【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0040】
<1.各種素材の水抽出物の調製>
[1−1.白ブドウの果皮の水抽出物の調製]
白ブドウ(北海道産ケルナー種)の搾汁滓から得られた果皮を粉末化した。次に、常温の水100mlに、粉末状の白ブドウの果皮10gを浸漬させ、2時間保持することにより抽出を行った。得られた液をろ紙でろ過して、ろ液を透析膜(スペクトルポア社(MW1,400))を用いて透析処理した。透析処理後の液を凍結乾燥して、溶媒を除去することにより、白ブドウの果皮の水抽出物を得た。
【0041】
[1−2.白ブドウの種子の水抽出物の調製]
抽出を行う素材として、白ブドウ(北海道産ケルナー種)の搾汁滓から得られた種子を用いたこと以外は、上記1−1と同様の手順で、白ブドウの種子の水抽出物を調製した。
【0042】
[1−3.赤ブドウの果皮の水抽出物の調製]
抽出を行う素材として、赤ブドウ(北海道産ツバイゲルトレーベ種)の搾汁滓から得られた果皮を用いたこと以外は、上記1−1と同様の手順で、赤ブドウの果皮の水抽出物を調製した。
【0043】
[1−4.赤ブドウの種子の水抽出物の調製]
抽出を行う素材として、赤ブドウ(北海道産ツバイゲルトレーベ種)の種子を用いたこと以外は、上記1−1と同様の手順で、赤ブドウの種子の水抽出物を調製した。
【0044】
<2.各種素材のエタノール抽出物の調製>
[2−1.白ブドウの種子のエタノール抽出物の調製]
白ブドウ(北海道産ケルナー種)の搾汁滓から得られた種子を粉末化した。次に、常温のエタノール100mlに、粉末状の白ブドウの種子10gを浸漬させ、2時間保持することにより抽出を行った。得られた液をろ紙でろ過した後、溶媒留去を行うことにより、白ブドウの種子のエタノール抽出物を得た。
【0045】
<3.ヘプシジン発現抑制作用の評価>
(細胞培養)
HepG2細胞(Riken BRC)をDMEM+10%FBS培地中、37℃、5%CO
2インキュベーター内で培養した。ヘプシジン発現試験では、48ウェルプレートに播種したHepG2細胞を用いた。セミコンフルエント状態になった段階で、DMEM−FBS培地に交換し、IL−6及び被験物質を添加した。DMEM−FBS培地におけるIL−6の最終濃度は、100ppbとした。DMEM−FBS培地における水抽出物の最終濃度は100 (μg/mL)、DMEM−FBS培地におけるエタノール抽出物の最終濃度は20(μg/mL)とした。その後CO
2インキュベーター内で24時間培養し、細胞からRNAを抽出して発現解析に供した。予備試験としてHepG2細胞にIL−6を添加したところ、濃度依存的にヘプシジン発現の誘導が確認された。
【0046】
(RNA抽出、リアルタイムPCR)
サンプル添加及び培養後の細胞を滅菌PBSで2回洗浄し、0.25mLのTrizol試薬を添加後、ボルテックスミキサーを用いて攪拌した。細胞に0.05mLのクロロホルムを添加し、分配後に上清を新しいチューブに移し、等量のイソプロパノールの添加によってRNAを沈殿させた。遠心分離(20,000g、5分)して沈殿を得、沈殿を70%エタノール溶液で洗浄した後、風乾した。乾燥後のRNAを0.1mL RNaseフリー水で溶解し、さらに0.25mLのエタノール、0.01mLの3M NaOAcを添加してRNAを沈殿させた。沈殿したRNAを回収後に、滅菌蒸留水に再溶解して総RNAの吸光度を測定して、濃度及び純度を確認した。
【0047】
QuantiTect Reverse Transcription kitを用いてcDNAを合成した。これをLightCycler480SYBR Green I Master及び遺伝子特異的プライマーセットを用いて、相対定量法によりmRNA発現量を評価した。各遺伝子の特異的プライマー配列は以下のとおりである。
hHepcidin_F:
TTTCCCACAACAGACGGGACAACT(配列番号1)
hHepcidin_R:
GGGCAGCAGGAATAAATAAGGAAGGG(配列番号2)
hActb_F:
AGGATGCAGAAGGAGATCACTG(配列番号3)
hActb_R:
GGGTGTAACGCAACTAAGTCATAG(配列番号4)
【0048】
本試験で用いた試薬及び細胞の詳細は以下のとおりである。
インターロイキン−6(IL−6、Sigma Aldrich、I1395−10UG)、Trizol試薬(invitorgen)、QuantiTect Reverse Transcription kit (Qiagen)、LightCycler 480 SYBR Green I Master(Roche)
【0049】
以下に示す果汁1〜3を準備した。果汁1〜3を用いて、[1−1.白ブドウの果皮の水抽出物の調製]に記載の方法と同様の方法で、水抽出処理及び乾固操作を行った。得られた果汁1〜3それぞれの水抽出物を比較用の被験物質として用いた。比較用の被験物質は、DMEM−FBS培地における最終濃度が、100(μg/mL)となるように添加した。
果汁1:高ポリフェノール白濃縮果汁
果汁2:通常白濃縮果汁
果汁3:高ポリフェノール赤濃縮果汁
【0050】
結果を
図1及び
図2に示す。ヘプシジン発現量は対照として、抽出溶媒(エタノール又は水)の添加区における発現量を1.0とした相対値である。
【0051】
図1は、ブドウの果皮、ブドウの種子、又は果汁の水抽出物によるヘプシジン相対発現量を示す。
図1中、横軸における1〜8は、以下の果皮若しくは種子の水抽出物又は果汁を示す。なお、ブドウの果皮又はブドウの種子の水抽出物は、抽出溶媒である水を除去して乾固させた抽出物を、適切な濃度となるように水に再溶解してから、細胞に添加した。果汁の水抽出物も同様に、抽出、溶媒留去及び再溶解の後、細胞に添加した。
1:コントロール(抽出溶媒の添加区)
2:白ブドウの果皮
3:白ブドウの種子
4:赤ブドウの果皮
5:赤ブドウの種子
6:果汁1(高ポリフェノール白濃縮果汁)(ポリフェノール含量3150mg/kg)
7:果汁2(通常白濃縮果汁)(ソーヴィニヨン・ブラン種、ポリフェノール含量128mg/kg)
8:果汁3(高ポリフェノール赤濃縮果汁)(カベルネ・ソーヴィニヨン種主体、ポリフェノール含量11300mg/kg)
【0052】
図2は、白ブドウの種子のエタノール抽出物によるヘプシジン相対発現量を示す。
図2中、横軸における1は、コントロール(ジメチルスルホキシドの添加区)を示し、横軸における2は、白ブドウの種子のエタノール抽出物を示す。なお、エタノール抽出物は、溶媒留去したのち、適切な濃度となるように少量のジメチルスルホキシド(DMSO)に再溶解し、細胞に添加した。
【0053】
ブドウの種子又は果皮の抽出物において、高いヘプシジン発現抑制作用が確認された。