【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、セラミックスの高機能化と製造プロセス革新「フラッシュ焼結の学理構築と革新的焼結技術への展開」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】 本発明の蛍光体は、酸化イットリウムに、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1種選択された元素が添加されたセラミックス材料を含有し、励起源の照射によって380nm以上495nm以下の範囲の波長にピークを有する発光をする。本発明の蛍光体を製造する方法は、酸化イットリウム粉末と、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1種選択された元素を含有する有機金属化合物とを混合し、成形するステップと、成形するステップで得られた成形体をフラッシュ焼結するステップとを包含する。
酸化イットリウムに、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1種選択された元素が添加されたセラミックス材料を含有し、
励起源の照射によって380nm以上495nm以下の範囲の波長にピークを有する発光をする、蛍光体。
前記選択された元素は、前記酸化イットリウム中のイットリウムに対して0.05mol%以上5mol%以下の範囲で添加されている、請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光体。
前記混合し、成形するステップは、前記酸化イットリウム粉末と前記有機金属化合物とを溶媒中で混合し、乾燥させた後、成形する、請求項11または12に記載の方法。
前記フラッシュ焼結するステップは、前記成形体に200V/cm以上1000V/cm以下の範囲の直流または交流電界を印加し、1000℃以上1400℃以下の温度範囲で、30秒以上5時間以下の時間、保持する、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
前記画像表示装置が、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、または、液晶ディスプレイ(LCD)のいずれかである、請求項19に記載の画像表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上から、本発明の課題は、酸化イットリウムを母体材料とした蛍光体、その製造方法およびその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による蛍光体は、酸化イットリウムに、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1種選択された元素が添加されたセラミックス材料を含有し、励起源の照射によって380nm以上495nm以下の範囲の波長にピークを有する発光をし、これにより上記課題を解決する。
励起源の照射によって380nm以上430nm以下の範囲の波長にピークを有する発光をしてもよい。
前記励起源は、100nm以上380nm未満の範囲の波長にピークを有する光であってもよい。
前記選択された元素は、前記酸化イットリウム中のイットリウムに対して0.05mol%以上5mol%以下の範囲で添加されていてもよい。
前記選択された元素は、前記イットリウムに対して0.5mol%以上1.5mol%以下の範囲で添加されていてもよい。
ランタノイド元素を含有しなくてもよい。
焼結体または粉体であってもよい。
前記焼結体の相対密度は、95%以上であってもよい。
前記焼結体の相対密度は、98%以上であってもよい。
粒径は、1.0μm以上3.0μm以下の範囲を有してもよい。
本発明による上述のいずれかの蛍光体を製造する方法は、酸化イットリウム粉末と、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1種選択された元素を含有する有機金属化合物とを混合し、成形するステップと、前記成形するステップで得られた成形体をフラッシュ焼結するステップとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記有機金属酸化物は、前記選択された元素のアルコキシドであってもよい。
前記混合し、成形するステップは、前記酸化イットリウム粉末と前記有機金属化合物とを溶媒中で混合し、乾燥させた後、成形してもよい。
前記フラッシュ焼結するステップは、前記成形体に200V/cm以上1000V/cm以下の範囲の直流または交流電界を印加し、1000℃以上1400℃以下の温度範囲で、30秒以上5時間以下の時間、保持してもよい。
前記フラッシュ焼結するステップは、前記成形体を少なくとも600℃まで昇温後、前記直流または交流電界を印加してもよい。
前記フラッシュ焼結するステップは、1℃/分以上50℃/分以下の昇温速度で前記成形体を昇温してもよい。
前記フラッシュ焼結するステップで得られた焼結体を粉砕するステップをさらに包含してもよい。
本発明による発光装置は、少なくとも発光光源と蛍光体とを備え、前記蛍光体は、上述のいずれかの蛍光体を含み、これにより上記課題を解決する。
本発明による画像表示装置は、少なくとも励起源および蛍光体を備え、前記蛍光体は、上述のいずれかの蛍光体を含み、これにより上記課題を解決する。
前記画像表示装置が、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、または、液晶ディスプレイ(LCD)のいずれかであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蛍光体は、酸化イットリウムに、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1種選択された元素が添加されたセラミックス材料を含有する。これら特定の元素を酸化イットリウムに含有させることにより、希土類元素に代表される発光中心元素を含有することなく、励起源の照射によって380nm以上495nm以下の範囲の波長にピークを有する青色の発光をすることができる。また、本発明の蛍光体は、無機セラミックス材料からなり、耐熱性に優れているため、励起源に曝されても、輝度が低下しにくい。本発明の蛍光体は、励起源に曝された場合でも、輝度が低下しないため、白色発光ダイオード等の発光装置、照明器具、液晶用バックライト光源、VFD、FED、PDP、CRTなどに好適に使用される。
【0012】
本発明の蛍光体の製造方法は、酸化イットリウム粉末と、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1種選択された元素を含有する有機金属化合物とを混合し、成形するステップと、得られた成形体をフラッシュ焼結するステップとを包含する。これにより、上述の蛍光体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
【0015】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の蛍光体およびその製造方法について説明する。
【0016】
上述したように、酸化イットリウムは、これを母体とし、これに希土類元素などの発光中心となるランタノイド元素(例えばユーロピウム等)を添加することにより、蛍光体となることが知られている。これは、紫外線の照射により、酸化イットリウムに固溶した例えばEu
3+が励起され、Eu
3+のf−f遷移である
5D
0−
7F
1発光ピークが、観察されるためである。
【0017】
しかしながら、本願発明者らは、非特許文献1に記載される手順にしたがってフラッシュ焼結により製造したノンドープ酸化イットリウム焼結体が、紫外線照射によって、発光中心となる元素を添加することなく、青色に発光することを発見した。このような発光は、上述したランタノイド元素の遷移に基づく発光とは全く異なる原理である。本願発明者らは、このような知見に基づき、発光強度を向上させた本発明の蛍光体の開発に至った。以降に詳述する。
【0018】
本発明の蛍光体は、酸化イットリウムに、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1つ選択される元素が添加されたセラミックス材料を含有する。これにより、従来の希土類元素などの発光中心となるランタノイド元素を添加することなく、励起源の照射によって、青色の発光をすることができる。詳細には、本発明の蛍光体は、上述のセラミックス材料を含有し、励起源の照射によって380nm以上495nm以下の範囲の波長にピークを有する発光をする。種々ある元素のうちSi、AlおよびGeは、いずれも、発光中心となるランタノイド元素でもなく、遷移元素でもないが、本願発明者らは、これらの元素を酸化イットリウムに添加することによって、ノンドープ酸化イットリウムの発光強度が増大することを見出した。
【0019】
好ましくは、本発明の蛍光体は、励起源の照射によって、380nm以上430nm以下の範囲の波長にピークを有する発光をする。これにより効率的に本発明の蛍光体は発光し得る。さらに好ましくは、本発明の蛍光体は、励起源の照射によって、400nm以上430nm以下の範囲の波長にピークを有する発光をする。これにより効率的に本発明の蛍光体は発光し得る。
【0020】
このような励起源は、好ましくは、100nm以上380nm未満の範囲の波長にピークを有する真空紫外線、紫外線、可視光、あるいは、電子線またはX線である。これらの励起源は、本発明の蛍光体は効率よく発光させることができる。
【0021】
上述の選択された元素は、好ましくは、酸化イットリウム中のイットリウムに対して0.05mol%以上5mol%以下の範囲で添加されている。添加量が0.05mol%未満の場合、発光強度が十分に向上しない場合がある。添加量が5mol%を超えると、酸化イットリウムの結晶構造(すなわち、蛍石型構造、空間群Ia−3(International Talbes for Crystallographyの206番の空間群)に属する)が不安定となり得る。
【0022】
上述の選択された元素は、さらに好ましくは、酸化イットリウム中のイットリウムに対して0.5mol%以上1.5mol%以下の範囲で添加されている。この範囲であれば、酸化イットリウムの結晶構造が安定となり、本発明の蛍光体は、高輝度発光する。
【0023】
本発明の蛍光体は、上述したように、発光中心となるランタノイド元素を含有しない。ここで含有しない量としては、120ppm以下、さらに好ましくは、100ppm以下、なおさらに好ましくは50ppm以下であることを意図する。
【0024】
本発明の蛍光体は、酸化イットリウムに、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1つ選択される元素が添加されたセラミックス材料単体からなってもよいが、必要に応じて、他の結晶相またはアモルファス相との混合物から構成されてもよい。この場合、セラミックス材料の含有量は50質量%以上である。セラミックス材料の含有量が50質量%未満である場合、発光強度が低下する場合がる。このため、セラミックス材料の主成分とする量は、50質量%以上である。
【0025】
本発明の蛍光体は、特に制限はないが、焼結体、粉体、または、薄膜の形態であってよい。用途に応じて適宜選択すればよい。
【0026】
焼結体の場合、好ましくは、相対密度は95%以上である。相対密度は、アルキメデス法によって測定できるが、簡便には、測定密度/理論密度の比から算出してもよい。この場合、添加量がわずかであるため、理論密度には酸化イットリウムの理論密度(5.03g/cm
3)を採用してよい。焼結体の場合、好ましくは、粒径は1.0μm以上3.0μm以下の範囲を有する。これにより、高輝度発光する。さらに好ましくは、1.5μm以上2.6μm以下の範囲を有する。焼結体の粒径は、電子顕微鏡観察による画像から500個の粒子をトレースし、その直径を測定し、累積50%の粒径(D50:メジアン径)としてよい。
【0027】
本発明の蛍光体は、上述したように、励起源によって青色の発光をするが、無機セラミックス材料からなるため、高温にさらしても劣化せず、耐熱性に優れており、酸化雰囲気および水分環境下での長期間の安定性に優れるため、本発明の蛍光体を照明器具や画像表示装置に適用すれば、耐久性に優れた製品を提供できる。
【0028】
図1は、本発明の蛍光体を製造するフローを示す図である。
図2は、本発明の蛍光体を製造する装置を模式的に示す図である。
【0029】
本発明の蛍光体は、以下のステップにより製造される。
ステップS110:酸化イットリウム粉末と、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1つ選択された元素を含有する有機金属化合物とを混合し、成形する。
ステップS120:ステップS110で得られた成形体をフラッシュ焼結する。
【0030】
ステップS110において、有機金属化合物は、好ましくは、選択された元素のアルコキシドである。これにより、酸化イットリウムと良好に混合し得る。アルコキシドは、好ましくは、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、t−ブトキシドおよびt−アミロキシドからなる群から選択される。これらであれば入手が容易である。
【0031】
ステップS110において、好ましくは、酸化イットリウム粉末と、有機金属化合物とを溶媒中で混合し、乾燥させた後、成形する。このように湿式混合することにより、酸化イットリウムと有機金属化合物とが均一に混合される。溶媒は、水および/またはアルコールを採用でき、アルコールは、代表的には、メタノール、エタノール等である。混合に際して、ジルコニアボールなどを用いたボールミルを行ってもよい。
【0032】
乾燥は、風乾してもよいし、オーブン等を用いて乾燥させてもよい。乾燥後、得られた粉末を、スプレイドライヤ、ふるい分け、または、風力分級などの分級処理を行うと、作業効率と操作性に優れるため、好ましい。
【0033】
成形の形状は、特に制限はないが、例示的には、直方体、円柱、犬の骨型などがある。当業者であれば、用途に応じて適宜形状を選択し得る。
【0034】
ステップS120において、フラッシュ焼結するステップは、例えば、ステップS110で得た成形体210を、
図2に示すような炉220に配置し、高電圧電源230と接続し、電界を印加すればよい。電界印加による成形体の温度は、放射温度計、熱電対等により測定できるようにしてもよい。また、焼結の雰囲気は特に制限はないが、例示的には、大気中、窒素雰囲気、窒素と水素との混合雰囲気等である。成形体をフラッシュ焼結させることにより、緻密な焼結体が得られる。
【0035】
ステップS120において、フラッシュ焼結するステップは、好ましくは、成形体に200V/cm以上1000V/cm以下の範囲の直流または交流電界を印加し、1000℃以上1400℃以下の温度範囲で、30秒以上5時間以下の時間、保持すればよい。電界が200V/cm未満の場合、フラッシュ焼結が生じない場合がある。電界が1000V/cmを超えると、高価な装置が必要となる場合がある。1000℃未満の場合、焼結が十分でなく、相対密度が低い場合がある。1400℃を超えても、焼結はそれ以上進まないため、非効率である。さらに好ましくは、成形体に300V/cm以上1000V/cm以下の範囲の直流または交流電界を印加するとよい。
【0036】
フラッシュ焼結するステップは、上記温度範囲において、好ましくは、30秒以上90分以下の時間保持する。これにより、効率的に焼結できる。
【0037】
電界は、直流でも交流でもよいが、好ましくは、交流電界がよい。交流電界を印加すれば、均一な焼結体が得られる。交流電界の場合、例えば、0.1Hz以上100Hz以下の範囲の周波数を用いればよい。
【0038】
フラッシュ焼結するステップは、さらに好ましくは、成形体を600℃まで昇温後、上述の直流または交流電界を印加してもよい。これにより、焼結が促進する。
【0039】
フラッシュ焼結するステップは、さらに好ましくは、1℃/分以上50℃/分以下の昇温速度で成形体を昇温する。これにより、均一な焼結体が得られる。なおさらに好ましくは、5℃/分以上15℃/分以下の昇温速度で成形体を昇温する。
【0040】
このようにして、上述した焼結体である本発明の蛍光体が得られる。ステップS120に続いて、得られた焼結体を粉砕してもよい。これにより、粉末である本発明の蛍光体が得られる。焼結体の粉砕には、ボールミル、ジェットミル等の公知の粉砕機を使用できる。あるいは、ステップS120に続いて、得られた焼結体を、物理的気相成長法のためのスパッタリングターゲットとして用いれば、薄膜である本発明の蛍光体が得られる。
【0041】
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明の蛍光体を用いた用途について説明する。
図3は、本発明による照明器具(基板実装型LED照明器具)を示す概略図である。
【0042】
本発明による照明器具300は、少なくとも、発光光源310と本発明の蛍光体320とを備える。発光光源310には、本発明の蛍光体320を励起し、発光し得る限り任意の光源を使用できるが、100nm以上380nm未満の範囲の波長にピークを有する光を発する光源を使用できる。例示的には、300nm以上380nm未満の範囲の波長に光を発する紫外発光ダイオードを採用できる。
【0043】
図3に照明器具300の例示的な様態を示すが、これに限らない。照明器具300では、可視光線反射率の高い白色のセラミックス基板330に2本のリードワイヤ340、350が固定されており、それらワイヤの片端は基板のほぼ中央部に位置し、他端はそれぞれ外部に出ていて電気基板への実装時にはんだづけされる電極となっている。リードワイヤのうち1本340は、その片端に、基板中央部となるように発光光源310が載置され固定されている。発光光源310の下部電極とリードワイヤ340とは導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極ともう1本のリードワイヤ350とが金細線などのボンディングワイヤ360によって電気的に接続されている。セラミックス基板330にはアルミナを使用できる。
【0044】
発光光源310上には焼結体である本発明の蛍光体320が位置している。また、セラミック基板330上には中央部に穴の開いた形状である壁面部材370が固定されている。壁面部材370は、その中央部が発光光源310および本発明の蛍光体320をおさめるための穴となっていて、中央に面した部分は斜面となっている。この斜面は光を前方に取り出すための反射面であって、その斜面の曲面形は光の反射方向を考慮して決定される。また、少なくとも反射面を構成する面は白色または金属光沢を持った可視光線反射率の高い面となっている。壁面部材370には、白色のシリコーン樹脂を使用できる。
【0045】
壁面部材370の中央部の穴は、発光光源310および本発明の蛍光体320を位置した後、エポキシ樹脂等の透明な樹脂380で封止されている。このような構成により、発光光源310からの光によって本発明の蛍光体320が励起され、青色の光を発することができる。
【0046】
なお、本発明の蛍光体320に加えて、緑色に発光する緑色蛍光体、赤色に発光する赤色蛍光体と組み合わせることにより、あるいは、黄色に発光する黄色蛍光体と組み合わせることにより、白色の照明器具とすることができる。
【0047】
緑色蛍光体は、既存の緑色蛍光体であってよいが、例示的には、BaMgAl
10O
17:Eu,Mn蛍光体、(Ba,Sr)
3Si
6O
12N
2:Eu蛍光体、(Sr,Ba)
2Si
4O
4:Eu蛍光体、Zn
2SiO
4:Mn蛍光体、β−サイアロン:Eu蛍光体等が知られている。
【0048】
赤色蛍光体は、K
2SiF
6:Mn蛍光体、K
2Si
1−xNa
xAl
xF
6:Mn蛍光体、CaAlSiN
3:Eu蛍光体等が知られている。
【0049】
黄色蛍光体は、YAG:Ce蛍光体、α−サイアロン:Eu蛍光体、CaALSiN
3:Ce蛍光体、La
3Si
6N
11:Ce蛍光体が知られている。なお、表記「:Eu」、「:Eu,Mn」、「:Mn」、「:Ce」は、それぞれ、Euが添加されていること、EuとMnとが添加されていること、Mnが添加されていること、Ceが添加されていることを意図する。
【0050】
図4は、本発明による照明器具(砲弾型LED照明器具)を示す概略図である。
【0051】
図4には照明器具400の例示的な様態を示すが、これに限らない。照明器具400では、2本のリードワイヤ410、420があり、そのうち1本410には、凹部があり、発光光源310が載置されている。発光光源310の下部電極と凹部の底面とが導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極ともう1本のリードワイヤ420とがボンディングワイヤ360によって電気的に接続されている。粉末である本発明の蛍光体430が樹脂440に分散され、発光光源310近傍に実装されている。この蛍光体430を分散した樹脂440は、透明であり、発光光源310の全体を被覆している。凹部を含むリードワイヤ410の先端部、発光光源310、蛍光体430を分散した樹脂440は、さらなる樹脂450によって封止されている。さらなる樹脂450は全体が略円柱形状であり、その先端部がレンズ形状の曲面となっていて、砲弾型と通称されている。
【0052】
このような構成により、発光光源310からの光によって本発明の蛍光体430が励起され、青色の光を発することができる。なお、本発明の蛍光体430に加えて、緑色に発光する緑色蛍光体、赤色に発光する赤色蛍光体と組み合わせることにより、あるいは、黄色に発光する黄色蛍光体と組み合わせることにより、白色の照明器具とすることができる。
【0053】
図5は、本発明による画像表示装置(プラズマディスプレイパネル)を示す概略図である。
【0054】
本発明による画像表示装置500は、少なくとも励起源と本発明の蛍光体501とを備える。励起源は、真空紫外線であり得る。
図5に画像表示装置500の例示的な様態を示すが、これに限らない。
【0055】
図5では、本発明の蛍光体501に加えて、赤色蛍光体502および緑色蛍光体503が、ガラス基板504上に電極(505、506、507)および誘電体層508を介して配置されたそれぞれのセル(509、510、511)の内面に塗布されている。電極(505、506、507、512)に通電するとセル中でXe放電により真空紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて、赤、緑、青の可視光を発し、この光が保護層513、誘電体層514、ガラス基板515を介して外側から観察され、画像表示装置として機能する。
【0056】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例】
【0057】
[合成に使用した原料]
合成に使用した原料粉末は、酸化イットリウム粉末(信越化学工業株式会社製、純度99.99%、平均粒径10nm〜50nm)と、アルミニウムイソプロポキシド(Sigma Aldrich製、純度99.99%)、ゲルマニウムエトキシド(Sigma Aldrich製、純度99.95%)、オルトケイ酸テトラエチル(Sigma Aldrich製、純度99.999%)、酢酸ニッケル(レアメタリック製、純度99.99%)、酢酸ストロンチウム(Alfa Aesar製、純度99.965%)、酢酸マグネシウム・0.5水和物(和光純薬製、純度99.9%)、酢酸ランタン水和物(Sigma Aldrich製、純度99.99%)、および、ジルコニウムイソプロポキシド(高純度化学製、純度99.99%)であった。
【0058】
[例1〜例21]
例1〜例19では、酸化イットリウム粉末(母体原料)単体、または、それと種々の添加元素を含有する有機金属化合物(添加原料)とを混合した原料粉末に
図2に示す装置を使いフラッシュ焼結により種々の焼結体を得た(
図1のステップS110およびS120)。また、例20および例21では、酸化イットリウム粉末単体、または、それとオルトケイ酸テトラエチル粉末とを混合した原料粉末を電気気炉にて焼結し、焼結体を得た。
【0059】
詳細には、例2〜例19について、酸化イットリウム粉末中のイットリウムに対する、種々の有機金属化合物中の金属元素のモル比(mol%)が、表1を満たすように、混合した。混合した原料粉末は、おおよそ20g〜100gであった。例1については、酸化イットリウム粉末単体を50g秤量した。原料粉末とジルコニアボール(φ5mm)とをポリ容器に投入し、エタノール(50〜200mL)を加え、封入後、24時間回転し、攪拌した。混合後、エタノールをホットプレートで乾燥・蒸発させ、篩(目開き0.25mm)を通して造粒した。
【0060】
造粒した粉末を犬の骨型(ゲージ部長さ20mm、幅3.3mm、厚さ1.1mm)に一軸成形し、成形体210(
図2)を得た。各成形体の両端に白金を通して、高電圧電源230(松定プレシジョン社製、型番HAR−3P100)に接続した。成形体210を炉220(
図2)内に設置した。その後、炉内温度を600℃まで昇温させた後、各成形体210に表1に示す直流または交流電界(周波数:0.5Hz)を印加し、昇温速度10℃/分で昇温させた。各成形体210に流れる電流値の上限は60mA(電流密度17mA/mm
2)とした。表1に示す各温度にてフラッシュ焼結が生じ、その温度で表1に示す時間保持した。なお、フラッシュ焼結発生時には、成形体210を流れる電流値は上限値に達するため、電流値を一定に保つよう印加電圧を制御した。表1に示す時間保持した後、高電圧電源230を切り、炉220を室温まで冷却した。このようにして例1〜例19の焼結体を得た。
【0061】
例20〜例21について、酸化イットリウム粉末単体、あるいは、酸化イットリウム粉末中のイットリウムに対する、オルトケイ酸テトラエチル粉末中のケイ素のモル比(mol%)が、表1を満たすように、混合した。混合した原料粉末は、おおよそ20g〜100gであった。この原料粉末を、例1〜例19と同様に、攪拌し、篩を通して、造粒した。造粒した粉末を矩形の板に一軸成形し、炉に設置し、大気中、表1に示す温度および時間、焼結した。例20および例21については、炉が焼結温度に到達後、すぐさま炉冷したため、焼結時間を0分とした。
【0062】
【表1】
【0063】
このようにして得られたセラミックス材料である例1〜例21の焼結体について、粉末X線回折(Rigaku社製、型番RINT−Ultima3)を行い、走査型電子顕微鏡(SEM、日立社製、型番S−4200)を用いて表面観察した。結果を
図6、
図7および表2に示す。例1〜例21の焼結体に励起源として紫外線ランプ(波長365nm)を照射し、観察した。観察結果を
図8〜
図10および表2に示す。例1〜例21の焼結体の発光スペクトルを、蛍光分光光度計(日立製、型番F−7000)を用いて測定した。結果を
図11に示す。
【0064】
図6は、例5、例13および例19の焼結体のXRDパターンを示す図である。
【0065】
図6には、JCPDS41−1105の酸化イットリウムのXRDパターンも併せて示す。例5、例13および例19の焼結体は、いずれも、酸化イットリウム(JCPDS:41−1105)に同定され、それ以外の不純物を示すピークはなかった。このことから、添加元素のアルミニウムは、酸化イットリウムに固溶し、第二相などを形成していないことが分かった。図示しないが、例2〜例4、例6〜例12、例14〜例18および例21の焼結体も同様のXRDパターンを示すことを確認した。なお、元素分析により、いずれの焼結体もランタノイド元素を含有しないこと(50ppm以下)であることを確認した。
【0066】
測定密度/理論密度の比から相対密度を測定したところ、通常焼結をした例20および例21の焼結体は、80%以下の相対密度を有したが、例1〜例9、例11〜例18の焼結体は、その多くが90%を超える高い相対密度を有した。一方、印加電界が小さい例19の焼結体の相対密度も低かった。このことから、200V/cm以上の印加電界によりラッシュ焼結が生じ、相対密度が増大し、緻密な焼結体が得られることが示唆される。特に、例5、例8〜例19の焼結体は、95%を超える、場合によっては98%を超える極めて高い相対密度を有した。なお、例3の焼結体は、相対密度が低く、フラッシュ焼結が生じていないか、または、添加元素が阻害要因となっている可能性がある。
【0067】
図7は、例5、例13および例19の焼結体の微細構造を示すSEM像である。
【0068】
図7によれば、例5および例13の焼結体は、粒径の大きな粒子からなり、非常に緻密であり、空隙など見られなかった。一方、例19の焼結体は、粒径の小さな粒子からなり、空隙が見られた。このことからも、印加電界が小さい例19では、フラッシュ焼結が生じておらず、200V/cm以上の印加電界によりラッシュ焼結が生じ、相対密度が増大し、緻密な焼結体が得られることが示唆される。
【0069】
さらに、SEM像の種々の場所から500個の粒子の粒径について測定し、平均粒径(D50)を算出した。例5および例13の焼結体の平均粒径は、1.5μm〜1.6μmであった。一方、例19の焼結体の平均粒径は、0.4μm〜0.5μmであった。
【0070】
図示しないが、他の焼結体も同様に観察したところ、フラッシュ焼結された焼結体は、極めて緻密であり、空隙が見られなかった。またその粒径は、いずれも、通常焼結された例20および例21の焼結体のそれよりも大きく、特に、例5、例8〜例18の焼結体は、1.0μm以上3.0μm以下の範囲の粒径を有することを確認した。例20の焼結体は、平均粒径の算出はしていないが、SEM像から明らかに1μm未満であることを確認した。
【0071】
図8は、例1〜例3の焼結体を紫外線で励起させた際の様子を示す図である。
図9は、例5および例7〜例10の焼結体を紫外線で励起させた際の様子を示す図である。
図10は、例20〜例21の焼結体を紫外線で励起させた際の様子を示す図である。
【0072】
図8〜
図10において、上段は、室内灯を点灯した状態での観察結果であり、下段は、消灯し、紫外線ランプを照射した状態での観察結果である。
図8および
図10中には、分かりやすさのため、必要に応じて焼結体の外形を示す波線を入れている。
【0073】
図8(A)によれば、フラッシュ焼結された例1の焼結体(ノンドープ酸化イットリウム)は、紫外線の照射によって青色に発光した。一方、
図10(A)によれば、通常焼結された例20の焼結体(ノンドープ酸化イットリウム)は、紫外線を照射しても発光しなかった。このことからフラッシュ焼結された酸化イットリウムは、紫外線の照射によって青色発光し、これは、既存の発光中心元素の遷移による発光メカニズムとは全く異なるといえる。なお、図はグレースケールで示されるため、下段において、明るく示される領域が青色発光していることを示す。
【0074】
図8(B)〜(C)および
図9(A)〜(D)によれば、例5(Y
2O
3:Al
3+)、例7(Y
2O
3:Zr
4+)、例8(Y
2O
3:Si
4+)および例9(Y
2O
3:Ge
4+)の焼結体は、いずれも、紫外線ランプを照射すると青色に発光したが、例2(Y
2O
3:Ni
2+)および例3(Y
2O
3:Sr
2+)の焼結体は発光しなかった。なお、例5、例8および例9の焼結体の発光は、ノンドープの例1のそれよりも強く、例7の焼結体の発光は、ノンドープの例1のそれよりも極めて弱かった。このことから、酸化イットリウムに、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)およびGe(ゲルマニウム)からなる群から少なくとも1種選択された元素が添加されたセラミックス材料が、励起源の照射によって青色発光する蛍光体となることが示された。
【0075】
図9(D)と
図10(B)とを比較すると、いずれも、ケイ素がドープされた酸化イットリウム焼結体(Y
2O
3:Si
4+)であるが、フラッシュ焼結されたもののみが、紫外線ランプの照射によって青色発光した。図示しないが、例20の焼結体も青色発光しなかった。このことから、本発明の蛍光体を得るには、本発明のフラッシュ焼結を用いることが有効であることが示された。
【0076】
図9(D)および(E)によれば、いずれも、フラッシュ焼結によるケイ素がドープされた酸化イットリウム焼結体(Y
2O
3:Si
4+)であるが、交流電界を印加した例10の焼結体の方が、直流電界を印加した例9のそれに比べて、均一な発光を示した。このことから、直流電界よりも交流電界の方が好ましいことが示された。
【0077】
なお、図示しないが、例11〜例13のフラッシュ焼結によるアルミニウムがドープされた酸化イットリウム焼結体(Y
2O
3:Al
3+)は、
図9(A)と同様に青色発光した。例14および例15のフラッシュ焼結によるケイ素がドープされた酸化イットリウム焼結体(Y
2O
3:Si
4+)は、
図9(D)と同様に青色発光した。例16〜例17ののフラッシュ焼結によるゲルマニウムがドープされた酸化イットリウム焼結体(Y
2O
3:Ge
4+)は、
図9(B)と同様に青色発光した。このことから、本発明の蛍光体を得るために、フラッシュ焼結する際の直流または交流の電界の範囲は、200V/cm以上1000V/cm以下の範囲であり、焼結温度は1000℃以上1400℃以下の温度範囲が適用できることが示された。
【0078】
また、図示しないが、例8の焼結体をボールミルにより粉砕した粉末に紫外線ランプを照射したところ、焼結体と同様に青色発光した。このことから、本発明のセラミックス材料は、焼結体に限らず粉末であってもよいことが示された。
【0079】
【表2】
【0080】
図11は、例8および例20〜例21の焼結体の発光スペクトルを示す図である。
【0081】
図11には、参考のため、原料に用いた酸化イットリウム粉末の発光スペクトルも併せて示す。
図11によれば、原料の酸化イットリウム粉末、例20および例21の焼結体は、明瞭な発光ピークを示さなかった。なお、これらの発光スペクトルは、波長330nm程度に極めて小さなピークを示したが、これは励起光由来によるものであり、発光によるものではない。一方、例8のフラッシュ焼結によるケイ素がドープされた酸化イットリウム焼結体(Y
2O
3:Si
4+)は、380nm以上495nm以下の範囲の波長に極めて明瞭は発光ピークを有する発光をすることが分かった。図示しないが、例5、例9〜例18の焼結体の発光スペクトルは、いずれも、380nm以上495nm以下の範囲の波長に極めて明瞭は発光ピークを有した。
【0082】
上述したように、本願発明者らは、フラッシュ焼結によって得られた酸化イットリウムに、Si、AlおよびGeからなる群から少なくとも1種選択された元素が添加されたセラミックス材料が、励起源の照射によって380nm以上495nm以下の範囲の波長にピークを有する発光をし、青色発光する蛍光体として機能することを見出した。一方で、例19の焼結体のように、フラッシュ焼結が生じなかった酸化イットリウムにアルミニウムが添加されたセラミックス材料、あるいは、例21の焼結体のように、通常焼結された酸化イットリウムにケイ素が添加されたセラミックス材料は、青色発光しない。このような青色発光をせしめる原理、発光メカニズムの解明にはいたっていないが、酸化イットリウムに、Si、AlおよびGeからなる群から少なくとも1種選択された元素が添加されたセラミックス材料であっても、励起源の照射によって380nm以上495nm以下の範囲の波長にピークを有する発光をしないものは、本発明とは異なる材料であると判断できる。