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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-131965(P2020-131965A)
(43)【公開日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20200803BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20200803BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20200803BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20200803BHJP
【FI】
   B60C11/03 300E
   B60C11/00 H
   B60C11/12 C
   B60C11/13 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-28594(P2019-28594)
(22)【出願日】2019年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】谷口 二朗
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC15
3D131BC18
3D131EB72V
3D131EB72W
3D131EB72X
3D131EB81V
3D131EB81W
3D131EB81X
3D131EC16V
3D131EC16W
3D131EC16X
(57)【要約】
【課題】凍結路面での走行性能の良い空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部に複数の浅溝40と複数の凹部32とが形成され、複数の浅溝40が平行に延長された空気入りタイヤにおいて、複数の浅溝40は、浅溝40の延長方向に直交する方向のトレッド部の断面形状を鋸歯状とし、前記鋸歯状の頂点にあたる部分がエッジ44として形成され、2つのエッジ44の間に凹部32が形成されたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に複数の浅溝と複数の凹部とが形成され、複数の前記浅溝が平行に延長された空気入りタイヤにおいて、
複数の前記浅溝は、前記浅溝の延長方向に直交する方向の前記トレッド部の断面形状を鋸歯状とし、前記鋸歯状の頂点にあたる部分がエッジとして形成され、
2つの前記エッジの間に前記凹部が形成されたことを特徴とする、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッド部に複数のサイプが形成され、2つの前記サイプに挟まれた陸部片に前記凹部が形成され、
前記凹部の両側の前記サイプの間の距離をW1、前記凹部と一方の前記サイプとの間の距離をW2、前記凹部と他方の前記サイプとの間の距離をW3とすると、W2/W1及びW3/W1が0.1以上0.3以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記凹部の両側の前記エッジの間の距離をV1、前記凹部と一方の前記エッジとの間の距離をV2、前記凹部と他方の前記エッジとの間の距離をV3とすると、V2/V1及びV3/V1が0.1以上0.3以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記浅溝が前記凹部よりも深い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に記載されているように、トレッド部に複数の浅溝が形成され、さらに、タイヤ径方向から見て円形の複数の凹部が形成された空気入りタイヤが知られている。このような空気入りタイヤでは、浅溝及び凹部が凍結路面とトレッド部との間の水膜を除去するため、空気入りタイヤの氷上制動性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−107726号公報
【特許文献2】特開2016−107727号公報
【特許文献3】特開2016−107728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、凍結路面での走行性能をさらに向上させることが望まれているが、トレッド部にこのような浅溝及び凹部が形成されているという特徴を変更することは望ましくない。
【0005】
そこで本発明は、浅溝及び凹部が形成されているというトレッド部の構造を維持しつつ、凍結路面での走行性能がさらに向上した空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の空気入りタイヤは、トレッド部に複数の浅溝と複数の凹部とが形成され、複数の前記浅溝が平行に延長された空気入りタイヤにおいて、複数の前記浅溝は、前記浅溝の延長方向に直交する方向の前記トレッド部の断面形状を鋸歯状とし、前記鋸歯状の頂点にあたる部分がエッジとして形成され、2つの前記エッジの間に前記凹部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の空気入りタイヤにおいては、浅溝のエッジと、2つのエッジの間に形成された凹部とによりエッジ効果が発揮されるため、凍結路面での走行性能がさらに向上している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の空気入りタイヤのトレッドパターン。この図において凹部、浅溝及びサイプは省略されている。
図2】実施形態のセンターブロックの1つをタイヤ径方向外側から見た図。
図3図2のA−A断面図。凹部が存在しない位置での、センターブロックのタイヤ幅方向の断面図。
図4図2のB−B断面図。凹部の位置での、センターブロックのタイヤ幅方向の断面図。
図5図2のC−C断面図。凹部の位置での、センターブロックのタイヤ周方向の断面図。
図6図4のD部の拡大図。
図7】サイプの形状の変更例を示す図。(a)はタイヤ幅方向Yに延びる直線状のサイプ、(b)は1つの曲線状のサイプ、(c)は波形状の部分と直線状の部分とからなるサイプ、(d)は一方の端部がセンターブロック内で閉塞しているサイプを、それぞれタイヤ径方向外側から見た図。なお図7において浅溝は省略されている。
図8】浅溝とサイプとの交わる角度の変更例を示す図。センターブロックをタイヤ径方向外側から見た図。
図9】比較例の空気入りタイヤのブロックをタイヤ径方向外側から見た図。(a)は比較例1の空気入りタイヤにおける1つのブロックを示す図。(b)は比較例2の空気入りタイヤにおける1つのブロックを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の空気入りタイヤについて図面に基づき説明する。なお以下の説明における空気入りタイヤの特徴は、特に記載が無い場合は、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤの無負荷状態での特徴である。ここで、正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「DesignRim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」のことである。また、正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」のことである。ただし空気入りタイヤが乗用車用である場合は、正規内圧は180kPaである。
【0010】
ちなみに、後述する正規荷重とは、JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOADLIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「LOAD CAPACITY」のことである。ただし空気入りタイヤが乗用車用である場合は、正規荷重は、内圧180kPaの対応荷重の85%である。
【0011】
実施形態の空気入りタイヤは、トレッド部の構造を除き一般的なラジアルタイヤと同様の構造を有する。実施形態の空気入りタイヤの大まかな構造を例示すると、次の通りである。
【0012】
まず、タイヤ幅方向両側にビード部が設けられている。ビード部は、円形に巻かれた鋼線からなるビードコアと、ビードコアの径方向外側に設けられたゴム製のビードフィラーとからなる。タイヤ幅方向両側のビード部にはカーカスプライが架け渡されている。カーカスプライはタイヤ周方向に直交する方向に並べられた多数のプライコードがゴムで被覆されたシート状の部材である。カーカスプライは、タイヤ幅方向両側のビード部の間で空気入りタイヤの骨格形状を形成するとともに、ビード部の周りでタイヤ幅方向内側から外側に折り返されることによりビード部を包んでいる。カーカスプライの内側には空気の透過性の低いゴムからなるシート状のインナーライナーが貼り付けられている。
【0013】
カーカスプライのタイヤ径方向外側には1枚又は複数枚のベルトが設けられ、ベルトのタイヤ径方向外側にはベルト補強層が設けられている。ベルトはスチール製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層は有機繊維製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層のタイヤ径方向外側には接地面を有するトレッド部が設けられている。また、カーカスプライのタイヤ幅方向両側にはサイドウォールが設けられている。これらの部材の他にも、タイヤの機能上の必要に応じて、ベルト下パッドやチェーハー等の部材が設けられている。
【0014】
次にトレッド部について説明する。トレッド部には複数の陸部及び複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。トレッドパターンの詳細は、限定されないが、例えば図1に示すようなトレッドパターンである。図1のトレッドパターンでは、タイヤ周方向(図面において矢印Xで示す方向)に延びる4本の主溝10と、タイヤ幅方向(図面において矢印Yで示す方向)に延びる多数の横溝12とが設けられている。そして、主溝10及び横溝12によって分割された多数の陸部が形成されている。
【0015】
図1の実施形態における陸部として、タイヤ中心線CLに近い2本の主溝10に挟まれた複数のセンターブロック20と、タイヤ幅方向Yの両側においてタイヤ接地端Eに近い主溝10とタイヤ接地端Eとに挟まれた複数のショルダーブロック22と、センターブロック20とショルダーブロック22との間の複数のメディエイトブロック24とが形成されている。いずれのブロックもタイヤ周方向Xに並んでブロック列を形成している。
【0016】
なお、主溝は、図1の主溝10のようにタイヤ周方向Xに直線状に延びるものでなくても良く、例えば屈曲しながらタイヤ周方向Xに延びるジグザグ状のものや、湾曲しながらタイヤ周方向Xに延びる波形状のものや、タイヤ周方向Xに対して斜めに延びるものであっても良い。また、陸部は、タイヤ周方向Xに延びる主溝によって分割され横溝によって分割されない、タイヤ周方向Xに延びるリブであっても良い。
【0017】
次に、陸部の構造について、センターブロック20を例に取って説明する。図2図5に示すように、センターブロック20には直線状に延びる複数の浅溝40が設けられている。これらの浅溝40はファーストエッジ等と呼ばれるものである。これらの浅溝40は同一方向に延長されており平行になっている。本実施形態ではこれらの浅溝40はタイヤ周方向Xに延長されているものとする。図3に示すように、浅溝40は、浅溝40が無い場合の接地面に対して傾斜する傾斜面42を形成する溝である。複数の浅溝40が浅溝40の延長方向(すなわちタイヤ周方向X)と直交する方向(すなわちタイヤ幅方向Y)に並んでいるので、図3及び図4に示すように複数の傾斜面42がタイヤ幅方向Yに連続して形成されている。そのため、図3及び図4に示すように、これらの浅溝40は、センターブロック20のタイヤ幅方向Yの断面形状を鋸歯状としている。この鋸歯状の頂点は、タイヤ周方向Xに延びるエッジ44となっている。
【0018】
浅溝40の深さ(すなわち、浅溝40の底部からエッジ44までのタイヤ径方向の高さ)H1(図6参照)は、例えば0.1mm以上0.4mm以下である。また、浅溝40の間隔(後述する2つのエッジ44の間の距離V1(図6参照)と同じ)は、例えば2.0mm以上4.0mm以下である。
【0019】
また、図2に示すように、センターブロック20にはタイヤ幅方向Yに延びるサイプ30が設けられている。サイプ30とは、幅の狭い溝のことであり、より正確には、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤが接地し、そこへ正規荷重が負荷されたときに、接地面への開口部が閉じる溝のことである。図2に示すサイプ30はタイヤ幅方向Yに延びているが、サイプの延びる方向はこれに限定されず、例えばタイヤ周方向X及びタイヤ幅方向Yに対して斜めの方向であっても良い。サイプ30の深さは、限定されないが、一般的には主溝10の深さよりも浅い。1つのセンターブロック20には複数(図2の場合は4つ)のサイプ30が設けられている。
【0020】
図2におけるサイプ30はタイヤ径方向外側から見て波形状となっている。ただし、サイプの形状はこれに限定されない。波形状のサイプ30の代わりに、例えば、図7(a)に示す直線状のサイプ30a、図7(b)に示す1つの曲線状のサイプ30b、又は図7(c)に示す波形状の部分と直線状の部分とからなるサイプ30cが設けられていても良い。
【0021】
また、図2におけるサイプ30の両端部はセンターブロック20の幅方向両端部に達し主溝10に開口している。しかし、図7(d)に示すサイプ30dのように、少なくとも一方の端部がセンターブロック20内で閉塞し主溝10に開口していなくても良い。
【0022】
なお、図2では浅溝40とサイプ30とが直角に交わっている。しかし、浅溝40とサイプ30とが直角以外の角度で交わっていても良い。例えば図8では、浅溝40がタイヤ周方向Xに延びているのに対し、サイプ30がタイヤ幅方向Yに対して斜めの方向に延びているため、浅溝40とサイプ30とが直角以外の角度で交わっている。
【0023】
さらに、図2等に示すように、センターブロック20には複数の凹部32が設けられている。本実施形態における凹部32は、タイヤ径方向から見て円形である(つまり接地面への開口端34が円形である)。この場合の凹部32の直径は、例えば1.6mm以上3.5mm以下である。ただし、凹部の接地面への開口端の形状はこれに限定されず、例えば四角形、五角形、六角形等の多角形であっても良い。凹部32は、開口端34(図4及び図6参照)の形状を保ったままタイヤ径方向に延びていることが好ましい。ただし、凹部32が開口端34においてその下の部分(凹部32の内部)よりも広がっていても良い。
【0024】
凹部32の深さH2(図6参照)は例えば0.05mm以上0.5mm以下である。なお凹部32の深さH2とは凹部32の一番深い位置での深さのことである。浅溝40の深さH1は、凹部32の深さH2よりも深いことが好ましい。
【0025】
図2図4及び図6に示すように、それぞれの凹部32は、2本の浅溝40が形成する2つのエッジ44の間に形成されている。つまり凹部32は傾斜面42に形成されている。エッジ44と凹部32とは、重なったり接したりせず、離れている。図6に示すように凹部32の両側のエッジ44の間の距離をV1、凹部32と一方のエッジ44との間の距離をV2、凹部32と他方のエッジ44との間の距離をV3とすると、V2/V1及びV3/V1がそれぞれ0.1以上0.3以下となっている。
【0026】
ここで、凹部32の両側のエッジ44の間の距離V1とは、図2に二点鎖線で示すように、凹部32の中心を通過するとともに凹部32の両側のエッジ44を最短距離で結ぶ直線L0の長さのことである。また、凹部32とエッジ44との間の距離V2、V3とは、上記の直線L0上での、凹部32とエッジ44との間の距離のことである。
【0027】
凹部32の開口端34の大きさや、2つのエッジ44の間での凹部32の配置位置は、上記のようにV2/V1及びV3/V1がそれぞれ0.1以上0.3以下となるように設定される。
【0028】
また、図2及び図5に示すように、それぞれの凹部32は、隣り合う2つのサイプ30の間に形成されている。サイプ30と凹部32とは、重なったり接したりせず、離れている。なお、図2及び図5に示すように、センターブロック20のタイヤ周方向Xの端部とサイプ30との間にも凹部32が設けられていても良い。
【0029】
本実施形態において、凹部32の両側のサイプの間の距離をW1、凹部32と一方のサイプとの間の距離をW2、凹部32と他方のサイプとの間の距離をW3とすると、W2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.1以上0.3以下となっている。
【0030】
ここで、凹部32の両側のサイプの間の距離W1とは、サイプが波形状の場合は、図2に示すように、その波形状の振幅における凹部32に近い方の頂点を結ぶ仮想直線Mを定め、凹部32の中心を通過するとともに凹部32の両側の仮想直線Mを最短距離で結ぶ直線L1の長さのことである。また、凹部32の両側のサイプの間の距離W1とは、サイプが直線状又は1つの曲線状の場合は、図7(a)に示すように、凹部32の中心を通過するとともに凹部32の両側のサイプを最短距離で結ぶ直線L2の長さのことである。
【0031】
また、凹部32と一方のサイプとの間の距離W2とは、サイプが波形状の場合は、図2に示すように、上記の直線L1上での、凹部32と一方のサイプにおける仮想直線Mとの間の距離のことである。また、凹部32と一方のサイプとの間の距離W2とは、サイプが直線状又は1つの曲線状の場合は、図7(a)に示すように、上記の直線L2上での、凹部32と一方のサイプとの間の距離のことである。
【0032】
また、凹部32と他方のサイプとの間の距離W3とは、サイプが波形状の場合は、図2に示すように、上記の直線L1上での、凹部32と他方のサイプにおける仮想直線Mとの間の距離のことである。また、凹部32と他方のサイプとの間の距離W3とは、サイプが直線状又は1つの曲線状の場合は、図7(a)に示すように、上記の直線L2上での、凹部32と他方のサイプとの間の距離のことである。
【0033】
凹部32の開口端34の大きさや、2つのサイプ30の間での凹部32の配置位置は、上記のようにW2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.1以上0.3以下となるように設定される。
【0034】
本実施形態において、隣り合う2つのサイプ30に挟まれた部分を陸部片36とする。図7(d)に示すサイプ30dのように少なくとも一方の端部がセンターブロック20内で閉塞している場合は、その閉塞位置からセンターブロック20の端部までサイプ30dの延長方向と同方向に延びる延長線Nが規定され、サイプ30dと延長線Nとからなる仮想線Pが規定される。そして、隣り合う2つの仮想線Pに挟まれた部分を陸部片36とする。
【0035】
1つの陸部片36に設けられる凹部32の数は限定されない。しかし、1つの陸部片36の接地面積に対する、その陸部片36に設けられた全ての凹部32の開口面積の合計の割合が、10%以上40%以下であることが望ましい。なお陸部片36の接地面積に凹部32の開口面積は含まれない。また接地面積とは、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤが平面に接地し、そこへ正規荷重が負荷されたときの接地面積のことである。
【0036】
ここまでセンターブロック20を例に取って説明したが、浅溝40や凹部32等に関する以上の特徴を有するブロックはセンターブロック20に限定されない。センターブロック20、ショルダーブロック22、及びメディエイトブロック24のうち少なくともいずれか1つが、浅溝40や凹部32等に関する以上の特徴を有していれば良い。
【0037】
つまり、センターブロック20、ショルダーブロック22、及びメディエイトブロック24のうちいずれか1つのみが浅溝40や凹部32等に関する以上の特徴を有していても良いし、センターブロック20、ショルダーブロック22、及びメディエイトブロック24の全てが浅溝40や凹部32等に関する以上の特徴を有していても良い。
【0038】
また、センターブロック20、ショルダーブロック22、及びメディエイトブロック24のうちいずれか2つが浅溝40や凹部32等に関する以上の特徴を有していても良い。つまり、センターブロック20及びショルダーブロック22のみが以上の特徴を有している場合、センターブロック20及びメディエイトブロック24のみが以上の特徴を有している場合、ショルダーブロック22及びメディエイトブロック24のみが以上の特徴を有している場合があり得る。
【0039】
本実施形態の空気入りタイヤは一般的なラジアルタイヤと同様の方法で製造することができるが、加硫成型時に上記の凹部32を形成するための凸部が、加硫成型のための金型の内面に設けられていることが必要である。この凸部は、金型内部の空気を外部に逃がすためのスプリングベントの金型内側の部分が金型内部に突出したものであっても良い。
【0040】
また、浅溝40は、加硫成型後の空気入りタイヤの表面を削ることにより形成されても良いし、浅溝40を形成するための複数の凸条が設けられた金型で加硫成型が行われることにより形成されても良い。
【0041】
次に本実施形態の効果について説明する。本実施形態の空気入りタイヤでは、複数の浅溝40が平行に並ぶことにより、浅溝40の延長方向に直交する方向のトレッド部の断面形状が鋸歯状となっており、その鋸歯状の頂点にあたる部分がエッジ44として形成されている。このエッジ44によるエッジ効果のため、本実施形態の空気入りタイヤは凍結路面での走行性能に優れている。
【0042】
さらに、本実施形態の空気入りタイヤでは、トレッド部に凹部32も形成されているため、凹部32によるエッジ効果も加わっている。ここで、凹部32は、2本のエッジ44の間に形成されており、エッジ44と重なったり接したりしていない。そのため、凹部32は、浅溝40のエッジ44によるエッジ効果を損なうことなく、新たなエッジ効果を発揮する。これらのことから、本実施形態の空気入りタイヤでは、従来の空気入りタイヤよりも、凍結路面での走行性能がさらに向上している。
【0043】
ここで、上記のようにV2/V1及びV3/V1が0.1以上0.3以下であれば、浅溝40及び凹部32によるエッジ効果が向上するため、凍結路面での走行性能がさらに向上する。具体的には、V2/V1及びV3/V1がそれぞれ0.1以上であることにより、浅溝40と凹部32との間のゴムの部分が十分な厚みとなり、その部分が大きな弾性力を発揮できるため、エッジ効果が向上し凍結路面での走行性能がさらに向上する。また、V2/V1及びV3/V1がそれぞれ0.3以下であることにより、浅溝40と凹部32との間のゴムの部分が厚過ぎずに変形可能となり、その部分が大きな弾性力を発揮できるため、エッジ効果が向上し凍結路面での走行性能がさらに向上する。
【0044】
また、浅溝40はエッジ44が長いため大きなエッジ効果を生じさせるものである。そのため、浅溝40が十分に深いことにより(具体的には凹部32より深いことにより)、空気入りタイヤの凍結路面での走行性能がさらに向上する。
【0045】
また、トレッド部にサイプ30も設けられている場合は、サイプ30によるエッジ効果も加わり、空気入りタイヤの凍結路面での走行性能がさらに向上する。凹部32が2本のサイプ30の間に形成され、凹部32とサイプ30とが重なったり接したりしていなければ、凹部32はサイプ30によるエッジ効果を損なうことなく新たなエッジ効果を発揮する。
【0046】
ここで、上記のようにW2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.1以上0.3以下であれば、サイプ30及び凹部32によるエッジ効果が向上するため、凍結路面での走行性能がさらに向上する。具体的には、W2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.1以上であることにより、サイプ30と凹部32との間のゴムの部分が十分な厚みとなり、その部分が大きな弾性力を発揮できるため、エッジ効果が向上し凍結路面での走行性能がさらに向上する。また、W2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.3以下であることにより、サイプ30と凹部32との間のゴムの部分が厚過ぎずに変形可能となり、その部分が大きな弾性力を発揮できるため、エッジ効果が向上し凍結路面での走行性能がさらに向上する。
【0047】
また、本実施形態の空気入りタイヤにおいて、1つの陸部片36の接地面積に対する、その陸部片36に設けられた全ての凹部32の開口面積の合計の割合が、10%以上40%以下であれば、凹部32によるエッジ効果がさらに向上するため凍結路面での走行性能がさらに向上する。具体的には、上記の割合が10%以上であることにより、サイプ30と凹部32との間のゴムの部分が変形可能な厚みとなる上に、凹部32の開口端34が大きくなって開口端34の円周が長くなるため、凹部32によるエッジ効果がさらに向上して凍結路面での走行性能がさらに向上する。また、上記の割合が40%以下であることにより、陸部片36の剛性が確保されるため、凹部32によるエッジ効果がさらに向上して凍結路面での走行性能がさらに向上する。
【0048】
以上の実施形態の効果を確認するため、表1、図2及び図9に示す実施例及び比較例の空気入りタイヤのアイス路面での操縦安定性能を評価した。実施例の空気入りタイヤは、図2に示す上記実施形態の空気入りタイヤである。図9(a)に示す比較例1の空気入りタイヤは、全てのブロックに凹部32が設けられていない点で、上記実施形態の空気入りタイヤと異なる。また、図9(b)に示す比較例2の空気入りタイヤは、凹部32が浅溝40のエッジ44と重なっている点で、上記実施形態の空気入りタイヤと異なる。
【0049】
アイス路面での操縦安定性能は次のように評価した。まず、ドライバーが各空気入りタイヤを装着した車両に乗り、アイス路面上で、加速、制動、旋回、及びレーンチェンジをする走行を実施した。そしてドライバーが操縦安定性能を官能評価した。評価は、比較例1の結果を100とし、指数が大きいほど操縦安定性能が優れていることを示す指数で行った。
【0050】
評価結果は表1の通りであり、実施例の空気入りタイヤは、比較例1及び比較例2の空気入りタイヤと比べて、アイス路面での操縦安定性能に優れることが確認できた。
【0051】
【表1】
【0052】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲はこれに限定されない。以上の実施形態に対して、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。以上の実施形態やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0053】
CL…タイヤ中心線、E…タイヤ接地端、L0…直線、L1…直線、L2…直線、M…仮想直線、N…延長線、P…仮想線、X…タイヤ周方向、Y…タイヤ幅方向、10…主溝、12…横溝、20…センターブロック、22…ショルダーブロック、24…メディエイトブロック、30…サイプ、30a…サイプ、30b…サイプ、30c…サイプ、30d…サイプ、32…凹部、34…開口端、36…陸部片、40…浅溝、42…傾斜面、44…エッジ
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9