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特開2020-130198腰痛対策用のクッション及び携帯クッション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-130198(P2020-130198A)
(43)【公開日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】腰痛対策用のクッション及び携帯クッション
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/08 20060101AFI20200803BHJP
【FI】
   A47C27/08 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-23016(P2019-23016)
(22)【出願日】2019年2月12日
(71)【出願人】
【識別番号】519049422
【氏名又は名称】本間 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100112601
【弁理士】
【氏名又は名称】金原 正道
(72)【発明者】
【氏名】本間 尚子
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AB05
3B096AC05
(57)【要約】
【課題】 座ったときに、身体の重心の移動にしたがい、中空部に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行えるようにしたことを特徴とする、腰痛対策用のクッション及び携帯クッションを提供する。
【解決手段】 非通気性シート(1)からなり、中空部(5)に空気を封入できるクッションであって、最大空気容量より少ない体積の空気を封入したときに、左右の臀部の周囲を自由に空気が移動可能な中空部(5)と、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられ、空気を封入したときの中空部(5)より厚みが薄く、空気が移動不可能にされた固着部(6)と、を備えたクッションとする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非通気性シートからなり、中空部に空気を封入できるクッションであって、
最大空気容量より少ない体積の空気を封入したときに、左右の臀部の周囲を自由に空気が移動可能な中空部と、
左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられ、空気を封入したときの中空部より厚みが薄く、空気が移動不可能にされた固着部と、を備え、
座ったときに、身体の重心の移動にしたがい、中空部に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行えるようにしたことを特徴とする、腰痛対策用のクッション。
【請求項2】
前記のクッションは、2枚の非通気性シートを重ね合わせた上で、その外周部と、固着部とにおいて2枚のシートが固着されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の腰痛対策用のクッション。
【請求項3】
前記2枚の非通気性シートは、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、身体の後方側には、左右の臀部に対応した2つの後方膨らみを持つ形状に形成されたことを特徴とする、請求項1または2に記載の腰痛対策用のクッション。
【請求項4】
前記2枚の非通気性シートは、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、身体の前方側には、左右の腿に対応した2つの前方膨らみを持つ形状に形成されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の腰痛対策用のクッション。
【請求項5】
前記の固着部は、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に2か所設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、臀部の左右の膨らみがそれぞれの固着部に配置されるように、略円形または略惰円形、略長円形、略多角形のいずれかの形状に形成されたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の腰痛対策用のクッション。
【請求項6】
前記の固着部は、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に1か所設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、臀部の左右の膨らみが固着部の左右に配置されるように、略惰円形、略長円形、略瓢箪形、略多角形のいずれかの形状に形成されたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の腰痛対策用のクッション。
【請求項7】
前記のクッションには、中空部への空気の出し入れと封入が可能な空気出入口及び栓が設けられ、不使用時には空気を抜いて携帯可能にされたことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の腰痛対策用の携帯クッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰痛対策用のクッション及び携帯クッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なクッションや座布団などが用いられており、簡単に折り畳んだりして持ち運べる携帯用のものも開発されている。
クッション等は、袋状に外側を覆うカバーと、内部に充填されるクッション材とを主要な構成要素としているものであり、携帯しやすくするためには、内部に充填されるクッション材に空気を用いることにより、使用時には空気を入れて膨らませて使用するものなどが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3089470号公報
【特許文献2】特開平10−313970号公報
【特許文献3】特開2008−6234号公報
【特許文献4】特開2002−272563号公報
【0004】
たとえば、実用新案登録第3089470号公報「空気包収容座布団」においては、連結する空気包を座布団に収容することによりクッション効果の維持保有を図る座布団が開示されている。
この考案は、座布団に空気包の出し入れ用開閉口を設け、ここから連結する空気包を収容または交換して、常時クッション効果を維持保有するものである。
【0005】
ところで、現代では、オフィス等で椅子に座って仕事をし続けたり、あるいは自動車の運転で同じ姿勢を取り続けたりといったことにより、腰痛に悩む人が多く、高齢化社会の進行に伴う増加も指摘されている。
近年の調査では、腰痛に悩む人が2800万人前後、男女ともに30%前後といった調査結果も公表されており、このため、腰痛を緩和するマッサージなどの施術や、腰痛を軽減するための各種の椅子、クッションなども開発されている。
【0006】
たとえば、特開平10−313970号「腰痛防止用腰もたれ」においては、椅子などに座ったときに身体を正しい姿勢に保持するようにし、腰痛の発生を防止するための、背もたれ付のクッションが開示されている。
この発明は、変形可能な空気クッションからなる枕を仙椎にあて、固定部を尻の下に敷き、仙椎を後方から支えるようにすると、身体が正しい姿勢に保たれ、腰痛の発生が防止されるというものである。
【0007】
また、市販されている腰痛を軽減するための各種の椅子、クッションにも、各種のものが見受けられる。
一例としては、骨盤を正しい形状に支持するために、身体形状に合わせた背もたれと、座面とを設けた椅子のようなクッションや、臀部や腿の形状に合わせて立体的な座面を設けるとともに適度な反発力を備えたクッションなどがある。
また別の一例としては、椅子全体を球形のボール状として、座りながらバランスを取る運動ができるものや、椅子の設置部分を略半球状にしたものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、腰痛を軽減するための各種の椅子、クッションの多くは、骨盤や背骨を正しい形状に支持するために、身体形状に合わせた大掛かりな構造とサイズを有しており、さらに適度な反発力を発揮するように発泡ウレタンその他の固形の弾性材料が用いられている。
こうした従来の市販品は、腰・姿勢を固定していたり抵抗性を与え支持するものであって、腰痛改善や予防などの対策や、身体パフォーマンスの向上につながるような、背骨の運動をサポートする効果を発揮するものではなかった。
また、大掛かりな構造と、サイズ、体積を有するため、使用しない時には空気を抜くといった、気軽に携帯して持ち運べる携帯クッションに応用することもできなかった。
【0009】
クッション材として空気を用いているものでは、たとえば特開2008−6234「ヒップアップ効果・脳力活性・腰痛改善等クッション」がある。
この発明は、必要かつ十分な座圧分散効果と点圧(指圧)効果を同時に両立させ、腰痛等の低下や、お尻(臀部)のたるみ及び背筋等の歪みといった身体的・苦痛を解決できるクッションである。
この発明においてはクッション材に空気を用いているとはいっても、天然ゴム等により成形したソフトゴム球体を組み合わせて、長時間の座位や同一姿勢によっても座圧分散効果を失うことなく、同時にソフトゴム球体による適切かつ十分な反発力による点圧(指圧)効果を得られるようにしているものである。
しかしながら、むしろ腰痛の予防や改善などの対策のため、さらに身体パフォーマンス向上の効果を得るためには、適度な安定と不安定とがバランスした絶妙な安定感を備えていることが重要である。
上記発明では、複数の球体を配置して、ソフトなクッション性がある、座った時の安定感があるという構造を採用しているため、そのような作用が発揮されるものではない。
【0010】
また、特開2002−272563「エアー座布団及びエアー座布団を備えた椅子」においては、姿勢の変化が楽におこなえ、変化後においては空気圧がバランスして安定的に支持することができ、長時間にわたって座位を続けることが楽になり、座りごこちのよいエアー座布団及びエアー座布団を備えた椅子が開示されている。
この発明は、左右方向に少なくとも二つ以上の空気室を並置し、各空気室を狭くした連通部にて連通する。この構成により、姿勢の変化に伴う座位の変化に応じて狭くした連通部より空気が空気室間を移動することができ、姿勢の変更を容易におこなうことができる。姿勢の変更後においては連通している空気室内の空気圧がバランスして安定的に体重を支持できる、というものである。
上記発明の明細書中において、空気を利用した従来のクッション等については、「従来、上下のシート間にエアーを封入したエアー座布団においては、内部が一つの空気室となっているか、あるいは、複数の独立した空気室に仕切られているものである。」([0002])とされており、本明細書中の[0002]において述べた従来の携帯クッションもこのようなものである。
【0011】
従来の携帯クッションに対し、上記の特開2002−272563においては、「ところで、エアー座布団に座った場合に、座った姿勢に応じてエアー座布団が変形するのであるが、内部が一つの空気室となっているか、あるいは、複数の独立した空気室に仕切られていることから、座位を変化させて姿勢を変える場合に、内部圧が対応して変化することができず、姿勢を変化させ難いことから、長時間にわたって座位を続けなければならない事務、勉強、車、電車及び飛行機などにおいて苦痛を伴うという問題があった。」([0003])とされている。
【0012】
しかしながら、こうした課題を解決するため、上記の特開2002−272563においては、左右方向に少なくとも二つ以上の空気室を並置し、各空気室を狭くした連通部にて連通する構成により、姿勢の変化に伴う座位の変化に応じて狭くした連通部より空気が空気室間を移動することができ、「姿勢の変化が楽におこなえ、変化後においては空気圧がバランスして安定的に支持することができ、長時間にわたって座位を続けることが楽になり、座りごこちのよいエアー座布団及びエアー座布団を備えた椅子を提供する」([0004])という方法を採用している。
このため、この発明においては、空気室を仕切る壁が固定された状態で複数設けられている。
【0013】
しかしながら、この発明においても、クッション性と座った時の安定感を備えた構造が採用されている。
そのため、腰痛の予防や改善などの対策と、身体パフォーマンス向上の効果を出すのに重要な、骨盤の可動域と適度な安定と不安定とがバランスした絶妙な安定感を得られるものではない。
腰痛改善や予防などの対策のため、さらに身体パフォーマンス向上の効果を得るために重要な、背骨の運動をサポートする構造や機能を備えるものではない。
【0014】
さらに、上記いずれの発明においても、大掛かりな構造と、サイズ、体積を有するため、気軽に移動したり、携帯したりできるようなものではなく、一定の場所に置いておくものばかりである。こうした構成では、使用しない時には空気を抜くといったことができないばかりか、折り畳んだりすることができず、体積がかさばるものである。
このため、腰痛対策の機能を、気軽に携帯して持ち運べる携帯クッションに応用することはできなかった。
【0015】
そこで本発明においては、上記の様々な課題を解決し、全体の形状や構造に改良を重ね、腰に不要な負荷をかけずに、骨盤を動かすことができるようにしたクッションを、簡易な構造で実現し、固まった体をほぐし、体が固まらないようにすることにより、腰痛の予防や改善などの対策をするための、腰痛対策用のクッションを提供することを目的とする。
特に、クッション内部を一つの空気室とし、空気がクッション内部を移動することにより、姿勢の維持、変化が楽にでき、空気圧がバランスして安定的に腰部を支持することができるとともに、座ったときに、身体の重心の移動にしたがい、中空部に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行えるようにした、腰痛対策用のクッションを提供することを目的とする。
さらに本発明の別の目的は、空気がクッション内部を移動可能であるとともに、空気の出し入れを可能にすることにより、いつでもどこでも使用可能な、気軽に携帯して持ち運べる腰痛対策用の携帯クッションを提供することである。
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
非通気性シートからなり、中空部に空気を封入できるクッションであって、
最大空気容量より少ない体積の空気を封入したときに、左右の臀部の周囲を自由に空気が移動可能な中空部と、
左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられ、空気を封入したときの中空部より厚みが薄く、空気が移動不可能にされた固着部と、を備え、
座ったときに、身体の重心の移動にしたがい、中空部に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行えるようにした、腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、
前記のクッションは、2枚の非通気性シートを重ね合わせた上で、その外周部と、固着部とにおいて2枚のシートが固着されたものである、請求項1に記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、
前記2枚の非通気性シートは、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、身体の後方側には、左右の臀部に対応した2つの後方膨らみを持つ形状に形成された、請求項1または2に記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、
前記2枚の非通気性シートは、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、身体の前方側には、左右の腿に対応した2つの前方膨らみを持つ形状に形成された、請求項1〜3のいずれかに記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、
前記の固着部は、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に2か所設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、臀部の左右の膨らみがそれぞれの固着部に配置されるように、略円形または略惰円形、略長円形、略多角形のいずれかの形状に形成された、請求項1〜4のいずれかに記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、
前記の固着部は、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に1か所設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、臀部の左右の膨らみが固着部の左右に配置されるように、略惰円形、略長円形、略瓢箪形、略多角形のいずれかの形状に形成された、請求項1〜4のいずれかに記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0022】
また、請求項7に記載の発明は、
前記のクッションには、中空部への空気の出し入れと封入が可能な空気出入口及び栓が設けられた、請求項1〜5のいずれかに記載の腰痛対策用の携帯クッションであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、空気がクッション内部を移動することにより、姿勢の維持、変化が楽にでき、空気圧がバランスして安定的に腰部を支持することができるとともに、座ったときに、身体の重心の移動にしたがい、中空部に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行えるようにした、腰痛対策用のクッション及び携帯クッションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部から空気を抜いた状態を示す図であり、上は平面図、下は断面図である。
図2図2は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部に最大空気容量の空気を封入した状態を示す図であり、上は平面図、下は断面図である。
図3図3は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部に最大空気容量より少ない空気を封入した状態を示す図であり、上は平面図、下は断面図である。
図4図4は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部に最大空気容量より少ない空気を封入した状態において、身体の重心を移動させた状態を示す図であり、上は平面図、下は断面図である。
図5図5は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
図6図6は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
図7図7は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
図8図8は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
図9図9は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
図10図10は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
図11図11は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
図12図12は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部に最大空気容量より少ない空気を封入した状態を示す平面図に対応する、図面代用写真である。
【符号の説明】
【0025】
A 身体の後方側
B 身体の前方側
1 非通気性シート
2 外周部
3 後方膨らみ
4 前方膨らみ
5 中空部
6 固着部
7 空気出入口及び栓
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションは、非通気性シート(1)からなり、中空部(5)に空気を封入できるクッションである。
非通気性シート(1)は、クッション内部の中空部(5)に空気を封入して、漏れない状態を保ち使用するために採用する。素材としては、好ましい一例としてはポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)樹脂シートを採用し、0.2〜0.5mm厚程度の厚みを備えたシートが望ましい。
その他、非通気性シート(1)の素材の一例としては、各種の合成皮革・皮革や、ポリエチレン、ポリプロピレン等の軟質樹脂、エチレン・プロピレンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等の軟質ゴムなどがあげられる。
【0027】
また、クッション本体は、全体が一体に形成された袋状のものであってもよい。また、全体を袋状に形成し、袋の開いた口を熱圧着、接着その他の方法により固着されたものであってもよい。
あるいはクッション本体は、2枚の非通気性シート(1)を重ね合わせた上で、その外周部(2)を、熱圧着、接着その他の方法により固着させたものであってもよい。この場合には、さらに後述する固着部(6)においても、2枚のシートが熱圧着、接着その他の方法により固着させたものとすることができ、大量かつ安価に製造できるという利点がある。
【0028】
以下、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの好ましい実施例について、さらに詳細に説明する。
図1は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部(5)から空気を抜いた状態を示す図であり、上は平面図、下は断面図である。上の平面図に示す左右の矢印を結んだ線が、下の断面図の位置に対応する。
なお、図2図4において、矢印は省略しているが、図1と同様に、左右の臀部に対応して2か所設けられた固着部(6)を含む位置の断面図を示している。
各図において、Aは身体の後方側、Bは身体の前方側を示す。
図2は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部(5)に最大空気容量の空気を封入した状態を示す図であり、上は平面図、下は断面図である。
図3は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部(5)に最大空気容量より少ない空気を封入した状態を示す図であり、上は平面図、下は断面図である。
図4は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部(5)に最大空気容量より少ない空気を封入した状態において、身体の重心を移動させた状態を示す図であり、上は平面図、下は断面図である。
図12は、本発明の腰痛対策用の携帯クッションの好ましい形態の一例であって、中空部(5)に最大空気容量より少ない空気を封入した状態を示す、図3の平面図に対応する、図面代用写真である。
【0029】
本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションは、人が座るのに適した大きさであり、臀部及び腿の一部がクッションの上に位置するように形成される。図12に示した、実際に試作したクッションでは、長寸が350mm程度、短寸が300mm程度、空気を封入した際の最大厚みが75mm程度とした。
【0030】
本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの好ましい実施形態の一例としては、前記2枚の非通気性シート(1)は、図1〜4に示すように、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられた固着部(6)に位置を合わせて座った際に、身体の後方側には、左右の臀部に対応した2つの後方膨らみ(3)を持つ形状に形成されたものである。
座ったときに、臀部がクッションの上に位置するように形成されており、身体の重心の移動にしたがい、中空部(5)に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行いやすいようにしたものである。
【0031】
また、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの好ましい実施形態の一例としては、前記2枚の非通気性シート(1)は、図1〜4に示すように、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられた固着部(6)に位置を合わせて座った際に、身体の前方側には、左右の腿に対応した2つの前方膨らみ(4)を持つ形状に形成されたものである。
座ったときに、腿の一部がクッションの上に位置するように形成されており、身体の重心の移動にしたがい、中空部(5)に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行いやすいようにしたものである。
【0032】
本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションは、最大空気容量より少ない体積の空気を封入したときに、左右の臀部の周囲を自由に空気が移動可能な中空部(5)を備えている。中空部(5)内を自由に空気が移動可能にしたために、腰に不要な負荷をかけずに、骨盤を動かすことができるようになっている。
本発明においては、全体の形状や構造に改良を重ね、内部が一つの空気室となってはいても、空気がクッション内部を移動することにより、姿勢の維持、変化が楽にでき、空気圧がバランスして絶妙な安定感をもって腰部を支持することができるようにしたものである。
【0033】
図2に示すように、中空部(5)に最大空気容量の空気を封入した状態とした場合には、中空部(5)に封入された空気はクッションがパンパンに張るほどに充填されており、中空部(5)内を自由に空気を移動させることが難しい。
したがって、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの好ましい使用状態は、図3に示すように空気の量を調整し、中空部(5)に最大空気容量より少ない空気を封入した状態として、中空部(5)内を自由に空気を移動可能にしたものである。このようにすれば、中空部(5)内の空気量を調整することにより、動かす骨盤の角度が変えることができる。使い手は、自分の腰痛やコリの程度に応じて、心地よく運動できるクッションになるよう調整することが可能になる。
【0034】
本発明の腰痛対策用のクッションを、携帯クッションとするときは、内部に空気を封入するため、使用時には空気が封入した状態を保てると同時に、携帯しやすくするため、中空部(5)に対し空気を出し入れでき、携帯時には空気を抜ける構造であることが好ましい。
このため、空気を出し入れできるようにした場合には、クッションには、中空部(5)への空気の出し入れと封入が可能な空気出入口及び栓(7)が設けられる。
空気出入口及び栓(7)は、簡易まくらやビニールプールなどに用いられるもの、その他各種の材質、形状、構造のものを採用することができる。
空気出入口及び栓(7)は、各図面においては、図示しやすいように便宜上見える位置に記載しているが、実際には他のいずれの位置に設けてもよい。見えにくく目立たない位置、栓が外れにくい位置、クッション性や身体の運動に影響を与えにくい位置に設けることが好ましい。
【0035】
次に、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションは、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられ、空気を封入したときの中空部(5)より厚みが薄く、空気が移動不可能にされた固着部(6)を備えている。
本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの好ましい実施形態の一例としては、前記の固着部(6)は、図1〜4に示すように、左右の臀部部の2つの膨らみに対応する位置に2か所設けられた固着部(6)に位置を合わせて座った際に、臀部の左右の膨らみがそれぞれの固着部に配置されるように、略円形に形成されたものである。または略惰円形、略長円形、略多角形のいずれかの形状、その他の形状に形成されたものであってもよい。
図5,6,7は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
【0036】
図8図9図10は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の好ましい実施形態の一例としては、図8図9図10に示すように、前記の固着部(6)は、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に1か所設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、臀部の左右の膨らみが固着部の左右に配置されるように、略惰円形、略長円形、略瓢箪形、略多角形のいずれかの形状、その他の形状に形成されたものである。
なお、ここで略瓢箪形には、図8に示すように2つの略円形を結合して1つにした形状や、2つの略惰円形、略長円形、略多角形を結合して1つにした形状、楕円や長円の中央部分がくびれた形状、8の字を横向きにした形状など、様々な形状を含む。
【0037】
一方、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの形状やサイズは、上記に限定されず、様々な形状、数、サイズとすることができる。
さらに固着部(6)の形状や数、サイズは、上記に限定されず、様々な形状、数、サイズとすることができる。固着部(6)は3か所以上設けられていてもよい。
図11は、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションの別の形態の一例を示す平面図である。
【0038】
固着部(6)は、クッション本体が、2枚の非通気性シート(1)を重ね合わせた上でその外周部(2)を、熱圧着、接着その他の方法により固着させたものであるときは、固着部においても、2枚のシートが熱圧着、接着その他の方法により固着させたものとして、空気を封入したときの中空部(5)より厚みが薄く、空気が移動不可能にされていればよい。
また、固着部(6)は、空気を封入したときの中空部(5)より厚みが薄く、空気が移動不可能にされていればよいため、弾力のある素材あるいは空気等を、あらかじめ内部に封入したものであってもよい。
【0039】
以上の構成を採用したことにより、本発明の腰痛対策用のクッションまたは携帯クッションを用いれば、座ったときに、身体の重心の移動にしたがい、中空部(5)に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行うことができる。
その使用方法の一例について説明する。
図2に示すように、中空部(5)に最大空気容量の空気を封入した状態とした場合には、中空部(5)に封入された空気はクッションがパンパンに張るほどに充填されており、中空部(5)内を自由に空気を移動させることは難しいが、自然に運動し続けることが面倒あるいは苦痛な状態のときには、このように空気を最大限に充填して通常のクッションとして使用することができる。
【0040】
一方、座った状態で自然に運動を行いたい場合には、図3に示すように空気の量を調整し、中空部(5)に最大空気容量より少ない空気を封入した状態として、中空部(5)内を自由に空気を移動可能にすることにより、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられた固着部(6)に位置を合わせて座った際に、身体は常に自然に動くので、同じ状態で静止し続けて腰痛の原因となることを防ぎ、骨盤や脊椎も健康な状態を保つことができる。
また、図4に示すように、身体の重心を左右に移動させ、左右への移動を繰り返す状態を続けて積極的に運動することを取り入れたり、同様に前後への移動を繰り返したり、あるいは身体の重心をらせん状の回転運動を繰り返す状態を続けるなどして、積極的に運動することを取り入れることができる。
好ましい運動方法の一例としては、頭の位置は動かさず、骨盤を傾斜させる(前傾・後傾させる/骨盤を右傾・左傾させる/骨盤を角度を旋回させる)といった方法があげられる。頭を動かさないことで、重心はほぼセンターのままわずかな移動をし、骨盤の動きに連動して背骨がくねくねし、周囲の筋肉も緩んでよい方向に作用する。本発明のクッションの構造によって、こうしたごくわずかな重心の移動だけでも、骨盤の可動域が大きくなり、連動する背骨が動き、周囲の筋肉を柔らかくする(緩める)作用をもたらす。
このように、いつでも、座ったままで他のことをしながらでも自然に腰痛を防止し、運動をすることができ、球形のボール状の椅子のように転倒の心配もなく、場所もとらず、しかも携帯することができるため、どこでも使用することができる。
【0041】
以上、本発明の腰痛対策用のクッション及び携帯クッションの構成について説明したが、本発明のクッションを一定期間用いた被験者の身体パフォーマンスの測定結果について、ここで説明する。
脊柱(背骨)は身体の中心にあり、すべての運動に関わっていることから、脊柱に対する運動を日々取り入れることで、柔軟性の改善、筋出力の改善などに寄与することが期待される。
そこで、理学療法士による研究・効果実証試験として、調査対象として東京都内のI高校野球部部員を被験者とし、今回開発した本発明のクッションを椅子に設置して、2週間使用した際の使用前・使用後の身体機能を測定した。
以下、表1〜表6は、被験者A〜Z,a〜gの33名が、本発明のクッションを使用した際の使用前・使用後の身体機能測定結果を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1は、使用前後における身体柔軟性の、使用前・使用後の比較として、下肢伸展股関節屈曲角度(Straight Leg Range : )を測定したものである。
【0044】
【表2】
【0045】
表2は、片足膝を伸ばしたまま足を上げられる角度の、使用前・使用後の比較として、視床間距離(Finger Flore Distance : FFD )を測定したものである。
【0046】
【表3】
【0047】
表3は、立位で前屈して床と指の距離の、使用前・使用後の比較として、踵殿部距離(Heel Hip Distance : HHD)を測定したものである。
【0048】
【表4】
【0049】
表4は、うつ伏せで片膝を曲げて踵とお尻の距離の、使用前・使用後の比較として、中指中指間距離(Middle finger Middle finger Distance)を測定したものである。
【0050】
【表5】
【0051】
表5は、立位で背中で両手指を上方と下方から斜めに近づけた時の左右中指指尖間距離の、使用前・使用後の比較として、左右中指指尖間距離を測定したものである。
【0052】
【表6】
【0053】
表6は、背臥位で股関節屈曲した時の股関節内外旋の角度の、使用前・使用後の比較として、股関節内外旋角度を測定したものである。
【0054】
表1〜表6に示したいずれの測定結果においても、今回開発した本発明のクッションを椅子に設置して、2週間使用した際の使用前・使用後の身体機能を測定した数値の変化は、これら数値を統計学的処理した結果、身体パフォーマンスの向上の観点からの有意な変化が見られた。
本発明のクッション及び携帯クッションを一定期間使用した結果からも、脊柱に対する運動を日々取り入れることで、柔軟性の改善、筋出力の改善などに寄与することが期待され、腰痛対策としても効果が期待されることが、一定程度裏付けられたものといえ、これらは前記した従来発明とは異なる作用によるものである。
【0055】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、全体の形状や構造に改良を重ね、腰に不要な負荷をかけずに、骨盤を動かすことができるようにしたクッションを、簡易な構造で実現し、固まった体をほぐし、体が固まらないようにすることにより、腰痛の予防や改善などの対策をするための、腰痛対策用のクッションを提供することができる。
特に、クッション内部を一つの空気室とし、空気がクッション内部を移動することにより、姿勢の維持、変化が楽にでき、空気圧がバランスして安定的に腰部を支持することができるとともに、座ったときに、身体の重心の移動にしたがい、中空部に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行えるようにした、腰痛対策用のクッションを提供することができる。
これにより、いつでもどこでも、座ったままで無理なく運動をすることができ、座るだけでも腰痛の防止、改善、さらには身体能力の向上などの効果を得ることができる。
さらに本発明によれば、空気がクッション内部を移動可能であるとともに、空気の出し入れを可能にすることにより、いつでもどこでも使用可能な、気軽に携帯して持ち運べる腰痛対策用の携帯クッションを提供することができる。
さらに、本発明の好ましい形態を採用すれば、安価に、大量に本発明の腰痛改善用の携帯クッションを製造し、提供することが可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12