【解決手段】内部にアワビAを収容した状態で成育を行うアワビ用成育容器32であって、内外で通水性を有し、上部に開口部が形成された容器本体321と、前記容器本体321の開口部に対して着脱可能に設けられ、下面に平坦面を有する蓋322と、前記蓋322に設けられた板状体であって、前記容器本体321に前記蓋322を装着した際に下方に延び、下端が前記容器本体321の底面に略当接するシェルター3222,3223と、を備える。
【背景技術】
【0002】
日本の水産養殖事業のうち海上での水産養殖事業は、漁業者の高齢化、後継者不足、消費者の「魚離れ」、海洋環境の変化等が原因で生産量が低下している。そのうち特に海洋環境の変化に関しては、地球温暖化による海水温上昇、大気中の二酸化炭素濃度上昇の影響を受けた海水の酸性化、海洋汚染が挙げられ、これらの原因により、従来漁獲できていた魚種が入手困難な状況となってきている。このような状況から、海洋環境に影響されずに所望の魚種を生産可能な、陸上に配置される魚介類養殖システムが提案されている。
【0003】
このような陸上での魚介類養殖システムのうち、養殖対象がアワビである技術として、水槽の底部に山型波状のシェルターを平置きした構成が存在する。このシェルターにアワビを付着させるととともに、シェルターの表面に飼料を撒くことで給餌を行う。アワビは明るい場所を嫌うことから、昼間はアワビがシェルターの裏側に回り込み、夜間はアワビがシェルターの表側に出てきて飼料を食べる。このようにシェルターを平置きした構成では、水槽の底面積分しかアワビを収容できない。このため、単位面積当たりでの高収量化が困難であった。
【0004】
高収量化のため、特許文献1では、側面にもアワビが付着できる、縦断面形状が「コ」の字状のシェルターが提案されている。また、特許文献2では、複数の山型波状のシェルターを成育容器内に縦置きすることが提案されている。
【0005】
なお、高収量化のため、成育容器を上下に積み重ねることが考えられる。この場合、各成育容器には蓋が必要になる。
【0006】
ここで、アワビの種類によっては、成育容器の蓋の下面に上下逆さに張り付く習性を持つものがある。ちなみにこの習性は、例えばエゾアワビについて顕著であるとの知見を本願の発明者が得ている。このような習性から、特許文献1に記載のシェルターを用いる場合、また、特許文献2に記載のシェルターを用いる場合において、成育容器の蓋の下面との間に隙間が確保され、蓋の下面にアワビが張り付いていても蓋を閉じられるように構成されていたと考えられる。
【0007】
ところが、このようにシェルターと蓋の下面との間に隙間があると、基本的にアワビは平面(二次元)方向にしか移動できないことから、蓋に張り付いたアワビはシェルターに直接移動することが困難である。このため、蓋に張り付いたアワビは成育容器の側面を移動していくことになり、移動経路としてシェルターが役立ちにくい。よって、前記習性のあるアワビを養殖する場合には、成育容器内にシェルターを設けたとしても、シェルターの有用性が十分に発揮されず、その結果、高収量化が達成されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、高収量とできるアワビ用成育容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内部にアワビを収容した状態で成育を行うアワビ用成育容器であって、内外で通水性を有し、上部に開口部が形成された容器本体と、前記容器本体の開口部に対して着脱可能に設けられ、下面に平坦面を有する蓋と、前記蓋に設けられた板状体であって、前記容器本体に前記蓋を装着した際に下方に延び、下端が前記容器本体の底面に略当接するシェルターと、を備えるアワビ用成育容器である。
【0011】
この構成によれば、シェルターが蓋から容器本体の底面にまで至るように設けられている。このため、成育容器内のアワビの移動経路として、シェルターを十分に役立てることができ、アワビの移動の自由度が高くなる。
【0012】
そして本発明にて、前記シェルターの下部または側部が軟質材料から形成されることもできる。
【0013】
この構成によれば、容器本体の底面または内側面にアワビが張り付いた状態であっても、軟質材料から形成されたシェルターの下部または側部が変形することにより、張り付いているアワビを移動させることなく、容器本体に蓋を装着できる。
【0014】
そして本発明にて、前記容器本体のうち、前記容器本体に前記蓋を装着した際に前記シェルターに略当接する部分が軟質材料から形成されることもできる。
【0015】
この構成によれば、容器本体の底面または内側面にアワビが張り付いた状態であっても、軟質材料から形成された容器本体の一部が変形することにより、張り付いているアワビを移動させることなく、容器本体に蓋を装着できる。
【0016】
そして本発明にて、前記シェルターは、厚さ方向に貫通した通路空間部を備えることもできる。
【0017】
この構成によれば、アワビが通路空間部を通ることでシェルターを通り抜けて移動できる。このため、シェルターがアワビの移動を阻害しない。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、成育容器内のアワビの移動経路として、シェルターを十分に役立てることができ、アワビの移動の自由度が高くなる。そして、シェルターを設けた分、アワビの収容量を増やすことができる。よって、高収量とできるアワビ用成育容器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
−概要−
本発明につき一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。本実施形態の養殖システム1は、市場での付加価値が高いアワビ(具体的にはエゾアワビ)の陸上養殖に用いられるものであって、
図1及び
図2に示すように、コンテナ2内に複数の成育水槽3〜3を備えており、稚貝を槽内で出荷可能な大きさまで成育させる。複数の成育水槽の各々(以下「各成育水槽」と記載)3は、例えば鋼製の架台22により支持されている。
【0021】
−コンテナ−
コンテナ2は、保温機能を有し、少なくとも長手方向の一端に出入口21を有するコンテナ2である。このコンテナ2は養殖システム1の外壁を構成し、
図3に示すように(濾過水槽4の図示を省略)、外部雰囲気から内部環境を隔絶しており、図示のように直射日光の影響も受けにくくされている。保温機能を有するコンテナ2により、養殖システム1が設置された位置における外部環境(特に外気温)の影響を受けにくく、コンテナ2内部にアワビを成育するための安定的な環境を形成できる。
【0022】
成育水の水温をアワビの成育に適した温度とするため、
図1〜
図3に示すように、コンテナ2の内壁には、コンテナ2の内部における空気の温度調整を行う空調装置6が取り付けられている。
【0023】
コンテナ2は、新規に製造することもできるが、例えば、陸上輸送用または海上輸送用の輸送用コンテナ(特に冷凍コンテナまたは冷蔵コンテナ)の廃品を転用すれば、コンテナ2の製造コストを削減できるため好ましい。輸送用コンテナを転用する場合、例えば20フィート型コンテナや40フィート型コンテナ等の細長い形状(外部から出入口21に正対した場合の幅方向に比べて奥行方向が長い形状)のコンテナを用いることができる。なお、他形状のコンテナを用いてもよい。また、保温機能を有しないコンテナ(例えば市販のプレハブ式物置等)の外壁に保温材を取り付ける改造を行って用いてもよい。出入口21については、輸送用コンテナにおいて荷物の出し入れのために設けられていた一端側の出入口(開口部及び開閉可能な扉)をそのまま、または、作業者の出入りや成育容器32等の出し入れに都合のいい形態に改造した上で利用する。
【0024】
−成育水槽−
複数(本実施形態では4槽)の成育水槽3〜3は、
図1に示すように、コンテナ2の長手方向に沿って延びると共に、コンテナ2の幅方向に分かれて配置されている。複数の成育水槽3〜3はコンテナ2内に平行に配置されている。複数の成育水槽3〜3のうち、幅方向(左右方向)の一方にある槽と他方にある槽はいずれも共通の濾過水槽4につながっているため、成育のための水(以下「成育水」と記載)の循環経路は幅方向に完全分離されてはいない。このため、水温や溶存酸素濃度を複数の成育水槽3〜3で均一とできるため、コンテナ2内におけるアワビの成育環境を均一化できる。成育水としては、例えば人工海水を用いることが、水質管理を容易にできるため好ましい。
【0025】
コンテナ2が幅方向に分かれて配置されたことにより、コンテナ2内における複数の成育水槽3〜3の間には、出入口21に面した作業通路5が形成される。コンテナ2の幅方向中央の床面が、出入口21からコンテナ2の長手方向に延びる作業通路5となる。この作業通路5により、作業者が複数の成育水槽3〜3へアクセスすることが容易である。作業通路5は、各種作業に用いる台車やメンテナンスのための機器が通ることのできる幅を有するように形成されることが好ましい。
【0026】
本実施形態では、複数の成育水槽3〜3が幅方向に配置されると共に上下にも積層して配置されている。この配置により、作業者が各成育水槽3へアクセスすることが容易である状態を保ちつつ、コンテナ2内での成育可能な領域を増加させられるので高収量を実現できる。
【0027】
また、複数の成育水槽3〜3のうち、下側に位置する成育水槽3の出入口21から離れた側には、成育水に混じった浮遊物を除去するための泡沫分離装置34が設けられている。
【0028】
各成育水槽3の底部には、
図3に示すようにエアレーション配管81が設けられている。エアレーション配管81には、空気を通す貫通孔が多数、例えば上方に開口するように設けられている。エアレーションポンプ82から供給された空気を、エアレーション配管81の貫通孔から気泡として各成育水槽3内の成育水に放出することで、アワビの生存に必要な酸素を成育水に溶かすことができる。
【0029】
−濾過水槽−
コンテナ2内には、成育水を導入して浄化できるよう前記複数の成育水槽3〜3に対して接続された濾過水槽4が設けられる。本実施形態では上下に2槽の濾過水槽4,4が設けられている。ただしこれに限定されず、濾過水槽4を1槽だけ設けることもできる。ここで本実施形態における「浄化」とは、主に、成育水に含まれるアンモニアの無害化を行う処理である。ただし、この処理に限定されるものではない。各濾過水槽4は、出入口21から離れた側に、コンテナ2の幅方向に延びるように位置する。つまり、各濾過水槽4は、複数の成育水槽3〜3に対して直交するように配置されている。各濾過水槽4は、例えば鋼製の架台22により支持されている。
【0030】
2槽の濾過水槽4,4についても、成育水槽3と同様、上下に積層して配置されている。各濾過水槽4には、好気性のバクテリアを付着させた処理材が収容されている。この処理材に循環する成育水を触れさせることで、バクテリアの働きにより、排泄物に多く含まれておりアワビにとって有害なアンモニアを、亜硝酸を経由して硝酸塩に変化させることで無害化できる。各濾過水槽4には、前記処理材のほか、成育水中の固形物を沈殿したり(例えば沈殿槽を設ける)、成育水のpHを調整したり、成育水にミネラル分を供給したり、成育水を消毒するための物質または装置を配置することもできる。
【0031】
−成育領域−
各成育水槽3は、成育水が流通できる状態で複数の成育領域31〜31に分かれている。本実施形態における複数の成育領域31〜31は、当該複数の成育領域31〜31が所属する一つの成育水槽3に対して収納及び取り出し可能な複数の成育容器32〜32により構成される。各成育容器32の内部にアワビを収容した状態で成育が行われる。各成育水槽3を複数の成育領域31〜31に区画することにより、各成育領域31で給餌パターンを変える等して成育条件を変えることができる。また、成育に用いる成育領域31〜31の数量を増減させることができる。このため、成育管理や収量調整を容易に行うことができる。特に、各成育水槽3に対して収納及び取り出し可能な成育容器32を用いることで前述の事項を容易に実現できる。また、複数の成育領域31〜31が複数の成育容器32〜32により構成されるため、適切な数量の成育容器32〜32を各成育水槽3に対して収納してアワビの成育を行うことにより、収量管理を容易にできる。
【0032】
−成育容器−
各成育容器32には、側壁及び底壁に貫通孔3211(
図4に示すように飛び飛びに形成されていてもよいし、スリット状であってもよい)が形成された容器や、籠状の容器を用いることができ、例えば農産物の収穫用容器など、市場で容易に入手できる一般的な容器を用いることによりイニシャルコストを低減できる。特に、各成育容器32は各成育水槽3に収納した際には成育水に常時浸かることになるので、一定期間使用すると交換の必要性が出てくる。交換の際も、老朽化したものや損傷したものだけを交換できる。このように、一般的な容器を用いることによりランニングコストも低減できるメリットがある。このように成育容器32で成育領域31を構成することにより、前記複数の成育領域31〜31の数量や成育水槽3における配置位置を高い自由度で容易に設定できる。
【0033】
本実施形態における複数の成育容器32〜32は、
図2に示すように2段積みとされている。このため、本実施形態では、複数の成育領域31〜31は各成育水槽3内で立体的に区画される。
【0034】
本実施形態の各成育容器32は、
図4に示すように、容器本体321と蓋322とを備えている。この成育容器32は、各成育領域31において、容器本体321が下方に位置し、蓋322が上方に位置するように配置される。容器本体321は、多数の貫通孔3211によって内外で通水性を有し、上部に開口部3212が形成されている。成育水は例えば、
図4に矢印Fで示したように、後述するシェルター3222,3223に沿う方向に流れる。なお、矢印Fと逆方向であってもよい。
【0035】
ここで、成育に伴いアワビが出す排泄物はアワビ自身にとって有害である。アンモニアを含む排泄物をアワビが誤って摂取することで死に至ることがある。これに対処するため、本実施形態の各成育容器32は、容器本体321の側壁及び底壁に、排泄物を外部へと通す多数の貫通孔3211を有する。貫通孔3211により、アワビから排泄物を速やかに分離することができるので、アワビが死に至るリスクを軽減できる。なお、成育容器32の外部に出た排泄物は、清掃作業によって除去されたり、成育水槽3からそのまま、または成育水に溶けた状態で濾過水槽4に送られ、バクテリアによって無害化処理されたりする。本実施形態では市販の農産物の収穫用容器を成育容器32として利用している。このため、容器本体321の側壁及び底壁に多数の貫通孔3211を有している。ただしこれに限定されず、側壁または底壁のうちで、貫通孔3211を有さない部分があってもよい。
【0036】
蓋322は、容器本体321の開口部3212に対して着脱可能に設けられ、下面にアワビAが好む平坦面を有している。蓋322における蓋本体3221には、複数のシェルター3222,3223が設けられている。
【0037】
複数のシェルター3222,3223の各々は板状体である。各シェルター3222,3223の表面は平滑な面であってもよいし、微細な凹凸または貫通孔を形成することで粗面となっていてもよい。なお、凹凸または貫通孔は、表面に現れた寸法が大きいとアワビAに不快感を与えるため、不快感を与えない程度の大きさで形成することが好ましい。例えばシェルター3222,3223をコンクリートやレンガの薄板で形成することにより、表面に前記粗面を備えたものとできる。ただし、シェルター3222,3223の材質は限定されるものではなく、例えばシェルター3222,3223を樹脂で形成し、平滑である表面に対して多数の粒子を接着させることで前記粗面を形成することもできる。
【0038】
本実施形態のシェルターは、形状の異なる第1シェルター3222と第2シェルター3223から構成されている。第1シェルター3222は
図4及び
図8(c)に示すように、平面視で「凹」字形状とされており、第2シェルター3223は
図4及び
図8(a)に示すように、平面視で「凸」字形状とされている。各シェルター3222,3223は、蓋本体3221に対し、前記「凹」及び「凸」字形状が横倒しになるのではなく、そのまま上下方向となるように取り付けられている。
図4及び
図5(a)に示すように、第1シェルター3222と第2シェルター3223は交互に、平行に設けられている。複数のシェルター3222,3223の間隔は等間隔とされている。
【0039】
各シェルター3222,3223は、
図5(a)に示すように、容器本体321に蓋322を装着して容器本体321を閉じた際に下方に延びている。そして、各シェルター3222,3223の下端が容器本体321の底面に略当接する。なお、前記「略当接」とは、各シェルター3222,3223の下端が容器本体321の底面に完全に当接した状態に限られず、各シェルター3222,3223と容器本体321の底面との間でのアワビAの移動が阻害されない程度の隙間が空いている状態も含んでいる。
【0040】
このように、各シェルター3222,3223が蓋322から容器本体321の底面にまで至るように設けられている。このため、
図5(a)に示すように、成育容器32内のアワビAの移動経路として、各シェルター3222,3223を十分に役立てることができ、アワビAの移動の自由度が高くなるので有利である。また、成育容器32内のアワビAが各シェルター3222,3223に無理なく張り付く。よって、成育容器32内に各シェルター3222,3223を設けることで、成育容器32におけるアワビAの収容数を増加させることができる。従って、本実施形態の成育容器32では高収量化が達成できる。
【0041】
本実施形態のシェルター3222,3223は、
図5(b)に示すように、蓋本体3221に形成されたシェルター取付溝324に嵌め込み、接着されることで、蓋本体3221に一体に形成されている。ただしこれに限られず、蓋本体3221とシェルター3222,3223とが完全に一体で形成されていてもよい。なお、アワビAは揺れる部分を好まないことから、シェルター3222,3223は蓋本体3221に対して、成育水の流れによって揺れることのない程度に固着されていることが好ましい。
【0042】
板状体である各シェルター3222,3223における蓋本体3221に近い部分に、厚さ方向に貫通した通路空間部323を備える。平面視で「凹」字形状の第1シェルター3222では、幅方向の中央に1箇所ある切欠部分が通路空間部323aであり、平面視で「凸」字形状の第2シェルター3223では、幅方向の両側に2箇所ある切欠部分が通路空間部323bである。このように通路空間部323(323a,323b)を設けることで、蓋本体3221における下面(容器本体321に装着された状態での内面)に張り付いたアワビAが通路空間部323を通って、つまり、各シェルター3222,3223を通り抜け、蓋本体3221における下面において自由に移動できる。このため、各シェルター3222,3223がアワビAの移動を阻害せず、移動の自由が保たれるので、例えば容器本体321の底面上にある飼料までアワビAが移動していきやすい。また、複数設けられたシェルター3222,3223及び容器本体321の内側面を移動経路とできることから、移動経路が複数になる。このため、一つの移動経路上で複数のアワビAが「渋滞」することにより、飼料にたどりつけずに摂食不良となるアワビAを減らすことができる。
【0043】
また、第1シェルター3222の元であるシェルター材料板P1と、第2シェルター3223の元であるシェルター材料板P2とは、
図8(b)に示したように、1枚の板から切り出される。つまり、シェルター材料板P1,P2は、第1シェルター3222の通路空間部323aとなる部分に第2シェルター3223の一部が入り込むと共に、第2シェルター3223の通路空間部323aとなる部分に第1シェルター3222の一部が入り込むような1枚の板である。このように、シェルター材料板P1,P2が対になって切り出されることから、各シェルター3222,3223を製造する際、無駄なく板取りできることで、製造時の材料廃棄を最小限にできる。
【0044】
ここで、シェルター3222,3223の下部または側部が軟質材料から形成されていてもよい。
図6(a)に第2シェルター3223の下部及び側部に軟質材料から形成された変形可能部3224を設けた例を示す。軟質材料としては例えばスポンジが用いられるが、これに限られず種々の材料を用いることができる。変形可能部3224は、例えば
図6(b)に示すように、第2シェルター3223の下部及び側部における端部を挟むようにして設けることができる。このように変形可能部3224を設けることで、
図7(a)(b)に示すように、アワビAが容器本体321の底面に張り付いていても、張り付いているアワビAを移動させることなく、変形可能部3224が変形することで蓋322を閉じることができ、容器本体321に蓋322を装着できる。
【0045】
ここまで、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、前記実施形態において説明した個々の構成は、適宜組み合わせることができるし、一部を省略することもできる。
【0046】
例えば、1枚の蓋本体3221に対して1枚以上のシェルター3222,3223が設けられていればよい。また、蓋本体3221に対して各シェルター3222,3223を着脱できるようにしてもよい。この構造は、成育したアワビAを回収する際、または清掃の際に有利である。
【0047】
また、前記実施形態では、シェルター3222,3223の下部または側部が軟質材料から形成されていた。しかしこれとは逆に、容器本体321のうち、容器本体321に蓋322を装着した際に各シェルター3222,3223に略当接する部分が軟質材料から形成されていてもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、各シェルター3222,3223における蓋本体3221に近い部分に通路空間部323を備えていた。しかしこれに限定されず、通路空間部323を蓋本体3221から離れた部分に設けてもよい。