情報取得部と、撮像画像、及び車速情報を参照して、第1の目標制御量を算出する第1の目標制御量算出部と、地図情報及びGPS情報の内の少なくとも一方を参照して、車両の進行方向の道路の形状を取得し、道路の形状に基づいてトレースすべき経路を算出し、トレースすべき曲率を算出し、トレースすべき曲率に基づいて第2の目標制御量を算出する第2の目標制御量算出部と、第1の目標制御量に乗じる第1のゲイン、及び、第2の目標制御量に乗じる第2のゲインを算出するゲイン算出部と、を備え、第1のゲインが乗じられた第1の目標制御量と、第2のゲインが乗じられた第2の目標制御量と、に基づいてステアリングを制御する制御量を算出する。
前記第1のゲインが乗じられた前記第1の目標制御量と、前記第2のゲインが乗じられた前記第2の目標制御量とを加算することによって、第3の目標制御量を算出する第3の目標制御量算出部と、
前記第3の目標制御量と実ラックストロークとの差分をとることによって、第4の目標制御量を算出する第4の目標制御量算出部と、
を更に備えている請求項1又は2に記載のステアリング制御装置。
前記第2の目標制御量算出部は、複数の前記曲線のうち、前記車両からの距離がより近い基準点を通る曲線に乗じられる重み係数をより大きく設定したうえで、前記複数の曲線の曲率の加重平均をとることによって前記トレースすべき経路の曲率を算出する請求項5に記載のステアリング制御装置。
前記第2の目標制御量算出部は、前記車速情報取得部が取得した車速情報を参照して、前記所定の距離を算出し、前記所定の距離に基づいて前記基準点を設定する請求項4〜6のいずれか一項に記載のステアリング制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、詳細に説明する。
【0010】
(車両900の構成)
図1は、本実施形態に係る車両900の概略構成を示す図である。
図1に示すように、車両900は、懸架装置(サスペンション)100、車体200、車輪300、タイヤ310、操舵部材410、ステアリングシャフト420、トルクセンサ430、舵角センサ440、トルク印加部460、ラックピニオン機構470、ラック軸480、エンジン500、ECU(Electronic Control Unit)(制御装置)600、発電装置700およびバッテリ800を備えている。
【0011】
タイヤ310が装着された車輪300は、懸架装置100によって車体200に懸架されている。車両900は、四輪車であるため、懸架装置100、車輪300およびタイヤ310については、それぞれ4つ設けられている。
【0012】
なお、左側の前輪、右側の前輪、左側の後輪および右側の後輪のタイヤ及び車輪をそれぞれ、タイヤ310A及び車輪300A、タイヤ310B及び車輪300B、タイヤ310C及び車輪300C、並びに、タイヤ310D及び車輪300Dとも称する。以下、同様に、左側の前輪、右側の前輪、左側の後輪および右側の後輪にそれぞれ付随した構成を、符号「A」「B」「C」及び「D」を付して表現することがある。
【0013】
懸架装置100は、油圧緩衝装置、アッパーアーム及びロアーアームを備えている。また、油圧緩衝装置は、当該油圧緩衝装置が発生させる減衰力を調整する電磁弁であるソレノイドバルブを備えている。ただし、これは本実施形態を限定するものではなく、油圧緩衝装置は、減衰力を調整する電磁弁として、ソレノイドバルブ以外の電磁弁を用いてもよい。例えば、上記電磁弁として、電磁流体(磁性流体)を利用した電磁弁を備える構成としてもよい。
【0014】
エンジン500には、発電装置700が付設されており、発電装置700によって生成された電力がバッテリ800に蓄積される。また、エンジン500は、ECU600から供給される車速制御量に応じて回転数を制御可能に構成されている。
【0015】
運転者の操作する操舵部材410は、ステアリングシャフト420の一端に対してトルク伝達可能に接続されており、ステアリングシャフト420の他端は、ラックピニオン機構470に接続されている。
【0016】
ラックピニオン機構470は、ステアリングシャフト420の軸周りの回転を、ラック軸480の軸方向に沿った変位に変換するための機構である。ラック軸480が軸方向に変位すると、タイロッド及びナックルアームを介して車輪300A及び車輪300Bが転舵される。
【0017】
トルクセンサ430は、ステアリングシャフト420に印加される操舵トルク、換言すれば、操舵部材410に印加される操舵トルクを検出し、検出結果を示すトルクセンサ信号をECU600に提供する。より具体的には、トルクセンサ430は、ステアリングシャフト420に内設されたトーションバーの捩れを検出し、検出結果をトルクセンサ信号として出力する。なお、トルクセンサ430として、ホールIC,MR素子、磁歪式トルクセンサなどの周知のセンサを用いてもよい。
【0018】
舵角センサ440は、操舵部材410の舵角を検出し、検出結果をECU600に提供する。
【0019】
トルク印加部460は、ECU600から供給されるステアリング制御量に応じたアシストトルク又は反力トルクを、ステアリングシャフト420に印加する。トルク印加部460は、ステアリング制御量に応じたアシストトルク又は反力トルクを発生させるモータと、当該モータが発生させたトルクをステアリングシャフト420に伝達するトルク伝達機構とを備えている。
【0020】
なお、本明細書における「制御量」の具体例として、電流値、デューティー比、減衰率、減衰比等が挙げられる。
【0021】
操舵部材410、ステアリングシャフト420、トルクセンサ430、舵角センサ440、トルク印加部460、ラックピニオン機構470、ラック軸480、及びECU600は、本実施形態に係るステアリング装置を構成する。
【0022】
なお、上述の説明において「トルク伝達可能に接続」とは、一方の部材の回転に伴い他方の部材の回転が生じるように接続されていることを指し、例えば、一方の部材と他方の部材とが一体的に成形されている場合、一方の部材に対して他方の部材が直接的又は間接的に固定されている場合、及び、一方の部材と他方の部材とが継手部材等を介して連動するよう接続されている場合を少なくとも含む。
【0023】
また、上記の例では、操舵部材410からラック軸480までが常時機械的に接続されたステアリング装置を例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、本実施形態に係るステアリング装置は、例えばステア・バイ・ワイヤ方式のステアリング装置であってもよい。ステア・バイ・ワイヤ方式のステアリング装置に対しても本明細書において以下に説明する事項を適用することができる。
【0024】
また、車両900は、車輪300毎に設けられ各車輪300の車輪速を検出する車輪速センサ320、車両900の横方向の加速度を検出する横Gセンサ330、車両900の前後方向の加速度を検出する前後Gセンサ340、車両900のヨーレートを検出するヨーレートセンサ350、エンジン500が発生させるトルクを検出するエンジントルクセンサ510、エンジン500の回転数を検出するエンジン回転数センサ520、及びブレーキ装置が有するブレーキ液に印加される圧力を検出するブレーキ圧センサ530を備えている。これらの各種センサから出力される情報は、CAN(Controller Area Network)370を介してECU600に供給される。
【0025】
また、車両900は、車両900の現在位置を特定し、当該現在位置を示す現在位置情報を出力するGPS(Global Positioning System)センサ550と、目的地に関するユーザ入力を受け付け、当該目的地を示す目的地情報を出力するユーザ入力受付部560とを備えており、現在位置情報及び目的地情報も、CAN370を介してECU600に供給される。
【0026】
また、図示は省略するが、車両900は、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐためのシステムであるABS(Antilock Brake System)、加速時等における車輪の空転を抑制するTCS(Traction Control System)、及び、旋回時のヨーモーメント制御やブレーキアシスト機能等のための自動ブレーキ機能を備えた車両挙動安定化制御システムであるVSA(Vehicle Stability Assist)制御可能なブレーキ装置を備えている。
【0027】
ここで、ABS、TCS、及びVSAは、推定した車体速に応じて定まる車輪速と、車輪速センサ320によって検出された車輪速とを比較し、これら2つの車輪速の値が、所定の値以上相違している場合にスリップ状態であると判定する。ABS、TCS、及びVSAは、このような処理を通じて、車両900の走行状態に応じて最適なブレーキ制御やトラクション制御を行うことにより、車両900の挙動の安定化を図るものである。
【0028】
車両900が備えるブレーキ装置は、ECU600から供給される車速制御量に応じて、ブレーキ動作を行うことができるよう構成されている。
【0029】
ECU600は、車両900が備える各種の電子機器を統括制御する。例えば、ECU600は、トルク印加部460に供給するステアリング制御量を調整することにより、ステアリングシャフト420に印加するアシストトルク又は反力トルクの大きさを制御する。
【0030】
また、ECU600は、懸架装置100に含まれる油圧緩衝装置が備えるソレノイドバルブに対して、サスペンション制御量を供給することによって当該ソレノイドバルブの開閉を制御する。この制御を可能とするために、ECU600からソレノイドバルブへ駆動電力を供給する電力線が配されている。
【0031】
(ECU600)
以下では、参照する図面を替えて、ECU600について具体的に説明する。
図2は、ECU600の概略構成を示す図である。
【0032】
図2に示すように、ECU600は、ステアリング制御部630、サスペンション制御部650、及び車速制御部670を備えている。
【0033】
ステアリング制御部630は、CAN370に含まれる各種のセンサ検出結果を参照して車両900が車線に沿った走行を行うためのステアリング制御量を設定する。ステアリング制御部630は、設定したステアリング制御量をトルク印加部460に供給する。また、ステアリング制御部630は、設定したステアリング制御量をサスペンション制御部650及び車速制御部670の少なくとも何れかに供給する。なお、ステアリング制御部630は、設定したステアリング制御量に代えて、ステアリング制御部630において算出した車両900の車線中央に対するずれ量及びトレースすべき曲率R4をサスペンション制御部650及び車速制御部670の少なくとも何れかに供給する構成であってもよい。「車両900の車線中央に対するずれ量」及び「トレースすべき曲率R4」については後述する。
【0034】
なお、本明細書において「〜を参照して」との表現には、「〜を用いて」「〜を考慮して」「〜に依存して」などの意味が含まれ得る。
【0035】
サスペンション制御部650は、CAN370に含まれる各種のセンサ検出結果、並びにステアリング制御部630から供給されるステアリング制御量、車両900の車線中央に対するずれ量、及びトレースすべき曲率R4の少なくとも何れかを参照し、懸架装置100に含まれる油圧緩衝装置が備えるソレノイドバルブに対して供給するサスペンション制御量の大きさを決定する。
【0036】
車速制御部670は、CAN370に含まれる各種のセンサ検出結果、並びにステアリング制御部630から供給されるステアリング制御量、車両900の車線中央に対するずれ量、及びトレースすべき曲率R4の少なくとも何れかを参照し、エンジン500及びブレーキ装置に供給する車速制御量の大きさを決定する。
【0037】
なお、ステアリング制御部630、サスペンション制御部650、及び車速制御部670は、それぞれ別々のECUとして実現される構成であってもよい。このような構成の場合、ステアリング制御部630と、サスペンション制御部650及び車速制御部670とが通信手段を用いて相互に通信を行うことにより、本明細書に記載の制御が実現される。
【0038】
(ステアリング制御部)
続いて、
図3を参照して、ステアリング制御部630(特許請求の範囲におけるステアリング制御装置)についてより具体的に説明する。
図3は、ステアリング制御部630の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、ステアリング制御部630は、撮像画像取得部11、車速情報取得部12、地
図GPS情報取得部13、第1の目標制御量算出部14、第2の目標制御量算出部15、ゲイン算出部16、乗算部17,18、加算部19(特許請求の範囲における第3の目標制御量算出部)、減算部20(特許請求の範囲における第4の目標制御量算出部)、及びモータ指示電流算出部21を備えている。ステアリング制御部630は、車両900のステアリングを制御するためのステアリング制御量を算出する。
【0039】
撮像画像取得部11は、CAN370に含まれる車両900の前方を含む撮像範囲を撮像した撮像画像を取得する。撮像画像取得部11は、取得した撮像画像を第1の目標制御量算出部14及び第2の目標制御量算出部15に供給する。
【0040】
車速情報取得部12は、CAN370に含まれる車両900の車速を示す車速情報を取得する。車速情報取得部12は、取得した車速情報を第1の目標制御量算出部14、第2の目標制御量算出部15、及びゲイン算出部16に供給する。
【0041】
地
図GPS情報取得部13は、CAN370に含まれる地図情報及びGPS情報を取得する。地
図GPS情報取得部13は、取得した地図情報及びGPS情報を第2の目標制御量算出部15に供給する。なお、地
図GPS情報取得部13は、地図情報及びGPS情報をそれぞれ取得する構成であってもよく、GPS情報を含んだ地図情報を取得する構成であってもよい。ここで、「GPS情報」とは、地球上における車両900の位置を示す情報であり、一例として、各時点における車両900の緯度及び経度の座標によって示される情報である。
【0042】
第1の目標制御量算出部14は、撮像画像取得部11から取得した撮像画像及び車速情報取得部12から取得した車速情報を参照して、車両900が車線に沿った走行を行うためのステアリング制御量である第1の目標制御量を算出する。具体的には、第1の目標制御量算出部14は、撮像画像取得部11から取得した撮像画像を参照して、車線の垂直方向における位置を算出し、車両900の車線中央からのずれ量を算出する。より具体的には、第1の目標制御量算出部14は、撮像画像取得部11から取得した撮像画像に含まれる道路上の車道外側線及び車道中央線等の区画線を、画像解析によって識別する。続いて、第1の目標制御量算出部14は、識別した区画線の当該撮像画像上での傾きや位置を参照することによって、当該道路上における車両900の位置と、当該道路の車線中央の位置とを特定する。続いて、第1の目標制御量算出部14は、特定した車両900の位置と、車線中央の位置とを比較することによって、車線中央の位置からの車両900の位置のずれ量を算出する。なお、本明細書において「車線の垂直方向」とは、車線の進行方向に対する垂直の方向を示し、「ずれ量」とは、車線の垂直方向における車両の位置の変位を示す。
【0043】
続いて、第1の目標制御量算出部14は、算出したずれ量と取得した車速情報を参照して、第1の目標制御量を算出する。なお、第1の目標制御量算出部14は、算出したずれ量のみを参照して第1の目標制御量を算出する構成であってもよい。第1の目標制御量算出部14は、算出した第1の目標制御量を乗算部17に供給する。また、第1の目標制御量算出部14は、算出したずれ量をゲイン算出部16に供給する。ここで、第1の目標制御量算出部において算出された第1の目標制御量は、例えば、フィードバック制御を行う場合に参照する制御量として用いられる。
【0044】
第2の目標制御量算出部15は、地
図GPS情報取得部13から取得した地図情報及びGPS情報の内の少なくとも一方を参照して、地図情報が示す地図上における車両900の位置を特定する。続いて、第2の目標制御量算出部15は、特定した車両900の位置と地図情報とを参照して、車両900の進行方向における道路の形状を取得する。ここで、「道路の形状」とは、例えば、直線の道路、カーブ状の道路等が挙げられる。第2の目標制御量算出部15は、取得した進行方向の道路の形状より算出した車線中央位置を参照して車両900がトレースすべき経路を算出する。第2の目標制御量算出部15は、算出した車両900がトレースすべき経路より、トレースすべき曲率を算出する。このように、第2の目標制御量算出部15は、地
図GPS情報取得部13から取得した地図情報及びGPS情報を参照して、車両900がトレースすべき曲率、すなわち、車両900が進行すべき曲率を算出する。続いて、第2の目標制御量算出部15は、算出した曲率をトレースするためのステアリング制御量である第2の目標制御量を算出する。ここで、第2の目標制御量算出部において算出された第2の目標制御量は、例えば、フィードフォワード制御を行う場合に参照する制御量として用いられる。なお、第2の目標制御量算出部15は、地図情報及びGPS情報に加え、撮像画像取得部11から取得した撮像画像及び車速情報取得部12から取得した車速情報の少なくとも何れかを参照してトレースすべき曲率を算出する構成であってもよい。より具体的には、第2の目標制御量算出部15は、取得した撮像画像を参照することによって、道路上における車両900の位置を特定し、GPS情報と地図情報とを参照することによって特定した地図上における車両900の位置を補正する。また、第2の目標制御量算出部15は、取得した撮像画像を参照することによって、車両900の進行方向の車線中央位置を特定し、GPS情報と地図情報とを参照することによって特定した車両900の進行方向の車線中央位置を補正する。続いて、第2の目標制御量算出部15は、算出した第2の目標制御量を乗算部18に供給する。なお、「トレースすべき曲率」の算出方法については後述する。また、車速情報を参照した算出処理については、実施形態を変えて後述する。
【0045】
ゲイン算出部16は、第1の目標制御量算出部14から取得したずれ量を参照して、第1の目標制御量に乗じる第1のゲインと第2の目標制御量に乗じる第2のゲインとを算出する。ここで、
図3において、第1のゲインは1−αで示されており、第2のゲインはαで示される。第1のゲインと第2のゲインとの和は1であり、車線中央に対する車両900のずれ量が大きくなるほど、αが小さくなる。換言すれば、車線中央に対する車両900のずれ量が大きくなるほど、第1のゲインと第2のゲインとの和における、第1のゲインの割合が大きくなり、第2のゲインの割合が小さくなる。ゲイン算出部16は、算出した第1のゲインを乗算部17に供給し、算出した第2のゲインを乗算部18に供給する。
【0046】
乗算部17は、第1の目標制御量算出部14から取得した第1の目標制御量と、ゲイン算出部16から取得した第1のゲインとを乗算し、算出結果を加算部19に供給する。
【0047】
乗算部18は、第2の目標制御量算出部15から取得した第2の目標制御量と、ゲイン算出部16から取得した第2のゲインとを乗算し、算出結果を加算部19に供給する。
【0048】
加算部19は、乗算部17から取得した第1のゲインが乗じられた第1の目標制御量と、乗算部18から取得した第2のゲインが乗じられた第2の目標制御量とを加算し第1の目標ステアリング制御量(特許請求の範囲における第3の目標制御量)を算出する。加算部19は、算出した第1の目標ステアリング制御量を減算部20に供給する。ここで、「第1の目標ステアリング制御量」とは、車両900を車線に沿った走行をさせる場合において、操舵部材410を所望の舵角に制御するために必要なステアリング制御量を示す。
【0049】
減算部20は、CAN370に含まれる車両900の実ラックストロークを示す情報を取得する。実ラックストロークを示す情報としては、例えば、舵角センサ440から取得した操舵部材410の舵角情報等が挙げられる。減算部20は、加算部19から取得した第1の目標ステアリング制御量と、CAN370から取得した実ラックストロークを示す情報との差分をとることによって、第2の目標ステアリング制御量(特許請求の範囲における第4の目標制御量)を算出する。減算部20は、算出した第2の目標ステアリング制御量をモータ指示電流算出部21に供給する。ここで、「第2の目標ステアリング制御量」とは、現在の操舵部材410の舵角から上述した操舵部材410の所望の舵角に制御するために必要なステアリング制御量を示す。
【0050】
モータ指示電流算出部21は、減算部20から取得した第2の目標ステアリング制御量を参照して第3の目標ステアリング制御量を算出する。一例として、モータ指示電流算出部21は、比例ゲイン乗算部、積分部、積分ゲイン乗算部及び加算部を備えている。モータ指示電流算出部21は、減算部20から取得した第2の目標ステアリング制御量を比例ゲイン乗算部及び積分部に供給する。比例ゲイン乗算部は、減算部20から供給された第2の目標ステアリング制御量に所定のゲインを乗算し、算出結果を加算部に供給する。積分部は、減算部20から供給された第2の目標ステアリング制御量を積分し、算出結果を積分ゲイン乗算部に供給する。積分ゲイン乗算部は、積分した第2の目標ステアリング制御量に所定のゲインを乗算し、算出結果を加算部に供給する。加算部は、比例ゲイン乗算部から供給された算出結果と積分ゲイン乗算部から供給された算出結果とを加算することによって第3の目標ステアリング制御量を算出する。モータ指示電流算出部21は、上述のように算出された第3の目標ステアリング制御量をステアリング制御部630に供給する。ここで、所定のゲインとは、任意に設定された固定値である。
【0051】
なお、上述のモータ指示電流算出部21の構成は、本実施形態におけるモータ指示電流算出部21の一構成例であり、これは本実施形態を限定するものではない。本実施形態におけるモータ指示電流算出部21は、例えば、第1の比例ゲイン乗算部、減算部、第2の比例ゲイン乗算部、積分部、積分ゲイン乗算部、及び加算部を備える構成であってもよい。当該構成の場合、モータ指示電流算出部21は、減算部20から取得した第2の目標ステアリング制御量を第1の比例ゲイン乗算部に供給する。第1の比例ゲイン乗算部は、減算部20から供給された第2の第2の目標ステアリング制御量に所定のゲインを乗算し、算出結果を減算部に供給する。減算部は、CAN370に含まれる車両900のモータ角速度を取得する。モータ角速度を示す情報としては、例えば、舵角センサ440から取得した操舵部材410の舵角情報等が挙げられる。減算部は、第1の比例ゲイン乗算部による算出結果からモータ角速度を減算し、算出結果を第2の比例ゲイン乗算部及び積分部に供給する。第2の比例ゲイン乗算部は、減算部から供給された算出結果に所定のゲインを乗算し、算出結果を加算部に供給する。積分部は、減算部から供給された算出結果を積分し、積分した結果を積分ゲイン乗算部に供給する。積分ゲイン乗算部は、積分部による積分結果に所定のゲインを乗算し、算出結果を加算部に供給する。加算部は、第2の比例ゲイン乗算部と積分ゲイン乗算部から供給された算出結果とを加算することによって第3の目標ステアリング制御量を算出する。モータ指示電流算出部21は、上述のように算出された第3の目標ステアリング制御量をステアリング制御部630に供給する。ここで、所定のゲインとは、任意に設定された固定値である。
【0052】
本実施形態に係るステアリング制御部630は、第1の目標制御量、第2の目標制御量、第1のゲイン及び第2のゲインを参照してステアリング制御量を算出することによって、車線中央からの車両900のずれ量を許容誤差内にすると共に、より滑らかな車両制御を行うことができる。
【0053】
(トレースすべき曲率の算出処理の具体例)
以下では、ステアリング制御部630が備える第2の目標制御量算出部15によるトレースすべき曲率の算出処理について
図4〜6を参照してより具体的に説明する。
図4〜6は、トレースすべき曲率の算出処理を説明するための模式図である。
【0054】
まず、第2の目標制御量算出部15は、
図4に示すように、車両900の代表点Aを設定する。なお、車両900の代表点Aの位置は、車両900の位置を示す点であればよく、例えば、車両900の重心点を車両900の代表点としてもよい。
【0055】
続いて、第2の目標制御量算出部15は、複数の基準点を設定する。第2の目標制御量算出部15は少なくとも3点以上の基準点を設定する。なお、第2の目標制御量算出部15が設定する基準点の数は3点であることが好ましい。これにより、第2の目標制御量算出部15における処理負荷を低減させることができる。以下では基準点が3点の場合におけるトレースすべき曲率の算出処理について説明する。
【0056】
第2の目標制御量算出部15は、車両900の代表点Aから所定の距離だけ離れた車線中央位置に基準点を設定する。例えば、
図4に示すように、第2の目標制御量算出部15は、車両900の代表点Aから直線距離で距離L1離れた車線中央位置に基準点Bを設定する。また、第2の目標制御量算出部15は、車両900の代表点Aから直線距離で距離L2離れた車線中央位置に基準点Cを設定する。また、第2の目標制御量算出部15は、車両900の代表点Aから直線距離で距離L3離れた車線中央位置に基準点Dを設定する。ここで、所定の距離とは任意に設定された固定値である。なお、上述のように、第2の目標制御量算出部15は、地
図GPS情報取得部13から取得した地図情報及びGPS情報を参照して取得した車両900の進行方向の道路の形状に基づき、車両900の進行方向の車線中央位置を設定する構成であってもよく、撮像画像取得部11から取得した撮像画像を参照して車両900の進行方向の車線中央位置を設定する構成であってもよい。
【0057】
続いて、第2の目標制御量算出部15は、
図5に示すように、車両900の代表点Aと複数の基準点のうちの任意の2点を通る曲線を複数設定する。より具体的には、第2の目標制御量算出部15は、車両900の代表点Aと、基準点B及びCとを通る円の曲線を設定する。また、第2の目標制御量算出部15は、車両900の代表点Aと、基準点C及びDとを通る円の曲線を設定する。また、第2の目標制御量算出部15は、車両900の代表点Aと、基準点B及びDとを通る円の曲線を設定する。第2の目標制御量算出部15は、設定した複数の曲線において、それぞれの曲線の曲率R1〜R3を算出する。
【0058】
続いて、第2の目標制御量算出部15は、
図6に示すように、設定した複数の曲線の曲率R1〜R3の平均をとることによって、トレースすべき曲率R4を算出する。本実施形態に係るステアリング制御部630は、複数の曲線の曲率の平均値に基づき算出した第2の目標制御量を参照することによって、より滑らかな車両制御を行うことができる。
【0059】
なお、本実施形態において、第2の目標制御量算出部15が設定する基準点を3点設定しトレースすべき曲率を算出する構成について説明したが、これは本実施形態を限定するものではなく、本実施形態に係る第2の目標制御量算出部15は、基準点を3点以上設定しトレースすべき曲率R4を算出する構成であってもよい。
【0060】
(ステアリング制御量算出処理の流れ)
以下では、本実施形態に係るステアリング制御部630により実行されるステアリング制御量算出処理の流れの一例を、
図7を参照して説明する。
図7は、ステアリング制御部630によるステアリング制御量算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0061】
本実施形態に係るステアリング制御部630は、以下に説明するステップS11〜19を実行することによって、車両900が車線に沿った走行を行うために必要なステアリング制御量を算出する。なお、以下のステアリング制御量算出処理の流れでは、第2の目標制御量算出部15が設定する基準点が3点の場合を例に挙げて説明する。
【0062】
(ステップS11)
まず、ステップS11にて、第2の目標制御量算出部15は、地
図GPS情報取得部13を介して取得したCAN370に含まれる地図情報及びGPS情報の内の少なくとも一方を参照して、車両900の代表点Aから所定の距離だけ離れた基準点B〜Dを設定する。ここで、第2の目標制御量算出部15は、撮像画像取得部11を介して取得したCAN370に含まれる撮像画像、及び車速情報取得部12を介して取得したCAN370に含まれる車速情報の少なくとも何れかをさらに参照して、基準点を設定してもよい。
【0063】
(ステップS12)
次に、ステップS12にて、第2の目標制御量算出部15は、車両900の代表点Aと、設定した基準点B〜Dのうちの任意の2点とを通る曲線を複数設定する。
【0064】
(ステップS13)
続いて、ステップS13にて、第2の目標制御量算出部15は、設定した複数の曲線のそれぞれの曲率R1〜R3を算出する。
【0065】
(ステップS14)
続いて、ステップS14にて、第2の目標制御量算出部15は、車両900がトレースすべき曲率R4として、複数の曲線の曲率R1〜R3の平均値を算出する。
【0066】
(ステップS15)
続いて、ステップS15にて、第2の目標制御量算出部15は、算出したトレースすべき曲率R4を参照して、第2の目標制御量を算出する。
【0067】
(ステップS16)
続いて、ステップS16にて、第1の目標制御量算出部14は、撮像画像取得部11を介して取得したCAN370に含まれる撮像画像を参照して、車両900の車線中央に対するずれ量を算出する。
【0068】
(ステップS17)
続いて、ステップS17にて、第1の目標制御量算出部14は、算出したずれ量、及び車速情報取得部12を介して取得したCAN370に含まれる車速情報を参照して、第1の目標制御量を算出する。
【0069】
(ステップS18)
続いて、ステップS18にて、ゲイン算出部16は、第1の目標制御量算出部14から取得したずれ量、及び車速情報取得部12を介して取得したCAN370に含まれる車速情報を参照して、第1の目標制御量に乗じる第1のゲイン、及び第2の目標制御量に乗じる第2のゲインを算出する。
【0070】
(ステップS19)
続いて、ステップS19にて、乗算部17は、第1の目標制御量算出部14から取得した第1の目標制御量とゲイン算出部16から取得した第1のゲインを乗じる。続いて、乗算部18は、第2の目標制御量算出部15から取得した第2の目標制御量とゲイン算出部16から取得した第2のゲインを乗じる。続いて加算部19は、乗算部17から取得した第1のゲインが乗じられた第1の目標制御量と、乗算部18から取得した第2のゲインが乗じられた第2の目標制御量とを加算し第1の目標ステアリング制御量を算出する。続いて減算部20は、加算部19から取得した第1の目標ステアリング制御量と、CAN370から取得した実ラックストロークを示す情報との差分をとることによって、第2の目標ステアリング制御量を算出する。減算部20は、操舵部材410を制御するために必要なステアリング制御量として、算出した第2の目標ステアリング制御量を出力する。
【0071】
なお、上述のステアリング制御量算出処理の流れにおいて、ステアリング制御部630が、ステップS11〜15の第2の目標制御量の算出処理の後に、ステップS16〜17の第1の目標制御量の算出処理を実施する構成について説明したが、本実施形態に係るステアリング制御部630は、第2の目標制御量の算出処理の前に、第1の目標制御量の算出処理を実施する構成であってもよく、第2の目標制御量と第1の目標制御量の算出処理を同時に実施する構成であってもよい。
【0072】
〔実施形態2〕
以下、本発明の実施形態2について、詳細に説明する。以下の説明では、上記実施形態において既に説明した事項については、説明を省略し、上記実施形態と異なる点について説明を行う。
【0073】
本実施形態に係る第2の目標制御量算出部15は、設定した複数の曲線の曲率の加重平均をとることによって、トレースすべき曲率R4を算出する。より具体的には、第2の目標制御量算出部15は、設定した複数の曲線のうち、車両900からの距離がより近い基準点を通る曲線に乗じられる重み係数をより大きく設定した上で、複数の曲線の曲率の加重平均をとることによってトレースすべき曲率を算出する。
【0074】
以下では、基準点が3点である場合の加重平均の算出方法について、
図6を参照して説明する。また以下では、代表点Aから基準点B〜Dの直線距離が、それぞれ、10m、20m、30mである場合における加重平均の算出方法について説明する。
【0075】
曲率R1は、代表点Aと、基準点B及びCとを通る曲線の曲率であり、代表点Aから基準点B及びCへの直線距離の合計値は30mとなる。曲率R2は、代表点Aと、基準点C及びDとを通る曲線の曲率であり、代表点Aから基準点C及びDへの直線距離の合計値は50mとなる。曲率R3は、代表点Aと、基準点B及びDとを通る曲線の曲率であり、代表点Aから基準点B及びDへの直線距離の合計値は40mとなる。ここで、本実施形態では、車両900からの距離がより近い基準点を通る曲線に乗じられる重み係数をより大きく設定するため、代表点Aから基準点の直線距離の合計値と重み係数とが負の相関を有するように曲率R1〜R3の重み係数を設定し曲率R4を算出する。一例として、以下の式に基づきトレースすべき曲率R4を算出する。
【0076】
曲率R4=50/120×R1+30/120×R2+40/120×R3
本実施形態に係るステアリング制御部630は、車両900からの距離がより近い基準点を通る曲線に乗じられる重み係数をより大きく設定することによって、車線に沿ったより滑らかな車両制御を行うことができる。
【0077】
なお、本実施形態において、第2の目標制御量算出部15が設定する基準点を3点設定しトレースすべき曲率を算出する構成について説明したが、これは本実施形態を限定するものではなく、本実施形態に係る第2の目標制御量算出部15は、基準点を3点以上設定しトレースすべき曲率R4を算出する構成であってもよい。
【0078】
〔実施形態3〕
以下、本発明の実施形態3について、詳細に説明する。以下の説明では、上記実施形態2において既に説明した事項については、説明を省略し、上記実施形態2と異なる点について説明を行う。
【0079】
本実施形態に係る第2の目標制御量算出部15は、車速情報取得部12から取得した車速情報を参照して車両900の代表点Aから複数の基準点までの所定の距離を算出し、複数の基準点を設定する。より具体的には、第2の目標制御量算出部15は、車速情報取得部12から取得した車速情報を参照して、車両900が所定の時間が経過した後に到達する距離を算出する。第2の目標制御量算出部15は、算出した距離を車両900の代表点Aから複数の基準点までの所定の距離として設定する。すなわち、第2の目標制御量算出部15は、車両900の車速が速いほど、車両900の代表点から複数の基準点までの距離を長く設定する。ここで、所定の時間とは、任意に設定された時間である。
【0080】
本実施形態に係るステアリング制御部630は、車両900の車速に応じて複数の基準点を設定することによって、車両900の車速に応じたより滑らかな車両制御を行うことができる。
【0081】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ECU600の制御ブロック(ステアリング制御部630、サスペンション制御部650、車速制御部670)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0082】
後者の場合、ECU600は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0083】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。