所的な接合に起因してもたらされる間隙空間を備えた立体網状繊材集合体」を用いた。一方、比較例では、水濾過用濾材を試験基盤として用いた(以下では「比較例基盤」とも称する)。つまり、比較例試験体としては「相対的に短繊維から成り、繊維同士の接合が存在しない又は接合しているように仮に見えたとしても指で押さえる程度の軽い力で容易に解される不織状態の水濾過用濾材」を用いた。それぞれの基盤の仕様は以下の通りであった。
●実施例基盤:立体網状繊材集合体
・繊材樹脂:ポリプロピレン系樹脂/PP系樹脂(WELNEX STR0729、日本ポリプロ株式会社製)
・繊材タイプ:長繊材(平均長さ:約496mm/縦20cm×横20cm×厚み1cmのサンプル品から測定した繊材長さ)
・繊維の線径・断面径:約0.9mm
・繊材同士の接合:有り(点接合、特に融着に起因した点接合)
・目付:1.4kg/m
2
・間隙空間:基盤から20cm離隔した位置から基盤の主面を目視で観察した場合に基盤の反対側(目視側とは反対側)にある物は見えるほどの相対的に大きい間隙空間サイズ。ふるい試験法による間隙空間の最大サイズ:4.0mm程度(以下の≪間隙空間のサイズの確認試験》参照)
・全体サイズ(縦寸法:15cm、横寸法:15cm、厚さ寸法:1cm)
●比較例基盤:水濾過用濾材
・マット工房社販売、商品名:ローズマット 原反
・繊維タイプ:短繊維(平均長さ:約59mm/縦20cm×横20cm×厚み1cmのサンプル品から測定した繊維長さ)
・繊維の線径・断面径:約0.03mm
・繊維同士の接合:無し
・目付:150g/m
2
・間隙空間:基盤から20cm離隔した位置から基盤の主面を目視で観察した場合に基盤の反対側(目視側とは反対側)にある物は見えないほどの相対的に小さい間隙空間サイズ。ふるい試験法による間隙空間の最大サイズ:0.5mm程度(以下の≪間隙空間のサイズの確認試験》参照)
・全体サイズ(縦寸法:15cm、横寸法:15cm、厚さ寸法:1cm)
・使用形態:高密度ポリエチレンネット(トリカルネット)を輪ゴムで固定
【0096】
藻類前駆体をそれぞれ取り付けた実施例基盤および比較例基盤を「海底に見立てた塩ビ板」へと設置した後、海水水槽中に配置した。これにより、藻類前駆体の生育に伴う塩ビ板への固着化を調べた。具体的には下記の通りの操作および処理を行った。
【0097】
比較例基盤にサガラメの種苗(全長:7.7〜27.2cm、平均全長:14.8cm)を4個体ずつ取り付けたものを5基作成し、それぞれの基盤底に移植海域の岩盤に見立てた透明塩ビ板(厚さ:約3mm)を取り付けた。それらを約12cmの間隔で縦に連結したものを500Lアルテミア水槽上部から吊り下げて設置した。実施例基盤については、種苗(全長:6.3〜23.6cm、平均全長:14.7cm)を輪ゴムにより基盤の表面に固定したもの5基(以下「表面固定タイプ」とも称する)を作成すると共に、種苗(全長:7.3〜22.6cm、平均全長:14.8cm)の仮根部を基盤の隙間に差し込んで固定したもの5基(以下「差込み固定タイプ」とも称する)を作成した。それらに対しては透明塩ビ板(厚さ:約3mm)を取り付け、比較例基盤と同様の条件で500Lアルテミア水槽上部から吊り下げて設置した。
【0098】
水槽には深層水と表層水を掛け流し、水槽底中央から強めの通気を行った。このような条件においてサガラメの仮根部の塩ビ板への固着状況を経時的に確認した。具体的には、約3か月の期間に相当する97日の間、約7日ごとに仮根部を観察し、「仮根部が伸長して塩ビ板に到達した個数」につきカウントすると共に、塩ビ板への固着状況を確認した。
【0099】
(試験結果)
試験結果を
図20および
図21に示す。
図20のグラフは、基盤底に設置した塩ビ板へのサガラメ仮根部の到達状況を示しており、
図21のグラフは、サガラメ仮根部の塩ビ板への固着状況を示している。
【0100】
図20のグラフから分かるように、実施例基盤(差込み固定タイプ)では、6日後に60%、13日後に90%、20日後には100%の個体の仮根部が塩ビ板に到達していた。また、実施例基盤(表面固定タイプ)では、6日後に10%、13日後に45%、20日後には65%、41日後に90%の個体の仮根部が塩ビ板に到達していた。これに対して、比較例基盤では、実施例基盤と比べて到達率が低く、20日後に5%、41日後に20%程度であり、また、97日後であっても70%程度であった。
【0101】
また、仮根部の固着状態を示す
図21のグラフからは、実施例基盤(差込み固定タイプ)では固着が早く、6日後に5%、13日後に40%、20日後に75%の固着個数の割合であり、48日後には全ての個体が固着した。同様にして、実施例基盤(表面固定タイプ)も固着が早く、13日後に10%、20日後に50%、48日後に80%の固着個数の割合であった。これに対して、比較例基盤では、実施例基盤と比べて固着個数の割合は極めて低く、実質的な固着はみられなかった。
【0102】
以上より、本発明の移植補助材について、仮根が立体網状繊材集合体の間隙空間を通るように大型藻類が成長することができ、海底に直接的に固着することができることを確認することができた。
【0103】
付言しておくと、比較例基盤は、隙間を有すると捉えることができるものであるが、あくまでも繊維(特に短繊維)が密に詰まった不織体の形態を有している。つまり、目視では向こう側が観測できない隙間であり、実施例基盤のような目視で向こう側が観測できる大きな隙間ではない。比較例基盤を手にとって例えば20cm離して顔の前・目の前に位置付けると、その比較例基盤の向こう側がその基盤を通して見ることができない。よって、仮にそのような比較例基盤を用いて移植を行った場合、藻類の仮根が比較例基盤の隙間を通る(そして、その通過後に海底に固着する)といった態様ではなく(
図22参照)、本発明に係る実施例基盤における態様と本質的に異なる。また、かかる
図22から分かるように、そもそも比較例基盤では、仮根が成長するにしても、基盤内部を貫通するように成長し難いので、結果として海底に達するまでに時間を多く要してしまうことになる。この点、本発明に係る実施例基盤では仮根が立体網状繊材集合体の内部を貫通または横切るように間隙空間を通って海底に達するので早期固着が可能であり、藻類の成長途中での脱落などの不都合を減じることができる。また、そのような立体網状繊材集合体では、繊材同士の点接合部(特に、局所的な融着による点接合部・点融着部)に起因して間隙空間が形成されているが、かかる点接合部は、融着ゆえに大きな外力を受けると解離可能となっている。よって、成長する仮根から受ける外力によっては点接合部が適宜解離することもでき、そのような観点でも立体網状繊材集合体の内部を貫通または横切る仮根の成長は助力されている。
【0104】
《間隙空間のサイズの確認試験》
「実施例基盤」の立体網状繊材集合体の平面視における間隙空間の平均サイズは、目視の観点でいえば4〜7mm程度(またはそれ以上のサイズ、例えば5〜10mm程度)である一方、「比較例基盤」の水濾過用濾材の平面視における間隙空間の平均サイズは、0.5mm程度、大きく見積もっても1mm未満である。このように間隙空間が大きい本発明の特徴的事項は、「実施例基盤」の立体網状繊材集合体と「比較例基盤」の水濾過用濾材との外観比較から少なくとも見て取れるので、参考のため外観写真を
図23(A)および23(B)に示しておく。
【0105】
かかる間隙空間サイズについては、より客観性が高い指標を得るべく「ふるい試験法」を実施した。以下それについて詳述する。
【0106】
〈ふるい分け試験に用いた砂〉
まず、実施例基盤および比較例基盤を透過させるための砂として園芸用の「寒水砂(株式会社コメリ製、JANコード4920501912045)」(粒径:1.0mm〜3.0mm)と園芸用の「根ぐされ防止剤(株式会社プロトリーフ製、JANコード4535885077602)」(粒径:3.0mm〜6.0mm)を用いた。さらに、「寒水砂」の一部を粉砕して粒径1.0mm未満の粉体を得た。以下では、本試験で用いた「寒水砂」、「根ぐされ防止剤」および「寒水砂の粉体」を総称して「砂利」と呼ぶ。これら砂利の粒径を揃えるために、JIS Z 8815(1994)を参考にしてふるい分け試験を実施した。試験に用いたふるいは、以下に示す長谷川金網(株)製および関西金網(株)製の開目の異なる10種類の金網を用いた(表1参照)。
【0107】
[表1]
【0108】
(I)砂利粒径の調整
上記砂利を乾式・手動ふるい分けに付して砂利粒径を調整した。ふるい分けに要する時間は、1分間にふるいを通過する粒子群の質量が装入試料質量の0.1%以下になるまでの時間とした。まずNo.1のふるいを用い、砂利を3〜5g入れた。ふるいを両手で持ち、水平面内を一方向に、振幅約70mm、1分間約60往復の割合で振動させた。ふるい下に得られた砂利を「粒径5.0mm以下」とし、さらにNo.2のふるいを用いて同様のふるい分け試験を行うことで、「粒径4.0mm〜5.0mm」と「粒径4.0mm以下」を得た。さらに、No.3〜No.10のメッシュをそれぞれ用いて同様の操作を行い、最終的に、「粒径4.0mm〜5.0mm」を含め、「粒径3.0mm〜4.0mm」、「粒径2.4mm〜3.0mm」、「粒径2.0mm〜2.4mm」、「粒径1.7mm〜2.0mm」、「粒径0.9mm〜1.7mm」、「粒径0.5mm〜0.9mm」、「粒径0.25mm〜0.5mm」、「粒径0.1mm〜0.25mm」の9種類の砂利に分けた。尚、粒径0.1mm未満の粉体および粒径5.0mm以上の大砂は除外した。これらの操作を繰り返し、9種類の砂利がそれぞれ5g以上になるまでふるい分け試験を行った。
【0109】
(II)ふるい試験(実施例基盤および比較例基盤の間隙空間サイズの評価)
上記のふるい分け試験で得られた9種類の粒径範囲の砂利を用いた。以下の実施例基盤(実施例1および実施例2)ならびに比較例基盤を網ふるいとして用い、ふるい分け試験(乾式・手動ふるい分け)を行った。ふるい時間・ふるい手法は上記(I)の条件と同じである。9種の砂利を2.00gずつそれぞれ精秤して“ふるい”(即ち、実施例基盤または比較例基盤)の上に載せ、1分間約60往復の割合で振動させた。具体的には、網ふるいを両手で持ち、水平面内を一方向となるように、振幅約70mmで1分間約60往復の割合で振動させた。得られたふるい下の砂利の重量を精秤して、それぞれの砂利について、ふるいを透過した割合をふるい下百分率として算出した(ふるい下百分率“100%”は、全ての砂利がふるいを透過したことを意味する一方、ふるい下百分率“0%”は、砂利がふるいを全く透過しなかったことを意味している)。9種類の砂利ごとにそのようなふるい下百分率を算出した。つまり、粒径・ふるい毎の45パターンの試験を行い、それぞれを3回ずつ実施した(即ち、n=3とした)。
実施例基盤
・
実施例1の基盤:上記の《移植補助材の効果確認試験》で用いたポリプロピレン系樹脂/PP系樹脂製(WELNEX STR0729、日本ポリプロ株式会社製)の立体網状繊材集合体、全体サイズは、縦寸法:10cm、横寸法:10cm、厚さ寸法:1cm(直方体形状)である。
・
実施例2の基盤:下記の《移植補助材の実地試験》で用いた海水分解性樹脂(カネカ製のカネカ生分解性ポリマーPHBH型式X151Aが100重量部、BASF社製エコフレックスC1200が30重量部、および、理研ビタミン株式会社製リケマールPL012が15重量部から成る樹脂組成物)製の立体網状繊材集合体、全体サイズは、縦寸法:10cm、横寸法:10cm、厚さ寸法:1cm(直方体形状)である。
比較例基盤
上記の《移植補助材の効果確認試験》で用いたマット工房社販売、商品名:ローズマット,
原反、全体サイズは、縦寸法:10cm、横寸法:10cm、厚さ寸法:1cm(直方体形状)である。
【0110】
結果を
図24に示す。
図24のグラフからは、以下の事項を把握することができる。
・比較例の基盤(ローズマット)では、粒径0.25〜0.5mmの砂利は略100%通過するものの、粒径0.5〜0.9mmの砂利の透過率は50%を下回っている。つまり、0.5mmを境に砂利の透過率は半分以上/半分以下となる。これは、比較例の基盤(ローズマット)における間隙空間サイズは、約0.5mm(最大で妥当に見積もって約0.5mm)と見込まれる。
・一方、実施例1および実施例2の立体網状繊材集合体では、粒径3.0〜4.0mmの砂利は透過率50%よりも大きいものの、粒径4.0〜5.0mmの砂利では透過率が50%を下回る。つまり、上記と同様の指標で4.0mmを境に透過率は半分以上/半分以下となっている。これは、実施例1および実施例2の立体網状繊材集合体における間隙空間サイズは、約4.0mm(最大で妥当に見積もって約4.0mm)であると見込まれる。このように、実施例1および実施例2の立体網状繊材集合体の間隙空間は、比較例の基盤(ローズマット)のそれよりも8倍程度の大きいサイズとなっており、相当に大きいことが分かる。
・例えばアラメやカジメなどの大型藻類は、仮根の太さが2mm程度(海底に活着するまでの間で平均すると大きくても2mm程度)であるところ、実施例1および実施例2の立体網状繊材集合体における間隙空間では、そのような仮根が通過することができる。その一方、比較例の基盤は仮根が通過することができない。つまり、本発明の立体網状繊材集合体の間隙空間は、大型藻類が立体網状繊材集合体の内部を横切るようにその仮根が間隙空間を通って成長するための貫通路を成し得る一方、比較例の基盤は、そのような貫通路を有し得ない。
【0111】
《移植補助材の実地試験》
実海域において本発明の移植補助材の効果を確認すべく試験を行った。具体的には、藻類前駆体を取り付けた立体網状繊材集合体を実海域の海底に直接的に据え置き、移植補助の効果を確認した。
【0112】
(試験方法)
中間育成されたサガラメが取り付けられた立体網状繊材集合体を海底に据え置き、サガラメの実海域での生育状態について確認した。具体的な条件は以下の通りである。
・海域:相良海域
・海底深さ:約3m
・立体網状繊材集合体の繊材の材質:ポリプロピレン系樹脂/PP系樹脂(WELNEX STR0729、日本ポリプロ株式会社製)
・海水分解性樹脂(カネカ製のカネカ生分解性ポリマーPHBH型式X151Aが100重量部、BASF社製エコフレックスC1200が30重量部、および、理研ビタミン株式会社製リケマールPL012が15重量部から成る樹脂組成物)
・移植補助材サイズ:150mm×150mm×10mm(ポリプロピレン樹脂)
・移植補助材サイズ:150mm×150mm×30mm(海水分解性樹脂)
・繊材タイプ:長繊材
・繊維の線径・断面径:約0.9mm
・繊材同士の接合:有り
・目付:1.8kg/m
2
・間隙空間:基盤から20cm離隔した位置から基盤の主面を目視で観察した場合に基盤の反対側(目視側とは反対側)にある物は見えるほどの相対的に大きい間隙空間サイズ。ふるい試験法による間隙空間の最大サイズ:4.0mm程度(以下の≪間隙空間のサイズの確認試験》参照)
・固定具:
図9に示す固定具400を使用
【0113】
(試験結果)
据え置いてからある程度時間が経過した後に、その海底を観察した。
図25〜
図28に観察写真を示す(
図25・
図26(PP樹脂):据置きから約4ヶ月後、
図27・
図28(海水分解性樹脂):据置きから約1年後)。それらの写真から分かるように、実海域においても、大型藻類が成長を通じて海底に直接的に固着することができ、本発明における立体網状繊材集合体が移植補助の効果を奏することを確認できた。換言すれば、本発明の移植補助材を用いると大型藻類の海底への直接的な活着が為され、より自然な形態で海藻移植を実施できることが分かった。
【0114】
なお、
図25および
図26は、立体網状繊材集合体の繊材材質が「ポリプロピレン樹脂」である一方、
図27および
図28は「海水分解性樹脂」である。
図27および
図28の写真から分かるように、海底に据え付けられた移植補助材が自然分解し、消失することが確認できた。よって、海水分解性の移植補助材の場合では、移植補助材が自然分解に起因して消滅する点においても、より自然な形態で海藻移植を実施できることが分かった。