【解決手段】所定エリアの1または複数の箇所に設置されている各感知器に対応して発信器が設置されている位置情報システムにおける発信器の点検支援方法において、感知器を個別に作動させることが可能な感知器試験器を用いて感知器を順次作動試験する際に、発信器からの信号を受信可能な受信手段を備えた携帯情報端末により発信器からの信号を受信し、受信した信号に含まれる機器識別情報を抽出して、位置情報サーバから発信器の設置位置情報を取得し、取得した発信器の設置位置情報と火災受信機から取得した点検対象の感知器の設置位置情報とを照合して、当該感知器に対応して設置されている発信器を特定し、発信器の電波状態が正常であるか否か判定するようにした。
所定エリアの1または複数の箇所に設置された発信器から機器識別情報を含む信号を受信して、受信した発信器の機器識別情報および自己の識別情報を送信可能な携帯情報端末より送信された情報に基づいて、当該携帯情報端末の現在位置を把握するサーバを備え、前記所定エリアの1または複数の箇所に設置されている感知器に対応して前記発信器が設置されている位置情報システムにおける前記発信器の電波状態を点検する発信器の点検支援方法において、
前記感知器を個別に作動させることが可能な感知器試験器を用いて、前記所定エリアに設置されている1または複数の感知器を作動試験する際に、前記発信器からの信号を受信可能な受信手段を備え作業者が保有する携帯情報端末により前記発信器からの信号を受信する信号受信工程と、
受信した信号に含まれる機器識別情報を抽出し、該機器識別情報に基づいて前記サーバから、機器識別情報を送信してきた前記発信器の設置位置情報を取得する工程と、
取得した前記発信器の設置位置情報と前記感知器からの検知信号を受信する火災受信機から取得した点検対象の感知器の設置位置情報とを照合して、当該感知器に対応して設置されている発信器を特定する発信器特定工程と、
前記信号受信工程で受信した信号の電波強度を前記携帯情報端末より受信して、前記発信器特定工程で特定された発信器の電波状態が正常であるか否か判定する工程と、
を含むことを特徴とする発信器の点検支援方法。
前記所定エリアに設置されているすべての感知器の作動試験が終了した後、前記所定エリアに設置されているすべての発信器の個々の判定結果および/または所定のグループごとに集計した結果を表形式で記載した帳票を出力する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の発信器の点検支援方法。
前記所定エリアは1または複数のフロアを有する建造物であり、前記所定のグループは各フロアに設置されている発信器群であることを特徴とする請求項2に記載の発信器の点検支援方法。
前記管理装置は、前記所定エリアに設置されているすべての火災感知器の作動試験が終了した後に、前記所定エリアに設置されているすべての発信器の個々の判定結果および/または所定のグループごとに集計した結果を表形式で記載した帳票を生成する帳票生成手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の発信器の点検支援システム。
【背景技術】
【0002】
建物の天井等に適切な距離をおいて設置された複数の火災感知器を備えた火災報知システムにおいては、すべての火災感知器が正常に作動するか確認するため、定期的に保守点検が実施される。この保守点検では、例えばロッドの先端に設けた感知器試験器を火災感知器に近づけて煙や熱を加える、いわゆる「あぶり試験」等の作動試験が行われる。
火災感知器の保守点検では、作業員が建物内を移動しながら多数の火災感知器に対し順次作動試験を実行して行く作業を実施するため、試験漏れを生じてしまうことがあった。そこで、火災感知器にICタグを取り付け、点検の際にICタグの情報を読み取ることで、試験漏れを防止できるようにした発明がある(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年、火災感知器と同様に、建物の天井等に適切な距離をおいて複数のビーコンを設置し、ビーコンの信号を受信する携帯情報端末と無線通信を行うサーバを設けて携帯情報端末の位置を把握する位置情報システムが実用化されている。かかる位置情報システムを構成するビーコンも所定レベル以上の電波を出しているか定期的に点検する作業が必要である。位置情報システムと火災報知システムは別のシステムであるため、従来、火災感知器の保守点検とビーコンの保守点検は、異なる作業日に別々に実施するのが一般的であり、無駄な労力が多いという課題があった。
【0004】
一方、火災感知器の作動試験を行う感知器試験器に、火災感知器の周辺に設置されている発信装置(ビーコン)からの信号を受信する信号受信手段を設けて、火災感知器の点検の際にビーコンからの信号を受信することで、火災感知器にICタグが取付けられていなくても、保守点検中に試験漏れの火災感知器を見つけることが点検を同時に行なえるようにした発明が提案されている(特許文献2参照)。
また、従来、火災感知器のベースと天井等の取り付け面との間に、ビーコンを内蔵したアダプタを介在させ火災感知器とビーコンとを一体にすることで、ビーコンの設置を容易にした発明が提案されている(特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された感知器試験器を利用すれば、火災感知器の点検と同時にビーコンの電波状態の点検も行えるため、点検作業に要する労力を大幅に軽減し、作業時間を短縮することができるという利点がある。
しかし、特許文献2に記載されている感知器試験器を使用した手法では、単に加熱したり煙を出したりする従来一般的であった感知器試験器の機能の他に、ビーコンからの信号を受信する機能や作業者が保有する携帯情報端末(作業者端末)と通信する機能を備えた特殊な感知器試験器が必要となる。
【0007】
また、特許文献2に記載されている火災感知器の試験システムにおいては、感知器試験器に設けられた信号受信手段が複数のビーコンからの信号を受信して、3点測量の手法で火災感知器の位置情報を取得するようにしているため、位置の特定に複雑な処理や演算が必要であり、携帯端末からの情報を受信して処理するサーバの負担が重くなるとともに、位置の特定ひいては点検作業に時間がかかる場合がある。しかし、各ビーコンの電波確認や設置位置確認などの点検を行う場合には、上記のような精度や機能は必ずしも必要ではない。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、位置情報システムと火災報知システムとを統合したシステムにおいて、特殊な感知器試験器を用いることなく、建物の天井等に設置され火災報知システムを構成する火災感知器の点検と同時に、位置情報システムを構成するビーコンのような発信器の電波状態の点検する作業を支援するための点検支援方法および点検支援システムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、位置情報システムと火災報知システムとを統合したシステムにおいて、システムを構築するために対象施設の複数の箇所に発信器を設置する工事が終了した後に実施される施工時の点検やその後に定期的に実施される点検の終了後に、速やかに点検結果を表形式の帳票として出力することができる発信器の点検支援方法および点検支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る発信器の点検支援方法は、
所定エリアの1または複数の箇所に設置された発信器から機器識別情報を含む信号を受信して、受信した発信器の機器識別情報および自己の識別情報を送信可能な携帯情報端末より送信された情報に基づいて、当該携帯情報端末の現在位置を把握するサーバを備え、前記所定エリアの1または複数の箇所に設置されている感知器に対応して前記発信器が設置されている位置情報システムにおける前記発信器の電波状態を点検する発信器の点検支援方法において、
前記感知器を個別に作動させることが可能な感知器試験器を用いて、前記所定エリアに設置されている1または複数の感知器を作動試験する際に、前記発信器からの信号を受信可能な受信手段を備え作業者が保有する携帯情報端末により前記発信器からの信号を受信する信号受信工程と、
受信した信号に含まれる機器識別情報を抽出し、該機器識別情報に基づいて前記サーバから、機器識別情報を送信してきた前記発信器の設置位置情報を取得する工程と、
取得した前記発信器の設置位置情報と前記感知器からの検知信号を受信する火災受信機から取得した点検対象の感知器の設置位置情報とを照合して、当該感知器に対応して設置されている発信器を特定する発信器特定工程と、
前記信号受信工程で受信した信号の電波強度を前記携帯情報端末より受信して、前記発信器特定工程で特定された発信器の電波状態が正常であるか否か判定する工程と、
を含むようにしたものである。
【0010】
上記のような工程を含む発信器の点検支援方法によれば、特殊な感知器試験器を用いることなく、建物の天井等に設置され火災報知システムを構成する火災感知器を順次作動試験している間に、対応する発信器(ビーコン)の信号が携帯情報端末に受信され、その機器識別情報および電波強度がサーバに送信され、発信器(ビーコン)の設置位置情報と点検対象の感知器の設置位置情報とが照合されて特定された発信器の電波状態が正常であるか否か判定されるため、火災感知器の点検と同時に、位置情報システムを構成する発信器(ビーコン)の電波状態の点検する作業を支援することができる。また、発信器(ビーコン)の設置位置情報と点検対象の感知器の設置位置情報とが照合されて発信器が特定されるため、電波強度判定対象の発信器の設置位置を正確に把握することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記所定エリアに設置されているすべての感知器の作動試験が終了した後、前記所定エリアに設置されているすべての発信器の個々の判定結果および/または所定のグループごとに集計した結果を表形式で記載した帳票を出力する工程を含むようにする。
かかる工程を含む点検支援方法によれば、位置情報システムを構築するために対象施設の複数の箇所に発信器を設置する工事が終了した後に実施される施工時の点検やその後に定期的に実施される点検の終了後に、速やかに点検結果を表形式の帳票として出力することができる。
ここで、前記所定エリアは1または複数のフロアを有する建造物であり、前記所定のグループは各フロアに設置されている発信器群とすることができる。これにより、ビル等の施設における点検結果を、フロアごとに集計して記載した帳票が得られるため、施設の管理者にとって利便性の高い情報を速やかに提供することができる。ここで「建造物」としては、例えばビル(所定敷地内の複数のビル群を含む)がある。
【0012】
また、本発明に係る発信器の点検支援システムは、
所定エリアの複数の箇所に設置された火災感知器からの検知信号を受信して火災発生位置を把握可能な火災受信機と、
前記所定エリアの複数の箇所に設置された発信器からの機器識別情報を含む信号を受信可能な受信手段を備え、ヘッド部を火災感知器に接近させて当該火災感知器の作動試験を行うための感知器試験器を用いて火災感知器の保守点検を行う作業者が携帯可能な携帯情報端末と、
前記携帯情報端末より送信された信号受信に係る発信器の機器識別情報および携帯情報端末の識別情報に基づいて、当該携帯情報端末の現在位置を把握するサーバ装置と、
前記火災受信機から取得した情報と前記携帯情報端末から取得した情報と前記サーバ装置から取得した情報を処理して、保守点検作業を管理する管理装置と、
を備え、前記所定エリアに設置されている複数の火災感知器に対応して複数の発信器が設置されている施設における発信器の点検支援システムであって、
前記携帯情報端末は、発信器から送信された信号の電波強度を検出可能な電波強度検出手段を備え、検出した発信信号の電波強度を受信に係る発信器の機器識別情報と共に前記サーバ装置へ送信するように構成され、
前記サーバ装置は、前記携帯情報端末から受信した前記電波強度および発信器の機器識別情報を時系列的に記憶可能に構成され、
前記管理装置は、
前記火災受信機が把握した火災発生位置およびその火災の発生時刻に関する感知器関連情報を取得する感知器関連情報取得手段と、
前記サーバ装置に記憶されている前記発信信号の電波強度および発信器の機器識別情報を取得して、前記感知器関連情報取得手段により取得した火災の発生時刻に最も電波強度の高い発信器を判定する判定手段と、
前記判定手段によって判定された発信器の機器識別情報信号に基づいて、前記サーバ装置から当該発信器の設置位置情報を取得する発信器位置情報取得手段と、
前記発信器位置情報取得手段によって取得された発信器の設置位置情報と、前記火災受信機が把握した火災発生位置に対応する火災感知器の位置情報とを照合して、感知器作動試験に係る火災感知器に対応されている発信器の送信信号の電波状態を判定する電波状態判定手段と、を備えるようにしたものである。
【0013】
上記のような点検支援システムによれば、特殊な感知器試験器を用いることなく、火災感知器の点検と同時に、位置情報システムを構成する発信器(ビーコン)の電波状態の点検する作業を支援することができる。また、発信器(ビーコン)の設置位置情報と点検対象の感知器の設置位置情報とが照合されて発信器が特定されるため、電波強度判定対象の発信器の設置位置を正確に把握することができる。さらに、サーバ装置が、携帯情報端末から受信した電波強度および発信器の機器識別情報を時系列的に記憶するため、点検結果の信頼性を容易に確認することができる。
【0014】
ここで、望ましくは、前記管理装置は、前記所定エリアに設置されているすべての火災感知器の作動試験が終了した後に、前記所定エリアに設置されているすべての発信器の個々の判定結果および/または所定のグループごとに集計した結果を表形式で記載した帳票を生成する帳票生成手段を備えるようにする。
このように構成することによって、システムを構築するために対象施設の複数の箇所に発信器を設置する工事が終了した後に実施される施工時の点検やその後に定期的に実施される点検の終了後に、速やかに点検結果を表形式の帳票として出力することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、位置情報システムと火災報知システムとを統合したシステムにおいて、特殊な感知器試験器を用いることなく、建物の天井等に設置され火災報知システムを構成する火災感知器の点検と同時に、位置情報システムを構成するビーコンのような発信器の電波状態の点検する作業を支援することができる。また、システムを構築するために対象施設の複数の箇所に発信器を設置する工事が終了した後に実施される施工時の点検やその後に定期的に実施される点検の終了後に、速やかに点検結果を表形式の帳票として出力することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る発信器の点検支援方法による点検時の様子を示す図である。
本実施形態の発信器の点検支援方法は、
図1に示すように、火災感知器11と発信器としてのビーコン12が一体となったセンサ機器10が、建造物の天井面T等に設置されている位置情報システムと火災報知システムとを統合したシステムにおいて、感知器試験器20を用いて、火災感知器11が正常に作動するか確認するための作動試験作業にて、作業者が保有する携帯情報端末30によりビーコン12の信号を受信することで、火災感知器11とビーコン12の点検を同時に行えるようにしたものである。
【0018】
火災感知器とビーコンが一体となった上記センサ機器10は、例えば前述の特許文献3に記載されている。ただし、特許文献3に記載されているように、ビーコンを内蔵したアダプタが、感知器のベースと天井面との間に介挿されたものに限定されず、ビーコンが感知器の側部もしくは近傍に配設されているものであっても良い。
一方、本実施形態の発信器の点検支援方法において使用される感知器試験器20は、熱感知器と煙感知器との双方に使用可能な加熱・加煙試験器であり、例えば
図1に示すように、作業者が手により把持可能な棒状把手部としてのロッド22と、該ロッド22の先端に取り付けられたヘッド部21と、ロッド22とヘッド部21とを連結する連結部23とを備えている。連結部23は、ロッド22に対するヘッド部21の角度を調整可能な機能を有するように構成されている。
【0019】
ヘッド部21は、下方から火災感知器を囲って覆うことのできるようにカップ状のケースを備え、図示しないが、ケース内部には、ヒータのような加熱手段と煙を発生する発煙手段と赤外線センサが設けられており、ケースを感知器に被せると赤外線センサが嵌入を検知して、自動的に発熱および発煙を開始するように構成されている。また、発熱手段や発煙手段を動作させる電池は、ロッド22内に収納されている。
なお、感知器試験器20は、加熱および発煙が可能なタイプの試験器に限定されず、加熱手段のみ有する試験器であってもよいし、発煙手段のみ有する試験器であってもよいし、炎感知器に使用可能な赤外線検知式の試験器であってもよい。また、感知器試験器20は、前述の特許文献2に記載されている試験器と同様に、携帯情報端末30と通信可能な通信手段を備えるものであっても良い。
【0020】
図2には、本実施形態に係る発信器の点検支援方法が適用される位置情報システムと火災報知システムとを統合したシステムの一例の概略構成が示されている。
本実施形態の統合システムは、
図2に示すように、建物内部の複数の所定箇所に感知器と1:1対応で配設されているビーコン(発信器)12からの信号(電波)を受信可能な携帯情報端末(作業者端末)30、携帯電話基地局50及びインターネット等の通信ネットワークNを介して携帯情報端末30との間でデータ通信を行う位置情報サーバ40、パーソナルコンピュータやタブレットPCなどのデータ処理装置からなる管理装置42、火災感知器11からの火災検出信号を受信可能な火災受信機60、ゲートウェイ(中継器)70、火災情報サーバ80などから構成されている。
【0021】
位置情報サーバ40は、当該位置情報サーバ40が管理する建物の各フロアの地図情報(フロア図)と、携帯情報端末固有の識別情報(端末ID)と、使用者(携帯情報端末保有者)の権限や資格等の属性に関する情報等を記憶するデータベース41を備えている。各フロアの地図情報(フロア図情報)には、各フロアに設置されているビーコン12の機器ID及び設置位置情報などが含まれ、ビーコン設置工事の施工後に実施される点検作業で取得された設置位置情報が機器IDと対応してデータベース41に格納される。
【0022】
管理装置(管理用PC)42は、後に詳しく説明するように、システムの監視エリア内の火災感知器およびビーコンを点検する際に、点検作業を支援するとともに点検終了後に所定のフォーマットの帳票を作成して出力する機能を備える。
火災情報サーバ80は、インターネット等の通信ネットワークNを介して火災受信機60との間でデータ通信を行い監視エリアに設置されている火災感知器(IDもしくはアドレス)と設置位置との対応表や火災発生時に火災の発生場所情報や発生時刻情報などを含む火災情報履歴をデータベース81に記憶する機能などを備える。ただし、統合システムは、このような構成に限定されるものでなく、位置情報サーバ40と火災情報サーバ80は、1つのサーバとして構成されていても良い。
【0023】
火災感知器11は、例えば、熱、煙、炎、有害ガスなどの異常現象の発生を検出すると、火災検出信号を、感知器回線61を介して火災受信機60へ送信する。火災感知器11は、火災検出信号に自己の設置アドレスを付加するタイプの感知器であっても良いし、火災検出信号に自身の設置アドレスを付加しないタイプの感知器であっても良い。
ビーコン12は、電源に関する情報(内蔵電池情報又は外部電源情報)と自己の識別情報とを無線信号に乗せて定期的に周囲に発信する発信部を備える。ビーコン12が無線で発信する信号(ビーコン信号)には、少なくとも当該ビーコン12の識別情報(発信器の機器ID)が含まれていれば良い。
【0024】
携帯情報端末30は、例えばCPU(Central Processing Unit)、CPUが実行するプログラムを格納した不揮発性メモリ、作業用のRAM(Random Read Memory)などからなるデータ処理機能の他、ビーコン12からの信号を受信する受信機能と、無線通信機能とを備える機器であり、公知のスマートフォン等を利用することができる。
携帯情報端末30の内部メモリには、定期的にビーコン12から無線で発信されるビーコン信号を受信して当該ビーコン信号に含まれる識別情報(機器ID)等を抽出するとともに、当該ビーコン信号の受信電波強度を検出し、識別情報と受信電波強度等を含むビーコン情報を携帯電話基地局50及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する処理とを実行するアプリケーション・プログラム(点検作業支援アプリ)が格納されている。
【0025】
なお、携帯情報端末30へ無線信号(機器IDや設備情報などの固有情報)を発信するビーコン12の通信方式は、例えばBluetooth(登録商標)通信やIEEE 802.11規格に従ったWiFi等の無線LAN、赤外線通信、可視光通信など公知の通信方式のいずれであっても良い。ビーコン12を配置する間隔は特に限定されないが、隣接するそれぞれのビーコン12の通信範囲が建物内の空間を網羅できるように配置されているのが望ましく、火災感知器と一体ではなく、ビーコン単独で設置されているものを含んでいても良い。
【0026】
次に、
図1に示す感知器試験器20を使用して上記統合システムにおいて、定期的に実施する火災感知器の保守点検作業時に合わせてビーコン点検作業を実施する場合における携帯情報端末(作業者端末)30および管理装置(管理用PC)42の具体的な処理手順の一例を、
図3に示すフローチャートを用いて説明する。
なお、火災感知器の設置場所に関する位置情報は、火災感知器の機器IDと対応して記載されたテーブルに格納され、該テーブルデータが火災受信機60や火災情報サーバ80に記憶されている。また、ビーコンの設置場所に関する位置情報は、監視エリア内の所定箇所への火災感知器およびビーコン設置工事の施工時すなわち上記定期点検作業の前に、火災感知器の設置位置情報等に基づいて既に把握され、機器ID(ビーコンID)と対応したテーブルデータとして、火災情報サーバ80もしくは位置情報サーバ40に記憶されている。
【0027】
火災感知器およびビーコンの点検作業では、先ず感知器試験器20を使用して点検対象の火災感知器の作動試験を実行する。このとき、感知器試験器20のヘッド部21を発熱もしくは発煙させた結果、感知器が作動(検知信号を出力)したか否かは火災受信機60において把握しており、火災情報サーバ(防災サーバ)80が、火災受信機60から試験結果情報(感知器作動情報)を取得して、作動した感知器の情報(感知器ID、作動時刻等)をデータベース81に時系列的に記憶する(ステップS1)。そして、この感知器作動情報は、管理用PCへ送信もしくは管理用PC側から要求によって取得される(ステップS2)。なお、感知器の作動時刻は、ゲートウェイ70、火災情報サーバ80または位置情報サーバ40から取得するようにしても良い。
【0028】
一方、作業者端末(30)は、
図3に示すように、感知器の点検試験中、ビーコンからの信号を受信しており、作動試験中に受信した信号からビーコン情報(ビーコンIDおよび受信電波強度)を取得し(ステップS3)、取得したビーコン情報を取得時刻情報と共に、通信ネットワークNを介して管理用PC(42)へ送信する(ステップS4)。なお、作業者端末は、同時に複数のビーコンからの信号を受信した場合には、複数のビーコン情報とその時刻情報を送信する。
【0029】
すると、管理用PCは、作業者端末から送信された情報を受信して記憶し、ステップS2で取得した感知器作動情報に基づいて、作業者端末から受信した情報に含まれる複数のビーコンの受信電波強度の中から、感知器が作動した時刻において最も強度の高いものを判定してその強度が所定レベル以上の場合にはビーコンIDを抽出する(ステップS5)。そして、そのビーコンIDを用いて、当該ビーコンが設置されている位置情報を位置情報サーバ40のデータベース41から取得する(ステップS6)。なお、感知器が作動した時刻において最も強度の高いものを判定してビーコンIDを抽出する代わりに、作業者端末の表示部にビーコンのマークを表記したフロアマップを表示させ、作業者が感知器作動試験の際に、ビーコンのマークをタッチすることでビーコンIDを抽出するタイミングを付与するようにしても良い。また、平均値が高い、取得データ内の最大値など、発信間隔が適切な値のもの、データ数が規定以上などの条件を含んでも良い。
【0030】
続いて、管理用PCは、ステップS2で取得した感知器作動情報(感知器ID、作動時刻等)に基づいて、防災サーバ80のデータベース81から当該感知器の設置位置情報を取得し、ステップS6で取得したビーコン設置位置情報と照合する(ステップS7)。
そして、両方の設置位置が一致しており受信電波強度が所定レベル以上であれば、試験対象の感知器と1:1対応するビーコンの電波強度は正常であると判定する。
次に、管理用PCは、フロアの設備図情報の保守点検中フラグがONであるか判定する(ステップS8)。ここで、保守点検中フラグがOFFであると判定した場合(ステップS8;No)、すなわち点検対象の建物のフロアに設置されている複数の火災感知器に対する保守点検において、今回が最初に作動試験を行なった試験である場合には、フロアの設備図情報の保守点検中フラグをONにする(ステップS9)。
【0031】
続いて、管理用PCは、防災サーバ80から取得した試験結果情報とステップS7で取得した位置情報とに基づいて、試験済み感知器/未試験感知器のリストを表示させるためのリスト表示情報(フロア用のリスト表示情報)を生成して記憶部に記憶するとともに、ステップS6で取得した設備図情報とステップS7で取得した位置情報とに基づいて、試験済み感知器/未試験感知器の配置図(フロア用の配置図)を表示させるための配置図表示情報を生成する(ステップS10)。
【0032】
一方、ステップS8で、保守点検中フラグがONである(Yes)と判定した場合、すなわち点検対象の建物のフロアに設置されている火災感知器群に対する保守点検において、今回が最初に作動試験を行なった試験でない場合には、管理用PCは、防災サーバ80から取得した試験結果情報とステップS7で取得した位置情報とに基づいて、記憶部に記憶されているフロア用のリスト表示情報を更新するとともに、ステップS7で取得した位置情報に基づいて記憶部に記憶されているフロア用の配置図表示情報を更新する(ステップS11)。
【0033】
次に、管理用PCは、ステップS10で生成もしくはステップS11で更新したリスト表示情報および配置図表示情報を、通信ネットワークNを介して作業者端末30へ送信する(ステップS12)。
すると、作業者端末30は、受信したリスト表示情報に基づいて試験済み感知器/未試験感知器のリストを表示部に表示するとともに、受信した配置図表示情報に基づいて試験済み感知器/未試験感知器の配置図を表示部に表示する(ステップS13)。これにより、作業者は、システムが設けられている建物内における火災感知器の保守点検の進捗状況を把握することができる。
【0034】
なお、試験済み感知器/未試験感知器の配置図では、作動試験が完了している複数の火災感知器のうちの何れが直近最後に作動試験の行われた火災感知器であるか判別可能であってもよい。このように構成することによって、作業者は、自身の現在位置(おおよその現在位置)を把握することができる。
ステップS12でリスト表示情報および配置図表示情報を送信した後、管理用PCは、記憶部の保守点検中記憶領域等に記憶されているリスト表示情報等に基づいて、フロアに設置されている全ての火災感知器の作動試験が完了したか判定する(ステップS14)。ここで、フロアに設置されている全ての火災感知器の作動試験が完了していないと判定した場合(ステップS14;No)には、ステップS15の処理へ移行する。
【0035】
ステップS14でフロアに設置されている全ての火災感知器の作動試験が完了したと判定した場合(ステップS14;Yes)には、フロアの設備図情報の保守点検中フラグをOFFにして(ステップS15)、ステップS16の処理へ移行する。
ステップS16では、管理用PCは、記憶部の保守点検中記憶領域等に記憶されているリスト表示情報等に基づいて、点検対象の建物内に設置されている全ての火災感知器の作動試験が完了したか判定する。そして、建物内に設置されている全ての火災感知器の作動試験が完了していないと判定した場合(ステップS16;No)には、ステップS1へ戻って次の火災感知器についての感知器試験処理を実施する。
【0036】
ステップS16で、点検対象の建物内に設置されている全ての火災感知器の作動試験が完了した(Yes)と判定した場合には、管理用PCは、記憶部の保守点検中記憶領域に記憶されている各フロア用の各リスト表示情報等に基づいて、建物内に設置されている全ての火災感知器試験結果のリスト(感知器総合試験結果表)およびビーコンの点検結果のリスト(
図4の点検結果表)を生成し出力する。ビーコンの点検結果のリストは、例えばフロアごとのような所定のグループごとに集計した帳票(
図5参照)として生成しても良い。
【0037】
また、上記リストは、通信ネットワークNを介して作業者端末30へ送信して表示させても良いし、管理用PCに接続されているプリンタへ出力してプリントアウトし、顧客(点検対象の建物の管理責任者等)に提出するようにしても良い。
また、上記処理フローは、ビーコンの設置直後に行われる施工時確認作業および結果報告用の帳票を作成する場合にも適用することができる。
【0038】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、位置情報サーバ40及び火災情報サーバ80は、別体ではなく共通の支援サーバ等として一体的に構成されていても良い。
また、上記実施形態では、携帯情報端末30とは別個に管理装置42を設けているが、管理装置42がタブレットPCのような可搬型の装置の場合、実施形態の携帯情報端末30の機能と管理装置42の機能の両方を1つの装置に搭載するようにしても良い。
また、上記実施形態では、ビーコンが感知器と1:1対応で設けられているシステムに適用した場合について説明したが、ビーコンが単独で設置されていたり、ビーコンが設けられていない感知器を含んでいるシステムであっても良い。その場合、フロア単位又はビーコン単位又は両方での作動回数で判断する。ビーコンの合否は、規定値以上あった場合に合格とするなどが考えられる。
【0039】
さらに、上記実施形態では、ビーコン12は情報を送信する機能のみ有していると説明したが、携帯情報端末30や他の発信器(無線タグ、端末等)からの無線信号を受信する機能さらには受信した情報をサーバ40へ送信する機能を有するものであっても良い。
また、上記実施形態では、位置情報システムとして、ビーコンによる測位を利用したシステムを例示したが、これに限定されず、位置情報システムは、例えばIMES(Indoor Messaging System)等のその他の方式による測位を利用したシステムであっても良い。すなわち、発信器は、ビーコンに限定されずIMES送信機等であっても良い。