【課題】物性探索システムにおいて、測定法について十分な知識を持たないユーザーに対しても、物性探索にあたって実用性の高い、測定法に関する知見を提供し、探索システムの利便性を向上する。
【解決手段】関係性を有する物性パラメータの対をエッジによって接続されたノード対に対応付けたグラフを探索する探索システム10において、測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶する物性測定法データベース6を備え、その物性測定法データベース6を参照することにより、探索結果に関連する測定法に関する情報を、当該探索結果とともに出力する。例えば、グラフに測定法に対応するノードを追加し、追加したノード測定対象の物性パラメータに対応するノードとの間にエッジを追加して表示する。
請求項1において、前記物性パラメータ関係性データベースに前記複数のパラメータ対として記憶される複数の物性パラメータを第1物性パラメータとし、前記第1物性パラメータに含まれ、前記物性測定法データベースに前記1または複数の測定法の測定対象として記憶される物性パラメータを第2物性パラメータとし、前記探索システムはグラフ拡張部をさらに備え、
前記グラフ拡張部は、前記物性測定法データベースに記憶される前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して新たなノードを前記グラフに追加し、それぞれの測定法に対応づけて記憶された第2物性パラメータに対応する前記グラフ内のノードと前記新たなノードとの間に新たなエッジを追加できるように構成され、
前記ユーザーインターフェースは、測定法に対応して追加された前記新たなノード及び前記新たなエッジのうち、前記探索結果である前記1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに接続されるエッジ及びそれに接続されるノードを、当該探索結果とともに表示する、
探索システム。
請求項2において、前記物性測定法データベースは、前記1または複数の測定法のそれぞれが基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを第3物性パラメータとして当該測定法に対応づけてさらに記憶し、
前記グラフ拡張部は、前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して前記グラフに追加された前記新たなノードと、当該測定法に対応付けて前記物性測定法データベースに記憶される前記第3の物性パラメータに対応する前記グラフ内のノードとの間に、新たなエッジをさらに追加することができるように構成され、
前記ユーザーインターフェースは、さらに追加された前記新たなエッジのうち、前記探索結果である前記1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに接続されるエッジを、さらに追加して表示することができるように構成される、
探索システム。
物性パラメータ関係性グラフとグラフ探索部とユーザーインターフェースとを備える探索システムであって、前記物性パラメータ関係性グラフは、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、前記複数のパラメータ対のそれぞれに対応するノード間をエッジとするグラフであり、前記複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータを第1物性パラメータとし、前記探索システムは、物性測定法データベースとグラフ拡張部とをさらに備え、
前記物性測定法データベースは、1または複数の測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶し、前記測定対象である物性パラメータを第2物性パラメータとし、前記測定法が基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを第3物性パラメータとして前記測定法に対応づけて、前記物性測定法データベースにさらに記憶し、前記第2物性パラメータと前記第3物性パラメータとの関係性を、前記測定法に対応づけて、前記物性測定法データベースにさらに記憶し、
前記グラフ拡張部は、前記物性測定法データベースに記憶される前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して新たなノードを前記物性パラメータ関係性グラフに追加し、それぞれの測定法に対応づけて記憶された第2及び第3物性パラメータに対応する前記物性パラメータ関係性グラフ内のノードと前記新たなノードとの間に新たなエッジを追加できるように構成され、
前記グラフ探索部は、前記ユーザーインターフェースを介して指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを、前記ユーザーインターフェースを介して探索結果として出力することができるように構成される、
探索システム。
記憶装置を備える計算機上で動作するソフトウェアによって実装され、前記記憶装置に記憶される物性パラメータ関係性データベースを参照するグラフ生成ステップと、測定法情報要求ステップと、グラフ探索ステップとを含む探索方法であって、
前記物性パラメータ関係性データベースは、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対を記憶し、
前記グラフ生成ステップは、前記複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、前記複数のパラメータ対のそれぞれに対応するノード間をエッジとする、グラフを生成し、
前記グラフ探索ステップは、前記測定法情報要求ステップから与えられる情報要求された測定法に基づいて前記グラフを探索し、前記探索条件を満たす複数のノード及び複数のエッジによって構成される1以上の経路または部分グラフを探索結果として出力し、
前記探索方法は、前記記憶装置または他の記憶装置に記憶される物性測定法データベースをさらに備え、前記物性測定法データベースは、1または複数の測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶し、
前記探索方法は、前記物性測定法データベースを参照することにより、前記探索結果に関連する測定法に関する情報を、当該探索結果とともに出力する、
探索方法。
請求項9において、前記物性パラメータ関係性データベースに前記複数のパラメータ対として記憶される複数の物性パラメータを第1物性パラメータとし、前記第1物性パラメータに含まれ、前記物性測定法データベースに前記1または複数の測定法のそれぞれに測定対象として対応する1または複数の物性パラメータを第2物性パラメータとし、前記探索方法はグラフ拡張ステップをさらに備え、
前記グラフ拡張ステップは、前記物性測定法データベースが記憶する各測定法をそれぞれ新たなノードとして前記グラフに追加し、前記新たなノードと対応する第2物性パラメータに対応するノードとの間にエッジを追加し、
前記探索方法は、測定法に対応して追加された前記新たなノード及び前記新たなエッジのうち、前記探索結果である前記1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに接続されるエッジ及びそれに接続されるノードを、当該探索結果とともに表示する、
探索方法。
請求項10において、前記物性測定法データベースは、前記1または複数の測定法のそれぞれが基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを第3物性パラメータとして当該測定法に対応づけてさらに記憶し、
前記グラフ拡張ステップは、前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して前記グラフに追加された前記新たなノードと、当該測定法に対応付けて前記物性測定法データベースに記憶される前記第3の物性パラメータに対応する前記グラフ内のノードとの間に、新たなエッジをさらに追加し、
前記探索方法は、さらに追加された前記新たなエッジのうち、前記探索結果である前記1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに接続されるエッジを、さらに追加して表示する、
探索方法。
請求項9から請求項12のうちのいずれか1項において、前記探索方法は、前記記憶装置または他の記憶装置に記憶される、ユーザーごとのユーザー測定法データベースをさらに備え、
前記ユーザー測定法データベースは、互いに対応付けて前記物性測定法データベースに記憶される前記測定法とその測定対象である物性パラメータに加えて、当該ユーザーがその測定法を実行するための測定設備に関する情報、及び/または、その測定法によって得られた測定結果に関する情報を、さらに対応付けて記憶する、
探索システム。
記憶装置を備える計算機上で動作するソフトウェアによって実装され、探索条件入力ステップから入力される探索条件にしたがって、前記記憶装置に記憶される物性パラメータ関係性グラフを探索するグラフ探索ステップを備える探索方法であって、
前記物性パラメータ関係性グラフは、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、前記複数のパラメータ対のそれぞれに対応するノード間をエッジとする、グラフであり、前記複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータを第1物性パラメータとし、
前記探索方法は、前記記憶装置または他の記憶装置に記憶される物性測定法データベースと、前記物性測定法データベースを参照するグラフ拡張ステップとをさらに備え、
前記物性測定法データベースは、1または複数の測定法と、その測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶し、前記測定対象である物性パラメータを第2物性パラメータとし、前記測定法が基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを第3物性パラメータとして前記測定法に対応づけて、前記物性測定法データベースにさらに記憶し、前記第2物性パラメータと前記第3物性パラメータとの関係性を、前記測定法に対応づけて、前記物性測定法データベースにさらに記憶し、
前記グラフ拡張ステップは、前記物性測定法データベースに記憶される前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して新たなノードを前記物性パラメータ関係性グラフに追加し、それぞれの測定法に対応づけて記憶された第2及び第3物性パラメータに対応する前記物性パラメータ関係性グラフ内のノードと前記新たなノードとの間に新たなエッジを追加し、
前記グラフ探索ステップは、指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを、探索結果として出力する、
探索方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0027】
〔1〕<測定法データベースを備える物性探索システム>
本発明の代表的な実施の形態は、物性パラメータ関係性データベース(1)とグラフ生成部(2)とグラフ探索部(4)とユーザーインターフェース(5)とを備える探索システム(10)であって、以下のように構成される(
図1)。
【0028】
前記物性パラメータ関係性データベースは、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対を記憶する。前記グラフ生成部は、前記複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、前記複数のパラメータ対のそれぞれに対応するノード間をエッジとする、グラフ(3)を生成することができるように構成される。前記グラフ探索部は、前記ユーザーインターフェースを介して与えられる探索条件に基づいて前記グラフを探索し、探索結果を前記ユーザーインターフェースを介して出力することができるように構成される。前記探索結果は、前記探索条件を満たす複数のノード及び複数のエッジによって構成される1以上の経路または部分グラフである。
【0029】
前記探索システムは、物性測定法データベース(6)をさらに備える。
【0030】
前記物性測定法データベースは、1または複数の測定法(
図2の31)とその測定対象である物性パラメータ(
図2の32)とを対応付けて記憶する。
【0031】
前記ユーザーインターフェースは、前記物性測定法データベースを参照することにより、前記探索結果に関連する測定法に関する情報を、当該探索結果とともに出力することができるように構成される。
【0032】
これにより、測定法について十分な知識を持たないユーザーに対しても、物性探索にあたって実用性の高い知見を提供することができ、探索システムの利便性を向上することができる。特に、目標の物性を有する物質・材料を特定する際に、探索結果として得られた経路に含まれまたはその近傍に存在する物性パラメータについて、その値を確認するための測定法の検討を可能にする。このように、ユーザーに対して、物性制御のための最適な経路等を特定するための支援機能を提供することができる。
【0033】
〔2〕<測定法データベースに基づくグラフの拡張>
〔1〕項において、前記物性パラメータ関係性データベースに前記複数のパラメータ対として記憶される複数の物性パラメータを第1物性パラメータとする。また、前記第1物性パラメータに含まれ、前記物性測定法データベースに、前記1または複数の測定法のそれぞれの測定対象として記憶される物性パラメータを第2物性パラメータ(
図2における32)とする。
【0034】
前記探索システムはグラフ拡張部(7)をさらに備える(
図1)。
【0035】
前記グラフ拡張部は、前記物性測定法データベースに記憶される前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して新たなノードを前記グラフに追加し、それぞれの測定法に対応づけて記憶された第2物性パラメータに対応する前記グラフ内のノードと前記新たなノードとの間に新たなエッジを追加できるように構成される(
図3、
図4)。
【0036】
前記ユーザーインターフェースは、測定法に対応して追加された前記新たなノード及び前記新たなエッジのうち、前記探索結果である前記1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに接続されるエッジ及びそれに接続されるノードを、当該探索結果とともに表示することができるように構成される。
【0037】
これにより、測定法に関する情報の視認性が向上し、探索システムの利便性をさらに向上することができる。
【0038】
〔3〕<測定原理の利用する物性パラメータによるグラフへのエッジの追加;
図1>
〔2〕項において、前記物性測定法データベースは、前記1または複数の測定法のそれぞれが基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを、第3物性パラメータ(
図2における33)として当該測定法に対応づけてさらに記憶する。
【0039】
前記グラフ拡張部は、前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して前記グラフに追加された前記新たなノードと、当該測定法に対応付けて前記物性測定法データベースに記憶される前記第3の物性パラメータに対応する前記グラフ内のノードとの間に、新たなエッジをさらに追加することができるように構成される(
図5)。
【0040】
前記ユーザーインターフェースは、さらに追加された前記新たなエッジのうち、前記探索結果である前記1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに接続されるエッジを、さらに追加して表示することができるように構成される。
【0041】
これにより、ある物性パラメータが、ユーザーが既に知っている測定法によって直接測定する代わりに、他の測定法による測定結果を解析することによって得られる場合に、そのユーザーに気付きの機会を提供することができる。
【0042】
〔4〕<影響因子データベース>
〔3〕項において、前記探索システムは影響因子データベース(8)をさらに備える(
図9)。本明細書において「影響因子」とは、物性パラメータでないが物性に影響を与え、その結果、測定法とその基礎となっている測定原理に寄与する因子を指す。例えば、温度、圧力、電界、磁界などの環境的な因子、例えば、球状、柱状、線状、クラスタ、表面積/体積比、配向方向、分散度などの物質の形態に関する因子、及び、例えば長さ、径、ナノ、マイクロ、バルクなどの物質の大きさを表す因子が含まれる。
【0043】
前記物性測定法データベースは、前記第2及び第3物性パラメータのうちの少なくとも1個の物性パラメータと、当該物性パラメータが依存性を有する1以上の影響因子(
図2における34)とを対応付けて記憶する。前記物性測定法データベースまたは前記影響因子データベースは、その依存関係を示す依存性情報を、当該物性パラメータにさらに対応づけて記憶してもよい。
【0044】
前記グラフ拡張部は、前記物性測定法データベースが記憶する各測定法に対応して追加したノード及びエッジに加えて、それぞれの測定法が基礎とする測定原理に関与する影響因子をさらに新たなノードとし、当該関係性によって関連が規定される第2及び/または第3物性パラメータに対応するノードとの間をさらに新たなエッジとして、前記グラフに追加することができるように構成される(
図10、
図11)。
【0045】
前記ユーザーインターフェースは、前記さらに新たなノード及び前記さらに新たなエッジを追加して表示することができるように構成される。
【0046】
これにより、それぞれの測定法が基礎とする測定原理において、前提とされている環境因子が可視化され、測定法に関する情報の視認性がさらに向上し、探索システムの利便性をより向上することができる。
【0047】
影響因子データベース(8)は、環境記述データベース(11)、形態記述データベース(12)およびサイズ記述データベース(13)のうちの少なくとも1つを含むとより好適である(
図11)。
【0048】
前記環境記述データベースは、温度、圧力、電界および磁界のうちの少なくとも1つを影響因子として含み、前記第2または第3の物性パラメータのうち当該影響因子に依存する物性パラメータについて、その依存関係を示す依存性情報を対応付けて記憶する。
【0049】
前記形態記述データベースは、球状、柱状、線状、クラスタ、表面積/体積比、配向方向および分散度のうちの少なくとも1つを影響因子として含み、前記第2または第3の物性パラメータのうち当該影響因子に依存する物性パラメータについて、その依存関係を示す依存性情報を対応付けて記憶する。
【0050】
前記サイズ記述データベースは、長さ、径、ナノ、マイクロおよびバルクのうちの少なくとも1つを影響因子として含み、前記第2または第3の物性パラメータのうち当該影響因子に依存する物性パラメータについて、その依存関係を示す依存性情報と対応付けて記憶する。
【0051】
これにより、影響因子データベース(8)が異なる概念の下位のデータベースに区分され、測定法に関連する物性パラメータの影響因子の寄与を、表示または探索結果の絞り込みに利用する際に、ユーザーの利便性を向上することができる。
【0052】
〔5〕<ユーザー測定法データベース>
〔1〕項から〔4〕項のうちのいずれか1項において、前記探索システムはユーザーごとにユーザー測定法データベース(9)をさらに備える(
図12)。前記ユーザー測定法データベースは、互いに対応付けて前記物性測定法データベースに記憶される前記測定法とその測定対象である物性パラメータに加えて、当該ユーザーがその測定法を実行するための測定設備に関する情報、及び/または、その測定法によって得られた測定結果に関する情報を、さらに対応付けて記憶する。
【0053】
これにより、測定法に関してユーザー固有の情報が統合され、探索結果から最適な経路等を特定するために提供する支援機能について、ユーザーにとっての利便性をより高めることができる。例えば、探索結果に含まれる複数の経路を表示する場合に、ユーザー測定法データベース(9)を参照して、ユーザーが利用しやすい測定法を優先して表示することができる。
【0054】
〔6〕<測定法・測定データから解析等によって値が得られる物性パラメータの提示>
本発明の代表的な実施の形態は、物性パラメータ関係性グラフ(15)とグラフ探索部(4)とユーザーインターフェースと(5)を備える探索システム(10)であって、以下のように構成される(
図13)。
【0055】
前記物性パラメータ関係性グラフは、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、前記複数のパラメータ対のそれぞれに対応するノード間をエッジとするグラフである。ここで、前記複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータを第1物性パラメータとする。
【0056】
前記探索システムは、物性測定法データベース(6)とグラフ拡張部(7)とをさらに備える。
【0057】
前記物性測定法データベースは、1または複数の測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶する。前記測定対象である物性パラメータを第2物性パラメータとする。前記測定法が基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを第3物性パラメータとして前記測定法に対応づけて、前記物性測定法データベースにさらに記憶し、前記第2物性パラメータと前記第3物性パラメータとの関係性を、前記測定法に対応づけて、前記物性測定法データベースにさらに記憶する。
【0058】
前記グラフ拡張部は、前記物性測定法データベースに記憶される前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して新たなノードを前記物性パラメータ関係性グラフに追加し、それぞれの測定法に対応づけて記憶された第2及び第3物性パラメータに対応する前記物性パラメータ関係性グラフ内のノードと前記新たなノードとの間に新たなエッジを追加できるように構成される。
【0059】
前記グラフ探索部は、前記ユーザーインターフェースを介して指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを、前記ユーザーインターフェースを介して探索結果として出力することができるように構成される。
【0060】
これにより、物性パラメータ関係性グラフ(15)を対象とした物性探索を行う前であっても、測定法を起点とした物性探索を行うことができ、測定法について十分な知識を持たないユーザーに対しても、物性探索にあたって実用性の高い知見を提供することができ、探索システムの利便性を向上することができる。ユーザーが測定法を指定すると、その測定法によってどのような物性パラメータの値を測定することができるかが出力される。さらに、その測定法によって直接には値を測定することができないものの、測定原理において関係性を利用している他の物性パラメータの存在を知ることができる。このため、測定法について十分な知識を持たないユーザーに対して、新たな気付きの機会を提供することができる。
【0061】
〔7〕<影響因子データベース>
〔6〕項において、前記探索システムは影響因子データベース(8)をさらに備える(
図13)。
【0062】
前記影響因子データベースは、前記物性測定法データベースに記憶される第2及び第3物性パラメータのうちの少なくとも1個の物性パラメータと、当該物性パラメータが依存性を有する1以上の影響因子とを対応付けて記憶する。
【0063】
前記グラフ拡張部は、前記物性測定法データベースが記憶する各測定法に対応して追加したノード及びエッジに加えて、それぞれの測定法が基礎とする測定原理に関与する影響因子をさらに新たなノードとし、当該関係性によって関連が規定される第2及び/または第3物性パラメータに対応するノードとの間をさらに新たなエッジとして、前記物性パラメータ関係性グラフに追加することができるように構成される。
【0064】
前記ユーザーインターフェースは、前記さらに新たなノード及び前記さらに新たなエッジを追加して表示することができるように構成される。
【0065】
これにより、それぞれの測定法が基礎とする測定原理において、前提とされている環境因子が可視化され、測定法に関する情報の視認性がさらに向上し、探索システムの利便性をより向上することができる。
【0066】
〔4〕項と同様に、影響因子データベース(8)は、環境記述データベース(11)、形態記述データベース(12)およびサイズ記述データベース(13)のうちの少なくとも1つを含むとより好適である。
【0067】
〔8〕<ユーザー測定法データベース>
〔6〕項または〔7〕項において、前記探索システムはユーザーごとにユーザー測定法データベース(9)をさらに備える(
図13)。前記ユーザー測定法データベースは、互いに対応付けて前記物性測定法データベースに記憶される前記測定法とその測定対象である物性パラメータに加えて、当該ユーザーがその測定法を実行するための測定設備に関する情報、及び/または、その測定法によって得られた測定結果に関する情報を、さらに対応付けて記憶する。
【0068】
これにより、測定法に関してユーザー固有の情報が統合され、探索結果から最適な経路等を特定するために提供する支援機能について、ユーザーにとっての利便性をより高めることができる。例えば、探索結果に含まれる複数の経路を表示する場合に、ユーザー測定法データベース(9)を参照して、ユーザーが利用しやすい測定法を優先して表示することができる。
【0069】
〔9〕<測定法データベースを備える物性探索方法>
本発明の代表的な実施の形態は、記憶装置を備える計算機上で動作するソフトウェアによって実装され、前記記憶装置に記憶される物性パラメータ関係性データベース(1)を参照するグラフ生成ステップ(S1)と、測定法情報要求ステップ(S6)と、グラフ探索ステップ(S3)とを含む探索方法であって、以下のように構成される(
図14)。
【0070】
前記物性パラメータ関係性データベースは、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対を記憶する。
【0071】
前記グラフ生成ステップは、前記複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、前記複数のパラメータ対のそれぞれに対応するノード間をエッジとする、グラフ(3、
図14には図示されない)を生成する。
【0072】
前記グラフ探索ステップは、前記測定法情報要求ステップから与えられる情報要求された測定法に基づいて前記グラフを探索し、前記探索条件を満たす複数のノード及び複数のエッジによって構成される1以上の経路または部分グラフを探索結果として出力する(S4)。
【0073】
前記探索方法は、前記記憶装置または他の記憶装置に記憶される物性測定法データベース(6)をさらに備え、前記物性測定法データベースは、1または複数の測定法(
図2における31)とその測定対象である物性パラメータ(
図2における32)とを対応付けて記憶する。
【0074】
前記探索方法は、前記物性測定法データベースを参照することにより、前記探索結果に関連する測定法に関する情報を、当該探索結果とともに出力する(S4)。
【0075】
これにより、測定法について十分な知識を持たないユーザーに対しても、物性探索にあたって実用性の高い知見を提供することができ、利便性の高い探索方法を提供することができる。特に、目標の物性を有する物質を特定する際に、探索結果として得られた経路に含まれまたはその近傍に存在する物性パラメータの値を確認するための測定法の利便性を含めた検討を可能にする。このように、物性制御の最適な経路等を特定するための支援機能をユーザーに提供することができる。
【0076】
〔10〕<測定法データベースに基づくグラフの拡張>
〔9〕項において、前記物性パラメータ関係性データベースに前記複数のパラメータ対として記憶される複数の物性パラメータを第1物性パラメータとし、前記第1物性パラメータに含まれ、前記物性測定法データベースに前記1または複数の測定法のそれぞれに測定対象として対応する1または複数の物性パラメータを第2物性パラメータ(
図2における32)とする。
【0077】
前記探索方法はグラフ拡張ステップ(S5)をさらに備える(
図15)。
【0078】
前記グラフ拡張ステップは、前記物性測定法データベースに記憶される前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して新たなノードを前記グラフに追加し、それぞれの測定法に対応づけて記憶された第2物性パラメータに対応する前記グラフ内のノードと前記新たなノードとの間に新たなエッジを追加する。
【0079】
前記探索方法は、測定法に対応して追加された前記新たなノード及び前記新たなエッジのうち、前記探索結果である前記1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに接続されるエッジ及びそれに接続されるノードを、当該探索結果とともに表示する(S4)(
図3、
図4)。
【0080】
これにより、測定法に関する情報の視認性が向上し、利便性がさらに向上された探索方法を提供することができる。
【0081】
〔11〕<測定原理の利用する物性パラメータによるグラフへのエッジの追加>
〔10〕項において、前記物性測定法データベースは、前記1または複数の測定法のそれぞれが基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを第3物性パラメータ(
図2における33)として当該測定法に対応づけてさらに記憶する。
【0082】
前記グラフ拡張ステップは、前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して前記グラフに追加された前記新たなノードと、当該測定法に対応付けて前記物性測定法データベースに記憶される前記第3の物性パラメータに対応する前記グラフ内のノードとの間に、新たなエッジをさらに追加する(
図5)。
【0083】
前記探索方法は、さらに追加された前記新たなエッジのうち、前記探索結果である前記1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに接続されるエッジを、さらに追加して表示する。
【0084】
これにより、ある物性パラメータが、ユーザーが既に知っている測定法によって直接測定する代わりに、他の測定法による測定結果を解析することによって得られる場合に、そのユーザーに気付きの機会を提供することができる。
【0085】
〔12〕<影響因子データベース>
〔11〕項において、前記探索方法は、前記記憶装置または他の記憶装置に記憶される、影響因子データベース(8)をさらに備える(
図15)。
【0086】
前記影響因子データベースは、前記物性測定法データベースに記憶される第2及び第3物性パラメータのうちの少なくとも1個の物性パラメータと、当該物性パラメータが依存性を有する1以上の影響因子(
図2における34)とを対応付けて記憶する。
【0087】
前記グラフ拡張ステップは、前記物性測定法データベースが記憶する各測定法に対応して追加したノード及びエッジに加えて、それぞれの測定法が基礎とする測定原理に関与する影響因子をさらに新たなノードとし、当該関係性によって関連が規定される第2及び/または第3物性パラメータに対応するノードとの間をさらに新たなエッジとして、前記グラフに追加する(S5)(
図10,
図11)。
【0088】
前記探索方法は、前記さらに新たなノード及び前記さらに新たなエッジを追加して表示する(S4)。
【0089】
これにより、それぞれの測定法が基礎とする測定原理において、前提とされている環境因子が可視化され、測定法に関する情報の視認性がさらに向上し、より利便性が向上した探索方法を提供することができる。
【0090】
〔4〕項と同様に、影響因子データベース(8)は、環境記述データベース(11)、形態記述データベース(12)およびサイズ記述データベース(13)のうちの少なくとも1つを含むとより好適である(
図10,
図11)。
【0091】
〔13〕<ユーザー測定法データベース>
〔9〕項から〔12〕項のうちのいずれか1項において、前記探索方法は、前記記憶装置または他の記憶装置に記憶される、ユーザーごとのユーザー測定法データベース(9)をさらに備える(
図15)。
前記ユーザー測定法データベースは、互いに対応付けて前記物性測定法データベースに記憶される前記測定法とその測定対象である物性パラメータに加えて、当該ユーザーがその測定法を実行するための測定設備に関する情報、及び/または、その測定法によって得られた測定結果に関する情報を、さらに対応付けて記憶する。
【0092】
これにより、測定法に関してユーザー固有の情報が統合され、探索結果から最適な経路等を特定するために提供する支援機能について、ユーザーにとっての利便性をより高めることができる。例えば、探索結果に含まれる複数の経路を表示する場合に、ユーザー測定法データベース(9)を参照して、ユーザーが利用しやすい測定法を優先して表示することができる。
【0093】
〔14〕<測定法・測定データから解析等によって値が得られる物性パラメータの提示>
本発明の代表的な実施の形態は、記憶装置を備える計算機上で動作するソフトウェアによって実装され、探索条件入力ステップ(S2、
図16には不図示)から入力される探索条件にしたがって、前記記憶装置に記憶される物性パラメータ関係性グラフ(15)を探索するグラフ探索ステップ(S3)を備える探索方法であって、以下のように構成される(
図16)。
【0094】
前記物性パラメータ関係性グラフは、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、前記複数のパラメータ対のそれぞれに対応するノード間をエッジとする、グラフである。ここで、前記複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータを第1物性パラメータとする。
【0095】
前記探索方法は、前記記憶装置または他の記憶装置に記憶される物性測定法データベース(6)と、前記物性測定法データベースを参照するグラフ拡張ステップ(S5)とをさらに備える。
【0096】
前記物性測定法データベースは、1または複数の測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶する。前記測定対象である物性パラメータを第2物性パラメータ(
図2における32)とする。前記測定法が基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを第3物性パラメータ(
図2における33)として前記測定法に対応づけて、前記物性測定法データベースにさらに記憶する。前記第2物性パラメータと前記第3物性パラメータとの関係性を、前記測定法に対応づけて、前記物性測定法データベースにさらに記憶する。
【0097】
前記グラフ拡張ステップは、前記物性測定法データベースに記憶される前記1または複数の測定法のそれぞれに対応して新たなノードを前記物性パラメータ関係性グラフに追加し、それぞれの測定法に対応づけて記憶された第2及び第3物性パラメータに対応する前記物性パラメータ関係性グラフ内のノードと前記新たなノードとの間に新たなエッジを追加する。
【0098】
前記グラフ探索ステップは、指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを、探索結果として出力する(S4)。
【0099】
これにより、物性パラメータを起点とする探索に代えて、測定法を起点とする探索を可能とすることができ、探索方法の利便性を向上することができる。例えば、既に知られている測定法からは直接には求めることができない物性値であっても、複数の測定法を組み合わせることによって、解析的に求めることができるような間接的測定法を、ユーザーが知得するための支援機能となっている。
【0100】
〔15〕<影響因子データベース>
〔14〕項において、前記記憶装置または他の記憶装置に記憶される前記探索システムは影響因子データベース(8)をさらに備える(
図16)。
【0101】
前記影響因子データベースは、前記物性測定法データベースに記憶される第2及び第3物性パラメータのうちの少なくとも1個の物性パラメータと、当該物性パラメータが依存性を有する1以上の影響因子とを対応付けて記憶する。
【0102】
前記グラフ拡張ステップは、前記物性測定法データベースが記憶する各測定法に対応して追加したノード及びエッジに加えて、それぞれの測定法が基礎とする測定原理に関与する影響因子をさらに新たなノードとし、当該関係性によって関連が規定される第2及び/または第3物性パラメータに対応するノードとの間をさらに新たなエッジとして、前記物性パラメータ関係性グラフに追加する。
【0103】
前記グラフ探索ステップは、指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを、探索結果として出力する(S4)。
【0104】
これにより、それぞれの測定法が基礎とする測定原理において、前提とされている環境因子が可視化され、測定法に関する情報の視認性がさらに向上し、利便性のより高い探索方法を提供することができる。
【0105】
〔4〕項と同様に、影響因子データベース(8)は、環境記述データベース(11)、形態記述データベース(12)およびサイズ記述データベース(13)のうちの少なくとも1つを含むとより好適である。
【0106】
〔16〕<ユーザー測定法データベース>
〔14〕項または〔15〕項において、前記探索方法は、前記記憶装置または他の記憶装置に記憶される、ユーザーごとのユーザー測定法データベース(9)をさらに備える(
図16)。
【0107】
前記ユーザー測定法データベースは、互いに対応付けて前記物性測定法データベースに記憶される前記測定法とその測定対象である物性パラメータに加えて、当該ユーザーがその測定法を実行するための測定設備に関する情報、及び/または、その測定法によって得られた測定結果に関する情報を、当該測定法に対応付けて記憶する。
【0108】
前記グラフ探索ステップは、指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを、探索結果として出力する(S4)。
【0109】
これにより、測定法に関してユーザー固有の情報が統合され、探索結果から最適な経路等を特定するために提供する支援機能について、ユーザーにとっての利便性をより高めることができる。例えば、探索結果に含まれる複数の経路を表示する場合に、ユーザー測定法データベース(9)を参照して、ユーザーが利用しやすい測定法を優先して表示することができる。
【0110】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0111】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る探索システムの構成例を示すブロック図である。
【0112】
本実施形態1に係る探索システム10は、物性パラメータ関係性データベース1とグラフ生成部2とグラフ探索部4とユーザーインターフェース5と物性測定法データベース6とグラフ拡張部7とを備える。
【0113】
物性パラメータ関係性データベース1は、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対を記憶する。このとき、物性パラメータ対が有する関係性は、科学的根拠に基づいた関係性、即ち、理論的に説明された関係性だけではなく、理論的な説明が未だなされておらず、また、定式化されていない段階であっても、実験データから明確な相関が認められることによって存在が知られている関係性が含まれてもよい。なお、「理論的に説明された関係性」には、定理や公式のように定式化された関係性の他、相関の有無や相関係数の正負(一方が増加するときに他方も増加するか減少するかなど)が説明されている半定量的、あるいは、定性的な関係性までもが広く含まれてよい。このとき、如何なる分野で知られている関係性であっても特に排除される必要はなく、あらゆる分野で関係性が知られている物性パラメータ対を含めることができる。
【0114】
グラフ生成部2はグラフ3を生成する。グラフ3は、物性パラメータ関係性データベース1に記憶される複数のパラメータ対を構成する複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、それぞれのパラメータ対に対応する2つのノード間をエッジとする、グラフである。
【0115】
グラフ探索部4は、ユーザーインターフェース5を介して与えられる探索条件に基づいてグラフ3を探索し、探索結果を出力することができるように構成されている。グラフ探索部4は、探索条件として原因側と結果側の物性パラメータが指定されたとき、グラフ3を対象として、対応するノード間の経路を探索して、1または複数の経路を抽出し、探索結果として出力する。また、グラフ探索部4は、探索条件として原因側または結果側の物性パラメータ及び範囲が指定されたとき、グラフ3を対象として、対応するノードを始点または終点とし、所定の範囲内にある部分グラフを探索結果として出力する。このように、探索結果は、探索条件を満たす複数のノード及び複数のエッジによって構成される1以上の経路または部分グラフである。ここで、物性パラメータ関係性データベース1とグラフ生成部2とグラフ探索部4とは、例えば、特許文献2または3に開示されるように構成することができる。
【0116】
物性測定法データベース6は、1または複数の測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶するデータベースである。
【0117】
ユーザーインターフェース5は、物性測定法データベース6を参照することにより、グラフ探索部4から出力される探索結果に関連する測定法に関する情報を、当該探索結果とともに出力することができるように構成される。ここで、測定法に関する情報には物性値の測定法の原理に利用されている他の物性との関係が含まれてもよい。この他、その測定法が前提としている条件、例えば、温度範囲、試料としての物質の状態(固体、液体、気体)などが含まれてもよい。さらには測定装置や測定受託機関等に関する情報が含まれてもよい。
【0118】
探索結果は上述のように、探索条件を満たすノードを含む部分グラフであるから、ユーザーインターフェース5は、探索結果に含まれるノードに対応する物性パラメータの測定法に関する情報を、物性測定法データベース6を参照することによって取得し、当該探索結果とともに出力することができる。例えば、ユーザーインターフェース5は探索結果である部分グラフを表示し、ユーザーがそれに含まれるノードを指定して測定法情報を要求した時に、そのノードに対応する物性パラメータの測定法に関する情報を、当該探索結果に合わせて表示することができる。なお、測定法に関する情報を出力する対象として指定することができるノードは、必ずしも探索結果に含まれるノードに限定される必要はなく、当該探索結果である部分グラフの近傍にあるノードに拡張されてもよい。ここで「出力」にはその一態様に「表示」が含まれるが「表示」に限られるものではない。このことは本明細書全体を通じて同様である。
【0119】
これにより、測定法について十分な知識を持たないユーザーに対しても、物性探索にあたって実用性の高い知見を提供することができ、探索システムの利便性を向上することができる。特に、目標の物性を有する物質を特定する際に、探索結果として得られた経路に含まれまたはその近傍に存在する物性パラメータの値を確認するための測定法の利便性を含めた検討を可能にすることにより、最適な経路等を特定するための支援機能をユーザーに提供することができる。
【0120】
物性測定法データベース6の構成例について説明する。
図2は、物性測定法データベース6の構成例としてその入力フォームを例示する説明図である。物性測定法データベース6の入力フォーム30は、例示されるように表形式で構成することができる。第1列に測定法31が記載され、第2列にその測定法の測定対象である物性パラメータ32が記載される。さらに、測定原理が利用する物性パラメータ33と測定原理に関与する影響因子34のうちの一方または両方を含んで構成してもよい。影響因子34は通常、測定原理において作成されるチャートの横軸と縦軸を形成するので、
図2には横軸と縦軸に分けて記載した例が示されているが、必ずしも分ける必要はない。詳しくは実施形態2で説明する。また、
図2には例示されないが、測定原理についての解説、測定装置や測定受託機関等の参考情報がさらに含まれてもよい。
【0121】
図2に例示されるように、電流−電圧特性測定では、電気抵抗率、ショットキーバリア高さ及びバンドギャップが測定対象の物性パラメータ32に該当する。電流−電圧特性測定では、横軸に電圧、縦軸に電流をとったときの特性曲線を解析することによって、上述したような物性パラメータの値を求めることができる。電流と電圧の傾きを試料の長さと断面積で規格化することによって電気抵抗率を求めることができ電流−電圧特性が急峻に立ち上がるとき、その閾値からショットキーバリア高さやバンドギャップを求めることができる。このときの電流と電圧は、物性パラメータではないが、物性に影響を与える因子であるので、本明細書では影響因子と呼ぶ。
【0122】
内部光電効果測定(内部光電子スペクトル測定:internal photoemission (IPE) spectroscopy)では、光エネルギーを横軸、光電流を縦軸とする特性を測定することにより、ショットキーバリア高さを求めることができる。
【0123】
応力−ひずみ曲線測定(stress-strain curve (diagram) measurement,引張試験・圧縮試験)では、横軸に歪を縦軸に応力をとることにより、その傾きからヤング率を求めることができ、または、降伏点(yield strength)、引張強さ(ultimate tensile strength)を求めることもできる。
【0124】
光電子収量法(photoelectron yield spectroscopy)では、試料に照射した光の光エネルギーを横軸にとり縦軸にはその照射によって試料から放出される光電子の収量をとることにより、イオン化エネルギーを求めることができる。ここで試料が金属の場合のイオン化エネルギーは仕事関数と等しい。なお、光電子収量は、物性パラメータと位置づけることもできるので、
図2では測定原理が利用する物性パラメータ33の欄に記載されているが、放出される光電子の収量という影響因子と位置づけ、測定原理に関与する影響因子34の欄に記載してもよい。
【0125】
なお、以下の他の測定法についても同様に、物性パラメータか単なる影響因子かの位置づけが必ずしも明確でない場合があるが、本発明においてその区別の明確さはあまり重要ではない。測定法についての知識が十分でないユーザーに対して、測定に関与する物性パラメータまたは影響因子を提示することができることが重要であって、どちらに区別するかを厳密に確定させる意義は低いからである。
【0126】
光学透過スペクトル法では、横軸に試料に照射した光の光エネルギーをとり、その試料を透過した光の強度から光透過率(光透過係数)を縦軸にとることにより、試料のバンドギャップを求めることができる。また、光学吸収スペクトル法では、横軸に試料に照射した光の光エネルギーをとり、その試料を透過した光の強度から光吸収率(光吸収係数)を縦軸にとることにより、試料のバンドギャップを求めることができる。
【0127】
光電子分光法(photoemission electron spectroscopy)では、紫外線などの電磁波の照射にともなって光電効果により放出された電子の運動エネルギーを横軸とし、電子放出率を縦軸にとって、試料のバレンスバンドの最も高いエネルギー準位(バレンスバンドオフセットと呼ぶ)を求めることができる。
【0128】
電界電子放出法(field electron emission measurement)では、試料に高電界を印加したときにトンネル効果によって放出される電子放出率の、印加電圧に対する特性を測定することにより、仕事関数を求めることができる。
【0129】
X線回折法(XRD: X‐Ray Diffraction)では、試料にX線を入射したときに試料によって散乱、干渉、回折したX線を反射側で検出することにより、X線と検出器とのなす角度に対する反射X線強度の関係性から、格子定数などを求めることができる。
【0130】
蛍光X線分析法(XRF:X‐Ray Fluorescence)では、試料にX線を入射したときに試料から放出される固有X線(蛍光X線)を観測する。蛍光X線のエネルギーと強度の関係から、試料の組成を求めることができる。
【0131】
熱電子放出法(thermal electron emission measurement)では、陰極の金属(試料)を加熱することによって放出される熱電子の放出量を測定し、温度と電子放出率との関係から仕事関数を求めることができる。
【0132】
ケルビン法(Kelvin probe)では、標準材料と試料材料を対向配置して、その間の距離を変化させたときに生ずる誘導電流を測定する。標準試料に印加するバイアス電圧を変化させ、誘導電流がゼロになるバイアス電圧を測定して接触電位差を求め、その値から試料の仕事関数を求めることができる。
【0133】
X線吸収分光法(XAS: X‐ray Absorption Spectroscopy)では、試料に入射するX線のエネルギーを横軸とし、観測されたX線吸収率を縦軸にとって描かれる曲線の閾値として、X線吸収端エネルギーを求めることができる。
【0134】
X線発光分光法(XES: X‐ray Emission Spectroscopy)では、試料に励起源として電子線やX線を照射したときに、試料から放出されるX線発光のエネルギーを横軸とし、観測されたX線の強度を縦軸にとって描かれる曲線の高エネルギー側の閾値エネルギーであるX線発光端エネルギーを求めることができる。
【0135】
X線光電子分光法(XPS: X‐ray Photoelectron Spectroscopy)では、試料に励起源としてX線を照射したときに、試料から放出される光電子のエネルギーを横軸とし、観測された光電子の強度を縦軸にとって描かれる曲線から、結合エネルギーとバレンスバンドマキシマムを求めることができる。
【0136】
<測定法データベースに基づくグラフの拡張>
測定法に関する情報の出力方法は任意であるが、探索結果が1以上の経路または部分グラフとして出力される場合には、そのグラフを拡張して出力することができる。すなわち、
図1に示すように探索システム10にグラフ拡張部7を追加する。
【0137】
物性測定法データベース6は、前述のように、測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶する。グラフ拡張部7は、物性測定法データベース6に記憶される測定法に対応する新たなノードをグラフ3に追加し、その測定法の測定対象である物性パラメータに対応するグラフ3内のノードと、追加された新たなノード(測定法に対応)との間に、新たなエッジを追加する。
【0138】
ユーザーインターフェース5は、測定法に対応してグラフ3に追加された新たなノード及び新たなエッジのうち、探索結果である1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに接続されるエッジ及びそれに接続されるノードを、その探索結果とともに表示することができるように構成される。
【0139】
これにより、測定法に関する情報の視認性が向上し、探索システムの利便性をさらに向上することができる。
【0140】
図3は、本実施形態1のグラフ拡張による測定法に関する情報の表示例を示す説明図である。グラフ探索部4から出力された探索結果を示す部分グラフ21と、それに含まれるノードに対応する物性パラメータの測定法が新たなノードとして追加されており、追加された新たなノードと部分グラフ21との間に新たなエッジ22が追加されている。追加された新たなノードは、物性測定法データベース6に記憶されている測定法のうち、その測定対象の物性パラメータが、探索結果を示す部分グラフ21に含まれるものである。
図3では、物性パラメータL,G,M,D,Kのそれぞれを測定対象とする測定法、即ち、X線吸収分光法、赤外吸収法、電圧−電流特性測定、X線光電子分光法、光電子収量法に対応して、新たなノードが追加され、測定対象の物性パラメータL,G,M,D,Kに対応するノードとの間に新たなエッジ22が追加されている。
【0141】
表示のしかたは適宜変更することができる。例えば、探索結果の部分グラフ21に含まれるノードのうち、測定法が物性測定法データベース6に含まれているものすべてについて表示する。また例えば、はじめは探索結果の部分グラフ21のみを表示し、その中でユーザーが指定した物性パラメータに対応する測定法のノードを追加して表示する。
【0142】
図4は、測定法に関連する情報のより具体的な表示例を示す説明図である。探索結果を示す部分グラフ21に、物性パラメータとして、電気抵抗率、バンドギャップ、ショットキーバリア高さ、仕事関数が含まれている例である。相互の関係性はここではあまり重要ではないので、部分グラフ21ではエッジは省略されている。それぞれの物性パラメータの値を測定するための測定法が新たなノードとして追加され、関係性を示す新たなエッジ22が合わせて表示される。この表示例に示すように、1つの物性パラメータの値を測定することができる複数の測定法が示される場合があり、ユーザーは自身が知らなかった測定法に気付くことができる。
図4に例示されるように、バンドギャップを測定するには、光学吸収スペクトル法が一般的であるが、電圧−電流特性測定の結果からも求めることができることがわかる。また、ショットキーバリア高さの測定には、内部光電効果測定、電圧−電流特性測定の測定法を適用することができる。仕事関数の測定法には、光電子収量法、電界電子放出スペクトル熱電子放出法、及び、ケルビン法の各測定法を適用することができる。なお、物性測定法データベース6に記憶される測定法の数が多くなるにしたがって、1つの物性パラメータを測定対象とする測定法をより網羅的に表示することができることとなるが、表示が煩雑となってかえって視認性を阻害することにもなりかねない。表示される測定法の数や種類を、何らかの条件によって制限するように構成してもよい。
【0143】
図4には、
図2に示した入力フォーム30を使って構築された物性測定法データベース6に記憶されている情報がすべて表示されているわけではない。部分グラフ21は、上述のように、指定された探索条件を満たすノードを含む部分グラフであり、それに含まれるノードに対応する物性パラメータの測定法に関する情報が、物性測定法データベース6を参照することによって取得され、当該探索結果である部分グラフ21とともに表示されている。さらに、部分グラフ21に含まれるノードのうち、ユーザーインターフェース5を介して指定されるノードに限って、そのノードに対応する物性パラメータの測定法に関する情報を表示するように構成してもよい。
【0144】
物性測定法データベース6は、前述のように、測定法とその測定対象である物性パラメータに加えて、その測定法が基礎とする測定原理が利用する物性パラメータを当該測定法に対応づけてさらに記憶してもよい。例えば
図2に示されるように、入力フォーム30に測定原理が利用する物性パラメータ33の列を追加して探索システム10に入力し、物性測定法データベース6を構成する。この例では、光電子収量法において測定対象とされる物性パラメータがイオン化エネルギー(金属の場合は仕事関数)であり、測定原理が利用する物性パラメータ33が光電子収量であることが、光電子収量法という測定法に対応付けて、物性測定法データベース6に記憶されている。同様に、光学透過スペクトル法には光透過率(光透過係数)が、光学吸収スペクトル法には光吸収率(光吸収係数)が、それぞれ対応づけられている。また、光電子分光法、電界電子放出法、及び熱電子放出法には、放出電子量また電子放出率がそれぞれ対応づけられている。
【0145】
このときグラフ拡張部7は、物性測定法データベース6に記憶される測定法に対応するノードをグラフ3に新たに追加した上で、その測定法の測定対象の物性パラメータだけでなく、その測定法が基礎とする測定原理が利用する物性パラメータ33に対応するノードについても、当該測定法に対応するノードとの間に、新たなエッジを追加することができる。ユーザーインターフェース5は、測定法に対応して追加されたノードに、測定対象の物性パラメータに対応するノードとの間のエッジに加えて、測定原理に関与する物性パラメータに対応するノードとの間のエッジを追加して表示することができる。
【0146】
図5は、物性測定法データベース6に測定原理が利用する物性パラメータ33が追加された場合の表示例を示す説明図である。物性測定法データベース6に測定原理が利用する物性パラメータ33が、
図2に例示するように追加された場合に、
図4に示した表示例に加えて、電子放出率に対応する新たなノードと、その新たなノードと光電子収量法、電界電子放出法、及び熱電子放出法とをそれぞれつなぐエッジが追加される。
図5では破線で示されている。
【0147】
これにより、物性パラメータの値を得るために、知られている測定法によって直接測定する代わりに、他の測定法による測定結果を解析することによって得られる場合に、ユーザーに気付きの機会を提供することができる。上述の例ではユーザーは、光電子収量法によれば仕事関数を求めることができるだけでなく、別の物性パラメータである電子放出率も光電子収量法によって求めることができることに気付く。
【0148】
別の変形例について説明する。複数の測定法のいずれの測定対象でもない物性パラメータが、その中のいくつかを組み合わせることによって、間接的に測定対象となる場合がある。ユーザーにそのような気づきの機会を提供することは、極めて有効である。
【0149】
図6は、物性測定法データベース6に測定原理が利用する物性パラメータ33が追加された場合の、別の表示例を示す説明図である。
図2に例示した入力フォーム30の最下段から4行に対応するノードが表示されている。即ち
図6には、物性測定法データベース6に記憶される測定法のうち、X線吸収分光法、X線発光分光法、及びX線光電子分光法のそれぞれに対応するノードが表示され、それぞれの測定法の直接の測定対象である物性パラメータである、X線吸収端エネルギー、X線発光端エネルギー、結合エネルギー及びバレンスバンドオフセットのそれぞれに対応するノードを含む部分グラフ21が表示されている。X線吸収端エネルギー、X線発光端エネルギー、結合エネルギー及びバレンスバンドマキシマムは、コンダクションバンドミニマム、バンドギャップ及びフェルミレベルにも密接に関連する物性パラメータである。
図7は、物質のエネルギーバンド構造図であり、X線吸収分光法、X線発光分光法、及びX線光電子分光法の測定対象である物性パラメータと、それらと密接に関連する物性パラメータとの間の関係性が示されている。物質のバレンスバンドとコンダクションバンドの間にはフェルミレベルEFがある。X線光電子分光法の測定対象である結合エネルギーは、結合エネルギー準位EBとフェルミレベルEFの差である。X線吸収分光法の測定対象であるX線吸収端エネルギーは、コンダクションバンドの下端であるコンダクションバンドミニマムECと結合エネルギー準位EBとの差である。X線発光分光法の測定対象であるX線発光端エネルギーはバレンスバンドの上端であるバレンスバンドマキシマムEVと結合エネルギー順位EBとの差である。バレンスバンドオフセットは、バレンスバンドマキシマムEVとフェルミレベルEFの差として、X線光電子分光法の測定対象である。
これらの測定法の直接の測定対象ではない物性パラメータである、バンドギャップ及びコンダクションバンドエッジは、同じエネルギーバンド構造図で説明される。即ち、バンドギャップは、コンダクションバンドミニマムECとバレンスバンドマキシマムEVとの差、コンダクションバンドエッジはコンダクションバンドミニマムECとフェルミレベルEFとの差である。このような物性パラメータの関係性は教科書などに記載されており、本発明の探索システム10では物性パラメータ関係性データベース1に記憶され、グラフ生成部2によって、対応するノード、エッジとしてグラフ3に反映されている。
図6に例示される部分グラフ21は、グラフ3の一部である。
【0150】
ユーザー自らが利用可能な測定法として、X線吸収分光法、X線発光分光法、及びX線光電子分光法を指定したときに、本発明の探索システム10は、
図6に示すような表示をユーザーに提示することができる。これによりユーザーは、上記3つの測定法の直接の測定対象ではない、フェルミレベルとコンダクションバンドミニマムの他、バンドギャップもこれらの測定法の組み合わせによって測定することができる可能性に気づくことができる。
【0151】
以上の例では、グラフ拡張部7は、グラフ生成部2が生成するグラフ3全体を対象として、物性測定法データベース6に基づく新たなノード及び新たなエッジの追加を行うものとして説明した。この場合は、グラフ3の拡張処理までをオフラインで、即ち、グラフ探索処理とは別の時間、別のコンピュータで行う処理として、実行することができる。例えば、グラフ拡張部7とグラフ生成部2とを備え、拡張されたグラフ3を生成するコンピュータと、生成されたグラフ3を記憶装置に保持して、グラフ探索部4とユーザーインターフェース5を備えるコンピュータとを別々に構成することができる。例えば、拡張されたグラフ3を生成するコンピュータをサーバー側とし、グラフ探索部4とユーザーインターフェース5を備えるコンピュータをユーザー側とすることができる。サーバー側では、物性パラメータ関係性データベース1と物性測定法データベース6のいずれか少なくとも一方が変更されたときに、グラフ生成処理とグラフ拡張処理を行い、ユーザー側に更新されたグラフを提供する。ユーザー側では、提供されたグラフが更新されない限り同じグラフに対して種々のグラフ探索処理等を行うことができる。処理が分散され、全体でも必要最低限の演算処理量に抑えられる。
【0152】
一方、グラフ拡張部7を、
図1に示したようにグラフ生成部2に接続するのではなく、ユーザーインターフェース5に接続し、グラフ探索部4から出力される部分グラフを対象として同様のグラフ拡張処理を行って表示するように構成することもできる。即ち、グラフ拡張部7は、探索結果として出力される1以上の経路または部分グラフに含まれるノードに対応する物性パラメータが物性測定法データベース6に記憶されていれば、対応する測定法に対応する新たなノードを探索結果に追加し、探索結果に含まれている前記ノードとの間に新たなエッジを追加する。グラフ拡張部7は、グラフ探索が行われる毎にグラフ拡張処理を行うこととなるが、探索結果に含まれるノードに関連する物性パラメータのみに着目して、その測定法に対応するグラフ拡張処理を行うので、その処理負担は最小限に抑えられる。
【0153】
<ハードウェア/ソフトウェア実装形態>
本発明の探索システム10は、記憶装置と計算機を備えたハードウェアシステム上に、ソフトウェアとして機能構築される。
【0154】
図8は、本発明の探索システム10が実装されるハードウェアシステムの一例を示すブロック図である。
【0155】
サーバー100とユーザー側のワークステーション110,120が、インターネットなどのネットワーク200に接続されている。サーバー100は、計算機101、記憶装置102、ネットワークインターフェース103、入力部104及び表示部105を有する。ユーザー側のワークステーション110,120もそれぞれ、計算機111,121、記憶装置112,122、ネットワークインターフェース113,123、入力部114,124及び表示部115,125を有する。
【0156】
探索システム10は、例えば、物性パラメータ関係性データベース1がサーバー100側の記憶装置102に保持され、グラフ生成部2とグラフ探索部4が計算機101上で動作するソフトウェアとして実現される。グラフ3は計算機101の主メモリ上に展開されてもよいし、記憶装置102に保持されてもよい。物性測定法データベース6もサーバー100側の記憶装置102に保持され、グラフ拡張部7もサーバー側の計算機101上で動作するソフトウェアとして実現される。ユーザーインターフェース5は、ユーザー側のワークステーション110,120に実装され、ネットワーク200経由でサーバー側ワークステーション100と入出力することによって、探索システム10が実現される。ユーザーインターフェース5は、ユーザー側のワークステーション110において、入力部114及び表示部115と、計算機111上で動作してそれらを制御するソフトウェアとして実現され、さらに別のユーザー側のワークステーション120において、入力部124及び表示部125と、計算機121上で動作してそれらを制御するソフトウェアとして実現されるなど、個別ユーザーごとに実装され得る。例えば、後述の影響因子データベースはサーバー側の記憶装置102に保持され、ユーザー測定法データベースは、ユーザーごとにユーザー側のワークステーション110,120の記憶装置112,122に記憶されるとよい。
【0157】
別の態様として、本発明の探索システム10はサーバー100のみに閉じて実装されても良い。物性パラメータ関係性データベース1と物性測定法データベース6は、サーバー100側の記憶装置102に保持され、グラフ生成部2は計算機101上で動作するソフトウェアとして実現され、生成されたグラフ3は、計算機101内のメモリに展開されまたは記憶装置102に保持される。グラフ探索部4、グラフ拡張部7も計算機101上で動作するソフトウェアとして実現され、ユーザーインターフェース5は、入力部104及び表示部105と、計算機101上で動作してそれらを制御するソフトウェアとして実現される。
【0158】
このようなハードウェア/ソフトウェア実装形態は、以下の各実施形態にも同様に適用され得る。また、サーバーとユーザー側ワークステーションの役割分担については、上述した2通りの態様は典型的な例に過ぎず、任意に変更することができる。
【0159】
〔実施形態2〕
図9は、実施形態2に係る探索システムの構成例を示すブロック図である。
【0160】
本実施形態2に係る探索システム10は、実施形態1に係る探索システム10と同様に、物性パラメータ関係性データベース1とグラフ生成部2とグラフ探索部4とユーザーインターフェース5と物性測定法データベース6とグラフ拡張部7とを備え、さらに、影響因子データベース8を備える。
【0161】
物性測定法データベース6は、実施形態1で説明したのと同様に、1または複数の測定法とその測定対象である物性パラメータ32とを対応付けて記憶する。物性測定法データベース6は、さらに、測定法が基礎とする測定原理が利用する物性パラメータ33と測定原理に関与する影響因子34のうちのいずれか一方または両方を、当該測定法に対応付けて記憶してもよい。
【0162】
影響因子データベース8は、物性測定法データベース6に記憶される複数の物性パラメータのうちの少なくとも1個の物性パラメータと、当該物性パラメータが依存性を有する1以上の影響因子と、その依存関係を示す依存性情報とを対応付けて記憶する。他の構成については、実施形態1及び2と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0163】
グラフ拡張部7は、物性測定法データベース6が記憶する各測定法に対応して追加したノード及びエッジに加えて、それぞれの測定法が基礎とする測定原理に関与する影響因子に対応づけて、さらに新たなノードをグラフ3に追加し、当該測定原理によって関連が規定される物性パラメータに対応するノードと追加したさらに新たなノード(関与する影響因子に対応)との間にさらに新たなエッジを追加することができるように構成される。ユーザーインターフェース5は、前記さらに新たなノード及び前記さらに新たなエッジを追加して表示することができるように構成される。
【0164】
これにより、それぞれの測定法が基礎とする測定原理に関与する環境因子が可視化され、測定法に関する情報の視認性がさらに向上し、探索システムの利便性をより向上することができる。なお、測定法およびその測定法が基礎とする原理には、一定の前提条件があることが一般的である。例えばある物性と他の物性との関係が近似式で表される場合に、その近似式が成立する温度範囲が限られることがある。また、ある測定法のための試料には、一般的に、その形態やサイズについての要求仕様が存在する。例えば光学透過スペクトル法の試料には、光がある程度透過する厚さが求められる。このように、測定法に関連する情報として、上記のような形で関与する影響因子も存在する。本実施形態の探索システム10では、測定法だけでなくそれに関連する情報として、このような形での影響因子の寄与をも、ユーザーに示すことによって、探索システムの利便性をより向上することができる。
【0165】
影響因子データベース8は、環境記述データベース11、形態記述データベース12およびサイズ記述データベース13のように、下位概念の影響因子ごとに区分して構成すると、より好適である。
【0166】
環境記述データベース11は、温度、圧力、電界および磁界のうちの少なくとも1つを影響因子として含む。境記述データベース11に保持される影響因子は、物質が置かれている環境を表す因子であって、当該物質の物性もしくは物性パラメータに影響を与える場合がある。
【0167】
形態記述データベース12は、球状、柱状、線状、クラスタ、表面積/体積比、配向方向および分散度のうちの少なくとも1つを影響因子として含む。形態記述データベース12に保持される影響因子は、物質の形状や状態を表す影響因子である。その物質の形状や状態が、当該物質の物性もしくは物性パラメータに影響を与える場合があるので、これを影響因子の一種として位置づけることができる。
【0168】
サイズ記述データベース13は、長さ、径、ナノ、マイクロおよびバルクのうちの少なくとも1つを影響因子として含む。形態記述データベース12に保持される影響因子が物質の形状や状態を表すのに対して、サイズ記述データベース13には、その形状や状態の大きさを表す影響因子が保持される。なお、例示した「長さ」「径」は絶対値を与えることができる影響因子であるのに対し、「ナノ」「マイクロ」「バルク」はピンポイントの絶対値ではなく、ある程度の値の範囲を表す影響因子である。前者は、例えば物性パラメータを規定する数式中に変数として含まれて、定量的な関係性を呈する場合があるので、そのような影響因子である。一方、後者は、例えば、バルク状態では発現していなかった性質がナノサイズの微細構造になったときに初めて発現する場合があるので、そのような場合の物質の大きさを表す影響因子である。このようにいずれも物質の形状や状態の大きさを表す影響因子であるので、同じサイズ記述データベース13に保持する実施形態を例示したが、概念的には多少異なるので、2つのデータベースに区分して保持するように構成してもよい。
【0169】
これにより、影響因子データベース8が異なる概念の下位のデータベースに区分され、測定法に関連する物性パラメータの影響因子の寄与を、表示または探索結果の絞り込みに利用する際に、ユーザーの利便性を向上することができる。
【0170】
図10は、本実施形態2のグラフ拡張による測定法に関する情報の表示例を示す説明図である。
図3に示した表示例に加えて、影響因子の寄与についての表示例が追加されている。
図3と同様に、グラフ探索部4から出力された探索結果を示す部分グラフ21と、それに含まれるノードに対応する物性パラメータの測定法に対応する新たなノードと、その新たなノードと部分グラフ21との間の新たなエッジ22とが追加されている。
図10では、さらに、影響因子データベース8に含まれる影響因子に対応するノードが表示され、さらに関連する物性パラメータに対応するノードとの間にさらに新たなエッジ23が追加されている。
【0171】
図11は、本実施形態2のグラフ拡張による測定法に関する情報の別の表示例を示す説明図である。物性測定法データベース6に、測定原理が利用する物性パラメータ33に加えてその測定原理に関与する影響因子34が含まれた場合の表示例である。
図5に示した表示例に加えて、影響因子のうち環境記述データベースに含まれる温度に対応する新たなノードが追加され、
図5に示した表示例における物性パラメータ、仕事関数と電子放出率が温度依存性をもつことを示すために、それらのノードと温度に対応するノードとの間に、新たなエッジ23が追加されている。
【0172】
〔実施形態3〕
図12は、本実施形態3に係る探索システム10の構成例を示すブロック図である。
【0173】
本実施形態3に係る探索システム10は、
図1に示した実施形態1に係る探索システム10と同様に、物性パラメータ関係性データベース1と、グラフ生成部2と、グラフ探索部4と、ユーザーインターフェース5と、物性測定法データベース6と、グラフ拡張部7とを備え、さらに、ユーザー測定法データベース9を備える。
図9に示した実施形態2に係る探索システム10と同様に、さらに、影響因子データベース8を備えてもよい。
【0174】
ユーザー測定法データベース9は、ユーザーごとに保持されており、互いに対応付けて記憶する測定法とその測定対象である物性パラメータに加えて、当該ユーザーがその測定法を実行するための測定設備に関する情報、及び/または、その測定法によって得られた測定結果に関する情報を、さらに対応付けて記憶する。例えば、ユーザーが所有する測定器や測定設備、過去に得た測定データの有無などについての情報である。他の構成については、実施形態1及び2と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0175】
これにより、測定法に関してユーザー固有の情報が統合され、探索結果から最適な経路等を特定するために提供される支援機能について、ユーザーにとっての利便性をより高めることができる。例えば、探索結果に含まれる複数の経路を表示する場合に、ユーザー測定法データベース9を参照して、ユーザーが利用しやすい測定法を優先して表示することができる。
【0176】
〔実施形態4〕
図13は、本実施形態4に係る探索システム10の構成例を示すブロック図である。
【0177】
本実施形態4に係る探索システム10は、物性パラメータ関係性グラフ15とグラフ探索部4とユーザーインターフェース5と物性測定法データベース6とグラフ拡張部7とを備える。
図13には、環境因子データベース8とユーザー測定法データベース9とをさらに備える構成例が示されているが、この2つは必須の構成ではなく、適宜追加可能な構成に過ぎない。詳しくは後述する。
【0178】
物性パラメータ関係性グラフ15は、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、それら複数のパラメータ対のそれぞれに対応するノード間をエッジとするグラフである。本実施形態4の探索システム10は、これまでに説明した実施形態1〜3の探索システムとは異なり、物性パラメータ関係性データベース1及びグラフ生成部2を備えること、また、グラフ3の経路探索が事前に行われていることを前提とはしていない。
【0179】
ここで、上記の「関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対」に含まれる複数の物性パラメータを第1物性パラメータと呼ぶこととする。この「複数のパラメータ対」及び「第1物性パラメータ」は、実施形態1〜3で説明した物性パラメータ関係性データベース1に記憶される「複数のパラメータ対」及びそれを構成する複数の物性パラメータと同義である。
【0180】
物性測定法データベース6は、1または複数の測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶する。この測定対象である物性パラメータを第2物性パラメータと呼ぶこととする。さらにその測定法が基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを第3物性パラメータと呼ぶこととし、その第3物性パラメータも当該測定法に対応づけて、物性測定法データベース10に記憶する。物性測定法データベース10はさらに、第2物性パラメータと第3物性パラメータとの関係性を、それぞれの測定法に対応づけて記憶してもよい。測定法が第2物性パラメータの値を求めるために第3物性パラメータを利用するためには、測定原理によってその間に関係性が規定されている必要がある。そこで、その関係性も合わせて物性測定法データベース10に記憶するのである。ここで関係性とは数式等で厳密に規定される関係性であってもよいが、依存関係の有無のみを規定するものであってもよい。測定原理が利用する関係性が数式等で規定されるような厳密なものであっても、物性測定法データベース10に記憶される関係性は、単なる依存関係の有無だけとされてもよい。
【0181】
グラフ拡張部7は、物性測定法データベース6が記憶する各測定法をそれぞれ新たなノードとして、物性パラメータ関係性グラフ15に追加することができるように構成される。グラフ拡張部7はさらに、それぞれの測定法に対応付けて記憶された第2及び第3の物性パラメータに対応するノードと、測定法に対応して新たに追加されたノードとの間に新たなエッジを追加する。なお、本実施形態における説明は、第1物性パラメータは網羅的であって、第2及び第3物性パラメータを包含していることを前提としている。知られている測定法において測定対象である第2物性パラメータとその測定原理に利用されている第3物性パラメータとは、相互の関係性が知られていることは自明であり、その関係性を有するパラメータ対を構成する第1物性パラメータであることもまた自明であるからである。仮に、物性測定法データベース10に記憶されている第2及び第3物性パラメータの一方または両方が第1物性パラメータに含まれていない場合であっても、物性測定法データベース10に記憶されている第2及び第3物性パラメータを、関係性を有するパラメータ対として第1物性パラメータに追加すればよい。
【0182】
グラフ探索部4は、ユーザーインターフェース5を介して指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを探索して、探索結果としてユーザーインターフェース5を介して出力することができるように構成される。
【0183】
これにより、グラフ3を対象とした物性探索を行う前であっても、測定法を起点とした物性探索を行うことができ、測定法について十分な知識を持たないユーザーに対しても、物性探索にあたって実用性の高い知見を提供することができ、探索システムの利便性を向上することができる。ユーザーが測定法を指定すると、その測定法によってどのような物性パラメータの値を測定することができるかが出力される。さらに、その測定法によって直接には値を測定することができないものの、測定原理において関係性を利用している他の物性パラメータの存在を知ることができる。このため、測定法について十分な知識を持たないユーザーに対して、新たな気付きの機会を提供することができる。
【0184】
図4を流用して、本実施形態の適用例について説明する。符号21は互いに関係性を有する物性パラメータ対である第1物性パラメータによって構成されたグラフの一部である。2つの物性パラメータの間に関係性が存在すれば、対応するノードの間がエッジによって接続されるが、
図4では第1物性パラメータ間のエッジは、そのようなエッジは図示が省略されている。符号6で囲まれた領域には、物性測定法データベース6が記憶する各測定法に対応するノードが追加されている。測定法に対応するノードと、その測定法の測定対象である第2物性パラメータとの間、及び、その測定法の測定原理が利用している第3物性パラメータとの間には、それぞれ新たなエッジ22が追加されている。
図4では省略されているが、測定法のノードに接続される第2及び第3物性パラメータだけでなく、そのノードから所定の範囲内にあるノードも表示対象に含めてよい。測定法として確立されていないために直接の測定対象ではないが、第1物性パラメータについて規定される関係性を利用すれば、知られている測定法による測定結果から解析的に求めることができる物性パラメータが存在する場合があり、本実施形態の出力は、ユーザーにそのような気付きの機会を提供することができる。さらに、単一の測定法だけからでは求めることができない物性パラメータの値であっても、複数の測定法を組み合わせることにより、解析的に求めることができる場合がある。本実施形態の出力は、そのような場合にも、ユーザーに気付きの機会を提供することができる。
【0185】
本実施形態の探索システム10は、環境因子データベース8とユーザー測定法データベース9のいずれか一方または両方をさらに備えてもよい。
【0186】
上述の探索システム10に、環境因子データベース8が追加された構成例について説明する。環境因子データベース8は、実施形態2で説明したものと同様である。詳しい説明は重複となるので省略する。
【0187】
物性測定法データベース6は、上述のように測定法と第2及び第3物性パラメータとその関係性を互いに対応付けて記憶するが、それに加えて、当該関係性に関連する影響因子をさらに対応付けて記憶する。
【0188】
なお、実施形態2でも説明したように、測定法はその測定原理において、何らかの前提条件がある場合が少なくない。例えば、測定対象の第2物性パラメータと測定原理に寄与する第3物性パラメータとの関係が近似式で表現されている場合に、その近似式が成立する範囲(例えば温度範囲、電圧範囲など)が存在する場合がある。また、測定に際して試料には一般的に、その形態やサイズに求められる仕様が規定されている。本実施形態では、そのような前提条件を物性測定法データベース6に記憶することもできる。さらに、物性測定法データベース6には、このような前提条件を厳密に記憶する必要はなく、因果関係の有無だけが記憶されてもよい。例えば近似式が成立する温度範囲がある場合に、その温度範囲の具体的数値を記憶する必要はなく、測定法が影響因子の一つである温度との間に因果関係を持つという情報だけが記憶されてもよい。ただし、このような因果関係が測定法に特有のものではない場合には、因果関係は環境因子データベース8に記憶されてもよい。
【0189】
グラフ拡張部7は、物性測定法データベース6が記憶する各測定法に対応して追加したノード及びエッジに加えて、それぞれの測定法が基礎とする測定原理が利用する関係性に関連する影響因子を新たなノードとして、物性パラメータ関係性グラフ15に追加することができるように構成される。グラフ拡張部7は、追加した新たなノードと、当該関係性によって関連が規定される第2及び/または第3物性パラメータに対応するノードとの間に新たなエッジを追加する。
【0190】
グラフ探索部4は、ユーザーインターフェース5を介して指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを探索して、探索結果としてユーザーインターフェース5を介して出力することができるように構成される。このときユーザーインターフェース5は、追加した新たなノード及びエッジも追加して表示することができるように構成される。
【0191】
これにより、それぞれの測定法が基礎とする測定原理において、前提とされている環境因子が可視化され、測定法に関する情報の視認性がさらに向上し、探索システムの利便性をより向上することができる。
【0192】
物性測定法データベース6は、上述するように、関連する影響因子を測定法に対応付けて記憶する構成が好ましいが、関連する影響因子の記憶を省略することもできる。環境因子データベース8に記憶されている、物性パラメータと影響因子との関係性をそのまま利用して、測定法と対応する第2及び第3物性パラメータと関係性を持つ影響因子を特定することができるからである。ただしこの場合には、物性と影響因子との間に一般的な関係性があるか否かを示すこととなり、その測定法に特有の条件を示すことはできない。
【0193】
探索システム10に、ユーザー測定法データベース9が追加された構成例について説明する。上述の環境因子データベース8とともに追加してもよい。両方を追加した例が
図13に示されている。
【0194】
ユーザー測定法データベース9は、互いに対応付けて記憶する前記測定法とその測定対象である物性パラメータに加えて、当該ユーザーがその測定法を実行するための測定設備に関する情報、及び/または、その測定法によって得られた測定結果に関する情報を、さらに対応付けて記憶する。
【0195】
これにより、測定法に関してユーザー固有の情報が統合され、探索結果から最適な経路等を特定するために提供する支援機能について、ユーザーにとっての利便性をより高めることができる。
【0196】
ユーザー測定法データベース9の具体的な構成や、これを探索システム10に備えることによる作用効果は、実施形態3で説明したものと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0197】
〔実施形態5〕<探索方法>
以上のように実施形態1〜4で説明した本発明の探索システム10は、実施形態1の「ハードウェア/ソフトウェア実装形態」において
図8を引用して説明したとおり、記憶装置と計算機を備えたハードウェアシステム上に、ソフトウェアとして機能構築することができる。したがって、本発明は、記憶装置と計算機を備えたハードウェアシステムを利用する探索方法と位置付けることができる。
【0198】
図14は、本発明に係る探索方法の一構成例を示すフローチャートである。
【0199】
本発明の探索方法は、記憶装置を備える計算機上で動作するソフトウェアによって実装され、物性パラメータ関係性データベース1を参照するグラフ生成ステップ(S1)と、探索条件入力ステップ(S2)と、グラフ探索ステップ(S3)と、探索結果出力ステップ(S4)とを含む。
【0200】
物性パラメータ関係性データベース1は、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対を、例えば
図8の記憶装置102に保持する。グラフ生成ステップ(S1)は、物性パラメータ関係性データベース1に記憶されるパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータをノードとしそのパラメータ対に対応するノード間をエッジとするグラフ(
図1等のグラフ3、
図14には図示を省略)を生成する。グラフ探索ステップ(S3)は、探索条件入力ステップ(S2)から与えられる探索条件に基づいて前記グラフを探索し、探索条件を満たす複数のノード及び複数のエッジによって構成される1以上の経路または部分グラフを探索結果として出力する(S4)。
【0201】
本発明の探索方法は、測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶する物性測定法データベース6をさらに備え、探索結果出力ステップ(S4)は、物性測定法データベース6を参照することにより、探索結果に関連する測定法に関する情報を、当該探索結果とともに出力することができる。
【0202】
これにより、測定法について十分な知識を持たないユーザーに対しても、物性探索にあたって実用性の高い知見を提供することができ、利便性の高い探索方法を提供することができる。特に、目標の物性を有する物質を特定する際に、探索結果として得られた経路に含まれまたはその近傍に存在する物性パラメータの値を確認するための測定法の検討を可能にすることにより、最適な経路等を特定するための支援機能をユーザーに提供することができる。
【0203】
なお、物性パラメータ関係性データベース1と物性測定法データベース6とは、同じ記憶装置に保持されても、異なる記憶装置に保持されてもよい。
【0204】
図15は、探索方法の変形例を示すフローチャートである。本発明の探索方法は、グラフ拡張ステップ(S5)をさらに備えてもよい。
【0205】
物性パラメータ関係性データベース1に複数のパラメータ対として記憶される複数の物性パラメータを第1物性パラメータとし、その第1物性パラメータに含まれ、物性測定法データベース6において測定法の測定対象として記憶される物性パラメータを第2物性パラメータと呼ぶこととする。グラフ拡張ステップ(S5)は、物性測定法データベース6が記憶する測定法に対応する新たなノードを上述のグラフに追加し、それぞれの測定法に対応する第2物性パラメータに対応するノードと前記新たなノードとの間に新たなエッジを追加する。
【0206】
探索結果出力ステップ(S4)は、新たなノード及びエッジのうち、グラフ探索ステップ(S3)の探索結果に関連するものを、当該探索結果である1以上の経路または部分グラフとともに表示する。より具体的には、新たなノード及びエッジのうち、探索結果である1以上の経路または部分グラフと接続されるものを表示する。
【0207】
これにより、実施形態1で
図3及び
図4を引用して説明したのと同様に、測定法に関する情報の視認性が向上し、利便性がさらに向上された探索方法を提供することができる。
【0208】
物性測定法データベース6は、記憶する測定法が基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを第3物性パラメータとしてさらに記憶してもよい。また、測定対象である第2物性パラメータと測定原理が利用する第3物性パラメータとの関係性を、それぞれの測定法に対応づけて、物性測定法データベース6にさらに記憶してもよい。グラフ拡張ステップ(S5)は、測定法に対応付けて追加されたノードと、当該測定法に対応するとして物性測定法データベース6に記憶される第3物性パラメータに対応するノードとの間に、新たなエッジを追加する。探索結果出力ステップ(S4)は、グラフ拡張ステップ(S5)で追加された前記新たなエッジのうち、グラフ探索ステップ(S3)の探索結果に含まれるノードに接続されるエッジを、当該探索結果とともに表示する。
【0209】
これにより、実施形態1で
図3及び
図4を引用して説明したのと同様に、物性パラメータの値を得るために、ユーザー自身が知っている測定法によって直接測定する代わりに、他の測定法による測定結果を解析することによって得られる場合に、ユーザーに気付きの機会を提供することができる。
【0210】
本発明の探索方法は、
図15に示すように、影響因子データベース8をさらに備えてもよい。影響因子データベース8は、物性パラメータ関係性データベース1と物性測定法データベース6と同じ記憶装置に保持されていても、異なる記憶装置に保持されてもよい。
【0211】
影響因子データベース8、物性測定法データベース6に記憶される複数の物性パラメータのうちの少なくとも1個の物性パラメータと、当該物性パラメータが依存性を有する1以上の影響因子と、その依存関係を示す依存性情報とを対応付けて記憶する。
【0212】
物性測定法データベース6は、互いに対応付けて記憶する測定法と第2及び第3物性パラメータとその関係性に加えて、当該関係性に関連する影響因子を、さらに対応付けて記憶する。
【0213】
グラフ拡張ステップ(S5)は、上述のように物性測定法データベース6を参照して拡張したグラフを、影響因子データベース8を参照することによってさらに拡張する。即ち、物性測定法データベース6が記憶する各測定法に対応して追加したノード及びエッジに加えて、それぞれの測定法が基礎とする測定原理に関与する影響因子をさらに新たなノードとして追加する。また、ここで追加したさらに新たなノードと、当該測定法が基礎とする測定原理が利用する関係性によって関連が規定される第2及び/または第3物性パラメータに対応するノードとの間に、さらに新たなエッジを追加する。
【0214】
探索結果出力ステップ(S4)は、このようにして追加した、さらに新たなノード及びさらに新たなエッジのうち、探索結果に関連するものを、探索結果と合わせて表示する。
【0215】
これにより、実施形態2で説明したのと同様に、それぞれの測定法が基礎とする測定原理において、前提とされている環境因子が可視化され、測定法に関する情報の視認性がさらに向上し、より利便性が向上した探索方法を提供することができる。
【0216】
影響因子データベース8は、環境記述データベース11、形態記述データベース12およびサイズ記述データベース13のように、下位概念の影響因子ごとに区分して構成すると、より好適である。影響因子データベース8にこのような構成を採用した場合の作用及び効果は、実施形態2において
図10を引用して説明したのと同様となる。詳しい説明は繰り返しとなるため省略する。
【0217】
本発明の探索方法は、影響因子データベース8に代えてまたは影響因子データベース8に加えて、ユーザー測定法データベース9をさらに備えてもよい。ユーザー測定法データベース9は、他のデータベースと同じ記憶装置に保持されていても、異なる記憶装置に保持されてもよい。
【0218】
ユーザー測定法データベース9は、実施形態3で説明したのと同様に、ユーザーごとに保持されており、互いに対応付けて記憶する前記測定法とその測定対象である物性パラメータに加えて、当該ユーザーがその測定法を実行するための測定設備に関する情報、及び/または、その測定法によって得られた測定結果に関する情報を、さらに対応付けて記憶する。
【0219】
これにより、測定法に関してユーザー固有の情報が統合され、探索結果から最適な経路等を特定するために提供する支援機能について、ユーザーにとっての利便性をより高めることができる。
【0220】
ユーザー測定法データベース9の具体的な構成や、これを探索システム10に備えることによる作用効果は、実施形態3で説明したものと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0221】
図16は、本発明に係る探索方法の別の構成例を示すフローチャートである。
【0222】
本発明の探索方法は、記憶装置を備える計算機上で動作するソフトウェアによって実装され、探索条件入力ステップ(S2、
図16には図示を省略)から入力される探索条件にしたがって、記憶装置に記憶される物性パラメータ関係性グラフ15を探索するグラフ探索ステップ(S3)を備える。
【0223】
物性パラメータ関係性グラフ15は、実施形態4で説明したのと同様に、関係性を有する物性パラメータの複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータのそれぞれをノードとし、前記複数のパラメータ対のそれぞれに対応するノード間をエッジとする、グラフである。ここで、前記複数のパラメータ対に含まれる複数の物性パラメータを第1物性パラメータとする。
【0224】
本探索方法は、物性測定法データベース6とそれを参照するグラフ拡張ステップ(S5)とをさらに備える。物性測定法データベース6は、物性パラメータ関係性グラフ15を記憶する記憶装置と同じ記憶装置に記憶されても、他の記憶装置に記憶されてもよい。
【0225】
物性測定法データベース6は、実施形態4で説明したのと同様に、測定法とその測定対象である物性パラメータとを対応付けて記憶する。この測定対象である物性パラメータを第2物性パラメータと呼ぶこととする。さらに物性測定法データベース6は、測定法が基礎とする測定原理が利用する1または複数の物性パラメータを、測定法と対応づけて記憶してもよい。測定法が基礎とする測定原理が利用する物性パラメータを、第3物性パラメータと呼ぶこととする。このとき、測定原理における、第2物性パラメータと前記第3物性パラメータとの関係性を、当該測定法に対応づけて、物性測定法データベース6にさらに記憶してもよい。
【0226】
グラフ拡張ステップ(S5)は、物性測定法データベース6が記憶する各測定法をそれぞれ新たなノードとし、物性パラメータ関係性グラフ15に追加する。グラフ拡張ステップ(S5)は、測定法に対応して追加された新たなノードとそれぞれの測定法に対応付けて記憶された第2及び第3の物性パラメータに対応するノードとの間に、新たなエッジを追加する。
【0227】
グラフ探索ステップ(S3)は、測定法情報要求ステップ(S6)で指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを、探索結果として出力する(S4)。
【0228】
これにより、実施形態4で説明したのと同様に、物性パラメータを起点とする探索に代えて、測定法を起点とする探索を可能とすることができ、探索方法の利便性を向上することができる。例えば、既に知られている測定法からは直接には求めることができない物性値であっても、複数の測定法を組み合わせることによって、解析的に求めることができるような間接的測定法を、ユーザーが知得するための支援機能となっている。
【0229】
本探索方法は、影響因子データベース8とユーザー測定法データベース9のいずれか一方または両方をさらに備えてもよい。これらのデータベースは、互いにまたは他のデータベースと同じ記憶装置に記憶されても異なる記憶装置に記憶されてもよい。
【0230】
影響因子データベース8は、上述したように、物性測定法データベース6に記憶される複数の物性パラメータのうちの少なくとも1個の物性パラメータと、当該物性パラメータが依存性を有する1以上の影響因子と、その依存関係を示す依存性情報とを対応付けて記憶する。また、物性測定法データベース6は、互いに対応付けて記憶する測定法と第2及び第3物性パラメータとその関係性に加えて、当該関係性に関連する影響因子を、さらに対応付けて記憶するとよい。
【0231】
グラフ拡張ステップ(S6)は、物性測定法データベース6が記憶する各測定法に対応して追加したノード及びエッジに加えて、それぞれの測定法が基礎とする測定原理に関与する影響因子をさらに新たなノードを物性パラメータ関係性グラフ15に追加する。また、グラフ拡張ステップ(S6)は、ここで追加した新たなノードと、対応する測定法に対応して関係性が規定される第2及び/または第3物性パラメータに対応するノードとの間にさらに新たなエッジを追加する。
【0232】
グラフ探索ステップ(S3)は、測定法情報要求ステップ(S6)で指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを、探索結果として出力する(S4)。
【0233】
これにより、それぞれの測定法が基礎とする測定原理において、前提とされている環境因子が可視化され、測定法に関する情報の視認性がさらに向上し、利便性のより高い探索方法を提供することができる。
【0234】
ユーザー測定法データベース9は、物性測定法データベース6に記憶される測定法について、当該ユーザーがその測定法を実行するための測定設備に関する情報、及び/または、その測定法によって得られた測定結果に関する情報を対応付けて、ユーザーごとに記憶する。
【0235】
グラフ探索ステップ(S3)は、測定法情報要求ステップ(S6)で指定される1または複数の測定法に対応するノードを起点として所定の範囲内にある部分グラフを、探索結果として出力する(S4)。
【0236】
これにより、測定法に関してユーザー固有の情報が統合され、探索結果から最適な経路等を特定するために提供する支援機能について、ユーザーにとっての利便性をより高めることができる。例えば、探索結果に含まれる複数の経路を表示する場合に、ユーザー測定法データベース9を参照して、ユーザーが利用しやすい測定法を優先して表示することができる。
【0237】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。