【解決手段】本発明の一態様は、表裏に電極層が設けられた発熱素子と、発熱素子を間に挟持し、表裏の電極層のそれぞれと導通する一対の電極板と、一対の電極板を間に挟持する一対の絶縁板と、放熱面を有し、発熱素子、一対の電極部および一対の絶縁板で構成された発熱構造体を内部に収容する筒体と、を備えた絶縁防水型ヒータであって、一対の絶縁板のそれぞれは、筒体の筒内における放熱面とは反対側の内面と密着している。
前記筒体における前記第1フィンおよび前記第2フィンが設けられた部分の厚さは、前記筒体における前記第1フィンおよび前記第2フィンよりも外側の部分の厚さよりも薄い、請求項2記載の絶縁防水型ヒータ。
前記発熱素子は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子である、請求項1から5のいずれか1項に記載の絶縁防水型ヒータ。
前記発熱素子は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子である、請求項10から12のいずれか1項に記載の絶縁防水型ヒータの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような発熱素子を用いた絶縁防水型ヒータにおいては、発熱素子で発生させた熱を効率良く筒体に伝え、筒体の外側の水などの加熱対象物へ無駄なく伝えることが望まれる。しかしながら、発熱素子を一対の電極部材で挟み込み、絶縁シートで包んで筒体の内部に収容する構成では、発熱素子の熱を筒内から筒外まで効率良く伝えることは難しい。
【0006】
そこで、筒内において絶縁シートと筒体の内面との間に熱伝導性を高める部材(例えば、シリコーン樹脂)を介在させることが考えられる。しかし、このような部材を介在させると部材要素の増加を招くとともに、製造工程の複雑化を招く原因となる。
【0007】
本発明は、製造容易な構成で、しかも発熱素子の熱を外部に効率良く伝えることが可能な絶縁防水型ヒータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、表裏に電極層が設けられた発熱素子と、発熱素子を間に挟持し、表裏の電極層のそれぞれと導通する一対の電極板と、一対の電極板を間に挟持する一対の絶縁板と、放熱面を有し、発熱素子、一対の電極部および一対の絶縁板で構成された発熱構造体を内部に収容する筒体と、を備えた絶縁防水型ヒータであって、一対の絶縁板のそれぞれは、筒体の筒内における放熱面とは反対側の内面と密着固定している。
【0009】
このような構成によれば、電極板と筒体の内面との間の絶縁部材として板状である絶縁板が用いられるため、一対の電極板で発熱素子を挟持する方向において、発熱素子の電極層、電極板、絶縁板および筒体の内面のそれぞれにおいて隣接部材間が面接触する状態となる。さらに、一対の絶縁板のそれぞれが、筒体の内面と密着しているため、発熱素子で発生した熱が部材の面接触および密着性によって効率良く外部へ伝わることになる。
【0010】
上記の絶縁防水型ヒータにおいて、放熱面は、平行な第1放熱面および第2放熱面を有し、第1放熱面にろう付けによって接続された第1フィンと、第2放熱面にろう付けによって接続された第2フィンと、をさらに備えていることが好ましい。これにより、放熱特性をさらに高めることができる。
【0011】
上記の絶縁防水型ヒータにおいて、筒体における第1フィンおよび第2フィンが設けられた部分の厚さは、筒体における第1フィンおよび第2フィンよりも外側の部分の厚さよりも薄いことが好ましい。これにより、第1フィンおよび第2フィンの部分での筒体の内面と絶縁板との密着性がより高まり、放熱特性を高めることができる。
【0012】
上記の絶縁防水型ヒータにおいて、筒体は、放熱面に一体成形されたフィンを有していてもよい。これにより、フィンが筒体と一体になるため、放熱特性を高めることができるとともに、部品点数の削減を図ることができる。
【0013】
上記の絶縁防水型ヒータにおいて、一対の絶縁板は、酸化アルミニウムを含んでいてもよい。これにより、一対の絶縁板に十分な硬さおよび平坦性を持たせることができ、絶縁板と筒体の内面との密着性を高めることができる。
【0014】
上記の絶縁防水型ヒータにおいて、発熱素子は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子であってもよい。これによりPTC素子の正温度特性を利用して、容易な温度制御および低消費電力化を図ることができる。
【0015】
上記の絶縁防水型ヒータにおいて、一対の電極部のうちの一方である第1電極部は、電極層と導通するように接する第1板状部分と、第1板状部分における筒体の一方の開口側の端部に設けられた第1端子部分と、を有し、一対の電極部のうちの他方である第2電極部は、電極層と導通するように接する第2板状部分と、第2板状部分における筒体の一方の開口側の端部に設けられた第2端子部分と、を有し、一対の電極部の間で発熱素子を挟持する方向を第1方向とした場合、第1方向にみて、第1端子部分と第2端子部分とは互いにずれた位置で配置されていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、第1方向にみて、第1端子部分と第2端子部分とが互いにずれた位置に配置されるため、2つの端子部分を重ねて配置する場合に比べて両者の距離を長くとることができ、耐電圧を高めることができる。
【0017】
上記の絶縁防水型ヒータにおいて、第1端子部分には第1導通ケーブルが接続され、第2端子部分には第2導通ケーブルが接続され、第1端子部分と第1導通ケーブルとの接続部分、および第2端子部分と第2導通ケーブルとの接続部分のそれぞれは、筒体の筒内に配置されていてもよい。これにより、導通ケーブルの接続部分が筒外に露出せず、防水性を高めることができる。
【0018】
上記の絶縁防水型ヒータにおいて、第1端子部分は第1かしめ部分を有し、第2端子部分は第2かしめ部分を有し、第1電極部は、第1板状部分と第1かしめ部分との間に設けられた第1凸状延出部分を有し、第2電極部は、第2板状部分と第2かしめ部分との間に設けられた第2凸状延出部分を有していてもよい。
そして、第1方向と直交し、筒体の延在する方向を第2方向とした場合、第1凸状延出部分における第2方向の長さは、第1かしめ部分における第1凸状延出部分側のかしめ皺の第2の方向の長さよりも長く、第2凸状延出部分における第2方向の長さは、第2かしめ部分における第2凸状延出部分側のかしめ皺の第2の方向の長さよりも長く設けられていてもよい。
【0019】
上記のような構成によれば、かしめ部分に形成されるかしめ皺の第2方向の長さより、凸状延出部分の第2方向の長さのほうが長いため、かしめ皺の影響が板状部分に及ばない。すなわち、かしめによる板状部分のうねりの影響を抑制して発熱素子の電極層との接触を行うことができる。
【0020】
本発明の一態様は、放熱面を有する筒体の前記放熱面にフィンをろう付けする工程と、表裏に電極層が設けられた発熱素子を一対の電極部で挟持する工程と、一対の電極部を一対の絶縁板で挟持する工程と、発熱素子、一対の電極部および一対の絶縁板で構成された発熱構造体を筒体の筒内に収容する工程と、フィンを介して筒体を加圧して筒体を押し潰すことにより、一対の絶縁板のそれぞれを筒体の筒内における放熱面とは反対側の内面と密着させて発熱構造体を筒内に固定する工程と、を備えた絶縁防水型ヒータの製造方法である。
【0021】
このような構成によれば、筒体にフィンを取り付けた状態で、フィンを介して筒体を加圧し、筒内に発熱構造体を固定するため、この加圧によって発熱構造体の筒内への固定と、発熱素子の電極層、電極板、絶縁板および筒体の内面のそれぞれにおける隣接部材間の面接触とを一括処理で行うことができる。
【0022】
本発明の一態様は、放熱面を有する筒体の前記放熱面にフィンを一体成形する工程と、表裏に電極層が設けられた発熱素子を一対の電極部で挟持する工程と、一対の電極部を一対の絶縁板で挟持する工程と、発熱素子、一対の電極部および一対の絶縁板で構成された発熱構造体を筒体の筒内に収容する工程と、フィンを介して筒体を加圧して筒体を押し潰すことにより、一対の絶縁板のそれぞれを筒体の筒内における放熱面とは反対側の内面と密着させて発熱構造体を筒内に固定する工程と、を備えた絶縁防水型ヒータの製造方法である。
【0023】
このような構成によれば、筒体の放熱面にフィンを一体成形するため、別途フィンを放熱面に接続する工数を削減することができる。また、筒体の放熱面に一体成形されたフィンを介して筒体を加圧し、筒内に発熱構造体を固定するため、フィンを介して加圧力を筒内に効率良く伝えることができる。これにより、発熱構造体の筒内への固定と、発熱素子の電極層、電極板、絶縁板および筒体の内面のそれぞれにおける隣接部材間の面接触とを一括処理で、かつ効率良く行うことができる。
【0024】
上記の製造方法において、一対の絶縁板は、酸化アルミニウムを含んでいてもよい。一対の絶縁板に十分な硬さおよび平坦性を持たせることができ、筒体を加圧した際の絶縁板の耐荷重性と、絶縁板と筒体の内面との密着性とを高めることができる。
【0025】
上記の製造方法において、発熱素子は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子であってもよい。これによりPTC素子の正温度特性を利用して、容易な温度制御および低消費電力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、製造容易な構成で、しかも発熱素子の熱を外部に効率良く伝えることが可能な絶縁防水型ヒータおよびその製造方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0029】
(絶縁防水型ヒータの構成)
図1は、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ(以下、単に「ヒータ」とも言う。)の構成を例示する斜視図である。
図2は、本実施形態に係るヒータの構成を例示する分解斜視図である。
本実施形態に係るヒータ1は、電圧印加によって発熱する装置である。特に、ヒータ1は、例えば300ボルト(V)以上の高電圧で駆動可能であるとともに、IPコード(IEC:International Electrotechnical Commission)におけるIP67をクリアする高い防水性および防塵性を有している。
IP67は、機器の内部に粉塵が入らない防塵性能と、一時的に一定水圧の条件に水没しても内部に浸水しない程度の防水性能を有することを意味する。
【0030】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係るヒータ1は、発熱素子10、一対の電極板20、一対の絶縁板30および筒体50を備える。
なお、本実施形態では、説明の便宜上、一対の電極板20の間で発熱素子10を挟持する方向を第1方向D1、第1方向と直交し筒体50の延在する方向を第2方向D2、第1方向D1および第2方向D2と直交する方向を第3方向D3と言うことにする。また、第1方向D1は厚さ方向、第2方向D2は長さ方向、第3方向D3は幅方向とも言うことにする。
【0031】
発熱素子10は、電圧の印加によって発熱する素子である。発熱素子10には、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)素子が用いられる。PTC素子は正温度特性を有する。すなわち、キュリー点以上の温度になると抵抗が増加して、それ以上の温度上昇が制限される。発熱素子10としてPTC素子を用いることで、温度制御の容易性および消費電力の抑制を図ることができる。
【0032】
PTC素子の正温度特性は、チタン酸バリウム(BaTiO
3)に微量の希土類などを添加することで変化する。本実施形態では複数の発熱素子10が設けられる。1つの発熱素子10は、厚さ約3ミリメートル(mm)、幅約24mm、長さ約15mmの略直方体である。
【0033】
本実施形態に係るヒータ1では、発熱素子10として、約300V以上の高電圧で駆動するための組成、形状およびサイズが適用される。また、本実施形態に係るヒータ1では、約500ワット(W)以上の高出力を得るとともに、省スペース化を図るため、上記の大きさの発熱素子10が第2方向D2に複数個、直列に並べられている。
【0034】
発熱素子10の表裏面(厚さ方向の表裏面)のそれぞれには電極層10aが設けられる。電極層10aには、銀(Ag)やアルミニウム(Al)等の金属が用いられる。これらの金属を発熱素子10の表裏面に例えば溶射することで電極層10aが形成される。電極層10aは発熱素子10とオーミックコンタクトしている。
【0035】
発熱素子10は、一対の電極板20の間に挟持される。一対の電極板20のうちの一方は第1電極板201であり、他方は第2電極板202である。説明の便宜上、第1電極板201および第2電極板202を区別せずに示すときは、電極板20と言うことにする。第1電極板201は、発熱素子10の一方の電極層10aと導通し、第2電極板202は、発熱素子10の他方の電極層10aと導通する。
【0036】
第1電極板201は、第1板状部分211、第1端子部分221および第1凸状延出部分231を有する。第2電極板202は、第2板状部分212、第2端子部分222および第2凸状延出部分232を有する。また、第1端子部分221は第1かしめ部分251を有し、第2端子部分222は第2かしめ部分252を有する。
【0037】
説明の便宜上、第1板状部分211および第2板状部分212を区別せずに示すときは、板状部分210と言うことにする。また、第1端子部分221および第2端子部分222を区別せずに示すときは、端子部分220と言うことにする。また、第1凸状延出部分231および第2凸状延出部分232を区別せずに示すときは、凸状延出部分230と言うことにする。また、第1かしめ部分251および第2かしめ部分252を区別せずに示すときは、かしめ部分250と言うことにする。
【0038】
板状部分210は、第2方向D2に延在する薄板状の部分であり、電極層10aと導通するように接する。板状部分210の幅(第3方向D3の長さ)は、20mm以上30mm以下程度あるとよい。これにより、十分な発熱出力を得ることができる。
【0039】
なお、板状部分210の幅は、電極層10aの幅よりも広く、発熱素子10の幅以下であることが望ましい。板状部分210の幅が電極層10aの幅よりも広いことで、電極層10aの全体を板状部分210と接触させることができる。一方、板状部分210の幅を発熱素子10の幅以下にすることで、板状部分210の幅方向の縁部分が発熱素子10よりも外側にはみ出ないことになる。
【0040】
端子部分220は、板状部分210における筒体50の一方の開口50a側の端部に設けられる。第1かしめ部分251には第1導通ケーブルC11がかしめによって固定され、第2かしめ部分252には第2導通ケーブルC12がかしめによって固定される。
【0041】
説明の便宜上、第1導通ケーブルC11および第2導通ケーブルC12を区別せずに示すときは、導通ケーブルC10と言うことにする。導通ケーブルC10は、導線の周囲を絶縁被覆材で覆ったものである。導通ケーブルC10の先端において絶縁被覆材から露出する導線がかしめ部分250でかしめによって接続される。また、絶縁被覆材の先端部分についても、かしめ部分250でかしめによって固定されていることが望ましい。かしめによる接続では、はんだ付け、ろう付け、ねじ止めに比べて容易かつ確実に接続することができる。
【0042】
凸状延出部分230は、板状部分210とかしめ部分250との間に設けられる。凸状延出部分230は、板状部分210における開口50a側の端部から第2方向D2へ、開口50aに向けて凸型に延出した部分である。凸状延出部分230の先端部分から第2方向D2へ、かしめ部分250が延出している。
【0043】
電極板20には、例えばステンレスやアルミニウム(Al)が用いられる。板状部分210の厚さは約0.2mm以上0.5mm以下程度である。板状部分210と発熱素子10の電極層10aとは、導電性および熱伝導性に優れた例えばシリコーン系接着剤によって接着される。なお、電極層10aの表面には、発熱素子10の表面の凹凸に対応した微小な凹凸が形成されている。したがって、接着剤の導電性が低くても、電極層10aの微小な凹凸の凸部が接着剤を突き抜けて板状部分210と接し、十分な導通を得ることができる。
【0044】
一対の絶縁板30は絶縁性を有する板状部材であり、一対の電極板20を間に挟持する。一対の絶縁板30のうちの一方は第1絶縁板301であり、他方は第2絶縁板302である。説明の便宜上、第1絶縁板301および第2絶縁板302を区別せずに示すときは、絶縁板30と言うことにする。
【0045】
絶縁板30は、例えば酸化アルミニウム(アルミナ)を含む。絶縁板30は、酸化アルミニウムの板材によって構成されていてもよいし、芯材となる支持板の表面に酸化アルミニウムを被覆した構成でもよい。第1絶縁板301は第1電極板201の外側に配置され、第2絶縁板302は第2電極板202の外側に配置される。すなわち、第1絶縁板301と第2絶縁板302との間に、発熱素子10を挟持した一対の電極板20が挟持される状態となる。
【0046】
筒体50は中空部55を有し、発熱素子10、一対の電極板20および一対の絶縁板30で構成された発熱構造体100を中空部55内に収容する。筒体50は、一対の放熱面51と、一対の側面53とを有し、第2方向D2に伸びる筒型に構成される。放熱面51は、平行な平坦面である第1放熱面511および第2放熱面512を有する。説明の便宜上、第1放熱面511および第2放熱面512を区別せずに示すときは、放熱面51と言うことにする。
【0047】
筒体50には、一方端側の開口50aと、他方端側の開口50bとが設けられる。発熱構造体100は、筒体50の例えば開口50aから筒内に挿入される。筒体50は、例えばアルミニウム(Al)によって構成され、発熱構造体100を中空部55内に収容した状態で第1方向D1に加圧される。この加圧によって放熱面51が押圧され、側面53が外側に屈曲する状態となる。
【0048】
加圧によって筒体50が第1方向D1に押し潰されることで、絶縁板30と筒内における放熱面51とは反対側の内面51aとが密着する状態となる。すなわち、電極板20と筒体50の内面51aとの間の絶縁部材として板状である絶縁板30が用いられるため、第1方向D1において、発熱素子10の電極層10a、電極板20、絶縁板30および筒体50の内面51aのそれぞれにおいて隣接部材間が面接触する状態となる。さらに、一対の絶縁板30のそれぞれが、筒体50の内面51aと密着する状態になるため、発熱素子10で発生した熱が部材の面接触および密着性によって効率良く外部へ(発熱素子10から電極板20、絶縁板30および放熱面51へ)伝わることになる。
【0049】
ここで、絶縁板30と筒体50の内面51aとの密着性は、例えば、接着剤を用いることなく発熱構造体100を筒体50に挿入して加圧固定した際、発熱構造体100を引き抜くことができない程度に密着していることをいう。好ましくは、絶縁板30と内面51aとの面接触における接触圧力の分布が実質的に均一になっている状態(例えば、両端部および中央部で均一な接触圧力になっている状態)である。例えば、ヒータ1を第2方向D2に2〜4つ程度に分割した際、どの分割片であっても筒体50から発熱構造体100が抜けない状態である。
【0050】
このように絶縁板30と筒体50の内面51aとが均一性高く密着していることで、発熱素子10で発生させた熱を効率良く放熱面51まで伝えることが可能となる。
【0051】
封止部60は、筒体50の両端の開口50aおよび50bを封止する部材である。封止部60には、例えばシリコーン系樹脂やエポキシ樹脂などの耐電圧および耐熱型の封止材が用いられる。
【0052】
また、封止部60としては、シリコーン系ゴムなどのゴム材を開口50aに嵌め込み、筒体50の潰しによって密封性を高めた構成であってもよい。これにより、筒体50の開口50aおよび50bを製造容易に封止することができる。すなわち、硬化前の柔らかい状態のシリコーン系樹脂を開口50aおよび50bに充填した後、硬化させることで、筒体50の内部を容易かつ確実に液密状態で封止することができる。電極板20と接続された導通ケーブルC10は、封止部60を貫通して外部へ引き出される。
【0053】
本実施形態では、封止部60によって筒体50の内部への防水構造、および第1端子部分221と第2端子部分222との間における300V以上の耐電圧構造が構成される。また、封止部60としては、耐熱温度150℃以上の材料を用いることが好ましい。
【0054】
なお、筒体50の両端部にキャップ(図示せず)を取り付けてもよい。キャップは、電気絶縁性および発熱素子10が発する熱に対する耐熱性を有する。キャップの材料としては、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybutylene Terephthalate)が好適である。
【0055】
また、本実施形態に係るヒータ1において、第2方向D2にみたときの筒体50の厚さとして、中央部分56の厚さt1が、縁部分57の厚さt2よりも薄くなっていることが好ましい。すなわち、中央部分56は縁部分57よりも凹んでおり、縁部分57は中央部分56よりも突出している。
【0056】
中央部分56の幅(第3方向D3の長さ)は、絶縁板30の幅とほぼ等しい。縁部分57よりも厚さの薄い中央部分56では、絶縁板30と筒体50の内面51aとが強固に密着する状態となる。したがって、発熱素子10から電極板20および絶縁板30を介して放熱面51に至る放熱特性を高めることができる。
【0057】
(絶縁防水型ヒータの内部構造)
図3および
図4(a)〜(c)は、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータの構成を例示する断面図である。
図3には、第1方向D1にみたヒータ1の断面図が示される。なお、
図3においては、説明の便宜上、絶縁板30、筒体50および封止部60について厚さ方向の中央で切断した断面を示す。
図4(a)には、
図3のA−A線の断面図が示され、
図4(b)には、
図3のB−B線の断面図が示され、
図4(c)には、
図3のC−C線の断面図が示される。
【0058】
図3に示すように、第1方向D1にみて、絶縁板30の大きさは、電極板20よりも大きい。すなわち、発熱素子10を挟持した一対の電極板20は一対の絶縁板30の内側で挟持され、一対の絶縁板30から外側にはみ出ないことになる。これにより、電極板20と筒体50とが接触(導通)することを防止できる。なお、発熱素子10および一対の電極板20の側面部分は絶縁板30によって覆われないため、ここに絶縁性を有する樹脂(例えば、シリコーン樹脂)を塗布するようにしてもよい。
【0059】
第1端子部分221および第2端子部分222は筒体50の一方の開口50aの側に位置する。これにより、端子部分220から第1導通ケーブルC11および第2導通ケーブルC12をほぼ真っ直ぐに同じ開口50a側から引き出すことができる。
【0060】
また、第1方向D1にみた場合、第1端子部分221と第2端子部分222とは互いにずれた位置で配置される。ずれた位置とは、第1端子部分221の幅の中心と、第2端子部分222の幅の中心とが重ならないことを言う。第1方向D1にみた場合、第1端子部分221と第2端子部分222とは、互いに一部で重なっていてもよいが、全く重ならないことが望ましい。これにより、2つの端子部分を重ねて配置する場合に比べて両者の距離を長くとることができ、第1端子部分221と第2端子部分222との間の耐電圧(絶縁耐力)を高めることができる。
【0061】
図4(a)に示すように、一対の絶縁板30は発熱素子10を挟持する一対の電極板20を間に挟持するように設けられる。また、
図3に示すように、絶縁板30は、第1方向D1にみて、電極板20の全体(板状部分210、凸状延出部分230および端子部分220)を覆うように配置される。なお、絶縁板30の第2方向D2の端部30aおよび30bは、筒体50の両端よりも外側には突出していない。この絶縁板30によって、電極板20と筒体50との間の電気的な絶縁が確保される。
【0062】
また、
図4(b)に示すように、かしめ部分250の合口は互いに内側を向くように設けられる。これにより、かしめ部分250は第1方向D1において筒体50の内面側に突出することがなくなる。すなわち、板状部分210から凸状延出部分230およびかしめ部分250にかけて電極板20の放熱面51側はほぼ平坦となり、放熱面51の内面から電極板20に対して均一性高く押圧される。また、ヒータ1の薄型化を図ることができる。
【0063】
また、封止部60は、筒体50の開口50aおよび50bの内部に埋め込まれている。筒体50の開口50b側においては、開口50bの全体が封止部60によって塞がれる。筒体50の開口50a側においては、開口50aから筒体50の内部の少なくとも端子部分220まで封止部60が埋め込まれている。
【0064】
また、
図4(b)および
図3に示すように、開口50a側において、封止部60は、一対の絶縁板30の間となる第1端子部分221および第2端子部分222を埋め込むように設けられる。端子部分220が封止部60によって埋め込まれることで、第1端子部分221および第2端子部分222の位置固定が確実となる。
【0065】
また、第1端子部分221と第2端子部分222との間に封止部60が介在することで、第1端子部分221と第2端子部分222との間が空間となる場合に比べて耐電圧を高めることができる。封止部60としてシリコーン系樹脂を用いることで、空間(空気)に比べて2桁以上高い絶縁耐力が得られる。
【0066】
さらに、
図4(b)に示すように、開口50a側において、封止部60は、絶縁板30と筒体50の内面50cとの間にも介在している。ここで、開口50a側において絶縁板30は端子部分220の全体を覆う位置まで延在している。筒体50に収容される端子部分220と、筒体50の内面50cおよび51aとの導通を避けるためである。
【0067】
端子部分220に延在する絶縁板30と端子部分220との間には距離があり、封止部60を埋め込む前は中空状(隙間G)となっている。本実施形態では、この隙間Gにも封止部60が埋め込まれる。これにより、開口50a側における絶縁板30と筒体50の内面50cとの隙間Gでの防水性が高まる。
【0068】
すなわち、筒体50の外から筒内に向けた防水性は、湿気(水分)の浸入経路上を塞ぐ封止部60の長さが長いほど高くなる。もし、隙間Gに封止部60が介在していないと、筒体50の内面50cに沿った湿気(水分)の浸入経路上での封止部60の長さは、開口50aから絶縁板30の端部30aまでとなる(
図3の長さL11参照)。
【0069】
一方、隙間Gに封止部60が介在していると、筒体50の内面50cに沿った湿気(水分)の浸入経路上での封止部60の長さは、長さL11と、絶縁板30の端子部分220を囲む部分の長さ(
図3の長さL12参照)とを加えたものとなる。絶縁板30の端子部分220を覆う部分の長さL12は、開口50aから絶縁板30の端部30aまでの長さL11よりも十分に長い。隙間は長さL12の部分に生じるため、隙間を封止部60で埋めることによって湿気(水分)の浸入経路上を塞ぐ封止部60の長さを長くとることができ、防水性を効果的に高めることができる。
【0070】
なお、隙間Gにおける長さL2の範囲の一部に封止部60を埋め込むようにしてもよいが、隙間Gを埋め込む封止部60の第2方向D2の長さが長いほど防水性は高くなるため、隙間Gにおける長さL2の範囲の全体に封止部60を埋め込むことが最も好ましい。
【0071】
図4(c)に示すように、開口50a側においては、第1導通ケーブルC11および第2導通ケーブルC12が封止部60を突き抜けて外方に延出する。開口50a側において、封止部60は筒体50の内面50cと密着しているとともに、放熱面51とは反対側の内面51aと密着している。
【0072】
上記の例では、開口50a側における封止部60について示したが、開口50b側においても絶縁板30と筒体50の内面50cとの隙間に封止部60が介在していることが好ましい。
【0073】
(凸状延出部分)
図5は、電極部の凸状延出部分について例示する拡大平面図である。
凸状延出部分230は、板状部分210の端部から第2方向D2に凸状に延出した部分である。かしめ部分250は、凸状延出部分230の先端から延出するよう設けられる。すなわち、凸状延出部分230は、板状部分210とかしめ部分250との間に設けられる部分である。
【0074】
ここで、板金加工によってかしめ部分250を形成すると、かしめ皺255が生じる。かしめ皺255とは、かしめ部分250の形成において、かしめ片250aを折り曲げる際にかしめ片250aの付け根近傍に加わる力によって金属板材が皺状に塑性変形する部分のことを言う。
【0075】
本実施形態では、かしめ皺255は凸状延出部分230のかしめ部分250側に形成される。かしめ皺255は、かしめ片250aを折り曲げる側、すなわち、かしめの合口側に盛り上がるように形成される。このため、かしめ部分250を設けることでかしめ皺255が形成され、かしめ皺255によって盛り上がる分だけ厚さが増すことになる。
【0076】
本実施形態では、凸状延出部分230における第2方向D2の長さL2を、かしめ皺255の第2方向D2の長さL1よりも長くしている。これにより、かしめ皺255が形成されていても、かしめ皺255による盛り上がりの影響が板状部分210には及ばないことになる。
【0077】
したがって、かしめ部分250を形成しても、板状部分210のうねりの影響を抑制することができる。板状部分210のうねりが少ないことで、一対の電極板20によって発熱素子10を挟持する際、板状部分210と電極層10aとを確実に接触させることができる。
【0078】
もし、凸状延出部分230が設けられていないか、凸状延出部分230の長さL2がかしめ皺255の長さL1よりも短い場合、かしめ皺255による盛り上がりの影響が板状部分210に及ぶことになる。この場合、板状部分210の平坦性が損なわれ、板状部分210と発熱素子10(電極層10a)との均一な接触の妨げとなる。この状態で筒体50を加圧して電極板20と発熱素子10とを密着させようとすると、電極板20と発熱素子10との間に加圧の応力のばらつきが生じる。
【0079】
電極層10aの表面は発熱素子10の表面の凹凸に基づき凹凸が形成されており、電極層10aと板状部分210との接触は点接触の集まりと考えられる。電極板20と電極層10aとを密着させる際、第1方向D1にみて、単位面積あたりの板状部分210と電極層10aとの接触面積を接触密度とする。
【0080】
かしめ皺255による盛り上がりの部分に加圧の応力が集中すると、電極板20と電極層10aとの接触領域で接触密度の低下やばらつきが生じる。接触密度の低下は放熱効率の低下に繋がる。また、接触密度のばらつきは、電極板20と発熱素子10との間の電界のばらつきとなる。電極板20に印加される電圧が300V以上の高電圧になると、このような電界のばらつきによる電界集中によって、発熱素子10の耐圧に影響を与えることになる。特に、発熱素子10としてPTC素子を用いた場合には、通電初期に突入電流が発生する。300V以上の高電圧を印加した場合、過大な突入電流が局所的に発生することは極力避けたい。
【0081】
板状部分210におよぶかしめ皺255による影響を回避しようとした場合、板状部分210において、かしめ皺255の盛り上がりの部分を避けて発熱素子10を配置することが考えられる。しかし、この場合には避ける分だけ板状部分210を長くするか、発熱素子10を短くしなければならない。
【0082】
本実施形態のように、凸状延出部分230の長さL2を、かしめ皺255の長さL1よりも長くしておくことで、板状部分210にはかしめ皺255の影響が及ばない。したがって、板状部分210の全域について発熱素子10を配置できるとともに、かしめ皺255の盛り上がりの影響を受けずに電界分布のばらつきが抑制され、高電圧が印加された場合でも十分な耐電圧を得ることが可能となる。また、電極板20と電極層10aとの接触密度の増加によって放熱効率の向上を図ることが可能となる。
【0083】
また、凸状延出部分230の第3方向D3の長さ(幅W2)は、かしめ部分250の第3方向D3の長さ(幅W3)よりも長く設けられる。すなわち、凸状延出部分230は、かしめ部分250よりも幅広に設けられている。これにより、かしめ部分250に応力が加わった場合に凸状延出部分230でその応力を吸収して板状部分210へ伝わることを抑制できる。なお、凸状延出部分230の幅は、一定であってもよいし、かしめ部分250から板状部分210にむけて漸増(連続的または段階的に増加)してもよい。
【0084】
また、凸状延出部分230における第3方向D3の長さ(幅W2)は、板状部分210における第3方向D3の長さ(幅W1)の1/2(幅1/2W1)よりも短く設けられていてもよい。凸状延出部分230は板状部分210の中央に対して一方側に寄せた位置に設けられる。これにより、第1方向D1にみて、第1凸状延出部分231と第2凸状延出部分232とが互いに重ならないよう配置される。したがって、第1凸状延出部分231と第2凸状延出部分232との間隔が、第1凸状延出部分231と第2凸状延出部分232とが互いに重なる場合に比べて長くなり、耐電圧を向上させることができる。
【0085】
(端子部分)
図6は、電極部の端子部分について例示する拡大平面図である。
本実施形態では、第1方向D1にみて、第1端子部分221と第2端子部分222とが互いに重ならないように配置される。この際、第1方向D1にみて、第1端子部分221と第2端子部分222との隙間S1は、2.5mm以上であることが好ましい。第1端子部分221と第2端子部分222との間に封止部60が介在し、隙間S1が2.5mm以上あることにより、第1端子部分221と第2端子部分222との間に例えば300V以上の電圧が印加されても十分な絶縁性を確保することができる。
【0086】
(フィンを備えた例)
図7は、フィンを備えたヒータについて説明する斜視図である。
本実施形態に係るヒータ1は、筒体50の上下の放熱面51のそれぞれにフィン150を備えていてもよい。すなわち、第1放熱面511には第1フィン151が接続され、第2放熱面512には第2フィン152が接続される。なお、説明の便宜上、第1フィン151および第2フィン152を区別せずに示すときは、フィン150と言うことにする。また、
図7では、第2フィン152をヒータ1から離間して示している。
【0087】
フィン150を備えたヒータ1においては、ヒータ1の流路1501の一方側から他方側に向けて空気が通過する際、フィン150の流路1501を通過する空気が加熱され、温風を出力することができる。
【0088】
フィン150は、例えばアルミニウム(Al)からなる板材を、山部と谷部とを繰り返すように折り曲げて構成されている。フィン150は、耐熱性および熱伝導性に優れた例えばシリコーン系接着剤により接続されていてもよいが、ろう付け部80を介して放熱面51にろう付け固定されていることが望ましい。
【0089】
フィン150が放熱面51にろう付けされていることで、シリコーン系接着剤などの樹脂で接着されている場合に比べ、放熱面51とフィン150との間の放熱効率が向上する。すなわち、金属の熱伝導率は樹脂の熱伝導率に比べて桁違いに高い。したがって、フィン150が放熱面51にろう付けされていることで、同じ出力のヒータユニットであれば小型化を図ることができ、同じ大きさのヒータユニットであれば高出力化を図ることができる。
【0090】
フィン150の幅(第3方向D3の長さ)は、放熱面51における中央部分56の幅とほぼ等しい。放熱面51の縁部分57は中央部分56よりも僅かに突出している。したがって、フィン150を中央部分56に配置する際、縁部分57がフィン150の幅方向の位置決め部材となる。また、フィン150の幅が中央部分56の幅とほぼ等しいことで、後述する製造方法でフィン150を介して筒体50を加圧する際、フィン150に加わる圧力を中央部分56に均一に印加できるようになる。
【0091】
(製造方法)
次に、フィン150を備えたヒータ1の製造方法について説明する。
図8は、ヒータの製造方法を例示するフローチャートである。
先ず、筒体50の放熱面51に、フィン150をろう付けによって固定する(ステップS101)。ろう付け部80のろう材としては、例えばアルミニウム(Al)−シリコン(Si)の共晶系合金が用いられる。
【0092】
次に、発熱素子10を一対の電極板20で挟持する(ステップS102)。発熱素子10と電極板20との間には、導電性および熱伝導性に優れた例えばシリコーン系接着剤が塗布されている。
【0093】
次に、発熱素子10を挟持した一対の電極板20を一対の絶縁板30で挟持する(ステップS103)。絶縁板30には、例えば酸化アルミニウム(アルミナ)の板材が用いられる。電極板20と絶縁板30との間には、熱伝導性に優れた例えばシリコーン系接着剤を塗布してもよい。
【0094】
次に、発熱素子10、一対の電極板20および一対の絶縁板30で構成された発熱構造体100を筒体50の中空部55内に収容する(ステップS104)。この際、筒体50の放熱面51には、既にフィン150がろう付けによって取り付けられている。
【0095】
次に、発熱構造体100が収容された筒体50を加圧する(ステップS105)。筒体50の加圧は、フィン150を介して行われる。すなわち、フィン150を介して筒体50を上下方向(第1方向D1)に加圧して筒体50を押し潰し、発熱構造体100を中空部55内に固定する。
【0096】
筒体50が押し潰される際、第1放熱面511および第2放熱面512の間隔が狭くなり、発熱構造体100を挟持する状態となる。これにより、筒体50の内部において、発熱素子10と電極板20との間、電極板20と絶縁板30との間、および絶縁板30と内面51aとの間がそれぞれ密着するとともに、発熱構造体100が筒内に固定される。加圧による部材間の密着において、発熱素子10と電極板20との密着により発熱素子10と電極板20との電気的な抵抗を低下させた接続が達成され、絶縁板30と内面51aとの密着によって熱伝導の抵抗を低下させた接続が達成される。すなわち、1回の加圧処理によって電気的な接続と熱的な接続との両方を行うことが可能となる。
【0097】
筒体50の加圧によって発熱構造体100を固定した後は、筒体50の開口50aおよび50bに封止部60を埋め込む。これにより、フィン150を備えたヒータ1が完成する。
【0098】
また、上記の製造方法では、筒体50を加圧する前に筒体50にフィン150が取り付けられている。そして、フィン150が取り付けられた筒体50の中空部55内に発熱構造体100を収容し、その後、フィン150を介して筒体50を加圧する。
つまり、フィン150を筒体50に取り付ける際には発熱構造体100が中空部55内に収容されていない状態(空の状態)のため、フィン150の取り付けにおいては、発熱構造体100で使用される熱に弱い部材(例えば、樹脂部材)の耐熱温度を超えたろう付けを採用することが可能となる。
【0099】
フィン150を筒体50にろう付けで固定できることは、シリコーン系接着剤によって固定する場合に比べて固定にかかる時間を大幅に短縮することができる。また、筒体50の加圧工程を待つことなく、予めフィン150を筒体50にろう付けしておくことができる。したがって、フィン150のろう付け工程と、筒体50の加圧工程とを並列して行うことができ、量産において製造時間の短縮化を図ることができる。
【0100】
また、上記の製造方法によれば、筒体50にフィン150を取り付けた状態で、フィン150を介して筒体50を加圧し、筒内に発熱構造体100を密着固定するため、この加圧によって発熱構造体100の筒内への固定(接着剤を使用しない固定)と、発熱素子10の電極層10a、電極板20、絶縁板30および筒体50の内面51aのそれぞれにおける隣接部材間の面接触とを、一括処理で完了することが可能となる。
【0101】
(加圧とヒータ出力)
ここで、本願発明者は、筒体50への加圧力とヒータ1の出力との関係を実験によって得た。実験においては、筒体50に発熱構造体100を収容し、筒体50への加圧が無い状態から徐々に加圧していき、その際のヒータ1の出力を測定した。
【0102】
実験の結果、筒体50への加圧力が増加するほど出力が増加することが分かった。出力は、筒体50への加圧が無い状態での出力(初期出力)に対して約3倍まで増加し、その後、さらに加圧力を増加すると、出力は低下する。これは、所定の加圧力を超えるとフィン150の潰れが発生し、これによってヒータ1の出力低下を招いていると考えられる。
【0103】
したがって、フィン150の潰れが発生しない最大の加圧力によって筒体50を加圧することで、最も放熱効率の高いヒータ1を製造することが可能となる。
【0104】
(車載用ヒータ装置)
図9は、車載用ヒータ装置を例示する斜視図である。
なお、説明の都合上、
図9ではケース501を二点鎖線で示している。
車載用ヒータ装置500は、車載用ヒータユニット1Uと、ケース501とを備える。車載用ヒータユニット1Uは、ケース501の中に収容される。車載用ヒータユニット1Uは、縦横に配置された複数のヒータ1を有する。図示する例では、ヒータ1が3列、2段で配置されている。なお、ヒータ1の数や縦横の配置数は任意であり、図示した数に限るものではない。
【0105】
フィン150は、第2方向D2に山部と谷部とを繰り返すように折り曲げられている。これにより、フィン150の山部と谷部との隙間である流路1501の方向は第2方向D2と直交する第3方向に設けられることになる。流路1501を通過する媒体は、複数のヒータ1から加熱作用を得ることができる。
【0106】
ケース501には、加熱対象である媒体(水や空気など)の流入口5011と流出口5012とが設けられる。流入口5011および流出口5012は例えば筒型に設けられており、ケース501の側面501sから突出するように設けられる。媒体は、流入口5011からケース501内に送られ、ケース501内の車載用ヒータユニット1Uで加熱された状態で流出口5012からケース501の外へ出て行く。
【0107】
本実施形態ではケース501の同じ側面501sに流入口5011と流出口5012とが並んで配置されている。このような車載用ヒータ装置500において、車載用ヒータユニット1Uは、フィン150の流路1501の一端を流入口5011および流出口5012のそれぞれに対向させて、ケース501内に収容されている。
【0108】
ケース501にはヒータ1から延出する第1導通ケーブルC11および第2導通ケーブルC12のそれぞれを通すための孔(図示せず)が設けられる。ケース501内に収容されたヒータ1の導通ケーブルC10のそれぞれはケース501の孔を通してケース501の外へ引き出される。
【0109】
本実施形態に係るヒータ1の防水性は非常に高い。したがって、ケース501内にヒータ1の全体を収容することができる。例えば、媒体が液体(例えば水)の場合、ケース501内は水で満たされる。本実施形態に係るヒータ1の防水性は非常に高いため、ヒータ1の全体をケース501内に収容してもヒータ1の内部へ浸水することはない。
【0110】
このため、流入口5011および流出口5012以外でケース501に開ける孔は導通ケーブルC10を通す小さな孔だけで済む。ケース501に設ける孔が小さいことで、この孔と導通ケーブルC10との僅かな隙間だけを封止剤で封止すればよく、封止が容易となる。しかも、少ない量の封止剤であっても確実な封止を行うことができ、簡単でありながら高い封止性を実現することができる。
【0111】
車載用ヒータ装置500で媒体を加熱するには、流入口5011からケース501内に媒体を送り込む。ケース501内に流入した媒体は、フィン150の流路1501を流れていく。本実施形態では、フィン150の流路1501と流入口5011の延びる方向とがほぼ一致しているため、流入した媒体が効率よくフィン150の流路1501に沿って流れていくことになる。
【0112】
流路1501に沿って流れる媒体はフィン150との熱交換により加熱されて、流出口5012からケース501の外部に流出する。本実施形態では、フィン150の流路1501と流出口5012の延びる方向とがほぼ一致しているため、流路1501に沿って加熱された媒体は効率よく流出口5012から外部へ流出していく。
【0113】
図10は、他の車載用ヒータ装置を例示する斜視図である。
図10に示す車載用ヒータ装置500では、流入口5011と流出口5012とがケース501における互いに対向する位置に配置されている。流入口5011の延びる方向と流出口5012の延びる方向とはほぼ一致している。
【0114】
このような車載用ヒータ装置500において、車載用ヒータユニット1Uは、フィン150の流路1501の一端を流入口5011と対向させ、流路1501の他端を流出口5012と対向させて、ケース501内に収容されている。
【0115】
ケース501における流入口5011および流出口5012のそれぞれが取り付けられる部分にはテーパ部5013が設けられる。流入口5011側のテーパ部5013は、流入口5011からケース501の内部に向けて徐々に断面積が拡がるように形成されている。ケース501の内部には多段のヒータ1を備えた車載用ヒータユニット1Uが収容されている。テーパ部5013が設けられていることで、流入口5011から流入した媒体をケース501の内部に均一に拡散させて導くことができ、多段のフィン150の流路1501の全体に媒体を偏りなく流すことができる。これにより、高い熱交換効率を実現できる。
【0116】
また、流出口5012側のテーパ部5013は、ケース501の内部から流出口5012に向けて徐々に断面積が狭くなるように形成されている。これにより、ケース501内に収容された車載用ヒータユニット1Uのフィン150の流路1501を通過した媒体は、テーパ部5013によって効率よく流出口5012に集められ、流出口5012からケース501の外部へ流出することになる。
【0117】
この車載用ヒータ装置500においても、ケース501には流入口5011および流出口5012以外の孔として導通ケーブルC10を通す孔65のみが設けられる。ケース501に設ける孔65が小さいことで、少ない量の封止剤であっても確実な封止性を得ることができる。
【0118】
図9および
図10に示すような本実施形態に係る車載用ヒータ装置500では、高耐電圧、優れた絶縁性および防水性を備えたヒータ1を用いているため、例えば300V以上の耐電圧を得ることができるとともに、高い防水性および高い放熱効率を得ることができる。また、フィン150をろう付けすることで、高効率化(放熱効率の向上)を達成することが可能となる。したがって、同じ出力であれば車載用ヒータ装置500の小型化を達成することができ、同じ大きさであれば車載用ヒータ装置500の高出力化を図ることが可能となる。
【0119】
本実施形態では、車載用ヒータユニット1Uによって3キロワット(kW)以上の出力を得ている。しかも、車載用ヒータユニット1Uの高耐電圧、優れた絶縁性および防水性によって、厳しい環境化でも使用することが可能となる。
【0120】
このように、本実施形態に係るヒータ1においては、筒体50の開口50aおよび50bを封止部60で封止するといった簡単な封止構造でありながら、300V以上の耐電圧を得ることができるとともに、高い防水性および高い放熱効率を得ることができる。
【0121】
電気自動車やハイブリッド車などは、300Vから400V程度の電圧を取り扱う。本実施形態に係るヒータ1は、このような高電圧について降圧することなく電圧を印加して使用することができる。また、車が水没したり、津波や高潮を受けたり、水没しないまでもヒータ1が水に浸かる可能性もある。本実施形態に係るヒータ1では高い防水性を備えているため、高電圧環境下でも漏電を防止することができる。さらに、本実施形態に係るヒータ1は、寒冷地や悪路、粉塵を受けるといった厳しい環境下での使用であっても十分に耐えることが可能である。しかも、高効率化によって、同じ出力であれば小型化を達成でき、同じ大きさであれば高出力化を図ることが可能となる。
【0122】
(フィン一体成形タイプの例)
図11(a)および(b)は、フィンが一体成形されたヒータの例を示す図である。
図11(a)にはヒータ1の斜視図が示され、
図11(b)にはヒータ1の中央部分での断面図が示される。
図11に示すヒータ1は、筒体50の放熱面51に一体成形されたフィン150を有している。
図11に示す例では、フィン150は、筒体50の第1放熱面511および第2放熱面512に一体的に成形されている。フィン150は、少なくとも第1放熱面5111または第2放熱面512に設けられていればよく、側面53に設けられていてもよい。
【0123】
フィン150の延びる方向は、筒体50の延びる方向と同じ第2方向D2である。すなわち、フィン150は、一定間隔で平行に設けられた複数の凸片150aを有し、各凸片150aが第2方向D2に延在して設けられる。筒体50の放熱面51に複数の凸片150aが一定間隔で密に設けられることで、隣り合う凸片150aの間に第2方向D2に延びる流路1501が構成される。
【0124】
なお、フィン150は筒体50の第2方向D2の全体に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。また、フィン150や凸片150aの途中に切れ目が設けられていてもよい。
【0125】
筒体50にフィン150を一体成形する方法としては、例えば筒体50の金属材料(アルミニウム等)を用いた押し出し成形が挙げられる。また、押し出し成形のほか、筒体50の金属材料を用いた切削成形、ダイキャスト成形、鍛造成形などであってもよい。
【0126】
このように、フィン150が筒体50に一体成形されていることで、筒体50の内部から外部に向かう熱経路が、放熱面51からフィン150まで同一材料により連続的に構成される。これにより、ヒータ1の放熱特性を高めることができる。また、筒体50とフィン150とを別部品としてそれぞれ用意する必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0127】
フィン150が一体成形されたヒータ1の製造方法は、
図8に示す製造方法のフローチャートにおいてステップS101のフィン150のろう付けの工程に代わり、筒体50の放熱面51にフィン150を一体成形する工程を行う。
【0128】
この製造方法では、筒体50の放熱面51にフィン150を一体成形するため、別途フィン150を放熱面51に接続する工数を削減することができる。また、筒体50の放熱面51に一体成形されたフィン150を介して筒体50を加圧し、筒内に発熱構造体100を固定するため、フィン150を介して加圧力を筒内に効率良く伝えることができる。
【0129】
例えば、フィン150の複数の凸片150aが、互いに平行に、筒体50の延びる方向(第2方向D2)に延在して一体成形されていると、筒体50を加圧する際、複数の凸片150aのそれぞれを介して加圧力を集中的に筒内へ伝えることができる。複数の凸片150aが一定間隔で密に設けられていることで、加圧力は一点に集中することはなく、発熱構造体100の全体にわたり、強くかつ広い範囲に伝わり、発熱構造体100の隣接部材間の密着性を高めることができる。
【0130】
このため、フィン150が一体成形された筒体50を用いたヒータ1(フィン一体のヒータ1)では、フィン150を別体で取り付けた筒体50を用いたヒータ1(フィン別体のヒータ1)に比べて弱い加圧力で同等の出力を得ることができる。また、同じ加圧力で製造する場合には、フィン一体のヒータ1では、発熱素子10の出力を低くしても、ヒータ1の全体としてフィン別体のヒータ1と同等な出力を確保することができる。
【0131】
ここで、第1放熱面511側のフィン150の凸片150aと、第2放熱面512側のフィン150の凸片150aとが、第1方向D1にみて互いに同じ位置に配置されていると、筒体50を加圧する際に上下の凸片150aどうしで加圧力を集中させることができる。これにより、相対的に弱い加圧力でも十分な密着力を得ることができる。
【0132】
一方、第1放熱面511側のフィン150の凸片150aと、第2放熱面512側のフィン150の凸片150aとが、第1方向D1にみて互いに異なる位置に配置されていると(例えば、互い違いの位置)、筒体50を加圧する際に上下の凸片150aを介して印加される力を分散させることができる。これにより、相対的に弱い加圧力でも広い範囲に密着力を及ぼすことができる。
【0133】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、導通ケーブルC10を接続する端子としてかしめ部分250の例を示したが、平板状に延出する端子部分であってもよい。この場合、導通ケーブルC10を、はんだ付け、ろう付け、ねじ止めで接続してもよいし、コネクタで接続してもよい。また、発熱素子10としてPTC素子を用いる例を示したが、PTC素子以外の素子(例えば、アルミナや窒化珪素などのセラミックス)を用いてもよい。また、加熱対象の媒体は水、空気、ガスのほか、油やゲル状物などの他の物体(これらの少なくともいずれかの混合物を含む。)であってもよい。
【0134】
また、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。