特開2020-131896(P2020-131896A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-131896(P2020-131896A)
(43)【公開日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】航空機地上支援車両
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/22 20060101AFI20200803BHJP
【FI】
   B64F1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-27410(P2019-27410)
(22)【出願日】2019年2月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】門元 誉浩
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】今井 省吾
(72)【発明者】
【氏名】池原 光介
(57)【要約】
【課題】超微速での走行が可能な航空機地上支援車両を提供する。
【解決手段】走行のための駆動力を発生させるエンジン18と、エンジン18の出力軸に接続されるトルクコンバータ19と、を有する主駆動手段と、主駆動手段によるクリープ走行速度以下で走行するための補助駆動力を発生させる補助駆動手段261と、主駆動手段の駆動力が車輪へ伝達される第1状態から補助駆動手段261の補助駆動力が車輪へ伝達される第2状態に切り換える切換手段263と、車両の航空機に対する所定距離を検出するセンサと、該センサの検出信号に基づいて切換手段263を切り換える制御部と、を備えている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行のための駆動力を発生させるエンジンと、該エンジンの出力軸に接続されるトルクコンバータと、を有する主駆動手段と、該主駆動手段によるクリープ走行速度以下で走行するための補助駆動力を発生させる補助駆動手段と、前記主駆動手段の駆動力が車輪へ伝達される第1状態から前記補助駆動手段の補助駆動力が車輪へ伝達される第2状態に切り換える切換手段と、車両の航空機に対する所定距離を検出するセンサと、該センサの検出信号に基づいて前記切換手段を作動させる制御部と、を備えていることを特徴とする航空機地上支援車両。
【請求項2】
前記切換手段は、前記補助駆動力が前記主駆動手段から車輪への伝達ラインの一部を介して伝達されるように切り換えることを特徴とする請求項1に記載の航空機地上支援車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサの検出信号に基づいて、車両の速度が予め設定された設定速度以下であり、かつ、前記エンジンからの駆動力が前記主駆動手段内で遮断されて車輪側に出力されないニュートラル状態である場合に、前記切換手段を作動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の航空機地上支援車両。
【請求項4】
前記制御部は、車両の航空機に対する第1所定距離を前記センサにより検出可能であり、車両の速度を予め設定された設定速度以下に調整する速度調整手段と、前記ニュートラル状態に切り換えるニュートラル切換手段と、を備え、前記制御部は、車両が前記第1所定距離よりも航空機に接近した第2所定距離になったことを前記センサにより検出した場合に、前記速度調整手段を作動させて車両の速度を設定速度以下に調整してから、前記ニュートラル切換手段及び前記切換手段を作動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の航空機地上支援車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港で航空機の地上支援を行う航空機地上支援車両に関する。
【背景技術】
【0002】
上記航空機地上支援車両は、走行用の駆動源として、エンジンが用いられ、エンジンの出力軸に接続されるトルクコンバータを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記エンジンの駆動力を利用する車両では、航空機に対して所定距離まで近付いた時点で一旦停止し、その位置からトルクコンバータのクリープ現象を利用して微速で走行させることで航空機と車両を接近させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−133066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記トルクコンバータのクリープ現象による走行速度が、例えば約5km/hであり、これよりも速度を落とした超微速での走行が困難であった。そのため、航空機に接近した状態で車両の位置調整をするのが難しく、少しの操作ミスでも航空機と車両が衝突してしまう恐れがあり、操縦者に高い技能が求められるため、改善の余地があった。なお、この問題は、トルクコンバータを備えた航空機地上支援車両に特有のものである。
【0006】
そこで本発明は、超微速での走行が可能な航空機地上支援車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の航空機地上支援車両は、走行のための駆動力を発生させるエンジンと、該エンジンの出力軸に接続されるトルクコンバータと、を有する主駆動手段と、該主駆動手段によるクリープ走行速度以下で走行するための補助駆動力を発生させる補助駆動手段と、前記主駆動手段からの駆動力が車輪へ伝達される第1状態から前記補助駆動手段からの補助駆動力が車輪へ伝達される第2状態に切り換える切換手段と、車両の航空機に対する所定距離を検出するセンサと、該センサの検出信号に基づいて前記切換手段を作動させる制御部と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、センサにより車両の航空機に対する所定距離を検出したときの検出信号に基づいて、制御部が、切換手段を作動させることにより、主駆動手段の駆動力が車輪へ伝達される第1状態から補助駆動手段の補助駆動力が車輪へ伝達される第2状態に切り換える。これにより、主駆動手段からの駆動力ではなく、補助駆動手段の補助駆動力によって車輪を回転させることで、車両を主駆動手段によるクリープ走行速度以下の超微速で走行させることができる。
【0009】
また、前記航空機地上支援車両は、前記切換手段が、前記補助駆動力が前記主駆動手段から車輪への伝達ラインの一部を介して伝達されるように切り換えてもよい。
【0010】
上記のように、補助駆動力が主駆動手段から車輪への伝達ラインの一部を介して伝達されるようにすることによって、補助駆動力が別の伝達ラインから車輪へ伝達する構成に比べて構成の簡素化を図れる。
【0011】
また、前記航空機地上支援車両の前記制御部は、前記センサの検出信号に基づいて、車両の速度が予め設定された設定速度以下であり、かつ、前記エンジンからの駆動力が前記主駆動手段内で遮断されて車輪側に出力されないニュートラル状態である場合に、前記切換手段を作動させる構成であってもよい。
【0012】
上記のように、センサの検出信号に基づいて、車両の速度が予め設定された設定速度以下であり、かつ、エンジンからの駆動力が主駆動手段内で遮断されて車輪側に出力されないニュートラル状態である場合に、制御部が、切換手段を切り換えるようにしているので、切り換えた時に補助駆動手段にエンジンからの大きな駆動力(負荷)が加わってしまうことがない。よって、補助駆動手段の破損を防止できる。
【0013】
また、前記航空機地上支援車両の前記制御部は、車両の航空機に対する第1所定距離を前記センサにより検出可能であり、車両の速度を予め設定された設定速度以下に調整する速度調整手段と、前記ニュートラル状態に切り換えるニュートラル切換手段と、を備え、前記制御部は、車両が前記第1所定距離よりも航空機に接近した第2所定距離になったことを前記センサにより検出した場合に、前記速度調整手段を作動させて車両の速度を設定速度以下に調整してから、前記ニュートラル切換手段及び前記切換手段を作動させる構成であってもよい。
【0014】
上記のように、制御部が、車両が前記第1所定距離よりも航空機に接近した第2所定距離になったことを前記センサにより検出した場合に、速度調整手段を作動させて車両の速度を設定速度以下に調整してから、ニュートラル切換手段及び切換手段を作動させるので、車両を超微速での走行を確実に行わせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御部が、主駆動手段からの駆動力が車輪へ伝達される第1状態から補助駆動手段からの補助駆動力が車輪へ伝達される第2状態に切り換えることによって、超微速での走行が可能な航空機地上支援車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の航空機地上支援車両の側面図である。
図2】同車両の平面図である。
図3】同車両に備えるエンジンからの駆動力を車軸まで伝達するための動力伝達装置及び微速走行ユニットを示す平面図である。
図4図3の側面図である。
図5】微速走行ユニットの内部の構成を示す縦断側面図である。
図6】同車両に備えるエリアセンサの3つの検出領域を示す側面図である。
図7】本発明の航空機地上支援車両に備えるセンサからの検出信号に基づいて制御する制御ブロック図である。
図8】本発明の基本的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2に、本実施形態に係る航空機地上支援車両(以下において単に車両という)1を示している。この車両1は、前後方向に長い車両本体11と、車両本体11に左右方向一方側(図2では右側)に寄せた状態で搭載され車両本体11よりも前後長さが長いベルトコンベア12と、車両本体11の前側で、かつ、左右方向他方側(図2では左端)に寄った位置に配置された運転部13と、ベルトコンベア12や運転部13を備える車両本体11を支持する左右一対の前側車輪14,14及び左右一対の後側車輪15,15(図1では左側の車輪のみ図示している)と、を備えている。
【0018】
ベルトコンベア12は、図6に2点鎖線で示すように、先端部を上昇させた傾斜姿勢になるように後方側を支点として傾動可能に構成され、車両本体11に備える油圧ポンプ(図示せず)からの圧油により作動するアクチュエータ(図示せず)で傾動操作できるように構成されている。したがって、航空機の貨物室(バルク室ともいう)の高さに合わせて前記のようにベルトコンベア12の先端部を所定角度まで傾動させてから、前記油圧ポンプからの圧油により作動するアクチュエータ(図示せず)でベルトコンベア12のベルトを回転駆動させることで、手荷物やバラ積み貨物などを貨物室へ積み込む作業(搬入)や貨物室から手荷物やバラ積み貨物などを積み降ろす(搬出する)ことができる。また、ベルトコンベア12は、前後方向にスライド可能な手摺部121及び前後方向に伸縮可能なフード部122を備えている。これら手摺部121及びフード部122のそれぞれも、前記油圧ポンプからの圧油により作動するアクチュエータ(図示せず)により駆動される。なお、手摺部121及びルーフ部122は、手動で動作するものとしても良い。
【0019】
また、ベルトコンベア12の前端には、フロントバンパー123を備え、そのフロントバンパー123に、例えば航空機Pに当接することにより衝撃力が加えられたことを検出するバンパーセンサ123A(図7参照)を備えている。したがって、図7に示すように、車両本体11に備える制御部16が、バンパーセンサ123Aの検出信号に基づいてブレーキ17を自動的に作動させて車両1を停止させる。
【0020】
運転部13は、ステアリングハンドル131、アクセルペダル132、ブレーキペダル133、座席134などを備えている。また、運転部13は、後述する警報手段135及び超微速での走行を行うための手動スイッチ136(図7参照)を備えている。
【0021】
車両1を走行させるための走行駆動装置について説明する。この走行駆動装置は、図3及び図4並びに図8に示すように、エンジン18と、エンジン18の出力軸に接続されるトルクコンバータ19と、トルクコンバータ19からの駆動力を変換するトランスミッション(変速機)20と、トランスミッション20からの駆動力をデファレンシャルギヤ(差動装置)21を介して後側車輪15,15の車軸22に伝達するプロペラシャフト23と、を備えている。前記エンジン18と、トルクコンバータ19と、トランスミッション(変速機)20とで、主駆動手段を構成している。なお、トランスミッション20の後方には、パーキングブレーキ24を備えている。また、トランスミッション20の出力軸(図示せず)とプロペラシャフト23とが第1伝動軸25と第2伝動軸29(図5参照)により接続されている。またさらに、第1伝動軸25と第2伝動軸29とがスプライン結合により一体化され、1つの伝動軸2を構成している。
【0022】
また、走行駆動装置は、超微速での走行を行うための超微速走行ユニット26を備えている。この超微速走行ユニット26は、図3図5に示すように、車両本体11に備える前記油圧ポンプからの圧油により作動する油圧モータ261と、油圧モータ261からの回転力を伝達するチェーン伝動機構262と、チェーン伝動機構262から伝動軸2への回転力の伝達を断続するための電磁クラッチ263と、を備えている。油圧モータ261は、主駆動手段によるクリープ走行速度以下で走行するための補助駆動力を発生させる補助駆動手段を構成している。ここでいう超微速で走行する速度(車速)は、クリープ走行時の速度以下であれば、どのような数値でもよい。より好ましくは、クリープ走行時の速度よりも低い速度となる0.8km/h以下であり、0.8km/hは、IATA(国際航空運送協会)の規定における制限最高速度である。この制限最高速度は、航空機Pに接近した場合(本実施形態では、センサ36が第1エリアE1内で航空機Pを検出した場合)の最高速度である。本実施形態は、IATAの規定を満足できる。
【0023】
チェーン伝動機構262は、油圧モータ261の回転力により一体回転する駆動側のスプロケット2621と、伝動軸2に軸受27を介して回転可能に支持された回転部材28に一体回転するように固定された従動側のスプロケット2622と、それら2つのスプロケット2621,2622に巻回されたチェーン2623と、を備えている。
【0024】
電磁クラッチ263は、主駆動手段の駆動力が車輪(ここでは15,15)へ伝達される第1状態から補助駆動手段の補助駆動力が車輪へ伝達される第2状態に切り換える切換手段を構成している。具体的には、切換手段は、油圧モータ261の補助駆動力がエンジン18から車輪(ここでは後側車輪15,15)への伝達ラインの一部を通して伝達するように切り換える手段である。さらに詳述すれば、電磁クラッチ263は、励磁コイル(図示せず)を備えるフィールド2631と、第1伝動軸25とスプライン結合により一体回転する第2伝動軸29にキー30を介して嵌合されたロータ2632と、ロータ2632とほぼ同一外径寸法を有しロータ2632に対向配置されたアーマチュア2633と、を備えている。この実施形態では、図8に示すように、切換手段263をトランスミッション20と後側車輪15との伝達ラインに配置している。
【0025】
フィールド2631は、ロータ2632のボス部2632Aに軸受31を介して支持されるとともに、回転しないように固定部材(図示せず)に固定される回り止め部材32に取り付けられる。
【0026】
アーマチュア2633は、板バネ34を介して回転部材28に取り付けられている。板バネ34は、フィールド2631の励磁コイルが非励磁状態であるときに、板バネ34の弾性力により、アーマチュア2633をロータ2632から引き離してストッパープレート33に押し付けることにより、アーマチュア2633が従動側のスプロケット2622と衝突することを防ぐことができる。そして、フィールド2631の励磁コイルが励磁状態であるときに、板バネ34の弾性力に抗してアーマチュア2633がロータ2632に引き付けられる。これにより、従動側のスプロケット2622の回転力が、回転部材28、板バネ34、アーマチュア2633、ロータ2632の順に伝達される。ロータ2632に伝達された回転力は、伝動軸2に伝達され、プロペラシャフト23、デファレンシャルギヤ21を介して後側車輪15,15の車軸22に伝達される。
【0027】
また、車両1には、車両1の走行速度を検出する車速センサ35と、車両1の航空機Pに対する所定距離を検出するセンサ36と、センサ36の検出信号に基づいて切換手段である電磁クラッチ263を切り換える前記制御部16と、を備えている。
【0028】
車速センサ35は、プロペラシャフト23の回転を測定するセンサから構成してもよいし、車輪の実際の回転数を検出するセンサであってもよい。この車輪の実際の回転数を検出するセンサからの検出値に基づいて、インストルメントパネル137に備えるスピードメータ(図示せず)に表示される速度を車速として利用することになる。
【0029】
センサ36は、レーザーエリアセンサからなり、照射するレーザー光線により半円状のフィールドをスキャンし、対象物との距離と角度から設定されたエリア内の障害物を検出するためのセンサである。図6では、3つのエリアをセンサ36で検出する場合を示している。3つのエリアは、車両1のベルトコンベア12の先端から10mの間に設定され、ベルトコンベア12の先端から4m先の位置までの第1エリアE1と、第1エリアE1の前端から2m先の位置までの第2エリアE2と、第2エリアE2の前端から4m先の位置までの第3エリアE3と、を備える。第1エリアE1は、車両1が航空機Pに最も近いエリアであり、第3エリアE3は、3つのエリアのうち車両1が航空機Pから最も遠くなるエリアであり、第2エリアE2は、第1エリアE1と第3エリアE3の間に位置するエリアである。センサ36は、車両1の走行中または停車中、車両1から10m先にある障害物を常に検出し続ける。よって、車両1が航空機Pに近づくにつれて、第3エリアE3内、第2エリアE2内、第1エリアE1内で、順に航空機Pを検出する。これら3つのエリアE1,E2,E3を検出可能な上下方向の範囲は、図6に示す最上昇位置まで上昇させたときの最大傾斜姿勢のベルトコンベア12の先端部の高さよりも少し高い位置まで検出できる高さに設定している。なお、本実施形態では、車両1のベルトコンベア12の先端から10mの間にエリアを設定したが、5〜30mの間に設定してもよい。また、本実施形態のエリアは3つ設定したが、エリア数は適宜設定することができる。またさらに、IATAの規定にあるように、第1エリアE1は2m以上であることが好ましい。
【0030】
また、制御部16は、センサ36の検出信号に基づいて、車両1の速度が予め設定された設定速度以下であり、かつ、エンジン18からの駆動力が主駆動手段内で遮断されて車輪側に出力されないニュートラル状態である場合に、切換手段である電磁クラッチ263をONするように切り換える。ここでは、前記設定速度を0、つまり車両1が停止状態としているが、クリープ走行速度以下、好ましくは0.8km/h以下の任意の速度であってもよい。要するに、油圧モータ261に過負荷が加わることがない速度に設定することになる。したがって、電磁クラッチ263をON状態に切り換えた時に補助駆動手段を構成する油圧モータ261にエンジン18からの大きな駆動力(負荷)が加わってしまうことがない。よって、油圧モータ261の破損を防止できる。更にまた、前記制御部16は、車両の速度を予め設定された設定速度以下に調整する速度調整手段と、前記ニュートラル状態(前記トランスミッション20をニュートラル状態)に切り換えるニュートラル切換手段と、を備えている。したがって、制御部16は、センサ36が第2エリアE2で航空機Pを検出したとき、操縦者が車両の速度を設定速度以下に調整せず、第1エリアE1内で航空機Pを検出した場合、即ち、車両が第1所定距離よりも航空機Pに接近した第2所定距離になったことをセンサ36により検出した際、前記速度調整手段を作動させて車両の速度を設定速度以下(この実施形態では速度0)に調整してから、前記ニュートラル切換手段及び前記切換手段(電磁クラッチ263)を作動させるようにしている。このように制御部16が、ニュートラル切換手段及び切換手段を作動させるので、車両に超微速での走行を確実に行わせることができる。なお、前記速度調整手段は、後述するブレーキ17をかけて車両の速度を設定速度以下(速度0も含む)にする手段である。
【0031】
また、車両1を操縦する操縦者に警報を報知する警報手段135を操縦者が確認することができるように車両1に備えている。この警報手段135は、例えば座席134の正面に配置されたインストルメントパネル137又はインストルメントパネル137の近傍に設けられたランプ(図示せず)とブザー(図示せず)とで構成されているが、メッセージパネルや警告灯などであってもよい。そして、制御部16は、車両の航空機に対する第1所定距離、例えばセンサ36により第2エリアE2内に航空機Pを検出したとき(即ち、車両1と航空機Pの距離が4〜6mになったことを検出したとき)の検出信号に基づいて警報手段135を作動させる。また、車両1が第1所定距離よりも航空機に接近した第2所定距離、例えばセンサ36により第1エリアE1内で航空機Pを検出したとき(即ち、車両1と航空機Pの距離が4m以下になったことを検出したとき)の検出信号により、車両の速度が予め設定された設定速度以下である場合に、電磁クラッチ263によって主駆動手段から補助駆動手段に切り換えるようにしている。
【0032】
前記のように、制御部16が、車両1の航空機Pに対する第1所定距離をセンサ36により検出したときの検出信号に基づいて警報手段を作動させて警報を報知することによって、車両1が航空機Pに対して第1所定距離まで近付いたことを操縦者に報知することができる。また、制御部16は、車両1が第1所定距離よりも航空機Pに接近した第2所定距離になったことをセンサ36により検出したときの検出信号に基づいて電磁クラッチ263によって主駆動手段から補助駆動手段へ切り換えるので、操縦者が超微速走行への移行を予め予測でき、安全性を高めることができる。
【0033】
上記のように構成された車両1を航空機Pに接近させるまでの手順について説明する。
【0034】
まず、スタートキー(図示せず)によりエンジン18を作動させ、アクセルペダル132を踏み込んで例えば最高速(例えば25km/h)で航空機Pへ向かう。車両1が航空機Pに対して10mまで近付いた(第3エリアE3内で航空機Pを検出した)ことをセンサ36により検出すると、制御部16は操縦者に走行速度を5km/hにするように警告すべく、警報手段135を作動させる。このとき、操縦者は走行速度を5km/hに制限する低速走行用スイッチ(図示せず)を操作し、走行速度を制限する。また、低速走行用スイッチが操作されたことを制御部16が検出すると、警報手段135を停止する。なお、本実施形態では、センサ36が第3エリアE3内で航空機Pを検出した場合の走行速度は、IATAの規定で定められている6km/h以下としてもよい。
【0035】
続いて、走行している車両1が航空機Pに対して4m〜6mまで近付いた(第2エリアE2で航空機Pを検出した)ことをセンサ36により検出すると、車両1が航空機Pに更に近付いたとして、車両1を停止するように操縦者に促すために、警報手段135を作動させる。
【0036】
センサ36が第2エリアE2で航空機Pを検出したときに、操縦者が車両1を停止させると、制御部16が前記ニュートラル切換手段を作動させてトランスミッション20をニュートラル状態に切り換える。これにより、車速が0で、かつ、ニュートラル状態を検出することにより、制御部16が前記切換手段(電磁クラッチ263)を作動させ(ONす)る。そして、操縦者が手動スイッチ136をONすることによって、制御部16が油圧モータ261を作動させて0.8km/h以下の設定速度で車両1を走行させ、航空機Pに対して所望の位置まで車両1を移動させて停止させる。なお、前記所望の位置まで車両1を移動させている時、万一、フロントバンパー123が航空機Pに当接してしまい、それをバンパーセンサ123Aが検出すると、制御部16がブレーキ17を自動的にかけて車両1を強制的に停止させる。なお、センサ36が第2エリアE2で航空機Pを検出した際、操縦者が車両1を停止させなかったことにより、第1エリアE1で航空機Pを検出した場合は、制御部16が、前記速度調整手段によりブレーキ17を自動的にかけて車両1を強制的に停止させてから、前記ニュートラル切換手段を作動させてトランスミッション20をニュートラルに切り換えた後、前記切換手段(電磁クラッチ263)を作動させ(ONにす)ることになる。ここでは、ニュートラル切換手段を作動させた後、切換手段を作動させているが、車両1を停止させている状態では、切換手段を作動させた後、ニュートラル切換手段を作動させてもよいし、ニュートラル切換手段及び切換手段を同時に作動させてもよい。
【0037】
尚、本発明に係る航空機地上支援車両は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
前記実施形態では、障害物(実施形態では航空機P)を検出するセンサ36としてレーザーエリアセンサを用いたが、赤外線センサやCCDカメラを用いて画像処理を行うことで、航空機に対する車両1の距離(位置)を検出するようにしてもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、切換手段として電磁クラッチ263を用いたが、油圧式クラッチ、機械式クラッチ、空気圧式クラッチなど、どのような構成であってもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、エンジン18からの駆動力が主駆動手段内で遮断されて車輪側に出力されないニュートラル状態であり、かつ、車両の速度が予め設定された設定速度以下である場合で、しかも手動スイッチ136をONしている場合に、補助駆動手段である油圧モータ261からの動力を後側車輪15,15に伝達するように構成したが、手動スイッチ136を省略し、エンジン18からの駆動力が主駆動手段内で遮断されて車輪側に出力されないニュートラル状態であり、かつ、車両の速度が予め設定された設定速度以下である場合に、制御部16が自動的に油圧モータ261を駆動するとともに、電磁クラッチ263をONするように構成してもよい。また、航空機Pに対して車両が所定距離まで近付き、かつ、車両の速度が予め設定された設定速度以下である場合に、操縦者が手動でトランスミッション20をニュートラルに切り換え、制御部16が、車速が設定速度以下であること、及び、ニュートラル状態であることを検出すると、補助駆動手段である油圧モータ261からの動力を後側車輪15,15に伝達するように構成してもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、センサ36が第1エリアE1で航空機Pを検出した際、0.8km/hとなる超微速な一定速度で走行させる構成であったが、航空機Pに近付くにつれて段階的に速度が減速されるように速度を自動的に変更する構成を付加してもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、補助駆動手段として、油圧モータ261を示したが、電動モータであってもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、後側車輪15,15を駆動する車両であったが、前側車輪14,14を駆動する車両であってもよいし、四輪駆動可能な車両であってもよい。さらに、後側車輪15,15は主駆動手段で駆動し、前側車輪14,14は補助駆動手段で駆動するように構成し、航空機Pに対して車両1が接近した時の接近距離に基づいて切換手段にて主駆動手段と補助駆動手段を切り換える構成としてもよい。同様に、前側車輪14,14は主駆動手段で駆動し、後側車輪15,15は補助駆動手段で駆動するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…車両、2…伝動軸、11…車両本体、12…ベルトコンベア、13…運転部、14…前側車輪、15…後側車輪、16…制御部、17…ブレーキ、18…エンジン、19…トルクコンバータ、20…トランスミッション(変速機)、21…デファレンシャルギヤ(差動装置)、22…車軸、23…プロペラシャフト、24…パーキングブレーキ、25…第1伝動軸、26…超微速走行ユニット、27…軸受、28…回転部材、29…第2伝動軸、30…キー、31…軸受、32…回り止め部材、33…ストッパープレート、34…板バネ、35…車速センサ、36…センサ(レーザーエリアセンサ)、121…手摺部、122…フード部、123…フロントバンパー、123A…バンパーセンサ、131…ステアリングハンドル、132…アクセルペダル、133…ブレーキペダル、134…座席、135…警報手段、136…手動スイッチ、137…インストルメントパネル、261…油圧モータ(補助駆動手段)、262…チェーン伝動機構、263…電磁クラッチ(切換手段)、2621…駆動側のスプロケット、2622…従動側のスプロケット、2623…チェーン、2631…フィールド、2632…ロータ、2632A…ボス部、2633…アーマチュア、E1…第1エリア、E2…第2エリア、E3…第3エリア、P…航空機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2020年1月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行のための駆動力を発生させるエンジンと、該エンジンの出力軸に接続されるトルクコンバータと、を有する主駆動手段と、該主駆動手段によるクリープ走行速度以下で走行するための補助駆動力を発生させる補助駆動手段と、前記主駆動手段の駆動力が車輪へ伝達される第1状態から前記補助駆動手段の補助駆動力が車輪へ伝達される第2状態に切り換える切換手段と、車両の航空機に対する所定距離を検出するセンサと、該センサの検出信号に基づいて前記切換手段を作動させる制御部と、を備えていることを特徴とする航空機地上支援車両。
【請求項2】
前記切換手段は、前記補助駆動力が前記主駆動手段から車輪への伝達ラインの一部を介して伝達されるように切り換えることを特徴とする請求項1に記載の航空機地上支援車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサの検出信号に基づいて、車両の速度が予め設定された設定速度以下であり、かつ、前記エンジンからの駆動力が前記主駆動手段内で遮断されて車輪側に出力されないニュートラル状態である場合に、前記切換手段を作動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の航空機地上支援車両。
【請求項4】
前記制御部は、車両の航空機に対する第1所定距離を前記センサにより検出可能であり、車両の速度を予め設定された設定速度以下に調整する速度調整手段と、前記エンジンからの駆動力が前記主駆動手段内で遮断されて車輪側に出力されないニュートラル状態に切り換えるニュートラル切換手段と、を備え、前記制御部は、車両が前記第1所定距離よりも航空機に接近した第2所定距離になったことを前記センサにより検出した場合に、前記速度調整手段を作動させて車両の速度を設定速度以下に調整してから、前記ニュートラル切換手段及び前記切換手段を作動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の航空機地上支援車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また、前記航空機地上支援車両の前記制御部は、車両の航空機に対する第1所定距離を前記センサにより検出可能であり、車両の速度を予め設定された設定速度以下に調整する速度調整手段と、前記エンジンからの駆動力が前記主駆動手段内で遮断されて車輪側に出力されないニュートラル状態に切り換えるニュートラル切換手段と、を備え、前記制御部は、車両が前記第1所定距離よりも航空機に接近した第2所定距離になったことを前記センサにより検出した場合に、前記速度調整手段を作動させて車両の速度を設定速度以下に調整してから、前記ニュートラル切換手段及び前記切換手段を作動させる構成であってもよい。