(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-132545(P2020-132545A)
(43)【公開日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】固形粉体化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20200803BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20200803BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20200803BHJP
A61Q 1/08 20060101ALI20200803BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20200803BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20200803BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20200803BHJP
A61K 8/87 20060101ALI20200803BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20200803BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20200803BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20200803BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20200803BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/27
A61Q17/04
A61Q1/08
A61Q1/12
A61K8/19
A61K8/29
A61K8/87
A61K8/88
A61K8/81
A61K8/89
A61K8/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-25545(P2019-25545)
(22)【出願日】2019年2月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】吉本 純也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC342
4C083AC422
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083BB23
4C083BB24
4C083BB25
4C083BB26
4C083BB46
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD17
4C083DD21
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
4C083FF06
(57)【要約】
【課題】
成型性、使用感が良好でかつ高い紫外線防御効果を有する固形粉体化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】
(A)〜(C)を含有する固形粉体化粧料を提供する。
(A)球状粉体を10〜30質量%
(B)平均粒子径が2μm以下の六角板状酸化亜鉛粒子
(C)金属酸化物を被覆した無機板状粉体
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)〜(C)を含有する固形粉体化粧料。
(A)球状粉体を10〜30質量%
(B)平均粒子径が2μm以下の六角板状酸化亜鉛粒子
(C)金属酸化物を被覆した無機板状粉体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉体化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感だけでなく塗布時の感触やすべり性を向上させる目的で、架橋シリコーン粉体(特許文献1参照)、ナイロン粉体(特許文献2参照)、アクリル粉体(特許文献3参照)、ポリ乳酸粉体(特許文献4参照)などの球状ポリマー粉体を配合することが知られている。
【0003】
また、紫外線防御効果を有する粉体化粧料は、酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウムなどの金属酸化物と、UVA、UVB遮断効果のある紫外線吸収剤を主な成分として含有している。しかし、紫外線防御効果を高めるために、紫外線吸収剤を多量に配合した場合、粉体同士の凝集性を高め、化粧膜の均一性や滑らかな伸び広がりといった感触などの基本品質を損なうことがある。一方、金属酸化物に関しては、紫外線防御効果を高める上で好適な粒子径や形状の金属酸化物の開発(特許文献5参照)や、それら粉体の分散性、感触を向上させる表面処理技術(特許文献6参照)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−165509号公報
【特許文献2】特開平7−300410号公報
【特許文献3】特表平10−502389号公報
【特許文献4】特許第3998519号公報
【特許文献5】特開2010−168254号公報
【特許文献6】特開2013−079264号公報
【0005】
しかしながら、これらの球状ポリマーを多量に固形粉体化粧料に配合する場合、成型性が悪く、落下時の破損や経時での浮きが生じる場合があった。また、微粒子の金属酸化物を多く配合すると使用感が低下するといった課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、成型性、使用感が良好でかつ高い紫外線防御効果を有する固形粉体化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、本発明を完成するにいたった。すなわち本発明は、
(A)〜(C)を含有する固形粉体化粧料を提供するものである。
(A)球状粉体を10〜30質量%
(B)平均粒子径が2μm以下の六角板状酸化亜鉛粒子
(C)金属酸化物を被覆した無機板状粉体
【発明の効果】
【0008】
本発明の固形粉体化粧料は、成型性、使用感が良好でかつ高い紫外線防御効果を有するという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明の固形粉体化粧料に配合する球状粉体としては、化粧料に配合し得るものであれば特に限定されず、真球状のほか、楕円状や球状表面の一部又は全体に凹凸を有する略球状のものも用いることができる。また、球状であれば、全体が単一の成分で構成されるもの、コア−シェル型のように内核と外殻が異なる成分で構成されるもの、内部に異なる成分が分散しているもの、内部に空洞を有する中空粉体、更に内部に有益成分を内包、含浸させたもの等であっても特に制限されずに用いることができる。具体的には、無機球状粉体として、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等が挙げられ、有機球状粉体として、例えば、ナイロン粉体、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラストマー、メチルシロキサン網状重合体、架橋型メチルポリシロキサン、ウレタン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体、ポリエチレン、シルク、セルロース等が挙げられる。これらはフッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、界面活性剤等の1種または2種以上を用いて処理を施してあってもよい。
【0011】
球状粉体は、本発明の固形粉体化粧料全量に対し、10〜30質量%配合する。10質量%未満の配合では、良好な使用感が得られない場合がある。30質量%を超えて配合すると、成型性の低下が認められる場合がある。
【0012】
本発明の固形粉体化粧料に配合する平均粒子径が2μm以下の六角板状酸化亜鉛粒子を配合する。上記粒子径は、1.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。また、粒子径の下限は特に限定されるものではないが、0.04μm以上であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以上である。粒子径が0.04μm未満であると、粒子径が小さすぎることによって、化粧料の使用感が悪化するおそれがある。
【0013】
本明細書における六角板状酸化亜鉛粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM−1200EX II、日本電子社製)写真の2000〜50000倍の視野での定方向径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔;画像上のどのような形状の粒子についても、一定方向で測定した)で定義される粒子径(μm)であって、TEM写真内の一次粒子250個の定方向径を計測し、その累積分布の平均値を求めたものである。
【0014】
本発明の六角板状酸化亜鉛粒子はその表面を、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、界面活性剤等の1種または2種以上を用いて処理を施してあってもよく、特にシリコーン化合物で処理を施したものを用いることが好ましい。
【0015】
かかる六角板状酸化亜鉛粒子としては、市販のXZ−100F−LP(堺化学工業株式会社製)を用いることが出来る。
【0016】
六角板状酸化亜鉛粒子の配合量は、特に限定されないが、発明の固形粉体化粧料全量に対し、1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%配合する。1質量%未満の配合では高い紫外線防御効果が得られない場合がある。20質量%以上配合すると、使用感が低下する場合がある。
【0017】
本発明の固形粉体化粧料には、金属酸化物を被覆した無機板状粉体(以下、複合板状粉体と称する場合がある。)を配合する。本発明の複合板状粉体における金属酸化物としては、化粧料としての使用が許容できるものであれば特に限定されないが、複合酸化物として自然な仕上がりを与える効果が高いことから、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ及びシリカから選択される一種又は二種以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の複合板状粉体における無機板状粉体としては、具体的には、セリサイト、タルク、マイカ、カオリン等が例示されるが、使用感が良好なこと、不自然なつやを与えないことから、セリサイト、タルク、マイカが好ましい。
【0019】
本発明の複合板状粉体における金属酸化物の被覆量は複合板状粉体の10〜80質量%であることが好ましい。下限値以下では本発明の効果が十分に発揮されない場合があり好ましくない。一方、上限値以上では、化粧料の使用時に違和感をおぼえる場合があり好ましくない。
【0020】
本発明の複合板状粉体の粒子径は、電子顕微鏡で観察した長径が1.0〜40μmの範囲にあることが好ましい。粒子径が下限値以下では本発明の効果が不十分である場合があり好ましくない。一方、上限値以上では、化粧料の使用時に違和感をおぼえる場合があり好ましくない。
【0021】
本発明の複合板状粉体は無機板状粉体に、通常の湿式の被覆法により金属酸化物を被覆することにより得られるが、市販品も存在するので、これら市販品を入手して使用することもできる。このような市販品としては、「カバーリーフAR80(二酸化チタン、アルミナ及びシリカ被覆タルク)」、「カバーリーフPC−2015(二酸化チタン被覆タルク)」、「カバーリーフPC−2035(二酸化チタン被覆タルク)」、「カバーリーフPC−2055(二酸化チタン被覆タルク)」、「カバーリーフPC−1035(二酸化チタン被覆セリサイト)」(以上、日揮触媒化成株式会社製)、「MTZE−07M(シリコーン処理酸化チタン、酸化亜鉛被覆マイカ)」、「MTZE−07EX(イソステアリン酸処理酸化チタン、酸化亜鉛被覆マイカ)」、「SP−100M(酸化チタン被覆マイカ)」、「SMT−57K(13%)(シリコーン処理酸化チタン被覆マイカ)」、「SMT−57K(3%)(シリコーン処理酸化チタン被覆マイカ)」(以上テイカ株式会社製)、「SA−TTC−30N(シリコーン、金属石けん処理酸化チタン被覆タルク)」、「TZ−POWDER TYPE SBN(シリコーン処理酸化チタン、酸化亜鉛被覆タルク)」(以上三好化成株式会社製)等が例示される。
【0022】
本発明の固形粉体化粧料における複合板状粉体の含有量は、化粧料全量に対して1〜70%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。1質量%未満の配合では本発明の効果が得られない場合があり、好ましくない。一方、70質量%を超えて配合すると、使用感の低下が認められる場合がある。
【0023】
本発明の固形粉体化粧料には、油剤を配合することが好ましい。油剤を配合することにより、固形の形状を保つことが出来るためである。かかる油剤としては、動物油、植物油、合成油脂等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油などの性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられる。これらの油剤の中でも、シリコーン油類を必須成分とすることが使用感上好ましい。
【0024】
本発明の固形粉体化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で前記の粉体以外の粉体を配合することが出来る。本発明に配合する粉体としては、酸化チタン、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、バーミキュライト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、パール顔料、オキシ塩化ビスマスなどの無機顔料や、赤色3号、赤色10号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色205号、黄色401号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号などの有機色素や、クロロフィルやβ−カロチンなどの天然色素や、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなどの金属石鹸等が挙げられる。
【0025】
本発明の固形粉体化粧料には、紫外線吸収剤を配合することが出来る。紫外線吸収剤としては、通常、化粧料に用いられるものであれば何れでもよく、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリアニリノ−パラ−(カルボ−2'−エチルヘキシル−1'−オキシ)−1,3,5−トリアジン等のベンゾフェノン系、サリチル酸−2−エチルヘキシル等のサリチル酸系、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等のPABA系、パラメトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシル等の桂皮酸系、4−tert−4'−メトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0026】
本発明の固形粉体化粧料には、前記以外の通常化粧料に配合し得る成分を配合することが出来る。かかる成分としては界面活性剤、油剤、高分子、水性成分、防腐剤、美容成分、香料等が挙げられる。
【0027】
本発明の固形粉体化粧料の製造方法は特に限定されない。たとえば、粉体と必要に応じたその他成分を混合した後、金皿にプレス成形する方法、溶剤と混合してスラリー状としたものを充填した後に溶剤除去、成形する湿式法が挙げられ、また紙などの支持体に担持させたものであってもよい。
【0028】
本発明の固形粉体化粧料は、日焼け止め、ファンデーション、コンシーラー、白粉、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ、口紅等で実施することができ、特に紫外線遮断効果を発揮することが出来ることから、ファンデーション、白粉、頬紅であることが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例の評価方法について述べる。
[使用感]
メイクアップ専門の官能評価員3名が合議により、固形粉体化粧料をスポンジパフで塗布した際の伸びについて下記の通り評価した。
「◎」:非常に伸びが良く、きしみを感じない
「○」:伸びが良く、きしみをあまり感じない
「△」:あまり伸びが良くなく、少しきしみを感じる
「×」:伸びが悪く、きしみを感じる
[落下強度]
固形粉体化粧料を所定の容器に装填し、50cmの高さから水平に落下させたときの、プレス表面の状態が変化するまでの回数を試験し、下記の通り評価した。
「○」:50cm10回以上
「△」:50cm5回以上
「×」:50cm2回以下
[UVB防御能、UVA防御能]
紫外線防御効果はSPFアナライザー(UV−2000S Labsphere社製)を用いて、In−Vitroで測定した。測定条件は、ブレンダーム サージカルテープ(エムスリー社製)に、表1に記載のサンプルを2mg/cm
2の割合で均一に塗布後、前記の測定機器を用いて、290〜400nmの範囲におけるSPF値・PFA値を測定・算出し、以下の判定基準に従って判定した。
<判定基準>
(SPF値) :(判定)
40以上 :○
30以上 :△
30未満 :×
(PFA値)
16以上 :○
8以上 :△
8未満 :×
【0031】
表1に示した処方で定法により固形粉体ファンデーションを調合し長径5.35cm短径4.50cmの金皿にプレス圧25kgf/cm
2でプレス成型し、所定の容器に装填し、試験に供した。
【0032】
【表1】
【0033】
表中の注については、下記の市販粉体を使用した。
注1:XZ−100F−LP(堺化学工業製)
【0034】
表1に示した通り、本発明の固形粉体ファンデーションは、使用感、落下強度、UVB、UVA防御能のすべての面で優れていた。これに対し、球状粉体を7.5質量%配合した比較例1は、伸びが少し重く、少しきしみのある使用感であった。六角板状酸化亜鉛をマイカ、タルクに代替した比較例2、3は紫外線防御能、落下強度の面で劣っていた。複合板状粉体を配合していない比較例4は、伸びが重く、きしみのある使用感で、紫外線防御能も実施例には届かなかった。
【0035】
表2に本発明にかかる日焼け止めおしろいの処方を示す。
【0036】
【表2】