【課題】ゴルフクラブヘッドの柔軟性の測定作業の一部又は全部を自動化することによりヘッドの柔軟性の測定作業に係る時間及び労力を大幅に軽減することが可能なゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置を提供する。
【解決手段】ゴルフクラブのシャフトを把持・固定するクランプ機構1については、台座9の垂直面内を垂直方向に移動する垂直方向スライド機構4に支持させると共に、その垂直方向スライド機構4については同水平方向に移動する水平方向スライド機構3に支持させるようにする。また、金属塊支持棒38については、金属塊係合機構6によって係合/解除させると共に、金属塊係合機構6については台座9の垂直面内を斜め方向に移動する斜め方向移動スライド機構5に支持させるようにする。また、ゴルフクラブのシャフトについては、台座9の水平面内をシャフトに直交する方向に移動する振動制止機構7が係合するようにする。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置100を示す説明図である。なお、説明の都合上、本実施形態で使用されるゴルフクラブはウッドとする。
【0026】
このゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置100は、ペンデュラムテストにおいて、金属塊10のリリース位置への移動、金属塊10のリリース、シャフトの制振、金属塊10のリリース位置の変更、並びに次の測定点の位置決めを自動的に行うように構成されている。
【0027】
そのため、上記ゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置100は、ゴルフクラブのシャフトをクランプしてゴルフクラブの姿勢・位置を固定するクランプ機構1と、金属塊10を所定の高さからゴルフクラブのフェース面に衝突させる衝撃印加機構2と、クランプ機構1を台座9の垂直面に対し水平方向に移動させる水平方向スライド機構3と、クランプ機構1を台座9の垂直面に対し垂直方向に移動させる垂直方向スライド機構4と、金属塊10を斜め上方に移動させる斜め方向スライド機構5と、金属塊10の振り子運動を規制する金属塊係合機構6と、ゴルフクラブのシャフトの振動を制止する振動制止機構7と、各機構3,4,5,6,7に含まれるモータ及びそのモータコントローラに電力を供給する電源部8と、上記衝撃印加機構2等が取り付けられた台座9と、ダミーゴルフ球としてゴルフクラブのフェース面に衝突する金属塊10と、金属塊10の加速度を計測する加速度センサ20と、加速度センサ20から出力される計測信号を取り込んでクラブヘッドのCT値を算出する信号処理部30と、オペレータからの要求に基づいて上記ペンデュラムテストを実行するテストコントローラ40とを具備して構成される。以下、各構成について更に説明する。
【0028】
クランプ機構1は、ゴルフクラブのシャフトを上下方向から圧着する下部クランプパッド11と上部クランプパッド12と、各クランプパッド11,12を収容するクランプブラケット13と、シャフトに対する圧着/フリーを選択的に切り替えるレバー14とから成る。
【0029】
下部クランプパッド11と上部クランプパッド12は、例えば弾性部材から構成されている。パッド中央部の長手方向に沿ってシャフトが嵌合するV字状溝がそれぞれに形成されている。
【0030】
従って、例えばレバー14を図上右側に倒すことにより、上部クランプパッド12が下降してシャフトが圧着され、これによりゴルフクラブの姿勢・位置が固定されるようになる。他方、レバー14を図上左側に倒すことにより、上部クランプパッド12が上昇してシャフトに対する圧着が解除され、これによりゴルフクラブの姿勢・位置が自由になる。
【0031】
衝撃印加機構2は、いわゆる振り子式の衝撃印加装置である。衝撃印加機構2の構造体は、縦長の四角枠構造を成し、長手方向が台座9に直交するように台座9に固定されている。構成としては、台座9に固定される下部台21と、下部台21から垂直方向に平行に離隔して設けられている上部台22と、それに直交して取り付けられる一対の側面板23,23とから構成されている。
【0032】
下部台21は貫通穴27を備え、固定ネジ28がこの貫通穴と円盤台43を通過して台座9の雌ネジ部(図示せず)に螺合している。従って、固定ネジ28を緩める場合、衝撃印加機構2は固定ネジ28の回りに回転することができる。他方、固定ネジ28を締める場合、衝撃印加機構2は固定ネジ28の回りに回転することができなくなり、台座9に固定される。
【0033】
下部台21と上部台22との間には、側面板23に平行に設けられた一対の垂直軸24,24が回転不能に取り付けられている。一対の垂直軸24,24には、下部ブロック25及び上部ブロック26が摺動可能に通されている。従って、上部ブロック26及び下部ブロック25は高さ位置が可変に構成されている。
【0034】
上部ブロック26と下部ブロック25との間には、スリーブ29が垂直軸24に対し摺動可能に取り付けられている。スリーブ29の外表面には固定ネジ31と螺合する雌ネジ部(図示せず)が形成されている。従って、固定ネジ31をスリーブ29にねじ込む場合、固定ネジ31の先端部が垂直軸24に当接してスリーブ29の位置が固定される。この場合、上部ブロック26はスリーブ29によって支持されているため、上部ブロック26の高さ位置が固定されることになる。
【0035】
上部ブロック26の下面には、U字形ブラケット32が逆U字形の形態で取り付けられている。U字形ブラケット32には水平軸33が回転自在に取り付けられている。
【0036】
水平軸33にはギヤ(ラチェットギヤ)34が固定されている。従って、ギヤ34は水平軸33と一体になって回転する。なお、U字形ブラケット32の端部の一部分は垂直軸24及び水平軸33に直交する方向に張り出している。その張出し部分にギヤ34に係止する係止部材(ラチェット爪部)35が揺動可能に取り付けられている。従って、ギヤ34は係止部材35と係合した状態では一方向(金属塊10が上昇する方向)にのみ回転することができるように構成されている。
【0037】
係止部材35はピン36によって揺動可能に支持されている。なお、ここで言う「揺動」は、ピン36を支点にしたシーソー運動を意味している。従って、係止部材35の下部を手前側に引く場合、係止部材35の上部がギヤ34に係合して、ギヤ34の水平軸33回りの回転位置(回転角度)が固定される。一方、係止部材35の下部を向こう側に押す場合、係止部材35の上部がギヤ34から分離して、ギヤ34の水平軸33回りの回転が自由になる。
【0038】
水平軸33の中心部(ハブ)37には金属塊10を支持する金属塊支持棒38が取り付けられている。従って、係止部材35が係合するギヤ34の歯車の位置を変えることにより、金属塊10の高さ位置を変えることが可能となる。なお、本実施形態における係止部材35が係合するギヤ34の歯車の位置は、三段階に設定されている。以下、金属塊10の高さ位置が一番高くなる歯車の位置を”ハイ”と、一番低くなる歯車の位置を”ロー”と、その中間の歯車の位置を”ミドル”と言うことにする。
【0039】
下部ブロック25の正面には、固定ネジ39及び貫通穴41が個別に設けられている。固定ネジ39を下部ブロック25にねじ込む場合、固定ネジ39の先端部が垂直軸24に当接して下部ブロック25の高さ位置が固定される。
【0040】
貫通穴41には、フェース面中心の位置・垂直度(アライメント)を設定するためのシリンダ42が挿通される。シリンダ42の外周端には等長の4本のピン42aが対称に設けられている。また、対角線上にあるピン同士にはワイヤー(
図6)が巻き掛けられている。従って、一のワイヤーと他のワイヤーが重複する部分にフェース面中心が位置するように下部ブロック25は位置決めされることになる。
【0041】
フェース面中心の位置・垂直度を設定した後、下部ブロック25は金属塊10に干渉しない低い位置に退避・固定される。なお、フェース面中心の垂直度(アライメント)の設定については、
図6を参照しながら後述することにする。
【0042】
水平方向スライド機構3、垂直方向スライド機構4、斜め方向スライド機構5、金属塊係合機構6及び振動制止機構7は、「ねじ軸が固定されボールナットが移動する」スライダータイプの電動アクチュエータである。一方、金属塊係合機構6は、ボールナットに更にロッド6aが同軸で一体化されているロッドタイプの電動アクチュエータである。なお、各機構3,4,5,6,7は、何れもモータの回転軸とねじ軸が並行に設けられた、いわゆるモータ折り返しタイプの電動アクチュエータでもある。従って、スライダータイプとロッドタイプの違いは、スライド板の有無またはロッドの有無である。
【0043】
また、スライダータイプの水平方向スライド機構3、垂直方向スライド機構4、斜め方向スライド機構5及び振動制止機構7間の違いは、横配置、縦配置、仰向け斜め配置、或いは仰向け水平配置等の違いである。
【0044】
水平方向スライド機構3は、垂直方向スライド機構4を支持しながら垂直方向スライド機構4を水平方向に移動させる。一方、垂直方向スライド機構4はクランプ機構1を支持しながらクランプ機構1を垂直方向に移動させる。これにより、ゴルフクラブのフェース面を台座9に対し水平方向および垂直方向に移動させることが可能となる。
【0045】
斜め方向スライド機構5は傾斜台5aに固定され、金属塊係合機構6を支持しながら所定の区間に渡り往復運動を行う。金属塊係合機構6は、ロッド6aで金属塊支持棒38を支持しながら、所定のタイミングでロッド6aを引っ込めて金属塊支持棒38に対する係合(支持)を解除して金属塊10を振り子運動させる。
【0046】
振動制止機構7は、シャフトに当接するL形板7aを支持しながら所定の区間に渡り往復運動を行う。L形板7aのシャフトに対向する位置には振動吸収材(ラバー)7bが設けられている。
【0047】
電源部8は、直流安定化電源8aを5個備える。本実施形態では、1つのモータ及びそのモータコントローラに対し、専用の直流安定化電源8aが個別に与えられている。従って、水平方向スライド機構3、垂直方向スライド機構4、斜め方向スライド機構5、金属塊係合機構6および振動制止機構7は、専用の直流安定化電源8aから電力が個別に供給されることになる。
【0048】
台座9は、高さを調整することができる脚9aによって4隅を支持されている。従って、台座9は、各脚9aの高さを調整することにより水平度を調整することが可能となる。
【0049】
金属塊10は、半球と円筒部が組み合わされた形状を成し、円筒部の後面に加速度センサ20がねじ込まれている。加速度センサ20から出力される計測信号は信号処理部30に取り込まれる。
【0050】
加速度センサ20は、例えば圧電効果を利用した圧電型加速度センサを使用することができる。なお、圧電効果とはある物体(圧電体)に力を加えたとき、分極が発生し、電圧が生じる現象のことである。代表的な圧電体としては水晶(SiO
2)やロッシェル塩(KNaC
4H
4O
6・4H
2O)が広く知られている。
【0051】
信号処理部30は、オシロスコープ30aとコンピュータ30bから構成される。オシロスコープ30aはデジタルオシロスコープである。オシロスコープ30aは、加速度センサから出力される時系列の加速度データ(電圧信号)を所定のデータ形式で保存する。
【0052】
コンピュータ30bは、オシロスコープ30aから時系列加速度データを取り込んで、その時系列の加速度データを積分することにより時系列の速度データ(速度履歴)を算出する。そして、コンピュータ30bは、金属塊30の速度が最大速度の5%に達する時刻t
sと、最大速度の95%に達する時刻t
eを時系列の速度データから各々測定する。そして、コンピュータ30bは、CT値をCT値=t
e−t
sとして算出する。
【0053】
テストコントローラ40は、例えば演算処理装置(CPU)、ラム(RAM)、ロム(ROM)、入出力装置(I/O機器)及び表示部(ディスプレイ)等を備えている。テストコントローラ40は、オペレータの指示に基づいて、ROMに格納された、ゴルフクラブのヘッドのCT値の測定を自動的に行うためのテストプログラムを実行する。なお、このテストプログラムについては、
図8から
図10を参照しながら後述することにする。
【0054】
テストコントローラ40としては、パーソナルコンピュータ、タブレット、マイクロコンピュータ、或いはPLC(Programable Logic Controller)等のプログラマブル論理制御装置を使用することができる。
【0055】
図2は、本発明に係る垂直方向スライド機構4の要部を示す説明図である。
図2(a)は正面図を表し、
図2(b)は同(a)のA−A断面図を表している。なお、水平方向スライド機構3、斜め方向スライド機構5、金属塊係合機構6及び振動制止機構7についても垂直方向スライド機構4と同様な構造であるため、ここでは説明を省略することにする。
【0056】
図2(a)に示されるように、この垂直方向スライド機構4は、回転動力を発生するモータ4aと、オペレータが設定した作動条件でモータ4aが動作するようにモータ4aを制御するモータコントローラ4bと、モータ4aの回転動力によってスライド板4eを長手方向に沿って移動させるスライド部4cと、モータ4aの回転動力をスライド部4cに伝達する動力伝達部4dと、クランプ機構1を支持するスライド板4eと、塵・埃等からスライド部4cを保護するメタルシート4fとから構成される。
【0057】
図2(b)に示されるように、ナットブラケット4c4とハウジング4c5との間にはガイドレールが設けられている。ガイドレールは、外ガイドレール4c6及び内ガイドレール4c7と、その間に設けられる鋼球4c3から成る。鋼球4c3は左右に独立に設けられ、上下について無限循環するように構成されている。従って、スライド板4eは横方向にぶれることなく、モータ4aの回転角度に比例した距離を、ねじ軸4c1の軸方向に沿って精度良くスムーズに移動することが可能となる。
【0058】
モータ4aとしては、例えば所定のパルス電圧に応じて所定の角度だけ回転するパルスモータを使用することができる。また、モータ4aは、インクリメント形又はアブソリュート形のエンコーダ4a1を備えている。従って、スライド板4eが移動するに際し、その前進端及び後退端の各位置は、エンコーダ4a1によって予め設定されている。
【0059】
モータコントローラ4bは、直流安定化電源8aからの電力、或いはテストコントローラ40からの指令(信号)を受け取る電源・I/O部4b1と、モータの制御プログラムが格納され、書き換え可能なROM4b2と、ROM4b2に書き込まれるべきデータ(パラメータ)を受け取るデータ入力部4b3と、ROM4b2に書き込まれたモータ制御プログラムを実行するCPU(演算処理装置)4b4と、を備えている。モータコントローラ4bは、集積回路(以下「IC」という。)および抵抗・コンデンサー等の電子素子が高密度に実装された基板によって構成されている。
【0060】
図3は、本発明に係るモータコントローラ4bの電源・I/O部4b1及びデータ入力部4b3を示す説明図である。
図3(a)は電源・I/O部4b1の入出力を表し、
図3(b)はデータ入力部4b3の入出力を表している。
【0061】
図3(a)に示されるように、電源・I/O部4b1は、直流安定化電源8aの0V系統と24V系統との間に配置されている。端子B1がモータ4aの駆動及び制御に関する端子である。端子A1は常時0Vに設定されているため、端子B1が24V系統に接続されることにより、モータ4aとモータコントローラ4bが動作可能状態(アクティブ状態)となる。なお、0V系統または24V系統への切断/接続は、スイッチング素子等(図示せず)の切断/接続によって行われる。スイッチング素子等の駆動はテストコントローラ40の指令値によって行われる。
【0062】
本実施形態のモータ4aは、モータ4aがOFF状態の場合にスライダ板4eの位置を保持するための外部ブレーキ(図示せず)を備えている。外部ブレーキは、例えば無励磁作動電磁ブレーキである。従って、外部ブレーキは無励磁状態(非通電状態)において保持力を発生し、一方、励磁状態(通電状態)において保持力を発生しなくなる。従って、端子B2が24V系統に接続されることにより、外部ブレーキの保持力がゼロになる。
【0063】
端子B3が0V系統に接続される場合、スライド板4eはオペレータが設定した始点から終点へ所定の移動距離だけ自動的に後退する。この「始点」及び「終点」については、
図3(b)に示されるように、テストコントローラ40を介してROM4b2に書き込まれるようになっている。なお、
図3(a)に示されるように、スライド板4eが所定の移動距離だけ後退した場合、CPU4b4は端子A3の内部スイッチをオンにする。その結果、直流安定化電源8aから電流が端子A3に流入し、端子A3の電圧が後退完了信号としてテストコントローラ40に取り込まれる。
【0064】
端子B4が0V系統に接続される場合、スライド板4eはオペレータが設定した始点から終点へ所定の移動距離だけ自動的に前進する。スライド板4eが所定の移動距離だけ前進した場合、CPU4b4は端子A4の内部スイッチをオンにする。その結果、直流安定化電源8aから電流が端子A4に流入し、端子A4の電圧が前進完了信号としてテストコントローラ40に取り込まれる。
【0065】
端子B5が0V系統に接続される場合、アラームが解除される。一方、CPU4b4は異常を検知した場合、端子A5の内部スイッチ(図示せず)をオンにする。その結果、電流が端子A5に流入し、端子A5の電圧がアラーム出力としてテストコントローラ40に取り込まれる。
【0066】
図3(b)に示されるように、スライド板4eの始点(mm)、終点(mm)、加速度(%)、定速度(%)及び減速度(%)等の動作条件(パラメータデータ)は、テストコントローラ40を介してROM4b2に書き込まれる。なお、ここで言う「加速度」とは、定速度を100%としたときの所定時間Δtに速度ゼロ(%)からの速度(%)の増加分を意味している。同様に「減速度」とは、定速度を100%としたときの所定時間Δtに速度100%からの速度(%)の減少分を意味している。
【0067】
従って、例えばテストコントローラ40からの前進指令によって端子B4が0Vに接続される場合、スライド板4eがROMに書き込まれた動作条件に従って自動的に始点から終点へ前進又は後退することになる。
【0068】
なお、後述の
図8から
図10において、垂直方向スライド機構4を除くその他の機構3,5,6,7に係る上記構成の各符号については、アルファベットは共通として数字のみで区別することにする。例えば、水平方向スライド機構3のモータはモータ3aと、モータコントローラはモータコントローラ3bと各々記載することにする。
【0069】
図4は、本発明のゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置100を使用したクラブヘッド柔軟性の測定手順を示すフロー図である。
先ず手順P1では、フェース面に測定点(金属塊10が衝突する点)を設定する。
図5(a)に示されるように、測定点については、フェース面中心FCを含む、X方向及び/又はY方向にピッチdだけそれぞれ隔てた、例えば15点が選定される。なお、ここで言う「フェース面中心」とは、クラブヘッドの重心からフェース面に下ろした垂線がフェース面と交わる点を意味している。また、ピッチdとしては例えば10mmを採用することができる。
【0070】
手順P2では、測定点にマーキングする。マーキングは、ペンデュラムテスト時に金属塊10の中心が測定点に正しく衝突していることをオペレータが目視にて確認するために、測定点に塗料を付けることである。この塗料はテスト終了後に溶媒等によって除去される。
【0071】
また、測定点番号については、例えばフェース面中心FCを”1”として、その他の測定点については”2”から”15”の何れ1つを設定し、その座標と共にテストコントローラ40に入力する。なお、測定点の座標については、
図5(b)に示されるように、
図5(a)に示される測定点を、フェース面中心FCの回りに所定の角度θだけ回転させたものに相当する。この角度θについては、「ソール面が水平になる状態(
図5(a))」から「シャフトが水平になる状態(
図5(b))」に到る回転角に相当する。
【0072】
手順P3では、フェース面中心FCの位置決め・アライメント(垂直度)を設定する。フェース面中心FCの位置決めについては、先ず、
図6(a)に示されるように、下部ブロック25の貫通穴41にアライメント調整用のシリンダ42を挿入する。
【0073】
次に、シリンダ42の内部を視準しながら、フェース面中心FCが一のワイヤー42bと他のワイヤー42bが重複するワイヤー重複部分42cに入るように、フェース面中心FCを位置決めする。水平方向の位置決めについては、ゴルフクラブを水平方向に移動させることにより行う。垂直方向の位置決めについては、固定ネジ39を緩めて下部ブロック25を上下方向に移動させることにより行う。
【0074】
続いて、アライメントについて、
図6(b)に示されるように、シリンダ42の4本のピン42aがフェース面中心FC近傍に隙間無く接合するように、ゴルフクラブのフェース面のアライメントを設定する。調整については、フェース面をシャフトの回りに回転させることにより、又は必要に応じて、衝撃印加機構2(下部ブロック25)を回転させることにより行う。
【0075】
手順P4では、金属塊10の中心とフェース面中心FCを一致させる。先ず、
図7に示されるように、固定ネジ39を緩め、下部ブロック25を金属塊10と干渉しない下方へ移動させる。
【0076】
次に、固定ネジ31を緩めて上部ブロック26を移動自由な状態にした後、金属塊10の中心がフェース面中心FCに衝突する位置で固定ネジ31を締めて上部ブロック26を固定する。
【0077】
手順P5では、斜め方向スライド機構5、金属塊係合機構6及び振動制止機構7についての動作条件を設定する。オペレータが専用のテストコントローラ40(
図3(b))を使用して、始点(mm)、終点(mm)、往復の有無、加速度(%)、定速度(%)及び減速度(%)等の動作条件を入力する。
【0078】
また、金属塊10の高さ位置は、斜め方向スライド機構5のストローク量によって規定される。従って、以降では特に上記”ハイ”に対応する斜め方向スライド機構5のストローク量をハイストロークと、上記”ミドル”に対応するストローク量をミドルストロークと、上記”ロー”に対応するストローク量をローストロークとそれぞれ言うことにする。なお、ペンデュラムテストでは、”ハイ”→”ミドル”→”ロー”の順に行われるものとする。従って、斜め方向スライド機構5のストローク量については、初め(デフォルト値として)ハイストロークに設定されているものとする。
【0079】
手順P6では、ペンデュラムテストを開始する。開始は、例えばオペレータがテストコントローラ40の画面上のスタートボタンをクリックすることにより、上記手順P1で設定した15点に対し、CT値の計測が自動的に行われる。金属塊10の高さ位置については”ハイ”、”ミドル”、”ロー”の3種類の各高さにおいて3回の計測が行われる。従って、1つの測定点に対し9(=3×3)回の計測が行われる。従って、1つのフェース面については135回(=15点×9回/点)の計測が行われる。次に、このテストプログラムについて説明する。
【0080】
図8から
図10は、ペンデュラムテストを自動的に実施するテストプロラグラムの一例を示すフロー図である。
図8は斜め方向スライド機構5及び金属塊係合機構6に係るテストプログラムの一例を示すフロー図である。
図9は振動制止機構7に係るテストプログラムの一例を示すフロー図である。
図10は水平方向スライド機構3及び垂直方向スライド機構4に係るテストプログラムの一例を示すフロー図である。
【0081】
ステップS1では、測定点番号NUMを1だけ増やす。なお、測定点番号NUMについては、初期値としてゼロが設定されているものとする。従って、本実施形態では測定点番号NUMが1であるフェース面中心FCより、ペンデュラムテストが開始される。
【0082】
ステップS2では、金属塊10の衝突回数Nをゼロにリセットする。これにより上記”ハイ”でのテスト回数がゼロに設定される。
【0083】
ステップS3では、斜め方向スライド機構5を前進駆動させる。なお、ここで言う「前進駆動」とは、金属塊10(金属塊係合機構6)を傾斜台5aに沿って上昇させることを意味している。逆に「後退駆動」とは、金属塊10(金属塊係合機構6)を傾斜台5aに沿って下降させることを意味している。
【0084】
ステップS4では、斜め方向スライド機構5が所定距離を移動したか否かを判定する。判定は、
図3(b)で示されるように、モータコントローラ5bからの前進完了信号の有無によって行われる。モータコントローラ5bはエンコーダの出力信号から前進完了か否かを判定する。テストコントローラ40が前進完了信号を受信していない場合(NO)、斜め方向スライド機構5をそのまま前進駆動させる。他方、テストコントローラ40が前進完了信号を受信している場合(YES)、ステップS5を実行する。
【0085】
ステップS5では、斜め方向スライド機構5を後退駆動させるのと同時にタイマーを作動させる。
【0086】
ステップS6では、斜め方向スライド機構5が後退駆動してから所定の時間T1が経過したか否かを判定する。この時間T1によってテストコントローラ40は金属塊10をリリースするタイミングを規定している。所定の時間T1が経過した場合(YES)、ステップS7を実行する。他方、所定の時間T1が経過していない場合(NO)、ステップS6を再度実行する。
【0087】
ステップS7では、金属塊係合機構6を駆動させる。金属塊係合機構6が駆動することにより、金属塊支持棒38に対するロッド6aの係合が解除される。これにより、金属塊10がリリースされ、水平軸33(
図1)を支点に揺動してゴルフクラブのフェース面に衝突する。
【0088】
このように、斜め方向スライド機構5が後退駆動した後時間T1だけ遅れて金属塊10がリリースされることになる。
【0089】
ステップS8では、衝突回数を1だけ増やす。
【0090】
ステップS9では、金属塊係合機構6が後退駆動してから所定の時間T2が経過したか否かを判定する。この時間T2によってテストコントローラ40は金属塊係合機構6を駆動して金属塊支持棒38を再度係合(キャッチ)するタイミングを規定している。所定の時間T2が経過した場合(YES)、ステップS10を実行する。他方、所定の時間T2が経過していない場合(NO)、ステップS9を再度実行する。
【0091】
ステップS10では、金属塊係合機構6を前進駆動させる。これにより金属塊係合機構6が金属塊支持棒38をロッド6aによって再度キャッチする。
【0092】
ステップS11では、金属塊係合機構6が前進駆動してから所定の時間T3が経過したか否かを判定する。この時間T3によってテストコントローラ40は振動制止機構7を駆動するタイミングを規定している。所定の時間T3が経過した場合(YES)、ステップS12を実行する。他方、所定の時間T3が経過していない場合(NO)、ステップS11を再度実行する。
【0093】
図9は、振動制止機構7に係るテストプログラムの一例を示すフロー図である。
ステップS12では、振動制止機構7を前進駆動させる。これによりL形板7aがシャフトに向かって移動開始する。
【0094】
ステップS13では、振動制止機構7が所定距離を移動したか否かを判定する。判定は、
図3(b)で示されるように、モータコントローラ7bからの前進完了信号の有無によって行われる。モータコントローラ7bはエンコーダの出力信号から前進完了か否かを判定する。テストコントローラ40が前進完了信号を受信していない場合(NO)、振動制止機構7をそのまま前進駆動させる。他方、テストコントローラ40が前進完了信号を受信している場合(YES)、ステップS14を実行する。
【0095】
ステップS14では、振動制止機構7が前進駆動してから所定の時間T4が経過したか否かを判定する。この時間T4によってテストコントローラ40は振動制止機構7を後退駆動するタイミングを規定している。所定の時間T4が経過した場合(YES)、ステップS15を実行する。他方、所定の時間T4が経過していない場合(NO)、ステップS14を再度実行する。
【0096】
ステップS15では、振動制止機構7を後退駆動させる。また、同時にタイマーをゼロにリセットする。
【0097】
ステップS16では、金属塊10がフェース面に3回衝突したか否かを判定する。金属塊10がフェース面に3回衝突した場合(YES)、ステップS17を実行する。他方、金属塊10がフェース面に3回衝突していない場合(NO)、ステップS3(斜め方向スライド機構5を前進駆動させる。)を再度実行する。
【0098】
ステップS17では、斜め方向スライド機構5のストローク量はハイストロークか否かを判定する。判定は、モータコントローラのROMに記憶されているスライド板5eの動作条件に関するパラメータデータ(
図3(b))を、テストコントローラ40が参照することにより行われる。
【0099】
ストローク量がハイストロークの場合(YES)、テストコントローラ40はステップS18を実行する。他方、ストローク量がハイストロークでない場合(NO)、テストコントローラ40はステップS19を実行する。
【0100】
ステップS18では、斜め方向スライド機構5のストローク量をミドルストロークに設定する。設定は、動作条件に関するパラメータデータの内で「終点の値」が書き換えられることにより成される。その「終点の値」は、テストコントローラ40からモータコントローラ5bに送信される。書き換えはモータコントローラ5bに付属するロムライタ(図示せず)によって行われる。
【0101】
ステップS19では、斜め方向スライド機構5のストローク量がミドルストロークか否かを判定する。判定は、モータコントローラ5bのROMに記憶されているスライド板5eの動作条件に関するパラメータデータ(
図3(b))を、テストコントローラ40が参照することにより行われる。
【0102】
ストローク量がミドルストロークの場合(YES)、テストコントローラ40はステップS20を実行する。他方、ストローク量がミドルストロークでない場合(NO)、テストコントローラ40はステップS21を実行する。
【0103】
ステップS20では、斜め方向スライド機構5のストローク量をローストロークに設定する。設定は、動作条件に関するパラメータデータの内で「終点の値」が書き換えられることにより成される。その「終点の値」は、テストコントローラ40からモータコントローラ5bに送信される。書き換えはモータコントローラ5bに付属するロムライタ(図示せず)によって行われる。
【0104】
図10は、水平方向スライド機構3及び垂直方向スライド機構4に係るテストプログラムの一例を示すフロー図である。
ステップS21では、CT値は規定値以内であるか否かを判定する。なお、CT値の既定値は257μ秒(=239μ秒+公差18μ秒)である。CT値は信号処理部30からテストコントローラ40へ入力される。従って、CT値が規定値以内である場合(YES)、ステップS20を実行する。CT値が規定値を超える場合(NO)、テストプログラムを終了する。
【0105】
ステップS22では、全ての測定点についてCT値を測定したか否かを判定する。判定は、測定点番号NUMが”15”であるか否かによって行われる。測定点番号NUMが”15”である場合(YES)、テストプログラムを終了する。他方、測定点番号NUMが”15”でない場合(NO)、ステップS23を実行する。
【0106】
ステップS23では、水平方向スライド機構3を前進又は後退駆動させる。これにより、次の測定点についての金属塊10に対する位置決めが開始される。
【0107】
ステップS24では、水平方向スライド機構3が所定距離を移動したか否かを判定する。判定は、
図3(b)で示されるように、モータコントローラ3bから前進完了信号又は後退完了信号の有無によって行われる。モータコントローラ3bはエンコーダの出力信号から前進完了又は後退完了か否かを判定する。テストコントローラ40が前進完了又は後退完了信号を受信していない場合(NO)、水平方向スライド機構3をそのまま前進又は後退駆動させる。他方、テストコントローラ40が前進完了又は後退完了信号を受信している場合(YES)、ステップS25を実行する。
【0108】
ステップS25では、垂直方向スライド機構4を前進又は後退駆動させる。
【0109】
ステップS26では、垂直方向スライド機構4が所定距離を移動したか否かを判定する。判定は、
図3(b)で示されるように、モータコントローラ4bから前進完了信号又は後退完了信号の有無によって行われる。モータコントローラ4bはエンコーダの出力信号から前進完了又は後退完了か否かを判定する。テストコントローラ40が前進完了又は後退完了信号を受信していない場合(NO)、垂直方向スライド機構4をそのまま前進又は後退駆動させる。他方、テストコントローラ40が前進完了又は後退完了信号を受信している場合(YES)、ステップS2を再度実行する。
【0110】
以上の通り、本実施形態に係るゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置100によれば、ゴルフクラブヘッドの柔軟性(CT値)を測定するペンデュラムテストの作業を自動化することが可能となる。すなわち、金属塊10のリリース位置への移動、金属塊10のリリース、シャフトの制振、金属塊10の高さ位置(リリース位置)の変更、並びに金属塊10に対するフェース面の測定点の位置決めを自動的に行うことが可能となる。その結果、ゴルフクラブヘッドの柔軟性(CT値)の測定作業に係る時間及び労力を大幅に軽減すると共に、測定者が代わっても測定位置が安定し、ひいてはヘッドのCT値の品質を安定させることが可能となる
【0111】
以上、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置100について説明してきたが、本発明は上記実施形態だけに限定されるものではない。
【0112】
すなわち、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内において種々の変更・修正を加えることが可能である。例えば、ペンデュラムテスト作業の一部については、オペレータによる手動操作を追加しても良い。一例を挙げると、金属塊10のリリース位置への移動および金属塊10のリリース(ステップS3〜ステップS7)をオペレータによる手動操作に置き換えることも可能である。
【0113】
また、シャフトの制振(ステップS9からステップS15)をオペレータによる手動操作に置き換えることも可能である。
【0114】
また、金属塊10の高さ位置(リリース位置)の変更(ステップS16およびステップS18)をオペレータによる手動操作に置き換えることも可能である。すなわち、オペレータがテストコントローラ40のディスプレイ画面でミドルストロークを入力するようにしても良い。ステップS18についても同様である。
【0115】
また、ステップS21においてテストコントローラ40が信号処理部30から速度の時系列データを取り込んでCT値を判定しているが、オペレータがCT値を判定するようにしても良い。すなわち、オペレータが信号処理部30のディスプレイ画面を見てCT値が規格値を超えている場合は、ペンデュラムテストを強制的に終了するようにしても良い。
【0116】
また、本発明はウッドに限らず他のゴルフクラブ(例えばアイアン等)に対しても適用可能である。
【0117】
図11は、本発明の他の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置200を示す説明図である。
このゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置200は、各モータコントローラ3b,4b,5b,6b,7bを各スライド機構等3,4,5,6,7に内蔵させずに、これらと分離して別個の形態(外付け形態)で配置したものである。その他の構成については上記ゴルフクラブヘッドの柔軟性測定装置100と同じである。