【解決手段】空気入りタイヤは、トレッド部に設けられた陸部20と、陸部20に設けられた複数のサイプ30と、隣り合う2つのサイプ30の間に配置された少なくとも1つの凹部34とを備える。サイプ30は、サイプ長さ方向の一部にサイプ30の底面からトレッド表面へ向けて突出する底面突起42,44,46を備え、凹部34が、底面突起42,44,46に近接させて設けられている。
前記凹部の両側の前記サイプの間の距離をW1、前記凹部から前記底面突起までのトレッド表面に沿った距離をW2とすると、W2/W1が0.1以上0.3以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図面に基づき説明する。なお、本実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。また図面は、説明の都合上、長さや形状等が誇張されて描かれたり、模式的に描かれたりする場合がある。しかしこのような図面はあくまでも一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
なお、以下の説明における空気入りタイヤの特徴は、特に記載が無い場合は、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤの無負荷状態での特徴である。ここで、正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」のことである。また、正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」のことである。ただし空気入りタイヤが乗用車用である場合は、正規内圧は180kPaとするが、タイヤに、Extra Load、又は、Reinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。
【0012】
ちなみに、後述する正規荷重とは、JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「LOAD CAPACITY」のことである。ただし空気入りタイヤが乗用車用である場合は、正規荷重は、内圧180kPaの対応荷重の85%である。
【0013】
本実施形態の空気入りタイヤは、トレッド部の構造を除き一般的なラジアルタイヤと同様の構造を有する。本実施形態の空気入りタイヤの大まかな構造を例示すると、次の通りである。
【0014】
まず、タイヤ幅方向両側にビード部が設けられている。ビード部は、円形に巻かれた鋼線からなるビードコアと、ビードコアの径方向外側に設けられたゴム製のビードフィラーとからなる。タイヤ幅方向両側のビード部にはカーカスプライが架け渡されている。カーカスプライはタイヤ周方向に直交する方向に並べられた多数のプライコードがゴムで被覆されたシート状の部材である。カーカスプライは、タイヤ幅方向両側のビード部の間で空気入りタイヤの骨格形状を形成するとともに、ビード部の周りでタイヤ幅方向内側から外側に折り返されることによりビード部を包んでいる。カーカスプライの内側には空気の透過性の低いゴムからなるシート状のインナーライナーが貼り付けられている。
【0015】
カーカスプライのタイヤ径方向外側には1枚又は複数枚のベルトが設けられ、ベルトのタイヤ径方向外側にはベルト補強層が設けられている。ベルトはスチール製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層は有機繊維製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層のタイヤ径方向外側には接地面を有するトレッド部が設けられている。また、カーカスプライのタイヤ幅方向両側にはサイドウォールが設けられている。これらの部材の他にも、タイヤの機能上の必要に応じて、ベルト下パッドやチェーハー等の部材が設けられている。
【0016】
次にトレッド部について説明する。トレッド部には複数の陸部及び複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。1つの陸部は、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤに正規荷重が負荷されたときに、1つの連続する接地面を形成する。
【0017】
陸部を有するトレッドパターンは、限定されないが、例えば
図1に示すようなトレッドパターンである。
図1のトレッドパターンでは、タイヤ周方向(図面において矢印Xで示す方向)に延びる4本の主溝10と、タイヤ幅方向(図面において矢印Yで示す方向)に延びる多数の横溝12とが設けられている。そして、主溝10及び横溝12によって分割された多数の陸部が形成されている。
【0018】
図1の実施形態における陸部として、タイヤ中心線CLに近い2本の主溝10に挟まれた複数のセンターブロック20と、タイヤ幅方向Yの両側においてタイヤ接地端Eに近い主溝10とタイヤ接地端Eとに挟まれた左右一対のショルダーブロック22と、センターブロック20とショルダーブロック22との間の複数のメディエイトブロック24とが形成されている。いずれのブロックもタイヤ周方向Xに並んでブロック列を形成している。
【0019】
なお、主溝は、
図1の主溝10のようにタイヤ周方向Xに直線状に延びるものでなくても良く、例えば屈曲しながらタイヤ周方向Xに延びるジグザグ状のものや、湾曲しながらタイヤ周方向Xに延びる波形状のものや、タイヤ周方向Xに対して斜めに延びるものであっても良い。また、陸部は、タイヤ周方向Xに延びる主溝によって分割され横溝によって分割されない、タイヤ周方向Xに延びるリブであっても良い。
【0020】
次に、陸部の構造について、センターブロック20を例に説明する。
図2に示すように、センターブロック20には、タイヤ幅方向Yに延びるサイプ30がタイヤ周方向Xの間隔をあけて複数本設けられている。サイプ30とは、幅の狭い溝のことであり、より正確には、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤが接地し、そこへ正規荷重が負荷されたときに、接地面への開口部が閉じる溝のことである。
【0021】
サイプ30は、
図2及び
図3に示すように、第1サイプ31と、第2サイプ32と、第1サイプ31と第2サイプ32の端部同士をサイプ長さ方向に突き合わせた接合部33とを備える。サイプ30は、第1サイプ31と第2サイプ32とが接合部33において連結され1本のサイプ30をなしている。
【0022】
第1サイプ31は、センターブロック20のタイヤ幅方向Yの一方側を区画する主溝10からセンターブロック20の幅方向中央部へ向けて順番に、外側直線部31aと波状部31bと内側直線部31cとを備える。
【0023】
外側直線部31aは、主溝10からタイヤ幅方向Yへ直線状に延びる幅の狭い溝であり、一端が主溝10に開口し、他端が波状部31bに接続されている。外側直線部31aの少なくとも一部には、第1サイプ31の底面からトレッド表面へ向けて突出する外側底面突起42が設けられている。外側底面突起42は、外側直線部31aの開口端から所定長さ(例えば2〜3mm)にわたって、外側直線部31aを区画する一対の壁面を連結するように設けられている。外側底面突起42は、第1サイプ31の底面からの突出高さがサイプ長さ方向に一定になっている。
【0024】
波状部31bは、トレッド表面に垂直な方向から見た時に、外側直線部31aからタイヤ幅方向Yへ蛇行しながら延びる波形状の幅の狭い溝であり、一端が外側直線部31aに接続され、他端が内側直線部31cに接続されている。
【0025】
内側直線部31cは、波状部31bからタイヤ幅方向Yへ直線状に延びる幅の狭い溝であり、一端が波状部31bに接続され、他端が第2サイプ32の内側直線部32cに接続されている。内側直線部31cの少なくとも一部には、第1サイプ31の底面からトレッド表面へ向けて突出する内側底面突起44が設けられている。
【0026】
内側底面突起44は、内側直線部31cの波状部31b側から第2サイプ32側へ向かうほど第1サイプ31の底面からの突出高さが大きくなっており、接合部33において最も突出高さが高くなっている。
【0027】
第2サイプ32は、センターブロック20のタイヤ幅方向Yの他方側を区画する主溝10からセンターブロック20の幅方向中央部へ向けて順番に、外側直線部32aと波状部32bと内側直線部32cとを備える。
【0028】
外側直線部32aは、主溝10からタイヤ幅方向Yへ直線状に延びる幅の狭い溝であり、一端が主溝10に開口し、他端が波状部32bに接続されている。外側直線部32aの少なくとも一部には、第2サイプ32の底面からトレッド表面へ向けて突出する外側底面突起46が設けられている。外側底面突起46は、外側直線部32aの開口端から所定長さ(例えば2〜3mm)にわたって、外側直線部32aを区画する一対の壁面を連結するように設けられている。外側底面突起46は、第2サイプ32の底面からの突出高さがサイプ長さ方向に一定になっている。
【0029】
波状部32bは、外側直線部32aからタイヤ幅方向Yへ蛇行しながら延びるトレッド表面に垂直な方向から見て波形状の幅の狭い溝であり、一端が外側直線部32aに接続され、他端が内側直線部32cに接続されている。
【0030】
内側直線部32cは、波状部32bからタイヤ幅方向Yへ直線状に延びる幅の狭い溝であり、一端が波状部32bに接続され、他端が第1サイプ31の内側直線部31cに接続されている。内側直線部32cの少なくとも一部には、第2サイプ32の底面からトレッド表面へ向けて突出する内側底面突起44が設けられている。
【0031】
第2サイプ32に設けられた内側底面突起44は、内側直線部32cの波状部32b側から第1サイプ31側へ向かうほどサイプ30の底面からの突出高さが大きくなり、接合部33において突出高さが最も高くなっている。第2サイプ32に設けられた内側底面突起44は、接合部33において第1サイプ31に設けられた内側底面突起44と連結されている。言い換えれば、内側底面突起44は、第1サイプ31の内側直線部31cと第2サイプ32の内側直線部32cに跨がって設けられ、第1サイプ31及び第2サイプ32の底面からトレッド表面へ向かうほどサイプ長さ方向に短くなる先細形状をなし、内側底面突起44の先端が接合部33に位置している。
図3に例示する場合では、内側底面突起44の先端が、タイヤ径方向にトレッド表面と同じ位置まで突出している。ただし、内側底面突起44の先端の突出高さはこれに限定されず、内側底面突起44の先端が、トレッド表面よりサイプ30の底面側に位置してもよい。
【0032】
サイプ30を構成する第1サイプ31、第2サイプ32及び接合部33のそれぞれの深さ、つまり、外側底面突起42、46及び内側底面突起44が設けられていない位置(つまり、波状部31b、32b)の深さD2や、外側底面突起42、46が設けられた位置(つまり、外側直線部31a,32a)の深さD3、D4は限定されないが、各深さD2、D3、D4は一般的に主溝10の深さD1より浅い。
【0033】
図2及び
図3に示すように、センターブロック20において隣り合う2つのサイプ30の間には凹部34が設けられている。凹部34は、サイプ30と接触せず、かつ、サイプ30の外側底面突起42、46及び内側底面突起44に近接させて設けられている。凹部34は、トレッド表面への開口端の形状が円形をなしている。
【0034】
本実施形態において、凹部34からサイプ30の外側底面突起42,46までをトレッド表面に沿って最短距離で結ぶ距離W2aや、凹部34からサイプ30の内側底面突起44までをトレッド表面に沿って最短距離で結ぶ距離W2bは、1mm以上5mm以下であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることがより好ましい。
【0035】
また、上記距離W2a、W2bは、凹部34の開口端における直径Rの0.5倍以上2倍以下であることが好ましい。凹部34の両側のサイプの間の距離W1に対する上記距離W2a、W2bの比率W2a/W1及び比率W2b/W1が0.1以上0.3以下であることが好ましい。
外側底面突起42,46に近接させて設けた凹部34は、外側底面突起42,46から任意の方向に離れた位置に配置されてもよいが、
図2等に示すようにタイヤ幅方向Yにおいてサイプ30の外側底面突起42,46と重なるように配置されることが好ましい。つまり、凹部34をタイヤ周方向Xに投影した投影面が外側底面突起42,46と重なるように凹部34を配置することが好ましい。凹部34の中心がタイヤ幅方向Yにおいてサイプ30の外側底面突起42,46と重なるように配置されることがより好ましい。
【0036】
内側底面突起44に近接させて設けた凹部34は、内側底面突起44から任意の方向に離れた位置に配置されてもよいが、
図2等に示すようにタイヤ幅方向Yにおいてサイプ30の内側底面突起44の突出高さが最も大きい位置(つまり、接合部33)と重なるように配置されることが好ましく、凹部34の中心がタイヤ幅方向Yにおいて接合部33と重なるように配置されることがより好ましい。
【0037】
凹部34の深さdは、主溝10の深さD1より浅くすることが好ましく、主溝10の深さD1の1/4倍以上であることがより好ましく、主溝10の深さD1の1/4倍以上1倍以下であることがより好ましく、主溝10の深さD1の1/2倍以上1倍以下であることが更に好ましい。また、凹部34の深さdが、外側底面突起42、46が設けられた位置の深さD3、D4や、接合部33におけるサイプ深さより深いことが好ましい。一例を挙げると、主溝10の深さD1が8mmの場合、凹部34の深さdを0.05mm以上6mm以下とすることができる。
【0038】
凹部34の開口端における直径Rは、特に限定されないが、例えば、1.5mm以上3.5mm以下とすることができる。
【0039】
内側底面突起44のような先細形状の底面突起に近接させて設けた凹部34の開口端における直径Rは、主溝10の深さD1の1/2の位置における底面突起のサイプ長さ方向に沿った長さの1/2倍以上2倍以下であることが好ましい。
【0040】
また、内側底面突起44のような先細形状の底面突起に近接させて設けた凹部34では、底部側ほど(開口端から底部へ向かうほど)内径が漸次大きくなってもよい。
【0041】
なお、
図2及び
図3に示すサイプ30はタイヤ幅方向Yに延びているが、サイプの延びる方向はこれに限定されず、例えばタイヤ周方向Xや、タイヤ周方向X及びタイヤ幅方向Yに対して斜めの方向であっても良い。
【0042】
また、
図2及び
図3に示すサイプ30は、トレッド表面に対して垂直な方向に深くなっているが、トレッド表面に垂直な方向に対して若干斜めの方向に深くなっていても良い。
【0043】
また、凹部34の開口端の形状は、
図2に示すような円形に限定されず、例えば四角形、五角形、六角形等の多角形であっても良い。
【0044】
図2におけるサイプ30は、直線状の直線部31a、31c,32a,32cと波形の波状部31b、32bとを交互に連結したサイプであるが、サイプ30の形状はこれに限定されない。
図2に示すようなサイプ30に代えて、例えば、
図4(a)に示すようなセンターブロック20のタイヤ幅方向の略全体が波状部からなるサイプ130や、
図4(b)に示すような直線部と波状部とを連結したサイプ230や、
図4(c)に示すようなセンターブロック20のタイヤ幅方向の全体が直線部からなるサイプ330を設けてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、サイプ30の長さ方向の両端部及び中央部に、外側底面突起42,46及び内側底面突起44を設け、外側底面突起42,46及び内側底面突起44に近接する位置に凹部34を設けたが、底面突起及び凹部34を設ける位置はこれに限定されない。例えば、
図5(a)〜(d)に示すように、サイプ30、130,230、330の長さ方向の両端部に底面突起を設けず、サイプ30、130,230、330の長さ方向の中央部(接合部)に内側底面突起44を設け、内側底面突起44の近傍に凹部34を設けてもよい。あるいは、例えば、
図6(a)〜(d)に示すように、サイプ30、130,230、330の長さ方向の中央部に接合部や底面突起を設けず、サイプ30、130,230、330の長さ方向の両端部に外側底面突起42,46を設け、外側底面突起42、46の近傍に凹部34を設けてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、サイプ30に設けた全ての底面突起42,44,46の近傍に凹部34を設けたが、一部の底面突起の近傍に凹部を設けず、残りの一部の底面突起の近傍に凹部を設けてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、サイプ30に設けた底面突起42,44,46の近傍のみに凹部34を設けたが、底面突起42,44,46の少なくとも一部の近傍に凹部34を設けるとともに、底面突起42,44,46から離れた位置に追加的に凹部34を設けてもよい。
【0048】
ここまでセンターブロック20を例に取って説明したが、サイプ及び凹部に関する以上の特徴を有する陸部はセンターブロック20に限定されない。
図1に示すように、全てのセンターブロック20及びメディエイトブロック24が、上記のようなサイプ及び凹部を有していたり、全てのブロックが上記のようなサイプ及び凹部を有していたりするなど、センターブロック20、ショルダーブロック22及びメディエイトブロック24のうち少なくともいずれか1つがサイプ及び凹部に関する以上の特徴を有していれば良い。
【0049】
本実施形態の空気入りタイヤは一般的なラジアルタイヤと同様の方法で製造することができるが、加硫成型時に上記の凹部34を形成するための凸部が、加硫成型のための金型の内面に設けられていることが必要である。この凸部は、金型内部の空気を外部に逃がすためのスプリングベントの金型内側の部分が金型内部に突出したものであっても良い。
【0050】
次に本実施形態の効果について説明する。本実施形態の空気入りタイヤは、サイプ30及び凹部34がそれぞれエッジ効果を発揮するため凍結路面での走行性能に優れている。
【0051】
さらに、本実施形態の空気入りタイヤでは、サイプ30に設けられた外側底面突起42,46や内側底面突起44に近接させて凹部34を設けたので、ブロック内で剛性を均一化することができ、そのため、氷雪上路面などの摩擦係数の低い路面に対するセンターブロック20等のブロックの接地圧分布が均一化されて、凍結路面での走行性能を改善することができる。
【0052】
また、本実施形態の空気入りタイヤにおいて、凹部34の深さdが、外側底面突起42、46が設けられた位置の深さD3、D4や、接合部33におけるサイプ深さより深い場合であれば、センターブロック20の摩耗により底面突起42,44,46がトレッド表面に露出しても、その近傍に設けられた凹部34がエッジ効果を発揮するため、センターブロック20が摩耗しても凍結路面での走行性能に優れている。
【0053】
また、本実施形態の空気入りタイヤにおいて、凹部34の深さdが主溝10の深さD1の1/4倍以上であれば、凹部34が摩滅しにくくなり長期間にわたって凍結路面での走行性能を向上することができ、凹部34の深さdが主溝10の深さD1の1/2倍以上でより一層長期間にわたって凍結路面での走行性能を向上することができる。
【0054】
また、内側底面突起44のような先細形状の底面突起の近傍では、ブロックが摩耗するにつれて剛性が高くなるが、本実施形態の空気入りタイヤにおいて、先細形状の底面突起に近接させて設ける凹部として底部側ほど内径が漸次大きくなる凹部を設けることで、ブロックが摩耗するにつれて凹部によってブロック剛性が低減されやすくなり、長期間にわたってブロック剛性の均一化を図って凍結路面での走行性能を向上することができる。
【0055】
また、本実施形態の空気入りタイヤにおいて、上記比率W2a/W1及び比率W2b/W1が0.1以上0.3以下であれば、サイプ30及び凹部34によるエッジ効果が向上するため、凍結路面での走行性能がさらに向上する。具体的には、W2a/W1及びW2b/W1がそれぞれ0.1以上であることにより、サイプと凹部34との間のゴムの部分が十分な厚みとなり、その部分が大きな弾性力を発揮できるため、エッジ効果が向上し凍結路面での走行性能がさらに向上する。また、W2a/W1及びW2b/W1がそれぞれ0.3以下であることにより、サイプ30と凹部34との間のゴムの部分が厚過ぎずに変形可能となる。その結果、サイプ30と凹部34との間のゴムの部分が大きな弾性力を発揮できるとともに、底面突起42,44,46近傍の剛性を凹部34によって適度に低減させてブロック剛性を均一化することができるため、エッジ効果の向上及びブロックの接地圧分布の均一化を図ることができ、凍結路面での走行性能がさらに向上する。
【0056】
また、本実施形態の空気入りタイヤにおいて、サイプ30の外側底面突起42,44,46とタイヤ幅方向Yにおいて重なるように凹部34を設けることで、外側底面突起42,44,46があるため加速時及び制動時にエッジ効果が得にくい位置において凹部34がエッジ効果を発揮することができ、凍結路面での走行性能がさらに向上する。
【0057】
以上の実施形態の効果を確認するため、
図2、
図4(a)〜(b)、
図5(a)〜(c)、
図7及び表1に示す実施例及び比較例の空気入りタイヤのアイス路面での操縦安定性能を評価した。実施例1〜6の空気入りタイヤは、上記実施形態の空気入りタイヤと同じ特徴を備え、センターブロック20を含む全てのブロックに凹部34を備える。実施例1〜6の空気入りタイヤは、トレッド表面に垂直な方向から見たサイプの形状及び凹部を設ける位置がそれぞれ異なる。
図7に示す比較例1の空気入りタイヤは、全てのブロックに凹部34が設けられていない点で、上記実施形態の空気入りタイヤと異なる。
【0058】
アイス路面での操縦安定性能は次のように評価した。まず、ドライバーが各空気入りタイヤを装着した車両に乗り、アイス路面上で、加速、制動、旋回、及びレーンチェンジをする走行を実施した。そしてドライバーが操縦安定性能を官能評価した。評価は、比較例1の結果を100とし、指数が大きいほどアイス路面における操縦安定性能が優れていることを示す指数で行った。
【0059】
評価結果は表1の通りであり、上記実施形態と同じ特徴を備える実施例1〜6の空気入りタイヤは、比較例1の空気入りタイヤと比べて、アイス路面での操縦安定性能に優れることが確認できた。
【0061】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲はこれに限定されない。以上の実施形態に対して、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。以上の実施形態やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等の範囲に含まれるものとする。