特開2020-131945(P2020-131945A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-131945(P2020-131945A)
(43)【公開日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】乗物用フロアマットの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/04 20060101AFI20200803BHJP
   A44B 18/00 20060101ALI20200803BHJP
   B60R 13/02 20060101ALN20200803BHJP
【FI】
   B60N3/04 B
   A44B18/00
   B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-28355(P2019-28355)
(22)【出願日】2019年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516293451
【氏名又は名称】豊通オートモーティブクリエーション 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 礼子
(72)【発明者】
【氏名】井下 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】谷口 泰弘
【テーマコード(参考)】
3B088
3B100
3D023
【Fターム(参考)】
3B088GA01
3B088GB01
3B100DA02
3B100DB08
3D023BA01
3D023BB12
3D023BD04
3D023BE35
(57)【要約】
【課題】フロアマットがフロアに対して正規の位置にある場合には確実に固定するとともに、フロアマットが正規の位置からずれた場合には容易に取り外すことが可能な乗物用フロアマットの取付構造を提供する。
【解決手段】フロア側面ファスナー部21は、複数の領域に分割されてそれら複数の領域の各々にはループ21Lとフック21Hとが互いに隣り合うように配され、マット側面ファスナー部22は、フロア側面ファスナー部21のフック21Hが配された領域に対応する領域にはループ22Lが、フロア側面ファスナー部21のループ21Lが配された領域に対応する領域にはフック22Hが、それぞれ配された構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物室のフロアに対して乗物用フロアマットを取り付けるための乗物用フロアマットの取付構造であって、
ループとフックとを係合させる面ファスナーを用いたものであり、前記フロアの上面に設けられたフロア側面ファスナー部と、前記乗物用フロアマットの下面に設けられたマット側面ファスナー部と、を互いに係合させることで、前記フロアに対して前記乗物用フロアマットを取り付ける構造とされ、
前記フロア側面ファスナー部は、複数の領域に分割されてそれら複数の領域の各々にはループとフックとが互いに隣り合うように配され、
前記マット側面ファスナー部は、前記フロア側面ファスナー部のフックが配された領域に対応する領域にはループが、前記フロア側面ファスナー部のループが配された領域に対応する領域にはフックが、それぞれ配された乗物用フロアマットの取付構造。
【請求項2】
前記フロア側面ファスナー部および前記マット側面ファスナー部の各々は、所定方向において2つの領域に分割されており、
前記フロア側面ファスナー部は、前記所定方向における一方側にフックが、他方側にループが、それぞれ配され、
前記マット側面ファスナー部は、前記所定方向における一方側にループが、他方側にフックが、それぞれ配された請求項1に記載の乗物用フロアマットの取付構造。
【請求項3】
前記フロア側面ファスナー部および前記マット側面ファスナー部の各々は、前後方向において2つの領域に分割された請求項2に記載の乗物用フロアマットの取付構造。
【請求項4】
前記フロアは、表面が不織布状に形成されたものとされ、
前記マット側面ファスナー部は、前側にループが、後側にフックが、それぞれ配された請求項3に記載の乗物用フロアマットの取付構造。
【請求項5】
前記マット側面ファスナー部と前記フロア側面ファスナー部との一方は、他方に比較して大きくされた請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用フロアマットの取付構造。
【請求項6】
前記フロア側面ファスナー部および前記マット側面ファスナー部の各々は、円形状とされた請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の乗物用フロアマットの取付構造。
【請求項7】
前記フロアは、表面が不織布状に形成されたものとされ、前記フロア側面ファスナー部の周囲には、不織布状とされず前記フックと係合しない非係合領域が形成された請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の乗物用フロアマットの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物室のフロアに対して乗物用フロアマットを取り付けるための乗物用フロアマットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両のフロアパネル上にフロアカーペットが設けられ、そのフロアカーペット上にホットメルトシートを介して合成樹脂マットが接合された乗物用フロアマットの取付構造が記載されている。下記特許文献1には、ホットメルトシートに複数のスリットを設けることで、合成樹脂マットをカーペット上に加熱溶着する際のカーペットやフロアマットの変形、溶着部の剥離や破損する虞がなく、溶着作業を簡易迅速に行うことができるとともに、ホットメルトシートの使用量を減少させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−25507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗物用フロアマットは、乗物室内の掃除や手入れのために、乗物室のフロアに対して着脱可能に敷設されることが多い。その着脱可能な乗物用フロアマットの取付構造として、面ファスナーが採用される場合がある。その面ファスナーは、フロア側とフロアマット側との一方がループ面とされ、他方がフック面とされ、両者を重ね合わせてループとフックとを係合させることで、フロアマットがフロアに対して固定される。例えば、車両の運転席に用いられるフロアマットは、運転中にずれて操作ペダルに被さってしまうようなことがないように、フロアへの固定は堅固であることが望ましい。一方で、フロアマットが正規の位置からずれた状態で、しっかりと固定されてしまうと、付け直しのために取り外すのに手間がかかってしまうことになる。特に、運転中にフロアマットがずれて、操作ペダルに被さったり、引っ掛かったりした状態でフロアマットが固定されてしまうような事態は回避しなければならない。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、フロアマットがフロアに対して正規の位置にある場合には確実に固定するとともに、フロアマットが正規の位置からずれた場合には容易に取り外すことが可能な乗物用フロアマットの取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の乗物用フロアマットの取付構造は、
乗物室のフロアに対して乗物用フロアマットを取り付けるための乗物用フロアマットの取付構造であって、
ループとフックとを係合させる面ファスナーを用いたものであり、前記フロアの上面に設けられたフロア側面ファスナー部と、前記乗物用フロアマットの下面に設けられたマット側面ファスナー部と、を互いに係合させることで、前記フロアに対して前記乗物用フロアマットを取り付ける構造とされ、
前記フロア側面ファスナー部は、複数の領域に分割されてそれら複数の領域の各々にはループとフックとが互いに隣り合うように配され、
前記マット側面ファスナー部は、前記フロア側面ファスナー部のフックが配された領域に対応する領域にはループが、前記フロア側面ファスナー部のループが配された領域に対応する領域にはフックが、それぞれ配されたことを特徴とする。
【0007】
この構成の乗物用フロアマットの取付構造(以下、単に「マット取付構造」と呼ぶ場合がある)は、フロアマットがフロアに対する正規の位置に対してずれて敷設された場合に、面ファスナーの外縁付近で互いに重ならない箇所が生じるだけでなく、フロア側面ファスナー部とマット側面ファスナー部との間の領域と領域との境界付近において、ループ同士が重なる箇所およびフック同士が重なる箇所が生じることになる。そのため、この構成のマット取付構造は、フロアマットが敷設された位置が正規の位置からずれる程、結合力が大きく低下するように構成される。つまり、この構成のマット取付構造によれば、フロアマットをフロア上の正規の位置に対して、誤って敷設してしまった場合であっても、フロアマットをフロアから容易に取り外すことができる。
【0008】
この構成のマット取付構造の主体となる面ファスナーは、その形状が特に限定されず、円形や四角形状など種々の形状とすることができる。また、複数の領域の数も、2以上に分割されればよく、ずれを禁止したい方向において分割するような構成とすることができる。なお、フロアマットは、その素材が特に限定されず、ゴム製のものやカーペット状のものなど種々のものを採用可能である。
【0009】
上記構成において、前記フロア側面ファスナー部および前記マット側面ファスナー部の各々は、所定方向において2つの領域に分割されており、前記フロア側面ファスナー部は、前記所定方向における一方側にフックが、他方側にループが、それぞれ配され、前記マット側面ファスナー部は、前記所定方向における一方側にループが、他方側にフックが、それぞれ配された構成とすることができる。
【0010】
この構成のマット取付構造は、フロアマットがフロアに対して所定方向にずれた場合に、フロア側面ファスナーとマット側面ファスナー部とのフック同士あるいはループ同士が重なって、結合力が大きく低下するように構成されている。この構成のマット取付構造によれば、フロアマットが所定方向にずれた場合に、フロアマットがフロアに対して固定されてしまうことを防止することができる。
【0011】
また、上記構成において、前記フロア側面ファスナー部および前記マット側面ファスナー部の各々は、前後方向において2つの領域に分割された構成とすることができる。
【0012】
この構成のマット取付構造は、所定方向を前後方向に限定した構成であり、この構成のマット取付構造によれば、前後方向にずれたフロアマットがフロアに対して固定されてしまうことを防止することができる。したがって、この構成のマット取付構造は、操作ペダルが設けられた運転席のフロアマットに好適であり、操作ペダルにフロアマットが被さったり、引っ掛かったりした状態で固定されてしまうような事態を回避することができる。
【0013】
また、上記構成において、前記フロアは、表面が不織布状に形成されたものとされ、前記マット側面ファスナー部は、前側にループが、後側にフックが、それぞれ配された構成とすることができる。
【0014】
この構成のマット取付構造においては、フロアがカーペット状のものとされているため、面ファスナーのフックがカーペット状とされたフロアにも係合してしまうような構成となっている。しかしながら、マット側面ファスナー部は、前側がループとされているため、フロアマットがフロアに対して前方側にずれたとしても、フロアマットがフロアの不織布状の箇所にループが重なるだけで係合してしまうことがない。したがって、この構成のマット取付構造は、フロアがカーペット状のものとされた乗物において、前側にずれたフロアマットがフロアに対して固定されてしまうことを防止することができる。
【0015】
また、上記構成において、前記マット側面ファスナー部と前記フロア側面ファスナー部との一方は、他方に比較して大きくされた構成とすることができる。
【0016】
この構成のマット取付構造は、フロアマットがフロアに対して僅かにずれた場合においては、結合力の低下を抑えることができる。
【0017】
また、上記構成において、前記フロア側面ファスナー部および前記マット側面ファスナー部の各々は、円形状とされた構成とすることができる。
【0018】
この構成のマット取付構造は、どの方向からフロアマットを引っ張っても、結合している幅が円の直径となるため、フロアマットをフロアから取り外す際に、どの方向からでも剥がしやすい構造となっている。
【0019】
また、上記構成において、前記フロアは、表面が不織布状に形成されたものとされ、前記フロア側面ファスナー部の周囲には、不織布状とされず前記フックと係合しない非係合領域が形成された構成とすることができる。
【0020】
この構成のマット取付構造においては、フロアがカーペット状のものとされているため、面ファスナーのフックがカーペット状とされたフロアにも係合してしまうような構成となっている。しかしながら、フロア側面ファスナー部の周囲に非係合領域が形成されていることで、フロアマットが大きくずれてしまった場合であっても、マット側面ファスナー部がカーペット状とされたフロアに係合してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フロアマットがフロアに対して正規の位置にある場合には確実に固定するとともに、フロアマットが正規の位置からずれた場合には容易に取り外すことが可能な乗物用フロアマットの取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例である乗物用フロアマットの取付構造が採用された車両の車室内を示す図である。
図2】車室のフロアを示す平面図である。
図3図1に示すフロアマットの下面図である。
図4A】フロアマットがフロアに対して前方にずれた状態において、面ファスナーの重なりを示す図である。
図4B】フロアマットがフロアに対して図4Aに示した状態からさらに前方にずれた状態において、面ファスナーの重なりを示す図である。
図5A】他の実施形態の乗物用フロアマットの取付構造を採用した車室のフロアを示す平面図である。
図5B図5Aに示したフロアに対応するフロアマットの下面図である。
図6A】さらに別の実施形態の乗物用フロアマットの取付構造を採用した車室のフロアを示す平面図である。
図6B図6Aに示したフロアに対応するフロアマットの下面図である。
図7A】さらに別の実施形態の乗物用フロアマットの取付構造を採用した車室のフロアを示す平面図である。
図7B図7Aに示したフロアに対応するフロアマットの下面図である。
図8】さらに別の実施形態の乗物用フロアマットの取付構造を採用した車室のフロアを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0024】
本発明の実施例である乗物用フロアマットの取付構造(以下、単に「マット取付構造」と呼ぶ場合がある)は、車両に採用されており、車室のフロア10、詳しく言えば、運転席および助手席の各々の足元に、フロアマット11を取付けるためのものとされている。以下の説明においては、図1図4を参照しつつ、運転席側のものを代表して説明することとする。なお、各図において、車両前方および車両後方をFRおよびRRの矢印でそれぞれ示し、車両右方向および車両左方向をRおよびLの矢印でそれぞれ示す。
【0025】
運転席側のフロア10には、図1に示すように、フットレスト12が形成されるとともに、アクセルペダル13およびブレーキペダル14が配されている。なお、フロア10は、フロアパネル上にフロアカーペットが敷設された構成とされている。なお、そのフロアカーペットは、ニードルパンチカーペットであり、フロア10の表面は不織布状のものとなっている。なお、フロアカーペットは、ニードルパンチカーペットに限定されず、例えば、タフトカーペット等であってもよく、種々のカーペットを採用することができる。
【0026】
フロアマット11は、樹脂材料(例えば、SBR系ゴム等)を基材として、その表面にニードルパンチカーペットが貼着されて形成されたものである。なお、フロアマットは、それに限定されず、パイルカーペットを用いたものやゴム製のもの等を採用することもできる。
【0027】
そして、本発明のマット取付構造は、図1に示すように、ループとフックとを係合させる面ファスナー20を2組用いたものである。それら面ファスナー20の各々は、フロア10の上面に貼り付けられたフロア側面ファスナー部21と、フロアマット11の下面に貼り付けられたマット側面ファスナー部22と、からなる。そして、それらフロア側面ファスナー部21とマット側面ファスナー部22とを重ね合わせることで、それらのループとフックとが互いに係合し、フロアマット11がフロア10に対して取り付けられる。
【0028】
フロア側面ファスナー部21は、図2に示すように、円形状とされている。また、フロア側面ファスナー部21は、中心を通って左右方向に延びる直線を境界として、前後方向において2つの領域に等分されており、前側の領域が、フックが形成されたフック面21Hとされ、後側の領域が、ループが形成されたループ面21Lとされている。一方、マット側面ファスナー部22は、図3に示すように、フロア側面ファスナー部21と同様に円形状とされ、前後方向において2つの領域に等分されているが、フロア側面ファスナー部21とは異なり、前側の領域が、ループが形成されたループ面22Lとされ、後側の領域が、フックが形成されたフック面22Hとされている。また、図2に示すように、マット側面ファスナー部22は、フロア側面ファスナー部21に比較して大きな径の円形状とされている。なお、各図において、フロア側面ファスナー部21のフック面21Hとマット側面ファスナー部22のフック面22Hとを同じハッチで示すとともに、フロア側面ファスナー部21のループ面21Lとマット側面ファスナー部22のループ面22Lとを同じハッチで示している。
【0029】
そして、それらフロア側面ファスナー部21とマット側面ファスナー部22とは、図1に示すように、中心が重なるように重ねられた場合に、フロア側面ファスナー部21の全面が、マット側面ファスナー部22に対して係合することになる。詳しく言えば、フロア側面ファスナー部21のフック面21Hの全体が、マット側面ファスナー部22のループ面22Lと重なって互いに係合するとともに、フロア側面ファスナー部21のループ面21Lの全体が、マット側面ファスナー部22のフック面22Hと重なって互いに係合するのである。つまり、この状態においては、面ファスナー20の結合力は大きく、フロアマット11は、フロア10に対してしっかりと固定されることになる。
【0030】
フロアマット11が、フロア10に対して、フロア側面ファスナー部21とマット側面ファスナー部22とが重なるように敷設された位置(以下、「正規位置」と呼ぶ)から前方側にずれた状態で敷設された場合には、図4Aおよび図4Bに示すように、ループ面とフック面との境界付近において、フロア側面ファスナー部21のフック面21Hとマット側面ファスナー部22のフック面22Hとが重なることになり、その部分は結合力を発揮しない。つまり、面ファスナー20は、図4Bに示すように、前後方向に大きくずれて重なった場合、フロア側面ファスナー部21とマット側面ファスナー部22とが重ならない外側の部分のみでなく、ループ面とフック面との境界付近においても、互いに係合しない部分が生じるようになっている。したがって、本発明のマット取付構造は、フロアマット11がフロア10に対して正規位置から前後方向におけるずれが大きいほど、結合力が大きく低下し、フロアマット11をフロア10から容易に取り外すことができる。
【0031】
ただし、前述したように、マット側面ファスナー部22は、フロア側面ファスナー部21に比較して大きくされているため、図4Aに示すように、フロア側面ファスナー部21のフック面21Hとマット側面ファスナー部22のフック面22Hとが僅かに重なって結合力を発揮していないものの、フロア側面ファスナー部21のループ面21Lの全体が、マット側面ファスナー部22のフック面22Hと重なって互いに係合するようになっており、フロアマット11がフロア10に対して正規位置から僅かにずれるような場合には、結合力の低下が抑えられ、フロアマット11のフロア10に対して十分な結合力を発揮できるようになっている。
【0032】
また、先にも述べたように、フロア10の表面が不織布状のものされているため、マット側面ファスナー部22のフック面22Hは、その不織布に対して係合しやすい。しかしながら、本発明のマット取付構造は、マット側面ファスナー部22の前側の領域がループ面22Lとされているため、図4Aおよび図4Bに示すように、フロアマット11が前方側にずれた場合において、マット側面ファスナー部22のフック面22Hがフロア側面ファスナー部21からはみ出す範囲は小さい。したがって、マット側面ファスナー部22のフック面22Hが、フロア10のカーペットに係合して、容易に取り外せないような事態を回避することができる。
【0033】
以上のような構成により、本発明のマット取付構造は、フロアマット11がフロア10に対して正規の位置にある場合には確実に固定し、フロアマット11が正規の位置からずれた場合には容易に取り外すことが可能となっているのである。そのため、本発明のマット取付構造によれば、万が一、運転中にフロアマット11が前方側にずれて、アクセルペダル13やブレーキペダル14に引っ掛かってしまった場合であっても、フロアマット11はしっかりと固定されておらず、フロアマット11を容易にずらすことができるのである。
【0034】
また、本発明のマット取付構造は、フロア側面ファスナー部21とマット側面ファスナー部22との各々が円形状とされているため、どの方向からフロアマットを引っ張っても、結合している幅がフロア側面ファスナー部21の直径となるため、どの方向からでも、取り外しが行いやすいようになっている。
【0035】
<他の実施形態>
上記実施例のマット取付構造においては、面ファスナー20を構成するフロア側面ファスナー部21とマット側面ファスナー部22との各々が円形状とされていたが、それに限定されない。例えば、図5Aに示すフロア50のフロア側面ファスナー部51、および、図5Bに示すフロアマット52のマット側面ファスナー部53のように、左右方向に長い楕円形状とされてもよい。また例えば、図6Aに示すフロア60のフロア側面ファスナー部61、および、図6Bに示すフロアマット62のマット側面ファスナー部63ように、左右方向に長い概して四角形状とされてもよい。これらのように、面ファスナーを左右方向に長い形状とすることで、フロアマットのフロアに対する前後方向へ向かう力に対する抵抗力を大きくすることができ、より確実に、フロアマットの前方側への移動を抑えることができる。
【0036】
また、上記実施例のマット取付構造においては、フロア側面ファスナー部21とマット側面ファスナー部22との各々が前後方向において2分割されていたが、それに限定されず、左右方向へのズレに対処したい場合には、左右方向において2分割した構成とすることもできる。さらに言えば、斜め方向に2分割することで、前後左右へのズレに対処可能な構成とすることもできる。
【0037】
さらに言えば、本発明のマット取付構造は、分割した領域の数は2つであることに限定されず、3以上の領域に分割した構成とすることもできる。図7Aおよび図7Bには、4分割した構成のマット取付構造を示している。詳しく言えば、図7Aに示すフロア70に設けられたフロア側面ファスナー部71は、左前方と右後方とがフック面71Hとされ、右前方と左後方とがループ面71Lとされている。一方、図7Bおよびに示すフロアマット72に設けられたマット側面ファスナー部73は、左前方と右後方とがループ面73Lとされ、右前方と左後方とがフック面73Hとされている。そのような構成により、前後方向のズレだけでなく、左右方向のズレに対しても、フロアマットの取り外しを容易なものとすることができる。
【0038】
また、本発明のマット取付構造は、図8に示すように、フロア80には、フロア側面ファスナー部21の周囲に、不織布状とされずフックと係合しない非係合領域81が形成されている。その非係合領域81は、例えば、ニードルパンチカーペットを貼り付けない領域としたり、カーペットの上に樹脂等のフィルムを貼着したりする等、種々の方法で形成することができる。この非係合領域81が形成されていることで、フロアマットが大きく前方にずれてしまった場合であっても、マット側面ファスナー部のフック面がフロア80に係合してしまうことを防止することができ、フロアマットが正規位置近傍以外において、固定されてしまうことを回避することができる。
【0039】
上記実施例のマット取付構造は、車両用フロアマットに採用されていたが、それに限定されず、種々の乗物のフロアマットにおいて採用可能である。本発明のマット取付構造は、例えば、列車や遊戯用車両、飛行機やヘリコプター、船舶や潜水艇などの乗物用フロアマットの取付構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10…フロア、11…フロアマット〔乗物用フロアマット〕、20…面ファスナー、21…フロア側面ファスナー部、21H…フック面、21L…ループ面、22…マット側面ファスナー部、22H…フック面、22L…ループ面、50…フロア、51…フロア側面ファスナー部、52…フロアマット、53…マット側面ファスナー部、60…フロア、61…フロア側面ファスナー部、62…フロアマット、63…マット側面ファスナー部、70…フロア、71…フロア側面ファスナー部、71H…フック面、71L…ループ面、72…フロアマット、73…マット側面ファスナー部、73H…フック面、73L…ループ面、80…フロア、81…非係合領域
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8