特開2020-135961(P2020-135961A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-135961端子付電線および端子付電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-135961(P2020-135961A)
(43)【公開日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】端子付電線および端子付電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20200803BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20200803BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R43/048 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-24505(P2019-24505)
(22)【出願日】2019年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】畠山 直美
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E063CB20
5E063CC05
5E063XA01
5E085BB15
5E085CC03
5E085DD14
5E085EE03
5E085FF01
5E085HH06
5E085HH29
5E085JJ06
(57)【要約】
【課題】圧着端子と芯線の接続状態が向上した端子付電線および端子付電線の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線3の一部が露出された電線1と、芯線3の露出部分に圧着される圧着端子2とを備え、圧着端子2と芯線3の圧着部分9は、芯線3を圧着端子2に接触させた状態で圧着端子2および芯線3の少なくとも一方を加熱して形成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線の一部が露出された電線と、
前記芯線の露出部分に圧着される圧着端子と
を備え、
前記圧着端子と前記芯線の圧着部分は、前記芯線を前記圧着端子に接触させた状態で前記圧着端子および前記芯線の少なくとも一方を加熱して形成された端子付電線。
【請求項2】
前記圧着端子と前記芯線の圧着部分は、前記圧着端子および前記芯線の少なくとも一方を加熱しつつ前記圧着端子を前記芯線の露出部分に圧着して形成された請求項1に記載の端子付電線。
【請求項3】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線の一部が露出された電線を圧着端子に当接する工程と、
前記芯線の露出部分に前記圧着端子を圧着する工程と
を含み、
前記圧着端子と前記芯線の圧着部分は、前記芯線を前記圧着端子に接触させた状態で前記圧着端子および前記芯線の少なくとも一方を加熱して形成される端子付電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、端子付電線および端子付電線の製造方法に係り、特に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線を圧着端子で圧着した端子付電線および端子付電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルミニウムからなる芯線を圧着端子で圧着した端子付電線が実用化されている。この端子付電線は、銅などで芯線を形成したものと比較して軽いため、例えば自動車の軽量化のためにハーネスなどに用いられている。しかしながら、アルミニウムからなる芯線を圧着すると応力緩和が生じやすく、芯線と圧着端子との間の接触抵抗が増加するといった問題があった。
【0003】
そこで、芯線と圧着端子との間の接触抵抗を抑制する技術として、例えば、特許文献1には、アルミニウム体と被接続体との間の電気抵抗が大きくなるのを抑制するアルミニウム体の接続構造が提案されている。このアルミニウム体の接続構造は、被接続体に傾斜面を有する複数の突起を設け、この突起をアルミニウム体の表面に圧入するため、アルミニウム体と被接続体との間の接触抵抗を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4790851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアルミニウム体の接続構造は、全ての突起を芯線に同等に圧入することが困難であり、芯線と圧着端子の接続状態が部分的に低下するおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、圧着端子と芯線の接続状態が向上した端子付電線および端子付電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る端子付電線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線の一部が露出された電線と、芯線の露出部分に圧着される圧着端子とを備え、圧着端子と芯線の圧着部分は、芯線を圧着端子に接触させた状態で圧着端子および芯線の少なくとも一方を加熱して形成されたものである。
【0008】
ここで、圧着端子と芯線の圧着部分は、圧着端子および芯線の少なくとも一方を加熱しつつ圧着端子を芯線の露出部分に圧着して形成されることが好ましい。
【0009】
この発明に係る端子付電線の製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線の一部が露出された電線を圧着端子に当接する工程と、芯線の露出部分に圧着端子を圧着する工程とを含み、圧着端子と芯線の圧着部分は、芯線を圧着端子に接触させた状態で圧着端子および芯線の少なくとも一方を加熱して形成されるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、圧着端子と芯線の圧着部分が、芯線を圧着端子に接触させた状態で圧着端子および芯線の少なくとも一方を加熱して形成されるので、圧着端子と芯線の接続状態が向上した端子付電線および端子付電線の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態に係る端子付電線の構成を示す図である。
図2】端子付電線を製造する様子を示す図である。
図3】実施の形態2に係る端子付電線の構成を示す断面図である。
図4】熱衝撃試験を行った端子付電線の抵抗値を測定した結果を示し、(a)は圧着端子を加熱しつつ芯線に圧着した端子付電線の抵抗値を示し、(b)は圧着端子を常温で芯線に圧着した端子付電線の抵抗値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る端子付電線の構成を示す。この端子付電線は、線状に延びるように形成された電線1と、電線1の先端部に接続された圧着端子2とを有する。
【0013】
電線1は、芯線3と、被覆部4とを有する。
芯線3は、電気を伝導するためのもので、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成された複数の素線を束ねて構成されている。
被覆部4は、芯線3を絶縁するためのもので、絶縁材料から構成され、芯線3の外周を長手方向に被覆して、その先端部から芯線3の一部が露出されている。なお、被覆部4は、耐熱性を有することが好ましい。
【0014】
圧着端子2は、接続部5を有し、この接続部5に圧着部6および保持部7が一体に接続されている。圧着端子2は、例えば銅などの芯線3と異なる材料から構成することができる。
接続部5は、例えば自動車の電子機器などの外部機器に電気的に接続されるもので、電線1の先端部より前側に配置されている。接続部5は、円板形状を有し、その中央部に外部機器に接続するための孔部8が形成されている。
【0015】
圧着部6は、芯線3に対して電気的に接続されるもので、接続部5と保持部7の間において芯線3の露出部分に対応するように配置されている。圧着部6は、芯線3の外周部を囲むように筒状に形成されて、芯線3の露出部分に圧着されている。具体的には、圧着部6は、芯線3の外周部を互いに反対方向から囲むように形成された一対の側壁部6aおよび6bを有し、側壁部6aおよび6bの一方の縁部が接続部5および保持部7に一体に接続されると共に他方の縁部が互いに対向するように配置されている。この側壁部6aおよび6bが芯線3に向かって互いに反対方向から押圧されることにより、圧着部6が芯線3に圧着される。ここで、圧着部6と芯線3とが接着する圧着部分9は、圧着部6を加熱しつつ芯線3に圧着することで形成されている。さらに、圧着部6の内面には、芯線3に食い込むように突出する複数の突出部10が形成されている。
【0016】
保持部7は、圧着端子2を電線1に保持させるもので、被覆部4の先端部近傍に対応するように配置されている。保持部7は、被覆部4の外周部を囲むように筒状に形成されて、被覆部4に圧着されている。具体的には、保持部7は、被覆部4の外周部を互いに反対方向から囲むように形成された一対の側壁部7aおよび7bを有し、側壁部7aおよび7bの一方の縁部が圧着部6に一体に接続されると共に他方の縁部が互いに対向するように配置されている。この側壁部7aおよび7bが被覆部4に向かって互いに反対方向から押圧されることにより、保持部7が被覆部4に圧着される。
【0017】
次に、端子付電線の製造方法について説明する。
まず、図2(a)に示すように、圧着端子2が加熱装置H上に載置されて加熱される。ここで、圧着端子2は、銅板を切り抜いて形成することができ、接続部5、圧着部6および保持部7がそれぞれ平板状に形成されて同一平面上に並ぶように互いに接続されている。圧着端子2は、突出部10が形成された圧着部6の内面が上方を向くように、すなわち外面が加熱装置Hに当接するように載置される。これにより、圧着端子2の全体を加熱装置Hで加熱することができる。ここで、圧着端子2は、25℃の常温より高温で加熱、例えば約100℃で加熱することができる。
【0018】
続いて、図2(b)に示すように、電線1のアルミニウムからなる芯線3の一部が被覆部4から露出され、その電線1が加熱装置Hで加熱される圧着端子2において圧着部6および保持部7に当接するように載置される。具体的には、電線1は、芯線3の露出部分が圧着部6の内面に当接し、被覆部4が保持部7の内面に当接するように載置される。また、電線1は、圧着端子2の中央部、すなわち圧着部6の側壁部6aと側壁部6bの間を通るように載置される。
そして、図2(c)に示すように、加熱装置Hで圧着端子2を加熱しつつ圧着部6が芯線3の露出部分に圧着される。このとき、圧着部6の側壁部6aおよび6bが芯線3の露出部分に対して互いに反対方向から押圧されることにより圧着される。
【0019】
このように、圧着端子2を芯線3に接触させた状態で圧着端子2を加熱することにより、圧着部6および芯線3が応力を緩和するようにアニーリングされて、図1(a)および(b)に示す圧着部6と芯線3との圧着部分9を滑らかに形成することができる。これにより、圧着部6を芯線3に全体的に一定の圧力で接着させることができる。さらに、圧着部6が芯線3に熱間圧着されることにより、圧着部6と芯線3の接続量が増加した圧着部分9を形成することができる。このようにして、圧着部分9における接触抵抗値の増加を長期間にわたって抑制すると共に端子付電線毎の接触抵抗値のばらつきを抑制することができ、圧着部分9における圧着部6と芯線3の接続状態を向上させることができる。
また、圧着部6の内面には突出部10が配置されているため、圧着部6と芯線3が強固に接着した圧着部分9を形成することができ、圧着部分9における圧着部6と芯線3の接続状態をさらに向上させることができる。
【0020】
続いて、圧着端子2の保持部7が電線1の被覆部4に圧着される。このとき、保持部7の側壁部7aおよび7bが被覆部4に対して互いに反対方向から押圧されることにより圧着される。これにより、圧着端子2を電線1に安定して保持させることができる。
このようにして、図1(a)および(b)に示すように、電線1に圧着端子2が圧着された端子付電線を作製することができる。
【0021】
本実施の形態によれば、圧着端子2と芯線3の圧着部分9が、圧着端子2を加熱しつつ圧着端子2を芯線3の露出部分に圧着して形成されるため、圧着端子2と芯線3の接続状態を向上させることができる。
なお、本実施の形態では、圧着端子2と芯線3の圧着部分9が、圧着端子2を加熱しつつ圧着端子2を芯線3の露出部分に圧着して形成されたが、圧着端子2および芯線3の少なくとも一方を加熱しつつ圧着端子2を芯線3の露出部分に圧着して形成できればよく、圧着端子2を加熱するものに限られるものではない。例えば、圧着端子2と芯線3の圧着部分9は、芯線3を加熱しつつ圧着端子2を芯線3の露出部分に圧着して形成することもできる。
【0022】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、圧着端子2と芯線3の圧着部分9は、圧着端子2および芯線3の少なくとも一方を加熱しつつ圧着端子2を芯線3の露出部分に圧着して形成されたが、芯線3を圧着端子2に接触させた状態で圧着端子2および芯線3の少なくとも一方を加熱して形成できればよく、これに限られるものではない。
例えば、図3に示すように、実施の形態1の圧着部分9に換えて圧着部分21を配置することができる。
【0023】
圧着端子2と芯線3の圧着部分21は、圧着端子2を芯線3に25℃の常温で圧着した後に圧着端子2の周囲全体を加熱して形成されたものである。このように、圧着端子2を芯線3に接触させた状態で圧着端子2を加熱することにより、圧着部分21における接触抵抗値の増加を長期間にわたって抑制すると共に端子付電線間の接触抵抗値のばらつきを長期間にわたって抑制することができ、圧着部分21における圧着部6と芯線3の接続状態を向上させることができる。
なお、圧着端子2は、実施の形態1と同様に、常温より高温で加熱、例えば約100℃で加熱することができる。
【0024】
本実施の形態によれば、圧着端子2と芯線3の圧着部分21が、圧着端子2を芯線3に圧着した後に圧着端子2を加熱して形成されるため、圧着端子2と芯線3の接続状態を向上させることができる。
ただし、圧着端子2と芯線3の圧着部分は、圧着端子2および芯線3の少なくとも一方を加熱しつつ圧着端子2を芯線3の露出部分に圧着して形成することが好ましい。これにより、圧着端子2と芯線3の接続状態をより向上させることができる。
【0025】
なお、上記の実施の形態1および2において、圧着端子2は、芯線3と同じアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成してもよく、芯線3と異なる材料、例えば銅および銅合金などから構成することもできる。
また、上記の実施の形態1および2において、圧着端子2は、表面に金属を被膜させる表面処理を施してもよく、例えば錫および半田などで表面処理することができる。
【実施例】
【0026】
実施例1
銅合金からなる圧着端子(SMK株式会社製、CTA1118−0601)を100℃で加熱しつつ高純度アルミニウムからなる芯線を有する電線(LEONI AG社製、断面積0.75mm、長さ100mm、導体抵抗4.36mΩ)の両端に圧着して端子付電線を作製した。
【0027】
比較例1
銅合金からなる圧着端子(SMK株式会社製、CTA1118−0601)を25℃の常温で高純度アルミニウムからなる芯線を有する電線(LEONI AG社製、断面積0.75mm、長さ100mm、導体抵抗4.36mΩ)の両端に圧着して端子付電線を作製した。
【0028】
評価方法
実施例1および比較例1の端子付電線の熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験は、−30℃で30分間維持した後に+120℃で30分間維持するサイクルを100サイクル繰り返す環境に端子付電線を曝して行った。15本の端子付電線について熱衝撃試験を行った後、両端に圧着された圧着端子間の抵抗値を測定した。その結果を図4(a)および(b)に示す。
【0029】
図4(a)に示すように、圧着端子を加熱しつつ芯線に圧着した15本全ての端子付電線について、熱衝撃試験前に対する熱衝撃試験後の抵抗値の上昇が0.5mΩ以下に収まることがわかった。これに対して、図4(b)に示すように、圧着端子を常温で芯線に圧着した端子付電線は、その多くが熱衝撃試験前に対する熱衝撃試験後の抵抗値が0.5mΩより大きく上昇することがわかった。このことから、圧着端子を加熱しつつ芯線に圧着することにより、その圧着部分における接触抵抗値の増加が長期間にわたって抑制されることが示唆された。
また、圧着端子を加熱しつつ芯線に圧着した15本の端子付電線が、圧着端子を常温で芯線に圧着した15本の端子付電線と比較して、熱衝撃試験後の抵抗値のばらつきが小さいことがわかった。このことから、圧着端子を加熱しつつ芯線に圧着することにより、端子付電線間の接触抵抗値のばらつきが長期間にわたって抑制されることが示唆された。
【符号の説明】
【0030】
1 電線、2 圧着端子、3 芯線、4 被覆部、5 接続部、6 圧着部、6a,6b,7a,7b 側壁部、7 保持部、8 孔部、9,21 圧着部分、10 突出部、H 加熱装置。
図1
図2
図3
図4