【課題】誘電体層及び内部電極を有するセラミック本体を含み、上記誘電体層は、誘電体結晶粒を含み、上記誘電体結晶粒の少なくとも2つ以上の誘電体結晶粒の間には結晶粒界が存在し、上記結晶粒界におけるSi/Niの比率が1〜6を満たす、積層セラミックキャパシタを提供する。
【解決手段】本発明は、誘電体層及び内部電極を有するセラミック本体を含み、上記誘電体層は、誘電体結晶粒を含み、上記誘電体結晶粒の少なくとも2つ以上の誘電体結晶粒の間には、結晶粒界が存在し、上記結晶粒界におけるSi/Niの比率が1〜6を満たす、積層セラミックキャパシタを提供する。
  前記内部電極は、前記誘電体層を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
  前記セラミック本体の外側に配置され、且つ第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極及び前記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極を含む、請求項8に記載の積層セラミックキャパシタ。
  前記セラミック本体は、容量が形成される活性部、及び前記活性部の上部及び下部に形成されたカバー部を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
  以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
 
【0014】
  本発明は、積層セラミックキャパシタに関するものである。
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図であり、
図2は
図1のI−I'線に沿った断面図であり、
図3は
図2の「P」領域の拡大図である。
 
【0015】
  図1〜
図3を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111及び内部電極121、122を有するセラミック本体110を含むことができる。
 
【0016】
  上記セラミック本体110の形状は特に制限がないが、図示のように直方体状であることができる。
 
【0017】
  本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100において、「長さ方向」は、
図1の「L」方向、「幅方向」は「W」方向、「厚さ方向」は「T」方向に定義する。ここで、「厚さ方向」は、誘電体層を積み上げる方向、即ち「積層方向」と同一の概念で用いることができる。
 
【0018】
  上記内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)の1つ以上の物質を用いることができ、少なくともニッケル(Ni)を含む導電性ペースを用いて形成することができる。
 
【0019】
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り、特に限定されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)粉末であることができる。
 
【0020】
  上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO
3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
 
【0021】
  上記誘電体層111は、焼結された状態であり、隣接する誘電体層同士の境界は確認できないほど一体化されていることができる。
 
【0022】
  上記誘電体層111内には、内部電極121、122が形成されることができ、内部電極121、122は、焼結によって上記セラミック本体の内部に形成されることができる。
 
【0023】
  図3を参照すると、上記誘電体層111は、誘電体結晶粒11を含み、上記誘電体結晶粒11の少なくとも2つ以上の誘電体結晶粒の間には結晶粒界11cが存在し、上記結晶粒界11cにおけるSi/Niの比率が1〜6を満たすことができる。
 
【0024】
  上記誘電体結晶粒11は、ABO
3で表されるペロブスカイト構造を有する。
 
【0025】
  上記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
 
【0026】
  上記Bは、特に制限されるものではなく、上記ペロブスカイト構造においてBサイトに位置することができる物質であればよく、例えば、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
 
【0027】
  上記誘電体結晶粒は、Ba
mTiO
3(0.995≦m≦1.010)、(Ba
1−xCa
x)
m(Ti
1−yZr
y)O
3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Ba
m(Ti
1−xZr
x)O
3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)あるいは上記希土類元素のいずれか一つ、あるいはそれ以上が一部固溶したBa
mTiO
3(0.995≦m≦1.010)、(Ba
1−xCa
x)
m(Ti
1−yZr
y)O
3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Ba
m(Ti
1−xZr
x)O
3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
 
【0028】
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111は、還元雰囲気で焼成可能な耐還元性誘電体組成物を含むことができる。以下では、上記誘電体結晶粒11を含む誘電体層111を形成する誘電体組成物の各成分について、より具体的に説明する。
 
【0029】
  a)母材粉末
  上記誘電体組成物は、BaTiO
3で表される母材粉末を含むことができる。
 
【0030】
  本発明の一実施形態によると、上記母材粉末はBaTiO
3で表されることができるが、これに制限されるものではなく、例えば、Ca、Zrなどが一部固溶して形成された(Ba
1−xCa
x)(Ti
1−yCa
y)O
3、(Ba
1−xCa
x)(Ti
1−yZr
y)O
3、Ba(Ti
1−yZr
y)O
3などで表されることができる。
 
【0031】
  即ち、上記母材粉末は、BaTiO
3、(Ba
1−xCa
x)(Ti
1−yCa
y)O
3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)、(Ba
1−xCa
x)(Ti
1−yZr
y)O
3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.5)、及びBa(Ti
1−yZr
y)O
3(ここで、0<y≦0.5)からなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
 
【0032】
  上記母材粉末は、特に制限されるものではないが、粉末の平均粒径は、40nm以上150nm以下であることができる。
 
【0033】
  b)第1副成分
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第1副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnの少なくとも1つ以上を含む酸化物あるいは炭酸塩を含むことができる。
 
【0034】
  上記第1副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnの少なくとも1つ以上を含む酸化物あるいは炭酸塩は、上記母材粉末100モル%に対して、0.05〜2.0モル%の含有量で含まれることができる。
 
【0035】
  上記第1副成分は、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、且つ高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
 
【0036】
  上記第1副成分の含有量及び後述する第2〜第6副成分の含有量は、母材粉末100モル%に対して含まれる量であって、特に各副成分に含まれる金属イオンのモル%として定義されることができる。
 
【0037】
  上記第1副成分の含有量が0.05モル%未満であると、焼成温度が高くなり、高温耐電圧特性が多少低下することがある。
 
【0038】
  上記第1副成分の含有量が2.0モル%以上であると、高温耐電圧特性及び常温比抵抗が低下することがある。
 
【0039】
  特に、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、母材粉末100モル%に対して、0.05〜2.0モル%の含有量を有する第1副成分を含むことができる。これにより、低温焼成が可能であり、且つ高温耐電圧特性を得ることができる。
 
【0040】
  c)第2副成分
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、原子価固定アクセプター(fixed−valence  acceptor)元素であるMgを含む酸化物または炭酸塩である第2副成分を含むことができる。
 
【0041】
  上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モル%に対して、原子価固定アクセプター(fixed−valence  acceptor)元素であるMgを含む酸化物または炭酸塩である、0.0〜2.0モル%の第2副成分を含むことができる。
 
【0042】
  上記第2副成分は、原子価固定アクセプター元素及びそれを含む化合物であって、誘電体磁器組成物中で微細構造を調節(異常粒成長を抑制)し、耐還元性を付与することができる。
 
【0043】
  上記第2副成分の含有量が上記母材粉末100モル%に対して、2.0モル%を超えると、誘電率が低くなるという問題があるため、好ましくない。
 
【0044】
  d)第3副成分
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Pm、Eu、Tb、Tm、Yb、Lu及びSmの少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩である第3副成分を含むことができる。
 
【0045】
  上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モル%に対して、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Pm、Eu、Tb、Tm、Yb、Lu及びSmの少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩ある0.0〜4.0モル%の第3副成分を含むことができる。
 
【0046】
  上記第3副成分は、本発明の一実施形態において誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの信頼性低下を防ぐ役割を果たす。
 
【0047】
  上記第3副成分の含有量が4.0モル%を超えると、信頼性が低下するか、または誘電体磁器組成物の誘電率が低くなり、高温耐電圧特性が悪くなるという問題が発生することがある。
 
【0048】
  e)第4副成分
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Baを含む酸化物または炭酸塩である第4副成分を含むことができる。
 
【0049】
  上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モル%に対して、Baを含む酸化物または炭酸塩である0.0〜4.15モル%の第4副成分を含むことができる。
 
【0050】
  上記第4副成分の含有量は、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第4副成分に含まれたBa元素の含有量を基準とすることができる。
 
【0051】
  上記第4副成分は、誘電体磁器組成物中で焼結促進、誘電率調節などの役割を果たすことができるが、その含有量が上記母材粉末100モル%に対して、4.15モル%を超えると、誘電率が低くなるか、または焼成温度が高くなるという問題がある。
 
【0052】
  f)第5副成分
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Ca、Ti及びZrのいずれか一つの元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される1つ以上を含む第5副成分を含むことができる。
 
【0053】
  上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モル%に対して、Ca、Ti及びZrの少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩である、0.0〜24.0モル%の第5副成分を含むことができる。
 
【0054】
  上記第5副成分の含有量は、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第5副成分に含まれたCa、Ti及びZrの少なくとも一つ以上の元素の含有量を基準とすることができる。
 
【0055】
  上記第5副成分は、誘電体磁器組成物中でコア(core)−シェル(shell)構造を形成して誘電率を向上させ、且つ信頼性を増大させる役割を果たすものであり、上記母材粉末100モル%に対して、24.0モル%以下含まれると、高い誘電率が実現され、高温耐電圧特性が良好な誘電体磁器組成物を提供することができる。
 
【0056】
  上記第5副成分の含有量が上記母材粉末100モル%に対して、24.0モル%を超えると、常温誘電率が低くなり、高温耐電圧特性も低下する。
 
【0057】
  g)第6副成分
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は第6副成分として、Si及びAlの少なくとも一つを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物を含むことができる。
 
【0058】
  上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モル%に対して、Si及びAlの少なくとも一つを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物である、0.0〜8.0モル%の第6副成分をさらに含むことができる。
 
【0059】
  上記第6副成分の含有量は、ガラス、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第6副成分に含まれたSi及びAlの少なくとも一つ以上の元素の含有量を基準とすることができる。
 
【0060】
  上記第6副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、且つ高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
 
【0061】
  上記第6副成分の含有量が上記母材粉末100モル%に対して、8.0モル%を超えると、焼結性及び緻密度が低下し、2次相が生成されるなどの問題があるため、好ましくない。
 
【0062】
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111が誘電体結晶粒11を含み、上記誘電体結晶粒11の少なくとも2つ以上の誘電体結晶粒の間には結晶粒界11cが存在し、上記結晶粒界11cにおけるSi/Niの比率が1.0〜6.0を満たすことができる。本発明者らは、誘電体層に含まれる成分の仕事関数(work  function)を調節することで、結晶粒界の絶縁抵抗を強化させることができることを見出した。本発明による積層セラミックキャパシタは、上述の母材粉末の仕事関数に比べて高い仕事関数を有する成分を結晶粒界に導入して高いショットキー障壁(Schottky  barrier)を形成することにより、漏れ電流の導電を効果的に抑制することができる。また、結晶粒界に含まれる成分のうち高い仕事関数を有するSiとNiの成分比を上記範囲に調整することにより、特に、高温での絶縁抵抗の低下を防止することができ、優れた絶縁破壊電圧特性を示すことができる。
 
【0063】
  上記結晶粒界11cにおけるSi/Niの比率が1.0未満であると、結晶粒界11cにおけるSi濃度が低くて絶縁抵抗が低下し、信頼性が低下することがある。
 
【0064】
  一方、結晶粒界11cにおけるSi/Niの比率が6.0を超えると、結晶粒界11cにおけるSi濃度が高すぎて誘電率が低くなることがある。
 
【0065】
  上記結晶粒界11cにおけるSi及び/またはNiの含有量は、上述のSi/Niの比率を満たす限り、特に制限されず、上記結晶粒界11c内に均一に存在することができる。上記結晶粒界11c内におけるSi及び/またはNiの含有量が均一であるということは、誤差範囲を含む含有量を意味し、例えば、重量を基準としたSiの平均含有量に対するSiの最大含有量−Siの最小含有量の比率が10%以下であることを意味することができ、0%以上であることができる。また、重量を基準としたNiの平均含有量に対するNiの最大含有量−Niの最小含有量の比率が10%以下であることを意味することができ、0%以上であることができる。
 
【0066】
  上記結晶粒界のSi/Niの比率を調節する方法は、特に制限されるものではない。上記Si/Niの比率を調節する方法は、例えば、Siは第6副成分の添加量を調整して含有量を調整することができ、Niは誘電体内にTiO
2を添加したりBaTiO
3の表面Baを溶出させたりしてチタン成分が濃厚な状態(Ti−rich  phase)を形成し、内部電極からのNiの拡散量を調節することにより制御することができる。上記「チタン成分が濃厚な状態」とは、誘電体内にTiO
2を添加したりBaTiO
3の表面Baを溶出させたりする前よりも、誘電体内にTiO
2を添加したりBaTiO
3の表面Baを溶出させたりした後のTiの含有量が増加した状態を意味することができる。
 
【0067】
  本発明の一実施形態によると、結晶粒界11cに含まれるNiは、Siと共に非晶質(amorphous)状態で含まれることができる。上記「非晶質状態」とは、結晶質ではない状態を意味することができ、原子や分子の配列状態が乱れて周期的規則性が欠如している状態を意味することができる。上記Niは、金属として存在する場合、導電体として作用して積層セラミックキャパシタの信頼性低下の原因となることがあるが、Siと共に非晶質状態として存在することにより、高い仕事関数によるショットキー障壁を形成することができる。
 
【0068】
  本発明の一実施形態において、誘電体層111に含まれる誘電体結晶粒11のサイズは、0.1〜0.3μmであることができる。上記誘電体結晶粒のサイズが0.1μm未満であると、誘電率が低くなることができ、0.3μm超えると、誘電体層の薄型化が困難になることがある。
 
【0069】
  一実施形態において、本発明の結晶粒界11cの厚さは、0.7〜1.5nmであることができる。
 
【0070】
  上記結晶粒界11cの厚さが0.7〜1.5nmを満たす場合、上記誘電体層111内における上記結晶粒界11cが明確に確認され、結晶粒界11cの絶縁抵抗が強化されて積層セラミックキャパシタの信頼性を向上させることができる。上記結晶粒界11cの厚さが0.7nm未満であると、絶縁抵抗が低くなって信頼性が低下することがあり、上記結晶粒界11cの厚さが1.5nmを超えると、誘電率が低くなることがある。
 
【0071】
  本発明の一実施形態において、結晶粒界11cにおけるNi/Tiの比率は0.1以下であることができる。上記Ni/Tiの比率の下限は、特に制限されるものではなく、例えば、0を超えることができる。Ni/Tiの比率が上記範囲を満たす場合、低いDCバイアス変化を示すことができる。
 
【0072】
  本発明の一実施形態によると、上記誘電体結晶粒11は、コア(core)−シェル(shell)構造を有することができる。
 
【0073】
  図3を参照すると、上記誘電体結晶粒11は、コア(core)11aと上記コア(core)11aを囲むシェル(shell)11b構造を有することができる。
 
【0074】
  上記誘電体結晶粒11は、内部にSi及び/またはNiを含まなくてもよい。上記誘電体結晶粒11が内部にSi及び/またはNiを含まないということは、誘電体結晶粒11の内部にSi及び/またはNiが存在しないことを意味することができる。
 
【0075】
  本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、超小型高容量製品であって、上記誘電体層111の厚さは、1μm以下であることができる。上記誘電体層111の厚さは、電子部品の容量設計に合わせて任意に変更することができる。上記誘電体層111の厚さは1μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下または0.7μm以下であることができるが、これに制限されるものではない。
 
【0076】
  また、内部電極121、122の厚さは、1μm以下であることができる。上記内部電極の厚さは1μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下または0.4μm以下であることができるが、これに制限されるものではない。
 
【0077】
  本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、超小型高容量品であるため、誘電体層111と内部電極121、122の厚さは、従来の製品に比べて薄い薄膜で構成されている。上記薄い誘電体層及び電極層が適用された積層セラミックキャパシタでは、誘電体層の絶縁抵抗の劣化による不良率の増加が問題として台頭している。即ち、従来の積層セラミックキャパシタは、本発明の積層セラミックキャパシタに含まれる誘電体層及び内部電極よりは相対的に厚い厚さを有するため、結晶粒界におけるSi/Niの比率及び誘電体結晶粒界の厚さを本発明の一実施形態のように調整しなくても特に問題はなかった。
 
【0078】
  しかし、本発明の一実施形態のように薄膜の誘電体層及び内部電極が適用される製品は、誘電体結晶粒界の厚さ及び結晶粒界11cにおけるSi/Niの比率を上述のように調節しなければならない。
 
【0079】
  但し、上記薄膜という意味は、必ずしも誘電体層111と内部電極121、122の厚さが所定の範囲であることを意味するものではなく、従来の製品よりも薄い厚さの誘電体層と内部電極を含む概念として理解されることができる。
 
【0080】
  一実施形態において、本発明の積層セラミックキャパシタに含まれる内部電極は、上述の誘電体層を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むことができる。
 
【0081】
  また、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、上述のセラミック本体の外側に配置され、且つ第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極及び上記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極を含むことができる。
 
【0082】
  図2を参照すると、上記セラミック本体110の内部に形成された複数個の内部電極121、122は、セラミック本体110の一面または上記一面と向かい合う他面に一端が露出する。上記内部電極121、122は、互いに異なる極性を有する第1内部電極121及び第2内部電極122を一対にすることができる。第1内部電極121の一端は、セラミック本体の一面に露出し、第2内部電極122の一端は、上記一面と向かい合う他面に露出することができる。
 
【0083】
  上記セラミック本体110の一面及び上記一面と向かい合う他面には、第1及び第2外部電極131、132が形成されて上記内部電極と電気的に連結されることができる。上記第1及び第2外部電極131、132は、静電容量を形成するために上記第1及び第2内部電極121、122と電気的に連結されることができ、上記第2外部電極132は、上記第1外部電極131と異なる電位に連結されることができる。
 
【0084】
  上記第1及び第2外部電極131、132に含有される導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、またはそれらの合金を用いることができる。
 
【0085】
  上記第1及び第2外部電極131、132の厚さは、用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されるものではないが、例えば、10〜50μmであることができる。
 
【0086】
  上記セラミック本体110は、上記誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される活性部A、及び上記活性部Aの上部及び下部に形成されたカバー部Cを含むことができる。
 
【0087】
  上記活性部Aは、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層することで形成されることができる。
 
【0088】
  上記上部及び下部カバー部Cは、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同一の材料及び構成を有することができる。即ち、上記上部及び下部カバー部Cは、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系セラミック材料を含むことができる。
 
【0089】
  上記上部及び下部カバー部Cは、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を活性部Aの上下面にそれぞれ上下方向に積層して形成することができ、基本的には、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
 
【0090】
  <実験例>
  以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例により限定されるものではない。
 
【0091】
  母材粉末の主成分として平均粒径が100nmであるチタン酸バリウム(BaTiO
3)粉末を含む誘電体原料粉末に、副成分としてDy、Ba、Zr、Mn、V、Al、Ti、Si及びMgを酸化物または炭酸塩(carbonate)の形態で添加した。下記表1の試料1〜14は、Ti酸化物及びSi酸化物の含有量を除いては、同一の含有量の試料を用いた。上記混合物に添加剤、バインダー、エタノール/トルエンなどの有機溶媒及びジルコニアボールを投入し、湿式混合して誘電体スラリーを製造した。
 
【0092】
  製造された誘電体スラリーをキャリアフィルム上にドクターブレード法を用いて数μmの厚さを有するシート(sheet)状に塗布した後、乾燥してセラミックグリーンシートを用意した。
 
【0093】
  次に、ニッケル粒子の平均サイズが0.1〜0.2μmであり、40〜50重量部のニッケル粉末を含む内部電極用導電性ペーストを用意した。上記セラミックグリーンシート上に上記内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷工法で塗布して内部電極を形成した後、内部電極パターンが配置されたグリーンシートを積層して積層体を形成した後、上記積層体を圧着及び切断した。
 
【0094】
  以後、切断された積層体を加熱してバインダーを除去した後、高温の還元雰囲気で焼成してセラミック本体を形成した。上記焼成過程では、還元雰囲気(0.5%H
2/99.5%N
2、H
2O/H
2/N
2雰囲気)下、1100〜1200℃の温度で2時間焼成した後、窒素(N
2)雰囲気下、1000℃の温度で再酸化を3時間行って熱処理した。
 
【0095】
  また、降温過程で急速に降温しても、誘電体層111の内部の誘電体結晶粒11のサイズが均一で、且つ結晶粒界11cの厚さが0.7〜1.5nmを満たすように調節した。次に、焼成されたセラミック本体に対して、銅(Cu)ペーストでターミネーション工程及び電極焼成を行って外部電極を形成して積層セラミックキャパシタを製造した。
 
【0096】
  上記のように完成されたプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto−type  MLCC、0603サイズ、誘電体の厚さ0.7μm以下、200層)の試験片である試料番号1〜18に対して、粒界層の成分、絶縁破壊電圧(Break−down  voltage、BDV)の散布、高温絶縁抵抗(IR)の散布及びDC−bias変化率などを評価した。
 
【0097】
  <粒界層の成分分析>
  (1)集束イオンビーム(Focused  Ion  Beam、FIB)マイクロサンプリングによって製作したTEM観察用薄膜試料にArミリング処理を行い、厚さ約80nmの薄膜試料で粒界層観察用STEM試料を製作した。
  (2)入射電子線に対して傾斜のない粒界層に対してのみ分析を行った。
  (3)電子線のプローブ径は0.5nm以下であった。
  (4)得られた粒界層のHAADF−STEM画像(倍率×2.25M)のラインプロファイルから示されるピーク(peak)の半値全幅(FWHW)を測定して粒界層の厚さと定義し、粒界層の成分分析は、同等の厚さを有する領域に対して比較分析した。
  (5)粒界層の成分分析は、上記(2)(4)の条件を満たす粒界層の一点に電子線を照射し、EDS分析を行うことにより得ることができる。測定は、各サンプルに対して、20点ずつ行って平均値を算出した。
 
【0098】
  <絶縁破壊電圧の測定>
  絶縁破壊電圧(Break−down  voltage、BDV)は、ケースレー(keithley)測定器を用いて測定し、0Vから1.00000Vずつスウィープ(Sweep)方式で電圧を印加して、電流値が10mAになる瞬間の電圧値をBDV値として測定した。1,000個のサンプルに対して測定されたBDV値の最小値が平均値に対して80%以上である場合を良好(○)、平均値に対して60%以上である場合を普通(△)、平均値に対して60%未満である場合を不良(×)と判定した。
 
【0099】
  <高温IR散布測定>
  高温IR散布は、150℃の温度で電圧段階を5V/μmずつ増加させながら抵抗劣化挙動を測定した。各段階の時間は10分であり、5秒間隔で抵抗値を測定した。
 
【0100】
  1,000個のサンプルに対して測定された抵抗値の最小値が平均値に対して80%以上である場合を良好(○)、平均値に対して60%以上である場合を普通(△)、平均値に対して60%未満である場合を不良(×)と判定した。
 
【0101】
  <DC−bias変化率の測定>
  DC−bias変化率は、1,000個のサンプルをとり、DC2V/μmを印加した状態で60秒経過した後に測定した。
 
【0102】
  下記表1は、実験例1〜18による積層セラミックキャパシタチップの上記電気的特性を示す。
 
【0104】
  上記表1を参照すると、結晶粒界におけるSi/Niの比率及びNi/Tiの含有量比率が、BDV散布、高温IR散布及びDC−bias変化率に大きな影響を与えることが確認できる。
 
【0105】
  試料1*、2*と14を比較すると、Si/Niの比率が1.0(100%)未満であるときにBDV散布及び高温IR散布が低下することが確認できる。試料5及び18*を比較すると、Si/Niの比率が6.0(600%)を超えるときにBDV散布及び高温IR散布が低下し、DC−bias変化率が40%未満を示すことが確認できる。即ち、結晶粒界におけるSi/Niの比率が1.0(100%)〜6.0(600%)の範囲を満たす場合、BDV散布、高温IR散布及びDC−bias変化率がすべて優れた結果を示すことが確認できる。これにより、誘電体層に含まれる結晶粒界におけるSi/Niの比率が積層セラミックキャパシタの電気的性質に大きな影響を与え、上記範囲を満たす場合、絶縁抵抗及び絶縁破壊電圧を向上させて積層セラミックキャパシタの信頼性を向上させる効果があることが確認できる。
 
【0106】
  また、試料2*及び13を比較すると、Ni/Tiの比率が0.1(10%)を超えるときにBDV散布及び高温IR散布が低下し、DC−bias変化率が40%以上を示すことが確認できる。即ち、結晶粒界におけるNi/Tiの比率が0.1(10%)以下であるときにBDV散布、高温IR散布及びDC−bias変化率がすべて優れた結果を示すことが確認できる。したがって、誘電体層に含まれる結晶粒界におけるNi/Tiの比率が積層セラミックキャパシタの電気的性質に大きな影響を与え、上記範囲を満たす場合、絶縁抵抗及び絶縁破壊電圧を向上させて積層セラミックキャパシタの信頼性を改善する効果があることが確認できる。
 
【0107】
  図4及び
図5は、本発明の実施形態によるTEM(Transmission  Electron  Microscope)分析写真である。
 
【0108】
  図6及び
図7は、本発明の比較例によるTEM(Transmission  Electron  Microscope)分析写真である。
 
【0109】
  図4及び
図5を参照すると、本発明の実施例による誘電体結晶粒における結晶粒界は、均一且つ明確に確認され、その厚さも厚いことが分かる。
 
【0110】
  一方、
図6及び
図7を参照すると、本発明の比較例による誘電体結晶粒における結晶粒界は明確でないか、または薄く形成されており、絶縁抵抗が低いことが分かる。
 
【0111】
  本発明の実施例による場合、結晶粒界は、比較的明確に区別され、その厚さも厚いため、絶縁抵抗が強化されて信頼性に優れることが分かる。
 
【0112】
  以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。