特開2020-129972(P2020-129972A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-129972(P2020-129972A)
(43)【公開日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】温度制御システム及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20200803BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20200803BHJP
   A01M 1/00 20060101ALI20200803BHJP
【FI】
   A01G9/24 P
   A01G9/20 A
   A01M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-23460(P2019-23460)
(22)【出願日】2019年2月13日
(71)【出願人】
【識別番号】518389602
【氏名又は名称】株式会社FUTU−RE
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(72)【発明者】
【氏名】福井 邦彦
【テーマコード(参考)】
2B029
2B121
【Fターム(参考)】
2B029SA04
2B029SD09
2B029SF08
2B121AA11
2B121AA19
2B121DA43
2B121EA12
2B121EA25
(57)【要約】
【課題】土壌等の温度を効率的に制御する。
【解決手段】温度制御システム1は、放熱用熱媒体を加熱する加熱部22と、土壌内において断熱材17の上方に地表に沿って埋設され、加熱された前記放熱用熱媒体が流れる配管13とを備える。本技術は、例えば、温室内の土壌の熱消毒や、作物の生育の促進を行うシステムに適用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱用熱媒体を加熱する加熱部と、
土壌内において断熱材の上方に地表に沿って埋設され、加熱された前記放熱用熱媒体が流れる第1の配管と
を備える温度制御システム。
【請求項2】
前記断熱材の下方に埋設されている第2の配管を
さらに備え、
前記加熱部は、前記第2の配管を流れる採熱用熱媒体により集められた熱を用いて、前記放熱用熱媒体を加熱する
請求項1に記載の温度制御システム。
【請求項3】
前記第1の配管の少なくとも一部と前記第2の配管の少なくとも一部とが、前記断熱材を介して上下方向に重なっている
請求項2に記載の温度制御システム。
【請求項4】
地上に設置されている第3の配管を
さらに備え、
前記加熱部は、前記第2の配管を流れる前記採熱用熱媒体及び前記第3の配管を流れる前記採熱用熱媒体のうち少なくとも一方により集められた熱を用いて、前記放熱用熱媒体を加熱する
請求項2又は3に記載の温度制御システム。
【請求項5】
前記第3の配管は、前記採熱用熱媒体又は前記放熱用熱媒体を流すことが可能であり、
前記加熱部は、前記第2の配管を流れる前記採熱用熱媒体を介して集められた熱を用いて、前記第1の配管及び前記第3の配管の少なくとも一方に流す前記放熱用熱媒体を加熱する
請求項4に記載の温度制御システム。
【請求項6】
周囲の温度に基づいて、前記第2の配管及び前記第3の配管の中から前記採熱用熱媒体を流す配管を選択する運転制御部を
さらに備える請求項4又は5に記載の温度制御システム。
【請求項7】
前記第1の配管は、
前記土壌の複数の領域を個別に加熱するための複数の経路を
備え、
前記第1の配管の前記放熱用熱媒体を流す経路を切替える運転制御部を
さらに備える請求項1乃至5のいずれかに記載の温度制御システム。
【請求項8】
前記運転制御部は、前記加熱部から出力される前記放熱用熱媒体の温度と前記加熱部に戻って来る前記放熱用熱媒体の温度の差に基づいて、前記第1の配管の前記放熱用熱媒体を流す経路を切替える
請求項7に記載の温度制御システム。
【請求項9】
前記土壌の所定の深さの温度が所定の閾値以上の状態が所定の時間以上継続した場合、前記加熱部の動作を停止させる運転制御部を
さらに備える請求項1乃至5のいずれかに記載の温度制御システム。
【請求項10】
前記土壌の熱消毒を行う場合と前記土壌において作物を生育する場合とで、前記放熱用熱媒体の温度を変える温度制御部を
さらに備える請求項1乃至9のいずれかに記載の温度制御システム。
【請求項11】
前記第1の配管は、
第1の経路と、
前記第1の経路と並列に設けられている第2の経路と
を備え、
前記第1の経路と前記第2の経路との少なくとも一部が略並行に配置されており、
前記第1の経路の前記第2の経路が略並行に配置されている部分において、前記第1の経路を前記放熱用熱媒体が流れる方向と、前記第2の経路を前記放熱用熱媒体が流れる方向とが逆である
請求項1乃至10のいずれかに記載の温度制御システム。
【請求項12】
放熱用熱媒体を加熱し、
土壌内において断熱材の上方に地表に沿って埋設された配管に、加熱した前記放熱用熱媒体を流す
温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、温度制御システム及び温度制御方法に関し、特に、土壌等の温度を制御する場合に用いて好適な温度制御システム及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラにより温めた温水又は温液を、土壌に埋設したパイプに流して土壌を温めることにより、土壌の熱消毒を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−184828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、パイプに流す温水又は温液を温めるために多量のエネルギーが必要になる。
【0005】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、土壌等の温度を効率的に制御できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の一側面の温度制御システムは、放熱用熱媒体を加熱する加熱部と、土壌内において断熱材の上方に地表に沿って埋設され、加熱された前記放熱用熱媒体が流れる第1の配管とを備える。
【0007】
本技術の一側面の温度制御方法は、放熱用熱媒体を加熱し、土壌内において断熱材の上方に地表に沿って埋設された配管に、加熱した前記放熱用熱媒体を流す。
【0008】
本技術の一側面においては、放熱用熱媒体が加熱され、土壌内において断熱材の上方に地表に沿って埋設された配管に、加熱した前記放熱用熱媒体が流される。
【発明の効果】
【0009】
本技術の一側面によれば、土壌等の温度を効率的に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本技術を適用した温度制御システムの構成例を模式的に示す図である。
図2】配管の設置例を示す図である。
図3】配管の設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための形態について説明する。説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0012】
<<1.実施の形態>>
まず、図1乃至図3を参照して、本技術の実施の形態について説明する。
【0013】
<温度制御システム1の構成例>
図1は、本技術を適用した温度制御システム1の構成例を模式的に示している。
【0014】
温度制御システム1は、温室2内の温度を制御することにより、作物の生育環境の制御を行うシステムである。例えば、温度制御システム1は、温室2内の土壌及び空気の温度を制御することにより、土壌の熱消毒や作物の成長の促進等を行う。温度制御システム1は、温度制御装置11、配管12乃至配管14、切替弁15a及び切替弁15b、温度センサ16、並びに、断熱材17を備える。
【0015】
温度制御装置11は、温室2内の土壌及び空気の温度を制御する装置であり、例えば、温室2の外部に設置される。温度制御装置11は、制御部21、加熱部22、一次系入出力部23、二次系入出力部24、入力部25、及び、出力部26を備える。
【0016】
制御部21は、温度制御システム1の動作の制御を行う。制御部21は、運転制御部31、温度制御部32、及び、出力制御部33を備える。
【0017】
運転制御部31は、切替弁15a及び切替弁15b、加熱部22、一次系入出力部23、並びに、二次系入出力部24を制御することにより、温度制御システム1の運転モードの制御を行う。運転モードの詳細は後述する。
【0018】
温度制御部32は、加熱部22を制御することにより、温室2内の土壌及び空気の温度を制御する。
【0019】
出力制御部33は、出力部26からの各種の情報の出力を制御する。例えば、出力制御部33は、出力部26による温度制御システム1の動作状態や設定情報等を示す画面の表示の制御を行う。
【0020】
加熱部22は、例えば、ヒートポンプにより構成される。例えば、加熱部22は、運転制御部31及び温度制御部32の制御の下に、一次系入出力部23の入力部23aから入力される熱媒体(以下、採熱用熱媒体と称する)の熱により、二次系入出力部24の出力部24bから出力される熱媒体(以下、放熱用熱媒体と称する)を加熱する。
【0021】
なお、採熱用熱媒体及び放熱用熱媒体には、例えば、水又は不凍液が用いられる。また、加熱部22は、例えば、放熱用熱媒体を80度まで加熱することが可能である。
【0022】
一次系入出力部23は、入力部23a及び出力部23bを備える。二次系入出力部24は、入力部24a及び出力部24bを備える。採熱用熱媒体は、入力部23aから入力され、加熱部22を通って、出力部23bから出力される。放熱用熱媒体は、入力部24aから入力され、加熱部22を通って、出力部24bから出力される。そして、加熱部22内で、採熱用熱媒体の熱を用いて、放熱用熱媒体が加熱される。
【0023】
また、一次系入出力部23は、運転制御部31の制御の下に、又は、手動で、採熱用熱媒体の出力先を変更することが可能である。二次系入出力部24は、運転制御部31の制御の下に、又は、手動で、放熱用熱媒体の出力先を変更することが可能である。
【0024】
入力部25は、例えば、スイッチ、ボタン、タッチパネル等の温度制御システム1の操作を行うための操作デバイスを備える。入力部25は、操作デバイスを介してユーザにより入力された入力情報を制御部21に供給する。
【0025】
出力部26は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、LED等の出力デバイスを備える。出力部26は、出力制御部33の制御の下に、画像、音声、光等により各種の情報を出力する。
【0026】
配管12は、一次系入出力部23の入力部23a及び出力部23bに接続されるとともに、少なくとも一部が温室2の地下に、地表に沿って(地表と平行に)埋設される。出力部23bから出力された採熱用熱媒体は、配管12内を流れ、入力部23aに戻ってくる。そして、配管12内を循環する採熱用熱媒体により、温室2の地下の熱が集められ(採熱され)、加熱部22に供給される。
【0027】
配管13は、二次系入出力部24の入力部24a及び出力部24bに接続されるとともに、少なくとも一部が温室2の地下の配管12より浅い位置に、地表に沿って(地表と平行に)埋設される。出力部24bから出力された放熱用熱媒体は、配管13内を流れ、入力部24aに戻ってくる。そして、配管13内を循環する放熱用熱媒体により、温室2内の土壌が加熱される。
【0028】
配管14は、一次系入出力部23の入力部23a及び出力部23b、並びに、二次系入出力部24の入力部24a及び出力部24bに接続されている。具体的には、配管14は、経路14A乃至経路14Eに分かれる。経路14Aは、入力部23aと切替弁15aとを接続する。経路14Bは、出力部23bと切替弁15bとを接続する。経路14Cは、入力部24aと切替弁15aとを接続する。経路14Dは、出力部24bと切替弁15bとを接続する。
【0029】
経路14Eは、少なくとも一部が温室2内の地上に設置されるとともに、切替弁15aと切替弁15bとを接続する。また、経路14Eは、切替弁15a及び切替弁15bにより、経路14A及び経路14B、又は、経路14C及び経路14Dに接続される。
【0030】
経路14Eが経路14A及び経路14Bに接続されている場合、出力部23bから出力された採熱用熱媒体は、経路14A、経路14E、及び、経路14Bを流れ、入力部23aに戻ってくる。そして、経路14A、経路14E、及び、経路14Bを循環する採熱用熱媒体により、温室2内の空気の熱が集められ(採熱され)、加熱部22に供給される。
【0031】
一方、経路14Eが経路14C及び経路14Dに接続されている場合、出力部24bから出力された放熱用熱媒体は、経路14C、経路14E、及び、経路14Dを流れ、入力部24aに戻ってくる。そして、経路14C、経路14E、及び、経路14Dを循環する放熱用熱媒体により、温室2内の空気が加熱される。
【0032】
なお、配管12は、一次系入出力部23に対して並列な複数の経路を備えていてもよい。すなわち、一次系入出力部23から出力された採熱用熱媒体が、配管12の複数の経路に分かれて循環し、一次系入出力部23に戻って来るようにしてもよい。
【0033】
同様に、配管13は、二次系入出力部24に対して並列な複数の経路を備えていてもよい。すなわち、二次系入出力部24から出力された放熱用熱媒体が、配管13の複数の経路に分かれて循環し、二次系入出力部24に戻って来るようにしてもよい。
【0034】
同様に、配管14は、一次系入出力部23及び二次系入出力部24に対して並列な複数の経路を備えていてもよい。すなわち、一次系入出力部23から出力された採熱用熱媒体が、配管14の複数の経路に分かれて循環し、一次系入出力部23に戻って来るようにしてもよい。また、二次系入出力部24から出力された放熱用熱媒体が、配管14の複数の経路に分かれて循環し、二次系入出力部24に戻って来るようにしてもよい。
【0035】
また、配管12乃至配管14には、例えば、耐熱性のあるパイプが用いられる。例えば、配管12乃至配管14には、耐熱性、耐食性、及び、柔軟性(可撓性)に優れたパイプ、例えば、PERT(Polyethylene of Raised Temperature resistance)製のパイプが用いられる。
【0036】
切替弁15aは、運転制御部31の制御の下に、又は、手動で、経路14Eの接続先を経路14A又は経路14Cに切り替える。切替弁15bは、運転制御部31の制御の下に、又は、手動で、経路14Eの接続先を経路14B又は経路14Dに切り替える。
【0037】
温度センサ16は、温室2内に設けられる。例えば、温度センサ16は、温室2の地表付近、及び、作物の根又は地下茎が育つ領域(以下、根幹領域と称する)付近の少なくとも1つに埋設され、温室2の地表付近及び根幹領域付近の少なくとも1つの温度を検出する。温度センサ16は、温度の検出結果を示すセンサデータを制御部21に供給する。
【0038】
断熱材17は、温室2の地下において、配管12と配管13の間に埋設される。換言すれば、温室2の土壌内において、配管12は断熱材17の下方に埋設され、配管13は断熱材17の上方に埋設される。これにより、配管12と配管13の間が断熱され、配管13から放出される熱が、地下方向に伝わり、配管12を流れる採熱用熱媒体により吸収されること、換言すれば、放熱用熱媒体の熱により採熱用熱媒体が加熱されることが抑制される。その結果、加熱部22(ヒートポンプ)の熱効率が向上するとともに、配管13から放出される熱が、より多く地上方向に伝わるようになり、根幹領域や地表を効率よく加熱することが可能になる。なお、断熱材17には、例えば、輻射熱の反射効率の高い素材(例えば、アルミ箔)で周囲が覆われた発泡スチロール板が用いられる。
【0039】
<温度制御システム1の運転モード>
次に、温度制御システム1の運転モードについて説明する。
【0040】
温度制御システム1の運転モードは、例えば、地中熱土壌温度制御モード、空気熱土壌温度制御モード、地中熱及び空気熱土壌温度制御モード、空気温度制御モード、及び、土壌及び空気温度制御モードの5種類に分かれる。
【0041】
地中熱土壌温度制御モードは、地中熱を利用して、温室2内の土壌の温度を制御するモードである。具体的には、採熱用熱媒体が配管12内を循環することにより、温室2の地下から熱が集められ、集められた熱を用いて加熱部22で放熱用熱媒体が加熱される。そして、温められた放熱用熱媒体が配管13内を循環することにより、温室2内の土壌が加熱される。
【0042】
空気熱土壌温度制御モードは、温室2内の空気熱を利用して、温室2内の土壌の温度を制御するモードである。具体的には、採熱用熱媒体が配管14の経路14A、経路14E、及び、経路14B内を循環することにより、温室2内の空気から熱が集められ、集められた熱を用いて加熱部22で放熱用熱媒体が加熱される。そして、温められた放熱用熱媒体が配管13内を循環することにより、温室2内の土壌が加熱される。
【0043】
地中熱及び空気熱土壌温度制御モードは、地中熱及び空気熱を利用して、温室2内の土壌の温度を制御するモードである。具体的には、採熱用熱媒体が配管12内、及び、配管14の経路14A、経路14E、及び、経路14B内を循環することにより、温室2の地下及び温室2内の空気から熱が集められ、集められた熱を用いて加熱部22で放熱用熱媒体が加熱される。そして、温められた放熱用熱媒体が配管13内を循環することにより、温室2内の土壌が加熱される。
【0044】
空気温度制御モードは、地中熱を利用して、温室2内の空気の温度を制御するモードである。具体的には、採熱用熱媒体が配管12内を循環することにより、温室2の地下から熱が集められ、集められた熱を用いて加熱部22で放熱用熱媒体が加熱される。そして、温められた放熱用熱媒体が配管14の経路14C、経路14E、及び、経路14D内を循環することにより、温室2内の空気が加熱される。なお、例えば、配管13内に採熱用熱媒体を循環させることにより集められた熱を用いて加熱部22で放熱用熱媒体を加熱し、温められた放熱用熱媒体を配管14の経路14A、経路14E、及び、経路14B内を循環させることにより、温室2内の空気を加熱するようにしてもよい。
【0045】
土壌及び空気温度制御モードは、地中熱を利用して、温室2内の土壌及び空気の温度を制御するモードである。具体的には、採熱用熱媒体が配管12内を循環することにより、温室2の地下から熱が集められ、集められた熱を用いて加熱部22で放熱用熱媒体が加熱される。そして、温められた放熱用熱媒体が配管13内、並びに、配管14の経路14C、経路14E、及び、経路14D内を循環することにより、温室2内の土壌及び空気が加熱される。
【0046】
<温度制御システム1の使用例>
次に、温度制御システム1の使用例について説明する。
【0047】
例えば、温度制御システム1は、温室2内の土壌を耕す前に土壌の熱消毒を行う。例えば、運転制御部31は、地中熱土壌温度制御モード又は空気熱土壌温度制御モードで温度制御システム1を動作させることにより、温室2内の土壌を加熱する。このとき、温度制御部32は、線虫類及び病原菌等の作物に悪影響を及ぼす生物(以下、害虫類と称する)、並びに、雑草及び雑草の種子の生育に不適当な環境になるように、温室2の地下の根幹領域付近の温度を制御する。例えば、温度制御部32は、根幹領域付近の温度を所定の消毒温度(例えば50度)以上になるように、放熱用熱媒体の温度を制御する。例えば、温度制御部32は、放熱用熱媒体の温度を約80度に設定する。
【0048】
そして、温度制御システム1は、根幹領域付近が消毒温度以上である状態(以下、消毒状態と称する)を所定の時間(例えば、1週間)以上継続する。これにより、温室2内の土壌の根幹領域付近の害虫類及び雑草が駆除される。
【0049】
このように、農薬や還元作用剤を用いずに、かつ、労力をかけずに、温室2内の土壌を熱消毒することができる。
【0050】
このとき、例えば、運転制御部31は、所定の条件が満たされた場合、加熱部22の動作を停止させ、熱消毒を自動的に停止するようにしてもよい。例えば、運転制御部31は、熱消毒の開始から所定の時間以上経過した場合、熱消毒を停止する。或いは、例えば、運転制御部31は、土壌の所定の深さ(例えば、根幹領域付近)の温度が消毒温度以上である状態が、所定の時間(例えば、1週間)以上継続した場合、熱消毒を停止する。これにより、温度制御システム1の消費エネルギーを低減することができる。
【0051】
なお、土壌の熱消毒を1回実施すれば、土壌を入れ替えるまで、害虫類及び雑草が育ちにくい環境が維持される。しかし、より効果を高めるために、定期的に(例えば、年1回)熱消毒を実施することが望ましい。
【0052】
また、例えば、温度制御システム1は、種まき又は作付け後に、作物の生育促進を行う。例えば、運転制御部31は、地中熱土壌温度制御モード、又は、空気熱土壌温度制御モードで温度制御システム1を動作させることにより、温室2内の土壌を加熱する。このとき、温度制御部32は、地表の温度が作物の生育に適した温度(例えば、20度)前後になるように、放熱用熱媒体の温度を制御する。例えば、温度制御部32は、放熱用熱媒体の温度を約60度に設定する。
【0053】
さらに、例えば、温度制御システム1は、作物の成長期において、温室2内の寒暖の差に対応して、土壌の温度を作物の成長に適した温度に調整する。例えば、運転制御部31は、地中熱土壌温度制御モード、又は、空気熱土壌温度制御モードで温度制御システム1を動作させることにより、温室2内の土壌を加熱する。このとき、温度制御部32は、地表の温度が作物の成長に適した温度(例えば、20度)前後になるように、放熱用熱媒体の温度を制御する。
【0054】
これにより、例えば、作物の成長スピードを調整し、作物の生育期間を調整することができる。その結果、例えば、種まき又は作付けの時期、及び、作物の出荷時期等を柔軟に調整することが可能になる。
【0055】
なお、例えば、運転制御部31は、温室2内の温度に基づいて、地中熱土壌温度制御モードと空気熱土壌温度制御モードを切り替えるようにしてもよい。例えば、運転制御部31は、温室2内の温度が所定の閾値以上である場合、空気熱土壌温度制御モードに設定し、空気熱を利用して放熱用熱媒体を加熱する。一方、運転制御部31は、温室2内の温度が所定の閾値未満である場合、地中熱土壌温度制御モードに設定し、地中熱を利用して放熱用熱媒体を加熱する。すなわち、温室2内の温度に基づいて、採熱用熱媒体を流す配管が選択され、放熱用熱媒体の加熱に用いる熱源が切り替えられる。これにより、放熱用熱媒体の加熱に用いる熱を効率的に収集することができ、温度制御システム1の消費エネルギーを低減することができる。
【0056】
また、例えば、運転制御部31は、種まき又は作付け後、及び、作物の成長期において、土壌及び空気温度制御モードで温度制御システム1を動作させることにより、温室2内の土壌だけでなく、空気を加熱するようにしてもよい。
【0057】
<配管12乃至配管14の設置例>
次に、配管12乃至配管14の設置例について説明する。
【0058】
配管12乃至配管14の経路のうち最も重要なのは、配管13の経路である。配管13は、温室2内の畝周辺だけでなく、圃場全体をできる限り満遍なく均等に加熱できるように設置することが望ましい。例えば、温室2内の圃場に温度ムラが発生し、熱消毒が不十分な領域が生じた場合、その領域から周囲に害虫類及び雑草が広がり、作物に害を与えるおそれがある。
【0059】
従って、配管13は、温室2の地下において、圃場全体をできる限り満遍なく均等に加熱できるように設置される。この条件を満たせば、配管13の水平方向(地表に沿った方向)の経路には特に制限はない。しかし、配管13がカーブする部分が増えるほど、放熱用熱媒体が配管13内で滞留する可能性が高くなるため、配管13がカーブする部分が少ない方が望ましい。
【0060】
図2は、配管13の設置例を模式的に示している。なお、図内の縦方向が温室2の長手方向であり、横方向が温室2の短手方向である。
【0061】
この例では、点線で示される畝111a乃至畝111cが、それぞれ温室2の長手方向に沿って延びるとともに、所定の間隔を空けて、温室2の短手方向に並べられている。そして、配管13が、畝111a乃至101cに合わせて設置されている。
【0062】
具体的には、配管13は、経路13A乃至経路13Eに分かれる。
【0063】
経路13Aは、温度制御装置11の出力部24b(不図示)とバルブ101eとを接続している。また、経路13Aは、分岐点Paで分岐し、分岐点Paとバルブ101aを接続している。さらに、経路13Aは、分岐点Pbで分岐し、分岐点Pbとバルブ101cを接続している。
【0064】
経路13Bは、バルブ101aから畝111aの長手方向の一方の辺に沿って延び、畝111aの一方の端部付近で折り返され、畝111aの長手方向の他方の辺に沿って延び、バルブ101bに接続されている。
【0065】
経路13Cは、バルブ101cから畝111bの長手方向の一方の辺に沿って延び、畝111bの一方の端部付近で折り返され、畝111bの長手方向の他方の辺に沿って延び、バルブ101dに接続されている。
【0066】
経路13Dは、バルブ101eから畝111cの長手方向の一方の辺に沿って延び、畝111cの一方の端部付近で折り返され、畝111cの長手方向の他方の辺に沿って延び、バルブ101fに接続されている。
【0067】
経路13Eは、温度制御装置11の入力部24a(不図示)とバルブ101bとを接続している。また、経路13Eは、分岐点Pcで分岐し、分岐点Pcとバルブ101dを接続している。さらに、経路13Eは、分岐点Pdで分岐し、分岐点Pdとバルブ101fを接続している。
【0068】
経路13B乃至経路13Dは、温室2の短手方向において、略等間隔に配置されるとともに、畝111a乃至畝111cの長手方向の一端から他端まで延びている。従って、経路13B乃至経路13Eに放熱用熱媒体を流すことにより、畝111a乃至畝111cの周辺、畝111aと畝111bの間、及び、畝111bと畝111cの間の土壌を略均等に加熱することができる。
【0069】
なお、配管13の全ての経路に同時に放熱用熱媒体を流し、畝111a乃至畝111cの周辺の土壌を同時に加熱するようにしてもよいし、配管13の各経路に順番に放熱用熱媒体を流し、畝111a乃至畝111cの周辺の土壌を順番に個別に加熱するようにしてもよい。
【0070】
後者の場合、例えば、運転制御部31は、まずバルブ101a及びバルブ101bを開け、バルブ101c乃至バルブ101fを閉じる。これにより、温度制御装置11の出力部24bから出力された放熱用熱媒体は、経路13Bを流れ、経路13C及び経路13Dは流れずに、入力部24aに戻って来る。これにより、畝111aの周辺の土壌が加熱される。
【0071】
次に、運転制御部31は、所定の条件を満たしたとき、バルブ101a及びバルブ101bを閉じ、バルブ101c及びバルブ101dを開ける。これにより、温度制御装置11の出力部24bから出力された放熱用熱媒体は、経路13Cを流れ、経路13B及び経路13Dは流れずに、入力部24aに戻って来る。これにより、畝111bの周辺の土壌が加熱される。
【0072】
次に、運転制御部31は、所定の条件を満たしたとき、バルブ101c及びバルブ101dを閉じ、バルブ101e及びバルブ101fを開ける。これにより、温度制御装置11の出力部24bから出力された放熱用熱媒体は、経路13Dを流れ、経路13B及び経路13Cは流れずに、入力部24aに戻って来る。これにより、畝111cの周辺の土壌が加熱される。
【0073】
次に、運転制御部31は、所定の条件を満たしたとき、バルブ101e及びバルブ101fを閉じ、バルブ101a及びバルブ101bを開ける。これにより、最初の状態に戻り、畝111aの周辺の土壌が加熱される。
【0074】
以降、熱消毒が完了するまで、以上の処理が繰り返される。
【0075】
これにより、熱消毒に要する時間は長くなるが、放熱用熱媒体の使用量を削減することができる。その結果、例えば、加熱部22の容量を削減することができ、必要なコストを削減することができる。
【0076】
なお、バルブ101a乃至バルブ101fの開閉を切替える条件として、例えば、出力部24b(加熱部22)から出力される放熱用熱媒体の温度と、入力部24a(加熱部22)に戻って来る放熱用熱媒体の温度の差が用いられる。例えば、両者の温度差が所定の閾値(例えば、10度)以下になった場合、加熱中の畝周辺の土壌が十分に温められたとして、バルブ101a乃至バルブ101fの開閉が切り替えられ、加熱する畝が切り替えられる。
【0077】
なお、配管13は、主に作物の根幹領域付近を加熱するためのものであり、できる限り根幹領域に近い深さに埋設することが望ましい。ただし、配管13が作物の根や地下茎に接触したり、圃場を耕すときに耕運機や農機具の刃等により損傷したりすることを防止する必要がある。
【0078】
従って、配管13を埋設する深さd2(図1)は、例えば、30cmから60cmの間に設定される。ここで、深さd2は、例えば、圃場を耕す前の状態の地表から配管13の上端までの距離とされる。
【0079】
また、配管12の少なくとも一部は、例えば、温室2の地下において、配管13より深い位置に配管13と上下方向に重なるように埋設される。これにより、配管12及び配管13を埋設するために掘る穴が共通化され、埋設作業が効率化される。
【0080】
配管12と配管13とを上下方向に重ねて埋設する場合、配管12と配管13との間に断熱材17が埋設される。これにより、配管13から放出される熱が、地下方向に伝わることが抑制され、地上方向により多く伝わるようになる。その結果、地表や根幹領域を効率的に温めることができる。
【0081】
配管12を埋設する深さd1(図1)は、配管13より深く、かつ、配管13との間に断熱材17を埋設することが可能な深さであればよい。ただし、あまり深くなると埋設作業が大変になるため、例えば、配管13より20cm程度深い位置に埋設される。すなわち、配管13の上端と配管12の上端との間の距離が20cm程度に設定される。従って、深さd2が約60cmの場合、深さd1は約80cmに設定される。
【0082】
また、図3に示されるように、配管13の複数の並列な経路を略並行に配置し、各経路内を互いに逆方向に放熱用熱媒体を流すようにしてもよい。
【0083】
具体的には、図3は、畝151の長手方向の一方の端付近を模式的に示している。配管13の一部である経路13F及び経路13Gは、畝151に沿って配置されている。具体的には、経路13F及び経路13Gは、畝151の一方の端部により折り返され、畝151の短手方向の両端付近において、畝151の長手方向に沿って延びている。また、経路13Fと経路13Gとは、上下方向に所定の間隔を空けて略並行に配置されている。なお、経路13Fと経路13Gは接していてもよい。さらに、経路13Gの下に、経路13Gに沿って断熱材17が埋設されている。
【0084】
また、経路13Fと経路13Gとは、温度制御装置11の二次系入出力部24に並列に接続されている。すなわち、経路13Fと経路13Gには、個別に放熱用熱媒体が流され、経路13Fを流れた放熱用熱媒体は、経路13Gを流れずに温度制御装置11に戻り、経路13Gを流れた放熱用熱媒体は、経路13Fを流れずに温度制御装置11に戻る。また、経路13Fと経路13Gには、放熱用熱媒体が互いに逆方向に供給される。なお、図2では、矢印で示されるように、放熱用熱媒体が経路13F内を図内の時計回りに流れ、経路13G内を図内の反時計回りに流れる例が示されている。
【0085】
このように、経路13G及び経路13Fに互いに逆方向に放熱用熱媒体を流すことにより、放熱による放熱用熱媒体の温度低下に起因する土壌の温度ムラの発生が抑制される。これにより、熱消毒の所用時間を短縮したり、熱消毒が不十分な領域の発生を抑制したりすることができる。
【0086】
なお、経路13Gと経路13Fは、必ずしも上下方向に並べる必要はない。例えば、経路13Gと経路13Fを水平方向に並べてもよい。
【0087】
また、図3の例では、配管14が、経路13F及び経路13Gと同様に、畝151に沿って配置されている。具体的には、配管14は、温室2内の地上において、畝151の周囲を囲むように地面に置かれている。例えば、この配管14を流れる放熱用熱媒体により発生する熱が、温室2内の空気に対流を起こすことにより、温室2内の暖房設備(不図示)による空気の加熱を補助することができる。
【0088】
さらに、温度制御システム1が土壌及び空気温度制御モードにより動作し、温室2内の土壌の表面と地中から土壌及び空気を加熱することにより、より効率的に、作物の生育に適した環境を実現することができる。
【0089】
なお、温度制御システム1は、仮設ではなく、恒久的な設備として設置することが可能である。これにより、設置や撤去にかかる作業や費用を削減することができる。
【0090】
<<2.変形例>>
以下、上述した本技術の実施の形態の変形例について説明する。
【0091】
温度制御システム1を設ける温室2の種類は特に限定されず、例えば、ガラス張りでも、ビニール張りでもよい。
【0092】
また、温度制御装置11を複数の温室で共有するようにしてもよい。すなわち、温度制御装置11から出力される放熱用熱媒体を複数の温室に流し、複数の温室の温度を制御するようにしてもよい。
【0093】
さらに、配管12は、必ずしも配管13と上下方向に重ねて埋設する必要はない。ただし、配管12と配管13を上下方向に重ねて埋設した方が、上述したように、埋設作業の効率が向上する。
【0094】
また、配管12を配管13と上下方向に重ねて埋設しない場合、例えば、配管12を温室2以外の場所の地下に埋設することが可能である。この場合、必ずしも断熱材17を設置する必要はない。しかし、断熱材17を設置した方が、配管13を流れる放熱用熱媒体から発生される熱が、より多く地上方向に伝わるようになり、地表や根幹領域を効率的に加熱することができる。
【0095】
さらに、配管14は、必ずしも設ける必要はなく、省略することが可能である。
【0096】
また、配管13は、必ずしも図2又は図3に示されるように畝に合わせて埋設する必要はなく、圃場全体をほぼ満遍なく均等に加熱できるのであれば、畝とは無関係に埋設するようにしてもよい。この場合、圃場を複数の領域に分割し、図2の例のように、各領域を個別に加熱できるように配管13の経路を並列に配置し、各領域を順番に加熱するようにしてもよい。
【0097】
さらに、加熱部22に、ヒートポンプではなく、ボイラ等の燃料や電力により放熱用熱媒体を加熱する装置を用いてもよい。この場合、配管12、及び、配管14の経路14A及び経路14Bは、省略することが可能である。また、断熱材17も省略することも可能であるが、上述したように、断熱材17を設置した方が、地表や根幹領域を効率的に加熱することができる。

また、本技術は、上述した温室栽培だけでなく、露地栽培にも適用することができる。例えば、温度制御システム1は、露地栽培の土壌の熱消毒や作物の成長の促進等に用いることができる。
【0098】
なお、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0099】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 温度制御システム, 2 温室, 11 温度制御装置, 12 配管, 13 配管, 13A乃至13G 経路, 14 配管, 14A乃至14E 経路, 15a,15b 切替弁, 16 温度センサ, 17 断熱材, 21 制御部, 22 加熱部, 31 運転制御部, 32 温度制御部, 101a乃至101f バルブ
図1
図2
図3