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特開2020-127390ヘプシジン発現抑制剤、並びに鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-127390(P2020-127390A)
(43)【公開日】2020年8月27日
(54)【発明の名称】ヘプシジン発現抑制剤、並びに鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20200731BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20200731BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20200731BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200731BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20200731BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20200731BHJP
【FI】
   A23L33/105
   A61K36/87ZNA
   A61P7/06
   A61P43/00 111
   C07K14/575
   C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-22412(P2019-22412)
(22)【出願日】2019年2月12日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000002196
【氏名又は名称】サッポロホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】平田 拓
(72)【発明者】
【氏名】榊原 正英
【テーマコード(参考)】
4B018
4B063
4C088
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB04
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018MD48
4B018MD52
4B018ME14
4B018MF01
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR77
4B063QS25
4C088AB56
4C088AC04
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA55
4C088ZC03
4H045BA18
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA01
4H045EA20
(57)【要約】
【課題】廃棄物を有効に利用した新規なヘプシジン発現抑制剤を提供すること。
【解決手段】ブドウの種子及び/又は果皮の抽出物を有効成分として含む、ヘプシジン発現抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウの種子及び/又は果皮の抽出物を有効成分として含む、ヘプシジン発現抑制剤。
【請求項2】
前記抽出物が、水抽出物又はアルコール抽出物である、請求項1に記載のヘプシジン発現抑制剤。
【請求項3】
前記抽出物が、低級アルコール抽出物である、請求項1に記載のヘプシジン発現抑制剤。
【請求項4】
ブドウの種子及び/又は果皮の抽出物を有効成分として含む、鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品。
【請求項5】
前記抽出物が、水抽出物又はアルコール抽出物である、請求項4に記載の鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品。
【請求項6】
前記抽出物が、低級アルコール抽出物である、請求項4に記載の鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘプシジン発現抑制剤、並びに鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄は赤血球の構成因子であるヘモグロビンの原料であり、酸素運搬を始めとして人体にとって非常に重要な元素である。貧血には様々な原因があるが、最も多いのが鉄欠乏性貧血である。市場には鉄を補給するためのサプリ、飲料等がある。
【0003】
生体内の鉄代謝は閉鎖系と呼ばれ、ほとんどが循環及び再利用を繰り返している。体内の総鉄量は3000〜4000mgと言われ、その7割が造血のためのサイクルに組み込まれている。骨髄で作られた赤血球は体内を巡り酸素を運搬する。老化した赤血球はマクロファージに貪食されて細胞内に貯蔵される。そして取り込まれた細胞から鉄トランスポーターであるフェロポーチンを介して細胞外に輸送され、骨髄へと戻っていく。
【0004】
近年、鉄代謝の制御ホルモンとしてヘプシジンが発見された。ヘプシジンは、鉄トランスポーターを抑制することで細胞からの鉄の輸送を制御するものである。肝臓で合成及び分泌されたペプチドホルモンであるヘプシジンは、フェロポーチンと結合してリソソームにおける分解を誘導することで鉄代謝を制御する。
【0005】
ヘプシジンを抑制することで細胞からの鉄輸送量が増え、造血サイクルが活性化することが期待される。鉄のほとんどは閉鎖系で賄われている一方、発汗及び出血等により微量に消失する。食品から腸管を介して吸収される鉄の量は1日に1〜2mgと、体内総鉄量と比べてごく僅かである。したがって、貧血の改善には、鉄の補給だけでなく、生体内での利用性を向上させることが重要である。
【0006】
ミリセチンを投与されたネズミにおいて、肝臓でのヘプシジン発現が抑制され、かつ血清中鉄濃度の上昇が見られたことが報告されている(非特許文献1及び2)。
【0007】
特許文献1には、カテキン類を有効成分とする高負荷運動者用血中鉄増加剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017−43548号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Mu et al., Journal ofNutritional Biochemistry, 2016, Vol.30, p53-61
【非特許文献2】Mu et al., British Journal ofNutrition, 2014, Vol.111, p1181-1189
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、血中鉄増加剤が、高負荷運動者に対してのみ効果があり、高負荷運動を行わない人に対しては効果がなかったことが示されている。このように、運動量が通常から低度の人に対しても有効な貧血改善及び予防剤は得られていない。
【0011】
ところで、ワインの製造では、通常、ブドウ種子は廃棄されるが、本発明者らの検討により、ブドウ種子のアルコール抽出物がヘプシジンの発現を抑制することが見いだされた。
【0012】
本発明は、廃棄物を有効に利用した新規なヘプシジン発現抑制剤、並びに鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ブドウの種子及び/又は果皮の抽出物を有効成分として含む、ヘプシジン発現抑制剤を提供する。
【0014】
ブドウの種子及び果皮は、ワイン製造等において、通常廃棄されるため、本発明は、廃棄物を有効に利用したものである。また、本発明は、ブドウの種子及び/果皮の抽出物を有効成分として含むため、新規なヘプシジン発現抑制剤として有用である。
【0015】
上記ヘプシジン発現抑制剤において、上記抽出物は、水抽出物又はアルコール抽出物であることが好ましく、低級アルコール抽出物であることがより好ましい。この場合、より高いヘプシジン発現抑制効果が発揮されることとなる。
【0016】
本発明はまた、ブドウの種子及び/又は果皮の抽出物を有効成分として含む、鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品を提供する。
【0017】
上記鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品において、上記抽出物は、水抽出物又はアルコール抽出物であることが好ましく、低級アルコール抽出物であることがより好ましい。この場合、より高い鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防効果が発揮されることとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、廃棄物を有効に利用した新規なヘプシジン発現抑制剤、並びに鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ブドウの果皮又は種子の水抽出物によるヘプシジン相対発現量を示すグラフである。
図2】ブドウの果皮又は種子のエタノール抽出物によるヘプシジン相対発現量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明に係るヘプシジン発現抑制剤の一態様は、ブドウの種子及び/又は果皮の抽出物を有効成分として含む。
【0022】
ブドウは、白ブドウであってもよく、赤ブドウであってもよい。ブドウの品種としては、例えば、ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)種、ヴィティス・ラブルスカ(Vitis labrusca)種、ヴィティス・ダヴィディ(Vitis davidii)種、及びこれらのブドウの交雑種が挙げられる。具体的には、例えば、シャルドネ(Chardonnay)、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)、セミヨン(Semillon)、サンテミリオン(Saint Emilion)、リースリング(Riesling)、甲州、マスカット(Muscat)、シェナン・ブラン(Chenin Blanc)、シルヴァネール(Sylvaner)、ゲヴュルツトラミネール(Gewurztraminer)、シルヴァーナー(Silvarner)、ミュラー・トゥルガウ(Muller-Thurgau)、ケルナー(Kerner)、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、メルロー(Merlot)、カベルネ・フラン(Cabernet Franc)、マルベック(Malbec)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)、ガメ(Gamey)、シラー(Syrah)、グルナッシュ(Grenashe)、ツバイゲルトレーベ(Zweigeltrebe)、サンジョベーゼ(Sangiovese)、テンプラニーリョ(Tempranillo)、ネッビオーロ(Nebbiolo)、マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)、巨峰が挙げられる。ブドウの品種は、ケルナー種であることが好ましい。
【0023】
ブドウの種子及び/果皮の抽出物は、ブドウを抽出溶媒により抽出して製造されるものである。抽出溶媒としては、水系溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール、が挙げられる。抽出溶媒は、水及び/又はアルコールを含む溶媒であってよく、水及び/又はアルコールからなる溶媒であってもよい。ブドウの種子及び/又は果皮の抽出物は、水からなる抽出溶媒により抽出して製造される水抽出物、又はアルコールからなる抽出溶媒により抽出して製造されるアルコール抽出物であることが好ましい。
【0024】
アルコールは、低級アルコールであってよい。低級アルコールとは、炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルコールを意味する。低級アルコールの具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、等が挙げられる。好ましい低級アルコールはメタノール又はエタノールであり、より好ましい低級アルコールはエタノールである。すなわち、上記アルコール抽出物は、低級アルコール抽出物であることが好ましく、メタノール抽出物又はエタノール抽出物であることがより好ましく、エタノール抽出物であることが更に好ましい。アルコール抽出物は、1種単独のアルコールによる抽出物であってもよく、2種以上のアルコールによる抽出物であってもよい。
【0025】
ブドウ種子及び/又は果皮の抽出物は、例えば、後述する実施例に記載の方法により製造することができる。具体的には、ブドウの種子及び/又は果皮を上述した抽出溶媒に浸漬させ、得られた液をろ紙等を用いて濾過し、必要に応じて、透析膜を用いた透析処理、溶媒の除去等を行うことにより製造することができる。ブドウの種子及び果皮は、一部又は全部を粉末化した後、抽出溶媒に浸漬させてもよい。抽出溶媒の使用量は、例えば、ブドウの種子及び果皮の合計10gあたり、20〜200mlであってよく、75〜150mlであってよい。浸漬させる際の温度(浸漬温度)は、常温(5〜35℃)であってよい。浸漬させる時間(上記浸漬温度に保持する時間)は、0.5時間以上、又は1時間以上であってよく、10時間以下、又は5時間以下であってよい。溶媒の除去は、凍結乾燥、溶媒留去等により行ってよい。
【0026】
本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤における、有効成分としてのブドウの種子及び/又は果皮の抽出物の含有量は、例えば1質量%以上であってよく、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、50質量%以上であってよい。本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤における、有効成分としてのブドウの種子及び/又は果皮の抽出物の含有量は、例えば100質量%以下であってよく、95質量%以下であってよい。
【0027】
本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤は、上記有効成分を含有するため、当該ヘプシジン発現抑制剤を摂取することにより、ヘプシジンの発現を抑制することができる。ヘプシジンの発現を抑制する結果、細胞からの鉄輸送量が増え、血中の鉄量を増加させることができ、鉄欠乏性貧血を改善又は予防することができる。鉄欠乏性貧血とは、鉄不足を原因とする貧血である。鉄欠乏性貧血の改善とは、具体的には、血液中の赤血球、ヘモグロビン、及び/又は鉄の濃度を上昇させることをいう。鉄欠乏性貧血の予防とは、具体的には、血液中の赤血球、ヘモグロビン、及び/又は鉄の濃度を適切な範囲に保ち、その低下を防ぐことをいう。
【0028】
本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、放出制御製剤の形態をとることもできる。本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤は、上述の有効成分のみからなるものであってもよい。
【0029】
本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤は、ヒトに投与(摂取)されても、非ヒト哺乳動物に投与されてもよい。本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤の投与量(摂取量)は、上述の有効成分としてのブドウの種子及び/又は果皮の抽出物を基準として、1日あたり例えば10mg〜1000mgであってよく、20〜1000mgであってよく、50〜500mgであってよい。
【0030】
本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤は、経口投与されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。ヘプシジン発現抑制剤は、1日あたりの投与量が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【0031】
上記各種製剤は、上述の有効成分と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)とを混和することによって調製することができる。
【0032】
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤は、医薬品、医薬部外品、食品組成物、食品添加物、飼料、飼料添加物等の製品の成分として使用することができる。本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤からなる、又は本実施形態に係るヘプシジン発現抑制剤を含む上記製品は、ヘプシジン発現抑制用であってよい。上記製品には、鉄欠乏性貧血を改善及び予防する旨、鉄の利用を改善する、赤血球、ヘモグロビン及び/又は鉄の濃度を上昇させる、からだのだるさが続いたあなたに、階段を上ったときに動悸がするあなたに、息がはげしくなったあなたに等の表示が付されていてもよい。
【0034】
本発明はまた、ブドウの種子及び/又は果皮の抽出物を有効成分として含む、鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品を提供する。有効成分の態様の詳細は上記ヘプシジン発現抑制剤の場合と同様である。
【0035】
本実施形態に係る鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品は、上記有効成分を含んでいるため、当該飲食品を摂取することにより、ヘプシジン発現が抑制され、細胞からの鉄輸送量が増え、血中の赤血球、ヘモグロビン及び/又は鉄の量を増加させることができ、鉄欠乏性貧血を改善又は予防することができる。
【0036】
本実施形態に係る鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品の摂取量は、上記有効成分としてのブドウの種子及び/又は果皮の抽出物を基準として、1日あたり例えば10mg〜1000mgであってよく、20〜1000mgであってよく、50〜500mgであってよい。
【0037】
飲食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類、飲料等が挙げられる。飲料としては例えば、水、清涼飲料水、茶飲料、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。また、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品等における関与成分として使用することもできる。
【0038】
本実施形態に係る鉄欠乏性貧血改善及び/又は改善用飲食品における、上記有効成分としてのブドウの種子及び/又は果皮の抽出物の含有量は、例えば1質量%以上であってよく、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、50質量%以上であってよい。本実施形態に係る鉄欠乏性貧血改善及び/又は予防用飲食品における、有効成分としてのブドウの種子及び/又は果皮の抽出物の含有量は、例えば100質量%以下であってよく、95質量%以下であってよく、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0040】
<1.各種素材の水抽出物の調製>
[1−1.白ブドウの果皮の水抽出物の調製]
白ブドウ(北海道産ケルナー種)の搾汁滓から得られた果皮を粉末化した。次に、常温の水100mlに、粉末状の白ブドウの果皮10gを浸漬させ、2時間保持することにより抽出を行った。得られた液をろ紙でろ過して、ろ液を透析膜(スペクトルポア社(MW1,400))を用いて透析処理した。透析処理後の液を凍結乾燥して、溶媒を除去することにより、白ブドウの果皮の水抽出物を得た。
【0041】
[1−2.白ブドウの種子の水抽出物の調製]
抽出を行う素材として、白ブドウ(北海道産ケルナー種)の搾汁滓から得られた種子を用いたこと以外は、上記1−1と同様の手順で、白ブドウの種子の水抽出物を調製した。
【0042】
[1−3.赤ブドウの果皮の水抽出物の調製]
抽出を行う素材として、赤ブドウ(北海道産ツバイゲルトレーベ種)の搾汁滓から得られた果皮を用いたこと以外は、上記1−1と同様の手順で、赤ブドウの果皮の水抽出物を調製した。
【0043】
[1−4.赤ブドウの種子の水抽出物の調製]
抽出を行う素材として、赤ブドウ(北海道産ツバイゲルトレーベ種)の種子を用いたこと以外は、上記1−1と同様の手順で、赤ブドウの種子の水抽出物を調製した。
【0044】
<2.各種素材のエタノール抽出物の調製>
[2−1.白ブドウの種子のエタノール抽出物の調製]
白ブドウ(北海道産ケルナー種)の搾汁滓から得られた種子を粉末化した。次に、常温のエタノール100mlに、粉末状の白ブドウの種子10gを浸漬させ、2時間保持することにより抽出を行った。得られた液をろ紙でろ過した後、溶媒留去を行うことにより、白ブドウの種子のエタノール抽出物を得た。
【0045】
<3.ヘプシジン発現抑制作用の評価>
(細胞培養)
HepG2細胞(Riken BRC)をDMEM+10%FBS培地中、37℃、5%COインキュベーター内で培養した。ヘプシジン発現試験では、48ウェルプレートに播種したHepG2細胞を用いた。セミコンフルエント状態になった段階で、DMEM−FBS培地に交換し、IL−6及び被験物質を添加した。DMEM−FBS培地におけるIL−6の最終濃度は、100ppbとした。DMEM−FBS培地における水抽出物の最終濃度は100 (μg/mL)、DMEM−FBS培地におけるエタノール抽出物の最終濃度は20(μg/mL)とした。その後COインキュベーター内で24時間培養し、細胞からRNAを抽出して発現解析に供した。予備試験としてHepG2細胞にIL−6を添加したところ、濃度依存的にヘプシジン発現の誘導が確認された。
【0046】
(RNA抽出、リアルタイムPCR)
サンプル添加及び培養後の細胞を滅菌PBSで2回洗浄し、0.25mLのTrizol試薬を添加後、ボルテックスミキサーを用いて攪拌した。細胞に0.05mLのクロロホルムを添加し、分配後に上清を新しいチューブに移し、等量のイソプロパノールの添加によってRNAを沈殿させた。遠心分離(20,000g、5分)して沈殿を得、沈殿を70%エタノール溶液で洗浄した後、風乾した。乾燥後のRNAを0.1mL RNaseフリー水で溶解し、さらに0.25mLのエタノール、0.01mLの3M NaOAcを添加してRNAを沈殿させた。沈殿したRNAを回収後に、滅菌蒸留水に再溶解して総RNAの吸光度を測定して、濃度及び純度を確認した。
【0047】
QuantiTect Reverse Transcription kitを用いてcDNAを合成した。これをLightCycler480SYBR Green I Master及び遺伝子特異的プライマーセットを用いて、相対定量法によりmRNA発現量を評価した。各遺伝子の特異的プライマー配列は以下のとおりである。
hHepcidin_F:
TTTCCCACAACAGACGGGACAACT(配列番号1)
hHepcidin_R:
GGGCAGCAGGAATAAATAAGGAAGGG(配列番号2)
hActb_F:
AGGATGCAGAAGGAGATCACTG(配列番号3)
hActb_R:
GGGTGTAACGCAACTAAGTCATAG(配列番号4)
【0048】
本試験で用いた試薬及び細胞の詳細は以下のとおりである。
インターロイキン−6(IL−6、Sigma Aldrich、I1395−10UG)、Trizol試薬(invitorgen)、QuantiTect Reverse Transcription kit (Qiagen)、LightCycler 480 SYBR Green I Master(Roche)
【0049】
以下に示す果汁1〜3を準備した。果汁1〜3を用いて、[1−1.白ブドウの果皮の水抽出物の調製]に記載の方法と同様の方法で、水抽出処理及び乾固操作を行った。得られた果汁1〜3それぞれの水抽出物を比較用の被験物質として用いた。比較用の被験物質は、DMEM−FBS培地における最終濃度が、100(μg/mL)となるように添加した。
果汁1:高ポリフェノール白濃縮果汁
果汁2:通常白濃縮果汁
果汁3:高ポリフェノール赤濃縮果汁
【0050】
結果を図1及び図2に示す。ヘプシジン発現量は対照として、抽出溶媒(エタノール又は水)の添加区における発現量を1.0とした相対値である。
【0051】
図1は、ブドウの果皮、ブドウの種子、又は果汁の水抽出物によるヘプシジン相対発現量を示す。図1中、横軸における1〜8は、以下の果皮若しくは種子の水抽出物又は果汁を示す。なお、ブドウの果皮又はブドウの種子の水抽出物は、抽出溶媒である水を除去して乾固させた抽出物を、適切な濃度となるように水に再溶解してから、細胞に添加した。果汁の水抽出物も同様に、抽出、溶媒留去及び再溶解の後、細胞に添加した。
1:コントロール(抽出溶媒の添加区)
2:白ブドウの果皮
3:白ブドウの種子
4:赤ブドウの果皮
5:赤ブドウの種子
6:果汁1(高ポリフェノール白濃縮果汁)(ポリフェノール含量3150mg/kg)
7:果汁2(通常白濃縮果汁)(ソーヴィニヨン・ブラン種、ポリフェノール含量128mg/kg)
8:果汁3(高ポリフェノール赤濃縮果汁)(カベルネ・ソーヴィニヨン種主体、ポリフェノール含量11300mg/kg)
【0052】
図2は、白ブドウの種子のエタノール抽出物によるヘプシジン相対発現量を示す。図2中、横軸における1は、コントロール(ジメチルスルホキシドの添加区)を示し、横軸における2は、白ブドウの種子のエタノール抽出物を示す。なお、エタノール抽出物は、溶媒留去したのち、適切な濃度となるように少量のジメチルスルホキシド(DMSO)に再溶解し、細胞に添加した。
【0053】
ブドウの種子又は果皮の抽出物において、高いヘプシジン発現抑制作用が確認された。
図1
図2
【配列表】
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