【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、腰痛を軽減するための各種の椅子、クッションの多くは、骨盤や背骨を正しい形状に支持するために、身体形状に合わせた大掛かりな構造とサイズを有しており、さらに適度な反発力を発揮するように発泡ウレタンその他の固形の弾性材料が用いられている。
こうした従来の市販品は、腰・姿勢を固定していたり抵抗性を与え支持するものであって、腰痛改善や予防などの対策や、身体パフォーマンスの向上につながるような、背骨の運動をサポートする効果を発揮するものではなかった。
また、大掛かりな構造と、サイズ、体積を有するため、使用しない時には空気を抜くといった、気軽に携帯して持ち運べる携帯クッションに応用することもできなかった。
【0009】
クッション材として空気を用いているものでは、たとえば特開2008−6234「ヒップアップ効果・脳力活性・腰痛改善等クッション」がある。
この発明は、必要かつ十分な座圧分散効果と点圧(指圧)効果を同時に両立させ、腰痛等の低下や、お尻(臀部)のたるみ及び背筋等の歪みといった身体的・苦痛を解決できるクッションである。
この発明においてはクッション材に空気を用いているとはいっても、天然ゴム等により成形したソフトゴム球体を組み合わせて、長時間の座位や同一姿勢によっても座圧分散効果を失うことなく、同時にソフトゴム球体による適切かつ十分な反発力による点圧(指圧)効果を得られるようにしているものである。
しかしながら、むしろ腰痛の予防や改善などの対策のため、さらに身体パフォーマンス向上の効果を得るためには、適度な安定と不安定とがバランスした絶妙な安定感を備えていることが重要である。
上記発明では、複数の球体を配置して、ソフトなクッション性がある、座った時の安定感があるという構造を採用しているため、そのような作用が発揮されるものではない。
【0010】
また、特開2002−272563「エアー座布団及びエアー座布団を備えた椅子」においては、姿勢の変化が楽におこなえ、変化後においては空気圧がバランスして安定的に支持することができ、長時間にわたって座位を続けることが楽になり、座りごこちのよいエアー座布団及びエアー座布団を備えた椅子が開示されている。
この発明は、左右方向に少なくとも二つ以上の空気室を並置し、各空気室を狭くした連通部にて連通する。この構成により、姿勢の変化に伴う座位の変化に応じて狭くした連通部より空気が空気室間を移動することができ、姿勢の変更を容易におこなうことができる。姿勢の変更後においては連通している空気室内の空気圧がバランスして安定的に体重を支持できる、というものである。
上記発明の明細書中において、空気を利用した従来のクッション等については、「従来、上下のシート間にエアーを封入したエアー座布団においては、内部が一つの空気室となっているか、あるいは、複数の独立した空気室に仕切られているものである。」([0002])とされており、本明細書中の[0002]において述べた従来の携帯クッションもこのようなものである。
【0011】
従来の携帯クッションに対し、上記の特開2002−272563においては、「ところで、エアー座布団に座った場合に、座った姿勢に応じてエアー座布団が変形するのであるが、内部が一つの空気室となっているか、あるいは、複数の独立した空気室に仕切られていることから、座位を変化させて姿勢を変える場合に、内部圧が対応して変化することができず、姿勢を変化させ難いことから、長時間にわたって座位を続けなければならない事務、勉強、車、電車及び飛行機などにおいて苦痛を伴うという問題があった。」([0003])とされている。
【0012】
しかしながら、こうした課題を解決するため、上記の特開2002−272563においては、左右方向に少なくとも二つ以上の空気室を並置し、各空気室を狭くした連通部にて連通する構成により、姿勢の変化に伴う座位の変化に応じて狭くした連通部より空気が空気室間を移動することができ、「姿勢の変化が楽におこなえ、変化後においては空気圧がバランスして安定的に支持することができ、長時間にわたって座位を続けることが楽になり、座りごこちのよいエアー座布団及びエアー座布団を備えた椅子を提供する」([0004])という方法を採用している。
このため、この発明においては、空気室を仕切る壁が固定された状態で複数設けられている。
【0013】
しかしながら、この発明においても、クッション性と座った時の安定感を備えた構造が採用されている。
そのため、腰痛の予防や改善などの対策と、身体パフォーマンス向上の効果を出すのに重要な、骨盤の可動域と適度な安定と不安定とがバランスした絶妙な安定感を得られるものではない。
腰痛改善や予防などの対策のため、さらに身体パフォーマンス向上の効果を得るために重要な、背骨の運動をサポートする構造や機能を備えるものではない。
【0014】
さらに、上記いずれの発明においても、大掛かりな構造と、サイズ、体積を有するため、気軽に移動したり、携帯したりできるようなものではなく、一定の場所に置いておくものばかりである。こうした構成では、使用しない時には空気を抜くといったことができないばかりか、折り畳んだりすることができず、体積がかさばるものである。
このため、腰痛対策の機能を、気軽に携帯して持ち運べる携帯クッションに応用することはできなかった。
【0015】
そこで本発明においては、上記の様々な課題を解決し、全体の形状や構造に改良を重ね、腰に不要な負荷をかけずに、骨盤を動かすことができるようにしたクッションを、簡易な構造で実現し、固まった体をほぐし、体が固まらないようにすることにより、腰痛の予防や改善などの対策をするための、腰痛対策用のクッションを提供することを目的とする。
特に、クッション内部を一つの空気室とし、空気がクッション内部を移動することにより、姿勢の維持、変化が楽にでき、空気圧がバランスして安定的に腰部を支持することができるとともに、座ったときに、身体の重心の移動にしたがい、中空部に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行えるようにした、腰痛対策用のクッションを提供することを目的とする。
さらに本発明の別の目的は、空気がクッション内部を移動可能であるとともに、空気の出し入れを可能にすることにより、いつでもどこでも使用可能な、気軽に携帯して持ち運べる腰痛対策用の携帯クッションを提供することである。
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
非通気性シートからなり、中空部に空気を封入できるクッションであって、
最大空気容量より少ない体積の空気を封入したときに、左右の臀部の周囲を自由に空気が移動可能な中空部と、
左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられ、空気を封入したときの中空部より厚みが薄く、空気が移動不可能にされた固着部と、を備え、
座ったときに、身体の重心の移動にしたがい、中空部に封入された空気が自由に移動することにより、座った状態で自然に運動を行えるようにした、腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、
前記のクッションは、2枚の非通気性シートを重ね合わせた上で、その外周部と、固着部とにおいて2枚のシートが固着されたものである、請求項1に記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、
前記2枚の非通気性シートは、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、身体の後方側には、左右の臀部に対応した2つの後方膨らみを持つ形状に形成された、請求項1または2に記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、
前記2枚の非通気性シートは、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、身体の前方側には、左右の腿に対応した2つの前方膨らみを持つ形状に形成された、請求項1〜3のいずれかに記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、
前記の固着部は、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に2か所設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、臀部の左右の膨らみがそれぞれの固着部に配置されるように、略円形または略惰円形、略長円形、略多角形のいずれかの形状に形成された、請求項1〜4のいずれかに記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、
前記の固着部は、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に1か所設けられた固着部に位置を合わせて座った際に、臀部の左右の膨らみが固着部の左右に配置されるように、略惰円形、略長円形、略瓢箪形、略多角形のいずれかの形状に形成された、請求項1〜4のいずれかに記載の腰痛対策用のクッションであることを特徴とする。
【0022】
また、請求項7に記載の発明は、
前記のクッションには、中空部への空気の出し入れと封入が可能な空気出入口及び栓が設けられた、請求項1〜5のいずれかに記載の腰痛対策用の携帯クッションであることを特徴とする。