【課題】パッキンが装着された凹溝をスプールのランド部に備えたスプール式切換弁において、凹溝の溝底面とパッキンの内周面との間に圧縮流体が流入するのを、該凹溝の構造の改良によって可及的に抑制する。
【解決手段】パッキン13が装着された凹溝50をスプール20のランド部22に備えたスプール式切換弁1において、凹溝の溝底面51を、溝底面の軸L方向長さの半分かそれよりも大きい軸方向長さで上流側端54側から下流側端55側に向けて連続的に縮径する傾斜面52によって形成し、パッキンの内周面14を、傾斜面の上流側端側の端部52aを規定する圧接点Sにおいて、溝底面に対し応力集中を伴って圧接させ、前記傾斜面が前記軸と成す角度をαとしたとき、溝底面における前記圧接点と前記上流側端との間を結ぶ連結面53が前記軸と成す角度θを、0°≦θ≦αの範囲とした。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係るスプール式切換弁1は、軸L方向に延びるスプール孔7と、該スプール孔7に接続された給気流路8、出力流路及9,10及び排気流路11,12と、該スプール孔7内に軸L方向に摺動自在に挿入された主弁としてのスプール20と、前記スプール20を動作させるための弁駆動部5とを有している。そして、該弁駆動部5によってスプール20をスプール孔7内で変位させることにより、前記出力流路9,10と、前記給気流路8及び排気流路11,12との接続状態を選択的に切り換えることができるようになっている。ここで、前記給気流路8は、図示しない流体圧源(例えばコンプレッサ)からの圧縮空気等の圧縮流体をスプール孔7へと供給するためのものであり、前記出力流路9,10は、そのスプール孔7に供給された圧縮流体を、該圧縮流体で駆動される流体圧アクチュエータ(例えば空気圧シリンダ)等の各種流体圧機器(図示略)に対して出力するためのものであり、前記排気流路11,12は、該流体圧機器からの排気を大気等の外部に対して排出するためのものである。
【0016】
具体的には、
図1−
図4に示すように、前記スプール式切換弁1は、電磁弁(電磁パイロット式切換弁)であって、前記スプール孔7、給気流路8,出力流路9,10、排気流路11、12、及びスプール20を備えた弁本体部2と、軸L方向において該弁本体部2の両側端面に連結された第1アダプタ部3及び第2アダプタ部4と、前記第1アダプタ部3における前記弁本体部2とは反対側の側端面に連結された前記弁駆動部5としての電磁式パイロット弁部とから構成されている。
【0017】
前記弁本体部2は、樹脂や金属によって略直方体に一体成型されたハウジング6を有しており、前記スプール孔7が、該ハウジング6の長手方向に沿ってその両側端面間を貫通している。該ハウジング6の平面(上面)には、前記出力流路9,10を形成する出力ポートA,Bが開設されていて、これら出力ポートA,Bに対して前記流体圧機器への配管を接続することができるようになっている。一方、その平面と背向する底面(下面)には、前記流体圧源からの流路(又は配管)を接続するためのポートであって、前記給気流路8を形成する給気ポートPと、前記流体圧機器から出力ポートA,Bを通じて戻された排気を外部に排出する流路(又は配管)を接続するためのポートであって、前記排気流路11,12を形成する排気ポートEA,EBとが開設されている。
【0018】
ここで、前記出力ポートA,Bは、該出力ポートA.Bよりも流路断面積が小さい出力連通路9a,10aを通じて前記スプール孔7に接続されており、これら出力ポートA,Bと出力連通路9a,10aとによって前記出力流路9,10が形成されている。また、前記給気ポートPは、該給気ポートPよりも流路断面積が小さい給気連通路8aを通じて前記スプール孔7に接続されており、これら給気ポートPと給気連通路8aとによって前記給気流路8が形成されている。さらに、前記排気ポートEA,EBは、該排気ポートEA,EBよりも流路断面積が小さい排気連通路11a,12aを通じて前記スプール孔7に連通されており、これら排気ポートEA,EBと排気連通路11a,12aとによって前記排気流路11,12が形成されている。
【0019】
より具体的に説明すると、前記スプール式切換弁1は、ハウジング6の底面の中央に配された1つの給気ポートPと、該ハウジング6の底面の長手方向において、前記給気ポートPの両側に隣接して配された第1排気ポートEA及び第2排気ポートEBと、前記ハウジング6の平面に長手方向に沿って並設された第1出力ポートA及び第2出力ポートBとの5つのポートを備えている。そして、前記電磁式パイロット弁部(弁駆動部)5をOFF又はONすることによって、前記スプール20を、給気ポートPが第2出力ポートBに連通されると同時に第1出力ポートAが第1排気ポートEAに連通される第1切換位置(
図1参照)と、給気ポートPが第1出力ポートAに連通されると同時に第2出力ポートBが第2排気ポートEBに連通される第2切換位置(
図2参照)との2つの切換位置に対して、選択的に移動させることができるようになっている。
【0020】
前記スプール孔7の内面は、軸L方向において、前記第1アダプタ部3が取り付けられた一方の側端面の開口部から、前記第2アダプタ部4が取り付けられた他方の側端面の開口部まで、第1支持面7a、第1流路溝70、第1弁座面71、第2流路溝72、第2弁座面73、第3流路溝74、第3弁座面75、第4流路溝76、第4弁座面77、第5流路溝78、及び第2支持面7bを順次設けることによって形成されており、これらは何れも軸Lを中心とした環状に形成されている。すなわち、前記スプール孔7の内面には、これら環状の弁座面(弁座部)とリセス溝としての環状の流路溝(大径部)とが軸Lに沿って交互に隣接するように形成されている。
【0021】
このとき、前記第1及び第2支持面7a,7b並びに第1〜第4弁座面71,73,75,77の内径D0は互いに等しく形成されていて、前記第1、第3及び第5流路溝70,74,78の溝底面の内径D1は互いに等しく形成されており、前記第2及び第4流路溝72,76の溝底面の内径D2は互いに等しく形成されている。前記内径D1は内径D2よりも若干大きく形成されており、これら溝底面の内径D1,D2は、ハウジング6の幅寸法よりも小さい範囲において、前記弁座面等の内径D0よりも大きく形成されている。また、前記第1流路溝70における第1弁座面71と接続する開口縁、第3流路溝74における第2及び第3弁座面73,75と接続する両開口縁、並びに、第5流路溝78における第4弁座面77と接続する開口縁には、
図3及び
図4に示すように、これら流路溝の溝幅を開口側(径方向内方)に向けて拡開させるテーパ部Tが形成されている。
【0022】
前記スプール孔7の内面から成る第1支持面7a及び第2支持面7bによって、前記スプール20の一端部(第1被押圧部20a)及び他端部(第2被押圧部20b)が気密かつ摺動自在に支持されている。また、前記第1流路溝70の溝底面に前記第1排気流路11の連通路11aが接続され、前記第2流路溝72の溝底面に前記第1出力流路9の連通路9aが接続され、前記第3流路溝74の溝底面に前記給気流路8の連通路8aが接続され、前記第4流路溝76の溝底面に前記第2出力流路10の連通路10aが接続され、前記第5流路溝78の溝底面に前記第2排気流路12の連通路12aが接続されている。図中の符号79は、図示しないパイロット流路を通じてパイロット流体を、前記弁駆動部5を通じて第1アダプタ部3に供給したり、前記第2アダプタ部4に供給したりするためのパイロット流体供給孔であって、前記給気流路8に対して常時連通されている。
【0023】
一方、前記スプール20は、軸L方向において、前記第1アダプタ部3側の一端から、前記第2アダプタ部4側の他端まで、前記第1支持面7aに気密かつ摺動自在に嵌合された第1被押圧部20a、第1環状凹部21、第1ランド部22、第2環状凹部23、第2ランド部24、第3環状凹部25、第3ランド部26、第4環状凹部27、第4ランド部28、第5環状凹部29、及び、前記第2支持面7bに気密かつ摺動自在に嵌合された第2被押圧部20bが順次設けられることにより形成されており、これらは何れも軸Lを中心とした環状に形成されている。すなわち、前記スプール20には、これら環状凹部(小径部)と、弁部としてのランド部とが軸Lに沿って交互に形成されている。
【0024】
このとき、前記各ランド部22,24,26,28の外形は、径方向Yにおいて、隣接する前記環状凹部に連結された両基端から、外周端から成る環状の摺動部(摺動面)に至るまで徐々に軸L方向の幅が狭くなる略等脚台形状に形成されており、径方向の中心軸に関して軸L方向に左右対称を成している。そして、
図3,4及び
図6,7に示すように、これらランド部22,24,26,28の前記摺動面には、溝底面51が傾斜面52によって形成されて径方向Yに開口する環状の凹溝50が開設されており、これらランド部22,24,26,28の凹溝50内には、
図5に示す環状のパッキン13がそれぞれ収容されている。ただし、第1及び第2ランド部22,24と第3及び第4ランド部26,28とでは、そこを通る圧縮流体の流れが逆方向となる(すなわち、左右対称となる)ため、第1及び第2ランド部22,24の凹溝50と第3及び第4ランド部26,28の凹溝50とでは、溝底面51の傾斜方向も互いに逆向きとなっている。
【0025】
そうすることにより、前記ランド部がスプール孔7の弁座部に摺動自在に嵌合されて(すなわち、弁座面の位置に配されて)、その外周端の摺動部(摺動面)が該弁座面と対峙したときに、該ランド部の摺動部とスプール孔7の弁座面との間に形成された空隙が前記パッキン13でシールされて、その空隙を通じて圧縮流体が漏出するのを可及的に抑制又は防止することができるようになっている。
すなわち、本実施形態において、該パッキン13等のシール部材が無装着の状態において、前記第1及び第2被押圧部20a,20b並びに第1〜第4ランド部22,24,26,28の外径(摺動部の外径)D3は互いに等しく形成されていて、前記第1〜第5環状凹部21,23,25,27,29の外径(小径部の外径)D4は互いに等しく形成されており、前記ランド部の外径D3は、前記弁座面等の内径D0よりも若干小さく、かつ前記環状凹部の外径D4よりも大きく形成されている。
【0026】
前記第1アダプタ部3は、前記スプール孔7よりも大径に形成されて前記弁本体部2側に開口する第1シリンダ孔30と、該シリンダ孔30に気密かつ軸L方向に摺動自在に嵌合された第1ピストン31とを軸L上に有している。すなわち、該シリンダ孔30は、該ピストン31によって、該ピストン31よりも弁駆動部5側の第1室30aと、弁本体部2側の第2室30bとに気密に区画されている。また、前記第1ピストン31は、その弁本体部2側に、前記スプール20と同軸に配された第1押圧部31aを一体に有している。該第1押圧部31aは、前記スプール孔7の第1支持面7aよりも小径に形成されていて、前記スプール20の第1被押圧部20aの端面に当接している。そして、前記第1室30aは弁駆動部5のパイロット弁に接続されていて、前記第2室30bは大気に常時開放されている。なお、
図1中の符号32は、外部から手動操作により押し込んで、前記第1室30a内に充填された圧縮流体を排気するためのマニュアル操作部である。
【0027】
一方、前記第2アダプタ部4は、前記スプール孔7よりも大径かつ前記第1シリンダ孔30よりも小径に形成されて前記弁本体部2側に開口する第2シリンダ孔40と、該シリンダ孔40に気密かつ軸L方向に摺動自在に嵌合された第2ピストン41とを軸L上に有している。すなわち、該シリンダ孔40は、該ピストン41によって、該ピストン41よりも弁本体部2側の第1室40aと、それと反対側の第2室40bとに気密に区画されている。また、前記第1ピストン31の径が第2ピストン41の径よりも大きく形成されていて、該第1ピストン31の第1室30a側における受圧面積が、第2ピストン41の第2室40b側における受圧面積よりも大きくなっている。
【0028】
前記第2ピストン41は、その弁本体部2側に、前記スプール20と同軸に配された第2押圧部41aを一体に有している。該第2押圧部41aは、前記スプール孔7の第2支持面7bよりも小径に形成されていて、前記スプール20の第2被押圧部20bの端面に当接している。また、前記第2シリンダ孔40の第1室40aは、前記スプール20の中心を軸L方向に貫通する貫通孔20cを通じて、前記第1シリンダ孔30の第2室30bに連通されており、大気に常時開放されている。一方、前記第2室40bは、前記パイロット流体供給孔79に常時連通されていて、パイロット流体によって常時加圧されている。そのため、前記スプール20は、軸L方向において、前記第2ピストン41により前記第1アダプタ3部側(すなわち、第1ピストン側)に向けて常時付勢されている。
【0029】
なお、前記スプール孔7の各支持面、各流路溝及び各弁座面、前記スプール20の各被押圧部、各ランド部及び各環状凹部、並びに、前記各シリンダ孔30,40及び各ピストン31,41は、軸Lと直交する横断面において、円形のみならず、楕円形又はトラック形状を成していても良い。そこで、本願においては、便宜上、このように軸L周りに環状に周設されたものについて、軸Lを直角に横切る弦を一律に「径」といい、軸Lから外周までの距離を一律に「半径」ということとする。
【0030】
続いて、
図1−
図4に基づいて、前記スプール式切換弁1の動作を説明する。まず、
図1に示すように、弁駆動部5を構成する電磁式パイロット弁がOFFの状態においては、第1シリンダ孔30の第1室30aが大気に開放されている。そのため、前記第2ピストン41が、その押圧力により、前記スプール20と共に第1ピストン31を該第1室30a側のストローク端へと移動させ、その結果、該スプール20が前記第1切換位置に切り換えられた状態となる。そのとき、軸L方向において、前記スプール20の第1ランド部22は前記スプール孔7の第1流路溝70の位置に配され、第2ランド部24は第2弁座面73の位置に配され、第3ランド部26は第3流路溝74の位置に配され、第4ランド部28は第4弁座面77の位置に配されている。
【0031】
すなわち、スプール孔7内において、前記第1出力流路9と給気流路8との連通が、前記第2ランド部24によって遮断されると共に、前記第2出力流路10と第2排気流路12との連通が、前記第4ランド部28によって遮断されている。そして、このようなスプール孔7とスプール20との位置関係により、前記第1出力流路9と第1排気流路11とがスプール孔7を通じて相互に連通されると共に、前記第2出力流路10と給気流路8とが同じくスプール孔7を通じて相互に連通されている。なお、このとき前記第2排気流路12は、前記スプール孔7内において閉塞されている。
【0032】
一方、
図2に示すように、弁駆動部5を構成する電磁式パイロット弁がONの状態においては、第1シリンダ孔30の第1室30aに対し該弁駆動部5を通じてパイロット流体が供給される。そのため、前記第1ピストン31が、その押圧力により、スプール20と共に第2ピストン41を、該第2ピストン41の押圧力に抗して第2シリンダ孔40の第2室40b側のストローク端へと移動させ、その結果、該スプール20が前記第2切換位置に切り換えられた状態となる。そのとき、軸L方向において、前記スプール20の第1ランド部22は前記スプール孔7の第1弁座面71の位置に配され、第2ランド部24は第3流路溝74の位置に配され、第3ランド部26は第3弁座面75の位置に配され、第4ランド部28は第5流路溝78の位置に配されている。
【0033】
すなわち、スプール孔7内において、前記第1出力流路9と第1排気流路11との連通が、前記第1ランド部22によって遮断されると共に、前記第2出力流路10と給気流路8との連通が、前記第3ランド部26によって遮断されている。そして、このようなスプール孔7とスプール20との位置関係により、前記第1出力流路9と給気流路8とがスプール孔7を通じて相互に連通されると共に、前記第2出力流路10と第2排気流路12とが同じくスプール孔7を通じて相互に連通されている。なお、このとき前記第1排気流路11は、前記スプール孔7内において閉塞されている。
【0034】
次に、
図3−
図13を用いて、前記スプール式切換弁1における環状の凹溝50に対するパッキン13の取付構造及びその作用効果について具体的に説明する。なお、本実施形態においては、前記弁本体部2の構造は軸L方向の中央に関して実質的に左右対称に形成されていて、前記各流路(ポート)間における圧縮流体の流れも実質的に左右対称となっている。そこで、重複記載を避けるため、ここでは、主に、前記スプール20の変位に伴う第1出力流路9から第1排気流路11への圧縮流体の流れや、給気流路8から第1出力流路9への圧縮流体の流れに関連して、前記凹溝50に対するパッキン13の取付構造及びその作用効果について説明することとする。
【0035】
図5に示すように、本実施形態において、前記環状のパッキン13は、軸L周りの内周面14と、該内周面の軸L方向(幅方向)両端に一端が連結されて、軸Lと直交する径方向Yに延びる一対の側面15a,15bと、これら一対の側面15a,15bの他端同士を互いに連結する外周面(シール面)16とを有している。そして、前記ランド部の凹溝50に装着されていない状態の該パッキン13は、その横断面において、前記内周面14の中央を通って径方向Yに延びる中心軸に関して左右対称で、且つ、内周側から外周側に向けて軸L方向の幅が徐々に小さくなる先細り形状(楔形状)に形成されている。
【0036】
具体的に説明すると、前記内周面14は、軸L周りに径D5の環状に形成されていると共に、該軸Lに沿って平坦(すなわち、横断面において直線状)に延びており、前記一対の側面15a,15bは、内径側から外径側にいくにしたがって前記中心軸に近接する方向に傾く平坦な(すなわち、横断面において直線状の)傾斜面に形成されて、互いに背向しており、前記外周面から成るシール面16は、径方向Yに対して凸の湾曲面、好ましくは円弧面に形成されている。また、横断面において、パッキン13の最大幅Wpは、その高さHpよりも小さく形成されている。なお、前記パッキン13の材料としては、シール機能を発揮するゴム弾性材であれば特に限定されるものではないが、例えばニトリルゴムやフッ素ゴム等を用いることができる。
【0037】
以下、このようなパッキン13を、第1ランド部22に形成した従来の凹溝50Aに装着した例と、該ランド部22に形成した本実施形態に係る凹溝50に装着した例とに基づいて、本実施形態に係るスプール式切換弁1におけるパッキン13の取付構造についてより具体的に説明する。
【0038】
上述したように、スプール孔7の内面における、この第1ランド部22が接離する第1弁座面71を挟んだ軸L方向の両側部分(第1流路溝70及び第2流路溝72)には、前記第1排気流路11及び第1出力流路9が接続されている。そして、スプール20が前記第1切換位置に在る状態においては、
図3に示すように、前記ランド部22は前記排気流路11と出力流路9とを連通させる「開放位置(軸L方向における流路溝70の範囲)」に在り、スプール20が前記第2切換位置に在る状態においては、
図4に示すように、前記ランド部22は前記排気流路11と出力流路9との連通を遮断する「閉鎖位置(軸L方向における弁座面71の範囲)」に在る。すなわち、この第1ランド部22に関して、スプール孔7に圧縮流体を流入させる前記出力流路9は、軸L方向において圧縮流体の流れの「上流側」に接続された流路となっており、スプール孔7から圧縮流体を排出させる前記排気流路11は、軸L方向において圧縮流体の流れの「下流側」に接続された流路となっている。
【0039】
図13は、前記第1ランド部22に形成された従来の一般的な凹溝50Aに対して前記パッキン13を装着した状態を示しており、この従来の凹溝50Aは、軸L周りに環状に形成されて該軸Lに沿って平坦(すなわち、横断面において直線状)に延びる溝底面51Aと、該溝底面51Aの軸L方向の両端54,55から径方向Yに立設されて互いに対向する一対の側壁面56,57とによって形成されている。そして、前記ランド部22の外周面から成る摺動部(摺動面)22aと、互いに平行な平面に形成された一対の側壁面56,57とは、互いに直角に交わっていて、それにより、該ランド部22の外周面に前記凹溝50Aの開口が形成されている。すなわち、前記凹溝50Aは、横断面において、前記溝底面51Aの中央を通って径方向Yに延びる中心軸に関して左右対称で、軸L方向の溝幅がWgの矩形状に形成されている。
【0040】
ここで、
図13において、軸L方向の圧縮流体の流れを見たとき、軸L方向右側が、圧縮流体がスプール孔7に流入する流路(第1出力流路9)が配された上流側となり、軸L方向左側が、該圧縮流体がスプール孔7から排出される流路(第1排気流路11)が配された下流側となっている。したがって、第1ランド部22の凹溝50Aにおいては、前記溝底面51Aの軸L方向両端のうち、図中右側の端が上流側端54となり、図中左側の端が下流側端55となっている。そして、一対の側壁面56,57のうち、図中右側に配された側壁面が上流側側壁面56となり、図中左側に配された側壁面が下流側側壁面57となっている。前記パッキン13においては、前記一対の側面15a,15bのうち、図中右側に配された側面が上流側側面15aとなり、図中左側に配された側面が下流側側面15bとなっている。
【0041】
また、前記凹溝50Aの溝底面51Aの直径Dgは、該凹溝50Aに装着されていない状態における前記パッキン13のオリジナルの内径(内周面14の直径)D5よりも大きく形成されている。すなわち、パッキン13の内周面14の周方向長さが、前記溝底面51Aの周方向長さよりも短く形成されている。そのため、パッキン13が凹溝50Aに装着された状態においては、ゴム弾性材から成る該パッキン13が周方向に伸長されて、その内周面14が前記溝底面51Aに弾性的に圧接されている。そして、このように前記パッキン13が凹溝50Aに装着された状態では、該パッキン13の外径Dpが、前記ランド部22の摺動面22aの外径D3よりも大きく、前記弁座面71の内径D0と同じかそれよりも大きくなっている。したがって、該パッキン13のシール面16は、前記ランド部22の摺動面22aから径方向Yに突出していると共に、該ランド部22が前記閉鎖位置に在るときに、前記スプール孔7の弁座面71に対して摺動自在に当接されている。さらに、該凹溝50Aの幅Wgはパッキンのオリジナルの幅Wp(
図5参照)よりも大きくなっている。
【0042】
図13(a)−(c)において、パッキン13の横断面内に示された曲線は、パッキン13の内部応力(内部圧縮応力)の状態を示す等応力線であり、ドットを付した領域(以下、「ドット領域」という。)は、各図で内部応力が最も小さい領域(引張り応力を含む)を示していて、このドット領域の応力範囲は各図間で共通している。また、ドットを付していない領域(以下、「非ドット領域」という。)において、隣接する等応力線間の応力幅は等しくなっている。したがって、隣接する等応力線の距離間隔が狭くなる程、内部応力の増加率がより大きくなっている。そして、前記ドット領域を起点として、互いに隣接する等応力線で囲まれた非ドット領域を多く横切れば横切るほど、内部応力がより大きくなる。
【0043】
この
図13のうち、(a)は、前記ランド部22が前記開放位置に在って、且つ、パッキン13に対して圧縮流体の流体圧が作用していない状態(すなわち、圧縮流体がランド部22周りを流れていない状態)における、パッキン13の装着状態及びその内部応力の分布のシミュレーション結果を示している。内周面14が幅方向全体に亘ってほぼ均一に溝底面51Aに圧接されており、内周面14部分に生じている内部応力、すなわち溝底面51Aから内周面14に作用している面圧が、幅方向全体に亘ってほぼ均一に分散されて小さくなっている。
【0044】
また、(b)は、同じくランド部22が前記開放位置に在って、且つ、ランド部22の上流側(第1出力流路9側)から下流側(第1排気流路11側)へ圧力Ps(=0.7MPa)の圧縮流体が流れ、パッキン13に対してその流体圧が作用している状態のシミュレーション結果を示している。前記(a)において、内周面14に作用している面圧が、幅方向全体に亘ってほぼ均一に分散されて小さくなっているため、前記圧縮流体により該パッキン13に作用する径方向Y内向きの力と、凹溝50A内において内周面14と溝底面51Aとの間に流入した圧縮流体の流体圧によりパッキン13に作用する径方向Y外向きの力との差(径方向内向きの力<径方向外向きの力)によって、該内周面14全体が溝底面51Aから浮き上がっている。その結果、パッキン13の外周部の前記摺動面22aからの突出量が(a)の状態と比べて大きくなっている。そうすると、例えば、スプール20の変位に伴って該ランド部22が前記開放位置から閉鎖位置へと変位する過程で、前記パッキン13の外周部が前記弁座面71に乗り上げるときなどに、パッキン13が凹溝50Aから抜脱してしまう虞がある。
【0045】
そして、(c)は、前記ランド部22が前記閉鎖位置に在ってパッキン13のシール面が弁座面71に当接され(すなわち、圧縮流体がランド部22周りを流れておらず)、且つ、パッキン13に対して上流側から圧縮流体の流体圧Psが作用している状態のシミュレーション結果を示している。ここでは、内周面14における前記溝底面51Aの上流側端54側(すなわち、圧縮流体の上流側)に位置する端部において、溝底面51Aとの間に圧縮流体が流入して浮き上りが発生している。そして、このような浮き上がりが発生すると、パッキン13のシール面16と弁座面71との間で作用する面圧が大きくなってパッキン13の摺動抵抗の増大を招く虞があり、その結果、パッキンの寿命の低下等の弊害が懸念される。
【0046】
なお、前記第2ランド部24に関しては、スプール孔7に圧縮流体を流入させる前記給気流路8が、軸L方向において圧縮流体の流れの「上流側」に接続された流路となっており、スプール孔7から圧縮流体を流出させる前記第1出力流路9が、軸L方向において圧縮流体の流れの「下流側」に接続された流路となっている。すなわち、第1ランド部22と第2ランド部24とに関しては、軸L方向における上流側と下流側の位置関係、すなわち軸L方向における圧縮流体の流れ方向が同じ(図中、右側から左側)となっている。よって、第2ランド部24に装着されたパッキン13につても、
図13(a)−(c)に示す第1ランド部22のパッキン13と実質的に同様の結果が得られることとなり、したがって、上述した第1ランド部22のパッキン13と実質的に同様の弊害が生じる虞がある。
【0047】
ただし、第1ランド部22のパッキン13は圧縮流体の下流側から上流側(
図13中、左方向から右方向)に移動しながら第1弁座面71に乗り上げるため、パッキン13に作用する流体圧Psの方向と、乗り上げ時にパッキン13に作用する衝突力の方向とが一致している。それに対して、第2ランド部24のパッキン13は圧縮流体の上流側から下流側(
図13中、右方向から左方向)に移動しながら第2弁座面73に乗り上げることとなるため、パッキン13に作用する流体圧Psの方向と、乗り上げ時にパッキン13に作用する衝突力の方向とが逆の関係になっている。したがって、第2ランド部24よりも第1ランド部22のパッキン13の方がより抜脱し易くなっている。
【0048】
そこで、本実施形態においては、
図6及び
図7に示すように、各ランド部におけるパッキン13用の凹溝50の溝底面51に傾斜面52を形成して、凹溝50の溝底面51とパッキン13の内周面14との間で作用する面圧を特定の部位に集中させることにより(すなわち、パッキン13の内周面14の特定の部位を溝底面51の特定の部位に対して、面圧の極大値を伴って集中的に圧接させることにより)、該内周面14と溝底面51との間に圧縮流体が流入するのを防いでいる。このとき、後に詳述するように、該内周面14の前記特定の部位には、溝底面51への圧接に伴う集中応力(応力集中)が生じている。
【0049】
前記凹溝50は、軸L周りに環状に形成された溝底面51と、該溝底面51の軸L方向の両端54,55から径方向Yに立設されて互いに対向する一対の側壁面56,57とによって形成されている。そして、前記ランド部22の外周面から成る摺動部(摺動面)22aと、互いに平行な平面に形成された一対の側壁面56,57とは、互いに直角に交わっていて、それにより、該ランド部22の外周面に前記凹溝50の開口が形成されている。また、前記パッキン13の
図5に示すオリジナルの最大幅Wpは、この凹溝50の軸L方向の溝幅Wgよりも小さく、且つ、該溝幅Wgの半分よりも大きく形成されている。
【0050】
ここで、
図6−
図12においても、
図13の場合と同様に、軸L方向の圧縮流体の流れを見たとき、軸L方向右側が、圧縮流体がスプール孔7に流入する流路(第1出力流路9)が配された上流側となり、軸L方向左側が、該圧縮流体がスプール孔7から排出される流路(第1排気流路11)が配された下流側となっている。したがって、第1ランド部22の凹溝50においては、前記溝底面51の軸L方向両端のうち、図中右側の端が上流側端54となり、図中左側の端が下流側端55となっている。そして、一対の側壁面56,57のうち、図中右側に配された側壁面が上流側側壁面56となり、図中左側に配された側壁面が下流側側壁面57となっている。前記パッキン13についても、前記一対の側面15a,15bのうち、図中右側に配された側面が上流側側面15aとなり、図中左側に配された側面が下流側側面15bとなっている。
【0051】
図6及び
図7に示すように、前記凹溝50の溝底面51に含まれる前記傾斜面52は、該溝底面51の軸L方向の長さ(すなわち、凹溝50の溝幅)Wgの半分かそれよりも大きい軸L方向の長さW1に形成されており、前記上流側端54側から下流側端55側に向けて連続的(本実施形態では、横断面において直線状)に縮径している。
また、この傾斜面52は、前記上流側端54側の第1端部52aと前記下流側端55の第2端部52bとを有しており、軸に対して鋭角αの角度を成している。そして、該第1端部52aは、前記パッキン13の内周面14の特定の部位が面圧の極大値を伴って(すなわち、集中応力(応力集中)を伴って)前記溝底面51に対して圧接された圧接点Sによって規定されており、該第2端部52bは、溝底面51の下流側端55によって規定されている。
【0052】
すなわち、圧接点S(傾斜面52の第1端部52a)における溝底面51の直径Dsは、
図5に示すパッキン13の内周面14のオリジナルの直径D5よりも大きく形成されている。そのため、パッキン13が凹溝50に装着された状態においては、ゴム弾性材から成る該パッキン13が周方向に伸長されて、その内周面14における中央よりも上流側側面15a寄りの部位が、前記溝底面51の前記圧接点Sに弾性的且つ集中的に圧接されている。
【0053】
前記溝底面51は、前記圧接点Sと上流側端54との間を結ぶ連結面53をさらに有している。この連結面53は、横断面において、軸Lに対して鋭角θの角度を成した直線状に形成されていて、軸L方向の長さがW2に形成されており、前記凹溝50の溝幅Wgが、傾斜面52の軸方向長さW1と連結面53の軸方向長さW2との和と等しくなっている。
図6においては、軸Lに対する連結面53の角度θが、傾斜面52と同じαとなっており、溝底面51が、上流側端54から下流側端55に至るまで一定の角度で傾斜している。また、
図7においては、当該角度θが0°となっている。ただし、連結面53の角度θは、これら2種類の角度に限定されるものではなく、0°≦θ≦αの範囲であればよい。そして、このようにして内周面14が溝底面51に圧接されたパッキン13は、その前記下流側側面15bを前記凹溝50の下流側側壁面57に対して常時当接させた状態で、該凹溝50に装着されている。
【0054】
さらに、上述した
図13の場合と同様に、該パッキン13の外径Dpが、前記ランド部22の摺動面22aの外径D3よりも大きく、前記弁座面71の内径D0と同じかそれよりも大きくなっている。したがって、該パッキン13のシール面16は、前記ランド部22の摺動面22aから径方向Yに突出していると共に、該ランド部22が前記閉鎖位置に在るときに、前記スプール孔7の弁座面71に対して摺動自在に当接される。
【0055】
図8−
図11は、本実施形態において、ランド部22の凹溝50に装着されたパッキン13の内部応力(内部圧縮応力)の分布のシミュレーション結果を示す等応力線図であり、
図13に関して上述したように、「ドット領域」は、各図で内部応力が最も小さい領域(引張り応力を含む)を示していて、このドット領域の応力範囲は、
図13を含む各応力線図間で共通している。また、非ドット領域に関しても、隣接する等応力線間の応力幅は、互いに等しくなっていると共に、
図13を含む各応力線図間で共通している。
【0056】
この
図8−11において、(a)は、前記ランド部22が前記開放位置に在って、且つ、パッキン13に対して圧縮流体の流体圧が作用していない状態(すなわち、圧縮流体がランド部22周りを流れていない状態)を示している。(b)は、該ランド部22が前記開放位置に在って、且つ、ランド部22の上流側(第1出力流路9側)から下流側(第1排気流路11側)へ圧力Ps(=0.7MPa)の圧縮流体が流れ、パッキン13に対してその流体圧が作用している状態のシミュレーション結果を示している。(c)は、該ランド部22が前記閉鎖位置に在ってパッキン13のシール面が弁座面71に当接され(すなわち、圧縮流体がランド部22周りを流れておらず)、且つ、パッキン13に対して上流側から圧縮流体の流体圧Psが作用している状態を示している。
【0057】
まず、
図8は、溝底面51の傾斜面52の傾斜角度α、及び連結面53の傾斜角度θが共に10°である実施形態を示している。パッキン13に流体圧が作用していない(a)によると、溝底面51の圧接点Sにおいてパッキン13の内周部位に集中応力が生じており、面圧の極大値を伴って内周面14が当該圧接点Sに圧接されていることがわかる。そして、パッキン13に流体圧が作用している(b)及び(c)の何れにおいても、内周面14と溝底面51との圧接状態は維持されていて、溝底面51からの内周面14の浮き上がりも生じていない。むしろ、(b)では(a)と比較してより大きな最大面圧が作用している。すなわち、(a)の圧接点Sで生じている極大値を伴った集中的な面圧によって、パッキン13の内周面14と溝底面51との間への圧縮流体の流入が阻止されているといえる。
【0058】
次に、
図9は、溝底面51の傾斜面52の傾斜角度α、及び連結面53の傾斜角度θが共に20°である実施形態を示している。パッキン13に流体圧が作用していない(a)によると、溝底面51の圧接点Sにおいてパッキン13の内周部位に、
図8の場合よりも大きい集中応力が生じており、より大きい面圧の極大値を伴って内周面14が当該圧接点Sに圧接されていることがわかる。そして、
図8と同様に、パッキン13に流体圧が作用している(b)及び(c)の何れにおいても、内周面14と溝底面51との圧接状態は維持されていて、溝底面51からの内周面14の浮き上がりも生じていない。また、ここでも(b)では(a)と比較してより大きな最大面圧が作用している。すなわち、(a)の圧接点Sで生じている極大値を伴った集中的でより大きな面圧によって、パッキン13の内周面14と溝底面51との間への圧縮流体の流入がより強く阻止されているといえる。また、パッキン13の弁座面71との間で作用している面圧も、
図12(c)と比較して軽減されている。
【0059】
そして、
図10は、溝底面51の傾斜面52の傾斜角度αが20°で、連結面53の傾斜角度θが0°である場合であって、傾斜面52の軸方向長さW1が凹溝50溝幅Wgの3/4である実施形態を示している。パッキン13に流体圧が作用していない(a)によると、溝底面51の屈折点に位置する圧接点Sにおいて、パッキン13の内周部位に、
図8の場合よりも大きい集中応力が生じており、より大きい面圧の極大値を伴って内周面14が当該圧接点Sに圧接されていることがわかる。そして、パッキン13に流体圧が作用している(b)及び(c)の何れにおいても、内周面14と溝底面51との圧接状態は維持されていて、溝底面51からの内周面14の浮き上がりも生じていない。また、ここでも(b)では(a)と比較してより大きな最大面圧が作用している。すなわち、
図9の場合と同様に、(a)の圧接点Sで生じている極大値を伴った集中的でより大きな面圧によって、パッキン13の内周面14と溝底面51との間への圧縮流体の流入がより強く阻止されているといえる。また、
図9(c)と同様に、パッキン13と弁座面71との間で作用している面圧も、
図12(c)と比較して軽減されている。
【0060】
続いて、
図11は、溝底面51の傾斜面52の傾斜角度αが20°で、連結面53の傾斜角度θが0°である場合であって、傾斜面52の軸方向長さW1が凹溝50溝幅Wgの1/2である実施形態を示している。パッキン13に流体圧が作用していない(a)によると、溝底面51の屈折点に位置する圧接点Sにおいて、パッキン13の内周部位に、
図8の場合よりも大きい集中応力が生じており、より大きい面圧の極大値を伴って内周面14が当該圧接点Sに圧接されていることがわかる。そして、パッキン13に流体圧が作用している(b)及び(c)の何れにおいても、内周面14と溝底面51との圧接状態は維持されていて、溝底面51からの内周面14の浮き上がりも生じていない。また、ここでも(b)では(a)と比較してより大きな最大面圧が作用している。すなわち、
図9や
図10の場合と同様に、(a)の圧接点Sで生じている極大値を伴った集中的でより大きな面圧によって、パッキン13の内周面14と溝底面51との間への圧縮流体の流入がより強く阻止されているといえる。
【0061】
図12は、凹溝50Bにおいて、溝底面51Bの傾斜面52aの傾斜角度αを20°、連結面53aの傾斜角度θを0°とし、傾斜面52aの軸方向長さW1を凹溝50Bの溝幅Wgの1/4とした場合の参考例を示している。この場合、
図13の従来例と同様に、パッキン13に流体圧が作用していない(a)によると、パッキン13の内周面14部分に生じている内部応力、すなわち溝底面51Bから内周面14に作用している面圧が、幅方向全体に亘ってほぼ均一に分散されて小さくなっている。そのため、パッキン13に圧縮流体の流体圧を作用させた(b)において、内周面14と溝底面51Bとの間に圧縮流体が流入して、溝底面51Bからの内周面14の浮き上がりが生じている。したがって、
図13の従来例と同様に、ランド部22が前記開放位置から閉鎖位置へと変位する過程などで、パッキン13が凹溝50Bから抜脱してしまう虞がある。
【0062】
以上のシミュレーション結果からすると、傾斜面52の傾斜角度αは10°かそれよりも大きいことが好ましく、20°かそれよりも大きいとより好ましいといえる。また、該傾斜面52の軸L方向の長さW1は、溝幅Wgの1/2かそれよりも大きいことが好ましく、溝幅Wgの3/4かそれよりも大きいとより好ましいといえる。
【0063】
以上、本発明に係るスプール式切換弁の一実施形態について説明してきたが、本発明は前記の各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能であることは言うまでもない。
本実施形態では、第1〜第4ランド部22,24,26,28における全ての凹溝50の溝底面51に傾斜面52を設けたが、パッキン13の抜脱が発生し易い第1及び第4ランド部22,28の溝底面51のみに傾斜面52を設けても良い。
また、傾斜面52の第2端部52bは、必ずしも溝底面51の下流側端55によって規定されていなくてもよい。
さらに、凹溝50に装着した状態のパッキン13の外径Dpは、弁座面の径よりも僅かに小さく形成されていて、流体圧による変形によって、そのシール面16が該弁座面に当接するようなっていてもよい。