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特開2020-133083パルプ用洗浄剤及びパルプの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-133083(P2020-133083A)
(43)【公開日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】パルプ用洗浄剤及びパルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 9/02 20060101AFI20200803BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20200803BHJP
   C08G 65/28 20060101ALI20200803BHJP
【FI】
   D21C9/02
   C11D1/722
   C08G65/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-32614(P2019-32614)
(22)【出願日】2019年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
【テーマコード(参考)】
4H003
4J005
4L055
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003AC23
4H003DA10
4H003FA04
4J005AA12
4J005BB01
4L055AG88
4L055AH29
4L055BB02
4L055CB01
4L055EA19
4L055EA29
4L055FA22
(57)【要約】
【課題】
パルプ原料に付着した汚れを効率よく洗浄できるパルプ用洗浄剤を提供することである。
【解決手段】
HLB(小田法)8〜18且つ曇点(1重量%水溶液)56〜95℃をもつポリオキシアルキレン化合物(A)を含有するパルプ用洗浄剤であって、
ポリオキシアルキレン化合物(A)が一般式(1)で表される化合物(A1)又は一般式(2)で表される化合物(A2)であることを特徴とするパルプ用洗浄剤を用いる。

R−(EO)a−(PO)b−(EO)c−H (1)

R−(EO)d/(PO)e−(PO)f−(EO)g−H (2)

Rは炭素数8〜22のアルキル基又は炭素数8〜22のアルケニル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、aは1〜30の整数、bは0〜7の整数、cは0〜20の整数、dは1〜20の整数、eは1〜8の整数、fは0〜5の整数、gは0〜15の整数、−はブロック状、/はランダム状、Hは水素原子を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLB(小田法)8〜18且つ曇点(1重量%水溶液)56〜95℃をもつポリオキシアルキレン化合物(A)を含有するパルプ用洗浄剤であって、
ポリオキシアルキレン化合物(A)が一般式(1)で表される化合物(A1)又は一般式(2)で表される化合物(A2)であることを特徴とするパルプ用洗浄剤。

R−(EO)a−(PO)b−(EO)c−H (1)

R−(EO)d/(PO)e−(PO)f−(EO)g−H (2)

Rは炭素数8〜22のアルキル基又は炭素数8〜22のアルケニル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、aは1〜30の整数、bは0〜7の整数、cは0〜20の整数、dは1〜20の整数、eは1〜8の整数、fは0〜5の整数、gは0〜15の整数、−はブロック状、/はランダム状、Hは水素原子を表す。
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物(A1)及び一般式(2)で表される化合物(A2)において、Rの炭素数(h)とオキシエチレン基の数(i)との比(i/h)が0.5〜3である請求項1に記載のパルプ用洗浄剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパルプ用洗浄剤の存在下でパルプ原料を洗浄又は漂白する工程を含むことを特徴とするパルプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルプ用洗浄剤及びパルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸解パルプの洗浄剤として、「蒸解されたパルプ原料に含まれるリグニン成分を酸素を用いて分解した後に、前記パルプ原料を洗浄するのに用いられる洗浄剤であって、
(i)下記一般式(1)で表される高級アルコールのアルキレンオキシド付加体、(ii)下記一般式(2)で表される脂肪酸アルキルエステルのアルキレンオキシド付加体、(iii)多価アルコールにエチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)をモル比でEO:PO=30:70〜0:100で付加させて得られた、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン多価アルコールエーテル、及び(iv)多価アルコール脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの少なくともいずれか、から選択される少なくとも1種であって、Daviesの基数を用いて下記計算式(1)より算出されたHLBが6未満の非イオン性化合物を含有することを特徴とするクラフトパルプ用洗浄剤。
O−(PO)n−[(EO)m・(PO)k]H・・・・一般式(1)
(前記一般式(1)中、Rは、炭素数10〜20の直鎖又は分岐のアルキル基及びアルケニル基のいずれかを表す。n、m、及びkは、平均付加モル数を表し、nは、11〜20を表し、mは、1〜8を表し、kは、1〜80を表す。EO及びPOは、それぞれ、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位を表し、[(EO)m・(PO)k]におけるEO及びPOの付加形態は、ランダム及びブロックのいずれであってもよい。)
−CO−[(EO)p・(PO)q]−OR・・・・一般式(2)
(前記一般式(2)式中、Rは、炭素数10〜20の直鎖のアルキル基及びアルケニル基のいずれかを、Rは、炭素数1〜8の直鎖のアルキル基及びアルケニル基のいずれかを表す。EO及びPOは、それぞれ、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位を表し、[(EO)p・(PO)q]における付加形態は、ブロック及びランダムのいずれであってもよく、p及びqは、平均付加モル数であり、pは、0〜20、qは、1〜10である。)
HLB=7+Σ(親水基の基数)+Σ(親油基の基数)・・・・(計算式(1))」(特許文献1)や、「蒸解されたパルプ原料に含まれるリグニン成分を酸素を用いて分解した後に、前記パルプ原料を洗浄するのに用いられる洗浄剤であって、
下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物から選択される少なくとも1種からなる非イオン性界面活性剤であって、前記パルプ原料の洗浄における洗浄温度よりも曇点が低い非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とするクラフトパルプ用洗浄剤。
O−(PO)n−[(EO)m・(PO)k]H ・・・ 一般式(1)
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数10〜20の直鎖又は分岐のアルキル基及びアルケニル基のいずれかを表す。n、m、及びkは、平均付加モル数を表し、nは、0〜10を表し、m及びkの和は、1〜100である。EO、及びPOは、それぞれ、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位を表し、[(EO)m・(PO)k]におけるEO及びPOの付加形態は、ランダム及びブロックのいずれであってもよい。
−CO−(AO)y−OR ・・・ 一般式(2)
ただし、前記一般式(2)中、Rは、炭素数10〜20の直鎖のアルキル基、及びアルケニル基のいずれかを表す。AOは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシブチレン基から選択される少なくとも1種のオキシアルキレン基を表す。yは、1〜10を表す。Rは、メチル基である。
【化1】
ただし、前記一般式(3)中、Rは、炭素数10〜20のアルキル基を表す。EOは、エチレンオキサイド基を表す。x及びzは、いずれもエチレンオキサイドの付加モル数を表し、x及びzの和は、2〜10である。」(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−26713号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/093615号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年さらに高品質なパルプが求められており、従来のクラフトパルプ用洗浄剤ではパルプ繊維表面に付着する汚れを十分に除去できないという問題がある。
本発明の目的は、パルプ原料に付着した汚れを効率よく洗浄できるパルプ用洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のパルプ用洗浄剤の特徴は、HLB(小田法)8〜18且つ曇点(1重量%水溶液)56〜95をもつポリオキシアルキレン化合物(A)を含有するパルプ用洗浄剤であって、ポリオキシアルキレン化合物が一般式(1)で表される化合物(A1)又は一般式(2)で表される化合物(A2)であることを要旨とする。
【0006】
本発明のパルプの製造方法の特徴は、上記のパルプ洗浄剤の存在下でパルプ原料を洗浄又は漂白する工程を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパルプ洗浄剤は、パルプ原料に付着した汚れを効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0008】
本発明のパルプの製造方法によると、上記のパルプ洗浄剤の存在下で洗浄又は漂白するので、パルプ原料に付着した汚れを効率良く洗浄(すなわち除去)できる。したがって、本発明のパルプの製造方法によると、パルプの品質を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ポリオキシアルキレン化合物(A)のHLB(小田法)は、8〜18が好ましく、さらに好ましくは9〜16、特に好ましくは10〜14である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れを効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0010】
HLBとは、有機性と無機性のバランスを示し、Hydrophile−Lipophile Balanceの略であって、小田法による数値、すなわち、有機性を示す数値と無機性を示す数値とを合計することによって計算される(小田、寺村著「界面活性剤の合成と其応用」501頁、槇書店1957年発行)。
【0011】
ポリオキシアルキレン化合物(A)の曇点(1重量%水溶液)は、56〜95℃が好ましく、さらに好ましくは60〜95℃である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れを効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0012】
曇点は、親水性の尺度となる物性値の一つであり、曇点が高いほど親水性が大きいことを意味し、以下のようにして測定される値である。
【0013】
イオン交換水(30〜40℃)99g及びポリオキシアルキレン化合物(A)1gを均一溶解させて測定液を調製し、この測定液約5ccをガラス製の試験管に採り、温度計を測定液に入れて攪拌しながら、徐々に昇温させて測定液が白濁した温度を読みとり、これを曇点とする。
【0014】
炭素数8〜22のアルキル基又は炭素数8〜22のアルケニル基(R)のうち、炭素数8〜22のアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基等が使用できる。
【0015】
直鎖アルキル基としては、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、イコシル、ヘニコシル及びドコシル等が挙げられる。
【0016】
分岐鎖アルキル基としては、イソデシル、イソトリデシル、イソテトラデシル、イソオクタデシル、2−エチルへキシル、2−プロピルへプチル、2−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルドデシル、3,5,5−トリメチルへキシル及び3,7,11−トリメチルドデシル等が挙げられる。
【0017】
また、Rのうち、炭素数8〜22のアルケニル基としては、直鎖アルケニル基及び分岐アルケニル基等が使用できる。
【0018】
直鎖アルケニル基としては、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデゼニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘンイコセニル及びドコセニル等が挙げられる。
【0019】
分岐鎖アルケニル基としては、イソトリデセニル及びイソオクタデセニル等が挙げられる。
【0020】
これらのうち、アルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数10〜18のアルキル基である。
【0021】
aは、1〜30の整数が好ましく、さらに好ましくは1〜25の整数である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0022】
bは、0〜7の整数が好ましく、さらに好ましくは0〜5の整数である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0023】
cは、0〜20の整数が好ましく、さらに好ましくは0〜15の整数である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0024】
dは、1〜20の整数が好ましく、さらに好ましくは3〜15の整数である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0025】
eは、1〜8の整数が好ましく、さらに好ましくは1〜5の整数である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0026】
fは、0〜5の整数が好ましく、さらに好ましくは0〜3の整数である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0027】
gは、0〜15の整数が好ましく、さらに好ましくは0〜10の整数である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0028】
一般式(1)で表される化合物(A1)及び一般式(2)で表される化合物(A2)において、Rの炭素数(h)とオキシエチレン基の数(i)との比(i/h)は、0.5〜3が好ましく、さらに好ましくは0.7〜2.5である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0029】
一般式(1)において、Rの炭素数が大きくなる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点が小さくなる傾向があり、aの値が小さくなる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点が小さくなる傾向があり、cの値が小さくなる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点が小さくなる傾向があり、bの値が大きくなる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点が小さくなる傾向がある。一方、上記の逆になる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点を大きくなる傾向がある。そして、上記の好ましい範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0030】
一般式(1)で表される化合物(A1)として{カッコ内の数字は順にHLB、曇点、比(i/h)を表す。}、イソデシルアルコールのエチレンオキシド7モル付加体(13、60℃、0.7)、イソデシルアルコールのエチレンオキシド10モル−プロピレンオキシド2モル−エチレンオキシド2モルブロック付加体(13、62℃、1.2)、イソデシルアルコールのエチレンオキシド25モル−プロピレンオキシド5モルブロック付加体(14、75℃、2.5)、デシルアルコールのエチレンオキシド1モル−プロピレンオキシド3モル−エチレンオキシド7モルブロック付加体(10、75℃、0.8)、ドデシルアルコールのエチレンオキシド10モル−プロピレンオキシド3モル−エチレンオキシド1モルブロック付加体(11、60℃、0.9)、ドデシルアルコールのエチレンオキシド10モル付加体(12、80℃、0.8)、トリデシルアルコールのエチレンオキシド12モル付加体(12、70℃、1.2)、トリデシルアルコールのエチレンオキシド10モル−プロピレンオキシド2モル−エチレンオキシド2モルブロック付加体(11、61℃、1.2)、テトラデシルアルコールのエチレンオキシド2モル−プロピレンオキシド2モル−エチレンオキシド8モルブロック付加体(10、60℃、0.7)、テトラデシルアルコールのエチレンオキシド2モル−プロピレンオキシド3モル−エチレンオキシド15モルブロック付加体(13、95℃、1.2)、ヘキサデシルアルコールのエチレンオキシド14モル付加体(12、91℃、0.9)及びオクタデシルアルコールのエチレンオキシド16モル付加体(12、71℃、0.9)等が好ましく例示できる。
【0031】
一般式(2)において、Rの炭素数が大きくなる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点が小さくなる傾向があり、dの値が小さくなる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点が小さくなる傾向があり、eの値が大きくなる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点が小さくなる傾向があり、fの値が大きくなる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点が小さくなる傾向があり、gの値が小さくなる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点が小さくなる傾向がある。一方、上記の逆になる程、ポリアルキレン化合物(A)のHLB及び曇点を大きくなる傾向がある。そして、上記の好ましい範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)できる。
【0032】
一般式(2)で表される化合物(A2)として(カッコ内の数字は順にHLB、曇点を表す。「/」及び「−」はそれぞれランダム状及びブロック状を意味する。)、1−デカノールのエチレンオキシド11モル/プロピレンオキシド2モルランダム付加体(12、81℃、1.1)、イソデシルアルコールのエチレンオキシド15モル/プロピレンオキシド5モル−プロピレンオキシド1モル−エチレンオキシド10モルランダム及びブロック付加体(14、75℃、2.5)、ドデシルアルコールのエチレンオキシド4モル/プロピレンオキシド2モル−プロピレンオキシド1モル−エチレンオキシド5モルランダム及びブロック付加体(10、61℃、0.8)、トリデシルアルコールのエチレンオキシド8モル/プロピレンオキシド1モル−プロピレンオキシド2モル−エチレンオキシド5モルランダム及びブロック付加体(12、81℃、1)、トリデシルアルコールのエチレンオキシド9モル/プロピレンオキシド3モル−プロピレンオキシド1モル−エチレンオキシド7モルランダム及びブロック付加体(12、80℃、1.2)、テトラデシルアルコールのエチレンオキシド5モル/プロピレンオキシド2モル−エチレンオキシド10モルランダム及びブロック付加体(12、95℃、1.1)、テトラデシルアルコールのエチレンオキシド3モル/プロピレンオキシド2モル−エチレンオキシド9モルランダム及びブロック付加体(11、80℃、0.9)、ヘキサデシルアルコールのエチレンオキシド10モル/プロピレンオキシド2モル−プロピレンオキシド1モル−エチレンオキシド5モルランダム及びブロック付加体(11、65℃、0.9)、オクタデシルアルコールのエチレンオキシド15モル/プロピレンオキシド5モル−プロピレンオキシド3モル−エチレンオキシド6モルランダム及びブロック付加体(10、60℃、1.2)等が好ましく例示できる。
【0033】
ポリオキシアルキレン化合物(A)は公知の方法(特開2003−268291号公報、特開平9−117607号公報等)等により容易に製造できる。
【0034】
本発明のパルプ用洗浄剤は、溶媒(C)や他の添加剤(D)を含有してもよい。
【0035】
溶媒(C)としては、水又は水と親水性有機溶剤との混合溶媒等が含まれる。親水性有機溶剤としては、炭素数4〜8のエステル{酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等}、炭素数4〜8のエーテル{エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等}、炭素数3〜8のケトン{アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等}、炭素数1〜8のアルコール{メタノール、エタノール、n−又はi−プロパノール、n−、i−又はt−ブタノール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコール等}、及び炭素数5〜8の複素環式化合物{N−メチルピロリドン等}等が挙げられる。
【0036】
他の添加剤(D)としては、公知の添加剤{分散剤、増粘剤、消泡剤、流動性改良剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消臭剤、香料、染料及び/又は防腐剤等}等が挙げられる。
【0037】
本発明のパルプ用洗剤に溶剤(C)及び/又は他の添加剤(D)を含む場合、ポリオキシアルキレン化合物(A)とこれらとを均一混合することにより得られる。
【0038】
本発明のパルプ洗浄剤は、パルプ原料に付着したリグノセルロース物質由来の汚れ{リグニンや金属イオン(カルシウムイオン、鉄イオン等)}の洗浄(すなわち除去)に適している。
【0039】
パルプ原料とは、リグノセルロース物質{木材(針葉樹及び広葉樹等)、非木材(草木類;ケナフ、バガス及びバンブーフ等)}から化学処理又は機械処理によって得られるセルロース及びリグノセルロース物質由来の汚れを含む混合体であり、パルプ原料を洗浄又は漂白することにより、セルロースやパルプが得られる。
【0040】
本発明のパルプの製造方法は、上記のパルプ用洗浄剤の存在下でパルプ原料を洗浄又は漂白する工程を含めば特に制限なく、公知の工程を組み合わせることができる。漂白及び洗浄の温度や時間等は公知の範囲が適用できる。
【0041】
パルプ洗浄剤の使用量(重量部)は、特に限定されるものではなく汚れの程度(種類や量)等によって適宜決定できるが、処理液(漂白工程の場合、漂白液;洗浄工程の場合、洗浄液)100重量部に対して、0.0001〜2が好ましく、さらに好ましくは0.001〜1である。この範囲であると、パルプ原料に付着した汚れをさらに効率よく洗浄(すなわち除去)でき、パルプ品質を大幅に向上できる。
【実施例】
【0042】
部及び%は特に断りのない限りそれぞれ重量部及び重量%を意味し、「/」及び「−」はそれぞれランダム状及びブロック状を意味する。
<実施例1>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製した1−ペンタデカノールのエチレンオキシド2モル−プロピレンオキシド3モル−エチレンオキシド15モルブロック付加体(HLB13、曇点95℃、比(i/h)1.1)を本発明のパルプ洗浄剤(1)とした。
【0043】
<実施例2>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製した1−デカノールのエチレンオキシド1モル−プロピレンオキシド3モル−エチレンオキシド7モルブロック付加体(HLB10、曇点75℃、比(i/h)0.8)を本発明のパルプ洗浄剤(2)とした。
【0044】
<実施例3>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製したオクタデシルアルコールのエチレンオキシド13モル付加体(HLB11、曇点82℃、比(i/h)0.7)を本発明のパルプ洗浄剤(3)とした。
【0045】
<実施例4>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製した1−テトラデカノールのエチレンオキシド2モル−プロピレンオキシド2モル−エチレンオキシド8モルブロック付加体(HLB10、曇点60℃、比(i/h)0.7)を本発明のパルプ洗浄剤(4)とした。
【0046】
<実施例5>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製したイソデシルアルコールのエチレンオキシド25モル−プロピレンオキシド5モルブロック付加体(HLB14、曇点75℃、比(i/h)2.5)を本発明のパルプ洗浄剤(5)とした。
【0047】
<実施例6>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製したドデシルアルコールのエチレンオキシド3モル/プロピレンオキシド1モル−プロピレンオキシド1モル−エチレンオキシド6モルランダム及びブロック付加体(HLB11、曇点60℃、比(i/h)0.8)を本発明のパルプ洗浄剤(6)とした。
【0048】
<実施例7>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製したトリデシルアルコールのエチレンオキシド8モル/プロピレンオキシド4モル−プロピレンオキシド3モル−エチレンオキシド10モルランダム及びブロック付加体(HLB11、曇点74℃、比(i/h)1.4)を本発明のパルプ洗浄剤(7)とした。
【0049】
<実施例8>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製したデシルアルコールのエチレンオキシド15モル/プロピレンオキシド3モル−プロピレンオキシド1モル−エチレンオキシド10モルランダム及びブロック付加体(HLB12、曇点85℃、比(i/h)2.5)を本発明のパルプ洗浄剤(8)とした。
【0050】
<実施例9>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製したオクタデシルアルコールのエチレンオキシド13モル/プロピレンオキシド4モルランダム付加体(HLB10、曇点65℃、比(i/h)0.7)を本発明のパルプ洗浄剤(9)とした。
【0051】
<実施例10>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製した1−ペンタデカノールのエチレンオキシド15モル/プロピレンオキシド3モル−エチレンオキシド2モルランダム及びブロック付加体(HLB13、曇点95℃、比(i/h)1.1)を本発明のパルプ洗浄剤(10)とした。
【0052】
<実施例11>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製したイソデシルアルコールのエチレンオキシド15モル/プロピレンオキシド5モル−プロピレンオキシド1モル−エチレンオキシド10モルランダム及びブロック付加体(HLB14、曇点75℃、比(i/h)2.5)を本発明のパルプ洗浄剤(11)とした。
【0053】
<比較例1>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製したヘキサデシルアルコールのエチレンオキシド2モル付加体(特許文献2に記載された実施例1の洗浄剤の同等品;HLB4、曇点25℃以下、比(i/h)0.1)を比較用のパルプ洗浄剤(H1)とした。
【0054】
<比較例2>
公知のアルキレンオキシド付加反応により調製したオクタデシルアルコールのプロピレンオキシド13モル−エチレンオキシド3モル−プロピレンオキシド23モルブロック付加体(特許文献1に記載された実施例1の洗浄剤の同等品;HLB4、曇点25℃以下、比(i/h)0.2)を比較用のパルプ洗浄剤(H2)とした。
【0055】
<パルプ洗浄性評価>
評価試料(パルプ洗浄剤)0.5g及び国内製紙メーカーのパルプスラリー(濃度3.5%)1000gを50℃で1時間撹拌洗浄してから、金網(目開き75μm)でパルプを濾別し、濾別したパルプに50℃の温水1000mlを注ぐことによって洗浄した後、減圧濾過により脱水してから120℃、2時間乾燥させて乾燥評価パルプを調製した。ついで、乾燥評価パルプ30g及びヘキサン300gを25℃で3時間撹拌抽出し、ヘキサンを濾別した後、濾別したヘキサンをロータリーエバポレータで留去し、残渣(ヘキサン抽出物)の重量(x)を測定した。以上の操作を5回繰り返し、これらの平均値をパルプ原料に付着した残存汚れとして表1に示した。
また、評価試料(パルプ洗浄剤)0.5gを水0.5gに変更したこと以外、上記と同様にしてブランク評価し、表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、本発明のパルプ用洗浄剤を用いると、比較用の洗浄剤に比べてパルプ原料に付着した汚れを効率よく洗浄(すなわち除去)できた。