【実施例1】
【0019】
最初に、
図1〜
図9を参照して、本発明の実施例1のロッキング強弱調整具R
1 を事務用の回転椅子Cに適用した例について説明する。回転椅子Cは、脚部Dに対して座部Aが回転可能に支持され、当該座部Aに対して背部Bが、ユニット構造のロッキング強弱調整具R
1 を介してロッキング可能に連結された構成であり、座部Aと背部Bとの連結構造自体は、「背景技術」の項目で説明した通りである。
【0020】
ユニット構造のロッキング強弱調整具R
1 は、
図8及び
図9に示されるように、有底円筒状の調整ハンドルH
1 と、開口側端部が当該調整ハンドルH
1 の被挿入側開口に部分挿入される同じく有底円筒状のバネカバーE
1 と、当該調整ハンドルH
1 とバネカバーE
1 との各内部空間の間に亘って内装されるコイルバネSと、当該バネカバーE
1 の底部12と当該コイルバネSの一端部との間に配置されるバネ座金61とで構成され、前記調整ハンドルH
1 と前記バネカバーE
1 とは、係止構造により前記調整ハンドルH
1 及びバネカバーE
1 の円筒軸心方向に相対的にスライド可能であって、しかも互いに分離可能に連結されることで、全体がユニット構造となっている。
【0021】
調整ハンドルH
1 及びバネカバーE
1 は、いずれも樹脂製である。有底円筒状の調整ハンドルH
1 の底部1は、コイルバネSの圧縮による復元力に抗し得るように、本体周壁部5に比較して数倍の肉厚となるような厚肉に形成され、当該底部1の中心部には、座部Aの調整ボルト42が挿入されるボルト挿通孔2が貫通形成されて、前記底部1の内側における当該挿通孔2の周縁部には、ナット体Nが埋設され、当該ナット体Nの抜止め外鍔部Naは、当該底部1の段差部に配置されて、当該底部1の内面側に部分埋設される座金状の抜止め体4により、本体周壁部5の内部への移動が防止されている。本体周壁部5の開口側の端部の内周面には、周方向に沿って所定間隔をおいて複数の被係止突起6が、当該本体周壁部5の中心側に向けて突設されている。当該被係止突起6は、縦断面が三角形状に形成されて、上面及び下面は、バネカバーE
1 に設けられた後述の係止片16の分割係止外鍔部14aが本体周壁部5の半径方向に沿ってスライドし易いように傾斜面状に形成されている。なお、図中7は、調整ハンドルH
1 を掴んで回転させる際に、その滑りを防止するために、本体周壁部5の外周面に周方向に沿って所定間隔をおいて円筒軸心方向に沿って設けられた複数本の滑止め用溝部を示す。
【0022】
一方、有底円筒状のバネカバーE
1 の本体周壁部11は、その開口側端部が、前記調整ハンドルH
1 の本体周壁部5の開口側端部の内側に部分挿入可能なように、当該調整ハンドルH
1 よりも小径に形成されている。バネカバーE
1 は、その底部12に調整ボルト42を挿通するためのボルト挿通孔13が形成されている。当該ボルト挿通孔13は、背部Bのロッキング時に、座部Aに対する配置角度が変化する調整ボルト42と干渉しないような大きさになっている。バネカバーE
1 の開口側の端部には、外鍔部14が全周に形成され、当該外鍔部14から本体周壁部11の開口側端部に至る間には、複数のスリット15が周方向に沿って所定間隔をおいて円筒軸心方向に設けられることで、本体周壁部11の半径方向に沿って内側に弾性変形可能な複数の係止片16が形成されている。前記外鍔部14は、複数の前記スリット15により周方向に沿って分割されることで、分割係止外鍔部14aとなっている。
【0023】
そして、上記した調整ハンドルH
1 、バネカバーE
1 、コイルバネS、及びバネ座金61とをユニット化させるには、
図9に示されるように、バネカバーE
1 の底部12とコイルバネSの一端部との間にバネ座金61を配置させて、調整ハンドルH
1 及びバネカバーE
1 の各内部空間にコイルバネSを収容した状態で、調整ハンドルH
1 とバネカバーE
1 とを互いに近接させると、
図9(a)に示されるように、バネカバーE
1 の複数の分割係止外鍔部14aのいずれかが、調整ハンドルH
1 の各被係止突起6に当接する。この状態で、調整ハンドルH
1 に対してバネカバーE
1 を僅かに傾斜させた状態で、調整ハンドルH
1 に対してバネカバーE
1 を押圧すると、調整ハンドルH
1 の被係止突起6に当接している複数のバネカバーE
1 の分割係止外鍔部14aのうち、最も低い部分に位置している特定の1個の分割係止外鍔部14aを含む1又は複数の係止片16が内側に弾性変形されることで、当該特定の1又は複数の分割係止外鍔部14aは、被係止突起6を乗り越えて、当該被係止突起6の内側に配置され〔
図9(b)参照〕、この状態で、調整ハンドルH
1 に対してバネカバーE
1 を回動させると、バネカバーE
1 の残りの分割係止外鍔部14aが、調整ハンドルH
1 の各被係止突起6の内側に配置されて、
図9(c)に示されるように、調整ハンドルH
1 、バネカバーE
1 、コイルバネS、及びバネ座金61とが一体に組み付けられて、ロッキング強弱調整具R
1 がユニット化される。ロッキング強弱調整具R
1 がユニット化された状態では、後述のように、特殊な操作を行わない限り、調整ハンドルH
1 とバネカバーE
1 とが分離されることはない。
【0024】
一方、バネ座金61のグリスアップを行う等の調整ハンドルH
1 とバネカバーE
1 とを分離させる必要が生じた場合には、上記の組付け操作の逆の操作を行えば、調整ハンドルH
1 とバネカバーE
1 とを分離させられる。なお、上記組付け例では、調整ハンドルH
1 の底部1とコイルバネSの他端部との間にバネ座金61が配置されていないのは、当該底部1に埋設された座金状の抜止め体4が、間接的にバネ座金としての機能を果すためである。しかし、調整ハンドルH
1 の底部1とコイルバネSの他端部との間にバネ座金61を配置することで、当該コイルバネSの両端部にバネ座金61を配置することは可能である。
【0025】
そして、
図5及び
図6に示されるように、座部Aと脚部Dとが一体となった椅子本体を上下反転させて、背部Bを構成する背部アーム51の水平連結部51aの先端部の被係合溝53に、座部Aの係合ピン45を挿入して係合させると共に、当該水平連結部51aの挿通長孔54に、座部Aの裏面から突出している調整ボルト42を挿通させることで、座部Aの裏面に設けられた収納凹部43に、背部Bの前記水平連結部51aの外側に嵌め込まれた組付ブラケット52を収納させると、当該組付ブラケット52から調整ボルト42が所定長だけ突出される。
【0026】
ここで、
図5に示されるように、上下反転された座部Aから上方に突出している調整ボルト42の直上に、バネカバーE
1 を下方にしてロッキング強弱調整具R
1 を垂直に配置すると、調整ハンドルH
1 の複数の被係止突起6と、バネカバーE
1 の複数の分割係止外鍔部14aとが係止されることで、調整ハンドルH
1 に対してバネカバーE
1 が吊り下げられた状態で、複数部品の組付け状態が維持されている。この状態で、ユニット化されたロッキング強弱調整具R
1 のバネカバーE
1 のボルト挿通孔13に対して調整ボルト42の突出部を、その先端がナット体Nに達するまで挿通させた状態で、調整ハンドルH
1 を所定方向に回転させると、
図5及び
図6に示されるように、当該調整ボルト42の先端部の雄ねじ部42bと、調整ハンドルH
1 の底部1に埋設されたナット体Nとが螺合され、当該調整ハンドルH
1 の累積回転数が所定値に達すると、コイルバネSの圧縮が開始される。コイルバネSの圧縮量の増大に伴って、調整ハンドルH
1 に対するバネカバーE
1 の挿入長が増大される。調整ハンドルH
1 によるコイルバネSの圧縮量の調整により、座部Aのロッキングの強弱が調整される。
【0027】
このように、背部Bの背部アーム51及びロッキング強弱調整具R
1 を介して座部Aと背部Bとを連結する際に、当該ロッキング強弱調整具R
1 を構成する調整ハンドルH
1 、バネカバーE
1 、コイルバネS及び1個のバネ座金61は、調整ハンドルH
1 とバネカバーE
1 との各内部空間にコイルバネS及び1個のバネ座金61が内装された状態で、調整ハンドルH
1 に設けられた複数の被係止突起6と、バネカバーE
1 に設けられた複数の係止片16とが係止可能であって、しかも調整ハンドルH
1 とバネカバーE
1 とは、円筒軸心方向にスライド可能な状態で、一体に組み付けられてユニット化されていて、調整ハンドルH
1 とバネカバーE
1 とは、両者の円筒軸心が所定角度交差するように、両者を相対的に傾けて、捩じるように回動させるという複雑な操作を行わない限り、両者が分離されることはない。このため、ユニット化されたロッキング強弱調整具R
1 を用いて行う座部Aと背部Bとの連結は、ロッキング強弱調整具R
1 を構成する各部品をを組み付けながら行う必要がないために、迅速に行える。また、座部Aと脚部Dとが一体となった椅子本体と背部Bとを分離させて保管・運搬を行う場合においても、ロッキング強弱調整具R
1 は、調整ハンドルH
1 とバネカバーE
1 とが容易には分離されてない状態で係止されているため、保管・運搬の途中で構成部品が分離したり、或いは紛失の恐れもないので、その取り扱いが容易となる。
【0028】
このため、
図7に示されるように、椅子Cの使用時において、背部Bに後方への傾動力を加えて、背部Bをロッキングさせると、調整ハンドルH
1 に対するバネカバーE
1 の挿入長が長くなって、コイルバネSの圧縮量を増大させることで、当該背部Bを原位置に復帰させる復元力が発生して、当該背部Bは、ロッキング状態になると共に、椅子Cの背部Bから人体の背部を離すと、椅子Cの背部Bは、前記復元力により原位置に復帰される。
【0029】
また、バネカバーE
1 の複数の係止片16と調整ハンドルH
1 の複数の被係止突起6は、いずれも調整ハンドルH
1 の内部空間に収容配置されて、外部に露出しない構造となるため、外観が阻害されないと共に、前記係止片16及び被係止突起6が周辺の異物に引っ掛かることもない。
【実施例2】
【0030】
次に、
図10〜
図12を参照して、本発明の実施例2のロッキング強弱調整具R
2 について説明する。ロッキング強弱調整具R
2 は、調整ハンドルH
2 、バネカバーE
2 、コイルバネS及び2個のバネ座金61との計4個の部品を組み付けてユニット化したものであるが、前記調整ハンドルH
1 と異なり、バネカバーE
2 は、調整ハンドルH
2 よりも大径に形成されて、調整ハンドルH
2 の開口側端部が、バネカバーE
2 の開口側端部の内側に部分挿入された構成となっている。即ち、有底円筒状の調整ハンドルH
2 は、本体周壁部21の円筒軸心方向の一端部に厚肉の底部22が形成され、当該底部22の中心部にはボルト挿通孔23が形成されて、当該底部22における内部空間に近い部分には、ナット体Nが埋設され、開口側の端部には、外鍔状の被係止部24が全周に亘って形成され、前記本体周壁部21の外周面には、円筒軸心方向に沿って複数の滑止め用凹部25が形成されている。また、底部22の内面には、当該部分に配置されるバネ座金61のズレ止めを行う複数のズレ止め凸部26が周方向に所定間隔をおいて半径方向に沿って一体に設けられている。
【0031】
一方、有底円筒状のバネカバーE
2 の本体周壁部31の開口側端部の内周面には、周方向に沿って所定間隔をおいて複数の係止突起32が周方向に沿って所定間隔をおいて内方に向けて突出して形成され、本体周壁部31における前記係止突起32の周方向の両端部には、それぞれ短いスリット33が形成されることで、内側に前記係止突起32が形成されて、半径方向の外側に弾性変形可能な複数の係止片34が形成されている。バネカバーE
2 の底部35の中心部には、ボルト挿通孔36が形成され、当該底部35の内面には、配置されるバネ座金61のズレ止めを行う複数のズレ止め片37が周方向に沿って所定間隔をおいて半径方向に沿って同一位置に一体に設けられている。
【0032】
そして、実施例1のロッキング強弱調整具R
1 と同様にして、バネカバーE
2 の内側に、伸縮方向の両端部にそれぞれバネ座金61を配置した状態で、コイルバネSを収容配置させておいて、調整ハンドルH
2 とバネカバーE
2 の各円筒軸心を相互に僅かに傾斜させた状態で、バネカバーE
2 の特定の係止片34に対して調整ハンドルH
2 の鍔状の被係止部24を押し付けると、当該係止片34が外側に弾性変形されて、当該係止片34の内側に鍔状の被係止部24の一部が配置され、この状態で、調整ハンドルH
2 に対してバネカバーE
2 を所定方向に回動させると、
図11に示されるように、バネカバーE
2 の複数の係止突起32の内側に、調整ハンドルH
2 の鍔状の被係止部24が配置されて、互いに係止することで、調整ハンドルH
2 とバネカバーE
2 とは、相互の円筒軸心が合致した状態では、円筒軸心方向に沿ってスライド可能となって、互いに連結されて、取り外れることはない。これにより、ロッキング強弱調整具R
2 を構成する複数の部品は、組み付けられてユニット化されることで、その取扱い時に、バラバラになることはない。
【0033】
実施例1のロッキング強弱調整具R
1 と同様にして、座部Aの裏面側に突出している調整ボルト42を、バネカバーE
2 及び調整ハンドルH
2 の各ボルト挿通孔36,23に挿通させて、当該調整ボルト42の雄ねじ部42bの先端部を、調整ボルト42の底部22に埋設されたナット体Nに、コイルバネSの圧縮が開始させるまで螺合させると、
図12に示されるように、バネカバーE
2 の底部35は、当該コイルバネSの圧縮復元力により、座部Aの収納凹部43に組み込まれている組付ブラケット52の底板部52aに弾接させられて、当該座部Aに対して背部Bがロッキング可能に連結される。
【0034】
実施例2のロッキング強弱調整具R
2 では、バネカバーE
2 の外径は、調整ハンドルH
2 の外径よりも大きくて、当該バネカバーE
2 と調整ハンドルH
2 との段差部は、下方を向くために、当該段差部にゴミ類が溜まらない利点がある。
【0035】
また、調整ハンドルとバネカバーの開口側端部に設けられて、互いに係止される係止部及び被係止部は、上記した実施例1,2の構造に限定されるものではなく、調整ハンドルとバネカバーとが円筒軸心方向に沿ってスライド可能な状態で、当該調整ハンドルとバネカバーとを分離されることなく連結できれば、いかなる構造であってもよい。
【0036】
なお、実施例1,2は、本発明に係るロッキング強弱調整具R
1 ,R
2 を回転椅子に適用した例であるが、脚部に対して座部が固定されている固定椅子に対しても適用可能である。