【解決手段】Cu又はCu合金からなる基材の上にCu−Sn金属間化合物層が形成され、その上にSn又はSn合金からなるSn層が形成されており、Sn層の表面において、端子に成形したときに端子同士が嵌合により接触状態となる予定の嵌合予定部位に、ストライプ状に部分皮膜が形成され、該部分皮膜は、Sn層の上に形成されたNi又はNi合金からなるNi層と、Ni層の上に形成されたAu又はAu合金からなるAu層とを有し、Sn層とNi層との間に、SnにNiが固溶してなるSn−Ni固溶体及び/又はSnとNiとの金属間化合物を含有するSn−Ni層が形成され、Ni層における基材の圧延面に対する法線方向から視た平均結晶粒径が10nm以上500nm以下で、平均結晶粒径の変動係数が1以下である。
Cu又はCu合金からなる基材の上に、Cu及びSnの金属間化合物からなるCu−Sn金属間化合物層が形成され、該Cu−Sn金属間化合物層の上にSn又はSn合金からなるSn層が形成されており、前記Sn層の表面において、端子に成形したときに端子同士が嵌合により接触状態となる予定の嵌合予定部位に、ストライプ状に部分皮膜が形成されており、該部分皮膜は、前記Sn層の上に形成されたNi又はNi合金からなるNi層と、該Ni層の上に形成されたAu又はAu合金からなるAu層とを有し、
前記Sn層における前記Ni層との界面部に、SnにNiが固溶してなるSn−Ni固溶体及び/又はSnとNiとの金属間化合物を含有するSn−Ni層が形成され、
前記Ni層における前記基材の圧延面に対する法線方向から視た平均結晶粒径が10nm以上500nm以下であり、該平均結晶粒径の変動係数が1以下であることを特徴とするコネクタ端子用導電部材。
前記Sn−Ni層に含まれるSn−Ni固溶体及び/又はSn−Ni金属間化合物の平均結晶粒径が0.2μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1記載のコネクタ端子用導電部材。
前記Ni層において前記Au層と接する面の算術平均面高さSaが0.5μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載のコネクタ端子用導電部材。
請求項1から5のいずれか一項記載のコネクタ端子用導電部材からなり、相手端子に嵌合状態に接触する嵌合部を有し、該嵌合部の表面に前記部分皮膜が形成されていることを特徴とするコネクタ端子。
【背景技術】
【0002】
最近、表面にAgやAu等の貴金属めっきが施された銅合金条材が耐摩耗性及び導電性が要求される電気自動車の充電用プラグ部、各種摺動部、モーター部、充電部などのコネクタ部材として使用されている。
この電気自動車の充電用プラグ部のコネクタ部品などにおいて、高電流・高電圧環境下での使用に加えて数万回の抜き差しに耐えうる耐摩耗性が求められるようになってきている。この課題に対して、特許文献1により、表面に錫めっきを施した銅合金材料上に電解ニッケルめっきを施した後、さらに電解銀めっきを施しためっき積層体が提案されている。
【0003】
しかしながら、抜き差しの繰り返しや長時間の摺動によりめっき層の摩耗が進行し、母材に達することで急激な電気抵抗の増大を招くおそれがあった。また、折り曲げなどにより形成しためっき皮膜が剥離する問題もあった。
また、特許文献2では、Cu系基材の上にCu−Sn金属間化合物層、Sn系表面層を順に備え、Sn系表面層の上にNiめっき、硬質Agめっきを施したコネクタ用導電部材が提案され、コネクタとして長時間実装された後もある程度の高い表面硬度を維持することにより耐摩耗性を向上させたものが開示されている。
【0004】
また、特許文献3では、銅または銅合金からなる基材上に厚さ0.1μm以上10.0μm以下のニッケル、コバルト等からなる拡散防止層が形成され、かかる拡散防止層の表面から所定の厚さの領域を平均結晶粒径0.3μm以上の粒径調整部とし、その上に厚さ0.1μm以上5.0μm以下の金や銀等からなる貴金属層が形成された銅端子材が開示されている。
このように高電流・高電圧環境下で使用されるコネクタ用の銅端子材としては、Ni系の下地めっき層の上に貴金属めっき層を形成したものが広く用いられている。貴金属めっきの材料としては、導電性の観点からはAgが最も好適であるが、Agは空気中で硫化物を形成することにより変色、腐食を生じ易いため、長時間空気中で使用されると電気抵抗が増大するおそれがある。そのため、良好な導電性をより長く維持したい箇所ではAgよりも耐食性の高いAuの使用が望ましいが、高価なAuを使うとコストの大幅な上昇が予想され、それを抑えるためにはAuの使用量をできるだけ少なくする必要がある。すなわちAuめっきであれば、その厚さをできるだけ薄くすることが必要となる。
【0005】
しかしながら、近年は電気自動車の高性能化等に伴い、使用されるコネクタ数およびその端子数が増加しており、その一方でコネクタの小型化も求められ、端子材にはより細かい曲げ加工が必要となってきている。また使用時間の増加や使用環境の多様化も想定されるため、端子の接触部表面に長期間の摺動が加わる可能性や、より過酷な腐食環境で使用される可能性もある。従って、端子のめっき部分においては、めっき層の厚みが薄くても細かい曲げ加工に対応できる曲げ加工性と、摺動に対する十分な耐摩耗性が望まれていた。また耐食性が高いAuといえども、めっき層の厚みが薄くなればめっき層内に微細な孔(ピンホール)が発生し易くなり、下地金属の影響で変色や腐食が発生する可能性もある。これらのことから、Auめっきを使用する際にはNi下地層との相関も考慮する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、細かい曲げ加工に対応できると共に、十分な耐摩耗性を有し、かつ腐食環境においても良好な表面状態を長期に維持して電気抵抗の増大を抑制できる、コネクタ端子用導電部材及びコネクタ端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコネクタ端子用導電部材は、Cu又はCu合金からなる基材の上に、Cu及びSnの金属間化合物からなるCu−Sn金属間化合物層が形成され、該Cu−Sn金属間化合物層の上にSn又はSn合金からなるSn層が形成されており、前記Sn層の表面において、端子に成形したときに端子同士が嵌合により接触状態となる予定の嵌合予定部位に、ストライプ状に部分皮膜が形成されており、該部分皮膜は、前記Sn層の上に形成されたNi又はNi合金からなるNi層と、該Ni層の上に形成されたAu又はAu合金からなるAu層とを有し、
前記Sn層における前記Ni層との界面部に、SnにNiが固溶してなるSn−Ni固溶体及び/又はSnとNiとの金属間化合物を含有するSn−Ni層が形成され、
前記Ni層における前記基材の圧延面に対する法線方向から視た平均結晶粒径が10nm以上500nm以下であり、該平均結晶粒径の変動係数が1以下である。
なお、前記Sn−Ni層は、Sn層にNiが拡散することによって形成されるものであるが、局所的にSnが合金化せずそのまま存在している場合もある。平均結晶粒径の変動係数とは、平均結晶粒径の標準偏差を平均結晶粒径で割った値である。
【0009】
このコネクタ端子用導電部材は、端子に成形したときに端子同士が嵌合により接触状態となる予定の嵌合予定部位に、表面にAu層を有する部分皮膜がストライプ状に形成されているので、高価なAu層の使用が局部に制限され、コスト増を抑制することができる。また、このストライプ状の部分皮膜において、Sn層とNi層との間にSn−Ni固溶体及び/又はSn−Ni金属間化合物からなるSn−Ni層が介在しているので、Ni層とSn層との結合状態がより強固かつ安定的になる。更にまた、Ni層の平均結晶粒径を10nm〜500nmの範囲とし、かつこの平均結晶粒径の変動係数を1以下としているので、このNi層上に形成されたAu層は、折り曲げ加工等によっても剥離が生じにくく、またコネクタとして挿抜を繰り返したり長期間の摺動を繰り返しても摩耗しにくくなり、なおかつ腐食環境においても良好な表面状態が長期に維持されるため、抵抗値が安定して維持される。このため、コネクタ用導電部材として高い信頼性を維持することができる。またこの構成では、Au層の厚みは0.01μm程度まで薄くすることができ、これはコストの抑制にもつながる。
この場合、Ni層の平均結晶粒径が10nm未満では、微細な結晶により耐摩耗性は向上するも、硬くなり過ぎて曲げ加工時に割れが生じ易い。Ni層の平均結晶粒径が500nmを超える粗大な結晶粒となると、耐摩耗性が低下する。また、平均結晶粒径の変動係数が1を超えると、結晶粒径のばらつきが大きくなり、実用上好ましいレベルの耐摩耗性を安定して得ることができない。
【0010】
本発明のコネクタ端子用導電部材の好ましい実施態様として、前記Sn−Ni層の含まれるSn−Ni固溶体及び/又はSn−Ni金属間化合物の平均結晶粒径が0.2μm以上5μm以下であることが好ましい。
Sn−Ni固溶体及び/又はSn−Ni金属間化合物の平均結晶粒径をこの範囲にすることで、Sn層とNi層の密着性が向上する。平均結晶粒径がこの範囲を外れたものは、密着性の向上効果が十分には得られなくなる。
【0011】
本発明のコネクタ端子用導電部材の好ましい実施態様として、前記Sn−Ni層におけるNiの含有量は5at%以上であるのが好ましい
Sn−Ni層中にNi含有量を5at%以上とすることで、安定したSn−Ni金属間化合物層が形成され、Sn層とNi層の密着性が向上する。その含有量が5at%未満であると、Sn含有量が多過ぎるため、柔らかくなり過ぎて耐摩耗性低下のおそれがある。Ni含有量の上限は67at%が好ましい。
【0012】
Sn−Ni層におけるSn−Ni固溶体及び/又はSn−Ni金属間化合物の粒子が上記のような範囲で存在することにより、Sn層とNi層の密着性が、界面全体でより安定的に強くなり、曲げ加工時の剥離発生のおそれが低くなる。
【0013】
本発明のコネクタ端子用導電部材の好ましい実施態様として、前記Ni層における前記基材の圧延面の法線方向から視た平均結晶粒径をd
NDとし、前記基材の圧延幅方向に対して垂直な面での平均結晶粒径をd
TDとすると、その粒径比d
TD/d
NDが1以上10以下であるとよい。
粒径比d
TD/d
NDの比がこの範囲内であると、より耐摩耗性が良好になる。d
TD/d
NDが1未満では、粒径が微細になることで、耐摩耗性は向上するが、細かくなり過ぎて、曲げた際に割れが生じ易くなる。d
TD/d
NDが10を超えると、ニッケル層の表面が粗くなり過ぎ、その凹凸の凸部が先行して摩耗することで摩耗粉が発生し、その摩耗粉の酸化による抵抗値の増大によって接続信頼性が低下するおそれがある。
【0014】
本発明のコネクタ端子用導電部材の好ましい実施態様として、前記Ni層において前記Au層と接する面の算術平均面高さSaが0.5μm以下であるとよい。ここで、算術平均面高さSaとは、ISO25178−2で定義されているarithmetical mean heightのことをいう。
Ni層におけるAu層と接する面のSaが0.5μm以下であると、耐摩耗性がさらに良好になる。0.5μmを超えると、その凹凸の凸部が先行して摩耗することで摩耗粉が発生し、その摩耗粉の酸化による抵抗値の増大によって接続信頼性が低下するおそれがある。
【0015】
本発明のコネクタ端子用導電部材は、前記基材は帯板状に形成されているとよい。帯板とすることにより、その長さ方向に沿って連続的に端子を製造することができる。
本発明のコネクタ端子は、前記コネクタ端子用導電部材からなり、相手端子に嵌合状態に接触する嵌合部を有し、該嵌合部の表面に前記部分皮膜が形成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐摩耗性が向上し、かつ高い耐食性を有するため、電気抵抗の増大を長期にわたって抑制するとともに、曲げ加工等の際の剥離の発生を確実に防止して、高い信頼性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のコネクタ端子用導電部材の実施形態を詳細に説明する。
コネクタ端子用導電部材1,11は、Cu又はCu合金からなる基材2の表面に、Cu及びSnの金属間化合物からなる銅錫金属間化合物層3が形成され、Cu−Sn金属間化合物層3の上にSn又はSn合金からなるSn層4が形成されており、そのSn層4の表面の一部に部分皮膜5が形成されている。
具体的には、基材2は帯板状に形成された条材であり、Cu−Sn金属間化合物層3及びSn層4が形成されためっき付条材6の表面に、
図2及び
図3に示すように、その長さ方向に沿ってストライプ状に部分皮膜5が形成されている。なお、
図2は雄端子として用いられるコネクタ端子用導電部材1、
図3は雌端子として用いられるコネクタ端子用導電部材11を示している。
そして、このコネクタ端子用導電部材1,11をプレス成形することにより、複数の端子が帯板の長さ方向に並んで連続的に成形される。
【0019】
このコネクタ端子用導電部材1,11にストライプ状に設けられる部分皮膜5は、端子に成形したときに端子同士が嵌合して接触状態となる予定の嵌合予定部位に形成されることを前提とするものであるが、リード線が圧着状態に接続される予定の圧着予定部位に形成しても良い。
図2及び
図3は、嵌合予定部位と圧着予定部位の両方に形成した例であり、以下、この例に基づいて説明する。この部分皮膜5は
図1に示すように、めっき付条材6のSn層4の上に形成されたNi又はNi合金からなるNi層8と、Ni層8の上に形成されたAu又はAu合金からなるAu層9とを有し、Sn層4とNi層8との間、具体的にはSn層4におけるNi層8との界面部に、SnにNiが固溶してなるSn−Ni固溶体及び/又はSnとNiの金属間化合物を含有するSn−Ni層7が形成されている。
【0020】
図4に、このコネクタ用導電部材1、11を使用して製造されたコネクタの一例を示す。
雄端子21は、先端に、雌端子22に嵌合状態に接触する嵌合部31が形成され、その基端部にリード線圧着部32が形成されている。嵌合部31は棒状に形成され、リード線圧着部32は、リード線33の先端に露出している導体33aを嵌合する円筒部34が嵌合部31に連続して形成され、その円筒部34に連続して、一対のかしめ片35a,35bが左右に開いた状態に一体に形成された構成とされている。これらかしめ片35a,35bは、符号35aがリード線33の外被33bをかしめる外被用かしめ片であり、符号35bがリード線33の導体33aをかしめる導体用かしめ片である。
【0021】
雌端子22は、先端に、雄端子21の嵌合部31を嵌合する嵌合部41が形成され、その基端部にリード線圧着部42が形成されている。嵌合部41は、雄端子21の嵌合部31を緊密に嵌合し得る内径の円筒状に形成され、その先端部を除く中央部分に長さ方向に沿うスリットが周方向に間隔をおいて複数形成されることにより、弾性変形容易部43とされている。リード線圧着部42は、雄端子21と同様に、リード線33の先端の導体33aを嵌合する円筒部44が嵌合部41に連続して形成され、その円筒部44に連続して、一対のかしめ片45a,45bが左右に開いた状態に一体に形成されており、符号45aは外被用かしめ片、符号45bは導体用かしめ片である。
【0022】
そして、雄端子21では、前述したストライプ状の部分皮膜5が棒状の嵌合部31の基端側に近い部分の外周面、円筒部34の内面及び導体用かしめ片35bの内面にそれぞれ配置されている。一方、雌端子22では、ストライプ状の部分皮膜5が嵌合部41の先端部の内周面、円筒部44の内面及び導体用かしめ片45bの内面にそれぞれ配置されている。
この部分皮膜の形成部位は、コネクタ端子用導電部材1,11を端子に加工したときに、相手端子と嵌合して接触状態となる部位(嵌合予定部とする)及びリード線がかしめられて圧着状態に接続される部位(圧着予定部位とする)にそれぞれ形成され、この部分皮膜5が形成されていない部位は、Sn層4の表面が露出している。通常は、リード線圧着部32,42は、雄端子21では嵌合部31と反対面、雌端子22では嵌合部41と同じ面に形成される。したがって、雄端子21に用いられるコネクタ用導電部材1では、
図2に示すように部分皮膜5がめっき付条材6の両面に形成され、雌端子22に用いられるコネクタ用導電部材11では、
図3に示すように、めっき付条材6の一方の面にのみ形成される。
なお、「嵌合予定部位」は、雄端子と雌端子とが直接面接触する部分にそれに隣接する若干のマージン幅の部分を加えた部位とするのが好適である。「圧着予定部位」も同様であり、リード線が圧着して接触する部分にそれに隣接する若干のマージン幅の部分を加えた部位とするのが好適である。
この様な個々のコネクタの雄端子21及び雌端子22が、雄端子毎、あるいは雌端子毎に複数本まとめてハウジングに収容されることにより多ピン型のコネクタとなる。
【0023】
以下、このコネクタ用導電部材1、11の層構造の詳細について説明する。
基材2はコネクタ端子としての使用に適した銅又は銅合金であれば特に限定しないが、導電性、耐熱性、強度、加工性等を考慮すると、以下に列挙する各種銅合金を適用するのが好ましい。
(1)Mg:0.15〜3.0質量%、P:0.0005〜0.1質量%(Pは不可避不純物として存在する品種もある)、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するCu−Mg系合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のMSPシリーズ。
(2)Zn:2.0〜32.5質量%、Sn:0.1〜0.9質量%、Ni:0.05〜1.0質量%、Fe:0.001〜0.1質量%、P:0.005〜0.1質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するCu−Zn系合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のMNEX10。
(3)Cr:0.07〜0.4質量%、Zr:0.01〜0.15質量%、Si:0.005〜0.1質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するCr−Zr系銅合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のMZC1。
(4)Zr:0.005〜0.5質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のC151。
(5)Fe:0.05〜0.15質量%、P:0.015〜0.05質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するFe−P系銅合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のTAMAC4。
(6)Fe:2.1〜2.6質量%、Zn:0.05〜0.20質量%、P:0.015〜0.15質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するFe−Zn系銅合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のTAMAC194。
(7)Ni:1.0〜5.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%、Mg,Sn,Znのうち1種類または2種類以上を合計で0.01〜2.0質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するCu−Ni−Si系合金(コルソン系合金)であり、例えば三菱伸銅株式会社のMAXシリーズ。
これらの銅合金は、良好な熱伝導性、強度、熱クリープ性、耐熱性、加工性等を有しており、電気自動車用のコネクタ製造用銅合金条材として最適である。
【0024】
Cu−Sn金属間化合物層3及びSn層4は、基材2の上にCu又はCu合金からなるCuめっき層及びSn又はSn合金からなるSnめっき層を順に形成した後に加熱してリフロー処理することによって形成されたものであり、Cu
6Sn
5やCu
3Sn等の金属間化合物を主成分とする。Cu−Sn金属間化合物層3の平均厚みは0.1μm以上3.0μm以下が好ましく、Sn層4の平均厚みは0.1μm以上5.0μm以下が好ましい。このCu−Sn金属間化合物層3とSn層4との界面は凹凸形状に形成される。基材2とCu−Sn金属間化合物層3との間に薄くCu層が形成される場合もある。
【0025】
ストライプ状の部分皮膜5において、Sn層4の上に形成されているSn−Ni層7、Ni層8及びAu層9は、リフロー処理した後のSn層4の表面における嵌合予定部位及び圧着予定部位に、Ni又はNi合金からなるNiめっき、Au又はAu合金からなるAuめっきを施した後に加熱処理することにより形成されたものである。
【0026】
Sn−Ni層7は、Sn層4とNi層8との界面近傍のSn層4側に形成され、Sn(結晶構造が正方晶のβ錫)にNiが固溶してなるSn−Ni固溶体及び/又はSnとNiとの金属間化合物を含有している。Sn−Ni層7中のNiの含有量は5at%以上が好ましい。Ni含有量の上限は67at%が好ましい。より好ましくは7at%以上60at%以下、さらに好ましくは10at%以上50at%以下である。
また、このSn−Ni層7の平均厚みは0.02μm以上1μm以下が好ましい。また、Sn−Ni固溶体及び/又はSn−Ni金属間化合物の平均粒径は0.2μm以上5μm以下である。
【0027】
Ni層8は、その平均厚みが0.2μm以上10μm以下が好ましい。また、基材2の圧延面に対する法線方向から視た平均結晶粒径が10nm以上500nm以下であり、平均結晶粒径の変動係数が1以下である。平均結晶粒径の変動係数とは、平均結晶粒径の標準偏差を平均結晶粒径で割った値である。平均結晶粒径は50nm以上100nm以下がより好ましく、変動係数は0.3以下がより好ましい。
また、このNi層8において、基材2の圧延面の法線方向から視た平均結晶粒径をd
NDとし、基材2の圧延幅方向に対して垂直な面での平均結晶粒径をd
TDとすると、その比d
TD/d
NDが1以上10以下である。さらに、このNi層8においてAu層9と接する面のISO25178に準拠した算術平均面高さSaは0.5μm以下である。平均結晶粒径の比d
TD/d
NDは1以上6以下がより好ましく、算術平均面高さSaは0.2μm以下がより好ましい。
【0028】
Au層9は、その平均厚みが0.01μm以上10μm以下が好ましい。なお、特にAu層が薄い場合において、めっきピンホールからの孔食が懸念される場合、封孔処置などの腐食防止処理を実施してもよい。また、このAu層9あるいはAu/Ni層の表面硬さは、コネクタ端子としての使用時の耐久性、特に耐摩耗性の低下を抑制するために、ビッカース硬さで130Hv以上が好ましい。250Hvを超えても、効果は飽和し、コスト高になるため無駄である。
なお、Au層もNi層も厚い方が耐摩耗性は良くなるが、あまり厚くしても効果は飽和してしまうためコスト的にメリットがなく、逆に厚過ぎると曲げの際に割れる恐れが増大することから、Au層とNi層の合計厚さは、0.05μm以上20μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0029】
このような層構造を有するコネクタ端子用導電部材1,11は、基材2の表面にCuめっき、Snめっきを順に施した後に、リフロー処理し、リフロー処理後のSn層4の上に、Niめっき、Auめっきを順に施して、その後、加熱処理することにより形成される。
【0030】
Cuめっきは一般的なCuめっき浴を用いればよく、例えば硫酸銅(CuSO
4)及び硫酸(H
2SO
4)を主成分とした硫酸銅浴等を用いることができる。めっき浴の温度は20〜50℃、電流密度は1〜50A/dm
2とされる。このCuめっきにより形成されるCuめっき層の膜厚は0.05μm以上0.50μm以下とされる。
【0031】
Snめっき層形成のためのめっき浴としては、一般的なSnめっき浴を用いればよく、例えば硫酸(H
2SO
4)と硫酸第一錫(SnSO
4)を主成分とした硫酸浴を用いることができる。めっき浴の温度は15〜35℃、電流密度は1〜30A/dm
2とされる。このSnめっき層の膜厚は0.1μm以上5.0μm以下とされる。
【0032】
リフロー処理はCuめっき層及びSnめっき層を加熱して一旦溶融させたのち急冷すればよい。例えば、CO還元性雰囲気にした加熱炉内でCuめっき及びSnめっきを施した後の処理材を20〜75℃/秒の昇温速度で240〜300℃のピーク温度まで加熱する加熱工程と、そのピーク温度に達した後、30℃/秒以下の冷却速度で2〜10秒間冷却する一次冷却工程と、一次冷却後に100〜250℃/秒の冷却速度で20〜60℃まで冷却する二次冷却工程とを有する処理とする。このリフロー処理により、基材2表面から順に、Cu−Sn金属間化合物層3、Sn層4が形成されためっき付条材6が形成される。基材2とCu−Sn金属間化合物層3との間にCuめっき層の一部が残る場合もある。
【0033】
Niめっきは一般的なNiめっき浴を用いればよく、例えば硫酸(H
2SO
4)と硫酸ニッケル(NiSO
4)を主成分とした硫酸浴を用いることができる。めっき浴の温度は20℃以上60℃以下、電流密度は5〜60A/dm
2以下とされる。このNiめっき層の膜厚は通常0.05μm以上20μm以下とされるが、本発明では0.2μm以上10μm以下の範囲で調整される。
このNiめっきを施す前に、Sn層4の表面に薄くストライクめっき(フラッシュめっき)を例えば0.005μm以上0.2μm以下の厚みで施しても良い。ストライクめっきとしては、金、銀、パラジウム、ニッケル等の種々のめっきを適用できる。
Auめっきは、一般的なAuめっき浴であるシアン化金カリウムめっき浴を用いればよい。浴の温度は20℃以上50℃以下、電流密度は0.1A/dm
2以上3A/dm
2以下が適切である。このAuめっき層の膜厚は、本発明では0.01μm以上10μm以下の範囲で調整される。
【0034】
これらNiめっき及びAuめっきを施した後、50℃以上230℃以下の温度で1秒以上10分以下の時間保持する加熱処理を行う。この加熱処理により、Sn層4側のNi層8との界面に、Sn層4とNi層8との間でSnの一部にNiが固溶してなるSn−Ni固溶体及び/又はSnとNiとの金属間化合物が層状に配置されたSn−Ni層7が形成される。
【0035】
以上の層構造を有するコネクタ端子用導電部材1,11は、所定の外形にプレス打抜きされ、曲げ加工等の機械的加工が施されて、雄端子21あるいは雌端子22となり、耐久性が高く、密着力が強くて硬度の高い部分皮膜5が、雄端子21と雌端子22との嵌合部31,41に形成される。これにより、繰り返し挿抜に対する高い耐久性を有することができ、特に、厳しい状況下で使用される電気自動車用充電器コネクタの製造に使用されることが好ましい。
更に、リード線圧着部32,42にも部分皮膜5が形成されてもよい。これにより、端子全体としての強度および耐久性が増し、外部リード線33とのはんだ付けなどの接合が容易になる。この外部リード線33と接合する部位は、かしめ加工などを施されることが多く、密着力が強固である部分皮膜5が形成されることにより、加工性が向上する。この場合、このリード線圧着部32,42に形成される部分皮膜5の厚みは、雄端子21と雌端子22との直接の挿抜力が作用しないので、コストダウンの面からも、嵌合部31,41に形成される部分皮膜5の厚みより小さくても良い。
【実施例】
【0036】
長さ500mm、幅30mm、厚み0.3mmの三菱伸銅株式会社製の商品名「MSP1」(Mg:0.3〜2質量%、P:0.001〜0.1質量%、残部がCuおよび不可避的不純物)を用いた基材の表面に、以下のめっき条件で、0.4μm厚みのCuめっき及び1.2μm厚みのSnめっきを順に施した後に、前述したリフロー処理を施して、めっき付条材を作製した。
(Cuめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:硫酸銅めっき液
液温:27℃
電流密度:4A/dm
2
(Snめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:硫酸錫めっき液
液温:20℃
電流密度:2A/dm
2
【0037】
次に、そのめっき付条材の所定の部位に、銀のストライクめっきを施した後、表1に示す厚みでNiめっき及びAuめっきを順に形成した。Niめっきは半光沢ニッケルめっきとした。これらのめっきを施した後、温風を吹き付けながら150℃の温度で1分間保持する加熱処理を行った。
この部分皮膜用の各めっきの条件は以下の通りとした。
(銀ストライクめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:シアン化銀ストライクめっき液
液温:室温
電流密度:3A/dm
2
(Niめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:スルファミン酸ニッケルめっき液
液温:50℃
電流密度:10A/dm
2
(Auめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:シアン化金カリウムめっき液
液温:40℃
電流密度:1A/dm
2
【0038】
得られた各試料について、Ni層における平均結晶粒径、変動係数、d
TD/d
NDの粒径比、Au層と接する面の算術平均面高さSaを測定し、また、Sn−Ni層における平均粒径、Sn−Ni層中のNiの含有量(at%)を測定した。
Ni層における平均結晶粒径は、試料断面のSEM画像より切断法にて100個の結晶粒径を算出し、これを平均した。その平均結晶粒径の標準偏差を平均結晶粒径で割ることで変動係数を求めた。
d
TD/d
NDの粒径比は、基材の圧延面の法線方向から視た平均結晶粒径d
ND、及び基材の圧延幅方向に対して垂直な面での平均結晶粒径d
TDをそれぞれSEM画像により切断法にて算出し、その比率を求めた。
算術平均面高さは、ISO25178に従い、レーザー共焦点顕微鏡(LSCM)にて測定した。
Sn−Ni層における平均粒径は、SEM−EPMAによりSn−Ni固溶体及び/又はSn−Ni金属間化合物を確認した後、SEM−EBSDにより結晶粒界像を撮影し、100個の結晶粒径から算出した。
Sn−Ni層のNiの含有量(at%)は、TEM−EDXによりSn−Ni層の任意の5点で測定した値から算出した。
【0039】
【表1】
【0040】
これらの試料につき、部分皮膜の表面硬さを測定し、耐摩耗性、曲げ加工性を評価した。
表面硬さは、加熱前と、実装時を想定した条件(150℃×1000hr)で加熱保持処理後について、マイクロビッカース硬度計にて測定した。
耐摩耗性(摺動試験)は、山崎精機研究所製精密摺動試験装置CRS−G2050−MTS型を使用し、摺動距離0.2mm、摺動速度0.4mm/s、接触荷重1.1N、摺動回数500往復を1セットとし、これを複数セット繰り返す条件で摺動回数と接触抵抗との関係を評価した。サンプル数は3個とし、サンプルの初期(試験開始前)の接触抵抗が1mΩ以下であることを確認した後、連続的に摺動させながら接触抵抗を測定し、接触抵抗が50mΩ以上となったのが何セット目であるかに基づき、良否を判定した。具体的には、50mΩに到達したセット数について、3個とも7セット目(3001〜3500往復)以降であったものを「優」、いずれか1個でも6セット目であった(ただし、それを含め全て6セット目以降であった)場合は「良」、いずれか1個でも5セット目であった(ただし、それを含め全て5セット目以降であった)場合は「可」とし、いずれか1個でも4セット目以前で50mΩに達してしまったものがあった場合は「不可」とした。
曲げ加工性は、試料をBadWay:圧延垂直方向に幅10mm×長さ60mmに切出し、JIS Z 2248に規定される金属材料曲げ試験方法に準拠し、曲げ半径Rと押し金具の厚さtとの比R/t=1として180°曲げ試験を行い、曲げ部の表面及び断面にクラック等が認められるか否かを光学顕微鏡にて倍率50倍で観察した。クラック等が認められず、表面状態も曲げの前後で大きな変化がなかったものを「◎」、表面は光沢低下などの状態変化が認められたもののクラックの発生は確認できなかったものを「〇」、クラックは認められたものの、めっき剥離は認められなかったものを「△」、めっき自体の剥離が認められたものを「×」とした。
耐食性は、JISC60068−2−60に定める方法にて評価した。このJISにおける試験方法1にて4日間暴露し、表面変色の有無の確認および表面接触抵抗の測定を実施した。変色の判断基準はJISZ2371:塩水噴霧試験のレイティングナンバ評価を援用した。表面接触抵抗測定方法は日本伸銅協会技術標準(JCBA T323:2011)に準拠し、荷重を50gfとした。試験後に変色が見られなかったもの(レイティングナンバ10に相当するもの)を○、変色した領域の面積が金めっき実施面積の0.1%以下(同レイティングナンバ9以上に相当)であったものを△、変色した領域の面積が金めっき実施面積の0.1%を超えるもの(同レイティングナンバ9未満に相当)であったものを×とした。なお、試験前のものはすべて表面接触抵抗が2mΩ未満であった。
また、表に記載の比較例とは別に、貴金属めっきの材質による耐食性比較のため、表層をAgめっき層としたものについても複数のAgめっき層の厚みのサンプルを用意して同様の耐食性評価を行った。
これらの結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
これらの結果より、本実施例はいずれも、長時間の加熱後も表面硬さは概ね全て130Hv以上であり、かつ良好な耐摩耗性(高い摺動回数)を示していると共に、曲げ加工性にも優れていることが分かる。また、いずれの実施例も、耐食性は「○〜△」の評価であり、表面接触抵抗も全て2mΩ未満のままであった。
【0043】
これに対し比較例を見ると、Niの結晶粒径が小さすぎる比較例B1とB2では、結晶粒が微細であるがゆえに耐摩耗性は良好であるが、硬くなりすぎるために曲げ加工性は悪かった。逆に結晶粒が500nm前後と大きくなり、変動係数が1を超えてしまった実施例B3〜B6では、耐摩耗性が非常に悪い結果となった。比較例B7とB8はSn−Ni化合物の形成が認められなかったもので、耐摩耗性は良好であったものの曲げ加工性が悪く、やはり密着性に問題があったものと思われる。比較例B9は変動係数以外は本発明の範囲内であったが、変動係数が1を超えており、曲げ加工性が「×」の評価となった。比較例10は変動係数がわずかではあるが1を超え、かつSn−Ni中のNi量が少なすぎるため、耐摩耗性が不十分であった。比較例B11は、変動係数が1を超えており、かつAuめっきが薄いため、耐摩耗性が不十分であるとともに耐食性も不十分であった。比較例B12はNi粒径が過大であり、かつNi膜厚も過大であるため曲げ加工性が悪かった。比較例B13〜14は、いずれも変動係数が1を超えており、かつNi膜厚も過大であるため、B12と同様に曲げ加工性が悪かった。また、比較例全体を見ると、半数近くが加熱後の表面硬さHvが130を下回っており、そのうちの多くは耐摩耗性も低下していた。なお、Ni層を非常に厚くしたB12では加熱後のHvが130を下回りながらも摺動試験は「可」となっているが、このNi厚さに対して「可」では低いと言わざるを得ない。また、耐食性に関して不合格となった、Auめっきの極端に薄い比較例B11では下地層の孔食による変色が見られ、表面接触抵抗も2mΩを超過するところまで増大が確認された。なお、表層をAgめっきとしたサンプルについては、めっき厚み等の条件にかかわらず全てのサンプルで変色が見られ、かつ表面接触抵抗も2mΩを超過していた。